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特表2024-526424高分子樹脂フィルムの製造方法、高分子樹脂フィルムおよびこれを利用したディスプレイ装置用基板、ならびに光学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(54)【発明の名称】高分子樹脂フィルムの製造方法、高分子樹脂フィルムおよびこれを利用したディスプレイ装置用基板、ならびに光学装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240710BHJP
   B29C 41/12 20060101ALI20240710BHJP
   B29C 41/36 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240710BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20240710BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B29C41/12
B29C41/36
C08L79/08
C08K5/34
C08G73/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574864
(86)(22)【出願日】2023-02-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2023002408
(87)【国際公開番号】W WO2023229154
(87)【国際公開日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】10-2022-0063559
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、セウン ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンヨウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン ヒョ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F205
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC12
4F071AC19
4F071AF30
4F071AF62
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC02
4F071BC12
4F205AA40
4F205AC05
4F205AG01
4F205AH33
4F205GA07
4F205GB01
4F205GC06
4F205GF01
4F205GN29
4J002CM041
4J002EU016
4J002EU066
4J002FD310
4J002GP00
4J002GQ00
4J002GQ05
4J043PA04
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB04
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA222
4J043UA761
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA062
4J043XA08
4J043XA16
4J043XB27
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】
本発明は、優れた耐熱性および光学特性を具現することができる高分子樹脂フィルムの製造方法、高分子樹脂フィルムおよびこれを利用したディスプレイ装置用基板、ならびに光学装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階;
前記塗膜を乾燥する段階;
前記乾燥された塗膜を4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階を含む、高分子樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥された塗膜を4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階は、
前記乾燥された塗膜を50℃以上100℃以下の初期温度から400℃以上500℃以下の最終温度まで4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階を含む、請求項1に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記高分子樹脂組成物は、高分子樹脂組成物全体重量に対して炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を0.001重量%以下含む、請求項1に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物は、炭素数10以上の窒素含有ヘテロ環化合物を含む、請求項1に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物は、高分子樹脂組成物全体重量に対して1重量%以上10重量%以下で含まれる、請求項1に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記高分子樹脂組成物は、ポリイミド系樹脂固形分100重量部に対して前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を0.1重量部以上20重量部以下含む、請求項1に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリイミド系樹脂は、
芳香族イミド繰り返し単位を含むポリイミド樹脂を含む、請求項1に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ポリイミド系樹脂は、
下記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位を含む、請求項1に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1で、
は、芳香族4価作用基であり、
は、炭素数6~10の芳香族2価作用基である。)
