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特表2024-525791治療に使用するためのイミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】治療に使用するためのイミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240705BHJP
   A61K 31/4192 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07D487/04 139
C07D487/04 CSP
A61K31/4192
A61P37/06
A61P25/00
A61P25/18
A61P29/00
A61P35/00
A61P1/00
A61P13/10
A61P11/00
A61P1/16
A61P15/00
A61P5/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502013
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2022069472
(87)【国際公開番号】W WO2023285466
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21305999.1
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・アルマリオ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・デペレッティ
(72)【発明者】
【氏名】アメリー・ドゥメルグ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB03
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA18
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC06
(57)【要約】
本発明は式(I):(式中:R1は水素原子、ハロゲン原子または(C~C)ヒドロキシアルキル基を表し、R2は(C~C)アルキル基を表し、R3は水素原子、(C~C)アルキル基またはハロゲン原子を表し、Arは2価の芳香環または(C~C11)ヘテロアリーレン基を表す)の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。さらに本発明は特に抗がん剤としての、その治療用途に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中:
R1は水素原子、ハロゲン原子または(C~C)ヒドロキシアルキル基を表し、
R2は(C~C)アルキル基を表し、
R3は水素原子、(C~C)アルキル基またはハロゲン原子を表し、
Arは2価の芳香環または(C~C11)ヘテロアリーレン基を表す)
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式中、
R1はハロゲン原子、特にフッ素原子、または-CHOH基であり、
R2およびR3は請求項1で定義した通りであり、
Arはフェニレン基またはインドリレン基である、
請求項1に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
式中、
R2はメチル基であり、
R3は水素原子またはフッ素原子である、
請求項1または2に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
以下の化合物:
【化2】
のうち1つから選択される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、特にそのトリフルオロ酢酸塩。
【請求項5】
式(II)
【化3】
(式中、Ar、R2およびR3は請求項1~3のいずれか1項で定義した通りである)の化合物を、パラジウム触媒のような触媒、例えば:
-特に不活性雰囲気下、例えばアルゴン下、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル存在下において、トルエンのような溶媒中の酢酸パラジウムまたは
-アセトニトリルおよびトルエン中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)と、
式(III)
【化4】
(式中、R1は請求項1または2で定義した通りである)の化合物の存在下で反応させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を製造するための方法。
【請求項6】
式(IV)
【化5】
(式中、ArおよびR3は請求項1~3のいずれか1項で定義した通りである)の化合物を、式HNR2(式中、R2は請求項1~3のいずれか1項で定義されている)のアミンと、例えばトルエン、ベンゼンまたはジクロロメタンのような溶媒中で、例えば120~160℃の温度範囲で、特に20~30時間の間反応させる、請求項5に記載の式(II)の化合物を製造するための方法。
【請求項7】
式(IIa)および(IVa)
【化6】
の化合物から選択される化合物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする薬剤。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
薬剤として使用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
自己免疫障害、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患、炎症性疾患および/またはがん、より具体的にはがんの予防および/または治療に使用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
前記がんが固形腫瘍、特に神経芽腫、結腸直腸がん、アンドロゲン誘発性膀胱がん、肺がん、肝細胞癌、乳がん、食道がんまたは甲状腺がんである、請求項11に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール誘導体、それらの製造方法、ならびに特に抗がん剤としての、特にNR4A2、NOT、TINUR、RNR-1またはHZF3としても知られるNurr1、およびNur77/TR3/NGFIBとも呼ばれるNR4A1としても知られるNur77などの核内受容体サブファミリーNR4Aの調節を介したその治療用途が開示される。
【0002】
前記誘導体は特に自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患などの疾患、より具体的にはがんの治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
本明細書で用いるとき、Nurr1およびNur77はオーファン核内受容体であり、それぞれ、核内受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)および1(NR4A1)に関連している。Nurr1およびNur77は核内受容体スーパーファミリーのメンバーで、初期応答遺伝子として発現し複数の標的遺伝子の発現を制御している。
