(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及び該正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240705BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240705BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579807
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2022005383
(87)【国際公開番号】W WO2023277316
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0084148
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・ヤン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
ニッケルの含量が60モル%以上であるニッケル系活物質を含む正極活物質であり、該正極活物質は、1~10μmサイズの大結晶粒子を含み、該大結晶粒子の内部にランタン族元素を含むリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及び該正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルの含量が60モル%以上であるニッケル系活物質を含む正極活物質であり、
前記正極活物質は、1~10μmサイズの大結晶粒子を含み、
前記大結晶粒子の内部にランタン族元素を含む、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記ランタン族元素は、セリウム(Ce)である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質は、下記化学式1で表示される化合物である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質:
[化学式1]
Li
a(Ni
1-w-x-y-zM3
wCo
xM1
yM2
z)O
2±α1
化学式1において、M1は、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される1つまたは2つの元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
M3は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦(1-x-y-z)<1、0<w≦0.05、0≦x≦0.4、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦α1≦0.1である。
【請求項4】
前記大結晶粒子は、1~10μmサイズの単一粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子またはその組合わせであり、前記一次粒子のサイズが1~10μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記二次粒子のサイズが5~30μmである、請求項4に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質に対するX線回折分析によって求められる(003)面に該当するピークの半値幅が0.1030°~0.1052°であり、
(003)面に該当するピークの半値幅FWHM(003)と(104)面に該当するピークの半値幅FWHM(104)の比(FWHM(003)/FWHM(104))は、1.22~1.26で示される、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記正極活物質に対するX線回折分析によって2θが27°~29°である領域でCeO
2関連ピークが観察されない、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
【請求項9】
ニッケル系活物質前駆体、リチウム前駆体及びランタン族元素前駆体を混合し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.8~1である範囲に制御しつつ1次熱処理する段階と、
前記1次熱処理された生成物にリチウム前駆体を付加し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.95~1.05になるように制御しつつ2次熱処理する段階と、を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記1次熱処理が酸化性ガス雰囲気において、800~950℃で実施する、請求項9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記2次熱処理は、700℃~800℃で実施する、請求項9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記ニッケル系活物質前駆体は、下記化学式5に表示される化合物である、請求項9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法:
[化学式5]
Ni
1-x-y-zCo
xM1
yM2
z(OH)
2
化学式5において、M1は、Mn及びAlからなる群より選択される1つまたは2つの元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される元素であり、
0.6≦(1-x-y-z)<1、0≦x≦0.4、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4である。
【請求項13】
ランタン族元素を含むニッケル系活物質前駆体及びリチウム前駆体を混合し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.8~1の範囲で制御しつつ、1次熱処理する段階と、
前記1次熱処理された生成物にリチウム前駆体を付加し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.95~1.05になるように制御しつつ2次熱処理する段階と、を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記ランタン族元素を含むニッケル系活物質前駆体は、下記化学式5-1に表示される化合物である、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[化学式5-1]
Ni
1-w-x-y-zM3
wCo
xM1
yM2
z(OH)
2
化学式5において、M1は、Mn及びAlからなる群より選択される1つまたは2つの元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される元素であり、
M3は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
0.6≦(1-w-x-y-z)<1、0<w≦0.05、0≦x≦0.4、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及び該正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器、通信機器などの発展につれ、高エネルギー密度のリチウム二次電池に対する開発の必要性が高い。しかし、高エネルギー密度のリチウム二次電池は、安全性低下の恐れがあり、それに対する改善が必要である。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物、リチウムコバルト酸化物などが使用される。