【請求項9】
前記Xは、下記化学式5で表される4価の作用基を含む、請求項8に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法。
[化学式2]
【化2】
【請求項10】
100℃以上400℃以下の温度で熱膨張係数が23ppm/℃以下であり、
380nm~780nm波長に対する透過度が80%以上である、高分子樹脂フィルム。
【請求項11】
前記高分子樹脂フィルムは、ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、請求項10に記載の高分子樹脂フィルム。
【請求項12】
前記高分子樹脂フィルムは、高分子樹脂フィルム全体重量に対して炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を0.001重量%以下含む、請求項10に記載の高分子樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項10に記載の高分子樹脂フィルムを含む、ディスプレイ装置用基板。
【請求項14】
請求項10に記載の高分子樹脂フィルムを含む、光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2022年5月24日付韓国特許出願第10-2022-0063559号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた耐熱性および光学特性の物性を具現することができる高分子樹脂フィルムの製造方法、高分子樹脂フィルムおよびこれを利用したディスプレイ装置用基板、ならびに光学装置に関する。
【背景技術】
【0003】
表示装置市場は、大面積が容易であり、薄形および軽量化が可能な平板ディスプレイ(Flat Panel Display;FPD)を中心に急速に変化している。このような平板ディスプレイには、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Display;OLED)または電気泳動表示装置(electrophoretic display;EPD)などがある。
【0004】
リジッドタイプ(rigid type)のディスプレイはガラス基板を基材として使用して製造される。フレキシブルタイプ(flexible type)のディスプレイはプラスチック素材の基板を基材として使用して製造される。
【0005】
しかし、フレキシブルタイプのディスプレイにはプラスチック素材の基板が適用されることによって復原残像のような問題点が現れる。そしてプラスチック素材の基板はガラス基板に比べて耐熱性、熱伝導度、および電気絶縁性が落ちるという問題がある。
【0006】
それにもかかわらず、ガラス基板に代替して軽くて柔軟であり、連続工程で製造可能な長所を有するプラスチック基板を携帯電話、ノートパソコン、TVなどに適用するための研究が活発に行われている。
【0007】
ポリイミド樹脂は、合成が容易であり、薄膜で製造することができ、高温工程に適用可能な長所を有している。各種電子機器の軽量および精密化傾向に伴い、ポリイミド樹脂は半導体材料に集積化素材として多く適用されている。特に、ポリイミド樹脂を軽くて柔軟な性質が要求されるフレキシブルプラスチックディスプレイ基板(flexible plastic display board)に適用しようとする多くの研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた耐熱性および光学特性の物性を具現することができる高分子樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、前記高分子樹脂フィルムの製造方法により製造された高分子樹脂フィルムおよびこれを利用したディスプレイ装置用基板、ならびに光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本明細書では、ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階;前記塗膜を乾燥する段階;前記乾燥された塗膜を4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階を含む、高分子樹脂フィルムの製造方法が提供される。
【0011】
本明細書ではまた、100℃以上400℃以下の温度で熱膨張係数が23ppm/℃以下であり、380nm~780nm波長に対する透過度が80%以上である、高分子樹脂フィルムが提供される。
【0012】
本明細書ではまた、前記高分子樹脂フィルムを含む、ディスプレイ装置用基板が提供される。
【0013】
本明細書ではまた、前記高分子樹脂フィルムを含む、光学装置が提供される。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態による高分子樹脂フィルムの製造方法、高分子樹脂フィルムおよびこれを利用したディスプレイ装置用基板、ならびに光学装置についてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0016】
本明細書で使用される単数の形態は、文脈上これと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0018】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数により限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【0019】
本明細書で(共)重合体は、重合体または共重合体を全て含む意味であり、前記重合体は単一の繰り返し単位からなる単独重合体を意味し、共重合体は2種以上の繰り返し単位を含有する複合重合体を意味する。
【0020】
本明細書で、置換基の例示は以下で説明するが、これに限定されるのではない。
【0021】
本明細書で、「置換」という用語は、化合物内の水素原子の代わりに他の作用基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、つまり、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0022】