【0004】
Nurr1およびNur77はN末端ドメイン、DNA結合ドメインおよびリガンド結合ドメインを含む典型的な核内受容体の構造を持つ。Nurr1およびNur77はDNA結合ドメインにおいて90~95%の相同性を持つが、N末端ドメインにおいて異なっている。Nurr1およびNur77の発現と局在は、細胞増殖やアポトーシスにおけるこれらの役割と密接に関連している。さらに、Nurr1およびNur77は免疫系内においても発現し、機能を持っている(非特許文献1)。
【0005】
Nurr1は転写因子の神経成長因子誘導遺伝子B(NGFI-B)ファミリーの核内オーファン受容体をコードする。
【0006】
NR4Aサブファミリーは代謝制御において役割を果たしている。Nurr1は代謝および糖新生に関連する複数の遺伝子の発現を制御している。Nur77は脂質およびコレステロール代謝、脂肪肝、肝糖新生および膵島β細胞増殖に関与している。
【0007】
NR4Aサブファミリーは炎症応答の制御においても役割を果たしている。特に、Nurr1は炎症性関節炎ならびに軟骨および関節の炎症と関連していることが分かっている。
【0008】
がんにおけるさまざまな細胞シグナル経路によって制御されるNurr1およびNur77の活性も実証されている。例えば、Nurr1の発現は結腸直腸がんと関係しており、Nur77は結腸、肺および乳がんで過剰発現している。Nurr1およびNur77両方の発現の調節不全も腫瘍形成の要因となり得る。
【0009】
NR4Aサブファミリーは神経および神経学的疾患にも関連している。特に、Nurr1は、記憶および学習などのヒトの中枢神経系のいくつかの生理学的機能の制御に関与しており、ドーパミン合成および代謝において活性が証明されている。Nur77は脳のさまざまな領域で発現しており、これの過剰発現は酸素および糖欠乏誘発性神経損傷を改善する一方、そのノックダウンはこれらの状態を悪化させる。Nurr1もNur77も、特にパーキンソン病と関係している。
【0010】
Nur77を制御する組成物はすでにいくつか知られているが、Nurr1およびNur77ならびにこれらの治療活性を調節する組成物を特定するために、さらなる調査が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Front.Immunol.、2018年8月3日、https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.01797
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
Nur77および/またはNurr1調節効果を持つ新しい組成物の発見は、永続的に必要である。特に、がんの新しい治療、そして、具体的には、腫瘍細胞を攻撃するために用いられる、健康な細胞への影響が少ない標的療法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、今回、以下の式(I)で定義する組成物が、Nur77およびNurr1調節効果を持つことを見いだした。
【0014】
したがって、前記式(I)の化合物は、自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患などの疾患の治療および/または予防に有用である。
【0015】
したがって、第1の態様によると、本発明は以下に定義する式(I)の化合物または任意のその薬学的に許容される塩に関する。
【0016】
さらに本明細書では、薬剤として使用するための、以下に定義する式(I)の化合物が提供される。
【0017】
本明細書では、自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんの治療および/または予防に使用するための、以下に定義する式(I)の化合物も提供される。式(I)の化合物は幹細胞移植および/または移植片に関連する治療としても使用できる。
【0018】
本明細書では、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患の治療および/または予防に使用するための、以下に定義する式(I)の化合物も提供される。
【0019】
本明細書では、自己免疫障害およびがんの治療および/または予防に使用するための、以下に定義する式(I)の化合物も提供される。
【0020】
本明細書では、薬剤、特に、自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんの治療および/または予防のための薬剤の製造のための以下に定義する式(I)の化合物の使用も提供される。
【0021】
最終的に、本明細書では、自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんの治療および/または予防に使用するための、式(I)の化合物または任意のそれらの薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0022】
特に、本発明は自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんの治療および/または予防に使用するための、式(I)の化合物または任意のそれらの薬学的に許容される塩を含む薬剤に関する。
【0023】
定義
本明細書で用いるとき、「患者」の語は繁殖、友として、もしくは保存目的のための価値がある動物などの動物、または、好ましくは、1つもしくはそれ以上の本明細書に記載された疾患に苦しめられている、または苦しめられる可能性があるヒトまたはヒトの子供のことをいう。
【0024】
特に、本出願で用いるとき、「患者」の語は齧歯類、ネコ、イヌ、霊長類またはヒトなどの哺乳類を指し、好ましくは、対象はヒトである。
【0025】
本明細書に記載された疾患の治療を必要とする患者の同定は、十分に当業者の能力および知識の範囲内のことである。当分野の獣医師または医師であれば、臨床検査、身体検査、病歴/家族歴または生物学的および診断的検査を用いることによって、そのような治療を必要とする患者を容易に同定できる。
【0026】
本発明の文脈において、「治療する」もしくは「治療」の語は、本明細書で用いるとき、疾患の進行を予防する、逆行させる、緩和する、抑制するまたは疾患および疾患の結果として生じる認知性、運動性もしくは代謝性の変化を予防することを意味する。
【0027】
したがって、「治療する」または「治療」の語は、本発明の枠組みの範囲内で、本明細書、特に「病態」の段落に記載された疾患に苦しむ患者の病状の改善を含む。
【0028】
本明細書で用いるとき、「有効な量」は、本発明の化合物が本明細書に記載された疾患の症状を予防する、低減する、除去する、治療するまたは制御するのに有効な量のことをいう。
【0029】
「制御する」の語は本明細書に記載された疾患の進行を遅くする、妨げる、停止させるまたは止めることができるすべての方法のことをいう意図があるが、必ずしもすべての疾患および状態症状の完全な除去を示すものではなく、予防的処置を含む意図がある。
【0030】