【0004】
寿命特性が改善されたリチウム二次電池を製造するために、単結晶正極活物質を含む正極を利用する方法が提案された。
【0005】
ところが、これまで知られた単結晶正極活物質は、正極活物質を製造する過程で粒子間の凝集、生産性の低下、残留リチウムの増加、容量、寿命及び律速性能が減少し、それらについての改善が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、新規のリチウム二次電池用正極活物質を提供することである。
【0007】
本発明の他の側面は、上述したリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の側面は、上述した正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面によって、ニッケルの含量が60モル%以上であるニッケル系活物質を含む正極活物質であり、前記正極活物質は、1~10μmサイズの大結晶粒子を含み、前記大結晶粒子の内部にランタン族元素を含むリチウム二次電池用正極活物質が提供される。
【0010】
他の側面によって、ニッケル系活物質前駆体、リチウム前駆体及びランタン族元素前駆体を混合し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.8~1である範囲に制御しつつ1次熱処理する段階と、
前記熱処理された生成物にリチウム前駆体を付加し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.95~1.05になるように制御しつつ2次熱処理する段階と、を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
【0011】
さらに他の側面によって、ランタン族元素を含むニッケル系活物質前駆体、及びリチウム前駆体を混合し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.8~1の範囲に制御しつつ1次熱処理する段階と、
前記1次熱処理された生成物にリチウム前駆体を付加し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.95~1.05になるように制御しつつ2次熱処理する段階と、を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
【0012】
前記1次熱処理は、酸化性ガス雰囲気で850~950℃で実施し、
2次熱処理は、700~800℃で実施する。
【0013】
さらに他の側面によって上述した正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0014】
一側面による粒成長が促進された正極活物質は、残留リチウムの含量が減少し、表面からの酸素脱離を抑制し、それを用いれば、寿命特性が改善されたリチウム二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】製造例1によって得られたニッケル系活物質前駆体において、1次熱処理を実施した直後のニッケル系活物質前駆体に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図2A】実施例1によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図2B】実施例1によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図2C】実施例1によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図3A】実施例2によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図3B】実施例2によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図3C】実施例2によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図4A】実施例3によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図4B】実施例3によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図4C】実施例3によって得られたニッケル系活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【
図5】製作例1-2及び比較製作例2によって製造されたコインセルにおいて、高温寿命特性を示すグラフである。
【
図6】例示的な具現例によるリチウム二次電池の模式図である。
【
図7A】実施例1によって得られた正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析イメージである。
【
図7B】実施例2によって得られた正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析イメージである。
【
図7C】比較例1によって得られた正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析イメージである。
【
図8】実施例1の正極活物質と、比較例1及び比較例2の正極活物質に対するX線回折分析スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一具現例によるリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池用正極と前記正極を備えたリチウム二次電池について詳細に説明する。
【0017】
ニッケルの含量60モル%以上の単結晶状態のニッケル系活物質は、容量特性に優れるが、単結晶化のための高温熱処理時の粒子間の凝集、生産性が低下する問題点があって、それらについての改善が必要である。そのような問題点を解決するために、熱処理時にアルカリ系粒成長促進剤を利用する方法が提案された。
【0018】
ところで、アルカリ系粒成長促進剤を利用すれば、粒子間の凝集が多少解消されうるが、熱処理後に残余粒成長促進剤が抵抗として作用し、ニッケル系活物質を含む正極を利用したリチウム二次電池の寿命特性が低下する。
【0019】
これに対して、本発明者らは、上述した問題点を解決するために、単結晶内部にランタン族元素を含む正極活物質を提供する。
【0020】
一具現例による正極活物質は、大結晶粒子であり、大結晶粒子の内部にランタン族元素を含み、正極活物質の製造時、セル性能を低下させるアルカリ系粒成長促進剤であるNaCl、KClなどを使用せず、粒成長を促進させうる。そして、高い酸素保存容量(oxygen storage capacity)を有しており、それを利用すれば、酸素脱離を抑制し、寿命が向上したリチウム二次電池を製造することができる。
【0021】
本明細書において「大結晶粒子の内部」は、大結晶粒子の表面を除いた領域であって、大結晶粒子の中心領域を意味する。
【0022】
一具現例のリチウム二次電池用正極活物質は、ニッケル含量60モル%以上であるニッケル系活物質を含み、内部にランタン族元素を含む大結晶粒子状態を有する。上述したニッケル系活物質及び正極活物質は、単結晶状態を有し、単結晶状態は、高解像度透過電子顕微鏡(HRTEM)などを通じて確認することができる。
【0023】