本明細書で、「置換または非置換された」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;第1級アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルコキシシリルアルキル基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換または非置換されるか、または前記例示した置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換または非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。つまり、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0023】
本明細書で、
【化1】
は、他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合はLで表される部分に別途の原子が存在しないことを意味する。
【0024】
本明細書で、芳香族(aromatic)は、ヒュッケル則(Huckels Rule)を満たす特性であり、前記ヒュッケル則により次の3つの条件を全て満たすものを芳香族と定義することができる。
【0025】
1)空いているp-オービタル、不飽和結合、ホール電子対などにより完全にコンジュゲーションをなしている4n+2個の電子が存在しなければならない。
2)4n+2個の電子は、平面形態の異性体を構成しなければならず、環構造をなさなければならない。
3)環の全ての原子がコンジュゲーションに参加可能でなければならない。
【0026】
本明細書で、多価作用基(multivalent functional group)は、任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基であり、例えば2価作用基、3価作用基、4価作用基が挙げられる。一例として、シクロブタンに由来する4価の作用基は、シクロブタンに結合された任意の水素原子4個が除去された形態の残基を意味する。
【0027】
本明細書で、アリール基は、アレーン(arene)に由来する1価の作用基であり、特に限定されないが、炭素数6~20であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であり得る。前記アリール基が単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであり得るが、これに限定されるのではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これに限定されるのではない。前記アリール基は、置換または非置換されてもよく、置換される場合、置換基の例示は前述のとおりである。
【0028】
本明細書で、直接結合または単一結合は、当該位置に如何なる原子または原子団も存在せず、結合線で連結されることを意味する。具体的には、化学式中、L、Lで表される部分に別途の原子が存在しないことを意味する。
【0029】
本明細書で、重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例を挙げれば、Polymer Laboratories PLgel MIX-Bの長さ300mmのカラムを利用してWaters PL-GPC220機器を利用し、評価温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として利用し、 流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を利用して形成された検定曲線を利用してMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0030】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0031】
発明の一実施形態によれば、ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階;前記塗膜を乾燥する段階;前記乾燥された塗膜を4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階を含む、高分子樹脂フィルムの製造方法が提供され得る。
【0032】
本発明者らは、前記一実施形態の高分子樹脂フィルムの製造方法のように炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含むことによって、炭素数10以上の窒素含有多重環化合物がポリイミド系樹脂のイミド化を促進する触媒として作用して、溶媒が揮発される前に高分子樹脂組成物内のポリイミド系樹脂の高分子整列および水分除去が効果的に起こることによって、最終製造される光学装置で高分子樹脂フィルムの膜の浮き現象を最小化できることを実験を通じて確認して発明を完成した。
【0033】
また、4℃/分以上の昇温速度で熱処理する硬化工程を経るにつれ、前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物の作用を最適化して、最終製造される高分子樹脂フィルムが無機膜蒸着基板での浮き現象がなく、同時に430℃以上高温の工程を経た後も黄色度や透光度などの光学特性が大きく変わらず、個別層の形態や積層構造の形態の変形が大きくなく、物理的特性の変化も大きくないという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0034】
具体的には発明の一実施形態によれば、ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1);前記塗膜を乾燥する段階(段階2);前記乾燥された塗膜を4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階(段階3);を含む、高分子樹脂フィルムの製造方法が提供され得る。
【0035】
前記段階1は、ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。前記ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物を基板に塗布する方法は特に制限されず、例えばスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法を利用することができる。
【0036】
そして、前記ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物は、有機溶媒に溶解または分散させたものであり得る。このような形態を有する場合、例えばポリイミド系樹脂を有機溶媒中で合成した場合には、溶液は得られる反応溶液のそれ自体であってもよく、またこの反応溶液を他の溶媒で希釈したものであってもよい。また、ポリイミド系樹脂を粉末として得た場合には、これを有機溶媒に溶解して溶液としたものであってもよい。
