(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】再利用プラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、そしてこれを用いた再利用プラスチック、および成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505126
(86)(22)【出願日】2023-04-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2023004929
(87)【国際公開番号】W WO2023200244
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2022-0045959
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0044307
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ベオム
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒュンヨウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュン チェオル
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA23
4F401BA06
4F401CA22
4F401CA30
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
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4F401EA54
4F401EA55
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4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
【要約】
本発明は、芳香族ジオール化合物を含み、式1による芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率が0.5%以下であり、芳香族ジオール化合物の純度が99.25%以上であり、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする再利用プラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、そしてこれを用いた再利用プラスチック、および成形品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジオール化合物を含み、
下記の式1による芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率が0.5%以下であり、
芳香族ジオール化合物の純度が99.25%以上であり、
ポリカーボネート系樹脂から回収される、再利用プラスチック合成用単量体組成物:
[式1]
芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率(%)=(HPLC上の芳香族ジオール化合物誘導体のピーク面積/HPLC上の全体ピーク面積)X100。
【請求項2】
上記式1中、HPLC上の芳香族ジオール化合物誘導体のピーク面積は、1種以上の芳香族ジオール化合物誘導体それぞれのピーク面積の合計である、請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物。
【請求項3】
前記芳香族ジオール化合物の誘導体は、モノヒドロキシエチル-ビスフェノールA、およびビスヒドロキシエチル-ビスフェノールAからなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物。
【請求項4】
前記再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標L*が94~99である、請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物。
【請求項5】
前記再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標b*が0.01~2である、請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物。
【請求項6】
前記再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標a*が0.01~1.5である、請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物。
【請求項7】
前記芳香族ジオール化合物は、前記再利用プラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたポリカーボネート系樹脂から回収されたものである、請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物。
【請求項8】
有機溶媒にポリカーボネートを添加して混合液を製造する段階;
前記混合液にグリコール系化合物とイオン性液体触媒を添加して撹拌する段階;および
前記撹拌する段階で形成された芳香族ジオール化合物を得る段階;を含む、請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項9】
前記グリコール系化合物は、アルキレングリコールを含む、請求項8に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートからなる群より選択された1種以上の溶媒を含む、請求項8に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒とグリコール系化合物との重量比が10:1~1:10である、請求項8に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項12】
前記イオン性液体触媒は、ポリカーボネート100重量部に対して、0.1重量部~10重量部添加されるものである、請求項8に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項13】
前記イオン性液体触媒は、アミジン系塩化合物を含む、請求項8に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項14】
前記アミジン系塩化合物は、縮合環を有するアミジン系陽イオンを含む、請求項13に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項15】
前記縮合環は、7員環と、6員環との間の縮合環を含む、請求項14に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項16】
前記アミジン系塩化合物は、下記の化Aで表される塩化合物を含む、請求項13に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法:
[化A]
【化1】
上記化A中、R
1、R
2、R
3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して水素、またはアルキルであってもよい。
【請求項17】
前記混合液にグリコール系化合物とイオン性液体触媒を添加して撹拌する段階は、
20℃~100℃で1時間~30時間撹拌するものである、請求項8に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項18】
前記撹拌する段階で形成された芳香族ジオール化合物を得る段階は、
前記撹拌する段階で得られた生成物を結晶化溶媒に投入して芳香族ジオール化合物結晶を形成させる段階;および
前記芳香族ジオール化合物結晶を濾過させる段階:を含む、請求項8に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の再利用プラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む、再利用プラスチック。
【請求項20】
請求項19に記載の再利用プラスチックを含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年4月13日付の韓国特許出願第10-2022-0045959号および2023年4月4日付の韓国特許出願第10-2023-0044307号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解による再利用により回収された高純度の芳香族ジオール化合物を含む再利用プラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、そしてこれを用いた再利用プラスチック、および成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート(Polycarbonate)は熱可塑性高分子で、優れた透明性、延性および相対的に低い製造費用などの優れた特性を有するプラスチックである。
【0004】
多様な用途に広範囲に使用されるポリカーボネートであるが、廃処理時の環境と健康への憂慮は持続的に提起されてきた。
【0005】
今のところ、物理的な再利用方法が行われているが、この場合、品質低下が伴う問題が発生していて、ポリカーボネートの化学的再利用に関する研究が進められている。
【0006】
ポリカーボネートの化学的分解とは、ポリカーボネートの分解によりモノマーである芳香族ジオール化合物(例えば、ビスフェノールA(Bisphenol A;BPA))を得た後、これを再び重合に活用して高純度のポリカーボネートを得ることをいう。
【0007】
このような化学的分解には、代表的に、熱分解、加水分解およびアルコール分解が知られている。このうち、最も普遍的な方法がアルコール分解であるが、メタノール分解の場合、人体に有害なメタノールを使用する問題があり、エタノールの場合、高温高圧条件が必要であり、収率が高くない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解による再利用により回収された高純度の芳香族ジオール化合物を確保できる再利用プラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法、そして再利用プラスチック合成用単量体組成物を用いた再利用プラスチック、および成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本明細書では、芳香族ジオール化合物を含み、下記の式1による芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率が0.5%以下であり、芳香族ジオール化合物の純度が99.25%以上であり、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、再利用プラスチック合成用単量体組成物が提供される。
[式1]
芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率(%)=(HPLC上の芳香族ジオール化合物誘導体のピーク面積/HPLC上の全体ピーク面積)X100
【0011】
本明細書においては、また、有機溶媒にポリカーボネートを添加して混合液を製造する段階;前記混合液にグリコール系化合物とイオン性液体触媒を添加して撹拌する段階;および前記撹拌する段階で形成された芳香族ジオール化合物を得る段階;を含む、再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法が提供される。
【0012】
本明細書においては、また、前記再利用プラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む再利用プラスチックが提供される。
【0013】
本明細書においては、また、前記再利用プラスチックを含む成形品が提供される。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態による再利用プラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、そしてこれを用いた再利用プラスチック、および成形品についてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書において、明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0016】
本明細書で使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0018】
そして、本明細書において、「第1」および「第2」のような序数を含む用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けられ、類似して、第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0019】
本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;1級アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルコキシシリルアルキル基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1つ以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示した置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換もしくは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。つまり、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0020】
