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特表2024-525102結晶化度に優れたポリラクチド樹脂組成物、及びその製造方法
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  • 特表-結晶化度に優れたポリラクチド樹脂組成物、及びその製造方法 図1
  • 特表-結晶化度に優れたポリラクチド樹脂組成物、及びその製造方法 図2
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  • 特表-結晶化度に優れたポリラクチド樹脂組成物、及びその製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】結晶化度に優れたポリラクチド樹脂組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20240702BHJP
   C08K 5/3442 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08K5/3442
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502179
(86)(22)【出願日】2023-02-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2023002703
(87)【国際公開番号】W WO2023182686
(87)【国際公開日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0035552
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ユジン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ミンチャン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・キュ・オ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002CF191
4J002CF192
4J002EU096
4J002FD202
4J002FD206
4J200AA04
4J200BA17
4J200EA10
(57)【要約】
本発明は、特定の核剤を組み合わせて用いるポリラクチド樹脂組成物に関するものであり、結晶化度に優れ、各成分間の分散性に優れ、透明性にも優れているという特徴があり、そのため加工性に優れると共に、本発明に係るポリラクチド樹脂固有の特性を維持することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリラクチド樹脂と、第1核剤と、第2核剤樹脂と、を含み、
前記第1核剤は、ウラシル(uracil)またはオロト酸(orotic acid)であり、
前記第2核剤は、ラクチドオリゴマー構造を含む化合物である、
ポリラクチド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリラクチド樹脂の重量平均分子量が70,000ないし400,000である、
請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1核剤を、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して0.1ないし5重量%で含む、
請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1核剤を、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して0.5ないし3.5重量%で含む、
請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項5】
前記第2核剤は、下記化学式1で表される化合物である、
請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【化1】
前記化学式1において、
Lは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つであり、
【化2】
前記において、
n1は、1ないし4の整数であり、
n2は、1ないし4の整数であり、
n3は、1ないし30の整数であり、
Rは、下記化学式2で表される置換基であり、
【化3】
nは、繰り返し単位数を示し、
R’は、水素、または、アセチルである。
【請求項6】
前記第2核剤の重量平均分子量は、1,000ないし50,000である、
請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項7】
前記第2核剤を、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して3ないし25重量%で含む、
請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項8】
前記第2核剤を、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して4.5ないし21重量%で含む、
請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2022年3月22日付の韓国特許出願第10-2022-0035552号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願等の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、結晶化度に優れたポリラクチド樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリラクチド(または、ポリ乳酸;PLA)樹脂は、バイオ原料に基づいて製造されるものであって、製造過程での温室効果ガスである二酸化炭素の排出が少なく、また、特定の温度と堆肥化設備によって分解される特徴を有する環境に優しい素材である。また、最近は、廃プラスチック使用及び炭素排出規制に対する対応案として、既存の原油ベースの樹脂を代替可能な素材のうち一つとして注目されている。
【0004】
また、ポリラクチド樹脂は、他の生分解性高分子に比べて安価で、かつ高い引張強度とモジュラスの特性を有しているというメリットがある。
【0005】
しかし、ポリラクチド樹脂は、rigidな高分子主鎖が短い単位で繰り返され、遅い連鎖移動性により結晶化速度が遅いため成形サイクルが長く、これにより生産性に劣るという問題点がある。したがって、このような問題点を改善するために核剤のような物質を導入して生産性と耐熱性を改善させる研究が多く進められている。
