(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-29
(54)【発明の名称】単結晶シリコンロッドの製造デバイスおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20240722BHJP
C30B 15/32 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C30B29/06 502F
C30B15/32
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506511
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022070576
(87)【国際公開番号】W WO2023011939
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼーマン,オットー
(72)【発明者】
【氏名】ド,クオック・タイ
(72)【発明者】
【氏名】エッシェンバッハー-ブラッド,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ラミンク,ゲオルク
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG11
4G077EG25
(57)【要約】
チョクラルスキー法による結晶の製造デバイスおよび製造方法。デバイスは、表面を備える引上げシャフトと、結晶引上げ中に種結晶を保持するのに適した種結晶ホルダと、開口部を作る中空円錐台の形態の受け皿であって、頂部半径R2と、高さhと、材料厚さbと、半径R1を有し、かつ直径dのボアを有するベースプレートとを備える受け皿とを備え、受け皿は、開口部が引上げシャフトの方を向くように種結晶ホルダと引上げシャフトとの間に固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法によるシリコン結晶の製造のためのデバイスであって、
表面を備える引上げシャフトと、
結晶引上げ中に種結晶を保持するのに適した種結晶ホルダと、
開口部を形成する中空円錐台の形態の受け皿であって、
頂部半径R
2と、高さhと、
材料厚さbと、
半径R
1を有し、かつ直径dのボアを有するベースプレートとを備える前記受け皿とを備え、
前記受け皿が、前記開口部が引上げシャフトの方を向くように前記種結晶ホルダと前記引上げシャフトとの間に固定されている、デバイスにおいて、
前記引上げシャフトの前記表面が、オイルで完全に濡れており、
前記受け皿がオイルで完全に濡れていることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記厚さbが、1mm以上かつ5mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記受け皿が、炭素繊維強化炭素(CFC)から作製されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記高さhが、半径R
2と半径R
1との差よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
チョクラルスキー結晶引上げ装置内の引上げシャフト上に種結晶ホルダを設置して、中空円錐台の形態の受け皿を、前記受け皿の開口部が前記引上げシャフトに向くように前記種結晶ホルダと前記引上げシャフトとの間に固定することと、
種結晶を前記種結晶ホルダ内に取り付けることと、
るつぼ内で多結晶シリコンを溶融することと、
前記種結晶が前記溶融物と接触するまで前記引上げシャフトを降下させて結晶を引き上げることと、を含む、単結晶の引上げ方法において、
前記引上げシャフトおよび前記受け皿がオイルで濡れていることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、より高い無転位収率でチョクラルスキープロセスによる単結晶シリコンロッドの製造を可能にするデバイスを提供することである。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの半導体電子デバイス組立てプロセスの出発材料である単結晶シリコンは、通常、いわゆるチョクラルスキー(「CZ:Czochralski」)プロセスによって製造される。このプロセスでは、多結晶シリコン(「ポリシリコン」)をるつぼに入れて溶融し、溶融したシリコンに種結晶を接触させ、ゆっくりと取り出して単結晶を成長させる。
【0003】
結晶成長中に発生し溶融物に入る粒子は、成長した結晶を転位となり、結晶の望ましい品質の損失をもたらすおそれがある。これは結果として、収率の著しい損失、したがってコストの増加をもたらす。
【0004】
したがって、結晶成長系からの粒子が溶融物または結晶-溶融物界面と接触することは避けなければならない。
【0005】
特許出願国際公開第2020074285号では、気相からの粒子が溶融物に落下して、成長する結晶に欠陥が発生するのを防ぐための特殊な熱シールドが提案されている。
【0006】
本発明者らは、この対策は役立つが、所望の収率を達成するには十分でないことに気づいた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、引上げ装置内のダストおよび粒子の上述の悪影響を受けることなく、単結晶ロッドを製造することを可能にするデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、特許請求の範囲に記載のデバイスによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1で使用された受け皿(200)の好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
CZ引上げプロセス中、粒子(P、Sb、As、SiO、SiO2、Siなどのドーパント)がチョクラルスキー系の水冷引上げシャフト上に堆積する。これらの粒子は、剥離し、溶融物に向かって落下し、結晶内に転位を引き起こす可能性がある。
【0011】
本発明は、引き上げられた結晶の完全性に対する粒子の悪影響を最小限に抑えることを可能にする、チョクラルスキーによる結晶引上げデバイスを含む。特に、これは結晶が粒子に起因して成長中に転位を形成する可能性を低減する。
