(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】サイトカイン放出症候群を予測する多変量モデル
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N33/68
A61P35/00
A61K35/17
A61K39/395 T
A61K45/00
G16H50/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501702
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2022036557
(87)【国際公開番号】W WO2023287663
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン, エミリー ピッチョーネ
(72)【発明者】
【氏名】マッコール, ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン, ティナ ゲリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ベロウソフ, アントン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4C087
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA11
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB02
2G045DA36
2G045FB03
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZB26
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087NA05
4C087ZB26
5L099AA15
(57)【要約】
治療を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測する技術が提供される。リスクは、(例えば)ベースライン特性のセット、リスクスコア生成モデル、オントリートメントサイトカインレベルおよび/または治療投与量に基づいて予測され得る。リスクは、入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かについての推奨に対応する出力を生成するために使用され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんと診断された対象のベースライン特性のセットを特定することであって、ベースライン特性のセットが、治療開始前の1つまたは複数のベースライン時点に関し、ベースライン特性のセットのそれぞれが、
がんの病期、
人口統計学的属性、
1つもしくは複数の腫瘍のサイズ、
白血球数、および/または
乳酸デヒドロゲナーゼレベル
を特徴付ける、対象のベースライン特性のセットを特定することと、
リスクスコア生成モデルを使用してベースライン特性のセットを処理することによって、サイトカイン放出症候群のリスクスコアの数値を生成することと、
サイトカイン放出症候群のリスクスコアの数値に基づいて、治療を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測することと、
治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かの推奨に対応する予測リスクに基づいて、結果を決定することと、
結果を出力することと
を含む方法。
【請求項2】
ベースライン特性のセットのうちの少なくとも1つが、がんの病期を特徴付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベースライン特性のセットのうちの少なくとも1つが、乳酸デヒドロゲナーゼレベルを特徴付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ベースライン特性のセットのうちの少なくとも1つが、白血球数を特徴付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ベースライン特性のセットのうちの少なくとも1つが、1つまたは複数の腫瘍のサイズを特徴付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ベースライン特性のセットのうちの少なくとも1つが、人口統計学的属性を特徴付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
予測リスクに基づいて結果を決定することをさらに含み、結果が、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かの推奨に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
結果が、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応し、方法が、
対象がサイトカイン放出症候群を経験する高いリスクがあることを結果が示す場合、治療が完了した後に少なくとも24時間にわたって医療施設で入院患者モニタリングにより対象をモニターすることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
サイトカインのオントリートメントレベルを特定することであって、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了の1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのオントリートメントレベルを特定することと、
サイトカインのオントリートメントレベル、および治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料中のサイトカインのレベルを示すサイトカインのベースラインレベルに基づいて、サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定することと
をさらに含み、
予測リスクがオントリートメントサイトカイン倍率変化にさらに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
治療の少なくとも一部の投与量を特定することをさらに含み、予測リスクが投与量にさらに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
リスクスコア生成が回帰モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
治療がT細胞免疫療法を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
治療がグロフィタマブまたはモスネツズマブを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
サイトカインのオントリートメントレベルを特定することであって、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのオントリートメントレベルを特定することと、
サイトカインのオントリートメントレベル、および治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料中のサイトカインのレベルを示すサイトカインのベースラインレベルに基づいて、サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定することと、
治療の少なくとも一部の投与量を特定することと、
オントリートメントサイトカイン倍率変化および投与量に基づいて、治療の少なくとも一部の投与量を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測することと、
治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かの推奨に対応する予測リスクに基づいて、結果を決定することと、
結果を出力することと
を含む方法。
【請求項15】
対象のベースライン特性のセットを特定することであって、ベースライン特性のセットが、治療開始前の1つまたは複数のベースライン時点に関し、ベースライン特性のセットのそれぞれが、
腫瘍負荷、
がんの病期、
腫瘍拡散、
1つもしくは複数の腫瘍のサイズ、
人口統計学的属性、および/または、
白血球数、および/または
乳酸デヒドロゲナーゼレベル
を特徴付ける、対象のベースライン特性のセットを特定することをさらに含み、
予測リスクが、ベースライン特性のセットにさらに依存する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
リスクスコア生成モデルでベースライン特性のセットを処理することによってサイトカイン放出症候群リスクスコアを生成することをさらに含み、予測リスクが、サイトカイン放出症候群リスクスコアに基づいている、請求項15に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
リスクスコア生成が回帰モデルを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つまたは複数のパラメータが重みのセットを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
