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特表2024-527499ビスマレイミド系組成物、硬化物、シート、積層体及びフレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ビスマレイミド系組成物、硬化物、シート、積層体及びフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20240718BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240718BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20240718BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240718BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H05K1/03 610H
C08G73/10
C08G73/12
C08K3/36
C08L79/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577797
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021022763
(87)【国際公開番号】W WO2022264292
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(71)【出願人】
【識別番号】517099982
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 来
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隆照
(72)【発明者】
【氏名】古谷 健司
(72)【発明者】
【氏名】前田 英之
(72)【発明者】
【氏名】小平 洋
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002DJ016
4J002EK037
4J002FB146
4J002FD016
4J002FD147
4J002GF00
4J043PA04
4J043PB03
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA46
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA041
4J043UA122
4J043UA632
4J043UA662
4J043UA672
4J043UA771
4J043YB19
4J043YB25
4J043ZA02
4J043ZA12
4J043ZA23
4J043ZA35
4J043ZA43
4J043ZB50
(57)【要約】
芳香族テトラカルボン酸類(a1)、ダイマージアミン(a2)、及び無水マレイン酸(a3)由来の構造を有するビスマレイミド樹脂(A)と、フェニルアミノシランにより表面処理されたシリカ粒子(B)とを含み、シリカ粒子(B)の平均粒径が100nm以下であり、シリカ粒子(B)の最大凝集粒径が20μm以下であり、シリカ粒子(B)の含有量が、組成物の固形分全量を基準として15質量%以下である、ビスマレイミド系組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸類(a1)、ダイマージアミン(a2)、及び無水マレイン酸(a3)由来の構造を有するビスマレイミド樹脂(A)と、フェニルアミノシランにより表面処理されたシリカ粒子(B)とを含み、
前記シリカ粒子(B)の平均粒径が100nm以下であり、
前記シリカ粒子(B)の最大凝集粒径が20μm以下であり、
前記シリカ粒子(B)の含有量が、組成物の固形分全量を基準として15質量%以下である、ビスマレイミド系組成物。
【請求項2】
前記芳香族テトラカルボン酸類(a1)が、無水ピロメリット酸である、請求項1に記載のビスマレイミド系組成物。
【請求項3】
前記ダイマージアミン(a2)が、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のビスマレイミド系組成物。
【化1】

【化2】

[式(1)及び(2)中、m、n、p及びqはそれぞれ、m+n=6~17、p+q=8~19となるように選ばれる1以上の整数を表し、破線で示した結合は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する。但し、破線で示した結合が炭素-炭素二重結合である場合、式(1)及び(2)は、炭素-炭素二重結合を構成する各炭素原子に結合する水素原子の数を、式(1)及び(2)に示した数から1つ減じた構造となる。]
【請求項4】
前記ビスマレイミド樹脂(A)の重量平均分子量が3000~25000である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビスマレイミド系組成物。
【請求項5】
更に重合開始剤(D)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のビスマレイミド系組成物。