「有効な量」の語は「予防に有効な量」および「治療に有効な量」を含む。
【0031】
本明細書で用いるとき、「予防する」の語は、任意の現象、つまり本発明においては本明細書に記載された疾患の発症リスクを低減するまたは発生を遅らせることを意味する。
【0032】
本明細書で用いるとき、「予防する」は「発生の可能性を低減する」または「再発の可能性を低減する」ことも包含する。
【0033】
「予防に有効な量」の語は本明細書に記載されたいずれかの疾患の発生の可能性を抑制する、予防する、減少させるのに有効な本発明の化合物の濃度のことをいう。
【0034】
同様に、「治療に有効な量」の語は本明細書に記載された疾患を治療するのに有効な化合物の濃度のことをいう。
【0035】
本明細書で用いるとき、「薬学的に許容される」の語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題となる合併症をもたらすことなくヒトおよび動物の組織に接触させて用いるのに適し、合理的な利点/リスク比と釣り合った化合物、材料、賦形剤、組成物または剤形のことをいう。
【0036】
本明細書で用いるとき、「薬学的に許容される塩」の語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応等をもたらすことなくヒトおよび下等動物の組織に接触させて用いるのに適し、合理的な利点/リスク比と釣り合った塩のことをいう。薬学的に許容される塩は当技術分野で周知である。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、以下の詳細な説明で明らかにされるように、適切な無機および有機酸ならびに塩基由来のものを含む。
【0037】
「薬学的に許容される担体、アジュバントまたは媒体」の語は、共に製剤化されている本化合物の薬理学的活性を破壊しない任意の非毒性の担体、アジュバントまたは媒体などの薬学的に許容される賦形剤のことをいう。
【発明を実施するための形態】
【0038】
式(I)の化合物
驚くべきことに、本発明者らは本明細書に開示される式(I)の化合物が自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんを予防するおよび/または治療するのに有用であることを見いだした。
【0039】
したがって、第1の態様によると、本発明の主題は式(I):
【化1】
(式中:
R1は水素原子、ハロゲン原子または(C~C)ヒドロキシアルキル基を表し、
R2は(C~C)アルキル基を表し、
R3は水素原子、(C~C)アルキル基またはハロゲン原子を表し、
Arは2価の芳香環または(C~C11)ヘテロアリーレン基を表す)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0040】
本発明の脈絡において、用語:
-「ハロゲン」は塩素、フッ素、臭素またはヨウ素を意味すると理解され、特に、塩素、フッ素または臭素、好ましくはフッ素を示し;
-本明細書で用いるとき、「(C~C)アルキル」は、それぞれC~Cノルマル、第2級または第3級の1価の飽和、直鎖または分岐の炭化水素基のことをいい、例えば(C~C)アルキルである。例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルおよびイソヘキシル基等である;
-芳香環は、ヒュッケル則によると、1分子が4n+2πの電子を持つことを意味する。一実施形態によると、2価の芳香環はフェニレン基である。
-本明細書で用いるとき、(C~C11)ヘテロアリーレン基は、2価の単環の芳香族基または2価の2環の芳香族基のことをいい、ここで、少なくとも1つの環は芳香族であり、さらにここで、環の1つから3つの炭素原子は窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子で置換されている。ヘテロアリール基の例としては、限定されるものでないが、以下のヘテロアリールに対応する2価の基である:オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラジン、オキサジアゾール、フラン、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、イミダゾール、トリアゾール、インドール等。本発明の枠組みの中においては、ヘテロアリーレン基は有利にはインドリレン基である。
【0041】
式(I)の化合物は薬学的に許容される塩の形態で存在でき、そのような塩も発明の一部である;これらの塩はトリフルオロ酢酸などの薬学的に許容される酸と共に製造できる(P.Stahl、C.Wermuth;Handbook of pharmaceutical salts;Wiley編)が、例えば式(I)の化合物を精製または単離して得られるその他の塩は本発明の一部である。
【0042】
特に、「薬学的に許容される塩」は無機酸付加塩および有機酸付加塩のことをいう。
【0043】
式(I)の化合物または任意のそれらの薬学的に許容される塩は溶媒和化合物または水和物を形成してもよく、本発明はそのような溶媒和化合物および水和物をすべて含む。
【0044】
「水和物」および「溶媒和化合物」の語は単に本発明による化合物(I)が水和物または溶媒和化合物、すなわち、1つまたはそれ以上の水または溶媒分子と組み合わされているまたは関連付けられている状態であり得ることを意味する。これはそのような化合物の化学的な特徴に過ぎず、このタイプの有機化合物すべてに適用できる。
【0045】
一実施形態において、上で定義した式(I)の化合物において、
R1はハロゲン原子、特にフッ素原子、または-CHOH基であり、
R2およびR3は上で定義した通りであり、
Arはフェニレン基またはインドリレン基である。
【0046】
別の実施形態において、上で定義した式(I)の化合物において、
R2はメチル基であり、
R3は水素原子またはフッ素原子である。
【0047】
別の実施形態において、式(I)の化合物は下記の化合物またはその薬学的に許容される塩、特にそのトリフルオロ酢酸塩から選択される:
【化2】
および
またはその薬学的に許容される塩。
【0048】
下の式(1)の化合物
【化3】
は6-[2-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-5-イル]-1H-インドールとも呼ばれ、以下、化合物(1)と呼ぶ。
【0049】
下の式(2)の化合物
【化4】
は5-(3-フルオロフェニル)-2-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾールとも呼ばれる。
【0050】
下の式(3)の化合物
【化5】
は[3-(4-メチル-5-フェニル-4H-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-2-イル)フェニル]メタノールとも呼ばれる。
【0051】
式(I)の化合物は当業者によって行われている有機合成の従来法によって製造できる。
【0052】
当業者であれば、例えば、WO2009/144392の内容を参照することができる。
【0053】
