(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】抗菌性化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 219/06 20060101AFI20240705BHJP
C07C 65/10 20060101ALI20240705BHJP
C07C 65/21 20060101ALI20240705BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240705BHJP
A01N 37/40 20060101ALI20240705BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07C219/06 CSP
C07C65/10
C07C65/21 E
A01P3/00
A01N37/40
A01N37/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501246
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2022009225
(87)【国際公開番号】W WO2023287067
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093703
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0078380
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イヒョン・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】スンヒ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒョン・ホ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H011
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB03
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BP30
4H006BS30
4H006BS70
4H006BT12
4H006BU50
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB06
(57)【要約】
本発明は、新規の化合物に関するものであって、より具体的には、優れた抗菌特性を示しながら、重合可能な官能基を有して抗菌性を示す重合体の製造が可能な化合物に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物。
【化1】
前記化学式1において、
Yは、O、SまたはN(R
7)であり、
Lは、単結合、炭素数1ないし10のアルキレン、または炭素数6ないし60のアリーレンであり、
R
1ないしR
3は、それぞれ独立して水素またはメチルであり、
R
4ないしR
7は、それぞれ独立して水素、置換または非置換の炭素数1ないし20のアルキル、または置換または非置換の炭素数6ないし60のアリールであり、
X
-は、1個以上のヒドロキシで置換された炭素数6ないし20の芳香族酸の塩基対であり、
ここで、前記芳香族酸の塩基対は、ハロゲン、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のハロアルキルおよび炭素数1ないし4のアルコキシから構成される群より選択される1個以上の置換基でさらに置換されてもよい。
【請求項2】
Yは、Oである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lは、メチレン、エチレンまたはプロピレンである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
1は、水素またはメチルであり、R
2およびR
3は、水素である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
4ないしR
6のうちの一つは、炭素数5ないし20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して炭素数1ないし4のアルキルである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R
4ないしR
6のうちの一つは、炭素数6ないし16のアルキルであり、残りはそれぞれ独立してメチルまたはエチルである、
請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
X
-は、下記の化学式2で表される、
請求項1に記載の化合物。
【化2】
前記化学式2において、
Aは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、
Rは、フルオロ、ブロモ、クロロ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、メトキシまたはエトキシであり、
eは、1、2または3であり、
fは、0ないし5の整数であり、
fが2以上の場合、2個以上のRは、互いに同一であるかまたは異なる。
【請求項8】
X
-は、下記の化学式2-1ないし2-6のいずれか一つで表される、
請求項1に記載の化合物。
【化3】
【化4】
前記化学式2-1ないし2-6において、
R’は、フルオロ、ブロモ、クロロ、メチル、トリフルオロメチルまたはメトキシであり、
gは、0、1または2であり、
gが2の場合、2個のR’は、互いに同一であるかまたは異なり、
hは、1または2である。
【請求項9】
X
-は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つである、
