(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】改良された段積み性能を有する音響減衰要素
(51)【国際特許分類】
B32B 25/00 20060101AFI20240705BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240705BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B32B25/00
F16F15/02 Q
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579212
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022067530
(87)【国際公開番号】W WO2023280610
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ビット
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ビドビッチ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック シュワブ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン スペングラー
【テーマコード(参考)】
3J048
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
3J048AC03
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4F100AB01C
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4F100YY00B
4F100YY00C
5D061AA04
5D061AA16
(57)【要約】
本発明は、第一の表面(3)及び第二の表面(3’)を有する減衰層(2)、並びにその減衰層(2)の第一の表面(3)の少なくとも一部を被覆する接着層(4)を含む、振動及び騒音の減衰要素(1)を目的としている。その減衰層(2)は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、30,000~500,000Pa・sの60℃での粘度を有する減衰層材料から構成されており、その接着層(4)は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、50,000~300,000Pa・sの60℃での粘度を有する接着層材料から構成されている。減衰層(2)の厚みd1対接着層(4)の厚みd2の比率(d1/d2)が0.6~4.0であり、減衰層(2)の厚みd1と接着層(4)の厚みd2との合計(d1+d2)が0.5~2.5mmである。その振動及び騒音の減衰要素は、低温での落球試験で良好な性能を示し、それが適用された基材に対する良好な接着性を有し、良好な振動及び騒音減衰性能を与え、30~50℃の間の温度で貯蔵した後でも、容易な分離又は取り外しを保証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動及び騒音の減衰要素(1)であって、
i)第一の表面(3)及び第二の表面(3’)を有する減衰層(2)、並びに
ii)前記減衰層(2)の前記第一の表面(3)の少なくとも一部を被覆する接着層(4)、
を含み;
前記減衰層(2)が、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、30,000~500,000Pa・sの60℃での粘度を有する減衰層材料から構成され;及び
前記接着層(4)が、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、50,000~300,000Pa・sの60℃での粘度を有する接着層材料から構成され;及び
前記減衰層(2)の厚みd1対前記接着層(4)の厚みd2の比率(d1/d2)が、0.6~4.0であり;及び
前記減衰層(2)の厚みd1と前記接着層(4)の厚みd2との合計(d1+d2)が、0.5~2.5mmであり;
前記粘度が、DIN 54458に従い、加熱可能なプレートを有するレオメーターの手段(ギャップ:500μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、変形:1%、角周波数:10rad/s)により、オシログラフ法で測定される;
振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項2】
前記減衰層材料が、40,000~250,000Pa・s、好ましくは50,000~200,000Pa・s、最も好ましくは65,000~150,000Pa・sの60℃での粘度を有する、請求項1に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項3】
前記接着層材料が、60,000~200,000Pa・s、好ましくは65,000~150,000Pa・s、最も好ましくは70,000~100,000Pa・sの60℃での粘度を有する、請求項1又は2に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項4】
前記減衰層材料が、前記接着層材料とは同一でない、請求項1~3のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項5】
前記減衰層(2)の厚みd1対前記接着層(4)の厚みd2の比(d1/d2)が、0.8~3.0、好ましくは1.2~2.5である、請求項1~4のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項6】
前記減衰層(2)の厚みd1と前記接着層(4)の厚みd2との合計(d1+d2)が、0.75~2.1mm、好ましくは1.25~1.9mmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項7】
前記減衰層材料が、20,000~150,000Pa・s、好ましくは25,000~100,000Pa・s、最も好ましくは30,000~50,000Pa・sの100℃での粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項8】
前記接着層材料が、60,000~200,000Pa・s、好ましくは65,000~150,000Pa・s、最も好ましくは70,000~100,000Pa・sの100℃での粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項9】
前記減衰層(2)の厚みd1が、0.4~1.5mm、好ましくは0.7~1.3mm、より好ましくは0.9~1.2mmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項10】
前記接着層(4)の厚みd2が、0.25~0.85mm、好ましくは0.35~0.80mm、より好ましくは0.45~0.75mmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項11】
