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特表2024-526547電子機器製造水溶液、レジストパターンの製造方法およびデバイスの製造方法
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  • 特表-電子機器製造水溶液、レジストパターンの製造方法およびデバイスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電子機器製造水溶液、レジストパターンの製造方法およびデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/32 20060101AFI20240711BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240711BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G03F7/32 501
H01L21/304 647A
H01L21/30 569E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576428
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022069365
(87)【国際公開番号】W WO2023285408
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2021117253
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】山本 和磨
(72)【発明者】
【氏名】八嶋 友康
(72)【発明者】
【氏名】石井 牧
(72)【発明者】
【氏名】柳田 浩志
【テーマコード(参考)】
2H196
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196GA18
2H196HA11
2H196JA04
5F146LA12
5F157AA09
5F157AA92
5F157BC04
5F157BC13
5F157BD02
5F157BE33
5F157BF46
5F157BF48
5F157BF49
5F157BF52
5F157BF58
5F157BF59
5F157BF72
5F157BF73
5F157CB02
5F157CF74
5F157DA21
5F157DB23
5F157DB33
(57)【要約】
【課題】パターン倒れを防止する、またはレジストパターン幅の不均一さを抑制することを可能とする電子機器製造水溶液の提供。
【解決手段】アルキルカルボン酸化合物(A)、および溶媒(B)を含んでなる電子機器製造水溶液:ここで、アルキルカルボン酸化合物(A)は式(a)で表され;
-COOH 式(a)
(式中、AはC3-12アルキルである)かつ
溶媒(B)は水を含んでなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルカルボン酸化合物(A)、および
溶媒(B)
を含んでなる電子機器製造水溶液:
ここで、
アルキルカルボン酸化合物(A)は式(a)で表され;
-COOH 式(a)
(式中、AはC3-12アルキルであり、好ましくは、Aは直鎖または分岐のC3-10アルキルである)かつ
溶媒(B)は水を含んでなる。
【請求項2】
含窒素化合物(C)をさらに含んでなる請求項1に記載の電子機器製造水溶液。
【請求項3】
電子機器製造水溶液を基準として、アルキルカルボン酸化合物(A)の含有量が0.01~10質量%である請求項1または2に記載の電子機器製造水溶液;
好ましくは、電子機器製造水溶液を基準として、溶媒(B)の含有量が80~99.99質量%である;
好ましくは、電子機器製造水溶液を基準として、溶媒(B)に含まれる水の含有量が80~99.99質量%である;または
好ましくは、電子機器製造水溶液を基準として、含窒素化合物(C)の含有量が0.0001~10質量%である。
【請求項4】
ヒドロキシ含有化合物(D)をさらに含んでなる請求項1~3の少なくともいずれか一項に記載の電子機器製造水溶液:
好ましくは、界面活性剤(E)をさらに含んでなる。
【請求項5】
添加物(F)をさらに含んでなる請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載の電子機器製造水溶液;
ここで、
添加物(F)は、酸、塩基、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤または防カビ剤を含んでなり;
好ましくは、電子機器製造水溶液を基準として、ヒドロキシ含有化合物(D)の含有量が0.001~10質量%である;
好ましくは、電子機器製造水溶液を基準として、界面活性剤(E)の含有量が0.01~5質量%である;または
好ましくは、電子機器製造水溶液を基準として、添加物(F)の含有量が0.0001~10質量%である。
【請求項6】
半導体製造水溶液である、請求項1~5の少なくともいずれか一項に記載の電子機器製造水溶液:
好ましくは電子機器製造水溶液は、半導体基板製造水溶液であり;
好ましくは電子機器製造水溶液は、半導体基板製造プロセス洗浄液であり;
好ましくは電子機器製造水溶液は、リソグラフィ洗浄液であり;または
好ましくは電子機器製造水溶液は、レジストパターン洗浄液である。
【請求項7】
請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の電子機器製造水溶液を使用するレジストパターンの製造方法。
【請求項8】
下記工程を含んでなるレジストパターンの製造方法:
(1)1以上の中間層を介し又は中間層を介さずに、感光性樹脂組成物を基板に適用して、感光性樹脂層を形成し、
(2)放射線を前記感光性樹脂層に露光し、
(3)露光された感光性樹脂層を現像し、