請求項1に記載の化合物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【請求項10】
前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式1-1ないし1-4のいずれか一つで表される、
請求項1に記載の化合物。
【化11】
前記化学式1-1ないし1-4において、
R’
1は、水素またはメチルであり、
L’は、エチレンまたはプロピレンであり、
X
-は、請求項1で定義した通りであり、
nは、2ないし7の整数であり、
mは、2ないし6の整数である。
【請求項11】
前記化合物は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つである、
請求項1に記載の化合物。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【請求項12】
前記化合物は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも一つに対して抗菌性を示す、
請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記グラム陰性菌は、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)または大腸菌(Escherichia coli)であり、
前記グラム陽性菌は、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)である、
請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の両方に対して抗菌性を示す、
請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の化合物を含む、
抗菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2021年7月16日付の韓国特許出願第10-2021-0093703号および2022年6月27日付の韓国特許出願第10-2022-0078380号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願等の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、抗菌特性を示す新規化合物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、生活の多様化、生活水準の向上、意識の変化および改善により、個人の生活環境での衛生と快適さの増進に対する関心が高まっている。これにより、これを脅かす微生物に対する研究が行われているが、日常生活環境に存在する微生物は、その種類が非常に多いだけでなく、自然系に広範囲に分布しており、被害が深刻な実情である。
【0004】
特に、食生活、住居環境、衣服、工業製品など多様な環境にバクテリア、かびなどの微生物が棲息できるが、このとき、バクテリアは、各種の炎症や食中毒などの原因となる可能性があり、かびは悪臭を発生させるだけでなく、各種の皮膚疾患、呼吸器疾患、アレルギー、アトピー性皮膚炎などの原因となる可能性があって問題となる。また、電子製品および生活用品類の表面に棲息する微生物の場合、製品の性能の低下の要因ともなる。
【0005】
そこで、このような微生物による人間の被害を防止するために微生物の増殖を抑制するかあるいは微生物を死滅するための多様な抗菌物質が開発されている。
【0006】
具体的には、既に開発された抗菌物質としては、大きく無機抗菌剤と有機抗菌剤とに分けることができる。前記無機抗菌剤は、銀や銅などの金属を含む抗菌剤であって、熱安定性に優れ、高温条件でも抗菌特性を維持することができるというメリットがあるが、価格が高く、加工後に含まれた金属イオンによる変色可能性があるという問題がある。また、有機抗菌剤は、無機抗菌剤に比べて安価であり、少量でも抗菌効果に優れているというメリットがあるが、物品に適用後に溶出される可能性があって抗菌持続性が良くないという問題があった。
【0007】
さらに、有機抗菌剤は、微生物の繁殖の阻止および死滅の面で、製品の安定性を確保することはできるが、同時に毒性があってユーザーの皮膚に刺激を誘発する原因ともなる。
【0008】
そこで、抗菌物質の溶出による抗菌性の低下および安全性問題を防止するために、物品に抗菌物質を重合体の形態で導入することが議論されてきた。これにより、化合物自体の抗菌特性に優れるとともに、重合可能な官能基を有して抗菌性重合体の合成が可能な抗菌性単量体に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0601393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、バクテリア増殖抑制効果に優れた新規の化合物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記化合物を含む抗菌剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、
本発明は、下記の化学式1で表される化合物を提供する。
【0013】
【0014】
前記化学式1において、
Yは、O、SまたはN(R7)であり、
Lは、単結合、炭素数1ないし10のアルキレン、または炭素数6ないし60のアリーレンであり、
R1ないしR3は、それぞれ独立して水素またはメチルであり、
R4ないしR7は、それぞれ独立して水素、置換または非置換の炭素数1ないし20のアルキル、または置換または非置換の炭素数6ないし60のアリールであり、
X-は、1個以上のヒドロキシで置換された炭素数6ないし20の芳香族酸の塩基対であり、
ここで、前記芳香族酸の塩基対は、ハロゲン、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のハロアルキルおよび炭素数1ないし4のアルコキシから構成される群より選択される1個以上の置換基でさらに置換されてもよい。
