(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】遷移金属カルコゲニドの低温成長
(51)【国際特許分類】
C23C 16/30 20060101AFI20240709BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C23C16/30
C23C16/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579487
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022035237
(87)【国際公開番号】W WO2023278389
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダス, チャンダン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ, サスミット シンハー
(72)【発明者】
【氏名】ブイヤン, バスカー ジョティ
(72)【発明者】
【氏名】スディジョノ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アブヒジット バス
(72)【発明者】
【氏名】サリー, マーク
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA14
4K030BA01
4K030BA12
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA20
4K030BA32
4K030BA33
4K030BA42
4K030BA58
4K030CA04
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA15
(57)【要約】
遷移金属ジカルコゲニド膜、及び遷移金属ジカルコゲニド膜を基板上に堆積させる方法が記載される。遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換する方法も記載されている。基板を前駆体及びカルコゲニド反応物に曝露して、遷移金属ジカルコゲニド膜を形成する。曝露は順次的に行うことも、同時に行うこともできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を堆積させる方法であって、
基板表面上に遷移金属酸化物膜を形成することと、
前記遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記遷移金属酸化物膜を形成することが、遷移金属膜を形成することと、続いて前記遷移金属膜を酸化することによって前記遷移金属酸化物膜を形成することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属膜を酸化することが、前記遷移金属膜をO
2及びO
3のうちの1つ又は複数のプラズマ処理又は熱処理に曝すことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物膜が、15Å~25Åの範囲の厚さを有する前記遷移金属酸化物膜を形成した後、前記遷移金属ジカルコゲニド膜に変換される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物膜を形成すること及び前記遷移金属酸化物膜を変換することを繰り返して、最大200Åの最終的な厚さを有する遷移金属ジカルコゲニド膜を形成することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板表面が誘電体材料及び導電性材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属酸化物膜が、前記誘電体材料上に選択的に形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属酸化物膜を前記遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することが、350℃~500℃の範囲の温度及び1Torr~10Torrの範囲の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属酸化物膜を前記遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することが、30分~60分の範囲の期間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属酸化物膜を前記遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することが、硫黄(S)、セレン(Se)、及びテルル(Te)のうちの1つ又は複数で前記遷移金属酸化物膜をパルス状にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
膜を堆積させる方法であって、
基板の遷移金属酸化物前駆体、パージガス、カルコゲニド反応物、及びパージガスへの順次的な曝露を含むプロセスサイクルで遷移金属ジカルコゲニド膜を形成することを含む、方法。
【請求項12】
前記遷移金属ジカルコゲニド膜が、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、又はルテニウム(Ru)のうちの1つ又は複数を含む遷移金属を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記遷移金属酸化物前駆体が、WOF
4、WO
2F
2、WOCl
4、WO
2Cl
2、WOBr
4、WO
2Br
2、WOI
4、WO
2I
2、MoOF
4、MoO
2F
2、MoOCl
4、MoO
2Cl
2、MoOBr
4、MoO
2Br
2、MoOI
4、MoO
2I
2、TaOF
4、TaO
2F
2、TaOCl
4、TaO
2Cl
2、TaOBr
4、TaO
2Br
2、TaOI
4、TaO
2I
2、TiOF
4、TiO
2F
2、TiOCl
4、TiO
2Cl
2、TiOBr
4、TiO
2Br
2、TiOI
4、TiO
2I
2、RuOF
4、RuO
2F
2、RuOCl
4、RuO
2Cl
2、RuOBr
4、RuO
2Br
2、RuOI
4、及びRuO
2I
2のうちの1つ又は複数を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属ジカルコゲニド膜が実質的に酸素を含まない、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記基板を前記カルコゲニド反応物に曝露する前に、前記基板から前記遷移金属酸化物前駆体をパージすることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記パージすることが、真空を適用すること、又は前記基板の上にパージガスを流すことのうちの1つ又は複数を含み、前記パージガスは、窒素(N
