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特表2024-528261核酸精製におけるエンドトキシンレベルを低減するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】核酸精製におけるエンドトキシンレベルを低減するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240719BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240719BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
C12N15/11 Z
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506936
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2022071786
(87)【国際公開番号】W WO2023012206
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/229,666
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイネン-クロイツィヒ,アンジャ
(72)【発明者】
【氏名】キーゼヴェッター,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】シュテイン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,アクシャット
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QR33
(57)【要約】
本発明は、エンドトキシンレベルを低減する、または核酸からエンドトキシンを除去するための方法に関する。これについて、メンブレンまたはモノリスベースの吸着剤を使用した陰イオン交換クロマトグラフの核酸の精製の前に、またはその間に、アルキルグリコシドおよび二級アルコールアルコキシレートまたはそれらの混合物の群から選択される非イオン性界面活性剤が添加される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸からのエンドトキシンの枯渇または除去のための方法であって、
a)該核酸およびエンドトキシンを含む試料を提供すること、
b)陰イオン交換基を含むメンブレンまたはモノリス上のクロマトグラフの分離にステップa)の試料を供すること、
これにより試料は、クロマトグラフの分離の前に、またはその間にアルキルグリコシドおよび二級アルコールアルコキシレートの群から選択される非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物と接触させられる、
を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップb)が、
i)該核酸およびエンドトキシンを含む試料を、陰イオン交換基を含むメンブレンまたはモノリス上にローディングすること、
ii)メンブレンまたはモノリスを、洗浄バッファーを用いて洗浄すること
iii)溶離バッファーを用いて、メンブレンまたはモノリスに結合した核酸を溶離すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料が、ステップb)の前に非イオン性界面活性剤と接触させられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
クロマトグラフの分離に供される試料が、0.01%と10%(w/v)の間の非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤を含む洗浄バッファーを用いてメンブレンまたはモノリスを洗浄することにより、核酸が、非イオン性界面活性剤と接触させられることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤を含む洗浄バッファーが、0.01%と10%(w/v)との間の非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤が、アルキルグリコシドであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
核酸が、プラスミドDNAを含むかまたはそれからなることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
核酸が、0.01~10%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む溶液と接触させられることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)においてメンブレンが使用される、好ましくは、ヒドロゲルメンブレンが使用されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップii)が、2以上の洗浄ステップを含み、1つの洗浄ステップが、エタノールを含む洗浄緩衝液を用いて行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
本発明の方法が、Triton(登録商標)X100を唯一の洗浄剤として使用するが、それ以外は同じプロセスを用いたものより有効にエンドトキシンを枯渇させた核酸を提供することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
方法が、ステップb)から結果としてもたらされる核酸中の残留エンドトキシンを検出するステップc)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)における検出が、LALアッセイによって行われることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップc)における検出が、ステップb)に従ったクロマトグラフの分離の溶出液において、溶出液のいずれのさらなる処理もなしに、直接的に行われることを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドトキシンレベルを低減するためまたは核酸からのエンドトキシンを取り除くための方法に関する。このために、非イオン性の洗浄剤が、メンブレンまたはモノリスベースの吸着剤を使用した核酸のイオン交換クロマトグラフィーの精製の間に添加される。
【0002】
生物学的供給源からプラスミドDNAのような高純度核酸を得るための迅速かつ効率的な方法についての需要は、外来性の発現または治療への応用のための組換えDNAの重要性の増大のせいで絶えず増大している。とりわけ、大規模での実行をも可能にする製造方法についての需要もまた増大している。高純度のプラスミドDNAの使用は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、DNA配列決定、in vitroでのmRNA合成、および導入遺伝子のサブクローニングのような様々な用途においてきわめて重要である。したがって、プラスミドDNAを高収率かつ高品質で生成するためのプロトコルは、真剣な注意を集めている。
【0003】
プラスミドDNAのような核酸の精製のため、とりわけ相対的に大量の精製のための多くの既知の方法は、クロマトグラフィーによる精製ステップを包含する。このステップの効率はまた、一般に製造プロセスの効率および有効性を決定する。
【0004】
とくにプラスミドDNAの精製におけるさらなる問題は、そこからプラスミドDNAが分離される不純物によって引き起こされる。これらは、まず第一にゲノムDNAおよびRNAである。核酸を精製するときの別の不純物は、エンドトキシンである。エンドトキシンは、例えば、Escherichia coliなどのグラム陰性宿主細胞の外膜に位置付けられるリポ多糖(LPS)である。細胞の溶解の間、LPSおよび他の膜構成物質は、プラスミドDNAに加えて放出される。エンドトキシンは、細胞あたりおよそ3.5x106コピーの数で細胞内に存在し得る(Escherichia coliおよびSalmonella Typhimurium細胞およびMol. Biology, J. L. Ingraham et al. Eds., 1987, ASM)およびよって104倍よりも多くプラスミドDNA分子の数を上回っている。この理由のために、グラム陰性宿主細胞から得られるプラスミドDNAは、しばしば大量のエンドトキシンを含有する。しかしながら、これらの物質は、数多の望ましくない副反応をもたらす(Morrison and Ryan, 1987, Ann. Rev. Med. 38, 417-432;Boyle et al. 1998, DNA and Cell Biology, 17, 343-348)。プラスミドDNAを、例として、遺伝子治療のために採用することが意図される場合、例えば、不純物に起因した炎症性または壊死性の副反応が生じないことが非常に重要である。したがって、エンドトキシンの濃度を可能な限り低いレベルにまで低減するための有効な方法についての大きな需要がある。
