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特表2024-527372低pH範囲でのLi2SO4の電気分解
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  • 特表-低pH範囲でのLi2SO4の電気分解 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】低pH範囲でのLi2SO4の電気分解
(51)【国際特許分類】
   C25C 1/02 20060101AFI20240717BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20240717BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20240717BHJP
   C22B 3/20 20060101ALI20240717BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C25C1/02
C22B7/00 C
C22B26/12
C22B3/20
C22B3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500635
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022069014
(87)【国際公開番号】W WO2023281033
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/220,259
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ボルン,ニルス-オロフ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ガルズーフ,アルント
(72)【発明者】
【氏名】シールレ-アルント,ケルシュティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルク,ヴォルフラム
(72)【発明者】
【氏名】ブロイニンガー,ジグマール
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲルザンク,レギナ
(72)【発明者】
【氏名】オピッツ,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4K001
4K058
【Fターム(参考)】
4K001BA22
4K001DB01
4K001DB21
4K058AA21
4K058AA23
4K058BA02
4K058BB04
4K058CA04
4K058CA12
4K058CA17
4K058CA20
4K058CA22
4K058FA02
4K058FC07
4K058FC14
(57)【要約】
本明細書において開示されるのは、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む方法であり、ここで、この水溶液が0.5未満のpHを有する。また、リチウムを含む第1水溶液を電気分解して、リチウムを含む第2水溶液、及び0.5未満のpHを有する酸性水溶液を得る工程、第2水溶液のpHを酸性水溶液で調整して、0.5未満のpHを有するリチウムを含む第3水溶液を得る工程、及びリチウムを含む第3水溶液を電気分解する工程を含む方法も開示される。さらに、リチウムを含む液体媒体を酸性水溶液でストリッピングして、リチウムを含む水溶液を得る工程、及びリチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む方法が開示される。さらに、リチウムを含む液体媒体を調製する方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む方法であって、前記水溶液が0.5未満のpHを有する、方法。
【請求項2】
前記水溶液が硫酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液のpHが、-1~0.5の範囲の勾配に沿って調整される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液のpHが、-1~0.5の範囲の勾配に沿って上昇して調整される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液のpHが、-1~0.5の範囲の勾配に沿って下降して調整される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
リチウムを含む第1水溶液を電気分解して、リチウムを含む第2水溶液、及び0.5未満のpHを有する酸性水溶液を得る工程、第2水溶液のpHを前記酸性水溶液で調整して、0.5未満のpHを有するリチウムを含む第3水溶液を得る工程、及び請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によってリチウムを含む第3水溶液を電気分解する工程を含む、方法。
【請求項7】
前記第1水溶液が0.5より大きいpHを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1水溶液の電気分解が、前記第3水溶液の電気分解とは異なる電気分解セルで行われる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
リチウムを含む液体媒体を酸性水溶液でストリッピングして、リチウムを含む水溶液を得る工程、及び請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によってリチウムを含む水溶液を電気分解して、リチウム欠乏水溶液を得る工程を含む方法であって、前記リチウム欠乏水溶液が、酸性水溶液として方法の上流に供給され、前記液体媒体が、前記液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、前記リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む水溶液よりも低いリチウム濃度を有する、方法。
【請求項10】
前記リチウム欠乏水溶液がゼロより大きいリチウム濃度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体媒体が、前記液体媒体の総質量に対して5質量%未満の水を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記リチウム欠乏水溶液が、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
リチウムを含む水溶液が、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によってリチウムを含む水溶液を電気分解して、リチウム欠乏水溶液を得る工程、及び前記リチウム欠乏水溶液を液体媒体で抽出する工程を含む、リチウムを含む液体媒体を調製する方法であって、前記液体媒体が、前記液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、前記リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む水溶液よりも低いリチウム濃度を有する、方法。
