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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電気化学エネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240717BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/6571
H01M10/6563
H01M10/658
H01M10/653
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024505330
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022070909
(87)【国際公開番号】W WO2023006725
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188163.6
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ハイデブレヒト,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】トミ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヤプツィンスキー,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】マルコ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】濱田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】斗野 綱士
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031KK01
5H031KK02
5H031KK03
5H031KK08
(57)【要約】
本発明は、ハウジング(3)内の収容空間内に複数の電気化学セル(15)を備える電気化学エネルギー貯蔵装置に関し、電気化学エネルギー貯蔵装置(1)は、ハウジング(3)の上部又は底部に平行に延びる第1ダクトと、電気化学セル(15)間の空間(19)に配置される1つ以上の熱伝達部材(17)とを備え、熱伝達部材(17)の少なくとも1つが第1ダクト(21)内に突出している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内(3)の収容空間内に複数の電気化学セル(15)を備える電気化学エネルギー貯蔵装置であって、前記電気化学エネルギー貯蔵装置(1)は、前記ハウジング(3)の上部又は底部に平行に延びる第1ダクトと、前記電気化学セル(15)の間の空間(19)に配置される1つ以上の熱伝達部材(17)とを備え、前記熱伝達部材(17)の少なくとも1つが前記第1ダクト(21)内に突出している、電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記電気化学セル(15)及び前記熱伝達部材(17)を取り囲む前記空間(19)は、液体又は固体材料で満たされている、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記固体材料は、好ましくは砂、金属、セラミック又はガラスから選択される粒状材料である、請求項2に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記熱伝達部材(17)は、プレート、任意の断面形状を有する中実ロッド、又は任意の断面形状を有するパイプである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記熱伝達部材(17)は、任意の断面形状を有するパイプ又はロッドであり、前記熱伝達部材(17)の数に対する前記電気化学セル(15)の数の比は、1:4から10:1の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記ハウジング(3)の壁に近く配置された外側の熱伝達部材(17)の表面は、前記ハウジング(3)の中央に配置された内側の熱伝達部材(17)の表面積より小さい、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
前記内側の熱伝達部材(17)の表面積に対する前記外側の熱伝達部材(17)の表面積の比は、0.1から1の範囲である、請求項6に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記ハウジングの上部又は底部に配置される第2ダクトをさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記電気化学エネルギー貯蔵装置は、底部に前記第2ダクトを備え、底部ヒータが前記第2ダクト上に配置される、請求項8に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記ハウジングは断熱性能を有する箱を備え、前記箱は断熱性能を有する蓋によって塞がれる開口部を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記第1ダクトは前記電気化学セルの上方の前記箱と前記蓋の間に配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記第1ダクト内に突出している前記熱伝達部材は、前記熱伝達部材の延在方向において前記収容空間の反対側の前記第1ダクトの表面に接触している、請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
外部から前記第1ダクトに空気を供給可能な第1吸気ファンをさらに備え、前記第1ダクトが、前記第1吸気ファンから空気が供給される第1吸気口と、熱が前記熱伝達部材から前記第1吸気口から供給される空気に伝達されるのを可能にする第1内部空間と、前記第1内部空間を通過した空気が外部に排出される第1排気口とを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
外部から前記第2ダクトに空気を供給可能な第2吸気ファンをさらに備え、前記第2ダクトが、前記第2吸気ファンから空気が供給される第2吸気口と、前記第2吸気口から空気が供給される第2内部空間であって、前記第2内部空間は前記底部ヒータが前記第2内部空間と前記収容空間における前記熱伝達部材の配置範囲との間に介在するように配置される第2内部空間と、前記第2内部空間を通過した空気が外部に排出される第2排気口とを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