本明細書において、アルキル基は、アルカン(alkane)に由来する1価の官能基で、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、前記直鎖アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1~20であることが好ましい。また、前記分枝鎖アルキル基の炭素数は3~20である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,6-ジメチルヘプタン-4-イルなどがあるが、これらに限定されない。前記アルキル基は、置換もしくは非置換であってもよいし、置換される場合、置換基の例示は、上述した通りである。
【0021】
本明細書において、アルキレン基は、アルカン(alkane)に由来する2価の官能基で、これらは2価の官能基であることを除けば、前述したアルキル基の説明が適用可能である。例えば、直鎖状、または分枝状であって、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などになってもよい。前記アルキレン基は、置換もしくは非置換であってもよいし、置換される場合、置換基の例示は、上述した通りである。
【0022】
本明細書において、縮合環(fused ring)は、2つまたはそれ以上の炭素環または複素環で構成されている多環系において、互いに隣接する環同士でそれぞれ2個の原子だけを共有している環式構造をいう。
【0023】
本願明細書全体において、「1つ以上」とは、例えば、「1、2、3、4または5、特に1、2、3または4、より特に1、2または3、さらにより特に1または2」を意味する。
【0024】
1.再利用プラスチック合成用単量体組成物
発明の一実施形態によれば、芳香族ジオール化合物を含み、下記の式1による芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率が0.5%以下であり、芳香族ジオール化合物の純度が99.25%以上であり、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、再利用プラスチック合成用単量体組成物が提供される。
[式1]
芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率(%)=(HPLC上の芳香族ジオール化合物誘導体のピーク面積/HPLC上の全体ピーク面積)X100
【0025】
本発明者らは、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解による再利用により回収されたにもかかわらず、新規合成した芳香族ジオール化合物水準に高い純度と芳香族ジオール化合物誘導体不純物が顕著に減少するという特徴を満足することによって、これを用いたポリカーボネート系樹脂の合成時、優れた物性の実現が可能であることを、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0026】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解による再利用により芳香族ジオール化合物を含む組成物を高純度で得ることができるという技術的特長点がある。
【0027】
具体的には、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。つまり、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物を得るために、ポリカーボネート系樹脂から回収を進行させた結果、芳香族ジオール化合物が含まれている再利用プラスチック合成用単量体組成物が共に得られることを意味する。
【0028】
前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含む単独重合体または共重合体をすべて含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種だけを用いて得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含む場合、単独重合体が合成できる。また、前記単量体として、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートが含まれる場合、共重合体が合成できる。前記単独重合体または共重合体は、分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0029】
また、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物を含むことができる。前記芳香族ジオール化合物の具体例として、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。好ましくは、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)であってもよい。
【0030】
前記芳香族ジオール化合物は、前記再利用プラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。つまり、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物を得るために、ポリカーボネート系樹脂から回収を進行させた結果、芳香族ジオール化合物も共に得られることを意味する。したがって、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物を製造するために、ポリカーボネート系樹脂からの回収とは別に、外部から新規芳香族ジオール化合物を添加させる場合は、本願発明の芳香族ジオール化合物の範疇に含まれない。
【0031】
具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂から回収されたというのは、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は、酸性、中性、塩基性下で行われ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。特に、前記解重合反応は、後述するように、グリコール系化合物の存在下で進行することが好ましい。
【0032】
一方、前記再利用プラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物以外の不純物をさらに含むことができる。前記不純物は、本発明の主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物を除いた芳香族ジオール化合物誘導体化合物を意味する。
【0033】
前記芳香族ジオール化合物の誘導体は、モノヒドロキシエチル-ビスフェノールA、およびビスヒドロキシエチル-ビスフェノールAからなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。
【0034】
つまり、前記芳香族ジオール化合物の誘導体は、モノヒドロキシエチル-ビスフェノールA1種、ビスヒドロキシエチル-ビスフェノールA1種、またはこれらの2種の混合物を含むことができる。
【0035】
後述する再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法のように、有機溶媒、イオン性液体触媒を導入して温和な反応条件でグリコール系化合物によるポリカーボネートの化学的分解を進行させることによって、芳香族ジオール化合物の誘導体不純物の生成を顕著に減少させることができる。
