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▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ワックスを含む熱膨張性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240705BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 5/43 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08L23/08
C08L53/02
C08K5/14
C08K5/23
C08K5/43
C08L91/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500329
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2022066800
(87)【国際公開番号】W WO2023280561
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21183864.4
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】クロッツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ラップマン,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】カッペル,フィオナ
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA22
4F074AA23
4F074AA98
4F074AB03
4F074AB05
4F074AC21
4F074AC32
4F074AD12
4F074AG04
4F074AG06
4F074AG11
4F074BA13
4F074BA24
4F074BB02
4F074BB27
4F074CA29
4F074CC06X
4F074CC06Y
4F074DA02
4F074DA33
4F074DA59
4J002AE032
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB081
4J002BB151
4J002BB201
4J002BG073
4J002BP011
4J002EH076
4J002EK026
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK056
4J002EK066
4J002EK076
4J002EK086
4J002EQ017
4J002EQ027
4J002ER017
4J002ES007
4J002EV267
4J002FD143
4J002FD146
4J002FD327
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本出願は、少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマー、少なくとも1種の過酸化物、少なくとも1種の発泡剤および少なくとも1種のワックスを含む熱膨張性組成物、前記組成物を含む成形体、並びにこの種の成形体を用いて部品、特に中空部品を強化または補強するための、および可動部品同士を接着するための、部品の空隙を密閉および充填する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に基づいて、
a)40.0~98.0重量%の少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマー、
b)0.05~5重量%の少なくとも1種の過酸化物、
c)1.0~15.0重量%の少なくとも1種の発泡剤、および
d)0.1~10重量の少なくとも1種のワックス
を含む熱膨張性組成物であって、
前記少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーは、0.3~10g/10分のメルトフローインデックスを有し、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレンプロピレン-ジエンコポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン-2-エチルヘキシルアクリレートコポリマーおよびエチレン-アクリル酸エステルコポリマーから、特にエチレン-ビニルアセテートコポリマーおよび官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマーから選択される、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーa)がエチレン-ビニルアセテートコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の熱膨張性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の過酸化物が、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジベンゾイルペルオキシドおよびジ-tert-ブチル-1,1,4,4-テトラメチルブト-2-イン-1,4-イレンジペルオキシドから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱膨張性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の発泡剤が、化学発泡剤、特に、好ましくはADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))およびそれらの組み合わせから選択される発熱性発泡剤であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のワックスが、45~70℃の範囲の融点を有するパラフィン系ワックス、60~95℃の範囲の融点を有するマイクロクリスタリンワックス、90~115℃の範囲の融点(凝固点)を有する合成フィッシャートロプシュワックス、または85~140℃の融点を有するポリエチレンワックスを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項6】