前記熱伝達部材は、アルミニウム、銅、鋼、及びこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなる群から選択される1種以上の金属で作られる、請求項1~14のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記電気化学セルは、平面視で正方格子を形成するように配置され、前記熱伝達部材は、正方格子の単位格子の中心位置にそれぞれ配置される、請求項1~15のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記熱伝達部材は、複数のセルのうち単位格子を構成する4つのセルにそれぞれ接触している、請求項16に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に複数の電気化学セルを備え、各電気化学セルは固体電解質によって分離されたアノード空間とカソード空間を備える電気化学エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学エネルギー貯蔵装置は、一般に電池又は蓄電器とも呼ばれる。特に再充電電池(rechargeable batteries)又は再充電蓄電器(rechargeable accumulators)は、電気エネルギーを貯蔵して使用することを可能にする。大量の電気エネルギーを貯蔵するには、それに応じた強力な再充電電池が必要である。この目的のために、例えば溶融ナトリウム及び硫黄をベースにした電池を使用することが可能である。対応する容量を達成するために、電気化学エネルギー貯蔵装置では一般に、電気的に相互接続された複数の電気化学セルが使用される。アノードとしての溶融アルカリ金属及びカソード反応物(一般的に硫黄)に基づいて動作するこのような電気化学セルが、例えばWO-A 2017/102697に記載されている。ここでは、溶融アルカリ金属とカソード反応物は、陽イオンを通過させる固体電解質によって分離されている。カソードでは、アルカリ金属とカソード反応物との間で反応が起こる。ナトリウムがアルカリ金属として使用され、硫黄がカソード反応物として使用される場合、これは例えば多硫化ナトリウムを形成する、ナトリウムと硫黄の反応である。電気化学エネルギー貯蔵装置を充電するには、電気エネルギーの印加により、電極で多硫化ナトリウムが再びナトリウムと硫黄に分解される。
【0003】
個々の電気化学セルは、一般に「電池パック」内に積み重ねられるか、又は、代わりとして、ハウジング内に互いに平行に配置される。しかし、このような配置では、個々のセルの均一な温度制御が困難であるという欠点がある。特に熱伝達媒体が電気化学セルの向きに対して垂直に流れる場合、熱伝達媒体の貫流は、個々のセルからの熱伝達媒体による熱の吸収によって、流れる熱伝達媒体の移動距離の増加に伴って、前記熱伝達媒体の温度上昇を生じ、したがって、冷却が低下し、電気化学セルの劣化が加速される。しかし、これは電気化学エネルギー貯蔵装置の動作にとって不利である。特に、温度上昇が大きすぎる場合に、個々の電気化学セルに損傷を生じる危険性がある。これにより固体電解質が損傷すると、制御不能な反応が起こり、これは電気化学エネルギー貯蔵装置では制御が困難な火災につながる可能性がある。
【0004】
ナトリウム-硫黄電池を有する対応するエネルギー貯蔵装置は、例えばJP-A 2000-297989又はUS-B 7,955,725に記載されている。
【0005】
均一な温度制御を提供することは、公知の電気化学エネルギー貯蔵装置の課題である。均一な温度制御を実現するために、WO-A 2019/206864は、少なくとも1つの電気化学セルが支持構造体中に吊り下げ式に収容される電気化学エネルギー貯蔵装置を提案している。しかしながら、WO-A 2019/206864に記載されているように電気化学セルを吊り下げ式に配置することは、複雑な設計を必要とする。さらに、電気化学セルを吊り下げ式に収容することは、電気化学セルを装填することができる密度が制限されるという欠点を有する。
【0006】
ナトリウム硫黄電池の温度を制御するために、例えばEP-A 0 044 753又はUS 5,158,841から、電池セルに平行に延び、熱伝達媒体が通って流れる管を電池に設けることが知られている。US-A 2018/0062225及びUS-A 2021/0075076はそれぞれ、温度を制御するために単セルと接触する冷却フィンを使用することを記載している。必要な分配器と集熱器のために、熱伝達媒体、例えば空気が流れる冷却管は、実現するには技術的に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、少ない技術的労力で電気化学セルの温度を制御し、十分な熱伝達を可能にする電気化学エネルギー貯蔵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、ハウジング内の収容空間内に複数の電気化学セルを備える電気化学エネルギー貯蔵装置によって達成され、該電気化学エネルギー貯蔵装置は、ハウジングの上部又は底部に平行に延びる第1ダクトと、電気化学セル間の空間に配置される1つ以上の熱伝達部材とを備え、熱伝達部材の少なくとも1つが第1ダクト内に突出している。
【0009】
電気化学セルと熱伝達部材を、好ましくは平行になるように配置することにより、電気化学セルと熱伝達部材の間の距離を最小にし、熱伝達を最適化することができる。さらに、この配置により、電気化学エネルギー貯蔵装置全体の温度を均一に設定することができる。
【0010】
熱伝達部材は、例えばペルチェ素子又は電気加熱素子などの電気素子など、任意のタイプの熱伝達部材であってよい。しかし、特に好ましくは、プレートの形状、中実ロッドの形状又は中空パイプの形状を有する熱伝達部材が使用される。この場合、熱は電気化学セルから熱伝達部材へ伝達され、及び熱伝達部材内では、熱伝導により、熱は熱伝達部材の少なくとも一端へ伝達され、熱伝達媒体、特に空気が通って流れ得る第1ダクトへ伝達される。空気以外に、熱伝達媒体は、例えば、サーマルオイル又は窒素であってよい。しかし、特に好ましくは、熱伝達媒体は空気である。
【0011】
熱伝達部材の形状は任意である。好ましくは、熱伝達部材は、プレート、任意の断面形状、例えば円形、楕円形、又は任意の数の辺、好ましくは3~8の辺を有する多角形、を有する中実ロッド又はパイプである。特に好ましくは、熱伝達部材は、プレート、円形の断面形状を有する中実ロッド又はパイプである。
【0012】
電気化学セルの十分な加熱又は冷却を達成するために、熱伝達部材がパイプ状である場合、電気化学セルの数と熱伝達部材の数との比は、4:1から1:10の範囲であり、より好ましくは、電気化学セルの数と熱伝達部材の数との比は、2:1から1:1の範囲であり、特に1:1である。これにより、電気化学セルの数と熱伝達部材の数の比は、電気化学セルのサイズ及び形状ならびに熱伝達部材のサイズ及び形状に依存する。
【0013】
好ましくは、電気化学セルは、平面視で正方格子を形成するように配置され、熱伝達部材は、正方格子の単位格子の中心位置にそれぞれ配置される。特に好ましくは、熱伝達部材は、複数のセルのうち単位格子を構成する4つのセルにそれぞれ接触している。
【0014】
電気化学セルと熱伝達部材の配置とは無関係に、各熱伝達部材は、熱伝達部材とその電気化学セルに隣接する各電気化学セルとの間の距離が同じになるように、配置されてよい。この場合、熱伝達部材は電気化学セル間の空間の中心に位置する。電気化学セルが熱伝達部材に接触していない場合、熱伝達部材と隣接する電気化学セルとの間の距離が異なることも可能である。熱伝達部材と隣接する電気化学セルとの間の距離が異なる場合、熱伝達部材は中心からずれて配置される。しかし、好ましくは、熱伝達部材は中心に配置される。
【0015】
熱伝達部材がプレートの形状である場合、電気化学セルが列状に配置され、熱伝達部材が電気化学セルの列の間に配置されることが好ましい。
【0016】
パイプの形状の熱伝達部材又はプレートの形状の熱伝達部材を使用する以外にも、異なる形状の熱伝達部材を使用することがさらに可能であり、例えば、電気化学エネルギー貯蔵装置の内部にパイプの形状の熱伝達部材、及び、ハウジングの壁に近接して配置され、ハウジングの壁に平行に延びるプレートの形状の熱伝達部材、を使用することができる。プレートの形状の熱伝達部材をハウジングの壁に平行に配置する場合、最も外側の電気化学セルとハウジングの壁との間の空間に熱伝達部材を配置することがさらに可能である。
【0017】
電気化学セルは、好ましくはそれぞれ、アノード材料用の室(compartment)とカソード材料用の室を備え、アノード材料用の室とカソード材料用の室は固体電解質によって分離されている。
【0018】
