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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】固形医薬投与形態の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20240717BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240717BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240717BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240717BHJP
   A61K 31/216 20060101ALN20240717BHJP
   A61K 31/192 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K47/04
B33Y10/00
B33Y70/00
A61K31/216
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500275
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022068523
(87)【国際公開番号】W WO2023280816
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184527.6
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ボグダン、 マルテ
(72)【発明者】
【氏名】シラー、 シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ハルムス、 メイケ
(72)【発明者】
【氏名】プライス、 ダニエル ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェデル、 マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ガイスラー、 サイモン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー、 フィン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076DD29
4C076EE06
4C076EE32
4C076FF01
4C076FF05
4C076FF33
4C076GG01
4C076GG02
4C076GG05
4C076GG17
4C076GG18
4C206DA24
4C206DB13
4C206DB45
4C206KA01
4C206MA55
4C206ZB11
4C206ZC33
(57)【要約】
本発明は、3D印刷プロセスを用いたメソポーラスシリカを含む固形医薬投与形態の製造方法に関する。この方法は、薬剤を担持したメソポーラスシリカを含む固形医薬投与形態を、容易かつ柔軟な方法で、医薬品の製造に要求される高品質基準に準拠して製造することができる印刷方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法:
(a)メソポーラスシリカ粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して、粉末床を形成するステップと、
(b)医薬有効成分を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(c)結合材を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(d)前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)を実施した後に得られた粉末の表面上に、メソポーラスシリカ粒子を含む粉末の層を散布して、続いて該ステップ(b)及び該ステップ(c)を実施するステップ、
(e)前記固形医薬投与形態を構築するために必要な回数だけ前記ステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)前記固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【請求項2】
前記ステップ(b)及びステップ(c)を並行して、又はその後任意の順序で実施する、請求項1に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)及び/又はステップ(c)におけるジェット印刷に使用される前記媒体が流体及び/又はホットメルトである、請求項1又は2に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)で使用される前記媒体がホットメルトであり、前記ステップ(c)を省略する、請求項1~3の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)を、前記有効成分及び前記結合材を含む1つの媒体を前記粉末上にジェット印刷する1つのステップ(ステップ(c1))に組み合わせる、請求項1~3の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項6】
以下のステップを含む、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法:
(a)メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して、粉末床を形成するステップ、
(b)医薬有効成分を含む液体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(d)前記ステップ(b)を実施した後に得られた前記粉末の表面に、メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末の層を散布して、その後ステップ(b)を実施するステップ、
(e)前記固形医薬投与形態を構築するために、必要な回数だけ前記ステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)前記固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【請求項7】
以下のステップを含む、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法:
(a)メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して、粉末床を形成するステップ、
(b)医薬有効成分を含む液体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(c)前記粉末の結合を活性化する液体をジェット印刷するステップ、
(d)前記ステップ(b)を実施した後に得られた粉末の表面に、メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末の層を散布して、その後ステップ(b)を実施するステップ、
(e)前記固形医薬投与形態を構築するために、必要な回数だけ前記ステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)前記固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【請求項8】
乾燥ステップを、前記ステップ(b)及び/又は前記ステップ(c)を実施した後、又は前記ステップ(c1)を実施した後に実施する、先行する請求項の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥ステップが、加熱、低(空気)圧、及び/又は対流を含む、請求項8に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項10】
前記加熱が、赤外線照射、高温ガス流及び/又は加熱された表面により適用される、請求項9に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項11】
前記医薬投与形態が経口用である、先行する請求項の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項12】
前記医薬投与形態が、前記医薬有効成分の即時放出を提供する、請求項11に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項13】
前記メソポーラスシリカ粒子の粒子径が、1μm~約500μm、好ましくは約1μm~100μm、より好ましくは約10μm~50μmのd50値によって特徴付けられる、先行する請求項の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項14】
前記メソポーラスシリカ粒子の粒子径は、d90値が500μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、例えば40μm~60μmであることにより特徴付けられる、先行する請求項の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項15】
前記メソポーラスシリカ粒子中のメソ孔が2~50nmの平均直径を有する、先行する請求項の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ(f)の後に乾燥ステップを実施する、先行する請求項の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥ステップを、エントレーナーの存在下で実施する、請求項16に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D印刷プロセスを用いたメソポーラスシリカを含む固形医薬投与形態(solid pharmaceutical administration form)の製造方法に関する。この方法は、薬剤を担持した(loaded)メソポーラスシリカを含む固形医薬投与形態を、容易かつ柔軟な方法で、医薬品の製造に要求される高品質基準に準拠して製造することができる印刷方法である。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスシリカは、経口ドラッグデリバリーシステムの開発において高い関心を集めている。その大きな細孔容積(最大2.5mL/g)と大きな比表面積(最大1,000m/g)の組み合わせは、高い薬物担持能力をもたらす。さらに、細孔径や表面化学的性質は、合成時にユーザーの応用ニーズに合わせて変更することができる。
