(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】感光性組成物、感光性エレメント、及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/031 20060101AFI20240711BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240711BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20240711BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240711BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20240711BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240711BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G03F7/031
C08F2/50
G03F7/029
G03F7/004 512
H05K3/18 D
H05K3/06 J
B32B33/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500515
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 CN2022104595
(87)【国際公開番号】W WO2023284643
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/106686
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(71)【出願人】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】800 Dongchuan Rd.,Minhang District,Shanghai,200240,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】谷本 明敏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎明
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰治
(72)【発明者】
【氏名】山崎 大
(72)【発明者】
【氏名】星野 稔
(72)【発明者】
【氏名】姜 学松
(72)【発明者】
【氏名】馬 暁東
【テーマコード(参考)】
2H225
4F100
4J011
5E339
5E343
【Fターム(参考)】
2H225AC21
2H225AC34
2H225AC63
2H225AC64
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2H225CA13
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2H225CC13
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(57)【要約】
本発明の一側面は、光重合性化合物と、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と、下記式(1)で表される化合物と、を含有する感光性組成物である。
式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に炭素数5以下のアルキル基を表し、R
4は、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物と、
ヘキサアリールビイミダゾール化合物と、
下記式(1)で表される化合物と、を含有する感光性組成物。
【化1】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に炭素数5以下のアルキル基を表し、R
4は、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表す。]
【請求項2】
前記式(1)におけるR
1、R
2及びR
3で表される前記アルキル基の前記炭素数が2以上である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記式(1)におけるm及びnが0である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記式(1)におけるmが1であり、nが0である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記式(1)におけるmが0であり、nが1である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記式(1)におけるmが0であり、nが2である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物が下記式(6)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、前記式(1)におけるR
1及びR
2とそれぞれ同義であり、R
4はハロゲン原子を表す。]
【請求項8】
前記ハロゲン原子が塩素原子である、請求項7に記載の感光性組成物。
【請求項9】
支持体と、
前記支持体上に設けられ、請求項1又は2に記載の感光性組成物からなる感光層と、
を備える、感光性エレメント。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の感光性組成物からなる感光層を基板上に設ける工程と、
前記感光層の一部を光硬化させる工程と、
前記感光層の未硬化部分を除去してレジストパターンを形成する工程と、
前記基板の前記レジストパターンが形成されていない部分に配線層を形成する工程と、
を備える、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性組成物、感光性エレメント、及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の製造においては、所望の配線を得るためにレジストパターンが形成される。レジストパターンの形成には、感光性組成物が広く用いられている。近年、微細な配線を形成可能な方法としてMSAP(Modified Semi Additive Process)が注目されている。この方法において、微細な配線を形成するためには、従来よりも精度良くレジストパターンを形成する必要がある。
