(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】アドオンデバイスを用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを薬物送達デバイスに対応付けるための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61M5/31 520
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577587
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2021066591
(87)【国際公開番号】W WO2022262992
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・アラディングス
(72)【発明者】
【氏名】アダム・モヨ・ハーヴィー-クック
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・オーブリー・プランプトリ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー・チャールズ・ガゼレイ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ビージー
(72)【発明者】
【氏名】アイダン・マイケル・オヘア
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066LL30
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
アドオンデバイス(10)を用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイス(14)によって薬物送達デバイス(12)に対応付けるための方法であって:識別情報(126)を含む薬物送達デバイス(12)を用意する工程と、アドオンデバイス(10)を用意する工程とを含み、アドオンデバイス(10)は、アドオンデバイスが外部コンピューティングデバイスと通信することを可能にする通信手段(100)と、薬物送達デバイスに装着されたときに、そこから用量関連データを取り込んで記憶する手段(102、104、106)とを含み、ここで、アドオンデバイス(10)は、薬物送達デバイス(12)に解放可能に装着されそれと係合するように適用されており、方法はさらに、外部コンピューティングデバイス(14)を用意する工程を含み、外部コンピューティングデバイス(14)は、薬物送達デバイスから識別情報を受信する手段(140、142)と、外部制御デバイスがアドオンデバイス(10)と通信することを可能にする通信手段(144)と、プロセッサ手段(146)と、コンピュータプログラムを含むストレージ手段(148)とを含み、ここで、コンピュータプログラムは:薬物送達デバイス(12)から識別情報を受信する工程と、識別情報に基づいて、薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を取得する工程とを実行するように外部コンピューティングデバイス(14)を構成し、方法はさらに、受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングする工程を含む、方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドオンデバイス(10)を用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイス(14)によって薬物送達デバイス(12)に対応付けるための方法であって:
識別情報(126;126’;126’’)を含む薬物送達デバイス(12)を用意する工程と、
アドオンデバイス(10)を用意する工程と
を含み、アドオンデバイス(10)は、
該アドオンデバイスが外部コンピューティングデバイスと通信することを可能にする通信手段(100)と、
薬物送達デバイスに装着されたときに、そこから用量関連データを取り込んで記憶する手段(102、104、106)と
を含み、
ここで、アドオンデバイス(10)は、薬物送達デバイス(12)に解放可能に装着されそれと係合するように適用されており、
該方法はさらに、
外部コンピューティングデバイス(14)を用意する工程
を含み、外部コンピューティングデバイス(14)は、
薬物送達デバイスから識別情報を受信する手段(140、142)と、
外部制御デバイスがアドオンデバイスと通信することを可能にする通信手段(144)と、
プロセッサ手段(146)と、
コンピュータプログラムを含むストレージ手段(148)と
を含み、ここで、該コンピュータプログラムは:
薬物送達デバイス(12)から識別情報を受信する工程と、
識別情報に基づいて、薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を取得する工程と
を実行するように外部コンピューティングデバイス(14)を構成し、
該方法はさらに、
受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングする工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
識別情報を含む薬物送達デバイス(12)を用意する工程は、識別情報を含む、RFIDタグ(126)および/または視覚コード、特に1次元または2次元のバーコード(126’;126’’)を有する薬物送達デバイス(12)を用意することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外部コンピューティングデバイス(14)は:
RFIDタグリーダ(140);
カメラ(142);
文字入力手段(150);
マイクロフォン(152);
のうちの1つまたはそれ以上を含み、
ここで、薬物送達デバイス(12)から識別情報を受信する工程は:
RFIDタグリーダ(140)を用いて薬物送達デバイス(12)のRFIDタグ(126)からデータ(140’)を読み取り、読み取られたデータ(140’)を処理して識別情報を取得する工程;
カメラ(142)を用いて視覚コード(126’)の画像(142’)を取り込み、取り込まれた画像(142’)を処理して識別情報を取得する工程;
文字入力手段(150)を介して視覚コード(150’)を入力し、入力された視覚コード(150’)を処理して識別情報を取得する工程;
マイクロフォン(152)を介して音声入力(152’)を受信し、受信された音声入力(152’)の音声処理を行って識別情報を取得する工程
のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
識別情報に基づいて、薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を取得する工程は:
薬物送達デバイスに収容された薬物および対応付けられた識別情報のデータセットを含む、ストレージ手段(148)に記憶されたデータベース(148’)から、薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を検索する工程;
薬物送達デバイスに収容された薬物および対応付けられた識別情報のデータセットを含む、外部サーバ(16)に記憶されたデータベース(16’)から、外部コンピューティングデバイス(14)と外部サーバ(16)との間の通信接続(18、18’)を介して、薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を検索する工程;
