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特表2024-525303逆eビーム電流を使用する自己浄化式抽出器を備えた冷電界放出器電子銃
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  • 特表-逆eビーム電流を使用する自己浄化式抽出器を備えた冷電界放出器電子銃 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】逆eビーム電流を使用する自己浄化式抽出器を備えた冷電界放出器電子銃
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/073 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H01J37/073
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575473
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022036069
(87)【国際公開番号】W WO2023283162
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】17/368,707
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレッラ ルカ
(72)【発明者】
【氏名】チュブン ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ピッツ スティーブン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101BB01
5C101BB05
5C101DD06
5C101DD24
5C101DD25
5C101DD30
(57)【要約】
eビーム装置は、電子を放出する冷電界放出源102と、冷電界放出源102から電子を抽出するために、冷電界放出源102に対して正にバイアスされる抽出電極104とを含む。抽出電極104は、電子のための第1の開口部112を有する。eビーム装置は、電子のための第2の開口部118を備えたミラー電極116をさらに含む。ミラー電極116は、第1の動作モード中に抽出電極104に対して正にバイアスされ、第2の動作モード中に抽出電極104に対して負にバイアスされるように構成可能である。抽出電極104は、冷電界放出源102とミラー電極116との間に配設される。eビーム装置は、抽出電極104および冷電界放出源102に対して正にバイアスされるアノード120をさらに含む。ミラー電極116は、抽出電極104とアノード120との間に配設される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出するための冷電界放出源と、
前記冷電界放出源から前記電子を抽出するための前記冷電界放出源に対して正にバイアスされる抽出電極であって、前記電子のための第1の開口部を有する抽出電極と、
前記電子のための第2の開口部を有し、第1の動作モード中には前記抽出電極に対して正にバイアスされ、第2の動作モード中には前記抽出電極に対して負にバイアスされるように構成可能であるミラー電極であって、前記抽出電極が前記冷電界放出源と前記ミラー電極との間に配設される、ミラー電極と、
前記抽出電極および前記冷電界放出源に対して正にバイアスされるアノードであって、前記ミラー電極が、前記抽出電極と前記アノードとの間に配設される、アノードとを備えることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記ミラー電極が、前記第1の動作モード中には前記アノードに電気的に接続され、前記第2の動作モード中には前記冷電界放出源に電気的に接続されるように構成可能であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、前記ミラー電極を、前記第1の動作モード中には前記アノードに、前記第2の動作モード中には前記冷電界放出源に電気的に接続するためのスイッチをさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置であって、前記アノードが接地されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1の開口部が、前記冷電界放出源の下に位置付けられ、
前記第2の開口部が、前記第1の開口部の下に位置付けられることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記第2の開口部が前記第1の開口部よりも幅が広いことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5に記載の装置であって、前記抽出電極および前記ミラー電極が、前記冷電界放出源、前記第1の開口部、および前記第2の開口部を貫通する軸の周りに半径方向に対称であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1の動作モードが通常オペレーティングモードであり、
