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特表2024-525890ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体およびその製造方法およびこれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体およびその製造方法およびこれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20240705BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C08G63/06 ZBP
C08G63/78
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503472
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 KR2022011553
(87)【国際公開番号】W WO2023014109
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0102547
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0096678
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スヒョン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ドンギョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヨン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ハリム・ジョン
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB01
4J029AC03
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029EA02
4J029EA05
4J029EG01
4J029EG04
4J029EG05
4J029EG07
4J029EG09
4J029EG10
4J029HA01
4J029HB01
4J029HC06
4J029KB16
4J029KD01
4J029KD02
4J029KD05
4J029KD07
4J200AA02
4J200AA10
4J200BA02
4J200BA12
4J200BA18
4J200CA01
4J200CA06
4J200EA05
4J200EA06
4J200EA07
(57)【要約】
本発明によるポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸とラクトン単量体または追加でラクチド単量体を導入することによって、生分解性高分子の熱的特性、結晶化度および引張物性など多様な物性を改善してその応用分野を拡大することができるという特徴がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシプロピオン酸の繰り返し単位である下記化学式1の繰り返し単位;および
ラクトンの繰り返し単位である下記化学式2の繰り返し単位を含み、
下記化学式1の繰り返し単位数(m)は、100~5000の整数であり、
下記化学式2の繰り返し単位数(n)は、100~5000の整数であり、
下記化学式2のLは、炭素数が3~10個である線状または分枝状アルキルである、
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体。
【化1】
【請求項2】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体は、
ラクチドの繰り返し単位である下記化学式3の繰り返し単位をさらに含み、
下記化学式3の繰り返し単位数(l)は、100~5000の整数である、
請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体。
【化2】

【請求項3】
3-ヒドロキシプロピオン酸(3-hydroxypropionic acid)を重合して3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを製造する段階(段階1);
前記3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを重合してポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造する段階(段階2);および
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を開始剤として炭素数3~10個のラクトン(Lactone)を開環重合する段階(段階3);
を含む、
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記(段階3)は、単量体としてラクチドをさらに含む、
請求項3に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ラクチドは、ラクトンおよびラクチド全体重量100重量部に対して40重量部~99重量部で含まれる、
請求項4に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記(段階3)でポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は、反応物全体100重量部に対して50重量部以下含まれるものである、
請求項3に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記(段階3)の炭素数3~10個のラクトン(Lactone)は、
ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)、β-ブチロラクトン(β-Butyrolactone)、β-バレロラクトン(β-valerolactone)、γ-ブチロラクトン(γ-Butyrolactone)、δ-バレロラクトン(δ-valerolactone)、γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)、トリメチレンカーボネート(trimethylenecarbonate)、p-ジオキサノン(p-dioxanone)、δ-ヘキサラクトン(δ-haxalactone)、δ-カプロラクトン(δ-caprolactone)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、γ-オクタノイックラクトン(γ-octanoic lactone)、およびγ-ノナノイックラクトン(γ-nonanoic lactone)からなる群より選択される1種以上である、
