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特表2024-528309タンタル酸塩粒子、及びタンタル酸塩粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】タンタル酸塩粒子、及びタンタル酸塩粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 35/00 20060101AFI20240719BHJP
   C01G 39/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C01G35/00 C
C01G39/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508319
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2022088141
(87)【国際公開番号】W WO2023201620
(87)【国際公開日】2023-10-26
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】袁 建軍
(72)【発明者】
【氏名】田淵 穣
(72)【発明者】
【氏名】矢木 直人
(72)【発明者】
【氏名】スン シャオ
(72)【発明者】
【氏名】フォン ユェンチュェン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ ジェン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC01
4G048AD04
4G048AE05
(57)【要約】
モリブデンを含み、KNa(1-x)Ta(ただし、x=0~1、y=1~10、z=3~20である。)で表されるタンタル酸塩粒子が開示される。また、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、前記タンタル酸塩粒子の製造方法も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンを含み、KNa(1-x)Ta(ただし、x=0~1、y=1~10、z=3~20である。)で表されるタンタル酸塩粒子。
【請求項2】
前記タンタル酸塩粒子が、
Na(1-x)TaO(ただし、x=0~1である。)粒子、
NaTa11粒子、及び
Ta11粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種の粒子を含む、請求項1に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項3】
前記タンタル酸塩粒子が、
キュービック状の形状を有する、KNa(1-x)TaO(ただし、x=0~1である。)粒子、
多面体状の形状を有する、NaTa11粒子、及び
多面体状の形状を有する、KTa11粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種の粒子を含む、請求項2に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項4】
前記タンタル酸塩粒子が、キュービック状の形状を有する前記KNa(1-x)TaO粒子を含み、前記KNa(1-x)TaO粒子の粒子サイズが0.1~100μmである、請求項2又は3に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項5】
前記タンタル酸塩粒子が、多面体状の形状を有する前記NaTa11粒子を含み、前記NaTa11粒子の粒子サイズが1~1000μmである、請求項2又は3に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項6】
前記タンタル酸塩粒子が、多面体状の形状を有する前記KTa11粒子を含み、前記KTa11粒子の粒子サイズが1~1000μmである、請求項2又は3に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項7】
前記タンタル酸塩粒子におけるモリブデン含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するMoO換算での含有率が0.01~20質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項8】
前記タンタル酸塩粒子におけるタンタル含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するTa換算での含有率が50~99質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項9】
前記タンタル酸塩粒子におけるカリウム及び/又はナトリウム含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するKO換算及びNaO換算での合計含有率が0.5~40質量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法であって、
モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項11】
前記モリブデン化合物が、三酸化モリブデン、モリブデン酸カリウム及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項10に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項12】
前記ナトリウム化合物が炭酸ナトリウム又はモリブデン酸ナトリウムであり、前記カリウム化合物が炭酸カリウム又はモリブデン酸カリウムである、請求項10又は11に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項13】
前記タンタル化合物を焼成する焼成温度が700~1500℃である、請求項10~12のいずれか一項に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項14】
前記タンタル化合物と、前記モリブデン化合物と、前記カリウム化合物及び/又は前記ナトリウム化合物と、を混合して混合物とする工程と、前記混合物を焼成する工程とを含み、
前記混合物中のモリブデン原子とタンタル原子とのモル比(モリブデン/タンタル)が0.01~5である、請求項10~13のいずれか一項に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタル酸塩粒子、及びタンタル酸塩粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル酸アルカリ金属塩は、圧電体、フィラー、触媒、半導体光電極などとして幅広く使用されている。
【0003】
特許文献1には、層状ペロブスカイト型構造を有し、特定の式で表されるタンタル酸塩結晶粒子の製造方法であって、原料およびフラックスを混合して加熱することによって結晶を析出および成長させることを特徴とするタンタル酸塩結晶粒子の製造方法が示されている。また。前記フラックスが、塩化カリウムまたは塩化ストロンチウムを含有することが例示されている。
【0004】
特許文献2には、二酸化炭素の光触媒還元に用いる応用例として、ベース触媒としてのタンタル酸ナトリウム(NaTaO)、改質剤、および少なくとも1つの共触媒を含む触媒組成物が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-190927号公報
【特許文献2】特表2016-524534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のタンタル酸塩粒子とその製造方法についての知見は限られており、未だ検討の余地がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、粒子形状が制御され、優れた特性を有するタンタル酸塩粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、モリブデン化合物をフラックスとして使用することで、製造されるタンタル酸塩粒子の結晶形状を容易に制御可能であること、モリブデンを含むタンタル酸塩粒子を製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
【0009】
(1)モリブデンを含み、KNa(1-x)Ta(ただし、x=0~1、y=1~10、z=3~20である。)で表されるタンタル酸塩粒子。
(2)前記タンタル酸塩粒子が、KNa(1-x)TaO(ただし、x=0~1である。)粒子、NaTa11粒子、及びKTa11粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種の粒子を含む、前記(1)に記載のタンタル酸塩粒子。
(3)前記タンタル酸塩粒子が、キュービック状の形状を有する、KNa(1-x)TaO(ただし、x=0~1である。)粒子、多面体状の形状を有する、NaTa11粒子、及び多面体状の形状を有する、KTa11粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種の粒子を含む、前記(2)に記載のタンタル酸塩粒子。
(4)前記タンタル酸塩粒子が、キュービック状の形状を有する前記KNa(1-x)TaO粒子を含み、前記KNa(1-x)TaO粒子の粒子サイズが0.1~100μmである、前記(2)又は(3)に記載のタンタル酸塩粒子。