前記第2の動作モードが前記抽出電極を浄化するためのモードであることを特徴とする装置。
【請求項9】
冷電界放出源と、前記冷電界放出源からの電子のための第1の開口部を備える抽出電極と、前記電子のための第2の開口部を備えるミラー電極と、アノードとを備える電子ビーム装置を用意することであって、
前記抽出電極が、前記冷電界放出源と前記ミラー電極との間に配設され、
前記ミラー電極が、前記抽出電極と前記アノードとの間に配設される、用意することと、
前記抽出電極を浄化することであって、前記抽出電極を、前記冷電界放出源および前記ミラー電極に対して正にバイアスすることを含む、浄化することと、
前記抽出電極を浄化した後に、前記電子ビーム装置を使用することであって、
前記抽出電極を、前記冷電界放出源に対して正にバイアスすることと、
前記ミラー電極および前記アノードを、前記抽出電極に対して正にバイアスすることとを含む、使用することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記抽出電極を、前記冷電界放出源および前記ミラー電極に対して正にバイアスすることが、前記ミラー電極を前記冷電界放出源に電気的に接続することを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記ミラー電極および前記アノードを、前記抽出電極に対して正にバイアスすることが、前記ミラー電極を前記アノードに電気的に接続することを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記ミラー電極および前記アノードを、前記抽出電極に対して正にバイアスすることが、前記ミラー電極および前記アノードを接地することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、
前記抽出電極を、前記冷電界放出源に対して正にバイアスすることが、第1の負電圧を前記冷電界放出源に印加することと、第2の負電圧を前記抽出電極に印加することとを含み、前記第2の負電圧の大きさが前記第1の負電圧の大きさよりも小さく、
前記抽出電極を、前記冷電界放出源および前記ミラー電極に対して正にバイアスすることが、前記第1の負電圧を前記冷電界放出源および前記ミラー電極に印加することと、前記第2の負電圧を前記抽出電極に印加することとを含み、
前記ミラー電極および前記アノードを、前記抽出電極に対して正にバイアスすることが、前記ミラー電極および前記アノードを接地することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法であって、
前記電子ビーム装置が、前記ミラー電極を選択的に、前記冷電界放出源または前記アノードに電気的に接続するためのスイッチをさらに備え、
前記抽出電極を、前記冷電界放出源および前記ミラー電極に対して正にバイアスすることが、前記ミラー電極を前記冷電界放出源に電気的に接続するように前記スイッチを構成することを含み、
前記ミラー電極および前記アノードを、前記抽出電極に対して正にバイアスすることが、前記ミラー電極を前記アノードに電気的に接続するように前記スイッチを構成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記抽出電極を、前記冷電界放出源および前記ミラー電極に対して正にバイアスすることが、第1の負電圧を前記冷電界放出源および前記ミラー電極に印加することと、第2の負電圧を前記抽出電極に印加することとをさらに含み、前記第2の負電圧の大きさが前記第1の負電圧の大きさよりも小さく、
前記抽出電極を、前記冷電界放出源に対して正にバイアスすることが、前記第1の負電圧を前記冷電界放出源に印加することと、前記第2の負電圧を前記抽出電極に印加することとを含み、
前記ミラー電極および前記アノードを、前記抽出電極に対して正にバイアスすることが、前記ミラー電極および前記アノードを接地することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項9に記載の方法であって、前記抽出電極を浄化する前に、前記抽出電極をベークアウトすること、および、前記冷電界放出源をフラッシングすることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法であって、
前記第1の開口部が、前記冷電界放出源の下に位置付けられ、