リスクが、サイトカイン放出症候群リスクスコアと投与量の線形結合に基づいて決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
対象がサイトカイン放出症候群を経験するリスクを予測することが、1つまたは複数の閾値比較を実施することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
結果が、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応し、方法が、
対象がサイトカイン放出症候群を経験する高いリスクがあることを結果が示す場合、治療が完了した後に少なくとも24時間にわたって医療施設で入院患者モニタリングにより対象をモニターすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
結果が、治療の完了後に外来患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応し、方法が、
対象がサイトカイン放出症候群を経験する低いリスクがあることを結果が示す場合、外来患者モニタリングにより対象をモニターすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
対象ががんと診断されており、治療がT細胞免疫療法を投与することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
対象ががんと診断されており、治療がグロフィタマブまたはモスネツズマブを投与することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
サイトカインのベースラインレベルに基づいてサイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定することが、
サイトカインのベースラインレベルまたはその処理バージョンの対数を計算して、ベースライン対数値を生成することと、
サイトカインのオントリートメントレベルまたはその処理バージョンの対数を計算して、オントリートメント対数値を生成することと、
オントリートメント対数値からベースライン対数値を差し引くことと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
サイトカインのベースラインレベルに基づいてサイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定することが、
サイトカインのベースラインレベルと定数との差の対数を計算して、ベースライン対数値を生成することと、
サイトカインのオントリートメントレベルと定数との差の対数を計算して、オントリートメント対数値を生成することと、
オントリートメント対数値からベースライン対数値を差し引くことと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
サイトカインのオントリートメントレベルを特定することが、
治療が投与されていた間または治療の完了から1日以内に対象から収集された複数のオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインの複数の予備オントリートメントレベルを特定することであって、複数のオントリートメント試料のそれぞれが異なる時点で収集される、サイトカインの複数の予備オントリートメントレベルを特定することと、
サイトカインのオントリートメントレベルを、サイトカインの複数の予備オントリートメントレベルのうちの最大値であると定義することと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
治療が活性成分を投与することを含み、
治療に先行して、別の薬剤による前治療を投与した、
請求項14に記載の方法。
【請求項29】
オントリートメントレベルが、活性成分の投与後に収集された試料を使用して特定された、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
サイトカインが、腫瘍壊死因子アルファ、インターロイキン6、インターロイキン8、インターロイキン10、またはマクロファージ炎症性タンパク質1ベータを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項31】
サイトカインのオントリートメントレベルが、
治療が投与されていた間に対象から血液試料を収集すること、ならびに
サイトカインの捕捉抗体および検出抗体を使用して血液試料を処理すること
によって決定された、請求項14に記載の方法。
【請求項32】
治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのベースラインレベルを決定することと、
サイトカインのオントリートメントレベルを決定することであって、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのオントリートメントレベルを決定することと、
治療の少なくとも一部の投与量を特定することと、
サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルを、計算システムに入力することと、
治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応する結果を受け取ることと、
治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターすることと
を含む方法。
【請求項33】
対象が、治療の完了後に少なくとも4時間にわたる自己モニタリングによりモニターされる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
結果が、
サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルに基づいて、サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定すること、ならびに
オントリートメントサイトカイン倍率変化および投与量に基づいて、治療の少なくとも一部の投与量を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測すること
によって計算システムにより生成される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのベースラインレベルを決定することと、
サイトカインのオントリートメントレベルを決定することであって、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのオントリートメントレベルを決定することと、
治療の少なくとも一部の投与量を特定することと、
サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルを、計算システムに入力することと、
治療の完了後に外来患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応する結果を受け取ることと、
治療の完了後に外来患者モニタリングにより対象をモニターすることと
を含む方法。
【請求項36】
結果の受け取りに応答して、
対象が治療を受けた医療施設から退院する対象の待ち行列を作成することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
結果が、
サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルに基づいて、サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定すること、ならびに
オントリートメントサイトカイン倍率変化および投与量に基づいて、治療の少なくとも一部の投与量を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測すること
によって計算システムにより生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
治療の投与後のサイトカイン放出症候群について入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かを決定する計算予測の使用であって、計算予測が、
サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を、
治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料におけるサイトカインのレベルを示すサイトカインのベースラインレベル、および
治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示すサイトカインのオントリートメントレベル
に基づいて決定し、
オントリートメントサイトカイン倍率変化に基づいた治療の投与後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測する、
リスクスコア生成モデルを実装する計算装置により提供される、使用。
【請求項39】
1つまたは複数のデータプロセッサと、
1つまたは複数のデータプロセッサで実行されるとき、1つまたは複数のデータプロセッサに、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を収容する非一時的コンピュータ可読記憶媒体と
を含むシステム。
【請求項40】
1つまたは複数のデータプロセッサに請求項1から31のいずれか一項に記載の方法を実施させるように構成された命令を含む、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品。
