IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特表2024-525233ポリフェニレンスルフィドを含む耐高温性を有する熱可塑性成形組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ポリフェニレンスルフィドを含む耐高温性を有する熱可塑性成形組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/06 20060101AFI20240703BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20240703BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240703BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08L81/06
C08L81/02
C08K3/013
C08G65/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024502068
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022067781
(87)【国際公開番号】W WO2023285136
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21186096.0
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム シュトラオホ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マレツコ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002CL064
4J002CN01Y
4J002CN03W
4J002CN03X
4J002DA016
4J002DE237
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DL006
4J002DM006
4J002FA044
4J002FA046
4J005AA24
4J005BA00
(57)【要約】
本発明は、成分として、少なくとも1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)及び少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状のフィラー及び少なくとも1種のポリフェニレンスルフィドを含む熱可塑性成形組成物に関する。本発明はさらに、該熱可塑性成形組成物を用いる成形品を製造する方法及び本方法により得られる成形品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形組成物であって、成分として、
(I)14~80重量%の、少なくとも1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)、
(II)1~10重量%の、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)であって、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含むスルホン化された繰返し単位を、前記熱可塑性成形組成物中に含まれる前記の少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の全量を基準として1~7.5mol%有する、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)、
(III)4~70重量%の、少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラー、
(IV)15~60重量%の、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド
を含み、
前記重量%値はそれぞれ、前記熱可塑性成形組成物の全重量を基準としている、前記熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
成分(IV)が、一般式-Ar-S-[式中、Arは、炭素原子6~18個を有するアリーレン基である]の繰返し単位30~100重量%から構成される少なくとも1種のポリフェニレンスルフィドである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
成分(IV)がポリ(1,4-フェニレンスルフィド)である、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
成分(I)が、成分として、
(IA1)少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン
(IB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物、
(IC)少なくとも1種の炭酸塩化合物、
(ID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤
を含む反応混合物(RGI)を変換する工程を含む方法により製造される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
成分(II)が、成分として、反応混合物(RGII)であって、
(IIA1)前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、90~99mol%の、少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン、
(IIA2)前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、1~10mol%の、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含む少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホン、
(IIB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物、
(IIC)少なくとも1種の炭酸塩化合物、
(IID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤
を含む、反応混合物(RGII)を変換する工程を含む方法により製造される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
成分(IA1)が、前記反応混合物(RGI)中に含まれる成分(IA1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される1種以上の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む、請求項4又は5に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
成分(IIA1)が、前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される1種以上の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む、請求項5又は6に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項8】
成分(IIA2)が、前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA2)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、ジスルホン化4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及びジスルホン化4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される1種以上のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む、請求項5から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項9】
成分(IB1)が、前記反応混合物(RGI)中に含まれる成分(IB1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシビフェニル及びビスフェノールAからなる群から選択される1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を含む、請求項4から8までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項10】
成分(IIB1)が、前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIB1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシビフェニル及びビスフェノールAからなる群から選択される1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を含む、請求項5から9までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項11】
成分(III)が、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、アラミド繊維、及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種の繊維状フィラー及び/又は非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、粉末状石英、雲母、粘土、白雲母、黒雲母、スゾライト、スズマレタイト、タルク、クロライト、金雲母、長石、ウォラストナイト及びカオリンからなる群から選択される少なくとも1種の粒子状フィラーである、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項12】
成分(II)において、Yがカチオン等価体である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物を使用する、成形品を製造する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得られた成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分として、少なくとも1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)と、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)と、少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラーと、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィドとを含む、熱可塑性成形組成物に関する。本発明はさらに、該熱可塑性成形組成物を使用して成形品を製造する方法及びこの方法により得られる成形品に関する。
【0002】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、高性能熱可塑性プラスチックであって、高い耐熱性、良好な機械的性質及び固有の難燃性を特徴とするものである(E.M. Koch, H.-M. Walter, Kunststoffe 80 (1990) 1146;E. Doering, Kunststoffe 80, (1990) 1149,N. Inchaurondo-Nehm, Kunststoffe 98, (2008) 190)。
【0003】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、とりわけ、塩がそのジヒドロキシ成分及び水酸化物から最初に形成される水酸化物法によるか、又は炭酸塩法によるかのいずれかで形成することができる。
【0004】
該水酸化物法によるポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの形成に関する一般情報は、とりわけ、R.N. Johnson et. al., J. Polym. Sci. A-1 5 (1967) 2375に見出されるのに対し、該炭酸塩法は、J.E. McGrath et. al., Polymer 25 (1984) 1827に記載されている。
【0005】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを、芳香族ビスハロゲン化合物及び芳香族ビスフェノール又はそれらの塩から、非プロトン性溶剤中で1種以上のアルカリ金属又はアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩の存在下で形成する方法は、当業者に公知であり、かつ例えば、欧州特許出願公開第297363号明細書(EP-A 297 363)及び欧州特許出願公開第135130号明細書(EP-A 135 130)に記載されている。
【0006】
高性能熱可塑性プラスチック、例えばポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、高い反応温度で極性非プロトン性溶剤、例えばDMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、スルホラン、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びNMP(N-メチルピロリドン)中で典型的に実施される重縮合反応により形成される。