前記組成物が、
a)重合した形態のモノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む少なくとも1種のポリマーを含み;および/または
b)少なくとも1種の低分子量多官能性アクリレートを含み;および/または
c)前記成分b)~d)がマスターバッチで使用される
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物を含むことを特徴とする成形体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物または請求項7に記載の成形体を用いて部品、特に中空部品を強化または補強するための、および可動部品同士を接着するための、部品の空隙を密閉および充填する方法。
【請求項9】
請求項7に記載の成形体が部品、特に部品の空隙内に導入され、その後130℃を超える温度に加熱されるので、前記熱膨張性組成物が膨張し、前記部品が密閉され、充填され、強化または補強されることを特徴とする、部品を強化または補強するための請求項8に記載の部品の空隙を密閉および充填する方法。
【請求項10】
部品の空隙を音響的に密閉するための、および/または部品の空隙を水および/または湿気に対して密閉するための、または部品、特に中空部品を強化または補強するための請求項7に記載の成形体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマー、少なくとも1種の過酸化物、少なくとも1種の発泡剤および少なくとも1種のワックスを含む熱膨張性組成物、前記組成物を含む成形体、並びにこの種の成形体を用いて、特に中空部品を強化または補強するための、および可動部品同士を接着するための、部品の空隙を密閉および充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の自動車や自動車部品には、水分や埃の侵入を防ぐために密閉しなければならない空隙が数多くある。さもなければ、このことが内側から外側への本体部分の腐食の原因となり得るからである。このことは特に、重いフレーム構造が、あらかじめ作られた空隙プロファイルで作られた軽量で構造的に安定したフレームワークに取って代わられた現代の自立車体構造に当てはまる。このシステムの結果、この種の構造物には一連の空隙があり、水分や埃の侵入を防ぐために密閉しなければならない。この種の密閉は、この種の空隙における空気伝搬音の伝達を防止する目的にも使用されるので、不快な車両走行音や風切り音を低減し、車両内の運転快適性を高めることができる。
【0003】
この種の空隙に密閉効果および/または音響効果をもたらすバッフル部分は、「ピラーフィラー」、「バッフル」または「音響バッフル」としばしば呼ばれる。これらは通常完全に熱膨張性形状体または担体とその周辺領域に膨張性ポリマー組成物を含む成形体から成る。これらのバッフル部分は、車体組立時に、吊り下げ、クリップ留め、接着、ねじ止めまたは溶接によって開いた構造に固定される。車体の組み立て中にその構造を閉じ、さらに車体を前処理した後、空隙の断面を密閉するために、カソードディップ塗料を硬化させるための炉のプロセス熱を利用して、バッフル部分の膨張性部分の膨張を引き起こす。
【0004】
さらに、現代の車両では、所定の剛性と構造強度を備えた、寸法的に一貫したバッチ生産用の金属および/またはプラスチックをベースとする軽量部品の必要性が高まっている。特に自動車構造では、軽量化が望まれる結果、さらに適正な剛性と構造強度を有する薄肉シートから成る金属軽量部品に対する必要性がある。この場合、必要な支持特性を付与する熱膨張性組成物でできた成形体も使用される。
【0005】
同様の熱膨張性組成物が、例えば、公報:国際公開2008/034755号、国際公開第2007/039309号、国際公開第2013/017536号、独国出願10 2012 221 192.6号、さらに国際公開第2017/055330号、国際公開第2017/055329号、国際公開第2017/108809号および国際公開第2018/234368号に記載されている。これらの熱膨張性組成物もまた、自動車分野で使用されている。
【0006】
現在、この種の膨張性組成物には、ADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、DNPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、PTSS(p-トルエンセミカルバジド)、BSH(ベンゼン-4-スルホノヒドラジド)、TSH(トルエン-4-スルホノヒドラジド)、5-PT(5-フェニルテトラゾール)などの発熱性発泡剤が、この種の膨張性組成物、例えば密閉および接着用のゴム加硫剤(硫黄、過酸化物またはベンゾキノンジオキシム)、エチレンビニルアセテートベースの空隙間仕切り、エポキシベースの支持発泡体、自動車製造における膨張性シーラントなどに使用されている。