【0003】
精度良くレジストパターンを形成するために、一般に、感光性組成物には、光重合性化合物及び光重合開始剤に加えて、光増感剤が用いられる。このような感光性組成物においては、例えば、光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物が用いられ、光増感剤として9,10-ジブトキシアントラセン(DBA)が用いられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、特許文献1のように、光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物が用いられる場合、光増感剤の選択には更なる検討の余地がある。具体的には、感光性組成物は、通常、ポリマーフィルム間に挟持された感光性エレメントの形態で用いられるが、本発明者らの検討によれば、感光性組成物がヘキサアリールビイミダゾール化合物に加えてDBAを含有する場合、DBAがポリマーフィルムへ移動してしまい、レジストパターン形成時に所望のパターン形状を形成できないという問題(マイグレーション)が生じ得る。このような問題は、ポリマーフィルムがポリエチレンフィルムである場合に特に顕著に発生する。
【0006】
そこで、本発明の一側面は、ポリエチレンフィルムへの光増感剤のマイグレーションを抑制できる感光性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と共に用いる光増感剤として特定の化合物を選択することにより、光増感剤としてDBAを用いた場合に比べて、ポリエチレンフィルムへの光増感剤のマイグレーションを抑制できることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の側面を含む。
[1] 光重合性化合物と、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と、下記式(1)で表される化合物と、を含有する感光性組成物。
【化1】
式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に炭素数5以下のアルキル基を表し、R
4は、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表す。
【0009】
[2] 式(1)におけるR1、R2及びR3で表されるアルキル基の炭素数が2以上である、[1]に記載の感光性組成物。
[3] 式(1)におけるm及びnが0である、[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
[4] 式(1)におけるmが1であり、nが0である、[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
[5] 式(1)におけるmが0であり、nが1である、[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
[6] 式(1)におけるmが0であり、nが2である、[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
【0010】
[7] 式(1)で表される化合物が下記式(6)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
【化2】
式中、R
1及びR
2は、式(1)におけるR
1及びR
2とそれぞれ同義であり、R
4はハロゲン原子を表す。
[8] ハロゲン原子が塩素原子である、[7]に記載の感光性組成物。
【0011】
[9] 支持体と、支持体上に設けられ、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性組成物からなる感光層と、を備える、感光性エレメント。
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の感光性組成物からなる感光層を基板上に設ける工程と、感光層の一部を光硬化させる工程と、感光層の未硬化部分を除去してレジストパターンを形成する工程と、基板のレジストパターンが形成されていない部分に配線層を形成する工程と、を備える、配線基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、ポリエチレンフィルムへの光増感剤のマイグレーションを抑制できる感光性組成物を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、感度(特に低照度光源を用いた場合の感度)に優れる感光性組成物を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、基板への密着性に優れる感光性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る感光性エレメントを示す模式断面図である。
【
図2】一実施形態に係る配線基板の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」、及び、それに対応する「メタクリル酸」の少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリロイル基等の他の類似表現についても同様である。
【0015】
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、「固形分」とは、感光性組成物において、揮発する物質(水、溶媒等)を除いた不揮発分を指す。すなわち、「固形分」とは、後述する感光性組成物の乾燥において揮発せずに残る溶媒以外の成分を指し、室温(25℃)で液状、水飴状又はワックス状のものも含む。
【0016】
<感光性組成物>
本発明の一実施形態は、光重合性化合物と、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と、下記式(1)で表される化合物と、を含有する感光性組成物である。
【化3】
式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に炭素数5以下のアルキル基を表し、R
4は、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表す。