【0007】
挑戦的な用途のためには、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、繊維状又は粒子状フィラー、特にガラス繊維で強化される。これは通常、剛性及び強さにおける著しい増加をもたらすが、しかし、該繊維状又は粒子状フィラーとそのポリマーマトリックスとの弱い相互作用のために、そのような熱可塑性コンパウンドの靱性は限定される。ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを繊維状又は粒子状フィラーへのより良好な付着のために官能化する幾つかのアプローチが、当該技術分野において公知である。
【0008】
欧州特許出願公開第855430号明細書(EP 855 430 A1)には、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーと繊維状又は粒子状フィラーとの間の相溶化剤としての、カルボン酸基を有するポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの使用が記載されているのに対し、欧州特許出願公開第2576676号明細書(EP 257 6676 A1)には、繊維又はフィラー強化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーコンパウンドの性能を改善するための添加剤としてのヒドロキシル末端基を有するポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの使用が教示されている。
【0009】
該ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの高いガラス転移温度のために、そのような熱可塑性コンパウンドの加工中の温度要件は、かなり要求が厳しい。しかしまた、それらの使用中に、これらの物は、優れた熱安定性を有することを必要とする。改善された機械的性質及び良好な加工安定性を有する熱可塑性成形組成物及びこれらの熱可塑性成形組成物から製造された成形品の需要が依然としてある。
【0010】
そのため、本発明の課題は、従来技術の欠点を保持しないか又は低減した形でのみ保持する熱可塑性成形組成物を提供することである。該熱可塑性成形組成物は、製造しやすいべきである。さらに、該熱可塑性成形組成物は、成形品の製造に好適であるべきである。
【0011】
この課題は、熱可塑性成形組成物であって、成分として、
(I)14~80重量%の、少なくとも1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)、
(II)1~10重量%の、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)であって、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含むスルホン化された繰返し単位を、該熱可塑性成形組成物中に含まれる前記の少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の全量を基準として1~7.5mol%有する、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)、
(III)4~70重量%の、少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラー、
(IV)15~60重量%の、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド
を含む熱可塑性成形組成物により達成され、ここで、その重量%値はそれぞれ、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としている。
【0012】
本発明による熱可塑性成形組成物が、耐高温性及び良好な加工性を示すことが驚くべきことに見出された。さらに、これらの熱可塑性成形組成物から製造される成形品は、優れた熱安定性、良好な機械的性質、良好な溶融安定性、及び熱老化後の改善された外観を示す。さらに、これらの熱可塑性成形組成物から製造される成形品は、アニーリング後の良好な引張特性を示す。さらに、これらの熱可塑性成形組成物から製造される成形品は、驚くべきことに、作動液、例えばSkydrolに対して安定である。
【0013】
本発明は、以下に、より詳細に記載される。
【0014】
成分(I)
該熱可塑性成形組成物は、成分(I)として、少なくとも1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む。この場合に用語「少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンポリマー(P)」及び「成分(I)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0015】
該熱可塑性成形組成物は、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準として、14~80重量%の成分(I)を含む。
【0016】
用語「少なくとも1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)」はこの場合に、正確に1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)並びに2種以上の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の混合物を意味すると理解される。
【0017】
本発明に関連して「非スルホン化」は、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)中に含まれる芳香族ジハロゲンスルホンのスルホン化から生じる基を含まないことを意味する。該スルホン化の方法は当業者に公知である。特に、本発明に関連して「非スルホン化」は、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が、-SOX基[ここで、Xは、OH及び1個のカチオン等価体と組み合わせたOからなる群から選択される]を全く含まないことを意味する。
【0018】
本発明に関連して「1個のカチオン等価体」は、1の陽電荷の1個のカチオン又は2以上の陽電荷を有するカチオンの1個の電荷等価体、例えばLi、Na、K、Mg2+、Ca2+又はNH を意味する。
【0019】
好ましい実施態様において、18~72.5重量%、より好ましくは20~65.5重量%及び最も好ましくは25~58重量%の成分(I)を含む該熱可塑性成形組成物は、それぞれ、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としている。
【0020】
成分(I)の製造方法は、当業者に公知である。好ましい実施態様において、成分(I)は、成分として、(IA1)少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンと、(IB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物と、(IC)少なくとも1種の炭酸塩化合物と、(ID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤とを含む反応混合物(RGI)を変換する工程を含む方法により製造される。
【0021】
そのため、本発明の別の対象は、熱可塑性成形組成物であって、成分(I)が、成分として、
(IA1)少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン
(IB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物、
(IC)少なくとも1種の炭酸塩化合物、
(ID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤
を含む反応混合物(RGI)を変換する工程を含む方法により製造される。
【0022】
反応混合物(RGI
好ましくは、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造は、工程I)として、上記の成分(IA1)、(IB1)、(IC)及び(ID)を含む反応混合物(RGI)を変換することを含む。
【0023】
該成分(IA1)及び(IB1)は、重縮合反応に関与する。
【0024】
成分(ID)は溶剤として作用し、かつ成分(IC)は塩基として作用して、該縮合反応中に成分(IB1)を脱プロトン化する。
【0025】
反応混合物(RGI)は、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を製造する方法において使用される混合物を意味すると理解される。そのため、この場合に、該反応混合物(RGI)に関して示された全ての詳細は、該重縮合前に存在する混合物に関する。該重縮合は、該反応混合物(RGI)が、成分(IA1)及び(IB1)の重縮合により反応して、目的生成物である、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を得る方法中に行われる。該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)目的生成物を含む、該重縮合後に得られる混合物は、生成物混合物(PGI)とも呼ばれる。該生成物混合物(PGI)は通常、さらに、前記の少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤(成分(ID))及びハロゲン化物化合物を含む。該ハロゲン化物化合物は、該反応混合物(RGI)の変換中に形成される。該変換中に最初に、成分(IC)は成分(IB1)と反応して、成分(IB1)を脱プロトン化する。脱プロトン化された成分(IB1)はついで、成分(IA1)と反応し、ここで、該ハロゲン化物化合物が形成される。この方法は当業者に公知である。
【0026】
該反応混合物(RGI)の成分は、好ましくは同時に反応される。前記の個々の成分は、上流工程において混合され、引き続き反応されてよい。前記の個々の成分を、これらが混合され、ついで反応される反応器中へ供給することも可能である。
【0027】
本発明による方法において、該反応混合物(RGI)の前記の個々の成分は、好ましくは工程I)において好ましくは同時に反応される。この反応は、好ましくは1段階において実施される。これは、成分(IB1)の脱プロトン化並びに成分(IA1)と(IB1)との間の縮合反応が、中間生成物、例えば成分(IB1)の脱プロトン化された種を単離せずに、唯一の反応段階において行われることを意味する。
【0028】
工程I)による方法は、好ましくはいわゆる「炭酸塩法」により実施される。該方法は、好ましくはいわゆる「水酸化物法」により実施されない。これは、本発明による方法が、フェノレートアニオンの単離を伴う2段階において実施されないことを意味する。そのため、好ましい実施態様において、該反応混合物(RGI)は、本質的に水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム不含である。より好ましくは、該反応混合物(RGI)は、本質的にアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物不含である。
【0029】
用語「本質的に…不含」はこの場合に、該反応混合物(RGI)が、該反応混合物(RGI)の全重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満の、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、好ましくはアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物を含むことを意味すると理解される。
【0030】
該反応混合物(RGI)が、トルエン又はモノクロロベンゼンを含まないことがさらにより好ましい。該反応混合物(RGI)が、水とアゼオトロープを形成する物質を全く含まないことが特に好ましい。
【0031】
成分(IA1)及び成分(IB1)の比は、原則的に、塩化水素の理論的な脱離を伴い進行する重縮合反応の化学量論から得て、かつ当業者により公知の方法において確立される。
【0032】
好ましくは、成分(IA1)に由来するハロゲン末端基の、成分(IB1)に由来するフェノール性末端基に対する比は、出発化合物としての成分(IA1)に対して成分(IB1)の過剰量を制御して確立することにより調整される。
【0033】
より好ましくは、成分(IB1)の、成分(IA1)に対するモル比は、0.96~1.08、殊に0.98~1.06、最も好ましくは0.985~1.05である。
【0034】
好ましくは、該重縮合反応における変換率は、少なくとも0.9である。
【0035】
該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造のための方法工程I)は、いわゆる「炭酸塩法」の条件下で典型的に実施される。これは、該反応混合物(RGI)が、いわゆる「炭酸塩法」の条件下で反応されることを意味する。該重縮合反応は、一般に80~250℃の範囲内、好ましくは100~220℃の範囲内の温度で実施される。該温度の上限は、標準圧力(1013.25mbar)での前記の少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤(成分(ID))の沸点により決定される。該反応は、一般に標準圧力で実施される。該反応は、好ましくは0.5~12hの時間間隔にわたって、特に1~10hの範囲内で実施される。
【0036】