【0005】
エンドトキシンレベルを低減するための既知の方法は、しばしば陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する、複数の精製ステップに基づく。
まず第一に、宿主細胞は、例えば、アルカリ溶解などの既知の方法によって消化される。例えば、高圧の使用、煮沸溶解、洗浄剤の使用またはリゾチームによる消化などの他の溶解方法もまた好適である。
【0006】
このように得られた培地中のプラスミドDNAである、「清澄化ライセート(clarified lysate)」は、主に相対的に小さい細胞構成物質、先行する処理ステップからの化学物質、RNA、タンパク質およびエンドトキシンによって汚染される。これらの不純物の除去は、大抵、複数のこれに続く精製ステップを必要とし、陰イオン交換クロマトグラフィーはその一つの可能性である。
【0007】
陰イオン交換クロマトグラフィーの不利な点は、相当量のエンドトキシンが、プラスミドDNAと共に結合し、およびこの方法では充分に分離することができないことである。したがって、エンドトキシンレベルを低減するために、例えば、クロマトグラフィーのステップ(ゲル濾過)またはイソプロパノール、酢酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈殿などの、さらなる精製ステップが、必要となる。例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーの方法と、追加のエンドトキシン除去ステップとを組み合わせた精製方法は、プラスミドDNAのエンドトキシン含量が50EU/mg未満であるプラスミドDNAを得ることを可能にする。しかしながら、このタイプの方法は、大抵、複雑で、時間がかかり、および相対的に大量のDNAの精製について限られた適正しかない。
【0008】
WO95/21179は、エンドトキシンレベルの低減のための方法を記載しており、そこでは清澄化ライセートが、まず第一に塩水溶液および洗浄剤を用いてプレインキュベートされる。これは、イオン交換クロマトグラフィーによる精製がこれに続き、そこでイオン交換材料は、さらなる塩溶液を用いて洗浄され、およびプラスミドDNAが溶離され、例えば、イソプロパノール沈殿によって続けてさらに精製される。この方法は、同様に上述の不利な点を有する。
【0009】
US6617443は、塩を含まない洗浄溶液および官能基が触手(tentacles)に結合している吸着剤を使用した核酸調整からエンドトキシンを除去するための方法を記載している。
WO2009/129524は、プラスミドDNAと両性イオン界面活性剤とを接触させることを含むプラスミドDNAを精製するための方法を開示している。
US6428703は、生物学的巨大分子と非イオン性界面活性剤とを接触させること、およびクロマトグラフィーの精製を実施することにより、それらを精製するための方法を記載している。
【0010】
これらの文献のすべてが、プラスミドDNAをエンドトキシンから精製する方法を示す。しかし、それにもかかわらず、増強された性能と高い有効性とを組み合わせたプロセスについて必要性がある。
【0011】
バイオ医薬品およびバイオテクノロジー産業における下流のプロセスは、大抵は固定相として充填層カラム中のビーズベースの樹脂を用いたクロマトグラフィーのステップに依拠する。樹脂は、典型的には、30と500μmとの間の直径を有し、および一般に高い結合能力を伴う効率的なクロマトグラフィーの技法を提供する。しかしながら、方法は、樹脂孔内部の結合部位への溶質分子の輸送が、粒子内拡散により制限されることから、むしろゆっくりとしたものであり、かつ生体分子の産生における多大なコストを意味する。カラムにわたる圧力損失は、低流速でも高く、および層の圧密およびカラムの目詰まりに起因してプロセシングの間に増大する。その結果として、モノリスおよびメンブレンを包含するいくつかの他の革新的な固定相が、古典的なクロマトグラフィーの担体の実行可能な代替手段として、ここ数十年の間に開発されている。メンブレンまたはモノリスを使用する主な利点は、分子とメンブレンまたはモノリス中の活性部位との間の相互作用が、樹脂孔の内部の滞留した流体においてよりむしろ対流する貫通孔において生ずることから、拡散時間が短いことに起因する。したがって、メンブレンおよびモノリスクロマトグラフィーは、高流速かつ低圧力損失で作動する可能性を有する。
しかし、上に記載のとおり、メンブレンまたはモノリスベースのクロマトグラフィーは、数ある中でも細孔拡散がないこと、および流速がより高いことに起因して、異なるクロマトグラフィーの挙動を示し、およびよって異なる分離特性を示すかもしれない。
【0012】
陰イオン交換メンブレンまたはモノリスとあるタイプの非イオン性界面活性剤とを組み合わせて使用してプラスミドDNAの精製を実施することによって、メンブレンまたはモノリスをクロマトグラフィーのマトリックスとして使用するときの高性能は、高効率と組み合わせられ得ることが見出された。本発明のプロセスを使用することで、これに続く残留エンドトキシンの決定が洗浄剤の干渉なしに実行され得ることがさらに見出された。
【0013】
したがって、本発明は、
a)該核酸およびエンドトキシンを含む試料を提供すること、
b)陰イオン交換基を含むメンブレンまたはモノリス上のクロマトグラフィーの分離にステップa)の試料を供すること、
これにより試料は、アルキルグリコシドおよび二級アルコールアルコキシレートまたはそれらの混合物の群から選択される非イオン性界面活性剤と接触させられる、
を含む、核酸からのエンドトキシンの枯渇または除去のための方法に指向する。
【0014】
好ましい態様において、ステップb)は、
i)該核酸およびエンドトキシンを含む試料を、陰イオン交換基を含むメンブレンまたはモノリス上にローディングすること、
ii)メンブレンまたはモノリスを、洗浄バッファーを用いて洗浄すること、
iii)溶離バッファーを用いて、メンブレンまたはモノリスに結合した核酸を溶離すること、
を含む。
【0015】
一態様において、試料は、ステップb)の前に非イオン性界面活性剤と接触させられる。
別の態様において、非イオン性界面活性剤を含む洗浄バッファーを用いてステップii)においてメンブレンまたはモノリスを洗浄することにより、核酸は、非イオン性界面活性剤と接触させられる。
【0016】
好ましくは、洗浄剤は、0.01%から10%(w/v)までの範囲をとる濃度でその中にあるように、試料および/または洗浄バッファーに添加される。
好ましい態様において、非イオン性界面活性剤は、アルキルグリコシドである。極めて好ましい態様において、それは、C8-16アルキルグリコシドである。
好ましい態様において、核酸は、プラスミドDNAを含むか、またはそれからなる。
【0017】
好ましい態様において、核酸は、0.01~10%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む溶液と接触させられる。
好ましい態様において、メンブレンは、ヒドロゲルメンブレンである。
好ましい態様において、ステップii)は、2以上の洗浄ステップを含み、1つの洗浄ステップが、エタノールを含む洗浄バッファーを用いて行われる。
【0018】
一態様において、本発明のプロセスは、Triton(登録商標)X100を唯一の洗浄剤として使用した以外は同じプロセスを用いたものより有効にエンドトキシンを枯渇させた核酸を提供する。
【0019】
一態様において、プロセスは、ステップb)から結果としてもたらされた核酸中の残留エンドトキシンを検出するステップc)をさらに含む。
好ましい態様において、ステップc)における検出は、LALアッセイまたは組換え因子ベースのアッセイによって、とくにLALアッセイによって行われる。
好ましい態様において、ステップc)における検出は、クロマトグラフィーの分離の溶出液に、溶出液のさらなる処理なしに、直接的に行われる。
【0020】
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明が、このように変化してもよく、特定の組成物またはプロセスステップに限定されないことを理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとおり、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が他を明確に指示しない限り、複数形の指示対象を包含することに留意されなければならない。よって、例えば、「リガンド(a ligand)」への言及は、複数のリガンドを包含し、および「抗体(an antibody)」への言及は、複数の抗体等を包含する。
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関連する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。以下の用語は、本発明の目的上本明細書に記載のとおりに定義される。
【0021】
