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特表2024-529296吸水性導電性組成物、ならびに侵食および/または腐食を監視するためのセンサーとしてのその使用
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  • 特表-吸水性導電性組成物、ならびに侵食および/または腐食を監視するためのセンサーとしてのその使用 図1a
  • 特表-吸水性導電性組成物、ならびに侵食および/または腐食を監視するためのセンサーとしてのその使用 図1b
  • 特表-吸水性導電性組成物、ならびに侵食および/または腐食を監視するためのセンサーとしてのその使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】吸水性導電性組成物、ならびに侵食および/または腐食を監視するためのセンサーとしてのその使用
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/24 20060101AFI20240730BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240730BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20240730BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240730BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20240730BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240730BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 17/04 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 19/10 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01B1/24 A
C09D201/00
C09D5/24
C09D7/61
C23C26/00 A
H01B1/22 A
B05D5/12 B
G01N17/04
G01N19/10 C
G01N27/12 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500111
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2022066279
(87)【国際公開番号】W WO2023280538
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202141030113
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ターテ,ディーパク
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ジャイェシュ ピー
【テーマコード(参考)】
2G046
2G050
4D075
4J038
4K044
5G301
【Fターム(参考)】
2G046AA09
2G046BA09
2G046FA01
2G046FC07
2G046FC08
2G050AA04
2G050BA03
2G050EB02
4D075CA22
4D075CA37
4D075CA50
4D075DC16
4D075EA06
4D075EB07
4D075EB15
4D075EB19
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EC01
4D075EC03
4D075EC08
4D075EC13
4D075EC54
4J038CG031
4J038CG032
4J038CK031
4J038CK032
4J038HA032
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA12
4J038NA06
4J038NA20
4K044AB10
4K044BA06
4K044BA08
4K044BA10
4K044BA18
4K044BA21
4K044BB11
4K044CA53
5G301DA03
5G301DA04
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA07
5G301DA15
5G301DA18
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD10
5G301DE01
(57)【要約】
本発明は、a)水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂;b)導電性フィラー;およびc)溶媒を含む吸水性導電性組成物に関する。本発明による吸水性導電性組成物は浸食および/または腐食監視用のセンサーとして使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂;
b)導電性フィラー;および
c)溶媒
を含む、吸水性導電性組成物。
【請求項2】
前記水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、アラビアガム、デンプン(デキストリン)、カゼイン(リンタンパク質)およびそれらの混合物からなる群から選択される、より好ましくはポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の吸水性導電性組成物。
【請求項3】