【0003】
最近開発された医薬有効成分(API)の多くは水溶性が低く、胃腸(GI)管内での溶解が不完全なため、バイオアベイラビリティが低く変動しやすい。バイオアベイラビリティの低さが原因で開発中に失敗する新薬候補はかなり多く、その数は増加傾向にある。
【0004】
したがって、この重要な製剤上の課題を克服するための革新的なアプローチの進歩が決定的に必要であり、新しいドラッグデリバリーシステムの開発が強く望まれている。
【0005】
メソポーラスシリカの細孔構造は、難溶性薬物の溶解速度を向上させる重要な特性である。細孔の大きさは薬物分子の数倍であるため、薬物は閉じ込められ、結晶化することができない。この非晶質形態では、化合物は結晶状態に比べて高い溶解速度を示し、特に溶解度が高い格子エネルギーによって制限されている場合はなおさらである。このことは、非特許文献1「Mellaerts et al.(Eur J Pharm Biopharm 69:223-230,2008)」が示すように、経口バイオアベイラビリティを向上させる。
【0006】
APIを担持した(loaded)メソポーラスシリカは、固形の経口剤形、典型的には錠剤に組み込むことができる。メソポーラスシリカ(例えばParteck(登録商標)SLC、Merck Life Science社製)に取り込まれた純溶性のAPIは、非晶質の固体状態で安定化され、生体関連媒体への溶解が増加するため、バイオアベイラビリティが向上する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mellaerts et al.(Eur J Pharm Biopharm 69:223-230,2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
APIを担持したメソポーラスシリカを含む錠剤には、上述したようにいくつかの利点があるが、その製造には通常、以下のような多くの単位操作が必要である。
a)APIを揮発性溶媒に溶解する操作。
b)撹拌されたメソポーラスシリカ粉末に溶液を含浸させ、同時に乾燥させ、最終的に乾燥させる操作。
c)造粒するための賦形剤と混合する操作。
d)造粒する操作。
e)圧縮するための添加剤と混合する操作。
f)圧縮する操作。
【0009】
さらに、純粋に充填されたメソポーラスシリカ粉末は、一般的に流動性が低く、圧縮性/打錠性が悪い。圧縮を容易にするための賦形剤が一般的に添加されるが、これは製剤の複雑さを増大させ、最終剤形における最大薬物負荷(maximum drug load)を減少させる。
【0010】
最終剤形、好ましくは錠剤の製造において、メソポーラスシリカにAPIを担持させるステップは依然として課題である。ラボスケールで、あるAPIのバイオアベイラビリティ向上のためのメソポーラスシリカの実現可能性を試験する場合、薬物負荷(drug loading)は通常スラリー法(メソポーラスシリカ粉末をAPIの攪拌希釈溶液に懸濁し、溶媒をゆっくり除去する)で行われる。スラリー法は、結晶化傾向が中程度のAPI(フェノフィブラート(fenofibrate)など)には適しているが、結晶化傾向が強いAPI(カルバマゼピン(carbamazepine)など)には偽陰性を示す傾向がある。
【0011】
これは含浸法(APIの希釈溶液をメソポーラスシリカ粉末に噴霧する)を用いることで克服できるかもしれないが、この方法はラボスケールまでである。スケールダウンすることはできず、より多量のAPIを入手できる場合にのみ可能である(特に開発の初期においては、APIの入手性の悪さ及びそのコストの高さがしばしば重大な問題となる)。この担持プロセスのさらなる課題は、少量のメソポーラスシリカの担持に必要な非常に遅い流体投与速度の正確な制御(高すぎる=過湿潤シリカ(over-wetted silica)=結晶化)と、メソポーラスシリカ全体に流体を均一に分散させるための少量のメソポーラスシリカの確実な撹拌能力の限界である。
【0012】
APIを担持させたメソポーラスシリカを含む錠剤は、溶出性とバイオアベイラビリティが改善された錠剤を提供する大きな機会を提供するが、そのような可能性は、開発及び製造に伴う問題のために実現が困難である。シリカへのAPIの担持は、製薬研究所で利用可能な流体ハンドリングシステム(エアクッションピペット(air-cushion pipet)など)では、液滴サイズが最小でもシリカが過湿潤になるなどの問題により、利用可能なプロセスが損なわれている。加えて、メソポーラスシリカの流動性と圧縮性の低さは、従来の錠剤の既に複雑な開発にさらなる課題をもたらし、広範で時間のかかる開発作業によって克服する必要がある。特に開発の初期には、試験目的で小ロットが必要であり、高い柔軟性が求められる。したがって、APIを担持したメソポーラスシリカを含む固形剤形を迅速に開発し、小ロットでも製造できる簡素で柔軟なプロセスが強く望まれている。
【0013】
本発明は、このような要求を満たすプロセスを提供する。
本発明は、バインダージェット方式(Binder Jetting)としても知られる付加製造プロセスを用いる。バインダージェット方式は、経口固形剤形の製造法として知られており、その基本技術はMITによって開発された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の方法は、以下のステップを含む、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法であれる:
(a)メソポーラスシリカ粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して(spreading)、粉末床(powder bed)を形成するステップ、
(b)医薬有効成分(active pharmaceutical ingredient)を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(c)結合材(binding material)を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷する(jet printing)ステップ、
(d)前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)を実施した後に得られた粉末の表面上に、メソポーラスシリカ粒子を含む粉末の層(a layer of powder)を散布して、続いて該ステップ(b)及び該ステップ(c)を実施するステップ、
(e)前記固形医薬投与形態を構築する(build up)ために必要な回数だけ前記ステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)前記固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
いくつかの例において、ステップ(b)に従って粉末の表面に散布し、その上にAPIをジェット印刷する粉末の各層が、粉末の表面に新たな粉末の層を散布する前に、結合材を含む媒体をジェット印刷すること(ステップ(c))が続かないことが好ましいこともある。
このような例において、ステップ(b)~(d)からなるサブサイクル(sub-cycle)、すなわち、ステップ(b)医薬有効成分を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、(c)結合材を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、及び(d)前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)を実施した後に得られた粉末の表面上にメソポーラスシリカを含む粉末の層を散布して、続いて該ステップ(b)及び該ステップ(c)を実施するステップは、該ステップ(b)及び(d1)からなるサブサイクル、すなわち、ステップ(b)医薬有効成分を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、及び(d1)からなるサブサイクル、すなわち、(b)粉末上に医薬有効成分を含む媒体をジェット印刷するステップ及びステップ(d1)該ステップ(b)を実施した後に得られた粉末の表面上にメソポーラスシリカ粒子を含む粉末の層を散布して、続いて該ステップ(b)を実施するステップ、で代替される。
このような代替サブサイクルは、ステップ(b)、(c)及び(d)を含む完全なサブサイクルを実行する間に、1回、2回、3回、4回又は5回実行することができる。
【0016】
この方法は、垂直ピストン上に吊り下げられた一対の水平X-Y軸で構成され、3方向の動きを制御し、インクジェット印刷技術で知られるジェットヘッドを備えた3Dプリンタで実行することができる。印刷アセンブリは、複数の流体を連続的又は並列的に印刷することができる1つ又は複数のジェットヘッドで構成することができる。ジェットヘッドは、独立して制御することができる複数のノズルから構成することができる。好適なジェットヘッドは、例えば、連続インクジェット原理(the Continuous Inkjet principle)(流体が加圧され、連続的に流れる)、又はドロップオンデマンド原理(the drop-on-demand principle)(流体が一度に一滴ずつジェットノズルから吐出される)に従って動作することができる。固形医薬剤形の製造の場合、粉末を取り付けプレート上に散布して粉末床を形成し、該粉末床上を移動するジェットヘッドを通して、該粉末床の所定の領域に前記媒体を正確に分配する。取り付けプレートを一定距離下降させた後、粉末の層を散布し、このプロセスを繰り返す。取り付けプレートを下げる代わりに、散布手段(spreading means)を一定の距離だけ上昇することもできる。
【0017】
バインダーを粉末床にジェット印刷する上記のプロセスを用いた経口固形剤形の製造は、バインダージェット方式として知られている。バインダージェット方式の基本技術はMITによって開発された。今日の最も顕著な例はAprecia社のSpritamである。遺伝子検査やプロテオミクス(proteomics)、メタボロミクス分析(metabolomics analysis)などの新技術と結びついたポイント・オブ・ケア(point-of-care)や在宅診断が、将来の疾病治療の改善を牽引すると考えられている。これは、医療を個々の患者にカスタマイズすることを予見した個別化医療(personalized medicine)の概念につながっている。
【0018】
本発明の方法では、メソポーラスシリカのAPI担持のためにジェット印刷をさらに使用する。これにより、固形医薬剤形を構築する。製造方法に不可欠なステップとしてAPI担持を実施することができ、固形剤形の製造前に別個の薬剤担持ステップが不要となる。有利なことに、本発明の方法では、API担持と剤形製造を同時に行うことができる。