式(I)の化合物および異なる置換基を持つ他の関連する化合物は、下記の、またはその他の当業者に知られる技術および材料を用いて合成される。さらに、以下に提示される溶媒、温度および他の反応条件は、当業者が適切であると判断した際に変わる可能性がある。
【0054】
下の式(I)の化合物の一般的な製造方法は、以下に記載する式(I)中に見られるさまざまな部分構造を導入するために適切な試薬および条件を用いることにより、場合により変えられる。
【0055】
【化6】
【0056】
Ar、R1およびR3は上で定義した通りであるスキーム1によれば、式(II)の化合物を、パラジウム触媒のような触媒、例えば:
-特に不活性雰囲気下、例えばアルゴン下、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’、6’-ジメトキシ-1、1’-ビフェニル存在下において、トルエンのような溶媒中の酢酸パラジウムまたは
-アセトニトリルおよびトルエン中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)と、
式(III)
【化7】
(式中、R1は上で定義した通りである)の化合物の存在下で反応させる。その後、KPOまたはNaCOなどの塩基の存在下で溶媒が還流するまで反応を加熱し、式(I)の化合物を得る。
【0057】
Arがインデニレン基のとき、以下に記載される中間体化合物(IIa)および(IVa)のために、本明細書で記載されるすべての反応工程中、N原子をフェニルスルホニル基またはトシラート基で保護することができる。
【0058】
化合物(1)の入手を可能にする式(II)の化合物は1-(ベンゼンスルホニル)-6-(2-ブロモ-4-メチル-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-5-イル)インドール(化合物(IIa))と呼ばれる。
【0059】
化合物(2)の入手を可能にする式(II)の化合物は2-ブロモ-5-(3-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール(化合物(IIb))と呼ばれる。
【0060】
化合物(3)の入手を可能にする式(II)の化合物は2-ブロモ-4-メチル-5-フェニル-4H-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール(化合物(IIc))と呼ばれる。
【0061】
式(II)の化合物は以下のスキーム2によって製造する。
【0062】
【化8】
【0063】
Ar、R2およびR3は上で定義した通りであるスキーム2によれば、工程1で、式(VI)の化合物を酢酸エチルなどの溶媒中で臭化銅などの金属臭化物を含む溶液と混合し還流させる。前記工程はWO2009/144392、38頁、ポイント6.4に記載されている。混合物を、例えば3~6時間還流し、R3は上で定義した通りである式(V)の化合物を得る。この工程1の後、前記式(V)の化合物とジクロロメタン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの溶媒中の3,5-ジブロモ-1,2,4-トリアゾールを混合し、混合物を、例えば10~20時間の間、室温で撹拌することにより工程2を行い、ArおよびR3は上で定義した通りである式(IV)の化合物を得る。
【0064】
工程3は工程2で得られた式(IV)の化合物を、式HNR2(式中、R2は(C~C)アルキル基である)のアミンを含む溶液の存在下で、トルエン、ベンゼンまたはジクロロメタンのような溶媒中で、例えば120~160℃の温度範囲で、特に20~30時間の間反応させることにより化合物(II)の形成を可能にする。
【0065】
したがって、本明細書では、式(IV)
【化9】
(式中、ArおよびR3は上で定義した通りである)の化合物を、式HNR2(式中、R2は上で定義されている)のアミンと、例えばトルエン、ベンゼンまたはジクロロメタンのような溶媒中で、例えば120~160℃の温度範囲で、特に20~30時間の間反応させる、上記式(II)の化合物を製造するための方法も提供される。
【0066】
化合物(1)の入手を可能にする式(IV)の化合物は1-[1-(ベンゼンスルホニル)インドール-6-イル]-2-(3,5-ジブロモ-1,2,4-トリアゾール-1-イル)エテノンと呼ばれる(化合物(IVa))。
【0067】
化合物(1)の入手を可能にする式(V)の化合物は2-ブロモ-1-[1-(フェニルスルホニル)インドール-6-イル]エタノンと呼ばれる。
【0068】
化合物(1)の入手を可能にする式(VI)の化合物は6-アセチル-1-(フェニルスルホニル)インドールと呼ばれる。
【0069】
式(VI)の化合物は以下のスキーム3によって製造する。
【0070】
【化10】
【0071】
R3は上で定義した通りであるスキーム3によれば、工程1はWO2009/144392、37頁、ポイント6.1~6.3に従って行うことができる。
【0072】
式(VIII)および式(IX)の化合物は市販されているか、当業者に知られている方法で得られる。
【0073】
上に記載したように、本明細書では、式(II)
【化11】
(式中、Ar、R2およびR3は上で定義した通りである)の化合物を、パラジウム触媒のような触媒、例えば:
-特に不活性雰囲気下、例えばアルゴン下、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’、6’-ジメトキシ-1、1’-ビフェニル存在下において、トルエンのような溶媒中の酢酸パラジウムまたは
-アセトニトリルおよびトルエン中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)と、
式(III)
【化12】
(式中、R1は上で定義した通りである)の化合物の存在下で反応させる、式(I)の化合物を製造するための方法も提供される。
【0074】
式(IIa)および(IVa)の化合物から選択される中間体化合物も本明細書で提供される。
【化13】
【0075】
病態
本明細書で用いるとき、別段の記載がある場合を除き、「がん」は細胞の異常な成長に関連しているすべての障害に関するものである得るので、悪性腫瘍および良性腫瘍、転移性腫瘍および非転移性腫瘍、固形腫瘍および非固形腫瘍を含む。特に、がんは転移および/または異形成ならびに前がん状態、初期がんまたは非転移性がんを包含する。
【0076】
「初期がん」または「初期腫瘍」は、浸潤性ではない、または転移性ではない、またはステージ0、I、もしくはIIに分類されるがんを意味する。
【0077】
「前がん」の語は典型的にはがんに先行する、またはがんに発展する状態または成長のことをいう。「前がん」成長は、異常な細胞周期制御、増殖または分化を特徴とする細胞を有するものであり、これらは細胞周期制御、細胞増殖または分化のマーカーによって決定できる。
【0078】
別段の記載がある場合を除き、「がん」の語は若年性がんおよび非若年性がん、再発がんおよび非再発がんならびにがんの再燃も包含する。
【0079】
「転移」はがんの原発部位からの体内の他の場所への広がりを意味する。がん細胞は原発腫瘍から離脱し、リンパ管および血管へ貫入し、血流を通って循環し、体内の他の正常組織中の遠隔の増殖巣で成長する(転移する)ことがある。転移は局所または遠隔で起こり得る。
【0080】
