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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】荷電粒子デバイス検出器
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20240723BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01J37/244
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578053
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022067788
(87)【国際公開番号】W WO2023280644
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21183811.5
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マングナス,アルベルタス,ヴィクター,ゲラルドス
(72)【発明者】
【氏名】スロット,エルウィン
【テーマコード(参考)】
4M106
5C101
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106AA09
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DB12
5C101AA03
5C101BB03
5C101EE03
5C101EE08
5C101EE14
5C101EE17
5C101EE19
5C101EE22
5C101EE25
5C101EE32
5C101EE34
5C101EE38
5C101EE45
5C101EE51
5C101EE65
5C101EE67
5C101EE69
5C101EE70
5C101GG04
5C101GG05
5C101GG34
5C101GG36
5C101GG37
5C101GG49
5C101HH11
(57)【要約】
試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイス中で使用する検出器であって、検出器は基板を備え、基板は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された半導体要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された電荷ベース要素と、を備える。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子のマルチビームを試料に向かって投影する荷電粒子デバイスを使用して、試料からの信号粒子を検出することにより評価するための、荷電粒子評価ツールであって、前記評価ツールは、試料からの信号粒子を検出するように構成された複数の検出器を備える検出器アレイを備え、前記複数の検出器は基板内に設けられ、個々の検出器はそれぞれのサブビームに対応し、前記基板の前記個々の検出器が、
第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された半導体要素と、
第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された電荷ベース要素と、
を備える、荷電粒子評価ツール。
【請求項2】
前記それぞれの荷電粒子のサブビームの通過のためのアパーチャが前記基板に画定されている、請求項1に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項3】
前記電荷ベース要素と前記半導体要素との間に電気絶縁要素を更に備える、請求項1又は2に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項4】
前記第1のエネルギー閾値は、後方散乱閾値エネルギーに対応する、請求項1~3の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項5】
前記第2のエネルギー閾値は、二次閾値エネルギーに対応する、請求項1~4の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項6】
前記第1のエネルギー閾値及び前記第2のエネルギー閾値は、実質的に同じであるか又はオフセットを有する、請求項1~5の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項7】
前記電荷ベース要素は、金属層を備える、請求項1~6の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項8】
前記電荷ベース要素を検出器回路に接続するように構成された電気絶縁ビアを更に備え、好ましくは、前記基板は前記検出器回路を備える回路層を備える、請求項1~7の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項9】
前記半導体要素は、p-i-n領域のそれぞれの側に上側金属層及び下側金属層を備える、請求項1~8の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項10】
前記下側金属層は、前記電荷ベース要素の部分でもある、及び/又は、上側金属接触部が、好ましくは、前記基板の回路層内に設けられた検出器回路に接続されている、請求項9に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項11】
前記電荷ベース要素及び前記半導体要素の各々が、前記検出器の主表面と実質的に同一平面内にある層の少なくとも部分であり、前記層は、前記検出器の厚さ方向に積層された、前記検出器内に設けられた積層構造内に設けられている、請求項1~10の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項12】
電荷ベース検出器要素が、前記半導体要素の実質的に全体にわたって層を形成する、請求項1~11の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項13】
前記電荷ベース要素は前記半導体要素よりも、個々の検出器表面に近く、好ましくは、帯電ベース要素は前記個々の検出器表面の少なくとも部分を提供する、請求項1~12の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項14】
前記電荷ベース要素及び前記半導体要素は断面において互いに隣接して配置され、好ましくは、前記帯電ベース要素は、前記個々の検出器表面の少なくとも部分を提供し、前記半導体要素は、前記個々の検出器表面の少なくとも部分を提供する、請求項1~10の何れか一項に記載の荷電粒子評価ツール。
【請求項15】
前記電荷ベース要素及び前記半導体要素は各々が、好ましくは同心円状に互いに半径方向に分割された円環を備える、及び/又は、前記電荷ベース要素及び前記半導体要素は各々が、好ましくは角度方向に分割された扇を備える、請求項14に記載の荷電粒子評価ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2021年7月5日に出願された欧州特許出願公開第21183811.5号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
[0002] 本明細書で提供される実施形態は、全般的には荷電粒子デバイス、検出器及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 半導体集積回路(IC)チップを製造する場合、製造プロセス中に、例えば、光学的効果及び付随する粒子の結果として、基板(すなわちウェハー)又はマスク上に望ましくないパターン欠陥が必然的に生じ、それにより歩留まりが低下する。したがって、望ましくないパターン欠陥の程度を監視することは、ICチップの製造において重要なプロセスである。より一般的には、基板の表面、又は他の対象物/材料の検査及び/又は測定は、その製造中及び/又は製造後の重要なプロセスである。
【0004】
[0004] 荷電粒子ビームを用いるパターン検査ツールが、対象物を検査するため、例えばパターン欠陥を検出するために使用されてきた。これらツールは、典型的には、走査型電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡検査技術を使用する。SEMでは、比較的高いエネルギーの電子の一次電子ビームが、比較的低い着地エネルギーで試料上に着地するように、最終減速工程において目標に向けられる。電子ビームは、試料上にプロービングスポットとして集束される。プローブスポットにおける材料構造と電子ビームからの着地電子との間の相互作用により、二次電子、後方散乱電子、又はオージェ電子などの電子が表面から放出される。生成された二次電子は、試料の材料構造から放出される場合がある。一次電子ビームをプロービングスポットとして試料表面上で走査することにより、試料の表面全体にわたって二次電子が放出され得る。試料表面から放出された二次電子を収集することにより、パターン検査ツールが、試料の表面の材料構造の特徴を表すデータを得ることができる。このデータは、画像と呼ばれる場合があり、レンダリングして画像にすることができる。
【0005】
[0005] このようにして得られるデータは有用な場合があるが、そのような既知の電子顕微鏡検査技術から試料に関して得られる情報には限界がある。一般に、例えば、試料の表面の下方の構造に関する、及びオーバレイターゲットに関する、追加の又は代替の情報を得る必要がある。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本開示の目的は、荷電粒子を使用して、例えば、後方散乱信号粒子及び/又は二次信号粒子を使用して、試料から情報を得ることを支援する実施形態を提供することである。
【0007】
[0007] 本発明の一態様によれば、荷電粒子のマルチビームを試料に向かって投影する荷電粒子デバイスを使用して、試料から信号粒子を検出することにより評価するための、荷電粒子評価ツールが提供され、評価ツールは、試料からの信号粒子を検出するように構成された複数の検出器を備える検出器アレイを備え、複数の検出器は、基板内に設けられ、個々の検出器がそれぞれのサブビームに対応し、基板の個々の検出器は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された半導体要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された電荷ベース要素と、を備える。
【0008】
[0008] 本発明の一態様によれば、試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスにて使用される検出器が提供され、検出器は基板を備え、基板は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された半導体要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された電荷ベース要素と、を備える。
【0009】
[0009] 本発明の一態様によれば、上記態様に記載される複数の検出器を備える検出器アレイが提供され、検出器は共通基板内に設けられ、各検出器はそれぞれのサブビームに対応する。
【0010】
[0010] 本発明の一態様によれば、試料からの信号粒子を検出する評価ツールのためのマルチビーム荷電粒子デバイスにて使用する検出器アレイが提供され、検出器アレイは少なくとも1つの基板を備え、基板内には、荷電粒子ビームの複数のサブビームが試料に向かって通過するための複数のアパーチャが画定され、基板は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された複数の半導体要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された複数の電荷ベース要素と、を備え、各半導体要素は、帯電ベース要素のうちの対応する1つに関連付けられている。
【0011】
[0011] 本発明の一態様によれば、試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスが提供され、デバイスは、荷電粒子のビームを試料上に投影するように構成された対物レンズと、上記の態様で説明した検出器とを備える。
【0012】
[0012] 本発明の一態様によれば、試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスが提供され、デバイスは、荷電粒子の複数のサブビームをマルチビームアレイ状で試料上に投影するように構成された対物レンズアレイであって、各サブビームのためにアパーチャが画定されている、対物レンズアレイと;上記態様に記載される少なくとも1つの検出器アレイを備える検出器システムであって、少なくとも1つの検出器アレイのアパーチャは、対物レンズアレイにおいて画定されたアパーチャに整列されている、検出器システムと、を備える、荷電粒子デバイス。
【0013】
[0013] 本発明の一態様によれば、試料から荷電粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスが提供され、デバイスは、荷電粒子のビームを試料上に投影するように構成された対物レンズであって、ビーム用のアパーチャが画定されている、対物レンズと;試料に近接し、対物レンズのアパーチャに整列されたアパーチャを画定する検出器であって、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された第1の検出器要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を同時に検出するように構成された第2の検出器要素とを備え、半導体要素を備える、検出器と、を備える。
【0014】
[0014] 本発明の一態様によれば、試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料上に投影する方法が提供され、方法は、a)ビームを一次ビーム経路に沿って試料の表面上に投影することと、b)試料から放出される信号粒子を半導体要素において及び電荷ベース要素において同時に検出することと、を含む。
【0015】
[0015] 本発明の一態様によれば、試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料上に投影する方法が提供され、方法は、a)ビームを一次ビーム経路に沿って試料の表面上に投影することと、b)試料から放出された信号粒子を検出器において検出することであって、検出器は、試料に近接し、半導体要素を備え、検出することは、対応する第1の検出器要素における第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子と、第2の検出器要素における第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子との同時検出を含む、ことと、を含む。
【0016】
[0016] 本発明の一態様によれば、試料から放出される信号粒子を検出するように、荷電粒子の複数のサブビームを試料上に投影する方法が提供され、方法は、a)サブビームを主サブビーム経路に沿って試料の表面上に投影することと、b)試料から放出された信号粒子を検出器アレイにおいて検出することであって、検出器アレイは、試料に近接し、各サブビームに対応する半導体要素を備える検出器を備え、検出器は、第1の検出器要素及び第2の検出器要素を備え、検出することは、各検出器による、対応する第1の検出器要素における第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子と、第2の検出器要素における第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子との同時検出を含む、ことと、を含む。
【0017】
[0017] 本発明の一態様によれば、試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料上に投影する方法が提供され、方法は、上記の態様に従ってデバイスを提供することと、対物レンズを使用して荷電粒子のビームを試料上に投影することと、半導体要素及び電荷ベース要素使用して、結果として生じる信号粒子を同時に検出することと、を含む。
【0018】
[0018] 本開示の上記態様及び他の態様が、例示的実施形態を添付図面と関連させることにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】[0019]例示的な荷電粒子ビーム検査装置を示す概略図である。
図2】[0020]図1の例示的な荷電粒子ビーム検査装置の部分である例示的なマルチビーム装置を示す概略図である。
図3】[0021]一実施形態による例示的なマルチビーム装置の概略図である。
図4】[0022]一実施形態による対物レンズの概略断面図である。
図5】[0023]一実施形態による例示的な荷電粒子光学デバイスの概略図である。 [0024]
図6A】[0025]検出器の変形形態の底面図を示す。
図6B】[0025]検出器の変形形態の底面図を示す。
図7】[0026]ビーム経路に沿った様々な位置にある検出器を備える対物レンズの概略断面図である。
図8】[0027]マクロコリメータ及びマクロ走査偏向器を備える例示的な荷電粒子光学システムの概略図である。
図9】[0028]一実施形態による例示的な単一ビーム装置の概略図である。
図10A】[0029]一実施形態による検出器アレイ及び関連付けられたセルアレイの概略図である。
図10B】[0029]セルアレイのセルの概略図である。
図10C】[0029]一実施形態によるセルアレイのセルの概略図である。
図11】[0030]一実施形態による別の例示的な増幅回路の回路図である。
図12】[0031]一実施形態による別の例示的な増幅回路の回路図である。
図13】[0032]一実施形態による、回路ワイヤ及び遮蔽構成を示す配線ルートの概略断面図である。
図14】[0033]一実施形態による検出器の断面図である。
図15】[0034]一実施形態による検出器の断面図である。
図16】[0035]一実施形態による検出器の断面図である。
図17】[0036]一実施形態による検出器アレイの断面図である。
図18】[0037]図17の変形形態による検出器アレイの横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0038] 図面は、概略図である。概略図及び表示は、後述する構成要素を示す。しかしながら、図面で示される構成要素は、縮尺通りではない。図面における構成要素の相対的な寸法は、明確化のために誇張されている。以下の図面の説明において、同じ又は類似の参照番号は、同じ又は類似の構成要素又は実体を指し、個々の実施形態に関する差異のみが説明される。
【0021】
[0039] ここで、例示的な実施形態を詳細に参照し、その例が添付の図面に示される。以下の説明は、添付の図面を参照する。別様に示されない限り、異なる図面における同じ数値は、同じ又は類似の要素を表す。例示的実施形態の以下の記載で述べられる実装形態は、本発明と整合する全ての実装形態を表すとは限らない。むしろ、それらは、添付の特許請求の範囲において列挙される本発明に関連する態様と整合する装置及び方法の単なる実施例である。
【0022】
[0040] デバイスの物理的サイズを減らす電子デバイスの強化された計算機能力は、ICチップ上の回路構成要素、例えばトランジスタ、コンデンサ、ダイオード等の充填密度を著しく増加させることにより実現できる。これは、より小さい構造の作製を可能にする分解能の増加により可能になっていた。例えば、スマートフォンのICチップは、親指の爪のサイズであり、2019年又はそれ以前に入手可能であったが、200億個を超えるトランジスタを含む場合がある、各トランジスタのサイズは人間の毛髪の千分の一よりも小さい。したがって、半導体IC製造が何百もの個々の工程を有する複雑で時間の掛かるプロセスであることは意外ではない。1つの工程における誤差でさえ、最終製品の機能に甚大な影響を及ぼす可能性がある。ただ1つの「キラー欠陥」が、デバイス故障を引き起こす可能性がある。製造プロセスの目的は、プロセスの全体的な歩留まりを改善することである。例えば、50工程プロセス(工程は、ウェハー上に形成される層の数を示すことができる)に対して75%の歩留まりを得るためには、個々の工程は、99.4%よりも大きい歩留まりを有しなければならない。個々の工程が95%の歩留まりを有する場合、全体的なプロセス歩留まりは7%と低くなるだろう。
【0023】
[0041] ICチップ製造施設では高いプロセス歩留まりが望ましい一方で、時間当たりに処理される基板の数として定義される基板(すなわちウェハー)スループットを高く維持することも重要である。高いプロセス歩留まり及び高い基板スループットは、欠陥の存在により影響を受ける可能性がある。欠陥をチェックするために作業者による介入が必要な場合、これは特に正しい。したがって、検査ツール(例えば、走査型電子顕微鏡(SEM))によるマイクロ及びナノスケール欠陥の高いスループットでの検出及び特定が、高い歩留まり及び低いコストを維持するために不可欠である。
【0024】
[0042] SEMは走査デバイスと検出器装置とを備える。走査デバイスは、一次電子を生成させるための電子源を備える照明装置と、基板などの試料を一次電子の1つ以上の集束ビームで走査するための投影装置とを備える。少なくとも照明装置又は照明システムと投影装置又は投影システムとを一緒に、電子光学システム又は装置と称することができる。一次電子は、試料と相互作用して、二次電子を生成する。検出装置は、試料が走査されるにつれて、試料からの二次電子を捕捉し、その結果、SEMは試料の走査されたエリアの画像を構築することができる。高スループット検査のために、一部の検査装置は、一次電子の複数の焦束された一次ビーム、すなわちマルチビームを使用する。マルチビームを構成するビームは、サブビーム又は小ビーム又は一次ビームのアレイと呼ばれる場合がある。マルチビームは、試料の異なる部分を同時に走査できる。したがって、マルチビーム検査装置は、単一ビーム検査装置よりも遥かに速い速度で試料を検査できる。既知のマルチビーム検査装置の実装形態を以下で説明する。
【0025】
[0043] ここで図1を参照すると、これは、例示的な荷電粒子ビーム検査装置100を表す概略図である。図1の荷電粒子ビーム検査装置100は、主チャンバ10、ロードロックチャンバ20、荷電粒子ビームツール40(又は電子ビームツールと呼ばれる場合がある)、装置フロントエンドモジュール(EFEM)30、及びコントローラ50を含む。荷電粒子ビームツール40は、主チャンバ10内に位置する。
【0026】
[0044] EFEM30は、第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bを含む。EFEM30は、追加の装填ポートを含んでもよい。第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bは、例えば、検査される基板(例えば、半導体基板、又は他の材料で作製された基板)、又は試料を含む基板用前開き一体型ポッド(FOUP)を収容することができる(ウェハー及び試料は、今後「試料」と総称される)。EFEM30における1つ以上のロボットアーム(図示せず)が、試料をロードロックチャンバ20に搬送する。
【0027】
[0045] ロードロックチャンバ20は、試料の周囲のガスを除去するために使用される。これは、周囲環境の圧力よりも低い局所的ガス圧力である真空を形成する。ロードロックチャンバ20は、ロードロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続されてもよく、これは、ロードロックチャンバ20内のガス粒子を除去する。ロードロック真空ポンプシステムの動作は、ロードロックチャンバが大気圧を下回る第1の圧力に到達することを可能にする。第1の圧力に到達した後、1つ以上のロボットアーム(図示せず)が、試料をロードロックチャンバ20から主チャンバ10に輸送する。主チャンバ10は、主チャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続している。主チャンバ真空ポンプシステムは、試料周囲の圧力が第1の圧力よりも低い第2の圧力に到達するように、主チャンバ10内のガス粒子を除去する。第2の圧力に到達した後に、試料は荷電粒子ビームツール40に輸送され、試料は荷電粒子ビームツール40により検査できる。荷電粒子ビームツール40は、マルチビーム荷電粒子光学装置を備えてもよい。
【0028】
[0046] コントローラ50は、荷電粒子ビームツール40に電子的に接続されている。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置100を制御するように構成されたプロセッサ(例えば、コンピュータ)であってもよい。コントローラ50は、様々な信号及び画像処理を実行するように構成された処理回路も含んでもよい。コントローラ50は、主チャンバ10、ロードロックチャンバ20、及びEFEM30を含む構造体の外側にあるものとして図1に示されるが、コントローラ50は、その構造体の部分であってもよいことが理解される。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置の構成要素のうちの1つに位置してもよい、又は構成要素のうちの少なくとも2つにわたって分配させることができる。本開示は、荷電粒子ビーム検査ツールを収容する主チャンバ10の実施例を提供する一方で、本開示の態様は、その最も幅広い意味において、荷電粒子ビーム検査ツールを収容するチャンバに限定されないことに留意すべきである。むしろ、前述した原理は、第2の圧力下で動作する装置のツール及び他の構成にも適用されてよいことが理解される。
【0029】
[0047] ここで図2を参照すると、これは、図1の例示的な荷電粒子ビーム検査装置100の部分であるマルチビーム検査ツールを含む例示的な荷電粒子ビームツール40を示す概略図である。マルチビーム荷電粒子ビームツール40(本明細書では装置40とも称される)は、荷電粒子源201、投影装置230、電動ステージ209(又は作動ステージ)、及び試料ホルダ207を備える。荷電粒子源201と投影装置230とを一緒に、照明装置と呼ばれる場合がある。試料ホルダ207は、検査のために試料208(例えば、基板又はマスク)を保持するように電動ステージ209によって支持される。マルチビーム荷電粒子ビームツール40は、検出器アレイ240(例えば、電子検出デバイス)を更に備える。
【0030】
[0048] コントローラ50は、図1の荷電粒子ビーム検査装置100の様々な部分に接続されてもよい。コントローラ50は、図2の荷電粒子ビームツール40の様々な部分、例えば、荷電粒子源201、検出器アレイ240、投影装置230、及び電動ステージ209に接続されてもよい。コントローラ50は、様々なデータ、画像及び/又は信号処理機能を実施してもよい。コントローラ50はまた、様々な制御信号を生成して、荷電粒子マルチビーム装置を含む荷電粒子ビーム検査装置100の動作を管理してもよい。コントローラ50は、電動ステージ209を制御して、試料208の検査中に試料208を移動させてもよい。コントローラ50は、少なくとも試料の検査中に、電動ステージ209が、試料208を、ある方向に、好ましくは連続的に、例えば一定速度で移動させることを可能にしてもよい。コントローラ50は、電動ステージ209が様々なパラメータに応じて試料208の移動速度を変化させるように、電動ステージ209の移動を制御してもよい。例えば、コントローラ50は、走査プロセスの検査工程の特徴に応じて、(その方向を含む)ステージ速度を制御してもよい。
【0031】
[0049] 荷電粒子源201は、カソード(図示せず)、及び抽出器又はアノード(図示せず)を備えてもよい。動作中、荷電粒子源201は、カソードからの一次荷電粒子として、荷電粒子(例えば電子)を放出するように構成される。一次荷電粒子は、抽出器及び/又はアノードにより抽出又は加速されて、一次荷電粒子ビーム202が形成される。荷電粒子源201は、欧州特許出願公開第20184161.6号に記載されるような複数の供給源を備えてもよく、本文献は、少なくとも複数の供給源に関して、及びそれらが、複数カラムとそれらが関連付けられた荷電粒子光学系とに、どのように関連するかに関して、参照として本明細書に組み込まれる。
【0032】