電気化学セルに使用されるアノード材料は、好ましくは、電気化学セルの動作温度で液体であり、放電中にアノード側に供給される反応物である。アノード材料は好ましくは導電性である。好ましいアノード材料は、リチウム、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属である。特に好ましくは、アノード材料はナトリウム又はカリウムであり、特にナトリウムである。
【0019】
カソード材料は、電気化学セルの作動温度では液体であり、アノード材料と電気化学的に反応する反応物である。カソード材料は従来、アノード材料との化学反応によって塩を形成する。適切なカソード材料は、例えば硫黄やポリスルフィドである。また、カソード材料として適しているのは、塩化ナトリウムと、例えば鉄、ニッケル又はコバルトなどの8族の遷移金属との混合物と、NaAlCl4などの液体-溶融電解質との混合物である。
【0020】
アノード材料としてのアルカリ金属と組み合わせの他の適切なカソード材料は、例えば、窒素の酸化物(NO又はNO2)、例えば塩素、ヨウ素又は臭素などのハロゲン、例えばNiCl2又はFeCl3などの金属ハロゲン化物、例えばSiCl4又はSi2Cl6のなどの半金属ハロゲン化物である。また、酸化還元電位を変化させることができる固体の塩を使用することも可能である。そのような塩の例としては、NaFePO4がある。
【0021】
しかし、特に好ましくは、カソード材料は硫黄又はポリスルフィドである。
【0022】
電気化学エネルギー貯蔵装置は、好ましくは、直径と長さの比が1:2から1:100の範囲、より好ましくは1:3から1:70の範囲、特に1:4から1:50の範囲の電気化学セルを含む。
【0023】
電気化学セルの断面はどのような形状であってもよいが、断面の形状が円筒形であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の文脈で、「直径」という用語が非円筒形状に使用される場合、この用語は、
【数1】
によって定義される水力直径を指し、
ここで、dhは水力直径、Aは断面積、Uは周囲長である。
【0025】
電気化学エネルギー貯蔵装置に使用されるセルの数は、電気化学セルのサイズに依存する。特に好ましくは、電気化学エネルギー貯蔵装置で使用される電気化学セルはナトリウム-硫黄セルである。このようなナトリウム-硫黄セルは通常円筒形であり、6~20cmの範囲の直径と50~200cmの範囲の長さを有する。対応するナトリウム-硫黄セルは当業者に知られており、例えばWO-A2017/102697に記載されている。
【0026】
電気化学セルから熱伝達部材への十分な熱伝達を達成するために、熱伝達部材と電気化学セルが接触してよい。あるいは、電気化学セルと熱伝達部材が接触していないか、又は電気化学セルと熱伝達部材の一部だけが接触することができる。
【0027】
電気化学セルが熱伝達部材と接触しているか否かとは無関係に、熱伝達部材と電気化学セルとの間の空間が液体又は固体材料で満たされてよい。空間が固体材料で満たされている場合、固体材料が粒子状材料、特に粉状材料であることが特に好ましい。粒子状材料の粒子の平均粒径は、好ましくは0.1~2mmの範囲であり、より好ましくは0.5~1mmの範囲である。電気化学セルと熱伝達部材との間の空間を充填するために使用される固体材料は、好ましくは、砂、ガラス、金属又はセラミックなどの動作温度で安定な任意の無機固体材料である。特に好ましい材料は砂である。電気化学セルと熱伝達部材との間の空間を充填することにより、電気化学セルから熱伝達部材への熱伝達が改善されるというさらなる利点がある。
【0028】
電気化学セルと熱伝達部材の間の空間を充填するために固体材料を使用することは、電気化学セルの位置が安定し、電気化学セルが固定されるという追加の効果を有する。電気化学エネルギー貯蔵装置が動いても、電気化学セルはその位置に留まり、電気化学セルの損傷をもたらす可能性のある互いへの跳ね返りは起こらない。したがって、電気化学セルと熱伝達部材との間の空間を充填するために、固体材料を使用することが特に好ましい。電気化学セルの間の空間を充填するための固体材料として砂を使用することは、電気化学セルが損傷した場合に、固体材料が消火剤として機能するという追加の利点を有する。
【0029】
通常、電気化学セルは作動中に熱を発生する。この熱は、この場合冷却要素として動作する熱伝達部材によって放散される。さらに、熱の一部は電気化学エネルギー貯蔵装置の外壁を介して周囲に放散される。周囲への追加の放熱により、全ての電気化学セルの均一な冷却により、電気化学エネルギー貯蔵装置の壁に近い電気化学セルは、電気化学エネルギー貯蔵装置の中心に近い電気化学セルよりも低温になる。したがって、全ての電気化学セルの温度を均一にするためには、壁に近い位置に配置された電気化学セルよりも、電気化学エネルギー貯蔵装置の中心に近い位置に配置された電気化学セルからより多くの熱を放散させる必要がある。これは、例えば、ハウジングの壁により近い位置に配置される外側熱伝達部材の表面積が、ハウジングの中心に配置される内側熱伝達部材の表面積よりも小さくなるように、又は、ハウジングの壁により近い位置に配置される熱伝達部材を通る熱伝達媒体の体積流量が、ハウジングの中心に配置される熱伝達部材を通る熱伝達媒体の体積流量よりも小さくなるように、熱伝達部材を設計することによって達成され得る。好ましくは、熱伝達部材は、内側の熱伝達部材の表面積に対する外側の熱伝達部材の表面積との比が0.1から1の範囲になるように設計される。
【0030】
熱伝達部材が、ハウジングの一方の壁からハウジングの反対側の壁まで延びるプレートである場合、プレートの壁厚は、隣接する電気化学セル内で均一な温度を達成するように変えることができる。電気化学セル内の温度のこのような均一化のためには、ハウジングの壁に近いプレートの壁が厚いことが特に好ましい。さらに、電気化学セルの温度の均一化を達成するために、電気化学エネルギー貯蔵装置のハウジングの中心エリアにおけるプレートの対向する壁間の距離がより大きいプレートと、ハウジングの壁に近い壁間の距離がより小さい別個のプレートを設けることも可能である。
【0031】
熱伝達部材のサイズは2つだけでなく、2つより多い異なるサイズ、例えば3つ、もしくは4つ、あるいはもっと多くの異なるサイズの熱伝達部材を提供することも可能である。異なるサイズの数は、電気化学セルの数とセルの配置に依存する。例えば、ハウジング内で本質的に均一な温度を達成することができない場合、2つより多い異なるサイズが有利になり得る。
【0032】
本発明によれば、電気化学エネルギー貯蔵装置は、ハウジングの上部又は底部に平行に延び、熱伝達部材がその中に突出する第1ダクトを備える。この設計により、熱伝達部材から、第1ダクトを流れる熱伝達媒体、好ましくは空気への熱伝達が強化される。
【0033】
さらに、電気化学エネルギー装置は、第1ダクトがハウジングの上部に位置する場合にはハウジングの底部に、第1ダクトがハウジングの底部に位置する場合にはハウジングの上部に位置する第2ダクトを備えることもできる。
【0034】
電気化学エネルギー装置が付加的な第2ダクトを備える場合、熱伝達部材は好ましくは第2ダクトと接続されるか、第2ダクト内に延在する。
【0035】
特に、電気化学エネルギー装置の充電又は放電を開始するために、電気化学エネルギー装置を加熱する必要があり得、好ましくは、ヒータがセルの下の底部でハウジングの壁の近く、セルの上、又はこれらの組み合わせに配置される。底部ヒータが使用される場合、熱伝達部材の下端が底部ヒータの上方で終わることがさらに好ましい。
【0036】
電気化学エネルギー装置の取り付けを容易にするために、ハウジングは、開口部を有する箱と、開口部を閉じるための蓋を備えることが好ましい。特に電気化学セルの加熱中に周囲に伝達される熱を低減するために、箱及び蓋が断熱性能を有することがさらに好ましい。この目的のために、箱及び蓋は、箱の外側又は箱の壁の内側に取り付けられる断熱材を備えることができる。断熱材は、当業者に知られている任意の断熱材料、例えばミネラルウール、グラスウール、又はその他の無機微多孔性断熱材料であってよい。
【0037】