【請求項15】
リチウムを含む液体媒体が、請求項14に記載の方法に従って調製される、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpHを有し、0.1A/cm~1.5A/cmの範囲の電流密度で電気分解される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpHを有し、0.1A/cm~1A/cmの範囲の電流密度で電気分解される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpHを有し、0.3A/cm~1A/cmの範囲の電流密度で電気分解される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpHを有し、0.4A/cm~0.9A/cmの範囲の電流密度で電気分解される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpHを有し、0V~5Vの範囲の電圧で電気分解される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpHを有し、0V~3.5Vの範囲の電圧で電気分解される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpH、及び20℃~95℃の範囲の温度を有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpH、及び30℃~90℃の範囲の温度を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpH、及び40℃~85℃の範囲の温度を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
リチウムを含む水溶液が、0.5未満のpH、及び50℃~85℃の範囲の温度を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
リチウムを含む水溶液に塩基を添加しない、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
リチウムを含む水溶液のpHが上昇して調整されない、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオンカソード活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して黒い塊を得る工程、前記黒い塊を浸出して、リチウムを含む水溶液を得る工程、及び請求項1から27のいずれか一項に記載の方法に従って前記水溶液を処理する工程を含む、リチウムイオン電池材料をリサイクルする方法。
【請求項29】
リチウムを含む第1水溶液が、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオンカソード活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して黒い塊を得る工程、及び前記黒い塊を浸出して、リチウムを含む水溶液を得る工程を含む方法によって得られる、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
リチウムを含む水溶液が、リチウム含有鉱石を浸出することによって得られる、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
リチウムを含む水溶液がリチウム含有地下水である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
リチウムを含む第1水溶液が、リチウム含有鉱石を浸出することによって得られる、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
リチウムを含む第1水溶液がリチウム含有地下水である、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
リチウムを含む水溶液が、電池材料を浸出することによって得られる、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
リチウムを含む第1水溶液が、電池材料を浸出することによって得られる、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示されるのは、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む方法であり、ここで、この水溶液が0.5未満のpHを有する。また、リチウムを含む第1水溶液を電気分解して、リチウムを含む第2水溶液、及び0.5未満のpHを有する酸性水溶液を得る工程、第2水溶液のpHを酸性水溶液で調整して、0.5未満のpHを有するリチウムを含む第3水溶液を得る工程、及びリチウムを含む第3水溶液を電気分解する工程を含む方法も開示される。さらに、リチウムを含む液体媒体を酸性水溶液でストリッピングして、リチウムを含む水溶液を得る工程、及びリチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む方法が開示される。さらに、リチウムを含む液体媒体を調製する方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
高純度リチウムは貴重な資源である。リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウム含有水(例えば地下水)、及びリチウム含有原鉱石などの多くのリチウム源は、様々な元素及び化合物の複雑な混合物である。高純度のリチウムを得るためには、様々な非リチウム不純物を除去することが望ましい場合がある。リチウムを含む水溶液の電気分解は、高純度リチウムを得るための例示的な手段を提供する。いくつかの電気分解プロセスでは、電流密度が水溶液のpHによって制限される。いくつかの電気分解プロセスでは、pHは、例えば、リチウムを含む水溶液に塩基を添加することによって調整することができる。しかしながら、塩基を添加すると、望ましくない塩を形成し、望ましくない固体粒子を生成することがある。このような粒子は除去が難しく、精製工程が高価になる可能性がある。さらに、いくつかのリチウム精製プロセスでは、電気分解の前に、リチウムを液体媒体から水溶液に移すストリッピング工程が使用される。いくつかのこのようなプロセスでは、HSOなどの新鮮な酸がストリッピング剤として添加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、高いリチウム回収率と高いリチウム純度を有する経済的なプロセスが必要とされている。電気分解性能の向上が求められている。また、HSOなどのストリッピング剤の経済的な生成及び使用も必要とされている。いくつかの実施形態では、異なるpHレベルで電気分解を行うことが望ましい。いくつかの実施形態では、電気分解を行う前にpHレベルを調整しないことが望ましい。