前記水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂は、組成物の総重量の5~30重量%、好ましくは7.5~25重量%、より好ましくは8~22重量%で存在する、請求項1または2に記載の吸水性導電性組成物。
【請求項4】
前記導電性フィラーは、カーボン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、銀、ニッケル、銅、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、錫合金、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、銀被覆ポリマー、銀被覆アルミニウム、銀被覆ガラス、銀被覆カーボン、銀被覆窒化ホウ素、銀被覆酸化アルミニウム、銀被覆水酸化アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の吸水性導電性組成物。
【請求項5】
前記導電性フィラーは、組成物の総重量の10~35重量%、好ましくは12~33重量%、より好ましくは15~30重量%存在する、請求項1~4のいずれかに記載の吸水性導電性組成物。
【請求項6】
前記溶媒は235℃未満の沸点を有し、好ましくは前記溶媒は、n-ブタノール、ブチルカルビトール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブおよびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはn-ブタノール、ブチルカルビトール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の吸水性導電性組成物。
【請求項7】
前記溶媒は、組成物の総重量の10~70重量%、好ましくは20~65重量%、より好ましくは30~60重量%存在する、請求項1~6のいずれかに記載の吸水性導電性組成物。
【請求項8】
さらに樹脂を含む、請求項1~7のいずれかに記載の吸水性導電性組成物。
【請求項9】
前記樹脂は、ビニル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、前記樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の吸水性導電性組成物。
【請求項10】
前記樹脂は、組成物の総重量の5~25重量%、好ましくは7.5~20重量%、より好ましくは9~15重量%存在する、請求項8または9に記載の吸水性導電性組成物。
【請求項11】
消泡剤をさらに含む、請求項1~10のいずれかに記載の吸水性導電性組成物。
【請求項12】
前記消泡剤は、組成物の総重量の0.1~1重量%、好ましくは0.1~0.7重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%存在する、請求項11に記載の吸水性導電性組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の吸水性導電性組成物の硬化物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の吸水性導電性組成物、または請求項13に記載の硬化物のコーティング材料としての使用。
【請求項15】
侵食および/または腐食を監視するためのセンサーとしての、請求項1~12のいずれかに記載の吸水性導電性組成物または請求項13に記載の硬化物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂を含む吸水性導電性組成物、ならびに浸食および/または腐食監視用のセンサーとしての前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
保護コーティングは、ポンプ、熱交換器、貯蔵タンク、パイプ、シュートなどのプラント資産を化学物質、摩耗、および環境腐食などの過酷な環境から保護するために使用される。保護コーティングにより資産の寿命は数年延長されるが、過酷な作業条件(温度、湿度、化学エッチング、および磨耗)下で連続運転すると、時間の経過とともに亀裂、浸食、親基材からの剥離が始まり、性能も低下する。コーティングが剥がれ始めると、親基材は過酷な作業環境に直接さらされ、脆弱になる。基材は腐食および/または浸食を開始し肉厚を失い、これにより、資産の運用効率が低下したり、計画外のダウンタイムを引き起こす機器の故障につながり得る。計画外のダウンタイムは生産性の損失につながる。機器の修理が遅れると、突然の故障のリスクが高まり、作業者の安全も脅かされる。
【0003】
場合により、コーティングの侵食が目に見えて検出しやすい場合もあるが、常にそうとは限らない。さらに、検出はコーティング材料が使用されている場所に依存し、目視では検出できない場合もある。生産性と効率を高めるための流量、温度、圧力などの動作条件は、多くの加工産業の機器で監視されている。しかし、タンク、パイプ、プロペラなどの内部のコーティングを継続的に監視することは不可能であり、コーティングの侵食および/または腐食の挙動とタイミングは不明である。現在の方法は工場管理者の経験と履歴データに基づいているが、予知保全には基づいていない。現在の慣例によれば、多くの業界では毎年工場が停止している間に資産の状態が監視されており、その時点で一部の資産はすでに損傷しており、高額な費用がかかる交換が必要となる。予知保全が実施されていれば、これを回避できる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、高い生産性を維持しながら資産寿命を延ばすために、早期発見と適切でタイムリーな測定によって故障を防止できるように、コーティングの性能を感知および監視するための感知材料を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、a)水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂;b)導電性フィラー;およびc)溶媒を含む吸水性導電性組成物に関する。