【0015】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む抗菌剤を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による化合物は、バクテリア増殖抑制効果に優れ、重合可能な官能基を有して抗菌性を示す重合体の製造が可能であるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、化合物AのMSスペクトルを示したものである。
【
図2】
図2は、化合物Aの
1H NMRスペクトルを示したものである。
【
図3】
図3は、化合物1の
1H NMRスペクトルを示したものである。
【
図4】
図4は、化合物1のマススペクトル(Mass spectrum)を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけで使用される。
【0019】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に他に意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはその以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0020】
また、本発明において、各層または要素が、各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できることを意味する。
【0021】
本発明は、多様な変更を加えることができ、色々な形態を有することができるもので、特定の実施例を例示し、下記で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されるべきである。
【0022】
また、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の具現例を言及するためのものであって、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は文面がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0023】
一方、本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを全て含む。
【0024】
また、本明細書において、アルキル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されないが、1ないし20であることが好ましい。一実施形態によると、前記アルキル基の炭素数は、1ないし16である。一実施形態によると、前記アルキル基の炭素数は、1ないし12である。他の一実施形態によると、前記アルキル基の炭素数は、8ないし12である。前記アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチルブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチルプロピル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチル-1-ペンチル、2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。また、本明細書において、アルキレンは、2価の基であることを除いては、前述したアルキル基に関する説明を適用することができる。
【0025】
また、本明細書で、アリール基は、特に限定されないが、炭素数6ないし60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によると、前記アリール基の炭素数は、6ないし20である。一実施形態によると、前記アリール基の炭素数は、6ないし10である。前記アリール基が単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除いては、前述したアリール基に関する説明を適用することができる。
【0026】
また、本明細書で、「置換または非置換の」という用語は、「非置換されるか、または重水素、ハロゲン、シアノ、炭素数1ないし10のアルキル、炭素数1ないし10のアルコキシおよび炭素数6ないし20のアリールから構成される群より選択される1個以上、例えば、1個ないし5個の置換基で置換された」という意味で理解することができる。
【0027】
また、本明細書で、アルコキシ基は、アルキル基での他の原子との連結部分に酸素原子が結合している置換基であって、アルキル基については、前述したアルキル基に関する説明を適用することができる。
【0028】
一般に、家庭、事務室、複合施設などの日常的な生活空間で使用される生活化学製品に抗菌特性を示すために、このような生活化学製品の表面にバクテリアなどの微生物の繁殖の阻止および/または死滅が可能な抗菌コーティングが行われている。このとき、抗菌コーティング内に含まれている抗菌剤が微生物の細胞膜または細胞壁を損傷させるか、これらの蛋白質の変性を誘導することになり、これにより微生物の成長が阻害されて、微生物の繁殖および/または死滅がなされることになる。
【0029】
また、バクテリア(細菌)は確認されただけでも5千種を超えるほど多様な種類が存在する。具体的には、バクテリアは、球状、棒状、螺旋状などで、その細胞形状が多様で、酸素を要求する程度も菌ごとに異なっており、好気性菌、通性菌および嫌気性細菌に分かれる。したがって、普通、一種類の抗菌剤が多様なバクテリアの細胞膜/細胞壁を損傷させるか蛋白質を変成させることができる物理/化学的メカニズムを有することは容易ではなかった。
【0030】
また、時間が経過するほど物品に使用された抗菌剤が溶出するという問題が発生し、このような溶出した抗菌剤にユーザーが曝される場合、抗菌物質によってユーザーの健康を脅かすことができるという恐れがあった。これにより、抗菌物質の溶出による抗菌性の低下および安全性問題を防止するために、抗菌剤を単一化合物の形態ではなく、重合体の形態で導入することが議論されてきた。