[0050] 投影装置230は、一次荷電粒子ビーム202を複数のサブビーム211、212、213に変換し、各サブビームを試料208上に導くように構成される。単純化のために3本のサブビームが示されるが、数十、数百、又は数千のサブビームがあってもよい。サブビームは、ビームレットと呼ばれる場合がある。更には、本明細書及び図面はマルチビームシステムに関するが、代わりに単一ビームシステムが使用されてもよく、その場合、一次荷電粒子ビーム202が複数のサブビームに変換されることはない。これは図9に関連して以下で更に説明されるが、サブビームは単一の一次荷電粒子ビーム202と交換可能であり得ることに留意されたい。
【0033】
[0051] 投影装置230は、検査のために、サブビーム211、212及び213を試料208上に集束させるように構成されてもよく、試料208の表面上に3つのプローブスポット221、222及び223を形成することができる。投影装置230は、一次サブビーム211、212及び213を偏向させて、試料208の表面の区画における個々の走査エリアの全体にわたってプローブスポット221、222及び223を走査するように構成されてもよい。試料208上のプローブスポット221、222及び223上の一次サブビーム211、212及び213の入射に応答して、二次信号粒子及び後方散乱信号粒子を含む信号荷電粒子(例えば電子)が、試料208から発生する(すなわち放出される)。試料から放出される信号粒子、例えば二次電子及び後方散乱電子は、あるいは、荷電粒子、例えば二次荷電粒子及び後方散乱荷電粒子と呼ばれる場合がある。信号ビームは、試料から放出される信号粒子で形成される。試料208から放出されるいかなる信号ビームも、荷電粒子ビーム(すなわち一次ビーム)とは実質的に反対の少なくとも1つの成分を有する方向に移動すること、又は一次ビームの方向とは反対の少なくとも1つの方向成分を有することが一般に理解されるであろう。試料208により放出された信号粒子はまた、対物レンズの電極を通過してもよく、また電界の影響を受けることになる。
【0034】
[0052] 二次信号粒子は、典型的には50eV以下の荷電粒子エネルギーを有する。実際の二次信号粒子は5eV未満のエネルギーを有することができるが、50eV以下のいかなるものも、通常は二次信号粒子と見なされる。後方散乱信号粒子は、典型的には、0eVと、一次サブビーム211、212及び213の着地エネルギーとの間のエネルギーを有する。50eV未満のエネルギーを有して検出される信号粒子は、通常、二次信号粒子と見なされるので、実際の後方散乱信号粒子の一部分が二次信号粒子として計上されることになる。二次信号粒子は、より具体的には二次電子と称される場合があり、二次電子と交換可能である。後方散乱信号粒子は、より具体的には後方散乱電子と称される場合があり、後方散乱電子と交換可能である。当業者は、後方散乱信号粒子が、より一般的には二次信号粒子と説明される場合があることを理解するであろう。しかしながら、本開示の目的のため、後方散乱信号粒子は、二次信号粒子とは異なり、例えばより高いエネルギーを有すると見なされる。換言すれば、二次信号粒子は、試料から放出されたときに50eV以下の運動エネルギーを有する粒子であると理解され、後方散乱信号粒子は、試料から放出されたときに50eVよりも高い運動エネルギーを有する粒子であると理解される。実際には、信号粒子は、検出される前に加速される場合があり、したがって、信号粒子に関連付けられたエネルギー範囲は僅かに高い場合がある。例えば、二次信号粒子は、検出器において検出されたときに200eV以下の運動エネルギーを有する粒子であると理解され、後方散乱信号粒子は、検出器において検出されたときに200eVよりも高い運動エネルギーを有する粒子であると理解される。200eVという値は、粒子の加速の程度に応じて変化してもよく、例えば、約100eV又は300eVであってもよいことに留意されたい。そのような値を有する二次信号粒子は依然として、後方散乱信号粒子とは異なる十分なエネルギーを有すると見なされる。
【0035】
[0053] 検出器アレイ240は、試料208から放出された信号粒子を検出する(すなわち捕捉する)ように構成される。検出器アレイ240は、対応する信号を生成するように構成され、この信号は、信号処理システム280に送信されて、例えば試料208の対応する走査エリアの画像が構築される。検出器アレイ240は、投影装置230内に組み込まれてもよい。検出器アレイは、あるいは、センサアレイと呼ばれる場合があり、「検出器」及び「センサ」及び「センサユニット」という用語は、本明細書を通して交換可能に使用される。
【0036】
[0054] 信号処理システム280は、検出器アレイ240からの信号を処理して画像を形成するように構成された回路(図示せず)を備えてもよい。信号処理システム280は、あるいは、画像処理システム又はデータ処理システムと呼ばれ得る。信号処理システムは、マルチビーム荷電粒子ビームツール40の構成要素、例えば(図2に示すような)検出器アレイ240に組み込まれてもよい。しかしながら、信号処理システム280は、検査装置100又はマルチビーム荷電粒子ビームツール40の何れかの構成要素に、例えば投影装置230又はコントローラ50の一部として、組み込まれてもよい。信号処理システム280は、図1に示す主チャンバを含む構造体の外側に位置することができる。信号処理システム280は、画像取得器(図示せず)及び記憶装置(図示せず)を含んでもよい。例えば、信号処理システムは、プロセッサ、コンピュータ、サーバ、メインフレームホスト、端末、パーソナルコンピュータ、何れかの種類のモバイルコンピューティングデバイス等、又はそれらの組合せを備えてもよい。画像取得器は、コントローラの処理機能の少なくとも部分を含んでもよい。したがって、画像取得器は、少なくとも1つ以上のプロセッサを備えてもよい。画像取得器は、検出器アレイ240に通信可能に結合されて、信号通信、例えば、なかでもとりわけ、導電体、光ファイバケーブル、ポータブル記憶媒体、IR、Bluetooth、インターネット、ワイヤレスネットワーク、ワイヤレス無線機、又はこれらの組合せ、を可能にしてもよい。画像取得器は、検出器アレイ240から信号を受信することができ、信号に含まれるデータを処理することができ、そのデータから画像を構築することができる。したがって、画像取得器は、試料208の画像を取得することができる。画像取得器はまた、様々な後処理機能、例えば、輪郭を生成すること、取得した画像にインジケータを重畳すること等を実施してもよい。画像取得器は、取得した画像の輝度及びコントラスト等の調整を実施するように構成されてもよい。記憶装置は、ハードディスク、フラッシュドライブ、クラウド記憶装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)、他のタイプのコンピュータ可読メモリ等の記憶媒体であってもよい。記憶装置は、画像取得器と結合されてもよく、オリジナル画像としての走査された原画像データ、及び後処理された画像を保存するために使用されてもよい。
【0037】
[0055] 信号処理システム280は、検出された二次信号粒子の分布を得るための測定回路(例えば、アナログ-デジタル変換器)を含んでもよい。検出時間窓中に収集された電子分布データを、試料表面に入射する一次サブビーム211、212及び213の各々の、対応する走査経路データと組み合わせて使用して、検査対象の試料構造の画像を再構成することができる。再構成画像は、試料208の内部構造又は外部構造の様々な特徴を明らかにするために使用できる。これにより、再構成画像は、試料中に存在するかも知れない、いかなる欠陥も明らかにするために使用できる。
【0038】
[0056] 既知のマルチビームシステム、例えば上記の荷電粒子ビームツール40及び荷電粒子ビーム検査装置100が、米国特許出願公開第2020118784号、同第20200203116号、同第2019/0259570号、及び同第2019/0259564号に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
[0057] 既知の単一ビームシステムでは、理論的には異なる信号が(例えば二次信号粒子及び/又は後方散乱信号粒子から)検出される場合がある。マルチビームシステムは既知であり有益である。なぜなら、単一ビームシステムを使用する場合よりもスループットが遥かに大きく、例えば、マルチビーム検査システムのスループットは、単一ビーム検査システムのスループットの100倍の大きさであり得るからである。
【0040】
[0058] 既知のマルチビームシステムでは、比較的高いエネルギーの荷電粒子の一次サブビームのアレイが、上述したように二次信号粒子の検出のために比較的低い着地エネルギーで試料上に着地するように、最終減速工程において目標に向けられる。しかしながら、実際は、マルチビーム検査を、後方散乱検出と組み合わせて、又は少なくとも後方散乱検出により使用することは一般に不可能であった。すなわち、現在既知のマルチビームシステムは、主に二次信号粒子の検出に依存している。しかしながら、単に二次信号粒子だけから得ることが可能な情報には限界がある。後方散乱信号粒子は、表面の下方の構造、例えば埋め込まれた欠陥に関する情報を提供する。加えて、後方散乱信号を使用してオーバレイターゲットを測定することができる。
【0041】
[0059] 上述したように、後方散乱信号粒子は、典型的には0eVと着地エネルギーとの間の大きなエネルギー範囲を有する。後方散乱信号粒子は、放出された後方散乱信号粒子の大きなエネルギー範囲(例えば、最大で一次ビームの着地エネルギー)と、広い角度とを有する。二次信号粒子は典型的には、より制限されたエネルギー範囲を有し、あるエネルギー値を中心として配布する傾向がある。放出された後方散乱信号粒子の大きなエネルギー範囲及び広い角度は、マルチビームシステムにおいてクロストークをもたらす。クロストークは、1つの一次サブビームから生じた後方散乱信号粒子が異なるサブビームに割り当てられた検出器で検出されたときに生じる。クロストークは一般に、試料208に極めて接近して、すなわち一次ビームが投影される試料に近接して生じる。クロストークに起因して、既存のマルチビーム評価ツールは、後方散乱信号を効果的に撮像することができなかった。その結果、マルチビームシステムを使用して、後方散乱の検出に関するスループットを増加させることができなかった。
【0042】
[0060] 本発明において使用することができる評価ツール40の構成要素が、評価ツール40の概略図である図3に関連して以下に説明される。図3の荷電粒子評価ツール40は、(本明細書では装置40とも称される)マルチビーム荷電粒子ビームツールに対応できる。
【0043】
[0061] 荷電粒子源201は、荷電粒子(例えば電子)を、投影システム230の一部をなす集光レンズ231のアレイ(又は集光レンズアレイと称される)に向かって導く。荷電粒子源201は、望ましくは、輝度と全放出電流との間の良好な妥協を有する高輝度熱電界エミッタである。何十、何百又は何千もの集光レンズ231が存在し得る。集光レンズ231は、多電極レンズを備えてもよく、欧州特許出願公開第1602121A1号に基づく構造を有してもよく、この文献は、特に、電子ビームを複数のサブビームに分割するためのレンズアレイ(このアレイは、サブビームごとに1つのレンズを提供する)の開示を参照することにより本明細書に組み込まれる。集光レンズ231のアレイは、電極として機能する少なくとも2つプレートの形を取ることができ、各プレートのアパーチャは、互いに整列され、サブビームの場所に対応する。プレートのうちの少なくとも2つは、所望のレンズ効果を実現するために動作中に異なる電位に維持される。
【0044】
[0062] 一構成では、集光レンズ231のアレイは3つのプレートアレイにより形成され、プレートアレイでは、荷電粒子は、各レンズに入るときと各レンズから出るときとで同じエネルギーを有し、この構成はアインツェルレンズと呼ばれる場合がある。したがって、分散はアインツェルレンズ自体の内部(レンズの入口電極と出口電極との間)でのみ生じ、それによりオフアクシス色収差が制限される。集光レンズの厚さが薄い場合、例えば数mmである場合、そのような収差の影響は、小さいか又は無視できる。より一般的には、集光レンズアレイ231は、2つ以上のプレート電極を有してもよく、その各々が、整列されたアパーチャのアレイを有する。各プレート電極アレイは、セラミック又はガラスを含んでもよいスペーサなどの隔離要素により、隣接するプレート電極アレイに機械的に接続され、及び隣接するプレート電極アレイから電気的に隔離されている。集光レンズアレイは、本明細書の他の場所で説明するスペーサなどの隔離要素により、隣接する荷電粒子光学要素、好ましくは静電荷電粒子光学要素に接続されていてもよく、及び/又はこれからから間隔を空けていてもよい。
【0045】
[0063] 集光レンズは、対物レンズ(例えば、本明細書の別の場所で説明される対物レンズアレイアセンブリ)を含むモジュールから分離されていてもよい。集光レンズの底面に印加される電位が、対物レンズを含むモジュールの上面に印加される電位とは異なる場合、集光レンズと、対物レンズを含むモジュールとの間隔を空けるために、隔離要素(例えばスペーサ)が使用される。電位が等しい場合、集光レンズと、対物レンズを含むモジュールとの間隔を空けるために、導電要素を使用することができる。
【0046】
[0064] アレイにおける各集光レンズ231は、荷電粒子の一次ビームを、集光レンズアレイのダウンビームにあるそれぞれの中間焦点において集束するそれぞれのサブビーム211、212、213に向ける。それぞれのサブビームは、それぞれのサブビーム経路220に沿って投影される。サブビームは、互いに対して発散する。サブビーム経路220は、集光レンズ231のダウンビームで発散する。一実施形態では、中間焦点に偏向器235が設けられる。偏向器235は、サブビーム経路において、対応する中間焦点233又は焦点(すなわち集束する点)の位置に、又は少なくともその位置の周囲に配置される。偏向器は、関連付けられたサブビームの中間画像面において、サブビーム経路の中に又はその近くに配置される。偏向器235は、それぞれのサブビーム211、212、213に作用するように構成される。偏向器235は、(ビーム軸と呼ばれ場合もある)主光線が試料208に実質的に垂直に(すなわち、試料の公称表面に対して実質的に90°で)入射することを確実にするのに効果的な量だけ、それぞれのサブビーム211、212、213を曲げるように構成される。偏向器235は、コリメータ又はコリメータ偏向器と呼ばれる場合がある。偏向器235は、事実上、サブビームの経路をコリメートする。したがって、偏向器の手前ではサブビーム経路は互いに対して発散している。偏向器のダウンビームでは、サブビーム経路は、互いに対して実質的に平行である。すなわち、実質的にコリメートされている。好適なコリメータは、2020年2月7日に出願された欧州特許出願公開第20156253.5号において開示されている偏向器であり、本文献は、マルチビームアレイへの偏向器の適用に関して、参照として本明細書に組み込まれる。コリメータは、偏向器235の代わりに又は偏向器235に加えて、マクロコリメータ270を備えてもよい。したがって、図8に関連して後述するマクロコリメータ270は、図3又は図4の特徴を有して提供されてもよい。これは一般に、コリメータアレイを偏向器235として提供するよりも好ましくない。
【0047】
[0065] 偏向器235の下方に(すなわち、供給源201からダウンビームに、又は供給源201から離れて)、制御レンズアレイ250がある。偏向器235を通過したサブビーム211、212、213は、制御レンズアレイ250に入射する際に実質的に平行である。制御レンズは、サブビームをプリフォーカスする(例えば、サブビームが対物レンズアレイ241に到達する前にサブビームに集束作用を適用する)。プリフォーカスにより、サブビームの発散度を低減させることができる、又はサブビームの収束率を増加させることができる。制御レンズアレイ250及び対物レンズアレイ241は、一緒に動作して合成焦点距離を提供する。中間焦点のない合成動作により、収差のリスクが低減され得る。
【0048】
[0066] 更なる詳細では、制御レンズアレイ250を使用して着地エネルギーを決定することが望ましい。しかしながら、追加で、対物レンズアレイ240を使用して着地エネルギーを制御することが可能である。そのような場合、異なる着地エネルギーが選択された場合、対物レンズにわたる電位差が変化される。対物レンズにわたる電位差を変化させることにより着地エネルギーを部分的に変化させることが望ましい状況の一例は、サブビームの焦点が対物レンズに過度に接近することを防止することである。そのような状況では、対物レンズアレイ241の構成要素が薄くなり過ぎて製造できなくなるというリスクがある。同じことが、この場所の検出器について、例えば、対物レンズの中、上にある検出器について、又は対物レンズに関連付けられた検出器について言うことができる。この状況は、例えば、着地エネルギーが下げられた場合に生じる可能性がある。これは、対物レンズの焦点距離が、使用される着地エネルギーに概ね比例するからである。対物レンズにわたる電位差を低下させ、それにより対物レンズ内部の電界を低下させることにより、対物レンズの焦点距離は再びより大きくなり、その結果、焦点位置は対物レンズの更に下方になる。対物レンズだけを使用すると、拡大率の制御が制限されることに留意されたい。そのような構成では、縮小率及び/又は開角を制御することができない。更に、対物レンズを使用して着地エネルギーを制御することは、対物レンズが、最適な電界強度から離れて動作するであろうことを意味し得る。これは、例えば、対物レンズを交換することなどにより、対物レンズの機械的パラメータ(例えば、電極間の間隔)を調節できない限り該当する。
【0049】
[0067] 制御レンズアレイ250は、複数の制御レンズを備える。各制御レンズは、それぞれの電位源に接続された少なくとも2つの電極(例えば、2つ又は3つの電極)を備える。制御レンズアレイ250は、それぞれの電位源に接続された2つ以上(例えば3つ)のプレート電極アレイを備えてもよい。制御レンズアレイ電極は、数ミリメートル(例えば3mm)離して間隔を空けていてもよい。制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241に関連付けられる(例えば、2つのアレイは、互いに近くに配置される、及び/又は互いに機械的に接続される、及び/又はユニットとして一緒に制御される)。各制御レンズは、それぞれの対物レンズに関連付けられてもよい。制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241のアップビームに配置される。アップビームは、供給源201により近いことと定義できる。アップビームは、あるいは、試料208からより遠いことと定義できる。対物レンズアレイ241は、制御レンズアレイ250と同じモジュール内にあってもよく、すなわち対物レンズアレイアセンブリ又は対物レンズ構成を形成してもよく、又は対物レンズアレイ241は、別個のモジュール内にあってもよい。この場合、この構成は、プレートである4つ以上のレンズ電極として説明される場合がある。プレートには、アパーチャが、例えばアパーチャアレイとして画定され、アパーチャは、対応するビームアレイにおける複数のサブビームに整列されている。電極は、2つ以上の電極に分類されて、例えば、制御電極群及び対物電極群を提供してもよい。一構成では、対物電極群は少なくとも3つの電極を有し、制御電極群は少なくとも2つの電極を有する。代わりに、制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ240とが別個である場合、制御レンズアレイ241と対物レンズアレイ250との間隔(すなわち、制御レンズアレイ250の下側電極と対物レンズ241の上側電極とのギャップ)は、広範囲から、例えば、2mm~200mmから、又はこれを超える値から選択できる。分離幅が小さいと、整列が容易になるのに対して、分離幅が大きいと、より弱いレンズの使用が可能になり、収差が低減される。
【0050】
[0068] 制御レンズアレイ250の各プレート電極は、好ましくは、セラミック又はガラスを含んでもよいスペーサなどの隔離要素により、隣接するプレート電極アレイに機械的に接続され、及び隣接するプレート電極アレイから電気的に分離されている。対物レンズアレイの各プレート電極は、好ましくは、セラミック又はガラスを含んでもよいスペーサなどの隔離要素により、隣接するプレート電極アレイに機械的に接続され、及び隣接するプレート電極アレイから電気的に分離されている。隔離要素は、あるいは、絶縁構造と呼ばれる場合があり、対物レンズアレイ240、(図3に示すような)集光レンズアレイ、及び/又は制御レンズアレイ250などにおける何れかの隣接する電極を分離するために提供されてもよい。2つ以上の電極が提供される場合、複数の隔離要素(すなわち、絶縁構造)が提供されてもよい。例えば、一連の絶縁構造が存在してもよい。
【0051】
[0069] 制御レンズアレイ250は、各サブビーム211、212、213用の制御レンズを備える。制御レンズは、関連付けられた対物レンズの機能に光学的自由度を加える。制御レンズは、1つ以上の電極又はプレートを備えてもよい。電極を追加するごとに、関連付けられた対物レンズの荷電粒子光学機能の制御の更なる自由度を提供できる。一構成では、制御レンズアレイ250の機能は、ビームの縮小率に対してビーム開角を最適化すること、及び/又は対物レンズ234に供給されるビームエネルギーを制御することであり、その各々が、それぞれのサブビーム211、212、213を試料208上に導く。対物レンズは、荷電粒子光学システムの基部に又はその近くに配置されてもよい。より具体的には、対物レンズアレイは、投影システム230の基部に又は基部の近くに配置されてもよい。制御レンズアレイ250は任意選択であるが、対物レンズアレイのアップビームにあるサブビームを最適化するために好ましい。
【0052】
[0070] 図示を容易にするために、本明細書では、レンズアレイは、(図3に示すような)楕円形状のアレイによって概略的に示される。各楕円形状は、レンズアレイにおけるレンズのうちの1つを表す。楕円形は、光学レンズで採用されることが多い両凸形状の類推から、レンズを表すために慣例的に使用される。しかしながら、本明細書で論じるような荷電粒子構成との関連では、レンズアレイは、典型的には、静電的に動作することになるため、両凸形状を採用する物理的要素を必要としない場合があることを理解されたい。レンズアレイは、代わりに、アパーチャを有する複数のプレートを備えてもよい。
【0053】
[0071] 任意選択で、制御レンズアレイ250と対物レンズ234のアレイとの間に走査偏向器260のアレイが設けられる。走査偏向器260のアレイは、各サブビーム211、212、213用の走査偏向器を備える。各走査偏向器は、試料208全体にわたってサブビームを一方向又は二方向に走査するように、それぞれのサブビーム211、212、213を一方向又は二方向に偏向させるように構成される。
【0054】
[0072] 対物レンズアレイ241は、少なくとも2つの電極を備えてもよく、電極にはアパーチャアレイが画定されている。換言すれば、対物レンズアレイは、複数の穴又はアパーチャを有する少なくとも2つの電極を備える。対物レンズアレイ241の隣接する電極は、サブビーム経路に沿って互いに間隔を空けている。後述するように絶縁要素が配置され得る、ビーム経路に沿って隣接する電極間の距離は、対物レンズのサイズよりも小さい(ビーム経路に沿って、すなわち、対物レンズアレイの最もアップビームの電極と最もダウンビームの電極との間において)。図4は、それぞれのアパーチャアレイ245、246を有する例示的な対物レンズアレイ241の一部である電極242、243を示す。電極の各アパーチャの位置は、別の電極の対応するアパーチャの位置に対応する。対応するアパーチャは、使用時にマルチビームにおける同じビーム、サブビーム又はサブビーム群に作用する。換言すれば、少なくとも2つの電極の対応するアパーチャは、1つのサブビーム経路、すなわち、サブビーム経路220のうちの1つに整列され、その経路に沿って配置される。したがって、各電極はアパーチャを備え、そのアパーチャを通してそれぞれのサブビーム211、212、213が伝搬する。
【0055】
[0073] 対物レンズアレイ241のアパーチャアレイ245、246は、好ましくは実質的に均一な直径を有する、複数のアパーチャから構成されてもよい。しかしながら、2020年11月12日に出願された欧州特許出願公開第20207178.3号に記載されるように、収差補正を最適化するためのいくつかの変形形態が存在することができ、その文献は、少なくともアパーチャの直径を変化させることにより実現される補正に関して、参照により本明細書に組み込まれる。少なくとも1つの電極のアパーチャの直径dは、約400μm未満であってもよい。好ましくは、少なくとも1つの電極のアパーチャの直径dは、約30~300μmである。アパーチャ直径がより小さいと、所与のアパーチャピッチに対して検出器アレイ240の検出器はより大きくなり、後方散乱信号粒子を捕捉する可能性が改善され得る。したがって、後方散乱信号粒子に関する信号は改善する場合がある。しかしながら、アパーチャが小さ過ぎると、一次サブビームの収差が引き起こされるリスクがある。電極の複数のアパーチャは、ピッチPによって互いに間隔を空けていてもよい。ピッチPは、1つのアパーチャの中央から隣接するアパーチャの中央までの距離として定義される。少なくとも1つの電極の隣接するアパーチャ間のピッチは、約600μm未満であってもよい。好ましくは、少なくとも1つの電極の隣接するアパーチャ間のピッチは、約50μm~500μmである。好ましくは、各電極上の隣接するアパーチャ間のピッチは、実質的に均一である。上述した直径及び/又はピッチの値は、対物レンズアレイの少なくとも1つの電極、複数の電極、又は全ての電極に提供することができる。好ましくは、参照される寸法及び記載される寸法は、対物レンズのアレイに設けられる全ての電極に当てはまる。
【0056】
[0074] 対物レンズアレイ241は、2つ又は3つの電極を備えてもよく、又はより多くの電極(図示せず)を有してもよい。2つだけの電極を有する対物レンズアレイ241は、より多くの電極を有する対物レンズアレイ241よりも、より少ない収差、例えば、より低い収差のリスク及び/又は影響、を有することができる。3電極対物レンズは、電極間により大きな電位差を有するので、より強力なレンズを可能にすることができる。追加の電極(すなわち、3つ以上の電極)が、例えば二次信号粒子並びに入射ビームを焦束させるために、荷電粒子軌道を制御するための追加の自由度を提供する。アインツェルレンズに対する2電極レンズの利点は、入ってくるビームのエネルギーが、出ていくビームと必ずしも同じではないことである。有益なことに、そのような2電極レンズアレイにおける電位差は、2電極レンズアレイが、加速レンズアレイ又は減速レンズアレイの何れかとして機能することを可能にする。対物レンズアレイ241は、荷電粒子ビームを、10を超える係数で、望ましくは50~100の範囲の係数で、又はこれを超える係数で縮小するように構成できる。対物レンズアレイ240の各要素は、マルチビームの異なるサブビーム又はサブビーム群に作用するマイクロレンズであってもよい。
【0057】
[0075] 好ましくは、対物レンズアレイ241に設けられる各電極は、プレートである。電極は、あるいは、平坦なシートとして説明できる。好ましくは、各電極は平面である。換言すれば、各電極は、好ましくは、平面形状の薄く平坦なプレートとして設けられることになる。もちろん、電極は平面である必要はない。例えば、電極は、高い静電界に起因する力に起因して曲がる場合がある。平面電極を設けることが好ましい。なぜなら、既知の製造方法を使用することができるため、電極の製造がより容易になるからである。平面電極はまた、異なる電極のアパーチャ間の整列がより正確になり得るので好ましい場合がある。
【0058】
[0076] 図5は、対物レンズアレイ241の複数の対物レンズ及び制御レンズアレイ250の複数の制御レンズの拡大概略図である。以下で更に詳細に説明するように、レンズアレイは、電圧源により電極に印加された選択された電位を有する電極により提供することができる。すなわち、アレイの電極は、それぞれの電位源に接続されている。図5では、制御レンズアレイ250、対物レンズアレイ241、及び検出器アレイ240の各々の複数のレンズが示され、例えば、図示するように、サブビーム211、212、213の何れもがレンズを通過している。図5は、5つのレンズを示すが、何れかの適切な数で設けられてもよく、例えば、レンズの平面内に、100個、1000個、又は約10,000個のレンズがあってもよい。上述したものと同じ特徴には、同じ参照番号が与えられている。簡潔化のため、上で提供されたこれら特徴の説明は、図5に示す特徴に適用される。荷電粒子光学デバイスは、図5に示す構成要素のうちの1つ、いくつか、又は全てを備えてもよい。この図面は、概略図であり、縮尺通りでない場合があることに留意されたい。例えば、非限定的リストとして、サブビームは、対物レンズアレイ241におけるよりも、コントローラアレイ250においてより狭くてもよい;検出器アレイ240と対物レンズアレイ241の電極との間隔は、対物レンズアレイ241の電極の互いの間隔より近くてもよい;コントローラレンズアレイ250間の各サブビームの焦点は、図示するよりも対物レンズアレイ241に近くてもよい。図5に示すように、制御レンズアレイ250の電極間の間隔は、対物レンズアレイ241の電極間の間隔より大きくてもよいが、これは必須でない。