識別情報から薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を復号する工程;
薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を、識別情報と共におよび/または識別情報の一部として受信する工程
のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングする工程は:
取得された薬物の情報を外部コンピューティングデバイス(14)からアドオンデバイス(10)に伝送し、アドオンデバイス(10)によって、受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングすること;
取り込まれて記憶された用量関連データをアドオンデバイス(10)から外部コンピューティングデバイス(14)に伝送し、外部コンピューティングデバイス(14)によって、受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングすること
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
外部コンピューティングデバイス(14)をアドオンデバイス(10)とペアリングする工程を含み、ここで、取得された薬物の情報を外部コンピューティングデバイス(14)からアドオンデバイス(10)に伝送することは、ペアリングする工程の間に行われ、かつ/または取り込まれて記憶された用量関連データをアドオンデバイス(10)から外部コンピューティングデバイス(14)に伝送することは、ペアリングする工程の間に行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アドオンデバイス(10)と外部コンピューティングデバイス(14)とのペアリングを完了するために、ペアリングする工程は、薬物送達デバイス(12)の識別情報および/または薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の取得された情報を必要とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アドオンデバイス(10)は、薬物送達デバイス(12)に取り付けられるとペアリングモードに切り換わるように適用されている、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムは、薬物送達デバイス(12)の識別情報を受信する工程の間またはその後に、外部コンピューティングデバイス(14)をアドオンデバイス(10)とペアリングする工程を実行するように外部コンピューティングデバイス(14)を構成する、請求項6、7、または8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ペアリングする工程は、アドオンデバイス(10)に記憶された用量関連データおよび/またはアドオンデバイス(10)に記憶された以前のペアリングからのペアリング情報を消去する工程を含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法に従って、アドオンデバイス(10)を用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイス(14)によって薬物送達デバイス(12)に対応付けるためのシステムであって、
薬物送達デバイス(12)と、
アドオンデバイス(10)と、
外部コンピューティングデバイス(14)と
を含み、ここで、
薬物送達デバイス(12)は識別情報(126)を含み、
アドオンデバイス(10)は、
該アドオンデバイス(10)が外部コンピューティングデバイス(14)と通信することを可能にする通信手段(100)と、
薬物送達デバイス(12)に装着されたときに、そこから用量関連データを取り込んで記憶する手段(102、104、106)と
を含み、
ここで、アドオンデバイス(10)は、薬物送達デバイス(12)に解放可能に装着されそれと係合するように適用されており、
外部コンピューティングデバイス(14)は、
薬物送達デバイス(12)の識別情報(126)を受信する手段と、
外部制御デバイス(14)がアドオンデバイス(10)と通信することを可能にする通信手段と、
プロセッサ手段と、
コンピュータプログラムを含むストレージ手段とを含み、ここで、該コンピュータプログラムは、
薬物送達デバイスから識別情報を受信し、
識別情報に基づいて、薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を取得する
ように外部コンピューティングデバイス(14)を構成し、
アドオンデバイス(10)および/または外部コンピューティングデバイス(14)は、受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングするように構成されている、前記システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムと共に使用されるように適用されており、識別情報を含む、RFIDタグ(126)および/または視覚コード(126’;126’’)、特に、1次元または2次元のバーコードを含む、薬物送達デバイス(12)。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムと共に使用されるように適用されている、薬物送達デバイス(12)用のアドオンデバイス(10)であって、
該アドオンデバイスが外部コンピューティングデバイスと通信することを可能にする通信手段(100)と、
薬物送達デバイス(12)に装着されたときに、そこから用量関連データを取り込んで記憶する手段(102、104、106)と
を含み、
ここで、アドオンデバイス(10)は、薬物送達デバイスに解放可能に装着されそれと係合するように適用されている、前記アドオンデバイス。
【請求項14】
通信手段(100)は:
Bluetooth(登録商標)通信モジュール;
RFIDタグ
のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項13に記載のアドオンデバイス(10)。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムと共に使用されるように構成された外部コンピューティングデバイス(14)であって、
薬物送達デバイス(12)の識別情報(126、126’、150’、152’)を受信する手段(140、142、150、152)と、
外部制御デバイス(14)が薬物送達デバイス(12)用のアドオンデバイス(10)と通信することを可能にする通信手段(144)と、
プロセッサ手段(146)と、
コンピュータプログラムを含むストレージ手段(148)とを含み、ここで、該コンピュータプログラムは:
薬物送達デバイス(12)の識別情報(126、126’、150’、152’)を受信する工程と、
識別情報(126、126’、150’、152’)に基づいて、薬物送達デバイス(12)に収容された薬物の情報を取得する工程と
を実行するように外部コンピューティングデバイスを構成する、前記外部コンピューティングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アドオンデバイスを用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを薬物送達デバイスに、特に薬物注射デバイスに対応付けるための方法およびシステムと、そのようなシステムと共に使用されるように適用された薬物送達デバイスと、そのようなシステムと共に使用されるように適用された薬物送達デバイス用のアドオンデバイスと、そのようなシステムと共に使用されるように構成された外部コンピューティングデバイスとに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の送達、特に、薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾患が存在する。そのような注射は、医療従事者または患者自身が利用する注射デバイスを使用することによって行うことができる。