(5)前記タンタル酸塩粒子が、多面体状の形状を有する前記NaTa11粒子を含み、前記NaTa11粒子の粒子サイズが1~1000μmである、前記(2)又は(3)に記載のタンタル酸塩粒子。
(6)前記タンタル酸塩粒子が、多面体状の形状を有する前記KTa11粒子を含み、前記KTa11粒子の粒子サイズが1~1000μmである、前記(2)又は(3)に記載のタンタル酸塩粒子。
(7)前記タンタル酸塩粒子におけるモリブデン含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するMoO換算での含有率が0.01~20質量%である、前記(1)~(6)のいずれか一つに記載のタンタル酸塩粒子。
(8)前記タンタル酸塩粒子におけるタンタル含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するTa換算での含有率が50~99質量%である、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載のタンタル酸塩粒子。
(9)前記タンタル酸塩粒子におけるカリウム及び/又はナトリウム含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するKO換算及びNaO換算での合計含有率が0.5~40質量%である、前記(1)~(8)のいずれか一つに記載のタンタル酸塩粒子。
(10)前記(1)~(9)のいずれか一つに記載のタンタル酸塩粒子の製造方法であって、
モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸塩粒子の製造方法。
(11) 前記モリブデン化合物が、三酸化モリブデン、モリブデン酸カリウム及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、前記(10)に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
(12) 前記ナトリウム化合物が炭酸ナトリウム又はモリブデン酸ナトリウムであり、前記カリウム化合物が炭酸カリウム又はモリブデン酸カリウムである、前記(10)又は(11)に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
(13) 前記タンタル化合物を焼成する焼成温度が700~1500℃である、前記(10)~(12)のいずれか一つに記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
(14) 前記タンタル化合物と、前記モリブデン化合物と、前記カリウム化合物及び/又は前記ナトリウム化合物と、を混合して混合物とする工程と、前記混合物を焼成する工程とを含み、
前記混合物中のモリブデン原子とタンタル原子とのモル比(モリブデン/タンタル)が0.01~5である、前記(10)~(13)のいずれか一つに記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モリブデンに由来する優れた特性を有し、粒子形状が制御された、タンタル酸塩粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図2】実施例2のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図3】実施例3のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図4】実施例4のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図5】実施例5のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図6】実施例6のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図7】比較例1の酸化タンタル粒子のSEM画像である。
図8】実施例1~3のタンタル酸塩粒子のX線回折(XRD)パターンである。
図9】実施例4~6のタンタル酸塩粒子のX線回折(XRD)パターンである。
図10】実施例7のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図11】実施例8のタンタル酸塩粒子のSEM画像である。
図12】実施例7~8のタンタル酸塩粒子のX線回折(XRD)パターンである。
図13】実施例9の粒子のSEM画像である。
図14】実施例10の粒子のSEM画像である。
図15】実施例11の粒子のSEM画像である。
図16】実施例9の粒子のX線回折(XRD)パターンである。
図17】実施例10~11の粒子のX線回折(XRD)パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のタンタル酸塩粒子、及びタンタル酸塩粒子の製造方法の実施形態を説明する。
【0013】
≪タンタル酸塩粒子≫
実施形態のタンタル酸塩粒子は、モリブデンを含み、KNa(1-x)Ta(ただし、x=0~1、y=1~10、z=3~20である。)で表されるタンタル酸塩粒子である。
【0014】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、KNa(1-x)Taで表されるタンタル酸塩化合物を含む。前記式KNa(1-x)Taにおいて、xは0≦x≦1である。xが0<x<1の場合には、KNa(1-x)Taはタンタル酸カリウムナトリウムであり、x=0の場合には、KNa(1-x)Taはタンタル酸ナトリウム(NaTa)であり、x=1の場合には、KNa(1-x)Taはタンタル酸カリウム(KTa)である。
【0015】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、モリブデンを含んでおり、モリブデンに由来する触媒活性等の優れた特性を有する。
実施形態のタンタル酸塩粒子は、後述する製造方法において使用されるモリブデン化合物に由来したモリブデンを含むことができる。また、実施形態のタンタル酸塩粒子は、後述する製造方法においてモリブデン化合物を使用することで、優れた粒子形状の制御が可能である。
【0016】
実施形態のタンタル酸塩粒子に含まれるモリブデンとしては、その存在状態や量は特に制限されず、モリブデン金属の他、酸化モリブデンや一部が還元されたモリブデン化合物等としてタンタル酸塩粒子に含まれてよい。モリブデンは、MoOとしてタンタル酸塩粒子に含まれると考えられるが、MoO以外にもMoOやMoO等としてタンタル酸塩粒子に含まれてもよい。
【0017】
モリブデンの含有形態は、特に制限されず、タンタル酸塩粒子の表面に付着する形態で含まれていても、タンタル酸塩粒子の結晶構造の一部に置換された形態で含まれていても、アモルファスの状態で含まれていてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0018】
本明細書において、タンタル酸塩粒子の粒子形状を制御することとは、製造されたタンタル酸塩粒子の粒子形状が無定形では無いことを意味する。本明細書において、粒子形状の制御されたタンタル酸塩粒子とは、粒子形状が無定形では無いタンタル酸塩粒子を意味する。
【0019】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、KNa(1-x)TaO(ただし、x=0~1である。)粒子、NaTa11粒子、及びKTa11粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種の粒子を含んでよい。
【0020】
実施形態のタンタル酸塩粒子に含有されるタンタル酸塩の種類や組成は、XRD分析において得られたスペクトルのXRDパターンにより特定できる。
【0021】
後述の実施形態の製造方法によれば、製造されるタンタル酸塩粒子の、各々の組成の結晶形状に応じた形状制御に優れている。実施形態のタンタル酸塩粒子は結晶形状が制御され、キュービック状、多面体状、柱状等の特有の自形を有することができる。これらの形状を有するタンタル酸塩粒子は、後述する製造方法により製造可能である。
【0022】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、キュービック状の形状を有する、KNa(1-x)TaO(ただし、x=0~1である。)粒子、多面体状の形状を有する、NaTa11粒子、及び多面体状の形状を有する、KTa11粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種の粒子を含むことができる。
【0023】
本明細書において、「キュービック状」とは、ペロブスカイト構造に由来する形状であってよく、好ましくは直方体又は立方体である六面体の形状を有し、六面体を構成する各面は、平面であってもよく、湾曲や凹凸のある面であってもよい。
本明細書において、「多面体状」とは、好ましくは6より多い数の面を有し、各面の形状は互いに異なっていてもよい。各面は、平面であってもよく、湾曲や凹凸のある面であってもよい。
本明細書において、「柱状」とは、角柱状、円柱状、棒状等を含む。柱状のタンタル酸塩粒子の柱状体の底面の形状は、特に制限されず、円形、楕円形、多角形等を例示できる。柱状とは、長さ方向に真っ直ぐに伸びるもの、傾斜状に伸びるもの、湾曲しながら伸びるもの、枝状に分岐して伸びる形状等も含み、短径/長径で表されるアスペクト比が2以上である。