【0059】
[0077] 図5に示すように、サブビームは、制御レンズアレイ250に入射する際に図3に示すように平行であってもよい。しかしながら、図5の構成要素と同じものが、図8に示す構成において使用されてもよく、その場合、サブビームは、更にダウンビームの供給源からのビームから分離(又は生成)される場合がある。例えば、サブビームは、レンズ構成の一部、例えば、対物レンズアレイ、制御レンズアレイ、又は、例えば対物レンズアレイアセンブリの一部である対物レンズアレイに関連付けられ得る何れかの他のレンズ要素、であり得るビーム制限アパーチャアレイによって画定することができる。図8に示すように、サブビームは、制御レンズアレイ250の最もアップビームの電極としての、制御レンズアレイ250の一部であり得るビーム制限アパーチャアレイにより、供給源からのビームから分離されてもよい。
【0060】
[0078] 電圧源V3及びV2(これらは、個々の電力源により提供されてもよい、又はこれら全てが電力源290により供給されてもよい)が、それぞれ、対物レンズアレイ241の上側電極及び下側電極に電位を印加するように構成されている。上側電極及び下側電極はそれぞれ、アップビーム電極242及びダウンビーム電極243と呼ばれる場合がある。電圧源V5、V6、V7(これらは、個々の電力源により提供されてもよい、又はこれら全てが電力源290により供給されてもよい)が、それぞれ、制御レンズアレイ250の第1、第2、及び第3の電極に電位を印加するように構成されている。更なる電圧源V4が、試料に接続されて、試料電位を印加する。更なる電圧源V8が、検出器アレイに接続されて、検出器アレイ電位を印加する。制御レンズアレイ250は、3つの電極を有するように示されるが、制御レンズアレイ250は、2つの電極(又は4つ以上の電極)を備えてもよい。対物レンズアレイ240は、2つの電極を有するように示されるが、対物レンズアレイ240は、3つの電極(又は4つ以上の電極)を備えてもよい。例えば、図5に示す電極間において、対物レンズアレイ241に、対応する電圧源V1(図示せず)を有する中間電極が設けられてもよい。望ましくは、制御レンズアレイ250の最も上側の電極の電位V5は、制御レンズのアップビームにある次の荷電粒子光学要素(例えば偏向器235)の電位と同じに維持される。制御レンズアレイ250の下側電極に印加される電位V7は、ビームエネルギーを決定するために変化させることができる。制御レンズアレイ250の中間電極に印加される電位V6は、制御レンズのレンズ強度を決定し、したがってビームの開角及び縮小率を制御するために変化させることができる。着地エネルギーを変化させる必要がないか、又は他の手段によって変化される場合であっても、制御レンズを使用してビームの開角を制御することができる点に留意すべきである。サブビームの焦点の位置は、それぞれの制御レンズアレイ250の動作とそれぞれの対物レンズ240の動作との組合せで決定される。
【0061】
[0079] 検出器アレイ240(あるいは、検出器のアレイと呼ばれる場合がある)は、複数の検出器を備える。各検出器は、対応するサブビーム(あるいは、ビーム又は一次ビームと呼ばれる場合がある)に関連付けられる。換言すれば、検出器のアレイ(すなわち、検出器アレイ240)とサブビームとは対応する。各検出器が、1つのサブビームに割り当てられてもよい。検出器のアレイは、対物レンズのアレイに対応してもよい。換言すれば、検出器のアレイは、対物レンズの対応するアレイに関連付けられてもよい。以下で、検出器アレイ240について説明する。しかしながら、検出器アレイ240へのいかなる参照も、適宜、単一の検出器(すなわち、少なくとも1つの検出器)又は複数の検出器と置換することができる。検出器は、あるいは、検出器要素405(例えば、捕捉電極などのセンサ要素)と呼ばれる場合がある。検出器は、いかなる適切なタイプの検出器であってもよい。
【0062】
[0080] 検出器アレイ240は、ビーム経路に沿った上側ビーム位置と下側ビーム位置との間に何れかの場所において、一次ビーム経路に沿った位置に配置されてもよい。上側ビーム位置は、対物レンズアレイ、及び任意選択で、何れかの関連付けられたレンズアレイ、例えば制御レンズアレイの上方(すなわち、対物レンズアレイアセンブリのアップビーム)にある。下側ビーム位置は、対物レンズアレイのダウンビームにある。一構成では、検出器アレイは、対物レンズアレイアセンブリのアップビームにあるアレイであり得る。検出器アレイは、対物レンズアレイアセンブリの何れかの電極に関連付けられてもよい。以降では、対物レンズアレイの電極に関連付けられた検出器への参照は、明示的に他の記載がない限り、対物レンズアレイの最もダウンビームにある電極の最もダウンビームにある表面を除いて、対物レンズアレイアセンブリの電極に対応し得る。
【0063】
[0081] 一構成では、検出器アレイ240は、制御レンズアレイ250と試料208との間に配置されてもよい。検出器アレイ240は、図4及び図5に示すように、対物レンズ234と試料208との間に配置されてもよい。これは好ましい場合があるが、検出器アレイ240を、図7に示すような追加の場所又は代わりの場所に設けることができる。複数の検出器アレイを、例えば図7のような、様々な場所に設けてもよい。後方散乱信号粒子を含む信号粒子は、試料208の表面から直接検出されてもよい。したがって、後方散乱信号粒子は、例えば、検出することがより容易であり得る二次信号粒子などの別のタイプの信号粒子に変換する必要なく、検出できる。したがって、後方散乱信号粒子は、試料208と検出器アレイ241との間のいかなる他の構成要素又は表面にも遭遇、例えば衝突することなく、検出器アレイ240によって検出できる。
【0064】
[0082] 検出器アレイは、対物レンズアレイ241と試料208との間に配置される。検出器アレイ240は、試料に近接するように構成されている。検出器アレイ240は、試料208からの後方散乱信号粒子を検出するように、試料に近接していてもよい。検出器が試料に近接しているため、検出器アレイの別の検出器に対応するサブビームによって生成される後方散乱信号粒子の検出におけるクロストークが回避されなかった場合のリスクを低減させることが可能になる。換言すれば、検出器アレイ240は、試料208に非常に近い。検出器アレイ240は、後述するように、試料208から一定の距離以内にあってもよい。検出器アレイ240は、試料208に隣接していてもよい。少なくとも1つの検出器が、試料に面するようにデバイス内に配置されてもよい。すなわち、検出器は、デバイスに基部を提供できる。基部の一部としての検出器は、試料の表面に面してもよい。これは、少なくとも1つの検出器が二次粒子よりも後方散乱粒子を検出する可能性が高い場所に少なくとも1つの検出器を配置する際に、有益な場合がある。例えば、少なくとも1つの検出器アレイが、対物レンズアレイ241の出力側に設けられてもよい。対物レンズアレイ241の出力側は、サブビームが対物レンズアレイ241から出力される側、すなわち、図3図4及び図5に示す構成における対物レンズアレイの底部又はダウンビーム側である。換言すれば、検出器アレイ240は、対物レンズアレイ241のダウンビームに提供されてもよい。検出器アレイは、対物レンズアレイ上に、又は対物レンズアレイに隣接して配置されてもよい。検出器アレイ241は、対物レンズアレイ241の一体化された構成要素であってもよい。検出器及び対物レンズは、同じ構造の一部であってもよい。検出器は、隔離要素によりレンズに接続されてもよく、又は対物レンズの電極に直接接続されてもよい。したがって、少なくとも1つの検出器は、少なくとも対物レンズアレイと検出器アレイとを備える対物レンズアセンブリの一部であってもよい。検出器アレイが対物レンズアレイ241の一体化された構成要素である場合、検出器アレイ240は、対物レンズアレイ241の基部に設けられてもよい。一構成では、検出器アレイ240は、対物レンズアレイ241の最もダウンビームに配置された電極に一体化されてもよい。
【0065】
[0083] 理想的には、検出器アレイは、試料に可能な限り接近している。検出器アレイ240は、好ましくは試料208に非常に接近しており、その結果、検出器アレイにおいて、後方散乱信号粒子の近接焦点が存在する。前述したように、後方散乱信号粒子のエネルギー及び角度広がりは一般に非常に大きいため、隣り合うサブビームからの信号を分離したままにすることは困難(又は、既知の従来技術のシステムでは不可能)である。しかしながら、近接焦点は、第1の態様におけるクロストーク(すなわち、隣り合うサブビームからの干渉)なく、後方散乱信号粒子を検出器のうちの関連する1つで検出することができることを意味する。もちろん、試料208と検出器アレイ240との間には最小距離がある。しかしながら、この距離は可能な限り減らすことが好ましい。この距離を減らすことから、特定の構成が他の構成よりも恩恵を受けることができる。
【0066】
[0084] 好ましくは、図3に示す、検出器アレイ240と試料208との間の距離「L」は約50μm以下である。すなわち、検出器アレイ240は、試料208から約50μm以内に配置されている。距離Lが小さい(例えば、約10~65マイクロメートルである)ことが、検出器効率を改善すること及び/又はクロストークを減らすことができるため、一般に好ましいが、この距離はより大きくてもよい。例えば、距離Lは、約100マイクロメートル以下、又は約200マイクロメートル以下であってもよい。距離Lは、検出器アレイ240に面する試料208の表面と、試料208に面する検出器アレイ241の表面との間の距離として決定される。距離を約50μm以下にすることは、後方散乱信号粒子間のクロストークを回避できる又は最小化できるという点で有益である。理論的には、試料208及び検出器アレイ240が互いに対して移動することを可能にしながら、これら構成要素がどれくらい接近できるかに関して下限があり得る。このことは、距離Lが、約5μm又は10μmを超える可能性があることを意味する。例えば、約50μm以下の距離Lを使用しながら、依然として、ツールの一部として図3に示すようなデバイスの比較的信頼性が高い制御を可能にすることができる。約30μm以下の距離Lは、他の構成、例えば以下の図8に関連して示され説明される構成にとって好ましい場合がある。検出器アレイ240と試料208との間の距離Lの好ましい範囲は、約5μm~200μm、又は好ましくは約5μm~100μm、又は好ましくは約5μm~50μ、又は好ましくは約10μm~50μm、又は好ましくは約30μm~50μmであってもよい。一構成では、例えば、試料と検出器アレイとの間の距離Lを実質的に維持するために、検出器アレイ240は、対物レンズアレイ241に対して作動可能であり、すなわち距離Lを変化させることが可能である。ここで説明される距離Lは、図3(又は図8)に示すようなマルチビームシステムのためのものであることに留意されたい。同じ距離が、例えば図9に示すような単一ビームデバイスにおいて使用されてもよいが、単一ビームデバイスについては、距離Lはより大きくてもよい。
【0067】
[0085] 後方散乱信号粒子は、非常に大きなエネルギー広がりを伴って、典型的には、3次元において円錐の外観を有し得る余弦分布に従う角度広がりを伴って、試料208から放出される。試料208から検出器アレイ240までの距離が遠いほど、放出されるビームの円錐は大きくなる。後方散乱信号粒子は全ての角度を有し得ることが理解されよう。放出されたビームの円錐は、それぞれのビームに関連付けられた検出器に割り当て可能な立体角であり、したがって、この立体角は、試料と検出器とが近接するほど、より大きくなる。非常に大きなエネルギーの広がりに起因して、異なるサブビームから検出器上に来る後方散乱信号粒子を、顕著なクロストークを導入することなく撮像することは不可能な場合がある。解決策は、検出器を基板に極めて近接させて配置し、隣り合うサブビームの後方散乱信号粒子信号が重なり合わないようにサブビームのピッチを選択することである。
【0068】
[0086] したがって、上述したように、ピッチサイズPは、検出器アレイ240と試料208との間の距離に応じて選択できる(又は、逆もまた同様である)。例としてのみ、試料208と検出器アレイ240との間の距離Lが約50マイクロメートルの場合、サブビームピッチpは、約300マイクロメートル以上であってもよい。そのような組合せは、高エネルギー信号粒子、例えば後方散乱信号粒子を、加速レンズで検出するために特に有用な場合がある。例としてのみ、試料208と検出器アレイ240との間の距離Lが約10マイクロメートルの場合、サブビームピッチpは、約60マイクロメートル以上であってもよい。より接近した検出器アレイを提供することにより、より小さいサブビームピッチpの使用が可能になる。これは、サブビームピッチが有益にもより小さい特定の構造、例えば、以下の図8に関連して記載され図8に示される構造を使用する際に、有益な場合がある。異なる例示的な構成では、試料208と検出器アレイ240との間の距離は約50マイクロメートルであり、サブビームピッチpは約60マイクロメートルである。そのような異なるセットアップは、異なる動作設定のために意図されており、異なるタイプの信号粒子を検出するためである。例えば、そのような組合せは、低エネルギー信号粒子、例えば二次信号粒子を、減速レンズで検出するために特に有用な場合がある。高エネルギー粒子(例えば、後方散乱信号粒子)と低エネルギー粒子(例えば、二次信号粒子)との同時検出のために、高エネルギー粒子及び低エネルギー粒子の信号が十分に大きくなるように、ピッチp及び距離Lは、上記の値から選択されてもよい。検出器の機能にとって、距離L及びピッチpに関する関連又は制限がない点に留意されたい。しかしながら、隣り合う検出器におけるクロストークのリスクにより、より大きい距離Lに対して、より大きいピッチpを使用することが好ましい場合がある。しかし、クロストークのリスクを低下させる他の方法が存在する場合もあり、ピッチpと距離Lとの何れかの適切な組合せが使用されてもよい。
【0069】
[0087] 検出器アレイ240(及び、任意選択で対物レンズアレイ241)は、試料208から放出される二次信号粒子を跳ね返すように構成されてもよい。これは、再び検出器アレイ240に向かって進む、試料208から放出される二次信号粒子の数を減らすので有益である。検出器アレイ240と試料208との間の電位差は、試料208から放出された信号粒子を跳ね返して検出器アレイ240から離すように選択できる。好ましくは、検出器アレイの電位は、対物レンズアレイのダウンビーム電極のポテンシャルと同じであってもよい。試料電位と検出器アレイ電位との間の電位差は好ましくは比較的小さく、その結果、一次サブビームは、顕著な影響を受けることなく、検出器アレイ240を通って又は通過して試料208に投影される。加えて、小さい電位差が後方散乱信号粒子(一般に、最大で着地エネルギーに至るより大きなエネルギーを有する)の経路に及ぼす影響は無視できるほどであり、このことは、二次信号粒子の検出を低減又は回避しながら、後方散乱信号粒子を依然として検出できることを意味する。試料電位と検出器アレイ電位との間の電位差は、好ましくは、二次信号粒子閾値よりも大きい。二次信号粒子閾値は、依然として検出器に到達することができる二次信号粒子の最小初期エネルギーを決定できる。好ましくは、二次信号粒子閾値は、試料208から発する二次信号粒子の予想されるエネルギーに等価な電位差である。すなわち、試料と検出器アレイの電位間の比較的小さい電位差は、二次信号粒子を検出器アレイから跳ね返すのに十分である。例えば、試料電位と検出器アレイ電位との間の電位差は、約20V、50V、100V、150V、200V、250V、又は300Vであってもよい。
【0070】
[0088] 対物レンズアレイ241は、一次荷電粒子(すなわち、サブビーム)を、サブビーム経路220に沿って試料208に向かって加速するように構成されてもよい。試料208上に投影されるサブビーム211、212、213を加速することは、それが、高い着地エネルギーを有するサブビームのアレイを生成するために使用できるという点で有益である。対物レンズアレイの電極の電位は、対物レンズアレイ241を通して加速を提供するように選択できる。この構成における加速レンズは、後方散乱信号粒子の検出範囲(例えば、異なるエネルギー範囲)を検出するために特に有用であり得ることに留意されたい。代わりに、対物レンズアレイは、一次荷電粒子を、サブビーム経路220に沿って試料208に向かって減速するように構成されてもよい。この構成における減速レンズは、二次及び後方散乱信号粒子の両方を検出するために特に有用であり得ることに留意されたい。以下に記載される図、特に図3図5及び図8は、加速モードにおける対物レンズを示す。しかしながら、上記の説明から理解されるように、後述する実施形態及び変型形態の何れについても、対物レンズは、代わりに減速モードにおいて使用されてもよい。換言すれば、図3図5及び図8は、対物レンズを通してサブビームを減速するように適合させることができる。
【0071】
[0089] 対物レンズアレイ241を加速する一構成では、低エネルギー粒子(例えば、二次信号粒子)は、一般に、加速対物レンズの下側部分のアップビームを通過することができない。高エネルギー粒子(例えば、後方散乱信号粒子)が、加速対物レンズを通過することも更に困難である。これは、加速対物レンズ及び減速対物レンズの両方にとって重要な点である。低エネルギー信号粒子(例えば、二次信号粒子)と高エネルギー信号粒子(例えば、後方散乱信号粒子)との間のエネルギー差は、対物レンズのアップビームのいかなる点よりも、対物レンズのダウンビームにおいて(加速モード及び減速モードの両方において)比例的に大きい。これは、信号粒子の異なるタイプを区別するための、後述する検出器を使用する検出にとって有益である。
【0072】
[0090] 本明細書で定義される電位及び電位の値は、供給源に対して定義され、したがって、試料の表面における荷電粒子の電位は、荷電粒子のエネルギーが荷電粒子の電位と相関するので、着地エネルギーと呼ばれてもよく、試料における荷電粒子の電位は供給源に対して定義される。しかしながら、電位は相対的な値であるので、電位を、試料などの他の構成要素に対して定義することができる。このような場合、異なる構成要素に印加される電位の差は、好ましくは、供給源に関して後述するものと同様である。電位は、使用時に、すなわちデバイスの動作中に、電極及び試料などの関連する構成要素に印加される。
【0073】
[0091] 例えば、上述したように荷電粒子サブビームを加速し二次信号粒子を跳ね返すように構成されたデバイスは、図5との関連で示すような電位を有してもよく、その値を以下の表1に示す。上述したように、図5に示す対物レンズアレイは、追加電極、例えば中間電極を備えてもよい。このような中間電極は任意選択であり、表1で列挙される他の電位を有する電極に含まれる必要はない。対物レンズアレイの中間電極は、対物レンズアレイの上側電極の電位(すなわち、V3)と同じ電位(例えば、V1)を有してもよい。
【0074】
[0092] 例示的範囲を、上述した表1の左側列に示す。中間列及び右側列は、例示的範囲内での、V1~V8に関するより具体的な例示的値を示す。中間列は、右側列よりも小さい分解能のために提供することができる。(右側列のように)分解能がより大きい場合、サブビーム当たりの電流はより大きく、したがってサブビームの数はより少ない場合がある。より大きい分解能を使用することの利点は、「連続エリア」を走査するために必要な時間がより短いことである(これが実用上の制約となり得る)。したがって、全体的なスループットはより低い場合があるが、ビームエリアを走査するために必要な時間はより短い(ビームエリアがより小さいので)。
【0075】
【表1】
【0076】
[0093] 例えば、上述したように荷電粒子サブビームを減速し二次信号粒子を跳ね返すように構成されたデバイスは、図5との関連で示すような電位を有してもよく、その値を以下の表2に示す。減速を提供するために、加速レンズに対して提供された電位の値が交換及び調整され得る。例としてのみ、荷電粒子は、対物レンズにおいて30kVから2.5kVまで減速されることができる。一例では、1.5kV~5kVの範囲の着地エネルギーを得るために、図5に示す電位、例えばV2、V3、V4、V5、V6、及びV7を、以下の表2に示すように設定することができる。V1は、中間対物レンズ電極が含まれる場合に、任意選択で含まれる。表2に示す電位及び着地エネルギーは単なる例であり、他の着地エネルギーを得ることができ、例えば、着地エネルギーは、1.5kV未満(例えば、約0.3kV又は0.5kV)であり得る、又は5kVを超え得る。V1、V3及びV7におけるビームエネルギーが同じであることが分かる。実施形態では、これらの点におけるビームエネルギーは、10keV~50keVであり得る。より低い電位が選択される場合、電界の減少を制限するために、特に対物レンズにおいて、電極間隔を減らしてもよい。この表における電位は、keV単位でのビームエネルギーの値として与えられ、これは、ビーム源201のカソードを基準とする電極電位と等価である。荷電粒子光学システムを設計する際に、システムにおけるどの点を接地電位に設定するかに関して相当の設計自由度が存在し、システムの動作は絶対電位よりはむしろ電位差により決定されることが理解されるであろう。
【0077】
【表2】
【0078】
[0094] 検出効率を最大化するために、対物レンズアレイ240の実質的に全てのエリア(アパーチャを除く)が検出器要素405を占めるように、検出器要素405の表面を可能な限り大きくすることが望ましい。加えて又は代わりに、各検出器要素405は、アレイピッチ(すなわち、対物レンズアセンブリ241の電極に関して上述したアパーチャアレイのピッチ)に実質的に等しい直径を有する。一実施形態では、検出器要素405の外形は円であるが、検出エリアを最大化するために、これを正方形又は六角形にすることができる。
【0079】
[0095] しかしながら、検出器要素405の表面が大きくなると、寄生静電容量が大きくなり、したがって帯域幅が狭くなる。この理由で、検出器要素405の外径を制限することが望ましい場合がある。特に、検出器要素405が大きくなると、検出効率が僅かに大きくなるだけであるが、静電容量が著しく大きくなる場合に。円形の(環状の)検出器要素405が、収集効率と寄生静電容量との間の良好な妥協を提供できる。検出器要素405の外径が大きくなると、クロストーク(隣り合う穴の信号に対する感度)が大きくなる場合もある。これもまた、検出器要素405の外径をより小さくする理由であり得る。特に、検出器要素405が大きくなると、検出効率が僅かに大きくなるだけであるが、クロストークが著しく大きくなる場合に。
【0080】
[0096] 一実施形態では、対物レンズアレイ241は、それ自体で、又は制御レンズアレイ及び/又は検出器アレイなどの他の要素と組み合わせて、交換可能なモジュールである。交換可能なモジュールは、現場で交換可能であってもよい。すなわち、モジュールは現場技術者によって新規なモジュールに入れ換えることができる。一実施形態では、複数の交換可能なモジュールがツール内に含まれ、ツールを開けることなく、動作位置と動作不可位置とを入れ換えることができる。
【0081】
[0097] いくつかの実施形態では、サブビーム中の1つ以上の収差を減らす1つ以上の収差補正器が設けられている。実施形態の何れかにおいて、1つ以上の収差補正器が、例えば、荷電粒子光学デバイスの一部として、及び/又は光学レンズアレイアセンブリの一部として、及び/又は評価ツールの一部として設けられてもよい。一実施形態では、少なくとも収差補正器のサブセットの各々が、中間焦点のうちの対応する1つに又はそれに直接隣接して(例えば、中間画像平面内に又はそれに隣接して)配置されている。サブビームは、中間平面などの焦点面に又はその近くに最小断面積を有する。これは、収差補正器に、他の場所において、すなわち、中間平面のアップビーム又はダウンビームにおいて利用可能なスペースよりも(又は、中間画像平面を有しない代替の構成において利用可能となるであろうスペースよりも)広いスペースを提供する。
【0082】
[0098] 一実施形態では、中間焦点(又は中間画像平面)に又はそれに隣接して配置された収差補正器が、偏向器を備えて、異なるサブビームに対して異なる位置にあるように見える供給源201を補正する。補正器を使用して、各サブビームと、対応する対物レンズとの間の良好な整列を妨げる、供給源から生じる巨視的な収差を補正することができる。
【0083】
[0099] 収差補正器は、適切なカラム整列を妨げる収差を補正できる。そのような収差は、サブビームと補正器との間の位置ずれにつながる場合もある。この理由から、加えて又は代わりに、収差補正器を、集光レンズ231に又はその近くに配置することが望ましい場合がある(例えば、そのような収差補正器の各々が、集光レンズ231のうちの1つ以上に一体化又は直接隣接される)。これは望ましい。なぜなら、集光レンズ231において又はその近くにおいて、集光レンズがビームアパーチャに垂直方向に接近している又は一致しているため、収差が、対応するサブビームのシフトをまだ生じさせていないからである。しかしながら、補正器を集光レンズに又はその近くに配置することに関する課題は、各サブビームが、この場所において、更に下流(又はダウンビーム)の場所におけるよりも、比較的大きい断面積及び比較的小さいピッチを有することである。集光レンズ及び補正器は、同一構造の一部であってもよい。例えば、それらは、例えば電気隔離要素により互いに接続されていてもよい。収差補正器は、欧州特許出願公開第2702595A1号で開示されるようなCMOSベースの個々のプログラマブル偏向器、欧州特許出願公開第2715768A2号で開示されているような多重極偏向器のアレイであってもよく、これら両文献におけるサブビームマニピュレータの説明が参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
[0100] いくつかの実施形態では、少なくとも収差補正器のサブセットの各々が、対物レンズ234のうちの1つ以上に一体化又は直接隣接している。一実施形態では、これら収差補正器は、像面湾曲、焦点誤差、及び非点収差のうちの1つ以上を低減させる。対物レンズ及び/又は制御レンズ及び補正器は、同一構造の一部であってもよい。例えば、それらは、例えば電気隔離要素により互いに接続されていてもよい。加えて又は代わりに、試料208上でサブビーム211、212、213を走査するために、1つ以上の走査偏向器(図示せず)を対物レンズ234のうちの1つ以上に一体化又は直接隣接させてもよい。一実施形態では、米国特許出願公開第2010/0276606号に記載される走査偏向器を使用することができ、この文献は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0085】
[0101] 一実施形態では、単一の検出器要素405が各ビームアパーチャ406を取り囲んでいる。別の実施形態では、複数の検出器要素405が各ビームアパーチャ406の周囲に設けられている。したがって、検出器は、複数の部分、より具体的には複数の検出部分を備える。異なる部分は、異なるゾーンと呼ばれる場合がある。したがって、検出器は、複数のゾーン又は検出ゾーンを有すると説明することができる。このような検出器は、ゾーン検出器と呼ばれる場合がある。1つのビームアパーチャ406を取り囲む検出器要素405により捕捉された信号粒子を、組み合わせて単一の信号にすることができ、又は独立した信号を生成するために使用することができる。複数の部分を備える検出器は、本明細書で説明される検出器アレイの何れに設けられてもよい。
【0086】
[0102] ゾーン検出器は、サブビーム211、212、213のうちの1つに関連付けることができる。したがって、1つの検出器の複数の部分は、サブビーム211、212、213のうちの1つに関連して試料208から放出される信号粒子を検出するように構成されてもよい。複数の部分を備える検出器は、対物レンズアセンブリの電極のうちの少なくとも1つにあるアパーチャのうちの1つに関連付けられてもよい。より具体的には、複数の部分を備える検出器405は、そのような検出器の例を提供する図6A及び図6Bに示すような単一アパーチャ406の周囲に配置されてもよい。
【0087】