【0031】
そこで、本発明者等は、化合物が重合可能な官能基を有する4級アンモニウム陽イオンおよび特定の構造の陰イオンが結合された塩化合物構造を有する場合、化合物自体がグラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも一つに、より具体的には、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の両方に抗菌性を示すことができるとともに、分子内に導入された重合可能な官能基によって単一重合体(homopolymer)または共重合体(copolymer)などの抗菌性重合体の合成が可能することを確認し、本発明を完成した。
【0032】
特に、前記化合物に含まれている陰イオンは、ハロゲン陰イオンではなく、1個以上のヒドロキシ基(-OH)で置換された炭素数6ないし20の芳香族酸の塩基対である。より具体的には、前記陰イオンは1個以上のヒドロキシ基(-OH)および1個以上のカルボキシレート基(-COO-)が置換された芳香環化合物構造を有する。このような構造を有する場合、分子内に含まれているヒドロキシ基(-OH)がバクテリア細胞の表面と作用して細胞膜を分解し、内容物を凝固させて化合物の抗菌性をより向上させることができる。また、分子内に含まれているカルボキシレート基(-COO-)によって安定した塩を形成することができる。
【0033】
また、ここで、「特定のバクテリアに抗菌性を示す」ということの意味は、抗菌性の有無を確認しようとする化合物(静菌物質)を試験バクテリア培養液に投入した後、これを培養した後のバクテリアの数が、静菌物質を含有していないReferenceに対して顕著に減少したことを意味するものであり、具体的には、後述する抗菌特性評価によって、下記の数式1により計算された静菌減少率(%)が70%以上であることを意味する。
【0034】
【0035】
前記の式において、
As(Asample)は、静菌物質を含む培養液の600nm波長での吸光度であり、
A0(Areference)は、静菌物質を含有していないバクテリア純粋培養液の600nm波長での吸光度を意味する。
【0036】
より好ましくは、前記「特定のバクテリアに抗菌性を示す」ということは、前記数式1により計算された静菌減少率(%)が、70%以上、70.6%以上、75.5%以上、80%以上、90%以上、95%以上、95.3%以上、95.8%以上、96%以上、97%以上、97.3%以上、98%以上、98.1%以上で、かつ100%以下であることを意味する。
【0037】
また、前記グラム陽性菌は、グラム染色法で染色すると、紫色に染色されるバクテリアを総称するものであって、グラム陽性菌の細胞壁は幾重のペプチドグリカンで構成されており、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールを処理しても脱色されず、紫色を示すことになる。このようなグラム陽性菌に分類されるバクテリアとしては、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、腸球菌(Enterococcusfaecium)または乳酸レンサ球菌(Lactobacillus lactis)などがある。
【0038】
そして、前記グラム陰性菌は、グラム染色法で染色すると、赤色に染色されるバクテリアを総称するものであって、グラム陽性菌に比べて相対的に少量のペプチドグリカンを有する細胞壁を有する代わりに、脂質多糖質、脂質蛋白質、および他の複雑な重合体物質から構成された外膜を有する。これにより、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後にエタノールを処理すると、脱色が起きてサフラニンのように赤色の染料で対比染色をすると、赤色を示すことになる。このようなグラム陰性菌に分類されるバクテリアとしては、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)またはコレラ菌(Vibrio cholerae)などが挙げられる。
【0039】
したがって、前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌は、接触時に多様な病気を誘発するだけでなく、免疫力が落ちた重症患者には2次感染も起こすことがあるので、一つの抗菌剤を使用して前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して抗菌性を示すことが好ましい。
【0040】
一方、一具現例に係る化合物は、4級アンモニウム塩の陽イオンおよび陰イオンによってグラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも一つに対して抗菌性を示すことになる。具体的には、4級アンモニウム塩のアンモニウム陽イオンがグラム陽性菌またはグラム陰性菌の細胞壁に静電気的に吸着することになり、以降疎水性を示す4級アンモニウム塩のアルキル基との相互作用によってバクテリアの細胞表層構造が破壊され、バクテリアの繁殖を抑制することができる。ひいては、4級アンモニウム塩の陰イオンのヒドロキシ基(-OH)がバクテリア細胞の表面と作用して細胞膜を分解し、内容物を凝固させてバクテリアの繁殖をさらに抑制することができる。
【0041】
以下、発明の具体的な具現例によって、化合物およびこれを含む抗菌剤に対してより詳しく説明する。
【0042】
化合物
一具現例の化合物は、下記の化学式1で表される。
【0043】
【0044】
前記化学式1において、
Yは、O、SまたはN(R7)であり、
Lは、単結合、炭素数1ないし10のアルキレン、または炭素数6ないし60のアリーレンであり、
R1ないしR3は、それぞれ独立して水素またはメチルであり、
R4ないしR7は、それぞれ独立して水素、置換または非置換の炭素数1ないし20のアルキル、または置換または非置換の炭素数6ないし60のアリールであり、
X-は、1個以上のヒドロキシで置換された炭素数6ないし20の芳香族酸の塩基対である。