エンドトキシンの枯渇または除去によって、標的核酸とも呼ばれる本発明の方法に従って精製されるだろう核酸は、DNA、RNAおよびキメラDNA/RNA分子を包含し、および真核生物および原核細胞を包含するいずれかの生物学的供給源からのものであっても、または合成されてもよい。精製されるだろう核酸は、染色体のDNAフラグメント、リボソームRNA、mRNA、snRNAs、tRNA、プラスミドDNA、ウイルスのRNAまたはDNA、合成オリゴヌクレオチド、リボザイム等を包含する。特に興味深いものは、治療遺伝子をコードするプラスミドDNAである。「治療遺伝子」によって、好適な宿主細胞において発現され得、宿主細胞において欠陥があるかまたは低発現の遺伝子を補完し得る、機能的遺伝子または遺伝子フラグメント、ならびに発現されたときに、宿主細胞中の遺伝子の機能を阻害または抑制する、例として、アンチセンス配列、リボザイム、トランスドミナントインヒビター等を包含する遺伝子または遺伝子フラグメントを包含することが意図される。
よって、例として、ウイルスのDNAまたはRNAは、原核生物または真核生物のウイルスから精製されてもよく、ここでウイルス粒子は、最初に、従来の技法に従って、ウイルス感染に寛容な培養物または細胞、例として、細菌、昆虫、酵母、植物または哺乳動物の細胞培養物から精製される。
【0022】
用語「プラスミドDNA」は、宿主細胞の一次ゲノムの一部でもフラグメントでもない、任意の別個の細胞由来の核酸実体を指す。本明細書に使用されるとき、用語「プラスミド」は、DNAまたはDNA誘導体から構成される環状または線状のいずれかの分子を指してもよい。用語「プラスミドDNA」は、一本鎖または二本鎖のいずれかの分子を指してもよい。プラスミドDNAは、天然に存在するプラスミドならびに、例として、マーカー遺伝子または治療遺伝子を包含する興味のある遺伝子をコードする組換えプラスミドを包含する。
プラスミドは、典型的には、4kBと20kBとの間の長さを有するエピゲノム環状DNA分子であり、これは、しばしば産生細胞において自律複製を可能とする2.6x10 6と13.2x10 6ダルトンとの間の分子量に対応する。それらのコンパクトな形態(スーパーコイル)においてでさえ、プラスミドDNA分子は通常数百nmのサイズを有する。
【0023】
本明細書に使用されるとき、および別様に述べられない限り、用語「試料」は、核酸を含有するいずれかの組成物または混合物を指す。試料は、生物学的供給源に由来しても、他の供給源に由来してもよい。生物学的供給源は、植物および動物細胞、組織および器官などの真核生物および原核生物の供給源を包含する。試料はまた、希釈剤、バッファー、洗浄剤、および標的分子と混合していることが見出されているコンタミネーション種、デブリ等を包含していてもよい。試料は、「部分的に精製」されていてもよく(すなわち、濾過ステップなどの1以上の精製ステップに供されているもの)、または核酸を産生する宿主細胞または生物から直接的に得られてもよい(例として、試料は、採取された細胞培養液を含んでいてもよい)。
【0024】
本明細書に使用されるとき、用語「不純物」または「夾雑物」は、外来のまたは好ましくない分子のうちの1以上から本発明のプロセスを使用して分離される核酸を含有する試料中に存在するであろう1以上の宿主細胞タンパク質、エンドトキシン、脂質および1以上の添加剤を包含するいずれかの外来のまたは好ましくない分子を指す。本発明のプロセスを用いて枯渇されるか除去される夾雑物の1つは、エンドトキシンである。
【0025】
本明細書において互換的に使用されるとおり、用語「精製すること」、「分離すこと」または「単離すること」は、標的核酸および1以上の不純物を含む組成物または試料からの標的核酸の純度を増大させることを指す。典型的には、標的核酸の純度は、組成物から少なくともエンドトキシンを(完全にまたは部分的に)除去することにより増大する。
【0026】
用語「クロマトグラフィー」は、試料中に存在する他の分子から興味のあるアナライト(例として、標的核酸)を分離するあらゆる種類の技法を指す。大抵、標的核酸は、混合物の個々の分子が、移動相の影響を受けて、クロマトグラフィーマトリックへ結合する、および/またはそれを通して移動する、速度の差の結果として他の分子から分離される。
【0027】
用語「マトリックス」または「クロマトグラフィーマトリックス」は、本明細書において互換的に使用され、試料がクロマトグラフィーの分離の過程で通過する固相を指す。マトリックスは、典型的には、基材および基材に共有結合的に結合したリガンドを含む。本発明のマトリックスは、メンブレンまたはモノリスを含むかまたそれからなり、好ましくは、基材は、メンブレンまたはモノリスであり、最も好ましくはメンブレンである。
【0028】
「リガンド」は、典型的には、マトリックスの基材に付着しているクロマトグラフィーマトリックスの一部であり、およびマトリックスの結合特性および相互作用特性を決定する、官能基である。「リガンド」の例は、これらに限定されないが、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオフィリック(thiophilic)相互作用基、金属親和性基、親和性基、生体親和性(bioaffinity)基、および混合様式基(先述の組み合わせ)を包含する。リガンドが、1より多くの結合特性/相互作用特性を有することもまた可能とする。本発明のマトリックスは、少なくとも陰イオン交換基を含む。これらは、例えば、トリメチルアンモニウム塩化物などの強い陰イオン交換基、またはN,NジエチルアミノまたはDEAEなどの弱い陰イオン交換基であってもよい。加えて、マトリックスは、マトリックスが混合様式マトリックスとなるように、さらに他のタイプのリガンドを含んでもよい。かかるリガンドは、例として、フェニル、ブチル、プロピル、ヘキシルなどの疎水性相互作用基を有していてもよい。
【0029】
リガンドは、いずれかのタイプの共有結合の付着によってマトリックスの基材に付着し得る。共有結合の付着は、例えば、OH、NH、カルボキシル、フェノール、無水物、アルデヒド、エポキシドまたはチオール等のような基材上の好適な残基に官能基を直接的に結合させることによって実施され得る。好適なリンカーを介してリガンドを付着させることもまた可能である。リガンドおよび重合性部分を含むモノマーを重合させることにより、マトリックスを生成することもまた可能である。好適なモノマーの重合によって生成されるマトリックスの例は、好適なスチロールまたはアクリロイルモノマーを重合させることによって生成されたポリスチレン、ポリメタクリルアミドまたはポリアクリルアミドベースのマトリックスである。
【0030】
別の態様において、固定相は、リガンドを基材上に、または基材から移植することによって生成され得る。制御されたフリーラジカル重合用いたプロセスから移植することについて、例えば、原子移動フリーラジカル重合(ATRP)という方法などが、好適である。例として、イオン性、親水性または疎水性基を用いて官能化されたアクリルアミド、メタクリラート、アクリラート、メタクリラート等の重合反応からの極めて好ましい一段階移植が、ヒドロキシルを含有する担体上のセリウム(IV)によって開始され得、担体を活性化させることはない。
【0031】
クロマトグラフィーマトリックスが、クロマトグラフィーの分離に使用されるとき、典型的には、マトリックスを保持する手段として、ハウジングとも呼ばれる分離デバイスに使用される。
一態様において、デバイスは、入口および出口および入口と出口との間の流体経路を有するハウジングを含む。好ましい態様において、デバイスは、クロマトグラフィーカラムである。クロマトグラフィーカラムは、当業者に知られている。それらは、典型的には、固定相で充填された円筒管またはカートリッジならびにフィルターおよび/または管またはカートリッジ中に固定相を固定するための手段および任意に管またはカートリッジに溶媒送達を往復させる接続部を含む。クロマトグラフィーカラムのサイズは、例として、分析または分取といった用途に応じて変更される。一態様において、カラムまたは一般に分離デバイスは、単回使用デバイスである。
【0032】
よって、本明細書に使用される用語「陰イオン交換マトリックス」は、少なくとも陰イオン交換基を保有するクロマトグラフィーマトリックスを指す。つまりは、典型的には、第四級アミノ基などの、使用されるクロマトグラフグラフィー条件下で正に帯電している1以上のタイプのリガンドを有する。
【0033】
「バッファー」は、その酸塩基共役構成要素の作用によりpHの変化に抵抗する溶液である。例えば、バッファーの所望されるpHに応じて採用され得る様々なバッファーが、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., ed. Calbiochem Corporation (1975)に記載されている。バッファーの非限定例は、MES、MOPS、MOPSO、トリス、HEPES、ホスファート、アセタート、シトラート、スクシナート、およびアンモニウムバッファー、ならびにそれらの組み合わせを包含する。
本発明に従うと、用語「バッファー」または「溶媒」は、クロマトグラフィーマトリックスのローディング、洗浄、溶離、再平衡化、揮散および/または消毒に使用されるいずれかの液体組成物に使用される。
【0034】