[0103] ゾーン検出器の部分は、様々な異なる形態で、例えば半径方向に、環状に、又は何れかの他の適切な形態で分離されてもよい。好ましくは、その部分は、例えば図6Bに示すように、同様の角度方向サイズ、及び/又は同様の面積、及び/又は同様の形状である。分離された部分は、複数の部分、複数の環状部分(例えば、複数の同心状円環又はリング)、及び/又は複数の扇形部分(すなわち、半径方向部分又は扇)として設けられてもよい。検出器要素405は、半径方向に分割されてもよい。例えば、少なくとも1つの検出器405は、2個、3個、4個又はより多くの部分を備える環状部分として設けられてもよい。より具体的には、図6Aに示すように、検出器405は、アパーチャ406を取り囲む内側環状部分405Aと、内側環状部分405Aの半径方向外側にある外側環状部分405Bとを備えてもよい。代わりに、検出器要素405は、角度方向に分割されてもよい。例えば、検出器は、2個、3個、4個又はより多くの部分(例えば8個、12個など)を備える扇形部分として設けられてもよい。検出器が2つの扇として設けられる場合、各扇形部分は半円であってもよい。検出器が4つの扇として設けられる場合、各扇形部分は四分円であってもよい。これは、405が四分円(すなわち、4つの扇)に分割された図6Bに示される。すなわち、後述するように、図6Bでは4つの扇形部分が示される。代わりに、検出器は、少なくとも1つのセグメント部分を備えてもよい。電極要素は、半径方向及び角度方向の両方に、又は何れかの他の簡便な形態で分離されてもよい。
【0088】
[0104] 各部分は、別々の信号読出部を有してもよい。部分、例えば環状部分又は扇形部分に分離されている検出器は、検出された信号粒子に関してより多くの情報を得ることが可能になる点で有益である。したがって、検出器405に複数の部分を設けることは、検出された信号粒子に関する追加の情報を得る際に有益な場合がある。これを使用して、検出された信号粒子の信号対雑音比を改善することができる。しかしながら、検出器の複雑さの点から追加費用が生じる。
【0089】
[0105] 図6Aに示すように、アパーチャ406が画定され、荷電粒子ビームが通過するように構成されている、検出器は、内側検出部分405A及び外側検出部分405Bを備える。内側検出部分405Aは、検出器のアパーチャ406を取り囲んでいる。外側検出部分405Bは、内側検出部分405Aの半径方向外側にある。検出器の形状は、略円形であってもよい。したがって、内側検出部分及び外側検出部分は同心リングであってもよい。一例では、検出器は、図6Aに示すように、2つの(又は、より多くの)同心リングに分割されてもよい。
【0090】
[0106] 複数の部分を同心に又は別様に設けることは有益である。なぜなら、検出器の異なる部分を使用して、例えば、より小さい角度の信号粒子及び/若しくはより大きい角度の信号粒子、又は二次信号粒子及び/若しくは後方散乱信号粒子であってもよい、異なる信号粒子を検出することができるからである。異なる信号粒子のこのような構成は、同心状に区画分けされた検出器に好適な場合がある。異なる角度を有する後方散乱信号粒子は、異なる情報を提供する際に有益な場合がある。例えば、深い穴から放出される信号粒子について、小角度の後方散乱信号粒子は、穴底部から来る可能性が高く、大角度の後方散乱信号粒子は、穴表面及び穴の周囲の材料から来る可能性が高い。代替的実施例では、小角度の後方散乱信号粒子は、より深い埋め込みフィーチャから来る可能性が高く、大角度の後方散乱信号粒子は、試料表面又は埋め込みフィーチャの上の材料から来る可能性が高い。
【0091】
[0107] 図8は、上述した選択肢又は態様の何れかのような荷電粒子デバイスを有する例示的な荷電粒子光学システム、例えば評価ツールの概略図である。荷電粒子デバイスは、荷電粒子のビームを試料上に投影するように構成される。上述した態様又は実施形態の何れかにて説明したような少なくとも対物レンズアレイ241を有する荷電粒子光学デバイスを、図8に示す荷電粒子光学システムにおいて使用することができる。簡潔化のため、既に上述した対物レンズアレイ241のフィーチャは、ここでは繰り返されない場合がある。
【0092】
[0108] 図8のセットアップに特有のいくつかの考慮点がある。本実施形態では、スループットに悪影響を及ぼすことを回避するように、ピッチを小さく保つことが好ましい。しかしながら、ピッチがあまりにも小さいと、クロストークにつながる可能性がある。したがって、ピッチサイズは、後方散乱信号粒子などの選択された信号粒子の効果的な検出と、スループットとのバランスである。したがって、後方散乱信号粒子の検出のためのそのような構成において、ピッチは、好ましくは約300μmであり、これは、二次信号粒子を検出する場合の図8の実施形態における値の4~5倍の大きさである。検出器と試料208との間の距離が低減されると、クロストークに悪影響を及ぼすことなく、ピッチサイズも低減できる。したがって、検出器を試料に可能な限り接近させること(すなわち、距離Lをできるだけ小さくし、好ましくは、約50μm以下、又は約40μm以下、又は約30μm以下、又は約20μm以下、又は約10μm等しくすること)は、ピッチをできるだけ大きくすることを可能にする際に有益であり、それによりスループットが改善される。
【0093】
[0109] 図8に示すように、荷電粒子光学システムは、供給源201を備える。供給源201は、荷電粒子(例えば電子)のビームを供給する。試料208上に集束されるマルチビームは、供給源201により供給されるビームに由来する。サブビーム211、212、213は、例えば、ビーム制限アパーチャのアレイを画定するビームリミッタ(あるいは、ビーム制限アパーチャアレイと呼ばれる場合がある)を使用して、ビームから導出できる。ビームは、制御レンズアレイ250に出会うと、サブビーム211、212、213に分離される場合がある。サブビーム211、212、213は、制御レンズアレイ250に入射する際に実質的に平行である。(一構成では、制御レンズアレイ250は、ビームリミッタを備える。)供給源201は、望ましくは、輝度と全放出電流との間の良好な妥協を有する高輝度熱電界エミッタである。図示する例では、コリメータは、対物レンズアレイアセンブリのアップビームに設けられている。コリメータは、マクロコリメータ270を備えてもよい。マクロコリメータ270は、供給源201からのビームに作用し、その後、ビームはマルチビームに分割される。入射時にビーム断面が実質的にビームリミッタと整合するように、マクロコリメータ270は供給源からのビームをコリメートする。マクロコリメータ270は、ビームのそれぞれの部分を曲げ、そのビームから、サブビームは、[ビームから取り出された]各サブビームのビーム軸が、試料208上に実質的に垂直に(すなわち試料208の名目表面に対して実質的に90°で)入射することを確実にするのに効果的な量だけ取り出される。マクロコリメータ270は、ビームに巨視的コリメーションを適用する。したがって、マクロコリメータ270は、コリメータ要素のアレイを備えて各コリメータ要素がビームの異なる個々の部分に作用するように構成されるよりはむしろ、ビームの全てに作用してもよい。マクロコリメータ270は、複数の磁気レンズサブユニット(例えば、多重極構成を形成する複数の電磁石)を備える磁気レンズ又は磁気レンズ構成を備えてもよい。代わりに又は加えて、マクロコリメータは、少なくとも部分的に静電的に実装されてもよい。マクロコリメータは、複数の静電レンズサブユニットを備える静電レンズ又は静電レンズ構成を備えてもよい。マクロコリメータ270は、磁気レンズと静電レンズとの組合せを使用してもよい。
【0094】
[0110] 別の構成(図示せず)では、マクロコリメータは、上側ビームリミッタのダウンビームに設けられるコリメータ要素アレイにより部分的に又は完全に置換されてもよい。各コリメータ要素は、それぞれのサブビームをコリメートする。コリメータ要素アレイは、空間的にコンパクトになるように、MEMS製造技術を使用して形成されてもよい。コリメータ要素アレイは、供給源201のダウンビームのビーム経路における最初の偏向又は集束荷電粒子光学アレイ要素であってもよい。コリメータ要素アレイは、制御レンズアレイ250のアップビームであってもよい。コリメータ要素アレイは、制御レンズアレイ250と同じモジュール内にあってもよい。
【0095】
[0111] 図8の実施形態では、マクロ走査偏向器265が設けられて、試料208にわたってサブビームを走査させる。マクロ走査偏向器265は、ビームのそれぞれの部分を偏向させて、試料208にわたってサブビームを走査させる。一実施形態では、マクロ走査偏向器265は、例えば8つ以上の極を有する巨視的多重極偏向器を備える。偏向は、ビームから取り出されたサブビームを、試料208の全体にわたって、一方向に(例えば、X軸などの単一軸に平行に)、又は二方向に(例えば、X軸及びY軸などの2つの非平行な軸に対して)、走査させるような偏向である。マクロ走査偏向器265は、偏向器要素のアレイを備えて各偏向器要素がビームの異なる個々の部分に作用するように構成されるよりはむしろ、ビームの全てに作用する。図示する実施形態では、マクロ走査偏向器265は、マクロコリメータ270と制御レンズアレイ250との間に設けられている。
【0096】
[0112] 別の構成(図示せず)では、マクロ走査偏向器265は、走査偏向器アレイにより部分的に又は完全に置換されてもよい。走査偏向器アレイ260は、複数の走査偏向器を備える。走査偏向器アレイ260は、MEMS製造技術を使用して形成されてもよい。各走査偏向器は、試料208上でそれぞれのサブビームを走査する。したがって、走査偏向器アレイ260は、サブビームごとに走査偏向器を備えてもよい。各走査偏向器は、サブビームを、一方向に(例えば、X軸などの単一軸に平行に)、又は二方向に(例えば、X軸及びY軸などの2つの非平行な軸に対して)偏向させてもよい。偏向は、サブビームを、試料208の全体にわたって、一方向又は二方向に(すなわち、一次元的又は二次元的に)走査させるような偏向である。走査偏向器アレイは、対物レンズアレイ241のアップビームであってもよい。走査偏向器アレイは、制御レンズアレイ250のダウンビームであってもよい。走査偏向器に関連付けられた単一のサブビームを参照しているが、サブビームの群が走査偏向器に関連付けられてもよい。一実施形態では、欧州特許第2425444号に記載される走査偏向器を使用して走査偏向器アレイが実装されてもよく、この文献は、とりわけ走査偏向器に関して、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。(例えば、上述したようなMEMS製造技術を使用して形成される)走査偏向器アレイは、マクロ走査偏向器よりも空間的にコンパクトな場合がある。走査偏向器アレイは、対物レンズアレイ241と同じモジュール内にあってもよい。
【0097】
[0113] 他の実施形態では、マクロ走査偏向器265及び走査偏向器アレイの両方が設けられる。そのような構成では、サブビームを試料表面にわたって走査することは、マクロ走査偏向器及び走査偏向器アレイ260を、好ましくは同期させて、一緒に制御することにより実現できる。
【0098】
[0114] 本発明は、様々な異なるツールアーキテクチャに適用できる。例えば、荷電粒子ビームツール40は、単一ビームツールであってもよく、又は複数の単一ビームカラムを備えてもよく、又はマルチビームの複数のカラム(例えばサブビーム)を備えてもよい。カラムは、上述した実施形態又は態様の何れかに記載される荷電粒子光学デバイスを備えてもよい。複数のカラム(又はマルチカラムツール)として、デバイスは、2~100に至る数のカラムを有し得るアレイで配置されてもよい。荷電粒子デバイスは、図3に関して説明され図3に示されるような、又は図8に関して説明され図8に示されるような一実施形態の形をとってもよいが、好ましくは、例えば対物レンズアレイアセンブリにおいて、静電走査偏向器アレイ及び/又は静電コリメータアレイを有する。荷電粒子光学デバイスは、荷電粒子光学カラムであってもよい。荷電粒子カラムは、任意選択で供給源を備えてもよい。
【0099】
[0115] 上述したように、検出器240のアレイは、図4及び図5に示すように、対物レンズアレイ241と試料208との間に設けられてもよい。検出器240のアレイは、対物レンズアレイの少なくとも1つの電極、好ましくは下側電極243に関連付けられてもよい。好ましくは、検出器240のダウンビームのアレイは、使用時に、すなわち試料が存在するときに、試料208に面する。
【0100】
[0116] 追加の又は代わりの検出器アレイが設けられてもよく、これらは他の場所に配置されてもよい。これは、図7に示される。図7に示すように、検出器アレイのうちの1つ、いくつか、又は全てが設けられてもよい。複数の検出器アレイが設けられる場合、それらは信号粒子を同時に検出するように構成されてもよい。対物レンズアレイ241と試料208との間に配置される検出器アレイ240は、図6A及び図6Bに関連して説明されるように、区画分けされた検出器として示される。しかしながら、何れかの適切なタイプの検出器がこのアレイのために使用されてもよい。
【0101】
[0117] 荷電粒子光学デバイスは、本明細書ではミラー検出器350のアレイと呼ばれる検出器のアレイを備えてもよい。ミラー検出器350のアレイは、一次ビーム経路320に沿って(例えば、一次ビーム経路に沿った共通位置に)配置される。ミラー検出器350のアレイは、一次ビーム経路320のアップビームに面するように構成される。換言すれば、ミラー検出器350のアレイは、一次ビーム経路320に沿って(供給源201として上述される)一次ビームの供給源に向かって面するように構成される。ミラー検出器350のアレイは、試料208から離れる方向に面するように構成される。ミラー検出器350のアレイは、あるいは、検出器の上側アレイと呼ばれる場合がある。好ましくは、ミラー検出器350のアレイは、下側電極243と、好ましくは電極のアップビームの表面とに関連付けられる。これは有益な場合がある。なぜなら、ミラー検出器350のアレイが、試料208の比較的近くに、例えば下側電極343の直上に又は下側電極343上に設けられた場合、信号粒子は検出される可能性が高くなる場合があるからである。ミラー検出器350のアレイが対物レンズアレイ241内(すなわち、対物レンズアレイ241の電極間)に配置される場合、その検出器は、レンズ内検出器と呼ばれる場合がある。複数のレンズ電極を有する対物レンズアレイアセンブリの一構成では、ミラー電極のアップビームに別の電極が位置して、信号粒子をミラー電極に向かって反射させる限り、他の電極がミラー電極を特徴とすることができる。
【0102】
[0118] 荷電粒子光学デバイスは、試料に向かって面する、すなわち試料208の方向に面する、少なくとも1つの検出器のアップビームアレイを備えてもよい。換言すれば、検出器のアップビームアレイは、一次ビーム経路320に沿った方向に試料208に向かって面してもよい。荷電粒子光学デバイスは、検出器の上側アレイ370を備えてもよい。検出器の上側アレイ370は、対物レンズアレイ241の上側電極242のダウンビーム表面に関連付けられてもよい。より一般的には、より多くの電極が対物レンズアレイに設けられる場合、検出器の上側アレイ370を、何れかの適切な電極のダウンビームの表面に関連付けることができる。検出器の上側アレイ370は、上側電極342と下側電極343との間に、又は対物レンズアレイの最も下側の電極の上方にある何れかの他の電極間に配置されてもよい。上述したように、検出器の上側アレイ370は、図7に関連する下側電極243である少なくとも1つの電極のアップビームに(一次サブビーム211及び212を基準にして)設けられる。加えて又は代わりに、荷電粒子光学デバイスは、検出器のレンズ上方アレイ380を備えてもよい。換言すれば、検出器のアップビームアレイは、対物レンズアレイ241の上方にあってもよい。検出器のレンズ上方アレイ380は、対物レンズアレイ241を形成する全ての電極のアップビームにあってもよい。検出器のレンズ上方アレイ380は、レンズ上方検出器アレイ380が対物レンズアレイとは別個のそれ自身の機械的支持を有するプレート又は基板となるように、電極242から間隔を空けていてもよい。
【0103】
[0119] 検出器アレイの何れも、対物レンズアレイ241の少なくとも1つの電極(例えば、上側電極242又は下側電極243)に関連付けられる(例えば、その中にある、その上にある、それに隣接して配置される、それに接続される、又はそれに一体化される)ことができる。例えば、検出器のアレイは、対物レンズアレイ241の少なくとも1つの電極の中に又はその上にあってもよい。例えば、検出器のアレイは、電極のうちの1つに隣接して配置されてもよい。換言すれば、検出器のアレイは、電極のうちの1つに極めて近接して及び隣接して配置されてもよい。例えば、検出器のアレイは、電極のうちの1つに接続(例えば、機械的に接続)されてもよい。換言すれば、検出器のアレイは、例えば、接着剤、又は溶接、又はいくつかの他の取付け方法によって、電極のうちの1つに取り付けられてもよい。例えば、検出器のアレイは、電極のうちの1つに一体化されてもよい。換言すれば、ミラー検出器のアレイは、電極のうちの1つの一部として形成されてもよい。
【0104】
[0120] 検出器アレイの組合せが、設けられてもよい。例えば、検出器のダウンビームアレイ240、及び/又はミラー検出器のアレイ350、及び/又は検出器の上側アレイ370、及び/又は検出器のレンズ上方アレイ380が設けられてもよい。デバイスは、検出器の追加アレイを備えてもよく、これは、検出器のダウンビームアレイ240、及び/又はミラー検出器のアレイ350、及び/又は検出器の上側アレイ370、及び/又は検出器のレンズ上方アレイ380の何れかの組合せで設けられてもよい。アレイの上述した組合せから明白となるように、何れかの適切な数の検出器アレイが存在することができる。例えば、検出器のアップビームアレイ、及び/又は検出器のダウンビームアレイに関して上述したように、何れかの適切な場所に配置される、2個、又は3個、又は4個、又は5個、又は6個以上の検出器のアレイが存在できる。どの検出器アレイが設けられても、それらは同時に使用されてもよい。何れかの検出器アレイ(例えば、ミラー検出器のアレイ350、及び/又は検出器の上側アレイ370、及び/又は検出器のレンズ上方アレイ380、及び/又は検出器のダウンビームアレイ360、及び/又は検出器の何れかの追加アレイ)の電位が、試料208の電位を基準として選択されて、信号粒子、少なくともその検出器アレイの検出が制御されてもよい。サブビームのアレイ(あるいは、一次ビームのアレイと呼ばれる)は、設けられる何れかの/全ての検出器アレイに対応してもよい。したがって、サブビームのアレイは、ミラー検出器240のアレイ、及び/又は検出器のダウンビームアレイ360、及び/又は検出器の上側アレイ370、及び/又は検出器のレンズ上方アレイ380に対応することができる。したがって、何れかの/全ての検出器アレイをサブビームに整列させることができる。
【0105】
[0121] 図9は、一実施形態による例示的な単一ビーム荷電粒子ビームツール40の概略図である。図9に示すように、一実施形態では、荷電粒子ビームツール40は、検査される試料208を保持するための電動ステージ209により支持される試料ホルダ207を備える。荷電粒子ビームツール40は、荷電粒子源201を備える。荷電粒子ビームツール40は、ガンアパーチャ122、ビーム制限アパーチャ125(又はビームリミッタ)、集光レンズ126、カラムアパーチャ135、対物レンズアセンブリ132、及び荷電粒子検出器144(あるいは、電子検出器と呼ばれる場合がある)を更に備える。対物レンズアセンブリ132は、いくつかの実施形態では、変更スウィング対物レンズ制動液浸レンズ(SORIL(modified swing objective retarding immersion lens))であってもよく、これは、極片132a、制御電極132b、偏向器132c、及び励磁コイル132dを含む。制御電極132bは、荷電粒子ビームの通過のための、その中に形成されたアパーチャを有する。制御電極132bは、試料208に面する表面を形成する。図9に示す荷電粒子ビームツール40は、単一ビームシステムであるが、一実施形態では、マルチビームシステムが提供される。そのようなマルチビームシステムは、図9に示すものと同じ特徴、例えば対物レンズアセンブリ132を有してもよい。そのようなマルチビームシステムは、加えて、例えば集光レンズのダウンビームに、サブビームを生成するためのビームリミッタアレイを有してもよい。例えばビームリミッタアレイのダウンビームにおいて、ビームリミッタアレイに関連付けられているのは、サブビームを最適化及び調整し、サブビームの収差を低減させるための、偏向器アレイ及びレンズアレイなどの複数の荷電粒子アレイ要素であってもよい。そのようなマルチビームシステムは、信号荷電粒子を検出するための二次カラムを有してもよい。信号粒子を二次カラムにおける検出器に向かって導くために、ウィーンフィルタが対物レンズアセンブリのアップビームにあってもよい。
【0106】
[0122] 撮像プロセスでは、供給源201から発せられる荷電粒子ビームが、ガンアパーチャ122、ビーム制限アパーチャ125、集光レンズ126を通過し、変更SORILレンズによってプローブスポット上に焦束され、次いで試料208の表面上に衝突することができる。プローブスポットは、偏向器132cにより又はSORILレンズ内の他の偏向器により、試料208の表面の全体にわたって走査されてもよい。試料表面から発せられる信号粒子が荷電粒子検出器144によって収集されて、試料208上の関心の対象であるエリアの画像が形成されてもよい。
【0107】
[0123] 荷電粒子ビームツール40のコンデンサ及び照明光学系は、電磁四重極荷電粒子レンズを備えてもよい又はそれにより補足されてもよい。例えば、図9に示すように、荷電粒子ビームツール40は、第1の四重極レンズ148及び第2の四重極レンズ158を備えてもよい。一実施形態では、四重極レンズは、荷電粒子ビームを制御するために使用される。例えば、第1の四重極レンズ148を制御してビーム電流を調整することができ、第2の四重極レンズ158を制御してビームスポットサイズ及びビーム形状を調整することができる。
【0108】
[0124] 上述したように、図6A及び図6Bに関連して上述したような検出器要素405の一部として、区画分けされた検出器が、複数の検出器部分(例えば、センサ要素)を有してもよい。各検出器要素(又はセンサユニット)のための複数の検出器部分は、アパーチャの周囲に設けられる。複数の検出器部分は、一緒に、円形の外周及び/又は直径を有してもよい。複数の検出器部分は、一緒に、複数の検出器部分のアパーチャと外周との間に延びるエリアを有してもよい。複数の検出器要素は、矩形アレイで又は六角形アレイで配置されてもよい。1つのアパーチャを取り囲む検出器部分により捕捉された信号粒子から生成された信号は、組み合わせて単一の信号にすることができる、又は独立した信号を生成するために使用することができる。検出器要素の表面、及び任意選択でその検出器部分は、検出器要素を支持する基板の表面を実質的に満たしてもよい。
【0109】
[0125] 図10Aに示すように、試料に面する、更には使用時に試料に近接する、検出器アレイ又は検出器モジュールの表面は、検出器要素のアレイ(又は検出器のアレイ)を特徴とする。各検出器要素は、アパーチャに関連付けられている。各検出器要素は、検出器モジュールの基板の割り当てられた表面積に関連付けられている。基板は、例えばCMOS構造を有することで、層状であるため、基板内の各層が、それぞれの検出器要素を基準にして、好ましくは近接して配置されている。市販のCMOS構造は、通常範囲の層、例えば、3~10層、通常は約5層を有する。(例えば、説明を容易にするため、2つの機能層が提供される場合がある。配線層及び論理層のこれら2つの層は、必要とされる数の層を表す場合があり、各層はそれぞれ配線又は論理に制限されない)。層の数は商業的な利用可能性により制限され、いかなる数の層も実現可能である。しかしながら、実用性の観点では、効率的な設計のためには利用可能なスペースが制限されるため、基板は制限された数の層を有する。
【0110】
[0126] 理想的には、配線層及び/又は論理層であり得る、基板の回路層は、各検出器要素(又は検出器)に割り当てられた部分を有する。異なる層の割り当てられた部分は、セル550と呼ばれる場合がある。完全マルチビーム構成のための、基板における部分の構成は、セルアレイ552と呼ばれる場合がある。セル550は、各検出器要素に割り当てられた表面エリアと同じ形状であってもよく、例えば、六角形、又は敷き詰めることができて矩形形状のように全ての形状及び/又は面積が同様であり得る何れかの合理的な形状であってもよい。矩形形状又は直線形状を有することは、プレイスアンドルート(placing and routing)設計によって、より容易に使用できる。そのような設計は、一般に、六角形アーキテクチャにおけるような鋭角又は鈍角を必要とするアーキテクチャよりも、チップを矩形タイプのアーキテクチャを用いて直交方向に画定するのに適したソフトウェアによって実装される。図10Aでは、セル550は六角形として示され、セルアレイ552は個々のセルを備える六角形として示される。しかしながら、理想的には、各々が、検出器要素に対して同様に配置される。配線ルート554が、各セル550に接続してもよい。配線ルート554は、セルアレイ552の他のセルの間をルーティングされてもよい。留意点:配線ルートがアレイのセル間にあることへの言及は、少なくとも配線ルートが、例えばセルアレイを通って画定されるアパーチャのアレイのビームアパーチャを回避することが意図される。回路アーキテクチャの構成において、少なくとも回路層におけるセルサイズを低減させて配線ルートを収容してもよく、その結果、配線ルートはセル間をルーティングされる。加えて又は代わりに、配線ルートは、セルアレイのセルを好ましくはセルの外周に向かって通過して、例えば、セル内の他の回路との配線ルートの干渉を低減させている。したがって、セル間の配線ルートへの言及は、セルの回路間の配線ルート、及び好ましくはセルの周辺に向かいセルを通るビームアパーチャの少なくとも周囲にあるセル内の配線ルート、並びに何れかの中間的な変形形態を包含する。これらの全ての構成では、例えばCMOSアーキテクチャでは、配線ルートは、配線ルートの一部と同じセル内にある回路又は周囲に配線ルートがルーティングされるセル内の回路を画定し得る、他の回路と同じダイ内にあってもよい。したがって、セル及び配線ルートは、モノリシック構造の一部であってもよい。配線ルート554は、セルを信号で接続してもよい。したがって、配線ルートは、セル550を、セルアレイ、又は更には基板若しくは検出器モジュールの外部にある、コントローラ又はデータプロセッサに信号で接続する。回路層は、センサ信号をセルからセルアレイの外部に伝達するためのデータパス層を備えてもよい。
【0111】
[0127] コントローラ又はデータプロセッサは、基板内の回路又は検出器モジュールの前に、好ましくは、例えば制御及びI/O回路(図示せず)としてセルアレイの外部にあってもよい。制御及びI/O回路は、セルアレイと同じダイ内にあってもよく、制御及びI/O回路は、例えば同じCMOSチップ内で、セルアレイにモノリシックに一体化されてもよい。制御及びI/O回路は、セルアレイ552の全てのセルからのデータ間での効率的な接続を可能にする。例えば、それぞれが8ビットのデジタル出力を有する2791個のセルの構成を考える。このような構成は、CMOSチップの外側に位置する電子機器に対する22328個(すなわち、8つのビット出力×2791個のセル)の信号を有することになる。このようにする標準的な方法は、SERDES回路(シリアライザ/デシリアライザ)を使用することである。このような回路は、時分割多重方式によって、多数の低データレート信号を、より少ない数の高データレート信号に変換する。したがって、制御及びI/O回路を、セルアレイとモノリシックにすること、又は検出器モジュールの外部ではなく、少なくとも検出器モジュール内に有することが有益である。
【0112】
[0128] 実施形態では、制御及びI/O回路は、例えば、本明細書に記載されるような増幅と減算などのオフセットとの制御のために特定の設定をロードすることを可能にするために、CMOSチップの外部の電子回路と通信するための回路などの一般的なサポート機能を特徴とし得る。
【0113】
[0129] セル550の回路層は、それぞれのセルの検出器要素に接続される。回路層は、増幅及び/デジタル化機能を有する回路を備え、例えば、それは増幅回路を備えてもよい。セル550は、図10Bに示すように、トランスインピーダンス増幅器(TIA)556及びアナログ-デジタル変換器(ADC)558を備えてもよい。この図は、捕捉電極などの関連付けられた検出器要素、及びトランスインピーダンス増幅器556に接続されたフィードバックレジスタ562、及びアナログ-デジタル変換器558を有する、セル550を概略的に示す。アナログ-デジタル変換器558からのデジタル信号ライン559は、セル550を離れる。検出器要素は、検出器要素560として示され、フィードバックレジスタは、トランスインピーダンス増幅器556に関連付けられるのではなく、ディスク562としての検出器エリアに関連付けられて示されることに留意されたい。この概略図は、検出器要素及びフィードバックレジスタの各々を、それらの相対サイズを示すためのエリアとして示すためのものであり、その理由は、図10Cを参照すると明らかとなるであろう。