【0045】
ここで、前記芳香族酸の塩基対は、1個以上のヒドロキシ以外で非置換されるか、またはハロゲン、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のハロアルキルおよび炭素数1ないし4のアルコキシから構成される群より選択される1個以上の置換基で置換される。
【0046】
ここで、前記芳香族酸の塩基対は、ハロゲン、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のハロアルキルおよび炭素数1ないし4のアルコキシから構成される群より選択される1個以上の置換基でさらに置換されてもよい。
【0047】
言い換えると、前記芳香族酸の塩基対は、1個以上のヒドロキシ以外で非置換されるか、またはハロゲン、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のハロアルキルおよび炭素数1ないし4のアルコキシから構成される群より選択される1個以上、例えば1個ないし5個の置換基で置換される。
【0048】
前記化学式1において、Yは、O、SまたはNHであってもよい。好ましくは、YがOであってもよい。Lは、メチレン、エチレンまたはプロピレンである。
【0049】
また、R1は、水素またはメチルであり、R2およびR3は、水素であってもよい。
【0050】
また、前記第1繰り返し単位の4級アンモニウム陽イオンで置換された3個の末端基R4、R5およびR6置換基のうちの一つは、炭素数5ないし20のアルキルであってもよい。より具体的には、R4ないしR6のうちの一つは、炭素数5ないし20の線状、つまり、直鎖アルキルであってもよい。このとき、R4、R5およびR6置換基がいずれも炭素数5個未満のアルキルの場合、抗菌性を示さないという問題があり、R4、R5およびR6置換基のうちの一つでも炭素数20個超過のアルキルの場合、前記共重合体製造のための出発物質が溶媒に溶解しないため、合成自体が不可能な面がある。
【0051】
より具体的には、R4ないしR6のうちの一つは、炭素数5ないし20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して炭素数1ないし4のアルキルであってもよい。
【0052】
例えば、R4ないしR6のうちの一つは、炭素数5ないし20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。好ましくは、R5が炭素数5ないし20のアルキルであり、R4およびR6は、それぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。
【0053】
より具体的には、R1は、メチルであり、R2およびR3は、水素であり、R4ないしR6のうちの一つは、炭素数5ないし20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立してメチルまたはエチルであるか;または
R1ないしR3はいずれも水素であり、R4ないしR6のうちの一つは、炭素数5ないし20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。
【0054】
また、例えば、R4ないしR6のうちの一つは、炭素数6ないし16のアルキルであり、残りはそれぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。好ましくは、R5が炭素数6ないし16のアルキルであり、R4およびR6は、それぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。
【0055】
また、例えば、R4ないしR6のうちの一つは、炭素数8ないし12のアルキルであり、残りはそれぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。好ましくは、R5が炭素数8ないし12のアルキルであり、R4およびR6は、それぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。
【0056】
また、R4、R5およびR6置換基のうち炭素数5ないし20のアルキルの以外に、残りの2個の置換基は互いに同一であってもよい。
【0057】
好ましくは、前記化学式1において、R4、R5およびR6のうちの一つは、炭素数6以上、7以上または8以上で、かつ、20以下、18以下、16以下、14以下または12以下であってもよい。
【0058】
例えば、R1は、メチルであり、R2およびR3は、水素であり、R4は、炭素数6ないし16のアルキルであり、R5およびR6は、それぞれ独立してメチルまたはエチルであってもよい。このような構造の第1繰り返し単位を含む抗菌性共重合体は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも一つ、より具体的には、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して優れた抗菌性を示すことができる。
【0059】
また、R7は、水素、炭素数1ないし4のアルキルまたは炭素数6ないし20のアリールであってもよい。例えば、R7は、水素、メチルまたはフェニルであってもよい。
【0060】
一方、前記化学式1において、前記化合物は、4次アンモニウム陽イオン部分の対イオン(Counter ion)であって、1個以上のヒドロキシ基(-OH)で置換された炭素数6ないし20の芳香族酸、より具体的には、1個ないし3個のヒドロキシ基で置換された炭素数6ないし20の芳香族酸の塩基対が含まれる。
【0061】
ここで、「芳香族酸」というのは、芳香環および有機酸官能基を同時に含んでいる芳香族化合物の一種であって、具体的には、炭素数6ないし20の芳香環に1個以上のカルボキシル基(-COOH)が置換された化合物を意味する。したがって、前記「芳香族酸の塩基対」は、前記カルボキシル基で水素イオン(H+)が供与された、炭素数6ないし20の芳香環に1個以上のカルボキシレート基(-COO-)が置換された化合物を意味するものと考えられる。
