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特表2024-528957イオニリデンエタンシンターゼによる新規な芳香化合物の生成
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  • 特表-イオニリデンエタンシンターゼによる新規な芳香化合物の生成 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】イオニリデンエタンシンターゼによる新規な芳香化合物の生成
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20240725BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/13 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240725BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20240725BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K8/31
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/13
C12N5/04
C12N5/10
C12N15/54
C12N15/31
A61Q13/00 101
A61K8/35
A61L9/01 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506479
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022071567
(87)【国際公開番号】W WO2023012111
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189182.5
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロイアー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインガルテン,メラニー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C180
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA83X
4B065AA89X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA47
4B065CA51
4C083AA021
4C083AA022
4C083AC031
4C083AC032
4C083AC092
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC472
4C083AC842
4C083AD112
4C083AD532
4C083CC01
4C083CC02
4C083FF01
4C083KK02
4C180AA01
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180BB15
4C180CA04
4C180CB01
4C180EB02X
4C180EB03X
4C180EB04X
4C180EB05X
4C180EB06X
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB12X
4C180EB14X
4C180EB15X
4C180EB29X
4C180EC01
4C180FF01
4C180FF07
(57)【要約】
本発明は、α-イオニリデンエタンの芳香化合物としての使用、及び1つ以上の芳香化合物の生成におけるα-イオニリデンエタンシンターゼの使用に関する。1つ以上の芳香化合物を調製するための本発明の方法は、a)ファルネシルジホスフェート及び本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼを、α-イオニリデンエタンシンターゼがα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、提供する工程と、b)インビトロ又は宿主細胞内で、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程と、c)任意選択的に、α-イオニリデンエタンを1つ以上の更なる芳香化合物に変換する工程と、d)α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を単離する工程と、e)任意選択的に、α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を精製する工程と、を含む。本発明はまた、製品に香気を付けるための方法、特に、少なくとも1つのα-イオニリデンエタンシンターゼが使用される、匂い若しくは風味を付与及び/又は増強するための方法に関する。加えて、本発明は、芳香化合物若しくは組成物及び/又は芳香剤組成物及び/又は香水の香りの若しくは香り付けされた製品であって、i)少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを含む芳香化合物若しくは組成物及び/又は芳香剤組成物及び/又は香水の香りの若しくは香り付けされた製品を提供する。更に、本発明には、少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを含む香水の香りの又は香り付けされた製品が包含される。本発明は、更に、α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための方法であって、以下の順で:a)少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、ファルネシルジホスフェートを少なくとも1つのα-イオニリデンエタンシンターゼと接触させる工程と;b)少なくともα-イオニリデンエタンを生成する工程と;c)工程b)で生成された少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを、α-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適な条件に曝露して、α-イオノンを生成する工程と;d)任意選択的に、工程c)で生成されたα-イオノンを単離する工程と、を含む方法に関する。本発明はまた、α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための宿主細胞であって、ファルネシルジホスフェートとα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸とを含み、α-イオノンを生成するためにα-イオニリデンエタンを酸化開裂することができる宿主細胞に関する。最後に、本発明は、ファルネシルジホスフェートと、α-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸と、を含む宿主細胞の使用であって、(i)α-イオニリデンエタンを生成するための;(ii)α-イオノンを生成するための;(iii)ビタミンAを生成するための;(iv)α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換するための;(v)α-イオニリデンエタンをビタミンAに変換するための;(vi)テルペン又はテルペノイドの異種再構成のための;(vii)工業製品を生成するための;(viii)セスキテルペンを生成するための発酵産生系のための、宿主細胞の使用に関する。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-イオニリデンエタンの芳香化合物としての使用。
【請求項2】
フローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを有する、芳香化合物としての、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
1つ以上の芳香化合物の生成におけるα-イオニリデンエタンシンターゼの使用。
【請求項4】
前記α-イオニリデンエタンシンターゼが、
a)ホスフェートに作用する炭素-酸素リアーゼのサブクラスに属する前記α-イオニリデンエタンシンターゼ(EC 4.2.3)と、
b)真菌又は細菌α-イオニリデンエタンシンターゼである前記α-イオニリデンエタンシンターゼと、
c)
i)配列番号1~17又は19~33のいずれかで示されるアミノ酸配列、
ii)配列番号1~17又は19~33のいずれかとアミノ酸レベルで少なくとも40%の配列同一性を有し、α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有するアミノ酸配列、及び
iii)α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有する、酵素活性があるa)又はb)のアミノ酸配列の断片
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む前記α-イオニリデンエタンシンターゼと、
c)上記a)~c)の任意の組み合わせと、
からなる群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記α-イオニリデンエタンシンターゼが、フローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを香水、芳香剤、又は芳香に伝える1つ以上の芳香化合物を調製するためである、請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
前記α-イオニリデンエタンが、請求項3、4、又は5に定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼにより生成される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項7】
1つ以上の芳香化合物を調製するための方法であって:
a)ファルネシルジホスフェート、及びα-イオニリデンエタンシンターゼ、好ましくは、請求項3、4、又は5に定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼを、前記α-イオニリデンエタンシンターゼがα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、提供する工程と、
b)インビトロ又は宿主細胞内で、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程と、
c)任意選択的に、α-イオニリデンエタンを1つ以上の更なる芳香化合物に変換する工程と、
d)α-イオニリデンエタン及び/又は、任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を単離する工程と、
e)任意選択的に、α-イオニリデンエタン及び/又は、任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を精製する工程と、
を含む方法。
【請求項8】
前記方法が、
f)α-イオニリデンエタンを、α-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適な条件に曝露して、α-イオノンを生成する工程と、
g)α-イオニリデンエタンをα-イオノン、好ましくはR-α-イオノンに変換する工程と、
h)任意選択的に、前記α-イオノンを精製する工程と、
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
製品に香気を付けるための方法、特に請求項3、4、又は5に定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンシンターゼが使用される、匂い若しくは風味を付与及び/又は増強するための方法であって、前記方法が、請求項7又は8に記載の方法に従う1つ以上の芳香化合物を調製する工程と、続いて任意選択的に、1つ以上の芳香化合物を精製する工程と、それに続く、前記1つ以上の芳香化合物で製品に香気を付ける工程と、を含む方法。
【請求項10】
i)請求項1又は2に定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンと、
ii)任意選択的に、i)とは異なる少なくとも1つの更なる芳香化合物と、
iii)任意選択的に、少なくとも1つの希釈剤と、
を含む、芳香化合物若しくは組成物及び/又は芳香剤組成物及び/又は香水の香りの若しくは香り付けされた製品。
【請求項11】
請求項1又は2に定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを含む、香水の香りの又は香り付けされた製品。
【請求項12】
α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための方法であって、以下の順で:
a)少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、ファルネシルジホスフェートを、請求項3、4、又は5に定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンシンターゼと接触させる工程と、
b)前記少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを生成する工程と、
c)工程b)で生成された前記少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを、α-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適な条件に曝露して、α-イオノンを生成する工程と、
d)任意選択的に、工程c)で生成された前記α-イオノンを単離する工程と、
を含む方法。
【請求項13】
α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための宿主細胞であって、前記宿主細胞が、ファルネシルジホスフェートと、請求項3、4、又は5に定義される異種α-イオニリデンエタンシンターゼと、を含み、前記宿主細胞が、好ましくは、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、藍藻細胞、非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、又は植物細胞であり、前記宿主細胞が、α-イオノンを生成するためのα-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適である、宿主細胞。
【請求項14】
(i)請求項3、4、又は5に定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼが、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する、並びに/又は
(ii)α-イオニリデンエタンが、酸化開裂により、化学的に及び/若しくは酵素的にα-イオノンに変換される、
請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
ファルネシルジホスフェートと、請求項3、4、又は5に定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸と、を含む宿主細胞の使用であって、
(i)α-イオニリデンエタン、好ましくは2Z,4E-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)を、好ましくは芳香物質の前駆体である芳香成分若しくは芳香化合物として、又はビタミンAの前駆体として生成するための、
(ii)α-イオノン、好ましくはR-α-イオノンを生成するための、
(iii)ビタミンAを生成するための、
(iv)α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換するための、
(v)α-イオニリデンエタンをビタミンAに変換するための、
(vi)テルペン若しくはテルペノイドの異種再構成のための、
(vii)工業製品、好ましくは芳香組成物、香味料若しくは芳香剤、医薬組成物、農業用組成物、動物飼料、人間の栄養製品、化粧品、着色剤(カロテノイド)、若しくはラジカルスカベンジャーを生成するための、並びに/又は
(viii)セスキテルペンを産生させるための発酵産生系のための、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-イオニリデンエタンシンターゼを利用した1つ以上の芳香化合物(aroma compound)を調製するための方法、並びに芳香化合物及び芳香組成物及び芳香剤の調製のためのこのような酵素の使用に関する。更に、本発明は、この酵素を利用したα-イオノンの生成、並びにまた、α-イオニリデンエタン(E,Z α-イオニリデンエタン=1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)の芳香化合物としての新規の使用に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、α-イオニリデンエタンの芳香化合物としての使用、及び1つ以上の芳香化合物の生成におけるα-イオニリデンエタンシンターゼの使用に関する。1つ以上の芳香化合物を調製するための本発明の方法は、a)ファルネシルジホスフェート及び本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼ、好ましくは、請求項3、4、5で定義されるα-イオニリデンエタンを、α-イオニリデンエタンシンターゼがα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、提供する工程と、b)インビトロ又は宿主細胞内で、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程と、c)任意選択的に、α-イオニリデンエタンを1つ以上の更なる芳香化合物に変換する工程と、d)α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を単離する工程と、e)任意選択的に、α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を精製する工程と、を含む。本発明はまた、製品に香気を付けるための方法、特に、少なくとも1つのα-イオニリデンエタンが使用される、匂い若しくは風味を付与及び/又は増強するための方法に関する。本発明はまた、芳香化合物若しくは組成物及び/又は芳香剤組成物及び/又は香水の香りの若しくは香り付けされた製品であって、i)請求項1又は2で定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンと;ii)任意選択的に、i)とは異なる少なくとも1つの更なる芳香化合物と、iii)任意選択的に、少なくとも1つの希釈剤と、を含む製品を提供する。更に、本発明には、本明細書で定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを含む香水の香りの又は香り付けされた製品が包含される。本発明は、更に、α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための方法であって、以下の順で:a)少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、ファルネシルジホスフェートを少なくとも1つのα-イオニリデンエタンシンターゼと接触させる工程と;b)少なくともα-イオニリデンエタンを生成する工程と;c)工程b)で生成された少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを、α-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適な条件に曝露して、α-イオノンを生成する工程と;d)任意選択的に、工程c)で生成されたα-イオノンを単離する工程と、を含む方法に関する。本発明はまた、α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための宿主細胞であって、宿主細胞はファルネシルジホスフェートとα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸とを含み、宿主細胞は、好ましくは、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、藍藻細胞、非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、又は植物細胞であり、α-イオノンを生成するためのα-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適である宿主細胞に関する。最後に、本発明は、ファルネシルジホスフェートと本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸とを含む宿主細胞の使用であって、(i)α-イオニリデンエタン、好ましくは2Z,4E-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)を、好ましくは芳香物質の前駆体である芳香成分若しくは芳香化合物として、又はビタミンAの前駆体として生成するための;(ii)α-イオノン、好ましくは R-α-イオノンを生成するための;(iii)ビタミンAを生成するための;(iv)α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換するための;(v)α-イオニリデンエタンをビタミンAに変換するための;(vi)テルペン若しくはテルペノイドの異種再構成のための;(vii)工業製品、好ましくは芳香組成物、香味料若しくは芳香剤、医薬組成物、農業用組成物、動物飼料、人間の栄養製品、化粧品、着色剤(カロテノイド)、若しくはラジカルスカベンジャーを生成するための;並びに/又は(viii)セスキテルペンを生成するための発酵産生系のための使用に関する。好ましくは、宿主細胞は、α-イオニリデンエタンシンターゼをコードする核酸についてのトランスジェニックであり、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼの活性形態を含む。
【0003】
本発明はまた、α-イオノン(E-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を調製するための方法であって、ファルネシルジホスフェート及びα-イオニリデンエタンシンターゼの存在下、インビトロ又は宿主細胞内で、α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換する工程を含む方法に関する。加えて、本発明は、芳香組成物、香味料、芳香剤、又は香水を調製するための方法であって:a)本発明のα-イオニリデンエタンを調製するための方法に従ってα-イオニリデンエタンを生成する;及び/又は本発明のα-イオノンを調製するための方法に従ってα-イオノンを生成する工程と;b)工程a)のα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンを単離し、並びに任意選択的に、精製する工程と;c)単離され、並びに任意選択的に、精製された工程b)のα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンを、本明細書で以下に記載される本発明の芳香化学物質組成物、例えば、以下の嗅覚ノート(note):α-イオニリデンエタンの場合は、フローラル-バイオレット又はウッディ-オリス(イリス)根、α-イオノンの場合はフローラル-バイオレットのいずれか1つを伝える芳香組成物、香味料、芳香剤、又は香水に成分として添加する工程と、を含む方法に関する。更に、本発明は、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンを調製するための宿主細胞であって、ファルネシルジホスフェートとα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸とを含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、(i)本発明の宿主細胞、α-イオニリデンエタン及び/若しくはα-イオノン、又は(ii)本出願で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼ、α-イオニリデンエタン及び/若しくはα-イオノンを含む組成物、並びに本発明の宿主細胞を含むキット、又は本発明の組成物を意図する。最後に、本発明は、a)本発明の宿主細胞の使用であって:(i)α-イオニリデンエタン、好ましくは2Z,4E-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)を、好ましくは芳香物質の前駆体である芳香成分として、又はビタミンAの前駆体として生成するための;(ii)α-イオノン、好ましくは R-α-イオノンを生成するための;(iii)ビタミンAを生成するための;(iv)α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換するための;(v)α-イオニリデンエタンをビタミンAに変換するための;(vi)テルペン若しくはテルペノイドの異種再構成のための;(vii)工業製品、好ましくは芳香組成物、香味料若しくは芳香剤、医薬組成物、農業用組成物、動物飼料、人間の栄養製品、化粧品、着色剤(カロテノイド)、又はラジカルスカベンジャーを生成するための;(viii)好ましくは本発明の宿主細胞においてセスキテルペンを生成するための発酵産生系のための使用に関する。本発明はまた、α-イオニリデンエタンの芳香化学物質又は化合物としての使用に関する。
【背景技術】
【0004】
過去数十年の間、全ての生きている生物における最も大量にある二次代謝物、テルペンに焦点を当てた集中的な科学研究が行われてきた。55,000種類を超えるテルペノイド物質は、全ての生物界で見出される天然産物の様々なファミリーの間に広く分布している。
【0005】
多くのテルペノイドは一般に、あらゆる生物の成長、発生又は再生に第一に必須なものではないので、二次代謝物である。しかし、この分類は、生態系の機能を維持するこれらの二次代謝物の広い更なる効果に広がっていない。これらの物質は、重要な役割を果たし、匂いなどのそれらの別個の化学感受性特性に関して進化的な長所を有する植物を提供し得る。従って、とりわけこれらは、植物及び穀物を寄生虫及び病原体から保護する殺虫効果を発揮し得るか、又は生殖過程において花粉媒介者誘引物質として作用し得る。
【0006】
多くのテルペノイドは、薬物、香味料、芳香剤、顔料及び消毒薬の生成における基本構造部分として広く使用されているというその経済的重要性についてよく知られている。例えば、α-イオノンは、香水、化粧品、及びパーソナルケア製品、並びに家庭用洗浄剤及び洗剤において芳香剤として使用される。ローズウッド、アニバ・ロサエオドラ(Aniba rosaeodora)の主要な精油の成分であるモノテルペンアルコールリナロールは、とりわけ香水の生成において最も頻繁に使用される成分である。更に、セスキテルペンラクトン、アルテミシニンは、低木アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)から抽出され、マラリアの第1選択治療において使用される。太平洋イチイ、タキサス・ブレビフォリア(Taxus brevifolia)の樹皮から単離される三環式ジテルペンであるタキソール及びその構造類似体は、抗癌剤として使用される。
【0007】
テルペンは主に、一般的な生合成経路を介して植物において合成される。それらの多様な構造及び機能にかかわらず、全てのテルペンは、イソプレン規則に従い、イソプレン単位(5個の炭素原子)から構築される。頭尾付加を通じて連結されるそれらの構造中のイソプレン単位の数に従って、それぞれそれらの炭素原子又はセスキテルペノイド部分の数に従い、テルペンが分類される:モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、トリテルペン(C30)又は最大30,000個の連結されるイソプレン単位を有するポリテルペン。テルペンと同様に、テルペノイドは、イソプレン単位の数に従い同様に分類され、これらは、モノテルペノイド(C10)におけるか又はセスキテルペノイド(C15)におけるように構成され、接尾語「-oids」(~のようなもの)を伴い更に名付けられる。
【0008】
イソペンチルジホスフェート(IPP)及びその求電子異性体、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)は、テルペンの生合成において普遍的な前駆体である。これらの2つの構成要素から開始して、プレニルトランスフェラーゼに属する酵素の群により直鎖状プレニル二リン酸が合成される。IPP及びDMAPPは、プレニルトランスフェラーゼゲラニルジホスフェートシンターゼの触媒効果により縮合されて、モノテルペンの群に相当する環状又は直鎖状最終産物に変換され得る中間体である、C10ゲラニルジホスフェート(GPP)を与える。
【0009】
同様に、セスキテルペンは、一般的なセスキテルペンの生合成的な前駆体であるファルネシルピロホスフェート(FPP)としても知られるC15ファルネシルジホスフェートを形成するGPPへの第3のイソプレン単位の付加を介して生成される。IPP及びDMAPPの更なる重合化によって、含有されるイソプレン単位の数に従い名付けられる異なるクラスのテルペンを形成するより長いプレニル二リン酸が生成される。
【0010】
IPP及びDMAPP生合成は、2つの独立した経路:メバロン酸(MVA)経路及び2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸(MEP)経路を介して完遂される。MVA経路は、テルペンの合成における普遍的経路とみなされたものの、過去10年の間に、MEP経路よりも植物二次代謝物において顕著なものではないことが分かった。MVAは、殆どの真核生物、古細菌、数種類の真正細菌並びに植物の細胞質及びミトコンドリアにおいて主要なものであり、細胞質内で、セスキテルペン(C15)及びトリテルペン(C30)などの多重類似体に対する前駆体を生成させる。一方で、MEP経路は、より高等な植物、藍藻、真正細菌及び藻類の葉緑体における主要経路である。色素体におけるその生合成の位置により、MEPは、モノテルペン(C10)、ジテルペン(C20)及びカロテノイド(C40)に至る。
【0011】
メバロネート経路、イソプレノイド経路又は3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)レダクターゼ経路としても知られるメバロン酸経路(MVA)経路は、1950年代に酵母及び動物において発見された。MVA経路は、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ酵素の触媒作用を通じた、アセトアセチルCoAを形成させるための2個のアセチルCoA分子のクライゼン縮合で開始する。アセトアセチルCoAは、別のアセチルCoAとのアルドール反応を介して、HMGシンターゼによりHMG-CoAへと変換される。次の2つの還元段階において、HMG-CoAレダクターゼを用いてHMG-CoAをメバロン酸(MVA)に変換するために、2個のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート分子が必要とされる。続くMVAのリン酸化は、それぞれメバロン酸キナーゼ(MK)及びホスホメバロネートキナーゼ(PMK)により触媒される2つの反応を介して、メバロネート5-二リン酸(MVAPP)を与える。最後に、メバロネート5-二リン酸デカルボキシラーゼ(MVD)により触媒されるATP共役脱炭酸反応によって、MVAPPの脱炭酸からIPPが生成される。IPP:DMAPPイソメラーゼ(IDI)は次にIPPとDMAPPとの間の相互変換を触媒する。
【0012】
メチルエリスリトールリン酸経路(MEP)又はMVA非依存経路は、1990年代後半及び2000年代初期に、細菌及び緑藻及び高等植物の葉緑体において発見された。この経路は、2つの異なる前駆体、即ちピルビン酸及びD-グリセルアルデヒド3-リン酸(G3P)で開始する。両分子は、補因子としてチアミンピロリン酸を使用して、1-デオキシ-D-キシルロース5-ホスフェートシンターゼ(DXS)により触媒される縮合を受け、1-デオキシ-D-キシルロース5-ホスフェート(DXP)が生じる。次の段階において、DXPは、DXPレダクトイソメラーゼ(DXR)によってMEPに異性化される。4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトール(CDP-ME)シンターゼは、結果的に、MEPとシチジン三リン酸(CTP)との間のカップリングを触媒してメチルエリスリトールシチジル二リン酸(CDP-ME)を生成させる。ATP依存性の反応において、CDP-MEキナーゼは、CDP-MEを4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトール-2-ホスフェート(CDP-MEP)へとリン酸化する。その後に、後者は、MEcPPシンターゼにより触媒される反応において2-C-メチル-D-エリスリトール-2,4-シクロジホスフェート(MEcPP)への環化を受け、シチジン一リン酸(CMP)を放出する。この経路は、環状ピロリン酸の開環及びHMBPPシンターゼにより触媒されるMEcPPから4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル-ジホスフェート(HMBPP)への還元的脱水により終了する。HMBPPは最終的に、IPP及びDMAPPの混合物へとHMBPPレダクターゼにより変換される。
【0013】
アブシシン酸(ABA)はイソプレノイド植物ホルモンであり、色素体MEP経路で合成される(アブシシン酸:Metabolism,transport and signalling.Da-Peng Zhan-Editor.Springer 2014)。セスキテルペノイドアブシシン酸は、高等植物の発生プロセス及び非生物的ストレス応答を制御することで主に知られている。最近の研究では、アブシシン酸も様々な薬理活性を示すことが示されている。しかしながら、アブシシン酸を生成して利用する生物は植物だけではない。例えば、アブシシン酸の生成は、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)のような植物病原菌、藍藻、動物の寄生虫であるトキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、及びヒトを含む哺乳類で確認された。メバロン酸由来の前駆体であるファルネシルジホスフェートから形成される構造的に関連したセスキテルペンとは異なり、植物ではアブシシン酸のC15主鎖はMEPのC40カロテノイドの開裂後に形成される。
【0014】
アブシシン酸はカロテノイド経路を通じて植物によって生成されるが、少数の植物病原性真菌もこのセスキテルペンを産生することができるが、それらはファルネシルジホスフェートの2Z,4E-α-イオニリデンエタンへの環化から始まり、その後酸化還元酵素によるいくつかの酸化工程を受けるという独特の経路を使用する。
【0015】
α α-イオニリデンエタン及びα-イオニリデンエタンシンターゼは、植物ホルモンであるアブシシン酸の生成に関する研究から知られているが、芳香化合物としての使用、又は芳香化合物若しくは芳香組成物の生成にはそれぞれ関連していない。
【0016】