本明細書において「大結晶粒子」は、単結晶状態を有し、単一粒子(one-body particle)形態、一次粒子の凝集体である二次粒子形態またはその組合わせを有することができる。大結晶粒子は、1~10μmサイズの単一粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子またはその組合わせである。前記一次粒子のサイズは、1~10μmである。
【0024】
本明細書において粒子が球状である場合、「サイズ」は、平均粒径を示し、粒子が非球状である場合には、長軸長を示す。平均粒径及び長軸長は、電子走査顕微鏡または、粒子サイズ分析器を通じて確認することができる。本明細書の実施例において、粒子サイズは、電子走査顕微鏡を通じて評価したものである。
【0025】
本明細書において「単一粒子」は、モルフォロジー(morphology)相において、粒子が相互凝集されていない独立した相(phase)であり、互いに分離及び/または分散されて存在する構造を意味する。このような単一粒子と対比される粒子構造は、小型粒子(1次粒子)が物理的及び/または、化学的に凝集されて相対的に大きな粒子形態(二次粒子)をなす構造を有することができる。
【0026】
前記単一粒子のサイズは、2μm~8μm、例えば、3μm~7μmであり、前記二次粒子のサイズは、5μm~30μm、10μm~25μm、例えば、10μm~20μmである。
【0027】
一具現例による正極活物質は、大結晶粒子を含み、リチウムイオンがニッケル系活物質の表面に到逹する移動経路が長くなる。これにより、ニッケル系活物質の表面に移動したリチウムイオンが空気中の水分または、二酸化炭素と反応してニッケル系活物質表面に吸着されてなる炭酸リチウム、水酸化リチウムのような表面不純物の形成を最小化することができる。そして、充放電時にも安定した結晶構造を保持し、結晶構造の変化による容量の急激な低下問題を未然に防止することができる。
【0028】
ランタン族元素は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luまたはその組合わせであり、例えば、Ceである。
【0029】
一具現例による正極活物質は、化学式1で表示される化合物である。
【0030】
[化学式1]
Lia(Ni1-w-x-y-zM3wCoxM1yM2z)O2±α1
化学式1において、M1は、Mn及びAlからなる群より選択される1つまたは2つの元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
M3は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦(1-x-y-z)<1、0<w≦0.05、0≦x≦0.4、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦α1≦0.1である。
【0031】
ニッケルの含量が60モル%以上であるニッケル系活物質においてニッケルの含量は、60~95モル%以上、または60~85モル%である。このようなニッケル系活物質を利用すれば、高い容量特性を有するリチウム二次電池を製造することができる。
【0032】
正極活物質においてランタン族元素の含量が0.1~5モル%、または0.2~1モル%である。正極活物質においてランタン族元素は、正極活物質の粒子サイズを制御しつつ単結晶化の一助となる役割をする。ランタン族元素の含量が前記範囲であるとき、正極活物質を利用したリチウム二次電池の律速性能及び寿命特性が改善される。
【0033】
前記正極活物質に対するX線回折分析によって求められる(003)面に該当するピークの半値幅が0.1030°~0.1052°であり、(003)面に該当するピークの半値幅と(104)面に該当するピークの半値幅の比(FWHM(003)/FWHM(104))は、1.22~1.26と示される。また、前記正極活物質に対するX線回折分析によって、2θが28°である領域において、CeO2関連のピークが観察されない。ここで、2θが27°~29°、例えば、28°である領域において、CeO2関連のピークは、酸化セリウムがニッケル系活物質表面に外部コーティングされた場合に観察されうる。一具現例の正極活物質は、上述したように、CeO2関連のピークが観察されないことから、酸化セリウムのようなランタン族元素を含む複合体が表面コーティングされた形態ではなく、大結晶粒子の内部にCeが含有されたドーピングされた構造であることを知ることができる。
【0034】
一具現例による正極活物質の製造方法は、次の通りである。
【0035】
正極活物質は、例えば、2種の製造方法によって製造可能であるが、最初の製造方法によって実施すれば、次の通りである。
【0036】
ニッケル系活物質前駆体、リチウム前駆体及びランタン族元素前駆体を混合して第1混合物を得る。第1混合物において、ニッケル系活物質前駆体とリチウム前駆体との含量は、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.8~1の範囲に制御されるように化学量論的に制御される。
【0037】
前記混合は、機械的ミーリングは、ボールミル、ジェットミルなどの方法を利用する。
【0038】
次いで、第1混合物を酸化性ガス雰囲気、800~950℃、例えば、900~950℃で1次熱処理を実施してニッケル系活物質を得る。
【0039】
次いで、前記熱処理された生成物にリチウム前駆体を付加し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.95~1.05になるように制御しながら700~800℃、例えば、720~780℃で2次熱処理を実施する。
【0040】
リチウム前駆体の含量は、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.95~1.05、または0.99~1.03である範囲で制御する。2次熱処理は、1次熱処理より低い温度で実施される。1次熱処理及び2次熱処理が上述した条件で実施されるとき、寿命特性が改善されたリチウム二次電池用単結晶正極活物質を製造することができる。
【0041】
上述したニッケル系活物質前駆体及びランタン族元素前駆体の含量は、所望の正極活物質が得られるように化学量論的に制御される。
【0042】
熱処理は、酸化性ガス雰囲気で実施する。酸化性ガス雰囲気は、例えば、大気雰囲気または酸素雰囲気が挙げられる。酸素雰囲気は、酸素の含量が90体積%以上であり、残りは、不活性ガスである。ここで、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンまたはその組合わせである。前記酸化性ガスは、酸素または空気10~20体積%と不活性ガス80~90体積%からなる。
【0043】
ランタン族元素前駆体は、ランタン族元素を含む化合物であって、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちから選択された1つ以上の元素を含む硝酸塩、酸化物、硫酸塩、塩化物などを利用することができる。ランタン族元素前駆体は、例えば、酸化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウムなどが挙げられる。
【0044】
ニッケル系活物質前駆体は、例えば、下記化学式5で表示される化合物である。
【0045】
[化学式5]
Ni1-x-y-zCoxM1yM2z(OH)2
化学式5において、M1は、Mn及びAlからなる群より選択される1つまたは2つの元素であり、M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される元素であり、
0.6≦(1-x-y-z)<1、0≦x≦0.4、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4である。
【0046】