【0017】
感光性組成物は、光重合性化合物の1種又は2種以上を含んでいる。光重合性化合物は、光により重合する化合物であればよく、例えば、エチレン性不飽和結合を有する化合物であってよく、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であってよい。
【0018】
光重合性化合物は、アルカリ現像性、解像度、及び、硬化後の剥離特性を更に向上させる観点から、ビスフェノールA型(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。ビスフェノールA型(メタ)アクリレート化合物としては、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン等)、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンなどが挙げられる。光重合性化合物は、解像度及び剥離特性を更に向上させる観点から、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン等)を含んでもよい。
【0019】
ビスフェノールA型(メタ)アクリレート化合物の含有量は、レジストの解像度が更に向上する観点から、光重合性化合物の全量を基準として、20質量%以上又は40質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0020】
光重合性化合物は、解像度及び可とう性を更に好適に向上させる観点から、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られるα,β-不飽和エステル化合物を含んでもよい。α,β-不飽和エステル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
α,β-不飽和エステル化合物の含有量は、光重合性化合物の全量を基準として、可とう性が向上する観点から、20質量%以上又は30質量%以上であってよく、解像度が更に向上する観点から、70質量%以下又は60質量%以下であっってよい。
【0022】
光重合性化合物は、フタル酸エステル系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)などを含んでもよい。光重合性化合物は、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性を更に好適に向上させる観点から、フタル酸系化合物を含んでよい。
【0023】
フタル酸エステル系化合物は、例えば、フタル酸エステル構造と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であってよい。このような化合物は、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート(別名:3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート)、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート等であってよく、好ましくはγ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレートである。
【0024】
光重合性化合物がフタル酸エステル系化合物を含む場合、フタル酸エステル系化合物の含有量は、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性を更に好適に向上させる観点から、光重合性化合物の全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよく、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0025】
光重合性化合物の含有量は、感光性組成物の固形分全量を基準として、感度及び解像度が更に向上する観点から、3質量%以上、10質量%以上、又は25質量%以上であってよく、フィルムの成形性に優れる観点から、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0026】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、光重合開始剤として機能し得る化合物である。ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、下記式(A)で表される構造を有する。
【化4】
式中、Arylはアリール基を表す。6つのアリール基は、互いに同一であってよく、互いに異なっていてよい。
【0027】
当該アリール基は、例えば、置換又は無置換のフェニル基であってよい。置換のフェニル基は、例えば、フェニル基における水素原子の1又は2以上が、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基で置換された基であってよい。ハロゲン原子は、例えば塩素原子であってよい。アルキル基の炭素数は、例えば、1以上であってよく、4以下であってよい。アルキル基は、例えばメチル基であってよい。アルコキシ基の炭素数は、例えば、1以上であってよく、4以下であってよい。アルコキシ基は、例えばメトキシ基であってよい。
【0028】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(4-メトキシフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等であってよく、好ましくは2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールである。
【0029】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物の含有量は、感度及び密着性が更に向上する観点から、感光性組成物の固形分全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0030】
上記式(1)で表される化合物は、光増感剤として機能し得る化合物である。上記式(1)において、R1、R2及びR3で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。当該アルキル基の炭素数は、1以上又は2以上であってもよく、4以下又は3以下であってもよく、2であってもよい。mが2以上の整数である場合、複数存在するR3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