前記第2の開口部が、前記第1の開口部の下に位置付けられることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記第2の開口部が前記第1の開口部よりも幅が広いことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記抽出電極および前記ミラー電極が、前記冷電界放出源、前記第1の開口部、および前記第2の開口部を貫通する軸の周りに半径方向に対称であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子ビーム(「eビーム」)装置に関し、より詳細には、eビーム装置において電子銃の抽出電極を浄化するための電子ビーム(「eビーム」)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷電界放出源は、高スループット、および、高空間分解能式eビームの用途に適した選択である可能性がある。しかしながら、そのような用途における冷電界放出源の使用では、冷電界放出源を汚染し、その寿命を縮め、放出ノイズを生じさせるおそれがある残留ガス圧が問題となる。典型的な極端な超高真空環境(≒1e-11トール)の残留ガス圧は、真空チャンバ構成部品のガス放出によって生み出される。1つのそのような構成部品は、抽出電極(時には単に抽出器と称されることもある)である。冷電界放出源が据え付けられて公称の真空度が達成されると、抽出電極はベークアウトされて、後続のガス放出を低減する。しかしながら、冷電界放出源の近傍の抽出電極の表面から分子を完全に脱離させるには、ベークアウトだけでは不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/061500号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、抽出電極を浄化するための方法およびシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態では、eビーム装置は、電子を放出する冷電界放出源と、冷電界放出源から電子を抽出するために、冷電界放出源に対して正にバイアスされる抽出電極を含む。抽出電極は、電子のための第1の開口部を有する。eビーム装置は、電子のための第2の開口部を備えたミラー電極をさらに含む。ミラー電極は、第1の動作モード中に抽出電極に対して正にバイアスされ、第2の動作モード中に抽出電極に対して負にバイアスされるように構成可能である。抽出電極は、冷電界放出源とミラー電極との間に配設される。eビーム装置は、抽出電極および冷電界放出源に対して正にバイアスされるアノードをさらに含む。ミラー電極は、抽出電極とアノードとの間に配設される。
【0006】
いくつかの実施形態では、方法は、冷電界放出源と、冷電界放出源からの電子のための第1の開口部を備える抽出電極と、電子のための第2の開口部を備えるミラー電極と、アノードとを含むeビーム装置を用意することを含む。抽出電極は、冷電界放出源とミラー電極との間に配設される。ミラー電極は、抽出電極とアノードとの間に配設される。方法は、抽出電極を浄化することをさらに含み、抽出電極を浄化することは、冷電界放出源およびミラー電極に対して抽出電極を正にバイアスすることを含む。方法は、抽出電極を浄化した後に、eビーム装置を使用することをさらに含む。eビーム装置を使用することは、冷電界放出源に対して抽出電極を正にバイアスすることと、抽出電極に対してミラー電極およびアノードを正にバイアスすることとを含む。
【0007】
さまざまな記述された実装形態をより良好に理解するために、下記の図面と併せて下記の詳細説明への参照を行うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】いくつかの実施形態による、eビーム装置が通常オペレーティングモード向けに構成されている場合の、冷電界放出源と、抽出電極と、ミラー電極と、アノードとを含むeビーム装置の断面側面図である。
図1B】いくつかの実施形態による、抽出電極を浄化するための動作モード向けに構成された、図1Aのeビーム装置の断面側面図である。
図2】いくつかの実施形態による、ミラー電極を構成するためにスイッチが使用される、図1A図1Bのeビーム装置の例を示す図である。
図3】いくつかの実施形態による、eビーム装置をオペレーティングする方法を示すフローチャートである。
図4】表面のeビーム照射を通じて達成された定常状態のガス放出における低減を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
同様の符号は、図および本明細書全体を通して対応する部分を指している。
【0010】
次に、添付図面において例示される例を有するさまざまな実施形態に対して参照を詳細に行うこととする。以下の詳細説明では、さまざまな記述された実施形態の完全な理解を実現するために多くの特定の詳細が明記されている。しかしながら、当業者にとっては、さまざまな記述された実施形態が、これらの特定の詳細なしに実践され得ることは明らかであろう。他の実例では、実施形態の態様を不必要にあいまいにしないように、周知の方法、手順、構成部品、回路、およびネットワークは、詳細に記述されていない。
【0011】
単に電界放出と呼ばれることもある冷電界放出とは、近傍の電極に対して相対的に負の電位が(例えば、数キロボルトが)存在する、先端のとがった放出器からの電子の放出を指している。冷電界放出は、室温(熱電子放出と比較して低温であると考えられる)で起こり得、熱電子放出によって生じたeビームよりも電子密度が数桁高いeビームをもたらし得る。
【0012】
