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特表2024-527252発現の増加した組み換えFVIIIバリアントをコードするウイルスベクターを用いた、血友病Aの遺伝子療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】発現の増加した組み換えFVIIIバリアントをコードするウイルスベクターを用いた、血友病Aの遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240717BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240717BHJP
   G01N 33/86 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240717BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20240717BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P7/04 ZNA
A61K35/76
A61P43/00 112
A61K31/573
G01N33/86
C12N15/12
C12N15/864 100Z
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576332
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2022055518
(87)【国際公開番号】W WO2022264040
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,386
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ロッテンシュタイナー ハンスペーター
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045AA25
4B065AA93Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA53
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA16
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA10
4C087NA14
4C087ZA53
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、数ある態様の中でも、哺乳動物細胞内での発現用に、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、哺乳動物の遺伝子療法用ベクター及び血友病Aを治療するための方法も提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、血友病A患者に、ポリヌクレオチド、例えば、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドを投与する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血友病Aを治療するための方法であって、血友病Aと診断されたヒト対象に、前記ヒト対象の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を静脈内注入することを含み、
前記AAV粒子が、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、前記方法。
【請求項2】
血友病Aを治療するための方法であって、血友病Aと診断されたヒト対象に、前記ヒト対象の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を静脈内注入することを含み、
前記AAV粒子が、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、前記方法。
【請求項3】
前記血友病Aと診断されたヒト対象に、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記AAV粒子の注入後に、前記1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与することが、
前記AAV粒子の注入直後の1週間目に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり60mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記AAV粒子の注入直後の2週間目に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり40mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記AAV粒子の注入直後の3週間目に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり30mg、前記ヒト対象に投与することと、
を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記AAV粒子の注入直後の3週間目の後に、漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与することが、
最初のクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの完了直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり20mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを20mg投与した前記5日間の直後の3日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり15mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを15mg投与した前記3日間の直後の3日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり10mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを10mg投与した前記3日間の直後の3日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり5mg、前記ヒト対象に投与することと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与することが、
最初のクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの完了直後の7日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり30mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを30mg投与した前記7日間の直後の7日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり20mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを20mg投与した前記7日間の直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり15mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを15mg投与した前記5日間の直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり10mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを10mg投与した前記5日間の直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり5mg、前記ヒト対象に投与することと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
血友病Aと診断されたヒト対象に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与した後、かつ、前記ヒト対象に、最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療を行っている最中に、前記ヒト対象から採取した血液試料中の、第1のレベルの第VIII因子活性を求めることと、
前記最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療の完了後に、前記ヒト対象から採取した血液試料中の、第2のレベルの第VIII因子活性を求めることと、
前記第2のレベルの第VIII因子活性を前記第1のレベルの第VIII因子活性と比較することと、
漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与することであって、
前記第2のレベルの第VIII因子活性が、前記第1のレベルの第VIII因子活性よりも低くないときには、第1の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを、3週間以内の期間にわたり投与し、
前記第2のレベルの第VIII因子活性が、前記第1のレベルの第VIII因子活性よりも低いときには、第2の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを、3週間を超える期間にわたり投与する、前記投与することと、
を含む、方法。
【請求項10】
血友病Aと診断されたヒト対象に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与する前に、前記ヒト対象から採取した血液試料中の、第1のレベルの肝臓酵素活性を求めることと、
第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むAAV粒子を前記ヒトに投与した後、かつ最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療を完了した後に、前記ヒト対象から採取した血液試料中の、第2のレベルの肝臓酵素活性を求めることと、
前記第2のレベルの肝臓酵素活性を前記第1のレベルの肝臓酵素活性と比較することと、
漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与することであって、
前記第2のレベルの肝臓酵素活性が、前記第1のレベルの肝臓酵素活性よりも高くないときには、第1の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを、3週間以内の期間にわたり投与し、
前記第2のレベルの肝臓酵素活性が、前記第1のレベルの第VIII因子活性よりも高いときには、第2の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを、3週間を超える期間にわたり投与する、前記投与することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与することが、
前記最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療の完了直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり20mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象にプレドニゾロンまたはプレドニゾンを20mg投与した前記5日間の直後の3日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり15mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを15mg投与した前記3日間の直後の3日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり10mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを10mg投与した前記3日間の直後の3日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり5mg、前記ヒト対象に投与することと、
含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与することが、
前記最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療の完了直後の7日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり30mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを30mg投与した前記7日間の直後の7日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり20mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを20mg投与した前記7日間の直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり15mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを15mg投与した前記5日間の直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり10mg、前記ヒト対象に投与することと、
前記ヒト対象に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを10mg投与した前記5日間の直後の5日間連続で、プレドニゾロンまたはプレドニゾンを1日当たり5mg、前記ヒト対象に投与することと、
を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を用いた血友病Aの第VIII因子遺伝子療法の有効性を、モニタリングするための方法であって、
前記AAV粒子をヒト対象に投与した後に、前記ヒト対象から採取した血液試料中に、第VIII因子阻害抗体が存在するかどうかを判断することと、
前記ヒト対象の血液中に、第VIII因子阻害物質の存在が検出されたら、血友病Aを治療するための代替薬を前記ヒト対象に投与することと、
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記代替薬が、化学修飾されたヒト第VIII因子タンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記代替薬が、ブタ第VIII因子タンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記代替薬が、第II因子、第IX因子及び第X因子を含む第VIII因子バイパス治療剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の、配列番号1またはその断片のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項18】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の、配列番号1またはその断片のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項19】
a)血友病A患者に、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の、前記第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはその断片のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項20】
前記それよりも後の時点が、7日である、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記それよりも後の時点が、14日である、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記それよりも後の時点が、21日である、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の前記カプシドタンパク質のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項24】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の前記カプシドタンパク質のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項25】
a)血友病A患者に、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、カプシドタンパク質と、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の前記カプシドタンパク質のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項26】
前記それよりも後の時点が、7日である、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記それよりも後の時点が、14日である、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記それよりも後の時点が、21日である、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗第VIII因子抗体のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項30】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗第VIII因子抗体のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項31】
a)血友病A患者に、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗第VIII因子抗体のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項32】
前記それよりも後の時点が、7日である、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記それよりも後の時点が、14日である、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記それよりも後の時点が、21日である、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項36】
a)血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項37】
a)血友病A患者に、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することであって、前記AAV粒子が、最初の時点に、カプシドタンパク質と、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む、前記投与することと、
b)それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のレベルを測定することであって、前記それよりも後の時点が、7日以上である、前記測定することと、
を含む方法。
【請求項38】
c)前記用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を前記患者に投与する前に、前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のベースラインレベルを測定することと、
d)任意に、前記それよりも後の時点における前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体の前記レベルの測定値を、前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体の前記ベースラインレベルと比較することと、
をさらに含む、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記それよりも後の時点が、7日である、請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記それよりも後の時点が、14日である、請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記それよりも後の時点が、21日である、請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
血友病Aと診断された対象に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法剤を投与した後に、前記対象から採取した第1の末梢血試料中の免疫原性媒介物質の第1のレベルを求めることによって、前記対象が、第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断することと、
前記対象が、前記第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしている場合には、第1の投与量のステロイドを前記対象に投与することと、
前記対象が、前記第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしていない場合には、前記第1の投与量の前記ステロイドよりも少ない第2の投与量の前記ステロイドを前記対象に投与することと、
を含む方法。
【請求項43】
前記対象が、前記第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断することが、前記免疫原性媒介物質の第1のレベルと、1人以上の健常な個体の末梢血中の前記媒介物質または免疫原性の基準レベルとを比較することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、前記第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断することが、前記免疫原性媒介物質の第1のレベルと、前記第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法剤を投与する前に、前記血友病Aと診断された対象から採取した第2の末梢血試料中の前記免疫原性媒介物質の第2のレベルとを比較することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、前記第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断することが、前記免疫原性媒介物質の第1のレベルと、前記第1の末梢血試料を採取する前、かつ前記第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法剤を投与した後に、前記血友病Aと診断された対象から採取した第2の末梢血試料中の前記免疫原性媒介物質の第2のレベルとを比較することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫原性媒介物質が、サイトカインである、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記サイトカインが、腫瘍壊死因子α(TNFα)またはインターロイキン6(IL-6)である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記サイトカインのレベルを酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって求める、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫原性媒介物質が、Toll様受容体(TLR)シグナル伝達経路の媒介物質である、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記TLRシグナル伝達経路の媒介物質が、CHUK、CXCL8、IFNA20P、IFNAR1、IFNAR2、IFNB1、INFE、IFNG、IFNG-AS1、IFNGR1、IFNGR2、IFNK、IFNL1、IFNL3P1、IFNL4、IFNLR1、IKBKB、IKBKE、IKBKG、IKBKGP1、IL10、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL6、IRF7、MYD88、NFKB1、NFKB2、NFKBIA、NKFBIB、NFKBIE、REL、RELA、RELB、TLR1、TLR10、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR8-AS1、TLR9及びTNFからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫原性媒介物質が、自然免疫シグナル伝達経路の媒介物質または抗ウイルスサイトカインである、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記自然免疫シグナル伝達経路の媒介物質または抗ウイルスサイトカインが、CCL5、CXCL1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNB1、IFNG、IFNK、IFNL3、IL10、IL15、IL18、IL22、IL6、LTA及びTNFからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記免疫原性媒介物質が、核因子κB(NF-κB)シグナル伝達経路の媒介物質である、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記NF-κBシグナル伝達経路の媒介物質が、BAX、BCL2、BCL2L1、CASP1、CASP7、CASP8、CASP9、TRAF1、TRAF2、CCR5、CCR7、CD4、CD40LG、CD44、CD80、CD83、CD86、CR2、HLA-A、ICOS、IL15RA、IL2RA、TNFRSF14、TNFRSF9、AKT1、EIF2AK2、LCK、MAP3K1、MAP3K14、RIPK1、RAF1、NFKB1、NFKB2、REL、RELA、RELB、TBP、CYLD、ILBKB、ILBKE、ILBKG、ILBKGP1、NFKBIA、NFKBIB、NFKBIE、CHUK、CCL1、CCL22、CCL4、CCL5、CXCL10、CXCL3、CXCL6、CXCL8、CXCR5、IFNB1、IFNG、IFNL1、IL12B、IL15、IL17A、IL1A、IL1RN、IL23A、IL32、IL4、IL5、IL6、IL9、TNFAIP3、TNFSF10、ICAM1、ITGA2、ITGA2B、ITGA5、ITGA6、ITGA6-AS1、PECAM1及びVCAM1からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含む、請求項42~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記遺伝子療法が、前記第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを前記対象に投与することを含む、請求項42~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記AAVベクターが、セロタイプ8AAVベクター(AAV8)である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記遺伝子療法が、前記第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、2×1012コピーの前記ポリヌクレオチド、6x1012コピーの前記ポリヌクレオチド、1.8×1013コピーの前記ポリヌクレオチド、1.2×1013コピーの前記ポリヌクレオチド及び5×1013コピーの前記ポリヌクレオチドからなる群から選択される用量で投与することを含む、請求項42~58のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月14日に出願した米国特許仮出願第63/210,386号に対する優先権を主張するものであり、その仮出願の開示内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本願には、ASCII形式で電子的に提出した配列表が含まれ、参照により、その全体が本明細書に援用される。2022年6月2日に作成した前記ASCIIコピーは、008073-5236-WO_Sequence_Listing_ST25.txtという名称であり、84,955キロバイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