【0114】
[0130] トランスインピーダンス増幅器は、フィードバックレジスタRf562を備えてもよい。フィードバックレジスタRfの大きさは、最適化されなければならない。このフィードバックレジスタの値が大きくなるほど、入力参照電流雑音は低くなる。したがって、トランスインピーダンス増幅器の出力における信号対雑音比が向上する。しかしながら、抵抗Rfが大きくなるほど、帯域幅は小さくなる。有限帯域幅は、信号の有限の立上り時間及び立下り時間をもたらし、それにより更なる画像ぼやけがもたらされる。最適化されたRfが、雑音レベルと追加の画像ぼやけとの間の良好な平衡をもたらす。
【0115】
[0131] 設計を実装するために、回路、すなわち各検出器要素に関連付けられた増幅回路は、関連付けられたセル550の層内に存在し、各関連付けられた層の一部の利用可能な限定されたエリア内に収まるべきである。サブビームピッチが70マイクロメートルの場合、セル内の層当たりの利用可能エリアは、典型的には4000平方マイクロメートルだけである。例えば検出器要素によって測定されるべき電流として、感知された二次及び/又は後方散乱信号粒子に応じて、フィードバックレジスタRfの最適値は、30~300メガオームに達する可能性がある。そのようなレジスタが標準CMOSプロセスにおけるポリレジスタとして実装される場合、そのようなレジスタのサイズは、セル550のCMOS層内で利用可能なエリアよりも遥かに大きくなるであろう。例えば、300メガオームのレジスタは、約50万平方マイクロメートルを消費する。これは、全ての利用可能なエリアの約130倍の大きさである。
【0116】
[0132] 典型的には、例えばCMOSアーキテクチャでは、このように大きいレジスタは、例えばポリシリコンの単一層において作製される。通常、ポリシリコンの単一層が存在する。状況によっては、高いレジスタ値を提供することが可能な材料を有する層を設けることができるが、そのような高アスペクト比(例えば、層内の抵抗構造の幅に対して極端な長さ)では、レジスタの信頼性は残る。たとえセルがそのようなレジスタに使用される複数の層を有するとしても、例えば、CMOS技術を使用して容易に利用可能な更に多くの層が存在しなければならない。加えて又は代わりに、異なる複数の層を通る蛇行する経路は、高アスペクト比を軽減することはなく、抵抗値の変動のリスクは、異なる層間の相互接続によってのみもたらされる。そのような相互接続は、本明細書で後述されるように、曲がり角としてのレジスタの抵抗値の変動に影響を及ぼす。
【0117】
[0133] そのような寸法は、180nmノードのアーキテクチャ及びプロセシングを想定して計算されることに留意されたい。代わりに、より小さいプロセシングノードが使用される場合、レジスタ構造の寸法を減らす際に千分の一になることはありそうにない。更に、180ノードアーキテクチャを使用することは、プロセシングの理由により、より小さいノードよりも好ましい。例えば、180nmノードにおける相互接続は、処理がより単純である。例えばビームアパーチャ504をエッチングする際、検出器チップのポストプロセシングは、アルミニウム相互接続を使用する。サブ180nmノードでのそのようなポストプロセシングは、典型的には、銅相互接続を用いるプロセスを使用する。したがって、180nmでのプロセシングは、サブ180nmよりも単純である。
【0118】
[0134] 更に、そのようなレジスタが作製される場合は、何れのノードにおいても、レジスタの仕様の信頼性、並びにレジスタにとって利用可能なスペースは課題となる場合がある。
【0119】
[0135] 層状構造のチップアーキテクチャ、例えばCMOSでは、構成要素及びフィーチャは、層における構造として画定される。構成要素の仕様は、層の材料及び層の物理的特性、層の寸法、特にその厚さ、及び層に形成される構造の寸法に依存する。レジスタは、長く狭い経路、ルート又はワイヤの形態を取ることができる。空間的制約を考慮すると、経路は非線形であってもよく、その経路に沿って曲がり角を有してもよい。このような長い構成要素では、層における経路の幅は、例えば製造公差によって変動する場合がある。曲がり角は、経路の線形区画よりも大きな変動をもたらす場合があり、特定の抵抗値を得るようにレジスタを作製する際の精度が制限される。多くの曲がり角及び長い長さを有することより、そのようなトポロジを有するレジスタが低い信頼性を伴って作製される場合があり、その結果、セルアレイの異なるセルにおける等価なレジスタの抵抗値が大きな範囲を有する場合がある。
【0120】
[0136] そのような抵抗性構造体は、大きな表面積を有する。加えて又は代わりに、そのような広い表面積を有するレジスタは、望ましくない静電容量を追加で有することになる。そのような静電容量は寄生容量と呼ばれる。寄生容量は、望ましくないことにノイズ及びぼやけをもたらす場合があり、ノイズ、ぼやけ及び帯域幅の最適化のバランスに影響を及ぼし、これについては本明細書の別の場所で説明する。
【0121】
[0137] 層の材料特性は、化学的に改質させることができる。しかしながら、そのような改質により、セル内の利用可能なスペースに適合するような数桁にわたるサイズの改善が達成される可能性は小さいと考えられる。そのような改質は、フィードバックレジスタのトポグラフィを大幅に変化させる可能性は小さく、したがって、必要な仕様をもたらし、所望の信頼性を伴う精度で実現できる。
【0122】
[0138] 信頼性及びサイズにおけるそのような要件により、帯域幅、信号対雑音比、及び安定性の観点で、レジスタが、その所望の性能を達成することが可能になるであろう。残念なことに、これらの要件を満たすことはできない。
【0123】
[0139] そのように大きなフィードバックレジスタを必要としない代替の増幅回路が提案される。実施例としては、フィードバック要素としての疑似レジスタを有するトランスインピーダンス増幅器、及びトランスインピーダンス増幅器の必要性がないダイレクトアナログ-デジタル変換器が挙げられる。直接アナログ-デジタル変換器の2つの実施例が、低デューティサイクル切替レジスタを使用するもの(図11)、及び基準キャパシタを使用するもの(図12)である。任意選択の構成は、セル550からアナログ-デジタル変換器558を除去し、それにより、アナログ-デジタル変換器がセルアレイ552の外部にあって、セル550内のトランスインピーダンス増幅器556に回路ワイヤ570を接続させることである(図10C)。図10Cに示す構成は、例えば図11及び図12に示すように、増幅回路に適用されてもよい。ここで各選択肢について順次言及する。説明される例示的な増幅回路は、使用可能な増幅回路のいくつかの適切なタイプに過ぎない。本明細書で説明される利点と同様の利点を実現する他の増幅回路、及び本明細書で説明されるものと同様の回路アーキテクチャを各セルに使用する他の増幅回路が存在し得る。
【0124】
[0140] 代替の増幅回路は、例えば切替レジスタ又はキャパシタを使用する直接アナログ-デジタル変換器であり、これらは、図11及び図12に示すように、検出器要素503の出力に直接接続されている。適切なタイプの直接アナログ-デジタル変換器は、電荷平衡直接電流デジタル変換器である。直接アナログ-デジタル変換器を使用することにより、トランスインピーダンス増幅器を使用すること、及びフィードバックレジスタRf又は特殊な代替形態を有することが回避される。トランスインピーダンス増幅器を除去することにより、増幅回路において最も電力を消費する構成要素が除去され、入力ノイズの主な供給源が除去される。デルタ/シグマ変調器が、電荷平衡直接電流デジタル変換器の最良の実現をもたらす。2つの可能な解決策が図11及び図12に示され、それらは、基準として低デューティサイクルスイッチドレジスタを使用すること、及び基準としてスイッチドキャパシタを使用することである。これらの回路は例示であり、他の適切な回路が存在できる。
【0125】
[0141] 低デューティサイクル切替レジスタを有する適切な直接電流デジタル変換器が、簡略化された形で図11に示される。回路は、検出器要素503からの出力が入力される積算器A、及び基準レジスタRdacを有する。キャパシタCintは、積算器Aのフィードバックループである。積算器Aから出力された信号は、アナログ信号をデジタル信号に変換する最終ステップのために比較器により処理される。ビットストリームbsが、電荷平衡ループを用いて、比較器の出力から制御スイッチに、基準電流Idacのためのフィードバックを提供する。制御スイッチの設計は、センサ電流Iinと基準電流Idacとの間の長期的に安定した均衡を確実にする手助けをする。これは、積算器が、その出力信号をクリップしないことを確実にする手助けをする。出力ビットストリームbsは、センサ電流Iinのデジタル化されたバージョンである。
【0126】
[0142] 低デューティサイクル切替レジスタを有するそのような直接電流デジタル変換器を使用する際に、例えばCMOS回路を実現する際に、基準レジスタRdacのサイズは低減される。これは、クロック周期Tclockにおける非常に小さい部分tについて、基準レジスタRdacを積算器Aの入力に接続することにより実現される。この結果、小さいデューティサイクル、t/Tclock、例えば1:1000が得られる。この短い接続時間は、検出器要素からの電流Iin、すなわちセンサ電流、にて伝達される電荷を平衡させるのに必要な基準電流Idacにおける電荷を伝達するには十分である。このように基準電流を供給してセンサ電流を平衡させることは、基準雑音を小さくすることを確実にする手助けをする。それでも、このような低デューティサイクルの使用により、標準的なトランスインピーダンス増幅器のフィードバックレジスタRなどの、大きなレジスタによって実現されるものと同じ効果が可能になる。したがって、この解決策は、別様に使用されるものよりも小さいサイズのレジスタを適用し、デューティサイクルを使用して、その有効サイズを増やし、更にレジスタの実効的なサイズを最小化するものであり、効果は、このタイプの増幅回路によって必要とされるセル内の回路層に関する。
【0127】
[0143] 基準キャパシタを有する適切な直接電流-デジタル変換器が、簡略化された形で図12に示される。特に明記しない限り、この回路は、図11に示すような低デューティサイクルスイッチドレジスタを有する電流-デジタル変換器と厳密に同じ特徴を有する。スイッチド構成で配置された容量性デジタル-アナログ変換器567が、基準電流を供給する。このようなスイッチドキャパシタデジタル-アナログ変換器が、少なくとも1つのキャパシタを含み、並列キャパシタネットワークを含んでもよい。個々のキャパシタが、入力に基づいてスイッチに対して接続又は切断される。キャパシタベース回路として、容量性デジタル-アナログ変換器567が、基準キャパシタCdacとして示され得る。基準レジスタRdacの代わりに、基準キャパシタCdacが使用される。キャパシタが使用されるので、適切なサイズのキャパシタの選択が、適切な基準電流Idacを生成し、したがって、基準回路へのクロック信号fによって電力供給されるパルサーは必要ない。積算器へのクロックの使用を制限することで、クロックジッターの効果が最小化される。センサ電流Iinに対する基準電流Idacの影響は、センサ電流の信号を量子化することである。これは、事実上、直接デジタル変換である。
【0128】
[0144] 図10Cに示すように、セル550は、検出器要素560に接続されたトランスインピーダンス増幅器556を備える。この増幅回路に関連付けられるのは、効果的なフィードバックレジスタ568である。トランスインピーダンス増幅器の出力は、セルから離れたアナログ-デジタル変換器558(図示せず)に接続される。回路ワイヤ570が、トランスインピーダンス増幅器及びアナログ-デジタル変換器を接続する。回路ワイヤ570は、アナログ信号を送信する。セルアレイ552が密に実装されることを考慮すれば、アナログ-デジタル変換器はセルアレイの外部にあり、例えば、セルアレイ552と同じダイ上にあり、及び/又はセルアレイ552にモノリシックに一体化される。一実施形態では、アナログ-デジタル変換器558は、検出器モジュールの基板に存在する。代わりに、アナログ-デジタル変換器は、基板から離れており、例えば、それは、基板の外部にあるプロセッサの一部である。
【0129】
[0145] 図10B及び図10Cに示すセル間での構成要素の違いは、図10Cのセルが、トランスインピーダンス増幅器のみを含み、アナログ-デジタル変換を含まず、回路ワイヤ270が、アナログ-デジタル変換器によって伝送されるデジタル信号ではなく、アナログ信号を伝送する点である。セル550からアナログ-デジタル変換器を除去することにより、セル550の回路層には、フィードバックレジスタ要素のために利用可能なスペースがより多く存在する。この相対的な違いは、図10B及び図10Cにおけるフィードバックレジスタエリア562の相対サイズによって認識することができる(しかし、相対寸法は、これら2つの図の他のフィーチャには必ずしも当てはまらないことに留意されたい)。増幅器回路が、代替のトランスインピーダンス増幅器回路を使用する場合、例えば、疑似レジスタを有するトランスインピーダンス増幅器がフィードバック要素として使用される場合、セル550の回路層には更に多くのスペースが存在する。
【0130】
[0146] 疑似レジスタフィードバック要素を有するトランスインピーダンス増幅器556と、アナログ-デジタル変換器とを、セルの回路層に収めることはより容易な場合があるが、一構成では、アナログ-デジタル変換器558がセルアレイ552の外部にあることが、スペース制約のためにより実用的である。これは、面積において1~2桁の利得をもたらす、トランスインピーダンス増幅器のフィードバック要素における疑似レジスタの使用にもかかわらずそうである。アナログ-デジタル変換器558がセルアレイ552の外部にあるか否かを判断するための検討事項の1つは、マルチビームのサブビームピッチである。例えば、70マイクロメートルのサブビームピッチの場合、典型的には、増幅回路を含む回路のために、セルの1層当たり4000平方マイクロメートルのみが利用可能である。
【0131】
[0147] そのようなスペース制約下では、トランスインピーダンス増幅器は、各ビームのセル内に位置する。アナログ-デジタル変換器は、サブビームのアレイの外側、すなわちセルアレイの外側に位置する。一実施形態では、アナログ-デジタル変換器は、セルアレイと同じダイ上に、例えばセルアレイとモノリシックに存在する。そのようなアナログ-デジタル変換器は、検出器モジュール上に存在し得る又はセルアレイ552とモノリシックであり得る、制御及びI/O回路と共に配置されてもよい。アナログ-デジタル変換器をセルアレイの外部に配置することは、約2倍のエリア利得をもたらす場合がある。
【0132】
[0148] 回路ワイヤ570は、セル550内のトランスインピーダンス増幅器を、関連付けられたアナログ-デジタル変換器558に接続する。回路ワイヤ570は、アナログ信号を送信する。デジタル信号と異なり、アナログ信号を送信するデータ経路は、干渉の影響を受けやすい。信号干渉は、他の回路ワイヤとのクロストーク、及びマルチビームのサブビームによって生成されるような外部電界並びに対物レンズアレイ241などの近くの荷電粒子光学構成要素からの電界に由来するものである可能性がある。
【0133】
[0149] 回路ワイヤ570は、図10Aに示すように、配線ルート554を通してルーティングされる。配線ルート554は、セル及びその層のエリアが、セル上に存在する増幅回路のために使用されるようにルーティングされる。したがって、配線ルート554は、配線ルートが存在する回路層の一部、すなわち隣接するセル550間(例えば、少なくとも隣接するセル550のビームアパーチャ504、406の周囲、セルの周辺に向いた隣接セル550を通して、若しくは隣接するセル550に割り当てられた層内の回路間、又は記載された構成間の何れかの構成)のみを使用する。このルーティングは、増幅回路と、配線ルート554のアーキテクチャとの構造的干渉を回避する。回路ワイヤは、外向き方向、例えば半径方向外向き方向に、セルアレイ内の配線ルートに沿ってルーティングされる。セルアレイ552の外周に近接するにつれて、外周から離れた配線ルート554の部分よりも多くの回路ワイヤ570が存在する場合がある。配線ルートは、複数の回路ワイヤ570を有する場合があり、これは、上述するように、アレイのセル間に存在する。したがって、配線ルート554の一部は、2つ以上の回路ワイヤ570を有することができる。しかしながら、回路ワイヤを互いに接近させて配置することにより、回路ワイヤ間のクロストーク、及び回路ワイヤ570によって送信されるアナログ信号の干渉のリスクが生じる。
【0134】
[0150] クロストーク及び信号干渉のリスクは、配線ルート内で回路ワイヤ570を互いにシールドすることにより、少なくとも低減させること又は更には防止することができる。図13は、配線ルート554の例示的構成の断面を示す。配線ルート554内には、配線ルート554と同じ方向に延びるように示される1つ以上の回路ワイヤ470と、シールド構成とがある。回路ワイヤは、同じ層内に示される。回路ワイヤ570の上方には、上側シールド層572があり、回路ワイヤ570の下方には、下側シールド層574がある。シールド構成の上側及び下側シールド層は、回路ワイヤ570を、配線ルート554の上方及び下方にあり配線ルート554の外部電界からシールドする。シールド構成は、回路ワイヤ570と同じ層内にシールド要素を有する。シールド要素は、回路ワイヤ570を備える層の外側エッジにある外側要素576であってもよい。外側要素576は、回路ワイヤ570を配線ルート554の外部電界からをシールドする。シールド要素は、隣接する回路ワイヤ間の層内に存在する中間シールド要素578を含んでもよい。したがって、中間シールド要素578は、回路ワイヤ570間のクロストークを、防止するとは言わないまでも、少なくとも抑制することができる。動作時、シールド層572、574及びシールド要素576、578に対して共通電位が印加される。電位は、基準電位、例えば接地電位であってもよい。
【0135】
[0151] 図13は、3層構成を示すが、配線ルート570では、望まれ得る数の層が使用されてもよい。例えば、3つのシールド層を必要とする2層の回路ワイヤが存在してもよく、このシールド層は、上側シールド層572、下側シールド層574、及び中間シールド層を含む。中間シールド層は、配線ルート570の異なる層内の回路ワイヤ間のクロストークを、防止するとは言わないまでも、更に低減させることができる。したがって、合計で5つの層が存在する。回路ワイヤの層が追加されるごとに、追加の中間シールド層が必要とされる。配線ルート554において層の数を増加させることにより、ワイヤルーティングが必要とする層の割合が減少するが、そのような設計のバリエーションは、更なる層を必要とする。限られた数の層を考慮すると、検出器モジュールの基板の他の箇所で必要とされる層の数を超えることなく、配線ルートの幅が縮小される最適な層の数が存在し、これは、5つの層に限定され得る。
【0136】
[0152] 配線ルートの設計の更なる検討事項は、検出器モジュールの例示的設計において存在する必要があり得る回路ワイヤの数であり、例えば1つの層内に全ての回路ワイヤ570がある図13の構成を考える。
【0137】
[0153] 例えば、サブビームのアレイが、30個のリングを有する六角形アレイで配置される。したがって、検出器モジュールは、対応する設計のセルアレイを有する。セルの数は、約3000個、例えば2791個である。そのようなセルアレイが、70マイクロメートルのピッチを有し、最も内側のセルが0次のリング(リング#0)であって単一セルを有し、最も内側のリング(リング#1)が中心セルの周囲にあり、最も外側のリング(リングN)がセルアレイの外周を画定し6N個のセルからなると仮定する。30個のリングのセルアレイの場合、セルの総数は、以下に等しい。
【数1】
【0138】
[0154] 最も外側のリングは、リングを通してルーティングされる必要がある信号の数が最も多い。配線ルートが各セルのセル間をルーティングされると考えると、これらの信号は、最も外側のリングを通して、最も外側のリングのセル間をルーティングされる。最も外側のリングが180個のセルからなるため(例えば、30番目のリングに6を乗算する、すなわち30×6=6Nである)、最も外側のリングを通して、例えば最も外側のリングのセル間を運ばれる信号の数は、以下の通りである。
【数2】
【0139】
[0155] 外側リングを通して隣接セル間をルーティングされるべき信号の最大数は、信号の総数(2611)を最も外側のリングのセルの数(180)で割ったものである。これは、15(小数点第1位で切り上げたもの)である。例えば、クロストーク及び外部電界の影響を制限するために、信号が十分にシールドされるように、配線ルートはシールド構成を有する。単一層のワイヤ回路では、層は、配線ルートのエッジにおける外側要素576と、隣接する回路ワイヤ570間の中間シールド要素578とを有してもよい。15個の回路ワイヤ570の配線ルートの場合、14個の中間シールド要素及び2個の外側シールド要素576を含む16個のシールド要素が存在する。したがって、この例の外側リングの隣接セル550間では、同じ層内に全ての回路ワイヤを有する配線ルートは、交互配置されたシールド要素及び回路ワイヤからなる31個の要素を有する。
【0140】
[0156] 70マイクロメートルのピッチを有する、ビームアレイ用のセルアレイ552の場合、そのような配線ルート554のために、回路層内で利用可能な十分なスペース又はエリアが存在する。180nmノードのプロセスを使用して作られた構造では、金属層の最小ハーフピッチは、典型的には約280nmである。これに関連して、ハーフピッチはラインであり、ピッチは、ライン及び隣接するギャップを有する関連付けられたギャップである。関連付けられたギャップは、典型的にはラインと同じ幅である。31個の要素のための配線ルートは、31個のピッチを必要とする。しかしながら、外側要素576に対応する要素のうちの1つの関連付けられたギャップは、配線ルート554の一部ではなく、配線ルートを隣接する回路から分離することになる。したがって、31個の要素の場合、61個のハーフピッチが必要であり、このハーフピッチは、17.1マイクロメートルの回路配線554の幅に対応する。
【0141】
[0157] 異なる構成では、ビームアレイは、108個のリング及び約35000個のセルを有する六角形であってもよく、モノリシックビームアレイと見なされてもよい。最も外部のリングは、約650個のセルを有する。約34350個の信号が、最も外側のリングを通してルーティングされる必要がある。したがって、約54個の信号が、最も外側のリングにおける隣接するセルを通してルーティングされる必要がある。54個の回路ワイヤ570を有する配線ルート554が、55個のシールド要素を有する。このアーキテクチャを280nmのハーフピッチに適用する際に、前の例に関するものと同様の計算を適用すると、回路ワイヤの幅は、61マイクロメートル未満となる。このサイズは、最も外側のリングのセル550間に収まる。代替的構成では、ビーム構成は2つ以上のストリップに分配され、1つ以上の中間ストリップが、支持構造、導管などの冷却フィーチャ、データ伝送ライン等をルーティングするためのものである。そのようなビームアレイは、ストリップビームアレイと呼ばれる場合がある。したがって、配線ルートは、1つ以上の中間ストリップを通してルーティングされてもよい。これは、より大きいビームアレイ、したがってセルアレイを可能にし、しかも合理的なサイズの配線ルートが維持される。ストリップビームアレイが、モノリシックビームアレイと同数のサブビームを有する場合、配線ルートは、モノリシックセルアレイよりも少ない、すなわち54個よりも少ない数の回路ワイヤ570を有する。実際、ストリップビームアレイは、配線ルートに存在し得る回路ワイヤの最大数によって制限されるようなビームアレイのサイズがより大きいため、モノリシックビームアレイよりも多い数のサブビームを実現できる。
【0142】
[0158] 例えば、帯域幅及び雑音最適化、並びにぼやけと雑音とのバランスの観点での雑音性能の最適化は、トランスインピーダンス増幅器の増幅率がプログラム可能であることを確実にすることによって可能にできる。そのような構成では、セルの増幅器回路、少なくともトランスインピーダンス増幅器はプログラム可能である。そのようなプログラム可能増幅回路は、例えば、その感度の観点から、可変増幅器及び/又は可変アナログ-デジタル変換器を備えることができる。可変増幅器は、検出器要素503によって検出される検出ビーム電流に依存する可変増幅範囲を有する。例えば、検出ビーム電流が低い場合、又は典型的な二次放出係数よりも小さい二次放出係数を有する試料の場合、可変増幅器は、通常使用されるよりも大きい増幅を提供するように調整できる。通常よりも大きいビーム電流が検出器要素503によって検出された場合、又は典型的な二次放出係数よりも大きい二次放出係数を有する試料の場合、可変増幅器は、より小さい増幅を提供するように調整できる。
【0143】
[0159] この機能性は、疑似レジスタを有するフィードバック要素を有するトランスインピーダンス増幅器にとって有益である。疑似レジスタは、全ての印加電位差で単一の抵抗を有する理想レジスタとは異なり、異なる印加電圧の印加時に異なる実効抵抗を有する。異なる抵抗を提供する場合、疑似レジスタに関連付けられたトランスインピーダンス増幅器は、可変増幅として動作する。増幅器に可変機能性を与える場合、雑音レベルと、(本明細書では上記にて「追加ぼやけ」と呼ばれた)画像ぼやけとの間の最適化されたバランスが達成され得る。有益には、プログラム可能増幅回路は、トランスインピーダンス増幅器の出力をアナログ-デジタル変換器の入力に整合させることができる。これは、トランスインピーダンス増幅器の出力とアナログ-デジタル変換器の入力との間で減算されたプログラム可能オフセットとしてのものであり得る。プログラム可能オフセットは、セルの増幅回路から伝送される必要がある必要なビット数を減少させるのに役立つ場合がある。プログラム可能オフセットは、プログラム可能増幅器において実装されてもよい。これら手段は、トランスインピーダンス増幅器及びアナログ-デジタル変換器、したがって好ましくは増幅回路のダイナミックレンジが、異なる使用事例に対して最適に使用されることを確実にするのに役立つ。そのような異なる使用事例には、検査中の試料の材料特性、例えば異なるビーム電流を使用する異なる評価ツール構成が含まれ得る。適用範囲は、可変増幅器を設けることによって可能にすることができ、可変オフセット又は閾値(例えば、プログラム可能オフセットによる減算)は、望ましくは、増幅率、閾値及び帯域幅の調整を可能にする。本明細書の他の箇所に記述されるように、可変増幅及び減算に関連付けられる回路は、制御及びI/O回路に含まれてもよい。
【0144】
[0160] 試料に関するより変動する情報を得るために、異なるタイプの信号粒子を検出することが有益である。例えば、オーバレイターゲットを測定するために、二次信号粒子を使用して、最上部の格子(レジスト中に存在する可能性がある)に関するデータを取得し、後方散乱信号粒子を使用して、埋め込まれた格子に関するデータを取得することができる。
【0145】
[0161] いくつかのシステムでは、例えば二次信号粒子検出と後方散乱信号粒子検出との間を切り替えて、異なるモードで使用される検出器が提供されてもよい。二次信号粒子検出から後方散乱信号粒子検出に切り替えるため、試料と検出器との間の静電界が逆転される及び/又は着地エネルギーが変化される。着地エネルギー及び/又は試料電界を変化させた後の、試料の異なる帯電条件が、オーバレイ測定誤差を生じる可能性がある。なぜなら、異なる帯電条件が一次ビーム位置を変化させ得るからである。切替え中に、システムが変動するリスクが存在し(試料位置及び/又はビーム位置)、その結果、オーバレイ測定誤差が生じる。したがって、検出モードを後方散乱検出と二次検出との間で切り替える改善をシステムに実施することができる。そのようなシステムを欧州特許出願公開第20216927.2号が開示しており、少なくとも、異なるモード間での切替えに関するデバイス及び方法が参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
[0162] 代替システムでは、検出器にダブルリング検出器パッドが設けられる。ダブルリング帯電ベース底部検出器の使用により、リングにおいて相当な量のクロス信号につながる場合がある。すなわち、外側リングでの二次信号粒子の検出が後方散乱信号粒子を検出するために提案される、及び内側リングでの後方散乱信号粒子の検出が二次信号粒子を検出するために提案される。そのようなシステムを欧州特許出願公開第21174518.7号が開示しており、ダブルリング検出器パッドに関するデバイス及び方法が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