図1Aおよび図1Bは、いくつかの実施形態による、冷電界放出源102と、抽出電極104と、ミラー電極116と、アノード120とをこの順序で配列した状態で含むeビーム装置100の断面側面図である。冷電界放出源102はさらに、電界放出源、電界放出器、または冷電界放出器とも称され得る。抽出電極104は、冷電界放出源102とミラー電極116との間に配設され、ミラー電極116は、抽出電極104とアノード120との間に配設される。冷電界放出源102は、アノード120の方に向いたとがった先端を有する。この構成では、冷電界放出源102は、カソードとして機能する。これらの構成部品は、真空チャンバ122内に配設される。真空チャンバ122は、超高真空(UHV)を実現することができる。(UHVは、10-9の桁のトール以下の圧力を有する真空度を指す、標準的な周知の技術用語である。)いくつかの実施形態では、eビーム装置100は、電子顕微鏡(例えば、走査電子顕微鏡(SEM))である。
【0013】
図1Aは、いくつかの実施形態による、第1の動作モード向けに構成されたeビーム装置100を示している。第1の動作モードは、通常オペレーティングモードである。第1の電圧-Vbeamが、冷電界放出源102に印加される。第2の電圧+Vext-Vbeamが、抽出電極104に印加されて、冷電界放出源102に対して抽出電極104を正にバイアスする。一実施例では、Vbeamは10kVであり、Vextは3kVであるので、-10kVが冷電界放出源102に印加され、-7kVが抽出電極104に印加される。他の例が実現可能である。例えば、抽出電極104と冷電界放出源102(すなわち、Vext)との間の電圧差は3kV~5kVであり得る。アノード120およびミラー電極116は、冷電界放出源102および抽出電極104に対して正にバイアスされる。例えば、アノード120およびミラー電極116は、ミラー電極116がアノード120に電気的に接続された状態で、接地される。
【0014】
構成部品がこのようにバイアスされた状態で、冷電界放出源102は電子114を放出する:抽出電極104は、冷電界放出源102から電子114を抽出する。このように、冷電界放出源102および抽出電極104は、eビーム装置100のための電子銃として機能する。いくつかの電子114-1は、抽出電極104内の(例えば、抽出電極104の中心の)開口部112を通り抜ける。電子114-1はさらに、ミラー電極116内の(例えば、ミラー電極116の中心の)開口部118を通り抜ける。抽出電極104内の開口部112は、冷電界放出源102の下に位置付けられる。ミラー電極116内の開口部118は、抽出電極104内の開口部112の下に位置付けられる。いくつかの実施形態では、開口部118は、(例えば、開口部112を通り抜ける実質的にすべての電子114-1が、開口部118も通り抜けるように)開口部112よりも幅が広い。いくつかの実施形態では、抽出電極104および/またはミラー電極116は、冷電界放出源102、開口部112(例えば、開口部112の中心)、および/または開口部118(例えば、開口部118の中心)を貫通して延びる軸の周りに半径方向に対称である。
【0015】
冷電界放出源102によって放出された他の電子114-2は、開口部112をそれ、開口部112を取り囲む抽出電極104の上面の部分106に衝突する。抽出電極104の上面は、冷電界放出源102に面する表面である。上面の部分106に衝突する電子114-2からの電流は、電子移動によって誘起されたeビーム脱離(DIET:Desorption Induced by Electronic Transitions)によって、部分106から、化学吸着されたラジカルを取り除く(すなわち、ラジカルを脱離する)。底面110(すなわち、ミラー電極116に面する表面)と、部分106を超えた(例えば、取り囲む)上面の部分108を含む、抽出電極104の他の表面には、部分106よりもはるかに小さな電流が衝突する。したがって、部分108および底面110は、時折、電子が衝突すると、誘起された脱離を通じて陽イオンを放つ、化学吸着された単層を有する傾向がある。放たれた陽イオンは、逆にした電子の経路をたどり、冷電界放出源102に到達して、放出寿命を低減し、放出ノイズを生み出すことになる。
【0016】
上面の部分106を浄化およびアニールするためのみならず、抽出電極104の内側ボアを含む、開口部112の近傍の底面110の部分を浄化およびアニールするために、抽出電極104とミラー電極116との間の範囲における電界は、通常オペレーティングモードに対して逆向きにされる。この範囲において電界を逆向きにすることにより、eビーム(すなわち、電子114-1)は、底面110(抽出電極104の内側ボアを規定する部分を含む)の部分124(図1B)の周りに向かい、部分124に衝突し、以て底面110の部分上の単層からラジカルを脱離する。(底面110はミラー電極116に面している)。この工程は、抽出電極104をベークアウトすること、および/または、冷電界放出源102をフラッシングすることの後に実行されてもよい。この脱離によって放出されたイオンは、逆にした電界に追従し、冷電界放出源102から遠ざかるように方向付けられることになる。