(4)請求項1~6のいずれか一項に記載の電子機器製造水溶液で、現像された層を洗浄する。
【請求項9】
前記感光性樹脂組成物が化学増幅型感光性樹脂組成物であり、好適には露光が極端紫外線を用いて行われる、請求項8に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項10】
1つの回路単位におけるレジストパターンの最小スペースサイズが10~30nmである、請求項7~9のいずれか一項に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載のレジストパターンの製造方法を含んでなる、デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項7~10のいずれか一項に記載の方法で製造したレジストパターンをマスクとしてエッチングし、基板を加工することをさらに含んでなる、請求項11に記載のデバイスの製造方法。
【請求項13】
加工された基板に配線を形成することをさらに含んでなる、請求項11または12に記載のデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器製造水溶液、レジストパターンの製造方法およびデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化のニーズが高まっており、パターンの微細化が求められている。このようなニーズに対応するために、短波長の、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、極端紫外線(EUV;13nm)、X線、電子線等を用いるリソグラフィープロセスが実用化されつつある。このようなレジストパターンの微細化に対応するべく、微細加工の際にレジストとして用いられる感光性樹脂組成物にも高解像性のものが要求されている。短波長の光で露光することでより微細なパターンを形成することができるが、非常に微細な構造を作成するため、微細パターンの倒れ等の歩留まりが問題となる。
【0003】
このような状況の中、特許文献1では、従来の界面活性剤を含有した系と同様にパターン倒れマージン、欠陥、LWR等の性能に優れ、メルティングにおいても優れた特性を有するリソグラフィ用リンス液を検討する。
【0004】
また、別の試みとしてフッ素を含有する界面活性剤を使用する検討もある(特許文献2および特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-219577号公報
【特許文献2】国際公開2018/095885号
【特許文献3】国際公開2017/220479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らはいまだ改良が求められる1または複数の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる;微細なレジストパターンにおいて欠陥を減少させる;レジストパターンにブリッジ発生を抑制する;微細なレジストパターンにおいてレジストパターン倒れを防ぐ;レジストパターン幅の不均一さを抑える;電子機器製造水溶液を除去した後、残渣を少なくする;電子機器製造水溶液の表面張力を下げる;環境影響が少ない電子機器製造水溶液を提供する;取扱いの危険性が低い電子機器製造水溶液を提供する;保存安定性(例えば長期保存)に優れた電子機器製造水溶液を提供する;レジストパターンに与える影響が少ない電子機器製造水溶液を提供する。
本発明は、上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、電子機器製造水溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電子機器製造水溶液は、
アルキルカルボン酸化合物(A)、および
溶媒(B)
を含んでなり
ここで、
アルキルカルボン酸化合物(A)は式(a)で表され;
-COOH 式(a)
(式中、AはC3-12アルキルである)かつ
溶媒(B)は水を含んでなる。
【0008】
本発明によるレジストパターンの製造方法は、上記の電子機器製造水溶液を使用するものである。
【0009】
本発明によるデバイスの製造方法は、上記のレジストパターンの製造方法を含んでなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による電子機器製造水溶液を用いることで、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。
微細なレジストパターンにおいて欠陥を減少させることが可能である。レジストパターンにブリッジが発生することを抑制することが可能である。微細なレジストパターンにおいてレジストパターン倒れを防ぐことが可能である。レジストパターン幅の不均一さを抑えることが可能である。電子機器製造水溶液を除去した後、残渣を少なくすることが可能である。電子機器製造水溶液の表面張力を下げることが可能である。電子機器製造水溶液の環境影響を下げることが可能である。電子機器製造水溶液の取扱いの危険性が下げることが可能である。電子機器製造水溶液の保存安定性を優れたものにすることが可能である。電子機器製造水溶液が与えるレジストパターンへの影響を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、レジスト壁をリンスしている状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について詳細に説明すると以下の通りである。
【0013】
定義
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「C~C」および「C」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される形態もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(B)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0014】