好ましくは、第1ダクトは電気化学セルの上方の箱と蓋の間に配置される。この配置により、電気化学セルの組み立てが容易になり、さらに、例えばメンテナンスのために第1ダクトに容易にアクセスすることができる。
【0038】
第1ダクトを通って流れる媒体に熱を伝達するために、少なくとも1つの熱伝達部材が第1ダクト内に突出している。特に好ましくは、全ての熱伝達部材が同じ長さを有し、それによって全ての熱伝達部材が第1ダクト内に突出する。
【0039】
熱伝達部材が第1ダクト内に突出している場合、第1ダクト内に突出している熱伝達部材は、熱伝達部材の延在方向において収容空間の反対側の第1ダクトの表面に接触していてよい。
【0040】
熱伝達を向上させるために、電気化学エネルギー貯蔵装置が、外部から第1ダクトに空気を供給可能な第1吸気ファンをさらに備え、第1ダクトが、第1吸気ファンから空気が供給される第1吸気口と、第1吸気口から供給される空気に熱伝達部材から熱を伝達させる第1内部空間と、第1内部空間を通過した空気が外部に排出される第1排気口とを含むことが好ましい。
【0041】
特に、電気化学エネルギー貯蔵装置の底部に第2ダクトが設けられる場合、電気化学エネルギー貯蔵装置が、外部から第2ダクトに空気を供給可能な第2吸気ファンをさらに備え、ここで第2ダクトが、第2吸気ファンから空気が供給される第2吸気口と、第2吸気口から空気が供給される第2内部空間と、底部ヒータが第2内部空間と収容空間における熱伝達部材の配置範囲との間に介在するように配置された第2内部空間と、第2内部空間を通過した空気が外部に排出される第2排気口とを含む。この場合、第2ダクトを流れる空気は、熱が第2ダクトに伝達され、第2ダクトを流れる空気により、この熱が第2ダクトを出た空気により周囲に放散されるため、電気化学セルの冷却も向上する。
【0042】
通常、熱は電気化学エネルギー貯蔵装置のハウジングの壁によって周囲に放散され、このため、ハウジングの壁に近い電気化学セルは、ハウジングの中心にある電気化学セルよりも冷却の必要性が低く、ハウジングの中心に近い内側熱伝達部材とハウジングの壁に近い外側熱伝達部材とは、第1ダクト内の異なる流体回路に突出することができる。
【0043】
流体回路を2つだけ設ける以外に、2つより多い流体回路を設けることも可能である。流体回路の数を増やすと、各流体回路を異なるパラメータで作動させることができるため、電気化学エネルギー貯蔵装置における熱伝達パラメータをより具体的に設定することができる。
【0044】
第1ダクト及び/又は第2ダクトが複数の閉流体回路を備える場合、温度を制御するために、各流体回路は、第1ダクト及び/又は第2ダクトのサブダクトへの入口に接続される少なくとも1つの外部熱交換器を備えてよい。流体回路が開放流体回路である場合、第1ダクト及び/又は第2ダクトは、それぞれ少なくとも1つの送風機と接続されてよく、さらに加熱が必要な場合には、熱伝達部材の間及び/又は熱伝達部材、第1ダクト及び/又は第1ダクトへの入口にも加熱要素を設けることもできる。
【0045】
十分な熱伝達のためには、熱伝達部材は、良好な熱伝導特性を有する材料で作られることが好ましい。熱伝達部材の材料として適切な材料は、アルミニウム、銅、鋼、及びこれらの金属の少なくとも1種を含む合金からなる群から選択される1種以上の金属で作られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の例示的な実施形態を図に示し、以下の説明でより詳細に説明する。
【0047】
図では、
図1】概略的に示した温度制御回路を有する電気化学エネルギー貯蔵装置を示す図である。
図2】電気化学エネルギー貯蔵装置の概略断面図である。
図3図2による電気化学エネルギー貯蔵装置の平面図である。
図4】熱伝達部材の上端の異なる配置を示す図である。
図5】熱伝達部材の上端の異なる配置を示す図である。
図6】熱伝達部材の上端の異なる配置を示す図である。
図7】電気化学エネルギー貯蔵装置の電気化学セルとプレートである熱伝達部材の上面図である。
図8】電気化学エネルギー貯蔵装置の電気化学セルと第1の実施形態ではパイプである熱伝達部材の上面図である。
図9】電気化学エネルギー貯蔵装置の電気化学セルと第2の実施形態ではパイプである熱伝達部材の上面図である。
図10】三角格子の電気化学セルの配置を示す図である。
図11】シミュレーション計算の結果としての温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図面の詳細な説明
図1は、概略的に示した温度制御回路を有する電気化学エネルギー貯蔵装置を示している。
【0049】
電気化学エネルギー貯蔵装置1は、電気化学セル及び熱伝達部材を封入するハウジング3を備える。電気化学エネルギー貯蔵装置1のエネルギー効率を向上させるために、ハウジング3が断熱された方法で具現化されていることが好ましい。ここで、断熱は、内側、又は個々のハウジング壁、又は外側に適用することができる。あるいは、ハウジング3を断熱材料から製造することも可能である。一例として、ハウジング3は、内側又は外側が断熱された金属シート、特に鋼板から製造されることができる。この場合、当業者に知られている任意の所望の断熱材料を断熱に使用することができる。代替案として、石(masonry)などの鉱物材料からハウジングを製造することも可能である。しかし、鋼板からなるハウジング3の利点は、この場合、輸送可能電気化学エネルギー貯蔵装置1を提供できるが、一方、固定された場所にある電気化学エネルギー貯蔵装置1をレンガのハウジング3で囲むこともできる。
【0050】
ハウジングには、熱伝達媒体の入口5と出口7を有する。熱伝達媒体は、ここに示すように上から下へ流れてよく、代わりに下から上へ流れてもよい。好ましくは、入口は分配器に接続され、分配器によって熱伝達媒体がハウジング3内の電気化学セルと平行に延びる熱伝達部材に分配される。電気化学エネルギー貯蔵装置1から熱伝達媒体を取り出すために、熱伝達部材は、出口7に接続されたコレクターに接続される。電気化学セルの上に分配器を、電気化学セルの下にコレクターを配置した図1に示す実施形態の代替として、分配器とコレクターの両方を、電気化学セルの上又は電気化学セルの下に配置することができ、好ましくは電気化学セルの上に配置する。
【0051】
熱伝達媒体のために少なくとも2つの流体回路を設けることを意図している場合、各流体回路は、それぞれの流体回路の熱伝達部材に接続される入口5と出口7を備える。
【0052】
温度を制御するために、出口7を介してハウジング3から除去された熱伝達媒体は、その後、熱交換器9、加熱装置11、及び送出装置13を通過し、その後、入口5を介してハウジング3に再導入される。この場合、熱交換器9、加熱装置11、及び送出装置13は、好ましくはチャネル内に配置され、チャネルは、パイプとして、又は任意の他の断面を有するチャネル、例えば長方形のチャネルとして具現化されることができる。
【0053】
熱交換器9は、特に、熱伝達媒体が電気化学セルを冷却するために使用される場合に、例えばアルカリ金属-硫黄セルの場合、充電及び放電プロセス中に必要なように、熱伝達媒体を冷却するために使用される。このプロセスの間、熱交換器9内の熱伝達媒体は、熱を別の熱伝達媒体に放出し、ここで、例えば、水又は任意の他の所望の従来の熱伝達媒体、例えばサーマルオイルを熱伝達媒体として使用することができる。
【0054】
電気化学セルの動作又は電気化学セルの起動のために熱を供給する必要がある場合、加熱装置11が設けられる。加熱装置11では、熱伝達媒体が加熱される。ここで、加熱は直接又は間接的に達成されることができ、間接的な加熱は、例えば、電気化学セルの温度を制御するために熱伝達媒体に熱を放出する熱媒体を使用することによって達成される。しかし、ここでは、電気化学セルを加熱するための熱伝達媒体が加熱されるべき温度より高い温度で安定である熱媒体を使用することのみが可能である。適切な熱媒体は、例えば溶融塩である。したがって、熱伝達媒体が電気的又は誘導的に、あるいは燃料を燃焼することによって加熱する加熱装置を使用することが好ましい。