該生成物混合物(PGI)中の、該方法において得られた非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の単離は、例えば、水又は水と他の溶剤との混合物中での該生成物混合物(PGI)の沈殿により、実施されてよい。沈殿した非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を、引き続き、水で抽出し、ついで乾燥させることができる。本発明の一実施態様において、その沈殿物を、酸性媒体中に吸収させることもできる。好適な酸は、例えば有機酸又は無機酸、例えばカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸又はクエン酸及び鉱酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸である。
【0037】
該ハロゲン化物化合物は、工程I)後に該生成物混合物(PGI)から除去することができる。該ハロゲン化物化合物は、当該技術分野において一般に公知の方法、例えばろ過、遠心分離、デカンテーション等により除去することができる。
【0038】
そのため、本発明は、該方法が、
II)工程I)において得られた生成物混合物(PGI)をろ過、遠心分離又はデカンテーションする
工程をさらに含む方法も提供する。
【0039】
該重縮合後に、好ましい実施態様において、脂肪族有機ハロゲン化合物での変換が実施される。それにより、その反応性ヒドロキシル基は末端キャップされ、かつ該ポリマーはさらに安定化される。脂肪族有機ハロゲン化合物での変換は、該ろ過の前又は後に実施することができる。
【0040】
好ましい脂肪族有機ハロゲン化合物は、炭素原子1~10個を有する線状又は分岐状アルキル基を有するハロゲン化アルキル、特に塩化アルキル、特に塩化第一級アルキル、特に好ましくはハロゲン化メチル、特に塩化メチルである。
【0041】
該脂肪族有機ハロゲン化合物との反応は好ましくは、90℃~160℃、特に100℃~150℃の温度で実施される。その時間は、極めて多様であってよく、かつ通常少なくとも5分、特に少なくとも15分である。該反応時間は、好ましくは15分~8時間、特に30分~4時間である。
【0042】
多様な方法が、該脂肪族有機ハロゲン化合物の添加に使用することができる。該脂肪族有機ハロゲン化合物の添加される量はさらに、化学量論的であってよいか又は過剰量であってよく、ここで、該過剰量は、例として5倍の過剰量までであってよい。好ましい一実施態様において、該脂肪族有機ハロゲン化合物は、連続的に、特にガス流の形での連続的な導入により、添加される。
【0043】
成分(IA1)
該反応混合物(RGI)は、少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを成分(IA1)として含む。
【0044】
用語「少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン」はこの場合に、正確に1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン並びに2種以上の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンの混合物を意味すると理解される。この場合に用語「少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン」及び「成分(IA1)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0045】
前記の少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン(成分(IA1))は、好ましくは少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンジフェニルスルホンである。
【0046】
本発明に関連して「非スルホン化」は、該芳香族ジハロゲンスルホンが、該芳香族ジハロゲンスルホンのスルホン化から生じる基を含まないことを意味する。該スルホン化の方法は当業者に公知である。特に、本発明に関連して「非スルホン化」は、該芳香族ジハロゲンスルホンが、-SOX基[式中、Xは、OH及び1個のカチオン等価体と組み合わせたOからなる群から選択される]を全く含まないことを意味する。
【0047】
「1個のカチオン等価体」は本発明に関連して、1の陽電荷の1個のカチオン又は2以上の陽電荷を有するカチオンの1個の電荷等価体、例えばLi、Na、K、Mg2+、Ca2+又はNH を意味する。
【0048】
成分(IA1)は、好ましくはモノマーとして使用される。これは、該反応混合物(RGI)が、成分(IA1)を好ましくはモノマーとして含み、かつプレポリマーとして含まないことを意味する。
【0049】
好ましい非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンは、非スルホン化4,4′-ジハロゲンジフェニルスルホンである。特に好ましいのは、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン、4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン及び/又は4,4′-ジブロモジフェニルスルホンである。4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンが特に好ましく、そして4,4′-ジクロロジフェニルスルホンが最も好ましい。
【0050】
そのため、本発明の別の対象は、成分(IA1)が、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される方法でもある。
【0051】
好ましくは、成分(IA1)は、該反応混合物(RGI)中の成分(IA1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。
【0052】
特に好ましい実施態様において、成分(IA1)は、該反応混合物(RGI)中の成分(IA1)の全重量を基準として、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも98重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。
【0053】
さらに特に好ましい実施態様において、成分(IA1)は、本質的に4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンからなる。
【0054】
さらに好ましい実施態様において、成分(IA1)は、4,4′-ジクロロジフェニルスルホンからなる。
【0055】
成分(IB1)
該反応混合物(RGI)は好ましくは、少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物を成分(IB1)として含む。用語「少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物」はこの場合に、正確に1種の芳香族ジヒドロキシ化合物並びに2種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物の混合物を意味すると理解される。好ましくは、成分(IB1)は、正確に1種の芳香族ジヒドロキシ化合物又は正確に2種のジヒドロキシ化合物の混合物である。最も好ましい成分(IB1)は、正確に1種の芳香族ジヒドロキシ化合物である。
【0056】
この場合に用語「少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物」及び「成分(IB1)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0057】
使用される芳香族ジヒドロキシ化合物は、典型的に、2個のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物である。該反応混合物(RGI)は、少なくとも1種の炭酸塩化合物を含むので、該反応混合物(RGI)中の成分(IB1)の該ヒドロキシル基は、部分的に脱プロトン化された形で存在していてよい。
【0058】
成分(IB1)は、好ましくはモノマーとして使用される。これは、該反応混合物(RGI)が、成分(IB1)を好ましくはモノマーとして含み、かつプレポリマーとして含まないことを意味する。
【0059】
好適な芳香族ジヒドロキシル化合物は、例えば、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン及びビスフェノールA(IUPAC名:4,4′-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール))からなる群から選択される。
【0060】
本発明の一実施態様において、該反応混合物(RGI)は、ビスフェノールAを全く含まない。別の実施態様において、該反応混合物(RGI)は、ヒドロキノンを全く含まない。
【0061】
成分(IB1)は好ましくは、該反応混合物(RGI)中の成分(IB1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%及び殊に少なくとも98重量%の、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン及びビスフェノールAからなる群から選択される芳香族ジヒドロキシル化合物を含む。4,4′-ジヒドロキシビフェニル及び4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホンは、芳香族ジヒドロキシル成分として好ましく、ここで、4,4′-ジヒドロキシビフェニルが、芳香族ジヒドロキシル成分として特に好ましい。
【0062】
特に好ましい実施態様において、成分(IB1)は、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン又はこれらの化合物の混合物からなる。
【0063】
成分(IC)
該反応混合物(RGI)は、少なくとも1種の炭酸塩化合物を成分(IC)として含む。用語「少なくとも1種の炭酸塩化合物」はこの場合に、正確に1種の炭酸塩化合物並びに2種以上の炭酸塩化合物の混合物を意味すると理解される。前記の少なくとも1種の炭酸塩化合物は、好ましくは少なくとも1種の金属炭酸塩である。該金属炭酸塩は、好ましくは無水である。この場合に用語「少なくとも1種の炭酸塩化合物」及び「成分(IC)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0064】
好ましいのは、金属炭酸塩としてアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属炭酸塩である。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属炭酸塩が、金属炭酸塩として特に好ましい。炭酸カリウムが最も好ましい。
【0065】
例えば、成分(IC)は、該反応混合物(RGI)中の前記の少なくとも1種の炭酸塩成分の全重量を基準として、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%及び最も好ましくは少なくとも90重量%の、炭酸カリウムを含む。
【0066】
好ましい実施態様において、成分(IC)は、炭酸カリウムからなる。200μm未満の体積で重み付けした平均粒子径を有する炭酸カリウムは、炭酸カリウムとして特に好ましい。前記の炭酸カリウムの体積で重み付けした平均粒子径は、N-メチルピロリドン中の炭酸カリウムの懸濁液中で粒子径測定装置を使用して決定される。等価なヒドロキシル基(OH)あたりのアルカリ金属(M)として表現される場合に使用される金属炭酸塩の量は、好ましくは1.00~2.00の範囲である。
【0067】
成分(ID)
該反応混合物(RGI)は、好ましくは少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤を成分(ID)として含む。「少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤」は、本発明によれば、正確に1種の非プロトン性極性溶剤並びに2種以上の非プロトン性極性溶剤の混合物を意味すると理解される。この場合に用語「少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤」及び「成分(ID)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0068】
好適な非プロトン性極性溶剤は、例えば、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン及びN-ジメチルアセトアミドからなる群から選択される。
【0069】
好ましくは、成分(ID)は、N-メチルピロリドン、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される。N-メチルピロリドンは、成分(ID)として特に好ましい。
【0070】
成分(ID)が、該反応混合物(RGI)中の成分(ID)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、N-メチルピロリドン、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶剤を含むことが好ましい。N-メチルピロリドンは、成分(ID)として特に好ましい。
【0071】
さらに好ましい実施態様において、成分(ID)は、N-メチルピロリドンからなる。
【0072】
好ましい実施態様において、成分(ID)は、N-メチルピロリドンからなる。N-メチルピロリドンは、NMP又はN-メチル-2-ピロリドンとも呼ばれる。
【0073】
成分(I)として使用される、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、好ましくは、低い多分散度(Q)及び高いガラス転移温度(T)を有する。該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、さらに、極めて少量の不純物、例えば共沸剤、例えばトルエン又はクロロベンゼンを有する。