2)、ヘリウム(He)、及びアルゴン(Ar)のうちの1つ又は複数を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カルコゲニド反応物が、硫黄(S)、セレン(Se)、及びテルル(Te)からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
膜を堆積させる方法であって、
基板の遷移金属前駆体、パージガス、酸化物反応物、及びパージガスへの順次的な曝露を含む遷移金属酸化物プロセスサイクルで遷移金属酸化物膜を形成することと、
前記遷移金属酸化物膜のカルコゲニド反応物及びパージガスへの順次的な曝露を含むカルコゲンプロセスサイクルで前記遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することと
を含む方法。
【請求項19】
前記カルコゲンプロセスサイクルが、各金属酸化物プロセスサイクルの後に実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カルコゲンプロセスサイクルを実行する前に、所定の厚さの遷移金属酸化物膜を形成するために、前記遷移金属酸化物プロセスサイクルが何度も繰り返される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、概して、遷移金属ジカルコゲニド(TMDC)を形成する方法に関する。特に、本開示の実施形態は、メモリ及びロジック用途のためのTMDC膜を形成する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002]半導体処理産業は、より大きな表面積を有する基板上に堆積される層の均一性を高めながら、より大きな生産歩留まりを目指して努力し続けている。これらの同じ要素と新しい材料の組み合わせにより、基板の単位面積あたりのより高い回路の集積度がもたらされる。回路の集積度が高まるにつれて、層の厚さに関する均一性とプロセス制御の必要性が高まる。その結果、層の特性の制御を維持しながら、コスト効率の高い方法で基板上に層を堆積するための様々な技術が開発されている。
【0003】
[0003]化学気相堆積(CVD)は、基板上に層を堆積するために使用される最も一般的な堆積プロセスの1つである。CVDはフラックスに依存する堆積技術であり、均一な厚さの所望の層を生成するために、基板温度と処理チャンバに導入される前駆体の正確な制御が必要である。これらの要件は基板サイズが大きくなるにつれてより重要になり、適切な均一性を維持するためにチャンバ設計とガス流技術をより複雑にする必要性が生ずる。
【0004】
[0004]優れたステップカバレッジを示すCVDの一種は、周期的堆積又は原子層堆積(ALD)である。周期的堆積は原子層エピタキシー(ALE)に基づいており、化学吸着技術を使用して、順次サイクルで基板表面上に前駆体分子を供給する。このサイクルは、基板表面を第1の前駆体、パージガス、第2の前駆体、及びパージガスに曝す。第1及び第2の前駆体は反応して、生成物化合物を基板表面上に膜として形成する。このサイクルを、所望の厚さに層を形成するよう繰り返す。
【0005】
[0005]先進的なマイクロ電子デバイスの複雑化により、現在使用されている堆積技術には厳しい要求が課されている。残念ながら、膜成長の発生に適した堅牢な熱安定性、高い反応性、蒸気圧という必須特性を備えた、利用可能な実行可能な化学前駆体の数は限られている。
【0006】
[0006]遷移金属ジカルコゲニド(TMDC)は、膜の配線の微細化に伴う金属移動の問題を軽減する有力な候補であることが知られている。さらに、TMDCは、3D NANDデバイスの現在のプロセスと比較して、より優れた導電性とキャリア移動度を備えている。最近のTMDCメソッドは高温プロセスを必要とし、デバイスの熱履歴と互換性がない可能性がある。
【0007】
[0007]したがって、当技術分野では、温度に敏感な構造におけるデバイスの集積に適した、より低い温度で成長させることができるTMDCが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本開示の1つ又は複数の実施形態は、基板表面上に遷移金属酸化物膜を形成することを含む膜を堆積させ、且つ遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換する方法に関する。
【0009】
[0009]開示の追加の実施形態は、基板の遷移金属酸化物前駆体、パージガス、カルコゲニド反応物、及びパージガスへの順次的な曝露を含むプロセスサイクルで、遷移金属ジカルコゲニド膜を形成することを含む膜を堆積させる方法に関する。
【0010】
[0010]開示のさらなる実施形態は、基板の遷移金属前駆体、パージガス、酸化物反応物、及びパージガスへの順次的な曝露ことを含む金属酸化物プロセスサイクルにおいて、遷移金属酸化物膜を形成することを含む膜を堆積し、そして遷移金属酸化膜のカルコゲニド反応物及びパージガスへの順次的な曝露を含むカルコゲンプロセスサイクルで遷移金属酸化膜を遷移金属ジカルコゲナイド膜に変換する方法に関する。
【0011】
[0011]上記の開示の特徴が詳細に理解できるように、上記で簡単に要約された開示のより特定の説明は、実施形態を参照して、その一部は追加の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]開示の1つ又は複数の実施形態に従う、基板の断面図を示している。
【
図2】[0013]示の1つ又は複数の実施形態に従う、基板の断面図を示している。
【
図3】[0014]開示の1つ又は複数の実施形態に従って、方法のプロセスフロー図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0015]本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示は、以下の説明に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。
【0014】
[0016]この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「基板」という用語は、プロセスが作用する表面又は表面の一部を指す。文脈が明らかに他のことを示さない限り、基板への言及はまた、基板の一部のみを指すことができることも当業者によって理解されるであろう。さらに、基板上への堆積に対する言及は、剥き出しの基板と、その上に堆積又は形成された1つ又は複数の膜若しくはフィーチャを有する基板の両方を意味することができる。