【請求項41】
治療が、抗体または小分子を含む療法を投与することを含む、請求項1、14、32もしくは35に記載の方法、または請求項38に記載の使用。
【請求項42】
治療が、抗体または小分子を含む療法を投与することを含み、投与された療法が抗体を含む、請求項1、14、32もしくは35に記載の方法、または請求項38に記載の使用。
【請求項43】
治療が、抗体または小分子を含む療法を投与することを含み、投与された療法が、抗原のうちの少なくとも1つに結合したときにT細胞に係合する多重特異性抗体を含む、請求項1、14、32もしくは35に記載の方法、または請求項38に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月13日に出願した米国特許仮出願第63/221,323号、2021年11月9日に出願した米国特許仮出願第63/263,787号および2022年5月12日に出願した米国特許仮出願第63/341,208号の利益、およびこれらに対する優先権を主張する。これらの出願のそれぞれは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
サイトカイン放出症候群(およびサイトカイン放出ストーム)は、ウイルス感染、自己免疫性疾患および免疫療法により引き起こされ得る潜在的に致命的な状態である。サイトカイン放出症候群は、サイトカインレベルの劇的な増加および免疫系の機能不全により特徴付けられる。正常な状況下では、抗炎症性サイトカインと炎症促進性サイトカインとの間に平衡が保たれている。しかし、過剰に活性化された免疫応答は、有意に増加された炎症促進性サイトカインの分泌をリンパ球(T細胞、B細胞およびナチュラルキラー細胞)、ならびに骨髄細胞(単球、マクロファージおよび樹状細胞)から導き出すことがある。
【0003】
がん免疫療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群の発生率は、免疫療法剤のタイプに応じて広範囲に変動する。サイトカイン放出症候群の発症は数時間以内に起こり、CAR-T細胞療法の場合では、薬物点滴の数週間後まで起こることがある。最も慣用のモノクローナル抗体を用いると、サイトカイン放出症候群の発生率は比較的低いが、一方でT細胞係合がん免疫療法は、サイトカイン放出症候群をトリガする特に高いリスクを有する。したがって、標準治療は、治療の直後およびそれ以降のサイトカイン放出症候群の症状について、免疫療法を受けている対象をモニターすることである。
【0004】
サイトカイン放出症候群のリスクは、療法および基礎疾患のタイプに関連する因子によって影響を受ける。サイトカイン放出症候群を誘導し得る多くの薬剤は、初回投与効果を示し、すなわち、最も重度の症状は初回投与用量の後にのみ起こり、後続投与の後に再発しない(Klingerら、Blood 119:6226-33(2012))。
【0005】
それに対する努力にもかかわらず、どの対象がサイトカイン放出症候群を経験するかを予測すること、ましてやそのような発生に対するいずれかの悪性度に特異的に予測することさえ、依然として可能ではない。むしろ、多種多様な臨床症状および重症のサイトカイン放出症候群発生率が引き続き観察されており、既定は、選択療法の投与後に一貫した入院患者モニタリングを開始して、任意のサイトカイン放出症候群を迅速に検出および治療することである。
【0006】
サイトカイン放出症候群は、発熱、悪寒、疲労、悪心、頭痛、筋肉痛、呼吸困難、頻拍、低血圧、肝機能不全、呼吸促迫症候群、急性血管漏出症候群、播種性血管内凝固障害、神経毒性、心機能不全、腎不全および/または多臓器不全を引き起こすことがある。発熱、悪心、疲労、頭痛および倦怠などの軽症は、対象をモニタリングしながら輸液および鎮痛剤により治療することができる。過剰な炎症促進性サイトカイン産生(すなわち、サイトカイン放出症候群)によりもたらされる、より重い症状には、臓器損傷および死亡を防止するためにコルチコステロイドおよび/または抗サイトカイン療法による素早い介入が必要である。したがって、サイトカイン放出症候群のリスク因子の特定を改善することが重要である。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態では、がんと診断された対象のベースライン特性のセットを特定することを含み、ベースライン特性のセットが、治療開始前の1つまたは複数のベースライン時点に関し、ベースライン特性のセットのそれぞれが、がんの病期、人口統計学的属性、1つもしくは複数の腫瘍のサイズ、白血球数および/または乳酸デヒドロゲナーゼレベルを特徴付ける方法が提供される。サイトカイン放出症候群のリスクスコアの数値は、リスクスコア生成モデルを使用してベースライン特性のセットを処理することによって生成される。治療を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクは、サイトカイン放出症候群のリスクスコアの数値に基づいて予測される。結果は、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かの推奨に対応する予測リスクに基づいて決定される。結果が出力される。
【0008】
方法は、予測リスクに基づいて結果を決定することを含み、結果は、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かの推奨に対応する。結果は、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応することがあり、方法は、対象がサイトカイン放出症候群を経験する高いリスクがあることを結果が示す場合、治療の完了後に少なくとも24時間にわたって医療施設で入院患者モニタリングにより対象をモニターすることをさらに含む。
【0009】
方法は、サイトカインのオントリートメントレベルを特定することであって、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのオントリートメントレベルを特定することと、サイトカインのオントリートメントレベル、および治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料中のサイトカインのレベルを示すサイトカインのベースラインレベルに基づいて、サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定することとを含むことができ、予測リスクはオントリートメントサイトカイン倍率変化にさらに基づいている。
【0010】
方法は、治療の少なくとも一部の投与量を特定することを含んでもよく、予測リスクは投与量にさらに基づいている。
【0011】
リスクスコア生成は、回帰モデルを含むことができる。
【0012】
治療は、T細胞免疫療法を投与することを含むことができる。
【0013】
治療は、グロフィタマブまたはモスネツズマブを投与することを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、サイトカインのオントリートメントレベルを特定することを含む方法が提供され、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す。サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化は、サイトカインのオントリートメントレベル、および治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料中のサイトカインのレベルを示すサイトカインのベースラインレベルに基づいて決定される。治療の少なくとも一部の投与量が特定される。オントリートメントサイトカイン倍率変化および投与量に基づいて、治療の少なくとも一部の投与量を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクが予測される。結果は、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かの推奨に対応する予測リスクに基づいて決定される。結果が出力される。
【0015】
方法は、対象のベースライン特性のセットを特定することを含むことができ、ベースライン特性のセットは、治療開始前の1つまたは複数のベースライン時点に関し、ベースライン特性のセットのそれぞれは、腫瘍負荷、がんの病期、腫瘍拡散、1つもしくは複数の腫瘍のサイズ、人口統計学的属性、白血球数および/または乳酸デヒドロゲナーゼレベルを特徴付け、予測リスクは、ベースライン特性のセットにさらに依存する。
【0016】
方法は、リスクスコア生成モデルでベースライン特性のセットを処理することによってサイトカイン放出症候群リスクスコアを生成することを含むことができ、予測リスクは、サイトカイン放出症候群リスクスコアに基づいている。
【0017】
リスクスコア生成は、回帰モデルを含むことができる。
【0018】
1つまたは複数のパラメータは、重みのセットを含むことができる。
【0019】
リスクは、サイトカイン放出症候群リスクスコアと投与量の線形結合に基づいて決定され得る。
【0020】
対象がサイトカイン放出症候群を経験するリスクを予測することは、1つまたは複数の閾値比較を実施することを含むことができる。
【0021】
結果は、治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応することがあり、方法は、対象がサイトカイン放出症候群を経験する高いリスクがあることを結果が示す場合、治療が完了した後に少なくとも24時間にわたって医療施設で入院患者モニタリングにより対象をモニターすることを含んでもよい。
【0022】