【0019】
ジェット印刷を使用することにより、メソポーラスシリカ粉末上に正確に投与できるAPIを含む液滴の最小サイズを小さくすることができるため、API担持プロセスがさらに改善され、過湿潤及び結晶化を防止するために必要なメソポーラスシリカ粉末の量を減らすことができる。少量バッチ担持は、新規APIの初期開発段階における実現可能性試験に使用することができる。
【0020】
一方では、本発明の方法は、薄い粉末表面にAPIを含む小滴を投与することによる材料の過湿潤や攪拌の問題を省略する。一方、従来の打錠工程のような塑性変形が必要ないため、メソポーラスシリカ粒子の(困難な)圧縮特性は関係ない。
【0021】
本明細書で使用される用語「固形医薬投与形態」は、固形であり、経口、直腸、膣、移植などの任意の適用方法によって患者に投与することができる医薬有効成分の投与単位を提供する任意の医薬製剤(pharmaceutical formulation)を意味する。固形医薬投与形態は、例えば、円形、楕円形、棒状、魚雷形状など、適用要件に適合した任意の形状を有することができる。固形医薬投与形態の例としては、錠剤、ピル、カプレット、座薬、インプラントが挙げられる。好ましくは、固形医薬投与形態は、錠剤である。
【0022】
本明細書で使用される用語「有効成分(active ingredient)」は、生物学的系に適用されたときに薬理学的又は生物学的効果を提供する任意の成分を意味する。有効成分は、医薬、ウイルス由来又は生物由来の生物学的物質であり得る。
本発明の方法において使用され得る有効成分の例としては、インスリン、ヘパリン、カルシトニン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデソニド、メトトレキサート、メサラジン、スルファサラジン、アムホテリシンB、フェノフィブラート、カルバマゼピン、イブプロフェン、グリベンクラミド、ジピリダモール、イトラコナゾール、セレコキシブ、ハロペリドール、インドメタシン、ポサコナゾール、核酸、又は抗原(ペプチド、タンパク質、糖、又は免疫系によって認識される表面を形成するその他の物質で、組織、生物、又はウイルスから産生、抽出、又はホモジナイズされたもの)。
【0023】
本明細書で使用される用語「散布(spreading)」は、粉末の平面層(a planar layer of powder)が平面状の地面(a planar ground)に塗布するプロセスを意味する。粉末の散布は、粉末の平面層を形成するのに適した手段を使用することによって達成することができる。このような手段の例としては、リザーバ(reservoir)からの粉末を平面状の地面全体に分配するために、取り付け領域(mounting area)又は既存の粉末層のような平面地盤に対して平行に移動させることができるドクターブレード又はローラーが挙げられる。ローラーを使用することにより、あるレベルの圧縮を得ることができ、これは固形医薬剤形の製造に有利であり得る。
【0024】
メソポーラスシリカ(mesoporous silica)」という用語は、中程度の大きさの細孔、具体的には約2ナノメートル(nm)~約50nmの細孔を有する多孔性シリカを指す。メソポーラスシリカ粒子」という用語は、粒子状のメソポーラスシリカを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味するものとする。本明細書で使用される場合、「comprising」という語と共に使用される場合、「a」又は「an」という語は、1つ又は複数を意味する。本明細書で使用される場合、「別の(another)」は、少なくとも2つ目以上を意味する。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「約(about)」とは、明示的に示されているか否かにかかわらず、例えば整数、分数、百分率を含む数値を意味する。「約」という用語は、一般に、当業者であれば引用値と同等であると考える(例えば、同じ機能又は結果を有する)数値の範囲(例えば、引用値の±1~3%)を指す。いくつかの例においては、「約」という用語には、四捨五入された数値が含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ジェット印刷(jet printing)」とは、媒体の液滴を高速で粉末床に向かって及び粉末床上に吐出することによって、媒体を粉末床に分配するプロセスを指す。液滴の吐出は、あらかじめ定義された目標位置に対して極めて正確に実施することができる。液滴のサイズ、液滴の量、特定の目標場所を管理することにより、基材への正確な配置と浸透深さを正確に制御することができる。ジェット印刷は、インクジェット印刷技術でよく知られているが、この技術とは対照的に、本発明の方法で印刷される媒体は、画像を印刷するためのインクではなく、固形医薬投与形態の印刷に使用可能な材料を含む媒体である。ステップ(b)において、媒体は少なくとも活性医薬成分を含み、ステップ(c)において、媒体は少なくとも結合材を含む。
【0028】
ジェット印刷に使用される媒体は、印刷される材料が分散される液体又はホットメルトである。本明細書で使用される「液体」という用語は、周囲温度(約25℃)で流動性のある溶媒を指す。材料(material)の分配に使用できる液体の例としては、水、エタノールなどの有機溶媒、又はその両方の混合物が挙げられ、有機溶媒は互いに可溶性であってもなくてもよい。材料は液体に溶解、懸濁、乳化させることができる。界面活性剤のような補助剤(auxiliaries)は、例えば、液体中の材料の分散性、及び/又は、粉末床中の粒子の拡散性又は湿潤性を改善するために使用することができる。
補助剤のさらなる例としては、ノズルプレートの過剰な濡れを防止することによって、又はジェットヘッドのチャネル及びノズルを通る液体の流れを制御することによって、ジェット印刷を可能にする、粘度調整剤、例えば、グリセロール;
インクの親水性又は疎水性を制御するための薬剤(agents)、例えば、液体中の材料の分散性、及び/又は粉末床中の粒子の拡散性又は湿潤性を向上させる、エタノール、ブタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヘキサンなどの共溶媒;
保湿剤、例えば、インクの蒸発によるノズルの詰まりを防ぐためのグリセリン又はプロピレングリコール;
基材上でのインクの広がりを制御し、基材上でのインクのにじみやしみを防ぐためのフィルム形成剤、バインダー又は樹脂と呼ばれることもある;
染料又は顔料;及び
消泡剤、が挙げられる。
【0029】
用語「ホットメルト(hot melt)」は、本明細書で使用される場合、周囲温度(約25℃)下では固体又は半固体であるが、温度上昇下(操作温度)では液体になる(溶融する)材料からなる媒体を指す。ジェット操作温度(jet operating temperature)では、媒体自体以外の材料、例えばステップ(b)で使用されるAPI又はステップ(c)で使用される結合材を含む溶融媒体の液滴がジェットヘッド(jet head)から吐出され、粉末床の表面と接触すると固化する。
ホットメルトの媒体として適した材料は、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)(PEG-PPG)、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、などのポリマー、
例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート又は微結晶セルロース、などのセルロース誘導体、
アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸又はメタクリル酸エステルとのコポリマー、好ましくはメタクリル酸とメタクリル酸又はアクリル酸エステルとのコポリマー、例えば、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート)(1:1)(例えば、Eudragit(登録商標)L 100)、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート)(1:2)(例えば、Eudragit(登録商標)S 100)、又は、ポリ(メタクリル酸-コ-エチルアクリレート)(1:1)(例えば、Eudragit(登録商標)L 100-55)、
アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、及び、低含有量の第4級アンモニウム基を有するメタクリル酸エステルの共重合体、例えば、ポリ(アクリル酸エチル-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.2(例えば、Eudragit(登録商標)RL)又はポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.1(例えば Eudragit(登録商標)RS)、
ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びメチルメタクリレートのコポリマー、例えば、ポリ(ブチルメタクリレート-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート)(2:1:1)(例えば、Eudragit(登録商標)E PO)、又は
ミツバチワックス又はカルナウバワックスのようなワックス、が挙げられる。
適切な操作温度は、40~250℃の範囲、好ましくは40~100℃の範囲、より好ましくは50~70℃の範囲の任意の温度であり得る。
【0030】
ステップ(b)で使用される媒体がホットメルトである場合、それ自体が結合材として機能する可能性があり、その場合、ステップ(c)で使用される媒体は結合材を含まなくてもよい。いくつかの場合において、ステップ(b)でホットメルトが使用され、十分な結合が得られる場合には、ステップ(c)を省略できる場合もある。
従って、本発明はまた、ステップ(b)で使用される媒体がホットメルトであり、ステップ(c)が省略される、固形医薬投与形態の製造の方法にも向けられる。
【0031】
用語「結合材(binding material)」は、本明細書で使用される場合、粒子同士の結合又は付着を提供する(provide)材料を指す。粉末床に塗布すると、結合材と接触した粒子は互いに付着し、それによって互いに付着した粒子からなる固体が生成する。結合材は固形製剤(solid preparation)に凝集力と強度を与える。
【0032】
本発明で採用できる結合材は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、
トウモロコシデンプン又は前ゼラチン化デンプンなどのデンプン、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート又は微結晶セルロースなどのセルロース誘導体、
アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸又はメタクリル酸エステルとのコポリマー、好ましくはメタクリル酸とメタクリル酸又はアクリル酸エステルとのコポリマー、例えば、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート)(1:1)(例えば、Eudragit(登録商標)L 100)、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート)(1:2)(例えば、Eudragit(登録商標)S 100)、又は、ポリ(メタクリル酸-コ-エチルアクリレート)(1:1)(例えば、Eudragit(登録商標)L 100-55)、
アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、及び、低含有量の第4級アンモニウム基を有するメタクリル酸エステルの共重合体、例えば、ポリ(アクリル酸エチル-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.2(例えば、Eudragit(登録商標)RL)又はポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.1(例えば Eudragit(登録商標)RS)、
ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びメチルメタクリレートのコポリマー、例えば、ポリ(ブチルメタクリレート-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート)(2:1:1)(例えば、Eudragit(登録商標)E PO)、
好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート又はポリビニルアルコール、より好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが挙げられる。
【0033】
原則として、上記及び以下に説明する方法のプロセスステップは、(a)から(f)までの順序で実行(run)する。しかしながら、これは、ジェット印刷ステップ(b)及び(c)には厳密には当てはまらない。このような印刷ステップは、ステップ(b)を最初に実行し、次にステップ(c)が続くという順序で実行できるだけでなく、逆の順序、つまり、ステップ(c)を最初に実行し、次にステップ(b)が続くという順序でも実行する、又は、ステップ(b)及び(c)が並行して実行してもよい。
したがって、本発明はまた、ステップ(b)及び(c)が並行して又はその後任意の順序で実行する、上記の固形医薬投与形態の製造方法に向けられる。
【0034】
上述のように、ステップ(b)及び(c)で使用可能な媒体ジェット印刷で使用される媒体は、液体又はホットメルトであり得る。原則として、ステップ(b)及び(c)のそれぞれは、互いに独立して、液体又はホットメルトを使用することができ、それによってあらゆる組み合わせが可能である。
したがって、このプロセスは、
(i)ステップ(b)は液体を使用して実施し、ステップ(c)はホットメルトを使用して実施する、
(ii)ステップ(b)はホットメルトを使用して実施し、ステップ(c)は液体を使用して実施する、
(iii)ステップ(b)及び(c)の両方で、流体を使用して実施する、又は、
(iv)ステップ(b)及び(c)の両方で、ホットメルトを使用して実施する、方法を実施することができる。
したがって、本発明はさらに、ステップ(b)及び/又はステップ(c)におけるジェット印刷に使用される媒体が、液体及び/又はホットメルトである、固形医薬投与形態の製造方法に向けられる。
【0035】
上述した本発明の方法において、医薬有効成分及び結合材は、異なる印刷ステップ、ステップ(b)及び(c)を使用して固形医薬投与形態に導入する。このアプローチにより、固形医薬投与形態の開発において高い柔軟性及び高い自由度が可能になり、例えば、ジェット印刷に使用される媒体とプロセスパラメータの選択、及び本方法に使用される材料の特定の要件へのそれらの適応である。しかしながら、いくつかの例において、そのような高い柔軟性及び高い自由度を必要とせず、ステップ(b)及び(c)を1つのステップに組み合わせることができ、本方法の簡素化とプロセス時間の短縮につながる。
したがって、本発明はまた、ステップ(b)及び(c)が1つのステップ(ステップ(c1))に組み合わされ、前記粉末への有効成分及び結合材を含む1つの媒体のジェット印刷を含む、固形医薬投与形態の製造方法にも向けられる。成分と結合材を粉末上に塗布する。このような方法に使用できる媒体は、流体又はホットメルトであり得る。
【0036】
本発明の方法の別の実施形態では、結合材は、粉末上へのジェット印刷によってではなく、ステップ(a)及び(d)で使用される粉末の一部として本方法中に添加される。このような実施形態では、ステップ(a)及び(d)で使用する粉末は、メソポーラスシリカ粒子及び結合材料の粒子を含む混合物である。さらに、ステップ(c)は必須ではなく、省略することができる。特定の結合材は、乾燥状態では粒子の結合又は付着を提供しないため、液体、好ましくはジェット印刷によって活性化する必要がある。有利な実施形態では、液体は、本方法のステップ(b)で使用される媒体の一部である。
【0037】
したがって、本発明は、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法であって、以下のステップを含む方法にも向けられる:
(a)メソポーラスシリカ粒子及び結合材料粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して粉末床を形成するステップ、
(b)医薬有効成分を含む液体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(d)ステップ(b)を実施し、続いてステップ(b)を実施した後に得られた粉末の表面に、メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末の層を散布するステップ、
(e)固形医薬投与形態を構築するために必要な回数だけステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)固体の医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【0038】
いくつかの場合において、例えば、APIの溶解と結合剤の活性化が異なる液体の極性を必要とする場合など、必要量のAPIを溶解でき、さらに粉末中に存在する結合剤の結合を活性化するのに適した媒体を提供することが困難な場合がある。このような場合、API及び結合材の活性化用の液体は、別個のステップすなわち、APIはステップ(b)で、結合材の活性化用の液体はステップ(c)で印刷することができる。明らかに、結合材は粉末の一部であるため、この実施形態のステップ(c)で使用される液体中に結合材が存在する必要はなく、好ましくはステップ(c)で使用される液体は結合材を含まない。
したがって、本発明はまた、ステップ(c)として結合材を含まない液体をジェット印刷するステップをさらに含む、上記段落に記載の方法にも向けられる。
【0039】
有効成分を含む固形医薬投与形態の製造プロセス全体は、次のステップで構成される:
(a)メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して、粉末床を形成するステップ、
(b)医薬有効成分を含む液体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(c)結合材を含まない液体をジェット印刷するステップ、
(d)ステップ(b)を実施し、続いてステップ(b)を実施した後に得られた粉末の表面に、メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末の層を散布するステップ、
(e)固形医薬投与形態を構築するために、必要な回数だけステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【0040】
特にジェット印刷ステップに液体を使用する場合は、ステップ(d)、(e)、又は(f)のさらなるステップに進む前に、液体が蒸発するまでしばらく待つ必要がある場合がある。このような場合、乾燥ステップを導入して蒸発を促進し、本方法をスピードアップすることができる。
したがって、本発明はさらに、ステップ(b)及び/又はステップ(c)を実施した後、又は工程(c1)を実施した後に乾燥ステップを実施する、固形医薬投与形態の製造方法にも向けられる。
【0041】
適切な実施形態によれば、乾燥ステップは、加熱、空気圧の低下、又は対流を使用することによって実施する。このような各手段はそれ自体で蒸発を促進するため、各手段を1つ以上の他の手段と組み合わせて相加効果を達成し、乾燥ステップをスピードアップすることができる。
したがって、本発明は、乾燥ステップが、加熱、低(空気)圧、及び/又は対流を含む、固形医薬投与形態の製造方法にも向けられる。適切な低い空気圧は、大気圧より低い空気圧、例えば、100~80000Paの範囲、好ましくは5000~50000Paの範囲の空気圧である。例えば、送風機によって対流を適用することができる。加熱が対流と組み合わさる乾燥ステップの実施形態の一例は、送風機を使用して加熱空気を粉体床に吹き付けることである。
【0042】
加熱は、赤外線照射、高温ガス流、及び/又は加熱された表面によって適用できる。したがって、本発明はまた、加熱が、赤外線照射、高温ガス流及び/又は加熱表面によって適用する固形医薬投与形態の製造方法にも向けられる。高温ガス流のガスは、例えば窒素や二酸化炭素などの1つの元素又は化合物の任意のガス、あるいは空気などの元素と化合物の混合ガスとすることができる。加熱された表面は、例えば、プロセスの実行に使用される取り付けプレートの加熱又は3Dプリンタの筐体の一部又は全体を加熱することによって提供できる。
【0043】
原則として、経口、直腸、膣、移植などの任意の適用方法のための固形医薬投与形態は、本明細書に記載の方法で製造することができる。しかしながら、この方法は、経口使用のための固形医薬投与形態の製造に特に適している。
したがって、本明細書に記載される本発明の有利な実施形態は、経口使用のための固形医薬投与形態の製造方法に向けられる。
【0044】
上記で説明したように、メソポーラスシリカにAPIを担持すると、非晶質固体状態でのAPIの安定化と、生体関連媒体への溶解の増加がもたらされる。したがって、本発明の方法は、即時放出製剤の製造に特に適している。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、医薬有効成分の即時放出を提供する固形医薬投与物(solid pharmaceutical administration)の製造方法に向けられる。