【0074】
該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は一般に、≦4.5、好ましくは≦4.0の多分散度(Q)を有する。
【0075】
該多分散度(Q)は、重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)の商として定義される。好ましい実施態様において、該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の多分散度(Q)は、2.0~≦4.5の範囲内、好ましくは2.0~≦4.0の範囲内である。
【0076】
該重量平均分子量(M)及び該数平均分子量(M)は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される。
【0077】
該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の該多分散度(Q)及び該平均分子量は、ジメチルアセトアミド(DMAc)中のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された。使用された移動相(溶離液)は、臭化リチウム0.5重量%を含むDMAcであった。該ポリアリールエーテルポリマー(P)(P溶液)の濃度は、溶液1ミリリットルあたり4mgであった。ろ過後に(細孔径0.2μm)、この溶液100μlを、該GPCシステム中へ注入した。4本の異なるカラム(80℃に加熱)を、分離に使用した(GRAMプレカラム、GRAM 30A、GRAM 1000A、GRAM 1000A;分離材料:PSSのポリエステルコポリマー)。該GPCシステムを、毎分1mlの流量で操作した。DRI-Agilent 1100を、その検出システムとして使用した。800~1820000g/molの範囲内の分子量Mを有するPSSのPMMA標準をその校正に使用した。
【0078】
好適な非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は一般に10000~150000g/mol、好ましくは15000~120000g/molの範囲内、特に好ましくは20000~90000g/molの範囲内の重量平均分子量(M)を有する。該重量平均分子量(M)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。該測定は上記のように実施される。
【0079】
好適な非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は一般に、185~250℃の範囲内、好ましくは185~245℃の範囲内、特に好ましくは185~240℃の範囲内のガラス転移温度を有する。
【0080】
好適な非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は一般に、高いガラス転移温度(T)を有する。該ガラス転移温度(T)の測定は、DSC 2000(TA Instruments)において20K/minの昇温速度で実施された。該測定のために、前記物質約5mgを、アルミニウムるつぼ中に封入した。1回目の昇温過程において、その試料は、280℃に加熱され、ついで-100℃に急速に冷却され、ついで、2回目の昇温過程において、20K/minで280℃に加熱される。前記の各T値は、前記の2回目の昇温過程から決定される。
【0081】
さらに好ましい実施態様において、該熱可塑性成形組成物は、該非スルホン化ポリアリールエーテルスルホンポリマー(P)の数平均分子量(Mn)を基準として、OH末端基0.05重量%未満を有する少なくとも1種の非スルホン化ポリアリールエーテルスルホンポリマー(P)を含有する。OH末端基の量は、溶剤としてDMFを用いる電位差滴定により決定される。
【0082】
成分(I)として殊に好ましいのは、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)及びポリスルホン(PSU)からなる群から選択される非スルホン化ポリアリーレンエーテルポリマー(P)であり、ここで、ポリエーテルスルホン(PESU)及びポリフェニレンスルホン(PPSU)が特に好ましい。
【0083】
一実施態様において、該熱可塑性成形組成物は、ポリスルホン(PSU)を含まない。
【0084】
省略形PPSU、PESU及びPSUはこの場合に、DIN EN ISO 1043-1 :2001に従う。
【0085】
成分(II)
該熱可塑性成形組成物は、成分(II)として少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)を含む。この場合に用語「少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンポリマー(sP)」及び「成分(II)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0086】
該熱可塑性成形組成物は、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準として、1~10重量%の成分(II)を含む。
【0087】
用語「少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)」はこの場合に、正確に1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)並びに2種以上のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の混合物を意味すると理解される。
【0088】
前記の少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)は、該熱可塑性成形組成物中に含まれる前記の少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の全量を基準として、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含むスルホン化された繰返し単位1~7.5mol%を含む。
【0089】
前記の少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の全量は本発明に関連して、好ましくは、前記の少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)中に含まれる繰返し単位及び末端基の全量を意味する。
【0090】
本発明に関連して「スルホン化(された)」は、該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)が、芳香族ジハロゲンスルホンのスルホン化から生じる基を含有することを意味する。芳香族ジハロゲンスルホンの該スルホン化は、当業者に公知である。特に、「スルホン化(された)」は、該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)が、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含むスルホン化された繰返し単位、以下にスルホン化された繰返し単位とも呼ばれる、を含有することを意味する。
【0091】
本発明に関連して「カチオン等価体」は、1の陽電荷のカチオン又は2以上の陽電荷を有するカチオンの1個の電荷等価体、例えばLi、Na、K、Mg2+、Ca2+、NH 、好ましくはNa、Kを意味する。
【0092】
本発明に関連して「少なくとも1個の-SOY基」は、正確に1個の-SOY基並びに2個以上の-SOY基を意味する。好ましいのは、正確に2個の-SOY基である。これは、前記の少なくとも1個のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)中に含まれる前記のスルホン化された繰返し単位が、好ましくは、2個の-SOY基を含むことを意味する。
【0093】
好ましい実施態様において、1.5~9重量%、より好ましくは2.0~8.5重量%及び最も好ましくは2.5~8重量%の、成分(II)を含む該熱可塑性成形組成物は、それぞれ、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としている。
【0094】
成分(II)の製造のための方法は、当業者に公知である。好ましい実施態様において、成分(II)は、成分として、(IIA1)少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンと、(IIA2)少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンと、(IIB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物と、(IIC)少なくとも1種の炭酸塩化合物と、(IID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤とを含む反応混合物(RGII)を変換する工程を含む方法により製造される。
【0095】
そのため、本発明の別の対象は、熱可塑性成形組成物であって、成分(II)が、成分として、
(IIA1)該反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、90~99mol%の、少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン、
(IIA2)該反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、1~10mol%の、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含む少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホン、
(IIB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物、
(IIC)少なくとも1種の炭酸塩化合物、
(IID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤
を含む反応混合物(RGII)を変換する工程を含む方法により製造される。
【0096】
反応混合物(RGII
好ましくは、該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の製造は、工程I)として、上記の成分(IIA1)、(IIA2)、(IIB1)、(IIC)及び(IID)を含む反応混合物(RGII)を変換することを含む。
【0097】
該成分(IIA1)、(IIA2)及び(IIB1)は、重縮合反応に関与する。
【0098】
成分(IID)は溶剤として作用し、かつ成分(IIC)は塩基として作用して、成分(IIB1)を該縮合反応中に脱プロトン化する。
【0099】
反応混合物(RGII)は、該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)を製造する方法において使用される混合物を意味すると理解される。そのため、この場合に、該反応混合物(RGII)に関して示される全ての詳細は、該重縮合前に存在する混合物に関する。該重縮合は、該反応混合物(RGII)が、成分(IIA1)、(IIA2)及び(IIB1)の重縮合により反応する方法中に行われて、目的生成物である該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)を得る。該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)目的生成物を含む、該重縮合後に得られる混合物は、生成物混合物(PGII)とも呼ばれる。該生成物混合物(PGII)は通常さらに、前記の少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤(成分(IID))及びハロゲン化物化合物を含む。該ハロゲン化物化合物は、該反応混合物(RGII)の変換中に形成される。該変換中に最初に、成分(IIC)は成分(IIB1)と反応して、成分(IIB1)を脱プロトン化する。脱プロトン化された成分(IIB1)はついで、成分(IIA1)及び(IIA2)と反応し、ここで、該ハロゲン化物化合物が形成される。この方法は当業者に公知である。
【0100】
該反応混合物(RGII)の成分は、好ましくは同時に反応される。前記の個々の成分は、上流工程において混合され、引き続き反応されてよい。前記の個々の成分を、これらが混合され、ついで反応される反応器中へ供給することも可能である。
【0101】
本発明による方法において、該反応混合物(RGII)の前記の個々の成分は、好ましくは工程I)において好ましくは同時に反応される。この反応は、好ましくは1段階において実施される。これは、成分(IIB1)の脱プロトン化並びに成分(IIA1)、(IIA2)及び(IIB1)との間の縮合反応が、その中間生成物、例えば成分(IIB1)の脱プロトン化された種を単離せずに、唯一の反応段階において行われることを意味する。
【0102】
工程I)による該方法は、好ましくはいわゆる「炭酸塩法」により実施される。該方法は、好ましくはいわゆる「水酸化物法」により実施されない。これは、本発明による方法が、フェノレートアニオンの単離を伴う2段階において実施されないことを意味する。そのため、好ましい実施態様において、該反応混合物(RGII)は、本質的に水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム不含である。より好ましくは、該反応混合物(RGII)は、本質的にアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物不含である。
【0103】