α-イオニリデンエタンと対照的に、α-イオノンは、既知の芳香化合物である。述べられているように、α-イオノンは、フローラルノートを伝える非常に価値のある芳香化学物質である(Panten,J.and Surburg,H.,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2000)。α-イオノンの技術的合成は、例えば、シトラールとアセトンの縮合から得られる擬似イオノンの酸触媒による環化によって行われるが、天然のα-イオノンは一般に、インビボでのカロテノイドの酸化分解によって生合成されると考えられている。従って、天然のα-イオノンの合成のための更なる手段及び方法が必要とされている。本発明以前には、α-イオニリデンエタンからα-イオノンへの酸化分解の前例は知られていなかった。
【0017】
近年、植物起源由来のテルペンに対する代替物を提供するために、モノテルペン、セスキテルペン及びそれらのアルコールを含む多くのテルペンが微生物系において生産されてきた。ほとんどの市販のテルペンは、化学合成によるか又は植物材料からの抽出によって生産される。植物起源は、低濃度、収穫依存性、駆除剤の存在及び/又は植物種の絶滅リスクという欠点があることが多い。テルペンのバイオテクノロジー生産は、持続可能で、経済的に実行可能な、植物起源に対する代替物を提供し得る。
【0018】
テルペンは 30,000を超える化合物で構成され、主に植物によって生成される。これを考慮すれば、植物源の代替として、テルペンの更なる産生系が必要とされている。
【0019】
近年、Otto et al.(Microb Cell Fact(2019)18:205)は、酵母菌であるS.セレヴィシエ(S.cerevisiae)でアブシシン酸を生成するための多段階の代謝経路を確立した。別の研究では、イオニリデンエタンを経由したアブシシン酸への生合成経路は、Inomata及び共同研究者ら(Phytochemistry.2004 Oct;65(19):2667-78.doi:10.1016/j.phytochem.2004.08.025.)による研究において、真菌であるボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)で記載されている。しかしながら、アブシシン酸へのこの経路は、工業用途向けのイオニリデンエタン及びα-イオノンの生成には使用されていない。イオニリデンエタンはこれまでのところ芳香化合物とは考えられておらず、芳香化合物の生成にアブシシン酸合成経路を使用することはこれらの著者らによって報告されていない。更に、イオニリデンエタンはまた、ビタミンA生成の有用な前駆体である可能性があることは知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、新規な芳香化学物質を提供することである。これらは、心地よい官能特性を有していなければならない。本発明の更なる目的は、即時使用できる組成物中で芳香化学物質として使用できる物質を提供することである。特に、心地よい匂いを有する強い匂い物質が求められている。更に、これらは、他の芳香化学物質と組み合わせることによって新規な有利な感覚プロファイルを作り出すことを可能にすることが必要である。加えて、これらの芳香化学物質が、その迅速で経済的な製造を可能にする、容易に入手可能な出発物質から得られることができる必要があることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明の基礎にある技術的問題は、上述のニーズに適合する手段及び方法の提供であると考えられ得る。技術的問題は、特許請求の範囲、本明細書中以下及び実施例で特徴づけられる実施形態によって解決される。
【0022】
本発明は、1つ以上の芳香化合物を調製するための方法であって:
a)ファルネシルジホスフェート及びα-イオニリデンエタンシンターゼを、α-イオニリデンエタンシンターゼがα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、提供する工程と、
b)インビトロ又は宿主細胞内で、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程と、
c)任意選択的に、α-イオニリデンエタンを1つ以上の更なる芳香化合物に変換する工程と、
d)α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を単離する工程と、
e)任意選択的に、α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を精製する工程と、
を含む方法に関する。
【0023】
本発明の一態様は、1つ以上の芳香化合物を調製するための方法であって、ファルネシルジホスフェート及びα-イオニリデンエタンシンターゼを提供する工程と、ファルネシルジホスフェート及びα-イオニリデンエタンシンターゼの存在下、インビトロ又は宿主細胞内で、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程と、任意選択的に、α-イオニリデンエタンの全て又は一部を1つ以上の更なる芳香化合物に変換する工程と、α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を単離する工程と、任意選択的に、α-イオニリデンエタン及び任意選択的に、1つ以上の更なる芳香化合物を精製する工程と、を含む方法に関する。好ましくは、少なくとも1つの芳香化合物は、α-イオニリデンエタンであり、より好ましくは、α-イオニリデンエタンは、2Z,4E-α-イオニリデンエタン(E,Z α-イオニリデンエタン=1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)である。好ましくは、更なる芳香化合物のうちの少なくとも1つは、α-イオノン、好ましくはR-α-イオノンであり、より好ましくは、本発明の方法は、α-イオニリデンエタン及びα-イオノンと、任意選択的に、α-イオニリデンエタン及びα-イオノン以外の1つ以上の芳香化合物と、を調製するための方法である。
【0024】
1つ以上の芳香化合物を調製するための本発明の方法の好ましい実施形態では、方法は、更に、生成された少なくとも1つのα-イオニリデンエタンの全て又は一部をα-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適な条件に曝露して、少なくとも1つのα-イオノン、好ましくはR-α-イオノンを生成する工程と、好ましくは、α-イオニリデンエタンの化学的な又は酵素的な酸化開裂により少なくとも1つのα-イオニリデンエタンの全て又は一部をα-イオノン、好ましくはR-α-イオノンに変換する工程と、を含む。
【0025】
芳香化合物であるα-イオニリデンエタンなどの1つ以上の芳香化合物を調製するための本発明の方法は、インビトロ又は宿主細胞内で、実施され得る。これには、ファルネシルジホスフェート及び本明細書で定義される1つ以上のα-イオニリデンエタンシンターゼの提供が含まれる。ファルネシルジホスフェートは、1つ以上のα-イオニリデンエタンシンターゼのための基質として提供される。方法は、上記1つ以上のα-イオニリデンエタンシンターゼによる、ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの変換を更に含む。このように、生成されたα-イオニリデンエタンは、単離され、任意選択的に、精製される。
【0026】
本発明者らのおかげで、イオニリデンエタンを芳香化合物として同定することができた。これまでイオニリデンエタンは芳香化合物とは考えられていなかったため、この発見は予想できなかった。驚くべきことに、α-イオニリデンエタンは、フローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを、香水、芳香剤、又は芳香に伝える1つ以上の芳香化合物を調製するために使用され得ることが、本発明者らによって見出された。
【0027】
加えて、本発明者らは、イオニリデンエタンはまた、従来技術ではまだ報告されていない、ビタミンA生成のための有用な前駆体である可能性があることを見出した。更に、本発明者らは、有利には、アブシシン酸合成経路のこの部分が、本発明の芳香化学物質組成物用の芳香化合物の工業規模の生成に使用することができることを見出し、これも新規且つ驚くべき発見である。
【0028】
α-イオニリデンエタンはセスキテルペノイドである。
【0029】
2E,4E-α-イオニリデンエタンの化合物の詳細は、例えば、https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/101359914に見出される。2Z,4E-α-イオニリデンエタンについては、例えば、https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/101760128及びhttps://www.biocyc.org/compound?orgid=META&id=CPD-20099に記載されている。
【0030】
以下の実施例で示されるように、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する植物病原性真菌であるボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)由来のα-イオニリデンエタンシンターゼ(IES)は、新規芳香化合物として、芳香化合物の前駆体として、またビタミンAの前駆体となり得る2Z,4E-α-イオニリデンエタンを生成するために、本発明らにより、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)でクローン化及び発現させることに成功した。2Z,4E-α-イオニリデンエタンの生成を振盪フラスコからDASGIP研究所の発酵槽にスケールアップした後、発酵ブロスのドデカン相で新規化合物が検出され、これは予想外にR-α-イオノンであると同定できた。この化合物の単離及び同定をまた、実施例に示す。
【0031】
従って、本発明はまた、α-イオノン並びにα-イオノン及び/又はα-イオニリデンエタンを含む芳香化合物の混合物を生成するための新規の方法に関する。
【0032】
芳香化合物であるα-イオニリデンエタンなどの1つ以上の芳香化合物を調製するための本発明の方法は、インビトロ又は本明細書で定義される宿主細胞内で、実施され得る。好ましくは、芳香化合物であるα-イオニリデンエタンを調製するための方法は、本明細に定義される宿主細胞中で実施される。
【0033】
α-イオニリデンエタンなどの1つ以上の芳香化合物を調製するための方法がインビトロで実施される場合、ファルネシルジホスフェートは溶液中、例えば、適切な反応緩衝液中で基質として提供される。ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの変換の場合、適切な酵素がインビトロの方法で使用される。このような酵素のための非限定的な例は、ホスフェートに作用する炭素-酸素リアーゼのサブクラスに属するα-イオニリデンエタンシンターゼ(IES)である(EC 4.2.3)。α-イオニリデンエタンシンターゼは、おそらく真菌における2つの中性中間体、β-ファルネセン及びアロファルネセンが関与する3段階の反応機構を介して、基質であるファルネシルジホスフェートから生成物であるα-イオニリデンエタンへの反応を触媒する(Takino et al.,BIOSCIENCE,BIOTECHNOLOGY,AND BIOCHEMISTRY 2019,VOL.83,NO.9,1642-1649)。α-イオニリデンエタンシンターゼの配列は、本明細書の他の箇所に開示されている。本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼの活性を測定するための試験は、文献で周知である(例えば、Takino et al.,2019,loc.cit.を参照されたい)。本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼの活性を測定するための好適な試験は、以下の実施例でも示される。
【0034】
ファルネシルピロホスフェート(FPP)としても知られるファルネシルジホスフェート(FDP)は、テルペン、テルペノイド、及びステロールの生合成において生物によって使用されるメバロネート経路と非メバロネート経路の両方の中間体である。ファルネシルジホスフェートの化合物の詳細は、例えば、https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Farnesyl-diphosphateに見出すことができる。
【0035】
植物において、ファルネシルジホスフェートは、β-カロテンの酸化開裂により、アブシシン酸に変換される。アブシシン酸は重要な植物ホルモンの1つであり、植物の非生物的ストレスのシグナル伝達分子として、また植物の休眠及び発芽の調節因子として知られている。他方では、ファルネシルジホスフェートは、α-イオニリデンエタンに直接環化され、これが酸化されてアブシシン酸が得られる。2006年に、アブシシン酸の推定上の生合成遺伝子クラスターが同定された。遺伝子破壊実験により、2つのチトクロムであるP450(BcABA1,2)及び短鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ(BcABA4)が、α-イオニリデンエタンからアブシシン酸への5段階の酸化修飾に関与していることが示唆された。BcABA3は、ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの環化を触媒する新規のテルペンシンターゼとして同定されており、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)の4つのbcABA遺伝子を利用することによりアブシシン酸の異種生成が達成された(Takino et al.,2018,J.Am.Chem.Soc.,140,12392-12395)。BcABA3触媒環化には、(1)ファルネシルジホスフェートのβ-ファルネセンへのイオン化開始環化、(2)β-ファルネセンのアロファルネセンへの異性化、及び(3)α-イオニリデンエタンを与えるアロファルネセンのプロトン化開始環化が含まれる。
【0036】
本発明の1つ以上の芳香化合物を調製するためのインビトロでの方法の一実施形態では、ファルネシルジホスフェートは、粗タンパク質抽出物又は単離された酵素を使用して、生物触媒的に、α-イオニリデンエタンに変換され得る。それによって、ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの変換は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼにより触媒される。
【0037】
本発明の1つ以上の芳香化合物をインビトロで調製するための方法を実施するための適切な条件は、文献に記載されている。加えて、α-イオニリデンエタンを単離して精製するための方法、及び上記化合物を配合するための方法は、当該技術で記載されている;例えば、Takino et al.,J.Am.Chem.Soc.2018,140,39,12392-12395による出版物に対するサポート情報を参照されたい。本発明者らが使用した手順の簡単な要約には、例えばtBMEによる発酵ブロスの抽出、及び溶媒の蒸留が含まれる。蒸留画分はカラムクロマトグラフィーにより精製される。
【0038】
当業者が認めているように、生成された-イオニリデンエタンはまた、単離及び/又は精製後に、α-イオノン又はビタミンA又はビタミンAの前駆体などの所望の生成物を得るために、化学的に処理するか、又は1つ以上の化学反応にさらすことができる。
【0039】
或いは、本発明の1つ以上の芳香化合物を調製するための方法は、本明細書で定義される宿主細胞中で実施され得る。宿主細胞は、好ましくは、基質として、ファルネシルジホスフェートを生成するか、又は含有する。宿主細胞は、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換するための酵素活性があるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする核酸を更に含む。ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する、酵素活性があるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする上記核酸は、好ましくは異種核酸である。
【0040】
本発明によれば、宿主細胞におけるα-イオニリデンエタン生成は、α-イオニリデンエタン生合成に関与する1つ以上のタンパク質の発現又は活性を改変することによって調整され得る。1つ以上のα-イオニリデンエタン化合物を天然に産生する生物を宿主細胞として利用することが望ましい場合がある。或いは、宿主細胞によって自然に産生されないα-イオニリデンエタンの生成を生み出すことが望ましい場合がある。
【0041】
1つ以上の異種α-イオニリデンエタン-合成ポリペプチドを宿主細胞に導入することが望ましい場合がある。異種α-イオニリデンエタン-合成ポリペプチドについての一例は、α-イオニリデンエタンシンターゼである。当業者であれば明らかなように、本明細書に開示されるような様々な異種ポリペプチドのいずれも使用することができる。選択には、例えば、生成を増強すべき特定のα-イオニリデンエタン化合物、例えばE,Z-α-イオニリデンエタンが考慮される。本開示は、異種α-イオニリデンエタン-合成ポリペプチド、例えば配列番号1~17及び19~33で示されるもの及びそれらのバリアントの導入だけでなく、例えば、本明細書の他の箇所で説明するように、構成的発現パターン又は誘導性発現パターンの変化を含む異種α-イオニリデンエタン-合成ポリペプチドの発現又は活性レベルの調節を意図する。
【0042】
生成されたα-イオニリデンエタンは、当該技術で記載される方法により宿主細胞から単離され、精製される。次いで、それは、本明細書に開示されるような組成物、例えば芳香組成物、香味料若しくは芳香剤、動物飼料、人間の栄養製品、化粧品、着色剤(カロテノイド)、ラジカルスカベンジャー、医薬組成物、又は作物保護産業用の化合物の生成に使用することができる。
【0043】
生成されたα-イオニリデンエタンは、宿主細胞において、α-イオノンを生成するための生合成経路、又はビタミンA合成の前駆体を生成するための生合成経路などの生合成経路の前駆体として使用することもできる。この目的のために、宿主細胞は、更なる核酸、好ましくは、例えば、メバロネート経路の酵素の1つ、2つ、3つ、若しくは更にはより多く、又は好ましくは全てをコードする異種核酸を含み得る。このような酵素としては、当該技術で周知のアセチル-CoA C-アセチルトランスフェラーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、(2E,6E)-ファルネシルジホスフェートシンターゼ、イソペンテニツ-ジホスフェートDELTA-イソメラーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ、ジホスホメバロネートデカルボキシラーゼ、メバロネートキナーゼ、及びホスホメバロネートキナーゼが挙げられる(例えば、Goldstein and Brown,Nature.1990 Feb 1;343(6257):425-30.doi:10.1038/343425a0を参照されたい)。メバロネート経路に関与する酵素の対応する配列は、例えば、EC番号2.3.1.9、2.3.3.10、2.5.1.10、5.3.3.2、1.1.1.88、4.1.1.33、2.7.1.36、及び2.7.4.2で入手可能である。
【0044】
メバロネート経路の1つ、2つ、3つ、若しくは更にはそれ以上、若しくは好ましくは全ての酵素に代えて、又はそれに加えて、宿主細胞は、核酸、好ましくは、非メバロネート経路、メバロネート非依存性経路、又はMEP経路としても知られる、デオキシキシルロースホスフェート(DXP又はDOXP)経路の酵素の、例えば、1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上、又は好ましくは全てをコードする異種核酸を含み得る。このような酵素としては、文献に記載されているように、1-デオキシ-D-キシルロース-5-ホスフェートシンターゼ、1-デオキシ-D-キシルロース-5-ホスフェートレダクトイソメラーゼ、2-C-メチル-D-エリトリトール4-ホスフェートシチジリルトランスフェラーゼ、4-(シチジン5’-ジホスホ)-2-C-メチル-D-エリトリトールキナーゼ、2-C-メチル-D-エリトリトール2,4-シクロジホスフェートシンターゼ、(E)-4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル-ジホスフェートシンターゼ(フェレドキシン)、(E)-4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル-ジホスフェートシンターゼ(フラボドキシン)、4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニルジホスフェートレダクターゼ、4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イルジホスフェートレダクターゼ、及びイソペンテニル-ジホスフェートDELTA-イソメラーゼが挙げられる(例えば、Rohmer,Nat Prod Rep.1999 Oct;16(5):565-74.doi:10.1039/a709175cを参照されたい)。デオキシキシルロースホスフェート経路に関与する酵素の対応する配列は、例えば、EC番号2.2.1.7、1.1.1.267、2.7.7.60、2.7.1.148、4.6.1.12、1.17.7.1、1.17.7.3、1.17.1.2、1.17.7.4、及び5.3.3.2で入手可能である。
【0045】
メバロネート経路及び/若しくはデオキシキシルロースホスフェート経路の1つ、2つ、3つ、若しくは更にはそれ以上、若しくは好ましくは全ての酵素に代えて、又はそれに加えて、宿主細胞は、酸化酵素をコードする1つ以上の核酸、好ましくは酸化反応を触媒するカロテンジオキシゲナーゼ及び/又はペルオキシダーゼをコードする1つ以上の核酸を含み得る。後者の酸化酵素は、公知であり、文献に記載されている(Menzel,M.S.,P.,in“Flavours and Fragrances”,Berger,R.G.(ed.),Springer,Berlin,2007,Zelena,K.et al.,J.Agric.Food Chem,2009,57,9951,Rajagopalan,A.et al.,Adv.Synth.Catal,2013,355,3321)。
【0046】
本開示又は本発明に従う宿主細胞は、当該技術分野で一般に知られている標準的な遺伝学的及び分子生物学的技術に基づいて生成することができ、これは宿主細胞において上記方法を実施するための好適な細胞培養条件にも適用される。加えて、宿主細胞からα-イオニリデンエタンを単離して精製するための方法(例えば、Sambrook et al.,Molecular cloning:a laboratory manual/Sambrook,Joseph;Russell,David W.--.3rd ed.-- New York:Cold Spring Harbor Laboratory,2001;Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)を参照されたい)。
【0047】
当業者によって理解されるように、生成されたα-イオニリデンエタンを宿主細胞から若しくは宿主細胞内で単離及び/又は精製した後、所望の生成物を得るために、化学的に処理するか、又は1つ以上の化学反応に供することもできる。
【0048】
本発明の1つ以上の芳香化合物をインビトロ又は宿主細胞中で調製するための方法の好ましい実施形態では、α-イオニリデンエタンシンターゼは、真菌又は細菌α-イオニリデンエタンシンターゼである。
【0049】
導入部分でも述べたように、E,Z-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン;E,Z-IE,(1))は、真菌のアブシシン酸(2)生合成の最初の環状中間体である。ファルネシルピロホスフェート(3)をE,Z-α-イオニリデンエタンに変換する特定のセスキテルペンシンターゼは、α-イオニリデンエタンシンターゼ(IEシンターゼ)である;図1を参照されたい。
【0050】
α-イオニリデンエタンシンターゼのアミノ酸配列は、当該技術で記載されており(Takino,J.et al.,J.Am.Chem.Soc.,2018,140,12392 Fig.S1)、以下の表1に示すデータベースアクセッション番号及び配列番号で入手可能である。上記表1は、その配列の由来となる生物も更に含む。
【0051】
【表1】
【0052】
加えて、本発明者らは、合成α-イオニリデンエタンシンターゼ配列を巧みに作成し、これを配列表に配列番号20~33として示した。
【0053】
好ましくは、α-イオニリデンエタンシンターゼは:
a)配列番号1~17又は19~33で示されるアミノ酸配列と;
b)配列番号1~17又は19~33のいずれかとアミノ酸レベルで少なくとも40%の配列同一性を有し、α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有するアミノ酸配列と;
c)酵素活性があるa)又はb)のアミノ酸配列の断片と
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0054】
好ましくは、α-イオニリデンエタンシンターゼは、配列番号1~17又は19~33のいずれかと、好ましくは配列番号1又は19と、アミノ酸レベルで少なくとも50%、55%、60%、65%、66%、70%、71%、75%、76%、80%、81%、85%、86%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更には100%の配列同一性を有し、α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
一実施形態では、本発明の方法、宿主細胞、及び使用において有用なα-イオニリデンエタンシンターゼは、図7では、保存アミノ酸が黒い背景に白いフォントで示されている。
【0056】
別の実施形態では、本発明の本方法、宿主細胞、及び使用に有用なα-イオニリデンエタンシンターゼは、好ましくはPfamドメインDUF1175(PF06672)及びGATA(PF00320)を含む(PFAM version 35.0);Pfam:2021:J.Mistry,S.Chuguransky,L.Williams,M.Qureshi,G.A.Salazar,E.L.L.Sonnhammer,S.C.E.Tosatto,L.Paladin,S.Raj,L.J.Richardson,R.D.Finn,A.Bateman Nucleic Acids Research(2020)doi:10.1093/nar/gkaa913におけるタンパク質ファミリーデータベースを参照されたい。
【0057】
本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼは、以下の実施例にも示されているように、当業者にとって周知の化学合成又は組み換え分子生物学技術により製造され得る。これは、変更すべきところは変更して、宿主細胞又は上清からのα-イオニリデンエタンシンターゼの単離に適用される;例えばSambrook et al.,Molecular cloning:a laboratory manual/Sambrook,Joseph;Russell,David W.--.3rd ed.--New York:Cold Spring Harbor Laboratory,2001;Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)を参照されたい。
【0058】
本発明の1つ以上の芳香化合物を調製するための方法のなお更に好ましい実施形態では、宿主細胞は、α-イオニリデンエタンを生成するための基質としてファルネシルジホスフェートを提供するために、メバロネート経路の酵素の1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上、若しくは好ましくは全てをコードする核酸、及び/又はデオキシキシルロースホスフェート(DOXP)経路の酵素の1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上、若しくは好ましくは全てをコードする核酸を含む。
【0059】
別の態様では、宿主細胞にはファルネソールが供給され、その後、適切な細胞培養条件下でファルネソールがピロリン酸化されてファルネシルジホスフェート/ピロホスフェートが提供されることが想定される。
【0060】
本発明の1つ以上の芳香化合物を調製するための方法の別の好ましい実施形態では、宿主細胞は、酸化酵素をコードする1つ以上の核酸、好ましくはカロテンジオキシゲナーゼ及び/又はペルオキシダーゼをコードする1つ以上の核酸を更に含む。上記酵素は酸化反応を触媒し、例えば、本明細書の他の箇所で説明されるように、宿主細胞内でのα-イオノンの合成を支援し得る。
【0061】
潜在的な候補の1つは、例えば、シュードサーコスポラ・ピニデンシフローラエ(Pseudocercospora pini-densiflorae)CBS 125139の遺伝子であり得る。この微生物は、Okamoto,M.et al.,Phytochemistry,1988,27,3465に記載されるように、α-イオニリデンエタノールを介してアブシシン酸を産生すると考えられている。ボトリティス(Botrytis)由来のα-イオニリデンエタンシンターゼの配列を生物全体にブラストする場合、1140bpのオープンリーディングフレームが見つかり、これはOkamato,M.et al.of 1988の論文で言及されているテルペンシンターゼであり得る。従来、本発明者らは、シュードサーコスポラ・ピニデンシフローラエ(Pseudocercospora pini-densiflorae)が実際にファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタノールに変換するという実験的証拠を有していない。
【0062】
α-イオニリデンエタンをビタミンAの化学合成の酸化前駆体に変換するには、様々なオキシダーゼ酵素を使用すると考えられる。妥当な候補としては、P450モノオキシゲナーゼ、ラッカーゼなどが考えられる。
【0063】
α-イオニリデンエタンを介してビタミンAが直接生合成される可能性は非常に低い。
【0064】
好ましくは、本発明の方法により生成される1つ以上の芳香化合物は、α-イオニリデンエタンであるか又はそれを含み、より好ましくはα-イオニリデンエタンは、2Z,4E-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)である。2Z,4E-α-イオニリデンエタンはまた、E,Z-α-イオニリデンエタンとして本明細書中で言及される。この開示では、両方の用語が同じ意味で使用される。
【0065】
有利には、本発明の方法は、インビトロ又は宿主細胞内でのE,Z-α-イオニリデンエタンの大規模生成に使用することができ、これにより、例えば、新たな匂いを有する化合物、又は本明細書に開示される他の組成物の生成が可能になる。
【0066】
更に、E,Z-α-イオニリデンエタンは、本明細書で開示されるα-イオノン又はビタミンAの合成に使用することができる。
【0067】
本発明はまた、α-イオノンを調製するための方法であって、ファルネシルジホスフェート及びα-イオニリデンエタンシンターゼの存在下、インビトロ又は宿主細胞内で、α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換する工程を含む方法に関する。
【0068】
本発明は、更に、α-イオノンを調製するための方法であって、a)ファルネシルジホスフェート及びα-イオニリデンエタンシンターゼを提供する工程と、b)ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程と、c)インビトロ又は宿主細胞内で、α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換する工程と、を含む方法を提供する。
【0069】
本発明には、また、α-イオノン又はα-イオニリデンエタン及びα-イオノンの混合物を調製するための方法であって、a)ファルネシルジホスフェート及びα-イオニリデンエタンシンターゼを提供する工程と、b)インビトロ又は宿主細胞内で、α-イオノン又はα-イオニリデンエタン及びα-イオノンの混合物の生成を可能にする条件下で、α-イオニリデンエタンをα-イオニリデンエタンシンターゼと接触させる工程と、を含む方法が包含される。
【0070】
具体的には本発明は、α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための方法であって、以下の順で:
a)少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、本明細書で定義されるファルネシルジホスフェートを、好ましくは請求項3、4、又は5で定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンシンターゼと接触させる工程と;
b)少なくともα-イオニリデンエタンを生成する工程と;
c)工程b)で生成された少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを、α-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適な条件に曝露して、α-イオノンを生成する工程と、
d)任意選択的に、工程c)で生成されたα-イオノンを単離することと、を含む方法に関する。
【0071】
本発明のα-イオノンを調製するための方法の好ましい実施形態では、方法は、本明細書で開示されるα-イオニリデンエタンシンターゼによる、ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの変換工程を含む。
【0072】
本発明のα-イオノンを調製するための方法の別の好ましい実施形態では、α-イオニリデンエタンは、好ましくは酸化開裂により、α-イオノンに変換される。酸化開裂は、化学的に又は酵素的に実施することができる。
【0073】
「酸化開裂」は、炭素-炭素結合が切断され、同時に炭素-炭素結合を形成していた炭素が酸化される反応を意味する。
【0074】
α-イオノンへの酸化開裂は、分子の酸化に関して当該技術分野で公知の様々な手段によって達成することができる。空気からの酸素、並びに酸素供給物質からの酸素(例えば、限定されないが、過酸化水素又は他の過酸化物、オゾン)、並びに反応に酸素を供給する酵素を使用することができる。発明者らにより示されるように、酸化開裂は、α-イオニリデンエタン並びにα-イオノンの生成を可能にする条件下で行うことができ、少なくともある程度のα-イオニリデンエタンが生成されれば、高度な技術を必要としない。
【0075】
酵素による酸化開裂は、カロテンジオキシゲナー若しくはペルオキシダーゼ、又はそれらの組み合わせなどの酸化酵素を使用して実行することができる。上記酵素の使用は、本明細書に開示される宿主細胞による、又はインビトロでの天然α-イオノンの生成プロセスにおける生物変換工程の改善をもたらし得る。
【0076】
好ましくは、本発明の方法により調製されるα-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)は、R-α-イオノンである。
【0077】
α-イオノンは一般に、インビボでカロテノイドの酸化分解によって生合成されると考えられているが、本発明者らによる暫定的な文献調査では、α-イオニリデンエタンからα-イオノンへの酸化分解の前例は示されていない。
【0078】