前記接着層材料が、Volkswagenグループの規格、品質要求性能、自己接着性硬化パッドおよび消音パッド,QP M052,12頁,ポイント3.7.5 冷時接着物の落球試験/測定(「Kugelfall/Bestimmung der Kaerltehaftung」),PV 3971,2020-03版に従う-30℃での落球試験によって、前記接着層材料の長さ/幅/厚みが7cm×7cm×1.7mmでありかつ前記接着層材料の上に0.3mmの厚みのアルミニウム層を有する試験サンプルを使用して測定したときに、評価3以下、好ましくは評価2以下、最も好ましくは評価1の接着性を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項12】
前記減衰層(2)の第二の表面の少なくとも一部を被覆する拘束層(5)をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項13】
前記減衰層と前記拘束層(5)とが、それらの相向いの表面にわたって互いに直接接合され、好ましくは前記減衰層(2)が前記接着層(4)と前記拘束層(5)との間に挟み込まれている、請求項12に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項14】
前記拘束層(5)が、金属シート、好ましくはアルミニウム若しくは鋼製シート、又はポリマーシート、好ましくはガラス繊維強化ポリマーシート、最も好ましくは金属シートであり、並びに前記拘束層(5)の厚みd3が、0.05~0.6mm、好ましくは0.1~0.5mm、より好ましくは0.2~0.4mmである、請求項12又は13に記載の振動及び騒音の減衰要素(1)。
【請求項15】
前記振動及び騒音の減衰要素が、下記の性質を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の振動及び騒音の減衰要素(1):
- 最大損失係数が測定される温度(T@LF
max)が、5℃~25℃、好ましくは15℃~25℃であり;かつ
- 前記最大損失係数(LF
max)の値が、0.3以上、好ましくは0.35以上、好ましくは0.39以上、好ましくは0.40以上、最も好ましくは0.41以上であり、前記損失係数は、ISO 6721規格に規定された測定方法を使用して求めたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造物品の機械的構造物における振動及び騒音の減衰要素に関する。詳しくは、本発明は、自動車産業、家電製品、及び一般産業の物品の中に含まれる構成要素及び構造物の振動を減衰させるのに好適な振動及び騒音の減衰要素に関する。
【背景技術】
【0002】
音響減衰材料は、望ましくない振動、構造に起因する騒音(structure borne noise)、及び空気に起因する騒音(air borne noise)を低減させるために、自動車産業、家電製品、及び一般産業において広く使用されている。たとえば、自動車においては、モーター、ポンプ、ギア、及びその他の動的力の発生源によって発生する振動が、車体を介して車室の中に移行するのを防ぐのが望ましい。動的力の発生源から発生する振動が、支持構造体、典型的にはフレーム又はその他の中空構造物を介して、騒音を発生する表面たとえば金属又はプラスチック製のパネルへ移行し、それらが、その機械的な振動を音波に変換することによって、構造に起因する騒音が発生する。構造に起因する騒音及び振動は、一般的には、振動的騒乱がもたらされる構造物及び構成要素の表面、たとえば、車両のパネル、フロアの表面、並びに、機械、洗濯機、及び乾燥機の外殻に、振動減衰材料を直接適用することによって、効果的に低減させることができる。
【0003】
特開平09-123356A号公報には、板紙層、ゴムシート層、及び感圧接着剤層を含む、耐熱性の防振シートが開示されている。この防振シートは、塗装前に接着させ、そして塗装後の焼き付けプロセスで車体に付着させることができる。
【0004】
特開平05-220883A号公報には、アルミニウムフォイルで作成した高弾性抑制層、加硫EPDMゴム混合物で作成した中弾性抑制層、及びブチルゴムベースの低弾性接着層を含む、3層を積層した振動減衰シートが開示されている。
【0005】
欧州特許出願公開第3 828 226A1号明細書には、ビチューメン構成要素又はポリマー構成要素、及び少なくとも1種の固体で微粒子状のセルロース含有充填剤を含む充填剤構成要素を含む、バインダーマトリックスを含む音響減衰材料が開示されている。その音響減衰材料は、機械的構造物及び製造物品の構成要素における、望ましくない振動及び騒音を減衰させるために使用するのに好適である。
【0006】
パネル及びプレートの振動を減衰させるために使用される音響減衰材料は、一般的には、予備成形された単一層及び多層の減衰要素の形態、又は基材の表面に直接適用される液状組成物として、提供される。中空構造物たとえばキャビティの中での振動及び騒音を減衰させるように設計された減衰材料は、通常、発泡性組成物を含むキャビティ充填剤インサート及び、そのキャビティ充填剤インサートをその中空構造物の内部の所望の位置に保持させることを可能とする1種又は複数の取付け要素の形態で提供される。
【0007】
予備成形された単一層及び多層の減衰要素には、減衰層(damping layer)が含まれ、それが、振動的騒乱に対して減衰される基材の表面と直接的な接触状態にある。減衰層は、その減衰層の物質の伸縮を介して、振動している表面の運動エネルギーを熱エネルギーに消散させることができる。減衰層のために広く使用されている材料としては、比較的に高い含量での粒子充填剤、並びに各種の量での添加剤、特には可塑剤、レオロジー調節剤、及び乾燥剤を含む、ビチューメンベース及びゴムベースの組成物が挙げられる。予備成形された単一層及び多層の減衰要素には、多くの場合、接着剤組成物、たとえば感圧接着剤(PSA)又はホットメルト接着剤の層が含まれていて、基材、たとえば自動車のパネル又はフロアの表面にその減衰層を接合させることを可能としている。液状で適用される減衰システムは、典型的には、加熱乾燥性、ゲル化性、又は反応性の組成物であって、それらは、液の状態で、たとえばスプレー法によって、基材の表面に適用される。
【0008】
パネル及びプレートの振動を減衰させるために使用される音響減衰材料はさらに、拘束層(constrained layer)減衰要素の形態で提供することも可能であるが、その層には、減衰層と、減衰層を堅い外側層と減衰対象の基材の表面との間に挟み込んで、それを「拘束(constraint)」する、堅い外側層とが含まれる。その外側層の剛性は、一般的には、減衰材料の層の剛性よりも、10倍は高い。外側のトップ層に一般的に使用される材料としては、たとえば、アルミニウム及びガラス繊維布が挙げられる。拘束層のダンパーは、典型的には、望ましくない振動を減衰させるには、単一層の減衰要素よりも効果が高いが、それらの製造コストが高い。
【0009】
キャビティ充填剤インサートは、中空構造構成要素のキャビティの内部での空気に起因する騒音を減衰させるため、及びキャビティの壁面を介して振動が伝わることを防止するために使用される。キャビティ充填剤インサートは、典型的には、減衰材料と、そのキャビティ充填剤インサートをその中空構造物の内部の所望の位置に保持することを可能とする、少なくとも1種の取付け部材とからなっている。そのキャビティ充填剤インサートの減衰材料は、典型的には、発泡性組成物として配合され、それが、たとえば昇温で活性化されると、膨張して、そのキャビティの壁の内部表面にシールを形成する。キャビティの内部で空気に起因する騒音を減衰させるのに適した発泡性減衰材料は、一般的には、「音響バッフル(acoustic baffle)」と呼ばれている。