<電子機器製造水溶液>
本発明による電子機器製造水溶液は、アルキルカルボン酸化合物(A)および溶媒(B)を含んでなる。
ここで、電子機器製造水溶液は、電子機器の製造のプロセス中に用いられるものである。電子機器の製造プロセスで用いられればよく、プロセスの過程で除去や消失するものであってもよい。電子機器として、表示素子、LEDや半導体素子が挙げられる。
電子機器製造水溶液は、好ましくは半導体基板製造水溶液であり;より好ましくは半導体基板製造プロセス洗浄液であり;さらに好ましくはリソグラフィ洗浄液であり;よりさらに好ましくはレジストパターン洗浄液である。半導体基板製造水溶液である電子機器製造水溶液とは、本発明の電子機器水溶液のみからなる半導体基板製造水溶液と言うこともできる。
本発明の別の形態として、電子機器製造水溶液は、露光・現像したレジストパターンをリンスするために使用されるリンス組成物であることができる。
【0015】
アルキルカルボン酸化合物(A)
本発明に用いられるアルキルカルボン酸化合物(A)は、式(a)で表される。
-COOH 式(a)
ここで、
は、C3-12アルキルである。Aは、直鎖、分岐または環状のアルキルであってよい。Aは、好ましくは直鎖または分岐のC3-11アルキルであり;より好ましくは直鎖または分岐のC3-10アルキルであり;さらに好ましくは直鎖または分岐のC3-9アルキルであり;よりさらに好ましくは直鎖または分岐のC3-8アルキルである。
本発明の好ましい一形態において、Aは、直鎖または分岐のCアルキルである。
【0016】
アルキルカルボン酸化合物(A)の具体例としては、2-メチルプロパン酸、n-ブタン酸、2-メチルブタン酸、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、4-メチル-n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸が挙げられる。
【0017】
アルキルカルボン酸化合物(A)の含有量は、電子機器製造水溶液を基準として、好ましくは0.01~10質量%である(より好ましくは0.02~5質量%;さらに好ましくは0.02~1質量%)。
【0018】
本発明による電子機器製造水溶液中のアルキルカルボン酸化合物(A)による効果の1つとして、レジストパターンの現像後のパターン倒れ防止に寄与することが挙げられる。理論に拘束されないが、本発明のアルキルカルボン酸化合物とレジスト壁との間の低い親和性が、リンスの乾燥工程で電子機器製造水溶液の接触角を増大させることができると考えられる。具体的には、式(a)中のアルキルは、組成物の表面張力を低下させることができ、カルボキシルは、電子機器製造水溶液の溶解性を向上することができ、それによって溶解性と低表面張力との間のバランスを良好化させることができると考えられる。
【0019】
溶媒(B)
溶媒(B)は、水を含んでなる。水は好適には脱イオン水である。
電子機器の製造工程に使用することを考慮すると、溶媒(B)は不純物が少ないものが好ましい。溶媒(B)は、好ましくは不純物濃度が1ppm以下である(より好ましくは100ppb以下;さらに好ましくは10ppb以下)。
溶媒(B)を基準とした水の含有量は、好ましくは90~100質量%である(より好ましくは98~100質量%;さらに好ましくは99~100質量%;よりさらに好ましくは99.9~100質量%)。本発明の好適な形態として、溶媒(B)は実質的に水のみからなる。ただし、添加物が水以外の溶媒に溶解および/または分散された状態(例えば界面活性剤)で、本発明の電子機器製造水溶液に含有される形態は、本発明の好適な形態として許容される。本発明のさらに好適な形態として、溶媒(B)に含まれる水の含有量は100質量%である。
【0020】
水を除く溶媒(B)の具体例としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、またはこれらの混合液が好適である。これらは溶液の保存安定性の点で好ましい。これらの溶媒は、2種以上を混合して使用することもができる。
【0021】
溶媒(B)の含有量は、電子機器製造水溶液を基準として、好ましくは80~99.99質量%である(より好ましくは90~99.99質量%;さらに好ましくは95~99.99質量%;よりさらに好ましくは98~99.99質量%)。
また、溶媒(B)に含まれる水の含有量は、電子機器製造水溶液を基準として、好ましくは80~99.99質量%である(より好ましくは90~99.99質量%;さらに好ましくは95~99.99質量%;よりさらに好ましくは98~99.99質量%)。
【0022】
本発明による電子機器製造水溶液は、前記した(A)および(B)成分を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を含むことができる。以降、詳述する。なお、組成物全体にしめる(A)および(B)以外の成分(複数の場合、その和)は、電子機器製造水溶液を基準として、好ましくは0~10質量%である(より好ましくは0~5質量%;さらに好ましくは0~3質量%)。本発明による電子機器製造水溶液が(A)および(B)以外の成分を含まない(0質量%)形態も、本発明の好適な形態である。
【0023】
含窒素化合物(C)
本発明による電子機器製造水溶液は、含窒素化合物(C)を含んでなる。含窒素化合物(C)は、化合物中に窒素を1以上有していればよい。
本発明による電子機器製造水溶液は、上記したようにアルキルカルボン酸化合物(A)を含むことで、パターン倒れが抑制されるが、含窒素化合物(C)を組み合わせることにより、パターン倒れをより抑制することができ、さらに、パターンメルティング、レジスト残渣等のその他の欠陥も抑制することができる。理論に拘束されないが、含窒素化合物(C)を含むことで、アルキルカルボン酸化合物(A)によるレジストパターンへの影響を低減することが可能であると考えられる。
