(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 51/04 20060101AFI20240711BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L25/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503971
(86)(22)【出願日】2023-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 KR2023007433
(87)【国際公開番号】W WO2023243910
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0072522
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジャンウォン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ボン・クン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジユン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウンジ・イ
(72)【発明者】
【氏名】セヨン・キム
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC06X
4J002BN12W
4J002BN12Y
4J002GB01
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を含み、前記(A)グラフト共重合体の各層の平均粒径及び屈折率が適切に調節された熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
本発明によれば、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シード、前記シードを囲むゴムコア、及び前記ゴムコアを囲むグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、
(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1を満たし、
前記熱可塑性樹脂組成物は、アセトンを加えた後、撹拌及び遠心分離してゾル(sol)とゲル(gel)に分離して測定したゾルとゲルの屈折率の差が0.006以下であり、
ASTM D1003に準拠して、厚さ3mmの射出試験片で測定したヘイズが10%以下であり、
厚さ1/4"の試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
[数式1]
180≦2×r2≦300
(前記数式1において、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの厚さ(nm)である。)
【請求項2】
(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、
(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体とを含み、
前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1及び数式2を同時に満たすことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
[数式1]
180≦2×r2≦300
[数式2]
25≦r2-r1≦45
(前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心からシードまでの厚さ(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの厚さ(nm)である。)
【請求項3】
前記(A)グラフト共重合体は、ゴムコアの屈折率とシェルの屈折率との差が0.093以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)グラフト共重合体の重合体シードの屈折率は、前記(B)非グラフト共重合体の屈折率との差が0.015以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)グラフト共重合体は、その合計100重量%に対して、重合体シード5~35重量%、ゴムコア25~55重量%及びグラフトシェル25~55重量%を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)非グラフト共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート55~85重量%、芳香族ビニル化合物10~35重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物は、(A)グラフト共重合体10~90重量%及び(B)非グラフト共重合体10~90重量%を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、(C)ゴムコアの平均粒径が50~150nmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、アセトンを加えた後、撹拌及び遠心分離してゾル(sol)とゲル(gel)に分離して測定したゾルとゲルの屈折率の差が0.006以下であることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D1003に準拠して、厚さ3mmの射出試験片で測定したヘイズが10%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D2457に準拠して、45°で厚さ3mmの射出試験片で測定した光沢度が122以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に準拠して、厚さ1/4"の試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を、180~300℃及び80~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含み、
前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1及び数式2を同時に満たすことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[数式1]
180≦2×r2≦300
[数式2]
25≦r2-r1≦45
(前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心からシードまでの厚さ(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの厚さ(nm)である。)
【請求項14】
前記混練及び押出するステップは、(C)ゴムコアの平均粒径が50~150nmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むことを特徴とする、請求項13に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年06月15日付の韓国特許出願第10-2022-0072522号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、重合体シード、前記シードを囲むゴムコア、及び前記コアを囲むグラフトシェルの構造を有するグラフト共重合体の各層の構成、組成比及びゴムコアのモルフォロジーを調整し、さらに、マトリックス重合体との屈折率の差を調整することで、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、重合体内に不安定な二重結合を含まないため耐候性が非常に優れるので、電気・電子部品、建築用資材(一例として、ビニルサイディングなど)、押出プロファイル(Profile)、自動車部品などの様々な分野に広範囲に適用されている。最近、屋外用製品の分野で無塗装、透明、高彩度、特殊カラーなどの性質を有する高付加価値の製品に対する市場のニーズが持続的に増加している。
【0004】
ゴムコアを含むグラフト共重合体に透明性を具現するためには、ゴムコアの屈折率、グラフトシェルの屈折率、及びマトリックス樹脂の屈折率が互いに近接していなければならない。さらに、グラフト共重合体及びマトリックス樹脂を含む樹脂組成物において、ゴムコアの屈折率とマトリックス樹脂の屈折率との差が小さい場合に、グラフト共重合体の界面で光の屈折及び反射が起こらないので、樹脂組成物が透明になる。
【0005】
ブチルアクリレートゴムコアとスチレン-アクリロニトリル共重合体シェルを含んでなるASA樹脂は、ブチルアクリレートゴムの屈折率が1.46であり、スチレン-アクリロニトリル共重合体の屈折率は1.56~1.58であって、コアとシェルの屈折率の差が大きいため、樹脂が不透明である。また、ASA樹脂にマトリックス樹脂としてスチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「SAN樹脂」という)を使用する場合、SAN樹脂の屈折率が1.56~1.58であって、ASA樹脂のコアとSAN樹脂との屈折率の差が大きいため、樹脂組成物は不透明である。
【0006】
そのため、ASA樹脂を構成するシード、コア及びシェルのそれぞれの屈折率とマトリックス樹脂の屈折率との差を近接するようにして、透明性を具現しながらも、光沢性及び機械的物性に優れ、耐候性をさらに改善した樹脂組成物の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2006-0118156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、I)(A)シード、前記シードを囲むゴムコア、及び前記ゴムコアを囲むグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1を満たし、前記熱可塑性樹脂組成物は、アセトンを加えた後、撹拌及び遠心分離してゾル(sol)とゲル(gel)に分離して測定したゾルとゲルの屈折率の差が0.006以下であり、ASTM D1003に準拠して、厚さ3mmの射出試験片で測定したヘイズが10%以下であり、厚さ1/4"の試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0011】
[数式1]
180≦2×r2≦300
(前記数式1において、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの厚さ(nm)である。)
【0012】
また、本発明は、II)(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を含み、前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1及び数式2を同時に満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