本開示の背景
血液凝固は、相互依存的な生化学反応の複雑かつ動的な生物学的経路を進み、この経路は、凝固カスケードという。凝固第VIII因子(FVIII)は、このカスケードにおける重要な構成要素である。第VIII因子は、出血部位に動員され、活性化第IX因子(FIXa)及び第X因子(FX)とXase複合体を形成する。このXase複合体は、FXを活性化し、ひいては、プロトロンビンを活性化してトロンビンにし、続いて、凝固カスケード内の他の構成要素を活性化して、安定した血餅を生成する(Saenko et al.,Trends Cardiovasc.Med.,9:185-192(1999)(非特許文献1)、Lenting et al.,Blood,92:3983-3996(1998)(非特許文献2)で概説されている)。
【0004】
血友病Aは、第VIII因子活性の欠損を特徴とする先天的なX連鎖性出血障害である。第VIII因子活性の低下により、凝固カスケードにおけるポジティブフィードバックループが阻害される。これにより、凝固が不完全になり、長期にわたる出血エピソード、広範な挫傷、口腔及び鼻からの突発性出血、関節硬直及び慢性疼痛として顕在化し、重症例では、場合により内出血及び貧血として顕在化する(Zhang et al.,Clinic.Rev.Allerg.Immunol.,37:114-124(2009)(非特許文献3))。
【0005】
従来から、血友病Aは、第VIII因子補充療法によって治療されており、この療法は、第VIII因子タンパク質(例えば、血漿由来の第VIII因子または組み換え作製した第VIII因子)を、血友病Aの個体に投与することからなる。第VIII因子は、出血エピソードを予防するか、もしくは急性出血エピソードに応じて、その頻度を低下させるために予防的に投与されるか、及び/または手術中の出血を管理するために手術時に投与される。しかしながら、第VIII因子補充療法には、望ましくない特徴がいくつかある。
【0006】
第1に、第VIII因子補充療法は、血友病Aを治療または管理する目的で用いられるが、その根底にある、第VIII因子の欠乏は治癒させない。このため、血友病Aの個体は、生涯にわたって第VIII因子補充療法を必要とする。継続的な治療にはお金がかかり、その個体には、厳格なコンプライアンスの維持が求められる。重度の血友病Aの個体では、予防的投与を数回逃しただけで、深刻な結果がもたらされる可能性があるからである。
【0007】
第2に、第VIII因子は、生体内での半減期が比較的短いため、従来の予防的な第VIII因子補充療法では、2~3日ごとに投与が必要となる。これは、その個体が、生涯にわたってコンプライアンスを維持する上での負担となる。第3世代の「長時間作用型」の第VIII因子薬は、投与頻度を低下できるが、これらの薬物を用いた予防的な第FVIII因子補充療法でも、毎月、毎週、またはより高頻度の投与が、一生涯必要となる。例えば、ELOCTATE(商標)[抗血友病因子(組み換え型)-Fc融合タンパク質]による予防的な治療では、3~5日ごとの投与が必要となる(ELOCTATE(商標)の処方情報、Biogen Idec Inc.,(2015)(非特許文献4))。さらに、化学修飾された生物製剤(例えばPEG化ポリペプチド)の長期作用は、まだ完全には理解されていない。
【0008】
第3に、第VIII因子補充療法を受けている全個体の15%~30%において、抗第VIII因子阻害抗体が形成され、その療法を無効にする。阻害抗体を形成する個体における血友病を治療するために、第VIII因子バイパス療法(例えば、血漿由来であるかまたは組み換え作製したプロトロンビン複合体濃縮製剤の投与)を用いることができる。しかしながら、第VIII因子バイパス療法は、第VIII因子補充療法よりも効果が低く(Mannucci,J.Thromb.Haemost.,1(7):1349-55(2003)(非特許文献5))、心血管合併症リスクの増加と関連し得る(Luu and Ewenstein,Haemophilia,10 Suppl.2:10-16(2004)(非特許文献6))。
【0009】
体細胞遺伝子療法は、1回用量の第VIII因子活性を個体に供給するのではなく、根底にある、機能的第VIII因子活性の過少発現(例えば、ミスセンス変異またはナンセンス変異に起因する)を改善することになるため、血友病Aの治療における有望性が高い。第VIII因子補充療法と比べて、作用機序がこのように異なるため、第VIII因子遺伝子療法用ベクターの1回投与により、個体に、第VIII因子を数年にわたって供給することができ、治療コストが削減されるとともに、患者コンプライアンスを持続する必要性がなくなる。
【0010】
凝固第IX因子(FIX)遺伝子療法は、第IX因子活性の減弱を特徴とする関連血液凝固病態である血友病Bである個体を治療するために、効果的に用いられてきている(Manno et al.,Nat.Med.,12(3):342-47(2006)(非特許文献7))。しかしながら、第VIII因子遺伝子療法には、特有の課題がいくつかある。例えば、完全長の野生型第VIII因子ポリペプチド(2351アミノ酸、UniProtアクセッション番号P00451)は、完全長の野生型第IX因子のポリペプチド(461アミノ酸、UniProtアクセッション番号P00740)よりも5倍大きい。したがって、野生型第VIII因子のコード配列は、7053塩基対であり、これは、従来のAAV遺伝子療法用ベクターにパッケージングするには大きすぎる。さらに、Bドメインが欠失された第VIII因子バリアント(BDD-FVIII)の組み換え発現の報告値は、不十分である。したがって、いくつかのグループが、BDD-FVIIIコンストラクトのコドン使用頻度を変更しようと試みているが、成功は限られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Saenko et al.,Trends Cardiovasc.Med.,9:185-192(1999)
【非特許文献2】Lenting et al.,Blood,92:3983-3996(1998)
【非特許文献3】Zhang et al.,Clinic.Rev.Allerg.Immunol.,37:114-124(2009)
【非特許文献4】ELOCTATE(商標)の処方情報、Biogen Idec Inc.,(2015)
【非特許文献5】Mannucci,J.Thromb.Haemost.,1(7):1349-55(2003)
【非特許文献6】Luu and Ewenstein,Haemophilia,10 Suppl.2:10-16(2004)
【非特許文献7】Manno et al.,Nat.Med.,12(3):342-47(2006)
【発明の概要】
【0012】
開示の概要
したがって、そのコード配列が遺伝子療法用ベクターにさらに効率的にパッケージングされ、遺伝子療法用ベクターを介して送達される第VIII因子バリアントに対するニーズが存在する。第VIII因子をさらに効率的に発現するコドン変更型合成核酸に対するニーズも存在する。このような第VIII因子バリアント及びコドン変更型核酸により、第VIII因子欠乏(例えば血友病A)の治療の改善が可能になる。上記の欠乏、及び第VIII因子欠乏(例えば血友病A)の治療と関連するその他の問題は、開示されているコドン変更型第VIII因子バリアントによって低減または排除される。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、第VIII因子重鎖(例えばCS04-HC-NA)及び軽鎖(例えばCS04-LC-NA)からなる、開示されているコドン変更型配列との配列同一性が高い第VIII因子バリアントをコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態では、これらの核酸は、第VIII因子の重鎖及び軽鎖をコードする配列間の天然型の第VIII因子Bドメインに置き換わるリンカー配列(例えば、フューリン切断部位を含むリンカー配列)をコードする配列をさらに含む。
【0014】
一態様では、本開示は、第VIII因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。その第VIII因子ポリペプチドは、軽鎖、重鎖、及び重鎖のC末端を軽鎖のN末端につなぎ合わせるポリペプチドリンカーを含む。その第VIII因子ポリペプチドの重鎖は、CS04-HC-NA(配列番号3)との同一性が少なくとも95%である第1のヌクレオチド配列によってコードされる。その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖は、CS04-LC-NA(配列番号4)との同一性が少なくとも95%である第2のヌクレオチド配列によってコードされる。そのポリペプチドリンカーは、フューリン切断部位を含む。
【0015】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、ポリペプチドリンカーは、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも95%である第3のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0016】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、その第VIII因子ポリペプチドの重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列は、それぞれの重鎖配列(例えばCS04-HC-NA(配列番号3))との同一性が少なくとも96%であり、その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列は、それぞれの軽鎖配列(例えばCS04-LC-NA(配列番号4))との同一性が少なくとも96%である。
【0017】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、その第VIII因子ポリペプチドの重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列は、それぞれの重鎖配列(例えばCS04-HC-NA(配列番号3))との同一性が少なくとも97%であり、その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列は、それぞれの軽鎖配列(例えばCS04-LC-NA(配列番号4))との同一性が少なくとも97%である。
【0018】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、その第VIII因子ポリペプチドの重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列は、それぞれの重鎖配列(例えばCS04-HC-NA(配列番号3))との同一性が少なくとも98%であり、その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列は、それぞれの軽鎖配列(例えばCS04-LC-NA(配列番号4))との同一性が少なくとも98%である。
【0019】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、その第VIII因子ポリペプチドの重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列は、それぞれの重鎖配列(例えばCS04-HC-NA(配列番号3))との同一性が少なくとも99%であり、その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列は、それぞれの軽鎖配列(例えばCS04-LC-NA(配列番号4))との同一性が少なくとも99%である。
【0020】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、その第VIII因子ポリペプチドの重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列は、それぞれの重鎖配列(例えばCS04-HC-NA(配列番号3))との同一性が少なくとも99.5%であり、その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列は、それぞれの軽鎖配列(例えばCS04-LC-NA(配列番号4))との同一性が少なくとも99.5%である。
【0021】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、その第VIII因子ポリペプチドの重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列は、それぞれの重鎖配列(例えばCS04-HC-NA(配列番号3))との同一性が少なくとも99.9%であり、その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列は、それぞれの軽鎖配列(例えばCS04-LC-NA(配列番号4))との同一性が少なくとも99.9%である。
【0022】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、その第VIII因子ポリペプチドの重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)であり、その第FVIII因子ポリペプチドの軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)である。
【0023】
一態様では、本開示は、CS04-FL-NAとの同一性が少なくとも95%であるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供し、そのポリヌクレオチドは、第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0024】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、それぞれの完全長ポリヌクレオチド配列(例えばCS04-FL-NA(配列番号1))との同一性が少なくとも96%である。
【0025】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、それぞれの完全長ポリヌクレオチド配列(例えばCS04-FL-NA(配列番号1))との同一性が少なくとも97%である。
【0026】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、それぞれの完全長ポリヌクレオチド配列(例えばCS04-FL-NA(配列番号1))との同一性が少なくとも98%である。
【0027】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、それぞれの完全長ポリヌクレオチド配列(例えばCS04-FL-NA(配列番号1))との同一性が少なくとも99%である。
【0028】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、それぞれの完全長ポリヌクレオチド配列(例えばCS04-FL-NA(配列番号1))との同一性が少なくとも99.5%である。
【0029】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、それぞれの完全長ポリヌクレオチド配列(例えばCS04-FL-NA(配列番号1))との同一性が少なくとも99.9%である。
【0030】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)である。
【0031】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリペプチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも95%であるアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリヌクレオチドをコードする。
【0032】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0033】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも97%であるアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0034】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0035】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99%であるアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0036】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.5%であるアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0037】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.9%であるアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0038】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CS04-FL-AA(配列番号2)のアミノ酸配列を含む第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0039】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択した配列との同一性が少なくとも95%である。
【0040】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択した配列との同一性が少なくとも96%である。
【0041】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択した配列との同一性が少なくとも97%である。
【0042】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択した配列との同一性が少なくとも98%である。
【0043】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択した配列との同一性が少なくとも99%である。
【0044】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択した配列との同一性が少なくとも99.5%である。
【0045】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択した配列との同一性が少なくとも99.5%である。
【0046】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA、CS04-HC-NA及びCS04-LC-NAからなる群から選択されている。
【0047】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、その第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能可能に連結されたプロモーターエレメントも含む。
【0048】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、その第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能可能に連結されたエンハンサーエレメントも含む。
【0049】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、その第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能可能に連結されたポリアデニル化エレメントも含む。
【0050】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、その第VIII因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に機能可能に連結されたイントロンも含む。
【0051】
上記のポリヌクレオチドの一実施形態では、そのイントロンは、プロモーターエレメントと、第VIII因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の翻訳開始部位(例えば第1のコーディングATG)の間に位置する。
【0052】
別の態様では、本開示は、上記のようなポリヌクレオチドを含む、哺乳動物の遺伝子療法用ベクターを提供する。
【0053】
上記のような、哺乳動物の遺伝子療法用ベクターの一実施形態では、その哺乳動物の遺伝子療法用ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0054】
上記のような、哺乳動物の遺伝子療法用ベクターの一実施形態では、そのAAVベクターは、AAV-8ベクターである。
【0055】
別の態様では、本開示は、血友病Aを治療する方法であって、それを必要とする患者に、上記のような、哺乳動物の遺伝子療法用ベクターを投与することを含む方法を提供する。
【0056】
別の態様では、本開示は、血友病Aを治療するために、上記のような、哺乳動物の遺伝子療法用ベクターを提供する。
【0057】
別の態様では、本開示は、血友病Aを治療するための医薬の製造における、上記のような、哺乳動物の遺伝子療法用ベクターの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】野生型及びReFacto型のヒト第VIII因子タンパク質コンストラクトの概略図を示す。
図2A】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS04の配列(配列番号1)(完全長コード配列「CS04-FL-NA」)を示す。
図2B】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS04の配列(配列番号1)(完全長コード配列「CS04-FL-NA」)を示す。
図3】いくつかの実施形態に従って、コドン変更型ヌクレオチドCS04の配列によってコードされる第VIII因子バリアントのアミノ酸配列(配列番号2)(完全長アミノ酸配列「CS04-FL-AA」)を示す。
図4】いくつかの実施形態に従って、コドン変更型ヌクレオチドCS04の配列のうち、第VIII因子バリアントの重鎖をコードする部分(配列番号3)(「CS04-HC-NA」)を示す。
図5】いくつかの実施形態に従って、コドン変更型ヌクレオチドCS04の配列のうち、第VIII因子バリアントの軽鎖をコードする部分(配列番号4)(「CS04-LC-NA」)を示す。
図6】いくつかの実施形態によるBドメイン置換リンカーの例示的なコード配列(配列番号5)を示す。BDLO04(配列番号5)は、コドン変更型ヌクレオチドCS04の配列のうち、Bドメイン置換リンカーをコードするそれぞれの部分である。
図7A】いくつかの実施形態に従って、コドン変更型ヌクレオチドCS04の配列を含むAAVベクターの配列(配列番号6)(「CS04-AV-NA」)を示す。
図7B】いくつかの実施形態に従って、コドン変更型ヌクレオチドCS04の配列を含むAAVベクターの配列(配列番号6)(「CS04-AV-NA」)を示す。
図7C】いくつかの実施形態に従って、コドン変更型ヌクレオチドCS04の配列を含むAAVベクターの配列(配列番号6)(「CS04-AV-NA」)を示す。
図8A】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS08の配列(配列番号7)(「CS08-FL-NA」)を示す。
図8B】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS08の配列(配列番号7)(「CS08-FL-NA」)を示す。
図9A】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS10の配列(配列番号8)(「CS10-FL-NA」)を示す。
図9B】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS10の配列(配列番号8)(「CS10-FL-NA」)を示す。
図10A】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS11の配列(配列番号9)(「CS11-FL-NA」)を示す。
図10B】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCS11の配列(配列番号9)(「CS11-FL-NA」)を示す。
図11A】いくつかの実施形態による、野生型ReFacto CS40のコード配列(配列番号10)(「CS40-FL-NA」)を示す。
図11B】いくつかの実施形態による、野生型ReFacto CS40のコード配列(配列番号10)(「CS40-FL-NA」)を示す。
図12A】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCH25の配列(配列番号11)(「CH25-FL-NA」)を示す。
図12B】いくつかの実施形態に従って、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ヌクレオチドCH25の配列(配列番号11)(「CH25-FL-NA」)を示す。
図13】いくつかの実施形態による、野生型ヒト第VIII因子のアミノ酸配列(配列番号12)(「FVIII-FL-AA」)を示す。
図14】AscI及びNotI制限部位を介して、ReFacto型の合成BDD-FVIII DNA配列をベクター骨格pCh-BB01に挿入することによって、pCS40、pCS04、pCS08、pCS10、pCS11及びpCh25のコンストラクトをクローニングするスキームを例示する。
図15】AAVベクターゲノムの調製物の完全性をアガロースゲル電気泳動によって解析したものを示す。レーン1は、DNAマーカーであり、レーン2は、vCS40であり、レーン4は、vCS04である。これらのAAVベクターはいずれも、サイズが同じゲノムを有し、およそ5kb(右側の矢印)の位置まで移動している。左側の目盛りは、DNA断片のサイズをキロベース(kb)で示す。
図16】AAVベクターの調製物をPAGE及び銀染色によってタンパク質解析したものを示す。レーン1は、タンパク質マーカー(M)であり、レーン2は、vCS40であり、レーン4は、vCS04である。これらのコンストラクトはいずれも、VP1、VP2及びVP3(右側の矢印)からなる同じAAV8カプシドを有する。左側の目盛りは、タンパク質マーカーのサイズをキロダルトン(kDa)で示す。
図17】実施例3に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを全身投与した後のFVIII活性を示す。cpは、ベクターカプシド粒子、FVIIIは、第VIII因子、LLOQは、定量下限である。グラフには、14日目、28日目、42日目及び56日目の時点が、左から右に示されている。