【0024】
含窒素化合物(C)としては、例えば
(i)アンモニア、
(ii)炭素数1~16の第一級脂肪族アミンおよびその誘導体(例えばメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミンなど)、
(iii)炭素数2~32の第二級脂肪族アミンおよびその誘導体(例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルメチレンジアミンなど)、
(iv)炭素数3~48の第三級脂肪族アミンおよびその誘導体(例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミンなど)、
(v)炭素数6~30の芳香族アミンおよびその誘導体(例えばアニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、N-メチルアニリン、2-メチルアニリン、4-アミノ安息香酸、フェニルアラニンなど)、および
(vi)炭素数5~30のヘテロ環アミンおよびその誘導体(例えばピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、4-メチルイミダゾール、ピリジン、メチルピリジン、ブチルピリジンなど)
が挙げられる。
【0025】
含窒素化合物(C)は、好ましくは(i)、(ii)および(iv)からなる群から選択され、より好ましくは、アンモニア、n-ブチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびN,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミンからなる群から選択される。
【0026】
含窒素化合物(C)分子量は、好ましくは17~500である(より好ましくは17~150;さらに好ましくは60~143)。
【0027】
含窒素化合物(C)の含有量は、電子機器製造水溶液を基準として、好ましくは0.0001~10質量%である(より好ましくは0.0005~0.5質量%;さらに好ましくは0.0005~0.05質量%;よりさらに好ましくは0.0005~0.01質量%)。
【0028】
ヒドロキシ含有化合物(D)
本発明による電子機器製造水溶液は、さらにヒドロキシ含有化合物(D)を含むことができる。ヒドロキシ含有化合物(D)は、化合物中にヒドロキシを1以上有していればよいが、好ましくはヒドロキシを1~3有し、フッ素置換されていてもよい、C3-30の化合物である。ここでの、フッ素置換は、化合物のHをFで置換するが、この置換はヒドロキシ中のHは置換しない。
このヒドロキシ含有化合物(D)をさらに含むことで、倒れない限界サイズをさらに小さくすることが可能となると考えられる。
【0029】
好適な形態として、ヒドロキシ含有化合物(D)は、式(d)で表される。
【化1】
式中、
d1、Rd2、Rd3、およびRd4は、それぞれ独立に水素、フッ素、またはC1-5のアルキルである(好ましくはそれぞれ独立に水素、フッ素、メチル、エチル、t-ブチル、またはイソプロピル;より好ましくはそれぞれ独立に水素、メチル、またはエチル)。
d1およびLd2は、それぞれ独立に、C1-20のアルキレン、C1-20のシクロアルキレン、C2-4のアルケニレン、C2-4のアルキニレン、またはC6-20のアリーレンである。これらの基はフッ素、C1-5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよい。ここで、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価の炭化水素を意味し、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価の炭化水素基を意味するものとする。好ましくはLd1およびLd2はそれぞれ独立に、フッ素置換されていてもよい、C1-5のアルキレン、C2-4のアルキニレン、またはフェニレン(Cのアリーレン)である。Ld1およびLd2はそれぞれ独立に、より好ましくはフッ素置換されたC2-4のアルキレン、アセチレン(Cのアルキニレン)またはフェニレンであり;よりさらに好ましくはフッ素置換されたC2-4のアルキレン、アセチレンである。
フッ素含有の成分を使用しなくても、本発明の効果を得ることが可能である。このような形態として、Ld1およびLd2はそれぞれ独立に、C1-5のアルキレン、C2-4のアルキニレン、またはフェニレンである(より好ましくはそれぞれ独立にC2-4のアルキレン、アセチレンまたはフェニレン;さらに好ましくはそれぞれ独立にC2-4のアルキレン、アセチレン)。
hは、0、1、または2である(好ましくは0または1;より好ましくは0)。
【0030】
ヒドロキシ含有化合物(D)の具体例としては、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
ヒドロキシ含有化合物(D)の含有量は、電子機器製造水溶液を基準として、好ましくは0.001~10質量%である(より好ましくは0.005~5質量%;さらに好ましくは0.01~1質量%)。
ヒドロキシ含有化合物(D)を含まないことも、本発明の好ましい一形態である。
【0032】
界面活性剤(E)
本発明による電子機器製造水溶液は、さらに界面活性剤(E)を含むことができる。界面活性剤(E)は、塗布性や溶解性を向上させるために有用である。ここで、界面活性剤(E)は、アルキルカルボン酸化合物(A)やヒドロキシ含有化合物(D)とは異なるものある。