いくつかの実施形態では、既に低いpHレベルを有する溶液からリチウムを生成することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されるのは、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含むプロセスであり、ここで、この水溶液が0.5未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、水溶液は硫酸塩を含む。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、-1~0.5の範囲の勾配に沿って調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、-1~0.5の範囲の勾配に沿って上昇して調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、-1~0.5の範囲の勾配に沿って下降して調整される。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む第1水溶液を電気分解して、リチウムを含む第2水溶液、及び0.5未満のpHを有する酸性水溶液を得る工程、第2水溶液のpHを酸性水溶液で調整して、0.5未満のpHを有するリチウムを含む第3水溶液を得る工程、及び第3水溶液を電気分解する工程を含む。いくつかの実施形態では、第1水溶液は0.5を超えるpHを有する。いくつかの実施形態において、第1水溶液の電気分解は、第3水溶液の電気分解とは異なる電気分解セルで行われる。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む液体媒体を酸性水溶液でストリッピングして、リチウムを含む水溶液を得る工程、及びリチウムを含む水溶液を電気分解して、リチウム欠乏水溶液を得る工程を含み;ここで、リチウム欠乏水溶液が、酸性水溶液として方法の上流に供給され、液体媒体が、液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、そして、リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む水溶液よりも低いリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、ゼロより大きいリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、液体媒体は、液体媒体の総質量に対して5質量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む液体媒体を調製する方法は、リチウムを含む水溶液を0.5未満のpHで電気分解して、リチウム欠乏水溶液を得る工程、及びリチウム欠乏水溶液を液体媒体で抽出する工程を含み;ここで、液体媒体が、液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む水溶液よりも低いリチウム濃度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、例示的な電気分解セルを示している。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
本明細書で使用される「a」又は「an」の実体は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「a」「化合物」は、特に明記しない限り、1つ以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を指す。このように、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0007】
本明細書で使用される「材料」という用語は、何かを構成する、又は作ることができる要素、構成要素、及び/又は物質を指す。
【0008】
本明細書で使用される「約」という用語は、記載された数値の±5%を指す。特に明記しない限り、すべての数値は「訳」で修飾されているものとする。
【0009】
本明細書で使用される「電気分解」という用語は、イオンを含む液体又は溶液に電流を流すことによって生じる化学分解を指す。
【0010】
図面の詳細な説明
図1は、例示的な電気分解セル(100)を示している。電気分解セル(100)には、リチウムを含む水溶液(101)が供給される。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオンカソード活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して、黒い塊を得る工程、及び黒い塊を浸出して、リチウムを含む水溶液を得る工程を含む方法によって得られる。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、リチウム含有鉱石を浸出することによって得られる。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、リチウム含有地下水である。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、電池材料を浸出することによって得られる。いくつかの電気分解セル、例えば図1に示している例示的なセルでは、1つ以上の膜が存在し得る。図1には、2つのそのような膜が縦の破線として示している。Liなどの正イオンは、負に帯電した電極に向かって移動する傾向があり、SO 2-などの負イオンは、正に帯電した電極に向かって移動する傾向がある。電気分解中、塩基性水酸化物イオンが負電極近傍で形成され、局所的なpHを上昇させる可能性がある。電気分解中、酸性のプロトンが正電極近傍で形成され、局所的なpHを低下させる可能性がある。負電極(102)の付近では、リチウム富化及び/又はより塩基性の水溶液が得られる。正電極(104)近傍では、リチウム欠乏及び/又は酸性の水溶液が得られる。また、リチウム欠乏及び/又はより酸性の水溶液、リチウム富化及び/又はより塩基性の水溶液、又は実質的に同じリチウム濃度及び/又はpHを有する水溶液が得られてもよい(103)。ここで、富化、欠乏、より塩基性、及びより酸性とは、それぞれ、供給されたリチウムを含む水溶液(101)に対する水溶液の特性を指す。
【0011】
図2は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的な方法を示す。リチウムを含む液体媒体を酸性水溶液でストリッピングして、リチウムを含む水溶液(201)を得る。リチウムを含む水溶液は、リチウムを含む第1水溶液であってよく、電気分解されてリチウムを含む第2水溶液、及び0.5未満のpHを有する酸性水溶液を得てもよく(202);第2水溶液のpHは酸性水溶液で調整されて、0.5未満のpHを有するリチウムを含む第3水溶液を得てもよく(206);リチウムを含む第3水溶液は、電気分解されてよい(202)。電気分解工程又は工程(202)は、1つ以上の電気分解セルで行われてもよく、1回以上行われてもよい。リチウムを含む水溶液を電気分解して(202)、リチウム欠乏水溶液を得、このリチウム欠乏水溶液は、ストリッピング工程(201)において酸性水溶液としてプロセスの上流に提供されてもよい(204)。リチウム欠乏水溶液を液体媒体で抽出して、リチウムを含む液体媒体を得る(203)。リチウムを含む液体媒体は、プロセスの上流のストリッピング工程(201)に供給されてもよい(205)。ストリッピング工程(201)、電気分解工程(202)、及び抽出工程(203)のそれぞれは、図に示された工程の各々又はいずれかの有無にかかわらず、独立して行うことができ、任意の順序で行うことができ、1回以上行うことができ、ストリッピング工程(201)、電気分解工程(202)、及び抽出工程(203)のそれぞれによって得られた様々な液体の各々又はいずれかを上流(204)、(205)、及び(206)に提供して、又は提供せずに行うことができる。