【0006】
本発明は、本発明による吸水性導電性組成物の硬化物にも関する。
【0007】
本発明は、浸食および/または腐食を監視するためのセンサーとしての、本発明による吸水性導電性組成物または硬化物の使用を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は基材およびコーティングされた基材を示す(図1aおよび1b)。
図2図2は試験用基材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
以下の文章では、本発明がより詳細に説明される。そのように説明された各態様は、特に反対のことが明確に示されない限り、他の任意の態様と組み合わせてよい。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の任意の特徴と組み合わせてよい。
【0010】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈により別段の指示がない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0011】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数および複数の両方の指示対象を含む。
【0012】
本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「から構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」、または「含む(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、非限定的なメンバー、要素、または方法ステップを排除しない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語は、特定されていない要素、成分、メンバー、または方法ステップを除外する。
【0014】
数値終点の記載には、記載された終点だけでなく、それぞれの範囲内に包含されるすべての数値および分数が含まれる。
【0015】
本明細書で言及されるすべてのパーセンテージ、部、割合などは、特に示されない限り、重量に基づいている。
【0016】
量、濃度、またはその他の値やパラメータが範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値と好ましい下限値の形で表される場合、得られる範囲が文脈中に明確に言及されているかどうかを考慮することなく、任意の上限または好ましい値と、任意の下限または好ましい値とを組み合わせて得られる任意の範囲が具体的に開示されると理解すべきである。
【0017】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
他に定義しない限り、技術用語および科学用語を含む本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。さらなる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれる。
【0019】
本発明は、水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂を含む吸水性導電性組成物に関する。本発明による吸水性導電性組成物は、侵食および/または腐食を監視するためのセンサーとして使用できる。
【0020】
出願人は、吸水性導電性コーティング組成物がコーティング(基材の表面に適用された保護トップ層)の浸食を監視するためのセンサーとして使用できることを発見した。
【0021】
本発明は、a)水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂;b)導電性フィラー;およびc)溶媒を含む吸水性導電性組成物に関する。
【0022】
本発明による吸水性導電性組成物は水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂を含む。水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂は水溶性であるか、水の存在下で膨潤するか、または水を吸収する任意の樹脂であり得る。好ましくは、前記水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、アラビアガム、デンプン(デキストリン)、カゼイン(リンタンパク質)およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)およびメチルセルロースは、水溶性に優れているため好ましい。
【0024】
本発明での使用に適した市販の水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂としては、インド、Prime Specialities製のポリアクリル酸ナトリウム;Ashland Specialty Industries製のポリビニルピロリドン(PVP);およびDOW Chemical Company製のメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂は、本発明による吸水性導電性組成物中に、組成物の総重量の5~30重量%、好ましくは7.5~25重量%、より好ましくは8~22%重量の量で存在してよい。
【0026】
出願人は、30%を超える量は適用中に安定性の問題を引き起こし得るため、これらの量が好ましいことを発見した。5%未満の量では、望ましい水検出効果が得られない可能性がある。さらに、水溶性および/または水膨潤性および/または吸水性樹脂の5~30%の範囲が、センサーとしてより良好な応答を提供する最適であることが判明した。