[0163] 本発明の実装形態では、2つのタイプの検出器の検出は、例えば、利用可能な検出効率を、完全とは言わないまでも、より多く使用することにより、改善されることが求められる。二次信号粒子後方散乱信号粒子の分離は、上述したように、二次信号粒子と後方散乱信号粒子との間の大きなエネルギー差を使用することにより実現できる。本発明では、二次信号粒子及び後方散乱信号粒子の両方を同時に検出することができ、様々な既知の検出器と比較して収集効率が増加する。
【0148】
[0164] 本発明では、試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスにて使用できる検出器が提供される。例えば、荷電粒子デバイスは、試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料上に投影するように構成される。検出器600の例示的なバージョンを図14に示す。検出器600は基板を備え、基板は、あるいは、本体と呼ばれる場合がある。基板は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された半導体要素610(例えばピン検出器)と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された電荷ベース要素620とを備える。結果として生じる試料からの信号粒子は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子、及び/又は第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を含んでもよい。したがって、検出器600は、2つの異なるタイプの検出器要素、例えば第1の要素及び第2の要素を備える。図14から理解されるように、検出器600は単一ビームデバイスと共に使用されてもよい。したがって、例えば、検出器は、上記の図9に関連して説明される単一ビームデバイスと共に使用されてもよい。
【0149】
[0165] 異なるタイプの検出器要素の各々が、主として、特定の信号粒子、例えば特定の閾値を上回る又は下回る信号粒子を検出するように構成されてもよい。第1のエネルギー閾値を下回るエネルギーを有する信号粒子が図14の破線矢印で示され、第2のエネルギー閾値を上回るエネルギーを有する信号粒子が図14の実線矢印で示される。第1のエネルギー閾値は、後方散乱閾値エネルギーに対応してもよい。したがって、半導体要素610(例えば第1の要素)は、主として後方散乱信号粒子を検出するように構成されてもよい。後方散乱閾値エネルギーは、検出器が検出するように設計されている、後方散乱信号粒子の選択された最低エネルギーレベルであってもよい。例えば、後方散乱閾値エネルギーは、約50evであってもよい。第2のエネルギー閾値は、二次閾値エネルギーに対応してもよい。したがって、帯電ベース要素620(例えば第2の要素)は、主として二次信号粒子を検出するように構成されてもよい。二次閾値エネルギーは、検出器が検出するように設計されている、二次信号粒子の選択された最高エネルギーレベルであってもよい。例えば、二次閾値エネルギーは、約50evであってもよい。一構成では、第1の要素は後方散乱信号粒子を検出するように構成され、第2の要素は二次信号粒子を検出するように構成される。
【0150】
[0166] 第1のエネルギー閾値及び第2のエネルギー閾値は、実質的に同じであってもよい。したがって、第1のエネルギー閾値及び第2のエネルギー閾値は、単一の所定の値であってもよい。この場合、電荷ベース要素620は、所定の値を下回る何れかの信号粒子を検出するために使用することができ、半導体要素610は、所定の値を上回る何れかの信号粒子を検出するために使用することができる。
【0151】
[0167] 図14に示すように、検出器600は基板に画定されたアパーチャ601を有してもよく、一次ビーム320がアパーチャ601を通過して試料208上に着地することができる。これは、検出器600の検出要素がアパーチャ601を取り囲むことができ、検出効率を増加させることができるという点で有益である。
【0152】
[0168] 電荷ベース要素620は、金属層621を備えてもよい。金属層621は、平坦部分であってもよい。金属層621は、薄膜であってもよい。電荷ベース要素は、約100nm以下、好ましくは約10nm~100nmの厚さを有してもよい。より具体的には、金属層621の厚さは、約100nm以下、好ましくは約10nm~100nmであってもよい。(上記の二次信号粒子に対応し得る)50eV未満のエネルギーを有する、より低いエネルギーの信号粒子が、比較的小さい厚さを有する電荷ベース要素によって「捕捉」され得る。より高いエネルギーの信号粒子が、より大きい侵入深さを有する。例えば、約350eVのエネルギーを有する信号粒子が、10nm~100nmよりも大きい侵入深さを有する場合がある。これは、より低いエネルギーの信号粒子が、電荷ベース要素620により捕捉される可能性があり、より高いエネルギーの信号粒子の大多数が電荷ベース要素620を通過することを意味する。より高いエネルギーの信号粒子は、半導体要素610により検出される可能性がある。したがって、信号粒子が半導体要素610に効果的に到達することを可能にする際に、このような厚さは有益である。収集効率は、後述するように、試料208と検出器600との間にバイアスを印加して信号粒子を検出器に引き付けることにより改善できる。
【0153】
[0169] 半導体要素610は、PIN検出器であってもよい。シンチレータ及びPIN検出器は、典型的には、検出閾値を上回る、例えば典型的には約1kVを上回る荷電粒子を検出することが可能であるが、より低い値、例えばPIN検出器については200eVが知られている。シンチレータについては、検出閾値は、シンチレータ表面上の導電性コーティング、例えば金属層の厚さの選択によって変化させることができる。半導体要素は、p-i-n領域611の両側に上側金属層612及び下側金属層613を備える。上側金属層612は、平坦部分であってもよい。上側金属層612は、薄膜であってもよい。下側金属層613は、平坦部分であってもよい。下側金属層613は、薄膜であってもよい。p-i-n領域611は、あるいは、空乏層又は空乏ゾーンと呼ばれる場合がある。p-i-n領域611は、p-i-n領域のエッジに不感層を備えてもよい。不感層は、p-i-n領域の入射表面の不活発な区画又は領域である。不感層は、導電層、表面パシベーション層、及び/又は反射防止コーティングを備えてもよい。不感層のないp-i-n領域を有することが可能であるが、不感層は雑音を減らすのに有益である。全体にわたってp-i-n領域について説明されるが、p-i-n領域の代わりに他の半導体領域が使用されてもよい。例えば、半導体要素は、拡散接合ダイオード、表面バリア検出器(例えば、ショットキーダイオード)、又はイオン注入ダイオードを備えてもよい。
【0154】
[0170] 好ましくは、電荷ベース要素620及び半導体要素610の各々が、検出器の主表面(すなわち検出表面)と実質的に同一平面内にある層の少なくとも部分である。検出表面は、半導体要素610及び/又は帯電ベース要素620への信号粒子の通過のための、検出器の表面である。電荷ベース要素620及び半導体要素610などの検出器要素の層は、層状の検出器構造の異なる部分であることが理解されよう。
【0155】
[0171] 一実施形態では、検出器要素は、検出器の厚さ方向に積層された検出器600に設けられた積層構造の層、すなわち層状部分として設けられてもよい。電荷ベース要素620及び半導体要素610の積層された層を図14に示す。電荷ベース要素620及び半導体要素610の層は、一次ビーム320の方向に積層されている。
【0156】
[0172] 好ましくは、電荷ベース要素は半導体要素よりも、検出器表面により近い。具体的には、好ましくは、電荷ベース要素620の金属層621は半導体要素よりも、検出表面により近い、又は金属層621が検出表面を形成してもよい。一般に、より高いエネルギーの信号粒子は、検出表面にぶつかったときに、電荷ベース要素610を介して半導体要素610で検出できる。
【0157】
[0173] 互いに積層された検出器要素を提供することは、検出器要素が、検出器600にとって利用可能な全ての検出エリアを使用することにより、利用可能な検出効率を完全に利用できるので有益である。一般に、二次信号粒子(すなわち低エネルギー信号粒子)と後方散乱信号粒子(すなわち高エネルギー信号粒子)とを分離することが重要である。これは、典型的には、後方散乱信号粒子よりも多くの二次信号粒子が試料で生成され、それにより、信号粒子が十分に分離されないと、二次信号粒子が信号を支配することになるからである。積層された検出器は、エネルギーの違い及び侵入深さの違いに基づいて信号粒子を分離できる。具体的には、二次信号粒子に対応する低エネルギー信号粒子は、電荷ベース要素620により捕捉される。しかしながら、高エネルギー信号粒子は、電荷ベース要素620に侵入して、半導体要素610の空乏層内で電子正孔対を生成する。したがって、より高いエネルギーの信号粒子は、電荷ベース要素620の下方にある半導体要素610において検出できる。したがって、積層された検出器は、電荷ベース要素620における、より低いエネルギーの信号粒子の別々の検出を可能にする。積層された検出器は、同時に、半導体要素610における、より高いエネルギーの信号粒子の検出を可能にする。機能におけるこれら改善は、検出効率を改善するのに有益である。
【0158】
[0174] 電荷ベース要素620は、検出器の検出表面を形成することができる。換言すれば、電荷ベース要素620は、図14に示すように、検出器600の最外層であってもよい。金属層621は、検出表面を形成してもよい。図14に示すように、金属層621は、実質的に検出表面の全体を形成してもよい。
【0159】
[0175] 図14に示すように、電荷ベース要素620は、実質的に半導体要素610の全体を覆って層(例えばコーティング)を形成することができる。これは、半導体要素620の表面全部を覆って電荷ベース要素610が設けられていることを意味する。この場合、帯電ベース要素610は、実質的に検出表面の全体を形成してもよい。具体的には、図14に示すように、電荷ベース要素620の金属表面層621は、実質的に検出表面の全体を形成してもよい。
【0160】
[0176] 半導体要素610及び電荷ベース要素620は、互いに分離されてもよい。具体的には、検出器は、電荷ベース要素620と半導体要素610との間に電気絶縁要素630を備えてもよい。電気絶縁要素630は、層として設けられてもよい。電気絶縁要素630は、平坦部分であってもよい。電気絶縁要素は、薄膜であってもよい。電気絶縁要素630は、何れかの形又は形状で設けられてもよい。電気絶縁要素630は、電気信号が電荷ベース要素620から半導体要素610に伝わることを防止するように構成され、逆もまた同様である。電気絶縁要素630は、電荷ベース要素620と半導体要素610との間に延びてもよい。電気絶縁要素630は、効果的な電気絶縁を提供するため、いかなる適切な厚さを有してもよい。好ましくは、電気絶縁要素630は、高エネルギー荷電粒子がそれを貫通できないこと及び活性な検出器層611に到達しないことを回避するために、厚すぎない。
【0161】
[0177] 電気絶縁要素630は、他の構成要素の間に、例えば金属層621と下側金属層613との間に、(すなわち、検出器の厚さ方向に、例えば一次ビームの方向に)いかなる適切な厚さを有してもよい。例えば、厚さは、約10~500nm、好ましくは約50~500nmであってもよい。電気絶縁要素630は、好ましくは、図14におけるような金属層621と下側金属層613との間の電圧差に依存する電圧破壊を防止するために十分に厚いことに留意されたい。下側金属層613及び金属層621上に同じ電圧が使用される場合(PIN検出器が機能するためには、上側金属層612と下側金属層613との間の電圧差だけが重要であるため、これが可能である)、10nmの厚さを使用でき、さもなければ、100nm以上の厚さが好ましくは使用される。厚さは、材料に依存する場合がある。電気絶縁要素は、何れかの適切な材料であってもよい。例えば、電気絶縁要素は、SiOであってもよい。この場合、電気絶縁要素の厚さは、好ましくは10nm~500nm、好ましくは約100nmであってもよい。
【0162】
[0178] 検出器は、検出器回路を備える回路層640を備えてもよい。より具体的には、基板は、回路層640を備えてもよい。回路層640は、異なる検出器要素からの信号を処理するために使用される回路の、全てとは言わないまでも、一部を備えてもよい。したがって、回路層640は、検出された信号粒子を電気信号に変換することができる。回路層640は、様々な異なる電気構成要素を備えてもよい。回路層は、後述するように、電荷ベース要素620及び半導体要素610に接続されてもよい。回路層は、電荷ベース要素620及び半導体要素610の各々に接続するための、回路の平行な層を備えてもよい。代わりに、回路層は、電荷ベース要素620及び半導体要素610の各々に接続するための、断面方向に隣接する回路を有する単一層を備えてもよい。
【0163】
[0179] 検出器内に回路層640を設けることは、回路を検出器要素に近づけることができるという点で有益である。検出器要素は回路に接続されて、検出された信号をデジタル信号に変換する。一般に、検出された信号をデジタル信号に変換するための回路を、関連する検出器要素に可能な限り接近させることにより、有益なことに、デジタル検出信号が改善される。近接するデジタル化回路により、検出信号の損失、又は少なくとも検出信号の劣化、又は検出信号の破壊のリスクが低減される。
【0164】
[0180] 検出器600は、電荷ベース要素620、特に金属層621を検出器回路に接続するように構成された電気絶縁ビア622を更に備えてもよい。すなわち、電気絶縁ビア622は、検出器が電荷ベース要素への接続を介して信号粒子を検出するためのものである。図14に示すように、電気絶縁ビア622は、半導体要素610の少なくとも部分を通って延びることができる。したがって、電荷ベース要素620は、電気絶縁ビア622に沿った電気接続により回路層640に接続されることができる。これは、電荷ベース要素620を使用して、検出表面又は検出表面の少なくとも部分を形成しながらも、依然として検出器の回路に適切に接続され得ることを意味する。
【0165】
[0181] 半導体要素610の上側金属層612は、好ましくは検出器回路に接続されている(好ましくは回路層640内に設けられている)。加えて、下側金属層613は、検出器回路に接続されてもよい。検出器回路は、半導体要素610の上側金属層及び下側金属層の両端に電圧バイアス641を印加するように構成されてもよい。
【0166】
[0182] 以下で更に詳細に説明するように、回路層640は、図10図11図12及び図13に関連して上述したように、回路層及び/又は、配線を備えてもよく又は配線に接続されてもよい。例えば、検出器回路は、トランスインピーダンス増幅器556、及び/又は電荷ベース要素620に接続されたアナログ-デジタル変換器558を備えてもよい。検出器回路は、トランスインピーダンス増幅器556、及び/又は半導体要素620に接続されたアナログ-デジタル変換器558を備えてもよい。このようなトランスインピーダンス増幅器556及びアナログ-デジタル変換器558(並びに他の関連する電気構成要素)は、図10A図10B図10C図11図12及び図13に関連して上述されている。検出器要素にとって利用可能なサイズは比較的少ないことに留意されたい。したがって、トランスインピーダンス増幅器などの増幅器を提供することは有益である。しかしながら、トランスインピーダンス増幅器などの一部のアンプは、一般に、大きな抵抗を必要とする。したがって、図10Aに関連して説明するように、回路はセル間にルーティングされる配線を備えてもよい。これにより、信号は増幅されることが可能になり、その結果、雑音は小さくなる。加えて又は代わりに、図12又は図13に関連して説明するように、トランスインピーダンス増幅器及び/又はアナログ-デジタル変換器と共に疑似レジスタが使用されてもよい。
【0167】
[0183] 上記は、半導体要素610と電荷ベース要素620との間の電気絶縁要素630について説明し示しているが、これは必要ではない。例えば、半導体要素610及び電荷ベース要素620は、互いに直接接触していてもよい。更には、半導体要素610及び帯電ベース要素620は、少なくとも1つの共通の構成要素を備えてもよい。例えば、半導体要素610の下側金属層613は、電荷ベース要素620の一部であってもよい。例えば、電荷ベース要素620の検出表面を形成する金属層621はまた、半導体要素610の下側金属層613であってもよい。そのような構成では、好ましくは、電荷ベース要素のための検出器の回路と半導体要素のための検出器の回路との間に良好な電気絶縁が設けられる。電荷ベース要素620の検出表面を形成する金属層621及び半導体要素610の下側金属層613の利点は、侵入のための層厚がより小さいため(別々の金属層621及び電気絶縁要素630が設けられていないので)、より多数の粒子がp-i-n領域に到達することである。これは、より低いエネルギー閾値を610に提供する。しかしながら、この構成は、正確な電荷測定をより困難にする場合があることに留意されたい。
【0168】
[0184] 第1のエネルギー閾値及び第2のエネルギー閾値は、実質的に同じであることが上述されているが、それらはオフセットを有してもよい。換言すれば、第1のエネルギー閾値は、第2のエネルギー閾値とは異なってもよい。例えば、閾値の近くの信号粒子の検出が、様々な異なるタイプの信号粒子の検出をもたらす場合があり、異なる信号粒子の検出をより明確に分離することが好ましい場合があることに留意されたい。第1のエネルギー閾値と第2のエネルギー閾値との間にオフセットを有することにより、検出される信号粒子を減らすことができ、具体的には、境界エネルギーレベルを有する信号粒子の量を減らすことができ、これが検出における雑音を減らすことができる。第1のエネルギー閾値は、第2のエネルギー閾値を上回ってもよい。第1のエネルギー閾値は、p-i-n領域に到達する前の層厚さに依存する場合がある。しかしながら、試料と検出器との間のバイアス電圧(試料と検出器との間に異なる電位差として、以下で更に説明される)により、ある程度は調整できる。バイアス電圧が、例えば、+50Vの代わりに+200Vである場合、事実上、より低い後方散乱信号粒子は、これら層を通過するのに十分な追加の運動エネルギーを得ることができ、それにより、実効的な第1のエネルギー閾値は低下する。第2のエネルギー閾値についても、同様のことが生じる。したがって、閾値の値は、バイアス電圧により影響を受ける可能性があり、したがって、第1の閾値と第2の閾値との差は、約0~200Vであり得る。
【0169】
[0185] 上記の第2の信号粒子及び後方散乱信号粒子の説明から、異なるタイプの信号粒子間の(例えば50V、又は100V、又は200Vの)閾値は任意であることが理解されるであろう。この閾値の近辺には、明白な分割(すなわち明瞭な分離)が存在しない。画像コントラスト又は画質を改善するため又はこれらに寄与するための閾値の正確な選択が多い可能性は低い。したがって、閾値の選択が、境界エネルギーレベルを有する信号粒子の検出を減らす可能性は低い。一般に、実効的な第1のエネルギー閾値及び第2のエネルギー閾値は、電荷ベース検出器621とp-i-n領域611との間の層におけるエネルギー損失に起因して、異なり得ることが予想される。電荷ベース検出器621を去るのにちょうど十分なエネルギーを有する(すなわち、第1のエネルギー閾値を超える)信号粒子が、電荷ベース検出器621とp-i-n領域611との間にある層において非常に多くのエネルギーを損失して、p-i-n領域611に到達し得る。したがって、第2のエネルギー閾値が、第1のエネルギー閾値とは異なる値を有することにつながる。
【0170】
[0186] 上述したように、荷電粒子ビームの通過のためのアパーチャ601が基板に画定されている。これは、信号ビーム(例えば一次ビーム320)が検出器600を通過でき、その結果、信号粒子が一次ビームの全体にわたって検出器600により捕捉されることができるという点で有益である。しかしながら、これは有益であるが、他の構成が使用される場合もある。例えば、検出器600は、一次ビーム経路の一方の側に設けられてもよい。これにより、一次ビームが試料208に到達することが可能になり、そして依然として、検出器600は試料208から放出される信号粒子を検出できる。この構成では、検出器と組み合わせてウィーンフィルタが使用されてもよい。別の構成では、検出器は、一次ビームの経路の何れかの側の少なくとも2つの部分として設けられてもよい。2つの部分は、ギャップによって分離されてもよい。2つの部分は、間隔を空けていてもよい。ギャップは、一次ビームの経路が通過するスリット又はストリップの形をとってもよい。複数の一次ビーム(例えばサブビーム)が提供される場合、検出器は、例えば複数の一次ビームの複数のサブビームの経路のためのスリットを有して、依然として片側又は両側に設けられてもよい。一構成では、そのような検出器アレイは、スリットの片側に複数の検出器を有してもよい。検出器又は検出器部分の間のスリットを特徴とするこのような構成は、製造が容易な場合がある。しかしながら、内部にアパーチャが形成された検出器を提供することは、大きい検出表面を可能にする際に有益な場合があり、したがって検出効率が増加する場合がある。静電レンズ内のレンズ電極上に検出器を配置することは、そのような検出器がスリット等よりもむしろアパーチャを有する場合に、より容易に実現できる。検出器のアパーチャ、静電界が電界の一部の擾乱を生じさせる場合があり、これが、一次サブビームに影響を及ぼす場合があり、サブビームの擾乱が対称であれば、収差による変形が小さくなるので好ましいことに留意されたい。
【0171】
[0187] 上記の実施形態及び変形形態は、図15及び図16に示すような電荷ベース要素620及び半導体要素610の僅かに異なる構成を備えてもよい。この場合、電荷ベース要素620は、実質的に検出表面の全体を形成しなくてもよい。この場合、帯電ベース要素620は、検出器表面の少なくとも部分を提供し、半導体要素610は、検出器表面の少なくとも部分を提供する。換言すれば、検出器表面は、半導体要素610及び電荷ベース要素620の両方を備える。
【0172】
[0188] 図15及び図16の両方から理解されるように、電荷ベース要素620及び半導体要素610は、平面図において互いに隣接して配置されてもよい。したがって、電荷ベース要素620の少なくとも部分は、平面図において、実質的に半導体要素610の隣に、例えば検出表面上に配置されてもよい。電荷ベース要素620と半導体要素610との間に小さいギャップが設けられてもよく、ギャップは、例えば電気絶縁材料を含んでもよいことに留意されたい。
【0173】
[0189] 図15は、図14に関連して上述したように、半導体要素610及び電荷ベース要素620が積層される代替形態を示す。具体的には、半導体要素610及び電荷ベース要素620は、図14のように、断面において積層される。しかしながら、この実施形態では、電荷ベース要素620は、半導体要素610を部分的に覆っている。この場合、図15に示すように、電荷ベース要素620が半導体表面610上に配置されて、検出表面の一部を形成してもよい。換言すれば、電荷ベース要素620は、半導体要素610に部分的にオーバーラップしてもよい。したがって、検出器の表面上で、半導体要素610上に電荷ベース要素の部分的なオーバーラップだけが存在してもよい。この場合、完全な半導体要素が電荷ベース要素620の下方に形成されるように、電荷ベース要素620は半導体要素610の上部に積層された追加層として設けられてもよい。この構成、すなわち半導体要素610を部分的に覆う構成で電荷ベース要素620を設けることは、静電容量を減らすためには有益な場合があり、その結果、より速い検出器がもたらされる。
【0174】
[0190] 別の場合、図16に示すように、電荷ベース要素620は半導体要素610に隣接して形成されて、検出表面の一部を形成してもよい。この場合、電荷ベース要素620及び半導体要素610は、検出器の幅の全体にわたって、断面において互いに隣接して形成される(すなわち、一次ビームの方向と直交する方向であり、これは、あるいは半径方向と呼ぶことができる)。具体的には、電荷ベース要素の検出表面(金属層621によって設けられる)は、半導体要素の検出表面(下側金属層613によって設けられる)に隣接している。すなわち、電荷ベース要素の検出表面(金属層621によって設けられる)は、半導体要素の検出表面(下側金属層613によって設けられる)の半径方向外側又は半径方向内側にある。したがって、電荷ベース要素は、半導体要素の上部に積層された層としてオーバーラップしているわけではない。代わりに、半導体要素610は、電荷ベース要素620を取り囲んで形成される。具体的には、下側金属層613上に電荷ベース要素のオーバーラップはない。代わりに、下側金属層613は、電荷ベース要素の金属層621を取り囲んでいる。換言すれば、下側金属層613は、平面内で金属層621の半径方向外側にある。p-i-n層611は、検出器を通して形成されてもよく、電荷ベース要素の金属層621の下方に配置されてもよい。これは、半導体要素及び電荷ベース要素の両方の層に対して、同じ製造プロセス又はプロセスステップを使用できるので有益である。上述したように、電気絶縁ビア622は、p-i-n層を介して金属層621を検出器回路に接続してもよい。半導体要素は分離されて、電荷ベース要素620に関連付けられたp-i-n層611aの一部を形成してもよい。電荷ベース要素620に関連付けられたp-i-n層の部分611aは、半導体要素610の動作に関与しない。電荷ベース要素620に関連付けられたp-i-n層の部分611aは、絶縁部分623により、p-i-n層の残りの部分から分離されてもよい。絶縁部分623は電気絶縁部材であってもよく、異なる構成を有するとはいえ、上述した電気絶縁要素630に類似していてもよい。絶縁部分623は、半導体要素610の半径方向内側に配置されてもよい。絶縁部分623は、電荷ベース要素620の半径方向外側に配置されてもよい。
【0175】
[0191] この実施形態では、検出器要素は異なるモードで動作する。具体的には、半導体要素を使用することができ(外側リングとして図16に示す)、半導体要素では、より高いエネルギーの信号粒子(例えば、後方散乱信号粒子)のエネルギーが、検出器の表面の直下における空乏層内で電子正孔対に変換される。より低いエネルギーの信号粒子(例えば、二次信号粒子)は、通常、検出器の(下側金属層613及び半導体の不感層から成る)上層を貫通するのに十分な運動エネルギーを有しない。したがって、より低いエネルギーの信号粒子は、通常、半導体要素620により検出されない。より高いエネルギーの粒子信号からより低いエネルギーの信号粒子を除去することが有益である。これは、典型的には、より多くのより低いエネルギーの信号粒子が試料208において生成され、異なる信号粒子が十分に分離されない場合、より低いエネルギーの粒子がより高いエネルギーの粒子よりも優勢になるからである。この構成では、半導体要素に対する二次信号粒子のクロストークが非常に低い又はゼロであると予想される。コレクタ効率は、半導体要素及び電荷ベース要素の両方の検出表面に関する全体的な表面積が低減されることに起因して、積層する実施形態よりも僅かに低い場合がある。
【0176】
[0192] 電荷ベース要素620は、電荷導体として動作する金属層621(図16では内側リングとして示される)を備える。これは、二次信号粒子(更に、この内側リングに衝突する後方散乱信号粒子)を、その電荷により検出することを可能にする。より良好な電荷の伝導のため、電荷ベース要素上の金属層621の厚さは、半導体要素610上の下側金属層613とは異なっていてもよい。
【0177】
[0193] 好ましくは、電荷ベース要素620の金属層621及び半導体要素の少なくとも下側金属層613は分離される。好ましくは、電荷ベース要素620の金属層621及び半導体要素の少なくとも下側金属層613は、それらの間に電気的絶縁を有する。金属層621と下側金属層613との間には、絶縁層が存在する。これは、2つの層の間で直接的な界面を回避するのに有益な場合がある。
【0178】
[0194] 半導体要素及び電荷ベース要素を使用して、検出器表面を複数の異なる構成で形成できることを理解されたい。したがって、上述したオーバーラップ構成及び/又は隣接構成における検出部分の分離は、上記の図6A及び/又は図6Bに関連する説明と同様であり得る。
【0179】