【0010】
自動車産業及び家電製品産業における音響減衰材料として、ビチューメンベースの組成物が広く使用されてきたが、その理由は、それらが、低コストの原料でありながら、高い振動減衰性能、さらには信頼性が高くそして容易に制御することが可能な物理的性質を備えているからである。家電製品市場においては、現在のところ、ビチューメンベースの減衰システムが、ほとんど100%の市場占有率を有している。高充填のビチューメン組成物は特に、防音被覆及び減音コーティングを与えるために使用されてきたが、それらは、自動車及び家電製品の組立プロセスにおいて、金属及びプラスチック構成要素に適用される。慣用されている手順においては、ビチューメンと充填剤との混合物を、最初に、押出し加工及び/又はカレンダー加工して、フィルムを形成させ、それから、減衰要素として使用するのに適した好適な成形部品を、パンチング又はダイカッティングによって調製する。次いでその減衰要素を、減衰対象の金属又はプラスチックシートに接着させる。その成形部品を、加熱によりさらに加工して、金属の形状又はプラスチックのシートに適合させることもまた可能である。
【0011】
音響減衰要素の主たる応用領域の一つとしては、自動車の内装及び家電製品の洗濯機が挙げられる。これらの用途においては、これらの要素は、特に自動車の場合、それらの使用中に低温暴露に晒される。自動車産業においては、自動車で使用される構成要素の、ほぼ-20~-40℃の低温での品質及び性能が、自動車メーカーによって管理されている。たとえば、-30℃での落球試験を使用して、寒冷時の音響減衰要素の接着性が評価される。さらに、基材の上へのそれらの振動及び騒音の減衰要素の良好な接着性は、室温でも同様に必要とされる。
【0012】
それらの振動及び騒音の減衰要素は、多くの場合、それぞれの接着層の上に、単一の要素が互いに粘着するのを防止するための保護フィルム、典型的にはシリコーン処理された保護フィルムを用いて、複数の要素の配合ゴムを重ね合わせた形態で提供される。しかしながら、特に30~50℃の間の温度での、輸送及び/又は貯蔵の間に、現行のゴムベースの減衰要素は、接着層及び/又は減衰層の側面への漏れ(lateral leakage)に悩まされる。このことによって、後ほど、それらの単一の要素を、場合によっては損傷を与えることなく、分離したり取り外し(unstacking)したりすることが妨げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、30~50℃の間の温度で貯蔵した後で、容易に分離したり取り外したりできることを保証し、そして好ましくは、低温、特に-30℃での落球試験で良好な性能を示し、好ましくはそれが適用される基材に対する良好な接着性を有し、そして、良好な振動及び騒音減衰性能を与える、新規なタイプの振動及び騒音の減衰要素が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、30~50℃の間の温度で貯蔵した後で、容易に分離したり取り外したりできることを保証し、好ましくは、低温、特に-30℃での落球試験で良好な性能を示し、好ましくはそれが適用される基材に対する良好な接着性を有し、そして、良好な振動及び騒音減衰性能を与える、振動及び騒音の減衰要素を提供することである。
【0015】
本発明の主題は、請求項1において定義されている、振動及び騒音の減衰要素である。
【0016】
さらに驚くべきことには、本発明による振動及び騒音の減衰要素が、市販されているゴムベースの振動及び騒音の減衰要素に比較して、同等、又はさらに改良された振動及び騒音減衰性能を示すということが見出された。具体的には、本発明の振動及び騒音減衰要素が、高い振動減衰性能(ほぼ10~20℃の範囲の温度での損失係数によって定義される)を示し、それによって、自動車の構造物及び構成要素の振動及び騒音の減衰における使用に特に好適となることが見出された。
【0017】
本発明の他の主題は、他の独立請求項に提示されている。本発明の好ましい態様は、従属請求項に提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一の表面(3)及び第二の表面(3’)を有する減衰層(2)、並びにその減衰層(2)の第一の表面(3)を被覆する接着層(4)を含む、振動及び騒音の減衰要素(1)を示す断面図である。
【
図2】第一の表面(3)及び第二の表面(3’)を有する減衰層(2)、その減衰層(2)の第一の表面(3)を被覆する接着層(4)、及びその減衰層(2)の第二の表面(3’)を被覆する拘束層(5)を含む、振動及び騒音の減衰要素(1)を示す断面図である。
【
図3】騒音を発生する表面(7)を有する基材(6)並びに減衰層(2)及び接着層(4)を含む振動及び騒音の減衰要素(1)を含む、振動減衰されたシステムを示す断面図であり、ここで、その減衰層(2)の第一の表面(3)は、接着層(4)を介して、騒音を発生する表面(7)に接着的に接合されている。
【
図4】騒音を発生する表面(7)を有する基材(6)並びに、減衰層(2)、接着層(4)、及び拘束層(5)を含む振動及び騒音の減衰要素(1)を含む振動減衰されたシステムを示す断面図であり、ここで、その減衰層(2)の第一の表面(3)は、接着層(4)を介して、騒音を発生する表面(7)に接着的に接合されており、そしてここで、その減衰層(2)は、接着層(4)と拘束層(5)との間に挟み込まれている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の主題は、以下のものを含む、振動及び騒音の減衰要素(1)である:
i)第一の表面(3)及び第二の表面(3’)を有する減衰層(2)、並びに
ii)その減衰層(2)の第一の表面(3)の少なくとも一部を被覆する接着層(4)。
【0020】
その減衰層(2)は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、30,000~500,000Pa・sの60℃での粘度を有する減衰層材料から構成され、及びその接着層(4)は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、50,000~300,000Pa・sの60℃での粘度を有する接着層材料から構成される。粘度は、DIN 54458に従い、加熱可能なプレート(ギャップ:500μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、変形:1%、角周波数:10rad/s)を有するレオメーターの手段により、オシログラフ法で測定する。
【0021】
60℃での減衰層材料の粘度が30,000Pa・s未満であると、段積み性能(stackability performance)が不十分となる。他方、60℃での粘度が500,000Pa・sより高いと、接着性、特に金属表面に対する接着性が不十分となる。このことは、たとえば、表4においてRef.4を、Ex.1及びEx.2と比較すれば、理解できる。
【0022】
その減衰層材料が、20,000~150,000Pa・s、好ましくは25,000~100,000Pa・s、最も好ましくは30,000~50,000Pa・sの100℃での粘度を有しているのも、やはり好ましい。
【0023】
さらに、60℃での接着層材料の粘度が50,000Pa・s未満であると、段積み性能がやはり不十分となる。さらに、60℃での粘度が300,000Pa・sよりも高いと、接着性が不十分となり、そして低温での落球試験性能も不十分となる。このことは、表4においてRef.2及びRef.3を、Ex.1と比較すれば、理解できる。