【0015】
[0017]本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、遷移金属ジカルコゲン化物膜において、原子ベースで、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、及び約0.5%未満を含む、約5%未満の酸素が存在することを意味する。
【0016】
[0018]ここで使用される「基板」は、製造処理中に膜処理が実行される基板上に形成された任意の基板又は材料表面を指す。例えば、その上で処理が実行可能である基板表面は、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、歪みシリコン、シリコン・オン・インシュレータ(silicon on insulator:SOI)、炭素がドープされた酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに金属、金属窒化物、金属合金、及びその他の導電性材料といった他の任意の材料を含む。基板は、半導体ウエハを含むが、これらに限定されない。基板を、前処理プロセスに曝して、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニーリング、UV硬化、電子ビーム硬化、及び/又はベークすることができる。基板自体の表面上で直接膜処理することに加えて、本開示では、開示される膜処理ステップのいずれも、以下により詳細に開示されるように、基板上に形成された下層上で実行され得、また、「基板表面」という用語は、文脈が示すような下層を含むことを意図している。それゆえ、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面上に堆積された場合、新たに堆積された膜/層の露出面が基板表面になる。
【0017】
[0019]本明細書で使用されるように、「基板表面」とは、層が形成される可能性のある基板表面を指す。基板表面は、その中に形成された1つ又は複数のフィーチャ、その上に形成された1つ又は複数の層、及びそれらの組み合わせを有し得る。基板(または基板表面)は、遷移金属ジカルコゲニド層の堆積前に、例えば、研磨、エッチング、還元、酸化、ハロゲン化、水酸化、アニーリング、ベーキングなどによって前処理されてもよい。
【0018】
[0020]基板は、その上に材料を堆積させることができる任意の基板、例えば、 シリコン基板、III-V族化合物基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、エピ基板、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板、ディスプレイ基板、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ランプディスプレイ、ソーラーアレイ、ソーラーパネル、発光ダイオード(LED)基板、半導体ウエハなどであることができる。いくつかの実施形態では、遷移金属ジカルコゲニド層がその上に少なくとも部分的に形成され得るように、1つ又は複数の追加の層が基板上に配置され得る。例えば、いくつかの実施形態では、金属、窒化物、酸化物など、又はそれらの組み合わせを含む層が基板上に配置されてもよく、遷移金属ジカルコゲニド層がそのような層上に形成されていてもよい。
【0019】
[0021]1又は複数の実施形態によれば、膜又は膜の層に関する「上」という用語は、表面、例えば、基板表面上に直接存在する膜又は層を含み、並びに、膜又は層と表面との間、例えば、基板表面との間には1つ又は複数の下層が存在する。したがって、1つ又は複数の実施形態において、「基板表面上に」という表現は、1つ又は複数の下層を含むことを意図している。他の実施形態では、「直接上に」という表現は、介在層なしで表面、例えば、基板表面と接触している層又は膜を指す。したがって、「基板表面上の層」という表現は、間に層が存在せずに基板表面と直接接触している層を指す。
【0020】
[0022]1つ又は複数の実施形態によれば、この方法は原子層堆積(ALD)プロセスを使用する。このような実施形態では、基板表面は、順次的又は実質的に順次的に前駆体(又は反応性ガス)に曝露される。本明細書全体にわたって使用される「実質的に順次的」とは、多少の重複はあり得るが、前駆体曝露期間の大部分が共試薬への曝露と重複しないことを意味する。
【0021】
[0023]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「前駆体」、「反応物」、「反応性ガス」などの用語は、基板表面と反応できる任意のガス種を指すために互換的に使用される。
【0022】
[0024]本明細書で使用される「原子層堆積」又は「周期的堆積」は、基板表面上に材料の層を堆積するために、2つ以上の反応性化合物を順次的に曝露することを指す。この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「反応性化合物」、「反応性ガス」、「反応種」、「前駆体」、「プロセスガス」などの用語は、表面反応(例えば、化学吸着、酸化、還元)プロセスにおける基板表面又は基板表面上の材料と相互に反応できる種を有する物質を意味するために互換的に使用される。基板又は基板の一部は、処理チャンバの反応ゾーンに導入される2つ以上の反応性化合物に順次的に曝露される。タイムドメインALDプロセスでは、各反応性化合物への曝露は時間遅延によって分離され、各化合物が基板表面に付着及び/又は反応できるようにする。空間的ALDプロセスでは、基板表面の異なる部分、又は基板表面の材料が、2つ以上の反応性化合物に同時に曝されるため、基板上の任意の点が同時に複数の反応性化合物に実質的に曝露されることはない。この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、この点で使用される「実質的に」という用語は、当業者には理解されるように、基板のごく一部が拡散により複数の反応性ガスに同時に曝される可能性があり、同時に曝されることは意図されていないということである。
【0023】
[0025]時間領域ALDプロセスの一態様では、第1の反応性ガス(すなわち、第1の前駆体又は化合物A)は反応ゾーン中にパルス状にされ、その後、第1の時間遅延が生じる。次に、第2の前駆体又は化合物Bが反応ゾーンにパルス状にされ、その後第2の遅延が続く。各遅延時間中に、アルゴンなどのパージガスが処理チャンバに導入されて、反応ゾーンをパージするか、あるいは残留反応性化合物または副生成物を反応ゾーンから除去する。あるいはまた、パージガスは、反応性化合物のパルス間の時間遅延中にパージガスのみが流れるように、堆積処理全体を通じて順次的に流れてもよい。反応性化合物は、所望の膜又は膜厚が基板表面に形成されるまで交互にパルス状にされる。どちらのシナリオでも、化合物A、パージガス、化合物B、及びパージガスをパルス状にするALDプロセスが1サイクルである。サイクルは化合物A又は化合物Bのいずれかで開始し、所望の厚さの膜が得られるまでサイクルのそれぞれの順序を継続する。いくつかの実施形態では、交互にパルス状にされ及びパージされる2つの反応物A及びBが存在し得る。他の実施形態では、交互にパルス状にされ及びパージされる3つ以上の反応物、A、B、及びCが存在してもよい。
