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特表2024-528538粒子状物質、その製造方法及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】粒子状物質、その製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20240723BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240723BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240723BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023580730
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022066302
(87)【国際公開番号】W WO2023274726
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21183567.3
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リー,ロバート マシュー
(72)【発明者】
【氏名】リーヴァルト,フェリクス フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クルツハルス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー,ハイノ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB12
(57)【要約】
組成(LiMg1+x(Ni 1-x
(式中、Mは、Ti、Zr、Nb、Mo、W、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
は、Al、Co、Mn、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a:bは100:1~400:1の範囲であり、a+b=1であり、
c:dは40:1~250:1の範囲であり、c:eは12:1~50:1の範囲であり、
c+d+e=1であり、
(Li+Mg)と(Ni+M+M)の合計モル比は、1:1~1.05:1の範囲であり、
0.00≦x≦0.05である)
の粒子状物質であって、
前記粒子状物質が2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成(LiMg1+x(Ni 1-x
(式中、Mは、Ti、Zr、Nb、Mo、W、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
は、Al、Co、Mn、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a:bは100:1~400:1の範囲であり、a+b=1であり、
c:dは40:1~250:1の範囲であり、c:eは12:1~50:1の範囲であり、
c+d+e=1であり、
(Li+Mg)と(Ni+M+M)の合計モル比は、1:1~1.05:1の範囲であり、
0.00≦x≦0.05である)
の粒子状物質であって、
前記粒子状物質が2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する、粒子状物質。
【請求項2】
前記物質が、一般式(I)、
(NicM1 dM2 e) (I)
(式中、MはMn及びCoから選択され、
cは0.95~0.995の範囲であり、
dは0.002~0.04の範囲であり、
eは0.002~0.02の範囲であり、そして
c+d+e=1である)
による金属の組み合わせを含む、請求項1に記載の粒子状物質。
【請求項3】
が、Ti、Zr、W及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の粒子状物質。
【請求項4】
Ni、Mg及びLi以外の金属の数が少なくとも3つ、最大5つである、請求項1から3のいずれか一項に記載の粒子状物質。
【請求項5】
前記物質が、0.2Cレートでの第2充電サイクルにおいて、4.1~4.25Vの間で少なくとも25mVの差動容量プロット(dQ)/(dV)における積分ピーク幅第2充電IPW4.1-4.25Vを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の粒子状物質。
【請求項6】
前記物質が、金属酸化物でコーティングされている、請求項1から5のいずれか一項に記載の粒子状物質。
【請求項7】
以下の工程:
(a)粒子状の水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルを提供する工程と、
(b)前記酸化ニッケル/水酸化ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルを、Mg、M及びMの化合物、及びリチウム源と混合する工程と、
(c)工程(b)から得られた混合物を熱処理する工程と
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の粒子状物質を製造する方法。
【請求項8】
工程(c)が650~750℃の範囲の最高温度で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(A)少なくとも1種の、請求項1から6のいずれか一項に記載の粒子状物質、
(B)導電状態の炭素、
(C)バインダー材料
を含有する、カソード。
【請求項10】
(A)、(B)及び(C)の合計に基づいて、