界面活性剤(E)としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル及びポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル化合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー化合物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート及びソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート及びポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル化合物が挙げられる。また、商品名エフトップEF301,EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、商品名メガファックF171、F173、R-08、R-30、R-2011(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤及びオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
界面活性剤(E)の含有量は、電子機器製造水溶液を基準として、0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~0.5質量%であることがより好ましい。
界面活性剤(E)を含まないことも、本発明の好ましい一形態である。
【0033】
添加物(F)
本発明による電子機器製造水溶液は、添加物(F)をさらに含むことができる。本発明において、添加物(F)は、酸、塩基、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤または防カビ剤を含んでなるものである。添加物(F)における酸は、アルキルカルボン酸化合物(A)とは異なる。添加物(F)における塩基は、含窒素化合物(C)とは異なる。
【0034】
酸または塩基は、処理液のpH値の調整や添加剤成分の溶解性を向上させるために使用することができる。酸としては、たとえば芳香族カルボン酸類が挙げられる。
【0035】
添加物(F)は、必要に応じて、抗菌剤、抗真菌剤、防腐剤または殺菌剤を含むことができる。これらの化学物質は、経時において、細菌や菌類が増殖するのを防止するために使用される。これらの化学物質の例は、フェノキシエタノール等のアルコール類、およびイソチアゾロンである。ベストサイド(Bestcide)(日本曹達社製)が特に有効な抗菌剤、抗真菌剤および殺菌剤である。
【0036】
添加物(F)の含有量は、電子機器製造水溶液を基準として、好ましくは0.0001~10質量%である(より好ましくは0.0005~0.1質量%)。添加物(F)を含まないことも、本発明の好ましい一形態である。
【0037】
本発明による電子機器製造水溶液は、その成分を溶解させた後、不純物および/または不溶物を除去するためにフィルターで濾過することができる。
【0038】
<レジストパターンの製造方法>
本発明は、上記の電子機器製造水溶液を使用するレジストパターンの製造方法も提供する。同方法で使用する感光樹脂組成物(レジスト組成物)は、ポジ型またはネガ型のいずれであってもよく;ポジ型がより好適である。本発明による電子機器製造水溶液が適用される代表的なレジストパターン製造方法は、以下の工程を含んでなる。
(1)1以上の中間層を介し又は中間層を介さずに、感光性樹脂組成物を基板に適用して、感光性樹脂層を形成し、
(2)放射線を前記感光性樹脂層に露光し、
(3)露光された感光性樹脂層を現像し、
(4)上記の電子機器製造水溶液で、現像された層を洗浄する。
【0039】
以下、詳細について説明する。
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の上方に、感光性樹脂組成物を適用(例えば、積層)して、感光性樹脂層を形成させる。積層は公知の手法を用いることができるが、スピンコーティング等の塗布法が好適である。基板の上に感光性樹脂組成物を直接積層することもでき、また1又は複数の中間層(例えばBARC)を介して積層することもできる。また、感光性樹脂層の上方(基板と逆側)に反射防止膜(例えばTARC)を積層してもよい。感光性樹脂層以外の層については、後述する。感光性樹脂膜の上方または下方に反射防止膜を形成しておくことにより、断面形状および露光マージンを改善することができる。
【0040】
本発明のレジストパターン製造方法で用いられるポジ型またはネガ型の感光性樹脂組成物の代表的なものを例示すると、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とを含んでなるもの、化学増幅型感光性樹脂組成物などが挙げられる。高解像性の微細レジストパターンを形成する観点からは、化学増幅型感光性樹脂組成物が好ましく、例えば化学増幅型PHS-アクリレートハイブリッド系EUVレジスト組成物が挙げられる。これらはポジ型の感光性樹脂組成物であることがより好ましい。
【0041】
上記キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とを含んでなるポジ型感光性樹脂組成物において用いられるキノンジアジド系感光剤の例としては、1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミドなどが、またアルカリ可溶性樹脂の例としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸或はメタクリル酸の共重合体などが挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類の1種以上から製造されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0042】