式(1)において、R4で表されるハロゲン原子は、例えば、塩素原子又は臭素原子であってよい。R4で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。当該アルキル基の炭素数は、1以上であってよく、5以下、4以下、3以下又は2以下であってもよく、1又は2であってもよい。R4で表されるアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。当該アルコキシ基の炭素数は、1以上であってよく、5以下であってよい。nが2以上の整数である場合、複数存在するR4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R4は、低照度光源及び高照度光源の両方に対して感光性組成物の感度が高くなる観点から、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0032】
式(1)において、mは、1以上の整数であってよく、3以下、2以下又は1以下の整数であってよい。nは、1以上の整数であってよく、3以下又は2以下の整数であってよい。
【0033】
一実施形態において、m及びnは、0であってよい。すなわち、一実施形態において、式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表される化合物であってよい。
【化5】
式中、R
1及びR
2は、式(1)におけるR
1及びR
2とそれぞれ同義である。
【0034】
一実施形態において、mが1であり、nが0であってよい。すなわち、一実施形態において、式(1)で表される化合物は、下記式(3)で表される化合物であってよく、下記式(4)で表される化合物であってもよい。
【化6】
【化7】
式中、R
1、R
2及びR
3は、式(1)におけるR
1、R
2及びR
3とそれぞれ同義である。
【0035】
一実施形態において、mが0であり、nが1であってよい。すなわち、一実施形態において、式(1)で表される化合物は、下記式(5)で表される化合物であってよく、下記式(6)で表される化合物であってもよい。
【化8】
【化9】
式中、R
1、R
2及びR
4は、式(1)におけるR
1、R
2及びR
4とそれぞれ同義である。
【0036】
一実施形態において、mが0であり、nが2であってよい。すなわち、一実施形態において、式(1)で表される化合物は、下記式(7)で表される化合物であってよく、下記式(8)で表される化合物であってもよい。
【化10】
【化11】
式中、R
1、R
2及びR
4は、式(1)におけるR
1、R
2及びR
4とそれぞれ同義である。
【0037】
式(1)で表される化合物の含有量は、感度が更に向上する観点から、感光性組成物の固形分全量を基準として、例えば0.01質量%以上であってよく、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。式(1)で表される化合物の含有量は、パターン形成の精度を更に向上させる観点から、感光性組成物の固形分全量を基準として、例えば10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0038】
感光性組成物は、樹脂(バインダ樹脂)を更に含有してもよい。樹脂は、アルカリによる現像が好適に実施できる観点から、アルカリ可溶性樹脂であってよい。
【0039】
樹脂としては、例えばアクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂は、単量体単位として、例えば、(メタ)アクリル酸を含んでよく、(メタ)アクリル酸エステルを更に含んでもよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
【0040】
アクリル系樹脂は、解像度及び密着性を更に向上させる観点から、単量体単位として、スチレン又はスチレン誘導体を更に含んでもよい。スチレン誘導体は、例えば、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等であってよい。アクリル系樹脂は、単量体単位として、好ましくは、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン又はスチレン誘導体とを含む。
【0041】
(メタ)アクリル酸の含有量は、アクリル系樹脂を構成する単量体単位の全量を基準として、例えば、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、80質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、アクリル系樹脂を構成する単量体単位の全量を基準として、例えば、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、80質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。スチレン及びスチレン誘導体の含有量は、アクリル系樹脂を構成する単量体単位の全量を基準として、例えば、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、65質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0042】
樹脂の酸価は、好適に現像できる観点から、100mgKOH/g以上、120mgKOH/g以上、140mgKOH/g以上、又は150mgKOH/g以上であってよく、感光性組成物の硬化物の密着性(耐現像液性)が向上する観点から、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、又は230mgKOH/g以下であってよい。樹脂の酸価は、樹脂を構成する単量体単位の含有量(例えば(メタ)アクリル酸の含有量)により調整できる。
【0043】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、感光性組成物の硬化物の密着性(耐現像液性)が優れる観点から、10000以上、20000以上、又は25000以上であってよく、好適に現像できる観点から、100000以下、80000以下、又は60000以下であってよい。樹脂の分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0以上又は1.5以上であってよく、密着性及び解像度が更に向上する観点から、3.0以下又は2.5以下であってよい。