【0055】
冷却用の熱交換器9と別個の加熱装置11とを有するここに示された実施形態の代替として、加熱と冷却の両方に使用されるただ1つの熱交換器を使用することも可能である。この目的のために、熱伝達媒体の温度を加熱用又は冷却用のいずれかに変更させることができ、あるいは、熱伝達媒体によって冷却し、さらに加熱用の電気加熱素子を含む組み合わせユニットが使用され、それによって電気化学セルの温度を制御するために必要なときに熱伝達媒体を加熱することができる。
【0056】
送出装置13は、使用される熱伝達媒体に依存する。好ましくは使用される流体の場合、送出装置13は例えばポンプである。送出装置13は、電気化学セルの温度を制御するのに十分な量の熱伝達媒体を熱伝達部材に通すことができるようにサイズ決めされる。
【0057】
熱伝達媒体のための閉流体回路を有する図1に示す実施形態に加えて、開回路を設けることも可能である。このような開回路は、熱伝達媒体が空気である場合に好ましく使用される。この場合、周囲の空気は入口5を通ってハウジング3に供給され、出口7を通ってハウジングから排出される。ここに示した実施形態とは異なり、空気は出口から周囲に吹き出される。電気化学エネルギー貯蔵装置を通して空気を供給するために、送出装置13、特に送風機が入口5及び/又は出口7に接続されている。追加の加熱を目的とする場合、入口に加熱装置11を設け、送風機によって吸い込まれる空気を加熱することが可能である。あるいは、分配器又は空気が流れる熱伝達部材にヒータを配置することが可能である。さらに、電気化学セルと熱伝達部材の間に加熱装置を配置することも可能である。
【0058】
図2及び図3は、電気化学エネルギー貯蔵装置の断面図と、熱伝導によって熱が伝達される熱伝達部材を有するそれぞれのエネルギー貯蔵装置の平面図である。
【0059】
電気化学エネルギー貯蔵装置1は、複数の単一電気化学セル15で構成される電池パック41を備える。電気化学セル15は、好ましくは直方体の形状を有し電気化学セル15が配置される空間19を取り囲む箱43を備えるハウジング3内に配置される。箱24は開口部45を有し、この開口部は蓋47によって閉じられている。図2から分かるように、蓋47は、好ましくは、下方に延びて箱43の上部を取り囲むリム49を備える。蓋47の大きさは、第1ダクトが箱43と蓋47の間に形成されるような大きさである。
【0060】
電池パック41の他に、箱43は、電気化学セル15の下の第2ダクト23と、電気化学セル15の間に配置される熱伝達部材17とを備える。電気化学セル15及び熱伝達部材17で満たされていない空間19は、好ましくは固体又は液体媒体、特に固体粒子媒体、例えばバーミキュライト又は珪砂のような砂で満たされている。特に液体又は固体の媒体は、単一の電気化学セル15の破損、異常加熱又は活物質の漏れなどの故障の場合に、周囲の影響を低減するために使用される。
【0061】
電気化学セル15を接続して電池パック41を形成するために、各電気化学セルは、ハウジング3に装着された状態で電気化学セル15の上端中央から突出する負極端子51と、電気化学セル15の周縁から突出する正極端子53を備える。電池パック41では、互いに隣接して配置された1つの正極端子53と負極端子51とが接続端子55によって電気的に接続されており、それによって、複数の電気化学セル15が直列に接続されたストリングが形成されている。接続端子55の一部を図3に示す。電池パック41では、複数のストリングが並列に接続されてブロックを形成し、複数のブロックが直列に接続されている。
【0062】
箱43は、箱43を下向きに支持するベース57に載置固定されている。箱43は、好ましくは、外側に面する金属製の外板59と、内側に面する金属製の内板61と、外板59と内板61との間に充填される電気絶縁性を有する断熱材63とから構成される。
【0063】
蓋47は、好ましくは、箱43に着脱可能に取り付けられ、電気化学エネルギー貯蔵装置1を使用する場合、箱43に載置され、電池パック41の出し入れの際には箱43から取り出される。
【0064】
蓋3は、好ましくは、外側に面する金属製の外板65と、内側に面する金属製の内板67と、外板65と内板67との間に充填される断熱材69とで構成される。
【0065】
好ましくは、断熱材63,69は大気雰囲気中で使用され、箱43及び蓋47は大気断熱構造を有する。より好ましくは、外板59と内板61とは断熱材63を介して互いに接触しないような形状及び配置で設けられ、外板65と内板67とも断熱材69を介して互いに接触しないような形状及び配置で設けられる。例えば、外板59と内板61、外板65と内板67は、間に空間を設けることで、断熱性に加えて電気絶縁性も確保される構成が採用される。
【0066】
上記のように箱43及び蓋57を構成することにより、隙間71が外板59と内板61との間に形成され、隙間73が外板65と内板67との間に形成される。箱43及び蓋47の内部に空気が存在し、使用中に加熱されて膨張すると、その空気が隙間71,73を通って外部に流出する。その結果、空気の熱膨張による箱43及び蓋47の変形が抑制される。
【0067】
あるいは、箱43及び/又は蓋47は、断熱材63,69として真空断熱板を採用することによって真空断熱構造とすることもできる。この場合、内板61,67と外板59,65とは強固に接続される。
【0068】
箱43と蓋47との間に第1ダクト21を形成するために、好ましくは、隙間71が形成された箱43の開放端部分に断熱性のクッション材75が配置される。第1ダクト21は、クッション材75上に形成され、箱43の外板59と蓋47の内板67との間に延在する。
【0069】
第1及び第2ダクト21,23にはそれぞれ、電動吸気ファンであり得る第1ファン77及び第2ファン79が設けられている。第1ファン77及び第2ファン79は、それぞれ第1ダクト21及び第2ダクト23に外気を供給するために設けられている。第1及び第2ファン77,79の動作は、ファン制御ユニットによって制御され得る。
【0070】
加えて、側面ヒータ81が箱43の両側の内板61の表面に設けられてよい。さらに、底部ヒータ83が第2ダクト23の上面85に設けられてよい。
【0071】
底部ヒータ83の上面は水平であり、電池パック41が底部ヒータ83の上面に配置されている。より具体的には、底部ヒータ83と電池パック41との間に、例えばマイカなどの板状又はシート状の絶縁体87が介在され、これにより底部ヒータ83と電池パック41との間の絶縁が確保されている。
【0072】
側面ヒータ81及び底部ヒータ83は、好ましくは、箱43の内部を加熱するための電気ヒータである。典型的には、側面ヒータ81及び底部ヒータ83は、電気化学エネルギー貯蔵装置1が電池パック41を充電又は放電しない待機状態にあるときに、電池パック41の各電気化学セル15の活物質を溶融状態に維持するように、箱43の内部を動作温度に維持するために使用される。側面ヒータ81及び底部ヒータ83の動作は、ヒータ制御部によって制御される。
【0073】
動作中に単一電気化学セル15で発生した熱を空間19の外部に放出するために、ロッド状の熱伝達部材17が設けられている。図2及び図3に示す実施形態では、熱伝導によって熱を伝達するための熱伝達部材を有し、熱伝達部材17は、高い熱伝導率を有する材料、典型的には高い熱伝導率を有する金属で作られている。好ましくは、アルミニウムが熱伝達部材17の材料として使用される。しかし、アルミニウム、鋼、銅又はこれらの金属の一部の合金を使用してもよい。
【0074】
図3から分かるように、電気化学セル15は平面視で円形である。熱伝達部材が熱伝達部材の材料の熱伝導によって動作する場合、各電気化学セル15が隣接する電気化学セル15と接触していることがさらに好ましい。電気化学セルは好ましくは長方形格子に配置され、熱伝達部材17は4つの電気化学セル15に囲まれた空間に配置される。隣接する電気化学セル15は接触しているため、2つの隣接する電気化学セル15の中心から中心までの距離は、1つの電気化学セル15の直径に相当する。熱伝達部材は、長方形格子の対角線の交点に配置されている。