【0036】
具体的には、前記再利用プラスチック合成用単量体組成物は、式1による芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率が上限の数値範囲が0.5%以下、または0.4%以下、または0.3%以下、または0.2%以下、または0.13%以下であってもよく、下限の数値範囲が0.01%以上、または0.05%以上、または0.08%以上、または0.09%以上、または0.1%以上、または0.11%以上、または0.12%以上であってもよい。前記上限の数値範囲と下限の数値範囲とを組み合わせて下限から上限の数値範囲も満足することができる。前記下限から上限の数値範囲の一例を挙げると、式1による芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率が0.01%~0.5%であってもよい。
【0037】
上記式1によれば、前記芳香族ジオール化合物誘導体不純物の比率の単位である%は、HPLC上のピーク面積比率であって、面積%を意味する。
【0038】
上記式1中、HPLC上の芳香族ジオール化合物誘導体のピーク面積は、1種以上の芳香族ジオール化合物誘導体それぞれのピーク面積の合計であってもよい。例えば、前記芳香族ジオール化合物誘導体がモノヒドロキシエチル-ビスフェノールA、およびビスヒドロキシエチル-ビスフェノールAの2種の混合物の場合、モノヒドロキシエチル-ビスフェノールA、およびビスヒドロキシエチル-ビスフェノールAそれぞれのピーク面積の合計を意味する。
【0039】
より具体的には、前記モノヒドロキシエチル-ビスフェノールA[MHE-BPA]は、HPLC retention time2.84分のピークを示し、ビスヒドロキシエチル-ビスフェノールA[BHE-BPA]は、HPLC retention time2.61分のピークを示すことができる。
【0040】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の誘導体不純物の重量比率を測定する方法の例が大きく限定されるものではなく、例えば、高性能液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)分析を使用することができる。前記HPLCの具体的な方法、条件、装置などは、かつて知られた多様な内容を制限なく適用可能である。ただし、一例を挙げて説明すれば、常圧、20~30℃の条件で再利用ビスフェノールA単量体組成物を1w%でAcetonitrile(ACN)溶媒に溶解した後、UG120(4.6mm I.DX 50mm)を用いて、Waters HPLCシステム(e2695 separation module、2998 PDA detector)により測定することができる。より具体的には、(1)Column:UG120(4.6mm I.DX 50mm)、(2)Column Temp:40℃、(3)Injection volume:10μl、(4)Flow:THF:ACN:water=15:15:70、volume=1.23ml/min(total=10min)、(5)Detector:245nmの条件で測定することができる。
【0041】
このように、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物において、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物以外の芳香族ジオール化合物の誘導体不純物の比率が極めて減少して、これを用いたポリカーボネート系樹脂の合成時、優れた物性の実現が可能である。
【0042】
一方、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標b*値が0.01~2、または0.5~1.2、または0.58~1.11であってもよい。つまり、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標b*値の下限の数値範囲が0.01以上、または0.5以上、または0.58以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上、または1.0以上、または1.1以上であってもよく、上限の数値範囲が2以下、または1.2以下、または1.11以下であってもよい。前記上限の数値範囲と下限の数値範囲とを組み合わせて下限から上限の数値範囲も満足することができる。
【0043】
また、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標L*値が94~99、または95~98、または95.77~97.49であってもよい。つまり、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標L*値の下限の数値範囲が94以上、または95以上、または95.77以上、または96以上、または96.3以上、または96.6以上、または96.9以上、または97.2以上、または97.4以上であってもよく、上限の数値範囲が99以下、または98以下、または97.49以下であってもよい。前記上限の数値範囲と下限の数値範囲とを組み合わせて下限から上限の数値範囲も満足することができる。
【0044】
さらに、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標a*が0.01~1.5、または0.1~1、または0.10~0.23であってもよい。つまり、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、色座標a*値の下限の数値範囲が0.01以上、または0.1以上、または0.12以上、または0.14以上、または0.16以上、または0.18以上、または0.2以上、または0.22以上であってもよく、上限の数値範囲が1.5以下、または1以下、または0.23以下であってもよい。前記上限の数値範囲と下限の数値範囲とを組み合わせて下限から上限の数値範囲も満足することができる。
【0045】
本発明において、「色座標」とは、CIE(国際照明委員会、Commission International de l'Eclairage)で定めた色値あるCIE Lab色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置は、L*、a*、b*の3つの座標値で表現される。
【0046】
ここで、L*値は、明るさを示すもので、L*=0であれば、黒色(black)を示し、L*=100であれば、白色(white)を示す。また、a*値は、当該色座標を有する色が純粋な赤色(pure red)と純粋な緑色(pure green)のどちらに偏っているかを示し、b*値は、当該色座標を有する色が純粋な黄色(pure yellow)と純粋な青色(pure blue)のどちらに偏っているかを示す。
【0047】
具体的には、前記a*値は、-a~+aの範囲を有する。a*の最大値(a*max)は、純粋な赤色(pure red)を示し、a*の最小値(a*min)は、純粋な緑色(pure green)を示す。また、前記b*値は、-b~+bの範囲を有する。b*の最大値(b*max)は、純粋な黄色(pure yellow)を示し、b*の最小値(b*min)は、純粋な青色(pure blue)を示す。例えば、b*値が負数であれば、純粋な青色に偏った色であり、正数であれば、純粋な黄色に偏った色を意味する。b*=50とb*=80とを比較した時、b*=80の方がb*=50よりも純粋な黄色に近くなることを意味する。