請求項3に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記(段階2)は、3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを1torr以下の圧力条件で重合する段階である、
請求項3に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記(段階3)は、温度140~190℃で開環重合する段階である、
請求項3に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を含む、
樹脂。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂を含む、
樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物は、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、インフレーション成形品、繊維、不織布、発泡体、シート、およびフィルムからなる群より選択される1以上の樹脂成形品として成形される、
請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2021年8月4日付韓国特許出願第10-2021-0102547号および2022年8月3日付韓国特許出願第10-2022-0096678号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体およびその製造方法そしてこれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は、生分解性高分子であり、簡単に壊れない性質を有するだけでなく、機械的物性に優れているため、エコ素材として注目されている。
【0004】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は、単量体である3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP;3-hydroxypropionic acid)を縮重合して製造されるが、産業上の応用可能性を考慮すれば熱的安定性に優れたポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造しなければならない。しかし、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の鎖内にはエステル構造が含まれており、エステル構造は熱分解温度が約220℃であるため、熱的安定性を改善するには限界がある。
【0005】
また、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造して熱的安定性を改善することができるが、3-ヒドロキシプロピオン酸が縮重合される過程で、低分子量の環状の構造が生成されて、高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造できないことはもちろん、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の製造収率も落ちる。
【0006】
そのため、本発明者らは、単量体として3-ヒドロキシプロピオン酸にラクトン(lactone)、ラクチド(lactide)またはこれらの組み合わせを加えて共重合体を製造する場合、ラクトンの環に存在する炭素個数および分枝有無、分枝鎖の種類を異にすることによって、製造される生分解性高分子の熱的特性、結晶化度および引張物性を制御することができることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリプロピオン酸の固有の特性を維持しながらも、熱的特性および引張物性が制御されたポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、下記のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を提供する。
【0009】
本発明のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸の繰り返し単位である下記化学式1の繰り返し単位;およびラクトンの繰り返し単位である下記化学式2の繰り返し単位を含み、下記化学式1の繰り返し単位数(m)は、100~5000の整数であり、下記化学式2の繰り返し単位数(n)は、100~5000の整数であり、下記化学式2のLは、炭素数が3~10個である線状または分枝状アルキルである。
【化1】
【0010】
また、本発明のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法は、3-ヒドロキシプロピオン酸を重合して3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを製造する段階(段階1);前記3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを重合してポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造する段階(段階2);および前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を開始剤として炭素数3~10個のラクトンを開環重合する段階(段階3);を含む。
【発明の効果】
【0011】
前述のように、本発明によるポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸に加えてラクトン由来単量体、ラクチド由来単量体またはこれらの組み合わせを導入することによって、生分解性高分子の熱的特性、結晶化度および引張物性など多様な物性を改善してその応用分野を拡大することができるという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を提供する。以下、本発明のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を詳しく説明する。
【0013】
まず、本発明のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸の繰り返し単位である下記化学式1の繰り返し単位;およびラクトンの繰り返し単位である下記化学式2の繰り返し単位を含み、下記化学式1の繰り返し単位数(m)は、100~5000の整数であり、下記化学式2の繰り返し単位数(n)は、100~5000の整数であり、下記化学式2のLは、炭素数が3~10個である線状または分枝状アルキルである。
【化2】
【0014】