また、化学増幅型の感光性樹脂組成物としては、放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)と、光酸発生剤から発生された酸の作用により極性が増大し、現像液に対する溶解性が露光部と未露光部で変わる樹脂を含むポジ型の化学増幅型感光性樹脂組成物、あるいはアルカリ可溶性の樹脂と光酸発生剤と架橋剤からなり、酸の作用により架橋剤による樹脂の架橋が起こり、露光部と未露光部において現像液に対する溶解性が変わるネガ型の化学増幅型感光性樹脂組成物などが挙げられる。
【0043】
前記酸の作用により極性が増大し、露光部と未露光部において現像液に対する溶解性が変化する樹脂としては、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基を有する樹脂が挙げられる。その代表的なものを例示すると、ヒドロキシスチレン系のポリマー(PHS)に保護基としてアセタール基やケタール基を導入したポリマー(例えば、特開平2-19847号公報等)、t-ブトキシカルボニルオキシ基やp-テトラヒドロピラニルオキシ基を酸分解基として導入した同様のポリマー(特開平2-209977号公報等)などが挙げられる。
【0044】
また、光酸発生剤としては放射線の照射により酸を発生する化合物であればどのようなものでもよく、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o-ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物等を挙げることができる。また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖または側鎖に導入した化合物も用いることができる。
【0045】
さらに、前記化学増幅型の感光性樹脂組成物には、必要に応じて更に酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、界面活性剤、光増感剤、有機塩基性化合物、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等が含有されていてもよい。
【0046】
上記感光性樹脂組成物は、例えば基板上にスピナー、コーター等の適当な塗布装置、塗布方法により塗布され、ホットプレート上で加熱されて感光性樹脂組成物中の溶剤が除去され、感光性樹脂層が形成される。加熱温度は、用いる溶剤或いはレジスト組成物により異なるが、一般に70~150℃、好ましくは90~150℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~180秒間、好ましくは30~120秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0047】
本発明のレジストパターン製造方法において、感光性樹脂層以外の膜や層の存在も許容される。基板と感光性樹脂層が直接に接さずに、中間層が介在しても良い。中間層とは基板と感光性樹脂層の間に形成される層であり、下層膜とも言われる。下層膜として、基板改質膜、平坦化膜、下層反射防止膜(BARC)、無機ハードマスク中間層(ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜およびケイ素酸化窒素膜)や密着膜が挙げられる。無機ハードマスク中間層の形成について、日本特許5336306号を参照できる。中間層は1層でも複数層で構成されていても良い。また、感光性樹脂層の上に上層反射防止膜(TARC)が形成されても良い。
【0048】
本発明のレジストパターン製造工程において層構成は、プロセス条件に合わせて公知の手法を使用可能であるが、例えば、以下のような積層構成が挙げられる。
基板/下層膜/感光性樹脂層
基板/平坦化膜/BARC/感光性樹脂層
基板/平坦化膜/BARC/感光性樹脂層/TARC
基板/平坦化膜/無機ハードマスク中間層/感光性樹脂層/TARC
基板/平坦化膜/無機ハードマスク中間層/BARC/感光性樹脂層/TARC
基板/平坦化膜/密着膜/BARC/感光性樹脂層/TARC
基板/基板改質層/平坦化膜/BARC/感光性樹脂層/TARC
基板/基板改質層/平坦化膜/密着膜/BARC/感光性樹脂層/TARC
これらの層は、塗布後に加熱および/または露光することで硬化したり、CVD法等の公知の手法を用いて成膜することができる。これらの層は公知の手法(エッチング等)で除去可能であり、それぞれ上方の層をマスクとしてパターン化することができる。
【0049】
所定のマスクを通して感光樹脂層の露光が行なわれる。他層も含む場合(TARC等)は共に露光されてよい。露光に用いられる放射線(光)の波長は特に限定されないが、波長が13.5~248nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、および極端紫外線(波長13.5nm)等を使用することができ、極端紫外線がより好ましい。これらの波長は±5%の範囲を許容し、好ましくは±1%の範囲を許容する。露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB)を行なうこともできる。露光後加熱の温度は70~150℃、好ましくは80~120℃、加熱時間は0.3~5分間、好ましくは0.5~2分間、の中から適宜、選択される。
【0050】
次いで、現像液によって現像が行なわれる。本発明のレジストパターン製造方法の現像には、好ましくは2.38質量%(±1%が許容される)の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液が使用される。さらに、これらの現像液に界面活性剤等を加えることもできる。現像液の温度は一般に5~50℃、好ましくは25~40℃、現像時間は一般に10~300秒、好ましくは20~60秒から適宜選択される。現像方法はパドル現像等の公知の手法を使用できる。
先述の通り、本発明のレジストパターンは、レジスト膜を露光・現像したものだけではなく、他の層や膜をさらに被せることで壁を太らせたものを含む。