【0024】
その接着層材料が、60,000~200,000Pa・s、好ましくは65,000~150,000Pa・s、最も好ましくは70,000~100,000Pa・sの100℃での粘度を有していれば、さらに好ましい。
【0025】
減衰層(2)の厚みd1対接着層(4)の厚みd2の比率(d1/d2)は、0.6~4.0である。驚くべきことには、その比率が0.6よりも低いと、段積み性能が不十分となることが見出された。それに加えて、比率が4.0よりも高いと、低温での落球試験性能が不十分となるが、このことは、Ref.1及びRef.6~8を、Ex.1及びEx.3と比較すれば、理解できる。
【0026】
その(d1/d2)は、好ましくは0.8~3.0、より好ましくは1.2~2.5である。このことは、良好な段積み性能に関して有利である。このことは、表4において、Ex.1をEx.3と比較すれば理解できる。
【0027】
減衰層(2)の厚みd1と接着層(4)の厚みd2との合計(d1+d2)は、0.5~2.5mmである。0.5mm未満では、接着性が不十分となるということが見出された。他方、合計が2.5mmよりも多いと、低温での落球試験性能が不十分となる。このことは、Ref.9を、Ex.1及びEx.4~6と比較すれば理解できる。
【0028】
その厚みの合計(d1+d2)が、0.75~2.1mm、好ましくは1.25~1.9mmであれば、有利である。このことにより、Ex.1とEx.4~6との比較に見られるように、高い接着強度が得られる。
【0029】
本発明による振動及び騒音の減衰要素の断面図を
図1に示す。
【0030】
1つ又は複数の実施形態においては、その減衰層が、それらの間の厚みを規定する第一及び第二の主表面を有し、そしてそのシート状の要素の厚みの少なくとも5倍、好ましくは少なくとも15倍、より好ましくは少なくとも25倍の長さ及び幅を有する、シート状の要素である。「厚み」という用語は、好ましくは、その要素の長さ及び幅の寸法に対して垂直な状態にある平面で測定される、シート状の要素の寸法を指している。その減衰層がシート状の要素である実施形態においては、その減衰層の第一及び第二の表面は、シート状の要素の第一及び第二の主表面に相当する。
【0031】
減衰層と接着層とは、それらの相向いの表面にわたって、互いに直接接合されているのが好ましい。「直接接合されている(directly connected)」という表現は、本発明の文脈においては、それら二つの層の間には、さらなる層又は物質が存在せず、そしてそれらの層の相向いの表面が、互いに直接接着されているということを意味していると理解されたい。1つ又は複数の実施形態においては、その接着層が、その減衰層の第一の表面の、少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%を被覆している。1種又は複数のさらなる実施形態においては、その接着層が、その減衰層の第一の表面の、実質的に全面積を被覆している。「実質的に全面積」という表現は、その合計面積の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98.5%を意味していると理解されたい。
【0032】
減衰層材料が、接着層材料とは同一ではないのが好ましい。
【0033】
その接着層(4)は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、50,000~300,000Pa・sの60℃での粘度を有する接着層材料から構成されている。その接着層材料が、60,000~200,000Pa・s、好ましくは65,000~150,000Pa・s、最も好ましくは70,000~100,000Pa・sの60℃での粘度を有しているのが好ましい。
【0034】
その接着層(4)の厚みd2が、0.25~0.85mm、より好ましくは0.35~0.80mm、最も好ましくは0.45~0.75mmであるのが好ましい。
【0035】
その接着層材料が、評価3以下、好ましくは評価2以下、最も好ましくは評価1の接着性を有していれば、さらに好ましい。前記接着性は、Volkswagenグループの規格:品質要求性能、自己接着性硬化パッドおよび消音パッド(quality requirements,self-adhesive stiffening pads and sound deadening pads),QP M052,12頁,ポイント3.7.5,冷時接着物の落球試験/測定(Ball drop test/determination of cold adhesion)(“Kugelfall/Bestimmung der Kaerltehaftung”)、PV 3971,2020-03版」に従った、-30℃での落球試験により測定するが、使用した試験サンプルは、接着層材料の長さ/幅/厚みが7cm×7cm×1.7mmであり、その接着層材料の上に厚み0.3mmのアルミニウム層を備えたものである。実験の項で記載したようにして、接着性を測定するのが、より好ましい。
【0036】
その接着層材料は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含んでいる。
【0037】
好ましいゴム構成要素Ruは、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレン、ブチルゴムBR、天然若しくは合成のポリイソプレンPI、ニトリルゴムNBR、エチレン-プロピレンターポリマーEPDM、エチレン-プロピレンコポリマーEPM、及びクロロプレンゴムCRからなる群から選択される25℃で液状のゴムLRのリストから選択され、好ましくは、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレン、ブチルゴムBR、及び天然若しくは合成のポリイソプレンPIからなる群から選択される25℃で液状のゴムLRから選択される。
【0038】
好ましくは、接着層材料は以下のものを含む音響減衰材料である:
a)その音響減衰材料の合計重量を基準にして、0.75重量%以上の、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位を含む少なくとも1種のポリブタジエンPB
【化1】
[ここで、そのポリブタジエンの中に存在する、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位の全体の中の式(I)のモノマー単位の比率が25~75モルパーセントであり、そのポリブタジエンの中に存在する、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位の全体の中の式(II)の単位の比率が0~10モルパーセントであり、並びにそのポリブタジエンの中に存在する、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位の全体の中の式(III)のモノマー単位の比率が25~75モルパーセントであり、ここで、モノマー単位の(I)、(II)、及び(III)の全体を合計して100モルパーセントであり、並びにそのポリブタジエンが、好ましくは、1000~4000g/molの平均分子量を有している];
b)その音響減衰材料の合計重量を基準にして、10重量%以上の、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレン、好ましくは25℃で液状のポリイソブチレンからなる群から選択される、少なくとも1種の25℃で液状のゴムLR;