【0003】
特に患者自身が使用する薬物注射デバイスは、使用に関連するデータを測定および記憶するための電子機器を備えることがある。使用関連データは、ワイヤレスリンクまたはワイヤライン接続を介して、スマートフォン、タブレット、もしくはラップトップコンピュータなどの外部デバイスに、またはクラウドに伝送することもできる。たとえば、特許文献1には、医薬品送達デバイス、たとえば、注射ペンまたはウェアラブルポンプが開示されており、それらは、患者への薬の送達に関連するフローセンサから取り込まれたデータをペアリングされた外部デバイスに提供するために外部デバイスとペアリングできる。そのデバイスは、取り込まれたデータを外部デバイスにリアルタイムでまたは遅延して移送する、近接度に基づいた外部デバイスとのペアリングおよび接続のためのBluetooth(登録商標)通信および/または近距離無線通信(NFC)回路を有することができる。
【0004】
また、特許文献2に記載のロギングデバイスなど、薬物送達デバイスの使用をロギングするためのアドオンモジュールが知られており、そのロギングデバイスは、薬物送達デバイスに解放可能に取り付けでき、電子回路構成を含み、その電子回路構成は、ロギングデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられているときに、排出中に排出手段によってリザーバから排出される薬物の用量の量に関連する特性値を取り込むように適用されたセンサ手段と、取り込まれた特性値に基づいて用量の量を判定するように適用されたプロセッサ手段と、少なくとも1つの用量の量を記憶するように適用されたメモリ手段と、判定された用量の量および/または時間の値ならびに警告メッセージを表示するように適用された表示手段と、ロギングデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられているかまたはそれと一体に形成されているときに、キャップが装着位置にあるときのオフ状態と、キャップが取り外されているときのオン状態との間で動作するように適用された切換え手段とを含む。電子回路構成は、たとえばNFCまたはBluetoothによって、記憶されたデータを外部受信機に伝送するように適用された伝送手段を含むことができる。ロギングモジュールと通信するために、スマートフォンが固有の「インスリン日誌」ソフトウェアを備えている。ソフトウェアが起動されてスマートフォンへのデータ移送を開始すると、NFC送信機が固有のコードを伝送し、そのことが付近のロギングモジュールをウェークアップして、そのロギングモジュールが、固有のモジュールを識別する独自のコードを再伝送する。固有のコードが初めて受信される場合に、ユーザはペアリングを承認するように求められ、所与のロギングモジュール、たとえば図示の「Mix30」と対応付けられているはずの所与の薬物をリストから選択するように求められる。代替的に、ロギングモジュールは、固有の1種類の薬物だけを収容する1種類のペンとだけ動作するように設計でき、薬物の種類は、最初のペアリング中に伝送されるか、またはロギングモジュールは、様々な種類のペンを、したがって様々な種類の薬物を識別する能力を備えることができる。
【0005】
特許文献3は、データの生成、収集、および記憶に関係する医用デバイス、より詳細には、確実かつユーザフレンドリな手法で薬物送達用量データを取り込んで整理するためのデバイスおよびシステムに関する。薬物送達デバイスおよびアドオンデバイスの組合せを外部制御デバイスとペアリングする方法が提供されており、その方法は、薬物送達デバイス、アドオンデバイス、および制御デバイスを用意する工程を含む。薬物送達デバイスは、第1の視覚識別子を含む。アドオンデバイスは、アドオンデバイスが外部制御デバイスと通信することを可能にする通信手段と、第2の視覚識別子とを含み、アドオンデバイスは、薬物送達デバイスに解放可能に装着されそれと係合するように適用されており、アドオンデバイスは、薬物送達デバイスに装着されるとそこから用量関連データを取り込むように適用されており、アドオンデバイスは、外部制御デバイスからペアリング承認を受信するように適用されており、その受信によって、アドオンデバイスは、ペアリング解除モードからペアリング済みモードに作動される。制御デバイスは、画像取込み手段と、プロセッサ手段と、第1および第2の視覚識別子の少なくとも1つの所定の組合せに関する情報を含むストレージ手段と、制御デバイスがアドオンデバイスと通信することを可能にする通信手段とを含む。その方法はさらに、薬物送達デバイスにアドオンデバイスを装着する工程と、第1および第2の視覚識別子の両方を含む、薬物送達デバイスに装着されたアドオンデバイスの画像を取り込む工程と、取り込まれた画像を処理して第1および第2の視覚識別子を識別し、取り込まれた識別子が視覚識別子の所定の組合せを表すかどうかを判定する工程と、取り込まれた識別子が所定の組合せを表す場合に、制御デバイスからアドオンデバイスにペアリング承認を伝送し、そうすることで、アドオンデバイスをペアリング解除モードからペアリング済みモードに作動させる工程とを含む。視覚識別子の一方または両方の代わりにNFCタックを使用でき、それに対応して備えられる制御デバイスのNFC機能によってデバイスの一方または両方を識別することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0134305(A1)号
【特許文献2】EP3151880B1
【特許文献3】WO2018/104292A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本開示は、アドオンデバイスを用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイスによって薬物送達デバイスに対応付けるための方法であって:
識別情報を含む薬物送達デバイスを用意する工程と、
アドオンデバイスを用意する工程と
を含み、アドオンデバイスは、
アドオンデバイスが外部コンピューティングデバイスと通信することを可能にする通信手段と、
薬物送達デバイスに装着されたときに、そこから用量関連データを取り込んで記憶する手段と
を含み、
アドオンデバイスは、薬物送達デバイスに解放可能に装着されそれと係合するように適用されており、
本方法はさらに、
外部コンピューティングデバイスを用意する工程
を含み、外部コンピューティングデバイスは、
薬物送達デバイスから識別情報を受信する手段と、
外部制御デバイスがアドオンデバイスと通信することを可能にする通信手段と、
プロセッサ手段と、
コンピュータプログラムを含むストレージ手段と
を含み、コンピュータプログラムは:
薬物送達デバイスから識別情報を受信する工程と、
識別情報に基づいて、薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を取得する工程と
を実行するように外部コンピューティングデバイスを構成し、
本方法はさらに、
受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングする工程
を含む、方法を提供する。
【0008】