用語「本質的に…不含」はこの場合に、該反応混合物(RGI)が、該反応混合物(RGII)の全重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満の、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、好ましくはアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物を含むことを意味すると理解される。
【0104】
該反応混合物(RGII)が、トルエン又はモノクロロベンゼンを含まないことがさらに好ましい。該反応混合物(RGII)が、水とアゼオトロープを形成する物質を全く含まないことが特に好ましい。
【0105】
成分(IIA1)、成分(IIA2)及び成分(IIB1)の比は、原則的に、塩化水素の理論的な脱離を伴い進行する重縮合反応の化学量論から得て、かつ当業者により公知の方法において確立される。
【0106】
好ましくは、成分(IIA1)及び(IIA2)に由来するハロゲン末端基の、成分(IIB1)に由来するフェノール性末端基に対する比は、出発化合物としての成分(IIA1)及び(IIA2)に対して成分(IIB1)の過剰量を制御して確立することにより調整される。
【0107】
より好ましくは、成分(IIB1)の、成分(IIA1)及び(IIA2)に対するモル比は、0.96~1.08、殊に0.98~1.06、最も好ましくは0.985~1.05である。
【0108】
例えば、該反応混合物(RGII)は、成分(IIB1)1molあたり0.9~0.99molの成分(IIA1)及び0.01~0.1molの成分(IIA2)を含む。
【0109】
好ましくは、該重縮合反応における変換率は、少なくとも0.9である。
【0110】
該非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造のための方法工程I)は、いわゆる「炭酸塩法」の条件下で典型的に実施される。これは、該反応混合物(RGII)が、いわゆる「炭酸塩法」の条件下で反応されることを意味する。該重縮合反応は、一般に80~250℃の範囲内、好ましくは100~220℃の範囲内の温度で実施される。該温度の上限は、標準圧力(1013.25mbar)での前記の少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤(成分(IID))の沸点により決定される。該反応は、一般に標準圧力で実施される。該反応は、好ましくは0.5~12hの時間間隔にわたって、特に1~10hの範囲内で実施される。
【0111】
該生成物混合物(PGII)中の、該方法において得られたスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の単離は、例えば水又は水と他の溶剤との混合物中での該生成物混合物(PGII)の沈殿により、実施されてよい。沈殿したスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)を、引き続き、水で抽出し、ついで乾燥させることができる。本発明の一実施態様において、その沈殿物を、酸性媒体中に吸収させることもできる。好適な酸は、例えば有機酸又は無機酸、例えばカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸又はクエン酸及び鉱酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸である。
【0112】
該ハロゲン化物化合物は、工程I)後に該生成物混合物(PGII)から除去することができる。該ハロゲン化物化合物は、当該技術分野において一般に公知の方法、例えばろ過、遠心分離、デカンテーション等により除去することができる。
【0113】
そのため、本発明は、該方法がさらに、
II)工程I)において得られた生成物混合物(PGII)をろ過、遠心分離又はデカンテーションする工程
を含む、方法も提供する。
【0114】
成分(IIA1)
該反応混合物(RGII)は、少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを成分(IIA1)として含む。
【0115】
用語「少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン」はこの場合に、正確に1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン並びに2種以上の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンの混合物を意味すると理解される。この場合に用語「少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン」及び「成分(IIA1)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0116】
該反応混合物(RGII)は、該反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、好ましくは90~99mol%の成分(IIA1)としての少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。好ましくは、該反応混合物(RGII)は、該反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、93~98.5mol%及び最も好ましくは93.5~98mol%の成分(IIA1)としての少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。
【0117】
成分(IIA1)を考慮して上記の記載及び好ましさは成分(IA1)を考慮してそれに応じて当てはまる。成分(IIA1)及び(IA1)は、同じか又は異なっていてよい。一実施態様において、成分(IIA1)は、(IA1)と同じである。別の実施態様において、成分(IIA1)は、(IA1)とは異なる。
【0118】
成分(IIA2)
この場合に用語「少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン」及び「成分(IIA1)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0119】
該反応混合物(RGII)は好ましくは、該反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、好ましくは1~10mol%の成分(IIA2)として少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。好ましくは、該反応混合物(RGII)は、該反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、1.5~7mol%及び最も好ましくは2~6.5mol%の成分(IIA2)として少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。
【0120】
用語「少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホン」はこの場合に、正確に1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホン並びに2種以上のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンの混合物を意味すると理解される。
【0121】
本発明に関連して「スルホン化(された)」は、該スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンが、該芳香族ジハロゲンスルホンのスルホン化から生じる少なくとも1個の基を含むことを意味する。芳香族ジハロゲンスルホンの該スルホン化は、当業者に公知である。特に、「スルホン化(された)」は、該芳香族ジハロゲンスルホンが、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含むことを意味する。
【0122】
本発明に関連して「カチオン等価体」は、1の陽電荷のカチオン又は2以上の陽電荷を有するカチオンの1個の電荷等価体、例えばLi、Na、K、Mg2+、Ca2+、NH 、好ましくはNa、Kを意味する。
【0123】
「少なくとも1個の-SOY基」は本発明に関連して、正確に1個の-SOY基並びに2個以上の-SOY基を意味する。好ましいのは、正確に2個の-SOY基である。これは、前記の少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンが、好ましくは少なくとも1種のジスルホン化芳香族ハロゲンスルホンであることを意味する。
【0124】
該反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計は通常、100mol%である。
【0125】
成分(IIA2)が、成分(IIA2)の全重量を基準として、
4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸、
4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸、
4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩、
4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩、
4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩、及び
4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩
からなる群から選択される少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホン少なくとも50重量%を含むことが好ましい。
【0126】
特に好ましい実施態様において、成分(IIA2)は、該反応混合物(RGII)中の成分(IIA2)の全重量を基準としてそれぞれ、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも98重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸、4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩、4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。
【0127】
成分(IIA2)が、成分(IIA2)の全重量を基準として、
4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩、
4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩、
4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩、及び
4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩
からなる群から選択される少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホン少なくとも50重量%を含むことがよりいっそう好ましい。
【0128】
よりいっそう特に好ましい実施態様において、成分(IIA2)は、該反応混合物(RGII)中の成分(IIA2)の全重量を基準としてそれぞれ、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも98重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩、4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二カリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む。
【0129】
成分(IIA2)に関連して用語「スルホン酸」及び「-SOY基」は、同義に使用され、かつ同じ意味を有する。そのため、該4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸における用語「スルホン酸」は、「-SOY基」[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を意味する。
【0130】
4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸及び4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩は、成分(IIA2)として特に好ましく、ここで、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン-3,3′-ジスルホン酸二ナトリウム塩がより好ましい。
【0131】
成分(IIC)
該反応混合物(RGII)は、少なくとも1種の炭酸塩化合物を成分(IIC)として含む。用語「少なくとも1種の炭酸塩化合物」はこの場合に、正確に1種の炭酸塩化合物並びに2種以上の炭酸塩化合物の混合物を意味すると理解される。前記の少なくとも1種の炭酸塩化合物は、好ましくは少なくとも1種の金属炭酸塩である。該金属炭酸塩は、好ましくは無水である。この場合に用語「少なくとも1種の炭酸塩化合物」及び「成分(IIC)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0132】
成分(IIC)を考慮して上記の記載及び好ましさは成分(IC)を考慮してそれに応じて当てはまる。成分(IIC)及び(IC)は、同じか又は異なっていてよい。一実施態様において、成分(IIC)は、(IC)と同じである。別の実施態様において、成分(IIC)は、(IC)とは異なる。等価なヒドロキシル基(OH)あたりのアルカリ金属(M)として表現される場合に使用される金属炭酸塩の量が、好ましくは1.00~2.00の範囲であることが好ましい。