[数式1]
180≦2×r2≦300
【0014】
[数式2]
25≦r2-r1≦45
【0015】
前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心から重合体シードまでの平均半径(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からゴムコアまでの平均半径(nm)である。
【0016】
III)前記I)又はII)において、前記(A)グラフト共重合体は、好ましくは、ゴムコアの屈折率とシェルの屈折率との差が0.093以下であってもよい。
【0017】
IV)前記I)~III)において、前記(A)グラフト共重合体の重合体シードの屈折率は、好ましくは、前記(B)非グラフト共重合体の屈折率との差が0.015以下であってもよい。
【0018】
V)前記I)~IV)において、前記(A)グラフト共重合体は、好ましくは、その合計100重量%に対して、シード5~35重量%、ゴムコア25~55重量%及びグラフトシェル25~55重量%を含むことができる。
【0019】
VI)前記I)~V)において、前記(B)非グラフト共重合体は、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート55~85重量%、芳香族ビニル化合物10~35重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでなることができる。
【0020】
VII)前記I)~VI)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、(A)グラフト共重合体10~90重量%及び(B)非グラフト共重合体10~90重量%を含むことができる。
【0021】
VIII)前記I)~VII)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、(C)ゴムコアの平均粒径が50~150nmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むことができる。
【0022】
IX)前記II)~VIII)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、アセトンを加えた後、撹拌及び遠心分離してゾル(sol)とゲル(gel)に分離して測定したゾルとゲルの屈折率の差が0.006以下であってもよい。
【0023】
X)前記II)~IX)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D1003に準拠して、厚さ3mmの射出試験片で測定したヘイズが10%以下であってもよい。
【0024】
XI)前記I)~X)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D2457に準拠して、45°で厚さ3mmの射出試験片で測定した光沢度が122以上であってもよい。
【0025】
XII)前記II)~XI)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D256に準拠して、厚さ1/4"の試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm以上であってもよい。
【0026】
また、本発明は、XIII)(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を、180~300℃及び80~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含み、前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1及び数式2を同時に満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0027】
[数式1]
180≦2×r2≦300
【0028】
[数式2]
25≦r2-r1≦45
【0029】
前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心からシードまでの厚さ(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの厚さ(nm)である。
【0030】
XIV)前記XIII)において、前記混練及び押出するステップは、好ましくは、(C)ゴムコアの平均粒径が50~150nmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むことができる。
【0031】
また、本発明は、XV)前記I)~XII)の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、耐衝撃性に優れながら、透明性、光沢性及び耐候性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供する効果がある。
【0033】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高い透明性、光沢性及び耐候性が要求される自動車内装材、自動車外装材、建築資材、家電製品または医療用部品に適用されて、美麗な外観と共に優れた耐衝撃性を付与する利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を詳細に説明する。
【0035】
本発明者らは、ASA樹脂及びマトリックス樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性を改善するために、ASA樹脂を構成するシード、コア及びシェルの構成、組成比及び/又は屈折率の差を所定の範囲内に調整し、及び/又は、さらに、マトリックス樹脂との屈折率の差を縮める場合、耐衝撃性に優れながらも、透明性、光沢性及び耐候性が大きく改善される効果を確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)シード、前記シードを囲むゴムコア、及び前記ゴムコアを囲むグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1を満たし、前記熱可塑性樹脂組成物は、アセトンを加えた後、撹拌及び遠心分離してゾル(sol)とゲル(gel)に分離して測定したゾルとゲルの屈折率の差が0.006以下であり、ASTM D1003に準拠して、厚さ3mmの射出試験片で測定したヘイズが10%以下であり、厚さ1/4"の試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm以上であることを特徴とする。このような場合、光沢性及び耐候性がいずれも優れるという効果がある。
【0037】
[数式1]
180≦2×r2≦300
(前記数式1において、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの厚さ(nm)である。)
【0038】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を含み、前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1及び数式2を同時に満たすことを特徴とする。このような場合、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるという効果がある。
【0039】
[数式1]
180≦2×r2≦300
【0040】
[数式2]
25≦r2-r1≦45
【0041】
前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心から重合体シードまでの平均半径(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの平均半径(nm)である。
【0042】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成別に詳細に説明する。
【0043】
(A)アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記(A)グラフト共重合体は、一例として、シード、前記シードを囲むゴムコア、及び前記ゴムコアを囲むグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体であってもよく、好ましくは、アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシードと、前記重合体シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコアと、前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルとを含むことができ、この場合、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れ、グラフトシェルにアルキルアクリレートを導入することによって、(B)非グラフト共重合体との相溶性に優れるので、物性バランスに優れるという利点がある。
【0044】
シード
前記(A)グラフト共重合体の重合体シードは、一例として、アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%、好ましくは、アルキルアクリレート50~70重量%及び芳香族ビニル化合物30~50重量%、より好ましくは、アルキルアクリレート57~67重量%及び芳香族ビニル化合物33~43重量%、さらに好ましくは、アルキルアクリレート62~67重量%及び芳香族ビニル化合物33~38重量%を含んで重合されてもよい。この場合、前記(B)非グラフト共重合体との屈折率の差が減少して、透明性、光沢性及び耐候性に優れるという利点がある。
【0045】
前記(A)グラフト共重合体の重合体シードは、一例として平均粒径が120~220nm、好ましくは150~190nmであってもよく、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に優れた耐衝撃性、流動性、透明性、光沢性及び耐候性を付与することができる。
【0046】
本記載において、グラフト共重合体の重合体シード、ゴムコア及びグラフトシェルの平均粒径は、SEM、TEMなどを用いた電子顕微鏡測定法を含め、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定法による場合、特に制限されず、一例として、重合体シードの製造、ゴムコアの製造及びグラフトシェルの製造がそれぞれ完了した時点でサンプリングし、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、粒子測定器(製品名:Nicomp380、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定する。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈し、すなわち、強度セットポイント(Intensity Setpoint)300kHzを大きく外れないように適切に希釈し、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity)300kHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nmとして測定することができる。