結果は、治療の完了後に外来患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応することがあり、方法は、対象がサイトカイン放出症候群を経験する低いリスクがあることを結果が示す場合、外来患者モニタリングにより対象をモニターすることを含んでもよい。
【0023】
対象は、がんと診断されていてもよく、治療は、T細胞免疫療法を投与することを含んでもよい。
【0024】
対象は、がんと診断されていてもよく、治療は、グロフィタマブまたはモスネツズマブを投与することを含んでもよい。
【0025】
サイトカインのベースラインレベルに基づいてサイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定することは、サイトカインのベースラインレベルまたはその処理バージョンの対数を計算して、ベースライン対数値を生成することと、サイトカインのオントリートメントレベルまたはその処理バージョンの対数を計算して、オントリートメント対数値を生成することと、オントリートメント対数値からベースライン対数値を差し引くこととを含んでもよい。
【0026】
サイトカインのベースラインレベルに基づいてサイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定することは、サイトカインのベースラインレベルと定数との差の対数を計算して、ベースライン対数値を生成することと、サイトカインのオントリートメントレベルと定数との差の対数を計算して、オントリートメント対数値を生成することと、オントリートメント対数値からベースライン対数値を差し引くこととを含んでもよい。
【0027】
サイトカインのオントリートメントレベルを特定することは、治療が投与されていた間または治療の完了から1日以内に対象から収集された複数のオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインの複数の予備オントリートメントレベルを特定することであって、複数のオントリートメント試料のそれぞれが異なる時点で収集される、サイトカインの複数の予備オントリートメントレベルを特定することと、サイトカインのオントリートメントレベルを、サイトカインの複数の予備オントリートメントレベルのうちの最大値であると定義することとを含んでもよい。
【0028】
治療は、活性成分を投与することを含んでもよく、治療に先行して、別の薬剤による前治療を投与していてもよい。
【0029】
オントリートメントレベルは、活性成分の投与後に収集された試料を使用して特定され得る。
【0030】
サイトカインは、腫瘍壊死因子アルファ、インターロイキン6、インターロイキン8、インターロイキン10、またはマクロファージ炎症性タンパク質1ベータを含むことができる。
【0031】
サイトカインのオントリートメントレベルは、治療が投与されていた間に対象から血液試料を収集すること、ならびにサイトカインの捕捉抗体および検出抗体を使用して血液試料を処理することによって決定され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのベースラインレベルを決定することと、サイトカインのオントリートメントレベルを決定することであって、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのオントリートメントレベルを決定することと、治療の少なくとも一部の投与量を特定することとを含む方法が提供される。さらに、サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルは、計算システムに入力される。治療の完了後に入院患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応する結果が受け取られ、対象は、治療の完了後に入院患者モニタリングによりモニターされる。
【0033】
対象は、治療の完了後に少なくとも4時間にわたる自己モニタリングによりモニターされ得る。
【0034】
結果は、サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルに基づいてサイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定すること、ならびにオントリートメントサイトカイン倍率変化および投与量に基づいて、治療の少なくとも一部の投与量を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測することによって、計算システムにより生成され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのベースラインレベルを決定することと、サイトカインのオントリートメントレベルを決定することであって、サイトカインのオントリートメントレベルが、治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示す、サイトカインのオントリートメントレベルを決定することと、治療の少なくとも一部の投与量を特定することとを含む方法が提供される。さらに、サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルは、計算システムに入力され、治療の完了後に外来患者モニタリングにより対象をモニターする推奨に対応する結果が受け取られ、対象は、治療の完了後に外来患者モニタリングによりモニターされる。
【0036】
対象は、治療の完了後に少なくとも4時間にわたる自己モニタリングによりモニターされ得る。
【0037】
結果は、サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインのオントリートメントレベルに基づいて、サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定すること、ならびにオントリートメントサイトカイン倍率変化および投与量に基づいて、治療の少なくとも一部の投与量を受けた後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測することによって、計算システムにより生成され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、治療の投与後のサイトカイン放出症候群について入院患者モニタリングにより対象をモニターするか否かを決定する計算予測の使用が提供され、計算予測は、治療の開始前に対象から収集されたベースライン試料におけるサイトカインのレベルを示すサイトカインのベースラインレベル、および治療が投与されていた間または治療の完了から1時間以内に対象から収集されたオントリートメント試料におけるサイトカインのレベルを示すサイトカインのオントリートメントレベルに基づいて、サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化を決定し、オントリートメントサイトカイン倍率変化に基づいた治療の投与後に少なくとも閾値悪性度のサイトカイン放出症候群を対象が経験するリスクを予測する、リスクスコア生成モデルを実装する計算装置により提供される。
【0039】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のデータプロセッサと、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されるとき、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全てを実施させる命令を収容する非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステムが提供される。
【0040】
いくつかの実施形態では、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化され、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部を実施させるように構成された命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されるとき、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つもしくは複数の方法の一部または全部および/あるいは1つもしくは複数のプロセスの一部または全部を実施させる、命令を収容する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部および/または1つまたは複数のプロセスの一部または全部を実施させるように構成された命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において、有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0042】
本明細書に開示されている任意の方法、使用、システムまたはコンピュータプログラム製品に関して、治療は、抗体または小分子を含む療法を投与することを含むことができる。
【0043】
投与された療法は、抗体を含んでもよい。
【0044】
抗体は、CD20、CD52、CD30、CD40またはPD-1に特異的に結合することができる。
【0045】
抗体は、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アレムツズマブ、ブレンツキシマブ、ダセツズマブまたはニボルマブであり得る。
【0046】
抗体は、抗原のうちの少なくとも1つに結合したときにT細胞に係合する多重特異性抗体であり得る。
【0047】