(A)80~98質量%のカソード活物質、
(B)1~17質量%の炭素、
(C)3~10質量%のバインダー材料
を含有する、請求項9に記載のカソード。
【請求項11】
少なくとも1つの請求項9又は10に記載のカソードを含有する、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成(LiMg1+x(Ni 1-x
(式中、Mは、Ti、Zr、Nb、Mo、W、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
は、Al、Co、Mn、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a:bは100:1~400:1の範囲であり、a+b=1であり、
c:dは40:1~250:1の範囲であり、c:eは12:1~50:1の範囲であり、
c+d+e=1であり、
(Li+Mg)と(Ni+M+M)の合計モル比は、1:1~1.05:1の範囲であり、
0.00≦x≦0.05である)
の粒子状物質に関し、
ここで、前記粒子状物質が2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。
【背景技術】
【0002】
リチウム化した遷移金属酸化物は、現在、リチウムイオン電池の電極活物質として使用されている。充電密度、比エネルギーなどの特性だけでなく、リチウムイオン電池の寿命又は適用性に悪影響を及ぼすサイクル寿命の低下及び容量損失などの別の特性も向上させるために、過去数年間にわたって広範な研究開発が行われてきた。製造方法を改善するために、さらなる努力が行われている。
【0003】
現今議論されている多くの電極活物質は、リチウム化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物(「NCM材料」)又はリチウム化ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物(「NCA材料」)のタイプのものである。
【0004】
リチウムイオン電池のためのカソード材料の典型的な製造方法において、まず、遷移金属を炭酸塩、酸化物として、又は好ましくは塩基性であってもなくてもよい水酸化物として共沈させることにより、いわゆる前駆体を形成する。次に、この前駆体を、リチウム塩、例えばLiOH、LiO又は特にLiCO(これらに限定されるものではない)と混合して、高温で焼成(か焼)する。リチウム塩(単数又は複数)は、水和物(単数又は複数)として、又は脱水形態で使用することができる。一般に前駆体の熱処理又は加熱処理とも称される焼成又はか焼は通常、600~1000℃の範囲の温度で行われる。熱処理中に、固相反応が起こり、電極活物質を形成する。水酸化物又は炭酸塩を前駆体として使用する場合は、固相反応の後に水又は二酸化炭素を除去する。熱処理は、オーブン又はキルンの加熱ゾーンで実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カソード活物質の容量を向上させるために、ニッケル含有量を可能な限り高くすることが提案されている。しかし、LiNiOのような材料では、サイクル寿命が短く、ガス発生が顕著で、サイクル中に内部抵抗が大きく上昇することが確認されており、実用化には大きな課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、以下で「本発明の物質」又は「本発明による物質」とも呼ばれる、冒頭で定義された粒子状物質が見出された。以下、本発明の物質についてさらに詳細に説明する。
【0007】
本発明の物質は、式(LiMg1+x(Ni 1-x
(式中、Mは、Ti、Zr、Nb、Mo、W、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
は、Al、Co、Mn、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a:bは100:1~400:1の範囲であり、a+b=1であり、
c:dは40:1~250:1の範囲であり、c:eは12:1~50:1の範囲であり、
c+d+e=1であり、
(Li+Mg)と(Ni+M+M)の合計モル比は、1:1~1.05:1の範囲であり、
0.00≦x≦0.05である)
による組成を有し、
ここで、前記粒子状物質が2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。
【0008】
これは、式(LiMg1+xTM1-xに対応し、ここで、TMが(Ni1-x1-x2 x1 x2)であり、x1≧0.0025であり、x2≧0.05であり、x1+x2≦0.0525である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の物質についてさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明の一実施態様において、本発明の物質は、球状粒子、すなわち、球状の形状を有する粒子から構成されている。球状粒子には、正確に球形である粒子だけでなく、代表的なサンプルの少なくとも90%(数平均)の最大直径と最小直径の差が10%以下である粒子も含まれる。
【0011】
本発明の物質は、2~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法(electroacoustic spectroscopy)によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0012】