c)その音響減衰材料の合計重量を基準にして、3重量%以上の、少なくとも1種のブチルゴムBR;
d)その音響減衰材料の合計重量を基準にして、3重量%以上の、少なくとも1種の天然若しくは合成のポリイソプレンPI、好ましくは天然のポリイソプレン、最も好ましくは天然ゴム;
e)その音響減衰材料の合計重量を基準にして、4~15重量%の、少なくとも1種の炭化水素樹脂HR;
f)少なくとも1種の固体粒子充填剤FM。
【0039】
「ポリ(poly)」で始まる物質名は、形式上、1分子あたり、それらの名称にある官能基を2個以上含む物質を指している。たとえば、ポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物を指している。ポリエーテルは、少なくとも2個のエーテル基を有する化合物を指している。
【0040】
「ポリマー」という用語は、重合反応(重合、重付加、重縮合)によって製造される、化学的に均質な、一団のマクロモレキュールを指しているが、ここでそのマクロモレキュールは、重合度、分子量、及び鎖長の点で異なっている。この用語には、重合反応の結果から得られる前記総称的マクロモレキュールの誘導体、すなわち、たとえば、あらかじめ決められているマクロモレキュールの中の官能基の付加反応又は置換反応によって得られる化合物も含まれ、そしてそれらは、化学的に均質であっても、或いは化学的に不均質であってもよい。
【0041】
「分子量」という用語は、分子又は分子の一部(「残基(moiety)」とも呼ばれる)のモル質量(g/mol)を指している。「平均分子量」という用語は、分子又は残基のオリゴマー性又はポリマー性混合物の数平均分子量(Mn)を指している。その分子量は、慣用されている方法、好ましくは、標準としてのポリスチレン、カラムとしての、分子に応じて100オングストローム、1000オングストローム、及び10000オングストロームの多孔度を有するスチレン-ジビニルベンゼンゲル、温度35℃での溶媒としてのテトラヒドロフラン又は160℃での溶媒としての1,2,4-トリクロロベンゼンを使用する、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0042】
「ガラス転移温度」(Tg)という用語は、それより高いと、ポリマー構成要素が柔らかく、曲りやすくなり、そしてそれより低いと、それが硬く、ガラス質となるような温度を指している。ガラス転移温度(Tg)は、動的機械的分析(DMA)により、1Hzの振動数、0.1%の歪みを加えて測定した損失弾性率(G”)曲線のピークとして測定するのが好ましい。
【0043】
「軟化点」という用語は、化合物が軟化してゴム様の状態となる温度、又は化合物の中の結晶部分が溶融する温度を指している。軟化点は、DIN EN 1238標準に従って実施される環球測定法(Ring and Ball measurement)によって求めることができる。
【0044】
「室温」という用語は、23℃の温度を指している。
【0045】
その音響減衰材料が、ビチューメンを実質的に含まないのが好ましい。「実質的に含まない(essentially free)」という表現は、音響減衰が、ビチューメンを、痕跡量、たとえばその音響減衰材料の合計重量を基準にして0.5重量%未満、好ましくは0.25重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、なおもより好ましくは0.01重量%未満しか含まないことを意味していると理解されたい。「ビチューメン」という用語は、本開示においては、室温で固体のコンシステンシーを有する重質の炭化水素ブレンド物を指している。それらは通常、適切な原油の、蒸留(トッピング又は真空蒸留)及び/又は2次加工プロセスたとえば、熱分解及びビスブレーキングであってよい、精製プロセスからの真空蒸留残渣として得られる。さらには、「ビチューメン」という用語はさらに、天然及び合成のビチューメン、さらにはタール及び瀝青砂の抽出から得られるビチューメン系物質も指している。
【0046】
その音響減衰材料には、その音響減衰材料の合計重量を基準にして、0.75重量%以上の、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位を含む少なくとも1種のポリブタジエンPBが含まれる;
【化2】
ここで、そのポリブタジエンの中に存在する、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位の全体の中の式(I)の単位の比率が、25~75モルパーセント、好ましくは50~65モルパーセント、好ましくは59~62モルパーセントであり、そのポリブタジエンの中に存在する、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位の全体の中の式(II)の単位の比率が、0~10モルパーセント、好ましくは1~8モルパーセント、好ましくは2~6モルパーセントであり、並びにそのポリブタジエンの中に存在する、1,3-ブタジエンから誘導されるモノマー単位の全体の中の式(III)の単位の比率が、25~75モルパーセント、好ましくは25~40モルパーセント、好ましくは35~39モルパーセントであるが、ただし、モノマー単位(I)、(II)、及び(III)の全部を合計して100モルパーセントであり、並びにポリブタジエンが、1000~4000g/mol、好ましくは1200~3500g/mol、好ましくは1500~3000g/molの平均分子量を有しているのが好ましい。
【0047】
本発明の文脈においては、「ポリブタジエン」という用語は、それぞれ少なくとも2個の共役二重結合を有するモノマー単位を重合させることによって得ることが可能な反応生成物を意味していると理解されたいが、ここで、好適度を増大させるためには、そのモノマー単位の、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.9%、好ましくは全部が、1,3-ブタジエンである。可能性のあるさらなる化合物(不純物)は、たとえば、3~5個の炭素原子を有するアルカン又はアルケン、具体的には、プロペン、1-ブテン、又は1,2-ブタジエンであってよい。
【0048】
その音響減衰材料には、その音響減衰材料の合計重量を基準にして、10重量%以上の、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレン、好ましくは25℃で液状のポリイソブチレンからなる群から選択される、少なくとも1種の、25℃で液状のゴムLRが含まれる。
【0049】
「25℃で液状のポリブテン」という用語は、好ましくは、本開示においては、イソブチレン及び/又は1-ブテン及び/又は2-ブテンを含む、オレフィンオリゴマーを指している。それらのC4-オレフィン異性体の比率は、製造業者やグレードによって、変化する可能性がある。
【0050】
「25℃で液状のポリイソブチレン」という用語は、好ましくは、本開示においては、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%の、イソブチレンから誘導される繰り返し単位を含む、イソブチレンのポリオレフィン及びオレフィンオリゴマーを指している。
【0051】
特に好適な、25℃で液状のポリブテン及びポリイソブチレンは、5,000g/mol以下、好ましくは3,000g/mol以下、より好ましくは2,500g/mol以下、さらにより好ましくは2,000g/mol以下、なおもより好ましくは1,500g/mol以下の平均分子量を有している。