多重特異性抗体は、少なくともCD3に特異的に結合することができる。
【0048】
多重特異性抗体は、少なくともCD20にさらに特異的に結合することができる。
【0049】
多重特異性抗体は、二重特異性抗体であり得る。
【0050】
二重特異性抗体は、CD3および/またはCD20に特異的に結合することができる。
【0051】
二重特異性抗体は、モスネツズマブまたはグロフィタマブであり得る。
【0052】
療法は、小分子を含むことができ、例えば、オキサリプラチンまたはレナリドミドである。
【0053】
用いられている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されかつ説明された特徴のいかなる均等物またはその部分も除外する意図はなく、特許請求された発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。よって、特許請求された本発明は、実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の修正および変形が、当業者によって採用されてもよく、そのような修正および変形が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることは理解されるべきである。
【0054】
本開示は、以下の添付の図面と併せて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】いくつかの実施形態によるサイトカインリスク症候群事象を経験する1人または複数人の個別の対象のリスクを予測する示差的なモニタリングまたは治療のために対象を階層化する、例示的ネットワークを示す。
【
図2A】対象がサイトカイン放出症候群を経験するリスクを予測するプロセスのフローチャートを図解する。
【
図2B】対象にサイトカイン放出症候群のための入院または外来患者モニタリングを推奨するか否かを決定するために予測リスクを使用するプロセスを示す。
【
図3】オビヌツズマブおよびグロフィタマブを含む治療を受けた様々なコホートにおける投与タイミングを表す。
【
図4】特徴選択モデル(低減特徴セットおよび閾値を特定して、任意の非二進ベースライン特性を二進変数に変換する)、リスクスコア生成モデル(低減特徴セットの二進値をリスクスコアに変換する)および判断木モデル(リスクスコアおよびサイトカイン倍率変化を、悪性度2+サイトカイン放出症候群が起こるか否かの予測に変換する)を訓練および検証するために使用される例示的データの描写を示す。
【
図5】例示的な各分析コホートにおけるサイトカイン放出症候群のタイミングを示す。
【
図6】サイクル1の第1週にサイトカイン放出症候群事象を経験した、それぞれのコホート内の例示的な訓練および検証データセットによる対象の百分率を示す。
【
図7】様々なベースライン特性(または「リスク因子」)がサイトカイン放出症候群の発生の予測に寄与する程度およびモデルのパラメータが学習される方法を特定するために使用される、例示的なワークフローを示す。
【
図8】複数のベースライン特性のそれぞれが、例示的なデータセットにおいてサイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ投与量後に悪性度2+のもの)の発生の予測であった程度を示すフォレストプロットである。
【
図9A】多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、どのようにしてサイトカイン放出リスクを予測できるかを図解する。
【
図9B】サイトカイン放出リスクを、どのようにして予測モデルの投与量と一緒に計算および使用できるかを図解する。
【
図10】リスクスコア生成モデルの2つのバージョンによるリスクスコアに対応する予測陰性症例に関する例示的な陰性的中率(NPV)を示す。
【
図11】2.5/10/30mgのステップアップ投与量コホートの検証データセットにおける、予測陰性症例に対する例示的な陰性的中率を示す。
【
図12A】事象が発生するまたは発生しないことが予測されるかどうかを識別する3つの例示的閾値のそれぞれにおけるサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)に応じて発生する、サイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)の例示的な確率を示す。
【
図12B】検証データセットを処理する訓練判断木モデルを使用して生成された予測に関する統計を示す。
【
図13】臨床研究NP30179に対応する例示的なベースラインサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)の分布を示す。
【
図14】AおよびBは、最初のグロフィタマブ治療サイクルにおけるIL-6およびTNF-α(それぞれ)の例示的な倍率変化を示す。
【
図15】サイトカイン放出症候群を経験しなかった例示的対象(左側プロット)およびサイトカイン放出症候群を経験した例示的対象(右側プロット)のIL-6におけるサイトカイン倍率変化の対比である。
【
図16】AおよびBは、最初のサイトカイン放出症候群の存在または悪性度に、例示的なオントリートメントサイトカイン倍率変化がどのように依存しているかを示すボックスプロットを示す。
【
図17A】グロフィタマブ治療の最初のサイクルにおいて、サイトカインIL-6の例示的なオントリートメントレベルがどのように変化するかを示す。
【
図17B】グロフィタマブ治療の最初のサイクルにおいて、サイトカインTNF-αの例示的なオントリートメントレベルがどのように変化するかを示す。
【
図18】AおよびBは、IL-6およびTNF-αのそれぞれにおける例示的対象の最大の対数2倍率変化を示す。
【
図19A】様々な治療関連時間にわたるサイトカイン倍率変化の例示的な経時変化を示し、同時に、治療開始に関するサイトカイン放出症候群の発症の時間に従って対象を階層化するように生成された図である。
【
図19B】様々な治療関連時間にわたるサイトカイン倍率変化の例示的な経時変化を示し、同時に、治療開始に関するサイトカイン放出症候群の発症の時間に従って対象を階層化するように生成された図である。
【
図20A】任意のタイプのサイトカイン放出症候群が発生するか否か、または少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群が発生するか否かに基づいて識別された事例において、サイトカインの変化を比較するサイトカイン倍率変化およびボックスプロットの例示的な経時変化を示す。
【
図20B】任意のタイプのサイトカイン放出症候群が発生するか否か、または少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群が発生するか否かに基づいて識別された事例において、サイトカインの変化を比較するサイトカイン倍率変化およびボックスプロットの例示的な経時変化を示す。
【
図21A】異なる投与量群における、サイトカインの例示的な倍率変化とサイトカイン放出症候群リスクスコアとの比較である。
【
図21B】異なる投与量群における、サイトカインの例示的な倍率変化とサイトカイン放出症候群リスクスコアとの比較である。
【
図22】悪性度2またはそれ以上のサイトカイン放出症候群の発生(第1のグロフィタマブ用投与量に調整された)の確率が、正規化バージョンのサイトカイン放出症候群リスクスコアとどのように関係するかについてのランドマーク分析による結果を示す。
【
図23】任意の観察されたサイトカイン放出症候群の悪性度が、TNF-αのサイトカイン放出症候群リスクスコアおよびサイトカイン倍率変化の両方にどのように関係するかを例示する。
【
図24】全8パラメータスコアおよび低減5パラメータスコアのCRSRS.5pによる、ステップアップ(検証モデル)投与量コホートのカットオフ値セットにおける陰性的中率および低リスク検出率を示す。
【0056】
添付の図面において、同様の構成要素および/または特徴は、同じ参照ラベルを有することができる。さらに、同じタイプの様々な構成要素は、参照ラベルの後に同様の構成要素を区別するダッシュおよび第2のラベルを続けることによって区別され得る。本明細書において第1の参照ラベルのみが使用される場合、説明は、第2の参照ラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する同様の構成要素のいずれか1つに適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
I.概要
本明細書に開示されている技術は、多変量分析を使用して、対象がサイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも事前定義された重症度のもの)を経験するか否かをベースラインまたはオントリートメントデータポイントに基づいて予測することに関する。予測は、対象がサイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)を経験する低いリスクがあること、および/またはサイトカイン放出症候群の外来患者モニタリングの候補であることを決定するか否かを予測することを含むことができる。この予測は、サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)の発生を予測する出力を生成するために使用されるモデルの陰性的中率を最適化した後に行うことができる。代替的または追加的に、予測は、対象がサイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)を経験するリスクがあること、および/またはサイトカイン放出症候群の入院患者モニタリングの候補であることを決定するか否かを予測することを含むことができる。この予測は、サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)の発生を予測する出力を生成するために使用されるモデルの陽性的中率を最適化した後に行うことができる。