【0017】
図1Bは、いくつかの実施形態による、第2の動作モード(すなわち、抽出電極104を浄化するためのモード)向けに構成されたeビーム装置100を示している。図1Aの第1のモードの際のように、抽出電極104は、冷電界放出源102に対して正にバイアスされる。例えば、第1の電圧-Vbeamは、冷電界放出源102に印加され、第2の電圧+Vext-Vbeamは、抽出電極104に印加されて、冷電界放出源102から電子114を抽出する(すなわち、冷電界放出源102に電子を放出させる)。第1のモードの際のように、アノード120は、抽出電極104および冷電界放出源102に対して正にバイアスされてもよい。例えば、アノード120は接地される。しかしながら、ミラー電極116は、抽出電極104に対して負にバイアスされるように構成される。図1Bに示されるように、いくつかの実施形態では、ミラー電極116は、冷電界放出源102に電気的に接続される。例えば、第1の電圧-Vbeamは、冷電界放出源102とミラー電極116との両方に印加される一方、第2の電圧+Vext-Vbeamは、抽出電極104に印加される。
【0018】
このようにして、ミラー電極116は、第1の動作モード中には抽出電極104に対して正にバイアスされ、第2の動作モード中には抽出電極104に対して負にバイアスされるように構成可能である。いくつかの実施形態では、ミラー電極116は、第1の動作モード中にはアノード120に電気的に接続され(図1Aに示されるように)、第2の動作モード中には冷電界放出源102に電気的に接続される(図1Bに示されるように)ように構成可能である。
【0019】
ミラー電極116を抽出電極104に対して十分に負に(例えば、少なくともVextだけ)バイアスすることにより、開口部112を通り抜ける電子114-1は、抽出電極104に戻る向きに方向付けられ、そこで電子114-1は、底面の部分124に衝突し、そのようにして部分124は浄化され、アニールされる。ミラー電極116は、電子114-1を反射して戻して抽出電極104に到達させるミラーとして効果的に機能して、抽出電極104の自己浄化をもたらす。
【0020】
図2は、いくつかの実施形態による、eビーム装置100(図1A図1B)の例であるeビーム装置200の断面側面図である。eビーム装置200は、ミラー電極116を構成する(すなわち、バイアスする)ために使用されるスイッチ202を含む。スイッチ202は、ミラー電極116を、第1の動作モード中(すなわち、通常オペレーティングモード中)には、アノード120に、第2の動作モード中(すなわち、抽出電極浄化モード中)には、冷電界放出源102に電気的に接続するために使用される。ミラー電極116、冷電界放出源102、およびアノード120は、スイッチ202のそれぞれの端子に電気的に接続される。スイッチ202は、制御信号204によって制御される。第1の動作モードでは、制御信号204により、スイッチ202は、ミラー電極116用の端子をアノード120用の端子に接続する。第2の動作モードでは、制御信号204により、スイッチ202は、ミラー電極116用の端子を冷電界放出源102用の端子に接続する。いくつかの実施形態では、制御信号204は、第1の動作モードに対してアサートされ第2の動作モードに対してディアサートされてもよく、または逆にされてもよい。
【0021】
図3は、いくつかの実施形態による、eビーム装置をオペレーティングする方法300を示すフローチャートである。方法300では、冷電界放出源(例えば、冷電界放出源102)と、冷電界放出源からの電子のための第1の開口部(例えば、開口部112)を備える抽出電極(例えば、抽出電極104)と、電子のための第2の開口部(例えば、開口部118)を備えるミラー電極(例えば、ミラー電極116)と、アノード(例えば、アノード120)とを含むeビーム装置(例えば、装置100、図1A~1B:装置200、図2)が用意される(302)。抽出電極は、冷電界放出源とミラー電極との間に配設される。ミラー電極は、抽出電極とアノードとの間に配設される。いくつかの実施形態では、第1の開口部は、冷電界放出源の下に位置付けられ、第2の開口部は、第1の開口部の下に位置付けられる。第2の開口部は第1の開口部よりも幅が広くてもよい。抽出電極およびミラー電極は、冷電界放出源、第1の開口部(例えば、第1の開口部の中心)、および/または第2の開口部(例えば、第2の開口部の中心)を貫通する軸の周りに半径方向に対称であってもよい。
【0022】
汚染を低減し高真空度を達成するために、抽出電極はベークアウトされ(304)、冷電界放出源はフラッシングされる(304)。ベークアウトは、抵抗器を介した抽出電極の直接的な加熱によって、およそ200℃で行われてもよい。フラッシングとは、冷電界放出源を一時的に(例えば、数秒間にわたって)加熱し、その表面を浄化することを指している。ベークアウトおよびフラッシングは、eビームをオンにする前に行われる。
【0023】