結合および溶離モードでクロマトグラフィーカラムに「ローディング」されるとき、標的分子および1以上の不純物を含む試料または組成物は、クロマトグラフィーカラム上にローディングされる。分取クロマトグラフィーにおいて、試料は、好ましくは、ローディングバッファーの添加なしに直接ローディングされる。ローディングバッファーが使用される場合、バッファーは、標的核酸が、固定相に結合されるが、理想的には、エンドトキシンのような不純物はすべて、カラムに結合せず、流れていくような組成、導電率および/またはpHを有する。典型的には、ローディングバッファーは、使用される場合には、ローディングのためのカラムを準備するのに使用される平衡化バッファーと同じかまたは同様の組成を有する。
カラム上にローディングされる試料の最終的な組成物は、フィードと呼ばれる。フィードは、試料およびローディングバッファーを含んでもよいが、好ましくは、試料のみである。
【0035】
クロマトグラフィーマトリックスを「洗浄する」または「洗浄すること」は、適切な液体、例として、バッファーをマトリックスに通過させる、またはマトリックス上を通すことを意味する。典型的には、洗浄は、標的分子を溶離する前に、結合/溶離モードでマトリックスから弱く結合した夾雑物を除去ウするために使用される。加えて、洗浄ステップは、残留洗浄剤のレベルを低減する、ウイルスクリアランスを増強する、および/または溶離の間の導電率のキャリーオーバーを変更するために使用され得る。
【0036】
分子(例として、標的核酸)をマトリックスから「溶離する」ことは、分子がそれから除去されることを意味する。溶離は、ローディングバッファーおよび/または洗浄バッファーとは異なるバッファーが興味のある分子とマトリックス上のリガンド部位について競合する、または標的分子が優先的に溶離バッファー中に存在するように、固定相と移動相との間の標的分子の平衡を変更させるように、溶液条件を変更することによって行われてもよい。
非限定例は、イオン交換材料を取り囲むバッファーのイオン強度を変更させることにより、イオン交換材料上の帯電した部位について分子と競合するように、イオン交換樹脂から分子を溶離させることである。
【0037】
クロマトグラフィーのマトリックスとしてのメンブレンは、溶質、例として、標的核酸または夾雑物とマトリックスとの間の相互作用が粒子のデッドエンド孔では起きないが、主としてメンブレンの貫通孔(throughpore)において起きるという事実によって、粒子ベースのクロマトグラフィーと区別され得る。メンブレンの例示のタイプは、フラットシート系、積み重ねたメンブレン、セルロース、ポリスチレンまたはシリカベースのメンブレンを組み込んだ微多孔性ポリマーシートならびにラジアルフローカートリッジ、中空糸モジュールおよびヒドロゲルメンブレンである。好ましいものは、ヒドロゲルメンブレンである。かかるメンブレンは、メンブレン担体および該担体の孔内に形成されるヒドロゲルを含む。メンブレン担体は、ヒドロゲルに機械的強度を提供する。ヒドロゲルは、孔径および結合化学的性質のような、最終産物の特性を決定する。
【0038】
メンブレン担体は、ポリマーメンブレン、セラミックベースのメンブレンおよび織布または不織布の繊維性材料のようないずれかの多孔性メンブレンからなり得る。メンブレン担体について好適なポリマー材料は、セルロースまたはセルロース誘導体ならびに他の好ましいものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタラートまたはポリビニリデンジフッ化物のような不活性ポリマーである。
【0039】
ヒドロゲルは、1以上の重合性モノマーと1以上のクロスリンカーおよび/または1以上の架橋性のポリマーのその場反応を通して形成され得、好ましくはマクロ細孔を有する架橋ゲルを形成する。好適な重合性モノマーは、ビニル基またはアクリル基を含有するモノマーを包含する。好ましいものは、マトリックスのリガンドを直接形成するかまたは、リガンドを付着させるために好適であるかのいずれかである追加の官能基を含むモノマーである。好適なクロスリンカーは、少なくとも2つのビニル基またはアクリル基を含有する化合物である。好適なメンブレン担体、モノマー、クロスリンカー等、ならびに好適な産生条件についてのさらなる詳細は、WO04073843およびWO2010/027955に見出され得る。とくに好ましいものは、Natrix(登録商標)Qクロマトグラフィーメンブレン(Merck KGaA、Germany)のような、第四級アンモニウム基(強い陰イオン交換基)を有する多孔性ポリアクリルアミドヒドロゲルを繊維ウェブ担体の内部および周囲に集合して含む、不活性な、フレキシブル繊維ウェブ担体から作られるメンブレンである。
【0040】
使用されるメンブレンデバイスに応じて、夫々のプロセスは、デッドエンド操作、クロスフロー操作およびラジアルフロー操作系のような種々の操作原理によって実行される。デッドエンド操作が、好ましい。
【0041】
本発明の方法において使用される好適なメンブレンの例は、以下である:
-Mustang(登録商標)Q(Pall)のような、ポリエーテルスルホン(PES)ベースの担体および第四級アンモニウム基(強い陰イオン交換基)で官能化された、架橋ポリマーコーティングを有するメンブレン。
-Sartobind(登録商標)メンブレン(Sartorius)のような、第四級アンモニウム基(強い陰イオン交換基)またはDEAE基(ジエチルアミノエチル、弱いイオン交換基)で官能化された、安定化された強化セルロースから作られるメンブレン。
-Sartobind(登録商標)Jumboメンブレン(Sartorius)のような、第四級アンモニウム基(強い陰イオン交換基)で官能化された、安定化された強化セルロースから作られるSartobind(登録商標)Jumboメンブレンのような、第四級アンモニウム基(強いイオン交換基)を有するヒドロゲルを含む、安定化された強化セルロースから作られるメンブレン。
-3M(商標)Emphaze(商標)AEXハイブリッドピュリファイアー(3M)のような、第四級アンモニウム基(強い陰イオン交換基)を有するヒドロゲルを含む、細繊維不織布スキャフォールドから作られるメンブレン。
-Natrix(登録商標)Qクロマトグラフィーメンブレン(Merck KGaA、Germany)のような、第四級アンモニウム基(強い陰イオン交換基)を有する多孔性ポリアクリルアミドヒドロゲルを繊維ウェブ担体の内部および周囲に含む不活性な、フレキシブル繊維ウェブ担体から作られるメンブレン。
【0042】
モノリスまたはモノリス吸着剤は、メンブレンと同様に、モノリスのある側から、モノリスを通して、モノリスの他の側へと流れ得るように、相互接続したチャネルのような、貫通孔を有する。
移動相が、これらの貫通孔を通って流れることから、分離される分子は、拡散によってよりもむしろ対流によって輸送される。それらの構造に起因して、モノリス吸着剤は、分離効率および動的能力とは独立した流速を示す。
【0043】
モノリスは、典型的には、反応物溶液からその場で形成され、および典型的には、操作の利便性を保証するフリットフリー構造(frit-free construction)を有する、いずれかの形状または限られた幾何学的形状を有し得る。好ましくは、モノリスの材料は、メソ細孔およびマクロ細孔の二元細孔構造を有する。ミクロンサイズのマクロ細孔は、貫通孔であり、および適用における高速の動的輸送ならびに低い背圧を確かにする;メソ細孔は、充分な表面面積およびよって高いローディング能力に寄与する。
モノリスは、有機、無機または有機/無機ハイブリッド材料から作られ得る。好ましいものは、有機ポリマーベースのモノリスである。
【0044】
有機ポリマーモノリスの合成は、典型的には、目的に合った官能基を有する調節可能な多孔質構造を提供する、一段階重合によって行われる。一般に、適切な比率における、モノマー、クロスリンカー、ポロジェニック溶媒(porogenic solvent)、および開始剤からなる重合前混合物は、モノリスの形式を決定する、モールドとも呼ばれる好適な容器で重合される。重合は、典型的には、開始剤の存在下で、加熱、UV放射線、マイクロ波またはγ線の使用により開始される。適切な温度で規定の時間反応した後、その結果得られる材料は、典型的には、溶媒で洗浄されて、未反応の構成要素およびポロジェニック溶媒が除去される。
好適な有機ポリマーは、ポリ(メタクリル酸エチレンジメタクリラート)、ポリ(グリシジルメタクリラート-エチレンジメタクリラート)またはポリ(アクリルアミド-ビニルピリジン-N,N′-メチレンビスアクリルアミド)のような、ポリメタクリラート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリウレタン等である。
【0045】
無機モノリスは、シリカまたは他の無機オキシドから作られ得る。好ましくは、それらは、シリカから作られる。シリカモノリスは、通常、相分離を伴うゾル-ゲル法を介して調製される。これは、主に、シリカ前駆体の加水分化、縮合、および重縮合を包含する。典型的には、テトラエトキシシラン(TEOS)またはオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)は、ポロジェン(porogen)(例として、ポリ(エチレングリコール)(PEG))の存在下で好適な溶媒に分散され、触媒、酸または塩基、または二元の触媒、酸および塩基の順次の添加がこれに続く。既定の時間反応した後、その結果得られるゲル様産物は、溶媒で洗浄され、未反応の前駆体、ポロジェン、および触媒が除去され、適切な後処理、典型的には熱処理がこれに続く。