【0047】
前記(A)グラフト共重合体の重合体シードの屈折率は、一例として(B)非グラフト共重合体の屈折率との差が0.015以下、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.006以下、より一層好ましくは0.004以下、特に好ましくは0.001~0.004であってもよく、この範囲内で、透明性、光沢性及び耐候性に優れるという利点がある。
【0048】
ゴムコア
前記(A)グラフト共重合体のゴムコアは、一例として、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%、好ましくは、アルキルアクリレート81~88重量%及び芳香族ビニル化合物12~19重量%、より好ましくは、アルキルアクリレート84~88重量%及び芳香族ビニル化合物12~16重量%を含んで重合されてもよく、この場合、物性バランスに優れながら、耐衝撃性、透明性、光沢性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0049】
前記ゴムコアは、一例として平均粒径が180~300nm、好ましくは200~280nm、より好ましくは230~260nmであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れながら、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0050】
グラフトシェル
前記(A)グラフト共重合体のグラフトシェルは、一例として、前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、及びアルキルアクリレート3~15重量%、好ましくは、芳香族ビニル化合物66~78重量%、ビニルシアン化合物14~26重量%、及びアルキルアクリレート3~13重量%、より好ましくは、芳香族ビニル化合物68~78重量%、ビニルシアン化合物16~22重量%、及びアルキルアクリレート5~12重量%、さらに好ましくは、芳香族ビニル化合物70~75重量%、ビニルシアン化合物18~21重量%、及びアルキルアクリレート6~10重量%を含んで重合されてもよい。この場合、グラフトシェルにアルキルアクリレートを導入することによって、(B)非グラフト共重合体との相溶性に優れるので、物性バランスに優れ、透明性、光沢性及び耐候性に優れるという利点がある。
【0051】
前記(A)グラフト共重合体のゴムコアの屈折率と、前記(A)グラフト共重合体のグラフトシェルの屈折率との差は、一例として0.093以下、好ましくは0.090以下、より好ましくは0.070~0.090、さらに好ましくは0.080~0.090、より一層好ましくは0.082~0.088であってもよく、この範囲内で、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるという効果がある。
【0052】
本記載において、芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、o-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくはスチレンであってもよい。
【0053】
本記載において、ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルであってもよい。
【0054】
本記載において、アルキルアクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルアクリレートであってもよく、好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート及びラウリルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、炭素数1~4個のアルキル基を含むアルキルアクリレートであってもよく、さらに好ましくは、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、またはこれらの混合であってもよい。
【0055】
前記(A)グラフト共重合体は、一例として、下記数式1及び数式2を同時に満たし、この場合、(B)非グラフト共重合体との屈折率の差が大きい(A)グラフト共重合体のゴムコアの厚さが減少して、透明性、光沢性及び耐候性に優れながら、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0056】
[数式1]
180≦2×r2≦300
【0057】
[数式2]
25≦r2-r1≦45
【0058】
前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心から重合体シードまでの平均半径(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からコアまでの平均半径(nm)である。
【0059】
前記数式1は、好ましくは200≦2×r2≦280、より好ましくは230≦2×r2≦260であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0060】
前記数式2は、好ましくは30≦r2-r1≦40、より好ましくは32≦r2-r1≦37であってもよく、この範囲内で、透明性に優れるという効果がある。
【0061】
前記r1はまた、シードの平均粒径を半分に割った値であり得、r2もまた、シードを含むコアの平均粒径を半分に割った値であり得る。
【0062】
前記r2-r1は、ゴムコアの厚さを意味し、ゴムコアの厚さが薄くなるほど、光の透過が容易であるので、透明性及び光沢性が改善される効果がある。
【0063】
本記載において、グラフト共重合体の重合体シード、ゴムコア及びグラフトシェルのそれぞれの屈折率、及び(B)非グラフト共重合体の屈折率は、下記数式3で計算することができる。
【0064】
[数式3]
RI=ΣWti×RIi
Wti=共重合体における各成分の重量分率(%)
RIi=共重合体の各成分の高分子の屈折率
【0065】
本記載において、共重合体の各成分、すなわち、単量体の高分子の屈折率は、本発明の属する技術分野で一般に認められる値であれば、特に制限されず、一例として、メチルメタクリレートが1.49、ブチルアクリレートが1.46、スチレンが1.592、アクリロニトリルが1.52であってもよい。
【0066】
前記(A)グラフト共重合体は、一例としてゲル含量が70~98重量%、好ましくは80~95重量%、より好ましくは82~92重量%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性などの機械的物性に優れるという効果がある。
【0067】
前記(A)グラフト共重合体は、一例として膨潤指数が2.5~10、好ましくは3~7、より好ましくは4~6であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性などの機械的物性に優れながらも、耐候性に優れるという効果がある。
【0068】
前記(A)グラフト共重合体は、一例としてグラフト率が30%以上、好ましくは35~70%、より好ましくは35~60%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性などの機械的物性に優れながらも、耐候性に優れるという効果がある。
【0069】
本記載のゲル含量、膨潤指数及びグラフト率は、グラフト共重合体粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温にて210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃にて18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取した後に、85℃で強制循環方式で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後の重量を測定し、下記数式4、数式5及び数式6で計算して求めることができる。
【0070】
[数式4]
ゲル含量(重量%)=[不溶分(ゲル)の重量(g)/試料の重量(g)]×100
【0071】
[数式5]
膨潤指数=遠心分離後、乾燥前の不溶分の重量(g)/遠心分離後、乾燥後の不溶分の重量(g)
【0072】
[数式6]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
(前記数式6において、グラフトされた単量体の重量(g)は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量(g)からゴム質の重量(g)を引いた重量であり、ゴム質の重量(g)は、グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴム質成分の重量(g)である。)
【0073】
本記載において、常温は、20±5℃の範囲内の一地点であり得る。
【0074】
前記(A)グラフト共重合体は、その合計100重量%に対して、一例として重合体シード5~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~25重量%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び物性バランスに優れるという効果がある。前記重合体シードの含量が前記範囲未満である場合、透明性が低下し、前記範囲を超える場合、耐衝撃性が低下する。
【0075】
前記(A)グラフト共重合体は、その合計100重量%に対して、一例としてゴムコア25~55重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~45重量%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び物性バランスに優れるという効果がある。前記ゴムコアの含量が前記範囲未満であると、ゴムの含量が少なくなり、グラフト共重合体として衝撃補強効果が低下することがあり、前記範囲を超えると、グラフトシェルの含量が低くなり、凝集時にゴム同士が凝集し得、(B)非グラフト共重合体との相溶性が著しく低下して、衝撃補強効果の減少と共に、所望の程度の屈折率が得られないことがある。
【0076】