【0051】
上述の工程までで作成されたレジストパターン(現像された感光性樹脂層)は未洗浄の状態である。このレジストパターンを本発明による電子機器製造水溶液で洗浄することができる。電子機器製造水溶液を同レジストパターンに接触させる時間、すなわち処理時間は1秒以上が好ましい。また、処理温度も任意で良い。電子機器製造水溶液をレジストに接触させる方法も任意であり、例えばレジスト基板を電子機器製造水溶液に浸漬したり、回転しているレジスト基板表面に電子機器製造水溶液を滴下することにより行うことができる。
【0052】
本発明によるレジストパターン製造方法において、電子機器製造水溶液による洗浄処理前および/または同処理後に、他の洗浄液で現像後のレジストパターンを洗浄することができる。他の洗浄液は、好適には水であり、より好適には純水(DW、脱イオン水、等)である。同処理前の洗浄は、レジストパターンに付着した現像液を洗浄するために有用である。同処理後の洗浄は電子機器製造水溶液を洗浄するため有用である。現像後のレジストパターンに純水を注ぎ込むことで現像液と置換しつつパターンを洗浄し、さらにパターンが純水で浸された状態を維持したまま、電子機器製造水溶液を注ぎ込むことで純水と置換しつつパターンを洗浄する方法が、本発明による製造方法の好適な一形態である。
同電子機器製造水溶性による洗浄は、公知の方法によって行われてよい。
例えばレジスト基板を電子機器製造水溶液に浸漬したり、回転しているレジスト基板表面に電子機器製造水溶液を滴下することにより行うことができる。これらの方法は適宜組み合わせて行われてもよい。
【0053】
パターン倒れが生じやすい条件の1つとしてレジストパターンの壁と壁の間隔が最も狭い箇所がある。レジストパターンの壁と壁が平行しているところで、厳しい条件となる。本明細書において、1つの回路単位上で同間隔が最も小さいところの間隔の距離を最小スペースサイズとする。1つの回路単位は、後の工程で1つの半導体になるものが好ましい。また、1つの半導体は、水平方向には1つの回路単位を含み、垂直方向には複数の回路単位を含む形態も好ましい。もちろん試験サンプルと異なり、壁と壁の間隔が狭い箇所の発生頻度が低ければ、欠陥が生じる頻度が下がるので、不良品の発生頻度は減る。
本発明において、1つの回路単位におけるレジストパターンの最小スペースサイズが10~30nmであることが好ましく、10~20nmであることがより好ましく、10~17nmであることがさらに好ましい。
【0054】
<デバイスの製造方法>
本発明のデバイスの製造方法は、電子機器製造水溶液を使用するレジストパターンの製造方法を含んでなる。好適には、本発明によるデバイスの製造方法は、上記の方法で製造したレジストパターンをマスクとしてエッチングし、基板を加工することを含んでなる。加工後、レジスト膜は、必要に応じて剥離される。好適にはデバイスは、半導体である。
本発明の製造方法において、レジストパターンをマスクにしてエッチングすることで、中間層および又は基板を加工することができる。エッチングは、ドライエッチングやウェットエッチング等の公知の手法を用いることができ、ドライエッチングがより好適である。例えば、レジストパターンをエッチングマスクにして中間層をエッチングし、得られた中間層パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板を加工することができる。また、レジストパターンをエッチングマスクにして、レジスト層から下方の層(例えば中間層)をエッチングしつつ、そのまま基板をエッチングすることもできる。加工された基板は、例えばパターン化された基板となる。形成されたパターンを利用して基板に配線を形成することができる。
これらの層は好適にはO、CF、CHF、ClまたはBClでドライエッチングすることで除去でき、好適にはOまたはCFが使用できる。
好適な一形態として、本発明によるデバイスの製造方法は、加工された基板に配線を形成することをさらに含んでなる。
【0055】
<レジスト壁に掛かる応力>
Namatsu et al.Appl.Phys.Lett.1995(66)p2655-2657に記載され、また、図1に模式的に示されているように、リンス乾燥中の壁に掛かる応力は以下の式によって表記することができる。
σmax=(6γcosθ/D)x(H/W)
σmax:レジストに掛かる最大応力、γ:リンスの表面張力
θ:接触角、D:壁間の間隔
H:壁の高さ、W:壁の幅
これらの長さは、既知の方法、例えばSEM写真、により測定することができる。
【0056】
上記の式から分かるように、短いDまたは短いWは、応力をより多く引き起こす。本明細書において、「ピッチサイズ」とは、図1に記載されているように、WおよびDを有する、レジストパターンユニット配列のうちの1つのユニットを意味する。
これは、要求されるレジストパターンがより微細(より狭いピッチサイズ)であるほど、レジストパターンにかかる応力が大きくなることを意味する。このようにパターンがより微細になるほど、条件が厳しくなり、より多くの改善が電子機器製造水溶液(例えばリンス組成物)に求められる。
【0057】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の形態はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0058】
<実施例101の調製例>
脱イオン水に、濃度が1.0質量%になるようにアルキルカルボン酸化合物(A)として2-メチルプロパン酸を、および濃度が0.01質量%になるように含窒素化合物(C)としてn-ブチルアミンを添加し、これを撹拌する。目視で完全に溶解することを確認する。これをろ過(pore size=10nm)して、実施例101の水溶液を得る。
【0059】
<実施例102~112の調製例、比較例101~104の比較調製例>