【0075】
熱伝達部材17はまた、好ましくは円形の断面積を有し、電気化学セル15と熱伝達部材17の長手軸が平行に延びるように、かつ熱伝達部材17がそれぞれの熱伝達部材17を囲む全ての電気化学セル15と接触するように、電気化学セル15によって囲まれた空間に配置される。
【0076】
しかし、熱伝達部材が図3に示すように設計されている場合、熱伝達部材15は周囲の電気化学セル15と線接触(図3に示す断面図では点接触)のみとなる。熱伝達性能を向上させる観点から、熱伝達部材17と電気化学セル15とが面接触するように、熱伝達部材17の長手方向に垂直な断面形状を決定してよい。例えば、電気化学セル15の間の空間の全部又は大部分を熱伝達部材17が配置される領域であってよく、熱伝達部材17がこの領域の断面形状に対応する断面形状を有する。このような場合、熱伝達部材17の側面が電気化学セル15の側面に広く接触し、高い熱伝達性能が得られる。
【0077】
別の方法で適切な熱伝達が得られるのであれば、熱伝達部材17と電気化学セル15が接触していないこともさらに可能である。この場合、熱は、電気化学セル15と熱伝達部材17との間の空間にある媒体を介した熱伝達によって、電気化学セル15から熱伝達部材17に伝達される。
【0078】
断面が円形であることに加えて、熱伝達部材17は、電気化学セル15間の空間に配置できる限り、他の形状、例えば、四角柱状、三角柱状、あるいは表面積を大きくするために長手方向に沿って側面に凹凸を有する形状であってよい。さらに、電気化学セル15間の各空間に複数の熱伝達部材17を配置することも可能である。
【0079】
熱伝達部材17は、良好な熱伝達性能が確保される限り、中空パイプ形状又は中実ロッド形状であってよい。中空パイプの形状は、コスト面だけでなく、内部に砂を充填できる点でも有利である。より具体的には、一定量の電気化学セル15を備えた箱43の内部を縮小する観点から、箱43の内部に所定量以上の砂材を充填する必要がある。空間19に充填される砂材の種類は、パイプ状熱伝達部材17に充填される砂材の種類と同じであってよく、又は異なっていてもよい。さらに、1つの電気化学エネルギー貯蔵装置1において、パイプ状熱伝達部材17とロッド状熱伝達部材17とが共存していてもよい。
【0080】
熱伝達部材17がパイプ形状を有する場合、熱伝達部材17の両端は独立して閉じてよく、又は開いてよい。あるいは、両端部にそれぞれ独立して着脱可能な蓋を設けることができる。
【0081】
図3に示すように電気化学セル15によって囲まれた全ての空間に配置される以外に、熱伝達部材17は、電池パック41の中心付近の電気化学セル15間の空間のみに配置され得、熱伝達部材17の配置は、箱43の壁面に近い電気化学セル15間の空間では省略してよい。これは、箱43の中心近傍よりも箱43の壁面近傍の方が熱が外部に放出されやすいため可能である。
【0082】
図2から分かるように、各熱伝達部材17の下端89は絶縁体87に接触している。一方、熱伝達部材17の上端91は、少なくとも一部が第1ダクト21内に突出するように配置されている。好ましくは、熱伝達部材17の上端91は、第1ダクト21の上面を形成する蓋47の内板67に近接するように、特に第1ダクト21の上面に接触するように配置される。
【0083】
電気化学セルの制御には、各部の動作を制御するコントローラを設けることが好ましい。コントローラは、CPU、ROM、RAM等を有する汎用の又は専用のコンピュータにより構成されることができ、コンピュータに内蔵又は外部接続された所定の記憶媒体に保存された動作プログラムを実行することによりコントローラとして機能する。コントローラは、動作プログラムの実行により実現される仮想的な構成要素として、電池動作制御ユニット及び温度制御ユニットを主に含む。
【0084】
電池動作制御ユニットは、電池パック41内の電気化学エネルギー貯蔵装置1の充放電動作、電気化学エネルギー貯蔵装置1と外部との間の給電動作及び受電動作などを制御する。
【0085】
温度制御ユニットは、箱43の所定位置に設けられた温度センサからの出力信号(温度信号)に基づいて、電気化学エネルギー貯蔵装置1の動作中(充放電中)及び待機中の電気化学エネルギー貯蔵装置1内の温度(特に、空間19の温度)を制御する。温度制御ユニットは、第1ファン77及び第2ファン79の動作を制御するファン制御ユニットと、側面ヒータ81及び底部ヒータ83の動作を制御するヒータ制御ユニットとを含む。
【0086】
電気化学エネルギー貯蔵装置1の動作中、電池パック41における充放電動作、電池パック41と外部との間の給電動作及び受電動作が、電池動作制御ユニットの制御の下、実行され、このとき、ファン制御ユニットは、第1ファン77及び第2ファン79を適切に動作させて、外部から第1ダクト21及び第2ダクト23に低温空気を吹き込み、電気化学エネルギー貯蔵装置1内の動作温度を維持する。このように、動作温度が維持された状態で充電/放電動作及び給電/受電動作が行われる。
【0087】
一方、待機時には、電気化学エネルギー貯蔵装置は、ヒータ制御ユニットによる温度センサからの出力信号に基づいて、側面ヒータ81と底部ヒータ83の通電状態をオン/オフすることによって、主に動作温度に維持する。
【0088】
動作中、反応熱がそれぞれの電気化学セル15で発生する。反応熱は、それぞれの電気化学セル15の周囲に伝達された後、空間19に充填された媒体よりも高い熱伝導率を有する熱伝達部材17に伝達される。電気化学セル15から熱伝達部材17に伝達される熱は、図2の矢印93によって示されている。
【0089】
矢印95、97で示すように、熱伝達部材17に伝達された熱は、熱伝達部材17の上端91と下端89に急速に移動する。
【0090】
電気化学エネルギー貯蔵装置の作動中、第1ファン77を作動させることにより、箱43内の温度より低い温度を有する外気99が第1ダクト21に導入される。空気は矢印101で示すように第1ダクト21を通って流れる。第1ダクト21を流れる空気は、第1ダクト21の下面を冷却することにより、電気化学セル15から発生される熱を吸収する。さらに、熱伝達部材17の上端91は、第1ダクト21を流れる空気によって冷却される。このように加熱された空気は、矢印103で示すように周囲に放出される。
【0091】
第2ファン79も存在する場合、電気化学エネルギー貯蔵装置1の作動中に作動され、外部の空気105を第2チャネル23に導入する。空気は矢印107で示すように第2チャネル23を流れ、それにより第2ダクト23の上面、ひいては電池パック41を含む空間19及び熱伝達部材17の下端89を冷却する。空間19から第2ダクト23を通って流れる空気への熱伝達は、動作時の電気化学セルと外気との間の温度差が高いため、電気化学エネルギー貯蔵装置1の通常動作中には動作していない、絶縁体87及び底部ヒータ83が電気化学セル15と熱伝達部材17との間に設けられていても可能である。
【0092】
熱伝達部材17から第2ダクト23を流れる空気への熱伝達をさらに向上させるために、熱伝達部材17の下端89が第2ダクト21内に突出するように熱伝達部材17を設計することも可能である。
【0093】
熱伝達部材17のさらなる利点は、電気化学エネルギー貯蔵装置1の待機中にも、電池パック41が側面ヒータ81及び底部ヒータ83によって加熱されると、底部ヒータ83からの熱が熱伝達部材17を介した熱伝達によって電気化学セル15に伝達され、それによって電気化学セル15の温度がより効率的に維持されることである。
【0094】
本発明によれば、少なくとも1つの熱伝達部材が第1ダクト内に突出している。さらなる熱伝達部材は、図4から図6に示すように配置されることができる。
【0095】