「非転移性」は良性または原発部位にとどまっており、リンパ管系もしくは血管系または原発部位以外の組織へ貫入していないがんを意味する。一般的に、非転移性がんはすべてのステージ0、IまたはIIのがんである。
【0081】
腫腫またはがんが「ステージ0」、「ステージI」、「ステージII」、「ステージIII」または「ステージIV」であるとの言及は、当分野で知られる総合ステージ分類またはローマ数字によるステージ付けを用いた腫瘍またはがんの分類を示す。がんの実際のステージはがんの種類に依存するが、一般的に、ステージ0がんは原位置の病変であり、ステージIがんは小さい局所腫瘍であり、ステージIIは局所の進行性腫瘍であり、ステージIIIがんはリンパ節または周辺組織への浸潤であり、ステージIVがんは転移性がんを表す。各タイプの腫瘍の具体的なステージは当業者に知られている。
【0082】
本明細書で用いるとき、「腫瘍」は、悪性であろうと良性であろうと、すべての腫瘍性の細胞の成長および増殖ならびにすべての前がん性およびがん性細胞および組織のことをいう。
【0083】
「原発腫瘍」または「原発がん」は元のがんを意味し、対象者の体内の他の組織、臓器または部位に位置する転移性の病変ではない。
【0084】
本明細書で「がんの再発」は治療後にがんが再び現れることをいい、原発臓器内にがんが再び現れることおよび遠隔での再発、つまり原発臓器外にがんが再び現れること、を含む。
【0085】
上で定義した通りである式(I)の化合物はがんを治療および/または予防するのに、特に固形腫瘍、特に神経芽腫、結腸直腸がん、アンドロゲン誘発性膀胱がん、肺がん、肝細胞癌、前立腺がん、乳がん、食道がんおよび甲状腺がんを治療および/または予防するのに有用である。
【0086】
前記自己免疫障害は慢性の炎症性疾患を誘発する。そのような炎症性疾患群をここに提供する:炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、小児急性リンパ性白血病、炎症性筋症および関節リウマチ。
【0087】
本発明の枠組みの中で挙げられるその他の自己免疫疾患は多発性硬化症(MS)、1型糖尿病、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害および乾癬を含む。
【0088】
上で定義した通りである式(I)の化合物は、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病またはタウオパチー(例えば、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症、皮質基底核変性症またはピック病)などの神経変性疾患;虚血および頭蓋外傷ならびにてんかんなどの脳外傷;統合失調症、うつ病、物質依存症または注意欠如・多動症などの精神疾患;多発性硬化症、脳炎、脊髄炎および脳脊髄炎などの中枢神経系の炎症性疾患ならびに血管の病態、アテローム性動脈硬化症、関節の炎症、関節症または関節リウマチなどの他の炎症性疾患;変形性関節症、クローン病、潰瘍性大腸炎;喘息などのアレルギー性炎症性疾患;1型糖尿病、狼瘡、強皮症、ギラン・バレー症候群、アジソン病および他の免疫介在性疾患などの自己免疫疾患;骨粗鬆症;あるいはがんを治療および/または予防するのに有用である。
【0089】
さらに、本明細書には、神経変性障害を治療および/または予防するための使用のための、上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、神経変性障害はパーキンソン病である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、神経変性障害はアルツハイマー病である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、神経変性障害はタウオパチーである、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。
【0090】
さらに、本明細書には、タウオパチーは進行性核上性麻痺である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、タウオパチーは前頭側頭型認知症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、タウオパチーは皮質基底核変性症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、タウオパチーはピック病である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。
【0091】
さらに、本明細書には、脳外傷を治療および/または予防するための使用のための、上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、脳外傷は虚血である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、脳外傷は頭蓋外傷である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、脳外傷はてんかんである、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。
【0092】
さらに、本明細書には、精神疾患を治療および/または予防するための使用のための、上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、精神疾患は統合失調症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、精神疾患はうつ病である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、精神疾患は物質依存症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、精神疾患は注意欠如・多動症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。
【0093】
さらに、本明細書には、中枢神経系の炎症性疾患を治療および/または予防するための使用のための、上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、中枢神経系の炎症性疾患は多発性硬化症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、中枢神経系の炎症性疾患は脳炎である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、中枢神経系の炎症性疾患は脊髄炎である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、中枢神経系の炎症性疾患は脳脊髄炎である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。
【0094】