【0024】
[0026]空間的ALDプロセスの一態様では、第1の反応性ガスと第2の反応性ガス(例えば、水素ラジカル)は同時に反応ゾーンに供給されるが、不活性ガスカーテン及び/又は真空カーテンによって分離される。基板上のいずれかの所与の点が第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスに曝されるように、基板はガス供給装置に対して移動される。
【0025】
[0027]本開示の実施形態は、集積回路の小型化及びスケーリングにおけるチャネル材料、ライナー又はバリア層として使用するための、結晶化度、粒径、連続性、導電性の点で高品質の遷移金属ジカルコゲニド膜を形成する方法を提供する。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属ジカルコゲニド膜は、論理デバイスのバリア層として機能する。例えば、遷移金属ジカルコゲニド膜は、ロジックデバイス内の銅層とコバルト層の間のバリア層として機能し、銅原子及びコバルト原子のエレクトロマイグレーションを防止することができる。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属ジカルコゲニド膜は、3D NAND用途におけるライナーとして機能する。例えば、ライナーとして機能する遷移金属ジカルコゲニド膜は、その後に堆積される金属の核生成を可能にし、金属を下層の誘電体材料に接着結合させ、下層の誘電体材料への元素の拡散をブロックすることができる。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属ジカルコゲニド膜は、3D NAND用途におけるチャネル材料として機能する。1つ又は複数の実施形態では、一例として、遷移金属ジカルコゲニド膜は、ポリシリコンよりも優れたキャリア移動度を有する。遷移金属ジカルコゲニド膜のキャリア移動度は、3D NANDデバイスの性能を向上させることができる。
【0026】
[0028]本開示の実施形態は、温度に敏感なデバイスアーキテクチャのための高品質の2D遷移金属ジカルコゲニド膜を実現するための、低熱履歴アプローチを提供する。
【0027】
[0029]
図1を参照すると、少なくとも1つのフィーチャ120をその上に有する基板110を含む構造100が示されている。これらの図は、説明の目的で3つのフィーチャを有する基板を示している。しかしながら、当業者であれば、フィーチャが3つより多くても少なくてもよいことを理解するであろう。1つ又は複数の実施形態では、基板110は少なくとも1つのフィーチャ120を含む。フィーチャ120の形状は、限定されないが、トレンチ及び円筒形ビアを含む任意の適切な形状とすることができる。この点で使用される「フィーチャ」という用語は、意図的な表面の不規則性を意味する。フィーチャの適切な例には、頂部、2つの側壁及び底部を有するトレンチ、頂部及び2つの側壁を有するピークが含まれるが、これらに限定されない。フィーチャは、任意の適切なアスペクト比(フィーチャの幅に対するフィーチャの深さの比)を有することができる。いくつかの実施形態では、アスペクト比は約5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1又は40:1以上である。1つ又は複数の実施形態では、少なくとも1つのフィーチャ120はトレンチである。1つ又は複数の実施形態では、少なくとも1つのフィーチャ120は、誘電材料及び導電材料である。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属酸化物膜(図示せず)が誘電体材料上に選択的に形成される。
【0028】
[0030]
図2を参照すると、少なくとも1つのフィーチャ120をその上に有する基板110を含む構造100が示されている。1つ又は複数の実施形態では、少なくとも1つのフィーチャ120のそれぞれは、その上に堆積された遷移金属ジカルコゲニド膜140を有する。1つ又は複数の実施形態では、構造100は、基板110上及びその上に遷移金属ジカルコゲニド膜140を有する少なくとも1つのフィーチャ120のそれぞれ上に堆積される金属充填部150を含む。1つ又は複数の実施形態では、金属充填部150は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、又はルテニウム(Ru)のうちの1つ又は複数を含む遷移金属を有する。
【0029】
[0031]本開示の実施形態は、膜を堆積させる方法に関する。1つ又は複数の実施形態では、膜を堆積させる方法は、基板表面上に遷移金属酸化物膜を形成すること、及び遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することを含む。
【0030】
[0032]1つ又は複数の実施形態では、遷移金属酸化物膜を形成することは、遷移金属膜を形成し、続いて遷移金属膜を酸化して遷移金属酸化物膜を形成することを含む。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属膜を酸化することは、遷移金属膜をO2及びO3のうちの1つ又は複数の熱処理に曝すことを含む。1つ又は複数の実施形態では、酸化された遷移金属膜(すなわち、遷移金属酸化物膜)は、熱Ar/H2S又はH2/H2Sガスを使用して硫化される。1つ又は複数の実施形態では、酸化された遷移金属膜(すなわち、遷移金属酸化物膜)は、プラズマAr/H2S又はH2/H2Sガスを使用して硫化される。特定の実施形態では、タングステン(W)を含む遷移金属膜を形成した後、遷移金属膜を酸化して遷移金属酸化物膜を形成する。1つ又は複数の実施形態では、タングステン(W)を有する遷移金属膜を酸化することは、遷移金属膜をO2及びO3のうちの1つ又は複数の熱処理に曝すことを含む。1つ又は複数の実施形態では、酸化された遷移金属膜(すなわち、遷移金属酸化物膜)は、熱Ar/H2S又はH2/H2Sガスを使用して硫化される。1つ又は複数の実施形態では、酸化された遷移金属膜(すなわち、遷移金属酸化物膜)は、プラズマAr/H2S又はH2/H2Sガスを使用して硫化される。1つ又は複数の実施形態では、タングステン(W)を有する遷移金属酸化物膜は、本明細書に記載される1つ又は複数の硫化プロセスによってWS2に変換される。