有利には、以下の実施例は、微生物系に基づく、天然R-α-イオノンへの新しいアクセスを示す。R-α-イオノン(R-4)が、おそらくは、α-イオニリデンエタン(1)の酸化開裂により形成されることを示す;図5を参照されたい。
【0079】
本発明のα-イオノンを調製する方法では、α-イオニリデンエタンはα-イオノンへ変換され、それによりα-イオノンを生成する。合成方法は、インビトロ又は宿主細胞、好ましくは本発明の宿主細胞で実施することができる。
【0080】
本発明のα-イオノンを調製するための方法の好ましい実施形態では、α-イオニリデンエタンは、化学的及び/又は酵素的な酸化開裂により、α-イオノンに変換される。変換は、α-イオニリデンエタンの一部、その実質的な部分、又は存在するα-イオニリデンエタンの多かれ少なかれ全てに対するものであり得る。酸化酵素、例えば、カロテンジオキシゲナーゼ又はペルオキシダーゼの使用は、本明細書に開示される宿主細胞による天然R-α-イオノンの生成プロセスにおける生物変換工程の改善をもたらし得ることが想定される。
【0081】
好ましくは、α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)は、R-α-イオノンである。
【0082】
本発明は、更に、α-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)を生成するための宿主細胞であって、ファルネシルジホスフェートと、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼ、好ましくは請求項3、4、又は5で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸と、を含み、好ましくは、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、藍藻細胞、非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、又は植物細胞であり、α-イオノンを生成するためのα-イオニリデンエタンの酸化開裂に好適な、一態様ではα-イオニリデンエタンを酸化的に開裂することができる宿主細胞に関する。
好ましい実施形態では、
(i)請求項3、4、又は5で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼは、本発明の宿主細胞中で、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する;及び/又は
(ii)α-イオニリデンエタンは、本発明の宿主細胞中で、化学的又は酵素的な酸化開裂により部分的又は全体的にα-イオノンに変換される。
【0083】
α-イオノンは、無色からわずかに黄色の液体で、中程度の水溶性である。α-イオノンは、バイオレット、クロイチゴ、及びプラムなどの植物に自然に存在する。α-イオノンはまた、タバコ及びタバコの煙中に見出される。これは、バイオレットの香りの原因となる芳香性ケトンである。これは、バイオレットのようなスウィートな匂い、及びウッディ、ベリー、フローラルの味覚を有する。従って、α-イオノンは、香水、化粧品、及びパーソナルケア製品、並びに家庭用洗浄剤及び洗剤において芳香剤として使用される(Lalko et al.,Food Chem Toxicol.2007;45 Suppl 1:S235-40.doi:10.1016/j.fct.2007.09.046)。また、飲料、アイスクリーム、焼き菓子、及びキャンディーなどの食品香味料としても利用されている。α-イオノンは、ダイダイ抽出物の成分であり、栄養補助食品に広く使用されている。α-イオノンは、芝生、植物、及び屋外用家具に塗布される犬猫よけの成分として、並びにバラの甲虫誘引剤として使用される。
【0084】
本発明によれば、宿主細胞におけるα-イオノン化合物生成は、α-イオノン生合成に関与する1つ以上のタンパク質の発現又は活性を改変することによって調整され得る。1つ以上のイオノン化合物を天然に産生する生物を宿主細胞として利用することが望ましい場合がある。或いは、宿主細胞によって自然に産生されないα-イオノンの生成を生み出すことが望ましい場合がある。
【0085】
1つ以上の異種α-イオノン-合成ポリペプチドを宿主細胞に導入することが望ましい場合がある。当業者であれば明らかなように、本明細書に開示されるような様々な異種ポリペプチドのいずれも使用することができる。一例を挙げると、ファルネシルジホスフェートは、本明細書に開示されるα-イオニリデンエタンシンターゼによってα-イオニリデンエタンに変換され、続いて本明細書に開示されているとおり、カロテンジオキシゲナーゼ又はペルオキシダーゼなどの酸化開裂を触媒する酵素によってα-イオニリデンエタンからα-イオノンに変換され得る。選択には、例えば、生成を増強すべき特定のイオノン化合物、例えばα-イオノン又はR-α-イオノンが考慮される。本開示は、異種α-イオノン-合成ポリペプチドの導入だけでなく、例えば、本明細書の他の箇所で説明するように、構成的発現パターン又は誘導性発現パターンの変化を含む異種α-イオノン-合成ポリペプチドの発現又は活性レベルの調節も意図する。
【0086】
かつては、花及び他の植物からの芳香剤化合物の抽出が、香水などの製品の唯一の原料源であった。例えば、近年、カロテノイドの生分解がアポカロテノイド形成の重要な経路であることが示されている。しかしながら、現在では、これらの化合物を実験室で合成する方が経済的である。有利には、本発明の方法は、インビトロ又は宿主細胞内でのE,α-イオノンの大規模生成に使用することができ、これにより、例えば、新たな匂いを有する化合物、又は本明細書に開示される他の組成物の生成が可能になる。
【0087】
本発明の方法によって生成されるα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンの含量の決定のために、当該技術分野で公知であるガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)、ガスクロマトグラフィー-質量選択検出器(GC-MSD)、高速液体クロマトグラフィー-蒸発光散乱検出器(HPLC-ELSD)、高速液体クロマトグラフィー-示差屈折率検出器(HPLC-RID)、高速液体クロマトグラフィー-可変波長検出器(HPLC-VWD)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)、核磁気共鳴(NMR)、テルモグラビメトリック(termogravimetric)分析(TGA)及び赤外分光法(IR)などのいくつかの役立つ技術を使用し得;例えばJiang et al,Curr Protoc Plant Biol.2016;1:345-358.doi:10.1002/cppb.20024による概説を参照されたい。α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンの抽出、精製、及び分析のための更なる方法は、実施例に示される。
【0088】
好ましい実施形態では、本発明の方法において、イオニリデンエタンは、α-イオノンとの比が、約8:1以下、好ましくは約5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、若しくは0.5:1、又は更には0.1:1で生成される。
【0089】
別の好ましい実施形態では、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、95%、又は99%のα-イオニリデンエタンが、本発明の方法において、α-イオノンに変換される。
【0090】
本発明は更に、α-イオニリデンエタンの芳香化合物としての使用に関する。
【0091】
好ましくは、α-イオニリデンエタンは、フローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを有する。
本発明はまた、1つ以上の芳香化合物の生成におけるα-イオニリデンエタンシンターゼの使用に関する。
好ましくは、α-イオニリデンエタンシンターゼは:
a)ホスフェートに作用する炭素-酸素リアーゼのサブクラスに属するα-イオニリデンエタンシンターゼ(EC 4.2.3)と;
b)真菌又は細菌α-イオニリデンエタンシンターゼであるα-イオニリデンエタンシンターゼと;
c)
i)配列番号1~17又は19~33で示されるアミノ酸配列;
ii)配列番号1~17又は19~33のいずれかとアミノ酸レベルで少なくとも40%の配列同一性を有し、α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有するアミノ酸配列;及び
iii)α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有する、酵素活性があるa)又はb)のアミノ酸配列の断片;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む前記α-イオニリデンエタンシンターゼと;
d)上記a)~c)の任意の組み合わせと、からなる群から選択される。
【0092】
一実施形態では、α-イオニリデンエタンシンターゼは、フローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを、香水、芳香剤、又は芳香に伝える1つ以上の芳香化合物を調製するためのものである。別の実施形態では、α-イオニリデンエタンは、本明細書で開示されるα-イオニリデンエタンシンターゼ、好ましくは請求項3、4、又は5で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼにより生成される。本発明の方法に関する、定義、説明、及び実施形態は、変更すべきところは変更して、本発明の使用に適用される。
【0093】
本発明は、更に、ビタミンAを調製するための方法であって、好ましくはインビトロ又は宿主細胞でα-イオニリデンエタンをビタミンAに変換する工程を含み、α-イオニリデンエタンを化学的に又は酵素的にそれぞれのアルコールを介して(2E,4E)-3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエン-1-オールに変換し、続いて異性化下でのウィッティヒ塩形成([(2E,4E)-3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエニル]-トリフェニル-ホスホニウム)、及びC5-アルデヒド[(E)-3-メチル-4-オキソ-ブト-2-エニル]アセテートとのウィッティヒ反応によるビタミンAの調製工程を含む、方法に関する;図6も参照されたい。
【0094】
具体的には、本発明は、ビタミンAを調製するための方法であって:
a)少なくとも1つのα-イオニリデンエタンを生成するのに好適な条件下で、ファルネシルジホスフェートを、本明細書に定義される1つ以上のα-イオニリデンエタンシンターゼと、好ましくは請求項3、4、又は5で定義される1つ以上のα-イオニリデンエタンシンターゼと接触させる工程と、
b)α-イオニリデンエタンを生成する工程と、
c)α-イオニリデンエタンを化学的に又は酵素的にそれぞれのアルコールを介して(2E,4E)-3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエン-1-オールに変換し、続いて異性化下でのウィッティヒ塩形成([(2E,4E)-3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエニル]-トリフェニル-ホスホニウム)、及びC5-アルデヒド[(E)-3-メチル-4-オキソ-ブト-2-エニル]アセテートとのウィッティヒ反応によるビタミンAの調製工程と、を含む方法に関する。
【0095】
好ましくは、本発明のビタミンAを調製するための方法の方法工程の少なくとも1つ、より好ましくは2つ、更により好ましくは全ては、インビトロで実施される。本発明の方法の別の実施形態では、方法は、ファルネシルジホスフェートと、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼ、好ましくは請求項3、4、又は5で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸と、を含む宿主細胞を使用することを含む。好ましくは、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、藍藻細胞、非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、又は植物細胞、より好ましくは細菌細胞、又は酵母細胞である。好ましくは、宿主細胞は発酵で使用される。
【0096】
ビタミンA及び/又は類似のカロテノイドの合成は、生体触媒/酵素のみによるものではない可能性がある。化学酵素変換も可能である:ファルネシルジホスフェートを介してグルコースがα-イオニリデンエタン又はそれぞれのアルコール(α-イオニリデンエタノール)を形成することでバイオ部分が構成され、その後、純粋に化学触媒によるα-イオニリデンエタン/α-イオニリデンエタノールからビタミンAへの変換が行われる。
【0097】
E,Z-α-イオニリデンエタンのシクロヘキセン二重結合の位置はビタミンAとは異なるが、E,Z-α-イオニリデンエタンはビタミンAの興味深い前駆体である可能性がある。
【0098】
本発明の1つの目標は、ロドバクター(Rhodobacter)におけるα-イオニリデンエタン合成の概念の証拠を示すことであった。α-イオニリデンエタンがビタミンAのハイブリッド生化学合成の合理的な出発点であるかどうかを評価するには、十分な出発物質は、例えば、以下の実施例に記載されるように、新たに構築されたロドバクター(Rhodobacter)株ROB034の発酵によって得ることができるが、これに限定されない。
【0099】
特に、本文脈において、α-イオニリデンエタンのC-11の末端メチル基を官能化して炭素鎖の伸長に対応し、シクロヘキセン二重結合をC-5からC-4に移動することは重要なマイルストーンである。
【0100】
更に、本発明によれば、E,Z-α-イオニリデンエタンのビタミンAのより直接的な前駆体への化学的又は生体触媒的変換を評価するための材料を提供することも可能であるはずである。
【0101】
ビタミンAの抽出及び測定方法は当該技術分野で十分に記載されている;例えば、Zhang et al.,Molecules.2018 Jun;23(6):1484.Published online 2018 Jun 19.doi:10.3390/molecules23061484による概説を参照されたい。
【0102】
本発明は更に、製品に香気を付けるための方法、特に、本明細書で定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタン、好ましくはフローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを有するα-イオニリデンエタン、より好ましくは2Z,4E-α-イオニリデンエタンが使用される、匂い若しくは風味を付与及び/又は増強するための方法に関する。
【0103】
本発明は更に、製品に香気を付けるための方法、特に本明細書で定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタンシンターゼが使用される、匂い若しくは風味を付与及び/又は増強するための方法であって、本発明の方法に従う1つ以上の芳香化合物を調製する工程と、続いて任意選択的に、1つ以上の芳香化合物を精製する工程と、それに続く1つ以上の芳香化合物で製品に香気を付ける工程と、を含む方法に関する。
【0104】
本発明の更なる態様は、即時使用できる組成物の芳香を改質する方法に関する。上記方法は、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノン(後者は好ましくは本発明の方法によって生成される)を即時使用できる組成物に組み込んで、芳香改質された即時使用できる組成物を得る工程を含む。
【0105】
本発明の化合物及びその芳香化学物質組成物は、有利な官能特性、特に心地よい芳香の印象を有する。従って、それらは、香水組成物、ボディケア組成物(化粧品組成物並びに口腔及び歯科衛生用製品を含む)、衛生用品、洗浄組成物(食器洗い組成物を含む)、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物、作物保護組成物及び他の即時使用できる組成物における芳香成分として好ましく使用することができる。
【0106】
α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノン(後者は好ましくは本発明の方法によって生成される)は、心地よい芳香、低揮発性、優れた溶解性により、心地よい芳香が求められる組成物に好適な成分となっている。その物理的性質のおかげで、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンは、特に香水組成物などの芳香化された即時使用できる組成物中の他の芳香化学物質及び通常の成分とうまく組み合わせることができる。これにより、例えば、芳香組成物、特に新規で有利な感覚プロファイルを有する香水組成物の生成が可能になる。
【0107】
更に、本発明の方法により生成されるα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンは、容易に入手可能な出発物質から出発する単純な合成によって、良好な収率及び純度で生成することができる。従って、本発明の方法により生成されるα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンは、簡単且つコスト効率の高い方法で大規模に生成することができる。
【0108】
加えて、本発明は、例えば芳香組成物、香味料、芳香剤、又は香水が挙げられるがこれらに限定されないものなどの本発明の芳香化学物質組成物を調製するための方法であって:
a)本発明のα-イオニリデンエタンを調製するための方法に従ってα-イオニリデンエタンを生成する工程と;
b)工程a)のα-イオニリデンエタンを単離し、任意選択的に精製する工程と;
c)単離され、任意選択的に精製された工程b)のα-イオニリデンエタンを成分として、本明細書に記載される本発明の芳香化学物質組成物、例えば、以下の嗅覚ノート:α-イオニリデンエタンの場合はフローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス(イリス)根、並びにα-イオノンの場合はフローラル-バイオレットのいずれか1つを伝える芳香組成物、香味料、芳香剤、又は香水に添加する工程と、
を含む方法を提供する。
【0109】
オリス根(rhizoma iridis)は、イリス・ジャーマニカ(Iris germanica)、及びイリス・パリダ(イリス・パリダ)、及びイリス・フロレンティーナ(イリスフロレンティーナ)の根である。オリス根の最も価値のある成分は、ミリスチン酸を含む黄白色の塊であるオリス油(0.1~0.2%)である。かつては西洋漢方薬で重要であったが、現在では主に香水の固定剤やベースノートとして使用されている;例えば、John Charles Sawer, Odorographia a natural history of raw materials and drugs used in the perfume industry intended to serve growers, manufacturers and consumersを参照されたい。オリス根の匂いプロファイルは、ウッディ、バイオレットの花のニュアンスが加わった、パウダリーで素朴な根の香りである。ウッディ-オリス(イリス)根又はウッディ-オリス/イリス根という表現は、これらのオリス根又はイリス根の典型的なノートを指すものと理解されたい。
【0110】
更に、本発明は、また、芳香組成物、香味料、芳香剤、又は香水を調製するための方法であって:
a)本発明のα-イオノンを調製するための方法のいずれか1つに従ってα-イオノンを生成する工程と;
b)工程a)のα-イオノンを単離し、任意選択的に精製する工程と;
c)単離され、任意選択的に精製された工程b)のα-イオノンを成分として、本発明の化学物質組成物、例えば、以下の嗅覚ノート:α-イオニリデンエタンの場合はフローラル-バイオレット又はウッディ-オリス(イリス)根、及びα-イオノンの場合はフローラル-バイオレットのいずれか1つを伝える芳香組成物、香味料、芳香剤、又は香水が挙げられるがこれらに限定されないものなどに添加する工程と、を含む方法を提供する。
【0111】
当業者が認めているように、後者の方法は、追加の方法工程として、α-イオニリデンエタンの生成、単離、及び任意選択的な精製を含めることもできる。
【0112】
従って、本発明は、また、芳香組成物、香味料、芳香剤、又は香水を調製するための方法であって:
a)本発明のα-イオニリデンエタンを調製するための方法に従ってα-イオニリデンエタンを生成する工程;並びに/又は
b)本発明のα-イオノンを調製するための方法のいずれか1つに従ってα-イオノンを生成する工程;
c)工程a)のα-イオニリデンエタン及び/若しくは工程b)のα-イオノンを単離し、任意選択的に、精製する工程;
d)単離され、任意選択的に精製された工程c)のα-イオニリデンエタン及び/若しくはα-イオノンを成分として、本発明の芳香化学物質組成物、例えば、以下の嗅覚ノート:α-イオニリデンエタンの場合はフローラル-バイオレット又はウッディ-オリス(イリス)根、及びα-イオノンの場合はフローラル-バイオレットのいずれか1つを伝える芳香組成物、香味料、芳香剤、若しくは香水が挙げられるがこれらに限定されないものなどに添加する工程を含む方法を提供する。
【0113】
モノテルペン及びセスキテルペンは、香味料、芳香剤及び化粧料の成分として工業的に使用される。芳香剤及び芳香(aromas)は、食品及び飲料の、並びにボディケア及び他の衛生製品の最終的な品質を促進する重要な添加物として使用される。しかし、最近、天然由来の製品への需要が高まっている。従って、これらの製品の感覚的アピールを向上させ得る天然の香味化合物の価値が高まり、その人工的同等物よりも高価になった。α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノン(後者は好ましくは本発明の方法によって生成される)は、有利には、芳香組成物、香味料、芳香剤、若しくは香水、又は本明細書で開示される任意の他の製品を生成するのに使用され得る。
【0114】
芳香化合物若しくは組成物、香味料、芳香剤、又は香水を調製するための手段及び方法は、当該技術分野で周知である;例えば、Flavours and Fragrances:Chemistry,Bioprocessing and Sustainability RG Berger;Black et al.,EP2897465B1,Chromatography of Aroma Compounds and Fragrances,Cserhati,T.(2010)を参照されたい。
【0115】
α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノン(後者は好ましくは本発明の方法によって生成される)は、概して、即時使用できる組成物、特に芳香化された即時使用できる組成物で使用され得る。本明細書において使用される「芳香化された即時使用できる組成物」とは、主として心地よい匂い及び/又は味覚の印象を誘発する即時使用できる組成物を指す。好ましい実施形態では、芳香化された即時使用できる組成物は、香気付けされた即時使用できる組成物であり、すなわち、心地よい匂いを誘発する。
【0116】
香気付けされた即時使用できる組成物は、例えば、パーソナルケア、ホームケア、産業用途で使用される組成物及び医薬組成物又は作物保護組成物などの他の用途で使用される組成物である。
【0117】
好ましくは、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノン(後者は好ましくは本発明の方法により生成される)は、香水組成物、ボディケア組成物(化粧品組成物並びに口腔及び歯科衛生用製品を含む)、衛生用品、洗浄組成物(食器洗い組成物を含む)、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物からなる群から選択される組成物に使用される。α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノン(後者は好ましくは本発明の方法により生成される)は、上記組成物中の芳香化学物質として、好ましくは芳香剤として使用される。
【0118】
特に、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンを使用して、スウィート、フローラル、バイオレット、オリス、根、及び/若しくはウッディを思い出させるノートを付与するか;又はα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンを使用して、組成物にフローラル及び/若しくはウッディの要素を思い出させる香りを作り出す。
【0119】
上に挙げた組成物の詳細を以下に示す。
【0120】
同様に、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノン(後者は好ましくは本発明の方法により生成される)は、組成物に含まれる他の芳香化学物質(例えば、他の芳香剤)との相乗効果の結果として芳香化学物質組成物の感覚プロファイルを改善することができ、これは、この化合物が、上記の他の芳香化学物質に増強物効果を提供することができることを意味する。従って、この化合物は、他の芳香化学物質の増強物として好適である。
【0121】
従って、本発明はまた、芳香化された(例えば、香り付けされた)組成物の芳香特性(例えば、香り特性)を改質するための、α-イオニリデンエタンの単独での使用、又はα-イオノンと組み合わせた使用に関し;具体的には、他の芳香化学物質の増強物としての使用に関する。
【0122】
物質の増強物効果とは、その物質が、芳香化学物質配合物(例えば、香水配合物など)において、配合物の全体的な感覚(例えば、嗅覚)の印象を向上し強化することを意味する。例えば、ハッカの領域において、メンチルメチルエーテルは、このエーテル自体は単体では特に強力な匂いを発しないにも関わらず、セイヨウハッカ油の香水又は嬌味混合物を強化し、特にトップノートをかなり強め、且つより複雑な知覚をもたらすことが知られている。芳香剤用途においては、Hedione(登録商標)(メチルジヒドロジャスモネート)は、単体では軽いジャスミンの花の香調を呈するのみであるが、匂い増強物として、香水組成物の拡散、フレッシュさ及び量の豊かさを強化する。増強物効果は、トップノートを特徴とする用途が必要な場合に特に望まれ、この場合、例えば、デオドラント、消臭剤において、又はチューインガムの味覚分野において、匂いの印象が特に迅速且つ集中的に伝達されることになる。
【0123】
このような増強物効果を達成するために、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンは、例えば、得られる芳香化学物質組成物の総重量に基づいて、例えば、0.001~10重量%(重量%)の量で、例えば、0.01~2重量%、好ましくは0.05~1重量%の量で、特に0.1~0.5重量%の量で使用することができる。
【0124】
更に、α-イオニリデンエタン単独で又はα-イオノンと組み合わせて、それが使用される組成物に更にプラスの効果をもたらし得る。例えば、化合物は、安定性、例えば、組成物の配合安定性、拡張性、又は保持力など、化合物が組み込まれる組成物の全体的な性能を向上させることができる。
【0125】
一実施形態では、本発明は、芳香化学物質組成物であって、α-イオノンなし又はα-イオノンありのα-イオニリデンエタンと:
(i)少なくとも1つの更なる芳香化学物質、又は
(ii)少なくとも1つの非芳香化学物質担体、又は
(iii)(i)と(ii)の両方と、を含む組成物に関する。
【0126】
本明細書で使用される「芳香組成物」又は「芳香化学物質組成物」という用語は、心地よい芳香、例えば、心地よい匂いの印象を誘発する組成物を指す。特に断りのない限り、両方の用語は同じ意味で使用される。
【0127】
本発明の芳香化学物質組成物における非芳香化学物質担体は、特に、界面活性剤、オイル成分及び溶媒から選択することができる。
【0128】
一態様における更なる芳香化学物質は、α-イオニリデンエタン又はα-イオノンとは異なり、即ちα-イオニリデンエタン又はα-イオノンの立体異性体でも、α-イオニリデンエタン又はα-イオノンの2つ以上の立体異性体の混合物でもない。
【0129】
その物理的性質のおかげで、本発明の方法により生成されるα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンは、特に香水組成物などの芳香化された(例えば、香り付けされた)即時使用できる組成物中の他の芳香化学物質(例えば、他の芳香剤)及び他の通常の成分とうまく組み合わせることができる。これにより、例えば、新規で有利な感覚プロファイルを有する芳香組成物(例えば、香水組成物)の生成が可能になる。特に、既に上記で説明したように、この化合物は、他の芳香化学物質(他の芳香剤など)に増強物効果を提供することができる。
【0130】
従って、好ましい一実施形態では、芳香化学物質組成物は、本明細書で定義されるα-イオノンなし又はα-イオノン有りのα-イオニリデンエタンと、α-イオニリデンエタン又はα-イオノンとは異なる少なくとも1つの更なる芳香化学物質と、を含む。
【0131】
更なる芳香化学物質は、例えば、以下からなる群から選択される、1つ、好ましくは2、3、4、5、6、7、8つ、又は更なる芳香化学物質であり得る:
ゲラニルアセテート、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、2-フェノキシエチルイソブチレート、ジヒドロミルセノール、メチルジヒドロジャスモネート、4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[g]ベンゾピラン、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、ベンジルサリチレート、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、シンナミルアルコール、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5-インデニルアセテート及び/又は4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-6-インデニルアセテート、シトロネロール、シトロネリルアセテート、テトラヒドロゲラニオール、バニリン、リナリルアセテート、スチロリルアセテート、オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-アセトナフトン及び/又は2-アセチル-1,2,3,4,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチルナフタレン、ヘキシルサリチレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、α-イオノン、n-α-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、クマリン、テルピニルアセテート、2-フェニルエチルアルコール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-カルボキシアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、エチレンブラシレート、(E)-及び/又は(Z)-3-メチルシクロペンタデカ-5-エノン、15-ペンタデカ-11-エノリド及び/又は15-ペンタデカ-12-エノリド、15-シクロペンタデカノリド、1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,6,8,8-ヘキサメチル-2-ナフタレニル)エタノン、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、シス-3-ヘキセニルアセテート、トランス-3-ヘキセニルアセテート、トランス-2/シス-6-ノナジエノール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、2,4,4,7-テトラメチルオクタ-6-エン-3-オン、2,6-ジメチル-5-ヘプテン-1-アール、ボルネオール、3-(3-イソプロピルフェニル)ブタナール、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-プロパナール、3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアセテート、2,5,5-トリメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロナフタレン-2-オール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチル2-メチルペンタノエート、エトキシメトキシシクロドデカン、2,4-ジメチル-4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d][1,3]ジオキシン、(2-tert-ブチルシクロヘキシル)アセテート、及び3-[5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]シクロヘキサン-1-オール、2,4-ジエチルオクタ-2,6-ジエナール。
【0132】
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの芳香化学物質(i)は、メチルベンゾエート、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテート、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、リナロール、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール及びメチルベンゾエートからなる群から選択される。
【0133】
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの芳香化学物質(i)は、エチルバニリン、バニリン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン(フラネオール)又は3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン(マルトール)からなる群から選択される。
【0134】
式(1)及び/又は(4)の化合物を組み合わせて、現に特許請求されている発明による組成物を得ることができる更なる芳香化学物質は、例えば、S.Arctander,Perfume and Flavor Chemicals, Vol.I and II,Montclair,N.J.,1969,self-published又はK.Bauer,D.Garbe and H.Surburg,Common Fragrance and Flavor Materials,4th Ed.,Wiley-VCH,Weinheim 2001に見られることができる。具体的には、以下のものを挙げることができる:
天然原料からの抽出物、例えば、精油、コンクリート、アブソリュート(absolutes)、樹脂、樹脂状物質、バルサム、チンキ、例えば、アンバーグリースチンキ、アミリス(amyris)オイル、アンゼリカ種子オイル、アンゼリカ根オイル、アニスオイル、バレリアンオイル、バジルオイル、ツリーモスアブソリュート(tree moss absolute)、ベイオイル、よもぎオイル、ベンゾイン樹脂、ベルガモットオイル、蜜蝋アブソリュート(beeswax absolute)、バーチタールオイル、ビターアーモンドオイル、セイバリーオイル、ブチュリーフオイル、カブレバオイル、ケードオイル、カルマスオイル、カンフルオイル、カナンガオイル、カルダモンオイル、カスカリーラオイル、カシアオイル、カシアアブソリュート(cassia absolute)、カストリウムアブソリュート(castoreum absolute)、シダーリーフオイル、シダーウッドオイル、シスタスオイル、シトロネラオイル、レモンオイル、コパイババルサム、コパイババルサムオイル、コリアンダーオイル、コスタスルート(costus root)オイル、クミンオイル、ヒノキオイル、ダバナオイル、ディルウィードオイル、ディルシードオイル、Eau de broutsアブソリュート(absolute)、オークモスアブソリュート(oak moss absolute)、エレミオイル、タラゴンオイル、ユーカリシトリオドラオイル、ユーカリオイル、フェンネルオイル、松葉オイル、ガルバナムオイル、ガルバナム樹脂、ゼラニウムオイル、グレープフルーツオイル、グアイアックウッドオイル、グルジャンバルサム、グルジャンバルサムオイル、ヘリクリサムアブソリュート(helichrysum absolute)、ヘリクリサム(helichrysum)オイル、ジンジャーオイル、イリス根アブソリュート(absolute)、イリス根オイル、ジャスミンアブソリュート(absolute)、カルマスオイル、カモミールオイルブルー、ローマンカモミールオイル、ニンジンシードオイル、カスカリーラオイル、松葉オイル、スペアミントオイル、キャラウェイオイル、ラブダナムオイル、ラブダナムアブソリュート(absolute)、ラブダナム樹脂、ラバンジンアブソリュート(absolute)、ラバンジンオイル、ラベンダーアブソリュート(absolute)、ラベンダーオイル、レモングラスオイル、ラベージオイル、ライムオイルディスティルド(lime oil distilled)、ライムオイルプレスド(lime oil pressed)、リナロールオイル、リツエアクベバ(litsea cubeba)オイル、月桂樹葉オイル、メイスオイル、マジョラムオイル、マンダリンオイル、マッソイア樹皮(massoia bark)オイル、ミモザアブソリュート(mimosa absolute)、ムスクシードオイル、ムスクチンキ、クラリセージオイル、ナツメグオイル、ミルラアブソリュート(absolute)、ミルラオイル、ギンバイカオイル、クローブリーフオイル、クローブフラワーオイル、ネロリオイル、オリバナムアブソリュート(absolute)、オリバナムオイル、オポパナックスオイル、オレンジブロッサムアブソリュート(absolute)、オレンジオイル、オリガナムオイル、パルマローザオイル、パチョリオイル、パリラオイル、ペルーバルサムオイル、パセリリーフオイル、パセリシードオイル、プチグレンオイル、ペパーミントオイル、ペッパーオイル、ピメントオイル、パインオイル、ペニーロイヤルオイル、ローズアブソリュート(absolute)、ローズウッドオイル、ローズオイル、ローズマリーオイル、ダルメシアンセージオイル、スペイン(Spanish)セージオイル、サンダルウッドオイル、セロリシードオイル、スパイクラベンダーオイル、スターアニスオイル、エゴノキオイル、マンジュギクオイル、ファーニードルオイル、ティーツリーオイル、テレピンオイル、タイムオイル、トルバルサム、トンカアブソリュート(absolute)、チューベローズアブソリュート(absolute)、バニラ抽出物、バイオレットリーフアブソリュート(absolute)、バーベナオイル、ベチバーオイル、ジュニパーベリーオイル、ワインリース(wine lees)オイル、アブサンオイル、ウィンターグリーンオイル、ヒソップオイル、シベットアブソリュート(absolute)、シナモンリーフオイル、シナモン樹皮オイル、及びそれらの画分、又はそれらから単離された成分など;
【0135】
炭化水素の群からの個々の芳香剤、例えば、3カレン、α-ピネン、β-ピネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、p-シメン、ビサボレン、カンフェン、カリオフィレン、セドレン、ファルネセン、リモネン、ロンギフォレン、ミルセン、オシメン、バレンセン、(E,Z)-1,3,5-ウンデカトリエン、スチレン、ジフェニルメタンなど;
【0136】
脂肪族アルコール、例えば、ヘキサノール、オクタノール、3-オクタノール、2,6-ジメチルヘプタノール、2-メチル-2-ヘプタノール、2-メチル-2-オクタノール、(E)-2-ヘキセノール、(E)-及び(Z)-3-ヘキセノール、1オクテン-3-オール、3,4,5,6,6-ペンタメチル-3/4-ヘプテン-2-オールと3,5,6,6-テトラメチル-4-メチレンヘプタン-2-オールの混合物、(E,Z)-2,6-ノナジエノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール、9-デセノール、10-ウンデセノール、4-メチル-3-デセン-5-オールなど;
【0137】
脂肪族アルデヒド及びそのアセタール、例えば、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、2-メチルオクタナール、2-メチルノナナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-4-ヘプテナール、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、10-ウンデセナール、(E)-4-デセナール、2-ドデセナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、2,6,10トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、ヘプタナールジエチルアセタール、1,1-ジメトキシ-2,2,5トリメチル-4-ヘキセン、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、(E/Z)-1-(1-メトキシプロポキシ)-ヘキサ-3-エンなど、脂肪族ケトン及びそのオキシム、例えば、2-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、5-メチル-3-ヘプタノン、5-メチル-3ヘプタノンオキシム、2,4,4,7-テトラメチル-6-オクテン-3-オン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オンなど、
脂肪族硫黄含有化合物、例えば、3-メチルチオヘキサノール、3-メチルチオヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキサノール、3-メルカプトヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキシルブチレート、3-アセチルチオヘキシルアセテート、1-メンテン-8-チオールなど;
【0138】
脂肪族ニトリル、例えば、2-ノネンニトリル、2-ウンデセンニトリル、2トリデセンニトリル、3,12-トリデカジエンニトリル、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル、3,7-ジメチル-6オクテンニトリルなど;
【0139】
脂肪族カルボン酸のエステル、例えば、(E)及び(Z)-3-ヘキセニルホルメート、エチルアセトアセテート、イソアミルアセテート、ヘキシルアセテート、3,5,5-トリメチルヘキシルアセテート、3メチル-2-ブテニルアセテート、(E)-2-ヘキセニルアセテート、(E)及び(Z)-3-ヘキセニルアセテート、オクチルアセテート、3-オクチルアセテート、1-オクテン-3-イルアセテート、エチルブチレート、ブチルブチレート、イソアミルブチレート、ヘキシルブチレート、(E)及び(Z)-3-ヘキセニルイソブチレート、ヘキシルクロトネート、エチルソバレレート、エチル2-メチルペンタノエート、エチルヘキサノエート、アリルヘキサノエート、エチルヘプタノエート、アリルヘプタノエート、エチルオクタノエート、エチル(E,Z)-2,4-デカジエノエート、メチル2-オクチネート、メチル2-ノニネート、アリル2-イソアミルオキシアセテート、メチル-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエノエート、4-メチル-2-ペンチルクロトネートなど;
【0140】
非環式テルペンアルコール、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ラヴァンデュロール、ネロリドール、ファルネソール、テトラヒドロリナロール、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチルオクタン-2-オール、2-メチル-6-メチレン-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチル-5,7-オクタジエン-2-オール、2,6-ジメチル-3,5-オクタジエン-2オール、3,7-ジメチル-4,6-オクタジエン-3-オール、3,7-ジメチル-1,5,7-オクタトリエン-3-オール、2,6-ジメチル-2,5,7-オクタトリエン-1-オール、並びにそれらのホルメート、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、ブチレート、イソバレレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、クロトネート、チグリネート及び3-メチル-2ブテノエートなど;
【0141】
非環式テルペンアルデヒド及びケトン、例えば、ゲラニアル、ネラール、シトロネラール、7ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、7メトキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2,6,10-トリメチル-9ウンデセナール、ゲラニルアセトン、並びにゲラニアル、ネラール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールのジメチル及びジエチルアセタールなど、環状テルペンアルコール、例えば、メントール、イソプレゴール、α-テルピネオール、テルピン-4-オール、メンタン-8-オール、メンタン-1-オール、メンタン-7-オール、ボルネオール、イソボルネオール、リナロール酸化物、ノポール、セドロール、アンブリノール、ベチロール、グアジョール、並びにそれらのホルメート、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、ブチレート、イソバレレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、クロトネート、チグリネート及び3-メチル-2-ブテノエートなど;
【0142】
環状テルペンアルデヒド及びケトン、例えば、メントン、イソメントン、8メルカプトメンタン-3-オン、カルボン、カンフル、フェンコン、α-イオノン、β-イオノン、α-n-メチルイオノン、β-n-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、β-イソメチルイオノン、α-イロン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、β-ダマセノン、δ-ダマスコン、γ-ダマスコン、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、1,3,4,6,7,8a-ヘキサヒドロ-1,1,5,5-テトラメチル-2H-2,4a-メタノ-ナフタレン-8(5H)-オン、2-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、ヌートカトン、ジヒドロヌートカトン、4,6,8-メガスティグマトリエン-3-オン、α-シネンサル、β-シネンサル、アセチル化シダーウッドオイル(メチルセドリルケトン)など;
【0143】
環状アルコール、例えば、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、3-イソカンフィルシクロヘキサノール、2,6,9-トリメチル-Z2,Z5,E9-シクロドデカトリエン-1-オール、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オールなど;
【0144】
脂環式アルコール、例えば、α-3,3-トリメチルシクロヘキシルメタノール、1(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3シクロペント-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3トリメチル-3-シクロペント-1-イル)ペンタン-2オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ペンタン-3-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オールなど;
【0145】
環状及び脂環式エーテル、例えば、シネオール、セドリルメチルエーテル、シクロドデシルメチルエーテル、1,1-ジメトキシシクロドデカン、(エトキシメトキシ)シクロドデカン、α-セドレンエポキシド、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、3a-エチル-6,6,9a-トリメチルドデカヒドロ-ナフト[2,1-b]フラン、1,5,9-トリメチル-13-オキサビシクロ-[10.1.0]トリデカ-4,8-ジエン、ローズ酸化物、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサンなど;
【0146】
環状及び大環状ケトン、例えば、4-tert-ブチルシクロヘキサノン、2,2,5トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-ヘプチルシクロペンタノン、2-ペンチルシクロペンタノン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-シス-2-ペンテン-1-イル-2シクロペンテン-1-オン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-4-シクロペンタ-デセノン、3-メチル-5-シクロペンタデセノン、3-メチルシクロペンタデカノン、4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン、4-tert-ペンチルシクロヘキサノン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、8-シクロヘキサデセン-1-オン、7-シクロヘキサデセン-1-オン、(7/8)-シクロヘキサデセン-1-オン、9シクロヘプタデセン-1-オン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノンなど;
【0147】
脂環式アルデヒド、例えば、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒド、2メチル-4-(2,2,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3シクロヘキセンカルバルデヒド、4-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒドなど;
【0148】
脂環式ケトン、例えば、1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)-4-ペンテン-1-オン、2,2ジメチル-1-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパノン、1-(5,5-ジメチル-1シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタレニルメチルケトン、メチル2,6,10-トリメチル-2,5,9-シクロドデカトリエニルケトン、tert-ブチル(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)ケトンなど;
【0149】
環状アルコールのエステル、例えば、2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、2-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート、4-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアセテート、デカヒドロ-2-ナフチルアセテート、2-シクロペンチルシクロペンチルクロトネート、3-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアセテート、デカヒドロ-2,5,5,8a-テトラメチル-2-ナフチルアセテート、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニルアセテート、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6インデニルプロピオネート、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニルイソブチレート、4,7メタノオクタヒドロ-5又は6-インデニルアセテートなど;
【0150】
脂環式アルコールのエステル、例えば、1-シクロヘキシルエチルクロトネートなど;
【0151】
脂環式カルボン酸のエステル、例えば、アリル3-シクロヘキシルプロピオネート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、シス及びトランス-メチルジヒドロジャスモネート、シス及びトランス-メチルジャスモネート、メチル2-ヘキシル-3-オキソシクロペンタンカルボキシレート、エチル2-エチル-6,6ジメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレート、エチル2,3,6,6-テトラメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレート、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテートなど;
【0152】
芳香脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、2フェニルエチルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-フェニルプロパノール、2-フェノキシエタノール、2,2-ジメチル-3-フェニルプロパノール、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール、1,1-ジメチル-2フェニルエチルアルコール、1,1-ジメチル-3-フェニルプロパノール、1-エチル-1-メチル-3-フェニルプロパノール、2-メチル-5-フェニルペンタノール、3-メチル-5-フェニルペンタノール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、4-メトキシベンジルアルコール、1-(4-イソプロピルフェニル)エタノールなど;
【0153】
芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル、例えば、ベンジルアセテート、ベンジルプロピオネート、ベンジルイソブチレート、ベンジルイソバレレート、2-フェニルエチルアセテート、2-フェニルエチルプロピオネート、2-フェニルエチルイソブチレート、2-フェニルエチルイソバレレート、1-フェニルエチルアセテート、α-トリクロロメチルベンジルアセテート、α,α-ジメチルフェニルエチルアセテート、α,α-ジメチルフェニルエチルブチレート、シンナミルアセテート、2-フェノキシエチルイソブチレート、4-メトキシベンジルアセテートなど;
【0154】
芳香脂肪族エーテル、例えば、2-フェニルエチルメチルエーテル、2フェニルエチルイソアミルエーテル、2-フェニルエチル1-エトキシエチルエーテル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール、ヒドラトロパアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセロールアセタール、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、4,4a,5,9b-テトラヒドロ-2,4-ジメチルインデノ[1,2-d]-mジオキシンなど;
【0155】
芳香族及び芳香脂肪族アルデヒド、例えば、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルプロパナール、ヒドラトロパアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、4メチルフェニルアセトアルデヒド、3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、2-メチル-3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-イソブチルフェニル)プロパナール、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、シンナムアルデヒド、α-ブチルシンナムアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、3メチル-5-フェニルペンタナール、4-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3メトキシ-ベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド、3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-メチレンジオキシフェニル)プロパナールなど;
【0156】
芳香族及び芳香脂肪族ケトン、例えば、アセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセト-フェノン、4-フェニル-2-ブタノン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1-(2-ナフタレニル)-エタノン、2-ベンゾフラニルエタノン、(3-メチル-2-ベンゾフラニル)エタノン、ベンゾフェノン、1,1,2,3,3,6-ヘキサメチル-5-インダニルメチルケトン、6-tert-ブチル-1,1ジメチル-4インダニルメチルケトン、1-[2,3-ジヒドロ-1,1,2,6-テトラメチル-3-(1-メチルエチル)-1H-5インデニル]エタノン、5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,6,8,8-ヘキサメチル-2-アセトナフトンなど;
【0157】
芳香族及び脂肪族カルボン酸及びこれらのエステル、例えば、安息香酸、フェニル酢酸、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、ヘキシルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチルフェニルアセテート、エチルフェニルアセテート、ゲラニルフェニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、メチルシンナメート、エチルシンナメート、ベンジルシンナメート、フェニルエチルシンナメート、シンナミルシンナメート、アリルフェノキシアセテート、メチルサリチレート、イソアミルサリチレート、ヘキシルサリチレート、シクロヘキシルサリチレート、シス-3-ヘキセニルサリチレート、ベンジルサリチレート、フェニルエチルサリチレート、メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチル3-フェニルグリシデート、エチル3-メチル-3-フェニルグリシデートなど;
【0158】
含窒素芳香族化合物、例えば、2,4,6-トリニトロ-1,3-ジメチル-5tert-ブチルベンゼン、3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-tert-ブチルアセトフェノン、シナモニトリル、3メチル-5-フェニル-2-ペンテノニトリル、3-メチル-5-フェニルペンタノニトリル、メチルアントラニレート、メチル-N-メチルアントラニレート、7ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール又は2,4ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒドとのメチルアントラニレートのシッフ塩基、6-イソプロピルキノリン、6-イソブチルキノリン、6-sec-ブチルキノリン、2-(3-フェニルプロピル)ピリジン、インドール、スカトール、2-メトキシ-3イソプロピル-ピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジンなど;
【0159】
フェノール、フェニルエーテル及びフェニルエステル、例えば、エストラゴール、アネトール、オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル、イソオイゲノール、イソオイゲニルメチルエーテル、チモール、カルバクロール、ジフェニルエーテル、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、β-ナフチルイソブチルエーテル、1,4-ジメトキシベンゼン、オイゲニルアセテート、2-メトキシ-4-メチルフェノール、2エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール、p-クレシルフェニルアセテートなど;
【0160】
複素環式化合物、例えば、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン、2エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-2H-フラン-3-オン、3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン、2エチル-3-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オンなど;
【0161】
ラクトン、例えば、1,4-オクタノリド、3-メチル-1,4-オクタノリド、1,4-ノナノリド、1,4-デカノリド、8-デセン-1,4-オリド、1,4-ウンデカノリド、1,4-ドデカノリド、1,5-デカノリド、1,5-ドデカノリド、4-メチル-1,4-デカノリド、1,15-ペンタデカノリド、シス及びトランス-11-ペンタデセン-1,15-オリド、シス及びトランス-12-ペンタデセン-1,15-オリド、1,16-ヘキサデカノリド、9-ヘキサデセン-1,16-オリド、10-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、11-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、12-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、エチレン1,12-ドデカンジオエート、エチレン1,13-トリデカンジオエート、クマリン、2,3-ジヒドロクマリン、オクタヒドロクマリンなど。
【0162】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの非芳香化学物質担体(ii)は、界面活性剤、オイル成分、酸化防止剤、消臭活性剤及び溶媒からなる群から選択される。
【0163】
現に特許請求されている発明の文脈において、「溶媒」は、本発明に従って使用される式(1)及び/又は(4)の化合物及び/又はそれ自体の芳香を有さない組成物の任意の更なる成分の希釈に役立つ。
【0164】
溶媒の量は、組成に応じて選択される。
【0165】
更に別の好ましい実施形態では、溶媒は、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、及びイソプロピルミリステートからなる群から選択される。
【0166】
更に別の好ましい実施形態では、溶媒は、組成物の総重量に基づいて、組成物に、0.01重量%~99.0重量%の量で、より好ましくは0.05重量%~95.0重量%の量で、更により好ましくは0.1重量%~80.0重量%の量で、最も好ましくは0.1重量%~70.0重量%、特に0.1重量%~60.0重量%の量で存在する。
【0167】
本発明の更に別の好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.05重量%~10重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%、更により好ましくは0.2重量%~3重量%の溶媒を含む。本発明の更に別の好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、20重量%~70重量%、より好ましくは25重量%~50重量%の溶媒を含む。
【0168】
本発明の一実施形態は、式(1)及び/又は(4)の化合物と少なくとも1つのオイル成分とを含む組成物を対象とする。
【0169】
好ましい実施形態では、オイル成分は、組成物の総重量に基づいて、0.1~80重量%、より好ましくは0.5~70重量%、更により好ましくは1~60重量%、更により好ましくは1~50重量%、特に1~40重量%、より詳細には5~25重量%、特に5~15重量%の量で存在する。
【0170】
オイル成分は、例えば、6~18、好ましくは8~10の炭素原子を含む脂肪族アルコールに基づくゲルベアルコール、及び他の更なるエステル、例えば、ミリスチルミリステート、ミリスチルパルミテート、ミリスチルステアレート、ミリスチルイソステアレート、ミリスチルオレエート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルエルケート、セチルミリステート、セチルパルミテート、セチルステアレート、セチルイソステアレート、セチルオレエート、セチルベヘネート、セチルエルケート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルイソステアレート、ステアリルオレエート、ステアリルベヘネート、ステアリルエルケート、イソステアリルミリステート、イソステアリルパルミテート、イソステアリルステアレート、イソステアリルイソステアレート、イソステアリルオレエート、イソステアリルベヘネート、イソステアリルオレエート、オレイルミリステート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルオレエート、オレイルベヘネート、オレイルエルケート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルイソステアレート、ベヘニルオレエート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルエルケート、エルシルミリステート、エルシルパルミテート、エルシルステアレート、エルシルイソステアレート、エルシルオレエート、エルシルベヘネート及びエルシルエルケートなどから選択することができる。また、C18~C38アルキル-ヒドロキシカルボン酸と直鎖状又は分枝状C6~C22脂肪アルコールとのエステル、より具体的には、ジオクチルマレート、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、二量体ジオール又は三量体トリオール)とのエステル、C6~C10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6~C18脂肪酸に基づく液体モノ-、ジ-及びトリグリセリド混合物、C6~C22脂肪アルコール及び/又はゲルベアルコールと芳香族カルボン酸とのエステル、より具体的には、安息香酸、2~10の炭素原子及び2~6のヒドロキシル基を含むポリオールとのジカルボン酸のエステル、植物オイル、分岐状1級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖状及び分岐状C6~C22脂肪アルコールカーボネート、例えば、ジカプリリルカーボネート(Cetiol(登録商標)CC)など、6~18、好ましくは8~10の炭素原子を含む脂肪アルコールに基づくゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖状及び/又は分岐状C6~C22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv(登録商標)TN)、アルキル基当たり6~22の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の対称又は非対称のジアルキルエーテル、例えば、ジカプリリルエーテル(Cetiol(登録商標)OE)など、ポリオール及び炭化水素又はそれらの混合物によるエポキシ化脂肪酸エステルの開環生成物が適している。
【0171】
酸化防止剤は、酸素効果及び他の酸化プロセスによって引き起こされる、保護されるべき組成物における望ましくない変化を阻害又は防止できることが理解されるべきである。酸化防止剤の効果は、ほとんどの場合、自動酸化中に発生するフリーラジカルにおけるフリーラジカルスカベンジャーとして作用することにある。
【0172】
好ましい実施形態では、酸化防止剤は、以下からなる群から選択される:
・アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファンなど)及びそれらの誘導体、
・イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)及びその誘導体、
・D,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシン(=β-アラニル-L-ヒスチジン)などのペプチド及びこれらの誘導体、
・カロテノイド、カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、リコピン、ルテイン)又はそれらの誘導体、
・クロロゲン酸及びその誘導体、
・リポ酸及びその誘導体(例えば、ジヒドロリポ酸)、
・アウロチオグルコース、プロピルチオウラシル及び他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン並びにこれらのグリコシル、N-アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル及びラウリル、パルミトイル、オレイル、γ-リノレイル、コレステリル及びグリセリルエステル)並びにこれらの塩、
・ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸及びそれらの誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド及び塩)、
・スルホキシミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタチオニンスルホキシミン)、
・(金属)キレート剤(例えば、α-ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、
・α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、
・フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、ボルディン(=植物、ボルド(Peumus boldus)由来のアルカロイド、ボルド抽出物、