【0006】
一般的に、前記核剤として用いられる物質は、主に無機系核剤であって、タルク(Talc)、マイカ(Mica)、ナノクレイ(nanoclay)のような物質が用いられ、これをPLAの成形時に、一部添加して耐熱性と強度を改善できることが報告されている。しかし、このような核剤を過量で添加すると、樹脂比重の増加と透明性に劣るという問題がある。一方、結晶性と透明性を向上させる物質として、LAK 301(aromatic sulfonate drivate)、sodium benzoate、N-aminophthalimide、phthalhydrazide、cadmium phenylmalonateなどのような有機系核剤が用いられている。しかし、このような物質は、バイオ基盤の物質ではなく、PLA樹脂との分散の問題が存在する。
【0007】
したがって、環境に優しい製品に製造することができ、同時に透明性を阻害しないバイオ基盤の有機系核剤を導入する必要がある。また、ポリラクチド樹脂との分散の問題が少ない核剤を導入してポリラクチド樹脂の結晶化度をさらに改善することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定の核剤を組み合わせて用いて結晶化度に優れたポリラクチド樹脂組成物を提供するためのものである。
【0009】
また、本発明は、前記ポリラクチド樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、下記のポリラクチド樹脂組成物を提供する。
【0011】
ポリラクチド樹脂と、第1核剤と、第2核剤樹脂と、を含み、
前記第1核剤は、ウラシル(uracil)またはオロト酸(orotic acid)であり、
前記第2核剤は、ラクチドオリゴマー構造を含む化合物である、
ポリラクチド樹脂組成物。
【0012】
本発明で使用する用語「ポリラクチド樹脂」とは、下記の繰り返し単位を含む単一重合体または共重合体を包括して称すものと定義される。
【化1】
【0013】
前記ポリラクチド樹脂は、ラクチド単量体の開環重合によって前記繰り返し単位を形成するステップを含んで製造することができ、このような開環重合及び前記繰り返し単位の形成工程が完了した後の重合体を、「ポリラクチド樹脂」と称することができる。
【0014】
本願において、「ラクチド単量体」は、次のように定義することができる。通常、ラクチドは、L-乳酸からなるL-ラクチド、D-乳酸からなるD-ラクチド、L-形態とD-形態とがそれぞれ一つずつからなるmesoラクチドに区分することができる。また、L-ラクチドとD-ラクチドとが50:50で混合されているものを、D,L-ラクチドまたはrac-ラクチドという。これらのラクチドのうち、光学的純度の高いL-ラクチドまたはD-ラクチドだけを用いて重合を行うと、立体規則性が非常に高いL-またはD-ポリラクチド(PLLA、またはPDLA)が得られるものと知られており、このようなポリラクチドは、光学的純度の低いポリラクチドに対して結晶化速度が速く結晶化度も高いものと知られている。ただし、本明細書において、「ラクチド単量体」とは、各形態に係るラクチドの特性差及びこれから形成されたポリラクチド樹脂の特性差に関係なく、すべての形態のラクチドを含むものと定義される。
【0015】
一方、本発明に係るポリラクチド樹脂は、一例として、重量平均分子量が70,000ないし400,000である。
【0016】
本発明は、このようなポリラクチドを樹脂前記第1核剤及び第2核剤と共に用いることによって、ポリラクチド樹脂の結晶化度を改善することを特徴とする。
【0017】
前記第1核剤は、ウラシル(uracil)またはオロト酸(orotic acid)である。前記第1核剤は、バイオ基盤の有機系物質であって、ポリラクチド樹脂に添加されてnucleation siteとして作用し、高い温度で結晶核の生成を誘発して結晶化速度を向上させることができる。
【0018】
好ましくは、前記第1核剤は、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して0.1ないし5重量%で含まれる。前記含有量が0.1重量%未満である場合には、前記第1核剤の使用効果が微々たるものであり、前記含有量が5重量%を超過すると、ポリラクチド樹脂固有の物性を阻害する恐れがある。より好ましくは、前記第1核剤は、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、または0.5重量%以上であり、かつ4.5重量%以下、4.0重量%以下、または3.5重量%以下で含まれる。
【0019】
前記第2核剤は、ラクチド単量体のオリゴマー構造を含む核剤であって、このようなラクチド単量体のオリゴマー構造によってポリラクチド樹脂との相容性が高く、ポリラクチド樹脂に添加され、可塑剤と類似の役割を果たす。これにより、ポリラクチド樹脂内でfree volumeを形成してポリラクチド樹脂の連鎖移動性を向上させ、結晶化度を高めることができる。
【0020】
好ましくは、前記第2核剤は、下記化学式1で表される化合物である。
【化2】
【0021】
前記化学式1において、
Lは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つであり、
【化3】

前記において、
n1は、1ないし4の整数であり、
n2は、1ないし4の整数であり、
n3は、1ないし30の整数であり、
Rは、下記化学式2で表される置換基であり、
[化学式2]
【化4】
nは、繰り返し単位数を示し、
R’は、水素、または、アセチルである。
【0022】
前記第2核剤の重量平均分子量は、各ラクチド繰り返し単位数により調節することができる。好ましくは、前記第2核剤の重量平均分子量は、1,000ないし50,000である。より好ましくは、前記第2核剤の重量平均分子量は、1,100以上、1,200以上、1,300以上、1,400以上、または1,500以上であり、かつ40,000以下、30,000以下、20,000以下、10,000以下、9,000以下、または8,000以下である。
【0023】
好ましくは、前記第2核剤は、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して3ないし25重量%で含まれる。前記含有量が3重量%未満である場合には、前記第2核剤の使用効果が微々たるものであり、前記含有量が25重量%を超過すると、ポリラクチド樹脂固有の物性を阻害する恐れがある。より好ましくは、前記第2核剤は、前記ポリラクチド樹脂組成物の総重量に対して3.5重量%以上、4.0重量%以上、または4.5重量%以上であり、かつ24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、または21重量%以下で含まれる。