さらに、本明細書には、他の炎症性疾患を治療および/または予防するための使用のための、上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患は血管の病態である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患はアテローム性動脈硬化症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患は関節の炎症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患は関節症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患は関節リウマチである、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患は変形性関節症である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患はクローン病である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。さらに、本明細書には、他の炎症性疾患は潰瘍性大腸炎である、使用のための上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。
【0095】
さらに、本明細書には、骨粗鬆症を治療および/または予防するための使用のための、上で定義した通りである式(I)の化合物が記載される。
【0096】
上で定義した通りである式(I)の化合物は関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、パーキンソン病、統合失調症、うつ病、物質依存症または注意欠如・多動症などの精神疾患およびがんを治療および/または予防するのに有用である。
【0097】
式(I)の化合物の投与
上で定義した式(I)の化合物は患者に投与するのに適した医薬組成物、特に薬剤に製剤化することができる。
【0098】
したがって、本発明はさらに式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物または薬剤に関する。
【0099】
本発明は自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんの治療および/または予防のために使用するための、式(I)の化合物、または任意のそれらの薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物にも関する。
【0100】
特に、本発明は自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんの治療および/または予防に使用するための、式(I)の化合物または任意のそれらの薬学的に許容される塩を含む薬剤に関する。
【0101】
あるいは、本発明は、上で定義した通りである式(I)の化合物または任意のそれらの薬学的に許容される塩の、自己免疫障害、がん、神経変性疾患、脳外傷、精神疾患および/または炎症性疾患、より具体的にはがんの治療および/または予防のための医薬組成物または薬剤の製造のための使用に関する。
【0102】
他の態様によると、本明細書では、治療に有効な量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、上で示した病的状態を治療する方法が提供される。この治療方法の一実施形態では、対象はヒトである。
【0103】
薬学的に許容される賦形剤は、より具体的には、薬学的担体、アジュバントまたは媒体から選ばれる。
【0104】
本明細書で定義される式(I)の化合物と組み合わせて用いられる、許容される賦形剤の選択は、医薬組成物、特に薬剤の製剤において通常の技能を持つ者の一般知識の一部である。
【0105】
そのような賦形剤は当業者によく知られており、特に「ウルマン工業化学百科事典、第6版」(さまざまな編集者、1989~1998年、マーセル・デッカー社)および「Pharmaceucial Dosage Forms and Drug Delivery Systems」(アンセルら、1994年、ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス社)に記載されている。
【0106】
上記の賦形剤は剤形および所望の投与様式によって選択される。
【0107】
本発明の化合物および組成物は経口で、非経口で、舌下で、経皮で、経膣的に、経直腸的に、経粘膜で、局所に、吸入により鼻腔内に、頬側または鼻腔内を介する投与で、眼科的に、または埋め込み型リザーバーを介して、あるいはこれらの組み合わせを含む任意の方法で投与されるが、これらに限定されない。非経口投与は静脈内、動脈内、腹膜内、皮下、筋肉内、くも膜下腔内、関節内、滑膜内、胸骨内、肝臓内、病変内、気管内、および頭蓋内注射または注入技法を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物は、組成物の緩徐な放出を可能にする埋め込み物および緩徐に調節された静脈内点滴の形で投与してもよい。
【0108】
例えば、式(I)の化合物は、適切な賦形剤を伴って、経腸または非経口投与に適した任意の医薬的形態、例えば、素錠またはコーティング錠、ハードゼラチン、ソフトシェルカプセルおよびその他のカプセル、坐剤、あるいは懸濁液やシロップなどの飲用剤、または注射用溶液または懸濁液の形で存在してもよい。
【0109】
滅菌した注射用形態の本発明の組成物は水性または油性懸濁液であってよい。これら懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、当分野で知られた技術に従って製剤化される。滅菌した注射用製剤は非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌した注射用溶液または懸濁液であってもよい。許容される媒体および溶媒のうち、用いられるのは水、リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、従来、滅菌した固定油は溶媒または懸濁媒体として用いられる。
【0110】
経口で許容される剤形はカプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むが、これらに限定されない。経口用錠剤の場合、一般的に使用される担体には乳糖やトウモロコシデンプンが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。経口使用のために水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化剤や懸濁剤と組み合わされる。必要ならば、特定の甘味料、香料または着色料を加えることもできる。
【0111】
あるいは、本発明の薬学的に許容される組成物は直腸投与用の坐剤の形で投与される。これらは、薬剤を、室温で固体で、直腸の温度で液体となり、それにより直腸内で溶けて薬物を放出する、適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより製造する。そのような材料にはココアバター、ミツロウおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0112】