【0052】
その音響減衰材料は、その音響減衰材料の合計重量を基準にして、3重量%以上の少なくとも1種のブチルゴムBRを含む。
【0053】
「ブチルゴム」という用語は、本明細書においては、メジャー部分のC4~C7モノオレフィンモノマー、好ましくはイソオレフィンモノマー、及びマイナー部分の、たとえば30重量%以下の、C4~C14マルチオレフィンモノマー、好ましくは共役ジオレフィンを含む、モノマー混合物から誘導されるポリマーを指している。好ましいC4~C7モノオレフィンモノマーは、イソブチレン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、及びそれらの混合物、好ましくはイソブチレンからなる群から選択することができる。
【0054】
その少なくとも1種のブチルゴムBRが、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴム、好ましくはブチルゴム、クロロブチルゴム及びブロモブチルゴム、より好ましくはブチルゴム及びブロモブチルゴム、最も好ましくはブロモブチルゴム、からなる群から選択されるのが好ましい。
【0055】
その音響減衰材料は、その音響減衰材料の合計重量を基準にして、3重量%以上の、少なくとも1種の天然若しくは合成のポリイソプレンPI、好ましくは天然のポリイソプレン、最も好ましくは天然ゴムを含んでいる。
【0056】
その少なくとも1種の天然若しくは合成のポリイソプレンPIが、100,000g/mol以上、好ましくは100,000~2,000,000g/mol、より好ましくは100,000~1,000,000g/molの平均分子量を有しているのが好ましい。
【0057】
その音響減衰材料は、その音響減衰材料の合計重量を基準にして、4~15重量%の、少なくとも1種の炭化水素樹脂HRを含む。
【0058】
「炭化水素樹脂」という用語は、好ましくは、本明細書においては、石油ベースの原料、たとえば天然液化ガス、ガスオイル、又は石油ナフサのクラッキングの副生物から得られる不飽和モノマーの混合物を重合させることによって製造される、合成樹脂を表す。これらのタイプの炭化水素樹脂は、「石油樹脂」又は「石油炭化水素樹脂」としても知られている。それらの炭化水素樹脂にはさらに、純粋なモノマーの芳香族樹脂も含まれるが、それらは、着色の原因となる夾雑物を除去し、製品の組成を正確に調節するために予め精製しておいた、芳香族モノマー原料を重合させることによって調製される。
【0059】
その少なくとも1種の炭化水素樹脂HRが、以下の性質を有しているのが好ましい:
- 少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは70~180℃、好ましくは80~150℃、より好ましくは90~120℃の範囲の、DIN EN 1238標準の定義に従い、環球法を使用して測定した軟化点、及び/又は、好ましくは及び;
- 250~7500g/mol、好ましくは300~5000g/molの範囲の平均分子量(Mn)。
【0060】
好適な炭化水素樹脂は、たとえば、以下のようなものとして、市販されている:商品名Wingtack(登録商標)シリーズ、Wingtack(登録商標)Plus、Wingtack(登録商標)Extra、及びWingtack(登録商標)STS(すべて、Cray Valley製);商品名Escorez(登録商標)1000シリーズ、Escorez(登録商標)2000シリーズ、及びEscorez(登録商標)5000シリーズ(すべて、Exxon Mobil Chemical製);商品名Novares(登録商標)Tシリーズ、Novares(登録商標)TTシリーズ、Novares(登録商標)TDシリーズ、Novares(登録商標)TLシリーズ、Novares(登録商標)TNシリーズ、Novares(登録商標)TKシリーズ、及びNovares(登録商標)TVシリーズ(すべて、RUETGERS Novares GmbH製);並びに商品名Kristalex(登録商標)、Plastolyn(登録商標)、Piccotex(登録商標)、Piccolastic(登録商標)及びEndex(登録商標)(すべて、Eastman Chemicals製)。
【0061】
その音響減衰材料には、e)少なくとも1種の固体粒子充填剤FM、好ましくは少なくとも1種の固体で微粒子状の鉱物質充填剤FMが含まれる。
【0062】
その音響減衰材料が、その音響減衰材料の合計重量を基準にして、5~75重量%、好ましくは15~70重量%、より好ましくは25~65重量%、さらにより好ましくは35~65重量%、なおもより好ましくは40~65重量%の少なくとも1種の固体粒子充填剤FMを含んでいるのが好ましい。
【0063】
1つ又は複数の実施形態においては、その少なくとも1種の固体粒子充填剤FMが、以下のものからなる群から選択される:炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、タルク、カオリン、珪藻土、ウォラストナイト、長石、モンモリロナイト、ドロマイト、シリカ、好ましくはヒュームドシリカ、クリストバライト、酸化鉄、鉄ニッケル酸化物、ストロンチウムフェライト、バリウム-ストロンチウムフェライト、中空セラミック球、中空ガラス球、中空有機球、ガラス球、マイカ、硫酸バリウム、及びグラファイト。
【0064】
その響減衰材料には、場合によっては、音響減衰材料で慣用される添加剤が含まれていてもよい。好適な添加剤の例としては、たとえば、顔料、チクソトロープ剤、熱安定剤、乾燥剤、及び難燃剤が挙げられる。仮に添加剤を使用するのであれば、それらの添加剤は、その響減衰材料の合計重量の、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらにより好ましくは10重量%以下の量で含まれる。
【0065】
好ましい音響減衰材料には、以下のものが含まれる:
- その音響減衰材料の合計重量を基準にして、1~15重量%、好ましくは1.5~3重量%の、少なくとも1種のポリブタジエンPB;
- その音響減衰材料の合計重量を基準にして、12.5~35重量%、好ましくは15~20重量%の、25℃で液状のゴムLR;
- その音響減衰材料の合計重量を基準にして、4.5~15重量%、好ましくは6~8重量%の、少なくとも1種の天然若しくは合成のポリイソプレンPI;
- その音響減衰材料の合計重量を基準にして、4.5~15重量%、好ましくは6~8重量%の、少なくとも1種のブチルゴムBR;
- その音響減衰材料の合計重量を基準にして、5~12重量%、好ましくは5.5~10重量%、最も好ましくは6.5~9.5重量%の、少なくとも1種の炭化水素樹脂HR;及び
- その音響減衰材料の合計重量を基準にして、5~75重量%、好ましくは40~65重量%の、少なくとも1種の固体粒子充填剤FM。
【0066】
その減衰層(2)は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含む、30,000~500,000Pa・sの60℃での粘度を有する減衰層材料から構成されている。その減衰層材料が、40,000~250,000Pa・s、好ましくは50,000~200,000Pa・s、最も好ましくは65,000~150,000Pa・sの60℃での粘度を有しているのが好ましい。このことは、接着性を向上させる点では、有利である。このことは、表4におけるEx.1とEx.2との比較で開示されている。
【0067】