前記(A)グラフト共重合体は、その合計100重量%に対して、一例としてグラフトシェル25~55重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~45重量%を含むことができ、この範囲内で、耐衝撃性及び物性バランスに優れるという効果がある。前記グラフトシェルの含量が前記範囲未満では、グラフト効率が低下してゴムが凝集するようになることによって、(B)非グラフト共重合体との相溶性が減少して衝撃補強効果が低下し、前記グラフトシェルの含量が過剰であると、相対的なゴム含量の減少により、耐衝撃性が低下するという問題がある。
【0077】
前記ゴム成分のコアは、一例として、アルキルアクリレート、芳香族ビニル化合物及び架橋剤を含んで重合されたアクリル系ゴムであってもよく、架橋剤を含む場合、ゲル含量が調節され得、耐衝撃性に優れるという利点がある。
【0078】
前記重合体シード、ゴムコアまたはこれらの両方は、一例として、架橋剤として、ジビニルベンゼン、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、アリールアクリレート、アリールメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリールアミン、ジアリルアミン及び下記化学式1で表される化合物からなる群から選択された1種以上を含んでなることができる。
【0079】
【0080】
前記化学式1において、Aは、独立して、ビニル基を有する置換基、または(メタ)アクリレート基であり、A’は、水素基、ビニル基を有する置換基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数5~24のアリルアルキル基、炭素数5~24のアリールアミン基、または炭素数6~30のアリル基であり、Rは、独立して、2価のエチル基またはプロピル基であり、nは、0~15または1~15、好ましくは0~5または1~5、より好ましくは0~4または1~4の整数である。
【0081】
前記架橋剤は、一例として、前記(A)グラフト共重合体の重合体シード、ゴムコア及びグラフトシェルのそれぞれの製造時に使用される単量体の合計100重量部を基準として、それぞれ0.001~3重量部使用することができ、好ましくは0.05~1重量部使用する。
【0082】
本記載において、重合体内の単量体の含量は、重合体の製造時に投入された単量体の重量%、または重合体内の単位の単量体換算重量%を意味することができる。
【0083】
前記(A)グラフト共重合体の製造方法は、一例として、i)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合体シードを製造するステップと、ii)前記重合体シードの存在下で、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んでゴムコアを製造するステップと、iii)前記ゴムコアの存在下で、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んでグラフト重合してグラフト共重合体を製造するステップとを含むことができ、この場合、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0084】
前記(A)グラフト共重合体の製造方法は、好ましくは、i)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%、電解質、架橋剤、開始剤及び乳化剤を含んで重合体シードを製造するステップと、ii)前記重合体シードの存在下で、アルキルアクリレート78~91重量%、芳香族ビニル化合物9~22重量%、架橋剤、開始剤及び乳化剤を含んでゴムコアを製造するステップと、iii)前記ゴムコアの存在下で、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%、アルキルアクリレート3~15重量%、架橋剤、開始剤及び乳化剤を含んでグラフト重合してグラフト共重合体を製造するステップとを含むことができ、このような場合、透明性、光沢性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0085】
前記i)ステップ、ii)ステップ及びiii)ステップにおいて、乳化剤は、本発明の属する技術分野で通常使用される乳化剤であれば、特に制限されず、一例として、炭素数12~18のアルキルスルホサクシネート金属塩又はその誘導体、炭素数12~20のアルキル硫酸エステル又はその誘導体、炭素数12~20のアルキルスルホン酸金属塩又はその誘導体、脂肪酸石鹸、及びロジン酸石鹸からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0086】
前記炭素数12~18のアルキルスルホサクシネート金属塩又はその誘導体は、好ましくは、ジシクロヘキシルスルホサクシネート、ジヘキシルスルホサクシネート、ジ-2-エチルヘキシルスルホサクシネートナトリウム塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホサクシネートカリウム塩、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、及びジオクチルスルホサクシネートカリウム塩からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0087】
前記炭素数12~20のアルキル硫酸エステル又はその誘導体、及び炭素数12~20のアルキルスルホン酸金属塩又はその誘導体は、好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、及びオクタデシル硫酸カリウムからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0088】
前記脂肪酸石鹸は、好ましくは、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、及び混合脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0089】
前記ロジン酸石鹸は、好ましくは、アビエチン酸塩であってもよい。
【0090】
前記乳化剤は、一例として、前記(A)グラフト共重合体の重合体シード、ゴムコア及びグラフトシェルのそれぞれの製造時に使用される単量体の合計100重量部を基準として、それぞれ0.01~5重量部、好ましくは0.1~4重量部、より好ましくは1~3重量部使用することができる。
【0091】
前記i)、ii)及びiii)ステップにおいて、開始剤は、特に限定されないが、ラジカル開始剤を好ましく使用することができる。
【0092】
前記ラジカル開始剤は、一例として、無機過酸化物、有機過酸化物、ペルオキシケタール系過酸化物、ペルオキシカーボネート過酸化物、及びアゾ化合物からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0093】
前記無機過酸化物は、好ましくは、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、及び過酸化水素からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0094】
前記有機過酸化物は、t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、ジ-t-アミルペルオキシド、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)-シクロヘキサン、エチル3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)-ブチレート、ジイソプロピルベンゼンモノ-ヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,3,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノイル、t-アミルペルオキシネオデカノエート、t-アミルペルオキシピバレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイン酸、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノールペルオキシド、及びt-ブチルペルオキシイソブチレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0095】
前記ペルオキシケタール系過酸化物は、好ましくは、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、エチル-3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、及びエチル-3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0096】
前記ペルオキシカーボネート過酸化物は、好ましくは、ジクミルペルオキシド(dicumylperoxide)、ジ(t-ブチルペルオキシ)-m/p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-メチル-2,5-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3などのようなジアルキルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、及びt-ブチルペルオキシベンゾエートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0097】
前記アゾ化合物は、好ましくは、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、及びアゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0098】
前記i)ステップ、ii)ステップ及びiii)ステップのうちの少なくとも一つ以上のステップにおいて、好ましくは、前記重合開始剤と共に、過酸化物の開始反応を促進させるために活性化剤を使用することができる。
【0099】
前記活性化剤は、本発明の属する技術分野で通常用いる活性化剤であれば、特に制限されない。
【0100】
前記活性化剤は、グラフト共重合体の合計100重量部に対して0.01~3重量部、好ましくは0.01~1重量部で投入されてもよく、この範囲内で、高い重合度を達成することができる利点がある。
【0101】
前記i)ステップ、ii)ステップ及びiii)ステップは、一例として、前記開始剤と共に、開始反応をさらに促進させるために酸化-還元系触媒を使用することができる。
【0102】
前記酸化-還元系触媒は、一例として、ピロリン酸ナトリウム、デキストロース、硫化第一鉄、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、及びナトリウムエチレンジアミンテトラアセテートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ピロリン酸ナトリウム、デキストロース及び硫化第一鉄の混合であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0103】