本発明の一実施態様において、本発明の物質は、一次粒子の凝集体である二次粒子から構成されている。好ましくは、本発明の物質は、一次粒子の凝集体である球状の二次粒子から構成されている。さらにより好ましくは、本発明の物質は、球状の一次粒子又はプレートレットの凝集体である球状の二次粒子から構成されている。
【0013】
本発明の一実施態様において、本発明の物質の一次粒子は、1~2000nm、好ましくは10~1000nm、特に好ましくは50~500nmの範囲の平均直径を有する。平均一次粒径は、例えば、SEM又はTEMによって決定することができる。SEMは走査型電子顕微鏡の略称であり、TEMは透過型電子顕微鏡の略称であり、XRDはX線回折の略称である。
【0014】
本発明の一実施態様において、本発明の物質は、0.1~2.0m/gの範囲の比表面積(BET)(以下で「BET表面積」とも呼ばれる)を有する。BET表面積は、DIN ISO 9277:2010に従って、200℃で30分、及びこれを超えてサンプルをガス放出した後の窒素吸着によって決定することができる。
【0015】
は、Ti、Zr、Nb、Mo、W、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、好ましくは、Mは、Ti、Zr、Nb、Mo及びWの少なくとも2種の組み合わせ、例えばTiとZrの組み合わせ、又はZrとMoの組み合わせ、又はTiとZrとMoの組み合わせから選択される。
【0016】
は、Al、Co、Mn、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a:bは100:1~400:1の範囲であり、a+b=1であり、
c:dは40:1~250:1の範囲であり、c:eは12:1~50:1の範囲であり、
c+d+e=1であり、
(Li+Mg)と(Ni+M+M)の合計モル比は、1:1~1.05:1の範囲であり、
0.00≦x≦0.05である。
【0017】
一部の金属は、遍在するもの、例えばナトリウム、カルシウム又は亜鉛であるが、そのような微量は本発明の明細書において考慮されない。この文脈における微量とは、全金属含有量TMに対して0.05モル%以下の量を意味する。好ましくは、本発明の物質のカルシウム含有量はわずかな微量であり、製造中にカルシウムの化合物を意図的に添加することはない。
【0018】
本発明の一実施態様において、前記物質は、式(I)、
(NicM1 dM2 e) (I)
(式中、MはMn及びCoから選択され、
cは0.95~0.995の範囲であり、
dは0.002~0.04の範囲であり、
eは0.002~0.02の範囲であり、そして
c+d+e=1である)
による金属の組み合わせを含む。好ましい実施態様において、b≦cである。
【0019】
は、Nb、Ti、Zr、W、Mo、及び好ましくは前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、Mは、Al、Mn、Co、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択される。
【0020】
本発明の一実施態様において、Mは、Ti、Zr、W、及び前述の2種の組み合わせから選択される。
【0021】
本発明の一実施態様において、Ni、Mg及びLi以外の金属の数は少なくとも3つ、最大5つである。より好ましくは、1つの元素Mのみが存在する。
【0022】
本発明の一実施態様において、金属(単数又は複数)Mは、それぞれNiに対して0.1~0.5モル%の量で存在する。
【0023】
本発明の一実施態様において、金属(単数又は複数)Mは、それぞれNiに対して0.5~2モル%の量で存在する。
【0024】
本発明の一実施態様において、M及びMは、本発明の物質内に均一に分散している。すなわち、M及びMは、本発明の物質の粒子上にほぼ均一に分散している。
【0025】
本発明の一実施態様において、M及びMのうちの少なくとも1つは、本発明の物質の粒子の粒子境界(particle boundaries)に濃縮されている。
【0026】
本発明の特定の実施態様において、本発明の物質の二次粒子は、金属酸化物で、好ましくはカソード活物質として機能しない金属酸化物でコーティングされている。好適な金属酸化物の例としては、LiBO、B、Al、Y、LiAlO、TiO、ZrO、LiZrO、Nb、及びLiNbOが挙げられる。
【0027】
本発明の物質は、リチウムイオン電池のカソード活物質として特に適している。優れたサイクル安定性と高いエネルギー密度を兼ね備えている。
【0028】
本発明の一実施態様において、本発明のカソード活物質は、LiCOとしての滴定により決定され、前記本発明の物質に対して、0.001~1質%の範囲のLiCOを含む。
【0029】
本発明の別の態様は、以下で本発明の方法又は(本)発明による方法とも呼ばれる、本発明の物質を製造する方法に関する。本発明の方法は、以下で工程(a)、工程(b)などとも呼ばれる、複数の工程を含む。
【0030】
工程(a)~(c)は以下の特徴を有する:
(a)粒子状の水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルを提供すること、
(b)前記酸化ニッケル/水酸化ニッケルを、溶媒の非存在下で、Mg、M及びMの化合物、及びリチウム源と混合すること、
(c)工程(b)から得られた混合物を熱処理すること。
【0031】
以下、工程(a)~(c)についてさらに詳細に説明する。
【0032】