・EDTA、EGTA及びそれらの誘導体、
・不飽和脂肪酸及びその誘導体(例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、
・葉酸及びその誘導体、
・ユビキノン及びユビキノール及びそれらの誘導体、
・ビタミンC及び誘導体(例えば、アスコルビルパルミテート、Mg
アスコルビルホスフェート、アスコルビルアセテート)、
・トコフェロール及び誘導体(例えば、ビタミンEアセテート)、
・ビタミンA及び誘導体(例えば、ビタミンAパルミテート)、
・ガムベンゾイン(gum benzoin)のコニフェリルベンゾエート、ルチン酸及びその誘導体、α-グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、
・ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、
・ノルジヒドログアヤク酸、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸及びそれらの誘導体、マンノース及びその誘導体、
・スーパーオキシドジスムターゼ、
・亜鉛及びその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO4)、
・セレン及びその誘導体(例えば、セレノメチオニン)並びに
・スチルベン及びその誘導体(例えば、スチルベンオキシド、trans-スチルベンオキシド)。
【0173】
好ましい実施形態では、酸化防止剤は、テトラジブチルヒドロキシヒドロケイヒ酸ペンタエリスリチル、ノルジヒドログアイアレチン酸、フェルラ酸、レスベラトロール、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、及びトコフェロールからなる群から選択される。
【0174】
更に別の好ましい実施形態では、現に特許請求されている発明による組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001~25重量%、好ましくは0.005~10重量%、より好ましくは0.01~8重量%、更により好ましくは0.025~7重量%、更により好ましくは0.05~5重量%の量で酸化防止剤を含むことができる。
【0175】
消臭組成物(デオドラント及び制汗剤)は、体臭を中和、マスク、又は除去する。体臭は、アポクリン汗に対する皮膚細菌の作用によって形成され、不快な臭いの分解生成物が形成される。
【0176】
従って、本発明の一実施形態は、式(1)及び/又は(4)の化合物と、少なくとも1つの消臭活性剤とを含む組成物を対象とする。好ましい実施形態では、消臭活性剤は、制汗剤、エステラーゼ阻害剤、及び抗菌剤からなる群から選択される。
【0177】
好適な制汗剤は、アルミニウム、ジルコニウム又は亜鉛の塩からなる群から選択される。例としては、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、アルミニウムジクロロハイドレート、アルミニウムセスキクロロハイドレート、及び、例えば、1,2-プロピレングリコールとのそれらの複合化合物、アルミニウムヒドロキシアラントイネート、アルミニウムクロリドタルトレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、及び、例えば、グリシンなどのアミノ酸とのそれらの複合化合物である。アルミニウムクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート及びそれらの複合化合物が、好ましく使用される。
【0178】
好ましい実施形態では、制汗剤は、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、アルミニウムジクロロハイドレート、アルミニウムセスキクロロハイドレート、アルミニウムヒドロキシアラントイネート、アルミニウムクロリドタルトレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、及びアルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレートからなる群から選択される。
【0179】
汗が脇の下の領域に存在する場合、細胞外酵素-エステラーゼ、主に、プロテアーゼ及び/又はリパーゼが、細菌によって形成され、汗に存在するエステルを分解し、その過程で匂いを放出する。好適なエステラーゼ阻害剤は、例えば、トリメチルシトレート、トリプロピルシトレート、トリイソプロピルシトレート、トリブチルシトレート、及び特にトリエチルシトレートなどのトリアルキルシトレートである。エステラーゼ阻害剤は、酵素活性を阻害し、従って匂いの発生を低減する。遊離酸は、恐らくクエン酸エステルの切断によって放出され、アシル化によって酵素が不活性化される程度まで皮膚のpH値を減少させる。他のエステラーゼ阻害剤は、例えば、ラノステロール、コレステロール、カンペステロール、スチグマステロール及びシトステロールの硫酸塩又はリン酸塩などのステロール硫酸塩又はリン酸塩、ジカルボン酸及びそのエステル、例えば、グルタル酸、グルタル酸モノエチルエステル、グルタル酸ジエチルエステル、アジピン酸、アジピン酸モノエチルエステル、アジピン酸ジエチルエステル、マロン酸及びマロン酸ジエチルエステル、ヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸又は酒石酸ジエチルエステル並びにグリシン亜鉛である。
【0180】
好ましい実施形態では、エステラーゼ阻害剤は、トリメチルシトレート、トリプロピルシトレート、トリイソプロピルシトレート、トリブチルシトレート、トリエチルシトレート、ラノステロール、コレステロール、カンペステロール、スチグマステロール、シトステロールスルフェート、シトステロールホスフェート、グルタル酸、グルタル酸モノエチルエステル、グルタル酸ジエチルエステル、アジピン酸、アジピン酸モノエチルエステル、アジピン酸ジエチルエステル、マロン酸、マロン酸ジエチルエステル、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酒石酸ジエチルエステル、及び亜鉛グリシネートからなる群から選択される。
【0181】
現に特許請求されている発明による組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より具体的には0.5~5重量%の範囲で、エステラーゼ阻害剤を含む。
【0182】
本明細書で使用される「抗菌剤」という用語は、殺菌及び/又は静菌特性を有する物質を包含する。典型的には、これらの物質、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸及びその塩及びエステル、N-(4-クロロフェニル)-N’-(3,4-ジクロロフェニル)-尿素、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、2,2’-メチレン-ビス-(6-ブロモ-4-クロロフェノール)、3-メチル-4-(1-メチルエチル)-フェノール、2-ベンジル-4-クロロフェノール、3-(4-クロロフェノキシ)-プロパン-1,2-ジオール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート、クロルヘキシジン、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(TTC)、フェノキシエタノール、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート(GML)、ジグリセロールモノカプレート(DMC)など、例えば、サリチル酸-n-オクチルアミド又はサリチル酸-n-デシルアミドなどのサリチル酸-N-アルキルアミドなどは、グラム陽性菌に対して作用する。
【0183】
好ましい実施形態では、抗菌剤は、キトサン、フェノキシエタノール、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)-フェノール、4-ヒドロキシ安息香酸及びその塩及びエステル、N-(4-クロロフェニル)-N’-(3,4-ジクロロフェニル)-尿素、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、2,2’-メチレン-ビス-(6-ブロモ-4-クロロフェノール)、3-メチル-4-(1-メチルエチル)-フェノール、2-ベンジル-4-クロロフェノール、3-(4-クロロフェノキシ)-プロパン-1,2-ジオール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート、クロルヘキシジン、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(TTC)、フェノキシエタノール、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート(GML)、ジグリセロールモノカプレート(DMC)、及びサリチル酸-N-アルキルアミドからなる群から選択される。
現に特許請求されている発明による組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.01~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の範囲で抗菌剤を含む。
【0184】
好ましい実施形態では、組成物は、好ましくは、界面活性剤を含む。式(1)及び/又は(4)の化合物の特徴的な芳香剤の特性及びその持続性、粘り強さ、並びに安定性により、例えば、洗浄剤(特にランドリーケア製品及び多目的洗浄剤)などの界面活性剤含有組成物に、匂い、好ましくは芳香剤又は芳香の印象を付与するために特に使用することができる。これは、好ましくは、界面活性剤を含む組成物に、持続性のある花のような及び/若しくは緑の及び/若しくはスウィートノート並びに/又はウッディノート並びに/又は根のノート並びに/又はバイオレットノートの匂いの印象を付与するために使用され得る。
【0185】
好ましい実施形態では、界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性、及び双性イオン性界面活性剤からなる群から選択される。更に別の好ましい実施形態では、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。
【0186】
従って、現に特許請求されている発明による組成物は、好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び/又は両性若しくは両イオン性界面活性剤から選択することができる。界面活性剤含有組成物、例えば、シャワージェル、泡入浴剤、シャンプーなどは、好ましくは、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含む。
【0187】
本発明による組成物は、通常、組成物の総重量に基づいて、凝集体中に、界面活性剤を0~40重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.1~15重量%、特に0.1~10重量%の量で含む。非イオン性界面活性剤の典型的な例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテル及び混合ホルマール、任意に部分酸化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド又はグルクロン酸誘導体、脂肪酸-N-アルキルグルカミド、タンパク質加水分解物(特に小麦系野菜製品)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート及びアミンオキシドである。非イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含む場合、それらは従来の同族体(homolog)分布を有し得るが、狭い範囲の同族体分布を有することが好ましい。
【0188】
双性イオン性界面活性剤は、分子内に少なくとも1つの4級アンモニウム基及び少なくとも1つのCOO(-)又はSO3(-)基を含む界面活性化合物である。特に好適な双性イオン性界面活性剤は、いわゆる、ベタイン、例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えば、ココアルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えば、ココアシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、及びアルキル又はアシル基に8~18の炭素原子を含む2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン、及びココアシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。コカミドプロピルベタインのCTFA名で知られている脂肪酸アミド誘導体が、特に好ましい。
【0189】
また、両性界面活性剤が、特に補助界面活性剤として好適である。両性界面活性剤は、C8~C18のアルキル基又はアシル基に加えて、分子内に、少なくとも1つの遊離アミノ基及び少なくとも1つの-COOH又はSO3H基を含み、分子内塩を形成することができる界面活性化合物である。好適な両性界面活性剤の例は、アルキル基に約8~18の炭素原子を含む、N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸、及びアルキルアミノ酢酸である。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ココアアルキルアミノプロピオネート、ココアシルアミノエチルアミノプロピオネート及びアシルサルコシンである。
【0190】
アニオン性界面活性剤は、水溶性アニオン性基、例えば、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、又はホスフェート基及び親油性基が特徴である。皮膚科学的に安全なアニオン性界面活性剤は、関連する教科書から多数の実践者に知られており、市販されている。それらは、特に、それらのアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアンモニウム塩の形態のアルキルスルフェート、それらのアルカリ金属又はアンモニウム塩の形態の、アルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルイセチオネート、アシルサルコシネート、直鎖状C12~C18アルキル又はアシル基を含むアシルタウリン、及びスルホスクシネート、及びアシルグルタメートである。
【0191】
特に好適なカチオン性界面活性剤は、4級アンモニウム化合物、好ましくはアンモニウムハライド、より具体的には、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド及びトリアルキルメチルアンモニウムクロリドなどのクロリド及びブロミド、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、及びトリセチルメチルアンモニウムクロリドである。加えて、容易に生分解される4級エステル化合物、例えば、Stepantexeの名前で市販されているジアルキルアンモニウムメトスルフェート及びメチルヒドロキシアルキルジアルキルオキシアルキルアンモニウムメトスルフェート、並びにDehyquart(登録商標)シリーズの対応する製品などが、カチオン性界面活性剤として使用され得る。「エステルクワット(Esterquats)」は、一般に、四級化脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩であると理解されている。それらは組成物に特定の柔らかさを付与することができる。それらは、有機化学の関連する方法によって調製される既知の物質である。本発明による使用に好適な他のカチオン性界面活性剤は、4級化タンパク質加水分解物である。
【0192】
現に特許請求されている発明の一実施形態は、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗浄剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物からなる群から選択される組成物を対象とする。
【0193】
前述の組成物は、好ましくは芳香化学物質組成物であり、より好ましくは芳香剤組成物である。
【0194】
好適な組成物は、例えば、香水組成物、ボディケア組成物(化粧品組成物並びに口腔及び歯科衛生用製品を含む)、衛生用品、洗浄組成物(食器洗い組成物を含む)、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物である。
【0195】
香水組成物は、ファイン芳香剤、液体形態、ゲル状形態又は固体担体に塗布された形態の消臭剤、エアゾールスプレー、香気付けされた洗浄剤、香水キャンドル、及びランプオイル又はマッサージ用オイルなどのオイルから選択することができる。
【0196】
ファイン芳香剤の例は、香水抽出物、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、オードソリド(Eau de Solide)、及びエクストラパルファム(Extrait Parfum)である。
【0197】
ボディケア組成物は、化粧品組成物並びに口腔及び歯科衛生用製品を含み、アフターシェーブ、プレシェーブ製品、スプラッシュコロン、固形及び液体ソープ、シャワージェル、シャンプー、シェービングソープ、シェービングフォーム、バスオイル、水中油型、油中水型及び水中油中水型(water-in-oil-in-water type)の化粧品エマルジョン、例えば、スキンクリーム及びローション、フェイスクリーム及びローション、日焼け止めクリーム及びローション、アフターサン(after-sun)クリーム及びローション、ハンドクリーム及びローション、フットクリーム及びローション、脱毛クリーム及びローション、アフターシェーブクリーム及びローション、日焼け防止クリーム及びローションなど、ヘアケア製品、例えば、ヘアスプレー、ヘアジェル、セットヘアローション、ヘアコンディショナー、ヘアシャンプー、パーマネント及びセミパーマネントヘアカラー剤、コールドウェーブ及びヘアスムージング組成物などのヘアシェイプ組成物、ヘアトニック、ヘアクリーム及びヘアローションなど、消臭剤及び制汗剤、例えば、脇の下用スプレー、ロールオン(roll-on)、デオドラントスティック及びデオドラントクリームなど、装飾化粧品の製品、例えば、アイライナー、アイシャドウ、マニキュア、メイク用品、口紅及びマスカラなど、並びに、口腔及び歯科衛生用製品、例えば、歯磨き粉、デンタルフロス、マウスウォッシュ、口臭除去剤、デンタルフォーム、デンタルジェル、及びデンタルストリップなどから選択することができる。
【0198】
衛生用品は、線香、殺虫剤、忌避剤、噴射剤(propellant)、さび取り剤、香水の香りのフレッシュワイプ(perfumed freshening wipe)、脇の下用パッド、赤ちゃん用おむつ、生理用ナプキン、トイレットペーパー、化粧用ワイプ、ポケットティッシュ、食器洗剤、及び消臭剤から選択することができる。
【0199】
洗浄組成物、例えば、固体表面用の洗浄剤などは、香水の香りの、酸性、アルカリ性、及び中性洗浄剤、例えば、床用洗浄剤、窓用洗浄剤、手洗い用と機械洗い用の両方の食器洗い用組成物、バス用及び衛生用洗浄剤、精練乳、固体及び液体のトイレ用洗浄剤、粉末及び泡状のカーペット用洗浄剤、家具用つや出し剤などのワックス及びつや出し剤、床用ワックス、靴用クリーム、消毒剤、表面消毒剤及びサニタリー用洗浄剤、ブレーキ用洗浄剤、パイプ用洗浄剤、水あか除去剤、グリル及びオーブン用洗浄剤、藻類及びコケ除去剤、カビ除去剤、ファサード洗浄剤(facade cleaner)から選択することができる。
【0200】
繊維製品洗剤組成物は、液体洗剤、粉末洗剤、漂白剤、浸漬剤及びしみ除去剤などの洗濯前処理剤、柔軟剤、洗濯用石鹸、洗濯用タブレットから選択することができる。
【0201】
食品とは、未加工、調理済み、又は加工済みの食用物質、氷、飲料、或いはその全て又は一部が人間が消費するために使用される、又は使用が意図されている成分、或いはチューインガム、グミ、ゼリー、及び菓子を意味する。
【0202】
栄養補助食品は、食事に更なる栄養価を追加することを意図した食事成分を含む摂取を意図した製品である。食事成分は、以下の物質の1つ又は任意の組み合わせであり得る:ビタミン、ミネラル、ハーブ又は他の植物、アミノ酸、総食事摂取量を増やすことによって食事を補うために人々が使用する食事物質、濃縮物、代謝産物、成分、又は抽出物。栄養補助食品は、錠剤、カプセル、ソフトジェル、ジェルキャップ、液体、又は粉末など、多くの形態で見られることができる。
【0203】
医薬組成物は、病気の診断、治癒、軽減、治療、又は予防に使用することを意図した組成物、並びに人又は他の動物の体の構造又は任意の機能に影響を与えることを意図した物品(食品以外)を含む。
【0204】
作物保護組成物は、農作物及び森林に損害を与える植物病害、雑草及び他の害虫(脊椎動物及び無脊椎動物の両方)の管理を意図した組成物を含む。
【0205】
好ましい実施形態では、組成物は、防腐剤、研磨剤、抗ざ瘡剤、皮膚の老化に対処するための薬剤、抗セルライト剤、抗フケ剤、抗炎症剤、炎症抑制剤、刺激緩和剤、収斂剤、制汗剤、防腐剤、帯電防止剤、結合剤、緩衝剤、担体材料、キレート剤、細胞刺激剤、ケア剤、脱毛剤、乳化剤、酵素、精油、繊維、皮膜形成剤、固定剤、発泡剤、整泡剤、発泡防止剤、発泡促進剤、殺菌剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、ヘアケア剤、髪整形剤、整髪剤、水分供与剤、保湿剤、湿潤剤、漂白剤、強化剤、染み抜き剤、蛍光増白剤、含浸剤、防汚剤、摩擦低減剤、潤滑剤、保湿クリーム、軟膏、乳白剤、可塑剤、被覆剤、つや出し剤、光沢剤、ポリマー、粉末、タンパク質、再脂肪化剤、角質除去剤、シリコーン、皮膚鎮静剤、皮膚洗浄剤、スキンケア剤、皮膚治癒剤、皮膚美白剤、皮膚保護剤、皮膚軟化剤、冷却剤、皮膚冷却剤、加温剤、皮膚加温剤、安定剤、紫外線吸収剤、紫外線フィルター、柔軟剤、懸濁剤、皮膚日焼け止め剤、増粘剤、ビタミン、ワックス、脂肪、リン脂質、飽和脂肪酸、一価又は多価不飽和脂肪酸、ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ脂肪酸、液化剤、染料、色保護剤、顔料、防食剤、ポリオール、電解質、及びシリコーン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの補助剤を更に含む。
【0206】
例えば、方法は、α-イオノン無し又はα-イオノン有りのα-イオニリデンエタンと:
(i)α-イオニリデンエタン若しくはα-イオノンとは異なる少なくとも1つの更なる芳香化学物質、又は
(ii)少なくとも1つの非芳香化学物質担体、又は
(iii)(i)と(ii)の両方と、を混合することにより実施され得る。
【0207】
本発明は、また、例えば、香り付けされた組成物、特に香り付けされた即時使用できる組成物などの芳香化学物質組成物の芳香特性(例えば、香り特性)を改質するための方法であって、α-イオノン無し又はα-イオノン有りのα-イオニリデンエタンを、例えば、香り付けされた組成物、特に香り付けされた即時使用できる組成物などの芳香化学物質組成物に導入する工程を含む方法を目的とする。
【0208】
特に、本発明は、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物を調製する方法であって、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物におけるα-イオノン無し又はα-イオノン有りのα-イオニリデンエタンを含むことを含む、方法を対象とする。
【0209】
一実施形態では、スウィート、フローラル、バイオレット、オリス、根、及び/又はウッディを思い出させるノートを、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与するための方法であって、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物におけるα-イオノン無し又はα-イオノン有りのα-イオニリデンエタンを含むことを含む、方法を対象とする。
【0210】
本発明の方法は発酵法であるか、又は発酵法を含むことが好ましい。
【0211】
加えて、本発明は、芳香化合物及び/又は芳香剤組成物及び/又は香水の香りの若しくは香り付けされた製品であって:
i)本明細書で定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタン、好ましくは請求項1又は2で定義されるα-イオニリデンエタンと;
ii)任意選択的に、i)とは異なる少なくとも1つの更なる芳香化合物と、
iii)任意選択的に少なくとも1つの希釈剤と、
を含む、芳香化合物及び/又は芳香剤組成物及び/又は香水の香りの若しくは香り付けされた製品に関する。
【0212】
好ましくは、本発明の芳香化合物及び/又は芳香剤組成物及び/又は香水の香りの若しくは香り付けされた製品は、i)とii)、又はi)とiii)、更に好ましくはi)とii)とiii)とを含む。
【0213】
本発明は、また、本明細書で定義される少なくとも1つのα-イオニリデンエタン、好ましくはフローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを有するα-イオニリデンエタン、より好ましくは2Z,4E-α-イオニリデンエタンを含む、香水の香りの又は香り付けされた製品に関する。
【0214】
例えば、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタン、好ましくは本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンは、香水、洗剤、及び洗浄組成物、化粧品剤、ボディケア剤、衛生用品、口腔及び歯科衛生用製品、香りディスペンサー、並びに本明細書で定義されるその他の組成物及び製品から選択される組成物中で使用することができる。
【0215】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、単数及び複数の両方の参照物を含む。例として、「細胞(a cell)」とは、1つ以上の細胞を指す。
【0216】
本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、言及される項目、数、パーセンテージ又は用語の値を定量する場合、言及される項目、数、パーセンテージ又は用語の値のプラスマイナス10パーセント、9パーセント、8パーセント、7パーセント、6パーセント、5パーセント、4パーセント、3パーセント、2パーセント又は1パーセントの範囲を指す。プラスマイナス10パーセントの範囲が好ましい。
【0217】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又は無制限であり、追加の、列挙されていない部材、要素又は方法の段階を除外しない。明らかに、「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語を包含する。より具体的には、「含む(comprise)」という用語は、本明細書中で使用される場合、請求は、列挙される要素又は方法の段階全てを包含するが、さらなる不特定の要素又は方法の段階も含み得ることを意味する。例えば、段階a)、b)及びc)を含む方法は、最も狭い意味で、段階a)、b)及びc)からなる方法を包含する。「からなる(consisting of)」という句は、本組成物(又はキット又は方法)が引用される要素(又は段階)を有し、それ以外のものはないことを意味する。対照的に、「含む(comprises)」という用語は、さらなる段階、例えば段階a)、b)及びc)に加えて段階d)及びe)を含む方法も包含し得る。
【0218】
念のため、数値範囲は、「1~5マイクロモル濃度の濃度」など、本明細書中で使用され、その範囲は、1及び5マイクロモル濃度だけでなく、1~5マイクロモル濃度の間のあらゆる数値、例えば2、3及び4マイクロモル濃度をも含む。
【0219】
定義によれば、「インビトロ」という用語は、生体外及び人工環境を意味する。従って、「インビトロ」という用語は、本明細書中で使用される場合、動物又はヒトの体の外側又は外部を指す。「インビトロ」という用語は、本明細書中で使用される場合、「エクスビボ」を含むことが理解されるべきである。「エクスビボ」という用語は、一般的には、動物又はヒトの体から取り出され、例えば培養容器中で体外で維持されるか又は増殖させられる組織又は細胞を指す。「インビボ」という用語は、本明細書中で使用される場合、動物又はヒトの体の内側又は内部を指す。
【0220】
定義によれば、「テルペン」という用語は、炭素及び水素から構成される炭化水素のみを含む。対照的に、「テルペノイド」という用語は、アルコール、アルデヒド、ケトン及び酸などの誘導体を生じさせる、更なる官能基を含有するテルペンを指し;例えばFlavours and Fragrances:Chemistry,Bioprocessing and Sustainability RG Berger;Black et al.,Terpenoids and their role in wine flavour:recent advances.Australian Journal of Grape and Wine Research 21,582-600,2015;Zhou & Pichersky,More is better:the diversity of terpene metabolism in plants.Current Opinion in Plant Biology 2020,55:1-10;Degenhardt J,Kollner TG,Gershenzon J(2009)Monoterpene and sesquiterpene synthases and the origin of terpene skeletal diversity in plants.Phytochemistry 70(15):1621-1637)を参照されたい。科学文献において、テルペンという用語は、異なる意味を有するものの、テルペノイドという用語と交換可能に使用されることが多い。本明細書中で使用される場合、「テルペン」という用語は、炭化水素及びそれらの官能性誘導体の両方を含む。
【0221】
セスキテルペンは、3つのイソプレン単位から構成されるC15テルペノイドである。モノテルペンのように、セスキテルペンは、非環式であるか、又は多くの独特な組み合わせを含む環を含み得る。それらは特に高等植物並びに海洋生物及び菌類などの他の多くの生物系に見られる。当然、それらは炭化水素として、又はラクトン、アルコール、酸、アルデヒド、及びケトンなどの酸素化された形態で発生する。セスキテルペンはまた、精油及びいくらかの薬理活性を有する芳香成分を含む。
【0222】
芳香、芳香剤、着臭剤、若しくは香味料-又はその官能成分-としても知られている「芳香化合物」は、多種多様な匂いを示す感覚特性を有する化学物質である。これらは、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、エステル、ラクトン、及びテルペンなどの多くのクラスの揮発性化学物質化合物を含み、食品、洗剤、化粧品、及び製薬業界で広く使用されている。個々の化学物質又は化学物質のクラスが匂い又は香りを与えるためには、理想的には、空気を介して鼻の上部の嗅覚系に伝わるのに十分な揮発性がなければならない。主として、官能特性は重要である、即ち、化合物は、有利な匂い(嗅覚)特性又は呈味特性を有する必要がある。更にまた、芳香化合物は、例えば、効率的な調製方法、他の芳香剤との相乗効果の結果としてのより良好な感覚プロファイルを提供する可能性、特定の適用条件下でのより高い安定性、より高い拡張性、より良好で高い持続性などの、更なる肯定的な二次特性も有する必要がある。本明細書の他の場所に記載されているとおり、本発明者らのおかげで、イオニリデンエタンを芳香化合物として同定することができた。これまでイオニリデンエタンは芳香化合物とは考えられていなかったため、この発見は予想できなかった。α-イオニリデンエタンは、フローラル-バイオレット及び/又はウッディ-オリス/イリス根のノートを、香水、芳香剤、又は芳香に伝える1つ以上の芳香化合物を調製するために使用され得ることが、本発明者らによって更に見出された。
【0223】
本明細書で使用される「芳香化合物」は、少なくとも1つの芳香化合物を含むが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は更にはそれ以上の芳香化合物を含むこともできる。芳香化合物は、1つ以上の希釈剤、又は本明細書で定義される成分などの他の成分を更に含むことができる。
【0224】
芳香剤組成物及び成分は当該技術分野で周知であり(例えば、Fundamentals of Fragrance Chemistry,Charles S.Sell,John Wiley&Sons(2019)を参照されたい)、以下の実施例にも示されている。
【0225】
「香水の香りの又は香り付けされた製品」は、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンなどの少なくとも1つの芳香化合物を含む製品であり、例えば、ファイン芳香剤、パーソナルケア製品、ホームケア製品、及び空気ケア製品などの消費者製品を包含することができ、好ましくはファイン芳香剤は、パルファム、エクストラトドパルファム(extrait de parfum)、オードパルファム、ミレジム(millesime)、パルファムドトワレ(parfum de toilette)、オードトワレ, オーデコロン、ボディスプラッシュ、アフターシェーブ、ボディミスト、及びベビーコロンから選択され、好ましくはパーソナルケア製品は、ローション、クリーム、保湿剤、ボディウォッシュ、ハンドソープ、シャンプー、コンディショナー、及び石鹸から選択され、好ましくはホームケア製品は、布地コンディショナー、布地柔軟剤、洗濯用洗剤、洗濯用添加剤、濯ぎ用添加剤、漂白剤、乾燥機用シート、香水ビーズ、カーケア製品、食器洗い洗剤、及び硬質表面洗浄剤から選択され、好ましくは空気ケア製品は、キャンドル、エアゾール、消臭剤(air freshener)、液体電気消臭剤、芳香剤ディフューザー、ジェル消臭剤、プラグイン消臭剤、プラグインオイル、及びワックスメルトから選択される;例えば、欧州特許第3468527B1号明細書を参照されたい。
【0226】
「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「(ポリ)ペプチド」又は「ペプチド」という用語(全ての用語は、別段指示されない場合、交換可能に使用される)は、本明細書中で使用される場合、他の宿主細胞ポリペプチドを基本的に含まない単離及び/又は精製及び/又は組み換え(ポリ)ペプチドを包含する。「ペプチド」という用語は、本明細書中で指す場合、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、又は更にはより多くのアミノ酸残基を含み、ある1つのアミノ酸残基のαカルボキシル基は、別のアミノ酸残基のアルファ アミノ基に結合される。本明細書中で使用され、想定されるようなタンパク質又はペプチドの翻訳後修飾は、新たに形成されるタンパク質又はペプチドの修飾であり、ある特定のアミノ酸への、アミノ酸の欠失、置換又は付加、ある特定のアミノ酸の化学的修飾、例えばアミド化、アセチル化、リン酸化、グリコシル化、ピログルタミン酸の形成、メチオニンにおけるスルファ基の酸化/還元又は類似の低分子の付加を含み得る。
【0227】