【0045】
本明細書で使用される場合において、用語「即時放出(immediate release)」という用語は、医薬有効成分の大部分が医薬投与形態から迅速に放出されることを意味する。好ましくは、有効成分の少なくとも80パーセントが、投与から30分以内、より好ましくは15分以内に放出される。医薬投与形態からのAPIの放出(溶解)は、該当する薬局方(例えば、USP 第711章など)に記載されている標準溶解試験に準拠した従来の溶解試験を使用して、pH6.8緩衝液又は0.1N HCl中で測定される。
【0046】
適切な実施形態によれば、本発明の方法で使用されるメソポーラスシリカは、約1μm~約500μm、好ましくは約1μm~100μm、より好ましくは約10μm~50μmの平均直径を有する。
したがって、本発明はまた、メソポーラスシリカ粒子が約1μm~約500μm、好ましくは約1μm~100μm、より好ましくは約10μm~50μmの平均直径を有する固形医薬投与物の製造方法にも向けられる。
【0047】
本明細書に使用される用語「メジアン径(median diameter)」は、レーザー回折/散乱法により測定できる体積中央径(median volume diameter)(d50)をいう。ここでいうd50値は、分布をこの直径より上の半分と下の半分に分けるマイクロメートル単位のサイズである。d50は体積分布の中央値であり、多くの場合、Dv50(又はDv0.5)とも呼ばれる。
【0048】
本明細書に開示されるメジアン径は、Microtrac Camsizer X2(乾式分散法、ギャップ幅4mm、分散空気圧50~100kPa、自動供給、公称被覆面積0.3%(限界:CCD-Basic<1%、CCD-Zoom<2%)を用いた動的画像解析によって測定される。
【0049】
適切には、本発明の方法で使用されるメソポーラスシリカは、さらに、500μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、例えば、40μm~60μmの間のd90値により特徴付けられる。
したがって、本発明はまた、メソポーラスシリカ粒子の粒径が500μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、例えば、40μm~60μmの間のd90値により特徴付けられる、固形医薬投与物の製造方法にも向けられる。
【0050】
本明細書で参照されるd90値は、体積サイズ分布(マイクロメートル単位のサイズ)における点を指し、サンプル中の物質の総体積の90%までが「含まれる(contained)」。サイズ分布の測定方法は上記と同じ(Microtrac Camsizer X2での動的画像解析)である。d90値は、しばしばDv90(又はDv0.9)とも呼ばれる。
【0051】
適切な実施形態によれば、この方法で使用されるメソポーラスシリカは、2~50nmの算術平均細孔径直径(arithmetic mean pore size diameter)を有する。
したがって、本発明はさらに、メソポーラスシリカ粒子のメソ細孔(mesopores)が2~50nmの平均直径を有する固形医薬投与形態の製造方法にも向けられる。
【0052】
メソ細孔の細孔サイズ及びその比表面積は、窒素吸着/脱着測定(BET法)を使用して、例えば、Accelerated Surface Area and Porosimetry System ASAP(登録商標)2420、Micromeritics Instrument社製,4356 Communications Drive,Norcross,GA 30093-2901,米国、により決定できる。
【0053】
いくつかの例では、1つ又は複数のジェット印刷ステップで流体を使用する場合、医薬投与形態は、ステップ(a)から(e)の実施によって構築され、粉末床から分離された後(ステップ(f))、これまでに蒸発しなかった残留液体がまだ含まれている可能性がある。このような場合、その後の乾燥ステップで液体を除去する必要がある可能性がある。
したがって、本発明はまた、ステップ(f)の後に乾燥ステップを実施する固形医薬投与形態の製造方法にも向けられる。このような乾燥ステップは、加熱、低(空気)圧、及び/又は対流を含む。
【0054】
固形医薬投与形態の製造方法は、乾燥ステップをエントレーナー(entrainer)の存在下で実施する。
【0055】
いくつかの場合において、API又は結合材(binder)の溶解特性により、揮発性の低い媒体の使用が必要になる場合がある。このような媒体は、従来の乾燥のみにより除去するのは非常に時間がかかるか、不十分である場合がある。揮発性の低い媒体の除去を容易にする1つの可能性は、エントレーナーとしてさらに溶媒を導入することであり得る。エントレーナーは、乾燥中に、例えば揮発性の低い媒体と共沸混合物を形成することによって、揮発性の低い媒体の担体として機能する場合がある。エントレーナーはまた、例えば完全又は部分的に非晶質固体の分子運動性を高めることによって、固体粒子からの溶媒の拡散性を高めることもできる。エントレーナーを導入する好ましい方法は、例えば、含浸、エントレーナーを含む蒸気によるアニーリング、又はトレイ乾燥機又は撹拌真空乾燥機内の乾燥ガスの流れにエントレーナーを含めることである。
【実施例
【0056】
印刷装置
以下の実施例は、機械(machine)のx方向及びy方向に移動可能であり、記載されたオブジェクト(objects)の製造領域として機能する粉末床を備える装置を用いて製造した。印刷ヘッドアセンブリ(print head assembly)は、粉末床の上に配置する。このアセンブリには、1つ又は2つの改良型 HP C6602 インクジェットカートリッジが含まれる。カートリッジは、電子回路に接続されており、ノズルを作動させて粉体層の動きと同期して流体の液滴を噴出することができる。カートリッジは、ストックカートリッジに含まれるインクを交換できるように変更している。さらに、カートリッジを圧力調整器に接続するためのコネクタを導入している。カートリッジのインクリザーバーには20mmHOの負圧がかかる。APIを含む媒体のジェット印刷の場合は、有効ノズルピッチを調整し、バインダーを含む媒体のジェット印刷の場合は、カートリッジの本来のノズルピッチを使用した。別の位置では、粉末を含む粉末リザーバをビルドプレート(build plate)上に取り付ける。材料は、制御された方法で粉体床の製造領域に堆積できる。
【0057】
印刷プロセスは、順番に実行されるソフトウェア コマンドによって制御される。まず、粉末層(powder layer)内に薄い粉末層を準備される。その後、粉末床が印刷アセンブリ(printing assembly)の下に移動し、液体材料が粉末床の表面にジェット印刷される。特定の層に対するすべての印刷コマンドとオプションの滞留時間が実行された後、粒子状材料の次の層(高さ:0.1mm)がすでに準備された粉末床表面に堆積され、液体材料が新しい粉末層上にジェット印刷される。このプロセスは、オブジェクトのすべての層が印刷されるまで繰り返される。
【0058】
印刷パターンと特定のオブジェクトを製造するために必要な動作は、デジタル3次元モデル及び設定ファイルを取得するソフトウェアによって定義する。
【0059】
印刷オブジェクトの形状は、デジタル3次元モデルによって定義できる。プリントヘッドの各ノズルは、毎秒最大500個の液滴を吐出した。
【0060】
液滴体積
プリントヘッドの液滴体積は、アクリル96ウェルプレートのキャビティ内に定義された数の液滴を印刷することによって測定する。堆積した材料を希釈し、取り込まれた色素の濃度をUV/VIS分光法によって測定する。液滴の体積は次の式で計算する。
【0061】
【数1】
【0062】
用語説明(Glossary)
PVA:ポリビニルアルコール(Ph.Eur.10.5モノグラフ(monograph)「ポリ(ビニルアルコール)」)
HPMC AS:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(USP-NFモノグラフ「ヒプロメロース(Hypromellose)アセテートサクシネート」、DocID:1_GUID-B85C7C87-E41C-465D-8A42-E40650FE1949_6_en-US)
Kollidon VA64:質量比6:4の1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー(Ph Eur.10.7モノグラフ「コポビドン(Copovidone)」)
Kollidon K25:ポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)(Ph Eur.10.7 モノグラフ「ポビドン(Povidone)」)
Kollidon K25:poly(1-vinyl-2-pyrrolidone)(Ph Eur.10.7monograph “Povidone”)
【0063】
溶解(Dissolution)
1.2mlのFaSSIFを、FaSSIF/FeSSIF/FaSSGF粉末(Biorelevant.com社、ロンドン、英国)から説明書に従って調製し(L.Klumpp,Dissolution behavior of various drugs in different FaSSIF versions,European Journal of Pharmaceutical Sciences,2020)、エッペンドルフキャップで37℃に加熱した。秤量したサンプルを媒体に導入した後、エッペンドルフキャップをボルテックスした。サンプルを採取する前に、媒体を遠心分離し、50μlの上清をサンプリングした。サンプリング後、固体画分をボルテックスにより再懸濁した。APIの沈殿を防ぐためにサンプルを有機溶媒で希釈し、サンプル中のAPIの濃度をHPLCで測定した。
【0064】
オブジェクト(object)の薬物負荷(drug load)は、APIを包括的に溶解するために有機溶媒で溶解実験後の媒体を希釈することによって決定し、API の濃度はHPLCによって決定した。印刷物中のAPIの質量は、描画されたすべてのサンプルと最終値から計算した。
【0065】
実施例A