【0012】
発明の詳細な説明
例えば、本明細書に開示されるのは、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む方法であり、ここで、この水溶液が0.5未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0.4未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0.3未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0.2未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0.1未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が-1~0.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0~0.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0~0.4の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0~0.3の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0~0.2の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、この水溶液が0~0.1の範囲のpHを有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、水溶液は硫酸塩を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、-1~0.5の範囲の勾配に沿って調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、-1~0.5の範囲の勾配に沿って上昇して及び/又は下降して調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、0~0.5の範囲の勾配に沿って調整される。
【0015】
いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、-1~0.5の範囲の勾配に沿って上昇して調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、0~0.5の範囲の勾配に沿って上昇して調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、塩基を添加することによって、0~0.5の範囲の勾配に沿って上昇して調整される。
【0016】
いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、-1~0.5の範囲の勾配に沿って下降しと調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、0~0.5の範囲の勾配に沿って下降して調整される。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは、酸を添加することによって、0~0.5の範囲の勾配に沿って下降して調整される。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む第1水溶液を電気分解して、リチウムを含む第2水溶液、及び0.5未満のpHを有する酸性水溶液を得る工程、第2水溶液のpHを酸性水溶液で調整して、0.5未満のpHを有するリチウムを含む第2水溶液を得る工程、及び第3水溶液を電気分解する工程を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1水溶液は0.5を超えるpHを有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1水溶液の電気分解は、第3水溶液の電気分解とは異なる電気分解セルで行われる。
【0020】
いくつかの実施形態において、方法は、リチウムを含む液体媒体を酸性水溶液でストリッピングしてリチウムを含む水溶液を得る工程、及びリチウムを含む水溶液を電気分解してリチウム欠乏水溶液を得る工程を含み;ここで、リチウム欠乏水溶液が、酸性水溶液として方法の上流に供給され、液体媒体が、液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む水溶液よりも低いリチウム濃度を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、リチウム欠乏水溶液は、ゼロより大きいリチウム濃度を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、液体媒体は、液体媒体の総質量に対して5質量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、液体媒体は、液体媒体の総質量に対して10質量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、液体媒体は、液体媒体の総質量に対して20質量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、液体媒体は、液体媒体の総質量に対して1質量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、液体媒体は、液体媒体の総質量に対して0.1質量%未満の水を含む。いくつかの実施形態において、液体媒体は水と非混和性である。いくつかの実施形態において、液体媒体は有機溶媒である。