当業者に周知であるように、酵素はタンパク質である。酵素はその基質に結合し、それらを生成物に変換する。基質濃度に対する初期反応速度のプロットは、直角双曲線を示す。反応速度(v)は、ミカエリス-メンテンの式により述べられるような(Vmax[A])/(Km+[A])に等しく、ここでVmaxは最大速度であり、[A]は基質濃度であり、Kmは、ミカエリス定数又は半最大速度での基質濃度である。基質に対するKm値、酵素に対するVmax値及び薬物を含む様々な阻害剤に対するKi値を決定するために定常状態酵素動態が使用される。
【0228】
酵素の「代謝回転数」(kcat又は触媒速度定数)は、いくつかの異なる基質から異なる生成物への、生成物に変換される基質の最大分子数/活性部位/単位時間である。様々な基質のkcat/Km値又は特異性定数を比較し得る。最大値を有する基質は酵素に対する最良の基質であり、特異性定数という名称を説明する。いずれの反応の速度も、反応物質分子が衝突する速度により制限される。生体分子反応に対する拡散制限速度は、10~10-1-1である。kcat/Kmの比は、一次速度定数である。kcat/Km及び基質濃度(亜飽和レベルで)の積は、酵素触媒反応の速度をもたらす。この比は、基質濃度に比例し、従って一次で指定される。10~10-1-1付近(拡散速度により可能となる最大値に近い)のkcat/Kmの比を有する酵素は、完全触媒を達成している。例えば、解糖系経路の酵素であるトリオースホスフェートイソメラーゼ(EC5.3.1.1)は、この特性を有する酵素である。しかし、殆どの酵素は、この値を下回る特異性定数のオーダーを有する。酵素の代謝回転数を決定するための方法は、当該技術分野で周知であり;例えばhttps://doi.org/10.1016/B978-0-12-801238-3.05143-6又はHeckmann et al.,PNAS September 15,2020 117(37)23182-23190;https://doi.org/10.1073/pnas.2001562117を参照されたい。
【0229】
配列同一性、相同性又は類似性は、本明細書中で、これらの配列を比較することにより決定した場合の、2つ以上のアミノ酸配列又は2つ以上の核酸配列間の関係として定義される。通常、配列同一性又は類似性は、配列の全長にわたり比較されるが、また互いとの配列の整列の一部に対してのみ比較され得る。好ましくは、配列同一性又は類似性は、本明細書中で、配列の全長にわたり比較される。当該技術分野において、「同一性」又は「類似性」は、場合によっては、このような配列間の一致により決定した場合の、ポリペプチド配列又は核酸配列間の配列の関連性の度合いも意味する。
【0230】
配列アライメントは、次のものなどのいくつかのソフトウェアツールを用いて生成され得る:
-Needleman及びWunschアルゴリズム-Needleman,Saul B.&Wunsch,Christian D.(1970)。“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins”.Journal of Molecular Biology 48(3):443-453。
【0231】
このアルゴリズムは、例えば、2つの配列の網羅的なアライメントを行う「NEEDLE」プログラムに組み込まれる。NEEDLEプログラムは、例えばEuropean Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS)内に含有される。
-EMBOSS-様々なプログラムの一群:The European Molecular Biology Open Software Suite (EMBOSS),Trends in Genetics 16(6),276(2000)。
-BLOSUM(BLOcks SUbstitution Matrix)-一般的に例えばタンパク質ドメインの保存的領域のアライメントに基づいて生成される(Henikoff S,Henikoff JG:Amino acid substitution matrices from protein blocks.Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA.1992 Nov 15;89(22):10915-9)。多くのBLOSUMのうち1つは、「BLOSUM62」であり、これは、タンパク質配列をアラインする際、しばしば多くのプログラムに対する「デフォルト」設定である。
-BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)-大きな配列データベースにおいて類似の配列について検索するために主に使用されるいくつかの個々のプログラム(BlastP、BlastN)からなる。BLASTプログラムは、局所アライメントも作成する。改良バージョン(「BLAST2」)である、NCBI(National Center for Biotechnology Information)により提供される「BLAST」インターフェースが通常は使用される。「元の」BLAST:Altschul,S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W.& Lipman,D.J.(1990)“Basic local alignment search tool.”J.Mol.Biol.215:403-410;BLAST2:Altschul,Stephen F.,Thomas L.Madden,Alejandro A.Schaffer,Jinghui Zhang,Zheng Zhang,Webb Miller,and David J.Lipman(1997),“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402。
【0232】
配列同一性は、本明細書中で使用される場、好ましくは、EMBOSSペアワイズアライメントアルゴリズム「Needle」により決定される場合の値である。特に、「最長の同一性」を計算するNOBRIEFオプション(‘Brief identity and similarity’to NO)を使用して、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムを使用し得る(バージョン2.8.0以降、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite-Rice,P.,et al.Trends in Genetics(2000)16:276-277;http://emboss.bioinformatics.nl)。アラインされた2つの配列間の同一性、相同性又は類似性は次のように計算される:両配列において同一のアミノ酸を示すアライメントにおける対応する位置の数を、アライメントにおけるギャップの総数の減算後のアライメントの全長により除する。アミノ酸配列のアライメントに対して、デフォルトパラメータは、マトリクス=Blosum62;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。核酸配列のアライメントに対して、デフォルトパラメータは、マトリクス=DNAfull;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。
【0233】
本明細書で使用される「α-イオニリデンエタンシンターゼ」という用語は、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換することができるセスキテルペンシンターゼを意味する。従って、本明細書で使用される「α-イオニリデンエタンシンターゼ活性」という用語は、ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの変換を、好ましくはファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの環化を経由して触媒する酵素活性を意味する。α-イオニリデンエタンシンターゼ遺伝子は真菌並びに細菌を含む微生物で見出されており、当該技術分野で十分に記載されている(Takino et al.,J.Am.Chem.Soc.2018,140,39,12392-12395;Siewers et al.,Appl.Environ.Microbiol.72:4619-4626(2006);Otto et al.,Microb Cell Fact(2019)18:205;Inomata et al.,Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,Volume 68,Issue 12,1 January 2004,Pages 2571-2580,https://doi.org/10.1271/bbb.68.2571;Takino et al.,2019,Bioscience Biotechnology and Biochemistry,83(9),1642-1649)。例えば、Takino et al.,2019は、植物病原菌におけるアブシシン酸の生合成経路において、セスキテルペンシンターゼと低いアミノ酸配列同一性を示す新規セスキテルペンシンターゼBcABA3によって触媒される、ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの環化について記載している。BcABA3酵素の別のバージョン及びアブシシン酸生成におけるその使用は、中国特許出願CN108753744号明細書で報告されている。
【0234】
「相同体」は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素の細菌、真菌、植物又は動物相同体、好ましくは植物相同体を意味するが、コード及び非コードDNA配列の短縮配列、単鎖DNA又はRNAも含む。
【0235】
酵素バリアントは、配列番号1~17又は19~33のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を有するα-イオニリデンエタンシンターゼなどの親タンパク質又は酵素と比較した場合に、その配列同一性によって定義され得る。
【0236】
配列同一性は、通常、「%配列同一性」又は「%同一性」として提供される。第1段階で2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定するために、これらの2つの配列間でペアワイズ配列アライメントを作成し、この2つの配列をそれらの完全、全体又は全長にわたりアラインする(即ち、ペアワイズ網羅的アライメント)。アライメントは、本明細書中に記載のプログラム又はソフトウェアを用いて生成される。本発明の目的のための好ましいアライメントは、最大配列同一性が決定され得るアライメントである。
【0237】
本明細書で使用される「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「ペプチド」は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素のペプチド模倣物を包含する。当該技術分野で知られるように、ペプチド模倣物は、必須要素(ファーマコフォア)が3D空間で天然のペプチド又はタンパク質を模倣し、生物学的標的(酵素基質など)と相互作用する能力を保持し、同じ生物学的効果(例えばα-イオニリデンエタンシンターゼ活性)を生じさせる化合物であり、例えばVagner et al.2008,Current Opinion in Chemical Biology 12,Pages 292-296による概説を参照されたい。ペプチド模倣物は、天然ポリペプチドに付随するいくつかの問題、例えばタンパク質分解に対する安定性(生物学的活性の持続期間)及び乏しいバイオアベイラビリティを回避するために設計される。生物学的標的若しくは基質に対する選択制又は上述の生物学的活性などの生物学的活性の効力などのある特定の他の特性が実質的に改善され得ることが多い。
【0238】
本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素の核酸配列又はアミノ酸配列と上記酵素の機能的相同体の核酸配列又はアミノ酸配列との間の食い違いは、特に、例えば分子進化若しくは合理的設計などの当業者にとって公知である生物学的技術によるか又は当技術分野で公知であり、本明細書中に他の箇所に記載の突然変異誘発技術を使用することによって、酵素又は核酸の特性を改善(例えば、酵素の発現上昇又は酵素の酵素活性の上昇)するために行われる修飾の結果であり得る(ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、定向進化、遺伝子組み換えなど)。
【0239】
酵素の又は核酸の配列は、1つ以上の天然のバリエーションの結果として変更され得る。このような天然の修飾又はバリエーションの例は、グリコシル化の相違(より広義には、「翻訳後修飾」として定義される)、オルタナティブスプライシングによる相違及び一核酸多型(SNP)である。少なくとも1つのアミノ酸又は2、3、4、5、6、又は更にはそれを超えるアミノ酸が異なるポリペプチドをコードするように核酸が修飾され得、これが1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を含むポリペプチドをコードするようになり、このポリペプチドは、本明細書中で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼ活性などの生物学的活性又は酵素活性を依然として有する。更に、例えば国際公開第2008/000632号パンフレットに記載のような又はDNA2.0,Geneart及びGenScriptのような商業的なDNA合成会社により提供されるような方法に基づき、人工遺伝子合成(合成DNA)、コドン最適化又はコドン対最適化が使用され得る。
【0240】
酵素の配列又は核酸の配列は、遺伝子編集により改変され得る。遺伝子編集又はゲノム編集は、DNAが挿入される、置換される又はゲノムから除去される、及びDNAシャッフリングの反復とそれに続く、生物学的活性が修飾されているタンパク質をコードする核酸又はその一部のバリアントを生成させるための適切なスクリーニング及び/又は選択からなる「遺伝子シャッフリング」又は「定向進化」などの様々な技術を使用すること(Castle et al.,(2004)Science 304(5674):1151-4;米国特許第5,811,238号明細書及び同第6,395,547号明細書)によって、又は「T-DNA活性化」タグ付加(Hayashi et al.Science(1992)1350-1353)(得られるトランスジェニック生物は、導入されるプロモーターに近い遺伝子の発現の修飾ゆえに優性の表現型を示す)によって、又は「TILLING」(Targeted Induced Local Lesions In Genomes)により得られ得る、遺伝子改変の一タイプであり、発現及び/又は活性が変更されたタンパク質をコードする核酸を作製し及び/又は同定するために有用な突然変異誘発技術を指す。TILLINGはまた、このような突然変異体バリアントを保有する生物の選択も可能にする。TILLINGのための方法は、当該技術分野で周知である(McCallum et al.,(2000)Nat Biotechnol 18:455-457;Stemple(2004)Nat Rev Genet 5(2):145-50により概説)。別の技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas系及び改変されたメガヌクレアーゼ、例えば再改変ホーミングエンドヌクレアーゼのような人工的に改変されたヌクレアーゼを使用する(Esvelt,KM.;Wang,HH.(2013),Mol Syst Biol 9(1):641;Tan,WS.et al.(2012),Adv Genet 80:37-97;Puchta,H.;Fauser,F.(2013),Int.J.Dev.Biol 57:629-637)。
【0241】
本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素の誘導体は、アミノ酸配列から/アミノ酸配列への、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換により得られ得る、機能的、即ち酵素活性があるバリアントを含む。修飾又は突然変異は、異なる1つによるアミノ酸残基の置換、アミノ酸残基の欠失又はアミノ酸残基の挿入であり得る。例えば、基質結合に関与するアミノ酸残基は、修飾され得るか又は突然変異させられ得る。具体例を提供するために、改変された又は突然変異させられたアミノ酸配列は、配列番号1~17又は19~33のいずれか1つに示される未改変のアミノ酸配列と比較して、好ましくは、α-イオニリデンエタンシンターゼ活性が向上している、例えば増加している。この目的のため、例えば、上記α-イオニリデンエタンシンターゼの部位特異的突然変異誘発は、相同体間で高度に保存されたモチーフで見られるアミノ酸残基に注目して、α-イオニリデンエタン及び/若しくはα-イオノン合成反応の中間体を生成する変異体の同定、又は環化機構のより詳細な解明を行うことができる。
好ましくは、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素の上記相同体、バリアント、誘導体、又はペプチド模倣物は、未改変若しくは未変異タンパク質又は酵素の生物学的活性又は酵素活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は更には100%、例えば、配列番号1~17又は19~33のアミノ酸配列のいずれか1つの未改変又は未変異α-イオニリデンエタンシンターゼのα-イオニリデンエタンシンターゼ活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は更には100%有する。上記相同体、バリアント、誘導体、又はペプチド模倣物は、好ましくは、未改変若しくは未変異タンパク質若しくは酵素の基質特異性及び/又は基質優先性、例えば、配列番号1~17又は19~33のいずれか1つのα-イオニリデンエタンシンターゼの基質特異性及び/又は基質優先性も維持する。例えば、配列番号1~17又は19~33のいずれか1つのα-イオニリデンエタンシンターゼの相同体、バリアント、誘導体、又はペプチド模倣物は、本明細書中の他の箇所で説明されるような、ファルネシルジホスフェートのα-イオニリデンエタンへの変換を可能にする。好ましい実施形態では、相同体、バリアント、誘導体、又はペプチド模倣物は、配列番号1~17又は19~33のアミノ酸配列のいずれか1つのα-イオニリデンエタンシンターゼの代謝回転数の少なくとも90%の代謝回転数を有する。
【0242】
DNA及びそれらがコードするタンパク質は、新しい特性又は特性の変化を伴うバリアントタンパク質又は酵素を作製するための分子生物学において公知の様々な技術を使用して修飾され得る(例えば、本明細書中の他の箇所で引用しているSambrook;Ausubelを参照)。
【0243】
ランダムPCR突然変異誘発は、例えば、Rice(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5467-5471において記載され、コンビナトリアル多重カセット突然変異誘発は、例えばCrameri(1995)Biotechniques 18:194-196で記載されている。
【0244】
或いは、核酸、例えば遺伝子は、ランダム又は「確率的」断片化後に再構成され得、例えば米国特許第6,291,242号明細書;同第6,287,862号明細書;同第6,287,861号明細書;同第5,955,358号明細書;同第5,830,721号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,811,238号明細書;同第5,605,793号明細書を参照されたい。
【0245】
或いは、エラープローンPCR、シャッフリング、部位特異的突然変異誘発、アセンブリPCR、セクシャルPCR突然変異誘発、インビボ突然変異誘発(ファージ支援型連続進化、インビボ連続進化)、カセット突然変異誘発、再帰的アンサンブル突然変異誘発、指数関数的アンサンブル突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、遺伝子リアセンブリ、遺伝子部位飽和突然変異誘発(GSSM)、合成ライゲーションリアセンブリ(SLR)、組み換え、再帰的配列組み換え、ホスホチオエート(phosphothioate)修飾DNA突然変異誘発、ウラシル含有鋳型突然変異誘発、ギャップドデュプレックス(gapped duplex)突然変異誘発、点ミスマッチ修飾突然変異誘発、修飾欠失宿主株突然変異誘発、化学的突然変異誘発、放射起源の突然変異誘発、欠失突然変異誘発、制限-選択突然変異誘発、制限-精製突然変異誘発、人工遺伝子合成、アンサンブル突然変異誘発、キメラ核酸マルチマー生成及び/又はこれらの組み合わせ及び他の方法によって、修飾、付加又は欠失が導入される。
【0246】
或いは、「遺伝子部位飽和突然変異誘発」又は「GSSM」は、米国特許第6,171,820号明細書及び同第6,764,835号明細書で詳述されるような、ポリヌクレオチドに点突然変異を導入するために縮重オリゴヌクレオチドプライマーを使用する方法を含む。
【0247】
或いは、合成ライゲーションリアセンブリ(SLR)は、例えば米国特許第6,537,776号明細書で開示されるような、オリゴヌクレオチド構成要素を非確率的に一緒に連結する方法を含む。
【0248】
或いは、目的に合わせられた複数部位コンビナトリアルアセンブリ(「TMSCA」)は、1つの反応において少なくとも2つの突然変異誘発非重複オリゴヌクレオチドプライマーを使用することによって複数部位での様々な突然変異の異なる組み合わせを有する複数の子孫ポリヌクレオチドを作製する方法である。上記方法は、例えば国際公開第2009/018449号パンフレットに記載されている。
【0249】
本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素はまた、融合タンパク質であり得る。「融合タンパク質」という用語は、本明細書中で使用される場合、元来個別のタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子の連結を通じて作製されるキメラタンパク質(文字通り、異なる起源由来の部分から作られる)を示す。この融合遺伝子の翻訳の結果、起源のタンパク質のそれぞれに由来する機能的特性を有する単一又は複数ポリペプチドが得られる。例えば、本明細書中で定められるような融合タンパク質は、タンパク質精製のための親和性タグ(Hisタグ、FLAGタグなど、例えばKimple et al.,2015,Curr Protoc Protein Sci.;73:Unit-9.9.doi:10.1002/0471140864.ps0909s73を参照)又は検出のための標識を含み得る。本明細書中で言及されるような「標識」は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの別の分子に直接又は間接的に複合化して、その分子の検出を促進する、検出可能な化合物又は組成物である。標識の特異的な非限定例としては、当該技術分野で周知の、蛍光タグ、酵素連結及び放射活性同位体が挙げられる。一実施形態では、プロテアーゼ切断部位及び/又はリンカー(即ちプロテアーゼ切断部位;又はリンカー;又はプロテアーゼ切断部位及びリンカーの両方;又はリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含む)は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素と標識又は精製タグとの間に存在し得る。例えば、プロテアーゼ切断部位は、必要に応じてエンテロキナーゼ又はトロンビンなどのプロテアーゼでの処理により精製タグを切断するために使用され得る。例えば、Hisタグは発現及び精製のためのタグとして使用でき、一方、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素は、プロテアーゼによる開裂後に単離することができる。当業者により周知のように、(可動性及び剛直なリンカーにおける場合)機能的ドメインを一緒に連結することにおける基本的役割以外に、リンカーは、生物学的活性の改善、発現量上昇及び所望の薬物動態学的プロファイルの達成など、融合タンパク質の生産のための多くの他の長所をもたらし得る。リンカーは、例えば、ポリグリシンリンカー又は当技術分野で公知の他のリンカーなどのタンパク質/ペプチドリンカーであり得る(例えばChen et al.,Adv Drug Deliv Rev.2013;65(10):1357-1369を参照されたい)。明らかに、本リンカーは、プロテアーゼ切断部位をそれが含むように設計され得る。別の態様では、融合タンパク質は、本明細書中の他の箇所で説明されるような、発現されるポリペプチドを標的化するための、例えば特異的な小器官に対する、シグナルペプチドを保有し得る。
【0250】
本明細書中で定められるような融合タンパク質は、当業者にとって周知の化学合成又は組み換え分子生物学技術により製造され得る。これは、変更すべきところは変更して、宿主細胞又は上清からの融合タンパク質の単離に適用され;例えばSambrook et al.,Molecular cloning:a laboratory manual/Sambrook,Joseph;Russell,David W.--.3rd ed.--New York:Cold Spring Harbor Laboratory,2001;Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)を参照されたい。
【0251】
「核酸」という用語は、本明細書中で使用される場合、1本鎖又は2本鎖形態のいずれかの、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマー、即ちポリヌクレオチドへの言及を含み、別段限定されない限り、それらが天然のヌクレオチド(例えばペプチド核酸)と同様に1本鎖核酸とハイブリッド形成するという点において天然ヌクレオチドの基本的性質を有する既知の類似物を包含する。ポリヌクレオチドは、ネイティブ又は異種構造又は制御遺伝子の全長又はサブ配列であり得る。別段示されない限り、この用語は、指定される配列並びにその相補配列への言及を含む。従って、安定性のため又は他の理由のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAは、その用語が本明細書中で意図されるような「ポリヌクレオチド」である。更に、ほんの2つの例を挙げると、イノシンなどの異常な塩基、又はトリチル化塩基などの修飾塩基を含むDNA又はRNAは、本明細書で使用される用語として「ポリヌクレオチド」である。当業者に公知の多くの有用な目的に役立つ非常に多様な修飾がDNA及びRNAに対して行われていることが理解されるであろう。「ポリヌクレオチド」という用語は、それが本明細書中で使用される場合、このような化学的に、酵素的に又は代謝的に修飾されるポリヌクレオチドの形態並びにとりわけ単純及び複雑な細胞を含む、ウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴の化学的形態を包含する。遺伝コードを参照することによってまたポリペプチド又は本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどのポリペプチド又は酵素をコードする本明細書中の全ての核酸配列は、核酸の全ての可能なサイレントなバリエーションを記載する。「保存的に修飾されたバリアント」という用語は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾されたバリアント」という用語は、遺伝コードの縮重による同一である又は保存的に修飾されたアミノ酸配列の変異体をコードする核酸を指す。「遺伝コードの縮重」という用語は、多数の機能的に同一である核酸がある特定のタンパク質をコードするという事実を指す。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンにより指定される全ての位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに記載される対応するコドンのいずれかに対してコドンが変更され得る。このような核酸バリエーションは、「サイレントバリエーション」であり、保存的に修飾されたバリエーションの1種に相当する。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書中で交換可能に使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの、本明細書で言及されるタンパク質又は酵素の「アミノ酸配列の酵素活性がある断片」は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼ活性などの、本明細書で言及される生物学的活性又は酵素活性を有する少なくとも30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、又は250個のアミノ酸残基の伸長を意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも、並びに天然アミノ酸ポリマーにも適用される。天然アミノ酸のこのような類似体の必要な性質は、タンパク質に組み込まれる場合、そのタンパク質が、同じタンパク質であるが完全に天然アミノ酸からなるタンパク質に対して誘発される抗体と特異的に反応性があるということである。「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化を含むが限定されない修飾も含む。本願の文脈内で、オリゴマー(オリゴヌクレオチド、オリゴペプチドなど)は、ポリマーの基の一種と考えられる。オリゴマーは、例えば、実施例で使用されるα-イオニリデンエタンシンターゼのクローニングのために使用されるなどのプライマー配列を含め、一般的に2~100、特に6~100の単量体単位の比較的少数を有する。
【0252】
「異種」という用語は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本開示の核酸(DNA又はRNA)又はタンパク質又は酵素と関連して使用される場合、それが存在する生物、細胞、ゲノム若しくはDNA若しくはRNA配列の一部として天然には生じない、又は、それが天然で見出されるものとは異なる細胞又はゲノム若しくはDNA若しくはRNA配列中の1つ又は複数の位置において見出される、核酸又はタンパク質を指す。本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本開示の異種核酸又はタンパク質又は酵素は、それらが導入される細胞に対して内因性ではないが、別の細胞から得られているか又は合成若しくは組み換えにより産生されている。一般に、必ずではないが、このような核酸は、DNAが発現される細胞によって普通は産生されないタンパク質をコードする。特定の宿主細胞に対して内因性であるが、例えばDNAシャッフリングの使用を通じて、その天然の形態から修飾されている遺伝子も異種と呼ばれる。「異種」という用語は、非天然の複数コピーの天然DNA配列も含む。従って、「異種」という用語は、細胞にとって外来若しくは異種であるか、又は細胞にとって相同性であるがセグメントが通常では見出されない宿主細胞核酸内の位置及び/又は数である、DNAセグメントを指し得る。外来性DNAセグメントは、外来性ポリペプチドを生じさせるために発現される。
【0253】
本明細書で使用される「相同な」DNA配列は、それが導入される宿主細胞と天然で関連しているDNA配列である。それが発現される細胞に対して異種又は外来として当業者が認識するいずれの核酸又はタンパク質も、異種核酸又はタンパク質という用語によって本明細書において包含される。
【0254】
「修飾される(modified)」、「修飾(modification)」、「突然変異させられる(mutated)」又は「突然変異(mutation)」という用語は、別のタンパク質又はポリペプチドと比較して(例えば、配列番号1~17又は19~33のアミノ酸配列を含むか又はそれらからなる本明細書に定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼと比較して)タンパク質又はポリペプチドに関して本明細書中で使用される場合、変更すべきところは変更して、ヌクレオチド又は核酸配列に適用される。言及される用語は、修飾されたヌクレオチド又はα-イオニリデンエタンシンターゼ活性などの生物学的活性又は酵素活性を有するタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸配列が、それが比較されるタンパク質又はポリペプチドのヌクレオチド又は核酸配列、例えば、配列番号1~17又は19~33のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して、ヌクレオチド又は核酸配列に少なくとも1つの差異を有することを意図するために使用される。この用語は、修飾されたか又は突然変異が導入されたタンパク質が、実際にはこれらのアミノ酸をコードする核酸の突然変異誘発又はポリペプチド若しくはタンパク質の修飾によって、又は別の方法で、例えば人工遺伝子合成方法を使用して得られているかにかかわらず、使用される。突然変異誘発は、当該技術分野で周知の方法であり、例えば、Sambrook,J.,and Russell,D.W.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(2001)に記載のような、PCRによるか又はオリゴヌクレオチド介在性の突然変異誘発を介した部位特異的突然変異誘発を含む。「修飾される(modified)」、「修飾(modification)」、「突然変異させられる(mutated)」又は「突然変異(mutation)」という用語は、遺伝子に関して本明細書中で使用される場合、その遺伝子又はその調節配列のヌクレオチド配列中の少なくとも1つのヌクレオチドが、それが比較されるヌクレオチド配列、例えば、配列番号1~17又は19~33のいずれかのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とは異なることを意図するために使用される。修飾又は突然変異は、特に、異なる1つによるヌクレオチドの置換、ヌクレオチドの欠失又はヌクレオチドの挿入であり得る。
【0255】
本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素をコードする核酸は、ベクター若しくは遺伝子コンストラクト中の原核生物若しくは真核生物の宿主細胞、又はその単離された画分での発現を可能にする発現制御配列に作動可能に連結されている。従って、一態様では、ベクターは発現ベクターである。本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書中で言及されるタンパク質又は酵素をコードする核酸の発現は、ポリヌクレオチドの翻訳可能なmRNAへの転写を含む。原核又は真核宿主細胞での発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野で周知である。一態様では、これらは、転写の開始を確実にする調節配列及び/又は転写終結及び転写の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。更なる調節エレメントは、転写並びに翻訳エンハンサーを含み得る。原核宿主細胞での発現を可能にする可能な調節要素には、例えば、E.コリ(E.coli)のlac-、trp-、若しくはtac-プロモーター、又はロドバクター(Rhodobacter)プロモーターが含まれ(https://doi.org/10.1073/pnas.2010087117)、真核宿主細胞における発現を可能にする調節要素の例は、酵母におけるAOX1-若しくはGAL1-プロモーター、又は哺乳類及びその他の動物細胞におけるCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、又はグロビンイントロンである。植物プロモーターは、例えばPlant Biotechnology:Principles and Applications,pp117-172,2017に記載されている。更に、誘導性発現制御配列は、発現ベクターにおいて使用され得る。このような誘導性ベクターは、tet又はlacオペレーター配列又は熱ショック若しくは他の環境因子により誘導性である配列を含み得る。好適な発現制御配列は、当該技術分野で周知である。転写開始に関与するエレメントの他に、このような制御エレメントは、ポリヌクレオチドの下流で、転写終結シグナル、例えばSV40-ポリ-A部位又はtk-ポリ-A部位なども含み得る。本文脈において、適切な発現ベクターは、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pBluescript(Stratagene)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)又はpSPORT1(Invitrogen)など、当該技術分野で公知である。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス又はウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターは、標的化された細胞集団へのポリヌクレオチド又はベクターの送達のために使用され得る。