図4に示す配置は、図2の配置に対応しており、全ての熱伝達部材17が第1ダクト21内に突出しており、第1ダクト21内に突出する熱伝達部材17の上端91の周囲を流れる空気によって熱伝達部材17が冷却され、それによって動作中の放熱が確保される。
【0096】
ただし、熱伝達部材17の少なくとも1つが第1ダクト21内に突出していなくても、熱伝達部材17による十分な放熱を実現することができる。熱伝達部材は、図5に示すように、熱伝達部材17の上端が第1ダクト21の下面に接触する長さを有することができる。この実施形態 では、熱は、第1ダクト21の下面には、熱伝達部材17を導くための貫通孔は不要である。本実施形態では、熱伝達部材17の上端から第1ダクト21の下面に伝達され、第1ダクト21の下面から第1ダクトを流れる空気に伝達される。
【0097】
図6に示すように、少なくとも1つの熱伝達部材17の上端が、第1ダクト21の下面より距離dだけ低い位置で終わっていれば十分でさえあり得る。この場合、熱は、熱伝達部材17の上端と第1ダクト21の下面との間の媒体によって第1ダクト21の下面に伝達され、次いで第1ダクト21の下面から第1ダクト21を流れる空気に伝達される。熱伝達部材17が図55及び図6に示すような長さを有する場合には、熱伝達部材17用の貫通孔を設けずに上部ダクト21を製造することも可能である。
【0098】
例えば、電気化学エネルギー貯蔵装置1の中心近傍の温度が外周部の温度よりも高くなる傾向にあることを考慮すると、電気化学エネルギー貯蔵装置の中心近傍の熱伝達部材17は、第1ダクト21内に突出していてよく、外周部の第1ダクト21内に突出していなくてよい。
【0099】
代替として又は追加として、電気化学エネルギー貯蔵装置1の中心付近に固体熱伝達部材17を設け、外周部分にパイプ状の熱伝達部材17を設けること、及び/又は、電気化学エネルギー貯蔵装置の中心付近により大きな断面積を有し、外周部分に位置する場合にはより小さな断面積を有する熱伝達部材17を設けることも可能である。
【0100】
このように、異なる冷却能力を有する熱伝達部材17を、要求される冷却性能に応じて、場所によって場所に応じて選択的に用いることによって、電気化学エネルギー貯蔵装置1全体の温度分布を均一化することができる。
【0101】
熱伝達部材17が第1ダクト21を貫通する場合、熱伝達部材17の第1ダクト21内に突出する部分に少なくとも1つの放熱フィンを取り付けてよい。この場合、第1ダクト21内における熱伝達部材17からの放熱がさらに促進される。
【0102】
電気化学エネルギー貯蔵装置に使用される熱伝達部材17は、任意の適切な断面形状を有することができる。可能な形状の例を図7から図9に示す。
【0103】
図7は、電気化学エネルギー貯蔵装置の電気化学セルと熱伝達部材の上面図であり、熱伝達部材はプレートである。
【0104】
熱伝達部材17が図7に示すようにプレートの形態である場合、電気化学セル15は列状に配置され、熱伝達部材17は電気化学セル15の列間に配置される。
【0105】
熱伝達部材17がパイプ又はロッドである実施形態を図8及び図9に示す。電気化学セル15から熱伝達部材17への十分な熱伝達を達成するために、電気化学セル15は熱伝達部材17の周囲に配置される。4つの電気化学セル15を1つの熱伝達部材17の周囲に配置することに加えて、1つの熱伝達部材17の周囲に任意の他の数の電気化学セル15を配置することも可能であり、例えば3、5、6又は8つの電気化学セル15を配置することが可能である。1つの熱伝達部材17の周りに配置される電気化学セル15の数は、特に熱伝達部材17と電気化学セル15の直径に依存する。電気化学セル15の直径が大きいほど、また熱伝達部材17の直径が小さいほど、満足な熱伝達のために大きすぎる空間を形成することなく、熱伝達部材17の周囲に配置できる電気化学セル15の数は少なくなる。
【0106】
図8及び図9に示す実施形態は、熱伝達部材17の断面形状が異なる。図8に示す実施形態では、熱伝達部材17は円形の断面形状を有し、図9に示す実施形態では、熱伝達部材17は正方形の断面形状を有する。
【0107】
図8及び図9に示す形状の他に、熱伝達部材17は他の形状、例えば楕円形、又は任意の数の辺を有する多角形を有してよい。しかし、特に好ましくは、熱伝達部材17は、図8に示すような円形の断面形状を有する。
【0108】
熱伝達部材17がパイプである場合、1つの電気化学エネルギー貯蔵装置において、異なる断面形状及び/又は異なる直径を有するパイプを使用することが可能である。しかし、全ての熱伝達部材17が同じ形状であることが特に好ましい。熱伝達部材によって放散される必要がある熱量又は熱伝達部材によって供給される必要がある熱量が、電気化学エネルギー貯蔵装置1内の異なる位置において異なる場合には、異なる直径が好ましい場合がある。この場合、より大きな熱量を除去するためには、電気化学エネルギー貯蔵装置のうち、より大きな熱量が発生する領域において、より大きな直径が好ましい。したがって、より多くの熱量を供給するためには、より多くの熱量が必要とされる領域において、より大きな直径が好ましい。
【0109】
上記に示した実施形態では、電気化学セル15は長方形格子状に互いに隣接して配置されている。しかしながら、電気化学セル15の配置はこれに限定されない。
【0110】
例えば、電気化学セルは最密充填で配置されることができる。これを図10に平面図を示す。この場合、円形の断面形状を有する電気化学セルが正三角形格子に配置される。そして、熱伝達部材17は、3つの電気化学セル15に接触するように配置される。
【0111】
しかし、ここに示した長方形格子及び三角格子の他に、電気化学セルを他の格子形状に配置されてよい。

固体材料の熱伝導により熱を伝達する熱伝達部材17の有無、及び熱伝達部材17と第1ダクト21との位置関係が、電気化学エネルギー貯蔵素子の放電時の温度特性に及ぼす影響を評価するためのシミュレーション実験を行った。
【0112】
例1から3の場合、約100mmの直径、500mmの長さを有する25個の単電気化学セル15は、それぞれステンレス鋼(SUH409L、熱伝導率27W/m*K)製の蓋47によって閉じられた箱43の収容空間19に、図2及び図3に示すように、5×5の格子に互いに隣接して配置された。外半径38mm、内半径32mmを有する中空パイプ状の熱伝達部材17がこれにより形成された16個の空間に配置された。残りの収容空間19には砂材を充填した。例1から3では、熱伝達部材17の配置のみが互いに異なっている。各電気化学セル15は、280W/DCの出力で4時間の連続放電が可能であることに留意されたい。
【0113】
実施例1では、図4に示すように、熱伝達部材17が第1ダクト21内に侵入し、上端部91が第1ダクト21の上面に接触している。
【0114】
実施例2では、熱伝達部材15は第1ダクト21内を通過せず、図5に示すように熱伝達部材17の上端91が第1ダクト21の下面に接触している。
【0115】
実施例3によれば、図6に示すように、熱伝達部材17の上端91は、第1ダクト21の下面から距離d=5mmだけ離間している。
【0116】
比較のため、電気化学セルを実施例1から3と同様に配置し、熱伝達部材を含まない電気化学エネルギー貯蔵装置を用いた。
【0117】
これらの例及び比較例に関して、電気化学セル15の3つの異なる高さ位置、すなわち「上部」、「中間部」、及び「下部」における温度分布を目標温度305℃で放電を行った場合のシミュレーションをした。「上部」、「中間部」、「下部」は、電気化学セル15の底面から400mm、250mm、20mmの位置にそれぞれ設定されている。
【0118】
図11は、シミュレーションにより得られた例1から3及び比較例の「上部」、「中間部」、「下部」における温度分布と、温度分布における最高温度とを示す図である。図中の下部に示すように、各温度分布において、25個の電気化学セル15からなる電池パック41が箱43で囲まれた収容空間19に配置されている。ただし、熱伝達部材17の図示は省略している。
【0119】