【0024】
前記タンタル酸塩粒子が、キュービック状の形状を有する前記KNa(1-x)TaO粒子を含む場合、当該粒子の粒子サイズは、0.1~100μmであることが好ましく、0.5~50μmであることがより好ましく、1~40μmであることがさらに好ましい。
【0025】
本明細書において、キュービック状の形状を有するタンタル酸塩粒子の「粒子サイズ」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された二次元画像において、タンタル酸塩粒子の一次粒子の粒子像から判別される六面体の一辺の長さである。
当該キュービック状の形状を有するタンタル酸塩粒子サイズの値は、上記の測定対象の自形を有する粒子のなかから、無作為に選出した50個以上のタンタル酸塩粒子から得られた平均値とする。
【0026】
キュービック状の形状を有するタンタル酸塩粒子を含む場合、質量基準又は個数基準で50%以上の粒子がキュービック状の形状を有することが好ましく、80%以上の粒子がキュービック状の形状を有することがより好ましく、90%以上の粒子がキュービック状の形状を有することがさらに好ましい。
【0027】
タンタルに対するモリブデンの使用量を増やすほど、及び焼成温度が高温になるほど、粒子サイズの値が大きいKNa(1-x)TaO粒子が得られる傾向にある。
【0028】
前記タンタル酸塩粒子が、多面体状の形状を有する、NaTa11粒子又はKTa11粒子を含む場合、当該粒子の粒子サイズは、1~1000μmであることが好ましく、2~500μmであることがより好ましく、3~250μmであることがさらに好ましく、3~100μmであることが特に好ましい。
【0029】
本明細書において、多面体状の形状を有するNaTa11粒子及びKTa11粒子の「粒子サイズ」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された二次元画像において、タンタル酸塩粒子の粒子像の一次粒子における、外側輪郭線上の最大の2点間距離の長さである。
当該粒子サイズの値は、上記の測定対象の自形を有する粒子のなかから、無作為に選出した50個以上のタンタル酸塩粒子から得られた平均値とする。
【0030】
多面体状の形状を有するタンタル酸塩粒子を含む場合、質量基準又は個数基準で50%以上の粒子が多面体状の形状を有することが好ましく、80%以上の粒子が多面体状の形状を有することがより好ましく、90%以上の粒子が多面体状の形状を有することがさらに好ましい。
【0031】
タンタルに対するモリブデンの使用量を増やすほど、及び焼成温度が高温になるほど、粒子サイズの値が大きい、NaTa11粒子又はKTa11粒子が得られる傾向にある。
【0032】
一実施形態の粒子として、後述の実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法により得られ、モリブデンを含み、図16又は図17に示されるXRDスペクトル(実施例9、実施例10又は実施例11として示したもの。リファレンスのKTaO及びKTa11のXRDスペクトルは含まない。)のパターンを示す粒子が挙げられる。
当該XRDスペクトルは、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード2°/min、走査範囲10~90°の条件で測定され取得されたものとする。
【0033】
より具体的には、一実施形態の粒子として、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む製造方法により得られ、モリブデンを含み、図16又は図17に示されるXRDスペクトルのパターンを示す粒子が挙げられる。
【0034】
図16に示されるXRDスペクトルのパターンは、2θ=16.0±1.0°、22.0±1.0°、26.0±1.0°、32.0±1.0°、及び46.0±1.0°のピークを有するものとして特定してよい。
【0035】
図17に示されるXRDスペクトルのパターンは、2θ=16.0±1.0°、22.0±1.0°、、26.0±1.0°、28.5±1.0°、29.0±1.0°、32.0±1.0°、及び52.0±1.0°のピークを有するものとして特定してよい。
【0036】
別の側面として、一実施形態の粒子として、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む製造方法により得られ、モリブデンを含み、図16又は図17に示されるXRDスペクトルのパターンを示し、柱状の形状を有する粒子が挙げられる。
【0037】
図16又は図17に示されるXRDスペクトルのパターンを示す当該粒子が、柱状の形状を有する粒子を含む場合、当該粒子の長径が1~2000μmであり、短径が0.05~1000μmであり、前記長径/前記短径で表されるアスペクト比が2~100である粒子を例示できる。
【0038】
前記粒子が、柱状の形状を有する粒子を含む場合、当該粒子の長径は、1~2000μmであることが好ましく、5~1000μmであることがより好ましく、50~500μmであることがさらに好ましい。
【0039】
前記粒子が、柱状の形状を有する粒子を含む場合、当該粒子の短径は、0.05~1000μmであることが好ましく、0.1~500μmであることがより好ましく、10~250μmであることがさらに好ましい。
【0040】
柱状の形状を有する粒子は、長径/短径で表されるアスペクト比が2以上であることが好ましく、2~100であることが好ましく、3~100であることがより好ましく、5~50であることがさらに好ましい。
【0041】
本明細書において、粒子の「長径」は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された二次元画像において、粒子の一次粒子の粒子像を外接長方形で囲んだ長辺の長さ(外接長方形は、その面積が最小になるように設定する。)である。本明細書において、粒子の「短径」は、前記長径に対して垂直な向きに、前記粒子像の外周の最も離れた2点を結ぶ直線で示される長さである。
なお、粒子が柱状の形状の場合では、おおよそ、長径が繊維でいうところの繊維の長さ、短径が繊維の径に相当するものであって、撮像された粒子の並び方によっては、本来の粒子の長径及び短径と、二次元画像上で測定される値の解離が大きくなることがある。そのため、試料の粒子形状として、柱状が代表的な形状であると認められる場合には、長さ方向に平行な面を向けて撮像されている粒子を適宜選んで測定対象とする。
当該長径及び短径の値は、上記の測定対象の自形を有する粒子のなかから、無作為に選出した50個以上の粒子から得られた平均値とする。
【0042】
柱状の形状を有する粒子を含む場合、質量基準又は個数基準で50%以上の粒子が柱状の形状を有することが好ましく、80%以上の粒子が柱状の形状を有することがより好ましく、90%以上の粒子が柱状の形状を有することがさらに好ましい。
【0043】
タンタルに対するモリブデンの使用量を増やしすぎず、焼成温度が高温になるほど、長径及び短径の値が大きい粒子が得られる傾向にある。
【0044】
実施形態のタンタル酸塩粒子におけるモリブデン含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するMoO換算での含有率が0.01質量%以上であってもよく、0.01~20質量%であってもよく、0.05~15質量%であってもよく、0.1~10質量%であってもよい。
【0045】
MoO換算での含有率とは、XRF分析することによって求められるモリブデン含有量を、MoO換算の検量線を用いて換算したMoO量から求めた値を云う。
【0046】
実施形態のタンタル酸塩粒子におけるタンタル含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するTa換算での含有率が50質量%以上であってもよく、50~99質量%であってもよく、60~98質量%であってもよく、70~96質量%であってもよい。
【0047】
Ta換算での含有率とは、XRF分析することによって求められるタンタル含有量を、Ta換算の検量線を用いて換算したTa量から求めた値を云う。
【0048】
前記タンタル酸塩粒子におけるカリウム及び/又はナトリウム含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するKO換算及びNaO換算での合計含有率が0.5質量%以上であってもよく、0.5~40質量%であってもよく、1~30質量%であってもよく、2~20質量%であってもよい。
【0049】
O換算及びNaO換算での合計含有率とは、XRF分析することによって求められるカリウム含有量を、KO換算の検量線を用いて換算したKO量と、XRF分析することによって求められるナトリウム含有量を、NaO換算の検量線を用いて換算したNaO量と、の総和から求めた値とを云う。なお、タンタル酸塩粒子の組成が、KNa(1-x)TaOにおいてx=0又は1である場合には、カリウム含有量又はナトリウム含有量は0であってもよい。
【0050】
上記のモリブデン含有量、タンタル含有量、並びにカリウム及び/又はナトリウム含有量の値は、自由に組み合わせることができる。
実施形態のタンタル酸塩粒子の一例として、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対する、モリブデンのMoO換算での含有率が0.01~20質量%であり、タンタルのTa換算での含有率が50~99質量%であり、カリウム及び/又はナトリウムのKO換算及び/又はNaO換算での含有率が0.5~40質量%であるタンタル酸塩粒子を例示できる。