【0027】
本発明による吸水性導電性組成物は、導電性フィラーを含有する。理論的には、あらゆる導電性フィラーを使用してよい。好ましくは、前記導電性フィラーは、カーボン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、銀、ニッケル、銅、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、錫合金、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、銀被覆ポリマー、銀被覆アルミニウム、銀被覆ガラス、銀被覆カーボン、銀被覆窒化ホウ素、銀被覆酸化アルミニウム、銀被覆水酸化アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
一実施形態では、前記導電性フィラーはカーボンブラックである。
【0029】
一実施形態では、前記導電性フィラーはカーボンナノチューブである。
【0030】
一実施形態では、前記導電性フィラーはグラファイトである。
【0031】
さらに別の実施形態では、前記導電性フィラーはカーボンブラックとグラファイトとの混合物である。
【0032】
さらに別の実施形態では、前記導電性フィラーはカーボンブラック、グラファイト、およびカーボンナノチューブの混合物である。
【0033】
本発明での使用に適した市販の導電性フィラーには、Imerys Graphite & Carbon製のTimrex SGF 15およびCabot Corporation製のVulcan PF、Cabot Corporation製のVulcan XC 72が含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
導電性フィラーは、本発明による吸水性導電性組成物中に、組成物の総重量の10~35重量%、好ましくは12~33重量%、より好ましくは15~30重量%の量で存在してよい。
【0035】
出願人は、35%を超える量は、適用中にレオロジーの問題を引き起こす可能性があり、10%未満の量では所望の導電性が提供されない可能性があるため、これらの量が好ましいことを発見した。
【0036】
導電性フィラーがカーボンブラック、カーボンナノチューブ、またはグラファイトの場合、その量はフィラーの吸油量にも依存し得る。吸油量はカーボンブラック、カーボンナノチューブ、およびグラファイトにより異なり、導電性フィラーの粒径および比表面積に依存する。例えば、カーボンナノチューブは粒子径が小さい(ナノスケール)ため、吸油量が大きい。一般的な指針として、吸油量が大きいほど、必要となる粒子量は少なくなる。吸油量はASTM-D281に準拠して測定される。
【0037】
本発明による吸水性導電性組成物は溶媒を含む。本発明での使用に適した溶媒は、沸点が235℃未満である。好ましくは、前記溶媒は、n-ブタノール、ブチルカルビトール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブおよびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、n-ブタノール、ブチルカルビトール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
好ましい溶媒であるn-ブタノール、ブチルカルビトール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテートは、極性溶媒であり、組成物の加工中に作用するため望ましい。さらに、これらの好ましい溶媒は組成物中で融合助剤としても作用する。
【0039】
本発明での使用に適した市販の溶媒には、Sigma Aldrich製のn-ブタノールが含まれるがこれに限定されない。
【0040】
溶媒は、本発明による吸水性導電性組成物中に、組成物の総重量の10~70重量%、好ましくは20~65重量、より好ましくは30~60重量%の量で存在してよい。
【0041】
この溶媒量範囲は、基材上で良好な適用性(組成物)を提供するため好ましい。
【0042】
本発明による吸水性導電性組成物は、樹脂をさらに含んでよい。本発明での使用に適した樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂系組成物は、吸水性ポリマーに水を吸収させ、組成物の電気抵抗を変化させる。
【0043】
非常に好ましい実施形態では、本発明による前記吸水性導電性組成物は樹脂を含む。
【0044】
好ましくは、前記樹脂は、ビニル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは前記樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルアルコール樹脂およびポリビニルブチラール樹脂は、非酸化性であり、所望の靭性および耐久性を提供しながら永久に柔軟であるため、好ましい樹脂である。さらに、それらは、色、匂い、および味が無いことも特徴である。希アルカリ、鉱酸、アルコール、グリース、オイル、および脂肪族炭化水素は、室温または環境温度でポリマーに悪影響を及ぼし得ない。
【0046】
本発明での使用に適した市販の樹脂としては、Dow Chemical Company製のUCAR Vaghが挙げられるが、これに限定されない。
【0047】
樹脂は、本発明による吸水性導電性組成物中に、組成物の総重量の5~25重量%、好ましくは7.5~20重量%、より好ましくは9~15重量%の量で存在してよい。
【0048】
出願人は、25%を超える量は導電率の低下につながり得るため、これらの量が好ましいことを発見した。さらに、量が多すぎると、適用中にレオロジーの問題が発生し得る。一方、5%未満の量では、基材および/またはベース層(コート)および/またはトップ層(コート)に対して所望の接着力が得られない可能性がある。