本方法は、薬物送達デバイスによって排出された投与量のデータを取り込んで記憶するための、異なる薬物送達デバイスと共に使用されるように構成できるアドオンデバイスの使用を可能にする。アドオンデバイスによって取り込まれそれに記憶された用量関連データは、外部コンピューティングデバイス、特に、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、またはラップトップコンピュータなどのモバイルコンピューティングデバイスを用いて、それぞれの薬物送達デバイスに対応付けることができる。したがって、アドオンデバイスは、RFID(無線周波数認証)もしくはNFC(近距離無線通信)リーダ、または薬物送達デバイスから情報を直接的に取得するための他の手段など、薬物送達デバイスとの連結またはペアリングのための複雑なハードウェアを必要としない。その代わりに、特に、外部コンピューティングデバイスおよび/またはアドオンデバイスが互いとの通信接続を確立しているときに、外部コンピューティングデバイスの処理手段および通信手段を用いて薬物送達デバイスをアドオンデバイスと「連結する」。本方法は、特に、外部コンピューティングデバイスを使用せずに、特に初回の使用のためにある種のペアリングプロセスを行う必要なしに、アドオンデバイスの使用を可能にする。その代わりに、アドオンデバイスは即座に使用でき、ユーザは、スマートフォンまたはモバイルコンピュータなどの外部コンピューティングデバイスの使用を必要としない場合がある。薬物送達デバイスとアドオンデバイスに記憶された用量関連データとの対応付けは、たとえばデータを外部コンピューティングデバイスに伝送しなければならないときだけ行うことができる。
【0009】
特に、識別情報を含む薬物送達デバイスを用意する工程は、識別情報を含む、RFIDタグおよび/または視覚コード、特に1次元または2次元のバーコードを有する薬物送達デバイスを用意することを含むことができる。RFIDタグ、特に、NFCタグは、薬物送達デバイスに関連する記憶されたデータ、特に、薬物送達デバイスに収容された薬物の種類の情報を含むことができる。このような情報は、視覚コードに含むこともできる。比較的にあまり高度でない技術手段を用いて薬物送達デバイスの本体に積層、接着、もしくは印刷されているかまたはそれに組み込まれているRFIDタグおよび視覚コードは、バッテリなどの専用のエネルギー源を必要としない。これは、再使用不能なインスリン注射ペンなど、使い捨ての薬物注射デバイスの場合に特に有用であり、そのような注射ペンは、通常はシリンジを有する薬物カートリッジおよび薬物排出機構だけを含み、電子機器およびエネルギー源を含まない。
【0010】
外部コンピューティングデバイスは:RFIDタグリーダ;カメラ;文字入力手段;マイクロフォン;のうちの1つまたはそれ以上を含むことができ、薬物送達デバイスから識別情報を受信する工程は:
RFIDタグリーダを用いて薬物送達デバイスのRFIDタグからデータを読み取り、読み取られたデータを処理して識別情報を取得する工程;
カメラを用いて視覚コードの画像を取り込み、取り込まれた画像を処理して識別情報を取得する工程;
文字入力手段を介して視覚コードを入力し、入力された視覚コードを処理して識別情報を取得する工程;
マイクロフォンを介して音声入力を受信し、受信された音声入力の音声処理を行って識別情報を取得する工程
のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0011】
識別情報を取得するための画像処理および音声処理は、より多くのコンピューティングリソースを必要とするが、特に、障害のあるユーザにとって快適であり、RFIDタグ読取りも快適であるが、RFIDリーダを備える外部コンピューティングデバイスを必要とする。識別情報を取得するための最も単純な手法は、文字入力手段であるが、他の手段よりも快適さに劣り、よりエラーが起こりやすい場合もある。
【0012】
識別情報に基づいて、薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を取得する工程は:
薬物送達デバイスに収容された薬物および対応付けられた識別情報のデータセットを含む、ストレージ手段に記憶されたデータベースから、薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を検索する工程;
薬物送達デバイスに収容された薬物および対応付けられた識別情報のデータセットを含む、外部サーバに記憶されたデータベースから、外部コンピューティングデバイスと外部サーバとの間の通信接続を介して、薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を検索する工程;
識別情報から薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を復号する工程;
薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を、識別情報と共におよび/または識別情報の一部として受信する工程
のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0013】
外部コンピューティングデバイスは、たとえば、そのストレージにデータベースを含むことができ、そのため、薬物の情報を取得するために別のデバイスにさらに接続する必要がない。そのことは、たとえばスマートフォンまたはタブレットコンピュータの内部ストレージに記憶されるのに十分にデータベースが小さいときに有用な場合がある。しかし、データベースが大き過ぎてスマートフォンまたはタブレットコンピュータの内部ストレージに記憶できないときは、たとえばインターネットを介してアクセス可能な、外部サーバに記憶されたデータベースから情報を検索するほうが有用な場合がある。技術的にあまり複雑ではない手法は、識別情報の薬物の情報をエンコードし、たとえば、識別情報が1次元または2次元のバーコードによって実施されているときに、バーコードソフトウェアデコーダを使用して、その情報を外部コンピューティングデバイスで復号することである。さらに単純な解決策は、薬物情報を識別情報に直接的に埋め込むことであり、そのため、ユーザが薬物情報を読むことができる。これらの実装形態のうちの2つまたはさらに多くを組み合わせて、特に冗長性を提供し、したがって、正確な薬物情報を取得するための安全性を高めることができる。
【0014】
受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングする工程は:取得された薬物の情報を外部コンピューティングデバイスからアドオンデバイスに伝送し、アドオンデバイスによって、受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングすること;取り込まれて記憶された用量関連データをアドオンデバイスから外部コンピューティングデバイスに伝送し、外部コンピューティングデバイスによって、受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングすることのうちの少なくとも1つを含むことができる。したがって、ラベリングは、アドオンデバイスおよび/または外部コンピューティングデバイスによって行うことができる。
【0015】
本方法は、外部コンピューティングデバイスをアドオンデバイスとペアリングする工程を含むことができ、取得された薬物の情報を外部コンピューティングデバイスからアドオンデバイスに伝送することは、ペアリングする工程の間に行うことができ、かつ/または取り込まれて記憶された用量関連データをアドオンデバイスから外部コンピューティングデバイスに伝送することは、ペアリングする工程の間に行われる。たとえば、初めて外部コンピューティングデバイスおよびアドオンデバイスがペアリング工程を行い、アドオンデバイスに記憶された用量関連データを薬物送達デバイスに対応付けることによってアドオンデバイスを薬物送達デバイスと連結するときに、薬物の情報は外部コンピューティングデバイスからアドオンデバイスに伝送できる。