実施形態のタンタル酸塩粒子の別の一例として、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対する、モリブデンのMoO換算での含有率が0.05~15質量%であり、タンタルのTa換算での含有率が60~98質量%であり、カリウム及び/又はナトリウムのKO換算及び/又はNaO換算での含有率が1~30質量%であるタンタル酸塩粒子を例示できる。
実施形態のタンタル酸塩粒子の別の一例として、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対する、モリブデンのMoO換算での含有率が0.1~10質量%であり、タンタルのTa換算での含有率が70~96質量%であり、カリウム及び/又はナトリウムのKO換算及び/又はNaO換算での含有率が2~20質量%であるタンタル酸塩粒子を例示できる。
【0051】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、タンタル酸塩粒子の集合体として提供可能であり、上記のモリブデン含有量、タンタル含有量、カリウム含有量、及びナトリウム含有量の値は、前記集合体を試料として求められた値を採用することができる。
【0052】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、前記KNa(1-x)Taで表されるタンタル酸塩を、タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対し、50質量%以上含有するものであってもよく、60~99.5質量%含有するものであってもよく、65~99質量%含有するものであってもよく、70~95質量%含有するものであってもよい。
【0053】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、例えば、後述の≪タンタル酸塩粒子の製造方法≫により製造することができる。
なお、本発明のタンタル酸塩粒子は、下記実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法で製造されたものに限定されるものではない。
【0054】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、タンタル酸塩とモリブデンの両者の特性を兼ね備えることのできる、非常に有用なものである。
【0055】
実施形態のタンタル酸塩粒子は、圧電体、触媒、半導体光電極などとして利用可能である。
【0056】
≪タンタル酸塩粒子の製造方法≫
実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法は、タンタル酸塩粒子の製造方法であって、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む。
【0057】
本実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法によれば、モリブデンを含む、上記の本発明の一実施形態にかかるタンタル酸塩粒子を製造可能である。
【0058】
また、本実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法によれば、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することにより、製造されるタンタル酸塩粒子の結晶形状を容易に制御可能である。
【0059】
タンタル酸塩粒子の好ましい製造方法は、タンタル化合物と、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物と、を混合して混合物とする工程(混合工程)と、前記混合物を焼成する工程(焼成工程)と、を含む。
【0060】
ここで、少なくとも一部のモリブデン化合物及びカリウム化合物に代えて、モリブデン酸カリウムのような、モリブデンとカリウムとを含有する化合物を使用することもできる。同様に、少なくとも一部のモリブデン化合物及びナトリウム化合物に代えて、モリブデン酸ナトリウムのような、モリブデンとナトリウムとを含有する化合物を使用することもできる。
そのため、タンタル化合物と、モリブデンとカリウム及び/又はナトリウムとを含む化合物と、を混合して混合物とする工程も、タンタル化合物と、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物と、を混合して混合物とする工程とみなす。
【0061】
製造されるタンタル酸塩粒子がタンタル酸カリウムを含む場合、実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法は、焼成工程に先立ち、タンタル化合物と、モリブデン化合物と、カリウム化合物と、を混合して混合物とする工程(混合工程)を含むことができ、前記混合物を焼成する工程(焼成工程)を含むことができる。
【0062】
製造されるタンタル酸塩粒子がタンタル酸ナトリウムを含む場合、実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法は、焼成工程に先立ち、タンタル化合物と、モリブデン化合物と、ナトリウム化合物と、を混合して混合物とする工程(混合工程)を含むことができ、前記混合物を焼成する工程(焼成工程)を含むことができる。
【0063】
[混合工程]
混合工程は、タンタル化合物と、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物と、を混合して混合物とする工程である。以下、混合物の内容について説明する。
【0064】
(タンタル化合物)
前記タンタル化合物としては、原料化合物とともに焼成してタンタル酸塩となり得る化合物であれば限定されず、酸化タンタルや、水酸化タンタル、硫化タンタル、窒化タンタル、フッ化タンタル、塩化タンタル、臭化タンタル、ヨウ化タンタル等のハロゲン化タンタル、タンタルアルコキシド等を例示でき、水酸化タンタル及び酸化タンタルが好ましく、酸化タンタルがより好ましい。
酸化タンタルとしては、五酸化タンタル(Ta)、二酸化タンタル(TaO)、一酸化タンタル(TaO)が挙げられる。また上記の酸化数の酸化タンタル以外にも、価数の異なる任意のタンタル酸化物を用いることができる。
これら前駆体としてのタンタル化合物の形状、粒子径、比表面積等の物理形態については、特に限定されるものではない。
【0065】
焼成後の形状は、原料のタンタル化合物の形状が殆ど反映されていないため、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤー、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどのいずれであっても好適に用いることができる。
【0066】
(モリブデン化合物)
前記モリブデン化合物としては、酸化モリブデン、モリブデン酸、硫化モリブデン、モリブデン酸塩化合物等が挙げられ、酸化モリブデン又はモリブデン酸塩化合物が好ましい。
【0067】
前記酸化モリブデンとしては、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)等が挙げられ、三酸化モリブデンが好ましい。
【0068】
前記モリブデン酸塩化合物としては、モリブデンオキソアニオンのアルカリ金属塩が好ましく、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム又はモリブデン酸ナトリウムであることがより好ましく、モリブデン酸カリウム又はモリブデン酸ナトリウムであることがさらに好ましい。
【0069】
本実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法において、前記モリブデン化合物は、水和物であってもよい。
【0070】
モリブデン化合物は、三酸化モリブデン、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム、及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であること好ましく、三酸化モリブデン、モリブデン酸カリウム及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であることがより好ましい。
【0071】
フラックス剤として好適な、モリブデンとカリウムとを含有する化合物は、例えば、より安価かつ入手が容易な、モリブデン化合物及びカリウム化合物を原料として焼成の過程で生じさせることができる。ここでは、モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いる場合、モリブデンとカリウムとを含有する化合物をフラックス剤として用いる場合、の両者を合わせて、モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いる場合、即ち、モリブデン化合物及びカリウム化合物の存在下とみなす。
【0072】
フラックス剤として好適な、モリブデンとナトリウムとを含有する化合物は、例えば、より安価かつ入手が容易な、モリブデン化合物及びナトリウム化合物を原料として焼成の過程で生じさせることができる。ここでは、モリブデン化合物及びナトリウム化合物をフラックス剤として用いる場合、モリブデンとナトリウムとを含有する化合物をフラックス剤として用いる場合、の両者を合わせて、モリブデン化合物及びナトリウム化合物をフラックス剤として用いる場合、即ち、モリブデン化合物及びナトリウム化合物の存在下とみなす。