工程(a)では、以下で総称して酸化ニッケル/水酸化ニッケルとも呼ばれる、粒子状の水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルが提供される。本発明の文脈において、オキシ水酸化ニッケルという用語は、化学量論的なNiOOHに限定されるものではなく、酸化物及び水酸化物の対イオンのみを有し、Mn又はMgなどの金属の不純物の個々の含有量が、前記水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルの全金属含有量に対して最大で2質量%である任意のニッケルの化合物も意味する。好ましくは、水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルは、前記水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルの全金属含有量に対して、2質量%の最大合計不純物含有量を有する。
【0033】
工程(a)で提供される酸化ニッケル/水酸化ニッケルは、2~20μm、好ましくは4~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0034】
好ましい酸化ニッケル/水酸化ニッケルは、新たに沈殿させた水酸化ニッケルである。
【0035】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される酸化ニッケル/水酸化ニッケルは、50~1,000ppm、好ましくは100~400ppmの範囲の残留水分含有量を有する。残留水分含有量は、カールフィッシャー滴定によって決定することができる。
【0036】
工程(b)では、前記酸化ニッケル/水酸化ニッケルが、水又は有機溶媒のような溶媒の非存在下で、Mg、M及びMの化合物と混合される。
【0037】
Mgの好適な化合物は、Mg(OH)、MgO、Mg(NO、及びシュウ酸塩、例えばMgCである。
【0038】
の好適な化合物は、Ti、Zr、W、Mo及びNbの酸化物、(オキシ)水酸化物及び硝酸塩、例えばTiO、Ti、TiO(OH)、ZrO、Zr(OH)、TiO(NO、Ti(NO、ニオブ酸、Nb、WO、LiWO及びMoOである。Mの化合物のさらなる例は、例えば、そのまま又は水和物として、メタタングステン酸アンモニウム(水和物)、オルトモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、ニオブ酸シュウ酸アンモニウム、炭酸ジルコニウム(IV)アンモニウムであるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
の好適な化合物は、硝酸塩、酸化物、水酸化物及びオキシ水酸化物、例えば、Al、Al(OH)、AlOOH、Al(SO、KAl(SO、及びAl(NO、Alのアルカノラート、例えばAl(CO)、Al-トリス-イソプロポキシド、アルミニウムマグネシウムイソプロポキシドのような少なくとも2種のカチオンの混合塩(これらに限定されるものではない)である。コバルドの化合物の例はCo(OH)、Co、Coであり、Mnの化合物の例はMn、MnO及びMn(NOである。Mのアルカノラートも使用可能である。
【0040】
さらに、リチウム源が添加される。
【0041】
リチウム源の例は、LiO、LiOH、及びLiCOがあり、それぞれ水を含まないか、場合によっては水和物として、例えばLiOH・HOである。好ましい例は、水酸化リチウムである。
【0042】
リチウム源及び粉末状残留物の量は、LiとTMのモル比が(1+x):1になるように選択され、ここで、xが0.98~1.05の範囲である。
【0043】
好ましくは、前記リチウム源は、例えば、3~10μm、好ましくは5~9μmの範囲の平均直径(D50)を有する粒子状である。
【0044】
本発明の一実施態様において、工程(b)は5~85℃の範囲の温度で行われ、10~60℃が好ましい。
【0045】
本発明の一実施態様において、工程(b)は常圧で行われる。しかし、高圧下で、例えば常圧より10ミリバール~10バール高い圧力で、又は吸引で、例えば常圧より50~250ミリバール低い圧力、好ましくは常圧より100~200ミリバール低い圧力で工程(b)を行うことが好ましい。
【0046】
工程(b)は、フィルター装置の上方に位置するため、容器から容易に排出することができる容器で行うことができる。このような容器は、工程(a)からの酸化ニッケル/水酸化ニッケルを入れ、その後、リチウム源、Mg、M及びMの化合物を導入する。別の実施態様において、このような容器は、リチウム源、Mg、M及びMの化合物を入れ、その後、工程(a)からの酸化ニッケル/水酸化ニッケルを導入する。別の実施態様において、工程(a)からの酸化ニッケル/水酸化ニッケル、及びMg、M及びMの化合物、及びリチウム源が同時に導入される。
【0047】
酸化ニッケル/水酸化ニッケルと、Mg、M及びMの化合物、及びリチウム源との混合は、1分~3時間、好ましくは5分~1時間、さらにより好ましくは5分~30分の期間にわたって行うことができる。
【0048】
工程(b)は、混合操作、例えば振盪、特に攪拌又は剪断によってサポートされてもよい。
【0049】
工程(b)から、粉末状の混合物が得られる。
【0050】
工程(b)を行うための好適な装置の例は、高剪断ミキサー、タンブラーミキサー、プラウシェアミキサー及び自由落下ミキサーである。
【0051】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、室温から200℃、好ましくは20~50℃の範囲の温度で行われる。
【0052】
混合物が得られる。
【0053】
工程(c)は、工程(b)からの前記混合物を熱的処理に供することを含む。工程(c)の例は、600~800℃、好ましくは650~750℃の範囲の温度での熱処理である。「熱的処理」及び「熱処理」という用語は、本発明の文脈において互換的に使用される。
【0054】
本発明の一実施態様において、工程(b)から得られた混合物は、0.1~10℃/分の加熱速度で600~800℃に加熱される。
【0055】