【請求項6】
前記重合開始剤(D)が、有機過酸化物である、請求項5に記載のビスマレイミド系組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビスマレイミド系組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビスマレイミド系組成物及び基材を備えるシート。
【請求項9】
請求項8に記載のシートに更に金属箔を熱圧着させることにより得られる積層体。
【請求項10】
請求項8に記載のシートを用いてなるフレキシブルプリント配線板。
【請求項11】
請求項9に記載の積層体を用いてなるフレキシブルプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマレイミド系組成物、硬化物、シート、積層体及びフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と略す)及びFPCを用いた多層配線板は、携帯電話及びスマートフォン等のモバイル型通信機器ならびにその基地局装置、サーバー・ルーター等のネットワーク関連電子機器、大型コンピュータ等の製品で使用されている。
【0003】
近年、それらの製品においては、大容量の情報を高速で伝送・処理するために高周波の電気信号が使用されているが、高周波信号は非常に減衰しやすいため、上記FPC及び多層配線板等にも伝送損失を抑える工夫が求められる。
【0004】
伝送損失は、誘電体、即ち導体(銅回路)周囲の絶縁材料に由来する“誘電体損失”と、銅回路自体に由来する“導体損失”とに区別でき、双方を抑制する必要がある。
【0005】
誘電体損失は、周波数と、銅回路周囲の絶縁材料の誘電率及び誘電正接とに依存する。そして、周波数が高いほど、該絶縁材料としては、低誘電率且つ低誘電正接の材料を用いる必要がある。
【0006】
一方、導体損失は、表皮効果、即ち、銅回路表面の交流電流密度が高くなりその抵抗が大きくなる現象に起因しており、周波数が1GHzを超えた場合に顕著となる。導体損失を抑制するための主な対策は、銅回路表面の平滑化である。
【0007】
誘電体損失を抑制するには、上記したように、絶縁材料として低誘電率且つ低誘電正接の材料を用いるのがよく、そのような材料としては、従来、特定のポリイミドが使用されてきた(特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-299040号公報
【特許文献2】特開2014-045076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
絶縁材料には、高周波信号を使用するために、低誘電率且つ低誘電正接が求められるだけでなく、配線板の信頼性の確保や基板の反りを抑制するために、低線膨張係数(低CTE)が求められる。従来の絶縁材料では、低誘電率、低誘電正接及び低線膨張係数の全てを高水準で実現することが困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、誘電率及び誘電正接(以下、両者を「誘電特性」と総称することがある。)が共に低く、且つ、線膨張係数(CTE)が低い、新規なビスマレイミド系組成物を提供することを主たる課題とする。
【0011】
本発明は、低誘電特性及び低線膨張係数を有するビスマレイミド系組成物、並びに、それを用いた硬化物、シート、積層体及びフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、芳香族テトラカルボン酸類(a1)、ダイマージアミン(a2)、及び無水マレイン酸(a3)由来の構造を有するビスマレイミド樹脂(A)と、フェニルアミノシランにより表面処理されたシリカ粒子(B)とを含み、シリカ粒子(B)が特定の条件を満たし、且つ、シリカ粒子(B)の含有量が所定の範囲内であるビスマレイミド系組成物が、優れた低誘電特性を有し、更に優れた低線膨張係数を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]芳香族テトラカルボン酸類(a1)、ダイマージアミン(a2)、及び無水マレイン酸(a3)由来の構造を有するビスマレイミド樹脂(A)と、フェニルアミノシランにより表面処理されたシリカ粒子(B)とを含み、
上記シリカ粒子(B)の平均粒径が100nm以下であり、
上記シリカ粒子(B)の最大凝集粒径が20μm以下であり、
上記シリカ粒子(B)の含有量が、組成物の固形分全量を基準として15質量%以下である、ビスマレイミド系組成物。
[2]上記芳香族テトラカルボン酸類(a1)が、無水ピロメリット酸である、上記[1]に記載のビスマレイミド系組成物。
[3]上記ダイマージアミン(a2)が、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物である、上記[1]又は[2]に記載のビスマレイミド系組成物。
【化1】

【化2】

[式(1)及び(2)中、m、n、p及びqはそれぞれ、m+n=6~17、p+q=8~19となるように選ばれる1以上の整数を表し、破線で示した結合は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する。但し、破線で示した結合が炭素-炭素二重結合である場合、式(1)及び(2)は、炭素-炭素二重結合を構成する各炭素原子に結合する水素原子の数を、式(1)及び(2)に示した数から1つ減じた構造となる。]