【0073】
なお、上述のモリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
また、モリブデン酸カリウム(KMo3n+1、n=1~3)は、カリウムを含むため、後述するカリウム化合物としての機能も有しうる。
【0075】
また、モリブデン酸ナトリウム(NaMo3n+1、n=1~3)は、ナトリウムを含むため、後述するナトリウム化合物としての機能も有しうる。
【0076】
(カリウム化合物)
カリウム化合物としては、特に制限されないが、塩化カリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、酸化カリウム、臭化カリウム、臭素酸カリウム、水酸化カリウム、珪酸カリウム、燐酸カリウム、燐酸水素カリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸カリウム等が挙げられる。この際、前記カリウム化合物は、モリブデン化合物の場合と同様に、異性体を含む。これらのうち、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化カリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、モリブデン酸カリウムを用いることが好ましく、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、モリブデン酸カリウムを用いることがより好ましい。
【0077】
なお、上述のカリウム化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
また、上記と同様に、モリブデン酸カリウムは、モリブデンを含むため、上述のモリブデン化合物としての機能も有しうる。
【0079】
(ナトリウム化合物)
ナトリウム化合物としては、特に制限されないが、炭酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、金属ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、工業的に容易入手と取扱いし易さの観点から炭酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0080】
なお、上述のナトリウム化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
また、上記と同様に、モリブデン酸ナトリウムは、モリブデンを含むため、上述のモリブデン化合物としての機能も有しうる。
【0082】
このように、分類上モリブデン化合物としての重複する表記となる場合があるが、前記モリブデン化合物が、三酸化モリブデン、モリブデン酸カリウム及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であり、
前記ナトリウム化合物が炭酸ナトリウム又はモリブデン酸ナトリウムであり、前記カリウム化合物が炭酸カリウム又はモリブデン酸カリウムであることが好ましい。
【0083】
好ましくは、モリブデン化合物と、ナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸ナトリウム粒子の製造方法を例示できる。
【0084】
好ましくは、モリブデン化合物と、カリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸カリウム粒子の製造方法を例示できる。
【0085】
好ましくは、モリブデン化合物と、ナトリウム化合物と、カリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸カリウムナトリウム粒子の製造方法を例示できる。
【0086】
好ましくは、モリブデンとカリウムとを含む化合物の存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸カリウム粒子の製造方法を例示できる。
【0087】
好ましくは、モリブデンとナトリウムとを含む化合物の存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸ナトリウム粒子の製造方法を例示できる。
【0088】
好ましくは、モリブデンとカリウム及びナトリウムとを含む化合物の存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸カリウムナトリウム粒子の製造方法を例示できる。
【0089】
本実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法において、モリブデン化合物はフラックス剤として用いられる。本明細書中では、以下、フラックス剤としてモリブデン化合物を用いたこの製造方法を単に「フラックス法」ということがある。なお、かかる焼成により、タンタル化合物と、モリブデン化合物と、ナトリウム化合物又はカリウム化合物と(タンタル化合物と、モリブデンとナトリウムとを含有する化合物と、或いはタンタル化合物と、モリブデンとカリウムとを含有する化合物と、の場合も包含される)、が高温で反応し、フラックスとして機能するモリブデン酸塩化合物(例えば、KaMoやNaMo、KaNaa’Mo)の形成とともにタンタル酸塩粒子(KNa(1-x)Ta)が形成されるものと考えられる。タンタル酸塩粒子が形成(結晶成長)される際に、一部のモリブデン化合物がタンタル酸塩粒子内に取り込まれるものと考えられる。タンタル酸塩粒子に含まれるモリブデン化合物の生成機構について、より詳しくは、焼成時に系の中にMo-O-Taの形成および分解、またはフラックス剤であるモリブデン酸塩化合物を介して、タンタル酸塩粒子の結晶成長の過程でモリブデン化合物、例えばモリブデン酸化物が形成されるものと考えられる。さらに、上記のメカニズムを考慮し、モリブデン酸化物がMo-O-Taの結合を介して、タンタル酸塩粒子の表面に存在することも考えられる。タンタル酸塩粒子にモリブデン化合物(例えばモリブデン酸化物)が含まれることで、タンタル酸塩粒子の物性向上につながり、例えばタンタル酸塩粒子の触媒性能を向上できる。
【0090】
上記フラックスとしてのモリブデン酸塩化合物は、焼成温度域でも気化することなく、焼成後に洗浄で、容易に回収できるため、モリブデン化合物が焼成炉外へ放出される量も低減され、生産コストとしても大幅に低減することができる。
【0091】
本実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法において、フラックス剤として機能すると考えられる、原料のモリブデン化合物、カリウム化合物、及びナトリウム化合物(以下、フラックス剤ともいう。)の総使用量、及びタンタル化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、原料の前記タンタル化合物100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20~5000質量部、さらに好ましくは30~1000質量部のフラックス剤を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができ、粒子サイズが500μm以下の粒子が得られ易いことから、特に好ましくは40~400質量部のフラックス剤を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができる。
【0092】
効率的な結晶成長の観点からは、原料の前記タンタル化合物に対するフラックス剤の使用量が上記下限値以上であることが好ましい。原料の前記タンタル化合物に対するフラックス剤の使用量を増やすことで、製造されるタンタル酸塩粒子のサイズの制御が容易となる傾向にあるが、使用するフラックス剤の削減と製造効率向上の観点からは、上記上限値以下が好ましい。
【0093】
実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法において、前記混合物中のモリブデン原子とタンタル原子とのモル比が、モリブデン/タンタル=0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましく、0.1以上であることが特に好ましい。
上記の前記混合物中のモリブデン原子とタンタル原子とのモル比の上限値は、適宜定めればよいが、使用するモリブデン化合物の削減と製造効率向上の観点から、例えば、モリブデン/タンタル=5以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよく、1.5以下であってもよい。
上記の前記混合物中のモリブデン原子とタンタル原子とのモル比の数値範囲の一例としては、例えば、モリブデン/タンタル=0.01~5が好ましく、0.03~3がより好ましく、0.05~2がさらに好ましく、0.1~1.5が特に好ましい。
【0094】
上記モリブデン原子とタンタル原子とのモル比が、上記範囲内であると、キュービック状、多面体状、柱状の特有の自形を有するタンタル酸塩粒子が容易に得られるため、好ましい。
【0095】
実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法において、前記混合物中のカリウム原子及び又はナトリウム原子とモリブデン原子とのモル比が、(K+Na)/Mo=1~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。特に、(K+Na)/Mo=2~4であると、製造されるタンタル酸塩粒子においてKNa(1-x)Taの単一組成を容易に形成できる。