[0195] 例えば、電荷ベース要素620及び半導体要素610は各々が、検出表面上に円環(例えばリング)を備えてもよい。円環は、好ましくは同心円状であって互いに半径方向に分割されている。これは、断面で図15及び図16に示される。電荷ベース要素及び半導体要素の各々が単一の円環を形成する場合、検出器表面は、平面図で図6Aに示すように見える場合があることに留意されたい。この例では、電荷ベース要素は内側検出部分405Aに対応してもよく、半導体要素は外側検出部分405Bに対応してもよい。
【0180】
[0196] 例えば、帯電ベース要素及び半導体要素の各々が、少なくとも1つの扇を備えてもよい。例えば、検出器表面は複数の扇により形成されてもよく、複数の扇は、ほぼ等しいエリアであってもよい。扇は、好ましくは角度方向に分割されている。電荷ベース要素及び半導体要素の各々が2つの扇を形成し、電荷ベース要素及び半導体要素が交互配置される場合、検出表面は、平面図で図6Bに示すように見える場合があることに留意されたい。この場合、電荷ベース要素620は検出部分405C及び405Eに対応してもよく、半導体要素610は検出部分405D及び405Fに対応してもよい。
【0181】
[0197] 図示していないが、電荷ベース要素及び半導体要素は、少なくとも1つの扇及び少なくとも1つの円環を備えてもよい。例えば、電荷ベース要素及び半導体要素は、検出器表面上にチェッカーボードパターン又はダーツボードパターンを形成してもよい。
【0182】
[0198] 半導体要素610は、複数の円環を備えてもよい。円環は、例えば、ある形状の電気絶縁部材で分離されてもよく、これは、電気絶縁要素630及び/又は絶縁部分623の一部であっても、なくてもよい。各半導体要素の円環は、例えば、図16に関連して上で示したように、絶縁部分623によって分離されてもよい。半導体要素610を複数の円環として設けることは、より小さい角度の高エネルギー信号粒子を検出するために内側円環を使用し、より大きい角度の高エネルギー信号粒子を検出するために外側円環を使用する際に有益な場合がある。したがって、半導体要素を少なくとも2つの円環として設けることにより、必要に応じて、より高いエネルギーの信号粒子の検出を、異なる角度範囲に分離することが可能になる。
【0183】
[0199] 上記の何れかの変形形態で説明した検出器は、減速対物レンズ及び加速対物レンズの両方と共に(すなわち、減速モード又は加速モードで動作するデバイスと共に)動作させることができる。具体的には、検出器が底部検出器として(例えば、対物レンズアレイ241のダウンビームに)配置される場合、検出器に向かう信号粒子の軌道は、対物レンズの減速電界又は加速電界によってではなく、試料と検出器との間の電界によって決定される。試料を基準にして負バイアス又は正バイアスを検出器又は検出器アレイに印加することにより、低エネルギー信号粒子(例えば二次信号粒子)は、跳ね返される(後方散乱のみのモード)、又は引き付けられる(二次モードと後方散乱モードとの組合せ)ことができる。典型的には、加速レンズには、より高い着地エネルギーが使用されることに留意されたい。これは、この場合、高エネルギー信号粒子(例えば、後方散乱信号粒子)が、平均して、より高いエネルギーを有することを意味する。これは、高エネルギー信号粒子が電荷ベースデバイス620及び電気絶縁要素630を通過することをより容易にする。したがって、そのような層状の検出器では、高エネルギー信号粒子は半導体要素610に、より容易に到達できる。この検出器タイプは、加速レンズにとって更に魅力的である。
【0184】
[0200] 上述した検出器は、例えば図9に関連して説明されるデバイスと組み合わせて、単一ビームデバイスにおいて使用されてもよい。代わりに、検出器は、例えば図3及び図8に関連して説明されるように、例えば一次ビームがサブビームに分離されるマルチビームデバイスにおいて使用できる。したがって、マルチビーム荷電粒子デバイスでの使用に好適であり得る複数の検出器が設けられてもよい。複数の検出器は、上記の変形形態又は実施形態の何れかで説明したように設けられてもよい。複数の検出器は、アレイを形成してもよく、これは検出器アレイと呼ばれる場合がある。この場合、各検出器は、上述したように構成されてもよく、アレイにおいて他の検出器に隣接して配置されてもよい。各検出器は互いに同じ構成を有してもよく、例えば、全ての検出器が、図14に示す検出器要素の構成、又は図15に示す構成、又は図16に示す構成を有する。
【0185】
[0201] 検出器のアレイが図17に示され、アレイの変形形態が図18に示される。図17及び図18に示す検出器のアレイは、図14に関連して上述した検出器に対応する点に留意されたい。しかしながら、検出器は、図15又は図16に関連して説明されるものを含む、上述した変形形態の何れかを有することができる。
【0186】
[0202] 検出器のアレイは、いかなる適切な構成で配置されてもよい。各検出器は、それぞれのサブビーム320に対応してもよい。例えば、アレイ状に配置された検出器は、その構成において、上述したマルチビームアレイのサブビームのアレイに対応してもよい。この配置は、六角形(例えば図10Aを参照)の又は直線状の格子であってもよい。検出器アレイは、基板に形成された複数のアパーチャを有してもよく、各アパーチャは、マルチビームアレイにおける各サブビームに対応するように形成されている。したがって、複数の検出器のアパーチャは、マルチビームアレイのサブビームが試料208に向かって通過するためのものであり得る。
【0187】
[0203] 検出器のアレイが提供される場合、基板に複数の検出器が設けられてもよく、この基板は共通基板と呼ばれる場合がある(したがって、単一の検出器が存在する一実施形態では、検出器は基板に設けられてもよい)。基板は、複数の半導体要素610及び複数の電荷ベース要素620を備えてもよい。各半導体要素610は、電荷ベース要素620のうちの対応する1つに関連付けられている。アレイにおける全ての検出器600に、同じ基板が提供されてもよい。代わりに、検出器アレイに複数の基板が設けられてもよく、各基板は、複数の半導体要素610及び複数の電荷ベース要素620を備える。半導体要素610の数は、帯電ベース要素620の数に対応してもよい。
【0188】
[0204] 共通層を形成する、すなわちアレイの各検出器600において同じ位置に形成された、検出器の構成要素又は層が存在してもよい。例えば、構成要素又は層(例えば、電荷ベース要素の金属層621)のうちの1つが、各検出器について、一次ビーム経路に沿った同じ位置に形成されてもよい。金属層621の場合、金属層621は、検出器アレイを形成する各検出器について、検出層として形成されてもよい。
【0189】
[0205] 各検出器の半導体要素610は、基板の共通半導体層にあってもよい。したがって、基板は、複数の半導体要素610を備える半導体検出器層を備えてもよい。半導体層は、複数の検出器600に共通の構成要素を備えてもよい。例えば、半導体要素のp-i-n領域613は、図17に示すように、複数の検出器の全体にわたって形成される層であってもよい。p-i-n領域は、検出器アレイにおける複数の検出器又は更には全ての検出器に共通であってもよい。代わりに、別々の半導体要素の各々に対して別々のp-i-n領域を設けることができ、p-i-n領域は、例えば、アレイにおける異なる検出器の半導体要素の間に電気絶縁材料を有してもよい。
【0190】
[0206] 加えて又は代わりに、各検出器600の電荷ベース要素620は、基板の共通帯電ベース層内にあってもよい。したがって、基板は、複数の電荷ベース要素を備える帯電検出器層を備えてもよい。
【0191】
[0207] 加えて又は代わりに、各検出器の電荷ベース要素630と半導体要素との間の電気絶縁要素は、基板の共通電気絶縁層内にあってもよい。したがって、基板は、電荷ベース要素と半導体要素との間に電気絶縁層を更に備えてもよい。
【0192】
[0208] 加えて又は代わりに、各検出器の回路層640は、基板の共通回路層内に設けられてもよい。したがって、基板は、例えば図10A図10B及び図10Cに記載され示されるように、電荷ベース要素及び/又は半導体要素に関連付けられた回路を備える複数のセルを備える回路層を備えてもよい。検出器は、それぞれの電荷ベース要素620及び/又はそれぞれの半導体要素610をセルの回路に接続する、各セル用の1つ以上のビアを備えてもよい。例えば、各電荷ベース要素620は、上述したような電気絶縁ビア622を備えてもよく、このビアは、電荷ベース要素620の対応する1つから回路層640まで接続される。各半導体要素610は、加えて又は代わりに、検出器回路に接続するためのビアを備えてもよく、又は半導体要素は、上側金属層612によって検出器回路に直接接続されてもよい。
【0193】
[0209] 回路層640は、各セル内にトランスインピーダンス増幅器及び/又はアナログ-デジタル変換器を備えてもよい。任意選択で、回路層は、対応するセルのそれぞれの帯電ベース要素620及び/又はそれぞれの半導体要素610のために、トランスインピーダンス増幅器及び/又はアナログ-デジタル変換器を備えてもよい。したがって、電荷ベース要素及び/又は半導体要素の各々は、それぞれの電荷ベース要素及び/又は半導体要素に関連付けられたトランスインピーダンス増幅器及び/又はアナログ-デジタル変換器に接続されてもよい。
【0194】
[0210] 検出器アレイは、図18に示すように、シールド要素660を備えてもよい。シールド要素660は、追加の金属層であってもよい。シールド要素660は、電荷ベース要素620と半導体要素620との間に配置されて、2つの検出要素間のクロストーク効果を回避させてもよい(又は少なくとも低減させてもよい)。より具体的には、シールド要素660は、電荷ベース要素620の金属層621と半導体要素610の下側金属層613との間に配置されてもよい。これは、信号粒子が検出器610に到達する前に、より厚い層を通って進む必要があることを意味するので、このシールド要素660は、好ましくは可能な限り薄い。加えて、電気絶縁要素630は、シールド要素の何れの側にも部分、例えば薄い部分630A及び630Bを有してもよい。薄い部分630A、630Bは、電気絶縁要素630の突出部であってもよい。薄い部分630A及び630Bは、薄膜、又は層、又は平坦部分として設けられてもよい。したがって、電荷ベース要素620とシールド要素660との間の電気絶縁部分630Aと、半導体要素610とシールド要素660との間の電気絶縁部分630Bとが存在してもよい。好ましくは、電気絶縁部分630A、630Bもまた、可能な限り薄い。薄い部分630A、630Bは各々が、電気絶縁要素630に関して上述したような厚さを有してもよく、例えば、各部分630A、630Bの厚さは、約10~500nmであってもよい。その厚さは、記載されているように、材料に依存してもよく、任意選択でSiOであってもよい。シールド要素660は、例えば、図14図15及び/又は図16に関連して記載されているように、上述した検出器の何れにおいても使用することができる。
【0195】
[0211] 検出器アレイは、配線層を更に備えてもよい。配線は、セル間をルーティングされてもよい。したがって、配線層は、上述した配線ルート554を含んでもよい。配線層は、例えば上述したようなセルアレイを通って画定されたアパーチャから離れるように、(例えば、単一の半導体要素及び単一の電荷ベース要素に関連する)セルの回路に接続してもよい。配線層は、異なるセルを接続する配線間にシールドを備えてもよい。例えば、配線層は、図13に示し、図13に関連して上述したようなシールド構成を備えてもよい。セルは、配線層の配線を介して互いに接続されているだけであってもよい。配線層は、セルの間及びセルの周囲に形成されてもよい。配線層及び回路層は、単一の層状部分を一緒に形成してもよい。(層状部分では、配線及び回路は、CMOSアーキテクチャが許容する最大のCMOS層を占めてもよい)。代わりに、配線層及び回路層は各々が、それ自体のそれぞれの層状部分を有してもよい。配線層は、セルアレイのセル間に、セル用の接続を形成してもよい。配線層は、検出器の検出信号が、セルから外部接続部に、検出信号を処理するためのプロセッサに向かって伝送されることができるように、セルを外部に接続してもよい。各セルの回路及び配線は、通常は絶縁されている。すなわち、セルは互いに電気的に絶縁されている。配線層は、関連付けられた検出器を、検出信号の破壊のリスクを減らす形で、検出器アレイからの検出信号の伝送用のデータ経路に接続する。検出信号を外部に伝達するための配線は、クロストークを防止するために絶縁されている。配線層及び/又は回路層は、例えば別々に又は一緒に、検出器アレイの各検出器に接続するように構成された、基板におけるモノリシックな層状部分を形成してもよい。
【0196】
[0212] 単一の検出器に関連して上述したように、電荷ベース要素620は、検出表面により近くてもよい。したがって、電荷検出器層は対応する半導体要素層よりも、検出器アレイの検出表面に近くてもよい。電荷ベース要素620の各々が、対応する半導体要素610の少なくとも部分にオーバーラップしてもよい。一実施形態では、図17に示すように、オーバーラップは実質的に完全である。したがって、アレイは、図14に示すような検出器に基づいて設けられてもよい。別の実施形態では、部分的なオーバーラップだけがあってもよい。この場合、検出表面は、電荷検出器層及び半導体検出器層によって設けられてもよい。したがって、アレイは、図15に示すような検出器600に基づいて設けられてもよい。別の実施形態では、オーバーラップがなくてもよい。この場合、検出表面は、電荷検出器層及び半導体検出器層によって設けられてもよい。したがって、アレイは、図16に示すような検出器に基づいて設けられてもよい。
【0197】
[0213] 試料からの荷電粒子を検出するための評価ツール用の荷電粒子デバイスの一部として、上述した検出器の何れが設けられてもよい。
【0198】
[0214] 例えば図9に関連して説明されるように、荷電粒子デバイスは単一ビームデバイスであってもよいが、単一ビームデバイスを提供するために他の構成が使用されてもよい。荷電粒子デバイスは、荷電粒子の一次ビームを試料208上に投影するように構成された、(例えば、対物レンズアセンブリ132の)対物レンズを備えてもよい。対物レンズは、上述したように構成されてもよい。好ましくは、一次ビーム用の対物レンズにアパーチャが画定され、検出器600の基板にアパーチャが画定され、このアパーチャは対物レンズのアパーチャに整列されている。上述した通りであるが、検出器600を一次ビームの側に設けることができ、その結果、検出器は、検出器を貫通して形成されるアパーチャを有しない。この場合、検出器600は、例えば、試料から放出される信号粒子を検出するように一次ビームに近接して荷電粒子デバイス内に配置されることにより、依然として一次ビームに整列されていてもよい。
【0199】
[0215] 荷電粒子デバイスにおいて使用される検出器は、上記の実施形態及び変形形態の何れかで説明したようなものであってもよい。
【0200】
[0216] 荷電粒子デバイスにて使用する検出器は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された第1の検出器要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された第2の検出器要素とを備えてもよい。この場合、検出器は試料に近接していてもよく、半導体要素を備えてもよい。したがって、2つの異なるタイプの検出器が試料の近くに設けられてもよく、検出器600は少なくとも半導体要素を備える。検出器は、試料に近接していることが有益である。なぜなら、この場所では、より低い信号粒子とより高い信号粒子との間のエネルギー差が、更にアップビーム(供給源の方向)におけるよりも大きいからである。この位置において、エネルギー差の大きさは最大であり得る。一構成では、エネルギーの比率は最大となる。これは、信号粒子が実質的には検出器に向かって加速されることがないと仮定している。しかしながら、信号粒子を検出器に向かって加速するために印加される電位差が存在することができ、これについては以下で更に説明される。
【0201】
[0217] 上述したように、一般に、第1の検出器要素と第2の検出器要素との間の層におけるエネルギー損失に起因して、実効的な第1のエネルギー閾値と第2のエネルギー閾値とが異なることが予想できる。
【0202】
[0218] 第1の検出器要素は、上で詳述した半導体要素であってもよい。第2の検出器要素は、上で詳述した電荷ベース要素であってもよい。
【0203】
[0219] 例えば図3及び図8に関連して説明されるように、荷電粒子デバイスはマルチビームデバイスであってもよいが、マルチビームデバイスを提供するために他の構成が使用されてもよい。荷電粒子デバイスは、荷電粒子の複数のサブビームをマルチビームアレイ状で試料208上に投影するように構成された対物レンズアレイ241を備えてもよい。対物レンズアレイ241は、上述したように構成されてもよい。荷電粒子デバイスは、上述したような検出器アレイ、又は上述したような検出器アレイを備える検出器システムを備えてもよい。好ましくは、各サブビーム用の対物レンズアレイにアパーチャが画定され、検出器アレイの検出器の各々にアパーチャが画定される。好ましくは、少なくとも1つの検出器アレイのアパーチャは、対物レンズアレイ241において画定されたアパーチャに整列されている。
【0204】
[0220] 検出器は、対物レンズアレイ241に関連付けられてもよい。例えば、検出器は、対物レンズアレイ241に構造的に接続されていてもよい。したがって、検出器は、対物レンズ上に配置されてもよく、対物レンズに取り付けられてもよく、対物レンズに直接接続されてもよい。具体的には、検出器は、対物レンズアレイ241の電極プレートの主表面に関連付けられてもよい。したがって、検出器は、対物レンズアレイ241の電極に構造的に接続されてもよい。検出器は、対物レンズアレイ241の最もダウンビームの電極に隣接して配置されてもよく、又は構造的に接続されてもよい。検出器600は、対物レンズアレイ241の最もダウンビームの電極のダウンビーム表面に隣接して配置されてもよく、又は構造的に接続されてもよい。検出器は、対物レンズアレイ241の最もアップビームの電極に隣接して配置され得る、又は構造的に接続され得る。検出器が検出器アレイの一部である場合、検出器アレイ及び/又は検出器システムは、本明細書に記載されるように、対物レンズアレイ241に関連付けられてもよい。
【0205】
[0221] 検出器600は、荷電粒子デバイスの何れかの適切な場所に配置されてもよい。検出器は、デバイスの表面を提供することができる。好ましくは、デバイスの表面は、試料に面するように構成されている。好ましくは、検出器は、試料に近接している。好ましくは、検出器は、試料に隣接している。好ましくは、検出器は試料に直接隣接しており、検出器と試料との間には他の構成要素が存在しない。検出器を試料に近接させて設けることは有益である。なぜなら、これが、検出器要素において、より低いエネルギーの信号粒子及びより高いエネルギーの信号粒子の全体的な検出効率を同時に改善するからである。検出器600は、一次ビーム320の経路に沿って対物レンズアレイ241のアップビームに設けられてもよい。検出器600が検出器アレイの一部である場合、検出器アレイ及び/又は検出器システムは、本明細書に記載されるように配置されてもよい。
【0206】
[0222] デバイスは、例えば、検出器アレイの少なくとも部分に印加された試料208と検出器アレイとの間に電位差を、例えば少なくとも検出器に、例えば帯電ベース要素及び/又は半導体ベースの要素などの検出器の少なくとも部分に印加するように構成されてもよい。電位差は、バイアス電圧と呼ばれる場合がある。例えば、電位は比較的小さくてもよい。例えば、試料208と検出器アレイとの間の電位差は、約50V~300Vであってもよい。検出器アレイは、試料よりも高い正電位であってもよい。したがって、電位差を使用して、信号粒子を検出器アレイに引き付けることができる。そのような加速電圧(例えば、約50V~300V)は、より低いエネルギーの信号粒子(例えば、約50eVの最大エネルギーを有する二次信号粒子)と、より高いエネルギーの信号粒子(例えば、数keV以上の着地エネルギーに至る最大エネルギーを有する後方散乱信号粒子)との間のエネルギー差と比較して小さい。小さい電位差が、より小さいエネルギーの粒子、例えば二次信号粒子に対応する粒子に、より大きな影響を及ぼす傾向があることに留意されたい。もちろん、単一ビームデバイスの一部として設けられる場合、単一の検出器に同じ電位が印加されてもよい。
【0207】
[0223] 上述した検出器の構成の何れかが、信号粒子を引き付けるために印加されるそのような電位差を有してもよく、それは、上述したように有益であり得る。この電位差の使用は、電荷ベース要素が図15に示すように半導体要素を部分的に覆う、又は図16のように内側リングを提供する、検出器の構成にとって、特に有益であることに留意されたい。この場合、より低いエネルギーの信号粒子(例えば二次信号粒子)は、試料と検出器との間の結果として生じる電界に起因して、上向きに加速されることができる。これは、より低いエネルギーの信号粒子が、同心状の検出器の内側リングとして形成された電荷ベース要素621に優勢的に衝突する(又はこれだけに衝突する)ことを意味する場合がある。したがって、この内側リング上の電荷ベース要素だけを使用することが有利な場合がある。なぜなら、これが、電荷ベース要素において、より大きなエネルギーの信号粒子(例えば後方散乱信号粒子)による電荷の生成を減らし、雑音を減らすからである。
【0208】
[0224] 検出器600の一構成では、第1の要素及び第2の要素のうちの少なくとも1つは、電荷ベース検出器又は半導体検出器である。例えば検出器660の基板は複数の層を備え、複数の層は、異なる層内に第1の要素及び第2の要素を備えてもよい。検出器は、電荷ベース要素と半導体要素との間に電気絶縁要素を更に備える。検出器は、2つの電荷検出器要素を備えてもよく、2つの電荷検出器要素は、異なる信号粒子を検出するように及び同時に検出するように構成される。代わりに又は加えて、検出器は、電荷ベース要素及び半導体要素を備えてもよく、半導体要素及び電荷ベース要素は同時に検出するように構成されてもよい。
【0209】
[0225] 検出器のそのような構成において、荷電粒子ビームの通過のためのアパーチャが基板に画定されている。第1のエネルギー閾値は、後方散乱閾値エネルギーに対応してもよい。第2のエネルギー閾値は、二次閾値エネルギーに対応してもよい。第1のエネルギー閾値及び第2のエネルギー閾値は、実質的に同じである又はオフセットを有する。少なくとも1つの電荷ベース要素は、金属層を備える。電気絶縁ビアは、電荷ベース要素を検出器回路に接続するように構成される。電荷ベース要素及び半導体要素の各々が、検出器の主表面と実質的に同一平面内にある層の少なくとも部分である。電荷ベース要素及び半導体要素の各々が、ビーム経路に沿った積層構造である層の少なくとも部分である。検出器アレイは、複数のそのような検出器を備えてもよい。検出器は、共通基板に設けられる。各検出器は、マルチビームアレイのそれぞれのサブビームに対応してもよい。複数の検出器におけるアパーチャは、サブビームの通過のためである。そのような検出器及び検出器アレイは、本明細書に記載される検出器及び検出器アレイの他の実施形態の特徴を有してもよい。
【0210】
[0226] 試料から荷電粒子を検出するように構成されたマルチビーム評価システム(又は評価ツール)のためのものであってもよい荷電粒子デバイスの実施形態では。デバイスは、例えば本明細書で開示されるような対物レンズと、本明細書で開示されるような検出器とを備える。対物レンズアレイは、荷電粒子の複数のビームを試料上に投影するように構成されてもよい。検出器は、試料に近接していてもよい。検出器には、試料に向かうビームの経路のための複数のアパーチャが画定されている。一実施形態では、検出器は、第1の検出器層及び第2の検出器層を備える。第1の検出器層は、第1の要素であってもよい。第2の検出器層は、第2の要素であってもよい。第1の検出器層は、第1のエネルギー閾値を上回る、例えば後方散乱閾値エネルギーを上回る、信号粒子を検出するように構成されてもよい。第2の検出器層は、第2のエネルギー閾値を下回る、例えば二次閾値エネルギーを下回る、信号粒子を検出するように構成されてもよい。第1の検出器層及び第2の検出器層のうちの少なくとも1つは、電荷ベース検出器又は半導体検出器である。第2の検出器層及び第1の検出器層は、同時に検出するように構成されている。
【0211】
[0227] 本発明は、上述したような検出器、検出器アレイ、又は荷電粒子デバイスの何れかを使用して信号粒子を検出する方法を提供することもできる。
【0212】
[0228] 一実施形態では、試料208から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料208上に投影する方法が提供される。方法は、ビームを一次ビーム経路に沿って試料208の表面上に投影することを含む。方法は、試料から放出される信号粒子を半導体要素において及び電荷ベース要素において同時に検出することを含む。
【0213】
[0229] 一実施形態では、試料208から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料208上に投影する方法が提供される。方法は、ビームを一次ビーム経路に沿って試料の表面上に投影することを含む。方法は、試料から放出された信号粒子を検出器において検出することを更に含み、検出器は、試料に近接し、半導体要素を備え、検出することは、対応する第1の検出器要素における第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子と、第2の検出器要素における第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子との同時検出を含む。
【0214】
[0230] 一実施形態では、試料208から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子の複数のサブビームを試料208上に投影する方法が提供される。方法は、サブビームを一次サブビーム経路に沿って試料208の表面上に投影することを含む。方法は、試料から放出された信号粒子を検出器アレイにおいて検出することを更に含み、検出器アレイは、試料に近接し、各サブビームに対応する半導体要素を備える検出器を備え、検出器は、第1の検出器要素及び第2の検出器要素を備え、検出することは、各検出器による、対応する第1の検出器要素における第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子と、第2の検出器要素における第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子との同時検出を含む。
【0215】
[0231] 一実施形態では、試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料208上に投影する方法が提供される。方法は、上述した実施形態又は変形形態の何れかに従うデバイスを提供することを含む。方法は、対物レンズを使用して荷電粒子のビームを試料上に投影することと、半導体要素610及び電荷ベース要素620を使用して、結果として生じる信号粒子を同時に検出することと、を更に含む。
【0216】
[0232] 本明細書では、荷電粒子/信号粒子は通常、電子又は他の負に荷電粒子であることを意図していることが理解されるであろう。しかしながら、上記とは反対に、荷電粒子/信号粒子は、正の荷電粒子、例えばイオンであってもよい。したがって、一次イオンビームが提供され得る。一次イオンビームについては、試料から二次イオンが放出されることができ、これは、電荷ベース要素620により検出できる。しかしながら、これは、負の荷電粒子、例えば二次電子も同時に生成するであろう。したがって、この電荷ベース要素620により蓄積された電荷は、正の荷電粒子と負の荷電粒子との混合となり、これが、帯電の測定を信頼できなくすることになる。しかしながら、電荷ベース要素620上に正バイアス又は負バイアスの何れかを有することにより、電荷極性のうちの1つを選択することが可能になる。材料中でのイオンの飛程は電子よりも遥かに小さいので、後方散乱イオンが半導体要素610に到達できるためには、遥かに大きな運動エネルギーが必要である。したがって、全ての後方散乱イオンが、この検出器構成要素に至るわけではない。後方散乱イオンの検出を改善するために、電荷ベース要素620をより薄くすることができる。負の荷電粒子の代わりにイオンが使用される場合、上記において参照したバイアスは何れも反対になり、例えば、負のバイアスの代わりに正のバイアスが使用されるべきである。
【0217】