図18】実施例3に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを全身投与した後の尾先端出血アッセイにおける失血の減少を示す。cpは、ベクターカプシド粒子である。
図19A】コドン最適化された第VIII因子コンストラクトDNA CS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターの全身投与後の生体内分布を示す。1902は肝臓、1904はリンパ節、1906は骨格筋、1908は心臓、1910は腎臓、1912は脾臓、1914は肺、1916は精巣、1918は脳である。
図19B】コドン最適化された第VIII因子コンストラクトDNA CS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターの全身投与後の生体内分布を示す。1902は肝臓、1904はリンパ節、1906は骨格筋、1908は心臓、1910は腎臓、1912は脾臓、1914は肺、1916は精巣、1918は脳である。
図19C】コドン最適化された第VIII因子コンストラクトDNA CS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターの全身投与後の生体内分布を示す。1902は肝臓、1904はリンパ節、1906は骨格筋、1908は心臓、1910は腎臓、1912は脾臓、1914は肺、1916は精巣、1918は脳である。
図20A】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の血中の経時的な第VIII因子活性を例示する。
図20B】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の血中の経時的な第VIII因子活性を例示する。
図20C】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の血中の経時的な第VIII因子活性を例示する。
図20D】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の血中の経時的な第VIII因子活性を例示する。
図21】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の4人の血友病A患者の末梢血中の経時的なTNFa及びIL-6のレベルを示す。
図22A】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の4人の血友病A患者の末梢血中のAAV8中和抗体の経時的な力価を例示する。
図22B】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の4人の血友病A患者の末梢血中の抗AAV8 IgM及び抗AAV8 IgGの経時的な結合力価を例示する。
図23A】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中のAAV抗原及びFVIII-BDD抗原に対する経時的なT細胞応答に関するELISpotアッセイの結果を例示する。
図23B】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中のAAV抗原及びFVIII-BDD抗原に対する経時的なT細胞応答に関するELISpotアッセイの結果を例示する。
図23C】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中のAAV抗原及びFVIII-BDD抗原に対する経時的なT細胞応答に関するELISpotアッセイの結果を例示する。
図23D】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中のAAV抗原及びFVIII-BDD抗原に対する経時的なT細胞応答に関するELISpotアッセイの結果を例示する。
図24】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の4人の血友病A患者の様々な免疫原性経路における経時的な遺伝子発現パターンを評価するのに用いたトランスクリプトミクス解析のワークフローを例示する。
図25A】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中のTLRを介した、MyD88依存性及びMyD88非依存性の免疫活性化経路における経時的な発現パターンを例示する。
図25B】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中のTLRを介した、MyD88依存性及びMyD88非依存性の免疫活性化経路における経時的な発現パターンを例示する。
図25C】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中のTLRを介した、MyD88依存性及びMyD88非依存性の免疫活性化経路における経時的な発現パターンを例示する。
図25D】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の健常コントロールの末梢血中のTLRを介した、MyD88依存性及びMyD88非依存性の免疫活性化経路における経時的な発現パターンを例示する。
図26A】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中の自然免疫シグナル伝達及び抗ウイルスサイトカインの応答の際の経時的な発現パターンを例示する。
図26B】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中の自然免疫シグナル伝達及び抗ウイルスサイトカインの応答の際の経時的な発現パターンを例示する。
図26C】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中の自然免疫シグナル伝達及び抗ウイルスサイトカインの応答の際の経時的な発現パターンを例示する。
図26D】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の健常コントロールの末梢血中の自然免疫シグナル伝達及び抗ウイルスサイトカインの応答の際の経時的な発現パターンを例示する。
図27A】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中の古典的及び非古典的なNFκBシグナル伝達経路における経時的な発現パターンを例示する。
図27B】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中の古典的及び非古典的なNFκBシグナル伝達経路における経時的な発現パターンを例示する。
図27C】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の血友病A患者の末梢血中の古典的及び非古典的なNFκBシグナル伝達経路における経時的な発現パターンを例示する。
図27D】実施例5に記載されているように、コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターを投与した後の健常コントロールの末梢血中の古典的及び非古典的なNFκBシグナル伝達経路における経時的な発現パターンを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
開示の詳細な説明
I.序論
AAVベースの遺伝子療法は、血友病の治療において有望性が高い。血友病Bでは、第1の臨床データは、少なくとも一部の患者において、1年超にわたり、約10%のFIXレベルを維持できるという点で、有望である。しかしながら、血友病Aでは、AAVベクターにより、治療効果のある5~10%の発現レベルを達成するのは、様々な理由から、依然として困難なままである。第1に、第VIII因子のコード配列は、従来のAAVベースのベクターには大きすぎる。第2に、Bドメインが欠失またはトランケートされた操作済みの第VIII因子コンストラクトは、コドンを最適化しても、in vivoで発現不良をきたす。第3に、Bドメインが欠失またはトランケートされたこれらの第VIII因子バリアントコンストラクトは、in vivo半減期が短く、発現不良の作用が悪化する。第4に、FVIIIは、発現しても、第IX因子のような他の凝固因子のようには、細胞から効率的には分泌されない。したがって、血友病A患者にとって、FVIII遺伝子療法を実用的な治療選択肢とするには、FVIIIの発現を改善する方策が必要である。
【0060】
本開示は、第VIII因子遺伝子療法に関連するこれらの問題及びその他の問題を解決する、コドン変更型の第VIII因子バリアントコード配列の発見に関するものである。例えば、本明細書に開示されているポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞での発現を著しく改善させるとともに、パッキング相互作用の安定化により、ビリオンのパッケージング量を改善させる。いくつかの実施態様では、これらの利点は、第VIII因子の重鎖及び軽鎖のコード配列であって、コドン変更型のCS04コンストラクトとの配列同一性が高い(例えば、CS04-HC重鎖コード配列との配列同一性が高く、かつCS04-LC軽鎖コード配列との配列同一性が高い)コード配列を用いることによって実現される。
【0061】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載されているポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子分子は、その野生型Bドメインをトランケートするか、欠失させるか、または置き換えることによって、短縮されている。すなわち、そのポリヌクレオチドは、野生型第VIII因子などのより大きいポリペプチドを非効率的に発現する従来の遺伝子療法用ベクターを介して第VIII因子を発現させるのに、より適している。
【0062】
有益なことに、本明細書では、コドン変更型の第VIII因子バリアントコード配列CS04により、Bドメインが欠失された第VIII因子コンストラクトをin vivoで高度に発現させることが示されている。例えば、実施例2及び表4では、第VIII因子ノックアウトマウスにおいて、CS04のコード配列(配列番号1)を有するAAVベースの遺伝子療法用ベクターの静脈内投与により、第VIII因子の発現が、野生型ポリヌクレオチド配列(配列番号17)によってコードされる対応するCS40コンストラクトと比べて、74倍増加することが示されている(表4)。
【0063】
さらに、本明細書には、コドン変更型の第VIII因子バリアントCS04のコード配列が、ビリオンパッケージング量及びウイルス産生量に優れることも示されている。例えば、実施例1では、CS04コンストラクトを含むAAVベクターコンストラクトは、ウイルス収量が、野生型ポリヌクレオチド配列によってコードされる対応するCS40コンストラクトと比べて、同じ量の細胞ペレットを単離したときに、5~7倍多かったことが示されている。
【0064】
II.定義
本明細書で使用する場合、別段の記載のない限り、以下の用語は、それらに与えられた意味を有する。
【0065】
本明細書で使用する場合、「第VIII因子」及び「FVIII」という用語は、同義的に用いられており、第VIII因子活性を有する任意のタンパク質(例えば、活性なFVIII、FVIIIaと称される場合が多い)、または第VIII因子活性、特に第IXa因子の補因子活性を有するタンパク質のタンパク質前駆体(例えば、プロタンパク質もしくはプレプロタンパク質)を指す。例示的な実施形態では、第VIII因子ポリペプチドは、野生型第VIII因子ポリペプチドの重鎖及び軽鎖との配列同一性が高い(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%以上である)配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのサイズを低減するために、第VIII因子ポリペプチドのBドメインが、欠失されているか、トランケートされているか、またはリンカーポリペプチドに置き換えられている。例示的な実施形態では、CS04-FL-AAの20~1457番目のアミノ酸が、第VIII因子ポリペプチドを構成する。
【0066】
野生型第VIII因子ポリペプチドの非限定的な例としては、ヒトプレプロ第VIII因子(例えば、GenBankアクセッション番号AAA52485、CAA25619、AAA58466、AAA52484、AAA52420、AAV85964、BAF82636、BAG36452、CAI41660、CAI41666、CAI41672、CAI43241、CAO03404、EAW72645、AAH22513、AAH64380、AAH98389、AAI11968、AAI11970またはAAB61261)、対応するプロ第VIII因子及びその天然のバリアント、ブタプレプロ第VIII因子(例えば、UniProtアクセッション番号F1RZ36またはK7GSZ5)、対応するプロ第VIII因子及びその天然のバリアント、マウスプレプロ第VIII因子(例えば、GenBankアクセッション番号AAA37385、CAM15581、CAM26492またはEDL29229)、対応するプロ第VIII因子及びその天然のバリアント、ラットプレプロ第VIII因子(例えば、GenBankアクセッション番号AAQ21580)、対応するプロ第VIII因子及びその天然のバリアント、ラットプレプロ第VIII因子、ならびにその他の哺乳動物の第VIII因子ホモログ(例えば、サル、類人猿、ハムスター、モルモットなど)が挙げられる。
【0067】
本明細書で使用する場合、第VIII因子ポリペプチドは、天然のバリアント、及び第IX因子補因子活性を有する人工のコンストラクトを含む。本開示で使用する場合、第VIII因子には、任意の天然のバリアント、代替配列、アイソフォーム、または多少の基礎的な第IX因子補因子活性(例えば、対応する野生型活性の少なくとも5%、10%、25%、50%もしくは75%以上)を保持する変異体タンパク質が含まれる。(FVIII-FL-AA(配列番号19)に対する、)第VIII因子のアミノ酸バリエーションのうち、ヒト集団で見られるバリエーションの例としては、S19R、R22T、Y24C、Y25C、L26P/R、E30V、W33G、Y35C/H、G41C、R48C/K、K67E/N、L69P、E72K、D75E/V/Y、P83R、G89D/V、G92A/V、A97P、E98K、V99D、D101G/H/V、V104D、K108T、M110V、A111T/V、H113R/Y、L117F/R、G121S、E129V、G130R、E132D、Y133C、D135G/Y、T137A/I、S138R、E141K、D145H、V147D、Y155H、V159A、N163K、G164D/V、P165S、C172W、S176P、S179P、V181E/M、K185T、D186G/N/Y、S189L、L191F、G193R、L195P、C198G、S202N/R、F214V、L217H、A219D/T、V220G、D222V、E223K、G224W、T252I、V253F、N254I、G255V、L261P、P262L、G263S、G266F、C267Y、W274C、H275L、G278R、G280D、E284K、V285G、E291G/K、T294I、F295L、V297A、N299I、R301C/H/L、A303E/P、I307S、S308L、F312S、T314A/I、A315V、G323E、L326P、L327P/V、C329F、I331V、M339T、E340K、V345A/L、C348R/S/Y、Y365C、R391C/H/P、S392L/P、A394S、W401G、I405F/S、E409G、W412G/R、K427I、L431F/S、R437P/W、I438F、G439D/S/V、Y442C、K444R、Y450D/N、T454I、F455C、G466E、P470L/R/T、G474E/R/V、E475K、G477V、D478N、T479R、F484C、A488G、R490G、Y492C/H、Y492H、I494T、P496R、G498R、R503H、G513S/V、I522Y、K529E、W532G、P540T、T541S、D544N、R546W、R550C/G/H、S553P、S554C/G、V556D、R560T、D561G/H/Y、I567T、P569R、S577F、V578A、D579A/H、N583S、Q584H/K/R、I585R/T、M586V、D588G/Y、L594Q、S596P、N601D/K、R602G、S603I/R、W604C、Y605H/S、N609I、R612C、N631K/S、M633I、S635N、N637D/I/S、Y639C、L644V、L650F、V653A/M、L659P、A663V、Q664P、F677L、M681I、V682F、Y683C/N、T686R、F698L、M699T/V、M701I、G705V、G710W、N713I、R717L/W、G720D/S、M721I/L、A723T、L725Q、V727F、E739K、Y742C、R795G、P947R、V1012L、E1057K、H1066Y、D1260E、K1289Q、Q1336K、N1460K、L1481P、A1610S、I1698T、Y1699C/F、E1701K、Q1705H、R1708C/H、T1714S、R1715G、A1720V、E1723K、D1727V、Y1728C、R1740G、K1751Q、F1762L、R1768H、G1769R、L1771P、L1775F/V、L1777P、G1779E/R、P1780L、I1782R、D1788H、M1791T、A1798P、S1799H、R1800C/G/H、P1801A、Y1802C、S1803Y、F1804S、L1808F、M1842I、P1844S、T1845P、E1848G、A1853T/V、S1858C、K1864E、D1865N/Y、H1867P/R、G1869D/V、G1872E、P1873R、L1875P、V1876L、C1877R/Y、L1882P、R1888I、E1894G、I1901F、E1904D/K、S1907C/R、W1908L、Y1909C、A1939T/V、N1941D/S、G1942A、M1945V、L1951F、R1960L/Q、L1963P、S1965I、M1966I/V、G1967D、S1968R、N1971T、H1973L、G1979V、H1980P/Y、F1982I、R1985Q、L1994P、Y1998C、G2000A、T2004R、M2007I、G2013R、W2015C、R2016P/W、E2018G、G2022D、G2028R、S2030N、V2035A、Y2036C、N2038S、2040Y、G2045E/V、I2051S、I2056N、A2058P、W2065R、P2067L、A2070V、S2082N、S2088F、D2093G/Y、H2101D、T2105N、Q2106E/P/R、G2107S、R2109C、I2117F/S、Q2119R、F2120C/L、Y2124C、R2135P、S2138Y、T2141N、M2143V、F2145C、N2148S、N2157D、P2162L、R2169C/H、P2172L/Q/R、T2173A/I、H2174D、R2178C/H/L、R2182C/H/P、M2183R/V、L2185S/W、S2192I、C2193G、P2196R、G2198V、E2200D、I2204T、I2209N、A2211P、A2220P、P2224L、R2228G/L/P/Q、L2229F、V2242M、W2248C/S、V2251A/E、M2257V、T2264A、Q2265R、F2279C/I、I2281T、D2286G、W2290L、G2304V、D2307A、P2319L/S、R2323C/G/H/L、R2326G/L/P/Q、Q2330P、W2332R、I2336F、R2339T、G2344C/D/S及びC2345S/Yが挙げられるが、これらに限らない。第VIII因子タンパク質には、翻訳後修飾を含むポリペプチドも含まれる。
【0068】
概して、第VIII因子をコードするポリヌクレオチドは、翻訳後プロセシングを受けると、活性な第VIII因子タンパク質(例えばFVIIIa)を形成する、不活性な一本鎖ポリペプチド(例えばプレプロタンパク質)をコードする。例えば、図1を参照すると、野生型のヒト第VIII因子プレプロタンパク質が最初に切断されて、コードされたシグナルペプチド(図示なし)が放出されて、第1の一本鎖プロタンパク質(「ヒト野生型FVIII」として示されている)が形成される。続いて、そのプロタンパク質が、BドメインとA3ドメインの間で切断されて、第VIII因子重鎖(例えば、A1ドメイン及びA2ドメイン)とBドメインとを含む第1のポリペプチドと、第VIII因子軽鎖(例えば、A3ドメイン、C1ドメイン及びC3ドメインを含む)を含む第2のポリペプチドが形成される。その第1のポリペプチドがさらに切断されて、Bドメインが除去されるとともに、A1ドメイン及びA2ドメインも分離されるが、これらのドメインは、成熟した第VIIIa因子タンパク質では、第VIII因子軽鎖と結合したままである。第VIII因子の成熟プロセスの概説については、Graw et al.,Nat.Rev.Genet.,6(6):488-501(2005)(その内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される)を参照されたい。
【0069】
しかしながら、いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドは、一本鎖の第VIII因子ポリペプチドである。一本鎖の第VIII因子ポリペプチドは、天然の切断部位を除去するとともに、任意に、第VIII因子のBドメインを除去するか、トランケートするかまたは置き換えるために操作されている。したがって、この一本鎖の第VIII因子ポリペプチドは、(任意のシグナルペプチド及び/またはリーダーペプチドの切断以外の)切断によっては成熟せず、一本鎖として活性を有する。一本鎖の第VIII因子ポリペプチドの非限定的な例は、Zollnerらの文献(Thromb.Res.,134(1):125-31(2014))及びDonathらの文献(Biochem.J.,312(1):49-55(1995))に記載されており、これらの開示内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される。
【0070】
本明細書で使用する場合、「第VIII因子重鎖」または単に「重鎖」という用語は、第VIII因子ポリペプチドのA1ドメイン及びA2ドメインの凝集体を指す。例示的な実施形態では、CS04-FL-AA(配列番号2)の20~759番目のアミノ酸が、第VIII因子重鎖を構成する。
【0071】
本明細書で使用する場合、「第VIII因子軽鎖」または単に「軽鎖」という用語は、第VIII因子ポリペプチドのA3ドメイン、C1ドメイン及びC2ドメインの凝集体を指す。例示的な実施形態では、CS04-FL-AA(配列番号2)の774~1457番目のアミノ酸が、第VIII因子軽鎖を構成する。いくつかの実施形態では、第VIII因子軽鎖には、in vivoで成熟中に放出される酸性のa3ペプチドが含まれない。
【0072】
概して、第VIII因子の重鎖及び軽鎖は、1本のポリペプチド鎖として、例えば、任意のBドメインまたはBドメイン置換リンカーとともに発現させる。しかしながら、いくつかの実施形態では、第VIII因子重鎖及び第VIII因子軽鎖は、別々のポリペプチド鎖として発現させ(例えば共発現させ)、(例えばin vivoまたはin vitroで)再構成させて、第VIII因子タンパク質を形成させる。
【0073】
本明細書で使用する場合、「Bドメイン置換リンカー」及び「第VIII因子リンカー」という用語は、同義的に使用されており、野生型の第VIII因子Bドメイン(例えば、FVIII-FL-AA(配列番号19)の760~1667番目のアミノ酸)のトランケート型、または第VIII因子ポリペプチドのBドメインを置き換えるように操作されたペプチドを指す。本明細書で使用する場合、第VIII因子リンカーは、いくつかの実施形態による第VIII因子バリアントポリペプチドにおいて、第VIII因子重鎖のC末端と第VIII因子軽鎖のN末端との間に位置する。Bドメイン置換リンカーの非限定的な例は、米国特許第4,868,112号、同第5,112,950号、同第5,171,844号、同第5,543,502号、同第5,595,886号、同第5,610,278号、同第5,789,203号、同第5,972,885号、同第6,048,720号、同第6,060,447号、同第6,114,148号、同第6,228,620号、同第6,316,226号、同第6,346,513号、同第6,458,563号、同第6,924,365号、同第7,041,635号及び同第7,943,374号、米国特許出願公開第2013/024960号、同第2015/0071883号及び同第2015/0158930号、ならびに国際公開第WO2014/064277号及び同第WO2014/127215号に開示されており、これらの開示内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される。
【0074】
本明細書に別段の記載のない限り、第VIII因子アミノ酸のナンバリングは、図13に配列番号19として示されている完全長の野生型ヒト第VIII因子配列(FVIII-FL-AA)における対応するアミノ酸を指す。したがって、本明細書に開示されている第VIII因子バリアントタンパク質においてアミノ酸置換に言及するときには、示されているアミノ酸番号は、完全長の野生型第VIII因子配列における類似の(例えば、構造的もしくは機能的に同等である)アミノ酸及び/または相同な(例えば、一次アミノ酸配列において進化的に保存されている)アミノ酸を指す。例えば、T2105Nというアミノ酸置換は、完全長の野生型ヒト第VIII因子配列(FVIII-FL-AA、配列番号19)の2105位のTがNに置換されていること、及びCS04によってコードされる第VIII因子バリアントタンパク質(CS04-FL-AA、配列番号2)の1211位のTがNに置換されていることを指す。
【0075】
本明細書に記載されているように、第VIII因子アミノ酸のナンバリング体系は、第VIII因子のシグナルペプチド(例えば、完全長の野生型ヒト第VIII因子配列の1~19番目のアミノ酸)が含まれるか否かによって決まる。シグナルペプチドが含まれる場合、そのナンバリングは、「シグナルペプチドを含むもの」または「SPI」という。シグナルペプチドが含まれない場合には、そのナンバリングは、「シグナルペプチドを含まないもの」または「SPE」という。例えば、F328Sは、SPEナンバリングにおけるF309Sと同じアミノ酸のSPIナンバリングである。別段に示されていない限り、すべてのアミノ酸番号は、図13に配列番号19として示されている、完全長の野生型ヒト第VIII因子配列(FVIII-FL-AA)における対応するアミノ酸を指す。
【0076】
本明細書に記載されているように、コドン変更型ポリヌクレオチドは、天然の状態でコードされる第VIII因子コンストラクト(例えば、野生型ヒトコドンを用いた場合の同じ第VIII因子コンストラクトをコードするポリヌクレオチド)によって得られる、第VIII因子の発現レベルと比べて、(例えば、遺伝子療法用ベクターの一部として投与したときに)in vivoで、トランスジェニック第VIII因子の発現を増加させる。本明細書で使用する場合、「発現の増加」という用語は、第VIII因子をコードするコドン変更型ポリヌクレオチドを投与された動物の血中のトランスジェニック第VIII因子の活性レベルが、天然の状態でコードされる第VIII因子コンストラクトを投与された動物の血中のトランスジェニック第VIII因子の活性レベルと比べて上昇することを指す。その活性レベルは、当該技術分野で知られている任意の第VIII因子活性を用いて測定できる。第VIII因子活性を求めるための例示的なアッセイは、Technochrome FVIIIアッセイ(Technoclone,Vienna,Austria)である。
【0077】