減衰層(2)の厚みd1は、好ましくは0.4~1.5mm、より好ましくは0.7~1.3mm、最も好ましくは0.9~1.2mmである。
【0068】
その減衰層材料は、少なくとも1種のゴム構成要素Ruを含んでいる。
【0069】
好ましいゴム構成要素Ruは、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレン、ブチルゴムBR、天然若しくは合成のポリイソプレンPI、ニトリルゴムNBR、エチレン-プロピレンターポリマーEPDM、エチレン-プロピレンコポリマーEPM、及びクロロプレンゴムCRからなる群から選択される25℃で液状のゴムLRのリストから選択され、好ましくは、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレン、ブチルゴムBR、及び天然若しくは合成のポリイソプレンPIからなる群から選択される25℃で液状のゴムLRから選択される。
【0070】
より好ましくは、その減衰層材料が、以下のものを含んでいる:
その減衰層材料の合計重量を基準にして、10~18重量%の、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレン、好ましくは25℃で液状のポリイソブチレンからなる群から選択される、少なくとも1種の25℃で液状のゴムLR;
その減衰層材料の合計重量を基準にして、2~5重量%の、少なくとも1種のブチルゴムBR;
その減衰層材料の合計重量を基準にして、0.5~3重量%の、少なくとも1種の天然若しくは合成のポリイソプレンPI、好ましくは天然のポリイソプレン、最も好ましくは天然ゴム;
その減衰層材料の合計重量を基準にして、5~10重量%の、少なくとも1種の炭化水素樹脂HR;
その減衰層材料の合計重量を基準にして、50~80重量%の、少なくとも1種の固体粒子充填剤FM。
【0071】
好ましい、25℃で液状のポリブテン及び25℃で液状のポリイソブチレンからなる群から選択される25℃で液状のゴムLR、ブチルゴムBR、天然若しくは合成のポリイソプレンPI、炭化水素樹脂HR、及び固体粒子充填剤FMは、先に、音響減衰材料の組成物として好ましいとされてきたものである。
【0072】
本発明の別の主題は、輸送車両又は白物家電における振動及び/又は騒音を減衰させるための、本発明による振動及び騒音減衰要素(1)の使用である。
【0073】
その振動及び騒音の減衰要素が、以下の性質を有しているのが好ましい:
- 最大損失係数が測定される温度(T@LFmax)が、5℃~25℃の間、好ましくは15℃~25℃の間である、及び
- 最大損失係数(LFmax)の値が、0.3以上、好ましくは0.35以上、好ましくは0.39以上、好ましくは0.40以上、最も好ましくは0.41以上である。
【0074】
その損失係数は、好ましくはISO 6721規格に規定された測定方法、より好ましくは実験の項で記載した測定方法を使用して求める。
【0075】
好ましい実施形態においては、その振動及び騒音の減衰要素にさらに、減衰層及び接着層に加えて、その減衰層の第二の表面の少なくとも一部を被覆する拘束層が含まれる。これらの実施形態における振動及び騒音の減衰要素は、一般的に、「拘束層ダンパー」と呼ばれている。その減衰層と拘束層とは、好ましくは、それらの相向いの表面で互いに直接的に接合されており、その減衰層が、接着層と拘束層との間に挟み込まれているのが好ましい。1つ又は複数の実施形態においては、その拘束層が、その減衰層の第二の表面の全面積を、実質的に、好ましくは完全に被覆している。これらの実施形態による振動及び騒音の減衰要素の断面図を、
図2に示す。
【0076】
1つ又は複数の実施形態においては、その拘束層が、金属シート、好ましくはアルミニウム若しくは鋼のシート、又はポリマーシート、好ましくはガラス繊維強化ポリマーシートである。その拘束層は、好ましくは金属シート、より好ましくはアルミニウムシートである。
【0077】
その拘束層の厚みd3には特段の制限はないが、減衰層よりは薄い拘束層を使用するのが、一般的には好ましい。好ましい厚みは、その拘束層の材料にも依存する。1つ又は複数の実施形態においては、その拘束層が、0.05~1.5mm、好ましくは0.1~1.25mm、より好ましくは0.1~1.0mmの厚みを有している。
【0078】
その拘束層が、0.05~0.6mm、好ましくは0.1~0.5mm、より好ましくは0.2~0.4mmの厚みd3を有する金属シートであるのが、最も好ましい。
【0079】
1種又は複数のさらなる実施形態においては、その拘束層が、0.1~1.2mm、好ましくは0.25~1.0mmの厚みを有するポリマーシートである。
【0080】
その拘束層が、減衰層の弾性率よりも高い、たとえば、少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍の弾性率を有しているのが好ましいが、ここでその弾性率は、ISO 6892-1:2016規格(金属シートの場合)又はISO 527-2規格(ポリマーシートの場合)に規定された方法を使用して測定したものである。
【0081】
好ましい実施形態においては、その振動及び騒音の減衰要素が、減衰層、接着層、及び拘束層からなっている。
【0082】
別の好ましい実施形態では、それに加えて、接着層の、減衰層との接触状態にない側の上に保護フィルムが含まれる。その保護フィルムが、剥離ライナーであるのが好ましい。そのような剥離ライナーは、好ましくは、容易な剥離性をもって剥離され、強力に粘着することなく、接着層からの取り外しを困難としない。その保護フィルムは、各種の材料から作成することが可能ではあるが、好ましくは、接着層を調製するために使用される組成物とは区別される。より具体的には、その保護フィルムのために使用される材料は、以下のものからなる群から選択される;紙、シリコーン又はフルオロカーボンで処理した材料、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリエチレンテレフタレートのフィルム。保護フィルムが、ケイ素ベースの材料から作成されているのが、好ましい。
【0083】
振動及び騒音の減衰要素のための好ましいサイズは、長さ及び幅が20~1000mm、より好ましくは50~500mm、最も好ましくは100~400mmである要素である。
【0084】
本発明の別の主題は、本発明による振動及び騒音の減衰要素を基材の騒音を発生する表面に適用するための方法であるが、その方法には、以下のステップが含まれる:
I)本発明による振動及び騒音の減衰要素を備えるステップ、
II)その振動及び騒音の減衰要素の接着層の外側主表面を、騒音を発生する表面と接触させ、十分な圧力を加えて、接着接合(adhesive bond)を形成させるステップ、又は
II’)その接着層及び/又は基材を加熱し、その接着層の外側主表面を、騒音を発生する表面と接触させ、その接着層を冷却することによって接着接合を形成させるステップ。
【0085】
接着層の「外側主表面」という用語は、減衰層の側とは反対側の上の接着層の主表面を指している。騒音を発生する表面を有する基材は、たとえば、金属、プラスチック、又は繊維強化プラスチックで構成された、たとえば、パネル、シート、又はフィルムのような、各種のタイプの成形物品であってよい。ステップII’)における接着層及び/又は基材の加熱は、各種の慣用されている方法、たとえば、オーブン中での加熱、空気流による加熱、又は赤外(IR)線照射を用いた加熱などで実施することができる。
【0086】