加えて、収容空間19内の中央部を占める電池パック41の部分では、色が濃くなるにつれて温度が高くなる。白丸は最高温度位置を示す。
【0120】
図11から、温度は、どの電気化学セルのほぼ中心及びどの高さ位置で最も高くなる傾向があることが分かる。
【0121】
さらに、熱伝達部材17を設けない比較例では、高さ位置によらず最高温度が400℃を超えているのに対し、熱伝達部材17を設けた第1から第3の実施形態では、最高温度が340℃以下に抑えられている。これらの結果から、熱伝達部材17を設けることが、電気化学エネルギー貯蔵装置の放電時の放熱に有効であることが示されている。
【0122】
特に、熱伝達部材17が第1ダクト21内に貫入している例1に関して、「中間部」の最高温度が300℃をわずかに超えるものの、温度は高さ位置によらずほぼ300℃以下であり、目標温度である305℃を下回った。さらに、面内の温度差は小さかった。このことから、第1実施形態の構成は、電気化学エネルギー貯蔵装置の放電時の放熱に極めて有効であることを示している。
【0123】
一方、例2、3では、最高温度が例1よりも高く、目標温度である305℃を超えたものの、比較例との温度差は顕著であった。例2及び3では、「底部」の温度が「上部」及び「中間部」の温度よりも低い傾向にあり、「上部」及び「中間部」では、中心部と周辺部との温度差が比較的顕著であった。これらの結果から、例2及び3の構成も、モジュール電池の放電時の放熱にある程度有効であることが分かる。
【符号の説明】
【0124】
1 電気化学エネルギー貯蔵装置
3 ハウジング
5 温度制御媒体用入口
7 温度制御媒体用出口
9 熱交換器
11 加熱装置
13 送出装置
15 電気化学セル
17 熱伝達部材
19 空間(固体又は液体媒体で満たされている)
21 第1ダクト
23 第2ダクト
25 ブラインド
27 内側パイプ
29 内側パイプ
31 閉端
33 隙間
35 第1壁
37 第2壁
39 空間
41 電池パック
43 箱
45 開口部
47 蓋
49 リム
51 負極端子
53 正極端子
55 接続端子
57 ベース
59 外板
61 内板
63 断熱材
65 外板
67 内板
69 断熱材
71 隙間
73 隙間
75 断熱クッション材
77 第1ファン
79 第2ファン
81 側面ヒータ
83 底部ヒータ
85 第2ダクト23の上面
87 絶縁体
89 熱伝達部材17の下端
91 熱伝達部材17の上端
93 熱電気化学セルから熱伝達部材に伝達される熱
95 上端91に伝達される熱
97 下端89に伝達される熱
99 外気
101 第1ダクト21を通る空気の流れ
103 空気を周囲へ放出
105 外気
107 第2ダクト23を通る空気の流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内(3)の収容空間内に複数の電気化学セル(15)を備える電気化学エネルギー貯蔵装置であって、前記電気化学エネルギー貯蔵装置(1)は、前記ハウジング(3)の上部又は底部に平行に延びる第1ダクトと、前記電気化学セル(15)の間の空間(19)に配置される1つ以上の熱伝達部材(17)とを備え、前記熱伝達部材(17)の少なくとも1つが前記第1ダクト(21)内に突出している、電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記電気化学セル(15)及び前記熱伝達部材(17)を取り囲む前記空間(19)は、液体又は固体材料で満たされている、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記固体材料は、好ましくは砂、金属、セラミック又はガラスから選択される粒状材料である、請求項2に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記熱伝達部材(17)は、プレート、任意の断面形状を有する中実ロッド、又は任意の断面形状を有するパイプである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記熱伝達部材(17)は、任意の断面形状を有するパイプ又はロッドであり、前記熱伝達部材(17)の数に対する前記電気化学セル(15)の数の比は、1:4から10:1の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記ハウジング(3)の壁に近く配置された外側の熱伝達部材(17)の表面は、前記ハウジング(3)の中央に配置された内側の熱伝達部材(17)の表面積より小さい、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
内側の熱伝達部材(17)の表面積に対する外側の熱伝達部材(17)の表面積の比は、0.1から1の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記ハウジングの上部又は底部に配置される第2ダクトをさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記電気化学エネルギー貯蔵装置は、底部に前記第2ダクトを備え、底部ヒータが前記第2ダクト上に配置される、請求項8に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記ハウジングは断熱性能を有する箱を備え、前記箱は断熱性能を有する蓋によって塞がれる開口部を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記第1ダクトは前記電気化学セルの上方の前記箱と前記蓋の間に配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記第1ダクト内に突出している前記熱伝達部材は、前記熱伝達部材の延在方向において前記収容空間の反対側の前記第1ダクトの表面に接触している、請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
外部から前記第1ダクトに空気を供給可能な第1吸気ファンをさらに備え、前記第1ダクトが、前記第1吸気ファンから空気が供給される第1吸気口と、熱が前記熱伝達部材から前記第1吸気口から供給される空気に伝達されるのを可能にする第1内部空間と、前記第1内部空間を通過した空気が外部に排出される第1排気口とを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
外部から前記第2ダクトに空気を供給可能な第2吸気ファンをさらに備え、前記第2ダクトが、前記第2吸気ファンから空気が供給される第2吸気口と、前記第2吸気口から空気が供給される第2内部空間であって、前記第2内部空間は前記底部ヒータが前記第2内部空間と前記収容空間における前記熱伝達部材の配置範囲との間に介在するように配置される第2内部空間と、前記第2内部空間を通過した空気が外部に排出される第2排気口とを含む、請求項~13のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
前記熱伝達部材は、アルミニウム、銅、鋼、及びこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなる群から選択される1種以上の金属で作られる、請求項1~14のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記電気化学セルは、平面視で正方格子を形成するように配置され、前記熱伝達部材は、正方格子の単位格子の中心位置にそれぞれ配置される、請求項1~15のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記熱伝達部材は、複数のセルのうち単位格子を構成する4つのセルにそれぞれ接触している、請求項16に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【国際調査報告】