【0024】
一方、前述した本発明に係るポリラクチド樹脂組成物の製造方法は、前述したポリラクチド樹脂、第1核剤、及び第2核剤を混合する方法であれば特に制限されない。一例として、前記各成分は、CHCl溶媒に溶解しやすいので、各成分をCHCl溶媒のそれぞれに溶解し、これを混合した後、溶媒を除去する方法で製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
前述した本発明に係るポリラクチド樹脂組成物は、結晶化度に優れ、各成分間の分散性に優れており、透明性にも優れている。したがって、本発明に係るポリラクチド樹脂組成物は、加工性に優れると共に本発明に係るポリラクチド樹脂固有の特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、製造例1で製造した第2核剤のNMR結果を示したものである。
図2図2は、実施例及び比較例に製造したポリラクチド樹脂組成物に対するDSC測定結果を示したものである。
図3図3は、実施例及び比較例に製造したポリラクチド樹脂組成物に対するDSC測定結果を示したものである。
図4図4は、実施例及び比較例に製造したポリラクチド樹脂組成物に対するDSC測定結果を示したものである。
図5図5は、実施例及び比較例に製造したポリラクチド樹脂組成物に対するDSC測定結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具現例を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の具現例を例示するものであるだけで、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0028】
製造例1:第2核剤(P4-oligomerの製造)
1)第2核剤(P4-O-oligomer)の製造
PEG-400(P4)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにLactide:P4のモル比が4:1、8:1、12:1、16:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(℃t)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれP4-O-001、P4-O-002、P4-O-003、P4-O-004と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0029】
2)第2核剤(P4-A-oligomer)の製造
PEG-400(P4)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:P4のモル比が4:1、8:1、12:1、16:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(℃t)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。温度を120℃に調節した後、無水酢酸(末端のOH基に対して、4当量)を投入し、12時間反応をさらに行った。反応終了後、真空乾燥により副産物である酢酸及び残留無水酢酸を除去し、末端基がアセチル基で置換された構造を有する第2核剤を製造し、これをそれぞれP4-A-001、P4-A-002、P4-A-003、P4-A-004と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0030】
前記製造した第2核剤について、出発物質であるPEG-400と共にNMR分析を行い、その結果を図1に示した。
【0031】
図1に示しているように、オリゴマー両末端のOH基(2.5ppm)、またはアセチル基(2.1-2.2ppm)が観察された。
【0032】
製造例2:第2核剤(P10-オリゴマーの製造)
1)第2核剤(P10-O-オリゴマー)の製造
PEG-1000(P10)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:P10のモル比が4:1、8:1、12:1、16:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(Oct)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれP10-O-001、P10-O-002、P10-O-003、P10-O-004と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0033】
2)第2核剤(P10-A-オリゴマー)の製造
PEG-1000(P10)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:P10のモル比が4:1、8:1、12:1、16:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(℃t)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。温度を120℃に調節した後、無水酢酸(末端のOH基に対して、4当量)を投入し、12時間反応をさらに行った。反応終了後、真空乾燥により、副産物である酢酸及び残留無水酢酸を除去して末端基がacetyl基で置換された構造を有する第2核剤を製造し、これをそれぞれP10-A-001、P10-A-002、P10-A-003、P10-A-004と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0034】
製造例2:第2核剤(CD-oligomerの製造)
サイクロヘキサンジメタノール(CD)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:CDのモル比が4:1、8:1、12:1、16:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(℃t)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれCD-O-001、CD-O-002、CD-O-003、CD-O-004と命名し、重量平均分子量を、以下の表1及び2に示した。
【0035】
製造例3:第2核剤(PD-oligomerの製造)