【0048】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色座標b*値が2超過と過度に増加すれば、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色が過度に黄色に偏ってカラー特性が不良になる。また、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色座標b*値が0.01未満と過度に減少すれば、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色が過度に青色に偏ってカラー特性が不良になる。
【0049】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色座標L*値が94未満と過度に減少すれば、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物のカラー特性が不良になる。
【0050】
一方、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色座標a*値が1.5超過と過度に増加すれば、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色が過度に赤色に偏ってカラー特性が不良になる。また、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色座標a*値が0.01未満と過度に減少すれば、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色が過度に緑色に偏ってカラー特性が不良になる。
【0051】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色座標L*、a*、b*値を測定する方法の例が大きく限定されるものではなく、プラスチック分野の多様なカラー特性の測定方法を制限なく適用可能である。
【0052】
ただし、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の色座標L*、a*、b*値を測定する方法の一例を挙げると、HunterLab UltraScan PRO Spectrophotometer装置を用いて反射モードで測定することができる。
【0053】
一方、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物の純度が下限の数値範囲が99.25%以上、または99.3%以上、または99.4%以上、または99.5%以上、または99.6%以上、または99.7%以上、または99.8%以上であってもよく、上限の数値範囲が100%以下、または99.9%以下であってもよい。前記上限の数値範囲と下限の数値範囲とを組み合わせて下限から上限の数値範囲も満足することができる。前記下限から上限の数値範囲の一例を挙げると、芳香族ジオール化合物の純度が99.25%~100%であってもよい。
【0054】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の純度を測定する方法の例が大きく限定されるものではなく、例えば、1H NMR、ICP-MS分析、HPLC分析、UPLC分析などを制限なく使用可能である。前記NMR、ICP-MS、HPLC、UPLCの具体的な方法、条件、装置などは、かつて知られた多様な内容を制限なく適用可能である。
【0055】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の純度を測定する方法の一例を挙げると、常圧、20~30℃の条件で前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物を1w%でAcetonitrile(ACN)溶媒に溶解した後、ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 1.7μm(2.1*50mm column)を用いて、Waters HPLCシステムでUPLC(ultra performance liquid chromatography)を用いてビスフェノールA(BPA)の純度を分析した。
【0056】
このように、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物において、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物の純度が99.25%以上と極めて増加して、その他の不純物を最小化することによって、これを用いたポリカーボネート系樹脂の合成時、優れた物性の実現が可能である。
【0057】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、後述する多様な再利用プラスチック(例えば、ポリカーボネート(PC))製造原料として使用できる。
【0058】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、一部少量のその他の添加剤、溶媒をさらに含むことができ、具体的な添加剤や溶媒の種類は大きく限定されず、ポリカーボネート系樹脂の解重合による芳香族ジオール化合物回収工程で幅広く使用される多様な物質を制限なく適用可能である。
【0059】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、後述する再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法によって得られたものであってもよい。つまり、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応後、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物のみを高純度で確保するために、多様な濾過、精製、洗浄、乾燥工程を経て得られた結果物に相当する。
【0060】
2.再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法
発明の他の実施形態によれば、有機溶媒にポリカーボネートを添加して混合液を製造する段階;前記混合液にグリコール系化合物とイオン性液体触媒を添加して撹拌する段階;および前記撹拌する段階で形成された芳香族ジオール化合物を得る段階;を含む、再利用プラスチック合成用単量体組成物の製造方法が提供される。
【0061】
具体的には、本発明は、温和な条件でポリカーボネートをグリコール系化合物に分解させて、純度の高いモノマーであるビスフェノールAを安定的に得ることができるという利点がある。
【0062】