【0037】
前記ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物は、フィルム形成工程の時の塗布性などの加工性を考慮して適切な粘度を有するようにする量で固形分を含むことができる。例えば、全体樹脂の含有量が5重量%以上25重量%以下になるように組成物の含有量を調節することができ、または5重量%以上20重量%以下、または5重量%以上15重量%以下に調節することができる。
【0038】
また、前記ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含む、高分子樹脂組成物は、有機溶媒以外に他の成分を追加で含むことができる。非制限的な例として、前記ポリイミド系樹脂を含有する樹脂組成物が塗布された時、膜厚さの均一性や表面平滑性を向上させたり、あるいは基板との密着性を向上させたり、あるいは誘電率や導電性を変化させたり、あるいは緻密性を増加させることができる化合物を追加で含むことができる。このような化合物としては、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが例示され得る。
【0039】
より具体的には、前記実施形態の高分子樹脂フィルムの製造方法で高分子樹脂組成物は、炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含むことができる。前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物は、高分子樹脂組成物に含まれて、ポリイミド系樹脂のイミド化を促進する触媒として作用して、溶媒が揮発される前に高分子樹脂組成物内のポリイミド系樹脂の高分子整列および水分除去が効果的に起こることによって、最終製造される光学装置で高分子樹脂フィルムの膜の浮き現象を最小化することができる。
【0040】
また、前記高分子樹脂組成物は、高分子樹脂組成物全体重量に対して炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を0.001重量%以下、0.0001重量%以下、0.00001重量%以下含むことができる。
【0041】
前記高分子樹脂組成物が炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を0.001重量%以下含むということは、前記高分子樹脂組成物が炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を含まないことを意味し得る。
【0042】
キノリン、イソキノリンなどの炭素数9以下の窒素含有多重環化合物は、韓国内規制事項(NCIS)で有害化学物質として指定されており、したがって、これに代替するために炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を後添して浮き現象がない優れた高分子樹脂フィルムが製造され得ることを実験を通じて確認して発明を完成した。
【0043】
前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物の種類は大きく制限されないが、例えば炭素数10以上の窒素含有ヘテロ環化合物を含むことができる。本明細書で、ヘテロ環化合物は、異種原子としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含む環化合物を意味する。
【0044】
より具体的には、前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物は、炭素数10以上の窒素含有ヘテロ環芳香族化合物を含むことができる。本明細書で、ヘテロ環芳香族化合物は、異種原子としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含む環芳香族化合物を意味する。ヘテロ環芳香族化合物の例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジル基、ビピリジン、ピリミジン、トリアジン、アクリジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ピリドピリミジン、ピリドピラジン、ピラジノピラジン、イソキノリン、インドール、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾカルバゾール、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾフラニル基、フェナントロリン(phenanthroline)、イソオキサゾール、チアジアゾール、フェノチアジンおよびジベンゾフランなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。前記ヘテロ環芳香族化合物は、置換または非置換されてもよい。
【0045】
前記炭素数10以上の窒素含有ヘテロ環芳香族化合物は、例えば4-メチルキノリン(4-methylquinoline、Lepidine)を含むことができる。
【0046】
前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物は、高分子樹脂組成物全体重量に対して0.1重量%以上10重量%以下で含まれ得る。
【0047】
前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物が高分子樹脂組成物全体重量に対して1重量%未満含まれる場合、前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物が十分に含まれず、硬化過程での膜の浮きなど技術的問題が発生することがあり、前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物が高分子樹脂組成物全体重量に対して10重量%超過含まれる場合、前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物が過量含まれて高分子の耐熱および光学特性が低下する技術的問題が発生することがある。
【0048】
また、前記高分子樹脂組成物は、ポリイミド系樹脂固形分100重量部に対して前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を0.1重量部以上20重量部以下、1重量部以上20重量部以下、5重量部以上20重量部以下、5重量部以上15重量部以下含むことができる。