前記化学式1の繰り返し単位および化学式2の繰り返し単位を含むポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)ブロック共重合体の例は下記化学式4であり得る。
【化3】
【0015】
また、化学式2の繰り返し単位であるラクトンとしてε-カプロラクトンを使用する場合、化学式4は下記化学式4-1で表され得る。
【化4】
【0016】
また、化学式2の繰り返し単位であるラクトンとしてγ-オクタノイックラクトンを使用する場合、化学式4は下記化学式4-2で表され得る。
【化5】
【0017】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体は、ラクチドの繰り返し単位である下記化学式3の繰り返し単位をさらに含み、下記化学式3の繰り返し単位数(l)は、100~5000の整数であり得る。
【化6】
【0018】
前記化学式3の繰り返し単位をさらに含むポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)ブロック共重合体の例は下記化学式5であり得る。
【化7】
【0019】
本発明で使用する用語「ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体」は、ラクトン由来単量体と3-ヒドロキシプロピオン酸由来単量体、そして追加でラクチド由来単量体がブロック単位で重合されたブロック共重合体である。特に本発明は、ラクトン由来単量体を導入することによって、ラクトン環に存在する炭素の個数と分枝構造の導入有無により結晶化特性を制御することができ、これにより、結晶化および引張物性などを調節することができる。
【0020】
また、本発明は、既存のPLA(ポリ乳酸)とは異なり、3-ヒドロキシプロピオン酸単量体を必ず含み、ラクトン由来単量体、ラクチド由来単量体またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、下記の段階を含む前述のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体の製造方法であって、触媒を使用して3-ヒドロキシプロピオン酸重合体およびラクトンを重合する段階を含む、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)ブロック共重合体の製造方法を提供する。
【0022】
前記3-ヒドロキシプロピオン酸重合体は、3-ヒドロキシプロピオン酸のホモ重合体を意味する。
【0023】
具体的に本発明のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸-b-ラクトン)の製造方法は、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-hydroxypropionic acid)を重合して3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを製造する段階(段階1);前記3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを重合してポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を製造する段階(段階2);および前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を開始剤として炭素数3~10個のラクトン(Lactone)を開環重合する段階(段階3);を含む。
【0024】
前記(段階3)は、ラクチドを単量体にさらに含むことができる。
【0025】
前記(段階3)でラクチドを単量体としてさらに含む場合、ラクチドは、ラクトンおよびラクチド全体重量100重量部に対して40重量部~99重量部で含まれ得る。例えば、ラクチドは、ラクトンおよびラクチド全体重量100重量部に対して40重量部以上、50重量部以上、60重量部以上または70重量部以上~99重量部以下、90重量部以下、または80重量部以下含まれ得る。
【0026】
ラクチドを単量体としてさらに含む場合、ラクチド含有量が過度に低ければ、ブロック共重合体の熱特性および機械的特性の改善程度が大きくならないこともある。
【0027】
また、ラクチドを(段階3)で単量体としてさらに含む場合には、段階3は、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を開始剤としてラクチドを重合する段階(段階3-1);およびポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)およびラクチド重合体に炭素数3~10個のラクトンが追加で開環重合される段階(段階3-2)を含むことができる。ラクチドを先に重合し、その後、ラクトンを重合する場合には、3-ヒドロキシプロピオン酸由来繰り返し単位、ラクチド由来繰り返し単位およびラクトン由来繰り返し単位がそれぞれブロックをなして重合されたブロック共重合体を得ることができる。ブロック共重合体は、ランダム共重合体と比較してより高い結晶性を有する違いがある。
【0028】
反面、ラクトンは、ラクトンおよびラクチド全体重量100重量部に対して1重量部~60重量部で含まれ得る。例えば、ラクトンは、ラクトンおよびラクチド全体重量100重量部に対して1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上または20重量部以上~60重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、または30重量部以下含まれ得る。
【0029】
前記(段階3)でポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は、反応物全体100重量部に対して50重量部以下含まれ得る。前記(段階3)の反応物は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)およびラクトン、またはポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)、ラクトンおよびラクチドであり得る。具体的には、(段階3)でポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)は、反応物全体100重量部に対して50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、17重量部以下または10重量部以下~0重量部超過、5重量部以上、または9重量部以上であり得る。
【0030】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の含有量が前記範囲を満たさない場合、ラクトンの使用による熱的特性、結晶化度および引張物性など多様な物性改善の効果が微々たるものとなる問題があり得る。