[4]上記ビスマレイミド樹脂(A)の重量平均分子量が3000~25000である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のビスマレイミド系組成物。
[5]更に重合開始剤(D)を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載のビスマレイミド系組成物。
[6]上記重合開始剤(D)が、有機過酸化物である、上記[5]に記載のビスマレイミド系組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のビスマレイミド系組成物の硬化物。
[8]上記[1]~[6]のいずれかに記載のビスマレイミド系組成物及び基材を備えるシート。
[9]上記[8]に記載のシートに更に金属箔を熱圧着させることにより得られる積層体。
[10]上記[8]に記載のシートを用いてなるフレキシブルプリント配線板。
[11]上記[9]に記載の積層体を用いてなるフレキシブルプリント配線板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低誘電特性及び低線膨張係数を有するビスマレイミド系組成物、並びに、それを用いた硬化物、シート、積層体及びフレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<ビスマレイミド系組成物>
本実施形態のビスマレイミド系組成物は、芳香族テトラカルボン酸類(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう。)、ダイマージアミン(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう。)、及び無水マレイン酸(a3)(以下、「(a3)成分」ともいう。)由来の構造を有するビスマレイミド樹脂(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)と、フェニルアミノシランにより表面処理されたシリカ粒子(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)とを含む。本実施形態のビスマレイミド系組成物は、更に有機溶剤(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)を含んでもよい。また、本実施形態のビスマレイミド系組成物は、更に重合開始剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0017】
((A)成分:ビスマレイミド樹脂)
(A)成分は、(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分を反応させて得ることができる。
【0018】
(a1)成分としては、ポリイミドの原料として公知のものを使用できる。具体的には、無水ピロメリット酸及び下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化3】

[式(1)中、Xは単結合又は下記群より選ばれる少なくとも一種の基を表す。]
【化4】
【0019】
式(1)で表される化合物としては、例えば、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
(a2)成分は、例えば、特開平9-12712号公報に記載されているように、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導される化合物である。本実施形態では、公知のダイマージアミンを特に制限なく使用できるが、例えば下記一般式(2)及び/又は一般式(2’)で表されるものが好ましい。
【0021】
【化5】

【化6】

[式(2)及び(2’)中、m、n、p及びqはそれぞれ、m+n=6~17、p+q=8~19となるように選ばれる1以上の整数を表し、破線で示した結合は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する。但し、破線で示した結合が炭素-炭素二重結合である場合、式(2)及び(2’)は、炭素-炭素二重結合を構成する各炭素原子に結合する水素原子の数を、式(2)及び(2’)に示した数から1つ減じた構造となる。]
【0022】
ダイマージアミンとしては、有機溶剤への溶解性、耐熱性、接着性、低粘度等の観点より、上記一般式(2’)で表されるものが好ましく、特に下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【化7】
【0023】