前記ポリカーボネートは、カーボネート繰り返し単位を含む単独重合体または共重合体をすべて含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種だけを用いて得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含む場合、単独重合体が合成できる。また、前記単量体として、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートが含まれる場合、共重合体が合成できる。前記単独重合体または共重合体は、分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0063】
前記ポリカーボネートは、合成により生産された新規ポリカーボネート、再生工程により生産された再生ポリカーボネート、またはポリカーボネート廃棄物など多様な形態、種類に関係なく適用可能である。
【0064】
本発明において、前記グリコール系化合物は、グリコール化合物、またはその誘導体化合物をすべて含むことができ、具体的には、前記グリコール系化合物は、アルキレングリコールを含むことができる。前記アルキレングリコールの具体例が大きく限定されるものではなく、かつて知られた多様なアルキレングリコールを制限なく使用可能であるが、一例を挙げると、エチレングリコール、またはプロピレングリコールがある。
【0065】
一方、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートからなる群より選択された1種以上の溶媒を含むことができる。つまり、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0066】
具体的には、前記有機溶媒としてメチレンクロライドを用いる場合、ポリカーボネートに対する溶解特性が改善されて反応性を向上させることができるという利点がある。
【0067】
前記グリコール系化合物、有機溶媒、ポリカーボネートの重量比率が大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、前記グリコール系化合物とポリカーボネートとの重量比が10:1~1:10、または1:1~1:10、または1:1~1:5、または1:1~1:2、または1:1.2~1:2であってもよい。
【0068】
また、前記有機溶媒とポリカーボネートとの重量比が10:1~1:10、または10:1~1:1、または10:1~2:1、または2:1~5:1、または2:1~3:1、または2.5:1~3:1であってもよい。
【0069】
さらに、有機溶媒とグリコール系化合物との重量比が10:1~1:10、または1:1~10:1、または2:1~10:1、または2:1~5:1、または3:1~4:1であってもよい。
【0070】
具体的には、前記範囲内のグリコール系化合物と有機溶媒とが混合されることによって、必要な水準の重合体の単位体化(Depolymerization)反応が行われるという利点がある。
【0071】
前記イオン性液体触媒は、ポリカーボネート100重量部に対して、0.1重量部~10重量部、または0.1重量部~5重量部、または0.1重量部~4重量部、または0.1重量部~3重量部、または0.1重量部~2重量部、または0.1重量部~1重量部添加される。具体的には、前記含有量範囲のイオン性液体触媒を含むことによって、経済性のある触媒反応を進行させることができるという利点がある。
【0072】
前記イオン性液体触媒は、有機陽イオンと有機陰イオンとを含む塩の形態で存在することができ、具体的には、アミジン系塩化合物を含むことができる。前記アミジン系塩化合物は、アミジン系陽イオンとイミダゾール系陰イオンとを含むことができる。前記アミジン系陽イオンは、アミジン陽イオン、またはその誘導体陽イオンをすべて含むことができる。前記イミダゾール系陰イオンは、イミダゾール陰イオン、またはその誘導体陰イオンをすべて含むことができる。
【0073】
具体的には、前記アミジン系塩化合物は、縮合環を有するアミジン系陽イオンを含むことができる。前記縮合環は、7員環と、6員環との間の縮合環を含むことができる。前記7員環は環をなす元素が7個の場合、前記6員環は環をなす元素が6個の場合をそれぞれ意味する。
【0074】
前記6員環にアミジンのC=N二重結合が含まれる。前記7員環にアミジンのC-C単結合が含まれる。そして、7員環と、6員環とが重なる部分にアミジンのC-N単結合が含まれる。
【0075】
より具体的には、前記イオン性液体触媒の具体例を挙げると、下記の化Aで表される塩化合物が挙げられる。
[化A]
【化1】
上記化A中、R
1、R
2、R
3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して水素、またはアルキルであってもよい。
【0076】
上記化Aで表されるイオン性液体触媒の細部的な例を挙げて説明すれば、上記化A中、R1=R2=R3=水素(H)である化合物a、上記化A中、R1=R3=水素(H)、R2=メチル(CH3)である化合物b、上記化A中、R1=R2=水素(H)、R3=メチル(CH3)である化合物c、上記化A中、R1=R3=水素(H)、R2=イソプロピル(isopropyl)である化合物d、または上記化A中、R1=R2=水素(H)、R3=イソプロピル(isopropyl)である化合物eなどが挙げられ、これに制限されるわけではない。
【0077】
一方、前記混合液にグリコール系化合物とイオン性液体触媒を添加して撹拌する段階は、20℃~100℃、または50℃~100℃、または60℃~100℃、または70℃~100℃、または70℃~90℃で1時間~24時間、または1時間~12時間、または1時間~8時間撹拌するものであってもよい。また、前記混合液にグリコール系化合物とイオン性液体触媒を添加して撹拌する段階は、20℃~100℃で1時間~30時間撹拌するものであってもよい。
【0078】
具体的には、前記条件は、既存の加圧/高温工程に比べて温和な(Mild)工程条件であり、前記条件下で撹拌を行うことによって、加圧/高温工程に比べて温和な(Mild)工程で工程を行うことができ、特に70℃~90℃で1~12時間撹拌時、再現性および安定性の面で最も効率的な結果を得ることができるという利点がある。
【0079】
一方、前記撹拌する段階で形成された芳香族ジオール化合物を得る段階は、前記撹拌する段階で得られた生成物を結晶化溶媒に投入して芳香族ジオール化合物結晶を形成させる段階;および前記芳香族ジオール化合物結晶を濾過させる段階:を含むことができる。前記結晶化溶媒を投入して芳香族ジオール化合物結晶を形成する具体的な装置、条件が限定されるものではなく、従来の芳香族ジオール化合物(ビスフェノールA)を回収する技術分野で幅広く使用されてきた多様な再結晶工程が制限なく適用可能である。前記結晶化溶媒の一例を挙げると、水を使用することができる。
【0080】
また、前記芳香族ジオール化合物結晶を濾過させる段階で、具体的な濾過装置、条件が限定されるものではなく、従来の芳香族ジオール化合物(ビスフェノールA)を回収する技術分野で幅広く使用されてきた多様な濾過工程が制限なく適用可能である。前記濾過の一例を挙げると、減圧濾過を使用することができる。
【0081】
3.再利用プラスチック
発明のさらに他の実施形態によれば、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む再利用プラスチックが提供される。
【0082】
前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物に関する内容は、前記一実施形態と他の実施形態において上述した内容をそれぞれすべて含む。