【0007】
一般に、発泡剤、特に自動車構造用の膨張性成形部品に使用される化学発泡剤は湿気に弱い。湿気はガス容積とガス放出を変化させる。その結果、ポリマーと発泡剤の協調系がアンバランスな状態になり、もはや所望の膨張率が得られなくなる。これは、その後の車両使用時に漏出につながる。組成物が湿気にさらされるのは、特に輸送と保管の間に起こり、ますますグローバル化する物流構造に起因して、製品の安定性と耐水蒸気性に対するユーザーの要求はますます大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/034755号
【特許文献2】国際公開第2007/039309号、
【特許文献3】国際公開第2013/017536号、
【特許文献4】独国出願第10 2012 221 192.6号明細書
【特許文献5】国際公開第2017/055330号
【特許文献6】国際公開第2017/055329号
【特許文献7】国際公開第2017/108809号
【特許文献8】国際公開第2018/234368号
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明が取り組んだ課題は、上述の用途に既知のコンパウンドと同様に適しているが、同時に耐水蒸気性が著しく改善された熱膨張性コンパウンドを提供することであった。
【0010】
驚くべきことに、この目的は、組成物の総重量に基づいて、
a)40.0~98.0重量%の少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマー、
b)0.05~5重量%の過酸化物、
c)1.0~15.0重量%の少なくとも1種の発泡剤、および
d)0.1~10重量%の少なくとも1種のワックス
を含む熱膨張性組成物であって、
前記少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーが、0.3~10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有し、スチレン―ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン-2-エチルヘキシルアクリレートコポリマーおよびエチレン-アクリル酸エステルコポリマーから、特にエチレン-ビニルアセテートコポリマーおよび官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマーから選択される、組成物によって達成される。
【0011】
同様の組成物は、既知の不利な点を克服すると同時に、特に優れた膨張性と低吸水性に関して、こうした熱膨張性組成物に課される要求を高度に満たしている。特に、水蒸気に対する高い耐性が達成されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従って本発明は第一に、組成物の総重量に基づいて、
a)40.0~98.0重量%の少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマー、
b)0.05~5重量%の過酸化物、
c)1.0~15.0重量%の少なくとも1種の発泡剤、特に少なくとも1種の化学発泡剤、および
d)0.1~10重量%の少なくとも1種のワックス
を含む熱膨張性組成物であって、
前記少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーが、0.3~10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有し、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン-2-エチルヘキシルアクリレートコポリマーおよびエチレン-アクリル酸エステルコポリマーから、特にエチレン-ビニルアセテートコポリマーおよび官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマーから選択される組成物に関する。
【0013】
必須成分として、熱膨張性組成物は、バインダー系として少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーa)を含む。当業者は、ラジカル開始剤の作用によって主鎖または側鎖から水素原子を除去できる(熱可塑性)ポリマーおよびエラストマーのことを指すために、「過酸化物架橋性」という表現を使用する。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーは、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン-2-エチルヘキシルアクリレートコポリマー、およびエチレン-アクリルエステルコポリマーから選択される。
【0015】
本発明によれば、「官能化コポリマー」とは、水酸化物基、アミン基、カルボキシル基、無水物基および/またはアクリレート基をさらに備えたコポリマーであると理解される。
【0016】
本発明の意味の範囲内で、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマー、官能化エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマーおよびエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマーが特に有利である。エチレン-ビニルアセテートコポリマーおよび官能化エチレン-ビニルアセテートコポリマー、特に、重合した形態のさらなるモノマー単位を含まないエチレン-ビニルアセテートコポリマー(純粋なエチレン-ビニルアセテートコポリマー)が非常に特に好ましい。