ダイマージアミンの市販品としては、例えば、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(いずれもクローダジャパン(株)製)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(A)成分は、各種公知の方法により製造できる。例えば、先ず、(a1)成分と(a2)成分とを60~120℃程度、好ましくは70~90℃の温度において、通常0.1~2時間程度、好ましくは0.1~1.0時間重付加反応させる。次いで、得られた重付加物を更に80~250℃程度、好ましくは100~200℃の温度において、0.5~30時間程度、好ましくは0.5~10時間イミド化反応、即ち脱水閉環反応させる。続いて、脱水閉環反応させた物と(a3)成分とを60~250℃程度、好ましくは80~200℃の温度において、0.5~30時間程度、好ましくは0.5~10時間マレイミド化反応、即ち脱水閉環反応させることにより、目的とする(A)成分が得られる。
【0025】
なお、イミド化反応又はマレイミド化反応において、各種公知の反応触媒、脱水剤、及び後述する有機溶剤を使用できる。反応触媒としては、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類、又はメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸一水和物等の有機酸などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、及び、無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
また、(A)成分は各種公知の方法により精製でき、純度を上げることができる。例えば、先ず、有機溶剤に溶かした(A)成分と純水とを分液ロートに入れる。次いで、分液ロートを振り、静置させる。続いて、水層と有機層とが分離した後、有機層のみを回収することで、(A)成分を精製できる。
【0027】
(A)成分の分子量は、(a1)成分と(a2)成分のモル数で制御することができ、(a1)成分のモル数が(a2)成分のモル数より小さいほど、分子量を小さくすることができる。本発明の効果を達成し易くする目的において、通常、〔(a1)成分のモル数〕/〔(a2)成分のモル数〕が0.30~0.85程度、好ましくは0.50~0.80の範囲が良い。
【0028】
(A)成分の分子量としては、溶剤への溶解性及び耐熱性の観点から、重量平均分子量で3000~25000が好ましく、7000~20000がより好ましい。重量平均分子量が25000以下であると有機溶剤への溶解性が良好となり、3000以上であると、耐熱性を向上させる効果が十分に得られる傾向がある。
【0029】
本実施形態の(A)成分は、市販の化合物を用いることもでき、具体的には例えば、DESIGNER MOLECULES Inc.製のBMI-3000Commercial Grade(ダイマージアミン、ピロメリット酸二無水物及びマレイン酸無水物より合成)、BMI-1500、BMI-1700、BMI-5000等を好適に用いることができる。(A)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
((B)成分:フェニルアミノシランにより表面処理されたシリカ粒子)
(B)成分は、後述する平均粒径及び最大凝集粒径の条件を満たす、フェニルアミノシランにより表面処理されたシリカ粒子であれば特に限定なく使用できる。上記特定のシリカ粒子を用いることで、優れた低誘電特性を維持したまま、優れた低線膨張係数を得ることができる。優れた低線膨張係数が得られるのは、マレイミド基と相溶性の良いフェニルアミノシランで表面処理をしたシリカ粒子を使用することで、(A)成分との密着性が向上し、更に後述する平均粒径及び最大凝集粒径の条件を満たすシリカ粒子を使用することで、配合量が少なくても表面積を増やすことができたためであると考えられる。
【0031】
(B)成分の平均粒径は、100nm以下である。これにより、優れた低線膨張係数が得られやすい。
【0032】
上記(B)成分の平均粒径として、体積積算粒度分布における積算粒度で50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0033】
(B)成分の最大凝集粒径は、20μm以下である。これにより、優れた低線膨張係数が得られやすい。線膨張係数をより低減する観点から、(B)成分の最大凝集粒径は、18μm以下であってもよく、16μm以下であってもよい。
【0034】
(B)成分の最大凝集粒径は、以下の方法により測定された値が採用される。
(i)ビスマレイミド系組成物を、離型材付きAl箔上に塗布する。得られた塗膜を乾燥及び硬化させた後、室温まで冷却する。硬化後の塗膜を離型材付きAl箔から剥離して、シート状の測定サンプルを得る。
(ii)得られた測定サンプルを、顕微鏡を用いて観察する。測定サンプルの100mm×100mmの領域内を観察し、領域内の四隅付近及び中央部付近の計5箇所で観察される最も大きいシリカ凝集体の最大凝集粒径を測定し、それらの平均値を算出する。ここで、シリカ凝集体は、シリカ粒子同士が接触して凝集したものを意味し、最大凝集粒径は、シリカ凝集体を構成するシリカ粒子を全て含む最小の円を描いた際の直径を意味する。
【0035】
上記(i)において、使用する離型材付きAl箔の種類及び厚さ等は特に限定されないが、例えば、セパニウム(東洋アルミニウム(株)製、商品名「50B2-EA(A)4G/M2」、膜厚50μm)を用いてもよい。また、離型材付きAl箔上へのビスマレイミド系組成物の塗布方法は特に限定されないが、例えば、アプリケータを用いて行ってもよい。また、塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、乾燥後の厚さが50~300μmとなるように塗布してもよい。また、塗膜の乾燥及び硬化の条件は特に限定されないが、例えば、オーブンを用いて130℃、20分間の乾燥処理を行った後、オーブンを用いて200℃、1時間の加熱処理を行うことで硬化させてもよい。