いくつかの実施形態において、液体媒体は、少なくとも1つのリチウム用キレート剤を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約30g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約40g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約50g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約60g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約70g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約80g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約90g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約90g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約80g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約70g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約60g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約50g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約40g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約20g/L~約30g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約30g/L~約90g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約40g/L~約80g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウム欠乏水溶液は、約50g/L~約70g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約30g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約40g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約50g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約60g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約70g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約80g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約90g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約90g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約80g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約70g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約60g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約50g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約40g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約20g/L~約30g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約30g/L~約90g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約40g/L~約80g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。いくつかの実施形態において、リチウムを含む水溶液は、約50g/L~約70g/Lの範囲のリチウム濃度を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、リチウムを含む液体媒体を調製する方法は、リチウムを含む水溶液を0.5未満のpHで電気分解してリチウム欠乏水溶液を得る工程、及びリチウム欠乏水溶液を液体媒体で抽出する工程を含み;ここで、液体媒体が、液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む水溶液よりも低いリチウム濃度を有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、電気分解セルは、少なくとも1つの膜を含む。いくつかの実施形態において、電気分解セルは、少なくとも2つの膜を含む。いくつかの実施形態において、電気分解セルは、2つの膜を含む。膜は、リチウムを含む水溶液の電気分解に使用するための任意の公知のリチウムイオン伝導性膜であってよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの膜は、セラミック膜、ポリマー膜、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、ポリマー膜はスルホン化膜である。いくつかの実施形態において、スルホン化膜は、炭化水素主鎖又はPTFE主鎖を有する。いくつかの実施形態において、スルホン化膜は、スルホン化ポリアリーレンエーテル又はポリフェニルスルホン、例えばポリアリーレンエーテルUltrason(登録商標)又はポリフェニルスルホンUltrason(登録商標)である。いくつかの実施形態において、ポリマー膜は、パーフルオロ化膜、カチオン交換膜、PEEK-強化膜、スチレン/ジビニルベンゼン膜、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、膜は、スルホン酸基を有するフッ素化コポリマーである。いくつかの実施形態では、膜はパーフルオロスルホネートポリマー膜である。いくつかの実施形態において、パーフルオロスルホネートポリマー膜は、E.I.du Pont de Nemours社のNAFIONである。
【0027】
電気化学セルは、カソード及びアノードを含む。例示的な電気化学セルはICI FM01である。いくつかの実施形態において、セルは単極又は双極構成で構成される。カソードは、リチウムを含む水溶液の電気分解用に知られている任意のカソードであってよい。アノードは、リチウムを含む水溶液の電気分解のために知られている任意のアノードであってよい。いくつかの実施形態において、アノードは、金属電極、金属酸化物電極、白金族金属でコーティングされた電極、及び白金族金属酸化物でコーティングされた電極から選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、アノード上のコーティングの厚さは、1ミクロン~100ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態において、アノードはチタンである。いくつかの実施形態において、アノードは、メッシュ、プレート、ワイヤ、フォーム、及びフェルトから選択される形状を有する。いくつかの実施形態において、アノードは、シート、ロッド、平坦、波形、長方形、非対称、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、アノードは、チタン基材上にコーティングされた酸化イリジウムを有する。