前記i)ステップにおいて、電解質は、一例として、KCl、NaCl、KHCO3、NaHCO3、K2CO3、Na2CO3、KHSO3、NaHSO4、Na2S2O7、K3P2O7、K3PO4、Na3PO4、及びNa2HPO4からなる群から選択された1種以上を使用することができるが、これに限定されない。
【0104】
前記iii)ステップは、一例として分子量調節剤を含むことができる。
【0105】
前記分子量調節剤は、一例として、グラフト共重合体の合計100重量部を基準として、0.01~2重量部、好ましくは0.05~1.5重量部、より好ましくは0.05~1重量部であってもよく、この範囲内で、目的とする分子量を有する重合体を容易に製造することができる。
【0106】
前記分子量調節剤は、一例として、α-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、及びジイソプロピルキサントゲンジスルフィドからなる群から選択された1種以上を使用することができるが、これに限定されない。
【0107】
本記載において、グラフト共重合体100重量部とは、最終収得されるグラフト共重合体の総重量100重量部を意味するか、または、投入された単量体のほぼ全部が重合に参加するので、便利に重合体シード、ゴムコア及びグラフトシェルにおいて使用された単量体を全て合わせた重量、あるいは重合体シード及びゴムコアの製造時に投入された単量体とグラフトシェルの製造時に投入された単量体とを全て合わせた重量を100重量部として基準にしたものを意味することができる。
【0108】
前記(A)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、耐化学性、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0109】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合方法による場合、特に制限されない。
【0110】
前記乳化重合時の重合温度は、特に限定されないが、一例として50~85℃、好ましくは60~80℃で行われてもよい。
【0111】
前記(A)グラフト共重合体のラテックスは、一例として、凝集、洗浄、乾燥などの通常の工程を経て粉末状になり得、具体的に、金属塩又は酸凝集剤を添加して60~100℃の温度で凝集し、熟成、脱水、洗浄及び乾燥工程を経て粉末状に製造できるが、これに限定されるものではない。
【0112】
前記(A)グラフト共重合体は、一例として、(A)グラフト共重合体及び(B)非グラフト共重合体の総重量に対して、一例として10~90重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~60重量%であり、この範囲内で、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるという効果がある。
【0113】
(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体
前記(B)非グラフト共重合体は、マトリックス樹脂であって、一例として、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなり、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート55~85重量%、芳香族ビニル化合物10~35重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでなるものであり、この範囲内で、前記(A)グラフト共重合体との相溶性に優れ、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるという効果がある。
【0114】
前記(B)非グラフト共重合体は、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート60~80重量%、芳香族ビニル化合物15~30重量%及びビニルシアン化合物1~15重量%を含んでなるものであり、この範囲内で、前記(A)グラフト共重合体との相溶性に優れ、透明性、光沢性及び耐衝撃性がいずれも優れるという効果がある。
【0115】
前記(B)非グラフト共重合体は、より好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート65~75重量%、芳香族ビニル化合物20~25重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなるものであり、この範囲内で、前記(A)グラフト共重合体との相溶性に優れ、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるという効果がある。
【0116】
本記載において、「非グラフト」とは、グラフトされていないことを意味し、より具体的には、ゴムにグラフト結合されていないことを意味する。
【0117】
本記載において、アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの両方を含むものと定義することができる。
【0118】
前記アルキルアクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が1~15個であるアルキルアクリレートであってもよく、好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート及びラウリルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、炭素数1~4個のアルキル基を含むアルキルアクリレートであってもよく、より好ましくは、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、またはこれらの混合であってもよい。
【0119】
前記アルキルメタクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートであってもよく、好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、炭素数1~4個のアルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、さらに好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0120】
前記(B)非グラフト共重合体に含まれた芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類は、本記載の(A)グラフト共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0121】
前記(B)非グラフト共重合体は、好ましくは、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体であってもよく、この場合、(A)グラフト共重合体の重合体シードとの屈折率の差が小さくなるので、透明性及び光沢性に優れるという効果がある。
【0122】
前記(B)非グラフト共重合体は、一例として重量平均分子量が50,000~150,000g/mol、好ましくは60,000~130,000g/mol、より好ましくは70,000g/mol~100,000g/molであってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び成形性に優れるという効果がある。
【0123】
本記載において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPCを通じて、標準PS(標準ポリスチレン(standard polystyrene))試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/分、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率(Refractive index)検出器(detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0124】
前記(B)非グラフト重合体は、一例として、i)芳香族ビニル化合物10~35重量%、アルキル(メタ)アクリレート55~85重量%、及びビニルシアン化合物1~20重量%を含む単量体混合物100重量部に、反応媒質25~35重量部を混合して反応混合物を製造するステップと;ii)前記i)ステップの反応混合物に、二官能基を有する有機過酸化物開始剤を、反応混合物100重量部に対して0.005~0.05重量部で添加するステップと;iii)前記ii)ステップの開始剤が添加された混合物を重合するステップと;を含んで製造されてもよい。
【0125】
前記iii)ステップの重合は、好ましくは、110~140℃で2~4時間重合を行った後、120~160℃で2~4時間さらに重合を行う方法により行われ得る。
【0126】
前記i)ステップにおいて、反応媒質は、一例として、エチルベンゼン、トルエン及びキシレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくはトルエンである。
【0127】
前記ii)ステップにおいて、二官能基を有する有機過酸化物開始剤は、一例として、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)2-メチルシクロヘキサンからなる群から選択された1種以上であり、この場合、生産性に優れ、熱変色が減少する利点がある。
【0128】
前記iii)ステップは、一例として酸化防止剤を含むことができ、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート、及びビニルシアン化合物の合計100重量部を基準として0.05~1重量部、より好ましくは0.1~0.5重量部であってもよい。
【0129】
前記(B)非グラフト共重合体は、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合で製造されてもよく、好ましくは塊状重合で製造されてもよい。前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0130】
前記(B)非グラフト共重合体は、一例として、(A)グラフト共重合体及び(B)非グラフト共重合体の総重量に対して、一例として10~90重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~60重量%であり、この範囲内で、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるという利点がある。
【0131】
本記載において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合体内の単量体がその化合物に由来する。