【0036】
上記(ii)において、使用する測長顕微鏡としては特に限定されないが、例えば、測長顕微鏡(ミツトヨ社製、商品名:MF-Useries)を用いて、裏面より光照射しながら測定してもよい。測定時の倍率は特に限定されないが、例えば200倍~400倍で測定してもよい。
【0037】
(B)成分の含有量は、組成物の固形分(不揮発分)全量を基準(100質量%)として、15質量%以下である。これにより、優れた低線膨張係数が得られやすい。誘電特性及び線膨張係数の両方をバランスよく低減する観点から、(B)成分の含有量は、5~15質量%であってもよい。
【0038】
(B)成分は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
((C)成分:有機溶剤)
(C)成分としては、(A)成分を溶解させるものであれば、特に限定されない。(C)成分としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテ等のグリコールエーテル系溶剤などを使用することができる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。好ましい態様としては、(A)成分の溶解性が高いトルエン又はメシチレン等の芳香族炭化水素と、(B)成分の分散性が高いメチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0040】
(C)成分の使用量は特に限定されないが、通常、本実施形態の組成物の不揮発分が20~65質量%程度となる範囲で用いればよい。
【0041】
((D)成分:重合開始剤)
(D)成分として具体的には、例えば、有機過酸化物、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも特に有機過酸化物が重合開始剤として優れた機能を有し、また低誘電特性の点でも優れるため好ましい。
【0042】
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機過酸化物のなかでも、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が好ましい。
【0043】
イミダゾール化合物としては、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール、1-プロピル-2-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-シアノメチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。なかでも、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールが本実施形態の組成物との溶解性が高く好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ホスフィン化合物としては、例えば、1級ホスフィン、2級ホスフィン、3級ホスフィンなどが挙げられる。上記1級ホスフィンとしては、具体的には、エチルホスフィン、プロピルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィンなどが挙げられる。上記2級ホスフィンとしては、具体的には、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン等のジアルキルホスフィン、ジフェニルホスフィン、メチルフェニルホスフィン、エチルフェニルホスフィン等の2級ホスフィンなどが挙げられる。上記3級ホスフィンとしては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、アルキルジフェニルホスフィン、ジアルキルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリ-p-スチリルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリ-4-メチルフェニルホスフィン、トリ-4-メトキシフェニルホスフィン、トリ-2-シアノエチルホスフィンなどが挙げられる。なかでも、3級ホスフィンが好ましく使用される。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
ホスホニウム塩化合物としては、テトラフェニルホスホニウム塩、アルキルトリフェニルホスホニウム塩、テトラアルキルホスホニウム等を有する化合物が挙げられ、具体的には、テトラフェニルホスホニウム-チオシアネート、テトラフェニルホスホニウム-テトラ-p-メチルフェニルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウム-チオシアネート、テトラフェニルホスホニウム-フタル酸、テトラブチルホスホニウム-1,2-シクロへキシルジカルボン酸、テトラブチルホスホニウム-1,2-シクロへキシルジカルボン酸、テトラブチルホスホニウム-ラウリン酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.1~10.0質量部が好ましく、1.0~5.0質量部がより好ましい。