【0016】
アドオンデバイスと外部コンピューティングデバイスとのペアリングを完了するために、ペアリングする工程は、薬物送達デバイスの識別情報および/または薬物送達デバイスに収容された薬物の取得された情報を要求することができる。これは、アドオンデバイスに記憶された用量関連データを、ペアリングされた外部コンピューティングデバイスに薬物の情報なしで伝送できることを避けるために有用な場合がある。
【0017】
アドオンデバイスは、薬物送達デバイスに取り付けられるとペアリングモードに切り換わるように適用できる。たとえば、アドオンデバイスは、薬物送達デバイスに取り付けられたときに、そのことを検出するための何らかの切換え手段を含むことができる。切換え手段によるこのような事象の検出は、アドオンデバイスのペアリングモードへの切換えを引き起こすことができ、そのため、たとえば、初回の使用時に薬物送達デバイスとアドオンデバイスとのペアリングを完了して、アドオンデバイスを切換えデバイスに連結でき、そのため、アドオンデバイスに記憶された用量関連データは、それらを薬物送達デバイスと対応付けるためにラベリングできる。
【0018】
さらに、コンピュータプログラムは、薬物送達デバイスの識別情報を受信する工程の間またはその後に、外部コンピューティングデバイスをアドオンデバイスとペアリングする工程を実行するように外部コンピューティングデバイスを構成することができる。したがって、コンピュータプログラムは、アドオンデバイスと薬物送達デバイスとのペアリングを、ユーザのどのような介入もなく自動的に開始することができる。そのことは、ペアリングのために外部コンピューティングデバイスの設定変更に気を配る必要がないため、本方法の使用をユーザにとってより快適にすることができる。
【0019】
ペアリングする工程は、アドオンデバイスに記憶された用量関連データおよび/またはアドオンデバイスに記憶された以前のペアリングからのペアリング情報を消去する工程を含むことができる。そのことは、アドオンデバイスが1つの薬物送達デバイスにだけ連結できること、およびアドオンデバイスに記憶された用量関連データの管理を単純化できることを保証できる。
【0020】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に開示されている方法に従って、アドオンデバイスを用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイスによって薬物送達デバイスに対応付けるためのシステムであって、
薬物送達デバイスと、
アドオンデバイスと、
外部コンピューティングデバイスと
を含み、
ここで、薬物送達デバイスは識別情報を含み、
アドオンデバイスは、
アドオンデバイスが外部コンピューティングデバイスと通信することを可能にする通信手段と、
薬物送達デバイスに装着されたときに、そこから用量関連データを取り込んで記憶する手段と
を含み、
アドオンデバイスは、薬物送達デバイスに解放可能に装着されそれと係合するように適用されており、
外部コンピューティングデバイスは、
薬物送達デバイスの識別情報を受信する手段と、
外部制御デバイスがアドオンデバイスと通信することを可能にする通信手段と、
プロセッサ手段と、
コンピュータプログラムを含むストレージ手段とを含み、コンピュータプログラムは、
薬物送達デバイスから識別情報を受信し、
識別情報に基づいて、薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を取得する
ように外部コンピューティングデバイスを構成し、
アドオンデバイスおよび/または外部コンピューティングデバイスは、受信された薬物の情報に基づいて、取り込まれて記憶された用量関連データにラベリングするように構成されている、システムを提供する。
【0021】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に開示されているシステムと共に使用されるように適用されており、識別情報を含む、RFIDタグおよび/または視覚コード、特に1次元または2次元のバーコードを含む、薬物送達デバイスを提供する。
【0022】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に開示されているシステムと共に使用されるように適用されている、薬物送達デバイス用のアドオンデバイスであって、
アドオンデバイスが外部コンピューティングデバイスと通信することを可能にする通信手段と、
薬物送達デバイスに装着されたときに、そこから用量関連データを取り込んで記憶する手段とを含み、
ここで、アドオンデバイスは、薬物送達デバイスに解放可能に装着されそれと係合するように適用されている、アドオンデバイスを提供する。
【0023】
アドオンデバイスの通信手段は:Bluetooth(登録商標)通信モジュール;RFIDタグのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0024】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に開示されているシステムと共に使用されるように構成された外部コンピューティングデバイスであって、
薬物送達デバイスの識別情報を受信する手段と、
外部制御デバイスが薬物送達デバイス用のアドオンデバイスと通信することを可能にする通信手段と、
プロセッサ手段と、
コンピュータプログラムを含むストレージ手段とを含み、ここで、コンピュータプログラムは:
薬物送達デバイスの識別情報を受信する工程と、
識別情報に基づいて、薬物送達デバイスに収容された薬物の情報を取得する工程と
を実行するように外部コンピューティングデバイスを構成する、外部コンピューティングデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】識別情報を含む薬物送達デバイスの実施形態を示す。
【
図2】アドオンデバイスを用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイスによって薬物送達デバイスに対応付けるためのシステムの実施形態のブロック図を示す。
【
図3】アドオンデバイスを用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイスとして利用されるスマートフォンによって薬物送達デバイスに対応付けるためのシステムの実施形態を示す。
【
図4】アドオンデバイスを用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを、外部コンピューティングデバイスによって薬物送達デバイスに対応付けるための方法の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、注射デバイス、特にペンの形態の注射デバイスに関して本開示の実施形態を説明する。ただし、本開示は、そのような用途に限定されず、他のタイプの、特にペン以外の別の形状の薬物送達デバイスにも等しく良好に展開できる。
【0027】