【0044】
重量平均分子量及び分散度は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。より具体的には実施例に記載の条件で測定することができる。なお、分子量の低い化合物について、上述の重量平均分子量の測定方法で測定困難な場合には、他の方法で分子量を測定し、その平均を算出することもできる。
【0045】
樹脂の含有量は、感光性組成物の固形分全量を基準として、フィルムの成形性に優れる観点から、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってよく、感度及び解像度に更に優れる観点から、90質量%以下、80質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
【0046】
樹脂の含有量は、樹脂及び光重合性化合物の総量100質量部に対して、フィルムの成形性に優れる観点から、30質量部以上、35質量部以上、又は40質量部以上であってよく、感度及び解像度が更に向上する観点から、70質量部以下、65質量部以下、又は60質量部以下であってよい。
【0047】
感光性組成物は、上述した成分以外のその他の成分の1種又は2種以上を更に含有してもよい。その他の成分としては、水素供与体(ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、ロイコクリスタルバイオレット、N-フェニルグリシン等)、染料(マラカイトグリーン等)、トリブロモフェニルスルホン、光発色剤、熱発色防止剤、可塑剤(p-トルエンスルホンアミド等)、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などが挙げられる。その他の成分の含有量は、感光性組成物の固形分全量を基準として、0.005質量%以上又は0.01質量%以上であってよく、20質量%以下であってもよい。
【0048】
感光性組成物は、粘度を調整する観点から、有機溶剤の1種又は2種以上を更に含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。有機溶剤の含有量は、感光性組成物の全量を基準として、40質量%以上であってよく、70質量%以下であってよい。
【0049】
感光性組成物は、レジストパターンの形成に好適に用いることができ、後述する配線基板の製造方法に特に好適に用いることができる。
【0050】
<感光性エレメント>
図1は、一実施形態に係る感光性エレメントの模式断面図である。
図1に示すように、感光性エレメント1は、支持体2と、支持体2上に設けられた感光層3と、感光層3の支持体2と反対側に設けられた保護層4とを備えている。
【0051】
支持体2及び保護層4は、それぞれ、耐熱性及び耐溶剤性を有するポリマーフィルムであってよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムなどであってよい。支持体2及び保護層4は、それぞれ、ポリオレフィン以外の炭化水素系ポリマーのフィルムであってよい。ポリオレフィンを含む炭化水素系ポリマーのフィルムは、低密度であってよく、例えば1.014g/cm以下の密度を有していてよい。支持体2及び保護層4は、それぞれ、当該低密度の炭化水素系ポリマーフィルムを延伸してなる延伸フィルムであってもよい。保護層4を構成するポリマーフィルムの種類は、支持体2を構成するポリマーフィルムの種類と同じであっても異なっていてもよい。
【0052】
これらのポリマーフィルムは、それぞれ、例えば、帝人株式会社製のPSシリーズ(例えばPS-25)等のポリエチレンテレフタレートフィルム、タマポリ株式会社製のNF-15等のポリエチレンフィルム、又は、王子製紙株式会社製(例えば、アルファンMA-410、E-200C)、信越フィルム株式会社製等のポリプロピレンフィルムとして購入可能である。
【0053】
支持体2の厚さは、支持体2を感光層3から剥離する際の支持体2の破損を抑制できる観点から、1μm以上又は5μm以上であってよく、支持体2を介して露光する場合にも好適に露光できる観点から、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0054】
保護層4の厚さは、保護層4を剥がしながら感光層3及び支持体2を基板上にラミネートする際、保護層4の破損を抑制できる観点から、1μm以上、5μm以上、又は15μm以上であってよく、生産性が向上する観点から、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0055】
感光層3は、上述した感光性組成物からなっている。感光層3の乾燥後(感光性組成物が有機溶剤を含有する場合は有機溶剤を揮発させた後)の厚さは、塗工が容易になり、生産性が向上する観点から、1μm以上又は5μm以上であってよく、密着性及び解像度が更に向上する観点から、100μm以下、50μm以下、又は40μm以下であってよい。
【0056】
感光性エレメント1は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、支持体2上に感光層3を形成する。感光層3は、例えば、有機溶剤を含有する感光性組成物を塗布して塗布層を形成し、この塗布層を乾燥することにより形成できる。次いで、感光層3の支持体2と反対側の面上に保護層4を形成する。
【0057】
塗布層は、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法により形成される。塗布層の乾燥は、感光層3中に残存する有機溶剤の量が例えば2質量%以下となるように行われ、具体的には、例えば、70~150℃にて、5~30分間程度行われる。
【0058】
感光性エレメントは、他の一実施形態において、保護層を備えていなくてもよく、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等のその他の層を更に備えていてもよい。
【0059】
感光性エレメント1は、例えば、シート状であってよく、巻芯にロール状に巻き取られた感光性エレメントロールの形態であってもよい。感光性エレメントロールにおいては、感光性エレメント1は、好ましくは、支持体2が外側になるように巻き取られている。巻芯は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等で形成されている。感光性エレメントロールの端面には、端面保護の観点から、端面セパレータが設けられていてよく、耐エッジフュージョンの観点から、防湿端面セパレータが設けられていてよい。感光性エレメント1は、例えば、透湿性の小さいブラックシートで包装されていてよい。