【0046】
モノリスは、好適な官能基、好ましくは少なくともイオン交換基で修飾され得、標的分子を含む試料との標的にされた相互作用を生じさせ、およびよって標的にされた分離を生じさせ得る。
典型的には、モノリスは、カラムのようなハウジングを含有する。
【0047】
アルキルポリグリコシドとも呼ばれるアルキルグリコシドは、糖類および糖類に、典型的にはアノマー炭素を介して連結されたアルキル鎖を含む。糖類は、グルコースのような単糖類またはマルトースのような二糖類またはオリゴ糖類であり得る。糖類ユニットのタイプを問わず、分子は、単にグリコシドと呼ばれる。好ましくは、糖類は、グルコースである。アルキル鎖は、好ましくは、8~16個のC原子を有する直鎖状の、飽和アルキル鎖である。本発明の方法に使用されるアルキルグリコシドはまた、異なる糖類部分および/または異なる鎖長を伴うアルキル鎖を有する2以上の異なるアルキルグリコシドの混合物であり得る。好ましいものは、8個と10個の間のC原子のアルキル鎖長を有するアルキルグリコシドである。とくに好ましいものは、Triton(登録商標)CG-110(Merck KGaA、German)である。
【0048】
二級アルコールアルコキシレートは、二級アルコールを付着したエチレンおよび/またはプロピレンオキシド鎖を含有する。二級アルコールは、好ましくは、8~18個の炭素を有し、およびエチレン/プロピレンオキシド鎖は、好ましくは、3~12個のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドユニットを有する。二級アルコールアルコキシレートはまた、異なるアルコール鎖および/または異なる数のエチレンオキシドユニットおよび/またはプロピレンオキシドユニットを有する異なる二級アルコールアルコキシレートの混合物であり得る。
本発明の方法に使用される好ましい二級アルコールアルコキシレートは、式Iに従う、2-エチルヘキサノールエチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーである。
【化1】
式I
式中、mおよびnは、1と11との間の数であり、およびm+nは、3~12である。かかる二級アルコールアルコキシレートは、Ecosurf(登録商標)EH(Merck KGaA、Germany、またはDow Inc)として市販されている。
とくに好ましいものは、Ecosurf(登録商標)EH-9である。
【0049】
本発明の方法に使用される他の好ましい二級アルコールアルコキシレートは、11~15個の炭素を有する二級アルコールから作られ、および3~12個のエチレンオキシドユニットを保有する二級アルコールエトキシラートである。かかる二級アルコールエトキシラートのとくに好ましい基は、式IIに示され、9個のエチレンオキシドユニットを含む。
【化2】
式II
かかる化合物は、Tergitol(登録商標)15-S-9(Merck KGaA、Germany)として市販されている。
【0050】
詳細な記載
本発明の方法に従って精製される核酸は、例えば、原核細胞培養物などの、天然の、遺伝子改変された、またはバイオテクノロジーによる供給源のいずれに由来するものであってもよい。細胞調製物から核酸が精製される場合、細胞は、例えば、溶解などの既知の方法によって最初に消化される。精製される試料が既に別の方法で前処理されている場合、溶解の消化は不必要である。例えば、試料は、細胞デブリおよびRNAの沈殿物の除去により生物学的材料から、既に事前に精製され、および例えば、バッファーの存在下の核酸試料から、または代替的に増幅後に形成され、およびいまだにエンドトキシン不純物を含有する核酸溶液から得られ得る。濾過、沈殿または遠心分離ステップが必要であってもよい。当業者は、精製される核酸の供給源に応じて好適な消化方法を選択することができる。いずれのケースにおいても、精製される試料は、本発明に従う方法のために、沈殿物を形成しないかまたは洗浄剤溶液の添加に対する他の望ましくない副反応を引き起こさない培地中に存在すべきである。試料は、好ましくは、例えば、清澄化ライセートなどの細胞から得られたライセートである。
【0051】
E.coliからのプラスミドDNAの精製のために、細胞は、例えば、NaOH/SDS溶液を用いたアルカリ溶解によってまず第一に溶解される。次いで、酸性のカリウム含有中和バッファーの添加は、遠心分離または濾過によって取り除かれ得る、沈殿物の形成を引き起こす。残存する透明な上清、清澄化ライセートは、出発材料として、すなわち試料として、本発明に従う方法のために採用され得る。透析または沈殿などの既知の方法によって清澄化ライセートをまず第一に濃縮するかまたは事前に精製することも可能である。
【0052】
核酸およびそこから核酸を精製すべきエンドトキシンおよび潜在的に他の不純物を含む試料は、次いで陰イオン交換基を含むメンブレンまたはモノリスベースのクロマトグラフィーマトリックス上にクロマトグラフの分離に供される。このために、試料は、クロマトグラフィーマトリックス上にローディングされる。マトリックス上にローディングされる最終的な組成物の試料は、フィードとも呼ばれる。本発明の一態様において、フィードは、いずれの洗浄剤も含まない。別の態様において、フィードは、アルキルグリコシドおよび二級アルコールアルコキシレートの群から選択される非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物を含む。典型的には、フィード中の非イオン性界面活性剤の濃度は、存在するならば、0.01%と10%(w/v)との間、好ましくは0.1%と1.5%(w/v)との間である。非イオン性界面活性剤は、インライン混合によってカラム上にローディングする前に試料に直接添加され得るか、または好ましくは、ローディング前にバッチ中の試料に添加され得る。このために、試料は、好ましくは、洗浄剤が溶解するまで洗浄剤と混合される。混合は、例えば、5分と60分との間の時間実施され得る。典型的には、フィードの調製およびクロマトグラフの分離もまた、室温でまたは室温周辺で実施される。しかし、5℃と35℃との間の温度で働くことも可能である。
【0053】
フィードは、好ましくは40mS/cmと90mS/cmとの間、最も好ましくは75mS/cmと85mS/cmとの間の電解導電率に調節される。
導電率の調整は、塩、塩濃縮溶液の添加、または低導電率バッファーまたは純水(neet water)夫々での希釈により行われる。塩の補充によるフィードの導電率の調整のために、好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムが使用されるが、例として、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩/重炭酸塩、リン酸塩またはクエン酸塩からの塩などの精製用途において一般的に使用されるいずれの他の塩も同様に考慮してもよい。
フィードは、典型的には、4.5~5.5の間のpH値を示すが、方法は、4.0から最大9.0までの範囲をとるpH値を示すフィードに実行されてもよい。
【0054】
カラム平衡化および洗浄バッファーは、典型的には、クロマトグラフィー材料上にローディングされたフィードのpHおよび導電率と一致するバッファーである。典型的には、pH6.0未満および40~90mS/cmの導電率を有するバッファーが選択されるが、その範囲外のバッファーも同様に適用できる。低導電率洗浄バッファー(<40mS/cm)または純水から作られる洗浄剤洗浄溶液が殊更好適である。
ローディング後に、マトリックスは、少なくとも1の洗浄バッファーを用いて洗浄される。洗浄バッファーは、ローディングバッファーと同一であっても、またはローディングバッファーとは異なっていてもよい。マトリックスは、2、3または4つの異なる洗浄バッファーを用いて洗浄されてもよい。任意に洗浄バッファーのうちの1つは、アルキルグリコシドおよび二級アルコールアルコキシレートの群から選択される非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物を含む。典型的には、洗浄バッファー中の非イオン性界面活性剤の濃度は、もし存在するならば、0.01%と10%(w/v)との間、好ましくは0.1%と1.5%(w/v)との間である。
【0055】
非イオン性界面活性剤が洗浄バッファーに添加される場合、それは好ましくは第1の洗浄バッファーに添加され、およびいずれのケースにおいても少なくとも1のさらなる洗浄ステップは、洗浄剤を含む洗浄バッファーを用いた洗浄の後に実施される。
好ましくは、マトリックスは、1より多くの洗浄バッファーを用いて洗浄される。
【0056】
別の好ましい態様において、1つの洗浄バッファー、好ましくは最後の洗浄バッファーは、10%と25%(v/v)との間の濃度でエタノールを含む。