【0133】
成分(IID)
該反応混合物(RGII)は、好ましくは少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤を成分(IID)として含む。「少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤」は、本発明によれば、正確に1種の非プロトン性極性溶剤並びに2種以上の非プロトン性極性溶剤の混合物を意味すると理解される。この場合に用語「少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤」及び「成分(IID)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0134】
成分(IID)を考慮して上記の記載及び好ましさは成分(ID)を考慮してそれに応じて当てはまる。成分(IID)及び(ID)は、同じか又は異なっていてよい。一実施態様において、成分(IID)は、(ID)と同じである。別の実施態様において、成分(IID)は、(ID)とは異なる。
【0135】
成分(II)として使用される、該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)は、好ましくは、低い多分散度(Q)及び高いガラス転移温度(T)を有する。該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)は、さらに、極めて少量の不純物、例えば共沸剤、例えばトルエン又はクロロベンゼンを有する。
【0136】
該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)は一般に、≦4.5、好ましくは≦4.0の多分散度(Q)を有する。
【0137】
該多分散度(Q)は、重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)の商として定義される。好ましい実施態様において、該スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の多分散度(Q)は、2.0~≦4.5の範囲内、好ましくは2.0~≦4.0の範囲内である。
【0138】
該重量平均分子量(M)及び該数平均分子量(M)は、成分(I)について上記のように、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0139】
好適なスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)は一般に、10000~150000g/molの、好ましくは15000~120000g/molの範囲内、特に好ましくは20000~90000g/molの範囲内の重量平均分子量(M)を有する。該重量平均分子量(M)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。該測定は、上記のように実施される。
【0140】
好適なスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)は一般に185~255℃の範囲内、好ましくは185~250℃の範囲内、特に好ましくは185~245℃の範囲内のガラス転移温度を有する。
【0141】
成分(I)として殊に好ましいのは、スルホン化ポリエーテルスルホン(sPESU)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(sPPSU)及びスルホン化ポリスルホン(sPSU)からなる群から選択されるスルホン化ポリアリーレンエーテルポリマー(P)であり、ここで、スルホン化ポリエーテルスルホン(sPESU)及びスルホン化ポリフェニレンスルホン(sPPSU)が特に好ましい。
【0142】
一実施態様において、該熱可塑性成形組成物は、スルホン化ポリスルホン(sPSU)を含まない。
【0143】
省略形PPSU、PESU及びPSUはこの場合に、DIN EN ISO 1043-1 :2001に従う。
【0144】
成分(III)
該熱可塑性成形組成物は、成分(III)として少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラーを含む。この場合に用語「少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラー」及び「成分(III)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0145】
該熱可塑性成形組成物は、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準として、成分(III)4~70重量%を含む。
【0146】
用語「少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラー」はこの場合に、正確に1種の少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラー並びに2種以上の少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラーの混合物を意味すると理解される。
【0147】
好ましい実施態様において、8.5~60重量%、より好ましくは12.5~50重量%及び最も好ましくは17~45重量%の、成分(III)を含む該熱可塑性成形組成物は、それぞれ、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としている。
【0148】
好ましい実施態様において、該熱可塑性成形組成物は、成分(III)として、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、アラミド繊維、及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種の繊維状フィラー及び/又は非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、粉末状石英、雲母、粘土、白雲母、黒雲母、スゾライト、スズマレタイト、タルク、クロライト、金雲母、長石、ウォラストナイト及びカオリンからなる群から選択される少なくとも1種の粒子状フィラーを含む。
【0149】
成分(IV)
該熱可塑性成形組成物は、成分(IV)として、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィドを含む。この場合に、用語「少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド」及び「成分(IV)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0150】
該熱可塑性成形組成物は、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準として、成分(IV)15~60重量%を含む。
【0151】
用語「少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド」はこの場合に、正確に1種のポリフェニレンスルフィド並びに2種以上のポリフェニレンスルフィドの混合物を意味すると理解される。
【0152】
本発明において、該熱可塑性成形組成物は、成分(IV)として、少なくとも1種以上、しかし好ましくは1種の、ポリフェニレンスルフィドを含む。
【0153】
好ましい実施態様において、17.5~55重量%、より好ましくは20~52.5重量%及び最も好ましくは22.5~50重量%の成分(IV)を含む該熱可塑性成形組成物は、それぞれ、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としている。
【0154】
本発明による該熱可塑性成形組成物は、成分(IV)として、少なくとも1種のポリアリーレンスルフィド、好ましくは1種のポリアリーレンスルフィドを含む。原則的に、全てのポリアリーレンスルフィドが、成分(IV)として好適である。
【0155】
好ましくは、該成分(IV)の(1種以上の)ポリアリーレンスルフィドは、一般式-Ar-S-[式中、-Ar-は、炭素原子6~18個を有するアリーレン基である]による繰返し単位30~100重量%を含む。
【0156】
それぞれ、該ポリアリーレンスルフィドの全ての繰返し単位の全重量を基準として、少なくとも30重量%、特に少なくとも70重量%、より特別には少なくとも90重量%の、構造(iv)
【化1】
の繰返し単位を含むポリアリーレンスルフィドが好ましい。
【0157】
好適なさらなる繰返し単位は、特に、
【化2】
であり、ここで、Rは、C~C10-アルキル、好ましくはメチルである。該ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよく、ここで、ホモポリマー(同一の繰返し単位)が好ましい。極めて特に好ましいポリアリーレンスルフィドは、一般式(iv)による繰返し単位100重量%からなる。そのため、成分(IV)は、特に好ましくはポリフェニレンスルフィド、特にポリ(1,4-フェニレンスルフィド)である。
【0158】
本発明により使用されるポリアリーレンスルフィドの好適な末端基は、特にハロゲン、チオール又はヒドロキシ、好ましくはハロゲンである。
【0159】
該成分(IV)のポリアリーレンスルフィドは、分岐状又は線状であってよい。好ましくは、該成分(IV)のポリアリーレンスルフィドは、線状、すなわち分岐状ではない。
【0160】
該成分(IV)のポリアリーレンスルフィドは好ましくは、5000~150000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。該重量平均分子量(Mw)は、PS標準を用いる220℃での溶剤としてクロロナフタレンを使用するGPCにより決定される。
【0161】
そのようなポリアリーレンスルフィドは、それ自体として公知であり、かつ公知の方法により製造することができる。対応する製造方法は、例えば、Hans R. Kricheldorf, “Aromatic Polyethers”, Handbook of Polymer Synthesis, 第2版, 2005, p.486-492に、記載されている。
【0162】
それらは、特に、米国特許第2513188号明細書(US 2,513,188)に記載されたように、ハロゲン芳香族化合物と、硫黄又は金属硫化物との反応により製造することができる。ハロゲンにより置換されたチオフェノールの金属塩を加熱することも可能である(英国特許第962941号明細書(GB-B 962 941)参照)。ポリアリーレンスルフィドの前記の好ましい合成は、例えば、米国特許第3354129号明細書(US 3,354,129)に記載されたように、溶液中でのアルカリ金属硫化物とハロゲン芳香族化合物との反応を含む。さらなる方法は、米国特許第3699087号明細書(US 3,699,087)及び米国特許第4645826号明細書(US 4,645,826)に記載されている。
【0163】
成分(V)
該熱可塑性成形組成物は、成分(V)として、少なくとも1種のサーモトロピックなポリマーを含む。この場合に用語「少なくとも1種のサーモトロピックなポリマー」及び「成分(V)」は、同義に使用され、そのため同じ意味を有する。
【0164】
該熱可塑性成形組成物は、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準として、成分(V)1~10重量%を含む。
【0165】
用語「少なくとも1種のサーモトロピックなポリマー」はこの場合に、正確に1種のサーモトロピックなポリマー並びに2種以上のサーモトロピックなポリマーの混合物を意味すると理解される。
【0166】
本発明において、該熱可塑性成形組成物は、成分(V)として、少なくとも1種以上の、しかし好ましくは1種の、サーモトロピックなポリマーを含む。
【0167】
好ましい実施態様において、該熱可塑性成形組成物は、成分(V)1.5~9重量%、より好ましくは2~8重量%及び最も好ましくは2.5~7.5重量%を含み、それぞれ、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としている。
【0168】
表現「サーモトロピックなポリマー」はこの場合に、定義される温度範囲内で液晶特性を有するポリマーを意味する。特に好適なサーモトロピックなポリマーは、本発明の熱可塑性成形組成物が加工される温度範囲内で液晶性であるものである。
【0169】
成分(V)として好適なサーモトロピックなポリマーの溶融物中の液晶相の転移温度Tは、一般に350℃以下である。成分(V)として使用できる好ましい液晶ポリマー(サーモトロピックなポリマー)の転移温度Tは、340℃以下である。好ましいサーモトロピックなポリマーは、200~350℃の範囲内、特に好ましくは270~340℃の範囲内の転移温度Tを有するものである。
【0170】
該転移温度Tは、20K/minの昇温速度を用いて示差走査熱量測定(DSC)による測定によって決定することができ、ここで、記載されるT値は、2回目の加熱手順において決定される。
【0171】
成分(V)として使用できるサーモトロピックなポリマーは、サーモトロピックなポリエステル、サーモトロピックなポリエステルアミド、サーモトロピックなポリアミド及びサーモトロピックなポリエステルイミドからなる群から選択される好ましくは少なくとも1種である。
【0172】
用語「サーモトロピックなポリエステル」はこの場合に、サーモトロピックポリエステル並びにサーモトロピックコポリエステルを意味する。サーモトロピックポリエステル及び/又はサーモトロピックコポリエステルは、成分(V)として殊に好ましく、ここで、全芳香族サーモトロピックポリエステル及び/又は全芳香族サーモトロピックコポリエステルが、成分(V)として特に好ましい。
【0173】