図1は、インスリン注射ペンの形状の薬物送達デバイス12を示す。デバイス12は、薬物カートリッジおよび投与量選択送達機構を保持するペン様の形状を有する細長い本体120を含む。本体120の下端には、薬物投与量を排出し、その投与量を患者の身体に注射するためのシリンジ122が設けられている。本体120は、その反対側の上端に、薬物投与量を選択するためのダイヤルノブ(図示せず)および選択された投与量の送達のための注射ノブ(図示せず)を含む。デバイス12のユーザは、本体120の長手方向軸を中心にダイヤルノブを回転させることによって投与量を選択する。選択された投与量は、本体120に組み込まれたディスプレイ124に示される。投与量の選択後に、ユーザは、シリンジ122を介して患者の身体に選択された投与量を排出するために、長手方向軸の方向に注射ノブを押圧することができる。投与量選択送達機構(図示せず)は、本体に収容されており、投与量の選択および排出を制御するために設けられている。投与量選択送達機構は、特に、機械的部材だけからなる。
【0028】
薬物送達デバイスは、薬物送達デバイス12に収容されている薬物の情報、特にインスリン注射ペンに収容されているインスリンの種類を取得するために提供される識別情報を含む。識別情報は、たとえば、
図1に実施形態Cで示すような、特に本体120に埋め込まれたもしくは本体120に積層されたRFIDタグ126、または
図1に実施形態AおよびBで示すような視覚コードを含むことができる。実施形態Aにおいて、識別情報は1次元バーコード126’’を含み、実施形態Bにおいて、識別情報は、QRコードなどの2次元バーコード126’を含む。
【0029】
図1に示されている薬物送達デバイス12のダイヤルノブおよび注射ノブは、アドオンデバイス10によってカバーされており、アドオンデバイス10は、薬物送達デバイス12に解放可能に装着されそれと係合するように、たとえば、本体120の上端でダイヤルノブにクリップ留めされるように適用されている。アドオンデバイス10は、ダイヤルノブの回転を可能にしながら、注射ノブの押圧が、選択された投与量の排出を可能にするように、ダイヤルノブに固定できる。
【0030】
アドオンデバイス10は、特に、再使用可能なモジュールであり、ペンから送達された用量を記録する目的で、適切に構成された注射ペンに取り付けられるように提供することができる。注射ペンは、様々な薬物を異なる用量速度で、たとえば、投与量選択機構の1クリック当たりに複数のインスリン単位で送達するように構成できる。したがって、アドオンデバイス10は、選択および排出された投与量を検出するために、用量関連データを取り込む手段、たとえば、光学式検出手段または他のセンサ手段を含む。
【0031】
アドオンデバイス10を用いた用量関連データの取込みおよび記憶は、アドオンデバイス10が薬物送達デバイス12に装着されそれと係合しているときにのみ行うことができる。たとえば、アドオンデバイス10は、スイッチ(図示せず)を含むことができ、そのスイッチは、アドオンデバイス10が薬物送達デバイス12と係合したときに起動される。スイッチの起動は、たとえば、用量関連データを取り込んで記憶するためのアドオンデバイスの内部電子機器に電源を入れることができる。
【0032】
アドオンデバイス10は、様々な薬物送達デバイス12と共に使用されるように設けることができ、したがって、アドオンデバイス10を用いて取り込まれそれに記憶された用量を、外部コンピューティングデバイスによって薬物送達デバイス12に対応付けることが提供される。ここで、
図2に示されているシステムのブロック図を参照しながら、対応付けについて説明する。
【0033】
アドオンデバイス10は、薬物送達デバイス12を用いて選択および排出された投与量を取り込む検出手段104を含み、薬物送達デバイス12にはアドオンデバイス10が装着されそれと係合している。上記で言及したように、検出手段104は、光学式検出手段を含むことができる。たとえば、アドオンデバイスは、1つまたはそれ以上のLED(発光ダイオード)および1つまたはそれ以上のフォトダイオードを含み、その1つまたはそれ以上のLEDによって放出された放射光の、薬物送達デバイス12の薬物選択機構の光学式エンコード手段からの反射を、1つまたはそれ以上のフォトダイオードを介して検出することができる。ダイヤルノブの回転によって投与量が選択されるときに、光学式エンコード手段も回転でき、したがって、その回転によって、選択された投与量に関連する固有の反射パターンを生成できる。この固有の反射パターンは、1つまたはそれ以上のフォトダイオードによって検出でき、選択された投与量を表す電気信号に変換できる。次いで、アドオンデバイス10のクリック検出器は、注射ノブの押圧および選択された投与量の排出を検出することができる。次いで、取り込まれ、選択され、排出された投与量は、用量関連データとして、アドオンデバイスの内部メモリにデジタル形式で記憶できる。
【0034】
アドオンデバイス10はさらに、アドオンデバイス10の動作を制御するためのコントローラ102を含む。コントローラ102は、たとえば、アドオンデバイス10の内部ストレージ106に取り込まれ、選択され、排出された投与量を処理するために必要な機能を行う専用ファームウェアで構成されたマイクロコントローラでもよい。
【0035】
さらに、アドオンデバイス10は、通信手段100、たとえば、Bluetooth(登録商標)規格、WiFi(商標)規格、またはRFID規格、特にNFC通信規格を介してワイヤレス通信するためのワイヤレス通信モジュールを含む。通信手段100は、コントローラ102に接続されており、特に、以下でより詳細に説明するように、内部ストレージ106に記憶されたデータを外部コンピューティングデバイス14に伝送するために、および/またはコントローラ102を用いてさらに処理するために外部コンピューティングデバイス14からデータを受信するために設けられている。
【0036】
手段100から106を含むアドオンデバイス10の電子機器は、アドオンデバイス10が薬物送達デバイス12に装着されそれと係合されているときにだけ、たとえば、薬物送達デバイス12の投与量の選択のために、ダイヤルノブにクリップ留めされたアドオンデバイス10を回転させることによって投与量が選択されるときにだけ、電力を受けることができる。ボタン電池、たとえばタイプCR2032のボタン電池を、アドオンデバイス10の電子機器のための電源として提供できる。
【0037】
選択および排出された投与量は、アドオンデバイス10の電子機器によって取り込まれ、アドオンデバイス10のストレージ106の内部に用量関連データとして記憶される。用量関連データは、取り込まれ、選択され、排出された投与量ごとに、日付スタンプおよびタイムスタンプを含むこともできる専用のデータセットを含むことができる。
【0038】
記憶された用量関連データは、薬物送達デバイス12に収容された薬物と、外部コンピューティングデバイス14によって対応付けることができ、外部コンピューティングデバイス14は、たとえば、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、もしくはデスクトップコンピュータ、またはスマートウォッチでもよい。
【0039】
外部コンピューティングデバイス14は、薬物送達デバイス12から識別情報126、126’を受信する手段140、142、150、152(以下では概して識別情報受信手段と称される)を含む。
【0040】
識別情報受信手段は、様々な実装形態を含むことができる。たとえば、それらは、薬物送達デバイス12のRFIDまたはNFCタグ126からデータ140’を読み取るための、RFIDリーダ、特に、NFCリーダ140を含むことができる。識別情報受信手段は、視覚コードの、たとえば、薬物送達デバイス12の本体120に印刷された2次元バーコード126’の画像142’を取り込むためのカメラ142を含むこともできる。別の実装形態において、識別情報受信手段は、患者が手動で入れた識別情報を含む視覚コードの文字入力150’を受信するためのキーボードなど、文字入力手段150を含むことができる。識別情報受信手段は、さらに別の実装形態において、患者からの音声入力152’を受信するためのマイクロフォン152を含むことができ、音声入力152’は、識別情報を含む話し言葉を含むことができる。