【0060】
感光性エレメント1は、レジストパターンの形成に好適に用いることができ、後述する配線基板の製造方法に特に好適に用いることができる。感光性エレメント1は、従来の感光性エレメントに比べて光増感剤のポリエチレンフィルムへのマイグレーションを抑制できるので、支持体2及び保護層4の少なくとも一方が、ポリエチレンフィルムであってもよく、上述した低密度の炭化水素系ポリマーフィルム又はその延伸フィルムであってもよい。
【0061】
<配線基板の製造方法>
図2は、一実施形態に係る配線基板(プリント配線板とも呼ばれる)の製造方法を示す模式図である。この製造方法では、まず、
図2(a)に示すように、絶縁層11と、絶縁層11上に形成された導体層12とを備える基板(例えば回路形成用基板)を用意する。導体層12は、例えば金属銅層であってよい。
【0062】
次いで、
図2(b)に示すように、基板(導体層12)上に感光層13を設ける。この工程では、上述した感光性組成物又は感光性エレメント1を用いて、上述した感光性組成物からなる感光層13を基板(導体層12)上に形成する。例えば、感光層13は、感光性組成物を基板上に塗布及び乾燥することによって形成される。あるいは、感光層13は、感光性エレメント1から保護層4を除去した後、感光性エレメント1の感光層3を加熱しながら基板に圧着する。圧着の際、感光層3及び基板の少なくとも一方は、例えば70~130℃で加熱されてよい。圧着の際の圧力は、例えば0.1~1.0MPaであってよい。
【0063】
次いで、
図2(c)に示すように、感光層13上にマスク14を配置し、活性光線15を照射して、マスク14が配置された領域以外の領域を露光して感光層13を光硬化させる。活性光線15の光源は、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、ガスレーザー(アルゴンレーザ等)、固体レーザー(YAGレーザー等)、半導体レーザーなどの紫外光源又は可視光源であってよい。
【0064】
他の一実施形態では、マスク14を用いずに、LDI露光法、DLP露光法等の直接描画露光法により、活性光線15を所望のパターンで照射して感光層13の一部を露光してもよい。
【0065】
次いで、
図2(d)に示すように、露光により形成された光硬化部分以外の領域(未硬化部分)を現像により基板上から除去して、光硬化部分(感光層の硬化物)からなるレジストパターン16を形成する。現像方法は、例えば、ウェット現像又はドライ現像であってよく、好ましくはウェット現像である。
【0066】
ウェット現像は、感光性組成物に対応した現像液を用いて、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッビング、揺動浸漬等の方法により行われる。現像液は、感光性組成物の構成に応じて適宜選択され、アルカリ現像液又は有機溶剤現像液であってよい。
【0067】
アルカリ現像液は、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩;ホウ砂;メタケイ酸ナトリウム;水酸化テトラメチルアンモニウム;エタノールアミン;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン;2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ジアミノ-2-プロパノール;モルホリンなどの塩基を含む水溶液であってよい。
【0068】
アルカリ現像液は、例えば、0.1~5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1~5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1~5質量%水酸化ナトリウム水溶液、0.1~5質量%四ホウ酸ナトリウム水溶液等であってよい。アルカリ現像液のpHは、例えば9~11であってよい。
【0069】
アルカリ現像液は、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を更に含有してもよい。有機溶剤としては、アセトン、酢酸エチル、炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。有機溶剤の含有量は、アルカリ現像液の全量を基準として、2~90質量%であってよい。
【0070】
有機溶剤現像液は、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン及びγ-ブチロラクトン等の有機溶剤を含有してよい。有機溶剤現像液は、1~20質量%の水を更に含有してもよい。
【0071】
この工程において、未露光部分を除去した後、必要に応じて、60~250℃の加熱、又は、0.2~10J/cm2での露光を更に行うことにより、レジストパターン16を更に硬化させてもよい。
【0072】
次いで、
図2(e)に示すように、導体層12上のレジストパターン16が形成されていない部分に、例えばめっき処理を施すことにより、配線層17を形成する。配線層17は、導体層12と同種の材料で形成されていてよく、異種の材料で形成されていてもよい。配線層17は、例えば金属銅層であってよい。めっき処理は、電解めっき処理及び無電解めっき処理の一方又は両方であってよい。
【0073】
次いで、
図2(f)に示すように、レジストパターン16を除去すると共に、レジストパターン16に対応する位置に設けられている導体層12を除去する。これにより、基板上に配線層17が形成された配線基板18が得られる。
【0074】
レジストパターン16は、例えば、強アルカリ性水溶液を用いて、浸漬方式、スプレー方式等の現像を行うことにより除去可能である。強アルカリ性水溶液は、例えば、1~10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1~10質量%水酸化カリウム水溶液等であってよい。
【0075】
導体層12は、エッチング処理により除去可能である。エッチング液は、導体層12の種類に応じて適宜選択され、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液等であってよい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[化合物(1-1):9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンの合成]