【0049】
本発明による吸水性導電性組成物は、消泡剤をさらに含んでよい。本発明による組成物の調製中に、分散プロセスにおける泡立ちを低減するために消泡剤を組成物に添加してよい。
【0050】
任意の市販の消泡剤を本発明による組成物に使用できる。本発明での使用に適した消泡剤は、例えばシリコーンを含まないポリマー空気放出剤である。
【0051】
本発明での使用に適した市販の消泡剤としては、BYK製のBYK-A 505が挙げられるが、これに限定されない。
【0052】
消泡剤は、本発明による吸水性導電性組成物中に、組成物の総重量の0.1~1重量%、好ましくは0.1~0.7重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%の量で存在してよい。
【0053】
出願人は、1%より多い量は表面湿潤性などのコーティング性能に悪影響を与え得るため、これらの量が好ましいことを発見した。一方、0.1%未満の量では、望ましい消泡効果が得られない可能性がある。
【0054】
本発明は、本発明による吸水性導電性組成物の硬化物にも関する。
【0055】
本発明は、本発明による吸水性導電性組成物または本発明による硬化物のコーティング材料としての使用に関する。
【0056】
本発明は、本発明による吸水性導電性組成物または本発明による硬化物の、浸食および/または腐食を監視するためのセンサーとしての使用を包含する。
【0057】
本発明による侵食および/または腐食を監視するためのセンサーは、例えば、予測監視が資産寿命の延長に役立つ用途に使用できる。本発明による侵食および/または腐食を監視するためのセンサーは、例えば製鉄所、電力および鉱業のスラリーポンプにおいて有益であり得る。これらのスラリーポンプは、湿った鉱石スラリーを処理するためにさまざまな部品に輸送するために広く使用されている。これらは深刻な浸食および腐食環境にさらされ、頻繁な交換などが必要な重要な資産である。
【実施例
【0058】
特に明記しない限り、すべての重量は重量%である。
【0059】
電気抵抗測定用のサンプルは次のように準備した。
【0060】
複合テストビークル(125×12.7×3mm)図1)ワイヤ接続用の厚さ50μmの銅リード線が付いている。これらの銅リードは、コーティングされた試験片の抵抗を測定するためのワイヤを掛けるために使用された。本発明による組成物をこの試験片上に適用し、続いて試験片を室温で24時間硬化させ、100℃で30分間、後硬化させた。電気抵抗は、ASTM D2739-97に従って測定した。
【0061】
水滴試験は次のように実施した。試験のためにパネルを本発明による導電性組成物でコーティングした。前記組成物を基材の表面に適用し、100℃のオーブンで30分間乾燥させた。図1は、基材とコーティングされた基材を示す(図1aおよび1b)。水滴試験は、コーティングされた基材の中心に水を2~3滴加えることによって実施した。水滴を加える前後で電気抵抗を測定した。基材の電気抵抗は、Keysight DAQ970 A - Data Acquisition Systemを使用して測定した。テスト基材を図2に示す。
【0062】
実施例では次の化学物質が使用される。
Imerys Graphite & Carbon製のTimrex SGF 15
Cabot Corporation製のVulcan PFおよびVulcan XC 72
Lyondell Chemical Company製のArcosolv PM Acetate
Dow Chemical Company製のブチルカルビトール
Dow Chemical Company製のUCAR Wagh
Ashland Specialities Ingredients製のポリビニルピロリドン(PVP)
DOW Chemical Company製のメチルセルロース
Sigma Aldrich製のn-ブタノール
インド、Prime Specialities製のポリアクリル酸ナトリウム
【0063】
例1
以下の表1は、吸水性ポリマーとしてのポリアクリル酸ナトリウムの存在(実施例1)およびそれを含まない組成物(比較例1a)を例示する。組成物を高速ミキサー中、2000rpmで30分間調製した。
【0064】
【表1】
【0065】
基材を実施例1および1aの組成物でコーティングし、水滴試験を行うために使用した。コーティングされた基材を図1に示す。テストビークル(図2に示す)を使用して、水にさらした場合としない場合の電気抵抗を測定した。水滴試験の結果を以下の表2に示す。実施例1は水に対する良好な反応を示し、電気抵抗は30分で62.92%増加した。一方、比較例1aは5分後に電気抵抗の変化を示さなかった。
【0066】
【表2】
【0067】
例2
熱可塑性バインダー中のPVPまたはMethocel VLVに基づく吸水性ポリマーを含む組成物を以下の表3に示す。10%および20%のPVPおよびMethuen VLVを含む組成物を、高速ミキサー中、2000rpmで30分間調製した。
【0068】
【表3】
【0069】
導電性コーティング組成物の層を基材上に適用し、100℃のオーブン内に30分間保持した。コーティングされた基材を図1に示す。テストビークル(図2に示す)を使用して、水にさらした場合としない場合の電気抵抗を測定した。10および20%のPVPを含む組成物(実施例3および4)は、10分でそれぞれ381%および528%の電気抵抗の変化を例示した。さらに、10および20%のMethocel VLVを含む組成物(実施例5および6)は、10分でそれぞれ25.86%および133%の電気抵抗の変化を例示した。PVPを唯一のバインダーとして使用したPVPに基づくコーティング組成物(実施例2)は、10分で27054%の電気抵抗の変化を例示した。結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
図1a
図1b
図2
【国際調査報告】