【0041】
外部コンピューティングデバイス14は、プロセッサまたはマイクロコントローラなどのプロセッサ手段146を含み、それらは、コンピュータプログラムによって、たとえば、アドオンデバイス10を用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを薬物送達デバイス12に対応付けるように外部コンピューティングデバイス14を構成するための、外部コンピューティングデバイス14にダウンロードおよびインストールされたアプリによって構成される。
【0042】
コンピュータプログラムは、外部コンピューティングデバイス14の内部ストレージ手段148、たとえば、スマートフォンのフラッシュメモリに記憶される。ストレージ手段148は、薬物の情報、特に薬物と対応付けられる薬物送達デバイスの識別情報の対応付けを含むデータベース148’を含むこともできる。
【0043】
外部コンピューティングデバイス14は、通信手段144、たとえば、Bluetooth(登録商標)規格、WiFi(商標)規格、またはRFID規格、特にNFC通信規格を介してワイヤレス通信するためのワイヤレス通信モジュールを含む。通信手段144は、特に、アドオンデバイス10から、そのストレージ106に記憶されたデータを受信するように設けられる。
【0044】
外部コンピューティングデバイス14はさらに、ワイドエリアネットワーク(WAN)、たとえば、インターネット18’を介して、薬物送達デバイスに収納された薬物の情報を記憶するデータベース16’のホストである外部サーバ16との通信接続18を確立する通信手段154を含むことができる。データベース16’は、たとえば、デバイスに収容された薬物を識別するために、薬物送達デバイスの製造者がホストでもよい。データベース16’は、薬物送達デバイスおよびその薬物内容の検索を有効にするために、たとえば、製造者によって生産される薬物送達デバイスのコードおよびそれらのコードに割り当てられた薬物を含むことができる。
【0045】
データベース16’は、データベース148’および特により広範なデータベースを含むことができ、すなわち、製造者の薬物送達デバイスに収容された薬物の情報のスーパーセットを含むことができる。たとえば、データベース16’は、生産された薬物送達デバイスすべての情報を含むことができ、データベース148’は、それらのデバイスのサブセットだけを、たとえば、一定の種類の薬物送達デバイスの情報だけを含むことができる。
【0046】
図3は、外部コンピューティングデバイスとしてのスマートフォン14’を用いて
図2のシステムの実装形態を示す。スマートフォン14’は:カメラ;NFCリーダ;Bluetooth(登録商標)通信モジュールのうちの少なくとも1つを備えることができる。スマートフォン14’のディスプレイ140の上部に表示されたステータスバー142は、NFC、Bluetooth(登録商標)、WiFi(商標)、セル型無線など、スマートフォンの起動されている通信手段を示す。スマートフォン14’にはアプリがインストールされており、アプリは、アドオンデバイス10を用いて取り込まれそれに記憶された用量関連データを薬物送達デバイス12に対応付けるための方法を実行するようにスマートフォン14’を構成する。アプリは、ディスプレイ140に、操作を行うための異なるタッチボタン144、146およびステータスメッセージ146を示す。
【0047】
ここで、
図4に示されているフローチャートを参照しながら、
図3に示されているシステムの動作を説明する。アドオンデバイス10が薬物送達デバイス12に取り付けられそれと係合されると、薬物送達デバイス12を用いた投与量の選択および排出は、アドオンデバイス10によって検出され、内部に記憶される(
図4の矢印200)。これは、薬物送達デバイス12および/またはスマートフォン14’とアドオンデバイス10とのどのような種類のペアリングも必要としない。したがって、内部に記憶された用量関連データは、初回の使用後に薬物送達デバイス12と、特に薬物送達デバイス12に収容された薬物と対応付けられない。したがって、異なる薬物送達デバイス12とのアドオンデバイス10の使用は、簡単に可能であり、初回の使用にはどのような専用のハードウェアおよび/またはソフトウェアも必要としない。
【0048】
アドオンデバイス10に記憶された用量関連データを対応付けるためには、特にアドオンデバイス10および薬物送達デバイス12の対応付けのために提供されるアプリがスマートフォン14’上で立ち上げられる。次いで、ユーザは、薬物送達デバイス12から識別情報を受信するためにボタン144にタッチすることができる。
【0049】
識別情報は、たとえば、パッシブなNFCタグ126に電力を供給することで、NFCタグ126に記憶された薬物送達デバイス12の識別情報を読み取るためのスマートフォン14’のNFCリーダを起動し(
図4の矢印202)、それに応答して、NFCタグ126の内部ストレージに記憶されたデータをスマートフォン14’に伝送する(
図4の矢印204)ことによって、NFCを介して受信できる。
【0050】
識別情報は、たとえば、薬物送達デバイス12の本体120に印刷されたバーコード(
図1Aおよび
図1B参照)の写真を撮り、取り込まれたバーコードの画像を処理して識別情報を取得することによって、受信することもできる。
【0051】
さらに、たとえば薬物送達デバイスにもしくは薬物送達デバイスに付属の説明書に印刷された視覚コードを入力することによって、スマートフォン14’のディスプレイ140に示されたソフトウェアによって生成されたキーボードなどの文字入力手段を介して、またはスマートフォン14’のマイクロフォンを介して受信された音声入力の音声処理によって、識別情報を受信できる可能性がある。
【0052】
次いで、アプリは、たとえば、スマートフォンのストレージ148に記憶された内部データベース148’からまたは通信手段154によって確立されるWAN接続18を介して外部サーバ16がホストの外部データベース16’から受信された識別情報に基づいて、薬物送達デバイス12に収容された薬物の情報を検索することができる。検索された薬物情報は、たとえば、ディスプレイ140上のステータスメッセージを用いて示すことができる。薬物情報は、たとえば、エンコードされた形式でまたは識別情報の一部として、受信された識別情報に含むこともできる。
【0053】
次に、ユーザは、アプリによってスマートフォンのディスプレイ140に示されたボタン146をタッチすることによって、アドオンデバイス10とスマートフォン14’とのペアリング工程またはプロセスを開始することができる。ペアリングプロセスは、薬物送達デバイス12からの識別情報を読み取った後にユーザのどのような介入もなく自動的に開始することもできる。ペアリングプロセスの完了は、薬物送達デバイス12からの識別情報および/または取得された薬物の情報を必要としうる。たとえば、薬物送達デバイス12から識別情報が受信されなかったせいでおよび/または薬物の情報が検索できなかったせいで、利用できる識別情報および/または薬物情報がないときには、ペアリングプロセスは、たとえばアプリによって完了することができない。
【0054】
ペアリングプロセスは、スマートフォン14’のBluetooth(登録商標)モジュールを起動し、アドオンデバイス10に通信リクエストを送信し(
図4の矢印206)、それに応答して、スマートフォン14’とのBluetooth(登録商標)通信接続を確立すること(
図4の矢印208)を含むことができる。次いで、Bluetooth(登録商標)通信接続が確立された後に、スマートフォン14’は、スマートフォン14’によって以前に検索された薬物情報を、アドオンデバイス10に伝送すること(