いくつかの実施形態では、発現の増加は、そのコドン変更型の第VIII因子ポリヌクレオチドを投与された動物の血中のトランスジェニック第VIII因子の活性が、天然の状態でコードされる第VIII因子ポリヌクレオチドを投与された動物の血中のトランスジェニック第VIII因子の活性レベルと比べて少なくとも25%高いことを指す。いくつかの実施形態では、発現の増加は、そのコドン変更型の第VIII因子ポリヌクレオチドを投与された動物の血中のトランスジェニック第VIII因子の活性が、天然の状態でコードされる第VIII因子ポリヌクレオチドを投与された動物の血中のトランスジェニック第VIII因子の活性レベルと比べて、少なくとも50%高いか、少なくとも75%高いか、少なくとも100%高いか、少なくとも3倍高いか、少なくとも4倍高いか、少なくとも5倍高いか、少なくとも6倍高いか、少なくとも7倍高いか、少なくとも8倍高いか、少なくとも9倍高いか、少なくとも10倍高いか、少なくとも15倍高いか、少なくとも20倍高いか、少なくとも25倍高いか、少なくとも30倍高いか、少なくとも40倍高いか、少なくとも50倍高いか、少なくとも60倍高いか、少なくとも70倍高いか、少なくとも80倍高いか、少なくとも90倍高いか、少なくとも100倍高いか、少なくとも125倍高いか、少なくとも150倍高いか、少なくとも175倍高いか、少なくとも200倍高いか、少なくとも225倍高いか、または少なくとも250倍高いことを指す。
【0078】
本明細書に記載されているように、そのコドン変更型ポリヌクレオチドは、天然の状態でコードされる第VIII因子コンストラクト(例えば、野生型ヒトコドンを用いた場合の同じ第VIII因子コンストラクトをコードするポリヌクレオチド)によって得られるベクター産生レベルと比べて、ベクター産生量を増加させる。本明細書で使用する場合、「ウイルス産生量の増加」という用語は、第VIII因子をコードするコドン変更型ポリヌクレオチドを播種した細胞培養液でのベクター収量(例えば、培養液1リットル当たりの力価)が、天然の状態でコードされる第VIII因子コンストラクトを播種した細胞培養液でのベクター収量と比べて増加することを指す。ベクター収量は、当該技術分野で知られている任意のベクター力価アッセイを用いて測定できる。(例えばAAVベクターの)ベクター収量を求めるための例示的なアッセイは、AAV2の逆位末端反復配列を標的とするqPCRである(Aurnhammer,Human Gene Therapy Methods:Part B 23:18-28(2012))。
【0079】
いくつかの実施形態では、ウイルス産生量の増加は、コドン変更型ベクターの収量が、同じ種類の培養液において、天然の状態でコードされる第VIII因子コンストラクトの収量と比べて少なくとも25%多いことを指す。いくつかの実施形態では、ベクター産生量の増加は、コドン変更型ベクターの収量が、同じ種類の培養液において、天然の状態でコードされる第VIII因子コンストラクトの収量と比べて少なくとも50%多いか、少なくとも75%多いか、少なくとも100%多いか、少なくとも3倍多いか、少なくとも4倍多いか、少なくとも5倍多いか、少なくとも6倍多いか、少なくとも7倍多いか、少なくとも8倍多いか、少なくとも9倍多いか、少なくとも10倍多いか、少なくとも15倍多いか、または少なくとも20倍多いことを指す。
【0080】
本明細書で使用する場合、「血友病」という用語は、凝血または血液凝固の低下を大きな特徴とする病態群を指す。血友病は、A型、B型もしくはC型の血友病を指すこともあるし、または3つのすべての疾患型の複合型を指すこともある。A型血友病(血友病A)は、第VIII因子(FVIII)活性の低下または喪失を原因とし、血友病の亜型の中で最も顕著に見られるものである。B型血友病(血友病B)は、第IX因子(FIX)の凝固機能の喪失または低下に起因する。C型血友病(血友病C)は、第XI因子(FXI)の凝固活性の喪失または低下の結果である。血友病A及び血友病Bは、X連鎖性疾患であり、血友病Cは、常染色体性である。血友病に対する従来の治療には、FVIII、FIX(Bebulin(登録商標)-VHを含む)及びFXIのような凝固因子、ならびにFEIBA-VH、デスモプレシン及び血漿輸液の予防的投与及びオンデマンド投与の両方が含まれる。
【0081】
本明細書で使用する場合、「FVIII遺伝子療法」という用語には、血友病と関連する1つ以上の症状(例えば臨床的因子)を緩和したり、その症状を減少させたり、またはその再発を予防したりするために、第VIII因子をコードする核酸を患者に供給する任意の治療手法が含まれる。この用語には、血友病の個体の健康を維持または改善するために、第VIII因子の任意の修飾形態(例えば第VIII因子バリアント)を含む第VIII因子分子をコードする核酸を含む任意の化合物もしくは薬物の投与、任意の手順もしくはレジメンの実施を行うことが含まれる。FVIII療法の過程またはFVIII治療剤の用量はいずれも、例えば、本開示に従って得られた結果に基づいて変更できることは、当業者には明らかであろう。
【0082】
本明細書で使用する場合、「バイパス療法」という用語には、血友病と関連する1つ以上の症状(例えば臨床的因子)を緩和したり、その症状を減少させたり、またはその再発を予防するために、第VIII因子ではない止血剤、化合物または凝固因子を患者に供給する任意の治療手法が含まれる。第VIII因子ではない化合物及び凝固因子としては、第VIII因子阻害バイパス活性(FEIBA)、組み換え活性化第VII因子(FVIIa)、プロトロンビン複合体濃縮製剤及び活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤が挙げられるが、これらに限定されない。第VIII因子ではないこれらの化合物及び凝固因子は、組み換えたものまたは血漿由来であってよい。バイパス療法の過程またはバイパス療法の用量はいずれも、例えば、本開示に従って得られた結果に基づいて変更できることは、当業者には明らかであろう。
【0083】
本明細書で使用する場合、第VIII因子分子をコードする核酸及び従来の血友病A治療剤の投与を含む「併用療法」には、血友病と関連する1つ以上の症状(例えば臨床的因子)を緩和したり、その症状を減少させたり、またはその再発を予防したりするために、第VIII因子分子をコードする核酸と、第VIII因子分子及び/または第VIII因子ではない止血剤(例えばバイパス治療剤)との両方を患者に供給する任意の治療手法が含まれる。この用語には、任意の修飾形態の第VIII因子を含む第VIII因子分子をコードする核酸を含む、任意の化合物もしくは薬物の投与、または任意の手順もしくはレジメンの実施を行うことが含まれ、この療法は、血友病の個体の健康を維持または改善するのに有用であるとともに、本明細書に記載されている任意の治療剤を含む。
【0084】
「治療上有効な量もしくは用量」、「治療上十分な量もしくは用量」または「有効または十分な量もしくは用量」とは、その量または用量を投与した場合に治療効果をもたらす用量を指す。例えば、血友病の治療に有用な薬物の治療上有効な量は、血友病と関連する1つ以上の症状を予防または緩和できる量であることができる。正確な用量は、治療の目的によって左右され、当業者であれば、既知の技術を使用して確認することができるであろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、Pickar,Dosage Calculations(1999)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams&Wilkinsを参照されたい)。
【0085】
本明細書で使用する場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖をコードする、DNA分子のセグメント(例えばコード領域)を意味する。いくつかの実施形態では、遺伝子は、ポリペプチド鎖の産生に関与するコード領域の直前にある領域、その領域の直後にある領域、及び/またはその領域に介在する領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化配列、5’-非翻訳領域、3’-非翻訳領域またはイントロンなどの調節エレメント)によって位置が定められる。
【0086】
本明細書で使用する場合、「調節エレメント」という用語は、細胞内でコード配列を発現させるプロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリアデニル化配列、イントロンなどのヌクレオチド配列を指す。
【0087】
本明細書で使用する場合、「プロモーターエレメント」という用語は、コード配列の発現の制御を助けるヌクレオチド配列を指す。概して、プロモーターエレメントは、遺伝子の翻訳開始部位の5’に位置する。しかしながら、特定の実施形態では、プロモーターエレメントは、イントロン配列内、またはコード配列の3’に位置してもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子療法用ベクターに有用なプロモーターは、標的タンパク質の天然型遺伝子に由来する(例えば第VIII因子プロモーター)。いくつかの実施形態では、遺伝子療法用ベクターに有用なプロモーターは、標的生物の特定の細胞または組織における発現に特異的である(例えば肝特異的プロモーター)。さらに別の実施形態では、十分に特徴付けられている複数のプロモーターエレメントの1つが、本明細書に記載されている遺伝子療法用ベクターで使用されている。十分に特徴付けられているプロモーターエレメントの非限定的な例としては、CMV初期プロモーター、β-アクチンプロモーター及びメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、そのプロモーターは、標的タンパク質の実質的に連続的な発現を駆動する構成的プロモーターである。別の実施形態では、そのプロモーターは、特定の刺激(例えば、特定の治療または薬剤への曝露)に応答して、標的タンパク質の発現を駆動する誘導性プロモーターである。AAVによる遺伝子療法のためのプロモーターの設計の概説については、Grayらの文献(Human Gene Therapy 22:1143-53(2011))を参照されたい。その内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に明示的に援用される。
【0088】
本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、核酸(例えば、第VIII因子遺伝子療法用のコンストラクトをコードする核酸)を宿主細胞に移入するのに使用する任意のビヒクルを指す。いくつかの実施形態では、ベクターは、そのビヒクルを標的核酸とともに複製するように機能するレプリコンを含む。遺伝子療法に有用なベクターの非限定的な例としては、in vivo複製の自律性単位として機能するプラスミド、ファージ、コスミド、人工染色体及びウイルスが挙げられる。いくつかの実施形態では、ベクターは、標的核酸(例えば、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ポリヌクレオチド)を導入するためのウイルスビヒクルである。当該技術分野では、遺伝子療法に有用な改変型の真核生物ウイルスが数多く知られている。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト遺伝子療法に使用するのに特に適しているが、その理由は、ヒトが、このウイルスの天然の宿主であり、その天然のウイルスは、いずれの疾患にも寄与しないことが知られており、このウイルスが誘起する免疫応答は軽度だからである。
【0089】
本明細書で使用する場合、「CpGアイランド」という用語は、ポリヌクレオチド内の領域のうち、CpGジヌクレオチドの密度が統計的に高い領域を指す。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチド(例えば、コドン変更型の第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチド)の領域は、200塩基対のウィンドウにわたって、(i)GC含有率が50%超であり、かつ(ii)下記の関係:
によって定義されるように、CpGジヌクレオチド予測値に対するCpGジヌクレオチド観察値の比の値が少なくとも0.6である場合には、CpGアイランドである。CpGアイランドを特定する方法に関するさらなる情報については、Gardiner-Garden et al.,J.Mol.Biol.,196(2):261-82(1987)を参照されたい。その内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に明示的に援用される。
【0090】
本明細書で使用する場合、「核酸」という用語は、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、及びそれらのポリマー、ならびにそれらの相補体を指す。この用語には、既知のヌクレオチドアナログを含むか、または修飾された主鎖残基もしくは結合を含む核酸であって、合成、天然、及び非天然のものであり、基準となる核酸と類似の結合特性を持ち、基準となるヌクレオチドと同様の形で代謝される、核酸が含まれる。このようなアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド及びペプチド核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸模倣体を含む非天然アミノ酸を指す。天然アミノ酸には、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、及びそれらのアミノ酸を後で修飾させたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、y-カルボキシグルタメート及びO-ホスホセリンが含まれる。天然アミノ酸には、例えば、D-アミノ酸及びL-アミノ酸を含めることができる。本明細書で使用されているアミノ酸には、非天然アミノ酸も含めることができる。アミノ酸アナログとは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合している任意の炭素、を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシドまたはメチオニンメチルスルホニウムを指す。このようなアナログは、修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の形で機能する化学化合物を指す。アミノ酸は、本明細書では、広く知られている3文字表記、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission推奨の1文字表記のいずれかによって表されていることがある。ヌクレオチドも同様に、広く認められている1文字表記によって表されていることがある。
【0092】
アミノ酸配列については、核酸配列またはペプチド配列に対する個々の置換、欠失または付加のうち、コード配列内の1つのアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸が変更、付加または欠失されるものは、その変更により、アミノ酸が、化学的に類似したアミノ酸に置換される場合には、「保存的修飾バリアント」であることを当業者は認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸をもたらす保存的置換の表は、当該技術分野において周知である。このような保存的修飾バリアントは、本開示の多型バリアント、種間ホモログ及びアレルに加えて存在し、これらを除外するものではない。
【0093】
機能的に類似したアミノ酸をもたらす保存的アミノ酸置換は、当該技術分野において周知である。特定のアミノ酸、例えば、触媒性アミノ酸、構造アミノ酸または立体的に重要なアミノ酸の機能性に応じて、様々なアミノ酸群を互いに対する保存的置換とみなすことができる。表1には、アミノ酸の電荷及び極性、アミノ酸の疎水性、アミノ酸の表面露出性/構造的性質、ならびにアミノ酸の二次構造傾向に基づき、保存的置換とみなされるアミノ酸群が示されている。
【0094】
(表1)タンパク質の残基の機能性に基づく、保存的アミノ酸置換の群
【0095】
「同一」または「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の核酸配列またはペプチド配列との関連では、例えば、BLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを下記のデフォルトパラメーターで使用するか、または手動アラインメント及び目視確認によって測定した場合に、同じである2つ以上の配列もしくは部分配列、または同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが所定のパーセンテージである(すなわち、比較ウィンドウまたは指定領域にわたって一致率が最大になるように比較及びアラインメントしたときに、所定の領域にわたって、同一性が約60%、好ましくは、同一性が65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上である)2つ以上の配列もしくは部分配列を指す。
【0096】
当該技術分野で知られているように、いくつかの異なるプログラムを用いて、タンパク質(または下に論じられているように、核酸)が、既知の配列と同一であるかまたは類似している配列を有するか定めてよい。配列同一性及び/または配列類似性は、当該技術分野で知られている標準的な技術を使用して求め、この技術としては、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482(1981)の、局所的な配列同一性のアルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443(1970)の、配列同一性のアラインメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムの、コンピューターによるインプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WI)内のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、Devereux et al.,Nucl.Acid Res.,12:387-395(1984)に説明されている配列プログラムBest Fit(好ましくは、デフォルト設定を使用する)、または検証によるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、同一性パーセントは、FastDBによって、ミスマッチペナルティ1、ギャップサイズペナルティ1、ギャップサイズペナルティ0.33及びジョイニングペナルティ30というパラメーターに基づいて計算する。“Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,”Macromolecule Sequencing and synthesis,Selected Methods and Applications,pp 127-149(1988),Alan R.Liss,Inc(そのすべては、参照により援用される)。
【0097】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、累進的なペアワイズアラインメントを用いて、関連する配列群に由来する複数配列のアラインメントを行う。アラインメントを行うために用いたクラスター関係を示す樹形図をプロットすることもできる。PILEUPでは、Feng&Doolittle,J.Mol.Evol.35:351-360(1987)の累進的アラインメント方法を簡略化したものを利用し、この方法は、Higgins&Sharp,CABIOS 5:151-153(1989)に説明されているものと類似しており、いずれの文献も、参照により援用される。有用なPILEUPパラメーターとしては、デフォルトのギャップ加重3.00、デフォルトのギャップ長加重0.10及び加重エンドギャップが挙げられる。
【0098】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403-410,(1990)、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)及びKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873-5787(1993)に説明されている、BLASTのアルゴリズムであり、いずれの文献も、参照により援用される。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al.,Methods in Enzymol.,266:460-480(1996)、http://blast.wustl/edu/blast/README.html]から得たWU-BLAST-2というプログラムである。WU-BLAST-2では、いくつかの検索パラメーターが用いられ、その大部分は、デフォルト値に設定する。調節可能なパラメーターは、オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11という値に設定する。HSP S及びHSP S2のパラメーターは、ダイナミック値であり、特定配列の構成、及び対象とする配列の検索先である特定のデータベースの構成に応じて、プログラム自体によって確立されるが、それらの値を調節して、感度を上昇させてもよい。
【0099】
さらなる有用なアルゴリズムは、Altschul et al.,Nucl.Acids Res.,25:3389-3402に報告されているように、Gapped BLASTであり、この文献は、参照により援用される。Gapped BLASTでは、BLOSUM-62置換スコア、9に設定した閾値Tパラメーター、ギャップなしの伸長を開始させるための2ヒット法、ギャップ長kにコスト10+kを負荷、16に設定したXu、及びデータベース検索段階には40に、アルゴリズムの出力段階には67に設定したXgを使用する。ギャップ付きのアラインメントは、約22ビットに対応するスコアによって開始される。
【0100】
アミノ酸配列同一性パーセントの値は、アラインメントされた領域内で、マッチする同一残基の数を「長い方の」配列の残基の総数で除すことによって求める。「長い方の」配列は、アラインメントされた領域(アラインメントスコアを最大にするために、WU-Blast-2によって導入されたギャップは無視する)内で、実際の残基が最も多い配列である。同様に、特定されたポリペプチドのコード配列に関する「核酸配列同一性パーセント(%)」は、候補配列内のヌクレオチド残基のうち、細胞周期タンパク質のコード配列内のヌクレオチド残基と同一である残基の割合として定義する。好ましい方法では、デフォルトパラメーターに設定した、WU-BLAST-2のBLASTNモジュールを、オーバーラップスパン1、オーバーラップフラクション0.125で使用する。
【0101】
アラインメントには、アラインメントしようとする配列にギャップを導入することが含まれることもある。さらに、図2の配列(配列番号1)によってコードされるタンパク質よりも多いかまたは少ないアミノ酸を含む配列については、一実施形態では、配列同一性の割合は、アミノ酸またはヌクレオチドの総数に対する、同一のアミノ酸またはヌクレオチドの数に基づいて求められるものと理解される。したがって、例えば、図2に示されている配列(配列番号1)よりも短い配列の配列同一性は、一実施形態では、下に論じられているように、その短い方の配列内のヌクレオチドの数を用いて求めることになる。同一性パーセントの計算の際には、挿入、欠失、置換などの種々の配列バリエーションの出現に対して、相対的重みを付与しない。
【0102】
一実施形態では、同一性のみにプラス(+1)のスコアを付し、あらゆる形態の配列バリエーションには、ギャップを含め、「0」という値を割り当てるので、配列類似性の計算について後述されているように、加重スケールまたは加重パラメーターの必要性がなくなる。配列同一性パーセントは、例えば、アラインメントされた領域内で、マッチする同一残基の数を「短い方の」配列の残基総数で除し、100を乗じることによって計算してよい。「長い方の」配列は、アラインメントされた領域内で、実際の残基が最も多い配列である。
【0103】
「アレルバリアント」という用語は、特定の遺伝子座における遺伝子の多型、その遺伝子のmRNA転写物から得たcDNA、及びそれらによってコードされるポリペプチドを指す。「好ましい哺乳動物コドン」という用語は、アミノ酸をコードするコドンセットのうち、哺乳動物細胞内で発現するタンパク質で最も使われる頻度が高いコドンサブセットを指し、以下のリスト:Gly(GGC、GGG)、Glu(GAG)、Asp(GAC)、Val(GTG、GTC)、Ala(GCC、GCT)、Ser(AGC、TCC)、Lys(AAG)、Asn(AAC)、Met(ATG)、Ile(ATC)、Thr(ACC)、Trp(TGG)、Cys(TGC)、Tyr(TAT、TAC)、Leu(CTG)、Phe(TTC)、Arg(CGC、AGG、AGA)、Gln(CAG)、His(CAC)及びPro(CCC)から選択される。
【0104】
本明細書で使用する場合、コドン変更型という用語は、ポリペプチド(例えば第VIII因子バリアントタンパク質)をコードするポリヌクレオチド配列であって、そのポリペプチドをコードする天然型ポリヌクレオチドのコドンの少なくとも1つが、そのポリヌクレオチド配列の特性を改善するために変更されている配列を指す。いくつかの実施形態では、その特性の改善により、そのポリペプチドをコードするmRNAの転写の増大、そのmRNAの安定性の上昇(例えば、mRNAの半減期の改善)、そのポリペプチドの翻訳の増加、及び/またはそのポリヌクレオチドのベクター内でのパッケージング量の増加が促進される。特性を改善させる目的で使用できる変更の非限定的な例としては、特定のアミノ酸のコドンの使用頻度及び/または分布の変更、全体的及び/または局所的なGC含有率の調整、ATリッチ配列の除去、繰り返される配列エレメントの除去、全体的及び/または局所的なCpGジヌクレオチド含有量の調整、潜在性調節エレメント(例えば、TATAボックスエレメント及びCCAATボックスエレメント)の除去、イントロン/エクソンスプライス部位の除去、調節配列の改善(例えば、Kozakコンセンサス配列の導入)、ならびに転写mRNA内で二次構造(例えばステムループ)を形成し得る配列エレメントの除去が挙げられる。
【0105】
本明細書に論じられているように、本明細書における開示内容の構成要素に言及するための用語には、様々なものが存在する。「CS番号」(例えば「CS04」)とは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチド、及び/またはそのコードされたポリペプチド(バリアントを含む)を指す。例えば、CS04-FLは、CS04のポリヌクレオチド配列によってコードされるCS04の完全長のコドン変更型ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を指す(本明細書では、そのアミノ酸配列は「CS04-FL-AA」、その核酸配列は「CS04-FL-NA」という場合もある)。同様に、「CS04-LC」とは、FVIIIポリペプチドの軽鎖をコードするコドン変更型核酸配列(「CS04-LC-NA」)、またはCS04のポリヌクレオチド配列によってコードされるFVIII軽鎖のアミノ酸配列(本明細書では、「CS04-LC-AA」という場合もある)のいずれかを指す。同様に、CS04-HC、CS04-HC-AA及びCS04-HC-NAも、FVIII重鎖の同じものである。当業者であれば明らかであるように、CS04のように、コドンが変更されているのみであるコンストラクト(例えば、Refactoと比べて、追加のアミノ酸置換を含まない)では、そのアミノ酸配列は、コドン最適化によって変更されていないアミノ酸配列と同一となる。すなわち、本開示の配列コンストラクトとしては、CS04-FL-NA、CS04-FL-AA、CS04-LC-NA、CS04-LC-AA、CS04-HC-AA及びCS04-HC-NAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
III.コドン変更型の第VIII因子バリアント
いくつかの実施形態では、本開示は、第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドを提供する。これらのコドン変更型ポリヌクレオチドは、AAVベースの遺伝子療法用コンストラクトで投与すると、第VIII因子の発現を著しく改善させる。このコドン変更型ポリヌクレオチドでは、コドン最適化された従来のコンストラクトと比べて、AAVビリオンのパッケージング量の改善も見られる。実施例2及び表4に示されているように、本出願人は、ヒト野生型第VIII因子の重鎖及び軽鎖と、活性FVIIIaタンパク質の成熟をin vivoで促すために、フューリン切断部位を含む短い14アミノ酸のBドメイン置換リンカー(「SQ」リンカー)とを有する第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチド(CS04-FL-NA)の発見を通じて、これらの利点を実現させた。