【0031】
前記(段階2)は、3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマーを1torr以下の圧力で12時間~48時間の条件で重合する段階である。好ましくは、0.2torr以下の圧力で22時間~26時間行われる。
【0032】
前記(段階3)の炭素数3~10個のラクトン(Lactone)は、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)、β-ブチロラクトン(β-butyrolactone)、β-バレロラクトン(β-valerolactone)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、δ-バレロラクトン(δ-valerolactone)、γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)、トリメチレンカーボネート(trimethylenecarbonate)、p-ジオキサノン(p-dioxanone)、δ-ヘキサラクトン(δ-haxalactone)、δ-カプロラクトン(δ-caprolactone)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、γ-オクタノイックラクトン(γ-octanoic lactone)、およびγ-ノナノイックラクトン(γ-nonanoic lactone)からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0033】
前記(段階3)は、ラクトンまたは追加でラクチド開環重合反応を伴うため、開環触媒の存在下で行う。一例として、前記触媒は、化学式6で表される触媒であり得る。
【0034】
[化学式6]
MA 2-p
前記化学式6で、
Mは、Al、Mg、Zn、Ca、Sn、Fe、Y、Sm、Lu、TiまたはZrであり、
pは、0~2の整数であり、
とAは、それぞれ独立して、アルコキシまたはカルボキシル基である。
より具体的には、前記化学式6で表される触媒は、スズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sn(Oct))であり得る。
【0035】
好ましくは、前記触媒の使用量は、ラクトン総モル数を100モル%に仮定した時、0.001~10モル%、0.01~5モル%、0.01~1モル%であり得る。
【0036】
好ましくは、前記(段階3)は、温度140~190℃で行う。好ましくは、前記製造方法は、5分~10時間行い、より好ましくは1時間~3時間行う。
【0037】
また、本発明は、前述のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を含む樹脂を提供することができる。
【0038】
また、本発明は、前記樹脂を含む樹脂組成物を提供することができる。樹脂組成物は、前記樹脂に加えて物性を改善するその他添加物がさらに含まれ得る。
【0039】
また、前記樹脂組成物は、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、インフレーション、繊維、不織布、発泡体、シートなどからなる群より選択される1以上の樹脂成形品として成形され得る。
【0040】
また、本発明は、前述のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を含む物品を提供する。前記物品は、電子材料、建築材料、食品包装、食品容器(使い捨てカップ、トレイなど)、工業用物品、農業用物品(例えば、マルチングフィルム)などであり得る。
【0041】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)のブロック共重合体を含む樹脂、樹脂組成物、および物品は、要求される物性により、互いに異なる種類の2種以上のラクトンや追加の共単量体がさらに含まれ得る。
【0042】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるのではない。
【0043】
比較例1
水溶液に存在する3-ヒドロキシプロピオン酸を90℃、100torrで乾燥させ、乾燥された3-ヒドロキシプロピオン酸60gを取得した。この乾燥された3-ヒドロキシプロピオン酸に触媒p-TSA(p-トルエンスルホン酸)0.2mol%を添加して90℃、10torrで2時間反応させた。その後、真空度を0.2torrに変更して5時間反応させた後、Sn(Oct)触媒0.05mol%を添加して合計24時間反応してポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)オリゴマーを取得した。
【0044】
実施例1
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(2g)および乾燥されたε-カプロラクトン(20g)に触媒Sn(Oct)(17μl、0.03mol%)を入れて140℃で3時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0045】
実施例2
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(2g)および乾燥されたε-カプロラクトン(20g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(17μl、0.03mol%)を入れて140℃で4時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮発化(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0046】
実施例3
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(4g)および乾燥されたε-カプロラクトン(20g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(17μl、0.03mol%)を入れて140℃で3時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0047】
実施例4
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(4g)、乾燥されたε-カプロラクトン(20g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(17μl、0.03mol%)を入れて140℃で5時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0048】
実施例5