【0012】
好ましいデバイスは、結晶成長中に結晶を直立位置に維持し、結晶を回転させ、引き上げるために使用される引上げシャフトを備える。引上げシャフトの使用は、例えば国際公開第2020074285号に示されている。
【0013】
修正された引上げシャフトが、国際公開第18142541号に示されている。修正された引上げシャフトも本発明に利用することができる。
【0014】
好ましいデバイスはまた、結晶引上げ中に種結晶を保持するのに適した種結晶ホルダを備える。適切な種結晶ホルダの例は、例えば国際公開第2020074285号に示されている。
【0015】
好ましいデバイスはまた、中空円錐台の形態の受け皿を含む。このデバイスの好ましい実施形態を
図2に示す。
【0016】
より好ましくは、受け皿は、1mm超かつ5mm未満の材料厚さbを有する炭素繊維強化炭素(CFC:carbon fiber reinforced carbon)から作製される。
【0017】
好ましくは、受け皿の形状は、高さhおよびベースプレート(201)を有する中空円錐台の形態を有し、底部半径R1および頂部半径R2を有する。ベースプレートは、ボア直径dを有するボア(202)を備える。
【0018】
最も好ましくは、高さhは、半径R
2と半径R
1との差よりも小さい。
受け皿のベースプレートのボアは、引上げシャフトと種結晶ホルダとの間にそれを固定するために使用される。
図1は、好ましい実施形態を図示したものである。種結晶ホルダ(102)がねじ山(103)によって引上げシャフト(100)の下部に取り付けられ、受け皿(101)(
図2に示す)が種結晶ホルダと引上げシャフトとの間にクランプされている。動作中、種結晶は、保持手段(104)によって種結晶ホルダ内にクランプすることができる。
【0019】
好ましい実施形態では、受け皿は、
図2に示すようにねじ山を使用して種結晶ホルダと引上げシャフトとの間に固定される。受け皿は、好ましくは、1mm超かつ5mm未満の材料厚さbを有する炭素繊維強化炭素(CFC:carbon fiber reinforced carbon)から作製される。
【0020】
受け皿の形状は、好ましくは、高さhを有しかつベースプレート(201)を有する中空円錐台の形態を有し、底部半径R1および頂部半径R2を有する。ベースプレートは、ボア直径dを有するボア(202)を備える。
【0021】
本発明者らは、受け皿の開口部が引上げシャフトの方を向いている場合に最高の効果が達成されることを認識した。したがって、受け皿の開口部を引上げシャフトに向けて固定することが好ましい。
【0022】
本発明者らは、粒子が溶融物に落ちるのを防ぐために、引上げシャフトをオイルで濡らすことがさらに非常に有益であることに気づいた。好ましくは、真空ポンプオイルが使用される。引上げシャフトのコーティングされた表面は、粒子に対して粘着性の表面を与え、したがってそれらが落下するのを防ぎ、有害な挙動を包み込むと考えられる。
【0023】
実施された実験では、タイプS2 R100(Shell製)の真空ポンプオイルを使用した。しかしながら、このオイルは高温(100℃超)については定格ではなく、引上げシャフトは600℃超に面しており、この設定で成長させた結晶は、より低い転位率を示す。それでも、効果は非常にはっきりと見ることができた。
【0024】
より好ましくは、上記オイルを使用して、さらに受け皿を完全に濡らすことが非常に好ましい。
【0025】
さらに、本発明は、チョクラルスキーによるシリコン結晶の引上げ方法を含む。好ましくは、本方法は、
(a)チョクラルスキー結晶引上げ装置内の引上げシャフト上に種結晶ホルダを設置することであって、中空円錐台の形態の受け皿が、受け皿の開口部が引上げシャフトに向くように種結晶ホルダと引上げシャフトとの間に固定される、設置することと、
(b)種結晶を種結晶ホルダ内に取り付けることと、
(c)るつぼ内で多結晶シリコンを溶融することと、
(d)種結晶が溶融物と接触するまで引上げシャフトを降下させることと、
(e)結晶を引き上げることと
を含む。
【0026】
より好ましくは、本方法は、引上げシャフトおよび受け皿をオイルで濡らすことを含む。最も好ましくは、真空ポンプオイルとして好適なオイルが使用される。
【0027】
例示的な実施形態の上記の説明は、例示として理解されるべきである。一方では、このようにしてなされた開示は、当業者が本発明およびそれに関連する利点を理解することを可能にし、他方では、当業者の理解において、記載された構造および方法の明らかな変更および修正も含む。したがって、そのような全ての変更および修正ならびに均等物が、特許請求の範囲の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0028】
100 引上げシャフト
101 受け皿
102 種結晶ホルダ
103 トレッド
104 種結晶の保持手段
200 受け皿
201 ベースプレート
202 バスプレートのボア
R1 半径
R2 半径
h 高さ
d ボアの直径
b 使用される材料の厚さ
【手続補正書】
【提出日】2023-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー結晶引上げ装置内の引上げシャフト上に種結晶ホルダを設置して、中空円錐台の形態の受け皿を、前記受け皿の開口部が前記引上げシャフトに向くように前記種結晶ホルダと前記引上げシャフトとの間に固定し
、前記受け皿が、頂部半径R
2
と、高さhと、材料厚さbと、半径R
1
のベースプレートと、直径dのボアとを備えることと、
種結晶を前記種結晶ホルダ内に取り付けることと、
るつぼ内で多結晶シリコンを溶融することと、
前記種結晶が前記溶融物と接触するまで前記引上げシャフトを降下させて結晶を引き上げることと、
を含む、単結晶の引上げ方法において、
前記引上げシャフトおよび前記受け皿がオイルで濡れていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記厚さbが、1mm以上かつ5mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受け皿が、炭素繊維強化炭素(CFC)から作製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高さhが、半径R
2
と半径R
1
との差よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】