そのような組成物は医薬製剤の分野でよく知られている技術に従って製造され、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または他の従来の可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として製造してもよい。
【0113】
特定の実施形態では、本発明による式(I)の化合物は経口でまたは静脈内に投与される。
【0114】
そのような薬学的に許容される組成物は他の活性化合物と組み合わせて検討してもよく、または、別の方法として、本発明による化合物を他の活性剤と組み合わせて含んでもよい。
【0115】
賦形剤と組み合わせて単回投与剤形の組成物を製造するための本発明の化合物の量は、治療を受けるホストおよび具体的な投与様式によって異なる。
【0116】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、外用、局所、気管内、鼻腔内、経皮または直腸投与用の医薬組成物中の上記式(I)の化合物あるいはその塩基、酸、双性イオンまたはその塩は、従来の医薬的賦形剤と共に混合物として、単位投与形態の形で、動物およびヒトへ、上記の障害または疾患の治療のため投与される。
【0117】
適切な単位投与形態には、錠剤、ソフトまたはハードゲルカプセル、粉末、顆粒および経口用溶液または懸濁液、舌下、頬側などの経口用形態、気管内、眼内および鼻腔内投与形態、吸入用、外用、経皮用、皮下用、筋肉内用または静脈内投与用の形態、直腸投与形態ならびに埋め込み物が含まれる。外用として塗布するために、クリーム、ゲル、軟膏またはローションに入った式(I)の化合物を用いることもできる。
【0118】
1つの例として、錠剤形態にある式(I)の化合物の単位投与形態は、以下の構成成分を含んでもよい:
式(I)の化合物 50.0mg
マンニトール 223.75mg
クロスカルメロースナトリウム 6.0mg
トウモロコシデンプン 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
【0119】
より高い、または低い用量が適切である、特別な場合がある可能性がある。通常の実務によると、各患者にとって適切な用量は、投与様式ならびに前記患者の重量および反応に従って、医師によって決められる。
【0120】
任意の特定の患者へ向けての具体的な用量および治療計画は、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄率、合剤ならびに治療担当医の判断および治療されている特定の疾患の重症度を含むさまざまな要因に依存するということも理解されたい。組成物中の本発明の化合物の量もまた組成物中の特定の化合物によるものである。
【0121】
以下の実施例は説明として提供されるものであり、本発明の範囲を制限するものでは一切ない。
【実施例1】
【0122】
6-[2-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-5-イル]-1H-インドール(1)の合成
【0123】
1.N-メトキシ-N-メチルインドール-6-カルボキサミド(WO2009/144392の36頁に記載の通り)
丸底フラスコ中、インドール-6-カルボン酸5.0g、N、O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩3.3g、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド11.9gおよびピリジン10mlをテトラヒドロフラン150mlの中に入れた。混合物を環境温度で40時間撹拌した。混合物を濃縮し、残留物を取り上げ、酢酸エチル150mlおよび水50mlの中へ入れた。有機相を1N水酸化ナトリウム溶液50mlおよび飽和塩化ナトリウム溶液50mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。化合物6.8gを得た。
1H NMR (CDCI3, δ in ppm): 3.3 (s, 3H); 3.5 (s, 3H); 6.45 (m, 1H); 7.25 (t, 1H); 7.4 (dd, 1H); 7.55 (d, IH); 7.75 (s, IH); 8.8 (s, I H). M+H = 205
【0124】
2.N-メトキシ-N-メチル-1-(フェニルスルホニル)インドール-6-カルボキサミド(WO2009/144392の36頁に記載の通り)
丸底フラスコ中、工程1で得られた化合物、N-メトキシ-N-メチルインドール-6-カルボキサミド6.8gを、0℃でN、N-ジメチルホルムアミド100mlに入れた。NaH1.45gを滴下し、その後塩化ベンゼンスルホニル6.52gを加えた。混合物を環境温度で40時間撹拌した。水150mlを添加し、次いで混合物を酢酸エチル60mlで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液50mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、溶出はヘプタン/酢酸エチル混合物で行った。化合物9.5gを得た。
1H NMR (CDCl3, δ in ppm): 3,4 (s, 3H); 3.55 (s, 3H); 6.7 (d, I H); 7.45 to 7.6 (m, 5H); 7.7 (d, I H); 7.95 (m, 2H); 8.4 (s, 1H). M+H = 345.
【0125】
3.6-アセチル-1-(フェニルスルホニル)インドール(WO2009/144392の37頁に記載の通り)
丸底フラスコ中、工程2で得られた化合物、N-メトキシ-N-メチル-1-(フェニルスルホニル)インドール-6-カルボキサミド9.2gを、0℃、アルゴン下でテトラヒドロフラン250mlに入れた。臭化メチルマグネシウム(3M、ジエチルエーテル中)27mlを滴下した。混合物を0℃で1時間および環境温度で20時間撹拌した。混合物を0℃まで冷却し、水150mlおよび飽和塩化アンモニウム溶液50mlを加えた。混合物を酢酸エチル60mlで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液40mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。化合物7.3gを得た。
1HNMR (CDCl3, δ in ppm): 2.7 (s, 3H); 6.75 (d, 1H); 7.45 to 7.65 (m, 4H); 7.8 (d, 1H); 7.95 (in, 3H); 8.65 (s, 1H). M+H = 300; Mp = 160 -163℃
【0126】
4.2-ブロモ-1-[1-(フェニルスルホニル)インドール-6-イル]エタノン(WO2009/144392の37頁に記載の通り)
丸底フラスコ中、臭化銅3gを酢酸エチル120mlに入れ、混合物を還流させた。6-アセチル-1-(フェニルスルホニル)インドール2gを加えた。混合物を還流しながら4時間撹拌した。混合物を紙で濾過し、次いで濾液を20%チオ硫酸ナトリウム溶液150mlに注ぎ入れた。混合物を酢酸エチル60mlで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液40mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。化合物2.6gを得た。