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(1.88g)、乾燥されたβ-ブチロラクトン(3.84g)、乾燥されたラクチド(15g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(14μl、0.03mol%)を入れて180℃で1.5時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して140℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0049】
実施例6
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(2g)、乾燥されたε-カプロラクトン(4g)、乾燥されたラクチド(16g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(14μl、0.03mol%)を入れて180℃で1時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮発化(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0050】
実施例7
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(2g)、乾燥されたε-カプロラクトン(10g)、乾燥されたラクチド(10g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(15μl、0.03mol%)を入れて180℃で1.5時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0051】
実施例8
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(2g)、乾燥されたラクチド(16g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(14μl、0.03mol%)を入れて180℃で0.5時間反応させた。その後、乾燥されたε-カプロラクトン(4g)を投入して追加で0.5時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0052】
実施例9
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(2g)、乾燥されたラクチド(10g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(15μl、0.03mol%)を入れて180℃で0.5時間反応させた。その後、乾燥されたε-カプロラクトン(10g)を投入して追加で1時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0053】
比較例2
真空乾燥された比較例1のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(4g)、乾燥されたラクチド(40g)を反応器に入れた。その後、触媒Sn(Oct)(18μl、0.03mol%)を入れて180℃で1時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して140℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0054】
比較例3
オクタノール(110μl、0.2mol%)に乾燥されたε-カプロラクトン(40g)と触媒Sn(Oct)(11μl、0.01mol%)を入れて140℃で4時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0055】
比較例4
オクタノール(140μl、0.2mol%)に乾燥されたβ-ブチロラクトン(5.2g)、乾燥されたラクチド(20g)および触媒Sn(Oct)(6μl、0.01mol%)を入れて180℃で1時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して140℃で4時間脱揮発化(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0056】
比較例5
オクタノール(109μl、0.2mol%)に乾燥されたε-カプロラクトン(7.9g)、乾燥されたラクチド(40g)および触媒Sn(Oct)(11μl、0.01mol%)を入れて190℃で1時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0057】
比較例6
オクタノール(109μl、0.2mol%)に乾燥されたラクチド(40g)および触媒Sn(Oct)(11μl、0.01mol%)を入れて180℃で1時間反応させた。その後、ε-カプロラクトン(7.9g)を入れて180℃で1時間反応させて共重合体を重合した。重合された共重合体は、取得中に吸収された水分を除去するために2時間常温で真空乾燥させた後、反応器で生成物を取り出して50℃で4時間脱揮(Devolatilization)して残留単量体を除去した。
【0058】
下記表1に前記実施例1~9および比較例1~6で製造された重合体の分子量および熱特性を測定して示した。これは3-ヒドロキシプロピオン酸に共単量体としてラクトンまたはラクトンおよびラクチドが添加されて重合された共重合体の熱的特性が既存のポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)と比較して如何に変化するのか、つまり、熱的特性が調節されるのかを確認するためのものであり、特定の重合体が劣位であることを示すためのものではない。
【0059】
それぞれの測定方法は下記のとおりである。
【0060】
実験1-GPC測定
Water e2695モデルの装備とAgilent Plgel mixed cとbのカラム(colum)を使用した。クロロホルム(Chloroform)を溶媒(eluent)として40℃で1ml/minの流速で測定してポリスチレン(Polystyrene)をスタンダード(standard)で使用して相対的分子量を測定した。サンプルを4mg/mlでクロロホルム(chloroform)を溶媒として準備して50ul注入して測定した。
【0061】
実験2-DSC測定
TA DSC250モデル装備を使用して窒素ガスフロー状態で測定した。40℃から220℃まで5℃/minで昇温させ(1st heating)、220℃で10分間温度を維持させた。その後、220℃から-70℃まで5℃/minで冷却させ(1st cooling)、-70℃で10分間温度を維持させた。その後、 -70℃から220℃まで5℃/minで昇温(2nd heating)させて測定した。
【表1】
【0062】