好ましくは、洗浄バッファーのpHおよびイオン強度は、平衡化/ローディングバッファーのpHおよびイオン強度と同一であるかまたは同様である。
【0057】
次いで、標的核酸の溶離は、溶離バッファーを使用して行われる。溶離バッファーは、平衡化/ローディングバッファーとは異なるpHおよび/または異なるイオン強度を有する。
一態様において、それは平衡化/ローディングバッファーよりも高いpHおよび/またはより高いイオン強度を有する。一態様において、溶離バッファーのpHは、pH7より上、好ましくはpH8.5と9.5との間である。一態様において、溶離バッファーは、0.5Mと1.5Mとの間のNaClを含む。
【0058】
いずれのケースにおいても、本発明の方法において、アルキルグリコシドおよび二級アルコールアルコキシレートの群から選択される少なくとも1の非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物が添加される。上に記載のとおり、洗浄剤は、フィードに、および/または洗浄バッファーに添加され得る。
好ましくは、洗浄剤は、アルキルグリコシド、最も好ましくはC8~C16アルキルグリコシドであり、とくに好ましい洗浄剤は、Triton(登録商標)CG110である。
【0059】
本発明の方法を実施することにより、標的核酸は、クロマトグラフィーマトリックス上にローディングされた試料中の汚染と比べて、有意に低いエンドトキシン汚染で得られ得る。
標的核酸中の最終的なエンドトキシンレベルは、最初のエンドトキシンレベルに依存する。最初のエンドトキシンレベルがほぼ1.3 106EU/mgの標的核酸を用いると、本発明の方法で30EU/mg未満の標的核酸の最終的なエンドトキシンレベルを達成し得る。最初のエンドトキシンレベルがほぼ50.000EU/mgの標的核酸を用いると、本発明の方法で10EU/mg未満の標的核酸の最終的なエンドトキシンレベルを達成し得る。
【0060】
本発明の方法は、Triton(登録商標)X100およびTween(登録商標)80またはTween(登録商標)20のようなビーズベースの用途に典型的に推奨される他の洗浄剤を用いて同じ方法を実施することによって達成された結果と比べて典型的により良い結果を示すことが見出された。
【0061】
一態様において、本発明の方法は、アルキルグリコシドおよび二級アルコールアルコキシレートの群から選択される1以上の非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物のみを使用して実施される。他の洗浄剤は、フィードにも洗浄バッファーにも、またはクロマトグラフの精製の間のいずれの他のときにも添加されない。
【0062】
本発明の一態様において、方法は、クロマトグラフィーの精製から結果としてもたらされた核酸中の残留エンドトキシンを検出するための追加のステップをさらに含む。核酸産物のさらなる使用の前にその品質をチェックすることは、典型的には、高い関連性を有する。エンドトキシンは不要な副作用を引き起こし得るため、それらの除去または枯渇を制御することは、しばしば極めて重要である。当業者は、エンドトキシンを検出するための方法について知っている。
【0063】
リムルスベースの検出アッセイであるLAL試験は、エンドトキシンのための最先端のin vitroの検出方法として一般的にみなされている。LALアッセイおよびエンドトキシンを検出することおよび測定することのための他の方法についての詳細は、当業者に知られている。LALアッセイ以外の代替の方法の例は、組換えC因子アッセイ(Lonza)のような組換え因子ベースのエンドトキシン検出キットである。さらなる情報は、E.C. Dullah, “Current trends in endotoxin detection and analysis of endotoxin-protein interactions”, February 2016, Critical Reviews in Biotechnology 37(2):1-11に見出され得る。
【0064】
LALアッセイならびに組換え因子ベースのアッセイのような他のエンドトキシンアッセイの重度の干渉は、LAL酵素または組換え酵素からアナライトをシールドする「ステルス」構造を形成する、エンドトキシンと相互作用する物質から結果としてもたらされ、低いエンドトキシン回収(LER)および実際のエンドトキシン濃度の過小評価という効果をもたらす。
洗浄剤がミセル構造を形成することによりエンドトキシンの検出可能性に影響を与えることは周知である。
【0065】
同じ両親媒性の性質であり、および同様の構造である、両者は、相互作用するための理想的なパートナーと考えられる。その結果として、最終的な溶出液試料中のエンドトキシンを分析するときに、残留洗浄剤によって引き起こされるLER効果の発生が除外されなければならないため、注意しなければならない。
LALアッセイのようなエンドトキシンアッセイは、本発明の方法を用いて得られる産物では、LER効果の発生なしに実施され得ることが見出された。予想外に、本発明の方法において使用される洗浄剤は、LER効果を引き起こさない。とくにアルキルグリコシドおよび2-エチルヘキサノールエチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーは、高濃度で存在するときであっても、いかなる干渉も示さない。
その結果として、一態様において、本発明の方法は、クロマトグラフィーマトリクスの溶出液において、クロマトグラフィーの精製から結果としてもたらされた核酸中の残留エンドトキシンを、溶出液のいずれのさらなる処理なしに、直接的に検出するための追加のステップを含む。
【0066】
本発明は、以下の図および例によってさらに説明され、しかしながら、それに制限されるものではない。
【0067】
上記および下記に引用されるすべての出願、特許、および刊行物ならびに2021年5月8日に出願された対応する出願であるUS63/229,666の開示の全体は、本明細書において参照により組み込まれる。
【0068】

以下の例は、本発明の実際の適用を表す。
【0069】
洗浄剤のリスト
【表1】
【0070】
プラスミドDNA捕捉のためのプロトコル
注記1:洗浄として、またはフィードの補完として、個々の洗浄剤を試験する実験の各セットについて、新しいメンブレンデバイスを使用して、一連のラン/実験間で残留洗浄剤のキャリーオーバーによる交叉汚染からの人為的な硬化を避けた。
注記2:システムのホールドアップが不相応に大きい小容量のモノリスまたはメンブレンスクリーニングデバイスでは、極めて大容量が洗浄1、洗浄2、溶離、定置洗浄(CIP)および平衡化に使用されることは、典型的である。より大きな規模では、これらの値は低減し得、および個々のステップを増強するために流向は逆になり得る。これは、標準的な実践であり、および当該技術分野に堪能ないずれかのものにとっては一般的な知識である。
【0071】
クロマトグラフィーの材料
【表2】
【0072】
Natrix(登録商標)Qのプロトコル1-洗浄剤処理後のフィードA(20kbプラスミド)からの捕捉
・バッファー
【表3】
【0073】
・クロマトグラフィーのメソッド
【表4】
【0074】
・プラスミドフィード
フィードとして使用されるオリジナルの20kbプラスミドライセートは、約1,300,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。0.22μmのPES媒体を用いてろ過したプラスミドライセートに、pDNAの選択的結合を必要とする100mMのNaClを補充した。Natrix(登録商標)Qを用いたプラスミド捕捉の前に、規定量の洗浄剤をライセートに添加した。洗浄剤が完全に溶解し、および均一な混合物に達するまで30minの間室温で緩やかに攪拌した後、続いて試料を精製実験に供した。
【0075】
Natrix(登録商標)Qプロトコル2-洗浄剤処理後のフィードB(8kbプラスミド)からの捕捉
・クロマトグラフィーのバッファー
【表5】
【0076】
・クロマトグラフィーのメソッド
【表6】
【0077】
・プラスミドフィード
フィードとして使用されるオリジナルの8kbプラスミドライセートは、約50,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。0.22μmのPES媒体を用いてろ過したプラスミドライセートに、pDNAの選択的結合を必要とする175mMのNaClを補充した。Natrix Qを用いたプラスミド捕捉の前に、規定量の洗浄剤を添加した。洗浄剤が完全に溶解し、および均一な混合物に達するまで30minの間室温で緩やかに攪拌した後、続いて試料を精製実験に供した。
【0078】
Natrix(登録商標)Qプロトコル3-中性洗浄剤による洗浄を使用したフィードC(8kbプラスミド)からの捕捉
・クロマトグラフィーのバッファー
【表7】
【0079】
・クロマトグラフィーのメソッド
【表8】
【0080】
・プラスミドフィード
フィードとして使用されるオリジナルの8kbプラスミドライセートは、約275,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。ライセートを、0.22μmのPES媒体を用いてろ過し、およびpDNAの選択的結合に必要な175mMのNaClを補充した。