【0017】
本発明によれば、ビニルアセテートの割合がコポリマーの総質量に基づいて5~30重量%、特に10~25重量%、より具体的には15~20重量%である少なくとも1種のエチレン-ビニルアセテートコポリマーを含む熱膨張性調製物が特に好ましい。
【0018】
本発明によれば、少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーa)、特にエチレン-ビニルアセテートコポリマーは、0.3~10g/10分、特に0.5~10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有し、より好ましくは1.0~10g/10分または1.5~8g/10分、非常に特に好ましくは1.5~5g/10分のメルトフローインデックスを有する。本発明によれば、異なるメルトフローインデックスを有する2種以上のポリマーを熱膨張性調製物に使用するのが有利であり得る。本発明によれば、組成物中の上記の要件を満たさない更なる過酸化物架橋性ポリマーの割合は、総重量に基づいて20重量%未満、より好ましくは15重量%未満であることが好ましい。
【0019】
この目的のため、メルトフローインデックスはキャピラリーレオメーターで測定される。ポリマーは加熱可能なバレル中190℃で溶融し、ベアリング荷重(2.16kg)によって生じる圧力で規定の押出機ダイ(毛管)を通して押し出される(ASTM D1238)。押し出される材料の質量は、時間の関数として測定される。特に断りのない限り、本明細書で指定するメルトインデックスはすべて、ASTM D1238に準じて190℃、2.16kgで決定されたものである。
【0020】
好ましい実施形態では、低温膨張配合物に関しては、ポリマーa)は、発泡剤の分解温度未満の融点(ASTM D3417に準じたDSCで決定可能)を有する。ポリマーa)は、好ましくは100℃未満、より好ましくは90~60℃の融点を有する。
【0021】
熱膨張性調製物は、好ましくは少なくとも40重量%かつ好ましくは最大98重量%、特に少なくとも50重量%かつ最大97重量%の少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマー、好ましくはエチレン-ビニルアセテートコポリマーを含む。50~95重量%、特に60~95重量%、好ましくは70~95重量%の少なくとも1種のエチレン-ビニルアセテートコポリマーを含む熱膨張性調製物(いずれの場合にも、熱膨張性調製物の総質量に基づく)が特に好ましい。最小量は55、65、75重量%、最大量は94、93、92、91、90、89、88、87、86または85重量%とすることもできる。
【0022】
さまざまな実施形態において、少なくとも2種のポリマーの混合物がポリマーa)として使用され、第1のポリマーが、重合した形態のモノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含まず、好ましくは上述のものから選択され、第2のポリマーが、重合した形態のモノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む。用語「(メタ)アクリレート」は、本明細書で使用される場合、いずれの場合にも同様のアクリレートおよびメタクリレートを含む。
【0023】
さまざまな実施形態において、熱膨張性組成物は、重合した形態のモノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレートを特定のポリマーに基づいて2~20重量%の割合で含む少なくとも1種の第2の過酸化物架橋性ポリマーを含む。このポリマー中のグリシジル(メタ)アクリレートは、コポリマーの総質量に基づいて、2~20重量%、特に3~15重量%、好ましくは6~10重量%である。この第2の過酸化物架橋性ポリマーは、第1の過酸化物架橋性ポリマーとは異なっており、さらに含まれる。これらのポリマーは、好ましくはグリシジルメタクリレートを含む。こうしたポリマーとしてポリマーがグリシジル(メタ)アクリレートを単位として含む、上述の過酸化物架橋性ポリマーが適当である。特に好ましいのは、単位としてグリシジル(メタ)アクリレートに加えて、好ましくはエチレン、プロピレン、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートまたはブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸エステル、スチレンおよびビニルアセテートの群から選択されるモノマーを含むターポリマーである。エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)-グリシジル(メタ)アクリレートターポリマー、特にエチレン-メチル(メタ)アクリレート-グリシジルメタクリレートおよびエチレン-ブチル(メタ)アクリレート-グリシジルメタクリレートが非常に特に好ましい。さらに、このポリマー、特にターポリマーのメルトフローインデックスが0.3~30g/10分、特に0.5~25g/10分であると有利であることが証明されている。1.5~25g/10分、特に2~15g/10分のメルトフローインデックスを有するポリマー、特にターポリマーが特に有利である。
【0024】
好ましい実施形態では、低温膨張配合物に関しては、重合した形態のグリシジル(メタ)アクリレートモノマーを含むこれらのポリマーは、発泡剤の分解温度未満の融点(ASTM D3417に準じたDSCで決定可能)を有する。ポリマーは、好ましくは100℃未満、好ましくは90~60℃、特に好ましくは80~65℃の融点を有する。