【0047】
本実施形態の組成物の調製は、一般的に採用されている方法に準じて実施される。調製方法としては、例えば、溶融混合、粉体混合、溶液混合等の方法が挙げられる。また、この際には、本実施形態の必須成分以外の、例えば、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着付与剤、低応力剤、着色剤、カップリング剤等を、本発明の効果を損なわない範囲において配合してもよい。また、本実施形態の組成物は、エポキシ樹脂、アクリレート化合物、ビニル化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビスマレイミド化合物等の上記(A)成分以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0048】
(難燃剤)
難燃剤は、難燃性を付与するために添加され、公知のものを全て使用することができ、特に制限されない。難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、シリコン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
(イオントラップ剤)
イオントラップ剤は、液状の樹脂組成物中に含まれるイオン不純物を捕捉し、熱劣化及び吸湿劣化を防ぐために添加される。イオントラップ剤は公知のものを全て使用することができ、特に制限されない。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
<硬化物>
本実施形態の硬化物は、本実施形態の組成物を硬化させたものである。具体的には、当該組成物を150~250℃程度で5分~5時間程度加熱処理することで得ることができる。
【0051】
本実施形態の硬化物の形状は特に限定されないが、基材シートの接着用途に供する場合には、膜厚が通常1~100μm程度、好ましくは3~50μm程度のシート状とすることができ、膜厚は用途に応じて適宜調整できる。
【0052】
<シート>
本実施形態のシートは、本実施形態の組成物を基材に塗布し、乾燥させることによって得られる。当該基材としては、例えば、ポリイミド、ポリイミド-シリカハイブリッド、ポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリスチレン樹脂(PSt)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、エチレンテレフタレート、フェノール、フタル酸、ヒドロキシナフトエ酸等とパラヒドロキシ安息香酸とから得られる芳香族系ポリエステル樹脂(所謂液晶ポリマー;(株)クラレ製、「ベクスター」等)などの有機基材が挙げられ、これらの中でも耐熱性及び寸法安定性等の点より、ポリイミドフィルム、特にポリイミド-シリカハイブリッドフィルムが好ましい。また、当該基材の厚みは用途に応じて適宜設定できる。
【0053】
<積層体>
本実施形態の積層体は、上記シートに更に金属箔を熱圧着させることにより得られる。当該金属箔としては、アルミ、42アロイ、銅等の金属からなる金属箔が好適であり、その厚みは用途に応じて適宜設定できる。また、当該積層体は、更に加熱処理したものであってよい。
【0054】
<フレキシブルプリント基板及びフレキシブルプリント配線板>
本実施形態のフレキシブルプリント基板は、上記シート基材又は上記積層体を用いたものであり、上記積層体の金属箔面に更に上記シートを貼りあわせたものでもよい。当該フレキシブルプリント基板としては、有機基材としてポリイミドフィルムを、無機基材として金属箔(特に銅箔)を用いたものが好ましい。そして、かかるフレキシブルプリント基板の金属表面をソフトエッチング処理して回路を形成し、そのうえに更に上記シートを貼りあわせて熱プレスすることにより、フレキシブルプリント配線板が得られる。
【実施例
【0055】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
<ビスマレイミド樹脂(A)の準備>
ビスマレイミド樹脂(A)として、DESIGNER MOLECULES Inc.製のBMI-3000Commercial Grade(ダイマージアミン、ピロメリット酸二無水物及びマレイン酸無水物より合成、Mw:約8000)をトルエンに溶解させ、60質量%トルエン溶液を用意した。
【0057】
[実施例1]
225mlの円筒形状の容器に、ビスマレイミド樹脂(A)の溶液100質量部、(B)成分としてシリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、商品名:YA050C-KJK、フェニルアミノシランで表面処理されたシリカ粒子、平均粒径:50nm、不揮発分:50質量%)6.32質量部、(C)成分としてメチルイソブチルケトン(MIBK、和光純薬(株)製)28.34質量部、(D)成分としてジクミルパーオキサイド(DCP、日油(株)製)0.6質量部を仕込んだ。続いて、容器に蓋をし、容器内の混合物を、ホモミキサー(プライミクス社製、商品名:T.K.ホモミクサーMARK II)を用いて、9000rpmで20分間撹拌することによって、不揮発分47.1質量%の組成物を得た。