【0081】
Mustang(登録商標)Qプロトコル1-性洗浄剤での洗浄を使用したフィードC(8kbプラスミド)からの捕捉
・クロマトグラフィーのバッファー
【表9】
【0082】
・クロマトグラフィーのメソッド
【表10】
【0083】
・プラスミドフィード
0.22μmのPES媒体を用いてろ過し、およびpDNAの選択的結合に必要な375mMのNaClを補充したオリジナルのライセートを用いて精製試験を実行した。
【0084】
CIMmultus(登録商標)DEAEプロトコル1-中性洗浄剤の洗浄を使用したフィードC(8kbプラスミド)からの捕捉
・クロマトグラフィーのバッファー
【表11】
【0085】
・クロマトグラフィーのメソッド
【表12】
【0086】
・プラスミドフィード
0.22μmのPES媒体を用いてろ過し、およびpDNAの選択的結合に必要な60mMのNaClを補充したオリジナルのライセートを用いて精製試験を実行した。
【0087】
エンドトキシンアッセイ
Charles River製のカートリッジベースのカブトガニ変形細胞ライセート(LAL)Endosafe-PTSシステムを、製造業者の指示に従って使用して、エンドトキシンの分析を行った。
【0088】
プラスミドDNAの分析
オリジナルのライセートおよびNatrix(登録商標)Qの捕捉試験から収集された試料におけるプラスミドDNAの純度および分量を、分析UV/HPLC方法という我々の手段により決定した。
【0089】
洗浄剤の分析
Natrix(登録商標)Q捕捉試験から収集したプラスミド溶出液画分における洗浄剤の残留量を、下に記載のとおりの分析HPLC法を用いて測定した。方法は、例として、固相抽出を用いて潜在的に妨げるマトリックス構成要素を除去するための事前の試料調製なしに、プラスミドの直接分析を可能とする。
未知の溶出液試料における洗浄剤の量を、溶出液バッファーマトリックスにおける個々の洗浄剤の標準物質から得られた較正曲線を使用してアナライトのピーク面積に基づき算出した。
実際のプラスミド試料についての分析方法の適合性および分析結果の妥当性を、スパイク回収試験を用いて実証した。その目的のために、プラスミド溶出液試料中にスパイクされた規定量の個々の洗浄剤(いずれの洗浄剤も使用しない捕捉試験から)の回収を検証した。
【0090】
【表13】
【0091】
試験A-洗浄剤を用いた溶出液バッファーにおけるリポ多糖(LPS)スパイク検出
この試験を、Thermo Scientific社からの凍結乾燥E.Coli(O111:B4)エンドトキシン標準品(Cat# 1897398)を使用して行った。LPS標準品を水で再構成して、50EU/mLの公称濃度をもたらした。
【0092】
パート1)1.5MのNaCl+100mMのトリス pH8.0バッファー溶出液バッファーにおけるスパイク回収
洗浄剤の残留量を含むプラスミド溶出液バッファーマトリックス(1.5MのNaCl+100mMのトリス/HCl、pH8.0)におけるLPSの検出可能性を、以下のプロトコルに従って試験した:
-凍結乾燥LPS標準品を水に溶解し、公称50EU/mLのエンドトキシンを含むLPS原液をもたらした。
-20μLのLPS原液を、100μLのさまざまな量の種々の洗浄剤を補充した溶出液バッファーと混合した。
-混合物を、30℃で1時間インキュベートし、その後に短く遠心分離し、および880μLの水を添加することによる最終的な希釈の前に混合した。
-試料を、5~0.05EU/mLのカートリッジを使用してエンドトキシンについて直接的に分析し、および回収されたスパイクの結果を評価した。
【0093】
パート2)1MのNaCl+100mMのトリスpH9.0バッファー溶出液バッファーにおけるスパイク回収
洗浄剤の残留量を含むプラスミド溶出液バッファーマトリックス(1MのNaCl+100mMのトリス/HCl、pH9.0)におけるLPSの検出可能性を、以下のプロトコルに従って試験した:
-凍結乾燥LPS標準品を水に溶解し、公称50EU/mLのエンドトキシンを含むLPS原液をもたらした。
-20μLのLPS原液を、100μLのさまざまな量の種々の洗浄剤を補充した溶出液バッファーと混合した。
-混合物を、30℃で1時間インキュベートし、その後に短く遠心分離し、および880μLの25mMのトリス/HClバッファー、pH7.0を添加することによる最終的な希釈の前に混合した。
-試料を、5~0.05EU/mLのカートリッジを使用してエンドトキシンについて直接的に分析し、および回収されたスパイクの結果を評価した。
【0094】
試験B-Tergitol(登録商標)の存在下のプラスミド溶出液における残留エンドトキシンの検出
この実験において、規定量のTergitol(登録商標)15-S-9の存在下の実際のプラスミド溶出液試料におけるエンドトキシンの回収を調査した。いずれの洗浄剤も使用せずに実行したNatrix(登録商標)Q捕捉ランから得られたプラスミド溶出液材料の試料を、続いて規定量の洗浄剤でスパイクし、および最終的にエンドトキシンについて分析した。
-出発材料は、8kbプラスミド溶出液プールw/o洗浄剤であり、約200EU/mLのエンドトキシンレベルを示した。溶出液バッファーマトリックスは、1MのNaCl+100mMのトリス、pH9.0と同等であった。
-洗浄剤原液を、溶出液バッファー1MのNaCl+100mMのトリス、pH9.0において調製した。
【0095】
-スパイク試料の調製についてのピペッティングスキームは、以下の通りである:
【表14】
-混合物を30℃で5minの間インキュベートし、その後短く遠心分離し、および混合した。
-分析の前に、試料を25mMのトリス/HCLバッファー、pH7.0で204倍に希釈し、および5~0.05EU/mLテストカートリッジを使用してエンドトキシンの測定に供した。
【0096】
試験C-200ppmの中性洗浄剤でスパイクされたプラスミド溶出液におけるエンドトキシンの検出
この実験において、規定量の中性洗浄剤の存在下の実際のプラスミド溶出液試料におけるエンドトキシンの回収を調査した。いずれの洗浄剤も使用せずに実行したNatrix(登録商標)Q捕捉ランから得られたプラスミド溶出液材料の試料を、続いて規定量の洗浄剤でスパイクし、および最終的にエンドトキシンについて分析した。
-出発材料は、20kbプラスミド溶出液プールw/o洗浄剤であり、約500EU/mLのエンドトキシンレベルを示した。溶出液バッファーマトリックスは、1.5MのNaCl+100mMのトリス、pH8.0と同等であった。
-10.000ppmでの洗浄剤原液を水で調製した。
【0097】
-スパイク試料の調製のためのピペッティングスキームは、以下の通りであった:
【表15】
-490μLのプラスミド溶出液を、10μLの対応する洗浄剤原液と混合した。
-混合物を、8℃16hで終夜インキュベートし、次いで30℃で5minの間インキュベートして、その後に短く遠心分離し、および混合した。
-分析の前に、試料を水で1,000倍に希釈し、および最終的に5~0.05EU/mLテストカートリッジを使用したエンドトキシン測定に供した。
【0098】
結果
1)洗浄剤で処理したフィードA(20kb pDNA)からのNatrix(登録商標)Qを用いたプラスミド捕捉
表R1(パートAおよびB)およびR2は、Natrix(登録商標)Qのプロトコル1に従って事前に処理されたライセートについて種々の洗浄剤を試験した、Natrix Qを用いたプラスミドDNA捕捉試験から得られた結果を比較する。メンブレンのローディングは、0.5mgプラスミド/mLメンブレン容量であった。フィードとして使用したオリジナルの20kbプラスミドライセートは、約1,300,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。
【0099】
表R1-パートA:フィードの補完として様々な洗浄剤を試験した20kbのプラスミドの精製についての分析データ
【表16】
【0100】
表R1-パートB:フィードの補完として様々な洗浄剤を試験した20kbプラスミドの精製についての分析データ
【表17】
【0101】
フィードの事前処理のための補完として試験された種々の洗浄剤で観察されたエンドトキシン除去の有効性を、表R2に与える。
表R2.洗浄剤を使用することなく実行したベースライン実験と比べてのプラスミド溶出液プールにおけるエンドトキシンの低減の係数。記載された値は、二重ランおよび繰り返し試験から算出された平均値である。
【表18】
【0102】
2)洗浄剤で処理されたフィードB(8kb pDNA)からのNatrix(登録商標)Qを用いたプラスミドの捕捉
表R3(パートAおよびB)および表R4は、Natrix(登録商標)Qのプロトコル2に従って事前に処理されたライセートについて種々の洗浄剤を試験した、Natrix Qを用いたプラスミドDNA捕捉試験から得られた結果を比較する。
メンブレンのローディングは、1.6mgプラスミド/mLメンブレン容量であった。フィードとして使用したオリジナルの8kbプラスミドライセートは、約50,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。
【0103】
表R3-パートA.洗浄バッファーの補完として様々な洗浄剤を試験した8kbプラスミドの精製についての分析データ