【0096】
実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法では、原料のK/Naの配合比率に応じて、製造されるタンタル酸塩粒子のK/Naの比率を変えることができる。前記混合物中のカリウム原子及び又はナトリウム原子とモリブデン原子とのモル比は、製造されるタンタル酸塩粒子においてKNa(1-x)Taの、所望のX及び1-Xの値に応じて適宜してよい。前記Xが0<X<1である場合の、前記混合物中のカリウム原子とナトリウム原子とのモル比は、一例として、K/Na=0.01~10であってよく、0.1~5であってよい。
【0097】
上記の範囲で各種化合物を使用することで、得られるタンタル酸塩粒子が含むモリブデン化合物の量がより適当なものとなるとともに、結晶形状の制御されたタンタル酸塩粒子が容易に得られる。
【0098】
[焼成工程]
焼成工程は、前記混合物を焼成する工程である。実施形態に係るタンタル酸塩粒子は、前記混合物を焼成することで得られる。上記の通り、この製造方法はフラックス法と呼ばれる。
【0099】
フラックス法は、溶液法に分類される。フラックス法とは、より詳細には、結晶-フラックス2成分系状態図が共晶型を示すことを利用した結晶成長の方法である。フラックス法のメカニズムとしては、以下の通りであると推測される。すなわち、溶質及びフラックスの混合物を加熱していくと、溶質及びフラックスは液相となる。この際、フラックスは融剤であるため、換言すれば、溶質-フラックス2成分系状態図が共晶型を示すため、溶質は、その融点よりも低い温度で溶融し、液相を構成することとなる。この状態で、フラックスを蒸発させると、フラックスの濃度は低下し、換言すれば、フラックスによる前記溶質の融点低下効果が低減し、フラックスの蒸発が駆動力となって溶質の結晶成長が起こる(フラックス蒸発法)。なお、溶質及びフラックスは液相を冷却することによっても溶質の結晶成長を起こすことができる(徐冷法)。
【0100】
フラックス法は、融点よりもはるかに低い温度で結晶成長をさせることができる、結晶構造を精密に制御できる、自形をもつ結晶体を形成できる等のメリットを有する。
【0101】
フラックスとしてモリブデン化合物を用いたフラックス法によるタンタル酸塩粒子の製造では、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、例えば、以下のようなメカニズムによるものと推測される。すなわち、モリブデン化合物の存在下でタンタル化合物を焼成すると、一部のタンタル化合物からモリブデン酸タンタルが形成され、モリブデン化合物からはモリブデン酸塩(例えば、KaMoやNaMo、KaNaa’Mo)が形成される。この際、上述の説明からも理解されるように、モリブデン酸塩のフラックス機能により、タンタル酸塩の融点よりも低温でタンタル酸塩結晶を成長させることができる。また、例えば、一部形成されたモリブデン酸タンタルが分解し、タンタル酸塩粒子の結晶成長を促進する。すなわち、モリブデン化合物(モリブデン酸塩)がフラックスとして機能し、モリブデン酸タンタルという中間体を経由してタンタル酸塩粒子が製造されるのである。
【0102】
焼成の方法は、特に限定はなく、公知慣用の方法で行うことができる。焼成温度が500℃を超えると、一部のタンタル化合物がモリブデン化合物と反応しモリブデン酸タンタルが形成され、モリブデン化合物からはモリブデン酸塩(KaMoやNaMo、KaNaa’Mo)が形成されると考えられる。さらに、焼成温度が800℃以上になると、一部形成されたモリブデン酸タンタルが分解し、モリブデン酸塩のフラックス機能によりタンタル酸塩粒子が形成されると考えられる。また、タンタル酸塩粒子では、モリブデン酸タンタルの分解や粒子結晶成長の過程で、モリブデン化合物がタンタル酸塩粒子内に取り込まれるものと考えられる。
【0103】
また、焼成する際に使用され得る、タンタル化合物、モリブデン化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物等の状態は特に限定されず、モリブデン化合物、タンタル化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物等の原料化合物が互いに作用できる同一の空間に存在すれば良い。具体的には、原料化合物の粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合であっても良く、乾式状態、湿式状態での混合であっても良い。
【0104】
焼成温度の条件に特に限定は無く、目的とするタンタル酸塩粒子の粒子サイズ、タンタル酸塩粒子におけるモリブデン化合物の形成、タンタル酸塩粒子の形状等を考慮して、適宜、決定される。焼成温度は、モリブデン酸塩がフラックスとして機能できる温度に近い700℃以上であってもよく、750℃以上であってもよく、800℃以上であってもよく、850℃以上であってもよく、900℃以上であってもよい。
キュービック状、多面体状、柱状等の特有の自形を有するタンタル酸塩粒子を効率よく製造するとの観点からは、上記焼成温度は、800℃以上が好ましく、900℃以上がより好ましく、1000℃以上がさらに好ましい。
【0105】
後述の実施例で得られている結果によれば、上記焼成温度が1100℃以上であると、KTa11粒子、又はNaTa11粒子が得られ易い。
【0106】
一般的に、焼成後に得られるタンタル酸塩の形状を制御しようとすると、酸化タンタルの融点に近い1500℃超の高温焼成を行う必要があるが、焼成炉へ負担や燃料コストの点から、産業上利用する為には大きな課題がある。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、例えば、タンタル化合物を焼成する最高焼成温度が1500℃以下の条件であっても、タンタル酸塩粒子の形成を低コストで効率的に行うことができる。
また、実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法によれば、焼成温度が1300℃以下という酸化タンタルの融点よりもはるかに低い温度であっても、前駆体の形状にかかわりなく、自形をもつタンタル酸塩粒子を形成することができる。また、タンタル酸塩粒子を効率よく製造するとの観点からは、上記焼成温度は、1200℃以下であってよく、1100℃以下であってよい。
【0108】
焼成工程における、タンタル化合物を焼成する焼成温度の数値範囲は、一例として、700~1500℃であってもよく、750~1400℃であってもよく、800~1300℃であってもよく、850~1200℃であってもよく、900~1100℃であってもよい。
【0109】
別の側面として、タンタル化合物を焼成する焼成温度の数値範囲は、一例として、700~1500℃であってもよく、750~1400℃であってもよく、800~1300℃であってもよく、850~1300℃であってもよく、900~1300℃であってもよく、1000~1300℃であってもよい。
【0110】
昇温速度は、製造効率の観点から、20~600℃/hであってもよく、40~500℃/hであってもよく、100~400℃/hであってもよく、200~400℃/hであってもよい。
実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法によれば、モリブデン化合物をフラックスとして使用することで、100℃/h以上の速い焼成速度であっても、結晶形状の制御されたタンタル酸塩粒子を容易に製造可能である。
【0111】
焼成の時間については、所定の焼成温度への昇温時間を15分~10時間の範囲で行い、且つ焼成温度における保持時間を5分~30時間の範囲で行うことが好ましい。タンタル酸塩粒子の形成を効率的に行うには、2時間以上の焼成温度保持時間であることが好ましく、2~15時間の焼成温度保持時間であることがより好ましい。
焼成温度が700~1500℃、且つ2~15時間の焼成温度保持時間の条件を選択することで、モリブデンを含み、自形をもつタンタル酸塩粒子が、容易に得られる。
焼成温度が900~1500℃、且つ2~15時間の焼成温度保持時間の条件を選択することで、モリブデンを含み、キュービック状、多面体状、又は柱状の特有の自形を有するタンタル酸塩粒子が、容易に得られる。
【0112】
焼成の雰囲気としては、本発明の効果が得られるのであれば特に限定されないが、例えば、空気や酸素といった含酸素雰囲気や、窒素やアルゴン、又は二酸化炭素といった不活性雰囲気が好ましく、コストの面を考慮した場合は空気雰囲気がより好ましい。
【0113】
焼成するための装置としても必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉は昇華した酸化モリブデンと反応しない材質で構成されていることが好ましく、さらに酸化モリブデンを効率的に利用するように、密閉性の高い焼成炉を用いることが好ましい。
【0114】
[冷却工程]
タンタル酸塩粒子の製造方法は、冷却工程を含んでいてもよい。当該冷却工程は、焼成工程において結晶成長したタンタル酸塩粒子を冷却する工程である。
【0115】
冷却速度は、特に制限されないが、1~1000℃/時間であることが好ましく、5~500℃/時間であることがより好ましく、100~400℃/時間であることがさらに好ましく、200~400℃/時間であることが特に好ましい。冷却速度が1℃/時間以上であると、製造時間が短縮されうることから好ましい。一方、冷却速度が1000℃/時間以下であると、焼成容器がヒートショックで割れることが少なく、長く使用できることから好ましい。