図4の矢印210)ができ、次いで、アドオンデバイス10がその情報を用いることで、受信された薬物情報によって内部に記憶された用量関連データにラベリングする。
【0055】
代替的に、ペアリングプロセスは、スマートフォン14’のNFCリーダ-ライタモジュールを起動し、薬物情報を含むアドオンデバイス10に通信リクエストを送信すること(
図4の矢印206)を含むことができる。アドオンデバイス10のNFC回路構成は、スマートフォン14’のNFCリーダ-ライタモジュールによって生成される電磁場によって電力を受けることができる。スマートフォン14’によって以前に検索された薬物情報は、さらなる書込みリクエストを用いてアドオンデバイス10に伝送できる。アドオンデバイス10のNFC回路構成は、そのラベルに応答して、受信された薬物情報と共に用量関連データを内部に記憶することができる。これは、受信された書込みリクエストに応答して伝送されたそれぞれのリプライメッセージによって確認できる。
【0056】
代替的または追加的に、ラベリングは、スマートフォン14’によって行うこともでき、これには、アドオンデバイス10とスマートフォン14’との間の通信接続を確立した後に、記憶された用量関連データがアドオンデバイス10からスマートフォン14’に伝送される必要がある。スマートフォン14’は、取り込まれた用量関連データをアドオンデバイス10から受信した後に、それらのデータにラベリングでき、それらを内部に記憶するかおよび/またはラベリングされたデータをアドオンデバイス10に伝送して戻すことができ、次いで、アドオンデバイス10は、以前に伝送された、ラベリングされていない記憶された用量関連データを上書きすることによって、受信されラベリングされたデータを記憶できる。
【0057】
アドオンデバイス10によるラベリングは、受信された薬物情報を用量関連データと一緒にアドオンデバイス10の内部ストレージに記憶することを含むことができる。したがって、アドオンデバイス10に記憶された用量関連データは、薬物送達デバイス12と対応付けられる。ラベリングの完了は、スマートフォン14’のディスプレイ140上のそれぞれのステータスメッセージによって表示できる。ラベリングは、ペアリングプロセス中にまたはペアリングプロセスのためにだけ必要になる場合がある。その後、たとえば、スマートフォンのディスプレイ140にそれらを表示するかまたはたとえば外部サーバ16のユーザアカウントにそれらを記憶するために、用量関連データをアドオンデバイス10からスマートフォン14’に伝送しなければならないときは、アドオンデバイス10に記憶された用量関連データが以前のペアリングプロセス中にすでにラベリングされているため、さらなるペアリングプロセスは必要でない場合がある。
【0058】
アドオンデバイス10は、薬物送達デバイス12に取り付けたときおよび/またはそこから取り外したときに、ペアリングモードに切り換えられるように適用することもできる。したがって、異なる薬物送達デバイスによるアドオンデバイス10の変化は、アドオンデバイス10のペアリングモードへの切換えを引き起こすことができ、そのため、薬物送達デバイスが変更されたときにそのことをスマートフォンが認識できる。そのことは、たとえばBluetooth(登録商標)モジュールを備えるアドオンデバイス10のエネルギー消費を削減することもできる。Bluetooth(登録商標)モジュールは、取り付けたときまたは取り外したときにだけ電力を受けることができる。そのことは、たとえば、アドオンデバイス10が取り付けられたときに起動できる、アドオンデバイス10に組み込まれた何らかの切換え手段によって実現でき、切換え手段が起動されると、Bluetooth(登録商標)モジュールは、一定の時間に電力を受けることができ、ペアリングモードに切り換えでき、内部に記憶された用量関連データのラベリングは、スマートフォン14’などの外部コンピューティングデバイスによって実現できる。
【0059】
上記に記載されているペアリングは、薬物送達デバイス12の識別情報の受信中にすでに実行できている。たとえば、ペアリングは、スマートフォン14’がNFCタグ126からの識別情報を読み取るように構成されると開始できる。そのことは、たとえば、識別情報の受信中にアドオンデバイス10のBluetooth(登録商標)モジュールまたはNFCリーダ-ライタモジュールをすでに起動できていることを意味する。
【0060】
最後に、ペアリングは、たとえば、別の薬物送達デバイスによるアドオンデバイスの以前の使用から、アドオンデバイスに記憶された用量関連データを消去する工程を含むこともできる。したがって、ペアリングは、新たな薬物送達デバイスと共に新たに使用するために用意する場合には、アドオンデバイスのある種のリセットを含む。代替的または追加的に、アドオンデバイスに記憶されたペアリングは、新たなペアリングによって消去できる。これらの消去は、単回の薬物送達デバイスと共に使用するように提供されたアドオンデバイスを用いてのみ使用できる。アドオンデバイスをいくつかの薬物送達デバイスと共に使用しなければならないときは、異なる薬物送達デバイスから取り込まれたいくつかのペアリングおよび用量関連データを記憶し、それらの異なる用量関連データを別々に記憶するように構成できる。
【0061】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0062】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0063】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0064】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0065】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0066】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0067】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0068】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0069】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0070】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0071】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0072】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0073】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0074】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0075】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0076】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0077】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0078】
本明細書に記載されているAPIの各種成分、処方、装置、方法、システム、および実施形態の修正(追加および/または削除)は、このような修正およびそのあらゆる均等物を包含する本発明の全範囲および精神から逸脱することなく行うことができることを、当業者なら理解するであろう。
【国際調査報告】