[0233] 「サブビーム」及び「ビームレット」という用語は、本明細書では互換的に使用され、両方とも、親の放射ビームを分割又は分離することによって親の放射ビームから導出される何れかの放射ビームを包含するものと理解される。「マニピュレータ」という用語は、レンズ又は偏向器など、サブビーム又はビームレットの経路に影響を及ぼす何れかの要素を包含するために使用される。複数の要素がビーム経路又はサブビーム経路に沿って整列されているという言及は、それぞれの要素がビーム経路又はサブビーム経路に沿って配置されていることを意味するものと理解される。光学系への言及は、電子光学系を意味するものと理解される。
【0218】
[0234] 本明細書の記載及び図面は、電子光学システムを対象とするが、本実施形態は、本開示を特定の荷電粒子に限定するために使用されるわけではないことが理解される。したがって、本明細書を通じて、電子への参照が、より一般的には荷電粒子への参照と考えることができ、荷電粒子が必ずしも電子であるというわけではない。荷電粒子光学デバイスは、負の荷電粒子デバイスであってもよい。荷電粒子光学デバイスは、あるいは、電子光学デバイスと称される場合がある。電子が特定の荷電粒子であって、本明細書の全体にわたって参照される荷電粒子の全ての事例を、適切に置き換えることができることが理解されよう。例えば、供給源は、とりわけ電子を供給することができる。本明細書全体にわたって参照される荷電粒子は、とりわけ負の荷電粒子であってもよい。
【0219】
[0235] 荷電粒子光学デバイスは、より具体的には、荷電粒子光学カラムとして定義できる。換言すれば、デバイスは、カラムとして提供されてもよい。したがって、カラムは、上述したような対物レンズアレイアセンブリを備えてもよい。したがって、カラムは、上述したような荷電粒子光学システム、例えば、対物レンズアレイ、及び任意選択の検出器アレイ、及び/又は任意選択の集光レンズアレイを備えてもよい。
【0220】
[0236] 上述した荷電粒子光学デバイスは、少なくとも対物レンズアレイ240を備える。荷電粒子光学デバイスは、検出器アレイ241を備えてもよい。荷電粒子光学デバイスは、制御レンズアレイ250を備えてもよい。したがって、対物レンズアレイ及び検出器アレイを備える荷電粒子光学デバイスは、対物レンズアレイアセンブリと交換することができ、対物レンズアレイアセンブリと呼ばれてもよく、これは、任意選択で、制御レンズアレイ250を備えてもよい。荷電粒子光学デバイスは、図3及び/又は図8の何れかに関連して説明した追加構成要素を備えてもよい。したがって、これら図面が追加構成要素を含む場合は、荷電粒子光学デバイスは、荷電粒子評価ツール40及び/又は荷電粒子光学システム交換することができ、荷電粒子評価ツール40及び/又は荷電粒子光学システムと呼ばれてもよい。
【0221】
[0237] 本発明の一実施形態による評価ツールは、試料の定性的測定(例えば、合格/不合格)を実施するツール、試料の定量的評価(例えば、フィーチャのサイズ)を実施するツール、又は試料のマップの画像を生成するツールであってもよい。評価ツールの例は、(例えば欠陥を特定するための)検査ツール、(例えば欠陥を分類するための)レビューツール、及び計測ツール、又は、検査ツール、レビューツール若しくは計測ツール(例えば計測検査ツール)に関連付けられた評価機能の何れかの組合せを実施することが可能なツールである。(荷電粒子光学カラムであってもよい)荷電粒子ビームツール40は、評価ツールの構成要素、例えば、検査ツール若しくは計測検査ツール、又は電子ビームリソグラフィツールの一部、であってもよい。本明細書では、ツールへのいかなる参照も、デバイス、装置又はシステムを包含することを意図しており、ツールは様々な構成要素を備え、これらは、共存してもしなくてもよく、特に、例えばデータ処理要素に関して別々の部屋に配置される場合さえある。
【0222】
[0238] 構成要素又は構成要素若しくは要素のシステムが、荷電粒子ビームを特定の方法で操作するように制御可能であることへの言及は、構成要素を制御するようにコントローラ又は制御システム若しくは制御ユニットを構成して、説明される方法で荷電粒子ビームを操作すること、並びに、任意選択で、他のコントローラ又はデバイス(例えば、電圧供給部及び/又は電流供給部)を使用して構成要素を制御して、この方法で荷電粒子ビームを操作すること、を含む。例えば、電圧供給部は、1つ以上数の構成要素に電気的に接続されて、構成要素に電位を印加してもよく、構成要素は、例えば、非限定的リストとして、制御レンズアレイ250、対物レンズアレイ241、集光レンズ231、補正器、コリメータ要素アレイ271、検出器アレイ240、ステージ209(したがって、例えば試料207)、及び走査偏向器アレイ260を含む。そのような電圧供給部は、コントローラ又は制御システム又は制御ユニットの制御下にあってもよい。電圧供給部は、例えば試料207を基準にして、電位差、例えばバイアス電圧を、検出器(又は検出器アレイ)の少なくとも部分に印加してもよい。そのようなバイアス電圧は、例えば制御システムにより、例えばコントローラ50により、制御されてもよい。ステージなどの作動可能な構成要素は、構成要素の作動を制御するための1つ以上のコントローラ、制御システム又は制御ユニットを使用して、作動させ、したがってビーム経路などの別の構成要素を基準にして移動させるように制御可能であってもよい。
【0223】
[0239] 本明細書に記載される実施形態は、ビーム又はマルチビーム経路に沿ってアレイ状に配置された一連のアパーチャアレイ又は荷電粒子光学要素の形をとってもよい。そのような荷電粒子光学要素は、静電的であってもよい。一実施形態では、全ての荷電粒子光学要素、例えば、ビーム制限アパーチャアレイから、試料前のサブビーム経路内の最後の荷電粒子光学要素まで、静電的であってもよく及び/又はアパーチャアレイ又はプレートアレイの形であってもよい。いくつかの構成では、荷電粒子光学要素のうちの1つ以上が、微小電気機械システム(MEMS(microelectromechanical system))として(すなわちMEMS製造技術を使用して)製造される。
【0224】
[0240] 少なくとも図3及び図8に示すような、及び上述するような、そのようなアーキテクチャ又はデバイスは、構成要素、例えば、上側ビームリミッタ、コリメータ要素アレイ271、制御レンズアレイ250、走査偏向器アレイ260、対物レンズアレイ241、ビーム成形リミッタ、及び/又は検出器アレイ240、を備えてもよい。存在するこれら要素のうちの1つ以上が、セラミック又はガラススペーサなどの隔離要素と共に、1つ以上の隣接する要素に接続されてもよい。
【0225】
[0241] コンピュータプログラムが、コントローラ50に以下のステップを実施するように命令する命令を含んでもよい。コントローラ50は、荷電粒子ビーム装置を制御して、荷電粒子ビームを試料208に向かって投影させる。一実施形態では、コントローラ50は、少なくとも1つの荷電粒子光学要素(例えば、多重偏向器又は走査偏向器260、265のアレイ)を制御して、荷電粒子ビーム経路における荷電粒子ビームに影響を及ぼす。加えて又は代わりに、一実施形態では、コントローラ50は、少なくとも1つの荷電粒子光学要素(例えば、検出器アレイ240)を制御して、荷電粒子ビームに応答して試料208から放出された荷電粒子ビームに影響を及ぼす。
【0226】
[0242] 荷電粒子ビームツール40内のいかなる要素又は要素の集合体も、交換可能又はオンサイトで交換可能であり得る。荷電粒子ビームツール40における1つ以上の荷電粒子光学構成要素、特に、サブビームに作用するもの又はサブビームを生成するもの、例えばアパーチャアレイ及びマニピュレータアレイは、1つ以上のMEMSを備えてもよい。
【0227】
[0243] 本発明を、様々な実施形態と関連させて説明してきたが、本明細書で開示される本発明の仕様及び実施を考慮することで、本発明の他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。本明細書及び実施例は単なる例示と見なされ、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲及び条項により示されることが意図される。
【0228】
[0244] 以下の条項が提供される。
条項1:試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスにて使用する検出器であって、検出器は、基板を備える又は基板内に設けられ、基板は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された半導体要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された電荷ベース要素と、を備え、望ましくは、荷電粒子デバイスは、荷電粒子のビームを試料に投影するように構成され、望ましくは、検出器は、結果として生じる信号粒子を検出するように構成され、望ましくは、結果として生じる信号粒子は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を含み、望ましくは、結果として生じる信号粒子は、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を含む、検出器。
【0229】
[0245] 条項2:荷電粒子ビームの(又はそれぞれの荷電粒子のサブビームの)通過のためのアパーチャが基板において画定されている、条項1に記載の検出器。
【0230】
[0246] 条項3:電荷ベース要素と半導体要素との間に電気絶縁要素を更に備える、条項1又は2に記載の検出器。
【0231】
[0247] 条項4:第1のエネルギー閾値は、後方散乱閾値エネルギーに対応する、条項1~3の何れか一項に記載の検出器。
【0232】
[0248] 条項5:第2のエネルギー閾値は、二次閾値エネルギーに対応する、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0233】
[0249] 条項6:第1のエネルギー閾値及び第2のエネルギー閾値は、実質的に同じである又はオフセットを有する、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0234】
[0250] 条項7:電荷ベース要素は、金属層を備える、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0235】
[0251] 条項8:電荷ベース要素を検出器回路に接続するように構成された電気絶縁ビアを更に備え、好ましくは、基板は、検出器回路を備える回路層を備える、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0236】
[0252] 条項9:電気絶縁ビアは、半導体要素の少なくとも部分を通って延びている、条項8に記載の検出器。
【0237】
[0253] 条項10:半導体要素は、p-i-n領域のそれぞれの側に上側金属層及び下側金属層を備える、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0238】
[0254] 条項11:下側金属層は、電荷ベース要素の部分でもある、条項10に記載の検出器。
【0239】
[0255] 条項12:上側金属接触部が、好ましくは、基板の回路層内に設けられた検出器回路に接続されている、条項10又は11に記載の検出器。
【0240】
[0256] 条項13:電荷ベース要素及び半導体要素の各々が、検出器の主表面と実質的に同一平面内にある層の少なくとも部分であり、層は、検出器の厚さ方向に積層された、検出器内に設けられた積層構造内に設けられている、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0241】
[0257] 条項14:電荷ベース検出器要素が、半導体要素の実質的に全体にわたって層を形成する、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0242】
[0258] 条項15:電荷ベース要素は半導体要素よりも、検出器表面(又は個々の検出器表面)に近く、好ましくは、帯電ベース要素は、検出器表面(又は個々の検出器表面)の少なくとも部分を提供する、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0243】
[0259] 条項16:電荷ベース要素及び半導体要素は断面において互いに隣接して配置され、好ましくは、帯電ベース要素は、検出器表面(又は個々の検出器表面)の少なくとも部分を提供し、半導体要素は、検出器表面(又は個々の検出器表面)の少なくとも部分を提供する、条項1~12の何れか一項に記載の検出器。
【0244】
[0260] 条項17:電荷ベース要素及び半導体要素は各々が、好ましくは同心円状に互いに半径方向に分割された円環を備える、条項16に記載の検出器。
【0245】
[0261] 条項18:電荷ベース要素及び半導体要素は各々が、好ましくは角度方向に分割された扇を備える、請求項16又は17に記載の検出器。
【0246】
[0262] 条項19:電荷ベース要素は、約100nm以下、好ましくは約10nm~100nmの厚さを有する、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0247】
[0263] 条項20:帯電ベース要素は、好ましくは回路層内の、トランスインピーダンス増幅器に接続され、及び/又は半導体要素は、好ましくは回路層内の、トランスインピーダンス増幅器に接続され、及び/又は電荷ベース要素と半導体要素との間に配置された遮蔽層660を更に備え、好ましくは、電荷ベース要素と遮蔽層間との間に、及び半導体要素と遮蔽層間との間に、電気絶縁部分を有する、先行する条項の何れかに記載の検出器。
【0248】
[0264] 条項21:荷電粒子デバイスにて使用する検出器であって、検出器は基板を備え、基板は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された第1の要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された第2の要素と、を備え、第1の要素及び第2の要素のうちの少なくとも1つは、電荷ベース検出器又は半導体検出器である、検出器。
【0249】
[0265] 条項22:基板は複数の層を備え、複数の層は、異なる層内に第1の要素及び第2の要素を備え、及び/又は、検出器は、電荷ベース要素と半導体要素との間に電気絶縁要素を更に備える、条項21に記載の検出器。
【0250】
[0266] 条項23:検出器は、2つの電荷検出器要素を備え、2つの電荷検出器要素は、異なる信号粒子を検出するように及び同時に検出するように構成される、条項21又は22に記載の検出器。
【0251】
[0267] 条項24:検出器は、電荷ベース要素及び半導体要素を備え、半導体要素及び電荷ベース要素は同時に検出するように構成されている、条項21~23の何れかに記載の検出器。
【0252】
[0268] 条項25:荷電粒子ビームの通過のためのアパーチャが基板に画定されている、条項21~24の何れかに記載の検出器。
【0253】
[0269] 条項26:第1のエネルギー閾値は、後方散乱閾値エネルギーに対応する、条項21~25の何れかに記載の検出器。
【0254】
[0270] 条項27:第2のエネルギー閾値は、二次閾値エネルギーに対応する、条項21~26の何れかに記載の検出器。
【0255】
[0271] 条項28:第1のエネルギー閾値及び第2のエネルギー閾値は、実質的に同じである又はオフセットを有する、条項21~27の何れかに記載の検出器。
【0256】
[0272] 条項29:電荷ベース要素のうちの少なくとも1つが、金属層を備える、条項21~28の何れかに記載の検出器。
【0257】
[0273] 条項30:電荷ベース要素を検出器回路に接続するように構成された電気絶縁ビアを更に備える、条項21~29の何れかに記載の検出器。
【0258】
[0274] 条項31:電荷ベース要素及び半導体要素の各々が、検出器の主表面と実質的に同一平面内にある層であって、ビーム経路に沿った積層構造である層の、少なくとも部分である、条項21~30の何れかに記載の検出器。
【0259】
[0275] 条項32:検出器は、共通基板内に設けられ、各検出器は、マルチビームアレイのそれぞれのサブビームに対応し、複数の検出器のアパーチャは、サブビームの通過のためのものである、条項21~31の何れかに記載の検出器。
【0260】
[0276] 条項33:先行する条項の何れかに記載の複数の検出器を備える検出器アレイであって、検出器は共通基板内に設けられ、各検出器はそれぞれのサブビームに対応し、好ましくは、a)各検出器の半導体要素は、基板の共通半導体層内にあり、b)各検出器の電荷ベース要素は、基板の共通電荷ベース層内にあり、c)各検出器の回路層は、基板の共通回路層内に設けられ、d)各検出器の電荷ベース要素と半導体要素との間の電気絶縁要素は、基板の共通電気絶縁層内にあり、e)検出器は、マルチビームアレイのサブビームのアレイに対応する構成でアレイ状に配置され、この構成は、六角形又は直線状の格子であってもよく、及び/又は、f)複数の検出器のアパーチャは、マルチビームアレイのサブビームの通過のためのものである、検出器アレイ。
【0261】
[0277] 条項34:試料からの信号粒子を検出する評価ツールのためのマルチビーム荷電粒子デバイスにて使用する検出器アレイであって、検出器アレイは少なくとも1つの基板を備え、基板内には、荷電粒子ビームの複数のサブビームが試料に向かって通過するための複数のアパーチャが画定され、基板は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された複数の半導体要素と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するように構成された複数の電荷ベース要素と、を備え、各半導体要素は、帯電ベース要素のうちの対応する1つに関連付けられている、検出器アレイ。
【0262】
[0278] 条項35:基板は、複数の半導体要素を備える半導体検出器層を備える、条項34に記載の検出器アレイ。
【0263】
[0279] 条項36:基板は、複数の電荷ベース要素を備える電荷検出器層を備える、条項34又は35に記載の検出器アレイ。
【0264】
[0280] 条項37:電荷ベース要素は、金属層を備える、条項36に記載の検出器アレイ。
【0265】
[0281] 条項38:電荷検出器層は対応する半導体要素よりも、検出器アレイの検出表面に近く、検出表面は、半導体要素又は帯電ベース要素への信号粒子の通過のための、検出器アレイの表面である、条項36又は37に記載の検出器アレイ。
【0266】
[0282] 条項39:帯電ベース要素の各々が、対応する半導体要素の少なくとも部分とオーバーラップし、好ましくは、オーバーラップは、実質的に完全である、条項36~38の何れか一項に記載の検出器アレイ。
【0267】
[0283] 条項40:電荷ベース要素及び半導体要素は、例えば断面において、互いに隣接して配置されている、条項36~38の何れか一項に記載の検出器アレイ。
【0268】
[0284] 条項41:基板は、電荷ベース要素と半導体要素との間に電気絶縁要素を更に備える、先行する条項の何れか一項に記載の検出器。
【0269】
[0285] 条項42:基板は、帯電ベース要素及び/又は半導体要素に関連付けられた回路を備える複数のセルを備える回路層を更に備える、先行する条項の何れか一項に記載の検出器アレイ。
【0270】
[0286] 条項43:それぞれの帯電ベース要素及び/又はそれぞれの半導体要素をセルの回路に接続するする、各セル用の1つ以上のビアを更に備える、条項42に記載の検出器アレイ。
【0271】
[0287] 条項44:回路層は、各セル内に、及び任意選択で対応するセルのそれぞれの帯電ベース要素及び/又はそれぞれの半導体要素のために、トランスインピーダンス増幅器及び/又はアナログ-デジタル変換器を備える、条項43に記載の検出器アレイ。
【0272】
[0288] 条項45:配線層を更に備え、配線層は、複数のアパーチャから間隔を空けたセルの回路を接続する配線を備える、条項44に記載の検出器アレイ。
【0273】
[0289] 条項46:配線は、セルの間をルーティングされている、条項45に記載の検出器アレイ。
【0274】
[0290] 条項47:配線は、異なるセルを接続する配線間に遮蔽体を備える、条項45又は46に記載の検出器アレイ。
【0275】
[0291] 条項48:試料からの荷電粒子を検出するためのマルチビーム評価システム用の荷電粒子デバイスであって、デバイスは、荷電粒子の複数のビームを試料上に投影するように構成された対物レンズアレイと、試料に近接する検出器であって、試料に向かうビームの経路のための複数のアパーチャが画定された検出器とを備え、検出器は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するための第1の検出器層と、第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を検出するための第2の検出器層とを備え、第1の検出器層及び第2の検出器層のうちの少なくとも1つが、電荷ベース検出器又は半導体検出器である、及び/又は第2の検出器層及び第1の検出器層は同時に検出するように構成されている、荷電粒子デバイス。
【0276】
[0292] 条項49:試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスであって、デバイスは、荷電粒子のビームを試料上に投影するように構成された対物レンズと、条項1~32の何れかに記載の検出器とを備える、荷電粒子デバイス。
【0277】
[0293] 条項50:ビーム用の対物レンズにアパーチャが画定され、検出器の基板にアパーチャが画定され、このアパーチャは対物レンズのアパーチャに整列されている、条項49に記載の荷電粒子デバイス。
【0278】
[0294] 条項51:試料からの信号粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスであって、デバイスは、荷電粒子の複数のサブビームをマルチビームアレイ状で試料上に投影するように構成された対物レンズアレイであって、各サブビームのためにアパーチャが画定されている、対物レンズアレイと、条項19~47の何れか一項に記載の少なくとも1つの検出器アレイを備える検出器システムであって、少なくとも1つの検出器アレイのアパーチャは、対物レンズアレイにおいて画定されたアパーチャに整列されている、荷電粒子デバイス。
【0279】
[0295] 条項52:検出器システムの少なくとも1つの検出器が、対物レンズに構造的に接続されている、条項51に記載の荷電粒子デバイス。
【0280】
[0296] 条項53:少なくとも1つの検出器が、対物レンズの電極プレートの主表面に関連付けられている、条項51又は52に記載の荷電粒子デバイス。
【0281】
[0297] 条項54:少なくとも1つの検出器は、好ましくは、試料に面するように構成された、及び/又は検出器(又は少なくとも1つの検出器)が試料に近接するように、デバイスの表面を提供する、条項49~53の何れかに記載の荷電粒子デバイス。
【0282】
[0298] 条項55:少なくとも1つの検出器は、対物レンズの複数のサブビームの経路に沿ってアップビームに設けられている、条項49~54の何れかに記載の荷電粒子デバイス。
【0283】
[0299] 条項56:試料からの荷電粒子を検出する評価ツールのための荷電粒子デバイスであって、デバイスは、荷電粒子のビームを試料上に投影するように構成された対物レンズであって、ビーム用のアパーチャが画定されている、対物レンズと;試料に近接し、対物レンズのアパーチャに整列されたアパーチャを画定する検出器であって、検出器は、第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子を検出するように構成された第1の検出器要素、及び第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子を同時に検出するように構成された第2の検出器要素を備え、検出器は半導体要素を備える、検出器と、を備える、荷電粒子デバイス。
【0284】
[0300] 条項57:第1の検出器要素は半導体要素を備える、条項56に記載の荷電粒子デバイス。
【0285】
[0301] 条項58:第2の検出器要素は、電荷ベース検出器要素を備える、条項56又は57の何れかに記載の荷電粒子デバイス。
【0286】
[0302] 条項59:検出器は、条項1~32の何れか一項による、条項58に記載の荷電粒子デバイス。
【0287】
[0303] 条項60:デバイスは、試料と検出器との間の電位差を印加するように構成されている、条項49~59の何れか一項に記載の荷電粒子デバイス。
【0288】
[0304] 条項61:試料と検出器との間の電位差は、約50V~300Vである、条項60に記載の荷電粒子デバイス。
【0289】
[0305] 条項62:検出器は、試料よりも高い正電圧を有する、条項60又は61の何れかに記載の荷電粒子デバイス。
【0290】
[0306] 条項63:1つ以上の構成要素に電気的に接続されて構成要素に電位を印加するように構成された電圧供給部を更に備え、望ましくは、電圧供給部を制御するように構成されたコントローラを更に備える、条項48~62の何れかに記載の荷電粒子デバイス。
【0291】
[0307] 条項64:電圧供給部は、検出器(又は検出器アレイ)の、望ましくは、例えば検出器(又は検出器アレイ)と試料との間の検出器の、少なくとも部分にバイアス電圧を印加するように構成されている、条項63に記載の荷電粒子デバイス。
【0292】
[0308] 条項65:条項48~64の何れかに記載の荷電粒子デバイスを備える荷電粒子評価ツールであって、望ましくは、荷電粒子評価ツールは、荷電粒子のマルチビームを試料に向かって投影する荷電粒子デバイスを使用して、試料からの信号粒子を検出することにより評価するためのものである、荷電粒子評価ツール。
【0293】
[0309] 条項66:試料を支持するように構成されたステージを備える条項65に記載の評価ツールであって、望ましくは、試料は、試料を保持するように構成された試料ホルダを備える、評価ツール。
【0294】
[0310] 条項67:試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料上に投影する方法であって、方法は、a)ビームを一次ビーム経路に沿って試料の表面上に投影することと、b)試料から放出される信号粒子を半導体要素において及び電荷ベース要素において同時に検出することと、を含む、方法。
【0295】
[0311] 条項68:試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料上に投影する方法であって、方法は、a)ビームを一次ビーム経路に沿って試料の表面上に投影することと、b)試料から放出された信号粒子を検出器において検出することであって、検出器は、試料に近接し、半導体要素を備え、検出することは、対応する第1の検出器要素における第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子と、第2の検出器要素における第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子との同時検出を含む、ことと、を含む、方法。
【0296】
[0312] 条項69:試料から放出される信号粒子を検出するように、荷電粒子の複数のサブビームを試料上に投影する方法であって、方法は、a)サブビームを主サブビーム経路に沿って試料の表面上に投影することと、b)試料から放出された信号粒子を検出器アレイにおいて検出することであって、検出器アレイは、試料に近接し、各サブビームに対応する半導体要素を備える検出器を備え、検出器は、第1の検出器要素及び第2の検出器要素を備え、検出することは、各検出器による、対応する第1の検出器要素における第1のエネルギー閾値を上回る信号粒子と、第2の検出器要素における第2のエネルギー閾値を下回る信号粒子との同時検出を含む、ことと、を含む、方法。
【0297】
[0313] 条項70:試料から放出された信号粒子を検出するように荷電粒子のビームを試料上に投影する方法であって、方法は、条項48~53の何れか一項に記載のデバイスを提供することと、対物レンズを使用して荷電粒子のビームを試料上に投影することと、半導体要素及び電荷ベース要素使用して、結果として生じる信号粒子を同時に検出することと、を含む方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
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図13
図14
図15
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図17
図18
【国際調査報告】