実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法によれば、モリブデン化合物をフラックスとして使用することで、200℃/時間以上の速い冷却速度であっても、結晶形状の制御されたタンタル酸塩粒子を容易に製造可能である。
【0116】
冷却方法は特に制限されず、自然放冷であっても、冷却装置を使用してもよい。
【0117】
[後処理工程]
本実施形態の製造方法は、後処理工程を含んでいてもよい。当該後処理工程は、焼成物に含まれるタンタル酸塩粒子とフラックス剤とを分離する工程であってよく、焼成容器から焼成物を取り出して行うことができる。後処理工程は、上述の焼成工程の後に行うことができる。また、必要に応じて、2度以上繰り返し行ってもよい。
【0118】
フラックス剤を除去する方法としては、洗浄、高温処理等が挙げられる。これらは組み合わせて行うことができる。
【0119】
前記洗浄方法としては、特に制限されないが、上記のモリブデン酸塩化合物のようにフラックスが水溶性である場合には、水洗等が挙げられる。
【0120】
また、高温処理の方法としては、フラックスの昇華点または沸点以上に昇温する方法が挙げられる。
【0121】
[粉砕工程]
焼成工程を経て得られる焼成物は、タンタル酸塩粒子が凝集して、検討される用途における好適な粒子径の範囲を満たさない場合がある。そのため、タンタル酸塩粒子は、必要に応じて、好適な粒子径の範囲を満たすように粉砕してもよい。
焼成物の粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ジョークラッシャー、ジェットミル、ディスクミル、スペクトロミル、グラインダー、ミキサーミル等の従来公知の粉砕方法を適用できる。
【0122】
[分級工程]
焼成工程により得られたタンタル酸塩粒子を含む焼成物は、粒子サイズの範囲の調整のために、適宜、分級処理されてもよい。「分級処理」とは、粒子の大きさによって粒子をグループ分けする操作をいう。
分級は湿式、乾式のいずれでも良いが、生産性の観点からは、乾式の分級が好ましい。
乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、分級精度の観点からは、風力分級が好ましく、コアンダ効果を利用した気流分級機、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うことができる。
上記した粉砕工程や分級工程は、必要な段階において行うことができる。これら粉砕や分級の有無やそれらの条件選定により、例えば、得られるタンタル酸塩粒子の平均粒径を調整することができる。
【0123】
実施形態のタンタル酸塩粒子、或いは実施形態の製造方法で得られるタンタル酸塩粒子は、凝集が少ないもの或いは凝集していないものが、本来の性質を発揮しやすく、それ自体の取扱性により優れており、また被分散媒体に分散させて用いる場合において、より分散性に優れる観点から、好ましい。
【0124】
なお、上記の実施形態のタンタル酸塩粒子の製造方法によれば、凝集が少ない又は凝集のないタンタル酸塩粒子を容易に製造可能であるので、上記の粉砕工程や分級工程は行わなくとも、目的の優れた性質を有するタンタル酸塩粒子を、生産性高く製造することができるという優れた利点を有する。
【実施例
【0125】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0126】
<分析・評価>
各実施例および比較例の粉末を試料として、以下の測定を行った。
【0127】
[粒子サイズの測定]
(キュービック状の形状を有する粒子の場合)
試料粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した。二次元画像上に認められる最小単位の粒子(すなわち、一次粒子)について、キュービック状の形状を有すると認められる場合、その一次粒子の粒子像から判別される六面体の一辺の長さを、粒子サイズとして計測した。
同様の操作を50個の一次粒子に対して行い、各平均値を求めた。
【0128】
(柱状の形状を有する粒子の場合)
試料粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した。二次元画像上に認められる最小単位の粒子(すなわち、一次粒子)について、柱状の形状を有すると認められる場合、その長径及び短径を計測した。長径は、粒子像を外接長方形で囲んだ長辺の長さ(外接長方形は、その面積が最小になるように設定する。)とした。短径は、前記長径に対して垂直な向きに、前記粒子像の外周の最も離れた2点を結ぶ直線で示される長さとした。
なお、試料の粒子形状が、柱状のものが代表的な形状であると認められる場合には、長さ方向に平行な面を向けて撮像されているものを適宜選んで計測対象とした。
同様の操作を50個の一次粒子に対して行い、各平均値を求めた。
また、短径に対する長径の比(長径/短径)を一次粒子のアスペクト比とした。
【0129】
(多面体状の形状を有する粒子の場合)
試料粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した。二次元画像上に認められる最小単位の粒子(すなわち、一次粒子)について、多面体状の形状を有すると認められる場合、その一次粒子の粒子像から判別される外側輪郭線上の最大の2点間距離の長さを、粒子サイズとして計測した。
同様の操作を50個の一次粒子に対して行い、各平均値を求めた。
【0130】
[結晶構造解析:XRD(X線回折)法]
試料粉末を、0.5mm深さの測定試料用ホルダーに充填し、それを広角X線回折(XRD)装置(株式会社リガク製 UltimaIV)にセットし、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード2°/min、走査範囲10~70°又は走査範囲10~90°の条件で測定を行った。
【0131】
[XRF(蛍光X線)分析]
蛍光X線分析装置PrimusIV(株式会社リガク製)を用い、試料粉末約70mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて次の条件でXRF(蛍光X線)分析を行った。
測定条件
EZスキャンモード
測定元素:F~U
測定時間:標準
測定径:10mm
残分(バランス成分):なし
【0132】
前記試料粉末のXRF分析を行い、試料粉末におけるモリブデン含有量を求め、前記試料粉末の総質量100質量%に対するMoO換算での含有率(質量%)として算出した。
前記試料粉末のXRF分析を行い、試料粉末におけるタンタル含有量を求め、前記試料粉末の総質量100質量%に対するTa換算での含有率(質量%)として算出した。
前記試料粉末のXRF分析を行い、試料粉末におけるカリウム含有量を求め、前記試料粉末の総質量100質量%に対するKO換算での含有率(質量%)として算出した。
前記試料粉末のXRF分析を行い、試料粉末におけるナトリウム含有量を求め、前記試料粉末の総質量100質量%に対するNaO換算での含有率(質量%)として算出した。
【0133】
<1.キュービック状のタンタル酸塩粒子の製造>
[実施例1]
酸化タンタル(関東化学株式会社製試薬、Ta)10.0g、及びモリブデン酸ナトリウム二水和物(関東化学株式会社製試薬、NaMoO・2HO)10.0g、を乳鉢で混合し、混合物を得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて、昇温速度300℃/hにて1500℃に昇温後、1500℃で24時間焼成を行なった。次いで、冷却速度300℃/hにて500℃まで降温し、その後室温まで放冷後、坩堝をセラミック電気炉から取り出した。
続いて、得られた焼成物を水で5回洗浄した後ろ過により洗浄排液を除く水洗浄と、乾燥とを行うことで、残存するフラックス剤を除去し、実施例1の粉末9.4gを得た。
【0134】
上記の合成条件を表1に示す。
【0135】
[実施例2]
実施例1において、原料化合物の使用量及び焼成条件を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、実施例2の粉末を得た。
【0136】
[実施例3]
実施例1において、酸化タンタルの使用量を表1に記載のとおり変更し、モリブデン酸ナトリウムに代えて、酸化モリブデン(日本無機化学工業、MoO)3.87g、及び炭酸ナトリウム(関東化学株式会社製試薬、NaCO)5.7gを使用し、焼成条件を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、実施例3の粉末を得た。
【0137】
[実施例4]
原料化合物として、酸化タンタル10.0g、酸化モリブデン6.8g、炭酸ナトリウム5.0g、及び炭酸カリウム(関東化学株式会社製試薬、KCO)6.53gを使用し、焼成条件を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、実施例4の粉末を得た。
【0138】
[実施例5~6]
実施例4において、原料化合物の使用量及び焼成条件を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例4と同様の操作により、各実施例5~6の粉末を得た。
【0139】
[比較例1]
実施例1において、原料化合物の使用量及び焼成条件を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、比較例1の粉末を得た。
【0140】