本発明の一実施態様において、600~800℃、好ましくは650~750℃の所望の温度に到達する前に、温度を上昇させる。例えば、まず工程(c)から得られた混合物を350~550℃に加熱し、その後10分~4時間の時間で一定に保持し、その後650℃~800℃まで昇温し、その後650℃~800℃で10分~10時間保持する。
【0056】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又はロータリーキルン、又は前記の少なくとも2つの組み合わせで行われる。ロータリーキルンは、そこで製造される材料の均質化が非常に良好であるという利点を有する。ローラーハースキルン及びプッシャーキルンでは、異なる工程に関する異なる反応条件を非常に容易に設定することができる。実験室規模の実験では、箱型炉、管状炉、及び分割管状炉も使用可能である。
【0057】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、酸素含有雰囲気、例えば窒素-空気混合物、希ガス-酸素混合物、空気、酸素又は酸素富化空気中で行われる。好ましい実施態様において、工程(c)における雰囲気は、空気、酸素及び酸素富化空気から選択される。酸素富化空気は、例えば、体積比50:50の空気と酸素の混合物であってよい。他の選択肢としては、体積比1:2の空気と酸素の混合物、体積比1:3の空気と酸素の混合物、体積比2:1の空気と酸素の混合物、及び体積比3:1の空気と酸素の混合物が挙げられる。
【0058】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、ガス流、例えば空気、酸素及び酸素富化空気の流れの下で行われる。そのようなガス流は強制ガス流とも呼ばれる。そのようなガス流は、一般式(LiMg1+x(Ni 1-xによる物質1kg当たり、0.5~15m/hの範囲の比流量を有することができる。体積は、通常の条件下(298ケルビン及び1気圧)で決定される。前記ガス流は、水及び二酸化炭素のようなガス状分解生成物の除去に有用である。
【0059】
本発明の方法は、工程(c)に続いて、さらなる工程、例えば650~800℃の範囲の温度でのさらなる焼成工程(これに限定されない)を含んでもよい。
【0060】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、1時間~30時間の範囲の持続時間を有する。10時間~24時間が好ましい。600℃を超える温度での時間は、加熱及び保持がカウントされるが、この文脈では冷却時間は無視される。
【0061】
リチウムイオン電池用のカソード活物質として極めて好適な物質が得られる。
【0062】
本発明の一実施態様において、本発明の物質を水で処理し、その後、乾燥させることが可能である。別の実施態様では、例えば、酸化物又は水酸化物、例えば水酸化アルミニウム又はアルミナと、又はホウ酸と混合し、その後、150~400℃で熱処理することにより、本発明の物質の粒子を少なくとも部分的にコーティングすることが可能である。本発明の別の実施態様では、原子層堆積法によって、例えばトリメチルアルミニウムと水分との交互処理(単数又は複数)によって、本発明の物質の粒子を少なくとも部分的にコーティングすることが可能である。
【0063】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの本発明の物質を含む電極である。これらは、特にリチウムイオン電池に有用である。少なくとも1つの本発明による電極を含むリチウムイオン電池は、非常に良好な放電及びサイクル挙動を示し、それらは良好な安全挙動を示す。
【0064】
本発明の一実施態様において、本発明のカソードは、
(A)少なくとも1種の、上記の本発明の物質、
(B)導電状態の炭素、及び
(C)バインダー、
(D)集電器
を含有する。
【0065】
本発明の好ましい実施態様において、本発明のカソードは、(A)、(B)及び(C)の合計に基づいて、
(A)80~98質量%の本発明の物質、
(B)1~17質量%の炭素、
(C)1~10質量%のバインダー材料
を含有する。
【0066】
本発明によるカソードは、簡潔に炭素(B)とも呼ばれる、導電性修飾の炭素を含有する。炭素(B)は、すす、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びグラファイトから選択することができる。炭素(B)は、本発明による電極材料の調製中にそのまま添加することができる。
【0067】
本発明による電極は、さらなる構成要素を含むことができる。それらは、集電器(D)、例えばアルミホイル(これに限定していない)を含むことができる。それらは、以下でバインダー(C)とも呼ばれるバインダー材料(C)をさらに含んでいる。集電器(D)については、ここでは、これ以上説明しない。
【0068】
好適なバインダー(C)は、好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわち、ホモポリマー又はコポリマーは、例えば、アニオン(共)重合、触媒(共)重合又はフリーラジカル(共)重合により得ることができる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、並びに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから選択された少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも適する。ポリイソプレン及びポリアクリレートはさらに適している。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0069】
本発明の文脈において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルと1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0070】