【0049】
前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物がポリイミド系樹脂固形分100重量部に対して0.1重量部未満含まれる場合、前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物が十分に含まれず、無機膜での膜が浮き立つ技術的問題が発生することがあり、20重量部超過含まれる場合、前記炭素数10以上の窒素含有多重環化合物が過量含まれて全体的に高分子物性を低下させる技術的問題が発生することがある。
【0050】
一方、前記ポリイミド系樹脂は、ポリイミド、そしてその前駆体重合体であるポリアミック酸、ポリアミック酸エステルを全て含むものを意味する。つまり、前記ポリイミド系高分子は、ポリアミック酸繰り返し単位、ポリアミック酸エステル繰り返し単位、およびポリイミド繰り返し単位からなる群より選択された1種以上を含むことができる。つまり、前記ポリイミド系高分子は、ポリアミック酸繰り返し単位1種、ポリアミック酸エステル繰り返し単位1種、ポリイミド繰り返し単位1種、またはこれらの2種以上の繰り返し単位が混合された共重合体を含むことができる。
【0051】
前記ポリアミック酸繰り返し単位、ポリアミック酸エステル繰り返し単位、およびポリイミド繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位は、前記ポリイミド系高分子の主鎖を形成することができる。
【0052】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、ポリイミド系樹脂の硬化物を含むことができる。前記ポリイミド系樹脂の硬化物は、前記ポリイミド系樹脂の硬化工程を経て得られる生成物を意味する。
【0053】
具体的には、前記ポリイミド系樹脂フィルムは、芳香族イミド繰り返し単位を含むポリイミド樹脂を含むことができる。
【0054】
前記芳香族イミド繰り返し単位は、ポリイミド系樹脂の合成に単量体として利用されるテトラカルボン酸またはその無水物およびジアミン化合物において、テトラカルボン酸またはその無水物が芳香族グループを含んだり、ジアミン化合物が芳香族グループを含んだり、テトラカルボン酸またはその無水物およびジアミン化合物の全てが芳香族グループを含むことによって具現され得る。
【0055】
より具体的には、前記ポリイミド系樹脂フィルムは、芳香族イミド繰り返し単位を含むポリイミド樹脂を含むことができる。
【0056】
前記芳香族イミド繰り返し単位は、ポリイミド系樹脂の合成に単量体として利用されるテトラカルボン酸またはその無水物およびジアミン化合物において、テトラカルボン酸またはその無水物が芳香族グループを含んだり、ジアミン化合物が芳香族グループを含んだり、テトラカルボン酸またはその無水物およびジアミン化合物の全てが芳香族グループを含むことによって具現され得る。
【0057】
特に、前記ポリイミド系樹脂は、下記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位を含むことができる。
[化学式1]
【化2】
前記化学式1で、Xは、芳香族4価作用基であり、Yは、炭素数6~10の芳香族2価作用基である。
【0058】
具体的には前記化学式1で、Yは、フッ素系作用基が少なくとも1以上置換された芳香族2価作用基であり、ポリイミド系樹脂の合成に使用されるジアミン化合物に由来する作用基であり得る。
【0059】
電気陰性度が高いトリフルオロメチル基(-CF)などのフッ素系作用基が置換されることによって、前記ポリイミド樹脂鎖内に存在するPi-電子のCTC(charge transfer complex)形成を抑制する効果が増加されることによって向上した透明性を確保することができる。つまり、ポリイミド構造内または鎖間のパッキング(packing)を減少させることができ、立体障害および電気的効果により発色源間の電気的な相互作用を弱化させて可視光領域で高い透明性を示すようにすることができる。
【0060】
具体的には、前記Yのフッ素系作用基が少なくとも1以上置換された芳香族2価作用基は、下記化学式3-1で表される作用基を含むことができる。
[化学式3-1]
【化3】
前記化学式3-1で、
Pは、0以上5以下の整数であり、好ましくは0以上2以下の整数である。
【0061】
より具体的には、前記ポリイミド系樹脂は、テトラカルボン酸二無水物の末端無水物基(-OC-O-CO-)と、フッ素系作用基が少なくとも1以上置換された芳香族ジアミンの末端アミノ基(-NH)との反応でアミノ基の窒素原子と無水物基の炭素原子との間の結合が形成され得る。
【0062】
前記ポリイミド系樹脂は、テトラカルボン酸二無水物化合物と共に互いに異なる2種以上のジアミン化合物を反応させて製造することができ、前記2種のジアミン化合物を同時に添加してランダム共重合体を合成したり、順次に添加してブロック共重合体を合成することができる。
【0063】
前記化学式1で、前記Xは、ポリイミド系樹脂の合成に使用されるテトラカルボン酸二無水物化合物から誘導された作用基である。
【0064】
具体的には、前記Xは、下記化学式5で表される4価の作用基であり得る。
[化学式5]
【化4】
【0065】
前記化学式5で、R~Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1~6のアルキル基であり、LおよびLは、互いに同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して-COO-、または-OCO-の中の一つであり、Lは、単一結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO-、-CR-、-(CH-、-O(CHO-、-COO(CHOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つであり、前記でRおよびRは、それぞれ独立して水素、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のハロアルキル基の中の一つであり、tは1~10の整数である。
【0066】
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物と共に互いに異なる2種以上のテトラカルボン酸二無水物化合物を反応させて製造することができ、前記2種のテトラカルボン酸二無水物化合物を同時に添加してランダム共重合体を合成したり、順次に添加してブロック共重合体を合成することができる。