<結果>
上記の実施例1~6および比較例1で得られた粉末のSEMの画像を図1~7に示す。
【0141】
上記の各評価の結果を表1に示す。「-」は該当の化合物を使用していないことを表す。「N.D.」はnot detectedの略であり、不検出であることを表す。
【0142】
【表1】
【0143】
表1に、SEMの画像から判別される、各実施例及び比較例の粒子の形状及びサイズを記す。異なる形状の粒子が混在していると認められる場合には、代表的な形状(最も多く観察される形状)を記した。特定の形状が観察されない場合には、無定形と判定した。
【0144】
XRD分析の結果を図8~9に示す。各実施例1~6の試料において、NaTaOおよびKNa(1-x)TaOのペロブスカイト結晶構造に由来する2θ=22.5±1.0°、32.5±1.0°、及び46.5±1.0°のピークが認められた。
【0145】
上記のSEM観察およびXRD解析の結果から、実施例で得られた粉末は、KNa(1-X)TaOを含む、キュービック状のペロブスカイト結晶構造を有するタンタル酸塩粒子であることが確認された。
【0146】
また、実施例1~6のタンタル酸塩粒子では、XRF分析により求められた、表1に示す酸化物換算量で、タンタル、カリウム、ナトリウム、モリブデンを含有することが示された。
【0147】
実施例1~6の結果から、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下でタンタル化合物を焼成することにより、900~1500℃という比較的低い焼成温度であっても、モリブデンを含むタンタル酸塩粒子を焼成可能であることが示された。
【0148】
また、モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下でタンタル化合物を焼成することにより、製造されるタンタル酸塩粒子の形状を容易に制御可能であることが示された。
【0149】
<2.多面体状のタンタル酸塩粒子の製造>
[実施例7~8]
実施例1において、原料化合物の使用量及び焼成条件を表2に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、各実施例7~8の粉末を得た。
【0150】
<結果>
上記の実施例7~8で得られた粉末のSEMの画像を図10~11に示す。
【0151】
上記の各評価の結果を表2に示す。「-」は該当の化合物を使用していないことを表す。「N.D.」はnot detectedの略であり、不検出であることを表す。
【0152】
【表2】
【0153】
表2に、SEMの画像から判別される、各実施例の粒子の形状及びサイズを記す。異なる形状の粒子が混在していると認められる場合には、代表的な形状(最も多く観察される形状)を記した。
【0154】
XRD分析の結果を図12に示す。実施例7~8の各試料において、NaTa11又はKTa11に由来する各ピークが認められた。
【0155】
上記のSEM観察およびXRD解析の結果から、実施例7で得られた粉末は、NaTa11を含む多面体状のタンタル酸ナトリウム粒子であることが確認された。実施例8で得られた粉末は、KTa11を含む多面体状のタンタル酸カリウム粒子であることが確認された。
【0156】
また、実施例7~8のタンタル酸塩粒子では、XRF分析により求められた、表2に示す酸化物換算量で、タンタル、カリウム、ナトリウム、モリブデンを含有することが示された。
【0157】
実施例7~8の結果から、モリブデン化合物と、カリウム化合物又はナトリウム化合物との存在下でタンタル化合物を焼成することにより、1100~1300℃という比較的低い焼成温度であっても、モリブデンを含むタンタル酸塩粒子を焼成可能であることが示された。
【0158】
また、モリブデン化合物と、ナトリウム化合物又はカリウム化合物との存在下でタンタル化合物を焼成することにより、製造されるタンタル酸塩粒子の形状を容易に制御可能であることが示された。
【0159】
<3.柱状の粒子の製造>
[実施例9~11]
実施例1において、原料化合物の使用量及び焼成条件を表3に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、各実施例9~11の粉末を得た。
【0160】
<結果>
上記の実施例9~11で得られた粉末のSEMの画像を図13~15に示す。
【0161】
上記の各評価の結果を表3に示す。「-」は該当の化合物を使用していないことを表す。「N.D.」はnot detectedの略であり、不検出であることを表す。
【0162】
【表3】
【0163】
表3に、SEMの画像から判別される、実施例9~11の粒子の形状及びサイズを記す。異なる形状の粒子が混在していると認められる場合には、代表的な形状(最も多く観察される形状)を記した。
【0164】
XRD分析の結果を図16~17に示す。XRD分析の結果からは、実施例9~11の各試料の組成を特定することが困難であったが、実施例9の粒子は図16に示す各ピークを示し、2θ=16.0±1.0°、22.0±1.0°、26.0±1.0°、32.0±1.0°、及び46.0±1.0°のピークが認められた。実施例10~11の粒子は図17に示す各ピークを示し、2θ=16.0±1.0°、22.0±1.0°、26.0±1.0°、28.5±1.0°、29.0±1.0°、32.0±1.0°、及び52.0±1.0°のピークが認められた。
【0165】
上記のSEM観察およびXRD解析の結果から、実施例9~11で得られた粉末は、柱状のタンタル酸塩粒子であると推定される。
【0166】
また、実施例9~11の粒子では、XRF分析により求められた、表3に示す酸化物換算量で、タンタル、カリウム、ナトリウム、モリブデンを含有することが示された。
【0167】
実施例9~11の結果から、モリブデン化合物と、カリウム化合物又はナトリウム化合物との存在下でタンタル化合物を焼成することにより、1300℃という比較的低い焼成温度であっても、モリブデンと、タンタルと、カリウム又はナトリウムと、を含む柱状の粒子を焼成可能であることが示された。
【0168】
また、モリブデン化合物の使用により、粒子の結晶成長が良好となり、上記の焼成条件であっても粒子サイズが1μm以上の粒子を容易に焼成可能であることが示された。
【0169】
実施例1~11のタンタル酸塩粒子はモリブデンを含み、触媒活性など、モリブデンによる種々の作用が発揮されると期待できる。
【0170】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンを含み、 Na (1-x) TaO (ただし、0<x<1である。)で表され、キュービック状の形状を有する、タンタル酸塩粒子。
【請求項2】
前記タンタル酸塩粒子の粒子サイズが0.1~100μmである、請求項に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項3】
xが0.048以上0.153以下である、請求項1に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項4】
前記タンタル酸塩粒子におけるモリブデン含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するMoO換算での含有率が0.01~20質量%である、請求項1に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項5】
前記タンタル酸塩粒子におけるタンタル含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するTa換算での含有率が50~99質量%である、請求項1に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項6】
前記タンタル酸塩粒子におけるカリウム及び/又はナトリウム含有量は、前記タンタル酸塩粒子をXRF分析することによって求められる、前記タンタル酸塩粒子の総質量100質量%に対するKO換算及びNaO換算での合計含有率が0.5~40質量%である、請求項1に記載のタンタル酸塩粒子。
【請求項7】
請求項1に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法であって、
モリブデン化合物と、カリウム化合物及び/又はナトリウム化合物との存在下で、タンタル化合物を焼成することを含む、タンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項8】
前記モリブデン化合物が、三酸化モリブデン、モリブデン酸カリウム及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ナトリウム化合物が炭酸ナトリウム又はモリブデン酸ナトリウムであり、前記カリウム化合物が炭酸カリウム又はモリブデン酸カリウムである、請求項に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項10】
前記タンタル化合物を焼成する焼成温度が700~1500℃である、請求項に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【請求項11】
前記タンタル化合物と、前記モリブデン化合物と、前記カリウム化合物及び/又は前記ナトリウム化合物と、を混合して混合物とする工程と、前記混合物を焼成する工程とを含み、
前記混合物中のモリブデン原子とタンタル原子とのモル比(モリブデン/タンタル)が0.01~5である、請求項に記載のタンタル酸塩粒子の製造方法。
【国際調査報告】