【0083】
前記再利用プラスチックに相当する例が大きく限定されるものではなく、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール化合物と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネートなどのカーボネート前駆体を単量体として合成される多様なプラスチックが制限なく適用可能であり、より具体的な例としては、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0084】
前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含む単独重合体または共重合体をすべて含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種だけを用いて得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含む場合、単独重合体が合成できる。また、前記単量体として、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートが含まれる場合、共重合体が合成できる。前記単独重合体または共重合体は、分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0085】
より具体的には、前記一実施形態の再利用プラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む再利用プラスチックにおいて、共単量体としてはカーボネート前駆体を使用することができる。前記カーボネート前駆体の具体例として、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネートまたはビスハロホルメートが挙げられる。
【0086】
前記ポリカーボネート系樹脂を合成する再利用プラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応工程の例が大きく限定されるものではなく、かつて知られた多様なポリカーボネートの製造方法が制限なく適用可能である。
【0087】
ただし、前記ポリカーボネートの製造方法の一例を挙げると、再利用プラスチック合成用単量体組成物および共単量体を含む組成物を重合する段階を含むポリカーボネートの製造方法を使用することができる。この時、前記重合は、界面重合で行うことができ、界面重合時、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易である。
【0088】
前記重合温度は0℃~40℃、反応時間は10分~5時間であってもよい。また、反応中のpHは、9以上または11以上に維持することができる。
【0089】
前記重合に使用可能な溶媒としては、当業界でポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に制限されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0090】
また、前記重合は、酸結合剤の存在下で行うことができ、前記酸結合剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0091】
さらに、前記重合時、ポリカーボネートの分子量調節のために、分子量調節剤の存在下で重合することができる。前記分子量調節剤として、炭素数1~20のアルキルフェノールを使用することができ、その具体例として、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールまたはトリアコンチルフェノールが挙げられる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中または重合開始後に投入可能である。前記分子量調節剤は、前記芳香族ジオール化合物100重量部対比、0.01~10重量部、または0.1~6重量部を使用することができ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0092】
また、前記重合反応の促進のために、トリエチルアミン、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0093】
4.成形品
発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態の再利用プラスチックを含む成形品が提供される。前記再利用プラスチックに関する内容は、前記他の実施形態において上述した内容をすべて含む。
【0094】
前記成形品は、前記再利用プラスチックを公知の多様なプラスチック成形方法を制限なく適用して得られたものであってもよいし、前記成形方法の一例を挙げると、射出成形、発泡射出成形、ブロー成形、または押出成形が挙げられる。
【0095】
前記成形品の例が大きく限定されるものではなく、プラスチックを使用する多様な成形品に制限なく適用可能である。前記成形品の一例を挙げると、自動車部品、電気電子製品、通信製品、生活用品、建築素材、光学部品、外装材などが挙げられる。
【0096】
前記成形品は、前記他の実施形態の再利用プラスチックのほか、必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料および染料からなる群より選択された1種以上の添加剤を追加的に含むことができる。
【0097】
前記成形品の製造方法の一例として、前記他の実施形態の再利用プラスチックと添加剤とをミキサを用いてよく混合した後に、押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後、射出成形機で射出する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0098】
本発明によれば、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解による再利用により回収された高純度の芳香族ジオール化合物を含む再利用プラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、そしてこれを用いた再利用プラスチック、および成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0099】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0100】
<実施例:再利用ビスフェノールA単量体組成物の製造>
【0101】
実施例1~7
250mlの3口フラスコ(3-neck flask)に、メチレンクロライド(Methylene Chloride)80g、およびポリカーボネート30gを投入して撹拌した。
【0102】
以後、エチレングリコール(Ethylene glycol)22gおよび下記の表1に記載された触媒を投入し、下記の表1に記載された反応温度で24時間撹拌した。
【0103】
反応が完了すると、反応生成物を水に投入し、結晶化されたビスフェノールAを減圧濾過してビスフェノールAを得て、再利用ビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0104】