【0067】
より具体的には、前記Xは、下記化学式2-1~化学式2-4で表される4価の作用基からなる群より選択される1種以上の4価作用基を含むことができる。
[化学式2-1]
【化5】
[化学式2-2]
【化6】
[化学式2-3]
【化7】
[化学式2-4]
【化8】
【0068】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体的な例としては、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、9,9'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9'-bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene dianhydride、BPAF)、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4'-(hexafluoroispropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、およびピロメリット酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride、PMDA)が挙げられる。
【0069】
前記ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(GPC測定)が大きく限定されるのではないが、例えば、1000g/mol以上200000g/mol以下、または10000g/mol以上200000g/mol以下であり得る。
【0070】
本発明によるポリイミド系樹脂は、硬直な構造による耐熱性、機械的強度などの特性をそのまま維持しながら、優れた無色透明な特性を示すことができるため、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム(optical film)、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム(adhesive film)、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に使用することができ、特にディスプレイ用カバー基板に適している。
【0071】
前記段階2は、前記ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。
【0072】
前記塗膜の乾燥段階は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉になどの加熱手段により実施することができ、50℃以上150℃以下、または50℃以上100℃以下温度で行うことができる。
【0073】
前記段階3は、前記乾燥された塗膜を熱処理して硬化する段階である。この時、前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段により実施することができる。
【0074】
具体的には、前記段階3は、4℃/分以上、4℃/分以上10℃/分以下、4℃/分以上7℃/分以下の昇温速度で熱処理され得る。
【0075】
前記段階3が4℃/分以上の速い昇温速度で熱処理されることによって、前述の炭素数10以上の窒素含有多重環化合物のイミド化の促進が加速化されて、ポリイミド系樹脂の速いイミド化が起こり、そのために高分子の配向(Orientation)増加により透過度などの光学特性が低下せず、同時に400℃以上の高温工程にも優れた耐熱特性を具現することができる。
【0076】
前記段階3で昇温速度が4℃/分未満である場合、前述の炭素数10以上の窒素含有多重環化合物がイミド促進剤の役割を果たす前に低温区間で揮発されてしまい、透過度および耐熱特性の改善に効果的でない。
【0077】
一方、前記乾燥された塗膜を4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階は、前記乾燥された塗膜を50℃以上100℃以下の初期温度から400℃以上500℃以下の最終温度まで4℃/分以上の昇温速度で熱処理して硬化する段階を含むことができる。
【0078】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、100℃以上400℃以下の温度で熱膨張係数が23ppm/℃以下であり、380nm~780nm波長に対する透過度が80%以上である、高分子樹脂フィルムが提供され得る。
【0079】
前記高分子樹脂フィルムは、前述の高分子樹脂フィルムの製造方法により製造され得る。
【0080】
つまり、前記高分子樹脂フィルムは、ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を含むことができる。
【0081】
前記ポリイミド系樹脂および炭素数10以上の窒素含有多重環化合物に関する説明は、前述した全ての内容を含む。
【0082】
一方、前記高分子樹脂フィルムは、高分子樹脂フィルム全体重量に対して炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を0.001重量%以下、0.0001重量%以下、0.00001重量%以下含むことができる。
【0083】
前記高分子樹脂フィルムが炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を0.001重量%以下含むということは、前記高分子樹脂フィルムが炭素数9以下の窒素含有多重環化合物を含まないことを意味し得る。
【0084】
従来幅広く使用されてきたキノリン、イソキノリンなどの炭素数9以下の窒素含有多重環化合物は、韓国内規制事項(NCIS)で有害化学物質として指定されており、したがって、これに代替するために炭素数10以上の窒素含有多重環化合物を後添して浮き現象がない浮優れた高分子樹脂フィルムが製造され得る。
【0085】
前記高分子樹脂フィルムは、前述の高分子樹脂フィルムの製造方法により100℃以上400℃以下の温度で熱膨張係数が23ppm/℃以下であり、380nm~780nm波長に対する透過度が80%以上を満たすことができる。
【0086】