【0256】
当業者にとって周知の方法は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素をコードする核酸を含むベクター又は遺伝子コンストラクトを構築するために使用され得;例えばSambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(2001)N.Y.及びAusubel、Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)において記載される技術を参照されたい。
【0257】
「遺伝子」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書で定義される酵素活性があるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする核酸など、生物学的機能と関連する核酸のいずれかのセグメントを指すために広く使用される。従って、遺伝子は、それらの発現に必要とされるコード配列及び/又は調節配列を含む。例えば、遺伝子は、mRNA又は機能的RNAを発現するか又は特異的なタンパク質をコードする核酸断片を指し、これは、調節配列を含む。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質に対する認識配列を形成する、発現されないDNAセグメントも含む。遺伝子は、関心対象の起源からのクローニング又は既知の若しくは予想される配列情報からの合成を含む様々な起源から得られ得、所望のパラメーターを有するように設計される配列を含み得る。
【0258】
「キメラ遺伝子」という用語は、本明細書中で使用される場合、1)天然では一緒に見られない調節配列及びコード配列を含むDNA配列又は2)天然には隣接しないタンパク質の一部をコードする配列又は3)天然には隣接しないプロモーターの一部を含有するあらゆる遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列及びコード配列を含み得るか、又は同じ起源由来であるが天然で見出されるものとは異なるように編成される、調節配列及びコード配列を含み得る。
【0259】
「遺伝子コンストラクト」は、本明細書中で使用される場合、関心対象の挿入に従い、複雑さが変動し得る。本コンストラクトは、付加による遺伝子組み換えと呼ばれる、生物のゲノムにランダムに挿入されるように設計され得るか、又は相同組み換えによる遺伝子組み換えと呼ばれる、決定された染色体の適正な位置に特異的な標的とされる部位でゲノムに挿入されるように設計され得る。両ケースにおいて、コンストラクトは、プロモーター、転写開始部位、ポリアデニル化部位及び転写終結部位などの遺伝子発現を制御するための構造を有する、完璧なものでなければならない。即ち、受容体ゲノムに挿入されている情報は、最初、中間及び最後を有し、従って宿主細胞又は生物における無制御の発現の問題を回避する。
【0260】
「オープンリーディングフレーム」及び「ORF」という用語は、本明細書中で使用される場合、コード配列の翻訳開始コドンと終結コドンとの間でコードされるアミノ酸配列を指す。「開始コドン」及び「終結コドン」という用語は、タンパク質合成(mRNA翻訳)の開始及び鎖の終結をそれぞれ特定するコード配列における3つの隣接するヌクレオチド(「コドン」)の単位を指す。
【0261】
本明細書で使用される「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードし、非コード配列を除外するDNA又はRNA配列を指す。それは、「途切れのないコード配列」を構成し得る、すなわちcDNAのようにイントロンを欠いている場合もあれば、適切なスプライス接合部によって結合された1つ以上のイントロンを含む場合もある。「イントロン」は、一次転写物において含有されるが、タンパク質に翻訳され得る成熟mRNAを作製するための細胞内でのRNAの切断及び再連結を通じて除去される、RNAの配列である
【0262】
「調節配列」は、本明細書中で使用される場合、コード配列の上流に(5’非コード配列)、又はコード配列内若しくは下流に(3’非コード配列)配置されるヌクレオチド配列を指し、これは、転写、RNAプロセシング又は安定性又は関連するコード配列の翻訳に影響を与える。調節配列は、エンハンサー、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン及びポリアデニル化シグナル配列を含む。これらは、天然及び合成配列並びに合成及び天然配列の組み合わせであり得る配列を含む。上記のように、「好適な調節配列」という用語は、プロモーターに限定されない。調節配列の例としては、プロモーター(転写プロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーター)、オペレーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位及び転写、及び翻訳開始及び終結を制御する適切な配列が挙げられる。核酸配列は、制御配列が機能的に本開示のDNA又はcDNA配列に関連する場合、「操作可能に連結される」。本明細書中で使用される場合、「操作可能に連結される」又は「操作的に連結される」という用語は、そのように記載される構成成分がそれらの意図される方法でそれらが機能することを可能にする関係にある近位を指す。別の制御配列に及び/又はコード配列に「操作可能に連結される」制御配列は、制御配列と適合する条件下で、コード配列の転写及び/又は発現が達成されるように連結される。一般に、操作可能に連結されるとは、連結されている核酸配列が近接しており、2つのタンパク質コード領域を連結するために必要な場合、近接し、同じ読み枠であることを意味する。調節配列のそれぞれは、独立に異種及び相同調節配列から選択され得る。
【0263】
「プロモーター」は、本明細書中で使用される場合、そのコード配列に対して通常は上流(5’)にあり、RNAポリメラーゼに対する認識及び適正な転写に必要とされる他の因子を提供することによって、前記コード配列の発現を制御する、ヌクレオチド配列を指す。「プロモーター」は、TATAボックス及び転写開始部位を指定するために働く他の配列から構成される短いDNA配列である最小プロモーターを含み、これに、発現の制御のための制御エレメントが付加される。「プロモーター」はまた、コード配列又は機能的RNAの発現を制御可能である最小プロモーター+制御エレメントを含むヌクレオチド配列も指す。このタイプのプロモーター配列は、近接及びより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーと呼ばれることが多い。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することができ、プロモーターの生来のエレメント、又はプロモーターのレベル若しくは組織特異性を高めるために挿入された異種エレメントであり得るDNA配列である。それは両方の方向(通常又は反転)で動作することができ、プロモーターの上流又は下流のいずれかに移動した場合でも機能することができる。エンハンサー及び他の上流プロモーターエレメントの両方が、それらの効果に介在する配列特異的なDNA結合タンパク質に結合する。プロモーターは、それらの全体においてネイティブ遺伝子に由来し得るか、又は天然で見られる異なるプロモーター由来の異なるエレメントから構成され得るか、又は合成DNAセグメントからさえも構成され得る。プロモーターは、生理学的又は発生の状態に反応して転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列も含有し得る。
【0264】
「発現カセット」は、本明細書中で使用される場合、終結シグナルに操作可能に連結される関心対象のヌクレオチド配列に操作可能に連結されるプロモーターを含む、本明細書で定義される適切な宿主細胞において、特定のヌクレオチド配列、例えば本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードするヌクレオチド配列の発現を指示可能なDNA配列を意味する。コード領域は通常、関心対象のタンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向で、関心対象の機能的RNA、例えばアンチセンスRNA又は非翻訳RNAもコードし得る。関心対象のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであり得、これは、その構成成分の少なくとも1つがそれの他の構成成分のうち少なくとも1つに対して異種であることを意味する。発現カセットは、天然であるが、異種発現のために有用な組み換え形態で得られているものでもあり得る。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター又はいくつかの特定の外部刺激に宿主細胞が曝露されたときのみ転写を開始させる誘導性プロモーターの制御下であり得る。多細胞生物の場合、プロモーターは、特定の組織若しくは器官又は例えば植物の発生における発生段階に特異的でもあり得る。
【0265】
「ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、標的とされた細胞の形質転換を指示するために設計された遺伝物質から構成される構築物を指す。ベクターは、核酸カセット中の核酸が転写され得、及び必要な場合は形質転換された細胞において翻訳され得るように、位置的に及び連続的に方向付けられる、即ち他の必要なエレメントと操作可能に連結される多重遺伝エレメントを含有する。特に、本ベクターは、ウイルスベクター、(バクテリオ)ファージ、コスミド又はプラスミドの群から選択され得る。本ベクターは、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はアグロバクテリウムバイナリーベクターでもあり得る。このベクターは、自己伝染性若しくは可動性であってもよいし又はそうでなくてもよく、細胞ゲノムへの組み込みによるか又は染色体外に存在する(例えば複製起点を有する自律増殖するプラスミド)かのいずれかにより、例えばロドバクター属(Rhodobacter)などの宿主生物を形質転換し得る2本鎖又は1本鎖の直鎖状又は環状形態であり得る。具体的に、本明細書中で定められるような2つの異なる宿主生物において天然に又は計画的に複製可能なDNAビヒクルを意味するシャトルベクターが含まれる。好ましくは、本ベクター中の核酸は、本明細書中で指定されるような宿主細胞での転写に適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下にあり、それに操作可能に連結される。本ベクターは、複数の宿主において機能する二機能性発現ベクターであり得る。ゲノムDNAの場合、これは、それ自身のプロモーター又は他の調節エレメントを含有し得、cDNAの場合、これは、宿主細胞での発現に適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下であり得る。核酸を含有するベクターは、当該技術分野で公知の方法に基づいて調製され得る。例えば、転写又は翻訳調節核酸配列などの適切な調節エレメントに操作可能に連結される本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードするcDNA配列が使用され得る。
【0266】
「ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、標準的なクローニング作業のためのベクター(「クローニングベクター」)に対する、並びに、宿主細胞の染色体への組み込みのために使用される(常染色体)発現ベクター及びクローニングベクター(「組み込みベクター」)のようなより特別なタイプのベクターに対する言及を含む。
【0267】
「クローニングベクター」は一般的に、本ベクターの必須の生物学的機能を欠失させずに決定可能な方式で外来DNA配列が挿入され得る1つ又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位並びに、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定及び選択での使用に適切であるマーカー遺伝子を含有する。
【0268】
「発現ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、その転写をもたらすさらなる核酸セグメントの制御下(即ち操作可能に連結される)で関心対象のポリペプチドをコードするセグメントを含む、直鎖状又は環状のDNA分子を指す。このような更なるセグメントは、プロモーター及び終結配列を含み得、任意選択的に1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含み得る。発現ベクターは一般に、プラスミド又はウイルスDNAに由来するか、又は両方のエレメントを含有し得る。特に、発現ベクターは、5’から3’方向で、(a)宿主生物により認識される転写及び翻訳開始領域、(b)関心対象のポリペプチドに対するコード配列及び(c)宿主生物により認識される転写及び翻訳終結領域を含み、操作可能に連結されるヌクレオチド配列を含む。「プラスミド」は、微生物のゲノムに組み込まれず、通常は天然では環状である、自律的に複製する染色体外DNAを指す。
【0269】
「組み込みベクター」は、例えば微生物のゲノム、例えば細菌のゲノムに組み込まれ得る直鎖状又は環状であるDNA分子を指し、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの関心対象のポリペプチドをコードする遺伝子の安定な遺伝的形質をもたらす。組み込みベクターは一般に、その転写をもたらすさらなる核酸セグメントの制御下で(即ちこれに操作可能に連結される)関心対象のポリペプチドをコードする遺伝子配列を含む1つ以上のセグメントを含む。
【0270】
このような更なるセグメントは、通常は相同組み換えの過程による、プロモーター及び終結配列及び標的細胞のゲノムへの関心対象の遺伝子の組み込みを推進する1つ以上のセグメントを含み得る。一般的には、組み込みベクターは、標的細胞に移され得るが、その生物において非機能的なレプリコンを有するものである。関心対象の遺伝子を含むセグメントの組み込みは、そのセグメント内で適切なマーカーが含まれる場合、選択され得る。本明細書で定義される宿主細胞、好ましくは本発明の宿主細胞において発現させようとするポリペプチドに天然には付随しない適切なシグナルペプチドをコードする1つ以上の核酸配列が(発現)ベクターに組み込まれ得る。例えば、シグナルペプチドリーダーに対するDNA配列は、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素が、シグナルペプチドを含む融合タンパク質として最初に翻訳されるように、本開示の核酸にインフレームで融合され得る。シグナルペプチドの性質に依存して、発現されるポリペプチドは、異なって標的化される。意図される宿主細胞において機能的である分泌シグナルペプチドは例えば、発現されたポリペプチドの細胞外分泌を促進する。他のシグナルペプチドは、発現されたポリペプチドを葉緑体、ミトコンドリア及びペルオキシソームのようなある特定の細胞小器官に向ける。シグナルペプチドは、目的の細胞小器官への輸送時又は細胞からの輸送時にポリペプチドから切断され得る。ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端に更なるペプチド配列の融合を提供することが可能である。
【0271】
本明細書で開示されるベクター又は遺伝子コンストラクトを用いて宿主細胞を形質転換する。当業者は、本明細書で開示されるベクター又は遺伝子コンストラクトを含有する宿主細胞をうまく形質転換し、選択し、増殖させるために遺伝コンストラクト上に存在しなければならない遺伝因子をよく承知している。宿主細胞は、本開示のベクター又は遺伝子コンストラクトに含まれる、α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有するタンパク質などの本明細書中で言及されるポリペプチド又は酵素を発現することができる。宿主細胞は、発現された酵素的に活性なα-イオニリデンエタンシンターゼの基質としてファルネシルジホスフェートも含む。
【0272】
「形質転換(Transformation)」及び「形質転換すること(transforming)」は、本明細書中で使用される場合、挿入のために使用される方法、例えば、直接取り込み、形質導入、抱合反応、f-接合又はエレクトロポレーション、に関係なく、本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼなどの本明細書で言及されるタンパク質又は酵素をコードするヌクレオチド配列などの異種ヌクレオチド配列の宿主細胞への導入を指す。外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター、例えばプラスミド、として維持され得るか、又は或いは宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。
【0273】
本開示による宿主細胞は、例えばSambrook,J.,and Russell,D.W.“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(2001);及びF.M.Ausubel et al、eds.,“Current protocols in molecular biology”,John Wiley and Sons,Inc.,New York(1987)及びそれへの後日の追補に記載のような、一般に当該技術分野で公知の標準的な遺伝学的及び分子生物学技術に基づいて作製され得る。
【0274】
宿主細胞は、微生物細胞、例えば細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、例えば酵母細胞など及び原生生物細胞から選択されるいずれかの細胞であり得る。宿主細胞は、藻類細胞又は藍藻細胞、非ヒト動物細胞又は哺乳動物細胞又は植物細胞でもあり得る。
【0275】
具体的に、宿主細胞は、次の生物のいずれか1つから選択され得る:
【0276】
細菌
細菌宿主細胞は、例えばエシェリキア属(genera Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、パラコッカス属(Paracoccus)、又はラクトコッカス属(Lactococcus)からなる群から選択され得る。
【0277】
グラム陽性:バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces):
【0278】
有用なグラム陽性細菌宿主細胞としては、バチルス属(Bacillus)細胞、例えば、バチルス・アルカロフィウス(Bacillus alkalophius)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ジャウツス(Bacillus Jautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)が挙げられるが限定されない。最も好ましい原核生物は、バチルス属(Bacillus)細胞、好ましくは、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・レンツス(Bacillus lentus)のバチルス属(Bacillus)細胞である。
【0279】
いくつかの他の好ましい細菌としては、放線菌目(Actinomycetales)、好ましくはストレプトマイセス属(Streptomyces)、好ましくはストレプトマイセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATTC23965)、ストレプトマイセス・サーモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)(IFO12382)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)又はストレプトベルティシリウム・ベルティシリウムssp.ベルティシリウム(Streptoverticillum verticillium ssp.verticillium)の菌種が挙げられる。他の好ましい細菌としては、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(Rhodomonas palustri)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)が挙げられる。更なる好ましい細菌としては、ミキソコッカス属(Myxococcus)に属する菌種、例えばM.ビレスセンス(M.virescens)が挙げられる。
【0280】
グラム陰性:E.コリ(E.coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、パラコッカス属(Paracoccus)
好ましいグラム陰性細菌は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)、好ましくはシュードモナス・ピロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC 15958)又はシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(NRRL B-11)、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)又はロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、パラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)又はパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)である。
【0281】
真菌
アスペルギルス属(Aspergillus)、フサリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Trichoderma)
【0282】
宿主細胞は、真菌細胞であり得る。「真菌」は、本明細書中で使用される場合、子嚢菌門(phyla Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)及び接合菌門(Zygomycota)並びに卵菌門(Oomycota)及び不完全菌亜門(Deuteromycotina)及び全ての栄養胞子形成真菌を含む。子嚢菌門(Ascomycota)の代表的な群としては、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ユーペニシリウム属(Eupenicillium)(=ペニシリウム属(Penicillium))、エメリセラ属(Emericella)(=アスペルギルス属(Aspergillus))、ユーロチウム属(Eurotium)(=アスペルギルス属(Aspergillus))及び以下で挙げられる真正酵母が挙げられる。担子菌門(Basidiomycota)の例としては、キノコ、さび病及び黒穂病が挙げられる。ツボカビ門(Chytridiomycota)の代表的な群としては、例えば、カワリミズカビ属(Allomyces)、ブラストクラジエラ属(Blastocladiella)、ボウフラキン属(Coelomomyces)及び水生真菌が挙げられる。卵菌門(Oomycota)の代表的な群としては、例えばアクリャ属(Achlya)などのサプロレグニオミセトス(Saprolegniomycetous)水生真菌(ミズカビ)が挙げられる。栄養胞子形成真菌の例としては、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、カンジダ属(Candida)及びアルテルナリア属(Alternaria)が挙げられる。接合菌門(Zygomycota)の代表的な群としては、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)が挙げられる。
【0283】
いくつかの好ましい真菌としては、ジューテロミコチナ亜門(Deuteromycotina)に属する菌種、糸状不完全菌類(Hyphomycetes)のクラス、例えば、フサリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、トリコデルマ属(Tricoderma)、ミロセシウム属(Myrothecium)、ベルティシリウム属(Verticillum)、アルスロマイセス属(Arthromyces)、カルダリオマイセス属(Caldariomyces)、ウロクラジウム属(Ulocladium)、エムべリシア属(Embellisia)、クラドスポリウム属(Cladosporium)又はドレスクレラ属(Dreschlera)、特にフサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)(DSM2672)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・レシイ(Trichoderma resii)、ミロテシウム・ベルカナ(Myrothecium verrucana)(IFO6113)、ベルティシリウム・アルボアツルム(Verticillum alboatrum)、ベルティシリウム・ダーリイ(Verticillum dahlie)、アルスロマイセス・ラモサス(Arthromyces ramosus)(FERM P-7754)、カルダリオマイセス・フマゴ(Caldariomyces fumago)、ウロクラジウム・チャルタルム(Ulocladium chartarum)、エムべリシア・アリ(Embellisia alli)又はドレスクレラ・ハロデス(Dreschlera halodes)が挙げられる。他の好ましい真菌としては、バシジオミコチナ亜門(Basidiomycotina)に属する菌種、担子菌(Basidiomycetes)のクラス、例えばコプリナス属(Coprinus)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、コリオルス属(Coriolus)又はトラメテス属(Trametes)、特にコプリヌス・シネレウス f.ミクロスポルス(Coprinus cinereus f.microsporus)(IFO8371)、コプリヌス・マクロリズス(Coprinus macrorhizus)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)(例えばNA-12)又はトラメテス属(Trametes)(ポリポルス属(Polyporus)と以前呼ばれる)、例えばT.ベルシカラー(T.versicolor)(例えばPR4 28-A)が挙げられる。更なる好ましい真菌としては、接合菌亜門(Zygomycotina)に属する菌種、マイコラセア(Mycoraceae)のクラス、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)、特にムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)が挙げられる。
【0284】
酵母
ピキア属(Pichia)
サッカロマイセス属(Saccharomyces)
【0285】
真菌宿主細胞は、酵母細胞であり得る。酵母は、本明細書中で使用される場合、有子嚢胞子(ascosporogenous)酵母(エンドミセタレス(Endomycetales))、担子胞子(basidiosporogenous)酵母)及び不完全真菌(ブラストマイセス属(Blastomycetes))に属する酵母を含む。有子嚢胞子(ascosporogenous)酵母は、スペルモフトラ科(Spermophthoraceae)及びサッカロミケス科(Saccharomycetaceae)に分けられる。後者は、4つの亜科、シゾサッカロミコイデア(Schizosaccharomycoideae)(例えばシゾサッカロマイセス属(genus Schizosaccharomyces))、ナドソニオイデア(Nadsonioideae)、リポミコイデア(Lipomycoideae)及びサッカロミコイデア(Saccharomycoideae)(例えばクリベロマイセス属(genera Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)及びサッカロマイセス属(Saccharomyces))から構成される。担子胞子(basidiosporogenous)酵母としては、ロイコスポリジム属(genera Leucosporidim)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、スポリジオボルス属(Sporidiobolus)、フィロバシジウム属(Filobasidium)及びフィロバシジエラ属(Filobasidiella)が挙げられる。不完全真菌に属する酵母は、2つの科、スポロボロミセタセア(Sporobolomycetaceae)(例えばスポロボロマイセス属(Sporobolomyces)及びブレラ属(Bullera))及びクリプトコッカセア(Cryptococcaceae)(例えばカンジダ属(Candida))に分けられる。
【0286】
真核生物
真核宿主細胞としては、更に非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、鳥類細胞、爬虫類細胞、昆虫細胞又は植物細胞が挙げられるが限定されない。
【0287】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、次のものから選択される宿主細胞である:
a)グラム陰性細菌の群の細菌細胞、例えばロドバクター属(Rhodobacter)(例えばロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)若しくはロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)、パラコッカス属(Paracoccus)(例えばP.カロチニファシエンス(P.carotinifaciens)、P.ゼアキサンチニファシエンス(P.zeaxanthinifaciens))、エシェリキア属(Escherichia)若しくはシュードモナス属(Pseudomonas);
b)グラム陽性細菌の群から選択される細菌細胞、例えばバチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、アミコラトピス属(Amycolatopis);
c)アスペルギルス属(Aspergillus)、ブラケスレア属(Blakeslea)、ペニシリウム属(Peniciliium)、ファフィア属(Phaffia)(キサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces))、ピキア(Pichia)、サッカラモイセス属(Saccharamoyces)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ヤロウィア属(Yarrowia)及びハンゼヌラ属(Hansenula)の群から選択される真菌細胞;
d)トランスジェニック植物細胞若しくはトランスジェニック植物細胞を含む培養物(この細胞は、アラビドプシス(Arabidopsis)spp.、ニコチアナ(Nicotiana)spp、シコルム・インチブス(Cichorum intybus)、ラクカ・サチバ(lacuca sativa)、メンタ(Mentha)spp、アルテミシア・アニュア(Artemisia annua)、塊茎形成植物、油料穀物、例えばブラシカ(Brassica)spp.若しくはブラシカ・ナピュス(Brassica napus)、果実を産生する顕花植物(被子植物)及び樹木から選択されるトランスジェニック植物のものである);又は
e)トランスジェニックキノコ若しくはトランスジェニックキノコ細胞を含む培養物(この微生物は、シゾフィラム属(Schizophyllum)、アガリクス属(Agaricus)及びプレウロティシ属(Pleurotisi)から選択される)。
【0288】
生物からのより好ましい宿主細胞は、エシェリキア属(Escherichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)又はパラコッカス属(Paracoccus)、(例えばパラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)に属する微生物及び更により好ましくはE.コリ(E.coli)、S.セレビサエ(S.cerevisae)、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)又はアミコラトピス(Amycolatopis)sp.の微生物からの宿主細胞である。
【0289】
特に好ましいのは、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)及びロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)の群から選択されるロドバクター属(Rhodobacter)の宿主細胞である。
【0290】
本発明はまた、発酵組成物であって:
(a)培養培地中で培養された遺伝子改変微生物宿主細胞であって、本発明の微生物宿主細胞である微生物宿主細胞と;
(b)本発明の微生物宿主細胞から産生されたα-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンと
を含む発酵組成物に関する。
【0291】
本発明は、更に、α-イオノンを調製するための宿主細胞であって、ファルネシルジホスフェートとα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸とを含む宿主細胞を提供する。
【0292】
用語「宿主細胞」、「本明細書に開示される宿主細胞」又は「本明細書で言及される宿主細胞」に関する定義及び説明は、必要な変更を加えて本発明の宿主細胞に適用される。
【0293】
本発明の宿主細胞は、本明細書で開示されるα-イオニリデンエタンシンターゼをコードする異種核酸と、α-イオニリデンエタンシンターゼの基質としてのファルネシルジホスフェートとを含む。
【0294】
有利には、本発明の宿主細胞は、以下の実施例で示されるように、α-イオニリデンエタンの生成に使用され得る。好ましくは、α-イオニリデンエタンは、E,Z-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)である。