【0062】
言い換えると、X-は、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシレート基が置換された炭素数6ないし20の芳香環化合物である。X-がこのような化合物である場合、陰イオン置換反応が有利で製造が容易であり、前記化合物の抗菌力もより向上することができる。
【0063】
このとき、前記芳香族酸の塩基対は、ヒドロキシ基以外にハロゲン、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のハロアルキルおよび炭素数1ないし4のアルコキシから構成される群より選択される1個以上、より具体的には、1個ないし3個の置換基でさらに置換されてもよい。
【0064】
一例として、X-は、下記の化学式2で表されてもよい。
【0065】
【0066】
前記化学式2において、
Aは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、
Rは、フルオロ、ブロモ、クロロ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、メトキシまたはエトキシであり、
eは、1、2または3であり、
fは、0ないし5の整数であり、
fが2以上の場合、2個以上のRは、互いに同一であるかまたは異なる。
【0067】
具体的には、前記化学式2において、
Rは、フルオロ、ブロモ、クロロ、メチル、トリフルオロメチルまたはメトキシであり、
eは、1、2または3であり、
fは、0、1、2または3であってもよい。
【0068】
このとき、e+fは、1、2または3であってもよい。
【0069】
より具体的には、X-は、下記の化学式2-1ないし2-6のいずれか一つで表されてもよい。
【0070】
【0071】
前記化学式2-1ないし2-6において、
R'は、フルオロ、ブロモ、クロロ、メチル、トリフルオロメチルまたはメトキシであり、
gは、0、1または2であり、
gが2の場合、2個のR'は、互いに同一であるかまたは異なり、
hは、1または2である。
【0072】
このとき、g+hは、1、2または3であってもよい。
【0073】
例えば、X-は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つである。
【0074】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0075】
一例として、前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式1-1ないし1-4のいずれか一つで表されてもよい。
【0076】
【0077】
前記化学式1-1ないし1-4において、
R’1は、水素またはメチルであり、
L’は、メチレンまたはエチレンであり、
X-は、前記化学式1で定義した通りであり、
nは、2ないし7の整数であり、
mは、2ないし6の整数である。
【0078】
言い換えると、前記化学式1-1ないし1-4において、
nは、2、3、4、5、6または7であってもよい。
【0079】
mは、2、3、4、5または6であってもよい。
【0080】
一方、前記化合物は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つである。
【0081】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0082】
一方、前記化学式1で表される化合物は、下記の反応式1のような製造方法で製造することができる。
【0083】
【0084】
前記反応式1において、X1は、ハロゲンであり、より好ましくはブロモまたはクロロであり、Mは、アルカリ金属であり、残りの置換基に関する説明は、前記化学式1で定義した通りである。
【0085】
前記反応式1内のステップ1は、3次アンモニア化合物A-1をハロゲン化合物A-2と反応させ、4次アンモニウム塩化合物A-3を製造するステップであり、ステップ2は、前記ステップ1で製造された化合物A-3のハロゲン陰イオンを目的とするX-イオンに置換するための陰イオン置換反応ステップである。前記製造方法は後述する製造例でより具体化することができる。
【0086】
また、前記化合物は、微生物、特にグラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも一つに対して優れた抗菌効果を示すことができる。
【0087】
より具体的には、前記化合物は、グラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。または、前記化合物は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。または、前記化合物は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上およびグラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。
【0088】
このとき、前記化合物が抗菌性を示すグラム陰性菌は、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)または大腸菌(Escherichia coli)であり、前記グラム陽性菌は、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)であってもよいが、これに限定されるものではない。より好ましくは、前記化合物は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の両方に対して抗菌性を示すことができる。このとき、化合物が抗菌性を示すということの意味は、後述する吸光度を用いた抗菌特性評価で測定される静菌減少率が50%以上であるものと確認可能である。
【0089】