比較例2、3と実施例2~4を比較してみると、比較例3および実施例2~4のTgとTmが比較例2より低く測定されたが、これはポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)の含有量が反応物全体100重量部を基準として10または20重量部であるため、実施例2~4がポリカプロラクトンである比較例3の熱特性に従ったことが確認された。したがって、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)にポリラクトンの熱的特性が付与されたことが確認された。
【0063】
比較例4と実施例5を比較すると、実施例5の結晶化速度が増加し(Tのエンタルピー変化量が2.8J/gから7.5J/gに増加する)、冷結晶化(cold crystallization)でエンタルピーが30.1J/gから15.1J/gに減少したことを確認することができた。これも比較例1と比較してみると、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)にポリラクトンおよびポリラクチドの熱的特性が付与されたことを確認することができた。
【0064】
比較例5、6と実施例6~9を比較すると、ラクチドがラクトンおよびラクチド全体100重量部に対して80重量部で含まれる場合(実施例6、8)には、ラクチド単量体のランダム(random)重合と(block)重合とされたことに大差はなかった。
【0065】
しかし、ラクチドが、ラクトンおよびラクチド全体100重量部に対して50重量部で含まれる場合(実施例7、9)には、ラクチド単量体がブロック(block)重合された実施例9は結晶性を示す反面、ラクチド単量体がランダム(random)重合された実施例7はTmが測定されなかったことから、結晶性を示さず、ガムライク(Gum-like)状態を有するようになることを確認することができた。同一の組成でブロック(block)重合された実施例9の場合、結晶性は低くなったが(TmのΔHが12.6J/g)、Tmが測定されることを確認することができた。
【0066】
実施例6と8を比較した場合、ラクチド単量体がランダム(random)重合された実施例6は、TmのΔHが19.2J/gと測定されて、ブロック(block)重合された実施例8のTmのΔHが5.7J/gであることと比較して結晶性が低いことを確認することができた。
【0067】
Tg、Tm、冷結晶化(cold crystallization)(2nd heating結果)、Tc(1st cooling結果)から、一般的に結晶化速度が速ければTcのエンタルピーが大きく、冷結晶化(cold crystallization)の温度が低いかまたは測定されず、結晶化度が高いほどTmのエンタルピーが大きくなることを確認した。結晶化度が高ければ一般的に物質の強度が高くなるが、脆性があり、弾性がない。しかし、弾性は高分子鎖間の空いた空間により生成されると一般的に知られているため、単量体として分枝構造を使用して結晶化度を低め、脆性を低めることができる。
【0068】
下記表2に前記実施例1~9および比較例1~6で製造された重合体の機械的物性を測定して示した。
【0069】
それぞれの測定方法は下記のとおりである。
【0070】
実験3:ドッグボーン加工性
加熱されたホットプレス(Hot press)でドッグボーンモールドを2分間予熱し、その後、重合体を注入して2分間加工してドッグボーンを作製した。この時、比較例1、3および実施例1~4は、ホットプレス(Hot press)温度を90℃にし、比較例2、4~6および実施例5~9は、ホットプレス(Hot press)温度を180℃にした。ドッグボーン規格は、ASTM 638により長さ(64cm)、幅(1cm、0.3cm)、厚さ(1mm)にした。
【0071】
実験4:機械的特性
Instron 5982モデル装備で5kNの錘を使用して試片を5mm/minの速度で引いて強度、弾性率、伸び率を測定した。試片としては前記加工されたドッグボーンを使用した。
【0072】
実験5:光学特性 UV-visible spectrometer d
各試片を表2の厚さのシートで作製した後、紫外可視分光光度計(UV-visible spectrometer)(Agilent 8453)に付着して透過度を測定した。この時、480nm領域での透過度値を確認した。
【表2】
【0073】
比較例3と実施例2および4の比較により、実施例2および4は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)とカプロラクタム間のブロック共重合を通じて引張強度が20Mpa以上に増加し、伸び率600%以上に優れていると示された。特に重量平均分子量が100,000g/mol以上である実施例2、4が強度および伸び率が全て優れていることが示された。実施例1は、実施例2と単量体の組成、触媒の種類、使用量および反応温度は同一であるが、反応時間が3時間で、実施例2より短い反応時間を有した。これにより、実施例1の引張強度および伸び率は、実施例2より劣位であると示され、これは反応時間が短い実施例1の分子量が小さくて鎖間のもつれが少ないためである。実施例3も実施例4と単量体の組成、触媒の種類、使用量および反応温度は同一であるが、反応時間が3時間で、実施例4より短い反応時間を有した。これにより、実施例3の引張強度および伸び率は、実施例4より劣位であると示され、これは同様に反応時間が短い実施例3の分子量が小さくて鎖間のもつれが少ないためである。
【0074】
比較例4と実施例5を比較すると、実施例5は、ブチロラクトンがポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)とブロック共重合することによって、脆性を有して熱加工が不可能であった比較例4に比べて熱加工性が向上することを確認することができた。また、実施例5は、共重合したブチロラクトンがラクチドよりも硬い性質を有しており、伸び率が非常に低く測定された。
【0075】
比較例5、6と実施例6~9を比較してみると、カプロラクトンとラクチドに加えてポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)を共重合すると、透明性は維持されながら、伸び率が300%から600%に増加したことを確認することができた。ただし、実施例7の結晶性がないサンプルの場合、常温でガム(Gum)のような挙動を示してドッグボーンの作製が困難であり、これにより、機械的特性を確認することができなかった。実施例9の場合、ドッグボーンは作製が可能であったが、結晶性が低くてドッグボーンの作製時に欠陥が発生して機械的物性が低かった。
【0076】
また、実施例6、8および実施例7、9を比較してみると、ラクトンとラクチドの混合比の調節を通じて引張強度および伸び率を調節することができることを確認した。構造がランダム(random)であるか、ブロック(block)であるかによっても加工性および強度、伸び率の調節が可能であることを確認することができた。
【国際調査報告】