【0058】
ベースラインデータポイントは、治療が開始される前、および/または治療前と別の活性成分の最初の非治療前投与量との間の1つまたは複数の時点に関連し得る。例えば、ベースラインデータポイントは、活性成分の最初の投与量の投与前に収集されて試料を処理することによって生成され得る、および/またはベースラインデータポイントは、活性成分の最初の非治療前投与量の前の時点で実施された査定に関連する診療記録から検索され得る。オントリートメントデータポイントは、治療の開始と治療の終結との間(潜在的に緩衝を加えた)の1つまたは複数の時点に関連し得る。例えば、オントリートメントデータポイントは、活性成分の最初の(例えば、非予備刺激)投与量の後および治療の終結時(潜在的に緩衝を加えた)に行われた全ての測定における特定のサイトカインの最大濃度レベルに等しいと定義され得る。
【0059】
多変量分析およびリスク予測因子は、ベースライン時点(または、その処理バージョン)の特定のサイトカインのレベルからのオントリートメント時点(または、その処理バージョン)の特定のサイトカインのレベルの変化を含むことができる。例えば、サイトカインのレベルの処理バージョンは、サイトカインのレベルの合計の対数(例えば、対数底2)およびゼロではない正の定数(例えば、1)を含むと定義され得る。
【0060】
多変量分析は、対象の1つまたは複数のベースライン特性(1つまたは複数のベースライン時点に関連する)に基づいたサイトカイン放出症候群リスクスコアを生成することを含むことができる。ベースライン特性は、腫瘍負荷を特徴付ける1つもしくは複数の測定値、腫瘍拡散を特徴付ける1つもしくは複数の測定値、画定体成分内(例えば、骨髄もしくは末梢血)にある悪性細胞の存在もしくは程度を特徴付ける1つもしくは複数の測定値、1つもしくは複数の人口統計学的属性(例えば、年齢)、および/または併存疾患の発生率もしくは重症度を特徴付ける1つもしくは複数の測定値を含んでもよい。サイトカイン放出症候群リスクスコアは、治療における活性成分の投与量に基づいてさらにまたは代替的に生成することができる。
【0061】
サイトカイン放出症候群リスクスコアを生成することは、多変量回帰モデル(例えば、線形回帰モデルまたはロジスティック回帰モデル)を使用して、1つまたは複数のベースライン特性(または、多重ベースライン特性)をモデル出力に変換することを含むことができる。モデル出力は、サイトカイン放出症候群を経験するリスクの縮尺または非縮尺表示を含むことができる。モデル出力は正規化されてもよい。例えば、モデル出力は、0と1の間の数であってもよく、ここで1の値は、サイトカイン放出症候群発生の最高予測リスクを表し、0の値は、サイトカイン放出症候群発生の最低予測リスクを表す。
【0062】
多変量モデルは、他の機械学習モジュール(例えば、ランダムフォレストモデル)からの出力を組み込むことができる。多変量モデルは、パラメータのセットを含むことができ、各パラメータの値は、訓練データセットを使用して、多変量モデルおよび多変量機械学習モデルを訓練することによって学習された。パラメータのセット(例えば、モデルの重みのセット)は、1つまたは複数のベースライン特性のそれぞれに1つまたは複数の関連するパラメータを含むことができ、1つまたは複数のパラメータは、モデル出力がベースライン特性に依存する程度を特定することができる、および/またはベースライン特性がモデル出力の予測である程度を表す有意値を特定することができる。
【0063】
最終サイトカイン放出症候群リスク予測因子は、ベースライン特性(例えば、サイトカイン放出症候群リスクスコアのパラメータ)を特定する、またはこれから誘導された項に基づいて、および投与量(例えば、治療もしくは活性成分の投与量)、もしくは薬物曝露を特定する、またはこれらから誘導された項に基づいて生成され得る。例えば、組合せサイトカイン放出症候群リスクスコアは、サイトカイン放出症候群リスクスコアと投与量/曝露との線形結合、合計または重み付け合計であると定義され得る。
【0064】
リスク因子を用量/曝露情報と組み合わせる予測モデルの助けを借りて、所定の(例えば、ベースラインで入手した)値のサイトカイン放出症候群リスクスコアを用いて全対象のために、用量または曝露をサイトカイン放出症候群の予想されるリスクを限定するように調整することができる。
【0065】
サイトカイン放出症候群予測モデルは、1つまたは複数のサイトカイン倍率変化を使用して拡大することができる。例えば、サイトカイン放出症候群リスクは、サイトカイン放出症候群リスクスコアおよびサイトカイン倍率変化に基づいて予測され得る。別の例として、サイトカイン放出症候群リスクは、サイトカイン放出症候群リスクスコア、投与量/曝露、およびサイトカイン倍率変化に基づいて予測され得る。別の例において、サイトカイン放出症候群リスクは、投与量およびサイトカイン倍率変化に基づいて予測され得る。なお別の例として、特定の対象では、サイトカイン放出症候群リスクは、スコア、投与量およびサイトカイン倍率変化に基づいて予測されたサイトカイン放出症候群リスクが、ある特定の予め定義された値を超えない最大用量/曝露を選択することによって、最適化(制限)され得る。リスクは、数値リスク(例えば、確率を表す)、カテゴリリスク(例えば、高い、中程度もしくは低い)、または二進リスク(例えば、リスクがある、もしくはない)であり得る。カテゴリまたは二進リスクは、1つまたは複数の閾値比較に基づいて生成され得る。例えば、対象には、リスクスコア閾値を超えるサイトカイン放出症候群を経験する高いリスクがあること、および/またはサイトカイン倍率変化がサイトカイン閾値を超える場合、対象には、そうでなければサイトカイン放出症候群を経験する低いリスクがあることが決定され得る。
【0066】
予測に対応する結果は、出力(例えば、表示または送信される)であり得る。結果は、予測サイトカイン放出症候群リスクを含んでもよい。結果は、推奨動作、デフォルト動作、または実装させる動作を含んでもよい。
【0067】
サイトカイン放出症候群リスクを使用して、治療の終結時に対象を推奨モニタリングする動作を特定すること、またはそのような手法の推奨を特定することができる。例えば、所定の対象は、入院患者モニタリング条件が満たされる場合、入院患者モニタリング(例えば、対象を医療施設に入院させること)を有することが推奨され得る。入院患者モニタリング条件は、(例えば)リスクが高いと定義される場合、リスクが低い以外のカテゴリであると定義される場合、リスクが事前定義(例えば、数値またはカテゴリ)閾値を超える場合に満たされるように構成され得る。いくつかの場合において、対象の入院患者モニタリングは、リスクが高い場合、リスクが低い以外のカテゴリである場合、またはリスクが事前定義閾値を超える場合に提供される。
【0068】
所定の対象は、入院患者モニタリング条件が満たされない場合、退院すること、および/または外来患者モニタリング(例えば、対象を医療施設に入院させること)を有することが、代替的または追加的に推奨され得る。いくつかの例において、対象の退院および/または外来院患者モニタリングは、リスクが低い場合、リスクが高い以外のカテゴリである場合、またはリスクが事前定義閾値を超えない場合に提供される。
【0069】
サイトカイン放出症候群リスクの決定(例えば、偽陰性をほとんど伴わない)は、入院患者モニタリングへの効率的な資源配分を促進する利点を有する。入院患者モニタリングで全ての患者を注意深くモニタリングすることは、高価であり、相当量の物理的資源を消費し、時間集約的である。一方、外来患者モニタリングを有するはずである対象の過剰包含は、サイトカイン放出症候群の迅速な治療を受けることができない患者を選択する結果となり得る。よって、本明細書に開示されている技術は、サイトカイン放出症候群を経験する比較的高いリスクを有する対象に、資源集中的なモニタリングを提供することを優先し、一方で、迅速な介入(例えば、サイトカイン放出症候群の応答)の必要のないと思われる対象に資源集中的ではないモニタリングを確保しておく、効率的な資源使用を促進することができる。
【0070】
II.定義
用語「サイトカイン」は、本明細書で使用される場合、細胞活性化の後に一過的に産生されて、免疫、炎症および造血を媒介および制御することを助けるシグナル伝達分子を指す。サイトカインは、免疫系の特定の細胞により分泌されるタンパク質、ペプチドおよび糖タンパク質の大きな群のうちのいずれかであり得る。これらの分子は、個別の細胞の機能を調節する制御因子として作用する。サイトカインは、自己分泌、パラ分泌または内分泌応答修飾剤として局所的に作用することができ、これらの作用は、これらの標的細胞の特定の細胞表面受容体を介して発揮される。本明細書で使用される場合、「自己分泌」または「自己分泌作用」は、サイトカインが、それが分泌される同じ細胞の膜の受容体に結合することによって、その作用を発揮することを意味する。「パラ分泌」または「パラ分泌作用」は、サイトカインが、サイトカインを産生した細胞に近接する標的細胞の受容体に結合することを意味する。「内分泌」または「内分泌作用」は、サイトカインが循環を通って移動し、身体全体の部分にある標的細胞に作用することを意味する。サイトカイン、例えば、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、MIP1b、MCP1、IL-10、IFN-γ、TGF-β、およびTNF-αからなる群から選択される1つまたは複数のサイトカインのレベルの上昇は、多くの場合にサイトカイン放出症候群に関連する。
【0071】