本発明の文脈において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたエチレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばα-オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びまたイソブテン、ビニル芳香族のもの、例えばスチレン、及びまた(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びまたマレイン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸を含むエチレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンはHDPE又はLDPEであり得る。
【0071】
本発明の文脈において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたプロピレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばエチレン、及びα-オレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ペンテンを含むプロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチックポリプロピレン又は本質的にイソタクチックポリプロピレンである。
【0072】
本発明の文脈において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0073】
別の好ましいバインダー(C)は、ポリブタジエンである。
【0074】
他の好適なバインダー(C)は、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選択される。
【0075】
本発明の一実施態様において、バインダー(C)は、50,000g/molから、1,000,000g/molまで、好ましくは500,000g/molまでの範囲の平均分子量Mを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0076】
バインダー(C)は、架橋された又は架橋されていない(コ)ポリマーであり得る。
【0077】
本発明の特に好ましい実施態様において、バインダー(C)は、ハロゲン化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、1個の分子当たり少なくとも1個のハロゲン原子又は少なくとも1個のフッ素原子、より好ましくは1個の分子当たり少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のフッ素原子を有する少なくとも1つの(共)重合された(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。例としては、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0078】
好適なバインダー(C)は、特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特にポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0079】
本発明の電極は、成分(a)、成分(b)及び炭素(c)の合計に対して3~10質量%のバインダー(単数又は複数)(d)を含んでもよい。
【0080】
本発明のさらなる態様は、
(A)本発明のカソード活物質(A)、炭素(B)及びバインダー(C)を含む少なくとも1つのカソード、
(B)少なくとも1つのアノード、及び
(C)少なくとも1種の電解質
を含有する電池である。
【0081】
カソード(1)の実施態様は、すでに上記で詳細に記載されている。
【0082】
アノード(2)は、少なくとも1種のアノード活物質、例えばカーボン(グラファイト)、TiO、酸化リチウムチタン、シリコン又はスズを含有してもよい。アノード(2)は、集電器、例えば銅ホイルなどの金属ホイルをさらに含有してもよい。
【0083】
電解質(3)は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び任意に添加剤を含んでもよい。
【0084】
電解質(3)のための非水性溶媒は、室温で液体又は固体であり得、好ましくは、ポリマー、環状又は非環状エーテル、環状及び非環状アセタール、及び環状又は非環状有機カーボネートから選択される。
【0085】
好適なポリマーの例は、特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C~C-アルキレングリコール、及び特にポリエチレングリコールである。ここでは、ポリエチレングリコールは、20モル%以下の1種以上のC~C-アルキレングリコールを含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、2個のメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0086】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、少なくとも400g/molであり得る。
【0087】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、最大5000000g/mol、好ましくは最大2000000g/molであり得る。
【0088】