【0107】
一実施形態では、本発明で提供するコドン変更型ポリヌクレオチドは、CS04(配列番号1)内の配列のうち、少なくとも、第VIII因子重鎖及び第VIII因子軽鎖をコードする配列との配列同一性が高いヌクレオチド配列を有する。当該技術分野で知られているように、第VIII因子のBドメインは、in vivo活性には必須ではない。したがって、いくつかの実施形態では、本発明で提供するコドン変更型ポリヌクレオチドは、第VIII因子Bドメインを完全に欠損している。いくつかの実施形態では、天然型の第VIII因子Bドメインが、フューリン切断部位を含む短いアミノ酸リンカー、例えば、CS04(配列番号2)コンストラクトの760~773番目のアミノ酸からなる「SQ」リンカーに置き換えられている。「SQ」リンカーは、BDLO04(アミノ酸配列の場合にはBDLO04-AA、ヌクレオチド配列の場合にはBDLO04-NA)ともいう。
【0108】
一実施形態では、そのコドン変更型ポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子の重鎖及び軽鎖は、それぞれ、ヒト第VIII因子の重鎖及び軽鎖である。別の実施形態では、そのコドン変更型ポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子の重鎖及び軽鎖は、別の哺乳動物(例えばブタ第VIII因子)に由来する重鎖配列及び軽鎖配列である。さらに別の実施形態では、その第VIII因子の重鎖及び軽鎖は、キメラの重鎖及び軽鎖(例えば、ヒトの配列と第2の哺乳動物の配列との組み合わせ)である。さらに別の実施形態では、その第VIII因子の重鎖及び軽鎖は、別の哺乳動物に由来する重鎖及び軽鎖のヒト化型、例えば、別の哺乳動物に由来する重鎖配列及び軽鎖配列であって、ヒトに投与したときに、得られるペプチドの免疫原性を低下させるために、所定の位置がヒト残基に置換されている、配列である。
【0109】
ヒト遺伝子のGC含有率は、25%未満から90%超まで大きく変動する。しかしながら、概して、GC含有率の高いヒト遺伝子ほど、高レベルで発現する。例えば、Kudla et al.,(PLoS Biol.,4(6):80(2006))では、遺伝子のGC含有率が上昇すると、主に、転写が増大するとともに、mRNA転写物の高い定常状態レベルがもたらされることによって、コードされるポリペプチドの発現が増加することが示されている。概して、コドン最適化された遺伝子コンストラクトの望ましいGC含有率は、60%以上である。しかしながら、天然型のAAVゲノムは、GC含有率が56%前後である。
【0110】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明で提供するコドン変更型ポリヌクレオチドは、CG含有率が、天然型のAAVビリオン(例えばGCが56%前後)のGC含有率にさらに近く、これは、哺乳動物細胞内での発現のために、従来コドン最適化されているポリヌクレオチドの好ましいCG含有率(例えば60%以上のGC)よりも低い。実施例1に概説されているように、GC含有率が約56%であるCS04-FL-NA(配列番号1)は、同様にコドン変更型でありかつGC含有率がより高いコード配列と比べて、ビリオンのパッケージング量が改善している。
【0111】
したがって、いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、60%未満である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、59%未満である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、58%未満である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、57%未満である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56%以下である。
【0112】
いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、54%~59%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、55%~59%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56%~59%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、54%~58%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、55%~58%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56%~58%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、54%~57%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、55%~57%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56%~57%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、54%~56%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、55%~56%である。
【0113】
いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56±0.5%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56±0.4%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56±0.3%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56±0.2%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56±0.1%である。いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドの全体的なGC含有率は、56%である。
【0114】
A.第VIII因子Bドメイン置換リンカー
いくつかの実施形態では、FVIIIの重鎖と軽鎖との連結部(例えば、野生型第VIII因子におけるBドメイン)がさらに変更されている。AAVパッケージング能力にはサイズ制限があるので、Bドメイン欠失型、Bドメイントランケート型、及びまたはリンカー置換型のバリアントは、FVIII遺伝子療法用コンストラクトの有効性を改善するはずである。従来最も使用されているBドメイン置換リンカーは、SQ FVIIIのリンカーであり、このリンカーは、Bドメインの14アミノ酸のみをリンカー配列として保持している。ブタVIIIの別のバリアント(米国特許第6,458,563号に記載されている「OBI-1」)は、CHO細胞内で十分に発現し、24アミノ酸というわずかに長めのリンカーを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているコドン変更型ポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子コンストラクトは、SQ型のBドメインリンカー配列を含む。別の実施形態では、本明細書に記載されているコドン変更型ポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子コンストラクトは、OBI-1型のBドメインリンカー配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、コードされる第VIII因子ポリペプチドは、SQ型のBドメインリンカー(SFSQNPPVLKRHQR、BDL-SQ-AA、配列番号30)を含み、そのリンカーは、野生型のヒト第VIII因子Bドメイン(FVIII-FL-AA、配列番号19)の760~762番目/1657~1667番目のアミノ酸を含む(Sandberg et al.,Thromb.Haemost.85:93(2001))。いくつかの実施形態では、SQ型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を1つ有する。いくつかの実施形態では、SQ型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を2つ有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、コードされる第VIII因子ポリペプチドは、Greengene型のBドメインリンカーを含み、そのリンカーは、野生型のヒト第VIII因子Bドメイン(FVIII-FL-AA、配列番号19)の760番目/1582~1667番目のアミノ酸を含む(Oh et al.,Biotechnol.Prog.,17:1999(2001))。いくつかの実施形態では、Greengene型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を1つ有する。いくつかの実施形態では、Greengene型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を2つ有する。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、コードされる第VIII因子ポリペプチドは、SQ型のBドメインリンカーが伸長されたリンカーを含み、そのリンカーは、野生型のヒト第VIII因子Bドメイン(FVIII-FL-AA、配列番号19)の760~769番目/1657~1667番目のアミノ酸を含む(Thim et al.,Haemophilia,16:349(2010))。いくつかの実施形態では、SQ型のBドメインリンカーが伸長されたリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を1つ有する。いくつかの実施形態では、SQ型のBドメインリンカーが伸長されたリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を2つ有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、コードされる第VIII因子ポリペプチドは、ブタOBI-1型のBドメインリンカーを含み、このリンカーは、野生型のブタ第VIII因子Bドメインに由来するSFAQNSRPPSASAPKPPVLRRHQR(配列番号31)というアミノ酸を含む(Toschi et al.,Curr.Opin.Mol.Ther.,12:517(2010))。いくつかの実施形態では、ブタOBI-1型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を1つ有する。いくつかの実施形態では、ブタOBI-1型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を2つ有する。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、コードされる第VIII因子ポリペプチドは、ヒトOBI-1型のBドメインリンカーを含み、このリンカーは、野生型のヒト第VIII因子Bドメイン(FVIII-FL-AA、配列番号19)の760~772番目/1655~1667番目のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ヒトOBI-1型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を1つ有する。いくつかの実施形態では、ヒトOBI-1型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を2つ有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、コードされる第VIII因子ポリペプチドは、O8型のBドメインリンカーを含み、このリンカーは、野生型のブタ第VIII因子Bドメインに由来するSFSQNSRHQAYRYRRG(配列番号32)というアミノ酸を含む(Toschi et al.,Curr.Opin.Mol.Ther.,12:517(2010))。いくつかの実施形態では、ブタOBI-1型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を1つ有する。いくつかの実施形態では、ブタOBI-1型のBドメインリンカーは、対応する野生型配列に対して、アミノ酸置換を2つ有する。
【0121】
B.切断可能なリンカーを有する第VIII因子バリアントをコードするコドン変更型ポリヌクレオチド
コドン変更型ポリヌクレオチドCS04
一実施形態では、本発明で提供するコドン変更型ポリヌクレオチドは、in vivoで切断可能であるリンカーを有する第VIII因子バリアントポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。その第VIII因子ポリペプチドは、第VIII因子軽鎖、第VIII因子重鎖、及び重鎖のC末端を軽鎖のN末端につなぎ合わせるポリペプチドリンカーを含む。その第VIII因子ポリペプチドの重鎖は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が高い第1のヌクレオチド配列によってコードされ、このCS04-HC-NAは、CS04-FL-NA(配列番号1)のうち、第VIII因子重鎖をコードする部分である。その第VIII因子ポリペプチドの軽鎖は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が高い第2のヌクレオチド配列によってコードされ、このCS04-LC-NAは、CS04-FL-NA(配列番号1)のうち、第VIII因子軽鎖をコードする部分である。そのポリペプチドリンカーは、フューリン切断部位を含み、この部位は、(例えば、前駆体ポリペプチドのin vivoでの発現、または前駆体ポリペプチドの投与の後に、)in vivoでの成熟を可能にする。
【0122】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも95%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも96%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも97%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも98%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99.5%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99.9%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)と同一であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)と同一である。
【0123】
いくつかの実施形態では、その第VIII因子コンストラクトのポリペプチドリンカーは、BDLO04(配列番号6)との配列同一性が高い第3のヌクレオチド配列によってコードされ、このBDLO04は、CS04-FL-AA(配列番号2)の760~773番目のアミノ酸に対応する14アミノ酸のリンカーをコードする。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)と同一である。
【0124】
いくつかの実施形態では、そのコドン変更型ポリヌクレオチドは、CS04-FL-NA(配列番号1)との配列同一性が高いヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)と同一である。
【0125】
いくつかの実施形態では、そのコドン変更型ポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子バリアントは、CS04-FL-AA(配列番号2)との配列同一性が高いアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)と同一である。
【0126】
C.第VIII因子発現ベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているコドン変更型ポリヌクレオチドは、発現ベクターに組み込まれている。発現ベクターの非限定的な例としては、ウイルスベクター(例えば、遺伝子療法に適するベクター)、プラスミドベクター、バクテリオファージベクター、コスミド、ファージミド、人工染色体などが挙げられる。
【0127】
ウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス及びラウス肉腫ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタインバーウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ならびにポリオウイルスが挙げられる。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているコドン変更型ポリヌクレオチドは、遺伝子療法用ベクターに組み込まれている。いくつかの実施形態では、その遺伝子療法用ベクターは、レトロウイルス、特に複製欠損性レトロウイルスである。複製欠損性レトロウイルスを作製するプロトコールは、当該技術分野で知られている。概説については、Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H.Freeman Co.,New York(1990)及びMurry,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)を参照されたい。
【0129】
一実施形態では、その遺伝子療法用ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースの遺伝子療法用ベクターである。AAVシステムは、これまでに説明されてきており、概して、当該技術分野において周知である(Kelleher and Vos,Biotechniques,17(6):1110-17(1994)、Cotten et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89(13):6094-98(1992)、Curiel,Nat.Immun.,13(2-3):141-64(1994)、Muzyczka,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:97-129(1992)及びAsokan et al.,Mol.Ther.,20(4):699-708(2012)。これらはそれぞれ、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される)。rAAVベクターの作製及び使用に関する詳細は、例えば、米国特許第5,139,941号及び同第4,797,368号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される。特定の実施形態では、そのAAVベクターは、AAV-8ベクターである。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているコドン変更型ポリヌクレオチドは、レトロウイルス発現ベクターに組み込まれている。これらのシステムは、これまでに説明されてきており、概して、当該技術分野において周知である(Mann et al.,Cell,33:153-159(1983)、Nicolas and Rubinstein,In:Vectors:A survey of molecular cloning vectors and their uses,Rodriguez and Denhardt,eds.,Stoneham:Butterworth,pp.494-513(1988)、Temin,In:Gene Transfer,Kucherlapati(ed.),New York:Plenum Press,pp.149-188(1986)。具体的な実施形態では、そのレトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである(例えば、Naldini et al.,Science,272(5259):263-267(1996)、Zufferey et al.,Nat Biotechnol,15(9):871-875,1997、Blomer et al.,J Virol.,71(9):6641-6649(1997)、米国特許第6,013,516号及び同第5,994,136号を参照されたい)。
【0131】
細胞培養下で、第VIII因子ポリペプチドをコドン変更型ポリペプチドから発現させるには、真核生物発現ベクター及び原核生物発現ベクターを含め、多種多様なベクターを使用することができる。特定の実施形態では、細胞培養下で第VIII因子ポリペプチドを発現させる際に使用するのに、プラスミドベクターが想定されている。概して、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコン及び制御配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主との関連で使用される。そのベクターは、複製部位、及び形質転換細胞内で表現型の選択を行えるようにできるマーキング配列を有することができる。そのプラスミドは、1つ以上の制御配列、例えばプロモーターに機能可能に連結された、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドを含むことになる。
【0132】
原核生物における発現用のベクターの非限定的な例としては、pRSET、pET、pBADなどのプラスミドが挙げられ、原核生物発現ベクターで使用されるプロモーターとしては、lac、trc、trp、recA、araBADなどが挙げられる。真核生物における発現用のベクターの例としては、(i)酵母での発現の場合には、pAO、pPIC、pYES、pMETなどのベクターで、AOX1、GAP、GAL1、AUG1などのプロモーターを使用したもの、(ii)昆虫細胞での発現の場合には、pMT、pAc5、pIB、pMIB、pBACなどのベクターで、PH、p10、MT、Ac5、OpIE2、gp64、polhなどのプロモーターを使用したもの、ならびに(iii)哺乳動物細胞での発現の場合には、pSVL、pCMV、pRc/RSV、pcDNA3、pBPVなどのベクター、及びワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルスなどのウイルスシステムに由来するベクターで、CMV、SV40、EF-1、UbC、RSV、ADV、BPV及びβ-アクチンなどのプロモーターを使用したものが挙げられる。
【0133】
D.投与
本発明は、血友病Aと診断されたヒト患者(「血友病A患者」または「患者」)に、本発明の、コドン最適化されたコンストラクトを投与することを提供する。概して、本明細書に概説されているように、この投与は、本発明の、コドン最適化されたコンストラクトを含むAAV粒子を用いて行う。さらに、下により詳細に説明されているように、本発明のコンストラクトの投与は、プレドニゾロンまたはプレドニゾンの投与によって増強することもできる。
【0134】
体重1キログラム当たり1.2×1013個のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子
一態様では、本開示は、血友病Aを治療する方法であって、血友病A患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を(例えば末梢静脈内注入によって)静脈内注入することを含み、そのAAV粒子が、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドであって、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを含む、方法を提供する。
【0135】
一実施形態では、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いコドン変更型ポリヌクレオチドであって、ヒト患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個という用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子で投与されるポリヌクレオチドは、in vivoで切断可能であるリンカーを有する第VIII因子バリアントポリペプチドをコードする。その第VIII因子ポリペプチドは、第VIII因子軽鎖、第VIII因子重鎖、及び重鎖のC末端を軽鎖のN末端につなぎ合わせるポリペプチドリンカーを含む。その第VIII因子ポリペプチドの重鎖は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が高い第1のヌクレオチド配列によってコードされ、このCS04-HC-NAは、CS04-FL-NA(配列番号1)のうち、第VIII因子重鎖をコードする部分である。その第VIII因子ポリペプチドの軽鎖は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が高い第2のヌクレオチド配列によってコードされ、このCS04-LC-NAは、CS04-FL-NA(配列番号1)のうち、第VIII因子軽鎖をコードする部分である。そのポリペプチドリンカーは、フューリン切断部位を含み、この部位は、(例えば、前駆体ポリペプチドのin vivoでの発現、または前駆体ポリペプチドの投与の後に、)in vivoでの成熟を可能にする。
【0136】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも95%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも96%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも97%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも98%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99.5%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99.9%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)と同一であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)と同一である。これらの実施形態では、これらのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、CS04-HC-AA及びCS04-LC-AAと同一である。
【0137】
いくつかの実施形態では、その第VIII因子コンストラクトのポリペプチドリンカーは、BDLO04(配列番号6)との配列同一性が高い第3のヌクレオチド配列によってコードされ、このBDLO04は、CS04-FL-AA(配列番号2)の760~773番目のアミノ酸に対応する14アミノ酸のリンカーをコードする。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)と同一である。これらの実施形態では、これらのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)の760~773番目のアミノ酸と同一である。いくつかの実施形態では、そのヒト患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量でアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与されるコドン変更型ポリヌクレオチドは、CS04-FL-NA(配列番号1)との配列同一性が高いヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)と同一である。これらの実施形態では、これらのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、CS04-FL-AAと同一である。