【0025】
本発明によれば、グリシジル(メタ)アクリレートモノマーを重合した形態で含む2種以上、特に2種の異なるポリマーを熱膨張性調製物に使用することが有利であり得る。2種の異なるターポリマーは、吸水性を向上させるのに特に有利であり得る。
【0026】
こうした実施形態における熱膨張性調製物は、好ましくは少なくとも2重量%、かつ好ましくは最大10重量%、特に最大8重量%の、重合した形態のモノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む少なくとも1種のポリマーを、特定のポリマー、特に少なくとも1種のターポリマーに基づいて、2~20重量%の割合で含むことができる。2~8重量%、特に3~7重量%(いずれの場合にも熱膨張性調製物の総質量に基づく)の、重合した形態のモノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む少なくとも1種の過酸化物架橋性ポリマーを含む熱膨張性調製物が特に好ましい。
【0027】
この場合、調製物はさらに好ましくは、少なくとも1種のエチレン-ビニルアセテートコポリマーを上記の量で含有する。
【0028】
上記の過酸化物架橋性ポリマーに加えて、熱膨張性調製物は、好ましくは少なくとも1種の低分子量多官能性アクリレートを含むことができる。
【0029】
「低分子量多官能性アクリレート」とは、少なくとも2つのアクリレート基を有し、2,400g/mol未満、好ましくは800g/mol未満のモル重量を有する化合物であると理解される。特に、1分子あたり2個、3個またはそれ以上のアクリレート基を有する化合物が有利であることがわかっている。
【0030】
好ましい二官能性アクリレートは、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10-ドデカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートおよびポリブチレングリコールジメタクリレートである。
【0031】
好ましい3個以上のアクリレート基を有する低分子量アクリレートは、グリセロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(TMM)、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(TMMT)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(TMPA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリ(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートおよびトリ(2-メタクリロキシエチル)トリメリテート、並びに最大35個のEO単位および/または最大20個のPO単位の含有量を有するそれらのエトキシル化およびプロポキシル化誘導体である。
【0032】
本発明によれば、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(TCDDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(TMM)、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(TMMT)、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(TMPA)およびペンタエリスリトールテトラアクリレートから選択される1種または複数種の低分子量多官能性アクリレートを含む熱膨張性調製物が非常に特に好ましい。TCDDAおよび/またはTMPTA、特にその両方を含むものが非常に好まれる。
【0033】
低分子量アクリレートに加えて、熱膨張性調製物はさらにアリル化合物などの共架橋剤、例えばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメセート、トリアリルトリメリテート(TATM)、テトラアリルピロメリテート、1,1,3-トリメチル-5-カルボキシ-3-(4-カルボキシフェニル)インデンのジアリルエステル、トリメチロールプロパントリメリテート(TMPTM)またはフェニレンジマレイミドを含むことができる。
【0034】
共架橋剤、好ましくは低分子量多官能性アクリレートが、熱膨張性調製物中に好ましくは0.2~2.5重量%、特に0.4~1.4重量%(いずれの場合にも熱膨張性調製物の総重量に基づく)の量で含まれる。
【0035】
過酸化物架橋性ポリマーの硬化剤系として、熱膨張性調製物は少なくとも1種の過酸化物b)を含む。特に、有機過酸化物、例えばケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルエステル、ペルケタールおよび過酸化水素がが適当である。特に好ましいのは、例えば、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジアルキルペルオキシジカーボネート、ジペルオキシケタール(例えば、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン)、ケトンペルオキシド(例えば、メチルエチルケトンペルオキシド)、4,4-ジ-tert-ブチルペルオキシ-n-ブチルバレレートおよびトリオキセパン(例えば、3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン)である。
【0036】