【0132】
(C)ゴムコアの平均粒径が50~150nmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、前記(C)ゴムコアの平均粒径が50~150nmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むことができ、この場合、(B)非グラフト共重合体との相溶性に優れ、透明性、光沢度及び耐候性がさらに改善される利点がある。
【0133】
前記(C)グラフト共重合体は、好ましくは、平均粒径50~150nmであり、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んでなるゴムコアと、前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~80重量%、ビニルシアン化合物14~25重量%及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んでなるグラフトシェルとを含むグラフト共重合体であってもよく、この場合、(B)非グラフト共重合体との相溶性に優れ、耐衝撃性に優れると共に、透明性、光沢度及び耐候性がさらに改善される利点がある。
【0134】
前記(C)グラフト共重合体は、より好ましくは、平均粒径70~130nmであり、アルキルアクリレート80~90重量%及び芳香族ビニル化合物10~20重量%を含んでなるゴムコアと、前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物67~77重量%、ビニルシアン化合物14~22重量%、及びアルキルアクリレート5~12重量%を含んでなるグラフトシェルとを含むことができ、この場合、(B)非グラフト共重合体との相溶性に優れ、耐衝撃性に優れると共に、透明性、光沢度及び耐候性がさらに改善される利点がある。
【0135】
前記(C)グラフト共重合体は、さらに好ましくは、平均粒径80~110nmであり、アルキルアクリレート82~88重量%及び芳香族ビニル化合物12~18重量%を含んでなるゴムコアと、前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物70~75重量%、ビニルシアン化合物17~22重量%、及びアルキルアクリレート5~10重量%を含んでなるグラフトシェルとを含むことができ、この場合、(B)非グラフト共重合体との相溶性に優れ、耐衝撃性に優れると共に、透明性、光沢度及び耐候性がさらに改善される利点がある。
【0136】
前記(C)グラフト共重合体は、一例として、ゴムコア30~60重量%及びグラフトシェル40~70重量%、好ましくは、ゴムコア35~55重量%及びグラフトシェル45~65重量%、より好ましくは、ゴムコア40~50重量%及びグラフトシェル50~60重量%であってもよく、この範囲内で、機械的物性に優れるという利点がある。
【0137】
前記(C)グラフト共重合体に含まれたアルキルアクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類は、本記載の(A)グラフト共重合体に含まれるアルキルアクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0138】
前記(C)グラフト共重合体の製造方法は、一例として、i)アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んでゴムコアを製造するステップと、ii)前記ゴムコアの存在下で、芳香族ビニル化合物65~80重量%、ビニルシアン化合物14~25重量%及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んでグラフト重合してグラフト共重合体を製造するステップとを含むことができ、このような場合、耐衝撃性に優れながら、透明性、光沢性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0139】
前記(C)グラフト共重合体の製造方法は、好ましくは、i)アルキルアクリレート78~91重量%、芳香族ビニル化合物9~22重量%、架橋剤、開始剤及び乳化剤を含んでゴムコアを製造するステップと、ii)前記ゴムコアの存在下で、芳香族ビニル化合物65~80重量%、ビニルシアン化合物14~25重量%、アルキルアクリレート3~15重量%、架橋剤、開始剤及び乳化剤を含んでグラフト重合してグラフト共重合体を製造するステップとを含むことができ、このような場合、透明性、光沢性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0140】
前記i)及び/又はii)ステップで使用される架橋剤、開始剤、乳化剤の種類は、本記載の(A)グラフト共重合体の乳化重合ステップで使用された架橋剤、開始剤、乳化剤の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0141】
前記(A)グラフト共重合体と(C)グラフト共重合体の重量の総和は、(A)グラフト共重合体、(B)非グラフト共重合体及び(C)グラフト共重合体の合計100重量%を基準として、一例として10~90重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~60重量%であってもよく、この範囲内で、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるという利点がある。
【0142】
前記(A)グラフト共重合体と(C)グラフト共重合体の重量比(A:C)は、一例として5:5~8:2、好ましくは5.5:4.5~7.5:2.5、より好ましくは5.5:4.5~7:3、さらに好ましくは5.5:4.5~6.5:3.5であってもよく、この範囲内で、透明性、光沢性、耐熱性及び耐衝撃性がより一層優れるという利点がある。
【0143】
熱可塑性樹脂組成物
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、アセトンを加えた後、撹拌及び遠心分離し、不溶分であるゲル(gel)と可溶分であるゾル(sol)に分離して測定したゾルの屈折率とゲルの屈折率との差が0.006以下、より好ましくは0.004以下、さらに好ましくは0.003以下、より一層好ましくは0.002以下、特に好ましくは0.001~0.002であり、この範囲内で、透明性、光沢性及び耐候性がさらに改善される利点がある。
【0144】
本記載において、熱可塑性樹脂組成物のゾルとゲルの屈折率の差は、具体的に、熱可塑性樹脂組成物ペレット0.5gをアセトン30gを加えた後、常温にて210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、その後、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃にて18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶性物質であるゲル(gel)と、溶ける物質であるゾル(sol)とを分離する。これを、85℃で強制循環方式で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後、ゲルとゾルのそれぞれの屈折率をASTM D542に準拠して測定する。
【0145】
本記載において、屈折率は、具体的にASTM D542に準拠して、アッベ(Abbe)屈折計を用いて常温で測定する。
【0146】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物においてゾルの屈折率とゲルの屈折率との差を前記範囲内に制御することによって、透明性及び光沢性がさらに優れた樹脂組成物を提供する効果がある。
【0147】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D1003に準拠して厚さ3mmの射出試験片で測定したヘイズ(Haze)が10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、より一層好ましくは3%以下、特に好ましくは2.6%以下、特にさらに好ましくは2.4%以下、最も好ましくは2.1%以下、最も特に好ましくは0.5~2.1%であってもよく、この範囲内で、物性バランスが全て優れるという効果がある。
【0148】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D1003に準拠して厚さ0.15mmの押出試験片で測定したヘイズが3%以下、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2%以下、より一層好ましくは1.7%以下、特に好ましくは1.5%以下、特にさらに好ましくは0.5~1.5%であり、この範囲内で、物性バランスが全て優れるという効果がある。
【0149】
本記載において、ヘイズは、具体的にヘイズメーター(MURAKAMI社、HM-150)を用いて、厚さ3mmの射出試験片及び厚さ0.15mmの押出試験片のそれぞれに対してASTM D1003に準拠して測定し、ヘイズ値が小さいほど透明である。
【0150】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D2457に準拠して厚さ3mmの射出試験片で45°で測定した光沢度が122以上、より好ましくは130以上、さらに好ましくは140以上、より一層好ましくは145以上、特に好ましくは145~160であり、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0151】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D2457に準拠して厚さ0.15mmの押出試験片で60°で測定した光沢度が120以上、より好ましくは130以上、さらに好ましくは135以上、より一層好ましくは135~155であり、この範囲内で、物性バランスが全て優れるという効果がある。
【0152】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D256に準拠して厚さ1/4"の試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm以上、より好ましくは12kgf・cm/cm以上、さらに好ましくは14kgf・cm/cm以上、より一層好ましくは16kgf・cm/cm以上、特に好ましくは16~20kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、物性バランスが全て優れるという効果がある。