ここで、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)は、グラム陰性(Gram negative)の桿菌、通性嫌気性または呼気性細菌であって、多様な環境に分布して、人と動物の呼吸器や皮膚に感染して泌尿系関連病気を起こすことがある。特に、人が前記プロテウスミラビリスに感染する場合、尿道感染や急性腎盂炎を起こすと知られている。また、プロテウスミラビリスは、小便をアルカリ化してアンモニアが排出されるようにすることによって悪臭を誘発することがある。
【0090】
具体的には、前記化合物の大腸菌(E.coli)に対する抗菌性評価は、吸光度を用いて測定することができ、これによって測定された、下記の数式1により計算される前記化合物の大腸菌(E.coli)に対する静菌減少率は、70%以上であってもよい。
【0091】
【0092】
前記の式において、
As(Asample)は、静菌物質を含む培養液の600nm波長での吸光度であり、
A0(Areference)は、静菌物質を含有していない大腸菌(E.coli)純粋培養液の600nm波長での吸光度を意味する。
【0093】
より好ましくは、前記化合物の前記数式1で計算された大腸菌(E.coli)に対する静菌減少率は、70%以上、70.6%以上、75.5%以上、80%以上、90%以上、95%以上、95.3%以上、95.8%以上、96%以上、97%以上、97.3%以上、98%以上、98.1%以上で、かつ100%以下であってもよい。
【0094】
前記化合物のプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)およびエンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)それぞれに対する抗菌性評価も、大腸菌(E.coli)に対する抗菌性評価と同様の方法で行うことができる。
【0095】
抗菌剤
一方、他の一側面によると、前述した化学式1で表される化合物を含む抗菌剤が提供される。前記抗菌剤は、前述のようにバクテリア増殖抑制効果に優れた化合物を含み、優れた抗菌性を示すことができる。
【0096】
このとき、抗菌剤は、抗菌性が必要な物品に混合されるかまたは物品に塗布またはコーティングされてもよい。このような抗菌性が必要な物品の例としては、加湿器、水槽、冷蔵庫、エアーウォッシャー、水族館、空気清浄器、農業用フィルム、鮮度維持用材料、加工食品などの容器、電子部品包装材料など有害なバクテリアが容易に成長する各種の生活化学物品に制限されることなく適用可能である。
【0097】
また、前記化合物を含む抗菌剤は、適用が必要な用途によって抗菌性コーティング組成物、抗菌性樹脂、抗菌プラスチックなどの色々な形態で製造されてもよい。ひいては、前記抗菌剤は、抗菌性物品に混合または塗布が容易になるように、他の種類の樹脂および/または溶媒をさらに含んでもよい。
【0098】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるものではない。
【0099】
製造例A:化合物Aの製造
【0100】
【0101】
2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート7.86gと、ブロモデカン11.06gを30mLのアセトニトリル(Acetonitrile;ACN)に入れて撹拌した。以降、ここにp-メトキシフェノール(4-methoxyphenol;MeHQ)4mgを入れ、60℃で24時間還流反応させた。反応が終結した後、300mLのジエチルエーテルに反応生成物を入れ、撹拌して沈殿させた後、フィルタリングして化合物Aを得た。得られた化合物AをMALDI-TOF質量分析および
1H NMR分析結果、化合物Aの陽イオンに該当する値が検出された。一方、化合物AのMSスペクトルおよび
1H NMRスペクトルをそれぞれ
図1および
図2に示した。
【0102】
[MS-H]+=298
1H NMR(500MHz、DMSO-d6、δ[ppm]):6.08(1H)、5.77(1H)、4.52(2H)、3.69(2H)、3.35(2H)、3.09(6H)、1.91(3H)、1.67(2H)、1.25(14H)、0.96(3H)
【0103】
製造例B:化合物Bの製造
【0104】
【0105】
前記製造例Aで、ブロモデカンの代わりにブロモオクタンを用いたことを除いては、製造例Aと同様な方法で化合物Bを合成した。
【0106】
[MS-H]+=270
【0107】
製造例C:化合物Cの製造
【0108】
【0109】
前記製造例Aで、ブロモデカンの代わりにブロモドデカンを用いたことを除いては、製造例Aと同様な方法で化合物Cを合成した。
【0110】
[MS-H]+=326
【0111】
製造例D:化合物Dの製造
【0112】
【0113】
2-(ジメチルアミノ)アクリル酸エチル7.16gと、ブロモデカン11.06gを30mLのアセトニトリル(ACN)に入れて撹拌した。以降、ここにp-メトキシフェノール(MeHQ)4mgを入れ、60℃で24時間還流反応させた。反応が終結した後、250mLのジエチルエーテルに反応生成物を入れ、撹拌して沈殿させた後、フィルタリングして化合物Dを得た。得られた化合物DをMALDI-TOF質量分析および1H NMR分析結果、化合物Dの陽イオンに該当する値が検出された。
【0114】
[MS-H]+=284
1H NMR(500MHz、DMSO-d6、δ[ppm]):6.48(1H)、6.11(1H)、5.94(1H)、4.67(2H)、4.13(2H)、3.58(2H)、3.48(6H)、1.74(2H)、1.27(14H)、0.86(3H)
【0115】
製造例E:化合物Eの製造
【0116】
【0117】
前記製造例Dで、ブロモデカンの代わりにブロモオクタンを用いたことを除いては、製造例Dと同様な方法で化合物Eを合成した。
【0118】
[MS-H]+=256
【0119】
製造例1:化合物1の製造
【0120】
【化31】