1HNMR (CDCl3, δ in ppm): 4.45 (s, 2H); 6.65 (d, 1H); 7.35 to 7.55 (m, 4H); 7.7 (d, 1H); 7.9 (m, 3H); 8.6 (s, IH). M+H = 378
【0127】
5.1-[1-(ベンゼンスルホニル)インドール-6-イル]-2-(3,5-ジブロモ-1,2,4-トリアゾール-1-イル)エタノン
3,5-ジブロモ-1,2,4-トリアゾール1.7gおよびジイソプロピルエチルアミン2.61mlをジクロロメタン51mlに溶解し、2-ブロモ-1-[1-(フェニルスルホニル)インドール-6-イル]エタノン2.7gをジクロロメタン34mlに溶かした溶液を滴下した。混合物を室温で16時間撹拌した。混合物を水20mlで2回洗浄し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、溶出はジクロロメタン/酢酸エチル混合物で行った。化合物2.85gを得た。
1H NMR (DMSO-d6, δ in ppm): 6.18 (s, 2H); 7.05 (s, 1H); 7.55 to 7.7 (m, 4H); 7.8 (d, 1H); 8.05 (d, 1H); 8.1 (m, 2H) ; 8.2 (s, IH) ; 8.6 (s, IH). M+H = 525
【0128】
6.1-(ベンゼンスルホニル)-6-(2-ブロモ-4-メチル-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-5-イル)インドール
工程5で得られた化合物を試験管へ500mg量り取った。そこへ、トルエン10mlを加え、次いでメチルアミン溶液(8M、エタノール中)0.60mlを加えた。試験管を密封し、次いで140℃で24時間撹拌した。反応混合物を環境温度まで冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を取り上げ、ジクロロメタン50mlおよび水20mlの中へ入れた。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液20mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、溶出はジクロロメタン/酢酸エチル混合物で行った。化合物0.134gを得た。
1H NMR (DMSO-d6, δ in ppm): 3.65 (s, 3H) ; 6.9 (d, 1H); 7.5 (d, 1H); 7.58 to 7.8 (m, 4H); 7.95 (d, 1H) ; 8.1 (m, 4H) ; M+H = 457
【0129】
7.6-[2-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-5-イル]-1H-インドール
反応器中、工程6で得られた化合物134mgをトルエン2mlに入れ、混合物をアルゴンで10分間脱気した。次いで酢酸パラジウム1.3mg、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル4.8mg、KPO125mg、4-フルオロフェニルボロン酸53mgおよびエタノール数滴を加えた。反応混合物を115℃で16時間加熱し、環境温度まで冷却し、減圧下で濃縮した。次いで残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、溶出はジクロロメタン/メタノール混合物で行った。化合物44mgを得た。
1H NMR (DMSO-d6, δ in ppm): 3.72 (s, 3H) ; 6.55 (m, 1H); 7.25 (m, 1H); 7.32 (m, 2H) ; 7.48 (m, 1H) ; 7.62 (s, 1H) ; 7.72 (d, 1H) ; 7.85 (s, 1H); 8.12 (m, 2H) ; 11.35 (s, 1H) ; M+H = 332 ; MP : 256-258℃
【実施例2】
【0130】
生物活性
2.1.Nur77の調節-HEKに対する活性
a)材料と方法
Gal4-DBD-FL-NOT、-hNur77、-hNOR1およびPfr-Lucを安定発現するHEK293細胞を限界希釈により得た。HEK細胞を、75cmフラスコ内で、10%仔ウシ血清、含量250μg/mlのハイグロマイシン、含量2μg/mlのドキシサイクリン(発現誘導用)および0.4mg/mlのペニシリンを含むDMEM high glucose 30-2002(商標)中で増殖させた。1週間の培養の後、細胞をトリプシン処理により回収し、次いで96ウェルディッシュに、75μlの培地中、1ウェルあたり20,000細胞の密度で蒔いた。24時間後、化合物を異なる濃度で添加し(1ウェルあたり25μl)、さらに24時間おいた。培地を除去し、1ウェルあたり50μlのSteadyglo(プロメガ社、E2510)を50μlのPBSと共に加え、15分間おき、測定を行った。マイクロプレート発光リーダーを使用してプレートを読み取った。
【0131】
b)結果
上で定義した通りである式(1)の化合物のIC50活性は0.03nMであった。
上で定義した通りである式(2)の化合物のIC50活性は0.1pMであった。
上で定義した通りである式(3)の化合物のIC50活性は0.9nMであった。
上で定義した通りである式(2)の化合物のトリフルオロ酢酸塩のIC50活性は0.1pMであった。
【0132】
2.2.Nurr1の調節-神経芽腫細胞株に対する活性
a)材料と方法
ATCCから入手したN2A細胞を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を連結した、タンデムに配置したNBRE8x(50-AAGGTCA-30)で安定的にトランスフェクトした。各NBRE配列は5つのヌクレオチドによって隔てられていた。N2Aを、75cmフラスコ内で、10%仔ウシ血清、4.5g/Lのグルコースおよび0.4mg/mlのジェネティシンを含むDMEM中で増殖させた。1週間の培養の後、細胞をトリプシン処理(0.25%、30分)により回収し、次いで96ウェルディッシュに、ハイクローンから入手した、フェノールレッドを含まないが、4.5g/lのグルコースと10%の脂質フリー血清を含むDMEM75μl中、1ウェルあたり60,000細胞の密度で蒔いた。24時間後、化合物を異なる濃度で添加し(1ウェルあたり25μl)、さらに24時間おいた。1ウェルあたり100μlのSteadyliteを加え、30分おき、測定を行った。マイクロプレート蛍光リーダーを使用してプレートを読み取った。
【0133】
b)結果
上で定義した通りである式(1)の化合物のEC50活性は0.7nMであった。
上で定義した通りである式(2)の化合物のEC50活性は63nMであった。
上で定義した通りである式(3)の化合物のEC50活性は0.4nMであった。
上で定義した通りである式(2)の化合物のトリフルオロ酢酸塩のEC50活性は63nMであった。
【国際調査報告】