【0138】
いくつかの実施形態では、そのコドン変更型ポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子バリアントは、CS04-FL-AA(配列番号2)との配列同一性が高いアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)と同一である。
【0139】
したがって、一実施形態では、本開示は、血友病Aを治療する方法であって、血友病A患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を静脈内注入することを含み、そのAAV粒子が、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む、方法を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態では、そのAAV粒子は、1回用量で、静脈内注入によって(例えば、患者の腕の静脈に)投与する。いくつかの実施形態では、1回用量の一部を投与し、その投与に対する有害反応の徴候について、その患者を短時間(例えば30分)モニタリングしてから、(例えば、有害反応の徴候が見られなかった場合に)その1回用量の残部をその患者に投与する。
【0141】
いくつかの実施形態では、そのAAV粒子を投与されるヒト患者は、重度の血友病Aである。例えば、いくつかの実施形態では、その患者は、第VIII因子補充療法を受けていないときに、血流中の第VIII因子活性のレベルが、基準血液試料、例えば、第VIII因子活性の正常な血液試料(例えば、血友病Aではないと判断された対象から採取した血液試料)で見られる第VIII因子活性値、または血友病Aではないと判断された複数の対象の血液試料で見られる第VIII因子活性の平均の2%未満である。いくつかの実施形態では、その対象は、第VIII因子補充療法を受けていないときに、血流中の第VIII因子活性のレベルが、基準血液試料で見られる第VIII因子活性値の2%未満である。
【0142】
いくつかの実施形態では、そのAAV粒子を投与されるヒト患者は、FVIII阻害物質(例えば第VIII因子阻害抗体)を有さず、重度の血友病A以外の止血異常を有さず、慢性肝機能障害を有さず、及び/または重度の腎臓機能障害を有さない。
【0143】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている方法は、そのヒト患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の投与を受ける許可をその患者に与える工程を含み、そのAAV粒子は、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドであって、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを含む。その方法は、その患者が、第VIII因子補充療法を受けていないときに、その患者の血流中の第VIII因子活性のレベルを求めることと、その患者の血流中の第VIII因子活性のレベルが、基準試料中の第VIII因子のレベルの約2%未満または約1%未満であるときに、そのAAV粒子の投与を受ける許可をその患者に与えることを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、その患者が、FVIII阻害物質(例えば第VIII因子阻害抗体)、重度の血友病A以外の止血異常、慢性肝機能障害及び重度の腎臓機能障害の1つ以上を有するかどうかを判断することと、その患者が、列挙したこれらの条件のいずれかを有する場合には、投与を受ける許可をその患者に与えないことを含む。
【0144】
体重1キログラム当たり5×1013個のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子
一態様では、本開示は、血友病Aを治療する方法であって、血友病A患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を(例えば末梢静脈内注入によって)静脈内注入することを含み、そのAAV粒子が、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドであって、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを含む、方法を提供する。
【0145】
一実施形態では、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いコドン変更型ポリヌクレオチドであって、ヒト患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり5×1013個のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子という用量で投与されるポリヌクレオチドは、in vivoで切断可能であるリンカーを有する第VIII因子バリアントポリペプチドをコードする。その第VIII因子ポリペプチドは、第VIII因子軽鎖、第VIII因子重鎖、及び重鎖のC末端を軽鎖のN末端につなぎ合わせるポリペプチドリンカーを含む。その第VIII因子ポリペプチドの重鎖は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が高い第1のヌクレオチド配列によってコードされ、このCS04-HC-NAは、CS04-FL-NA(配列番号1)のうち、第VIII因子重鎖をコードする部分である。その第VIII因子ポリペプチドの軽鎖は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が高い第2のヌクレオチド配列によってコードされ、このCS04-LC-NAは、CS04-FL-NA(配列番号1)のうち、第VIII因子軽鎖をコードする部分である。そのポリペプチドリンカーは、フューリン切断部位を含み、この部位は、(例えば、前駆体ポリペプチドのin vivoでの発現、または前駆体ポリペプチドの投与の後に、)in vivoでの成熟を可能にする。
【0146】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも95%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも96%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも97%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも98%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99.5%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)との配列同一性が少なくとも99.9%であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)との配列同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、CS04-HC-NA(配列番号3)と同一であり、第2のヌクレオチド配列は、CS04-LC-NA(配列番号4)と同一である。これらの実施形態では、これらのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、CS04-HC-AA及びCS04-LC-AAと同一である。
【0147】
いくつかの実施形態では、その第VIII因子コンストラクトのポリペプチドリンカーは、BDLO04(配列番号6)との配列同一性が高い第3のヌクレオチド配列によってコードされ、このBDLO04は、CS04-FL-AA(配列番号2)の760~773番目のアミノ酸に対応する14アミノ酸のリンカーをコードする。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、その第3のヌクレオチド配列は、BDLO04(配列番号6)と同一である。これらの実施形態では、これらのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)の760~773番目のアミノ酸と同一である。
【0148】
いくつかの実施形態では、そのヒト患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり5×1013個のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子という用量で投与されるコドン変更型ポリヌクレオチドは、CS04-FL-NA(配列番号1)との配列同一性が高いヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも96%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)との同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチド配列は、CS04-FL-NA(配列番号1)と同一である。これらの実施形態では、これらのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、CS04-FL-AAと同一である。
【0149】
いくつかの実施形態では、そのコドン変更型ポリヌクレオチドによってコードされる第VIII因子バリアントは、CS04-FL-AA(配列番号2)との配列同一性が高いアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも97%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも98%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)との同一性が少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態では、そのアミノ酸配列は、CS04-FL-AA(配列番号2)と同一である。
【0150】
したがって、一実施形態では、本開示は、血友病Aを治療する方法であって、血友病A患者に、そのヒト患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を静脈内注入することを含み、そのAAV粒子が、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む、方法を提供する。
【0151】
いくつかの実施形態では、そのAAV粒子は、1回用量で、静脈内注入によって(例えば、患者の腕の静脈に)投与する。いくつかの実施形態では、1回用量の一部を投与し、その投与に対する有害反応の徴候について、その患者を短時間(例えば30分)モニタリングしてから、(例えば、有害反応の徴候が見られなかった場合に)その1回用量の残部をその患者に投与する。
【0152】
いくつかの実施形態では、そのAAV粒子を投与されるヒト患者は、重度の血友病Aである。例えば、いくつかの実施形態では、その患者は、第VIII因子補充療法を受けていないときに、血流中の第VIII因子活性のレベルが、基準血液試料、例えば、第VIII因子活性の正常な血液試料(例えば、血友病Aではないと判断された対象から採取した血液試料)で見られる第VIII因子活性値、または血友病Aではないと判断された複数の対象の血液試料で見られる第VIII因子活性の平均の2%未満である。いくつかの実施形態では、対象は、第VIII因子補充療法を受けていないときに、血流中の第VIII因子活性のレベルが、基準血液試料で見られる第VIII因子活性値の2%未満である。
【0153】
いくつかの実施形態では、そのAAV粒子を投与されるヒト患者は、FVIII阻害物質(例えば第VIII因子阻害抗体)を有さず、重度の血友病A以外の止血異常を有さず、慢性肝機能障害を有さず、及び/または重度の腎臓機能障害を有さない。
【0154】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている方法は、そのヒト患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の投与を受ける許可をその患者に与える工程を含み、そのAAV粒子は、第VIII因子ポリペプチドをコードするコドン変更型ポリヌクレオチドであって、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを含む。その方法は、その患者が、第VIII因子補充療法を受けていないときに、その患者の血流中の第VIII因子活性のレベルを求めることと、その患者の血流中の第VIII因子活性のレベルが、基準試料中の第VIII因子のレベルの約2%未満または約1%未満であるときに、そのAAV粒子の投与を受ける許可をその患者に与えることを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、その患者が、FVIII阻害物質(例えば第VIII因子阻害抗体)、重度の血友病A以外の止血異常、慢性肝機能障害及び重度の腎臓機能障害の1つ以上を有するかどうかを判断することと、その患者が、列挙したこれらの条件のいずれかを有する場合には、投与を受ける許可をその患者に与えないことを含む。
【0155】
プレドニゾロンまたはプレドニゾンとの併用投与
いくつかの実施形態では、AAV粒子をいずれかの用量で投与することによって、血友病Aを治療するための上記の方法は、そのヒト患者に、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与して、例えばその対象のサイトカイン及び/またはケモカインの産生量を低下させることによって、例えば炎症性応答のレベルを低下させることも含む。プレドニゾロンまたはプレドニゾンを遺伝子療法と併用投与する方法の例は、例えば国際公開第WO2008/069942号に記載されており、その内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される。
【0156】
いくつかの実施形態では、プレドニゾロンまたはプレドニゾンは、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与する前に、ヒト患者に投与する。例えば、いくつかの実施形態では、プレドニゾロンまたはプレドニゾンは、そのAAV粒子を患者に投与する約1週間前、約1日前または約2日前に投与する。いくつかの実施形態では、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンは、そのAAV粒子を投与する約1週間前、約1日前または約2日前から投与を開始し、そのAAV粒子の投与後にも投与を継続する。
【0157】
いくつかの実施形態では、プレドニゾロンまたはプレドニゾンは、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与するときに、ヒト対象に併用投与する。例えば、いくつかの実施形態では、プレドニゾロンまたはプレドニゾンは、同じ日、例えば、そのAAV粒子の投与直前または投与直後に投与する。いくつかの実施形態では、そのAAV粒子の投与するのと同じ日に、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与し、そのAAV粒子の投与後にも投与を継続する。
【0158】
いくつかの実施形態では、プレドニゾロンまたはプレドニゾンは、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与した後に、患者に投与する。例えば、いくつかの実施形態では、プレドニゾロンまたはプレドニゾンは、AAV粒子を患者に投与した約1日または2日後に、1回目を投与する。
【0159】
プレドニゾロンまたはプレドニゾンは、経口投与される小分子薬であるので(ただし、静脈内投与もできる)、この文脈における「併用投与」では、1つの溶液が両方の薬物を含む必要はないことに留意されたい。
【0160】
いくつかの実施形態では、そのクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンは、患者に、少なくとも2週間の期間にわたって、例えば、1日に1回または2日に1回、投与する。いくつかの実施形態では、そのクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンは、少なくとも3週間の期間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、プレドニゾロンまたはプレドニゾンの用量は、そのクールの最中に減少させる。例えば、一実施形態では、そのクールは、1日当たり約60mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの投与から開始し、そのクールが進むにつれて減少させる。
【0161】
一実施形態では、そのクールには、そのクールの1週間目に、1日当たり約60mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをヒト患者に投与すること、そのクールの2週間目に、1日当たり約40mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に投与すること、及びそのAAV粒子の注入直後の3週間目に、1日当たり約30mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に投与することが含まれる。
【0162】
いくつかの実施形態では、そのクールには、3週間目の後に、プレドニゾロンまたはプレドニゾンの投与をさらに漸減すること、例えば、漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与することが含まれる。一実施形態では、漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンには、1日当たり約20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾン、1日当たり約15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾン、1日当たり約10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾン、及び1日当たり約5mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの用量(例えば、それぞれの濃度で1回用量以上)を続けて投与することが含まれる。
【0163】
一実施形態では、漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンには、最初のクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの完了後(例えば直後)に、1日当たり約20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを患者に5日連続で投与すること、その患者に20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを5日間投与した後(例えば直後)に、1日当たり約15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に3日連続で投与すること、その患者に15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを3日間投与した後(例えば直後)に、1日当たり約10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に3日連続で投与すること、その患者に10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを3日間投与した後(例えば直後)に、1日当たり約5mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に3日連続で投与することが含まれる。
【0164】
一実施形態では、漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンには、最初のクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの完了直後に、1日当たり約30mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを患者に7日連続で投与すること、その患者に、30mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを7日間投与した直後に、1日当たり約20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に7日連続で投与すること、そのヒト対象に、20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを7日間投与した直後に、1日当たり約15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に5日連続で投与すること、その患者に、15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを5日間投与した直後に、1日当たり約10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に5日連続で投与すること、及びその患者に、10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを5日間投与した直後に、1日当たり約5mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に5日連続で投与することが含まれる。
【0165】
いくつかの実施形態では、その患者に投与する漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンの長さは、その患者において、最初のクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの終了時に肝臓炎症の徴候(例えば、第VIII因子レベル、例えば第VIII因子力価もしくは第VIII因子活性の低下、または肝臓酵素の増加によって示される場合)が依然として見られるかに基づいて定める。
【0166】
例えば、一実施形態では、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子をその患者に投与した後、かつその患者が、最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療を受けている間に、患者の血流中(例えば、患者から採取した血液試料中)の第VIII因子の第1のレベル(例えば、力価または活性)を求める。最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療の完了後に、患者の血流中の第VIII因子の第2のレベル(例えば、力価または活性)を求める。続いて、第VIII因子の第2のレベルを第VIII因子の第1のレベルと比較する。第VIII因子の第2のレベルが低下していないときには(例えば、第VIII因子の第2のレベルが、第VIII因子の第1のレベル以上、または第VIII因子の第1のレベルを下回る閾値量以上であるときには)、その患者に、3週間以内の期間にわたり、第1の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与する。第VIII因子の第2のレベルが低下しているときには(例えば、第VIII因子の第2のレベルが、第VIII因子の第1のレベル未満、または第VIII因子の第1のレベルを下回る閾値量未満であるときには)、その患者に、3週間を超える期間にわたり、第2の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与する。
【0167】
同様に、いくつかの実施形態では、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を患者に投与する前(例えば、またはそのすぐ後)に、患者の血流中の肝臓酵素の第1のレベル(例えば、肝臓酵素の力価または活性)を求める。最初のクールのグルココルチコイドステロイド治療の完了後に、患者の血流中の肝臓酵素のレベルの第2のレベル(例えば、肝臓酵素の力価または活性)を求める。続いて、肝臓酵素の第2のレベルを肝臓酵素の第1のレベルと比較する。肝臓酵素の第2のレベルが上昇していないときには(例えば、肝臓酵素の第2のレベルが、肝臓酵素の第1のレベルよりも高くないか、または肝臓酵素の第1のレベルを上回る閾値量以下であるときには)、その患者に、3週間以内の期間にわたり、第1の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与する。肝臓酵素の第2のレベルが上昇しているときには(例えば、肝臓酵素の第2のレベルが、肝臓酵素の第1のレベルよりも高いか、または肝臓酵素の第1のレベルを上回る閾値量よりも高いときには)、その患者に、3週間を超える期間にわたり、第2の漸減用量のグルココルチコイドステロイドを投与する。
【0168】
いくつかの実施形態では、第1の漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンには、最初のクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの完了後(例えば直後)に、1日当たり約20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを患者に5日連続で投与すること、その患者に20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを5日間投与した後(例えば直後)に、1日当たり約15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に3日連続で投与すること、そのヒト対象に15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを3日間投与した後(例えば直後)に、1日当たり約10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に3日連続で投与すること、その患者に10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを3日間投与した後(例えば直後)に、1日当たり約5mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に3日連続で投与することが含まれる。
【0169】
いくつかの実施形態では、第2の漸減用量のプレドニゾロンまたはプレドニゾンには、最初のクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンの完了直後に、1日当たり約30mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを患者に7日連続で投与すること、その患者に、30mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを7日間投与した直後に、1日当たり約20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に7日連続で投与すること、その患者に、20mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを7日間投与した直後に、1日当たり約15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に5日連続で投与すること、その患者に、15mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを5日間投与した直後に、1日当たり約10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に5日連続で投与すること、及びその患者に、10mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを5日間投与した直後に、1日当たり約5mgのプレドニゾロンまたはプレドニゾンをその患者に5日連続で投与することが含まれる。