いくつかの実施形態において、アノードは、少なくとも1種の貴金属でドープされた金属酸化物の表面コーティングを有する導電性基材を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、貴金属は、白金、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、カソードは、金属電極、金属酸化物電極、白金族金属を有する電極、及び白金族金属酸化物でコーティングされた電極から選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、カソード上のコーティングの厚さは、1ミクロン~100ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態において、カソードは、ニッケル電極及びステンレス鋼電極から選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、カソードは、メッシュ、プレート、ワイヤ、フォーム、及びフェルトから選択される形状を有する。いくつかの実施形態において、カソードは、シート、ロッド、平坦、波形、長方形、非対称、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、カソードはステンレス鋼電極である。いくつかの実施形態において、カソードは多孔質金属から選択される。いくつかの実施形態において、カソードは、ステンレス鋼、ニッケル、コバルト、チタン、鋼、鉛、白金、及びそれらの組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも10個、少なくとも100個、少なくとも500個の電気分解セルが流体連通状態で次々に積み重ねられる。電気分解セルのスタックは、入口及び出口を有する。いくつかの実施形態において、方法は、入口から出口までpH勾配を有する電気分解セルのスタックで、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む。いくつかの実施形態において、方法は、入口から出口まで低減するpH勾配を有する電気分解セルのスタックで、リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む。いくつかの実施形態において、方法は、入口から出口まで低減するするpH勾配を有する電気分解セルのスタックでリチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、入口が0.5より大きいpHを有し、出口が0.5未満のpHを有する。いくつかの実施形態において、方法は、入口から出口まで低減するpH勾配を有する電気分解セルのスタックでリチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含み、ここで、入口が0.5より大きいpHを有し、出口が0.5未満pHを有し、スタックが、流体連通で直列に接続された少なくとも100個の電気分解セルを含む。
【0029】
黒い塊
「黒い塊」とは、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオンカソード活物質、及び/又はこれらの組み合わせから、機械的粉砕などの機械的処理によって得られるリチウムを含む材料を指す。例えば、黒い塊は、グラファイト及びカソード活物質などの電極の活性成分を得るために電池スクラップを機械的に処理することによって電池スクラップから得られ、ケーシング、電極ホイル、ケーブル、セパレータ、及び電解質からの不純物を含んでもよい。いくつかの例では、電池スクラップは、有機物(例えば、電解質)及びポリマー物質(例えば、セパレータ及びバインダ)を熱分解するための熱処理に供されてもよい。このような熱処理は、電池材料の機械的粉砕の前又は後に行うことができる。
【0030】
リチウムイオン電池は、分解、打ち抜き、例えばハンマーミルで粉砕、及び/又は例えば工業用シュレッダーで破砕されてもよい。このような機械的処理により、電池電極の活物質が得られる。有機プラスチック及びアルミニウムホイル又は銅ホイルから作られたハウジング部品のような軽い画分は、例えば、ガスの強制流、空気分離又は分級で除去することができる。
【0031】
電池スクラップは、例えば、使用済み電池、又は規格外材料のような製造廃棄物から生じることができる。いくつかの実施形態において、電池材料は、機械的に処理された電池スクラップ、例えばハンマーミル又は工業用シュレッダーで処理された電池スクラップから得られる。このような材料は、1μm~1cm、例えば1~500μm、さらに例えば3~250μmの範囲の平均粒径(D50)を有することができる。
【0032】
ハウジング、配線、及び電極キャリアフィルムのような電池スクラップの大きな部分は、対応する材料がプロセスで採用される電池材料から除外されるように、機械的に分離することができる。
【0033】
機械的に処理された電池スクラップは、遷移金属酸化物を集電体フィルムに結合させるため、又は例えばグラファイトを集電体フィルムに結合させるために使用されるポリマーバインダーを溶解及び分離するために、溶媒処理に供されてもよい。好適な溶媒としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドが、純粋な形態で、前述の少なくとも2種の混合物、又は1質量%~99質量%の水との混合物として挙げられる。
【0034】
機械的に処理された電池スクラップは、異なる雰囲気下、幅広い温度範囲での熱処理に供することができる。温度範囲は通常100℃~900℃の範囲である。300℃未満のより低い温度は、電池電解質から残留の溶媒を蒸発させることに役立ち、より高い温度ではバインダーポリマーが分解する可能性があり、400℃を超える温度では、一部の遷移金属酸化物がスクラップ材料に含有される炭素、又は還元性ガスの導入により還元されるため、無機材料の組成が変化する可能性がある。いくつかの実施形態では、温度を400℃未満に保つこと、及び/又は熱処理前に炭素質材料を除去することによって、リチウム金属酸化物の還元を回避することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、電池材料は、リチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシド、リチウム化ニッケルコバルトアルミニウムオキシド、リチウム金属リン酸塩、リチウムイオン電池スクラップ、リチウムイオン電池由来の黒い塊、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、電池材料は、式LiMPOのリチウム金属リン酸塩を含み、式中、xは1以上の整数であり、Mは金属、遷移金属、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0037】