化学式5において、0≦z≦0.05、0.6≦(1-x-y-z)≦0.95でもある。化学式5において、xは、0.1~0.3であり、yは、0.05~0.3であり、zは、0でもある。
【0047】
引き続き、正極活物質を製造する第2の製造方法について説明する。
【0048】
正極活物質は、ランタン族元素を含むニッケル系活物質前駆体、及びリチウム前駆体を混合し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.8~1である範囲に制御しつつ1次熱処理する段階と、前記熱処理された生成物にリチウム前駆体を付加し、リチウムと、リチウムを除いた金属の混合モル比が0.95~1.05になるように制御しつつ2次熱処理する段階と、を経て製造しうる。
【0049】
ランタン族元素を含むニッケル系活物質前駆体は、例えば、コバルト前駆体、マンガン前駆体、ニッケル前駆体、及びランタン族元素前駆体を反応して得ることができる。
【0050】
ランタン族元素を含むニッケル系活物質前駆体は、例えば、下記化学式5-1で表示される化合物である。
【0051】
[化学式5-1]
Ni1-w-x-y-zM3wCoxM1yM2z(OH)2
化学式5において、M1は、Mn及びAlからなる群より選択される1つまたは2つの元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される元素であり、
M3は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、
0.6≦(1-w-x-y-z)<1、0<w≦0.05、0≦x≦0.4、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4である。
【0052】
上述した製造方法によって実施して得られた正極活物質は、粒子間凝集抑制を通じて生産性が向上する。そして、既存の単結晶正極活物質の製造時、アルカリ系粒成長促進剤を利用する場合の寿命特性低下のような問題点なしに、表面からの酸素脱離を抑制された正極活物質を提供して寿命特性が向上したリチウム二次電池を製造することができる。
【0053】
上述した最初の正極活物質においてニッケル系活物質前駆体は、一次粒子の凝集体である二次粒子としてサイズが2~5μmである。そして、ニッケル系活物質前駆体は、例えば、前記化学式5で表示される化合物が挙げられる。
【0054】
化学式5のニッケル系活物質前駆体は、例えば、下記化学式6で表示される化合物、化学式7で表示される化合物またはその混合物でもある。
【0055】
[化学式6]
Ni1-x1-y1-z1Cox1Mny1Mz1(OH)2
化学式6において、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなる群より選択される元素であり、
0.6≦(1-x1-y1-z1)<1、0≦x1≦0.4、0≦y1≦0.4、0≦z1≦0.4である。
【0056】
[化学式7]
Ni1-x2-z2Cox2Alz2(OH)2
化学式7において、0.6≦(1-x2-z2)<1、0≦x2≦0.4、0<z2≦0.4である。
【0057】
前記ニッケル系活物質前駆体は、例えば、 Ni0.91Co0.06Mn0.03(OH)2)、Ni0.91Co0.06Al0.03(OH)2、Ni0.92Co0.05Al0.03(OH)2、Ni0.94Co0.03Al0.03(OH)2、Ni0.88Co0.06Al0.06(OH)2、Ni0.96Co0.02Al0.02(OH)2、Ni0.93Co0.04Al0.03(OH)2、Ni0.8Co0.15Al0.05O2(OH)2、Ni0.75Co0.20Al0.05(OH)2、Ni0.92Co0.05Mn0.03(OH)2、Ni0.94Co0.03Mn0.03(OH)2、Ni0.88Co0.06Mn0.06(OH)2、Ni0.96Co0.02Mn0.02(OH)2、Ni0.93Co0.04Mn0.03(OH)2、Ni0.8Co0.15Mn0.05O2(OH)2、Ni0.75Co0.20Mn0.05(OH)2、Ni0.6Co0.2Mn0.2(OH)2、Ni0.7Co0.15Mn0.15(OH)2、Ni0.7Co0.1Mn0.2(OH)2、Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)2またはNi0.85Co0.1Al0.05(OH)2でもある。
【0058】
ニッケル系活物質前駆体は、ニッケル前駆体、コバルト前駆体、マンガン前駆体及び他の遷移金属の前駆体のような金属原料、錯化剤、pH調節剤を含む混合物の共沈反応を通じて製造されうる。
【0059】
金属原料は、ニッケル系活物質前駆体の組成を考慮し、それに対応する金属前駆体を利用することができる。金属原料は、例えば、金属カーボネート、金属サルフェート、金属ナイトレート、金属クロライドなどであるが、それらに限定されず、当該技術分野で金属前駆体として使用されるものであれば、いずれも使用可能である。
【0060】
前記ニッケル前駆体としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルなどを使用する。そして、前記コバルト前駆体としては、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルトなどを使用し、前記マンガン前駆体としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガンなどを利用する。
【0061】
各金属原料の含量は、所望のニッケル系活物質前駆体を得ることができるように化学量論的に制御される。
【0062】
pH調節剤は、反応器内部で金属イオンの溶解度を低めて金属イオンが水酸化物として析出されるようにする役割を行う。pH調節剤は、例えば、アンモニウムヒドロキド、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)などである。pH調節剤は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)である。
【0063】
錯化剤は、共沈反応で沈殿物の形成反応速度を調節する役割をする。錯化剤は、アンモニウムヒドロキド(NH4OH)(アンモニア水)、クエン酸(citric acid)、アクリル酸、酒石酸、グリコール酸などである。錯化剤の含量は、通常のレベルによって使用される。錯化剤は、例えば、アンモニア水である。
【0064】
前記共沈反応によって得られた生成物を洗浄した後、それを乾燥し、所望のリチウム二次電池用ニッケル系活物質前駆体が得られる。ここで、乾燥は、通常の条件によって実施される。
【0065】
第2の正極活物質の製造方法において、ランタン族元素を含むニッケル系活物質前駆体は、上述したニッケル系活物質前駆体の製造時、ニッケル前駆体、コバルト前駆体、マンガン前駆体及び他の遷移金属の前駆体のような金属原料、錯化剤、pH調節剤を含む混合物に、ランタン族元素前駆体をさらに付加することを除いては、同様の方法によって実施して製造することができる。
【0066】
他の一具現例によるリチウム二次電池は、上述した正極活物質を含む正極、負極及びそれらの間に介在された電解質を含む。
【0067】
一具現例による正極活物質の製造方法を利用すれば、容量特性、充放電効率及び寿命が向上したリチウム二次電池を得ることができる。
【0068】
一具現例によるニッケル系活物質は、残留リチウムが900ppm未満である。
【0069】
以下、一具現例による正極活物質を含む正極、負極、リチウム塩含有非水電解質、及びセパレータを有するリチウム二次電池の製造方法を記述する。
【0070】
正極及び負極は、集電体上に、正極活物質層形成用組成物及び負極活物質層形成用組成物をそれぞれ塗布及び乾燥して正極活物質層及び負極活物質層を形成して作製される。