前記製造例Aで合成した化合物A 20gを100mLのDI水(water)に溶解した後、50mLの水に溶解した11.3gのサリチル酸ナトリウム(sodium salicylate)を混合して24時間常温で撹拌し、陰イオン置換反応を行った。以降、反応物をエチルアセテート(EA)/DI水で有機層を抽出して溶媒を除去し、EAで再結晶して化合物1を得た。
1H NMR分析結果、化合物1の陰イオンに該当するピークが観察され、無機分析結果、化合物Aに比べて化合物1が顕著に低いBr含有量を示し、置換が正常に行われたことが分かった。一方、化合物1の
1H NMRスペクトルおよびマススペクトル(Mass spectrum)をそれぞれ
図3および
図4に示しており、燃焼イオンクロマトグラフィー(Combustion Ion Chromatography;C-IC)分析機器を用いて測定した化合物1と化合物AのBr含有量の測定結果は、下記の表1に記載した通りである。
【0121】
[MS-H]+=298
【0122】
[M-H]-=137
【0123】
1H NMR(500MHz、DMSO-d6、δ[ppm]):7.63(1H)、7.09(1H)、6.58(2H)、6.08(1H)、5.76(1H)、4.53(2H)、3.69(2H)、3.32(2H)、3.08(6H)、1.91(3H)、1.67(2H)、1.25(14H)、0.86(3H)
【0124】
【0125】
【0126】
前記製造例1で、化合物Aの代わりに前記製造例Cで製造した化合物Cを用いたことを除いては、製造例1と同様な方法で化合物2を合成した。
【0127】
[MS-H]+=326
[M-H]-=137
【0128】
製造例3:化合物3の製造
【0129】
【0130】
前記製造例1で、化合物Aの代わりに化合物F(N-2-(アクリロイルオキシ)エチル)-N,N-ジメチルドデカン-1-アミニウムブロマイド、((N-2-(acryloyloxy)ethyl)-N,N-dimethyldodecane-1-aminiumbromide)を用いたことを除いては、製造例1と同様な方法で化合物3を合成した。
【0131】
[MS-H]+=312
[M-H]-=137
【0132】
製造例4:化合物4の製造
【0133】
【0134】
前記製造例1で、化合物Aの代わりに前記製造例Bで製造した化合物Bを用いて、サリチル酸ナトリウム(sodium salicylate)の代わりにバニリン酸ナトリウム(sodium vanillate)を用いたことを除いては、製造例1と同様な方法で化合物4を合成した。
【0135】
[MS-H]+=284
[M-H]-=167
【0136】
製造例5:化合物5の製造
【0137】
【0138】
前記製造例1で、化合物Aの代わりに前記製造例Dで製造した化合物Dを用いて、サリチル酸ナトリウム(sodium salicylate)の代わりにバニリン酸ナトリウム(sodium vanillate)を用いたことを除いては、製造例1と同様な方法で化合物5を合成した。
【0139】
[MS-H]+=256
[M-H]-=167
【0140】
製造例6:化合物6の製造
【0141】
【0142】
前記製造例1で、化合物Aの代わりに前記製造例Eで製造した化合物Eを用いて、サリチル酸ナトリウム(sodium salicylate)の代わりにバニリン酸ナトリウム(sodium vanillate)を用いたことを除いては、製造例1と同様な方法で化合物6を合成した。
【0143】
[MS-H]+=284
[M-H]-=167
【0144】
実験例-抗菌特性評価
他に表記しない限り、下記の特性評価は、恒温恒湿(23±1℃、相対湿度50±10%)で行った。
【0145】
(1)大腸菌に対する抗菌特性評価
大腸菌(E.coli、ATCC 25922)が3000CFU/mLで接種されたニュートリエントブロス(Nutrient broth)培養液25mLを50mLのコニカルチューブ(Conical tube)に移した後、前記製造例および比較製造例で製造した抗菌性化合物(静菌物質)を、下記の表2に記載された投入量だけそれぞれ注入した後、十分に混合した。以降、これを35℃が維持されるシェーキングインキュベータ(shaking incubator)(ビジョンテック、VS-37SIF)で16時間培養した。
【0146】
培養が完了した溶液を1×PBS バッファ溶液(buffer solution)を用いて、1/5の濃度で希釈した後、希釈された溶液をUV-Vis Spectrophotometer(K Lab、Optizen POP)を用いて、600nm波長での吸光度を測定した。また、抗菌化合物を投入していない純粋な培養液内で大腸菌(E.coli、ATCC 25922)を35℃が維持されるシェーキングインキュベータ(shaking incubator)(ビジョンテック、VS-37SIF)で16時間培養した溶液を対照群として準備し、前記と同様の方法で600nm波長での吸光度を測定した。
【0147】
以降、下記の数式1によって、大腸菌(E.coli、ATCC 25922)の静菌減少率(%)を計算し、その結果を、下記の表2に示した。
【0148】
【0149】
前記の式において、
As(Asample)は、静菌物質を含む培養液の600nm波長での吸光度であり、
A0(Areference)は、静菌物質を含有していない大腸菌(E.coli)純粋培養液の600nm波長での吸光度を意味する。
【0150】
【0151】
前記表2を参照すると、実施例の芳香族酸塩基対を有する化合物は、ハロゲン陰イオンを有する比較例の化合物に対して、大腸菌に対して向上した抗菌特性を示すことが分かる。特に、(実施例4の化合物4と比較例1の化合物B)および(実施例6の化合物6と比較例2の化合物E)をそれぞれ比較してみると、陽イオン構造が同一であるにもかかわらず、芳香族酸の塩基対を陰イオンとして有する実施例の化合物の方が、静菌減少率が顕著に向上することが確認される。
【0152】
したがって、4級アンモニウム陽イオンおよび芳香族酸の塩基対陰イオンが結合された前記化学式1で表される化合物は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも一つに対して優れた抗菌性を示すことが分かる。
【国際調査報告】