用語「サイトカイン放出症候群」または「CRS」は、本明細書で使用される場合、免疫療法、例えば、T細胞免疫療法、治療抗体、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、および幹細胞移植に関連する発熱および多臓器不全によって特徴付けられる急性の全身性炎症症候群を指す。CRSは、がん免疫療法の結果として起こり得る潜在的に致命的なサイトカイン関連毒性である。CRSは、多数のリンパ球および骨髄細胞が活性化により炎症性サイトカインを放出するときに、高レベルの免疫活性化によってもたらされ、循環サイトカインレベルの上昇によって特徴付けられる急性の全身性炎症症候群である。CRSの重症度および症状発症のタイミングは、免疫細胞活性化の程度、投与された療法のタイプおよび腫瘍負荷に応じて変わる。CRSの症状は、神経毒性、心機能不全、播種性血管内凝固症候群、成人呼吸促進症候群、腎不全および肝不全を含むことができる。症状は、発熱(悪寒(「震えるほどの寒気」-身震いおよび寒気を伴う体温上昇)を伴う、もしくは伴わない)、疲労、倦怠感、筋肉痛(筋痛)、嘔吐、頭痛、悪心、食欲不振、関節痛(arthalgia)(関節の疼痛)、下痢、発疹、低酸素血症(低血中酸素)、頻呼吸(急速呼吸)、低血圧、脈圧の拡大(収縮期血圧と拡張期血圧の差)、潜在的に減少した心拍出量(後期)、増加した心拍出量(早期)、高窒素血症(高濃度の血中窒素物質)、低フィブリノゲン血症(血液凝固障害、出血を伴う、もしくは伴わないもの)、D-ダイマーの上昇(凝血に相関する)、高ビリルビン血症(赤血球破壊による過剰な血中ビリルビン)、高トランスアミナーゼ血症(肝疾患および肝炎に相関する血中トランスアミナーゼの上昇)、錯乱、せん妄、精神状態変化、幻覚、振戦、発作、異常歩行、喚語困難、明白な失語症(会話および/もしくは理解力、および筆記に影響する言語機能障害)、または
測定障害(dymetria)(視覚補助を用いることなく運動を正確に適応させることができない)を含むことができる。CRSは、病原体(病原体が存在する場合)、または任意のサイトカイン誘導臓器不全(病原体が存在しない場合)への正常な応答に起因し得るものを超える炎症によって特徴付けられる。
【0072】
用語「入院患者モニタリング」は、本明細書で使用される場合、医療施設でも同時発生的に対象に医療施設で提供される、1人または複数の医療提供者(例えば、1人または複数の医師および/または1人または複数の看護師)により実施されるモニタリングを指す。よって、対象および少なくとも1人の医療提供者は、同じ時に同じ医療施設に物理的に居ることができる。医療施設は、(例えば)病院、メディカルクリニック、診療所または薬剤点滴センターを含み得る。対象は、入院患者モニタリングの際に医療施設に入院し得る。入院患者モニタリングの期間は、少なくとも(例えば)2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、または96時間であり得る。入院患者モニタリングの期間は、(例えば)2週間、1週間、5日間、4日間、3日間、または2日間未満であり得る。例えば、対象は、治療投与が終了した後に2~4日間にわたって入院患者モニタリングを受けてもよい。
【0073】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0074】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。
【0075】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」は、本明細書において交換可能に使用されて、天然の抗体構造と実質的に類似の構造を有する、または本明細書で定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0076】
「結合ドメイン」とは、標的エピトープ、抗原、リガンド、または受容体に特異的に結合する化合物または分子の一部を意味する。結合ドメインとしては、抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、組換え、ヒト化、およびキメラ抗体)、抗体断片またはその一部分(例えば、Fab断片、Fab’2、scFv抗体、SMIP、ドメイン抗体、ダイアボディ、ミニボディ、scFv-Fc、アフィボディ、ナノボディ、ならびに抗体のVHドメインおよび/またはVLドメイン)、受容体、リガンド、アプタマー、および特定された結合パートナーを有する他の分子を含むが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書における用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域および変異Fc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで及ぶ。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても、しなくてもよい。本明細書において別途指定がない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されているような、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けに従う。
【0078】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまた定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0079】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、一般に類似の構造を有しており、各ドメインは、4個の保存されたフレームワーク領域(FR)および3個の超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindtら、Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照すること)。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体からVHまたはVLドメインを使用して単離し、それぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングしてもよい。例えば、Portolanoら、J.Immunol.150:880-887(1993);Clarksonら、Nature 352:624-628(1991)を参照すること。
【0080】
用語「超可変領域」または「HVR」は、本明細書で使用される場合、配列が超可変性(「相補性決定領域」または「CDR」)である、および/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、および/または抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有する、抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)およびVLに3個(L1、L2、L3)を含む。本明細書における例示的なHVRとしては、以下のものが挙げられる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3)に存在するCDR(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、および93~101(H3)に存在する抗原接触(MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)および94~102(H3)を含む、(a)、(b)および/または(c)の組合せ。
【0081】
別段の指示がない限り、HVR残基および可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、上記のKabatらに従って番号付けされている。
【0082】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、この集団を構成する個別の抗体が、可能性のある変異体抗体(例えば、天然に存在する突然変異を含有し、またはモノクローナル抗体調製剤の産生中に生じ、このようなバリアントが一般に少量存在する)を除き、同一である、および/または同じエピトープに結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する。よって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない様々な手法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0083】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の総和の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野に公知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための特定の例証的および例示的な実施形態を以下に記載する。
【0084】
特定の態様において、抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる部位、すなわち、異なる抗原上の異なるエピトープまたは同じ抗原上の異なるエピトープに対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。多重特異性抗体は、また、3つ以上の結合特異性を有することもできる。多重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0085】