【0071】
前記正極活物質形成用組成物は、正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合して製造されるが、前記正極活物質として一具現例によるニッケル系活物質を利用する。
【0072】
正極バインダは、正極活物質粒子間の付着、及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはそれらの多様な共重合体などが挙げられ、それらのうち、単独または2種以上の混合物が使用されうる。
【0073】
前記導電材としては、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボン系物質;炭素ナノチューブ、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されうる。
【0074】
前記導電材の含量は、正極活物質100重量部を基準にして1~10重量部、または1~5重量部を使用する。導電材の含量が前記範囲であるとき、最終的に得られた電極の伝導度特性が優秀である。
【0075】
前記溶媒の非制限的な例として、N-メチルピロリドンなどを使用し、溶媒の含量は、正極活物質100重量部を基準にして20~200重量部を使用する。溶媒の含量が前記範囲であるとき、正極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0076】
前記正極集電体は、3~500μmの厚さであって、当該電池に化学的変化を誘発せず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、または、アルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されうる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高め、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0077】
それと別途に、負極活物質、バインダ、及び溶媒を混合して負極活物質層形成用の組成物を準備する。
【0078】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープ及び脱ドープ可能な物質、遷移金属酸化物またはその組合わせを使用することができる。
【0079】
前記リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質としては、例えば、炭素物質、すなわち、リチウム二次電池において一般的に使用される炭素系負極活物質を有することができる。炭素系負極活物質の代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはそれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛を有し、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0080】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al及びSnからなる群より選択される金属との合金が使用されうる。
【0081】
前記リチウムにドープ及び脱ドープ可能な物質としては、シリコン系物質、例えば、Si、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素及びそれらの組合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Si-炭素複合体、Sn、SnO2、Sn-R(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素及びそれらの組合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)、Sn-炭素複合体などが挙げられ、それらのうち少なくとも1つとSiO2を混合して使用することもできる。前記元素Q及びRとしては、g、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、及びそれらの組合わせからなる群より選択されることを使用することができる。
【0082】
前記遷移金属酸化物としては、リチウムチタン酸化物を使用することができる。
【0083】
負極バインダは、非制限的な例として、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ラバー、スルホン化EPDMラバー、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)及びそれらの水素をLi、Naまたは、Caなどで置換された高分子、または多様な共重合体などの様々なバインダ高分子でもある。
【0084】
前記負極活物質層は、導電材をさらに含みうる。前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ハーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されうる。前記導電材は、望ましくは、カーボンブラックでもあり、さらに具体的には、数十nmの平均粒径を有するカーボンブラックでもある。
【0085】
導電材は、負極活物質層の総重量100重量部を基準にして、0.01重量部~10重量部、0.01重量部ないし5重量部、または、0.1重量部ないし2重量部でもある。
【0086】
前記負極活物質層形成用組成物は、増粘剤をさらに含むことができる。前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、澱粉、再生セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポリビニルアルコールのうち少なくともいずれか1つを使用することができ、例えば、CMCを使用することができる。
【0087】
前記溶媒の含量は、負極活物質の総重量100重量部を基準として、100~300重量部を使用する。溶媒の含量が前記範囲であるとき、負極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0088】
前記負極集電体の厚さは、通常3~500μmである。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されうる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させ、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態にも使用される。
【0089】
前記過程によって作製された正極と負極との間にセパレータを介在する。
【0090】
前記セパレータは、気孔径が0.01~10μmであり、厚さは、通常5~30μmであるものを使用する。具体例として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、またはガラス繊維によってなるシートや不織布などが使用される。電解質として、ポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0091】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解液とリチウム塩からなる。非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0092】