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、PVAを脱塩水に5.215%(m/m)の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.304mg/mlである。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり100個の液滴で粉体層の表面にジェット印刷する。平均液滴体積は110plである。バインダーを含む媒体を、印刷方向に1mmあたり250個の液滴で粉体層の表面にジェット印刷する(平均液滴体積:138pl)。バインダーを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒を蒸発させるためにプロセスを10秒間中断した。新しい粉末層(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量34.97mg±6.13mg(平均±標準偏差、n=6)及び薬物負荷1.07%±0.09%(平均±標準偏差、n=6)のオブジェクト(形状:直径=6mm及び高さ=2mmの円柱)が得られる。
【0066】
実施例B
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、PVAを脱塩水に5.215%(m/m)の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.304mg/mlである。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり100個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合剤を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり300個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。バインダーを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で粉末床を60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量39.35mg±2.27mg(平均値±標準偏差、n=3)及び薬物負荷1.06%±0.02%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。
【0067】
実施例C
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、PVAを脱塩水に5.215%(m/m)の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.304mg/mlである。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり100個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。バインダーを含む媒体を、印刷方向に1mmあたり500個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。バインダーを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で前記粉末床を180秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量42.66mg±1.97mg(平均±標準偏差、n=6)及び薬物負荷0.75%±0.03%(平均±標準偏差、n=6)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。
【0068】
実施例D
結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒であった。イブプロフェンをあらかじめ担持したメソポーラスシリカ粒子の粉末床を調製する。メソポーラスシリカを担持するために、材料を撹拌乾燥機に移す。APIを有機溶媒に溶解し、API溶液を制御された方法で粉末にゆっくりと添加する。担持プロセスの後、乾燥ステップを使用して残留溶媒を除去する。最終製品には29.5%(m/m)のAPIが担持されている。その後、イブプロフェンを担持したメソポーラスシリカ粉末を含む粉末床を調製し、結合剤を含む媒体を前記粉末床の表面上に印刷方向に1mm当たり500滴の液滴でジェット印刷する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量44.74mg±0.50mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷28.72%±0.39%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。
【0069】
実施例E
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒である。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合剤を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり400個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。バインダーを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で粉末床を30秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量33.60mg±2.71mg(平均値±標準偏差、n=3)及び薬物負荷1.99%±0.11%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。製造されたオブジェクトの引張強さは0.99MPa±0.15MPa(平均値±標準偏差、n=3)である。
【0070】
実施例F
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒である。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合剤を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり500個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。バインダーを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で粉末床を60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量38.03mg±1.71mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷2.06%±0.08%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。製造されたオブジェクトの引張強さは1.54MPa±0.14MPa(平均値±標準偏差、n=3)である。
【0071】
実施例G
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒である。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合剤を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり500個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。バインダーを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で前記粉末床を60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量38.03mg±1.71mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷2.16%±0.11%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。製造されたオブジェクトの引張強さは、1.49MPa±0.14MPa(平均値±標準偏差、n=3)である。
【0072】
実施例H
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒である。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり500個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して459Wの出力で粉末床を60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されているプロセスにより、質量39.45mg±0.44mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷2.06%±0.04%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。製造されたオブジェクトの引張強さは、1.59MPa±0.11MPa(平均値±標準偏差、n=3)である。
【0073】
実施例I
APIを含む媒体の調製は、イブプロフェンを20.0mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒である。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり100個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり500個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒を蒸発させるためにプロセスを60秒間中断する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されているプロセスにより、質量41.57mg±1.85mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷1.14%±0.18%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。製造されたオブジェクトの引張強さは、0.69MPa±0.09MPa(平均値±標準偏差、n=3)である。
【0074】
実施例J
APIを含む媒体の調製は、イブプロフェンを20.0mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒である。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり500個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒を蒸発させるためにプロセスを120秒間中断する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されているプロセスにより、質量39.72mg±1.29mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷1.70%±0.06%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。製造された物の引張強さは、0.80MPa±0.05MPa(平均値±標準偏差、n=3)である。