攪拌機、窒素同入管、還流冷却管、滴下漏斗及び温度計を備えた100mL三口フラスコへ、9,10-アントラキノン(3.00g、14.42mmol)、Zn(9.43g,144.23mmol)、K
2CO
3(19.93g、144.23mmol)、及びTHF(60.0mL)を投入し、窒素雰囲気下、室温で攪拌した後、無水プロピオン酸(17.5mL,144.23mmol)を加えて5時間攪拌した。
反応終了後、ろ過してZn及びK
2CO
3を除き、0.1M HClを加えた後、ジクロロエタン(30mL)を加えて攪拌し、有機層を回収した。回収した有機層を水と食塩水で洗浄した後、再度有機層を回収して無水MgSO
4を加えた。
続いて、ろ過して無水MgSO
4を除き、減圧乾燥した後、残った固体をヘキサン(30mL)及びジエチルエーテル(30mL)でそれぞれ3回ずつ洗浄して、下記式(1-1)で表される化合物(1-1):9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンを得た。
【化12】
【0078】
[化合物(1-2):9,10-ジアセトキシアントラセンの合成]
無水プロピオン酸を無水酢酸に変更した以外は、化合物(1-1)と同様にして、下記式(1-2)で表される化合物(1-2):9,10-ジアセトキシアントラセンを合成した。
【化13】
【0079】
[化合物(1-3):2-ブロモ-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンの合成]
9,10-アントラキノンを2-ブロモ-9,10-アントラキノンに変更した以外は、化合物(1-1)と同様にして、下記式(1-3)で表される化合物(1-3):2-ブロモ-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンを合成した。
【化14】
【0080】
[化合物(1-4):2,3-ジメチル-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンの合成]
9,10-アントラキノンを2,3-ジメチル-9,10-アントラキノンに変更した以外は、化合物(1-1)と同様にして、下記式(1-4)で表される化合物(1-4):2,3-ジメチル-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンを合成した。
【化15】
【0081】
[化合物(1-5):2-エチル-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンの合成]
9,10-アントラキノンを2-エチル-9,10-アントラキノンに変更した以外は、化合物(1-1)と同様にして、下記式(1-5)で表される化合物(1-5):2-エチル-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンを合成した。
【化16】
【0082】
[化合物(1-6):2,9,10-トリプロピオニルオキシアントラセンの合成]
9,10-アントラキノンを2-ヒドロキシ-9,10-アントラキノンに変更した以外は、化合物(1-1)と同様にして、下記式(1-6)で表される化合物(1-6):2,9,10-トリプロピオニルオキシアントラセンを合成した。
【化17】
【0083】
[化合物(1-7):2-クロロ-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンの合成]
9,10-アントラキノンを2-クロロ-9,10-アントラキノンに変更した以外は、化合物(1-1)と同様にして、下記式(1-7)で表される化合物(1-7):2-クロロ-9,10-ジプロピオニルオキシアントラセンを合成した。
【化18】
【0084】
化合物(1-8):9,10-ジオクタノイルオキシアントラセン(下記式(1-8)で表される化合物)として、UVS-581(商品名、川崎化成工業株式会社製)を用いた。
【化19】
【0085】
化合物(1-9):9,10-ジブトキシアントラセン(DBA、下記式(1-9)で表される化合物)として、UVS-1331(商品名、川崎化成工業株式会社製)を用いた。
【化20】
【0086】
[アクリル系樹脂の合成]
攪拌機、窒素導入管、還流冷却管、滴下漏斗及び温度計を備えた1000mL三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)96g及びトルエン64gを投入し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。フラスコ内に、メタクリル酸36g、スチレン48g、ベンジルメタクリレート36g(質量比30/40/30)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)9gの混合物を3時間かけて滴下した後、MFG6g、トルエン4g、及びAIBN0.20gの混合物を2時間かけて滴下し、更にMFG6g及びトルエン4gを滴下して反応を行った。反応液を95℃まで昇温して1.5時間攪拌した後、室温まで冷却し、アルカリ可溶性のアクリル系樹脂の溶液を得た。溶液の不揮発分(固形分)は40質量%であった。
【0087】
[感光性組成物の調製]
(実施例1)
光重合性化合物として、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(FA-321M(商品名)、昭和電工マテリアルズ株式会社製)25質量部と、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(FA-023M(商品名)、昭和電工マテリアルズ株式会社製)10質量部と、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル-2-メタクリロイルオキシエチルフタレート(FA-MECH(商品名)、昭和電工マテリアルズ株式会社製)5質量部と、光重合開始剤として、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(Hampford社製、「光重合開始剤(A-1)」という。)3.7質量部と、光増感剤として、上記化合物(1-1)0.7質量部と、上記の手順で合成したアルカリ可溶性のアクリル系樹脂(バインダ樹脂)60質量部と、水素供与性化合物として、ロイコクリスタルバイオレット(山田化学(株)製)0.5質量部と、染料として、マラカイトグリーン(大阪有機化学工業株式会社)0.03質量部と、を混合することにより、感光性組成物を得た。