例えばAkzo NobelまたはPerganから市販されている3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、ブチル-4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドおよびジベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物が特に好ましい。
【0037】
また、使用される過酸化物は、室温では実質的に不活性であり、比較的高い温度(例えば、130℃~240℃)まで加熱された場合にのみ活性化されることが有利であることもわかっている。使用される過酸化物が65℃で60分を超える半減期を有することが特に有利である。すなわち、過酸化物を含む熱膨張性調製物が65℃まで60分間加熱された後、使用された過酸化物の半分未満が分解した。本発明によれば、115℃、特に130℃で60分の半減期を有する過酸化物が特に好ましい。
【0038】
少なくとも1種の過酸化物は、特に好ましくは、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジベンゾイルペルオキシドおよびジ-tert-ブチル-1,1,4,4-テトラメチルブト-2-イン-1,4-イレンジペルオキシドから成る群から選択される。
【0039】
本発明によれば、少なくとも1種の過酸化物または複数の過酸化物が、炭酸カルシウムおよび/またはシリカおよび/またはカオリンなどの固体不活性担体に適用される形態で使用されることも有利である。
【0040】
好ましくは、過酸化物は、架橋温度T90が含有される発泡剤の分解温度未満、好ましくは少なくとも15~35℃未満となるように選択される。これにより、高いガス収量が確保されるので、材料の膨張度が高くなる。架橋温度T90は、材料の架橋の90%が12分以内に達成される温度として定義される。発泡剤の分解温度は、発泡剤が分解し始める温度を示し、活性化温度と呼ぶこともできる。架橋温度T90および架橋度は、DIN 53529に準拠したMonsanto Rheometer 100S(原理:偏向角度3°の振動円板、チャンバー容積約15cm)を用いたレオメーター測定により決定できる。
【0041】
前記少なくとも1種の過酸化物または複数種の過酸化物は、0.05~5重量%の量で、特に好ましくは0.1~3重量%の量で、とりわけ0.2~2重量%または0.3~1重量%の量で本発明の熱膨張性調製物中に含まれ、いずれの場合にも、熱膨張性調製物の総質量に基づく過酸化物の活性物質含有量として決定される。
【0042】
使用される発泡剤c)は、既知の発泡剤であってよく、特に有利には化学発泡剤がこうした組成物に使用され、特にADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、DNPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、PTSS(p-トルエンセミカルバジド)、BSH(ベンゼン-4-スルホノヒドラジド)、TSH(トルエン-4-スルホノヒドラジド)、5-PT(5-フェニルテトラゾール)などの既に述べた発熱性発泡剤が使用される。
【0043】
別法では、例えば国際特許公報:国際特許公開第2017/055330号、国際特許公開第2017/055329号、国際特許公開第2017/108809号および国際特許公開第2018/234368号に記載されているように、吸熱化学発泡剤を使用することもできる。
【0044】
化学発泡剤とは、本発明によれば、熱にさらされると分解し、それによってガスを放出する化合物を意味すると理解される。
【0045】
発泡剤は、特に酸化カルシウム、ゼオライト、酸化亜鉛および/または酸化マグネシウムなどのさらなる添加剤を含むこともできる。
【0046】
さまざまな実施形態において、熱膨張性組成物は、全組成に基づいて発泡剤を1.0~15.0重量%、好ましくは1.5~12.0重量%、好ましくは2.0~10.0重量%の量で含む。特に断りのない限り、ここで示される重量%の量は、膨張前の全組成に基づく。
【0047】
熱膨張性調製物は、さまざまな実施形態において、発泡剤としてADCA(アゾジカルボンアミド)および/またはOBSHを含む。
【0048】
最後に、熱膨張性組成物は、少なくとも1種のワックスd)も含む。
【0049】
適当なワックスとしては、融点が45~70℃の範囲のパラフィン系ワックス、融点が60~95℃の範囲のマイクロクリスタリンワックス、融点(凝固点)が90~115℃の範囲の合成フィッシャートロプシュワックス、および融点が85~140℃のポリエチレンワックスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
適当なパラフィンワックスは、例えば、SASOLWAX 5603、6203、6805の製品名でSasolから入手できる。
【0051】
適当なマイクロクリスタリンワックスの例は、SasolのSasolwax 3971である。
【0052】
典型的なポリエチレンワックスとしては、例えばBacker Petrolite Corp.からPOLYWAX(商標)500、POLYWAX(商標)1500およびPOLYWAX(商標)2000として入手できるエチレンホモポリマーが挙げられる。
【0053】
また一方、凝固点が90~105℃、特に95~105℃の範囲にあり、ドリップ点が110℃~120℃の範囲にある(DGF M-III 3による)フィッシャートロプシュワックスは、本発明の組成物に特に適している。こうしたワックスは、例えばDeurexからDeurex(登録商標)T 39(例えばT 39G)として入手できる。
【0054】