【0153】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、促進耐候性試験装置(Weather-o-meter、ATLAS社、Ci4000、キセノンアークランプ、Quartz(内側(inner))/S.Boro(外側(outer))フィルター、照射量(irradiance) 0.55W/m2 at 340nm)を用いてSAE J1960の条件で3,000時間放置した後、色差計で変色の程度を測定し、下記数式7で算出した耐候性(△E)が2.7以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.3以下、より一層好ましくは0.1~2.3であってもよく、この範囲内で、物性バランスが全て優れるという効果がある。
【0154】
前記△Eは、促進耐候性の実験前後の試験片をCIE LAB色座標系で測定したL、a及びb値の算術平均値であり、前記△E値が0に近いほど、耐候性に優れることを示す。
【0155】
【0156】
前記数式7において、L´、a´及びb´は、試験片をSAE J1960の条件で3,000時間放置した後に、CIE LAB色座標系でそれぞれ測定したL、a及びb値であり、L0、a0、b0は、放置前にCIE LAB色座標系でそれぞれ測定したL、a及びb値である。
【0157】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、滑剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0158】
前記滑剤は、一例として、エチレンビスステアロアミド、酸化ポリエチレンワックス、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアルアミド、及びステアリン酸からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、耐熱性及び流動性が改善される効果がある。
【0159】
前記滑剤は、(A)グラフト共重合体及び(B)非グラフト共重合体の合計100重量部に対して、一例として0.01~3重量部、好ましくは0.05~2重量部であってもよい。
【0160】
前記酸化防止剤は、一例として、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、またはこれらの混合を含むことができ、好ましくはフェノール系酸化防止剤であってもよく、この場合、押出工程時に熱による酸化を防止し、機械的物性及び耐熱性に優れるという効果がある。
【0161】
前記酸化防止剤は、(A)グラフト共重合体及び(B)非グラフト共重合体の合計100重量部に対して、一例として0.01~3重量部、好ましくは0.05~2重量部であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れながら、耐熱性が改善される効果がある。
【0162】
前記紫外線吸収剤は、一例として、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0163】
前記紫外線吸収剤は、(A)グラフト共重合体及び(B)非グラフト共重合体の合計100重量部に対して、一例として0.01~3重量部、好ましくは0.05~2重量部であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れながら、耐光性が改善される効果がある。
【0164】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、難燃剤、難燃補助剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、鎖延長剤、離型剤、顔料、染料、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、発煙抑制剤、無機充填剤、ガラス繊維、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0165】
前記添加剤は、一例として、(A)グラフト共重合体及び(B)非グラフト共重合体の合計100重量部に対して、それぞれ0.01~5重量部、好ましくは0.1~3重量部、より好ましくは0.1~1重量部であってもよく、この場合、物性の改善に優れ、製造コストが低いので経済性に優れるという効果がある。
【0166】
以下では、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びその組成物を含む成形品に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びその組成物を含む成形品を説明するにおいて、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容をすべて含む。
【0167】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を、180~300℃及び80~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含み、前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1及び数式2を同時に満たすことを特徴とする。このような場合、透明性、光沢性及び耐衝撃性がいずれも優れるという利点がある。
【0168】
[数式1]
180≦2×r2≦300
【0169】
[数式2]
25≦r2-r1≦45
【0170】
前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心から重合体シードまでの厚さ(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からゴムコアまでの厚さ(nm)である。
【0171】
前記混練及び押出するステップは、好ましくは、(C)ゴムコアの平均粒径が50~150nmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むことができ、より好ましくは、(C)平均粒径50~150nmであり、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んでなるゴムコアと、前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~80重量%、ビニルシアン化合物14~25重量%及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んでなるグラフトシェルとを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むことができ、このような場合、耐衝撃性に優れながら、透明性及び光沢度が大きく改善される効果がある。
【0172】
前記混練及び押出は、一例として、一軸押出機、二軸押出機、またはバンバリーミキサを通じて行われてもよく、この場合、組成物が均一に分散して相溶性に優れるという効果がある。
【0173】
前記混練及び押出は、一例として、バレル温度が180~300℃、好ましくは190~280℃、より好ましくは200~260℃である範囲内で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であると共に、十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという効果がある。
【0174】
前記混練及び押出は、一例として、スクリュー回転数が80~400rpm、好ましくは100~300rpm、より好ましくは150~250rpmである条件下で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であるので、工程効率に優れるという効果がある。
【0175】
前記押出を通じて収得された熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ペレタイザを用いてペレットとして製造され得る。
【0176】
さらに、前記樹脂組成物は、ブロー工程、射出工程などの成形工程を通じて、各種産業分野の成形品として製造され得る。
【0177】
成形品
本記載の成形品は、一例として、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことができ、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるので、透明性が要求される分野に高品質で適用可能であるという効果がある。
【0178】
前記成形品は、一例として射出成形品、フィルムまたはシートであってもよく、この場合、本記載の熱可塑性樹脂組成物によって、市場で要求される耐衝撃性、透明性、耐候性及び光沢性に対する品質よりも高品質で提供可能であるという利点がある。
【0179】
前記成形品は、自動車内装材、自動車外装材、建築資材、家電製品または医療用部品であってもよく、この場合、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるので、市場で要求される要求条件を全て満たすという利点がある。
【0180】
前記成形品の製造方法は、好ましくは、(A)アルキルアクリレート45~72重量%及び芳香族ビニル化合物28~55重量%を含んで重合されたシード、前記シードを囲み、アルキルアクリレート78~91重量%及び芳香族ビニル化合物9~22重量%を含んで重合されたゴムコア、及び前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物65~82重量%、ビニルシアン化合物12~30重量%及びアルキルアクリレート3~15重量%を含んで重合されたグラフトシェルを含む、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と;(B)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる非グラフト共重合体と;を、180~300℃及び80~400rpmの条件下で混練及び押出してペレットを製造するステップと;製造されたペレットを射出機又は押出機を用いて射出又は押出するステップと;を含み、前記(A)グラフト共重合体は、下記数式1及び数式2を同時に満たすことを特徴とし、この場合、透明性、光沢性、耐候性及び耐衝撃性がいずれも優れるので、透明性が要求される分野に高品質で適用可能であるという効果がある。
【0181】
[数式1]
180≦2×r2≦300
【0182】
[数式2]
25≦r2-r1≦45
【0183】
前記数式1及び数式2において、r1は、前記グラフト共重合体の中心から重合体シードまでの平均半径(nm)であり、r2は、前記グラフト共重合体の中心からゴムコアまでの平均半径(nm)である。
【0184】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0185】
[実施例]
実施例及び比較例で使用された物質は、次の通りである。
*(A)グラフト共重合体:下記実施例1~10及び比較例1~10で製造
*(B-1)SAMMA共重合体:メチルメタクリレート71重量%、スチレン22重量%及びアクリロニトリル7重量%を含んでなる、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルの非グラフト共重合体