さらに汚染を低減するために、抽出電極は浄化される(306)。この浄化は、ベークアウトおよびフラッシングの後に行われてもよい。抽出電極を浄化することは、冷電界放出源およびミラー電極に対して抽出電極を正にバイアスすることを含む。冷電界放出源に対して抽出電極を正にバイアスすると、冷電界放出源から電子が抽出され、それによってeビームがオンになる。ミラー電極に対して抽出電極を正にバイアスすることにより、ミラー電極は、電子を反射して戻して抽出電極の底面に到達させるミラーとして機能する。
【0024】
いくつかの実施形態では、抽出電極を浄化するために、ミラー電極は、冷電界放出源に電気的に接続される(308)(例えば、図1Bに示されたように)。例えば、スイッチ(例えば、スイッチ202、図2)は、ミラー電極を冷電界放出源に電気的に接続するように構成される(310)。いくつかの実施形態では、第1の負電圧(例えば、-Vbeam)が、冷電界放出源およびミラー電極に印加されて(312)(例えば、ミラー電極が冷電界放出源に電気的に接続されたまま、冷電界放出源に印加される)、第2の負電圧(例えば、+Vext-Vbeam)が抽出電極に印加される(312)。第2の負電圧の大きさは、第1の負電圧の大きさよりも(例えば、量Vextだけ)小さい。例えば、第1の負電圧は-10kVであり、第2の負電圧は-7kVである。他の例では、第2の負電圧と第1の負電圧との差は、3kV~5kVである。
【0025】
抽出電極が浄化された後、eビーム装置が使用される(314)。eビーム装置を使用するために、抽出電極は、冷電界放出源に対して正にバイアスされ、ミラー電極およびアノードは、抽出電極に対して正にバイアスされる。いくつかの実施形態では、ミラー電極はアノードに電気的に接続される(316)(例えば、図1Aに示すように)。例えば、スイッチ(例えば、スイッチ202、図2)は、ミラー電極をアノードに電気的に接続するように構成される(318)。ミラー電極およびアノードは接地されてもよい(320)(例えば、アノードが接地されて、しかもミラー電極がアノードに接続されてもよく、それによって、ミラー電極も接地される)。第1の負電圧(例えば、-Vbeam)は、冷電界放出源に印加されてもよく(322)、第2の負電圧(例えば、+Vext-Vbeam)は、抽出電極に印加されてもよい(322)。
【0026】
方法300は、浄化ステップ306における、電子移動によって誘起された脱離を活用することによって抽出電極の表面の浄化を改善する。したがって、eビーム装置の使用中(すなわち、ステップ314中)の冷電界放出源の性能が改善され、冷電界放出源の寿命も改善される。
【0027】
図4は、表面のeビーム照射を通じて達成された定常状態のガス放出における低減を示すグラフ400である。グラフ400を作り出すために、図1Bの構成におけるアノード120は、イオン検出器として機能するマイクロチャネルプレートで置き換えられた。イオン検出器のバイアス402にはばらつきがあり、イオン検出器によって測定されたイオン電流404は、バイアス402の異なる値に対して記録される。バイアス402は、抽出電極104の電位に対して相対的である。真空度の圧力は、1e-8トール(すなわち、10-8トール)であった。バイアス402が-1000Vに下がった場合、電流404は、脱離によって(すなわち、DIETによって)抽出電極で作り出された高エネルギーイオンに対応する領域406内にある。領域406では、電流404は、実質的に一定であり、バイアス402から独立している。バイアス402が、-1000Vより下に降下し、ますますより負が強くなると、電流404は、より負が強くなる、すなわち電流の絶対値が増大する領域408に入る。領域408は、ビーム経路に沿った電子イオン化(すなわち、自由空間のイオン化)によって生み出された、より低いエネルギーイオンに対応し、領域406と比較して領域408内の追加の電流は、自由空間のイオン化によって作り出されたイオンに起因する。バイアス402がより負が強くなるにつれて電流404の大きさが増大することは、自由空間のイオン化によって生み出されたイオンが、抽出電極104からの脱離によって生み出されたイオンに数で勝ること、すなわち、抽出電極104の表面は、自由空間の電子イオン化よりも少ないイオンを作り出すことを示している。これらの結果は、抽出電極104の絶え間ない電子照射は、抽出電極104から、化学吸着された汚染物質を除去し、化学吸着された汚染物質の単層が生じるのを防止することによって、抽出電極104に対する定常状態の脱離を最小化する、ことを示している。
【0028】
説明を目的とした前の記述は、特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、上記の例示的な考察は、網羅的を意図するものでも、開示された精密な形態に対する特許請求の範囲を限定することを意図するものでもない。多くの変形および異形が、上記の教示に鑑みて実現可能である。実施形態は、特許請求の範囲の基礎となる原理、および、その実際の適用を最良に説明するために選択されたので、それによって当業者は、企図される特定の使用に適するようなさまざまな変形を伴う実施形態を最良に使用することができるようになる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【国際調査報告】