前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが大きく限定されるのではないが、例えば、0.01μm以上1000μm以下の範囲内で自由に調節可能である。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定の数値だけ増加したり減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムで測定される物性も、一定の数値だけ変化することができる。
【0087】
また、前記一実施形態の高分子樹脂フィルムは、380nm~780nm波長に対する透過度が80%以上90%以下、80%以上90%以下であり得る。
【0088】
前記透過度の測定方法は、大きく制限されないが、例えばUV-visスペクトロスコピー(UV-vis spectroscopy)を利用して測定され得る。より具体的には、 UV-visスペクトロスコピー装置を利用して450nm波長の光に対して測定した透過度であり得る。
【0089】
前記一実施形態の高分子樹脂フィルムの380nm~780nm波長に対する透過度が80%以上であることから、優れた光学特性を具現することができる。
【0090】
前記他の実施形態の高分子樹脂フィルムを含むディスプレイ装置用基板が提供され得る。前記高分子樹脂フィルムに関する内容は前記一実施形態で前述の内容を全て含むことができる。
【0091】
前記基板を含むディスプレイ装置は、液晶表示装置(liquid crystal displayay device、LCD)、有機発光ダイオード(organicl ight emitting diode、OLED)、フレキシブルディスプレイ(Flexible Display)、または巻き取り可能ディスプレイ装置(rollable display or foldable display)などが挙げられるが、これに対し限定されるのではない。
【0092】
前記ディスプレイ装置は、適用分野および具体的な形態などにより多様な構造を有することができ、例えばカバープラスチックウィンドウ、タッチパネル、偏光板、バリアフィルム、発光素子(OLED素子など)、透明基板などを含む構造であり得る。
【0093】
前述の他の実施形態の高分子樹脂フィルムは、このような多様なディスプレイ装置で基板、外部保護フィルムまたはカバーウィンドウなどの多様な用途で使用することができ、より具体的には基板に適用され得る。
【0094】
例えば、前記ディスプレイ装置用基板は、素子保護層、透明電極層、シリコン酸化物層、ポリイミド系樹脂フィルム、シリコン酸化物層およびハードコーティング層が順次に積層された構造を備えることができる。
【0095】
前記透明ポリイミド基板は、耐溶剤性または水分透過性および光学的特性をより向上させることができる側面から、透明ポリイミド系樹脂フィルムと硬化層との間に形成された、シリコン酸化物層を含むことができ、前記シリコン酸化物層は、ポリシラザンを硬化して生成されるものであり得る。
【0096】
具体的には、前記シリコン酸化物層は、透明ポリイミド系樹脂フィルムの少なくとも一面上にコーティング層を形成する段階以前にポリシラザンを含む溶液をコーティングおよび乾燥した後、前記コーティングされたポリシラザンを硬化して形成されるものであり得る。
【0097】
本発明によるディスプレイ装置用基板は、前述の素子保護層を含むことによって優れた反り特性および耐衝撃性を有すると共に、耐溶剤性、光学特性、水分透過度および耐スクラッチ性を有する透明ポリイミドカバー基板を提供することができる。
【0098】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、前記他の実施形態の高分子樹脂フィルムを含む光学装置が提供され得る。前記高分子樹脂フィルムに関する内容は前記一実施形態で前述した内容を全て含むことができる。
【0099】
前記光学装置は、光により具現される性質を利用した各種装置が全て含まれ得、例えば、ディスプレイ装置が挙げられる。前記ディスプレイ装置の具体的な例としては、液晶表示装置(liquid crystal displayay device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)、フレキシブルディスプレイ(Flexible Display)、または巻き取り可能ディスプレイ装置(rollable display or foldable display)などが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0100】
前記光学装置は、適用分野および具体的な形態などにより多様な構造を有することができ、例えばカバープラスチックウィンドウ、タッチパネル、偏光板、バリアフィルム、発光素子(OLED素子など)、透明基板などを含む構造であり得る。
【0101】
前述した他の実施形態の高分子樹脂フィルムは、このような多様な光学装置で基板、外部保護フィルムまたはカバーウィンドウなどの多様な用途で使用することができ、より具体的には基板に適用することができる。
【発明の効果】
【0102】
本発明によれば、優れた耐熱性および光学特性の物性を具現することができる高分子樹脂組成物、高分子樹脂フィルムの製造方法、高分子樹脂フィルムおよびこれを利用したディスプレイ装置用基板、ならびに光学装置が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0103】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるのではない。
【0104】
<実施例および比較例:ポリイミド組成物およびポリイミドフィルムの製造>
【0105】
実施例1
【0106】
(1)ポリイミド組成物の製造
窒素気流が流れる攪拌機内にN,N-ジエチルアセトアミド(DEAc、N,N-diethylacetamide)155gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)27.62g(0.09mol)を同じ温度で添加して溶解した。前記溶液に3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)5.07g(0.02mol)、9,9'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9'-bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene dianhydride、BPAF)3.95g(0.02mol)およびピロメリット酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride、PMDA)13.14g(0.06mol)を同じ温度で添加して24時間攪拌した。この時、製造されたポリイミド前駆体組成物合計180gのうち、ポリイミド固形分は15gと現れた。