【0170】
いくつかの実施形態では、そのクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンは、そのAAV粒子の投与後、免疫反応の徴候を患者において検出した後に投与する。いくつかの実施形態では、そのクールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンは、肝臓の炎症の徴候を患者において検出した後に投与する。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、そのAAV粒子の投与後、肝臓炎症についてモニタリングし、肝臓の炎症が検出されたら、患者に、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与する。
【0171】
いくつかの実施形態では、患者の血流中の第VIII因子の発現または第VIII因子の活性の急激または大幅な低下により、その対象の肝臓の炎症が示される。いくつかの実施形態では、第VIII因子活性の初期のピークが観察された後に、小幅及び/または徐々に低下する可能性もあり、この低下の後には、第VIII因子タンパク質が、やや低めのレベルで産生されている場合もあり、その場合には、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与する必要はない。例えばいくつかの実施形態では、そのAAV粒子の投与後、患者の血流中の第VIII因子の量(例えば、第VIII因子の力価または第VIII因子活性のレベル)をモニタリングし、第VIII因子の量の急激または大幅な低下が検出された場合に(例えば、第VIII因子の力価または第VIII因子活性のレベルにおいて、そのAAV粒子の投与後の患者の血流中のレベルと比べて、閾値を超える低下が検出された場合に)、その対象に、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与する。
【0172】
いくつかの実施形態では、患者の肝臓酵素のレベルの上昇により、その対象の肝臓の炎症が示される。例えば、いくつかの実施形態では、そのAAV粒子の投与後、患者の肝臓酵素のレベルをモニタリングし、肝臓酵素のレベルの上昇が検出された場合に(例えば、肝臓酵素の量において、例えば、そのAAV粒子を投与する前またはそのAAV粒子を投与した直後の患者の肝臓酵素のベースラインレベルと比べて、閾値を超える上昇が検出された場合に)、その対象に、1クールのプレドニゾロンまたはプレドニゾンを投与する。
【0173】
投与後のモニタリング
いくつかの実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号1(CS04-FL-NA)との配列同一性が高いポリヌクレオチドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の投与後に、患者において、有害反応及び/または治療有効性についてモニタリングするための方法を提供する。いくつかの実施形態では、その患者は、(a)肝臓の炎症の徴候(例えば、第VIII因子レベル(例えば、力価または活性)の急激もしくは大幅な低下、及び/または肝臓酵素(例えば、力価もしくは活性)の上昇による)、(b)患者の血流中の第VIII因子阻害抗体の増加、(c)患者の血流中のカプシドタンパク質の増加、(d)患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体の増加、ならびに(e)患者の血流中の、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその断片の増加、の1つ以上についてモニタリングされる。いくつかの実施形態では、その対象は、1つ以上の有害反応及び/または治療の無効性が検出されたら、さらに治療される。
【0174】
例えば、一実施形態では、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を用いた、血友病Aの第VIII因子遺伝子療法の有効性をモニタリングするための方法を提供する。その方法は、そのAAV粒子を患者に投与した後に、その患者の血流(例えば、その患者から採取した血液試料)に、第VIII因子阻害抗体が存在するかどうかを判断することを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、患者の血流中で、第VIII因子阻害抗体が検出されたら(例えば、そのAAV粒子を投与する前の患者におけるレベルと比べて、第VIII因子阻害抗体のレベルの上昇が検出されたら)、血友病Aを治療するための代替薬をその患者に投与することを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、血友病Aを治療するためのその代替薬は、代替形態の第VIII因子(例えば、検出された第VIII因子阻害抗体の標的となる1つ以上のエピトープを含まないか、またはそのエピトープをマスクする代替形態)である。いくつかの実施形態では、代替形態の第VIII因子は、化学修飾された第VIII因子タンパク質(例えば、化学修飾されたヒト第VIII因子タンパク質またはブタ第VIII因子タンパク質)である。いくつかの実施形態では、代替形態の第VIII因子は、ヒト以外の第VIII因子タンパク質、例えばブタ第VIII因子タンパク質に由来する、第VIII因子タンパク質である。いくつかの実施形態では、血友病Aを治療するためのその代替薬は、第VIII因子バイパス療法剤、例えば、第II因子、第IX因子及び第X因子を含む治療剤である。例えば、いくつかの実施形態では、その第VIII因子バイパス療法剤は、第VIII因子阻害バイパス活性(FEIBA)複合体、組み換え活性化第VII因子(FVIIa)、プロトロンビン複合体濃縮製剤または活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤である。
【0176】
一実施形態では、本開示のAAV粒子の投与後の患者の血流中の、第VIII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその断片のレベルをモニタリングするための方法を提供する。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。その方法は、それよりも後の時点に、第VIII因子タンパク質またはその断片をコードするポリヌクレオチドのレベルを、患者の血流中で測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む。その方法は、それよりも後の時点に、配列番号1の核酸またはその断片の、患者の血流中のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む。その方法は、それよりも後の時点に、配列番号1の核酸またはその断片の、患者の血流中のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。その方法のいくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、少なくとも14日後または少なくとも21日後である。いくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、そのAAV粒子の投与から7日後、14日後または21日後である。
【0177】
一実施形態では、そのAAV粒子の投与後の患者の血流中のカプシドタンパク質のレベルをモニタリングするための方法を提供する。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む。その方法は、それよりも後の時点に、前記患者の血流中のカプシドタンパク質のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む。その方法は、それよりも後の時点に、前記患者の血流中のカプシドタンパク質のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、カプシドタンパク質と、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む。その方法は、それよりも後の時点に、前記患者の血流中のカプシドタンパク質のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。その方法のいくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、少なくとも14日後または少なくとも21日後である。いくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、そのAAV粒子の投与から7日後、14日後または21日後である。
【0178】
一実施形態では、そのAAV粒子の投与後の患者の血流中の第VIII因子阻害抗体のレベルをモニタリングするための方法を提供する。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。その方法は、それよりも後の時点に、その患者の血流中の抗第VIII因子抗体のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。その方法は、それよりも後の時点に、その患者の血流中の抗第VIII因子抗体のレベルを測定することも含み、前記それよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。その方法は、それよりも後の時点に、その患者の血流中の抗第VIII因子抗体のレベルを測定することも含み、前記それよりも後の時点は、7日以上である。その方法のいくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、少なくとも14日後または少なくとも21日後である。いくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、そのAAV粒子の投与から7日後、14日後または21日後である。
【0179】
一実施形態では、そのAAV粒子の投与後の対象の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のレベルをモニタリングするための方法を提供する。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、前記患者の体重1キログラム当たり1.2×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む。その方法は、それよりも後の時点に、患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり5×1013個の用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、カプシドタンパク質と、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む。その方法は、それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。一実施形態では、その方法は、血友病A患者に、その患者の体重1キログラム当たり、ある用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を投与することを含み、そのAAV粒子は、最初の時点に、カプシドタンパク質と、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む。その方法は、それよりも後の時点に、前記患者の血流中の抗カプシドタンパク質抗体のレベルを測定することも含み、そのそれよりも後の時点は、7日以上である。その方法のいくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、少なくとも14日後または少なくとも21日後である。いくつかの実施形態では、そのそれよりも後の時点は、そのAAV粒子の投与から7日後、14日後または21日後である。
【0180】
臨床診断
一実施形態では、対象が、第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断するための方法を提供する。一実施形態では、その方法は、血友病Aと診断された対象から採取した末梢血試料中の免疫原性媒介物質の第1のレベルを求めることを含む。一実施形態では、その方法は、血友病Aと診断された対象に、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドの遺伝子療法剤を投与した後に、その対象から採取した末梢血試料中の免疫原性媒介物質の第1のレベルを求めることを含む。一実施形態では、対象が、その第VIII因子タンパク質に対して免疫応答を起こしている場合に、第1の投与量のステロイドをその対象に投与する。別の実施形態では、対象が、その第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしていない場合には、第1の投与量のステロイドよりも少ない第2の投与量のステロイドをその対象に投与する。
【0181】
一実施形態では、その免疫原性媒介物質の第1のレベルと、1人以上の健常な個体の末梢血中の免疫原性媒介物質の基準レベルを比較することによって、その対象が、その第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断するための方法を提供する。
【0182】
一実施形態では、その免疫原性媒介物質の第1のレベルと、血友病Aと診断されたその対象から、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法剤を投与する前に採取した第2の末梢血試料中の免疫原性媒介物質の第2のレベルを比較することによって、対象が、その第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断するための方法を提供する。
【0183】
一実施形態では、対象が、その第VIII因子遺伝子療法に対して免疫応答を起こしているかどうかを判断する方法であって、免疫原性媒介物質の第1のレベルと、血友病Aと診断されたその対象から、第1の末梢血試料を採取する前、かつ第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドの遺伝子療法剤をその対象に投与した後に採取した第2の末梢血試料中のその免疫原性媒介物質の第2のレベルを比較することを含む、方法を提供する。
【0184】
一実施形態では、その免疫原性媒介物質は、サイトカインである。別の実施形態では、そのサイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNFα)またはインターロイキン6(IL-6)である。別の実施形態では、そのサイトカインのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって求める。
【0185】
一実施形態では、その免疫原性媒介物質は、Toll様受容体(TLR)シグナル伝達経路の媒介物質である。別の実施形態では、そのTLRシグナル伝達経路の媒介物質は、CHUK、CXCL8、IFNA20P、IFNAR1、IFNAR2、IFNB1、INFE、IFNG、IFNG-AS1、IFNGR1、IFNGR2、IFNK、IFNL1、IFNL3P1、IFNL4、IFNLR1、IKBKB、IKBKE、IKBKG、IKBKGP1、IL10、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL6、IRF7、MYD88、NFKB1、NFKB2、NFKBIA、NKFBIB、NFKBIE、REL、RELA、RELB、TLR1、TLR10、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR8-AS1、TLR9及びTNFから選択したものである。
【0186】
一実施形態では、その免疫原性媒介物質は、自然免疫シグナル伝達経路の媒介物質または抗ウイルスサイトカインである。別の実施形態では、自然免疫シグナル伝達経路の媒介物質または抗ウイルスサイトカインは、CCL5、CXCL1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNB1、IFNG、IFNK、IFNL3、IL10、IL15、IL18、IL22、IL6、LTA及びTNFから選択したものである。
【0187】
一実施形態では、その免疫原性媒介物質は、核因子κB(NF-κB)シグナル伝達経路の媒介物質である。別の実施形態では、NF-κBシグナル伝達経路の媒介物質は、BAX、BCL2、BCL2L1、CASP1、CASP7、CASP8、CASP9、TRAF1、TRAF2、CCR5、CCR7、CD4、CD40LG、CD44、CD80、CD83、CD86、CR2、HLA-A、ICOS、IL15RA、IL2RA、TNFRSF14、TNFRSF9、AKT1、EIF2AK2、LCK、MAP3K1、MAP3K14、RIPK1、RAF1、NFKB1、NFKB2、REL、RELA、RELB、TBP、CYLD、ILBKB、ILBKE、ILBKG、ILBKGP1、NFKBIA、NFKBIB、NFKBIE、CHUK、CCL1、CCL22、CCL4、CCL5、CXCL10、CXCL3、CXCL6、CXCL8、CXCR5、IFNB1、IFNG、IFNL1、IL12B、IL15、IL17A、IL1A、IL1RN、IL23A、IL32、IL4、IL5、IL6、IL9、TNFAIP3、TNFSF10、ICAM1、ITGA2、ITGA2B、ITGA5、ITGA6、ITGA6-AS1、PECAM1及びVCAM1から選択したものである。
【0188】
一実施形態では、第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号1(CS04-FL-NA)の核酸配列である。一実施形態では、ウイルスベクターにより、その第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを対象に投与する。別の実施形態では、そのウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。別の実施形態では、そのAAVベクターは、セロタイプ8AAVベクター(AAV8)である。一実施形態では、その遺伝子療法により、その第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを2×1012コピーという用量で投与する。別の実施形態では、その遺伝子療法により、その第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを6×1012コピーという用量で投与する。別の実施形態では、その遺伝子療法により、その第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを1.8×1013コピーという用量で投与する。別の実施形態では、その遺伝子療法により、その第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを1.2×1013コピーという用量で投与する。一実施形態では、その遺伝子療法により、その第VIII因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを5×1013コピーという用量で投与する。
【実施例
【0189】
IV.実施例
実施例1-コドン変更型の第VIII因子バリアント発現配列の構築
血友病Aの遺伝子療法に有効である第VIII因子コード配列を作製するためには、2つの障害を克服する必要があった。第1に、従来の遺伝子療法用送達ベクター(例えばAAVビリオン)には、ゲノムサイズに制限があるため、コードされる第VIII因子ポリペプチドは、かなり短くしなければならなかった。第2に、そのコード配列を改変して、(i)その送達ベクター内のパッケージング相互作用を安定化し、(ii)仲介物質であるmRNAを安定化し、(iii)そのmRNAの転写/翻訳のロバスト性を改善する必要があった。
【0190】
第1の目的を達成するために、本出願人は、Bドメインを欠失した第VIII因子バリアントコンストラクトから開始し、このコンストラクトは、本明細書では「FVIII-BDD-SQ」と称されている。このコンストラクトでは、Bドメインが、「SQ」配列という14アミノ酸の配列に置き換えられている。組み換えFVIII-BDD-SQは、REFACTO(登録商標)という商品名で販売されており、血友病Aの管理に有効であることが示されている。しかしながら、FVIII-BDD-SQの天然型のコード配列は、第VIII因子の重鎖及び軽鎖のヒト野生型核酸配列を含むが、遺伝子療法用ベクターでの発現が効果的ではない。
【0191】
天然型のFVIII-BDD-SQの発現不良に対処するために、Fathらの文献(PLoS ONE,6:e17596(2011))に記載されているコドン最適化アルゴリズムを、Wardらの文献(Blood,117:798(2011))及びMcIntoshらの文献(Blood,121,3335-3344(2013))に記載されているように改変したものをFVIII-BDD-SQ配列に適用して、第1の中間体コード配列CS04aを作製した。しかしながら、その改変アルゴリズムを用いて作製したCS04a配列は、その配列のさらなる修飾によって改善可能であることを本出願人は認識した。したがって、本出願人は、CpGジヌクレオチドを再導入し、アルギニンのCGCコドンを再導入し、ロイシンコドン及びセリンコドンの分布を変更し、高度に保存されたコドン対を再導入し、潜在性のTATAボックス、CCAATボックス及びスプライス部位エレメントを除去した一方で、CpGアイランド、ならびにATリッチ及びGCリッチな領域が局所的に過剰出現しないようにした。
【0192】
まず、その改変アルゴリズムでは、CpGジヌクレオチドを含むコドン(例えばアルギニンコドン)を非CpGのジヌクレオチドコドンに体系的に置き換えるとともに、近隣のコドンによって作られるCpGジヌクレオチドを排除/回避する。CpGジヌクレオチドをこのように厳格に回避することは通常、DNAワクチンの筋肉内注射後に、TLRに誘導される免疫作用を予防する目的で行われる。しかしながら、そのようにすることで、コドン最適化の可能性が制限される。例えば、この改変アルゴリズムでは、アルギニンコドンCGXの完全なセットの使用が排除される。これは特に、ヒト細胞での発現のために遺伝子がコードされる際に問題を生じさせる。CGCは、高度に発現するヒト遺伝子において最も頻繁に使われるアルギニンコドンであるからである。加えて、近隣のコドンによってCpGが作られるのが回避されることにより、最適化の可能性がさらに制限される(例えば、一緒に利用し得るコドン対の数が制限される)。
【0193】
TLRに誘導される免疫作用は、肝臓指向性のAAVベースの遺伝子療法に付随する問題ではないと予想されるので、中間体コード配列CS04a、優先的には第VIII因子軽鎖をコードする配列(例えば、FVIII-BDD-SQコード配列の3’末端)に、CpGを含むコドン及びCpGを作る近隣のコドンを再導入した。これにより、好ましいヒトコドン、特にアルギニンのコドンの使用頻度が向上する。しかしながら、CpG部位の頻度が高いコード配列領域であるCpGアイランドが作られないように注意した。これは、転写開始部位の下流のCpGドメインが、高レベルの遺伝子発現を促すと示唆しているKrinnerら(Nucleic Acids Res.,42(6):3551-64(2014))の教示とは対照的である。
【0194】
第2に、この改変アルゴリズムでは、ロイシンのCTG、バリンのGTG及びグルタミンのCAGのような特定のコドンのみが適用される。しかしながら、これは、例えば、Haasらの文献(Current Biology,6(3):315-24(1996))で提示されているような、バランスの取れたコドン使用という原理に反する。この改変アルゴリズムによる好ましいコドンの過剰使用を考慮するために、コドン変更に適用される他の規則(例えば、CpG頻度及びGC含有率)で許容される場合に、代替的なロイシンコドンを再導入した。
【0195】
第3に、この改変アルゴリズムでは、特定の基準(例えば、CGジヌクレオチドの存在)を満たすときには、それらのコドン対が天然においてどの程度保存されているかにかかわらず、それらのコドン対を置き換える。進化によって保存されてきたと思われる有益な特性を考慮するために、コドン変更に適用される他の規則(例えば、CpG頻度及びGC含有率)で許容される場合に、例えば、Tatsらの文献(BMC Genomics 9:463(2008))に記載されているように、最も保存されたコドン対のうち、そのアルゴリズムによって置き換えられたコドン対、及び最も保存された好ましいコドン対を解析し、調節した。
【0196】
第4に、その中間体コード配列で使われるセリンコドンも再操作した。具体的には、セリンコドンAGC、TCC及びTCTをその改変コード配列に、さらに高い頻度で導入して、ヒトコドン使用頻度への全体的なマッチ度を向上させた(Haas et al.による上記文献)。
【0197】
第5に、TATAボックス、CCAATボックスエレメント及びイントロン/エクソンスプライス部位をスクリーニングし、その改変コード配列から除去した。そのコード配列を改変するときには、ATリッチまたはGCリッチな領域が局所的に過剰出現しないように注意した。
【0198】
最後に、そのコード配列内のコドン使用頻度を最適化したのに加えて、中間体コード配列CS04aをさらに精緻化するときに、その基本的なAAVビリオンの構造的要件を検討した。AAVベクター(例えば、AAVビリオンの核酸部分)は、そのカプシド内に、一本鎖DNA分子としてパッケージングされる(概説については、Daya and Berns,Clin.Microbiol Rev.,21(4):583-93(2008)を参照されたい)。したがって、そのベクターのGC含有率は、ゲノムのパッケージング、ひいては、作製中のベクター収量に影響を及ぼす可能性が高い。多くのアルゴリズムのように、本発明で使用した改変アルゴリズムでは、GC含有率が少なくとも60%である最適化遺伝子配列が作られる(Fath et al.,PLoS One,6(3):e17596(2011)(erratum in:PLoS One,(6)3(2011)を参照されたい)。しかしながら、AAV8カプシドタンパク質は、GC含有率が約56%と低めなヌクレオチド配列によってコードされる。したがって、天然型のAAV8カプシドタンパク質コード配列をさらに模倣するために、中間体コード配列CS04aのGC含有率を56%まで低下させた。
【0199】
得られたCS04コード配列は、図2に示されており、その全体的なGC含有率は56%である。その配列のCpGジヌクレオチド含有率は、中程度である。しかしながら、CpGジヌクレオチドは主に、そのコード配列の下流部分、例えば、第VIII因子軽鎖をコードする部分にある。CS04配列は、野生型第VIII因子(GenbankアクセッションM14113)における対応するコード配列とのヌクレオチド配列同一性が79.77%である。
【0200】
比較目的で、コドン最適化されたいくつかの他のReFactoコンストラクトを調製した。ReFactoコンストラクトCS08は、Radcliff et al.,Gene Therapy,15:289-97(2008)に記載されているように、コドン最適化した。この文献の内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に明示的に援用される。コドン最適化されたReFactoコンストラクトCS10は、Eurofins Genomics(Ebersberg,Germany)から入手した。コドン最適化されたReFactoコンストラクトCS11は、Integrated DNA Technologies,Inc.(Coralville,USA)から入手した。コドン最適化されたReFactoコンストラクトCH25は、ThermoFischer ScientificのGeneArtサービス(Regensburg,Germany)から入手した。ReFactoコンストラクトCS40は、野生型第VIII因子のコード配列からなる。これらの各ReFactoコード配列間の配列同一性は、下記の表2に示されている。