さまざまな実施形態において、熱膨張性組成物は、全組成に基づいてワックスを0.1~10.0重量%、好ましくは0.4~8.0重量%、好ましくは0.8~9.0重量%、さらにより好ましくは1.0~8.0重量%の量で含む。
【0055】
上記の成分に加えて、熱膨張性コンパウンドは、フィラー、可塑剤、反応性希釈剤、レオロジー補助剤、湿潤剤、接着促進剤、老化防止剤、安定剤、および/または染顔料などの従来の成分をさらに含むことができる。これらのさらなる成分は、典型的には、組成物中に合計0.01~60重量%、通常は最大15重量%。好ましくは0.1~10重量%または0.5~10重量%の量で存在する。
【0056】
適当な可塑剤の例は、二塩基酸のアルキルエステル(例えば、フタル酸エステル、アジピン酸ポリエステル)、テクニカルホワイトおよびプロセスオイル(パラフィン)、ジアリールエーテル、ポリアルキレングリコールのベンゾエート、クエン酸エステル(例えば、トリエチルシトレート)、有機リン酸エステルおよびフェノールまたはクレゾールのアルキルスルホン酸エステルである。
【0057】
フィラーとしては、例えば、さまざまな粉砕または沈殿チョーク、カルシウムマグネシウム炭酸塩、タルク、グラファイト、バライト、ケイ酸またはシリカ、特に、例えばクロライトの形態のマイカなどのケイ酸塩フィラー、またはアルミニウム-マグネシウム-カルシウムケイ酸塩タイプのケイ酸塩フィラー、例えばウォラストナイトが挙げられる。タルクは特に好ましいフィラーである。フィラーは、好ましくはステアリン酸またはステアリン酸塩でコーティングされる。これはトリクリング挙動に好影響を及ぼす。
【0058】
フィラーは、好ましくは0~60重量%、特に0~15重量%、好ましくは2~10重量%、特に好ましくは3~8重量%の量で、いずれの場合も熱膨張性組成物全体の質量に基づいて使用される。
【0059】
発色成分、特にグラファイトおよび/またはカーボンブラックをベースとする黒色染料は、本発明の熱膨張性組成物中に好ましくは0~2重量%、特に0.1~0.8重量%、非常に特に好ましくは0.15~0.5重量%の量で、いずれの場合も熱膨張性組成物全体の質量に基づいて含まれる。
【0060】
酸化防止剤または安定剤として、例えば、立体障害フェノール類またはそれらの混合物、および/または立体障害チオエーテルおよび/または立体障害芳香族アミン、ジホスホナイト、ジスルフィド、例えばビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル、または4-メチルフェノール、ジシクロペンタジエンおよびイソブチレンとの反応生成物(Wingstay L)を使用することができる。
【0061】
酸化防止剤または安定剤は、本発明の熱膨張性組成物中に好ましくは0~5重量%、特に0.1~2重量%、好ましくは0.1~0.5重量%の量で、いずれの場合も熱膨張性組成物全体の質量に基づいて含まれる。
【0062】
酸化カルシウムおよび/またはゼオライトなどの乾燥剤は、本発明の熱膨張性組成物中に好ましくは0~5重量%、特に0.1~2.5重量%の量で、いずれの場合も熱膨張性組成物全体の質量に基づいて含まれる。
【0063】
本発明の熱膨張性組成物は、好ましくは22℃で固体であるように配合される。熱膨張性組成物は、この組成物の形状が指示温度で1時間以内、特に24時間以内に重力の影響を受けて変形しない場合、本発明に従って「固体」として見なされる。
【0064】
本発明の熱膨張性組成物は、選択された成分を混錬機、ダブル-Z混錬機、インターナルミキサー、二軸スクリューミキサー、連続ミキサー、または押出機、特に二軸スクリュー押出機などの任意の適当な混合機で混合することにより調製できる。
【0065】
成分をわずかに加熱して均質かつ均一なコンパウンドの達成を容易にすることは有利であり得るが、硬化剤、促進剤および/または発泡剤の活性化を引き起こす温度に達しないことを確実にするために注意しなければならない。得られた熱膨張性組成物は、調製後直ちに、例えばブロー成形、ペレット化、射出成形、圧縮成形、スタンピングまたは押出成形によって成形できる。
【0066】
特に好ましい実施形態では、発泡剤c)、好ましくはさらにワックスd)および過酸化物b)は、「マスターバッチ」として熱膨張性組成物に導入される。マスターバッチとは、使用される発泡剤と、例えばポリマー、例えば使用ポリマーa)または別のポリマーとのプレミックスを意味すると理解される。さまざまな実施形態において、このポリマーは、上述のアクリレート、特に、重合した形態のモノマーとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含むポリマー、および/または低分子量多官能性アクリレートを含むことができる。さらに、このマスターバッチは、ポリマーa)について記載したものよりも高い、例えば100g/10分を超える、例えば400~600g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するEVAコポリマーを含むこともできる。こうしたEVAコポリマーは最大30重量%の量のビニルアセテートモノマーを含むことができる。
【0067】
こうした(反応性)マスターバッチは、次にベースポリマーa)と混ぜ合わせ/混合される。マスターバッチベースポリマーの典型的な重量比は、40:60~5:95、例えば25:75または20:80~8:92の範囲である。
【0068】
手順上の利点に加えて、この方法には、発泡剤を特に均質かつ穏やかに分散させることができ、混練/混合による熱の発生が少ないという利点がある。こうして、発泡剤を不要な分解から保護することができる。特に好ましいのは、少なくとも1種の発泡剤c)、少なくとも1種の過酸化物b)、少なくとも1種のワックスd)、および任意選択で過酸化物架橋性ポリマーa)の一部、特に上述のアクリレート成分を、任意選択でより高いメルトフローインデックスを有するEVAコポリマーと組み合わせて含むマスターバッチが特に好まれる。さらに、マスターバッチは、タルクおよび/または酸化防止剤などのさらなる成分を含むこともできる。