前記非水電解液としては、非制限的な例として、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、N,N-ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非陽子性有機溶媒が使用されうる。
【0093】
前記有機固体電解質としては、非制限的な例として、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用されうる。
【0094】
前記無機固体電解質としては、非制限的な例として、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されうる。
【0095】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解されやすい物質であって、非制限的な例として、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(FSO2)2NLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルボレートリチウムイミドなどが使用されうる。
【0096】
図6は、一具現例によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に示す断面図である。
【0097】
図6を参照して、リチウム二次電池81は、正極83、負極82及びセパレータ84を含む。上述した正極83、負極82及びセパレータ84がワインディンされるか、折り畳まれた電極組立体が電池ケース85に収容される。電池形状によって正極及び負極間にセパレータが配置され、相互に積層された電池構造体が形成されうる。引き続き、前記電池ケース85に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリー86に密封されてリチウム二次電池81が完成される。前記電池ケース25は、円筒状、角状、薄膜状などでもある。例えば、前記リチウム二次電池21は、大型薄膜型電池でもある。前記リチウム二次電池は、リチウムイオン電池でもある。前記電池構造体がパウチに収容された後、有機電解液に含浸されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、そのような電池パックが高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用されうる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などに使用されうる。
【0098】
また、前記リチウム二次電池は、高温で保存安定性、寿命特性及び高率特性に優れるので、電気車両(electric vehicle, EV)に使用されうる。例えば、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle, PHEV)などのハイブリッド車両に使用されうる。
【0099】
以下の実施例及び比較例を通じてさらに詳細に説明される。但し、実施例は、一例示に過ぎず、それらのみ限定されるものではない。
【0100】
(ニッケル系活物質前駆体の製造)
製造例1
共浸法によってニッケル系活物質前駆体(Ni0.91Co0.06Mn0.03(OH)2)を合成した。
【0101】
硫酸ニッケル(NiSO4
.6H2O)、硫酸コバルト(CoSO4
.7H2O)及び硫酸マンガン(MnSO4
.H2O)を、Ni:Co:Mn=91:6:3モル比になるように、溶媒である蒸溜水に溶かして混合溶液を準備した。錯化合物の形成のために、アンモニア水(NH4OH)希釈液と、沈澱剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を準備した。以後、金属原料混合溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウムをそれぞれ反応器内部に投入した。反応器内部のpHを保持するために、水酸化ナトリウムが投入された。引き続き、撹拌しながら、約20時間反応を実施した後、原料溶液の投入を中止した。
【0102】
反応器内のスラリー溶液を濾過及び高純度の蒸溜水で洗浄した後、200℃の熱風オーブンで24時間乾燥し、ニッケル系活物質前駆体(Ni0.91Co0.06Mn0.03(OH)2)を得た。ニッケル系活物質前駆体は、二次粒子であり、二次粒子の平均粒径は、約4μmである。
【0103】
(正極活物質の製造)
実施例1
製造例1によって得られたニッケル系活物質前駆体(Ni0.91Co0.06Mn0.03(OH)2)に、水酸化リチウム及び酸化セリウム(CeO2)を追加し、第1混合物を得た。第1混合物において、リチウムと遷移金属との混合モル比は、約0.9である。ここで、炭酸リチウムの含量は、リチウムとニッケル系活物質前駆体の金属の混合モル比が0.9になるように制御した。ここで、金属は、Ni、Co及びMnを示す。第1混合物を約900℃の酸素雰囲気で1次熱処理を実施した。
【0104】
1次熱処理によって得られた生成物に水酸化リチウムを付加して第2混合物を得て、約800℃の酸素雰囲気で2次熱処理を12時間実施して大結晶粒子形態の正極活物質(LiNi0.908Co0.06Mn0.03Ce0.002O2)を得た。ここで、第2混合物において炭酸リチウムの含量は、リチウムと金属の混合モル比が1.0になるように制御し、ここで、金属のモルは、Ni、Co、Mn及びCeの総モルを示す。正極活物質の大結晶粒子内部には、Ceを含み、Ceの含量は、0.2モル%である。大結晶粒子の平均粒径は、約3μmであり、単一粒子形態を有する。
【0105】
実施例2-3
正極活物質においてCeの含量がそれぞれ0.5モル%及び1.0モル%になるように酸化セリウム(CeO2)の含量がそれぞれ変化されたことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して正極活物質を得た。
【0106】
実施例4-5
大結晶粒子の平均粒径がそれぞれ約2μm及び5μmになるように製造工程条件が制御されたことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して正極活物質を得た。
【0107】
実施例6-7
第1混合物においてリチウムと金属の混合モル比が、それぞれ0.85及び1.0になるように制御したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して正極活物質を得た。
【0108】
実施例8-9
第2混合物においてリチウムと遷移金属の混合モル比が、それぞれ0.95及び1.05になるように制御したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して正極活物質を得た。
【0109】
実施例10
共浸法によってセリウムを含むニッケル系活物質前駆体を合成した。
【0110】
硫酸ニッケル(NiSO4
.6H2O)、硫酸コバルト(CoSO4
.7H2O)及び硫酸マンガン(MnSO4
.H2O)を、Ni:Co:Mn=6:2:2モル比になるように溶媒である蒸溜水に溶かして混合溶液を準備した。前記混合溶液には、硝酸セリウムを付け加え、硝酸セリウムの含量は、0.2モル%である。
【0111】
錯化合物の形成のために、アンモニア水(NH4OH)希釈液と、沈澱剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を準備した。以後、金属原料混合溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウムをそれぞれ反応器内部に投入した。反応器内部のpHを保持するために、水酸化ナトリウムが投入された。引き続き、撹拌しながら、約20時間反応を実施した後、原料溶液の投入を中止した。
【0112】