【0105】
-化合物a:下記の化A中、R1=R2=R3=水素(H)
20mlバイアルにイミダゾール0.6g、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン1.5gを投入し、室温で5時間撹拌して化合物aを得た。
-化合物b:下記の化A中、R1=R3=水素(H)、R2=メチル(CH3)
20mlバイアルに2-メチル-1H-イミダゾール0.8g、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン1.5gを投入し、室温で5時間撹拌して化合物bを得た。
-化合物c:下記の化A中、R1=R2=水素(H)、R3=メチル(CH3)
20mlバイアルに4-メチル-1H-イミダゾール0.8g、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン1.5gを投入し、室温で5時間撹拌して化合物cを得た。
-化合物d:下記の化A中、R1=R3=水素(H)、R2=イソプロピル(isopropyl)
20mlバイアルに2-イソプロピル-1H-イミダゾール1.1g、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン1.5gを投入し、室温で5時間撹拌して化合物dを得た。
-化合物e:下記の化A中、R1=R2=水素(H)、R3=イソプロピル(isopropyl)
20mlバイアルに4-イソプロピル-1H-イミダゾール1.1g、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン1.5gを投入し、室温で5時間撹拌して化合物eを得た。
【0106】
【0107】
<比較例:再利用ビスフェノールA単量体組成物の製造>
【0108】
比較例1
250mlの3口フラスコ(3-neck flask)に、ポリカーボネート20gを投入して撹拌した。
【0109】
以後、エチレングリコール(Ethylene glycol)22gおよび触媒として前記化合物a0.3gを投入し、130℃で24時間撹拌した。
【0110】
反応が完了すると、反応生成物を水に投入し、結晶化されたビスフェノールAを減圧濾過してビスフェノールAを得て、再利用ビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0111】
比較例2
250mlの3口フラスコ(3-neck flask)に、メチレンクロライド(Methylene Chloride)60ml、メタノール30mlおよび触媒として前記化合物a1.5gを投入して撹拌した。
【0112】
以後、廃ポリカーボネート30gを投入し、40℃で5時間撹拌した。
【0113】
反応が完了すると、反応生成物を水に投入し、結晶化されたビスフェノールAを減圧濾過してビスフェノールAを得て、再利用ビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0114】
比較例3
250mlの3口フラスコ(3-neck flask)に、メチレンクロライド(Methylene Chloride)60ml、エタノール30mlおよび触媒として前記化合物a1.5gを投入して撹拌した。
【0115】
以後、廃ポリカーボネート30gを投入し、50℃で24時間撹拌した。
【0116】
反応が完了すると、反応生成物を水に投入し、結晶化されたビスフェノールAを減圧濾過してビスフェノールAを得て、再利用ビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0117】
<実験例>
前記実施例および比較例で得られた再利用ビスフェノールA単量体組成物、または副生成物に対して、下記の方法で物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0118】
1.BPA純度
常圧、20~30℃の条件で再利用ビスフェノールA単量体組成物を1w%でAcetonitrile(ACN)溶媒に溶解した後、UG120(4.6mm I.DX 50mm)を用いて、Waters HPLCシステム(e2695 separation module、2998 PDA detector)を用いてビスフェノールA(BPA)の純度を分析した。
【0119】
<HPLC条件>
(1)Column:UG120(4.6mm I.DX 50mm)
(2)Column Temp:40℃
(3)Injection volume:10μl
(4)Flow:THF:ACN:water=15:15:70、volume=1.23ml/min(total=10min)
(5)Detector:245nm
【0120】
2.色座標(L*、a*、b*)
前記再利用ビスフェノールA単量体組成物に対して、HunterLab UltraScan PRO Spectrophotometer装置を用いて反射モードで分析した。
【0121】
3.BPA誘導体(MHE-BPA、BHE-BPA)不純物の比率
前記再利用ビスフェノールA単量体組成物1mlを試料として採取して、1.BPA純度の測定方法と同様の方法で高性能液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)分析を行い、前記全体HPLCピーク面積100%に対して、BPA誘導体(モノヒドロキシエチル-ビスフェノールA[MHE-BPA]、ビスヒドロキシエチル-ビスフェノールA[BHE-BPA])不純物のピーク面積比率(単位:%)を下記の式1のように測定した。
【0122】
[式1]
BPA誘導体不純物の比率(%)=(HPLC上のビスフェノールA誘導体のピーク面積/HPLC上の全体ピーク面積)X100。
【0123】
上記式1中、HPLC上のビスフェノールA誘導体のピークは、具体的には、次の通りであり、上記式1中、HPLC上のビスフェノールA誘導体のピーク面積は、MHE-BPA、BHE-BPAそれぞれのピーク面積の総和である。
モノヒドロキシエチル-ビスフェノールA[MHE-BPA]:retention time2.84分ピーク
ビスヒドロキシエチル-ビスフェノールA[BHE-BPA]:retention time2.61分ピーク
【0124】
【0125】
前記表1に示されているように、実施例1~7で得られた再利用ビスフェノールA単量体組成物は、99.3%~99.8%の高純度を示した。また、実施例1~7で得られた再利用ビスフェノールA単量体組成物は、色座標L*が95.77~97.49、a*が0.10~0.23、b*が0.58~1.11を示して、優れた光学物性を示した。また、実施例1~7で得られた再利用ビスフェノールA単量体組成物は、BPA誘導体不純物の比率が0.08%~0.13%と低く測定された。
【0126】
これに対し、比較例1で得られた再利用ビスフェノールA単量体組成物は77.9%で実施例に比べて純度が減少し、BPA誘導体不純物の比率が19.92%で実施例に比べて高く測定された。
【0127】
また、比較例2~3で得られた再利用ビスフェノールA単量体組成物は、色座標L*が91.73~92.36、a*が1.98~2.12、b*が2.98~3.16を示して、実施例に比べて不良な光学物性を示した。
【国際調査報告】