【0088】
(実施例2~7及び比較例1~2)
光増感剤として、上記化合物(1-1)に代えて、表1に示すとおり上記化合物(1-2)~(1-9)のいずれかを用いた以外は、実施例1と同様にして、感光性組成物を得た。
【0089】
(比較例3)
光重合開始剤として、上記光重合開始剤(A-1)に代えて、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(「光重合開始剤(A-2)」という。)を用い、光増感剤として、上記化合物(1-1)に代えて、上記化合物(1-2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、感光性組成物を得た。
【0090】
[感光性エレメントの作製]
感光性組成物を、厚み16μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社、商品名「G2J」)(支持体)上に塗布し、75℃及び125℃の熱風対流式乾燥器で順次乾燥して、乾燥後の厚みが25μmの感光層を形成した。この感光層上にポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社、製品名「NF-15」)(保護層)を貼り合わせ、支持体と、感光層と、保護層とがこの順に積層された感光性エレメントをそれぞれ得た。
【0091】
[ポリエチレンフィルムへの光増感剤のマイグレーションの評価]
上記で作製した感光性エレメントをブラックシートで梱包してイエロー光の環境下に24時間静置した後、感光性エレメントからポリエチレンフィルムを剥離した。剥離したポリエチレンフィルムについて、紫外可視分光光度計(島津製作所製(UV-1800))を用いて、405nmにおける吸光度Abs(Sample)を測定した。また、上記の感光性エレメントの作製において使用したポリエチレンフィルムと同じポリエチレンフィルム(新品)について、上記と同様にして、405nmにおける吸光度Abs(Ref)を測定した。測定された吸光度から、以下の基準に基づいて、マイグレーションの有無を評価した。
マイグレーション無し:Abs(Sample)-Abs(Ref)<0.01
マイグレーション有り:Abs(Sample)-Abs(Ref)≧0.01
【0092】
[積層体の作製]
銅箔(厚み:35μm)をガラス繊維強化エポキシ樹脂層の両面に積層した銅張積層板(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名「MCL-E-67」)を、水洗、酸洗及び水洗後、空気流で乾燥した。次いで、銅張積層板を80℃に加温し、感光性エレメントを銅張積層板の銅表面に積層した。積層は、110℃のヒートロールを用いて、保護層を除去しながら、基板の0.4MPaの圧着圧力、1.0m/分のロール速度で行った。これにより、銅張積層板と感光層と支持体とがこの順に積層された積層体を得た。
【0093】
[感度の評価]
(低照度光源を用いた評価)
得られた積層体の支持体上に、41段ステップタブレット(昭和電工マテリアルズ株式会社製)を置き、直描露光機(ビアメカニクス株式会社製(DE-1UH)、露光波長405nm)を用いて、100mJ/cm2となるように露光を行った。
次に、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で感光層の現像を行い、残膜がゼロとなる現像時間を測定した。得られた現像時間の2倍の時間現像処理を行い、基板上に残ったステップタブレットの段数(ST段数)を評価した。ST段数が大きいほど高感度であることを意味する。表1に結果を示す。表1には、比較例2のST段数を1.0としたときの相対値で示す。
【0094】
(高照度光源を用いた評価)
露光機として、直描露光機(Orbotech社製(Fine8)、露光波長405nm)を用いて、40mJ/cm2となるように露光を行った以外は、低照度光源を用いた評価と同様にして感度を評価した。
【0095】
[密着性の評価]
上記積層体の支持体上に、直描露光機(ビアメカニクス株式会社製(DE-1UH)、露光波長405nm)を用いて、ST段数=16段に相当する露光量でパターンを描画した。現像処理後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、かつライン部分(露光部分)が蛇行又は欠けを生じることなく形成されたレジストパターンのうち、ライン部分(μm)/スペース部分(μm)=n(μm)/400(μm)が最も小さくなる孤立パターンにおけるライン部分の寸法:n(μm)を測定した。当該寸法が小さいほど密着性が高いことを意味する。結果を表1に示す。
【0096】
[感光性エレメントの吸光度]
作製した感光性エレメントからポリエチレンフィルムを剥離し、紫外可視分光光度計(島津製作所製(UV-1800))を用いて、405nmの吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
【0098】
表1から分かるように、光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物が用いられる場合、光増感剤としてDBA等が用いられると、ポリエチレンフィルムへのマイグレーションが生じる(比較例1及び2)のに対して、光増感剤として式(1)で表される化合物が用いられると、ポリエチレンフィルムへのマイグレーションが抑制される(実施例1~7)。一方、光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物以外の化合物が用いられ、光増感剤として式(1)で表される化合物が用いられる場合(比較例3)、ポリエチレンフィルムへのマイグレーションは抑制されるものの、感度(特に低照度光源を用いた場合の感度)の点で、光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物が用いられ、光増感剤として式(1)で表される化合物が用いられる場合(実施例1~7)に比べて劣っている。また、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と式(1)で表される化合物との組合せを含む感光性組成物(実施例1~7)は、基板への密着性の点でも優れている。
【符号の説明】
【0099】
1…感光性エレメント、2…支持体、3,13…感光層、4…保護層、16…レジストパターン、17…配線層、18…配線基板。
【国際調査報告】