反応器内のスラリー溶液を濾過及び高純度の蒸溜水で洗浄した後、200℃の熱風オーブンで24時間乾燥してセリウムが含まれたニッケル系活物質前駆体(Ni0.89Co0.06Mn00.03Ce0.02(OH)2)を得た。ニッケル系活物質前駆体は、二次粒子であり、二次粒子の平均粒径は、約4μmである。
【0113】
前記セリウムが含まれたニッケル系活物質前駆体(Ni0.89Co0.06Mn00.03Ce0.02(OH)2)に水酸化リチウムを付加して第1混合物を得た。第1混合物においてリチウムと遷移金属の混合モル比は、約0.9である。ここで、水酸化リチウムの含量は、リチウムとセリウムが含まれたニッケル系活物質前駆体の金属の混合モル比が0.9になるように制御し、金属の含量は、Ni、Co及びMnの総含量である。第1混合物に対し、約900℃の酸素雰囲気で1次熱処理を実施した。
【0114】
1次熱処理によって得られた生成物に水酸化リチウムを付加して第2混合物を得て、約850℃の酸素雰囲気で2次熱処理を12時間実施して正極活物質(LiNi0.89Co0.06Mn0.03Ce0.02O2)を製造した。第2混合物において水酸化リチウムの含量は、リチウムと金属の混合モル比(Li/金属モル比)が1.0になるように制御した。
【0115】
比較例1
第1混合物の製造時、酸化セリウム(CeO2)を付加しないことを除いては、実施例1と同様に実施して正極活物質を得た。
【0116】
比較例1によって実施すれば、大結晶粒子状態の正極活物質を得ることが困難であった。
【0117】
比較例2
第1混合物の製造時、酸化セリウム(CeO2)を付加せず、1次熱処理によって得られた生成物に、水酸化リチウムと酸化セリウム(CeO2)を付加して第2混合物を得て、実施例1と同様に実施してセリウムがコーティングされた正極活物質を得た。
【0118】
製作例1:コインセル製造
正極活物質として実施例1によって得られた正極活物質を用いてコインセルを次のように製造した。
【0119】
実施例1によって得られたニッケル系活物質(LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2)96g、ポリフッ化ビニリデン2g及び溶媒であるN-メチルピロリドン47g、導電材であるカーボンブラック2gの混合物に対し、ミキサを用いて気泡を除去し、均一に分散された正極活物質層形成用のスラリーを製造した。
【0120】
前記過程によって製造されたスラリーを、ドクターブレードを使用してアルミニウム箔上にコーティングして薄い極板状にした後、それを135℃で3時間以上乾燥させた後、圧延と真空乾燥過程を経て正極を作製した。
【0121】
前記正極と相対極としてリチウム金属対極を使用して2032型のコインセル(coin cell)を製造した。前記正極とリチウム金属対極との間には、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレータ(厚さ:約16μm)を介在し、電解液を注入して2032型コインセルを作製した。前記電解液としてエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)を20:40:40の体積比で混合した溶媒に溶解された1.15M LiPF6が含まれた溶液を使用した。
【0122】
製作例2-10:コインセル製造
実施例1の正極活物質の代わりに、実施例2-10の正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、製作例1と同じ方法によって実施してコインセルを製造した。
【0123】
比較製作例1:コインセル製造
実施例1によって製造された正極活物質の代わりに、比較例1によって製造された正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、製作例1と同じ方法によってリチウム二次電池を作製した。
【0124】
比較製作例2:コインセル製造
実施例1によって製造された正極活物質の代わりに、製造例1によって製造された正極活物質を使用したことを除いては、製作例1と同じ方法によってリチウム二次電池を作製した。
【0125】
評価例1:電子走査顕微鏡
(1)実施例1-3及び製造例1
製造例1によって製造されたニッケル系活物質前駆体、実施例1ないし3によって製造された正極活物質に対して電子走査顕微鏡分析を実施した。電子走査顕微鏡は、Magellan 400L(FEI company)を利用し、分析結果を
図1A-
図1C、
図2A-
図2C、
図3A-
図3C及び
図4A-
図4Cに示した。ここで、前記ニッケル系活物質前駆体及び正極活物質は、ジェットミルで粉砕する以前状態である。
【0126】
図1Aないし
図1Cは、製造例1によって得られたニッケル系活物質前駆体に対する電子走査顕微鏡写真であり、
図2Aないし
図2Cは、実施例1によって得られた正極活物質に対する電子走査顕微鏡写真であり、
図3Aないし
図3Cは、実施例2によって得られた正極活物質に対する電子走査顕微鏡写真であり、
図4Aないし
図4Cは、実施例3によって得られた正極活物質に対する電子走査顕微鏡写真である。
【0127】
それを参照して、製造例1のニッケル系活物質前駆体と実施例1-3の正極活物質の粒子成長を確認することができる。製造例1のニッケル系活物質前駆体は、
図1Aないし
図1Cに示されたように、平均粒径が3μmである大結晶(単結晶)粒子であり、実施例1の正極活物質は、
図2Aないし
図2Cから、平均粒径が3.2μmである大結晶(単結晶)粒子形態を有するということが分かった。また、実施例2の正極活物質は、
図3Aないし
図3Cから、平均粒径が3.3μmである大結晶(単結晶)粒子形態を有し、実施例3の正極活物質は、
図4Aないし
図4Cから、平均粒径が3.5μmである大結晶粒子形態であうことを確認することができた。
【0128】
(2)実施例1-2及び比較例1
実施例1及び実施例2によって得られた正極活物質及び比較例1によって得られた正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析を実施し、その結果を
図7A、
図7B及び
図7Cにそれぞれ示した。ここで、前記正極活物質は、ジェットミルによって粉砕された状態である。
【0129】
図7Cに示されたように、比較例1の場合、非単結晶粒子が存在するが、実施例1(
図7A)、実施例2(
図7B))の正極活物質は、いずれも単結晶形態に合成されており、多結晶は観察されていない。
【0130】
評価例2:X線回折分析
(1)実施例1-2及び製造例1
実施例1-2によって製造された正極活物質及び製造例1によって製造された正極活物質に対してCuKα radiation(1.54056Åを用いたX’pert pro (PANalytical)を用いてX線回折分析を実施した。X線回折分析結果を調査して下記表1に示した。
【0131】
FWHM(003)は、(003)面に該当するピーク(2θが約18°であるピーク)の半値幅を示し、FWHM(104)は、(104)面に該当するピーク(2θが約43°であるピーク)の半値幅の比を示したものである。そして、表1においてArea(003/104)は、(003)面に該当するピーク(2θが約18°であるピーク)の面積と、(104)面に該当するピーク(2θが約43°であるピーク)の面積の比を示したものである。
【0132】
(003)面に該当するピークは、正極活物質の層状構造に対する情報を与え、(104)面に該当するピークは、結晶性に対する情報を提供する。
【0133】
【0134】
表1を参照して、実施例1及び実施例2の正極活物質は、比較例1に対して半値幅が減少し、結晶性が向上されることが分かった。
【0135】
(2)実施例1及び比較例1-2