【0075】
実施例K
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.83mg/mlの濃度でエタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、PVAを脱塩水に5.215%(m/m)の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は0.304mg/mlである。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.265mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり600個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり150個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されているプロセスにより、質量20.55mg±2.22mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷4.21%±0.57%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:長方形(10mm×9.5mm))が得られる。
【0076】
実施例L
APIを含む媒体の調製は、カルバマゼピン(Carbamazepine)を40.1533mg/mlの濃度でメタノールに溶解する。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加する。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.7383mg/ml溶媒の濃度まで溶解することによって調製する。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は、0.3017mg/ml溶媒である。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり500個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で粉末床が60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されているプロセスにより、質量46.34mg±0.36mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷5.95%±0.10%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。製造されたオブジェクトの引張強さは、1.22MPa±0.11MPa(平均値±標準偏差、n=3)である。
【0077】
実施例M
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.98mg/mlの濃度でエタノールに溶解した。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加した。結合剤を含む媒体は、HPMC ASをメタノールに24.16mg/mlの濃度まで溶解することによって調製した。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は0.29mg/mlであった。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に対して垂直な0.265mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mm当たり600個の液滴で前記粉末床の表面上にジェット印刷した。APIを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で前記粉末床を30秒間照射する。結合材を含む媒体のジェット印刷と粉末床の照射を合計5回繰り返した。結合材を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり1000個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で前記粉末床を30秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計4層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量3.08mg±0.02mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷26.76%±2.83%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:寸法5mm×3.1mmの長方形)が得られる。
【0078】
実施例N
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.98mg/mlの濃度でエタノールに溶解した。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加した。結合剤を含む媒体は、Kollidon K25をエタノールに42.84mg/mlの濃度まで溶解することによって調製した。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は0.29mg/mlであった。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷した。結合剤を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり1250個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で前記粉末床を60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されているプロセスにより、質量が41.44mg及び41.62mg、ならびに薬物負荷が1.84%及び1.82%のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。
【0079】
実施例O
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを19.98mg/mlの濃度でエタノールに溶解した。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加した。結合剤を含む媒体は、Kollidon VA64をエタノールに40.10mg/mlの濃度まで溶解することによって調製した。結合剤を含む媒体中の染料(メチレンブルー)の濃度は0.15mg/mlであった。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に垂直な0.088mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mmあたり200個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷した。結合剤を含む媒体を、印刷方向に1mmあたり1250個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷する。結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で粉末床を60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量が40.46mg及び35.51mgならびに薬物負荷が1.84%及び2.07%のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。
【0080】
実施例P
APIを含む媒体の調製は、フェノフィブラートを20.12mg/mlの濃度でエタノールに溶解した。色素(エオシンY)を0.25mg/mlの濃度で添加した。メソポーラスシリカ粒子及び25%(m/m)のKollidon VA64粒子を含む粉末床を調製する。APIを含む媒体を、印刷方向に対して垂直な0.132mmの有効ノズルピッチで、印刷方向に1mm当たり200個の液滴で前記粉末床の表面上にジェット印刷した。APIを含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒を蒸発させるためにプロセスを60秒間中断する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されたプロセスにより、質量26.03mg±0.20mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷3.11%±0.01%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:直径=6mm、高さ=2mmの円柱)が得られる。
【0081】
実施例Q
APIを含み、結合剤を含む媒体の調製は、フェノフィブラートを5.70mg/mlの濃度でメタノールに溶解し、同じ媒体にHPMC ASを17.81mg/mlの濃度で溶解した。API及び結合剤を含む媒体中の色素(メチレンブルー)の濃度は0.21mg/mlであった。メソポーラスシリカ粒子を含む粉末床を調製する。API及び結合材を含む媒体を、印刷方向に垂直な有効ノズルピッチ0.132mmで、印刷方向に1mmあたり700個の液滴で前記粉末床の表面にジェット印刷した。API及び結合材を含む媒体をジェット印刷した後、インク溶媒の蒸発を促進するために、ハロゲンランプを介して424Wの出力で粉末床を60秒間照射する。新しい粉末床(0.1mm)を前記粉末床の表面に塗布し、印刷プロセスを合計20層繰り返す。
記載されているプロセスにより、質量47.79mg±1.17mg(平均±標準偏差、n=3)及び薬物負荷3.23%±0.06%(平均±標準偏差、n=3)のオブジェクト(形状:寸法5mm×3.1mmの長方形)が得られる。
【0082】
実施例R
フェノフィブラートを50%(m/m)マンニトールで粉砕した。質量1.67mg±0.01mg(平均±標準偏差、n=6)のサンプルを、記載された溶解セットアップに導入した。