好適なサーモトロピックポリエステルは例として、以下のモノマー単位のうち1種以上に由来する:p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキシキノン、フェニルヒドロキノン、アルキル置換ヒドロキノン、特に2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-n-プロピルヒドロキノン、2-イソプロピルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、ハロゲン置換2-n-ヒドロキノン、特に2-クロロヒドロキノン。
【0174】
該サーモトロピックポリエステルの製造に好適なモノマーの他の例は、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,3-ジヒドロキシベンゼン、4,4′-ビフェノール、2,6,2′,6′-テトラメチルビフェノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ナフタレンジカルボン酸、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、4,4′-ビス(p-ヒドロキシフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,6-ジヒドロキシアントラキノン、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、及び4,4′-ジヒドロキシベンゾフェノンである。特に好適な化合物は、p-アセトキシ安息香酸及び2,6-アセトキシナフタレンカルボン酸、並びにエステル化によって活性化されたヒドロキシ化合物である。
【0175】
上記のジカルボン酸及び脂肪族又は脂環式のポリオール、好ましくはジオールに由来するサーモトロピックポリエステルは、等しく好適である。使用することができるジオールは、式(ii)の化合物である:
HO-R-OH 式(ii)。
【0176】
はここでは、置換又は非置換の形のC~C18-アルキレン単位、好ましくはC~C10-アルキレン単位を表す。好適な単位の例は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、及びヘキシレンである。前記の2個のヒドロキシ基のうちそれぞれ1個が、最初又は最後の炭素原子に結合されることが特に好ましい。Rは、さらに、炭素原子3~13個、好ましくは炭素原子5~8個を有する非置換又は置換の脂環式部分、例えばシクロプロピレン、シクロペンチレン、又はシクロヘキシレンであってよい。好ましいジオールは、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0177】
成分(V)として、サーモトロピックポリエステルは、4-ヒドロキシ安息香酸及び/又は6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸及び任意にさらなるモノマーに由来することが殊に好ましい。
【0178】
特に好ましい熱可塑性成形組成物は、成分(V)として、構造(ia)及び/又は(ib)
【化3】
の繰返し単位を有する少なくとも1種のサーモトロピックポリエステルを含み、ここで、構造(ia)及び(ib)の繰返し単位を有するサーモトロピックポリエステルが殊に好ましい。
【0179】
好ましくは前記の少なくとも1種のサーモトロピックポリエステルは、前記の少なくともサーモトロピックポリエステルの全量を基準として、該構造(ia)及び(ib)の繰返し単位少なくとも50mol%、より好ましくは少なくとも75mol%、よりいっそう好ましくは少なくとも85mol%及び最も好ましくは少なくとも95mol%から構成される。
【0180】
該サーモトロピックポリエステルは一般に、該単位(ia)10~90mol%及び該単位(ib)10~90mol%及び任意に1種以上のさらなる繰返し単位0~30mol%を含む。
【0181】
該熱可塑性成形組成物は特に、成分(V)として、該単位(ia)10~90mol%及び該単位(ib)10~90mol%から構成される少なくとも1種のサーモトロピックポリマーを含み、ここで、そのモル割合の合計は、該サーモトロピックポリマーを基準として、100mol%である。
【0182】
サーモトロピックポリエステルアミドは、成分(V)として使用することもでき、ここで、これらは、構造(iii)の繰返し単位を単独で及び/又は該式(ia)及び/又は(ib)の繰返し単位との組合せで含む。
【化4】
【0183】
その部分Lは、水素、C~C10-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、又はn-ブチル、好ましくはメチル、C~C10-アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、又はn-ブトキシ、好ましくはメトキシ、又はハロゲン、好ましくは塩素であってよい。
【0184】
本発明において成分(V)として使用される少なくとも1種のサーモトロピックなポリマーのモル質量Mw(重量平均)は、一般に1500~150000g/mol、好ましくは2500~50000g/molである。Mwは、1:1の比のフェノール及びオルト-ジクロロベンゼンの溶液中での25℃で光散乱により決定することができる。
DIN ISO 75-1に従って測定される前記のサーモトロピックなポリマーのHDT A熱変形温度(方法A、外繊維応力σ 1.80N/mm、一定の昇温速度120K/h)は、140~220℃であってよい。
【0185】
このタイプの液晶ポリマーは、それ自体として公知であるか、又は公知の方法により製造することができる。好適な製造方法は、例として米国特許第4161470号明細書(US-A-4 161 470)に記載されている。他の製造方法は、例として、欧州特許出願公開第139303号明細書(EP-A-139 303)、欧州特許出願公開第226839号明細書(EP-A-226 839)、欧州特許出願公開第226978号明細書(EP-A-226 978)、欧州特許出願公開第225539号明細書(EP-A-225 539)、欧州特許出願公開第226847号明細書(EP-A-226 847)、及び欧州特許出願公開第257558号明細書(EP-A-257 558)に見出すことができる。
【0186】
成分(VI)
一実施態様において、該熱可塑性成形組成物は、成分(VI)として少なくとも1種の添加剤を含むことができる。前記のさらなる成分(VI)は、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としてそれぞれ、典型的に0~40重量%の範囲内、好ましくは0~30重量%の範囲内及び殊に好ましくは0~20重量%の範囲内で存在する。
【0187】
成分(VI)は、好ましくは、加工助剤、顔料、安定剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤である。利用することができる普通の材料は、例えば熱安定剤、UV安定剤、滑剤、顔料及び染料である。成分(VI)は、該熱可塑性成形組成物の全重量を基準としてそれぞれ、0~40重量%、好ましくは0~25重量%の量で存在することができる。
【0188】
顔料は、通常0~6重量%、好ましくは0~5重量%の量で使用される。熱可塑性材料の着色のための顔料は、一般に公知であり、かつR. Gaechter及びH. Mueller, Taschenbuch der Kunststoffadditive, Carl Hanser Verlagに見出すことができる。好ましい顔料として、酸化亜鉛又は酸化チタンを使用することができる。さらに、カーボンブラックは、顔料として適用されることができる(G. Benzing, “Pigmente fuer Anstrichmittel”, Expert Verlag (1988) p.78参照)。他の色を生じさせるために、クロム系顔料又は有機顔料を利用することができる。
【0189】
熱安定剤として、周知の添加剤、例えば立体障害フェノール又は第二級アミンを利用することができる。UV保護には、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類又は他の公知のUV安定剤が適用できる。
【0190】
滑剤又は離型剤として、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸エステル又はペンタエリトリットのアミド又はエステルを使用することができる。好ましくはステアリン酸を使用することができる。
【0191】
該熱可塑性成形組成物の製造のための方法は、当業者により公知である。該熱可塑性成形組成物の製造には、一般に該成分(I)、(II)及び(III)、(IV)及び任意に(V)及び/又は(VI)が混合される。
【0192】
該熱可塑性成形組成物の製造のためには、該成分は、例えば、ドライブレンドするか又は溶融状態で配合ユニットにおいて配合することができる。好ましくは、該熱可塑性成形組成物の製造のための成分は、押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で配合される。該バレル中の溶融樹脂温度は、好ましくは400℃未満、より好ましくは380℃未満に保持される。
【0193】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、本発明はそれに限定されるものではない。
【実施例
【0194】
使用される成分
成分I
成分I1
成分I1として、59.0ml/gの粘度数(V.N.)を有するポリフェニレンスルホン(PPSU)を使用した。OH末端基の量は、検出限界未満(<0.02重量%)であった。
【0195】
成分II
成分II1
スルホン化PPSU(sPPSU)の製造を、以下の手順に従って行った:
撹拌機、ディーン-スタークトラップ、窒素導入部及び温度制御部を備えた4l HWS容器中で、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)516.88g(1.80mol)、二ナトリウム3,3′-ジスルホネート-4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(sDCDPS)98.25g(0.20mol)、4,4′-ジヒドロキシビフェニル(DHBP)372.42g(2.00mol)、及び炭酸カリウム(粒子径37.5μm)304.06g(2.20mol)を、窒素雰囲気下でNMP 1250ml中に懸濁させる。撹拌しながら、この混合物を190℃に加熱する。窒素30l/hで該混合物をパージし、かつ該混合物を190℃で6h保持する。この時間の後に、NMP 1750mlを添加して、該混合物を冷却する。窒素6下で該混合物を、60℃未満に冷却する。ろ過後に、該ポリマー溶液を水中に沈殿させる。沈殿した生成物を熱水で抽出し(85℃で20h)、減圧下で120℃で24h乾燥させる。
【0196】
該生成物のV.N.は63.4ml/gであり、sDCDPSをベースとする単位の量は6.5mol%であった(H-NMRにより決定)。
【0197】
成分II2
スルホン化PPSU(sPPSU)の製造を、以下の手順に従って行った:
撹拌機、ディーン-スタークトラップ、窒素導入部及び温度制御部を備えた4l HWS容器中で、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)574.34g(2.00mol)、二ナトリウム3,3′-ジスルホネート-4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(sDCDPS)24.56g(0.05mol)、4,4′-ジヒドロキシビフェニル(DHBP)372.42g(2.00mol)、及び炭酸カリウム(粒子径37.5μm)293.0g(2.12mol)を、窒素雰囲気下でNMP 1250ml中に懸濁させる。撹拌しながら、この混合物を190℃に加熱する。窒素30l/hで該混合物をパージし、かつ該混合物を190℃で6h保持する。この時間の後に、NMP 1750mlを添加して、該混合物を冷却する。窒素下で該混合物を、60℃未満に冷却する。ろ過後に、このポリマー溶液を水中で沈殿させる。沈殿した生成物を熱水で抽出し(85℃で20h)、減圧下で120℃で24h乾燥させる。
【0198】
該生成物のV.N.は、75.4ml/gであり、sDCDPSをベースとする単位の量は1.9mol%であった(H-NMRにより決定)。
【0199】
成分IIV1
スルホン化PPSU(sPPSU)の製造を、以下の手順に従って行った:
撹拌機、ディーン-スタークトラップ、窒素導入部及び温度制御部を備えた4l HWS容器中で、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)488.19g(1.70mol)、二ナトリウム3,3′-ジスルホネート-4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(sDCDPS)148.56g(0.30mol)、4,4′-ジヒドロキシビフェニル(DHBP)372.42g(2.00mol)、及び炭酸カリウム(粒子径37.5μm)317.88g(2.30mol)を、窒素雰囲気下でNMP 1250ml中に懸濁させる。撹拌しながら、この混合物を190℃に加熱する。窒素30l/hで該混合物をパージし、かつ該混合物を190℃で7.5h保持する。この時間の後に、NMP 1750mlを添加して、該混合物を冷却する。窒素下で該混合物を60℃未満に冷却する。ろ過後に、このポリマー溶液7を、水中に沈殿させる。沈殿した生成物を熱水で抽出し(85℃で20h)、減圧下で120℃で24h乾燥させる。
【0200】
該生成物のV.N.は61.1ml/gであり、sDCDPSをベースとする単位の量は11.2mol%であった(H-NMRにより決定)。
【0201】
成分IIV2
OHを末端基とするPPSU(PPSU-OH)の製造を、以下の手順に従って行った:
撹拌機、ディーン-スタークトラップ、窒素導入部及び温度制御部を備えた4l HWS容器中で、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)279.98g(0.975mol)、4,4′-ジヒドロキシビフェニル(DHBP)186.21g(1.00mol)、及び炭酸カリウム(粒子径39.3μm)152.03g(1.10mol)を、窒素雰囲気下でNMP 1000ml中に懸濁させる。撹拌しながら、この混合物を190℃に加熱する。窒素30l/hで該混合物をパージし、かつ該混合物を190℃で6h保持する。この時間の後に、NMP 500mlを添加して、該混合物を冷却する。窒素下で該混合物を60℃未満に冷却する。ろ過後に、このポリマー溶液を水中で沈殿させる。沈殿した生成物を熱水で抽出し(85℃で20h)、減圧下で120℃で24h乾燥させる。
【0202】
該生成物のV.N.は、62.3ml/gであり、OH末端基の量は、0.23重量%であった(電位差滴定により決定)。
【0203】
成分IIV3
欧州特許出願公開第855430号明細書(EP 855 430)によるカルボキシル官能化PPSU(PPSU-co DPA)の製造を、以下の手順に従って行った:
撹拌機、ディーン-スタークトラップ、窒素導入部及び温度制御部を備えた4l HWS容器中で、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)585.81g(2.04mol)、ジフェノキシ吉草酸(DPA)42.95g(0.15mol)、4,4′-ジヒドロキシビフェニル(DHDP)344.49g(1.70mol)、及び炭酸カリウム(粒子径39.3μm)310.97g(2.25mol)を、窒素雰囲気下でNMP 1538ml中に懸濁させる。撹拌しながら、この混合物を190℃に加熱する。窒素30l/hで該混合物をパージし、かつ該混合物を190℃で6h保持する。この時間の後に、NMP 1462mlを添加して、該混合物を冷却する。窒素下で該混合物を60℃未満に冷却する。ろ過後に、このポリマー溶液を水中に沈殿させる。沈殿した生成物を熱水で抽出し(85℃で20h)、減圧下で120℃で24h乾燥させる。
【0204】
該生成物のV.N.は48.3ml/gであり、DPA系単位の量は6.2mol%であった(H-NMRにより決定)。
【0205】
成分III
ガラス繊維、10μmの直径及びPU系サイジングを有するチョップドストランド(長さ4.5mm)。
【0206】
該粘度数(V.N.)は、好ましくはNMP 100ml中ポリマー1gの濃度で25℃でウベローデ粘度計を使用して決定される。
【0207】
OH末端基の量を、溶剤としてDMFを用いる電位差滴定により決定する。
【0208】
成分IV
成分(IV)として、欧州特許出願公開第2513193号明細書(EP 2 513 193)に記載されたような、350℃で1150s-1のせん断速度で測定される76Pa・sの溶融粘度を有する、ポリフェニレンスルフィド(PPS)。
【0209】
成分V
成分(V)として、式ia及びibの繰返し単位(上記に定義される)を有し、7.8GPaの弾性率及びDIN ISO 75-1に従って測定される187℃のHDT A熱変形温度により特徴付けられる、サーモトロピックポリエステルが使用される。
【0210】
該粘度数(V.N.)は、好ましくはNMP 100ml中ポリマー1gの濃度で25℃でウベローデ粘度計を使用して決定される。
【0211】
OH末端基の量を、溶剤としてDMFを用いる電位差滴定により決定する。
【0212】
該熱可塑性成形組成物の製造/試験
配合を、二軸スクリュー押出機(ZSK 18)を使用して行い、そのバレル温度を設定して、溶融樹脂温度を400℃未満に保持した。その試験試料の成形を、360℃の溶融樹脂温度及び140℃の金型温度で行った。引張試験を、ISO 527(弾性率、強さ、引張伸び)に従って行った。
【0213】
衝撃強さを、ISO 179 1eUに従って試験した。生成物のメルトフローを、ISO 1133に従って360℃の溶融樹脂温度及び10kgの荷重で試験した。
【0214】
引張試験片を200℃で500h貯蔵し、ついで引張試験を実施した。
【0215】
該スルホン化モノマー(sDCDPS)及びDPAに由来する単位の含有率を、H-NMRにより決定した。
【0216】
引張試験片を、Skydrol LD4(組成 トリブチルホスフェート58重量%、ジブチルホスフェート20~30重量%、ブチルジフェニルホスフェート5~10重量%、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1~5重量%、カルボキシレート10重量%未満))中で23℃で500h貯蔵した。この試料を、目視で評価し、目に見える損傷のない試料のみを乾燥(24h、120℃、真空)後に試験した。
【0217】
第1表:
【表1】
【0218】
本発明による熱可塑性成形組成物は、優れた機械的性能を示し、かつ驚くべきことに作動液、例えばSkydrol LD4に対して安定である。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形組成物であって、成分として、
(I)14~80重量%の、少なくとも1種の非スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)、
(II)1~10重量%の、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)であって、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含むスルホン化された繰返し単位を、前記熱可塑性成形組成物中に含まれる前記の少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)の全量を基準として1~7.5mol%有する、少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(sP)、
(III)4~70重量%の、少なくとも1種の繊維状及び/又は粒子状フィラー、
(IV)17.5~55重量%の、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド
を含み、
前記重量%値はそれぞれ、前記熱可塑性成形組成物の全重量を基準としており、成分(III)が、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、アラミド繊維、及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種の繊維状フィラー及び/又は非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、粉末状石英、雲母、粘土、白雲母、黒雲母、スゾライト、スズマレタイト、タルク、クロライト、金雲母、長石、ウォラストナイト及びカオリンからなる群から選択される少なくとも1種の粒子状フィラーである、前記熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
成分(IV)が、一般式-Ar-S-[式中、Arは、炭素原子6~18個を有するアリーレン基である]の繰返し単位30~100重量%から構成される少なくとも1種のポリフェニレンスルフィドである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
成分(IV)がポリ(1,4-フェニレンスルフィド)である、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
成分(I)が、成分として、
(IA1)少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン
(IB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物、
(IC)少なくとも1種の炭酸塩化合物、
(ID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤
を含む反応混合物(RGI)を変換する工程を含む方法により製造される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
成分(II)が、成分として、反応混合物(RGII)であって、
(IIA1)前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、90~99mol%の、少なくとも1種の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホン、
(IIA2)前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)及び(IIA2)のmol%の合計を基準として、1~10mol%の、少なくとも1個の-SOY基[ここで、Yは、水素又はカチオン等価体である]を含む少なくとも1種のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホン、
(IIB1)少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物、
(IIC)少なくとも1種の炭酸塩化合物、
(IID)少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤
を含む、反応混合物(RGII)を変換する工程を含む方法により製造される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
成分(IA1)が、前記反応混合物(RGI)中に含まれる成分(IA1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される1種以上の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む、請求項4又は5に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
成分(IIA1)が、前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される1種以上の非スルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む、請求項5又は6に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項8】
成分(IIA2)が、前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIA2)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、ジスルホン化4,4′-ジクロロジフェニルスルホン及びジスルホン化4,4′-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される1種以上のスルホン化芳香族ジハロゲンスルホンを含む、請求項5から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項9】
成分(IB1)が、前記反応混合物(RGI)中に含まれる成分(IB1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシビフェニル及びビスフェノールAからなる群から選択される1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を含む、請求項4から8までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項10】
成分(IIB1)が、前記反応混合物(RGII)中に含まれる成分(IIB1)の全重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシビフェニル及びビスフェノールAからなる群から選択される1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を含む、請求項5から9までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項11】
成分(II)において、Yがカチオン等価体である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物を使用する、成形品を製造する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により得られた成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
欧州特許出願公開第855430号明細書(EP 855 430 A1)には、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーと繊維状又は粒子状フィラーとの間の相溶化剤としての、カルボン酸基を有するポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの使用が記載されているのに対し、欧州特許出願公開第2576676号明細書(EP 257 6676 A1)には、繊維又はフィラー強化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーコンパウンドの性能を改善するための添加剤としてのヒドロキシル末端基を有するポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの使用が教示されている。
米国特許出願公開第2021/0070996号明細書(US 2021/0070996)には、ポリアミドを含む相溶化ポリマー組成物が開示されている。米国特許出願公開第2012/0296031号明細書(US 2012/0296031)には、ポリアリーレンエーテル及びポリアリーレンスルフィドのブレンドが開示されている。米国特許出願公開第2012/0252962号明細書(US 2012/0252962)にも、ポリアリーレンエーテル及びポリアリーレンスルフィドのブレンドが開示されている。
【国際調査報告】