本発明のさらに別の主題は、騒音を発生する表面(7)を有する基材(6)と本発明による振動及び騒音の減衰要素(1)とを含む振動減衰されたシステムであり、ここで、少なくともその減衰層(2)の第一の表面(3)の一部が、接着層(4)を介して、騒音を発生する表面(7)に接着的に接合されている。振動減衰されたシステムの断面図を、
図3に示す。
【0087】
1つ又は複数の実施形態においては、その振動及び騒音の減衰要素(1)が、拘束層(5)を含む拘束された減衰要素であり、ここで、その減衰層(2)は、接着層(4)と拘束層(5)との間に挟み込まれている。この実施形態による振動減衰されたシステムの断面図を、
図4に示す。
【0088】
1つ又は複数の実施形態においては、騒音を発生する表面を有するその基材が、自動車又は白物家電の構造物の一部である。
【実施例】
【0089】
以下の表2及び3に示した製品を、表4及び5の例で使用した。
【0090】
【0091】
材料組成物の調製
表4及び表5に示されるEx.1~Ex.6、さらには参照例のRef.1~Ref.9において使用される、接着層材料組成物のAC1、AChv(高粘度)及びAClv(低粘度)、さらには減衰層材料組成物のDC1、DChv(高粘度)及びDClv(低粘度)は、以下の手順に従って調製した。
【0092】
第一のステップにおいて、接着層材料組成物のための構成要素を、以下の構成要素と混合した:
【0093】
【0094】
第一のステップにおいて、構成要素BR、PI、HR、及び方解石の半分を、バッチタイプのミキサーの中で混合した。その後で、残りの原料を、1時間以上の時間をかけて、一定速度で添加し、20分間混合した。次いでその混合した組成物を、シールされていないドラムの中に貯蔵し、混合した直後に使用した。
【0095】
第二のステップにおいて、減衰層材料組成物のための構成要素を、以下の構成要素と混合した:
【0096】
【0097】
第一のステップにおいて、構成要素BR、PI、HR、及び方解石の半分を、バッチタイプのミキサーの中で混合した。その後で、残りの原料を、1時間以上の時間をかけて、一定速度で添加し、20分間混合した。次いでその混合した組成物を、シールされていないドラムの中に貯蔵し、混合した直後に使用した。
【0098】
以下の試験のために、接着層(存在させるなら)、その接着層の上の減衰層(存在させるなら)、アルミニウム層(拘束層)、減衰層の厚みd1対接着層の厚みd2の比率(d1/d2)、減衰層の厚みd1と接着層の厚みd2との合計(d1+d2)を用いて、試験サンプル(振動及び騒音の減衰要素)を作成した。試験サンプルの構成、さらには試験結果を、表4及び表5に示す。
【0099】
粘度
粘度は、DIN 54458に従い、加熱可能なプレートを有するレオメーター(MCR 301、AntonPaar)(ギャップ:500μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、変形:1%、角周波数:10rad/s、温度:60℃又は100℃)の手段により、オシログラフ法で測定した。
【0100】
高温抵抗性の測定(「ht抵抗性」)
210℃での耐熱性試験は、BMWグループの規格に従って実施した:「車体工場で使用される接着剤及びシーリング材料 防振パッド(Adhesives and sealing materials used in the body shop Damping pad)」,要求性能及び試験(Requirements and testings),GS 97028-16:2012-02,4頁,表1:高温に対する耐性(Resistance to high temperature)(“Waermetest”),AA-0415,2018-10版。それらの試験サンプルの、長さ×幅は、16cm×7cmであった。
【0101】
評価方式(grading system):
評価=OKを得るためには、膨れが無く、溶解せず、スリップが無く、そして、収縮が無いことが必要である。
【0102】
-30℃での落球試験による低温での接着性の測定/定量(「Bdt-30℃」)
-30℃での落球試験は、Volkswagenグループの規格に従って実施した:品質要求性能、自己接着性硬化パッドおよび消音パッド,QP M052,12頁,ポイント3.7.5,冷時接着物の落球試験/測定(「Kugelfall/Bestimmung der Kaerltehaftung(冷時接着物の落球試験/測定)」)、PV 3971,2020-03版。それらの試験サンプルの、長さ×幅は、7cm×7cmであった。
【0103】
評価方式:
評価1:試験片のクラッキング(cracking)又はスプリンタリング(splintering)無し、試験シートのチッピング(chipping)無し
評価2:試験片のクラッキング又はスプリンタリングは有るが、試験シートのチッピング無し
評価3:試験シートからのチッピングは無いが、わずかな曲げ荷重をかけるだけで、その試験シートから試験片が離層する可能性がある
評価4:試験片のクラッキング又はスプリンタリング有り、試験シートから部分的にチッピング
評価5:試験片のクラッキング又はスプリンタリング有り、試験シートから大規模なチッピング
評価6:試験シートから完全に層間剥離。
【0104】
接着性/剥離強度の測定(「剥離強度」)
剥離強度の試験は、BMWグループの規格に従って実施した:車体工場で使用される接着剤及びシーリング材料(Adhesives and sealing materials used in the body shop)
防振パッド、要求性能及び試験(Damping pad,Requirements and testing),GS 97028-16:2012-02,4頁,表1:接着性(「車体工場における、消音及び硬化材料の剥離強度」)(Adhesion(“Peel-resistance of sound deadening and stiffening matgerials in the body shop”)),AA-0007,2018-10版」。それらの試験サンプルの、長さ×幅は、20cm×3cmであった。それに加えて、破損パターンを目視で確認した。
【0105】
評価方式:
- 油引き鋼板上、30分後、室温:>1.5N/cm
- 油引き鋼板上、30分後、195℃:>4N/cm
【0106】
損失係数の測定(「損失係数」)
ISO 6721規格に規定された測定方法を使用して、試験片についての損失係数を測定した。その測定は、市販の損失係数試験機を使用し、200Hzの反共振点、20~60℃の温度範囲で実施した。それらの試験サンプルの、長さ×幅は、20cm×1cmであった。
【0107】
表4及び表5における損失係数の最大値が、10℃又は20℃、好ましくは20℃で測定されているのならば有利であるが、その理由は、この温度が、車両における最も普通の操作温度であるからである。
【0108】
段積み性
100mm×100mm(長さ/幅)の寸法の、それぞれの接着層の上に、シリコーン処理された保護フィルムで作成された剥離ライナーを有する、それぞれのタイプの試験サンプルの10個の試験片を、2枚のガラスパネルの間でそれぞれの上に重ね合わせ、75Nの荷重をかけ、強制空気循環オーブンの中、50℃で24時間かけてエージングさせた。
【0109】
それぞれ3個の試験片で、20倍の倍率を有する顕微鏡で、試験片のエッジ部分の異なった10箇所について検査して、接着層及び/又は減衰層の側面への漏れの平均距離(単位:mm)を求めた。0.90mmよりも大きい平均距離値を有する試験片は、分離したり、取り外ししたりするのが困難であった。
【0110】
【0111】
【国際調査報告】