好適な非環状エーテルの例は、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、1,2-ジメトキシエタンが好ましい。
【0089】
好適な環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0090】
好適な非環状アセタールの例は、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0091】
好適な環状アセタールの例は、1,3-ジオキサン、及び特に1,3-ジオキソランである。
【0092】
好適な非環状有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0093】
好適な環状有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)の化合物である
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なることができ、水素及びC~C-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選択され、好ましくは、R及びRの両方ともがtert-ブチルであることはない)。
【0094】
特に好ましい実施態様において、Rはメチルであり、R及びRはそれぞれ水素であるか、又はR、R及びRはそれぞれ水素である。
【0095】
別の好ましい環状有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0096】
【化2】
【0097】
好ましくは、溶媒又は複数の溶媒は、水を含まない状態で、すなわち、例えば、カールフィッシャー滴定によって決定することができる1ppm~0.1質量%の範囲の含水量で使用される。
【0098】
電解質(3)は、少なくとも1種の電解質塩をさらに含む。好適な電解質塩は、特にリチウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiC(C2n+1SO、リチウムイミド、例えばLiN(C2n+1SO(式中、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SOF)、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、及び一般式(C2n+1SOYLiの塩である
(式中、Yが酸素及び硫黄から選択される場合、t=1であり、
Yが窒素及びリンから選択される場合、t=2であり、
Yが炭素及びケイ素から選択される場合、t=3である)。
【0099】
好ましい電解質塩は、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiPF、LiBF、LiClOから選択され、LiPF及びLiN(CFSOが特に好ましい。
【0100】
本発明の好ましい実施態様において、電解質(3)は、少なくとも1種の難燃剤を含有する。有用な難燃剤は、トリアルキルホスフェート(前記アルキルは異なるか又は同一である)、トリアリールホスフェート、アルキルジアルキルホスホネート、及びハロゲン化トリアルキルホスフェートから選択されてもよい。好ましいのは、トリ-C~C-アルキルホスフェート(前記C~C-アルキルは異なるか又は同一である)、トリベンジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、C~C-アルキルジ-C~C-アルキルホスホネート、及びフッ素化トリ-C~C-アルキルホスフェートである。
【0101】
好ましくは、電解質(3)は、トリメチルホスフェート、CH-P(O)(OCH、トリフェニルホスフェート、及びトリス-(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェートから選択される少なくとも1種の難燃剤を含む。
【0102】
電解質(3)は、電解質の総量に基づいて、1~10質量%の難燃剤を含有してもよい。
【0103】
本発明の実施態様において、本発明による電池は、それによって電極が機械的に分離される1つ以上のセパレータ(4)を含む。好適なセパレータ(4)は、金属リチウムに対して反応しないポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータ(4)のための特に好適な材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成の多孔性ポリエチレン及びフィルム形成の多孔性ポリプロピレンである。
【0104】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンから構成されるセパレータ(4)は、35~45%の範囲の多孔率を有することができる。好適な細孔径は、例えば30~500nmの範囲である。
【0105】
本発明の別の実施態様において、セパレータ(4)は、無機粒子で充填したPET不織布から選択することができる。このようなセパレータは40~55%の範囲の多孔率を有し得る。好適な細孔径は、例えば80~750nmの範囲である。
【0106】
本発明による電池は、任意の形状、例えば、立方体、又は円筒形ディスクの形状を有することができるハウジングをさらに含むことができる。一変形態様において、ポーチとして構成された金属ホイルをハウジングとして使用する。
【0107】
本発明による電池は、特に高温(45℃以上、例えば最高60℃)で、特に容量損失に関して、非常に良好な放電及びサイクル挙動を示す。
【0108】