いくつかの実施形態において、電池材料は、式Li1+x(NiCoMn 1-xのリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドを含み、式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、0≦x≦0.2であり、0.1≦a≦0.95であり、0≦b≦0.9(例えば0.05<b≦0.5)であり、0≦c≦0.6であり、0≦d≦0.1であり、そしてa+b+c+d=1である。例示的なリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドには、Li(1+x)[Ni0.33Co0.33Mn0.33(1-x)、Li(1+x)[Ni0.5Co0.2Mn0.3(1-x)、Li(1+x)[Ni0.6Co0.2Mn0.2(1-x)、Li(1+x)[Ni0.7Co0.2Mn0.3(1-x)、Li(1+x)[Ni0.8Co0.1Mn0.1(1-x)(それぞれ、xは上記で定義した通りである)、及びLi[Ni0.85Co0.13Al0.02]Oが含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、電池材料は、式Li[NiCoAl]O2+rのリチウム化ニッケルコバルトアルミニウムオキシドを含み、式中、hは0.8~0.90の範囲であり、iは0.1~0.3の範囲であり、jは0.01~0.10の範囲であり、rは0~0.4の範囲である。
【0039】
いくつかの実施形態では、電池材料は、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、リン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、電池材料は、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対するリチウムの質量比が0.01~100の範囲である。いくつかの実施形態では、電池材料が、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対するリチウムの質量比が0.01~10の範囲である。いくつかの実施形態では、電池材料が、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対するリチウムの質量比が0.01~5の範囲である。いくつかの実施形態では、電池材料が、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対するリチウムの質量比が0.01~2の範囲である。いくつかの実施形態では、電池材料が、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対するリチウムの質量比が0.01~1の範囲である。
【0041】
いくつかの実施形態では、電池材料はLiMOを含み、式中、xは1以上の整数であり、Mは金属、遷移金属、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池材料をリサイクルする方法は、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオンカソード活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して黒い塊を得る工程を含む。
【0043】
追加の実施形態
限定するものではないが、本開示のいくつかの実施形態には以下が含まれる。
【0044】
1.リチウムを含む水溶液を電気分解する工程を含む方法であって、前記水溶液が0.5未満のpHを有する、方法。
【0045】
2.前記水溶液が硫酸塩を含む、実施形態1に記載の方法。
【0046】
3.前記水溶液のpHが、-1~0.5の範囲の勾配に沿って調整される、実施形態1又は2に記載の方法。
【0047】
4.前記水溶液のpHが、-1~0.5の範囲の勾配に沿って上昇して調整される、実施形態3に記載の方法。
【0048】
5.前記水溶液のpHが、-1~0.5の範囲の勾配に沿って下降して調整される、実施形態3に記載の方法。
【0049】
6.リチウムを含む第1水溶液を電気分解して、リチウムを含む第2水溶液、及び0.5未満のpHを有する酸性水溶液を得る工程、前記第2水溶液のpHを前記酸性水溶液で調整して、0.5未満のpHを有するリチウムを含む第3水溶液を得る工程、及び実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法によってリチウムを含む前記第3水溶液を電気分解する工程を含む、方法。
【0050】
7.前記第1水溶液が0.5より大きいpHを有する、実施形態6に記載の方法。
【0051】
8.前記第1水溶液の電気分解が、前記第3水溶液の電気分解とは異なる電気分解セルで行われる、実施形態6又は7に記載の方法。
【0052】
9.リチウムを含む液体媒体を酸性水溶液でストリッピングして、リチウムを含む水溶液を得る工程、及び実施形態1から8のいずれか一項に記載の方法によってリチウムを含む前記水溶液を電気分解して、リチウム欠乏水溶液を得る工程を含む方法であって、前記リチウム欠乏水溶液が、酸性水溶液として方法の上流に供給され、前記液体媒体が、前記液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、前記リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む前記水溶液よりも低いリチウム濃度を有する、方法。
【0053】
10.前記リチウム欠乏水溶液がゼロより大きいリチウム濃度を有する、実施形態9に記載の方法。
【0054】
11.前記液体媒体が、前記液体媒体の総質量に対して5質量%未満の水を含む、実施形態9又は10に記載の方法。
【0055】
12.前記リチウム欠乏水溶液が、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する、実施形態9に記載の方法。
【0056】
13.リチウムを含む前記水溶液が、約20g/L~約100g/Lの範囲のリチウム濃度を有する、実施形態9に記載の方法。
【0057】
14.実施形態1から8のいずれか一項に記載の方法によってリチウムを含む水溶液を電気分解して、リチウム欠乏水溶液を得る工程、及び前記リチウム欠乏水溶液を液体媒体で抽出する工程を含む、リチウムを含む液体媒体を調製する方法であって、前記液体媒体が、前記液体媒体の総質量に対して50質量%未満の水を含み、前記リチウム欠乏水溶液が、リチウムを含む前記水溶液よりも低いリチウム濃度を有する、方法。
【0058】
15.前記リチウムを含む液体媒体が、請求項14に記載の方法に従って調製される、実施形態9から13のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
16.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、0.1A/cm~1.5A/cmの範囲の電流密度を有する、実施形態1から15のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
17.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、0.1A/cm~1A/cmの範囲の電流密度を有する、実施形態1から16のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
18.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、0.3A/cm~1A/cmの範囲の電流密度を有する、実施形態1から17のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