*(B-2)SAN共重合体:スチレン-アクリロニトリルの非グラフト共重合体(スチレン73重量%、アクリロニトリル27重量%)
*(C)グラフト共重合体:ブチルアクリレート85重量%及びスチレン15重量%を含んでなり、平均粒径90nmであるゴムコアと、前記ゴムコアを囲み、スチレン72重量%、アクリロニトリル20重量%及びブチルアクリレート8重量%からなるグラフトシェルとを含むグラフト共重合体(ゴムコア45重量%、及びグラフトシェル55重量%)
*滑剤:SUNLUBE EBS(SUNKOO社)
*酸化防止剤:Songnox 1076(ソンウォン社)及びIrgafos 168(BASF社)
*紫外線吸収剤:Tinuvin 770(BASF社)、Tinuvin P(BASF社)
【0186】
実施例1
重合体シードとしてブチルアクリレート(以下、「BA」という)60重量%及びスチレン(以下、「SM」という)40重量%、ゴムコアとしてBA87重量%及びSM13重量%、及びグラフトシェルとしてSM72重量%、アクリロニトリル(以下、「AN」という)20重量%及びBA8重量%を含んで(A)アクリレート-スチレン-アクリロニトリルのグラフト共重合体を製造した。このとき、(A)グラフト共重合体は、重合体シード20重量%、ゴムコア40重量%及びグラフトシェル40重量%を含んでなる。
【0187】
製造された(A)グラフト共重合体50重量部と(B-1)SAMMA共重合体50重量部に、滑剤1重量部、酸化防止剤1重量部、及び紫外線安定剤0.6重量部を混合して、220℃及び200rpm下で混練及び押出してペレットを製造した。製造されたペレットを成形温度220℃で射出して、物性測定用射出試験片を作製し、また、製造されたペレットを220℃及び200rpmの条件下で一軸フィルム押出機を用いて押出して、物性測定用押出試験片を作製した。
【0188】
実施例2~4及び7~10
実施例1において、(A)グラフト共重合体を、下記表1及び表2に記載された成分及び含量で重合された(A)グラフト共重合体に変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0189】
実施例5
実施例1で製造された(A)グラフト共重合体50重量部を、(A)グラフト共重合体30重量部及び(C)グラフト共重合体20重量部に変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0190】
実施例6
実施例1で製造された(A)グラフト共重合体50重量部を、(A)グラフト共重合体35重量部及び(C)グラフト共重合体15重量部に変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0191】
比較例1~9
実施例1において、(A)グラフト共重合体を、下記表3及び表4に記載された成分及び含量で重合された(A)グラフト共重合体に変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0192】
比較例10
実施例1において、(B-1)SAMMA共重合体を(B-2)SAN共重合体に変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0193】
比較例11
透明なアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(LG化学社、TR557)を射出して物性測定用射出試験片を作製した。
【0194】
[試験例]
前記実施例1~10及び比較例1~11で製造されたペレット及び試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記表1~表4に示した。
*(A)グラフト共重合体のシード、コア、シェルの屈折率、及び(B)非グラフト共重合体の屈折率:下記数式3で算出した。
【0195】
[数式3]
RI=ΣWti×RIi
Wti=共重合体における各成分の重量分率(%)
RIi=共重合体の各成分の高分子の屈折率
【0196】
*重合体シード、ゴムコア及びグラフトシェルの平均粒径(nm):重合体シードの製造、ゴムコアの製造及びグラフトシェルの製造がそれぞれ完了した時点でサンプリングし、動的光散乱法(Dynamic light scattering)を用いて測定した。詳細には、粒子測定器(製品名:Nicomp380、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定した。このとき、具体的な測定例として、サンプルとして、総固形分含量35~50重量%であるラテックス0.1gを蒸留水で1,000~5,000倍希釈して準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(Dynamic light scattering)/強度(Intensity)300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nmとして測定した。
【0197】
参考に、r1は、シードの平均粒径を半分に割った値とし、r2は、シードを含むコアの平均粒径を半分に割った値とした。
【0198】
*アイゾット衝撃強度(IMP;kgf・cm/cm):ASTM D256に準拠して、厚さ1/4"の射出試験片で常温(20±5℃)にて測定した。
【0199】
*ヘイズ(Haze、%):厚さ3mmの射出試験片及び厚さ0.15mmの押出試験片のそれぞれをもって、ASTM D1003に準拠してヘイズを測定した。ヘイズが低いほど透明性に優れる。
【0200】
*射出試験片の光沢度:ASTM D2457に準拠して、厚さ3mmの射出試験片で45°で光沢度を測定した。
【0201】
*押出試験片の光沢度:ASTM D2457に準拠して、厚さ0.15mmの押出試験片で60°で測定した。
【0202】
*熱可塑性樹脂組成物においてゾル(sol)とゲル(gel)の屈折率の差:熱可塑性樹脂組成物ペレット0.5gをアセトン30gを加えた後、常温にて210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、その後、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃にて18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶性物質であるゲル(gel)と、溶ける物質であるゾル(sol)とを分離した。これを、85℃で強制循環方式で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後、ASTM D542に準拠して、アッベ(Abbe)屈折計を用いて常温(20±5℃)でそれぞれの屈折率を測定した後、これらの差を計算した。
【0203】
*耐候性(△E):促進耐候性試験装置(Weather-o-meter、ATLAS社、Ci4000、キセノンアークランプ、Quartz(内側(inner))/S.Boro(外側(outer))フィルター、照射量(irradiance) 0.55W/m2 at 340nm)を用いてSAE J1960の条件で3,000時間放置した後、色差計で変色の程度を測定し、下記数式7で△Eを算出した。下記の△Eは、促進耐候性の実験前後の試験片をCIE LAB色座標系で測定したL、a及びb値の算術平均値であり、△E値が0に近いほど、耐候性に優れることを示す。
【0204】
【0205】
前記数式7において、L´、a´及びb´は、試験片をSAE J1960の条件で3,000時間放置した後に、CIE LAB色座標系でそれぞれ測定したL、a及びb値であり、L0、a0、b0は、放置前にCIE LAB色座標系でそれぞれ測定したL、a及びb値である。
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
前記表1~表4に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~10)は、比較例1~11と比較して、衝撃強度、ヘイズ、耐候性及び光沢度がいずれも優れるという効果が確認できた。
【0211】
ここで、(C)グラフト共重合体を含む実施例5及び6は、衝撃強度に優れると共に、ヘイズ、光沢度及び耐候性がより優れていた。
【0212】
反面、(A)グラフト共重合体の重合体シードの組成比が本発明の範囲を外れた比較例1及び2は、シードの屈折率と(B-1)SAMMA共重合体の屈折率との差、及び熱可塑性樹脂組成物においてゾルとゲルの屈折率の差が大きいため、射出試験片及び押出試験片の両方でヘイズ及び光沢度だけでなく耐候性が低下し、比較例1は衝撃強度も低かった。
【0213】
また、(A)グラフト共重合体のゴムコアの組成比が本発明の範囲を外れた比較例3及び4は、(A)グラフト共重合体のゴムコアとグラフトシェルの屈折率の差、及び/又は熱可塑性樹脂組成物においてゾルとゲルの屈折率の差が大きいため、射出試験片及び押出試験片の両方でヘイズ及び光沢度が低下し、耐候性が低く、比較例4は衝撃強度も劣悪であった。
【0214】
また、(A)グラフト共重合体のグラフトシェルの構成が本発明の範囲を外れた比較例5及び6は、熱可塑性樹脂組成物においてゾルとゲルの屈折率の差、及び/又は(A)グラフト共重合体のゴムコアとグラフトシェルの屈折率の差が大きいため、射出試験片及び押出試験片の両方でヘイズ及び光沢度が低下し、耐候性も低かった。
【0215】
また、(A)グラフト共重合体のゴムコアの2×r2及びr2-r1が本発明の範囲を超える比較例7は、射出試験片及び押出試験片においてヘイズ及び/又は光沢度が低下した。
【0216】
また、(A)グラフト共重合体のゴムコアの2×r2及びr2-r1が本発明の範囲未満である比較例8は、衝撃強度が大幅に低かった。
【0217】
また、従来の技術のようにシード及びコアにブチルアクリレートのみを含み、シェルはスチレン及びアクリロニトリルを含んでなる比較例9は、(A)グラフト共重合体のコアとシェルの屈折率の差、(A)グラフト共重合体の重合体シードと(B-1)SAMMA共重合体との屈折率の差、及び熱可塑性樹脂組成物においてゾルとゲルの屈折率の差が大きいため、射出試験片及び押出試験片の両方でヘイズ及び光沢度が劣悪であった。
【0218】
また、(B-1)SAMMA共重合体を(B-2)SAN共重合体に変更した比較例10は、(A)グラフト共重合体の重合体シードと(B-2)SAN共重合体との屈折率の差が大きいため、射出試験片及び押出試験片の両方でヘイズ及び光沢度が低下し、耐候性が極めて劣悪であった。
【0219】
また、透明なアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂である比較例11は、耐候性が非常に不良であった。
【0220】
結論的に、本発明によって(A)アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を構成する重合体シード、コア及びシェルの構成および組成比を所定の範囲内に調整し、また、コアの屈折率とシェルの屈折率との差、及び(A)グラフト共重合体の重合体シードの屈折率と(B)非グラフト共重合体の屈折率との差を縮める場合、耐衝撃性に優れながらも、透明性及び光沢性に優れるという効果が確認できた。
【国際調査報告】