【0031】
1つ又は複数の実施形態では、遷移金属膜を酸化することは、遷移金属膜をO2及びO3のうちの1つ又は複数のプラズマ処理に曝すことを含む。1つ又は複数の実施形態では、不活性ガス又は反応性ガスを用いたプラズマ処理が効果的であることが判明している。1つ又は複数の実施形態では、プラズマ処理は、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、アンモニア(NH3)、窒素(N2)、水素(H2)、又はそれらの混合物などの雰囲気を伴う遠隔プラズマ源(RPS)、容量結合プラズマ(CCP)、又は誘導結合プラズマ(ICP)によって生成される。
【0032】
[0034]1つ又は複数の実施形態では、遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することは、25ワット(W)~500ワット(W)の範囲のプラズマ電力で行われる。
【0033】
[0035]1つ又は複数の実施形態では、15Å~25Åの範囲の厚さを有する遷移金属酸化物膜を形成した後、遷移金属酸化物膜は遷移金属ジカルコゲニド膜に変換される。[0035]1つ又は複数の実施形態では、16Å~24Åの範囲、17Å~23Åの範囲、18Å~22Åの範囲、又は19Å~21Åの範囲の厚さを有する遷移金属酸化物膜を形成した後、遷移金属酸化物膜は遷移金属ジカルコゲニド膜に変換される。
【0034】
[0036]1つ又は複数の実施形態では、本方法はさらに、遷移金属酸化物膜を形成することと、遷移金属酸化物膜を変換することを繰り返して、最大200Åの最終的な厚さを有する遷移金属ジカルコゲニド膜を形成することを含む。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属ジカルコゲニド膜は、最大150Å、最大100Å、又は最大50Åの最終的な厚さを有する。
【0035】
[0037]1つ又は複数の実施形態では、遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することは、350℃~500℃の範囲の温度、1Torr~10Torrの範囲の圧力で行われる。
【0036】
[0038]1つ又は複数の実施形態では、遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することは、30分~60分の範囲の期間行われる。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜に変換することは、硫黄(S)、セレン(Se)、及びテルル(Te)のうちの1つ又は複数で遷移金属酸化物膜をパルス状にすることを含む。
【0037】
[0039]
図3を参照すると、本開示の1つ又は複数の実施形態は、膜を堆積させる方法200に関する。
図3に示す方法は、反応性ガスの気相反応を防止又は最小限に抑える方法で基板又は基板表面を反応性ガスに順次的に曝露する原子層堆積(ALD)処理を表す。いくつかの実施形態では、本方法は、反応性ガスを処理チャンバ内で混合して反応性ガスの気相反応と薄膜の堆積を可能にする化学気相堆積(CVD)プロセスを含む。
【0038】
[0040]本開示の1つ又は複数の実施形態では、方法200は、任意選択的に、操作205で基板を前処理し、堆積210でのプロセスサイクルで遷移金属ジカルコゲニド膜を形成すること、操作212での基板の遷移金属酸化物前駆体への順次的曝露、任意選択的に、操作214で処理チャンバをパージすること、操作216で基板をカルコゲニド反応物に曝露すること、及び任意選択的に、操作218で処理チャンバをパージすることを含む。
【0039】
[0041]本開示の1つ又は複数の実施形態では、方法200は、遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜(図示せず)に変換することを含む。これらの実施形態では、方法200は2つのプロセスサイクルを使用することを含む。1つ又は複数の実施形態では、方法200は、任意選択的に、操作205で基板を前処理すること、堆積210で遷移金属プロセスサイクルで遷移金属酸化物膜を形成すること、操作212での基板の遷移金属前駆体への連続曝露、任意選択的に、操作214で処理チャンバをパージすること、操作216で基板を酸化物反応物に曝すこと、及び任意選択的に、操作218で処理チャンバをパージすることを含む。1つ又は複数の実施形態では、方法200は、堆積210でのカルコゲンプロセスサイクルで遷移金属ジカルコゲニド膜を形成することによって、遷移金属酸化物膜を遷移金属ジカルコゲニド膜(図示せず)に変換すること、操作216での基板のカルコゲニド反応物への順次的曝露、及び任意選択的に、操作218で処理チャンバをパージすることをさらに含む。
【0040】
[0042]したがって、
図3は、本明細書に記載されるような1つ又は複数のプロセスサイクルを使用して遷移金属ジカルコゲニド膜を形成する方法200を示す。
【0041】
[0043]いくつかの実施形態では、方法200は、必要に応じて、前処理操作205を含む。前処理は、当業者に知られている任意の適切な前処理であってよい。適切な前処理には、予熱、洗浄、浸漬、自然酸化物の除去、又は接着層(例えば、窒化チタン(TiN))の堆積が含まれるが、これらに限定されない。1つ又は複数の実施形態では、窒化チタンなどの接着層が操作205で堆積される。他の実施形態では、接着層は堆積されない。1つ又は複数の実施形態では、任意の前処理操作205は、Ar/O2、Ar/H2、及びAr/H2Sのうちの1つ又は複数を含むプラズマガスを、続いてAr/H2を流すことを含む。
【0042】
[0044]堆積210では、基板(又は基板表面)上に遷移金属ジカルコゲニド膜を堆積させるプロセスが実行される。堆積プロセスは、基板上に膜を形成するための1つ又は複数の操作を含み得る。1つ又は複数の実施形態では、堆積210は、プロセスサイクルにおいて遷移金属ジカルコゲニド膜を形成することを含む。
【0043】
[0045]1つ又は複数の実施形態では、堆積210は、遷移金属酸化物プロセスサイクルで遷移金属酸化物膜を形成することを含む。1つ又は複数の実施形態では、堆積210は、遷移金属酸化物プロセスサイクルにおいて遷移金属酸化物膜を形成することを含む。
【0044】
[0046]1つ又は複数の実施形態では、操作212で、基板(又は基板表面)を遷移金属前駆体に曝露して、基板(又は基板表面)上に膜を堆積する。遷移金属前駆体は、基板表面と反応(すなわち、吸着又は化学吸着)して基板表面上に遷移金属含有種を残すことができる任意の適切な遷移金属含有化合物であり得る。
【0045】