【0069】
熱膨張性組成物は加熱により膨張し、組成物は発泡剤の活性化を引き起こすのに十分な特定の温度まで特定の時間加熱される。組成物の成分や製造ラインの要件にもよるが、これらの温度は通常110℃~240℃、好ましくは120℃~210℃の範囲であり、滞留時間が10分~90分、好ましくは5分~60分である。
【0070】
車両構造の分野において、本発明の組成物は、車両がカソードディップコーティングを硬化させるための炉を通過する際に膨張することが特に有利であるので、別途の加熱工程を省略できる。
【0071】
本発明の熱膨張性組成物は、広範囲の支持体、充填、密閉、および接着用途、例えば車両の空隙を密閉するためのバッフル部分の分野で使用できる。また一方、上記組成物を、例えばドアや屋根の領域で、ライニング接着剤として使用することも考えられる。この種の使用目的のために、本発明の熱膨張性組成物は、直接押し出しによって適用できる。また一方、組成物を押し出し成形した状態で適用部位に持ち込み、鋼鉄を加熱してその上に押し付け、溶融させることもできる。第三の代替手段として、共押出品として使用することも考えられる。この実施形態では、本発明によれば、第2の接着剤組成物が、本発明の熱膨張性組成物でできた実際の非接着形状部分の下に薄い層で適用される。この実施形態の文脈では、この第2の接着剤層は、シェルの構築中に該形状部分を固定するために使用される。
【0072】
従って、熱膨張性組成物は、成形体、特に空隙を密閉するためのバッフル部分の製造、すなわち、自動車の空隙に挿入された後、加熱により膨張し、同時に硬化し、このようにして空隙を意図した通りに、または可能な限り完全に密封する部分の製造に特に適している。
【0073】
本発明は、第二に本発明の熱膨張性組成物を有する成形体に関する。これは例えば、空隙に適合する形状を有する部品の空隙を密閉するためのバッフル部分とできる。
【0074】
本発明によれば、「空隙に適合した形状」とは、この場合、空隙が目的どおりに、または膨張後に完全に密閉されることを確実にするバッフル部分のすべての形状を意味すると理解される。この場合、バッフル部分の形状は、個々に空隙の形状に合わせて作られ、対応する先端および/または湾曲部を有し得る。しかしながら、高い膨張度を有する本発明の熱膨張性組成物の場合、それに応じて例えば、ビーズまたはカットされたストランド形状の可変形態の材料を多量に空隙に導入することも、空隙が膨張後に目的どおりにまたは完全に密閉されることを確実にするのに十分である。
【0075】
この種のバッフル部分は通常、射出成形技術によって本発明の熱膨張性組成物から製造される。この場合、熱膨張性組成物は70~120℃の範囲に加熱され、それに応じた形状の金型に注入される。
【0076】
本発明の成形体は、空隙を有する製品には全て使用できる。車両に加えて、それらには、例えば、航空機、鉄道車両、家電製品、家具、建物、壁、間仕切り、船などが挙げられる。
【0077】
本発明はまた、本明細書に記載の組成物および成形体を用いて部品、特に中空部品を強化または補強するための、および可動部品同士を接着するための、部品の空隙を密閉および充填する方法にも関する。この方法は、好ましくは、部品の空隙を密封する方法でもあり、本発明のバッフル部分が空隙に導入され、次いで熱膨張性組成物が膨張して空隙を密閉するように130℃を超える温度に加熱される。
【0078】
本発明はまた、部品の空隙を音響的に密閉するための、および/または部品の空隙を水および/または湿気に対して密閉するための本発明の成形体またはバッフル部分の使用にも関する。
【0079】
本発明はまた、部品、特に中空部品を強化または補強するための、本発明の成形体の使用にも関する。
【0080】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明することを目的としており、実施例の選択は本発明の主題の範囲を制限すべきではない。組成物において、特に断りのない限り、記載された量はすべて重量部である。
【実施例
【0081】
一般的な試験手順/配合物の調製:
本発明の熱膨張性調製物を製造するために、すべての反応性成分、例えば発泡剤、過酸化物、活性剤および酸化防止剤、さらにワックス、70℃未満のフィラーをマスターバッチとしてEVAベースポリマーに添加し、調製物が均一に混合されるまでゆっくりと混練した。マスターバッチはさらに、グリシジルアクリレート含有ターポリマー、多官能性アクリレート、メルトフローインデックスが400~600g/10分の範囲のEVAコポリマーを含んでいた。
【0082】
膨張の測定
膨張を測定するため、実施例の配合で製造したプレートから約20mm×20mm×3mmの試験片を切り出し、これらを対流式オーブンに導入して175℃に加熱し(加熱時間約7~10分)、この温度で表に記載した時間(加熱時間を含む)放置した。175℃での膨張は、車両構造の硬化中に達成される平均的な条件に相当する。
【0083】
膨張度[%]は、式:
【数1】
(m1=脱イオン水中の最初の状態の試験片の質量
m2=脱イオン水中のベーキング後の試験片の質量)
に従って水置換法で測定した。
【0084】
耐水蒸気性の測定
耐水蒸気性を測定するため、膨張前に組成物を40℃、相対大気湿度98%で最大34日間保管し、その後異なる保管期間後に膨張を測定した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【国際調査報告】