実施例1の正極活物質と、比較例1及び比較例2によって製造された正極活物質に対して、CuKα radiation(1.54056Åを用いたX’pert pro (PANalytical)を用いてX線回折分析を実施した。X線回折分析結果を調査して
図8に示した。
【0136】
それを参照すれば、セリウムがコーティングされた比較例2の正極活物質は、28°近傍でCeO2関連ピークが観察されたが、実施例1の正極活物質及び比較例1の正極活物質は、上述したピークが観察されていない。これにより、実施例1の正極活物質は、比較例2の正極活物質のようにコーティングされた場合と区別される構造を有するということが分かった。このような分析結果、実施例1の正極活物質は、Ceが格子内に入り込み、酸素と結合された状態で存在する構造を有するということを確認することができた。
【0137】
評価例3:残留リチウム
実施例1及び実施例2によって製造された正極活物質及び比較例1の正極活物質に係わる残留リチウムを下記方法によって実施して調査した。
【0138】
正極活物質10gを蒸溜水100mlが入っているビーカーに入れ、5分間200rpmの速度で撹拌し、表面に残留するリチウムを溶解させた後、平均気孔サイズ0.5~5μmのフィルタを用い、残留するリチウム溶解液から正極活物質を除去した。
【0139】
正極活物質が除去された表面に残留するリチウム誘導体を、1N濃度のHCl溶液で滴定して溶解液中のリチウム量を測定した。
【0140】
前記溶解液中のリチウム量の測定は、自動滴定機を使用して、pH7ないし9でpHが急に変わる1次変曲点(EP1)とpHが5に到逹する終末点(FP)を測定し、次の式1及び2でLi2CO3の含量とLiOHの含量を計算する。
【0141】
[式1]
Li2CO3の含量(%):(FP-EP1) Х 0.1 Х 0.001 Х (Li2CO3のMw(73.89)/5) Х 100
【0142】
[式2]
LiOHの含量(%):(2 Х EP1-FP) Х 0.1 Х 0.001 Х (LiOHのMw(23.94)/5) Х 100
計算されたLi2CO3の含量とLiOHの含量を合わせて、最終表面に残留するリチウム誘導体の含量を測定し、前記表面に残留リチウム誘導体の含量を正極活物質の総重量に対して重量%に換算し、その結果を下記表2に示した。
【0143】
【0144】
表2を参照して、実施例1-2の正極活物質は、比較例1の正極活物質に比べて総残留リチウムの含量が減少したことが分かった。
【0145】
評価例4:サイクル特性
製作例1-2、比較製作例1及び2によって作製されたコインセルにおいて、充放電特性などを充放電機(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0146】
最初の充放電は、25℃で0.2Cの電流で4.2Vに到逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に到逹するまで定電圧充電を実施した。充電済みのセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で電圧が3Vに至るまで定電流放電を遂行した。第2の充放電サイクルは、0.2Cの電流で4.2Vに到逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に到逹するまで定電圧充電を実施した。充電済みのセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で電圧が3Vに至るまで定電流放電を遂行した。
【0147】
その後、電池電圧が4.2Vになるまで1Cの定電流で3時間充電した。引き続き、電池電圧が3Vになるまで1Cの定電流で3時間放電を実施した。このようなサイクルを総50サイクルまで反復的に実施した。
【0148】
寿命評価は、1Cの電流で4.2Vに到逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に到逹するまで定電圧充電を実施した。充電済みのセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流で電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを50回反復的に実施して評価した。
【0149】
充放電効率は、下記式3によって計算され、充放電効率を調査してその一部をそれぞれ下記表3に示した。
【0150】
[式3]
充放電効率=[1次サイクルの平均放電電圧/1次サイクルの平均充電電圧]X100
【0151】
【0152】
表3を参照して、製作例1-2によって製造されたコインセルは、比較製作例2に比べて、充放電効率が改善されるということが分かった。そして、比較製作例1のコインセルは、比較製作例2と同じレベルの充放電効率を示した。また、製作例3~10によって製造されたコインセルに対する充放電効率を製作例1のコインセルに対する充放電効率評価方法と同様に実施した。
【0153】
評価結果、製作例3~10によって製造されたコインセルは、製作例1のコインセルの場合と比較して同じレベルの充放電効率を示した。
【0154】
評価例5:高温寿命特性
製作例1-2及び比較製作例2によって作製されたコインセルにおいて、充放電特性を充放電機(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0155】
最初の充放電は、45℃で0.1Cの電流で4.3Vに到逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に到逹するまで定電圧充電を実施した。充電済みのセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.1Cの電流で電圧が3Vに至るまで定電流放電を遂行した。第2の充放電サイクルは、0.2Cの電流で4.3Vに到逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に到逹するまで定電圧充電を実施した。充電済みのセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で電圧が3Vに至るまで定電流放電を遂行した。
【0156】
その後、電池電圧が4.3Vになるまで1Cの定電流で3時間充電した。引き続き、電池電圧が2.5Vになるまで1Cの定電流で3時間放電を実施した。このようなサイクルを総50サイクルまで反復的に実施した。
【0157】
寿命評価は、1Cの電流で4.2Vに到逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に到逹するまで定電圧充電を実施した。充電済みのセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流で電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを50回反復的に実施して評価した。
【0158】
容量保持率(Capacity retention ratio: CRR)を計算し、その結果を
図5に示した。
【0159】
図5を参照して、製作例1-2によって製造されたコインセルは、比較製作例2のコインセルと同様に容量保持率に優れるということが分かった。
【0160】
以上、図面及び実施例を参照して一具現例が説明されたが、これは、一例示に過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有するものであれば、それらから多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決定されねばならない。
【符号の説明】
【0161】
81 リチウム二次電池
82 負極
83 正極
84 セパレータ
85 電池ケース
86 キャップアセンブリー
【国際調査報告】