本発明による電池は、互いに組み合わされている、例えば直列に接続するか、又は並列に接続することができる2つ以上の電気化学セルを含むことができる。直列接続が好ましい。本発明による電池において、少なくとも1つの電気化学セルは少なくとも1つの本発明による電極を含有する。好ましくは、本発明による電気化学セルにおいて、電気化学セルの大部分は本発明による電極を含有する。さらにより好ましくは、本発明による電池において、すべての電気化学セルは本発明による電極を含有する。
【0109】
本発明はさらに、本発明による電池を機器、特にモバイル機器に使用する方法を提供する。モバイル機器の例は、車両、例えば自動車、自転車、航空機、又は水上乗り物、例えばボート又は船である。モバイル機器の他の例は、手動で動くもの、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話、又は例えば建築部門における電動手工具、特にドリル、バッテリー式ドライバー又はバッテリー式ステープラーである。
【0110】
実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0111】
平均粒径(D50)は動的光散乱法(「DLS」)により決定した。パーセンテージは、特に明記しない限り、質量%である。すべての熱処理は、炉内で毎分5リットルの酸素の流速下で行った。
【0112】
工程(a.1):硫酸ニッケル水溶液(1.65mol/kgの溶液)と25質量%のNaOH水溶液を組み合わせ、アンモニアを錯化剤として使用することにより、球状のNi(OH)前駆体を得た。pH値を12.6に設定した。新たに沈殿したNi(OH)を水で洗浄し、ふるいにかけて、120℃で12時間乾燥させた。p-CAM.1は、8μmのD50を有するNi(OH)であった。
【0113】
比較用カソード活物質C-CAM.1の製造:
前駆体p-CAM.1をリチウム源LiOH・HO及びドーパント前駆体(Co、Al、Zr(OH)、MnO)と適切な化学量論比でボールミルで3時間混合することにより、比較用カソード活物質C-CAM.1(Li1.01Ni0.95Al0.005Co0.02Mn0.02Zr0.005)を合成した。その後、この混合物をジルコニアるつぼに注ぎ、25℃から400℃まで3℃/分で加熱し、その後、400℃で4時間保持した。その後、混合物を400℃から692℃まで3℃/分で加熱し、その後、692℃で6時間保持した。最後に、混合物を692℃から120℃まで10℃C/分超の冷却速度で冷却し、その後、グローブボックスに移して、8μmのD50を有する比較用物質C-CAM.1を得た。
【0114】
工程(b.2):前駆体p-CAM.1を、リチウム源LiOH・HO、及びMg、M及びMの源:Mg(OH)、Al、Co、MnO、Zr(OH)、WOと適切な化学量論比でボールミルで3時間混合した。
【0115】
工程(c.2):その後、工程(b.2)から得られた混合物をジルコニアるつぼに注ぎ、25℃から400℃まで3℃/分で加熱し、その後、400℃で4時間保持した。その後、混合物を400℃から675℃まで3℃/分で加熱し、その後、675℃で6時間保持した。最後に、混合物を675℃から120℃まで10℃C/分超の冷却速度で冷却し、その後、グローブボックスに移して、8μmのD50を有する本発明の物質CAM.2を得た。本発明のカソード活物質CAM.2(Li1.030Mg0.020)Ni0.970Al0.005Co0.005Mn0.010Zr0.0050.005)が得られた。
【0116】
電極の製造:電極は、94%のCAM、3%のカーボンブラック(Super C65)及び3%のバインダー(ポリビニリデンフルオリド、Solef 5130)を含有した。CAM、カーボンブラック及びバインダーをN-メチル-2-ピロリドン中でスラリー化し、ドクターブレードでアルミホイル上にキャストした。電極を真空中105℃で6時間乾燥させた後、円形電極を打ち抜き、質量を測定し、真空中120℃で12時間乾燥させ、その後、Arを充填したグローブボックス内に入った。
【0117】
ハーフセルの電気化学測定:コイン型電気化学セルはアルゴンを充填したグローブボックス内で組み立てた。直径14mmの正極(担持量8.0±0.5mg cm-2)を、ガラス繊維セパレータ(Whatman GF/D)によって厚さ0.58mmのLiホイルから分離した。電解質として、質量比3:7のエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)中の1M LiPFを95μlの量で使用した。特定の放電工程で初期放電容量の70%に達するまで、以下のCレートを適用することにより、室温3.1~4.3Vで、Maccor 4000バッテリーサイクラーで、セルを定電流的に(galvanostatically)サイクルした。
【0118】
【表1】
【0119】
記載されたCレートで充電した後、最初の工程を除くすべての充電工程を、定電圧工程(CV)で1時間、又は電流が0.02Cに達するまで行った。
【0120】
抵抗測定(25℃で25サイクルごとに実施)の間、セルを0.1Cで充電し、前回の放電容量に対して50%の充電状態に達した。セルを平衡化させるため、30分間の開回路工程が続いた。最後に、2.5Cの放電電流を30秒間印加し、抵抗値を測定した。電流パルスの終わりに、セルを再び30分間開放回路で平衡化し、さらに0.1Cで3.0Vまで放電した。
【0121】
抵抗値を計算するために、2.5Cのパルス電流を印加する前の電圧V0s、及び2.5Cのパルス電流を30秒印加した後の電圧V30s、及び2.5Cの電流値(jはAで表示する)をとった。式3(V:電圧、j:2.5Cのパルス電流)に従って、抵抗値を計算した。
【0122】
R=(V0s-V30s)/j (式3)
【0123】
結果は、140(1C)及び141(0.1C)サイクル後の1Cレートの向上と高い安定性の向上を示す。さらに、比較実験と比較して抵抗の増加が少ない。
【0124】
【表2】
【国際調査報告】