19.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、0.4A/cm~0.9A/cmの範囲の電流密度を有する、実施形態1から18のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
20.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、0V~5Vの範囲の電圧を有する、実施形態1から19のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
21.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、0V~3.5Vの範囲の電圧を有する、実施形態1から20のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
22.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、20℃~95℃の範囲の温度を有する、実施形態1から21のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
23.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、30℃~90℃の範囲の温度を有する、実施形態1から22のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
24.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、40℃~85℃の範囲の温度を有する、実施形態1から23のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
25.リチウムを含む水溶液を電気分解し、前記水溶液が0.5未満のpHを有し、50℃~85℃の範囲の温度を有する、実施形態1から24のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
26.前記リチウムを含む水溶液に塩基を添加しない、実施形態1から25のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
27.前記リチウムを含む水溶液のpHが上昇して調整されない、実施形態1から26のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
28.リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオンカソード活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して黒い塊を得る工程、前記黒い塊を浸出して、リチウムを含む水溶液を得る工程、及び実施形態1から27のいずれか一項に記載の方法に従って前記水溶液を処理する工程を含む、リチウムイオン電池材料をリサイクルする方法。
【0072】
29.リチウムを含む前記第1水溶液が、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオンカソード活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して黒い塊を得る工程、及び前記黒い塊を浸出して、リチウムを含む水溶液を得る工程を含む方法によって得られる、実施形態6から8のいずれか一項に記載の方法。
【0073】
30.リチウムを含む前記水溶液が、リチウム含有鉱石を浸出することによって得られる、実施形態1から27のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
31.リチウムを含む前記水溶液がリチウム含有地下水である、実施形態1から27のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
32.リチウムを含む前記第1水溶液が、リチウム含有鉱石を浸出することによって得られる、実施形態6から8のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
33.リチウムを含む前記第1水溶液がリチウム含有地下水である、実施形態6から8のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
34.リチウムを含む前記水溶液が、電池材料を浸出することによって得られる、実施形態1から27のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
35.リチウムを含む前記第1水溶液が、電池材料を浸出することによって得られる、実施形態6から8のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
グループの少なくとも1つのメンバーの間に「又は」又は「及び/又は」を含む請求項又は説明は、反対の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、グループのメンバーの1つ、2つ以上、又はすべてが、所定の製品又は方法において存在するか、採用されるか、又は他の方法で関連する場合に、満足されるとみなされる。本開示は、グループのちょうど1つのメンバーが、所定の製品又は方法において存在するか、採用されるか、又は他の方法で関連する実施形態を含む。本開示は、2つ以上、又は全てのグループメンバーが、所定の製品又は方法に存在するか、採用されるか、又は他の方法で関連する実施形態を含む。
【0080】
さらに、本開示は、記載された請求項の少なくとも1つからの少なくとも1つの限定、要素、条項、及び記述用語が別の請求項に導入される全ての変形、組み合わせ、及び変更を包含する。例えば、他の請求項に従属する請求項は、同じ基礎となる請求項に従属する他の請求項に見出される少なくとも1つの限定を含むように修正することができる。要素が、例えば、マークーシュグループ形式などのリストとして存在する場合、要素の各サブグループも開示され、任意の要素(単数又は複数)をグループから削除することができる。一般的には、本開示又は本開示の態様が特定の要素及び/又は特徴を含むと言及される場合、本開示又は本開示の態様の実施形態は、そのような要素及び/又は特徴からなるか、又は本質的にそのような要素及び/又は特徴からなることを理解されたい。簡略化のため、それらの実施形態は、本明細書において具体的に記載されていない。範囲が与えられる場合、エンドポイントが含まれる。さらに、他に示されない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に指示しない限り、本開示の異なる実施形態において、記載された範囲内の任意の特定の値又はサブ範囲を想定することができる。
【0081】
当業者であれば、本明細書に記載された本開示の具体的な実施形態に相当する多くの同等物を、日常的な実験以上のことを行わずに認識するか、又は確認することができるであろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】