[0047]1つ又は複数の実施形態では、操作212で、基板(又は基板表面)を遷移金属酸化物前駆体に曝露して、基板(又は基板表面)上に膜を堆積する。遷移金属酸化物前駆体は、基板表面と反応(すなわち、吸着又は化学吸着)して基板表面上に遷移金属酸化物含有種を残すことができる任意の適切な遷移金属酸化物含有化合物であり得る。1つ又は複数の実施形態では、遷移金属酸化物前駆体は、WOF4、WO2F2、WOCl4、WO2Cl2、WOBr4、WO2Br2、WOI4、WO2I2、MoOF4、MoO2F2、MoOCl4、MoO2Cl2、MoOBr4、MoO2Br2、MoOI4、MoO2I2、TaOF4、TaO2F2、TaOCl4、TaO2Cl2、TaOBr4、TaO2Br2、TaOI4、TaO2I2、TiOF4、TiO2F2、TiOCl4、TiO2Cl2、TiOBr4、TiO2Br2、TiOI4、TiO2I2、RuOF4、RuO2F2、RuOCl4、RuO2Cl2、RuOBr4、RuO2Br2、RuOI4、及びRuO2I2のうちの1つ又は複数を含む。
【0046】
[0048]操作214において、処理チャンバは、未反応の遷移金属酸化物前駆体、反応生成物及び副生成物を除去するために任意選択的にパージされる。このように使用される場合、「処理チャンバ」という用語は、処理チャンバの完全な内部容積を包含することなく、基板表面に隣接する処理チャンバの部分も含む。例えば、空間的に分離された処理チャンバのセクター内で、遷移金属前駆体、若しくは、いくつかの実施形態では遷移金属酸化物前駆体を全く含まないか、又は実質的に含まない処理チャンバの一部若しくはセクターに基板をガスカーテンを通して移動させることを含むが、これに限定されない任意の適切な技術によって、基板表面に隣接する処理チャンバの部分から遷移金属酸化物前駆体がパージされる。1つ又は複数の実施形態では、処理チャンバをパージすることは、真空を適用することを含む。いくつかの実施形態では、処理チャンバをパージすることは、基板の上にパージガスを流すことを含む。いくつかの実施形態では、処理チャンバの一部は、処理チャンバ内の微小容積又は小容積の処理ステーションを指す。基板表面に言及する「隣接」という用語は、表面反応(例えば、前駆体の吸着)が発生するのに十分なスペースを提供することが可能な、基板表面に隣接する物理的空間を意味する。1つ又は複数の実施形態では、パージガスは、窒素(N2)、ヘリウム(He)、及びアルゴン(Ar)のうちの1つ又は複数から選択される。1つ又は複数の実施形態では、基板をカルコゲニド反応物に曝す前に、基板表面から遷移金属前駆体、又はいくつかの実施形態では遷移金属酸化物前駆体がパージされる。
【0047】
[0049]1つ又は複数の実施形態では、操作214において、処理チャンバは、未反応の遷移金属前駆体、反応生成物及び副生成物を除去するために任意選択的にパージされる。
【0048】
[0050]操作216では、基板(又は基板表面)をカルコゲニド反応物に曝して、基板上に遷移金属ジカルコゲニド膜を形成する。カルコゲニド反応物は、基板表面上の遷移金属含有種と反応して、遷移金属ジカルコゲニド膜を形成することができる。いくつかの実施形態では、カルコゲニド反応物は還元剤を含む。1つ又は複数の実施形態において、還元剤は、当業者に知られている任意の還元剤を含むことができる。他の実施形態では、カルコゲニド反応物は酸化剤を含む。1つ又は複数の実施形態において、酸化は、当業者に知られている任意の酸化剤を含むことができる。さらなる実施形態では、カルコゲニド反応物は、1つ又は複数の酸化剤及び還元剤を含む。
【0049】
[0051]1つ又は複数の実施形態では、操作216では、基板(又は基板表面)を酸化物反応物に曝して、遷移金属酸化物プロセスサイクルにおいて遷移金属酸化物膜を形成する。遷移金属酸化物プロセスサイクルで遷移金属酸化物膜を形成した後、遷移金属酸化物膜は別のプロセスサイクルで遷移金属ジカルコゲニド膜に変換される。
【0050】
[0052]操作218では、処理チャンバは、カルコゲニド反応物への曝露後に任意選択的にパージされる。操作218における処理チャンバのパージは、操作214におけるパージと同じプロセスであってもよいし、異なるプロセスであってもよい。処理チャンバ、処理チャンバの一部、基板表面に隣接する領域などをパージすることは、未反応のカルコゲニド反応物、酸化物反応物、反応生成物及び副生成物を基板表面に隣接する領域から除去する。1つ又は複数の実施形態では、操作218で、酸化物反応物に曝した後、処理チャンバを任意選択的にパージする。
【0051】
[0053]決定220で、堆積膜の厚さ、又は前駆体と反応体のサイクル数が検討される。堆積膜が所定の厚さに達するか、又は所定の数のプロセスサイクルが実行されると、方法200は、任意選択の後処理操作230に進む。堆積膜厚又はプロセスサイクル数が所定のいき値に達していない場合、方法200は操作210に戻り、操作212で再び基板表面を前駆体に曝し、処理を継続する。
【0052】
[0054]1つ又は複数の実施形態では、堆積膜は実質的に酸素を含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」は、堆積された膜において、原子ベースで、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、及び約0.5%未満を含む、約5%未満の酸素が存在することを意味する。したがって、理論に束縛される意図はないが、形成される遷移金属ジカルコゲニド膜は副生成物として酸素を生成せずに形成されると考えられ、したがって、下にある金属層をエッチング/腐食する可能性が最小限に抑えられる。
【0053】
[0055]任意選択の後処理操作230は、例えば、膜特性を変更する処理(例えば、アニーリング)、又は追加の膜を成長させるためのさらなる膜堆積プロセス(例えば、追加のALD若しくはCVDプロセス)であってよい。いくつかの実施形態では、任意の後処理操作230は、堆積膜の特性を変更する処理であってもよい。いくつかの実施形態では、任意の後処理操作230は、堆積したままの膜をアニーリングすることを含む。いくつかの実施形態では、アニーリングは、約300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃又は1000℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態のアニーリング環境は、1つ又は複数の不活性ガス(例えば、分子状窒素(N2)、アルゴン(Ar))又は還元性ガス(例えば、分子状水素(H2)若しくはアンモニア(NH3))、又は酸化剤、例えば、これらに限定されない、酸素(O2)、オゾン(O3)、又は過酸化物を含む。アニーリングは、任意の適切な時間にわたって実行することができる。いくつかの実施形態では、膜は、約15秒~約90分の範囲、又は約1分~約60分の範囲の所定の時間アニーリングされる。いくつかの実施形態では、堆積したままの膜をアニーリングすることにより、密度が増加し、抵抗率が減少し、及び/又は膜の純度が増加し、及び/又は膜の結晶化度が増加する。