【0201】
(表2)コドン変更型の第VIII因子コンストラクトの同一性パーセントのマトリックス
【0202】
それぞれ異なる合成DNA断片を同じベクター骨格プラスミド(pCh-BB01)にクローニングすることによって、各コンストラクトのプラスミドを構築した。酵素制限部位AscI及びNotIにより隣接されたRefacto型BDD-FVIII断片のDNA合成は、ThermoFischer Scientific(Regensburg,Germany)が行った。そのベクター骨格は、隣接するAAV2由来の2つの逆位末端反復配列(ITR)を含み、それらには、肝特異的なマウストランスサイレチン遺伝子に由来するプロモーター/エンハンサー配列、それぞれのRefacto型BDD-FVIIIを挿入するための酵素制限部位AscI及びNotI、ならびに合成ポリA部位が含まれる。AscI部位及びNotI部位を介して、その調製したベクター骨格とインサートとをライゲーションした後、得られたプラスミドをミリグラム単位で増幅した。そのコンストラクトのRefacto型BDD-FVIII配列をダイレクトシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によって確認した。このクローニングにより、pCS40、pCS04、pCS08、pCS10、pCS11及びpCh25(図14)という7個の異なるプラスミドコンストラクトを得た。これらのコンストラクトは、同じベクター骨格を有し、Bドメインが欠失された同じFVIIIタンパク質(Refacto型BDD-FVIII)をコードするが、FVIIIコード配列が異なる。
【0203】
Griegerらの文献(Mol.Ther.,Oct 6.(2015)doi:10.1038/mt.2015.187.[Epub ahead of print])に記載されているように、3つのプラスミドをトランスフェクションする方法によって、AAV8ベースのベクターを調製した。この文献の内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に明示的に援用される。対応するFVIIIベクタープラスミド、ヘルパープラスミドpXX6-80(アデノウイルスのヘルパー遺伝子を有する)、及びパッケージングプラスミドpGSK2/8(rep2遺伝子及びcap8遺伝子をもたらす)を用いて、プラスミドをトランスフェクションするのに、HEK293懸濁細胞を使用した。そのAAV8コンストラクトを単離するために、Griegerらの文献(2015、上記)に記載されているように、イオジキサノール勾配を用いて、1リットルの培養液の細胞ペレットを処理した。この手順により、vCS04、vCS08、vCS10、vCS11及びvCH25というベクター調製物を得た。AAV2逆位末端反復配列を標的とするUniversal qPCR手順(Aurnhammer,Human Gene Therapy Methods:Part B,23:18-28 2012))を用いて、qPCRによって、ベクターを定量した。AAV2逆位末端反復配列を有するコントロールベクタープラスミドを標準曲線の作成用とした。得られたvCS04コンストラクトは、配列番号8として、図7A~7Cに示されている。
【0204】
そのベクターゲノムの完全性をAAVのアガロースゲル電気泳動によって解析した。その電気泳動は、Fagone et al.,Human Gene Therapy Methods 23:1-7(2012)に記載されているようにして行った。簡潔に述べると、AAVベクター調製物を75℃で10分、0.5%のSDSの存在下でインキュベートしてから、室温まで冷却した。1レーン当たりおよそ1.5E10個のベクターゲノム(vg)を1% 1×TAEのアガロースゲルに流し、60分間、7V/cmのゲル長さで電気泳動した。続いて、そのゲルを2×GelRed(Biotiumカタログ番号41003)溶液で染色し、ChemiDocTMMP(Biorad)によってイメージングした。図15に示されている結果により、ウイルスベクターvCS04及びvCS40が、同じサイズのゲノムを有することが示されており、これは、5kbの範囲の明確なバンドによって示されている(図15、レーン2~4)。およそ5.2kbのベクターサイズにもかかわらず、そのゲノムは、均一なバンドであり、(4.7kbというAAV野生型ゲノムに対して)いくらか大きめのゲノムが正確にパッケージングされたことが確認される。他のすべてのvCSベクター調製物で、同じゲノムサイズが見られる(データは示されていない)。
【0205】
カプシドタンパク質の予想パターンを確認するために、ベクターvCS04及びvCS40で、SDS PAGEの後に、銀染色を行った(図16)。この図に示されているように、下流の精製手順により、高精製物質が得られ、予想通り、VP1、VP2及びVP3のタンパク質パターンが示された(図16、レーン2~4)。他のすべてのウイルス調製物で、同じパターンが見られた(不図示)。AAV調製物のSDS-PAGE手順は、標準的な手順に従って行った。各レーンに、それぞれのウイルスコンストラクトを1E10vgで含め、4~12%のBis-Tris(NuPAGE(登録商標)Novex,Life Technologies)ゲルで、メーカーの指示に従って分離した。銀染色は、SilverQuest(商標)キット(Novex,Life Technologies)で、メーカーの指示に従って行った。
【0206】
驚くべきことに、AAVベクターvCS04は、野生型のコードコンストラクトvCS40及びコドン最適化されたその他のコンストラクトと比べて、ビリオンのパッケージング量が多く、これは、AAVウイルス産生量が増加したことによって測定した。表3に示されているように、そのvCS04ベクターは、vCS40よりも実質的に多く複製され、AAV力価の値が5~7倍上昇した。
【0207】
(表3)AAVベクターコンストラクトvCS04及びvCD40で得られた、細胞培養液(細胞ペレットから精製したもの)1リットル当たりの収量
【0208】
実施例2-コドン変更型の第VIII因子バリアント発現配列のin vivo発現
本開示のコドン変更型の第VIII因子バリアント配列の生物学的効力を試験するために、実施例1に記載されているReFacto型のFVIIIコンストラクトを第VIII因子欠失マウスに投与した。簡潔に述べると、このアッセイは、C57Bl/6 FVIIIノックアウト(ko)マウス(1群当たり6~8匹)において、マウスの体重1キログラム当たり4E12個のベクターゲノム(vg)を尾静脈注射することによって行った。注射から14日後に、血液を眼窩後部穿刺によって採取し、標準的な手順を用いて、血漿を調製及び凍結した。14日目の発現レベルを選択した。この時点においては、阻害抗体の影響が最小限であるからである。14日目よりも後では、このマウスモデルの数匹において、阻害抗体の影響が見られる。メーカー(Technoclone,Vienna,Austria)から提案されたもの、ほんのわずかな改変を加えた状態で行ったTechnochrome FVIIIアッセイを用いて、マウス血漿中のFVIII活性を求めた。このアッセイでは、その血漿試料は適宜、トロンビン、活性化第IX因子(FIXa)、リン脂質、第X因子及びカルシウムを含むアッセイ試薬で希釈及び混合した。トロンビンによるFVIIIの活性化の後、FIXa、リン脂質及びカルシウムとの複合体が形成される。この複合体は、FXを活性化して、活性化FX(FXa)にし、ひいては、このFXaが、パラニトロアニリド(pNA)を発色基質から切断する。pNA形成の動態を405nmで測定する。その比率は、試料におけるFVIII濃度に正比例する。FVIII濃度を基準曲線から読み取り、結果を1ミリリットル当たりのIU FVIIIで示す。
【0209】
下記の表4に示されている結果により、市販のアルゴリズムを用いて設計したコドン変更型配列(CS10、CS11及びCH25)では、野生型のBDD-第VIII因子コンストラクト(CS40)と比べて、BDD-第VIII因子が中程度(3~4倍)にしか増加しなかったことが示されている。同様に、Radcliffeらの文献に記載されているようにして調製したコドン変更型のBDD-第VIII因子コンストラクト(CS08)でも、BDD-FVIIIの発現は3~4倍しか増加しなかった。この結果は、Radcliffらの文献で報告された結果と一致している。驚くべきことに、CS04コンストラクトでは、in vivoでの生物学的効力アッセイにおいて、BDD-FVIIIの発現が大幅に多かった(例えば、74倍増加)。
【0210】
(表4)様々なAAVベクターコンストラクトによって誘導した、FVIIIノックアウトマウスの血漿でのFVIII発現
【0211】
実施例3-マウスにおけるヒトFVIII遺伝子療法用ベクターの非臨床効果及び毒性評価
血友病Aは、第VIII因子(FVIII)の欠失または異常を原因とする遺伝性の出血障害であり、血漿由来または組み換えの因子濃縮製剤で治療する。これらの濃縮製剤は、適切なFVIIIレベルを維持して、出血イベントを制御及び予防するために、定期的に注入する必要がある。タンパク質補充療法の課題に鑑みると、遺伝子療法は、血友病A患者に、代替的な治療手法をもたらす可能性がある。機能的なF8遺伝子のコピーを標的の肝細胞に導入して、FVIIIの内在発現を誘導することによって、頻繁に凝固因子を注入する必要がなくなる可能性がある。
【0212】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースの遺伝子療法には、血友病A患者において、臨床上の利点をもたらす可能性がある。コドン最適化された第VIII因子コンストラクトCS04を含む、組み換え(r)AAV8ベースの遺伝子療法用ベクターは、コドン最適化されたヒトBドメイン欠失FVIII(BDDFVIII)導入遺伝子を肝特異的トランスサイレチンプロモーターの制御下で送達するように設計されている。このコンストラクトを用いて、F8ノックアウト(ko)マウスにおいて、FVIII活性についての用量と応答との関係を調べ、1回静脈内投与後の毒性を評価した。
【0213】
簡潔に述べると、この治療の有効性を試験するために、1群当たり12匹の雄のFVIIIノックアウトマウスに、ベクターカプシド粒子(cp)を1kg当たり3.0×1011個、1.2×1012個もしくは3.0×1012個、または緩衝液を10mL/kg、1回静脈内投与した。8週間にわたり、眼窩後部血液試料を隔週で採取し、FVIIIについて、発色アッセイを用いて解析した。生存中の最後の血液採取から得た血漿試料は、FVIII結合中和抗体の解析にも用いた。観察期間の終了時に、尾先端出血アッセイを用いて、止血制御を評価した。
【0214】
試験の終了時、結合抗体及び中和抗体に対して試験で陽性であった4匹のマウス(3.0×1012cp/kgのベクターで処置した)以外のすべての試料は、抗BDD-FVIII結合抗体に対して陰性であった。陽性であったマウスは、FVIII活性レベル及び尾先端出血アッセイにおける失血の統計解析から除外した。試験期間にわたって計算したところ、血漿中FVIII活性は、1.2×1012cp/kgのベクターの投与によって平均0.6IU/mLに、または3.0×1012cp/kgのベクターの投与によって平均1.9IU/mLに、用量依存的に向上したが、緩衝液または3.0×1011cp/kgのベクターで処置したマウスでは、FVIII活性は、定量下限(LLOQ)未満であった(図17)。
【0215】
有効性は、尾先端出血アッセイにおいて、63日目に評価した。60分にわたる失血が、体重1g当たりのmgで、図18に示されている。緩衝液または3.0×1011cp/kgの遺伝子療法用ベクターで処置したマウスで、同程度の失血(それぞれ、6.1mg/g及び7.5mg/g)が見られ、検出可能なFVIII活性が見られなかったことと整合していた。遺伝子療法用ベクターの用量が多いほど、失血が用量依存的に有意に低下した(1.2×1012:0.6mg/g、3.0×1012:0.4mg/g、ヨンクヒール-タプストラ検定:片側P値<0.001)。
【0216】
このコンストラクトの毒性を試験するために、雄のC57BL/6Jマウス(1群当たりn=20匹)に、1×1013cp/kg、3×1013cp/kgもしくは5×1013cp/kgの1回ボーラス用量のベクター、または処方緩衝液を静脈内注射した(表5)。毒性の評価は、臨床徴候、体重、飼料消費量、眼科的状態、臨床病理状態及び解剖学的病理状態をベースとした。各コホートから得た5匹のマウスで完全な検死を行い、肉眼的知見、器官の重量及び顕微鏡観察結果を記録した。定量ポリメラーゼ連鎖反応による生体内分布評価のために、各コホートのさらに5匹のマウスから組織を採取した。投与前及び検死時に、血液を採取した。FVIII活性、BDD-FVIII抗原、抗BDD-FVIII結合抗体、抗BDD-FVIII中和抗体及び抗AAV8結合抗体を解析した。
【0217】
(表5)毒性試験のデザイン
【0218】
遺伝子療法用ベクターを最大で5×1013cp/kgで1回、静脈内ボーラス投与したところ、十分な忍容性があったことが分かった。試験中の死亡は見られず、臨床徴候または投与後の観察結果は、ベクターの投与に関連するとは見られなかった。芳しくない眼科的所見も観察されなかった。体重または飼料消費量に対する影響も観察されなかった。臨床での化学的パラメーター、血液学的パラメーターまたは検尿パラメーターの変化も観察されなかった。また、毒性に関連する肉眼的な所見または顕微鏡的な所見も、遺伝子療法用ベクターの投与との関連は見られなかった。
【0219】
FVIII活性及びBDD-FVIII抗原の評価結果は、ばらつきが大きい傾向があり、これは、ヒトBDD-FVIIIに対する中和抗体が作られた結果である可能性が最も高い。しかしながら、すべてのベクター群における個々のマウスは、3日目、3週間目及び18週間目に、大まかなベースラインレベルを上回る活性が見られた(データは示されていない)。摘出した組織試料において、ベクターDNAは、主に肝臓で検出された。肝臓及びその他の組織への生体内分布は、用量相関性があり、概して、最初期の時点に最も高く、時間とともに低下した。脳及び精巣内でのベクターDNAの存在量は、時間とともに有意に低下し、多くのマウスでは、18週目までに、アッセイのLLOQ未満となった(図19)。
【0220】
勘案すると、これらの結果により、コドン最適化されたBDD-FVII遺伝子療法は、FVIIIノックアウトマウスに、1.2×1012cp/kg以上の用量で投与すると有効であるということが示されている。無毒性量は、この毒性試験で試験した最大用量であった5.0×1013cp/kgであると考えられた。
【0221】
実施例4-マウスにおけるヒトFVIII遺伝子療法用ベクターの非臨床効果及び毒性評価
血友病A患者の遺伝子療法用に、血液凝固第VIII因子(FVIII)をコードするCS04コンストラクトを含むベクターを調製した。その一本鎖(SS)アデノ随伴ウイルス(AAV8)ベースのベクターは、肝特異的トランスサイレチン(TTR)プロモーターの制御下で、コドン最適化されたヒトBドメイン欠失FVIII(BDD-FVIII)導入遺伝子を送達するように設計されている。
【0222】
1回静脈内(i.v.)注射を受けた雄のFVIIIノックアウト(ko)マウスにおいて、尾先端出血アッセイで、FVIIIの血漿中活性及び止血効果を評価した。血漿中FVIII活性は、1.0x1012cp/kg以上の用量で検出可能であった。血漿中FVIII活性の用量依存的な向上は、失血の用量依存的な減少に従って見られた。
【0223】
そのベクターを1.9x1012cp/kg~5.0x1013cp/kgの範囲で1回i.v.ボーラス投与した場合の毒性及び生体内分布の評価を、雄のC57BL/6Jマウスにおいて行った。そのデータにより、最高用量(5.0×1013cp/kg)でも、死亡、有害な臨床徴候、または有害な投与後観察結果が見られなかったことが示されている。生体内分布プロファイリングにより、主に肝臓で検出されたことが示され、低用量に関連して他の組織で見られるベクターDNAは、概ね時間とともに減少した。無毒性量(NOAEL)は、この毒性試験で試験した最大用量であった5.0x1013cp/kgという用量であった。組み込み部位解析により、ベクターの組み込みが最小限であったことが示され、以前に肝細胞癌の形成に関係があるとされた遺伝子またはその遺伝子近傍において、クローン性増殖も、優先的組み込みも観察されなかった。勘案すると、これらの臨床前試験により、安全性及び有効性の良好なプロファイルが示されている。
【0224】
いくつかの実施形態では、マウスに投与した投与量は、“Guidance for Industry-Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers,”U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration,Center for Drug Evaluation and Research(CDER),July 2005,Pharmacology and Toxicologyに示されているガイダンスに従って、ヒト用の投与量に変換でき、この文献の内容は参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される。
【0225】
実施例5-コドン最適化されたBドメイン欠失第VIII因子導入遺伝子で処置した重度の血友病A患者から得た末梢血中の免疫構成要素の翻訳解析
血友病A患者の遺伝子療法用に、血液凝固第VIII因子(FVIII)をコードするCS04コンストラクトを含むベクターを調製した。その一本鎖(SS)アデノ随伴ウイルス(AAV8)ベースのベクターは、肝特異的トランスサイレチン(TTR)プロモーターの制御下で、コドン最適化されたヒトBドメイン欠失FVIII(BDD-FVIII)導入遺伝子を送達するように設計されている。
【0226】
方法:重度のHAであるとともに、阻害物質歴がない18~75歳の男性は、年間出血回数(ABR)が3回以上であったか、またはFVIIIによる予防治療を用いており、曝露日数が150日超であった場合には適格とした。患者を2つの漸増用量コホートで処置した(コホート1は、2×1012個のカプシド粒子(cp)/kg、コホート2は、6×1012cp/kgであった)。安全性評価には、ベクターの注入に対する寛容性、カプシドまたは導入遺伝子産物の免疫原性、ベクターの排出、有害事象(AE)及び重篤なAE(SAE)が含まれる。有効性評価には、FVIIIの発現、ABR、及び外因性FVIIIの利用が含まれる。
【0227】
一次的な結果:4人の患者(各コホートにおいてn=2人)に、そのベクターの静脈内注入を行った。4人全員が、登録前に、FVIIIによる予防を利用していた(ABRは0~2)。解析時に、すべての患者は、10カ月以上の追跡調査を受けていた。注入に対する反応は観察されず、FVIII阻害物質または血栓症も見られなかった。合わせて61件のAEが記録され、14件は、副腎皮質ステロイドの使用に関するものであり、8件は、そのベクターに関するものであった。注入から1カ月後に、重度の低リン血症というSAEが1件報告された。FVIII活性のピークは、注入から4~9週間後に見られ、用量依存的であった(コホート1[n=2]:3.8%、11%、コホート2[n=2]:54.7%、69.4%)。試験患者の特徴及び時間的経過は、図20A~20Dに示されている。すべての患者において、トランスアミナーゼのわずかな上昇が見られ、副腎皮質ステロイドの投与(n=3)または副腎皮質ステロイドによる予防(n=1)を行った。副腎皮質ステロイドの漸減中、FVIIIの発現は有意に減少し、4人の患者のうち3人で、FVIII補充を再開した。
【0228】
二次的な結果:ベースライン時、ならびに注入から30分後、4時間後、8時間後及び24時間後に、サイトカイン解析のための試料を採取した。スクリーニング時、1週目、そしてそれ以降、34週目まで週に2回、全血算(CBC)、結合及び中和免疫グロブリンアッセイ値を収集した。18週目から144週目まで、プロトコールごとに、収集間隔を16週間に1回まで長くした。同様の時点に、酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイ値を52週目まで収集した。
【0229】
市販の方法を用いて、ELISAによって、血清中サイトカイン、ならびにAAV及びFVIIIに対する結合抗体を測定した。図21に報告されているように、いずれの患者でも、注入に対する反応は見られず、注入時、血清中サイトカインの有意な変化も観察されなかった。
【0230】
Konkle et al.,Blood,137(6):763-74(2001)に記載されているように、in vitroでのトランスダクションの阻害に基づく中和抗体アッセイを行った。簡潔に述べると、対象血清の2倍段階希釈液をAAV-ルシフェラーゼと1:1で混合し、2時間、37℃でインキュベートしてから、組織培養液でHuh7を感染させるのに使用した。24時間後、ルシフェリンを加え、ルシフェラーゼ活性を発光測定装置によって定量した。コントロールと比べて50%以上のルシフェラーゼ活性を阻害した、対象血清の最大希釈率をNAb力価として記録した。注入後、AAVカプシド抗原に対する中和抗体及び結合抗体を観察した。図22A~22Bに示されているように、すべての患者は、2週目までにセロコンバージョンを起こし、抗AAV8中和抗体の力価が持続的に高くなった。FVIII阻害物質、BDD FVIIIに対するIgG及びIgM、ならびにFVIIIに対するIgMは、いずれの対象でも、いずれの時点にも検出されなかった。1人の患者で、いくつかの時点に、FVIIIに対する結合IgGが一過的に低い力価で検出され、臨床上の続発症は見られなかった。
【0231】
ELISPOTアッセイは、以前にKonkle et al.,Blood,137(6):763-74(2001)で説明されたようにして行った。PBMCを用いて、AAV抗原及びFVIII-BDD抗原に対するT細胞応答に関するIFN-γ ELISpotアッセイ値を評価した。10アミノ酸配列ごとに重複している15merのペプチドからなるライブラリーを作製し、対象とするタンパク質全体を広げ、3プールに編成した。プレートを滅菌PBS中のヒトIFN-γコーティング抗体でコーティングし、洗浄し、完全培地でブロックした。試験対象から得た新鮮なPBMCをリンパ球培養培地で2×10細胞/mLの濃度に調節し、ウェルに加えた。18~24時間、37℃で刺激した後、プレートを洗浄し、ヒト抗IFN-γ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とインキュベートしてから、アビジン-HRPとインキュベートした後に、AEC発色試薬とインキュベートした。AID ELISpot Readerを用いて、ヒトIFN-γによる活性化数を定量した。ELISpotアッセイは、FVIII導入遺伝子の発現喪失またはトランスアミナーゼ上昇と一致しなかった(図23A~23D)。全血算集団の有意な変化は観察されなかったが、高用量のグルココルチコイドの使用に対応して、全WBC数及び好中球数の一過性の増加が観察された(不図示)。
【0232】
トランスクリプトミクス用試料の調製:注入前、注入から8時間後、1~14週間後、4カ月後、5カ月後、6カ月後、9カ月後及び12カ月後に、トランスクリプトミクス用に、同意した3人のHA患者の全血試料を採取した。コントロールである健常なボランティア試料は、StemCell Technologiesから購入した。全血試料をPAXGeneチューブに集め、-80℃のフリーザーで保存した。全RNAをmiRNA Mini Kitで抽出した。調製物には、全RNA抽出物が含まれ、ヘモグロビンmRNAを枯渇させ、バルクmRNAseqライブラリーを構築してから、シーケンシングした。
【0233】
解析:IlluminaのTruSeq SR Cluster Kit V3を用いて、Illumina cBotシステムフローセルでクラスターを生成するために、個々にインデックスを付与した等量の6個のcDNAライブラリーを8pMの濃度でプールし、IlluminaのHiSeqシステムで、TruSeq SBSキットを用いて、100サイクルシーケンシングした。各試料で、およそ5千万本のシーケンスリードを生成した。シーケンスリードのデマルチプレックスを行い、CASAVA1.8というソフトウェアを用いて、fastqファイルにエクスポートした。OmicSoft ArraySuiteというソフトウェア(バージョン10.2.3.10)及びR(バージョン3.6.1)を用いて、データ解析を行った。OmicSoftでOSA4のアルゴリズムを用いて、リードを参照ゲノムにアラインメントした。filterByExprでデフォルトパラメーターを用いて、発現遺伝子をフィルタリングしたとともに、trimmed mean of M (TMM)を用いて、カウント数を正規化したが、いずれの方法もedgeR(バージョン3.26.8)で行った。PCAtoolsライブラリー(バージョン2.6.0;分散により、1%未満の遺伝子を除外)を用いて、発現遺伝子のTMMをさらに主成分解析(PCA)に使用して、各試料の全体の分散を確認した。カスタムメイドで書かれたRプログラム(Rコードチーム バージョン3.3.2)を用いて、遺伝子のクラスター生成を行った。GraphPad Prism8.2.1で、遺伝子クラスターを可視化した。このトランスクリプトミクス解析のワークフローは、図24に示されている。
【0234】
トランスクリプトミクス解析では、バルクmRNAを用いたところ、NK細胞、樹状細胞、IL-6、TLR1~8、STING-C Gas経路またはT細胞経路のシグナルの有意な変化は示されなかった。注入から8時間後に、TLR9、TNF-α、CCL5及びIRF7のシグナルが一過性に微増したが、1型IFNの応答は活性化しなかった(図25A~25D及び26A~26D)。末梢血において、古典的及び非古典的なNFκBシグナル伝達経路、ケモカイン/サイトカイン、アポトーシス及び細胞接着経路はアップレギュレートしなかった(図27A~27D)。小胞体ストレス経路のアップレギュレーションは観察されなかった。
【0235】
考察/結論:そのベクターの安全性プロファイルは、AAV8ベースの遺伝子療法と整合していた。最初のベクター由来のFVIII発現は、着実な減少を示し、トランスアミナーゼの上昇と整合した。副腎皮質ステロイドの使用によっても、FVIII発現の喪失は予防されなかった。
【0236】
この実施例では、用量依存的なFVIII活性ピークが観察され、出血イベントの一時的な解消及び第FVIII因子注入の低減と相関した。しかしながら、FVIIIの発現は、副腎皮質ステロイドの漸減中に有意に減少し、その後、すべての患者は、FVIII補充を再開した。最初のベクター由来のFVIII発現は、着実な減少を示し、これは、副腎皮質ステロイドの使用によっても予防されなかったトランスアミナーゼ上昇と整合した。AAV8に対する免疫グロブリンは、依然として、再投与に関連する重大な課題であり、高い力価が少なくとも12カ月間持続し、数年続くこともある。
【0237】
AAV遺伝子療法の研究の多くでは、末梢血を循環するT細胞の、ELISPOTによる応答を用いて、免疫抑制を評価し、これを誘導する。本試験では、ELISPOTの結果は、トランスアミナーゼの上昇またはFVIII発現の喪失とは相関しなかった。
【0238】
末梢血における探索的なトランスクリプトミクス解析により、炎症に関連する一過性の免疫応答が最小限であったことが示された。評価した免疫原性経路の大半では、健常コントロールとの違いは見られなかった。AAV遺伝子療法を血友病Aに合わせて最適化する試みでは、標的組織特異的な解析に注力して、既存の中和抗体を除去し、前臨床の免疫原性モデルを開発すべきである。
【0239】
本明細書に記載されている実施例及び実施形態は、例示のためのものに過ぎないとともに、当業者には、それらの実施例及び実施形態に鑑み、様々な修正形態または変更形態が示唆されることになり、それらの形態は、本願の趣旨及び範囲、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることは理解される。本明細書に引用されている刊行物、特許及び特許出願はいずれも、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に援用される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
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図27A
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図27D
【配列表】
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【国際調査報告】