【0058】
[実施例2~5]
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分として、表1で示す種類のものをそれぞれ同表に示す使用量で使用した他は実施例1と同様にして、各組成物を得た。
【0059】
表1中の(B)成分の詳細は以下の通りである。
YA050C-KJK:シリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、フェニルアミノシランで表面処理されたシリカ粒子、平均粒径:50nm、不揮発分:50質量%)
Y100SZ-CK1:シリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、フェニルアミノシランで表面処理されたシリカ粒子、平均粒径:100nm、不揮発分:50質量%)
【0060】
<硬化シート(1)の作製>
各実施例の組成物を、アプリケータを用いてセパニウム(東洋アルミニウム(株)製、商品名「50B2-EA(A)4G/M2」、膜厚50μm)の上に、乾燥後の厚さが表2に示す値となるように塗布し、オーブンを用いて130℃、20分間の乾燥処理を行った。その後、オーブンを用いて200℃、1時間の加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、セパニウムから剥離して硬化シート(1)を得た。
【0061】
<最大凝集粒径の測定>
(B)成分の最大凝集粒径を、以下の方法により測定した。結果を表2に示す。
(i)実施例で得られた組成物を、アプリケータを用いてセパニウム(東洋アルミニウム(株)製、商品名「50B2-EA(A)4G/M2」、膜厚50μm)の上に、乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布し、オーブンを用いて130℃、20分間の乾燥処理を行った。その後、オーブンを用いて200℃、1時間の加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、セパニウムから剥離してシート状の測定サンプルを得た。
(ii)得られた測定サンプルについて、測長顕微鏡(ミツトヨ社製、商品名:MF-Useries)を用いて、裏面より光照射しながら、倍率200倍にて観察した。測定サンプルの100mm×100mmの領域内を観察し、領域内の四隅付近及び中央部付近の計5箇所で観察される最も大きいシリカ凝集体の最大凝集粒径を測定し、それらの平均値を算出した。ここで、シリカ凝集体は、シリカ粒子同士が接触して凝集したものを意味し、最大凝集粒径は、シリカ凝集体を構成するシリカ粒子を全て含む最小の円を描いた際の直径を意味する。
【0062】
<誘電率及び誘電正接>
各実施例の組成物を、アプリケータを用いてフィルムバイナ(登録商標)(PETフィルム、藤森工業(株)製、商品名「NS14」、膜厚75μm)の上に、乾燥後に100μmの厚みになるように塗布し、オーブンを用いて130℃、20分間の乾燥処理を行った。乾燥後にPETフィルムから剥離したサンプルの両面に、メタルハライドランプ(GSユアサ社製、商品名「MAL500NAL」)で500mJ/cm、150mW/cmの光照射を行った。その後、オーブンを用いて200℃、1時間の加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、10cm×5cmの試験片を作製し、SPDR誘電体共振器(Agilent Technologies社製)にて10GHzの比誘電率及び誘電正接を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
<線膨張係数(CTE)α、α
硬化シート(1)から長さ10mm×幅4mmのサイズを有する試験片を作製した。この試験片を用いて、熱機械分析装置(商品名「TMA/SS7100」、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて線膨張係数(CTE)を測定した。測定モードは引張りモード、測定荷重は20mN、25mN、又は29.4mN、測定雰囲気は大気雰囲気、1stラン及び2ndランの昇温及び冷却条件は下記条件とし、2ndランの40~55℃における測定結果をα、110~160℃における測定結果をαとした。結果を表2に示す。
1stラン:30℃から250℃まで5℃/minで昇温し、昇温後30℃まで冷却した。
2ndラン:30℃から250℃まで5℃/minで昇温し、250℃で1分間保持した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の組成物は、高周波帯の誘電特性を低減できるだけなく、線膨張係数(CTE)も低減できる。そのため、プリント回路基板(ビルドアップ基板、フレキシブルプリント配線板等)及びフレキシブルプリント配線板用銅張り板の製造に用いる接着剤としてのみならず、半導体層間材料、コーティング剤、レジストインキ、導電ペースト等の電気絶縁材料等としても有用である。
【国際調査報告】