【0054】
[0056]方法200は、例えば、遷移金属前駆体、遷移金属酸化物前駆体、カルコゲニド反応物、酸化物反応物、又はデバイスの熱履歴に依存して、任意の適切な温度で実施することができる。1つ又は複数の実施形態では、高温処理の使用は、論理デバイスなどの温度に敏感な基板にとっては望ましくない場合がある。いくつかの実施形態では、遷移金属前駆体若しくは遷移金属酸化物前駆体への曝露(操作212)及びカルコゲニド反応物若しくは酸化物反応物(操作216)への曝露は、同じ温度で行われる。いくつかの実施形態では、基板は350℃~500℃の範囲の温度に維持される。
【0055】
[0057]いくつかの実施形態では、遷移金属前駆体若しくは遷移金属酸化物前駆体への曝露(操作212)は、カルコゲニド反応物若しくは酸化物反応物への曝露(操作216)とは異なる温度で行われる。いくつかの実施形態では、基板は、遷移金属前駆体若しくは遷移金属酸化物前駆体に曝露するために、350℃~500℃の範囲の第1の温度に維持され、350℃~500℃の範囲の第2の温度で、カルコゲニド反応物若しくは酸化物反応物に暴露する。いくつかの実施形態では、金属前駆体とカルコゲン/酸化剤前駆体の両方が同じ基板温度で供給される。基板上に単独で吸着された金属前駆体は自己制限的である可能性があり、いくつかの実施形態では、金属前駆体の複数のパルスはカルコゲン/酸化剤のない多層膜を提供しないであろう。いくつかの実施形態では、両方の前駆体が同じ基板温度で実行される完全なサイクルを形成する。
【0056】
[0058]
図3に示す実施形態では、堆積操作210では、基板(又は基板表面)が遷移金属酸化物前駆体及びカルコゲン反応物に順次的に曝露される。別の図示されていない実施形態では、基板(又は基板表面)は、CVD反応において遷移金属酸化物前駆体及びカルコゲン反応物質に同時に暴露される。CVD反応では、基板(又は基板表面)を遷移金属酸化物前駆体とカルコゲン反応物のガス状混合物に曝露して、所定の厚さを有する遷移金属ジカルコゲニド膜を堆積させることができる。CVD反応では、遷移金属ジカルコゲニド膜は、混合反応性ガスへの1回の曝露で堆積することができ、あるいは、間にパージを挟みながら混合反応性ガスへの複数回の曝露で堆積させることもできる。
【0057】
[0059]
図3に示す実施形態では、堆積操作210では、基板(又は基板表面)が遷移金属前駆体及び酸化反応物に順次的に曝露される。別の図示されていない実施形態では、基板(又は基板表面)は、CVD反応において遷移金属前駆体及び酸化反応物質に同時に暴露される。CVD反応では、基板(又は基板表面)を遷移金属前駆体と酸化反応物のガス状混合物に曝露して、所定の厚さを有する遷移金属ジカルコゲニド膜を堆積させることができる。CVD反応では、遷移金属ジカルコゲニド膜は、混合反応性ガスへの1回の曝露で堆積することができ、あるいは、間にパージを挟みながら混合反応性ガスへの複数回の曝露で堆積させることもできる。
【0058】
1つ又は複数の実施形態では、堆積操作210を繰り返して、WOF4、WO2F2、WOCl4、WO2Cl2、WOBr4、WO2Br2、WOI4、WO2I2、MoOF4、MoO2F2、MoOCl4、MoO2Cl2、MoOBr4、MoO2Br2、MoOI4、MoO2I2、TaOF4、TaO2F2、TaOCl4、TaO2Cl2、TaOBr4、TaO2Br2、TaOI4、TaO2I2、TiOF4、TiO2F2、TiOCl4、TiO2Cl2、TiOBr4、TiO2Br2、TiOI4、TiO2I2、RuOF4、RuO2F2、RuOCl4、RuO2Cl2、RuOBr4、RuO2Br2、RuOI4、及びRuO2I2のうちの1つ又は複数を含む、所定の厚さを有する膜を形成することができる。いくつかの実施形態では、堆積操作210を何度も繰り返して、15Å~25Åの範囲の厚さを有する膜を提供する。いくつかの実施形態では、前駆体が特定の温度を超えると安定しない場合、別の反応物質を使用せずに熱分解によって所定の厚さへの堆積が生成される。
【0059】
[0061]本開示の1つ又は複数実施形態は、高アスペクト比のフィーチャ内に遷移金属ジカルコゲニド膜を堆積させる方法に関する。高アスペクト比のフィーチャは、高さ:幅の比が約10、20、又は50以上であるトレンチ、ビア、又はピラーである。いくつかの実施形態では、遷移金属含有膜は、高アスペクト比フィーチャ上に共形性に堆積される。このように使われる際、共形性の膜は、フィーチャの頂部付近で、フィーチャの底部の厚さの約80~120%の範囲の厚さを有する。
【0060】
[0062]本開示のいくつかの実施形態は、フィーチャのボトムアップ間隙充填のための方法に関する。ボトムアップ間隙充填プロセスは、フィーチャは底部から充填されるのに対し、共形性プロセスはフィーチャが底部と側面から充填される。いくつかの実施形態では、フィーチャは、底部に第1の材料(例えば、窒化物)を有し、側壁に第2の材料(例えば、酸化物)を有する。遷移金属ジカルコゲニド膜は、ボトムアップ方式でフィーチャを充填するように、第2の材料に対して第1の材料上に選択的に堆積させる。
【0061】
[0063]1つ又は複数の実施形態によれば、基板は、層を形成する前及び/又は後に処理に供される。この処理は、同じチャンバ内で実行することも、1つ又は複数の別個の処理チャンバ内で実行することもできる。いくつかの実施形態では、基板は、さらなる処理のために第1のチャンバから別の第2のチャンバに移動される。基板は、第1のチャンバから別の処理チャンバに直接移動することができ、あるいは第1のチャンバから1つ又は複数の搬送チャンバに移動してから別の処理チャンバに移動することができる。したがって、処理装置は、移送ステーションと連通する複数のチャンバを備えることができる。この種の装置は、「クラスタツール」又は「クラスタシステム」などと呼ばれることがある。
【0062】
[0064]一般に、クラスタツールは、基板の中心検出及び配向、脱ガス、アニーリング、堆積及び/又はエッチングを含む様々な機能を実行する複数のチャンバを備えるモジュール式システムである。1つ又は複数の実施形態によれば、クラスタツールは、少なくとも第1のチャンバと中央搬送チャンバとを含む。中央搬送チャンバは、処理チャンバとロードロックチャンバの間で基板を往復させることができるロボットを収容することができる。搬送チャンバは通常、真空状態に維持され、あるチャンバから別のチャンバへ、及び/又はクラスタツールの前端に位置するロードロックチャンバへ基板を往復させるための中間ステージを提供する。本開示に適合させることができる2つのよく知られたクラスタツールは、Centura(登録商標)およびEndura(登録商標)であり、両方ともカリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.から入手可能である。しかしながら、チャンバの正確な配置及び組み合わせは、本明細書に記載されるプロセスの特定のステップを実行する目的で変更することができる。使用できる他の処理チャンバには、周期的層堆積(CLD)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、エッチング、前洗浄、化学洗浄、RTPなどの熱処理、プラズマ窒化、脱ガス、配向、水酸化、その他の基板処理を含むが、これらに限定されない。クラスタツールのチャンバ内で処理を実行することにより、次の膜を堆積する前に酸化することなく、大気中の不純物による基板表面汚染を回避できる。