【表19】
【0104】
表R3-パートB.洗浄バッファーの補完として様々な洗浄剤を試験した8kbプラスミドの精製についての分析データ
【表20】
【0105】
バッファーの補完として試験した種々の洗浄剤で観察されたエンドトキシン除去の有効性を、表R4に与える。
表R4.洗浄剤を使用せずに行ったベースライン実験と比べた、プラスミド溶出液プールにおけるエンドトキシンの低減の係数。記載された値は、二重ランおよび繰り返し試験から算出された平均値である。
【表21】
【0106】
3)洗浄剤洗浄バッファーを試験したフィードC(8kb pDNA)からのNatrix Qを用いたプラスミド捕捉
表R5(パートAおよびB)およびR6は、Natrix Qのプロトコル3に従ってバッファーの補完として種々の洗浄剤を試験した、Natrix Qを用いたプラスミドDNA捕捉試験から得られた結果を比較する。メンブレンのローディングは、1.6mgプラスミド/mLメンブレン容量であった。フィードとして使用したオリジナルの8kbプラスミドライセートは、約275,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。
【0107】
表R5-パートA.種々の洗浄バッファーを用いて得られた8kbプラスミド溶出液プールについての分析データ
【表22】
【0108】
表R5-パートB.種々の洗浄バッファーを用いて得られた8kbプラスミド溶出液プールについての分析データ
【表23】
【0109】
洗浄バッファーの補完として試験された種々の洗浄剤で観察されたエンドトキシン除去の有効性を表R6に与える。
表R6.洗浄剤を使用せずに実行したベースライン実験と比べた、プラスミド溶出液プールにおけるエンドトキシンの低減の係数。記載された値は、二重ランおよび夫々の繰り返し試験から算出された平均値である。
【表24】
【0110】
種々の洗浄剤洗浄緩衝を用いて実行したNatrix Qから得られたプラスミド溶出液プールにおける残留宿主細胞タンパク質濃度を表7に列挙する。結果は、Triton CG110の使用に基づいた精製プロトコルからのプラスミド溶出液プールで最も低いHCP不純物レベルであったことを示唆する。
表R7.Natrix Q捕捉ステップの間のプラスミドDNAからのE.coli宿主細胞タンパク質(HCP)の除去。下表は、種々の洗浄剤での洗浄プロトコルに従ったNatrix Q捕捉からのプラスミド溶出液プールで測定された残留HCP濃度を比較する。各洗浄プロトコルについて、2つの連続したランから収集したプラスミド溶出液プールを分析した(ラン1およびラン2と呼ぶ)。オリジナルのプラスミドライセートにおけるHCP濃度は、3,235μg HCP/mg pDNAに達した。
【表25】
【0111】
4)洗浄剤洗浄バッファーを試験したフィードC(8kb pDNA)からのMustang(登録商標)Qを用いたプラスミド捕捉
表R8(パートAおよびB)およびR7は、Mustang(登録商標)Qのプロトコル1に従って洗浄バッファーの補完として種々の洗浄剤を試験したMustang(登録商標)Qを用いたプラスミドDNA捕捉試験から得られた結果を比較する。メンブレンのローディングは1.6mgプラスミド/mLメンブレン容量であった。フィードとして使用したオリジナルの8kbプラスミドライセートは、約275,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。
表R8-パートA.種々の洗浄バッファーを用いて得られた8kbプラスミド溶出液プールについての分析データ
【表26】
【0112】
表R8-パートB.種々の洗浄バッファーを用いて得られた8kbプラスミド溶出液プールについての分析データ
【表27】
【0113】
洗浄バッファーの補完として試験した種々の洗浄剤で観察されたエンドトキシン除去の有効性を表R9に与える。
表R9.洗浄剤を使用せずに実行したベースライン実験と比べた、プラスミド溶出液プールにおけるエンドトキシンの低減の係数。記載された値は、二重ランおよび夫々の繰り返し試験から算出された平均値である。
【表28】
【0114】
種々の洗浄剤洗浄バッファーを用いて実行したMustang(登録商標)Q捕捉ランから得られたプラスミド溶出液プールにおける残留宿主細胞タンパク質濃度を表10に列挙する。結果は、Triton(登録商標)CG110洗浄プロトコルを使用したことで改善されたHCPクリアランスを確認する。
表R10.Mustang(登録商標)Q捕捉ステップの間のプラスミドDNAからのE.coli宿主細胞タンパク質(HCP)の除去。下表は、種々の洗浄剤洗浄プロトコルに従ったMustang(登録商標)Q捕捉からのプラスミド溶出液プールにおいて測定された残留HCP濃度を比較する。各洗浄プロトコルについて、2つの連続したランから収集されたプラスミド溶出液プールを分析した(ラン1およびラン2と呼ぶ)。オリジナルのプラスミドライセートにおけるHCP濃度は、3,235μg HCP/mg pDNAに達した。
【表29】
【0115】
5)洗浄剤洗浄バッファーを試験したフィードC(8kbp DNA)からのCIMmultus(登録商標)DEAEを用いたプラスミド捕捉
表R11(パートAおよびB)およびR12は、CIMmultus(登録商標)DEAEのプロトコル1に従って洗浄バッファーの補完として種々の洗浄剤を試験した、CIMmultus(登録商標)DEAEを用いたプラスミドDNA捕捉試験から得られた結果を比較する。カラムのローディングは、約1mgプラスミド/mLカラム容量であった。フィードとして使用したオリジナルの8kbプラスミドライセートは、約275,000EU/mgプラスミドという最初のエンドトキシンレベルを示した。
表R11-パートA.種々の洗浄バッファーを用いて得られた8kbpプラスミド溶出液プールについての分析データ
【表30】
【0116】
表R10-パートB.種々の洗浄バッファーを用いて得られた8kbプラスミド溶出液プールについての分析データ
【表31】
【0117】
洗浄バッファーの補完として試験した種々の洗浄剤で観察されたエンドトキシン除去の有効性を表R12に与える。
表R12.洗浄剤を使用せずに実行したベースライン実験と比べた、プラスミド溶出液プールにおけるエンドトキシンの低減の係数。記載された値は、二重ランおよび夫々の繰り返し試験から算出された平均値である。
【表32】
【0118】
種々の洗浄剤洗浄バッファーを用いて実行したCIMmultus(登録商標)DEAE捕捉ランから得られたプラスミド溶出液プールにおける残留宿主細胞タンパク質濃度を表13に列挙する。結果は、Triton(登録商標)CG110洗浄プロトコルを使用したことで改善されたHCPクリアランスを確認する。
表R13.CIMmultus(登録商標)DEAE捕捉ステップの間のプラスミドDNAからのE.coli宿主細胞タンパク質(HCP)の除去。下表は、種々の洗浄剤洗浄プロトコルに従ったCIMmultus(登録商標)DEAE捕捉からのプラスミド溶出液プールにおいて測定された残留HCP濃度を比較する。各洗浄プロトコルについて、2つの連続したランから収集したプラスミド溶出液プールを分析した(ラン1およびラン2と呼ぶ)。オリジナルのライセートにおけるHCP濃度は、3,235μg HCP/mg pDNAに達した。
【表33】
【0119】
エンドトキシンアッセイ干渉(エンドトキシンマスキング効果)
試験A-洗浄剤を含む溶出液バッファーにおけるリポ多糖(LPS)スパイク検出
表R14は、種々の洗浄剤を含む溶出液バッファーにおけるLPSについて観察された回収のデータを要約する。データは、LPSの検出についてのLALアッセイの干渉の発生が、残留洗浄剤のタイプおよび濃度に依存することを指し示す。
表R14.上で詳述したとおりのLPSの検出についてのプロトコルに従った、さまざまなレベルの様々な洗浄剤を含む種々の溶出液バッファーのLPSのスパイク回収。20μLのLPS原液を、さまざまな濃度での種々の洗浄剤で補充した、A)1.5MのNaCl+100mMのトリス、pH8.0またはB)1.0MのNaCl+100mMのトリス、pH9.0の溶出液バッファー100μL中にスパイクした。
【表34】
【0120】
試験B-Tergitol(登録商標)の存在下のプラスミド溶出液における残留エンドトキシンの検出
規定量のTergitol(登録商標)を含有する実際のプラスミド試料を使用した試験Bからのエンドトキシン回収の結果を表R15に与える。データは、45ppmまでの低濃度のTergitol(登録商標)の存在下で、エンドトキシンの検出が干渉されないことを示す。
表R15.規定残留量のTergitol(登録商標)15-S-9を含む実際のプラスミド溶出液におけるエンドトキシンの回収
【表35】
【0121】
試験C-200ppmの中性洗浄剤を含むプラスミド溶出液スパイクにおけるエンドトキシンの検出
中性洗浄剤を含有する実際のプラスミド試料を使用した試験Cからのエンドトキシンの回収の結果を表R16に与える。ひどく損なわれたエンドトキシンの回収がTriton(登録商標)X100について見出された。
表R16.中性洗浄剤の規定残留量を含む実際のプラスミド溶出液におけるエンドトキシンの回収
【表36】
【国際調査報告】