本発明を図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1は、製剤プロトタイプ(formulation prototypes)の溶解曲線を示している(丸:実施例E(平均、n=3);下三角(triangle down):実施例F(平均、n=3)、上三角(triangle up):実施例G(平均、n=3)、左三角(triangle left):実施例H(平均、n=3))。 全ての実施例は、実施例A~Cよりもさらに高い溶解媒体中のAPIの過飽和を示した。実施例A~Cとは対照的に、これらの実施例では過飽和を安定させるために追加の沈殿抑制剤は必要なかった。 実施例Eは、示された他の実施例よりも少ない結合剤を使用して印刷された。これらの印刷パラメーターにより、溶解媒体中でのAPIの過飽和の安定性が低下し、使用された結合材料がさらに沈殿抑制剤として作用することが示された。
図2図2は、製剤プロトタイプの溶解曲線を示す(右三角形(triangle right):実施例A(平均、n=3);四角形:実施例A(平均、n=3)(沈殿抑制剤を溶解媒体に添加した);五角形:実施例B(平均、n=3)(沈殿抑制剤を溶解媒体に添加した);星印:実施例C(平均、n=6)(沈殿抑制剤を溶解媒体に添加した)。沈殿抑制剤(HPMC AS)を0.1%(m/m)の濃度で溶解媒体に添加した。 沈殿抑制剤を添加しない実施例Aは、溶解媒体中でのAPIの過飽和を示さなかった。追加の沈殿抑制剤を含むサンプルは過飽和を示した。
図3図3は、製剤プロトタイプの溶解曲線を示す(十字印:実施例I(平均、n=3);バツ印:実施例J(平均、n=3))。 実施例I:この製剤は、30分未満で80%のAPIを放出し、即時放出固形経口剤形の基準を満たした。
図4図4は、製剤プロトタイプの溶解曲線を示す(星印:実施例D(平均、n=3))。
図5図5は、印刷装置の概略を示す。ビルドプレート(E)は制御システムである。軸を使用して、ビルドプレートをさまざまな位置に移動して、印刷装置の追加部品と位置合わせすることができる。単層の製造の場合、ビルドプレートは粉末供給源(C)に移動し、そこで粉末をビルドプレートの表面又は粉末床の表面に塗布する。ブレード(D)を使用して粉末(J)の薄い層を散布し、ビルドプレートをブレードの下で直線運動で移動する。ジェット印刷アセンブリ(A+B)を使用して、空間制御された方法で液体(H+I)の液滴を粉末床の表面に塗布できる。ハロゲンランプ(K)を使用して粉末床を照射できる。
図6図6は、製剤プロトタイプの溶解曲線を示す(四角形白抜き:実施例L(平均、n=3))。
図7図7は、プロセスの散布ステップ(a)を示す。ドクターブレード(4)を矢印で示す方向に動かすことにより、粉末リザーバー(3a)によって提供される粉末を取り付けプレート(1)上に散布して粉末床を形成する。すでに散布されている粉末床の一部を(3)で示す。既存の粉末床上に粉末を散布することを必要なだけ繰り返すことにより、粉末床(2)が形成される。
図8図8は、ステップ(a)によって取り付けプレート上に作製された粉末床(2)を示す。
図9図9は、プロセスのステップ(b)又は(c)によるジェット印刷を示す。ジェットヘッド(7)は、x軸及び/又はy軸に沿って移動し、それによって粉末床(2)上に流体(6)(微細液滴)をジェット印刷する。このようなジェット印刷により、互いに隣接するボクセル(voxels)によって生成される流体に浸した粉末(5)が生成する。
図10図10は、図9と同様のジェット印刷ステップを示しており、図9に示す中間生成物の上に粉末床を散布したものを使用する。 図9とは対照的に、流体は連続領域ではなく、互いに区切られた粉末の定義された領域にジェット印刷されるため、流体が浸み込んだ粉末ボクセル(8)と流体のない粉末ボクセル(8a)の層が形成する。
図11図11は、製剤プロトタイプの溶解曲線を示す(三角形塗りつぶし(triangle solid):実施例M(平均、n=3);丸形塗りつぶし:実施例N(平均、n=2)(沈殿抑制剤を溶解媒体に添加した);四角形白抜き:実施例O(平均、n=2)(沈殿抑制剤を溶解媒体に添加した);四角形塗りつぶし:実施例P(平均、n=3)(沈殿抑制剤を溶解媒体に添加した);三角形白抜き:実施例Q(平均、n=3);丸形白抜き:実施例R(平均、n=6)) 沈殿抑制剤(HPMC AS)を0.1%(m/m)の濃度で溶解媒体に添加した。純粋なフェノフィブラートサンプルを除くすべてのサンプルは過飽和を示した。ジェット印刷された媒体に結合剤が組み込まれたサンプルは過飽和を示した。粉末床に結合剤が組み込まれたサンプルは過飽和を示した。薬物負荷がより高いサンプル(実施例M)は過飽和を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法:
(a)メソポーラスシリカ粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して、粉末床を形成するステップと、
(b)医薬有効成分を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(c)結合材を含む媒体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(d)前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)を実施した後に得られた粉末の表面上に、メソポーラスシリカ粒子を含む粉末の層を散布して、続いて該ステップ(b)及び該ステップ(c)を実施するステップ、
(e)前記固形医薬投与形態を構築するために必要な回数だけ前記ステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)前記固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【請求項2】
前記ステップ(b)及びステップ(c)を並行して、又はその後任意の順序で実施する、請求項1に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)及び/又はステップ(c)におけるジェット印刷に使用される前記媒体が流体及び/又はホットメルトである、請求項1に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)で使用される前記媒体がホットメルトであり、前記ステップ(c)を省略する、請求項1に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)を、前記有効成分及び前記結合材を含む1つの媒体を前記粉末上にジェット印刷する1つのステップ(ステップ(c1))に組み合わせる、請求項1に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項6】
以下のステップを含む、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法:
(a)メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して、粉末床を形成するステップ、
(b)医薬有効成分を含む液体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(d)前記ステップ(b)を実施した後に得られた前記粉末の表面に、メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末の層を散布して、その後ステップ(b)を実施するステップ、
(e)前記固形医薬投与形態を構築するために、必要な回数だけ前記ステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)前記固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【請求項7】
以下のステップを含む、有効成分を含む固形医薬投与形態の製造方法:
(a)メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末を製造領域全体に散布して、粉末床を形成するステップ、
(b)医薬有効成分を含む液体を前記粉末上にジェット印刷するステップ、
(c)前記粉末の結合を活性化する液体をジェット印刷するステップ、
(d)前記ステップ(b)を実施した後に得られた粉末の表面に、メソポーラスシリカ粒子及び結合材粒子を含む粉末の層を散布して、その後ステップ(b)を実施するステップ、
(e)前記固形医薬投与形態を構築するために、必要な回数だけ前記ステップ(d)を繰り返すステップ、
(f)前記固形医薬投与形態を前記粉末床から分離するステップ。
【請求項8】
乾燥ステップを、前記ステップ(b)及び/又は前記ステップ(c)を実施した後、又は前記ステップ(c1)を実施した後に実施する、請求項1、5、6又は7の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥ステップが、加熱、低(空気)圧、及び/又は対流を含む、請求項8に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項10】
前記加熱が、赤外線照射、高温ガス流及び/又は加熱された表面により適用される、請求項9に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項11】
前記医薬投与形態が経口用である、請求項1、6又は7の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項12】
前記医薬投与形態が、前記医薬有効成分の即時放出を提供する、請求項11に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項13】
前記メソポーラスシリカ粒子の粒子径が、1μm~500μmの50値によって特徴付けられる、請求項1、6又は7の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項14】
前記メソポーラスシリカ粒子の粒子径は、d90値が500μm以下であることにより特徴付けられる、請求項1、6又は7の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項15】
前記メソポーラスシリカ粒子中のメソ孔が2~50nmの平均直径を有する、請求項1、6又は7の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ(f)の後に乾燥ステップを実施する、請求項1、6又は7の何れか1項に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥ステップを、エントレーナーの存在下で実施する、請求項16に記載の固形医薬投与形態の製造方法。
【国際調査報告】