【0063】
[0065]1つ又は複数の実施形態によれば、基板は、継続的に減圧又は「ロードロック」条件下にあり、あるチャンバから次のチャンバに移動するときに周囲空気に曝露されない。したがって、搬送チャンバは減圧下にあり、減圧下で「ポンプダウン」される。不活性ガスが処理チャンバ又は搬送チャンバ内に存在する場合がある。いくつかの実施形態では、反応物質(例えば、反応物)の一部又はすべてを除去するために不活性ガスがパージガスとして使用される。1つ又は複数の実施形態によれば、反応物質(例えば、反応物)が堆積チャンバから移送チャンバ及び/又は追加の処理チャンバに移動するのを防ぐために、堆積チャンバの出口にパージガスが注入される。したがって、不活性ガスの流れはチャンバの出口でカーテンを形成する。
【0064】
[0066]基板は、単一基板堆積チャンバ内で処理することができ、単一基板がロードされ、処理され、別の基板が処理される前にアンロードされる。基板は、コンベヤシステムと同様に、複数の基板が個別にチャンバの第1の部分にロードされ、チャンバ内を移動し、チャンバの第2の部分からアンロードされる連続方式で処理することもできる。チャンバの形状及び関連するコンベアシステムは、直線経路又は曲線経路を形成することができる。さらに、処理チャンバは、複数の基板が中心軸の周りを移動し、カルーセル経路全体にわたって堆積、エッチング、アニーリング、洗浄などの処理に曝されるカルーセルであってもよい。
【0065】
[0067]処理中に、基板を加熱又は冷却することができる。このような加熱または冷却は、基板支持体の温度を変更し、加熱又は冷却されたガスを基板表面に流すこと含むが、これらに限定されない任意の適切な手段によって達成することができる。いくつかの実施形態では、基板支持体は、基板温度を伝導電的に変化させるように制御できる加熱器/冷却器を含む。1つ又は複数の実施形態では、使用されるガス(反応性ガス又は不活性ガスのいずれか)は、基板温度を局所的に変化させるために加熱又は冷却される。いくつかの実施形態では、基板温度を対流的に変化させるために、加熱器/冷却器が基板表面に隣接してチャンバ内に位置付けされる。
【0066】
[0068]処理中に基板を静止又は回転させることもできる。回転基板は、順次的に又は個別のステップで(基板軸の周りで)回転させることができる。例えば、処理全体を通して基板を回転させてもよいし、異なる反応性ガス又はパージガスへの曝露の間に基板を少量だけ回転させてもよい。処理中に基板を(順次的又は段階的に)回転させることで、例えばガス流形状の局所的な変動の影響を最小限に抑え、より均一な堆積又はエッチングを生成するのに役立つ。
【0067】
[0069]「真下に(beneath)」、「下に(below)」、「下方(lower)」、「上に(above)」、「上方(upper)」などのような空間的に相対的な用語は、説明を容易にするために、図面に示されているある要素または特徴と、別の要素又は特徴との関係を説明するために、ここで使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示されている向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図のデバイスが裏返されている場合、他の要素又は特徴の「下に」又は「真下に」として記述されている要素は、それ故、他の要素又は特徴の「上に」配向されることになる。したがって、「下に」という例示的な用語は、上と下の両方の向きを包含し得る。デバイスは、他の方法で配向され(90度又は他の方向に回転され)、ここで使用される空間的に相対的な記述子がそれに応じて解釈され得る。
【0068】
[0070]ここで論じられる材料及び方法を説明する文脈での(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)「a」及び「an」及び「the」という用語並びに同様の指示対象の使用は、ここに別段の記載がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。ここでの値の範囲の列挙は、ここに別段の記載がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に参照する略記法として役立つことを単に意図し、各個別の値は、ここに個別に記載されているかのように仕様に組み込まれる。ここに記載されているすべての方法は、ここに別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。ここで提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に材料及び方法をより良好に明らかにすることを意図しており、別途、特許請求の範囲で規定しない限り、範囲に制限を課さない。本明細書のいかなる文言も、開示された材料及び方法の実施に必須であるとして特許請求されていない要素を示すとして解釈されるべきではない。
【0069】
[0071]この細書全体での「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ又は複数の実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、この明細書全体の様々な場所での「1つ又は複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」又は「実施形態において」などの句の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0070】
[0072]本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、記載された実施形態が本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解するであろう。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に様々な修正並びに変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内にある修正並びに変形を含むことができる。
【国際調査報告】