表1に記載の通りのアルキルカルボン酸化合物(A)と含窒素化合物(C)を用いて、表1に記載の濃度となるように、上記実施例101の調製例と同様にして、実施例102~112および比較例101~104の水溶液を調製する。
なお、比較例101は、何も添加しない脱イオン水をろ過したものである。
【表1】
【0060】
<評価基板の作製1>
シリコン基板上にBARC組成物(AZ Kr-F17B、Merck Electronics株式会社(以下MEとする))をスピンコートによって塗布し、ホットプレート上で180℃60秒間加熱し、膜厚80nmのBARCを得る。この上にPHS-アクリレート系化学増幅型レジスト(DX6270P、ME)を塗布し、ホットプレート上で120℃90秒間加熱し、膜厚620nmのレジスト膜を得る。この基板をKrF露光装置(FPA3000 EX5、キヤノン)を用いて、マスク(250nm ライン/スペース 1:1)を介して露光する。このとき露光量は25mJ/cm~40mJ/cmと変化させ、得られるライン幅が変わるようにする。
その後、PEBをホットプレート上で100℃60秒間行い、現像液2.38質量%TMAH水溶液を流し入れた後、60秒間保持する(パドル)。現像液がパドルされている状態で、水を流し始め、基板を回転させながら、現像液から水に置換し、水でパドルさせた状態で停止し、60秒間静置する。その後、水でパドルさせた状態に、上記で調製した実施例101の水溶液を流し入れ、基盤を回転させながら水から実施例101の水溶液に置換し、実施例101の水溶液でパドルさせた状態で停止し、10秒間静置する。基板を30秒間スピンドライし基板を乾燥させる。
実施例102~112、および比較例102~104について、それぞれの水溶液を用いて評価基板の作製を上記と同様に行う。
比較例101は、水でパドルさせた状態の後に、すぐに、基板をスピンドライする点が上記の実施例101とは異なるが、それ以外は同様である。
【0061】
<倒れ防止の評価>
作製1の評価基板を用いて、パターン倒れの防止性能の評価を行う。レジストパターンを、SEM装置S-9220(日立ハイテクノロジーズ)を用いて観察し、パターン倒れの有無を観察する。評価基準を以下とする。比較例101では、ライン幅が190nmより細くなるとレジストパターンのパターン倒れが確認される。結果を表1に記載する。
A: 150nm以上177nm以下のライン幅のレジストパターンでパターン倒れが確認されない。
B: 150nm以上197nm以下ライン幅のレジストパターンでパターン倒れが確認される。
C: 200nmより大きなライン幅のレジストパターンでパターン倒れが確認される。
【0062】
<実施例201~206の調製例、比較例201、202の比較調製例>
表2に記載の通りのアルキルカルボン酸化合物(A)と含窒素化合物(C)を用いて、表2に記載の濃度となるように、上記実施例101の調製例と同様にして、実施例201~206および比較例201、202の水溶液を調製する。
なお、比較例201は、何も添加しない脱イオン水をろ過したものである。
【表2】
【0063】
<評価基板の作製2>
シリコン基板を90℃30秒間、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理する。その上に、EUV用PHS-アクリレート系化学増幅型レジストをスピンコートによって塗布し、ホットプレート上で110℃60秒間加熱し、膜厚50nmのレジスト膜を得る。この基板をEUV露光装置(NXE:3300B、ASML)を用いて、マスク(18nm ライン/スペース 1:1)を介して露光する。このとき露光量を変化させ、得られるライン幅が変わるようにする。その後、PEBをホットプレート上で100℃60秒間行い、現像液2.38質量%TMAH水溶液を流し入れた後、30秒間保持する(パドル)。現像液がパドルされている状態で、水を流し始め、基板を回転させながら、現像液から水に置換し、水でパドルさせた状態で停止し、60秒間静置する。その後、水でパドルさせた状態に、実施例201の水溶液を流しいれ、基盤を回転させながら水と実施例201の水溶液を置換し、実施例201の水溶液でパドルさせた状態で10秒間停止する。この基板をスピンドライし、基板を乾燥させる。
実施例202~206、および比較例202の水溶液について、それぞれの水溶液を用いて評価基板の作製を上記と同様に行う。
比較例201は、現像液から水に置換し水でパドルさせた状態の後、すぐに、基板をスピンドライする点が上記の実施例201とは異なるが、それ以外は同様である。
【0064】
<限界パターンサイズの評価(18nm ライン/スペース)>
作製2の評価基板上に形成されるレジストパターンを、測長SEM CG5000(日立ハイテクノロジーズ)を用いて、ライン幅およびパターン倒れの有無を観察する。露光量が増えるとライン幅が小さくなる。パターン倒れが発生しない最小のライン幅サイズを「限界パターンサイズ」とする。
比較例201の水溶液の場合、ラインサイズ20.3nmでパターン倒れが確認される。一方で20.8nmでは倒れが確認されないため、限界パターンサイズを20.8nmとする。結果を表2に記載する。
【0065】
<評価基板の作製3>
マスクを、17nm ライン/スペース 1:1のより狭いピッチのものに変更する以外は、上記評価基板の作製2と同様にして、それぞれの評価基板を作製する。
【0066】
<限界パターンサイズの評価(17nm ライン/スペース)>
作製3の評価基板上に形成されるレジストパターンを上記の限界パターンサイズの評価(18nm ライン/スペース)と同様にして、限界バターンサイズを計測する。結果を表2に記載する。
なお、比較例201および202では、作製3でパターンが形成されていないため、計測不可とした。
【0067】
<LWRの評価>
作製2の評価基板上に形成されるレジストパターンのLWRを評価する。測長SEM CG5000を用いて、ライン幅18nmのレジストパターンのLWR(Line Width Roughness)を測定する。結果を表2に記載する。
図1
【国際調査報告】