【0107】
その後、レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を全体固形分含有量に対して5重量%、1.35g添加して攪拌してポリイミド前駆体組成物を製造した。
【0108】
(2)ポリイミドフィルムの製造
前記ポリイミド前駆体組成物をガラス基板上にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃から460℃まで4℃/分の昇温速度で熱処理して200分間硬化工程を行い、ガラス基板上に厚さが10μm(±1μmの誤差を含む)であるポリイミドフィルムを製造した。
【0109】
実施例2
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を全体固形分含有量に対して10重量%、2.7g添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0110】
実施例3
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を全体固形分含有量に対して30重量%、8.1g添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0111】
実施例4
ポリイミドフィルムの製造時、ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃から460℃まで7℃/分の昇温速度で熱処理し、120分間硬化工程を行ったことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0112】
実施例5
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を全体固形分含有量に対して10重量%、2.7g添加し、ポリイミドフィルムの製造時、ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃から460℃まで7℃/分の昇温速度で熱処理して120分間硬化工程を行ったことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0113】
実施例6
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を全体固形分含有量に対して30重量%、8.1g添加し、ポリイミドフィルムの製造時、ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃から460℃まで5℃/分の昇温速度で熱処理して120分間硬化工程を行ったことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0114】
比較例1
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を添加しないことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0115】
比較例2
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を添加せず、ポリイミドフィルムの製造時、ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃から460℃まで2.5℃/分の昇温速度で熱処理して180分間硬化工程を行ったことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0116】
比較例3
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)を添加せず、ポリイミドフィルムの製造時、ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃から460℃まで7℃/分の昇温速度で熱処理して120分間硬化工程を行ったことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0117】
比較例4
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)の代わりにキノリン(Quinoline)を全体固形分含有量に対して5重量%、1.35g添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0118】
比較例5
レピジン(Lepidine、4-methylquinoline)の代わりにイソキノリン(Isoquinoline)を全体固形分含有量に対して5重量%、1.35g添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0119】
<実験例:実施例および比較例で得られたポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムの物性測定>
前記実施例および比較例で得られたポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムから物性を下記の方法で測定し、その結果を表1~表3に示した。
【0120】
1.CTE
TMA(TA社のQ400)を利用して、180℃まで5℃/minの昇温速度で温度を上昇させ、その温度で10分間維持した後、再び50℃まで5℃/minの速度で冷却させてから再び400℃まで5℃/minの昇温速度で温度を上昇させて昇温過程中のCTEを測定した。
【0121】
2.透光度
UV-visスペクトロスコピー(UV-vis spectroscopy、Agillent社、UV 8453)装置を利用して450nm波長の光に対する透光度(T)を測定した。
【0122】
【表1】
【表2】
【表3】
【0123】
前記表1および2に示されているように、実施例の高分子樹脂フィルムは、CTEが6.0ppm/℃以上23ppm/℃以下と示され、透光度が82%以上と示されて耐熱性および光学特性に優れていることが確認された。
【0124】
反面、比較例1-5の場合、表3に示されているようにCTEが24ppm/℃以上と示されて耐熱性が不良であるか、または透光度が77%以下と示されて光学特性が不良であることを確認することができた。
【国際調査報告】