1,5-ペンタンジオール(PD)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:PDのモル比が4:1、8:1、12:1、16:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(Oct)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれPD-O-001、PD-O-002、PD-O-003、PD-O-004と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0036】
製造例4:第2核剤(DG-oligomerの製造)
ジエチレングリコール(DG)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:DGのモル比が4:1、8:1、12:1、16:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(Oct)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれDG-O-001、DG-O-002、DG-O-003、DG-O-004と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0037】
製造例5:第2核剤(GL-oligomerの製造)
グリセロール(GL)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:GLのモル比が6:1、12:1、18:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(Oct)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれGL-O-001、GL-O-002、GL-O-003と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0038】
製造例6:第2核剤(PT-オリゴマーの製造)
ペンタエリトリトール(pentaerythritol;PT)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:PTのモル比が8:1、16:1、24:1、32:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(Oct)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれPT-O-001、PT-O-002、PT-O-003、PT-O-004と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0039】
製造例7:第2核剤(SB-oligomerの製造)
ソルビトール(sorbitol;SB)を開始剤として用いて、オリゴマーを製造した。具体的には、20mLバイアルにラクチド:SBのモル比が12:1、24:1、36:1(モル比)で、合計4.5gとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、Sn(Oct)触媒を0.1ないし0.2wt%となるように投入した後、130℃で4時間反応させた。真空乾燥後、常温で冷却して第2核剤を製造し、これをそれぞれSB-O-001、SB-O-002、SB-O-003と命名し、重量平均分子量は、以下の表1及び2に示した。
【0040】
実施例及び比較例
500mLバイアルにPLA pellet(NatureWorks社の4032D;重量平均分子量約200,000)300gを入れ、CHCl 12mLを入れて完全に溶解した。下記表1に記載された第1核剤及び第2核剤を各含有量に応じてCHCl 4mLに溶解するか、均等に分散させて溶液を製造した後、先に製造したPLA溶液に混合した。1時間sonicationで均等に混合した溶液額をAl dish(直径:80mm)で自然乾燥して溶媒を除去した後、60℃で、真空で5時間乾燥させ、PLAフィルム(厚さ:約0.5mmないし1.0mm)をそれぞれ製造した。
【0041】
実験例
前記製造した第1核剤、第2核剤及びPLAフィルムに対して、以下の方法で物性を測定した。
【0042】
1)重量平均分子量
GPC(Gel Permeation Chromatography)装備を用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、オリゴマー分子量分布(Mw/Mn)を測定し、具体的な測定条件は、下記の通りである。
-カラム:PLgel Mixed E×2
-溶媒:THF
-流速:0.7mL/min
-試料濃度:3.0mg/mL
-注入量:100μl
-カラム温度:40℃
-Detector:Waters 2414 RID
-Standard:PS(ポリスチレン)
【0043】
2)DSC(differential scanning calorimetry)
PLAフィルムを完全に非結晶質の状態にし、熱履歴を消すために10℃/minの加熱速度でPLAの溶融温度以上の250℃まで加熱した後、5分間安定化して非結晶溶融状態にした。その後、ΔHc及び結晶化挙動を分析するために、-20℃まで10℃/minの冷却速度で冷却させ、結晶化ピークを観察した。安定化した後、溶融ピークを観察するために、250℃まで10℃/minの速度で再加熱(2nd Run)して溶融ピークでのΔHmを確認した。以下の式を用いて結晶化度Xcを計算した(100% crystalline PLA ΔHm=93J/g)。
-冷却過程での結晶化度:(冷却過程での発熱ピークの面積、ΔHc)/100% crystalline PLA ΔHm)
-2nd Run結晶化度:(2nd thermogram内の吸熱ピークの面積、ΔHm-cold crystallization発熱ピークの面積、ΔHcc)/100% crystalline PLA ΔHm)×100
前記結果を、下記表1及び2に示し、また、前記DSC測定結果の一部を図2ないし5に示した。一方、下記表1及び2において、各略語の意味は、下記の通りである。
D-SB(D-Sorbitol)、PT(pentaerythritol)、OA(Orotic acid)、L-PA(L-phenylalanine)、PH(phthalhydrazide)
【0044】
【表1】
【表2】
【0045】
前記表1及び2に示しているように、本発明により第1核剤及び第2核剤と共に用いた実施例の場合、少ない含有量でも結晶化温度及び結晶化度が改善されることを確認することができた。
【0046】
これに対し、核剤を用いなかったか(比較例1)、第1核剤だけ用いた場合(比較例2ないし9)、第2核剤だけ用いた場合(比較例10ないし27)には結晶化度が低く、第2核剤を用いるが、第1核剤としてタルクを用いた場合(比較例28ないし36)には結晶化温度が低かった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】