【0295】
本発明の宿主細胞は、更に、以下の実施例で示されるように、α-イオノンの生成に使用され得る。本発明の宿主細胞は、α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換するのに好適である。好ましくは、α-イオノンはR-α-イオノンである。
【0296】
好ましくは、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンは、本発明の宿主細胞において、ビタミンAの前駆体として、及び/又はビタミンAの合成のために使用される。そのため、上記宿主細胞は、α-イオニリデンエタンをビタミンAに変換することができる。
【0297】
宿主細胞はまた、テルペン又はテルペノイドの異種再構成に使用され得る。
【0298】
宿主細胞は更に、工業製品、好ましくは芳香組成物、香味料若しくは芳香剤、動物飼料、人間の栄養製品、化粧品、着色剤(カロテノイド)、又はラジカルスカベンジャーを生成するために利用することができる。
【0299】
本発明の宿主細胞は、本明細書で定義されるとおり、セスキテルペンを生成するための発酵産生系として機能することができる。
【0300】
本発明の宿主細胞の好ましい実施形態では、α-イオニリデンエタンシンターゼは、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する。
【0301】
本発明の宿主細胞の別の好ましい実施形態では、生成されたα-イオニリデンエタンの少なくとも一部は、化学的又は酵素的な酸化開裂により、α-イオノンに変換される。
【0302】
本発明のなお更なる好ましい実施形態では、α-イオニリデンエタンシンターゼは、真菌又は細菌α-イオニリデンエタンシンターゼである。好ましい実施形態では、α-イオニリデンエタンシンターゼは、子嚢菌門(Ascomyta)、好ましくはチャワンタケ亜門(Pezizomycotina)の真菌由来である。一実施形態における真菌は、キンカクキン科(Sclerotiniaceae)又はルトストロエミア科(Rutstroemiaceae)のファミリー、例えば、ボトリティス(Botrytis)種又はルトストロエミア(Rutstroemia)種由来である。
【0303】
本発明の宿主細胞の更に好ましい実施形態では、α-イオニリデンエタンシンターゼは:
a)配列番号1~17又は19~33のいずれか1つで示されるアミノ酸配列と;
b)配列番号1~17又は19~33のいずれか1つとアミノ酸レベルで少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、66%、70%、71%、75%、80%、81%、85%、86%、90%、又は95%の配列同一性を有し、α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有するアミノ酸配列と;
c)α-イオニリデンエタンシンターゼ活性を有する、酵素活性があるa)又はb)のアミノ酸配列の断片と;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0304】
本発明の宿主細胞のなお更なる好ましい実施形態では、宿主細胞は
(i)メバロネート経路の酵素をコードする1つ以上の核酸、及び/若しくはデオキシキシルロースホスフェート(DXP)経路の酵素をコードする1つ以上の核酸;並びに/又は
(ii)酸化酵素をコードする1つ以上の核酸、好ましくはカロテンジオキシゲナーゼ及び/若しくはペルオキシダーゼをコードする1つ以上の核酸;並びに/又は
(iii)ビタミンAの合成のための酵素をコードする1つ以上の核酸を更に含む。
【0305】
本発明の宿主細胞の別の好ましい実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞若しくは藍藻細胞、非ヒト動物細胞若しくは非ヒト哺乳動物細胞、非脊椎動物細胞、又は植物細胞、好ましくは細菌細胞、又は酵母細胞である。一実施形態では、宿主細胞は単離された細胞であり、すなわち、それは多細胞生物の範囲内ではない。より好ましくは、宿主細胞は、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)宿主細胞、又はロドバクター(Rhodobacter)宿主細胞、更により好ましくは、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)宿主細胞である。
【0306】
加えて、本発明は、(i)本発明の宿主細胞、α-イオニリデンエタン及び/若しくはα-イオノン、又は(ii)本明細書で定義されるα-イオニリデンエタンシンターゼ、α-イオニリデンエタン及び/若しくはα-イオノンを含む組成物に関する。好ましくは、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンは、本発明の方法により生成される。
【0307】
本発明はまた、本発明の宿主細胞、又は本発明の芳香化合物若しくは組成物を含むキットに関する。
【0308】
更に、本発明は、α-イオノンを調製するための方法であって、酵素であって、タグペプチドを含む第1セグメントと、α-イオニリデンエタンシンターゼ、好ましくは、配列番号1~17又は19~33のいずれかと、好ましくは配列番号1と、アミノ酸レベルで少なくとも50%、55%、60%、65%、66%、70%、71%,75%、76%、80%、81%、85%、86%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更には100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むα-イオニリデンエタンシンターゼを含む第2セグメントとを含む酵素の存在下で、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程を含む方法に関する。上記第1セグメントと上記第2セグメントとを含む酵素は、本明細書では、「タグ付き酵素」と称される。
【0309】
また、本発明は、1つ以上の芳香化合物の生成における、配列番号1~17又は19~33のいずれかと、好ましくは配列番号1と、アミノ酸レベルで少なくとも50%、55%、60%、65%、66%、70%、71%,75%、76%、80%、81%、85%、86%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更には100%の配列同一性を有するα-イオニリデンエタンシンターゼのこのようなタグ付き酵素バージョンの使用に関する。
【0310】
加えて、配列番号1~17又は19~33のいずれかと、好ましくは配列番号1と、アミノ酸レベルで少なくとも50%、55%、60%、65%、66%、70%、71%,75%、76%、80%、81%、85%、86%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更には100%の配列同一性を有するα-イオニリデンエタンシンターゼのタグ付き酵素バージョンは、酵素であって、タグペプチドを含む第1セグメントと、本明細書で記載されるα-イオニリデンエタンシンターゼを含む第2セグメントとを含む酵素の存在下で、α-イオノン及び/又はα-イオニリデンエタンを調製するための本発明の方法であって、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する工程を含む方法で使用され得る。
【0311】
タグペプチドは、好ましくは、窒素利用タンパク質(NusA)、チオレドキシン(Trx)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、小ユビキチン様修飾因子(SUMO)、又はカルシウム結合ンパク質(Fh8)、及びそれらの機能的相同体の群から選択される。本明細書で使用する場合、タグペプチドの機能的相同体は、タグなし酵素と比較して、タグ付き酵素の溶解度に対して少なくともほぼ同じ効果を有するタグペプチドである。典型的には、相同体は、相同体であるペプチドに1つ以上のアミノ酸が挿入、置換、欠失、又は伸長されている点で異なる。相同体は、特に、親水性アミノ酸と別の親水性アミノ酸、又は疎水性アミノ酸と別の疎水性アミノ酸の置換の1つ以上の置換を含み得る。相同体は、特に、少なくとも40%の配列同一性、より具体的には、NusA、Trx、MBP、GST、SUMO、又はFh8の配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0312】
エシェリキア・コリ(Escherichia coli)由来のマルトース結合タンパク質又はその機能的相同体が特に好ましい。
【0313】
本発明によるタグ付き酵素の使用は、α-イオニリデンエタン及び/又はα-イオノンの生成の増加、特に細胞生成の増加に寄与し得るという点で特に有利である。
【0314】
タグ付き酵素の溶解性を向上させるため(タグなしの酵素と比較して)、酵素の第1セグメントは、そのC末端で第2セグメントのN末端に結合することが好ましい。或いは、タグ付き酵素の第1のセグメントは、そのN末端で第2のセグメントのC末端に結合する。
【0315】
更に、本発明は、タグペプチドを含む第1セグメントと、ファルネシルジホスフェートをα-イオニリデンエタンに変換する酵素活性を有するポリペプチド、特に、α-イオニリデンエタンシンターゼを含む第2セグメントと、を含む酵素、好ましくはMBP、NusA、Trx、又はSETの群から選択されるタグペプチド、並びにこれらをコードする核酸、及び上記核酸を保有し、上記タグ付き酵素を産生する宿主細胞に関する。
【0316】
最後に、本発明は、
a)本発明の宿主細胞であって、
(i)α-イオニリデンエタン、好ましくはE,Z-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)を、好ましくは芳香物質の前駆体である芳香成分として、又はビタミンAの前駆体として生成するための;
(ii)α-イオノン、好ましくは R-α-イオノンを生成するための;
(iii)ビタミンAを生成するための;
(iv)α-イオニリデンエタンをα-イオノンに変換するための;
(v)α-イオニリデンエタンをビタミンAに変換するための;
(vi)テルペン若しくはテルペノイドの異種再構成のための;
(vii)工業製品、好ましくは芳香組成物、香味料若しくは芳香剤、医薬組成物、農業用組成物、動物飼料、人間の栄養製品、化粧品、着色剤(カロテノイド)、若しくはラジカルスカベンジャーを生成するための;
(viii)好ましくは本明細書で定義される宿主細胞、即ち細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞若しくは藍藻細胞、非ヒト動物細胞若しくは非ヒト哺乳動物細胞、又は植物細胞、より好ましくは細菌細胞、又は酵母細胞におけるセスキテルペンを生成するための発酵産生系のための;
宿主細胞と、
b)α-イオニリデンエタンの芳香化学物質又は化合物としての使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0317】
1.本発明の方法による、α-イオニリデンエタン、好ましくはE,Z-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン)及び/又はα-イオノンの生成。
【0318】
2.実施形態1の化合物と、
(i)α-イオニリデンエタン若しくはα-イオノンとは異なる少なくとも1つの更なる芳香化学物質、又は
(ii)少なくとも1つの非芳香化学物質担体、又は
(iii)(i)と(ii)の混合物と、を含む芳香化学物質組成物。
【0319】
3.α-イオニリデンエタン又はα-イオノンとは異なる少なくとも1つの芳香化学物質が、ゲラニルアセテート、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、2-フェノキシエチルイソブチレート、ジヒドロミルセノール、メチルジヒドロジャスモネート、4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[g]ベンゾピラン、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、ベンジルサリチレート、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、シンナミルアルコール、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5-インデニルアセテート及び/又は4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-6-インデニルアセテート、シトロネロール、シトロネリルアセテート、テトラヒドロゲラニオール、バニリン、リナリルアセテート、スチロリルアセテート、オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-アセトナフトン及び/又は2-アセチル-1,2,3,4,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチルナフタレン、ヘキシルサリチレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、α-イオノン、α-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、クマリン、テルピニルアセテート、2-フェニルエチルアルコール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-カルボキシアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、エチレンブラシレート、(E)-及び/又は(Z)-3-メチルシクロペンタデカ-5-エノン、15-ペンタデカ-11-エノリド及び/又は15-ペンタデカ-12-エノリド、15-シクロペンタデカノリド、1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,6,8,8-ヘキサメチル-2-ナフタレニル)エタノン、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、シス-3-ヘキセニルアセテート、トランス-3-ヘキセニルアセテート、トランス-2/シス-6-ノナジエノール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、2,4,4,7-テトラメチルオクタ-6-エン-3-オン、2,6-ジメチル-5-ヘプテン-1-アール、ボルネオール、3-(3-イソプロピルフェニル)ブタナール、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-プロパナール、3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアセテート、2,5,5-トリメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロナフタレン-2-オール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチル2-メチルペンタノエート、エトキシメトキシシクロドデカン、2,4-ジメチル-4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d][1,3]ジオキシン、(2-tert-ブチルシクロヘキシル)アセテート、及び3-[5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]シクロヘキサン-1-オールからなる群から選択される、実施形態2に記載の組成物。
【0320】
4.少なくとも1つの非芳香化学物質担体(ii)が、界面活性剤、オイル成分、酸化防止剤、消臭活性剤、及び溶媒からなる群から選択される、実施形態2又は3に記載の組成物。
【0321】
5.溶媒が、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート及びイソプロピルミリステートからなる群から選択される、実施形態4に記載の組成物。
【0322】
6.少なくとも1つの溶媒が、組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~99.0重量%の量で組成物中に存在する、実施形態5に記載の組成物。
【0323】
7.少なくとも1つの消臭活性剤が、制汗剤、エステラーゼ阻害剤、及び抗菌剤からなる群から選択される、実施形態5に記載の組成物。
【0324】
8.少なくとも1つの界面活性剤が、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性、及び双性イオン性界面活性剤からなる群から選択される、実施形態5に記載の組成物。
【0325】
9.芳香化された即時使用できる組成物である、実施形態2~8のいずれか1つに記載の芳香化学物質組成物。
【0326】
10.芳香化された即時使用できる組成物が、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物、及び作物保護組成物から選択される、実施形態9に記載の芳香化学物質組成物。
【0327】
11.芳香化学物質としての実施形態1に記載の化合物の使用。
【0328】
12.芳香化学物質組成物を調製するための実施形態1に記載の化合物の使用。
【0329】
13.芳香化学物質組成物の芳香特性を改質するための実施形態1に記載の化合物の使用。
【0330】
14.芳香化学物質組成物が、芳香化された即時使用できる組成物である、実施形態11~13に記載の使用。
【0331】
15.芳香化された即時使用できる組成物が、香水組成物、ボディケア組成物、衛生用品、洗浄組成物、繊維製品洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物、及び作物保護組成物から選択される、実施形態14に記載の使用。
【0332】
配列
配列番号1~17及び19は、表1で示されるα-イオニリデンエタンシンターゼのアミノ酸配列に対応する。
【0333】
配列番号18は、配列番号1のアミノ酸配列をコードするロドバクター属(Rhodobacter)コドン最適化DNAに対応する。
【0334】
配列番号20~33は、本発明者らによって発明的な方法で作製された合成α-イオニリデンエタンシンターゼに対応する。
【図面の簡単な説明】
【0335】
図1】E,Z-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン;E,Z-IE,1)は、真菌のアブシシン酸(2)生合成の最初の環状中間体である。これは、α-イオニリデンエタンシンターゼ(IEシンターゼ)により、ファルネシルピロホスフェート(3)から形成される。
図2】文献には、以下の実施例で使用される酵素とは反対に、ファルネシルジホスフェートを環化してシクロヘキセンペンタジエノール誘導体4にするα-イオニリデンエタンシンターゼを主張する報告がある;(Okamoto et al.,Phytochemistry,Volume 27,Issue 11,1988,Pages 3465-3469を参照されたい)。
図3A】DASGIP発酵槽(A)及び振盪フラスコ培養(B)からのロドバクター(Rhodobacter)ROB034からのt-BME抽出物のGCトレースをそれぞれ示す。保持時間6.4分のピークは、α-イオノンとして同定された。
図3B】DASGIP発酵槽(A)及び振盪フラスコ培養(B)からのロドバクター(Rhodobacter)ROB034からのt-BME抽出物のGCトレースをそれぞれ示す。保持時間6.4分のピークは、α-イオノンとして同定された。
図4】α-イオノン(4)=(E)-4-((2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オンを示す。
図5】R-α-イオノン(R-4)が、おそらくは、α-イオニリデンエタン(1)の酸化開裂により形成されることを示す。
図6】α-イオニリデンエタンをそれぞれのアルコールを介して(2E,4E)-3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエン-1-オールに変換し、続いてウィッティヒ塩形成及びC5-アルデヒドとのウィッティヒ反応を包含する、ビタミンAを調製するための方法を示す。
図7-1】配列番号1のα-イオニリデンエタンシンターゼ及びその他のα-イオニリデンエタンシンターゼのアライメントを示す。保存アミノ酸は、黒の背景に白のフォントで表示される。
図7-2】配列番号1のα-イオニリデンエタンシンターゼ及びその他のα-イオニリデンエタンシンターゼのアライメントを示す。保存アミノ酸は、黒の背景に白のフォントで表示される。
【実施例
【0336】
ここで、次の実施例により本発明を例示するが、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。
【0337】
概要
E,Z-α-イオニリデンエタン(1,5,5-トリメチル-6-[(1E,3Z)-3-メチル-ペンタ-1,3-ジエニル]シクロヘキセン;E,Z-IE,1)は、真菌のアブシシン酸(2)生合成の最初の環状中間体である。これは、特定のセスキテルペンシンターゼによってファルネシルピロホスフェート(3)から形成される;図1を参照されたい。
【0338】
ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)由来のα-イオニリデンエタンシンターゼ(IES)(配列番号1)は、ビタミンAの潜在的な前駆体として1の生成を評価するために、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)でクローン化及び発現させることに成功した。
【0339】
振盪フラスコからDASGIP実験室発酵槽(約1リットルの作業容積)まで1の生産量を拡大した後、発酵ブロスのドデカン相で新規化合物、すなわちα-イオノンが検出された。本化合物の単離及び同定を以下にまとめる。
【0340】
実施例1:ロドバクター(Rhodobacter)におけるボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)由来のα-イオニリデンエタンシンターゼ(IES)の遺伝子発現
1.1 産生系の構成
α-イオニリデンエタンシンターゼのDNA配列は、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)B05.10(ASM83294v1)の転写産物Bcin08g03880.1に由来する。それぞれの遺伝子(Bcin08g03880)は、染色体8上の1,491,127~1,494,679に位置する。データはEnsembl Fungiがリリースしているデータベース(Ensembl Genomes 2020-enabling non-vertebrate genomic research, Nucleic Acids Research,2019,[doi.org/10.1093/nar/gkz890])から抽出され、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)に適合したコドン使用法を有するα-イオニリデンエタンシンターゼ遺伝子のカスタム合成の鋳型として使用された(BioCat,Heidelberg)(配列番号18)。α-イオニリデンエタンシンターゼ遺伝子は、国際公開第2018160066号パンフレットで公知のプラスミドp-m-SPppa-MBP-CiCaSSy-mpmii altのサンタレンシンターゼ遺伝子の位置にクローン化された。新たに作製したプラスミドをpROB018と命名した。鋳型プラスミドにおけるサンタレンシンターゼのように、α-イオニリデンエタンシンターゼタンパク質は、E.コリ(E.coli)由来のマルトース結合タンパク質へのN末端融合体として生成される。更に、プラスミドには、最終的にα-イオニリデンエタンシンターゼの基質としてファルネシルジホスフェートを送達するメバロネート経路の全ての遺伝子が含まれる。これに加えて、ロドバクター(Rhodobacter)には、その染色体上のファルネシルジホスフェートの補足供給源として、デオキシキシルロースホスフェート(DXP)経路も含まれる。
【0341】
プラスミドのロドバクター(Rhodobacter)への転写は、標準的な手順を使用して行われた(例えば、米国特許第260709B2号明細書、国際公開第2014014339号パンフレット、及び同第2011074954号パンフレットを参照されたい)。このプラスミドをE.コリ(E.coli)17に形質転換し、次に結合によりロドバクター(Rhodobacter)ROB002に転写した。リンゴ酸培地で培養するとE.コリ(E.coli)による汚染が排除される。E.コリ(E.coli)による汚染がないことは、当該技術分野で公知のE.コリ(E.coli)-lacZ特異的オリゴヌクレオチドを用いたPCR増幅によって示された。
【0342】
1.2 ROB034の培養
プラスミドpROB018上にボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)由来のα-イオニリデンエタンシンターゼ遺伝子を有するロドバクター(Rhodobacter)ROB034を、国際公開第2018160066号パンフレットに記載されているような公知の方法に従って、DASGIP系で培養した。1リットルのバッフルなし三角フラスコ中の前培養250mL mROB002培地に、1.5mLの低温ストック培養物を接種した。30℃で26時間インキュベーション(250rpm、5cm振幅)した後、69mLの前培養培地を使用して主培養物に接種した。主培養は、10%(w/w)ドデカンを加えた0.6LのmROB001培地で開始し、標準手順に従って合計646mLの供給溶液を供給した。141時間後、発酵を終了させた。
【0343】
実施例2:テルペンの単離
2.1 ワークアップ
1225gの発酵ブロスを800gのt-BMEで30分間撹拌することにより抽出した。明らかな相分離が観察されなかったため、25mLのDMSO及び100gのNaClを添加した。5000×gで15分間遠心分離することにより、相分離が更に改善された。有機層(653g)をデカントし、水層(1301g)を廃棄した。透明な有機層をNaSOで乾燥させ、回転蒸発により濃縮した。
【0344】
2.2 α-イオニリデンエタンの精製
89.6g粗反応抽出物(35GC-a%IE、2.6GC-a%α-イオノン、57GC-a%ドデカン)から、ドデカンを蒸留により除去した(蒸留ブリッジを備えた250mL蒸留装置):Tbath=最大128℃、Tin=92~103℃、Tdist=89~94℃、p=7~10mbar。ドデカンの除去によって得られたサンプを、「Pilot-Dist Spaltrohrkolonne」(M311 L4-06)を使用して2mbar及びThead=80℃で更に蒸留した。蒸留画分の更なる精製をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル)により実施した。
【0345】
2.3 α-イオノンの精製
ドデカンは、49.8gの粗反応混合物(5.2GC-a%α-イオノン、1.7GC-a%α-イオニリデンエタン、81GC-a%ドデカン)から「スプリットチューブ蒸留カラム」(30mbar及びThead=106℃)を使用して蒸留により除去した;α-イオニリデンエタン並びにα-イオノンは、2mbar及びThead=約81℃ですでに蒸発した。)
【0346】
2.4 分析
GC分析
発酵ブロスからのGC-試料の調製
NaClを試料に添加して、相分離を改善する。全ての塩が溶解するまで、試料をボルテックスシェーカーで混合する。固形物(すなわち、バイオマス)を遠心分離(20分、15℃、4500×g)によって除去し、上部液体のドデカン層を除去する。100μLのドデカンを900μLのアセトン内部標準溶液と混合し、試料をGC(方法:GC107B_0672_b-Bisabolene,A030_GC107B_0672 lsobionics_qual、カラム:Optima35 MS、30m*0.25mm*0.25μm)により、又はRCS/ON-M311(方法:GC610、CP-SIL 50m;0.32mm ID;1.2μm FD;80℃-8分;-250℃-34分;T注入=250℃、T検出=280℃)により分析した。
【0347】
GC-MS及びNMR
ブロスの分析の場合、GC-MSyobNMRを行った。
【0348】
偏光分析
比旋光度は、ナトリウム蒸気ランプ及び1dm石英キュベットを備えたJasco P2000偏光計で測定した。試料をクロロホルム中に溶解させ、室温で測定した。
【0349】
2.5 結果
2.5.1 α-イオノンの同定
B.シネレア(B.cinerea)α-イオニリデンエタンシンターゼを発現する組換えロドバクター(Rhodobacter)を DASGIP発酵槽で増殖させると、発酵ブロスのガスクロマトグラムで追加の化合物の形成が観察された。この物質は、振盪フラスコ培養で株を増殖させる場合にはほとんど検出されない。
【0350】
【表2】
【0351】
新規ピークをGC-MSで分析したところ、質量192g/molを示した。質量スペクトルの解釈により、化合物がα-イオノン(4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オン)又はその異性体(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イリデン)ブタン-2-オン)であることが示唆された。真正のα-イオノンを用いたGC分析では、新規化合物の同一の保持時間が示された。
【0352】
図2は、α-イオノン(4)=(E)-4-((2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブト-3-エン-2-オンの式を示す。
【0353】
2.5.2 発酵ブロスからのテルペンの精製
分子の構造を確認し、更に特性を評価するために、テルペンを発酵ブロスから単離した。
【0354】
α-イオニリデンエタン
tBME抽出による全発酵ブロスのワークアップにより、89.6gの透明な暗褐色の溶液が得られた。粗反応混合物を、蒸留によって精製した。
【0355】
得られた蒸留サンプ(32g)は、70GC-a%のα-イオニリデンエタン及び7GC-a%のドデカンを含んでいた。α-イオニリデンエタンの損失(留出物1及び2で12及び28GC-a%)が、採取された2つの留出物内で発生した。GC-a%に基づくと、約30%のα-イオニリデンエタンの損失が考慮され、これは、蒸留条件及び/又は発酵中の別の第2段階のいずれかによって最適化する必要がある:共溶媒(すなわちドデカン)よりもテルペン生成物を蒸発させることが好ましいため、ドデカンではなく高沸点溶媒を共溶媒として使用する必要がある。
【0356】
DMSOを最初の抽出工程で添加して、相分離を促進した。
【0357】
続く「Pilot-Dist」サンプ蒸留により、純度が87~89GC-a%のα-イオニリデンエタンが合計7.5g(6画分)得られた。主要な副産物はα-イオノン(8~9GC-a%)であった。
【0358】
以下のα-イオニリデンエタン試料は、溶離液としてシクロヘキサン:酢酸エチルを使用したカラムクロマトグラフィーを使用した最終精製工程によって得られた。
【0359】
【表3】
【0360】
α-イオノン
49.8gの粗反応抽出物を蒸留すると、6.8gのサンプ(55.4GC-a%のα-イオノン)が得られた。カラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル)による精製の後。画分BOH-L-42Fr.36~42を2回目のカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル)で更に精製して、BOH-L-47Fr.34~42を得た。同様に、BOH-L-52Fr.42~56を別の発酵操作から精製した。
【0361】
以下のα-イオノン画分が得られた:
【0362】
【表4】
【0363】
本研究では、合計2つの精製実験が実施された:tBMEを除去した後、続く工程で蒸留により粗発酵生成物からドデカンを除去し、カラムクロマトグラフィーを適用して収率を求めた。
a)32g蒸留サンプからの純度97GC-a%0.09GC-a%α-イオノンの6.3gのα-イオニリデンエタンサンプ、並びに
b)6.8gのサンプからの純度98GC-a%(異なる副生成物)で単離できた0.82gのα-イオノン。
【0364】
13C-NMRにより以下の構造が確認された:
【0365】
【化1】
【0366】
2.5.3単離されたテルペンの立体化学
また、発酵ブロスから単離されたα-イオノンは光学的にほぼ純粋であることがわかる:この物質はキラルGC上で単一のピークのみを示し、ラセミ標準からの2つのピークのうちの1つと同じ保持時間であった。発酵ブロスから単離されたα-イオノンは、更に旋光法で分析した結果、比旋光度は+388°[α] 20(c0.75、CHCl)であった。この値は、R-エナンチオマーの文献データとかなり一致している。同様に、α-イオニリデンエタンは、比旋光度が+441°[α](c0.762、CHCl)であった。
【0367】
2.5.4 嗅覚ノート
嗅覚評価:
実施例2.5.2で得られたα-イオニリデンエタンのトリエチルシトレート中1重量%溶液を調製し、新たに浸した吸取紙を使用して室温約20℃で専門の調香師4人のパネルによって評価した。嗅覚ノートは1(非常に弱い)から9(強い)までランク付けされた。
【0368】
【表5】
【0369】
有利な香水成分
α-イオニリデンエタン又はα-イオノンを2つの表に従って香水組成物で形成する;化合物Aは、α-イオニリデンエタン又はα-イオノンであると理解されるべきである。
【0370】
【表6】
【0371】
【表7】
【0372】
表の嗅覚の例:嗅覚評価の嗅覚ノート、並びに表:芳香剤組成物1A及び1Bに従う芳香剤組成物、並びに表:芳香剤組成物2A及び2Bに従う芳香剤組成物、即ち1A、1B、2A、2Bは、以下に挙げる様々な組成物に含まれ得る:
・デオポンプスプレー(Deo pump spray)
・クリーンヘアコンディショナー
・フェイスウォッシュジェル
・フォームバス濃縮液
・ヘアジェル
・セルフフォーミング(Self-foaming)ボディウォッシュ
・スプレー可能サンケアエマルジョン
・スプレー可能サンプロテクションエマルジョン
・エモリエントフェイシャルジェル
・2相オイルフォームバス
・シャンプー
・シャワーバス
・ハイドロアルコールAP/デオポンプスプレー(AP/Deo pump spray)
・エアゾール
・水性/アルコールAP/デオロールオン(AP/Deo roll-on)
・スタイリングジェルタイプ「アウトオブベッド(Out of Bed)」
・シェービングフォーム
・敏感肌用ベビーシャンプー
・敏感肌用ボディウォッシュ
・敏感頭皮用グロスエンハンシングシャンプー(Gloss Enhancing Shampoo)
・デオスティック(Deo Stick)
・ベビーワイプ
・アフターシェーブバーム
・フェイスジェル
・フェイスデイケアクリーム
・フェイスクレンザー
・ボディローション
・サンケアSPF50+、スプレー可能ローション
・ハンドディッシュクリーナー、レギュラー
・ハンドディッシュクリーナー、濃縮液
・サニタリー用洗剤、濃縮液
・多目的洗浄剤
・抗菌柔軟剤
・洗剤組成物
・粉末洗剤組成物
・液体洗剤組成物
【0373】
当業者は、上述の製品における様々な一般的な配合に精通しているであろう。
【0374】
香油組成物1A、1B、2A、及び2Bは、例えば、IP.com番号:IPCOM000258614D、題名New Arroma Chemicals、6~46ページ、表1~表D13に開示されているような特定の配合にて配合することができ、この場合、「芳香剤組成物1A」は、同一量の香油組成物1A、1B、2A、又は2Bによって置き換えられる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
【配列表】
2024528957000001.xml
【国際調査報告】