多重特異性抗体を作製するための技術は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)を参照すること)および「ノブ・イン・ホール」改変(例えば、米国特許第5,731,168号およびAtwellら、J.Mol.Biol.270:26(1997)を参照すること)を含むが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製する静電式ステアリング効果を改変すること(例えば、国際公開第O2009/089004号を参照すること)、2個以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,9880号およびBrennanら、Science,229:81(1985)を参照すること)、ロイシンジッパーを使用して、二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelnyら、J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)および国際公開第2011/034605号を参照すること)、軽鎖のミスペアリングの問題を回避するために一般的な軽鎖技術を使用すること(例えば、国際公開第98/504311号を参照すること)、二重特異性抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照すること)、単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用すること(例えば、Gruberら、J.Immunol.,152:5368(1994)を参照すること)、ならびに例えば、Tuttら、J.Immunol.147:60(1991)に記載されている三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0086】
例えば、「オクトパス抗体」を含む3つ以上の抗原結合部位を有する操作された抗体、またはDVD-Igも開示された方法に使用され得る(例えば、国際公開第2001/77342号および国際公開第2008/024715号を参照すること)。3つ以上の抗原結合部位を有する多重特異性抗体の他の例は、国際公開第2010/115589号、国際公開第2010/112193号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号、および国際公開第2013/026831号に見出すことができる。二重特異性抗体またその抗原結合断片は、また「二重作用FAb」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号および国際公開第2015/095539号を参照すること)。
【0087】
多重特異性抗体は、また、同じ抗原特異性の1つ以上の結合アームにドメインクロスオーバーを有する非対称の形態により、すなわち、VH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号および国際公開第2015/150447号を参照すること)、CH1/CLドメイン(国際公開第2009/080253号を参照すること)、または完全なFabアーム(国際公開第2009/080251号、国際公開第2016/016299号を参照すること。また、Schaeferら、USA,108(2011)118-1191、およびKleinら、MAbs 8(2016)1010-20)も参照すること)を交換することによって提供され得る。一態様において、多重特異性抗体は、cross-Fab断片を含む。用語「cross-Fab断片」または「xFab断片」または「クロスオーバーFab断片」は、重鎖および軽鎖の可変領域または定常領域のいずれかが交換されたFab断片を指す。cross-Fab断片は、軽鎖可変領域(VL)および重鎖定常領域1(CH1)から構成されるポリペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)および軽鎖定常領域(CL)から構成されるポリペプチド鎖とを含む。非対称Fabアームは、荷電または非荷電アミノ酸突然変異をドメイン接触面に導入して、正しいFabペアリングを指示することによって改変することもできる。例えば、国際公開第2016/172485号を参照すること。
【0088】
多重特異性抗体に対する様々なさらなる分子フォーマットが、当該分野に公知である(例えば、Spiessら、Mol Immunol 67(2015)95-106を参照すること)。
【0089】
特定のタイプの多重特異性抗体は、T細胞、T細胞係合性抗体を動員することができる。「T細胞二重特異性抗体」は、多重特異性の1つのタイプであり、一方が腫瘍細胞を標的にし、他方がエフェクター細胞、通常はTリンパ球を標的にする2つの異なる抗原に結合するように改変されている二重特異性抗体である。T細胞二重特異性抗体がT細胞および腫瘍細胞に結合する場合、腫瘍細胞とT細胞は近接され、T細胞は活性化され、腫瘍細胞破壊を仲介する。
【0090】
二重特異性抗体フォーマットの例は、2個のscFv分子が柔軟なリンカーによって融合されている、いわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージャー)分子(例えば、国際公開第2004/106381号、国際公開第2005/061547号、国際公開第2007/042261号、および国際公開第2008/119567号、Nagorsen and Baeuerle,Exp Cell Res 317,1255-1260(2011)を参照すること);ダイアボディ(Holligerら、Prot Eng 9,299-305(1996))およびその誘導体、例えばタンデムダイアボディ(「TandAb」;Kipriyanovら、J Mol Biol 293,41-56(1999));ダイアボディフォーマットに基づくが、さらなる安定化のためにC末端ジスルフィド架橋を特徴とする「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnsonら、J Mol Biol 399,436-449(2010))、ならびにマウス/ラットIgGハイブリッド分子全体である、いわゆるトリオマブ(Seimetzら、Cancer Treat Rev 36,458-467(2010)に概説されている)を含む。特定のT細胞二重特異性抗体フォーマットは、国際公開第2013/026833号、国際公開第2013/026839号、国際公開第2016/020309号;Bacacら、Oncoimmunology 5(8)(2016)e1203498に記載されている。
【0091】
用語「抗CD3抗体」および「CD3に結合する抗体」は、CD3の標的化において抗体が診断剤および/または治療剤として有用であるような十分な親和性によって、CD3に結合可能である抗体を指す。一実施形態において、無関係な非CD3タンパク質への抗CD3抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定して、CD3に対する抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、CD3に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗CD3抗体は、異なる種のCD3間で保存されているCD3のエピトープに結合する。
【0092】
用語「表面抗原分類3」または「CD3」は、本明細書で使用される場合、別途指示されない限り、霊長動物(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウスおよびびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源の任意の天然CD3を指し、例えば、CD3ε、CD3γ、CD3αおよびCD3β鎖を含む。この用語は、「完全長」の未処理のCD3(例えば、未処理また未修飾CD3εまたはCD3γ)、ならびに細胞内での処理からもたらされるCD3の任意の形態を包含する。この用語は、また、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントを含む、CD3の天然に存在するバリアントも包含する。CD3は、例えば、207個のアミノ酸長であるヒトCD3εタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000724)、および182個のアミノ酸長であるヒトCD3γタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000064)を含む。
【0093】
用語「抗CD20抗体」および「CD20に結合する抗体」は、本明細書では、抗体がCD20の標的化において治療剤として有用であるような十分な親和性で、CD20に結合可能である抗体を指す。一実施形態において、無関係な非CD20タンパク質への抗CD20抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定して、CD20に対する抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、CD20に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗CD20抗体は、異なる種のCD20間で保存されているCD20のエピトープに結合する。
【0094】
用語「表面抗原分類20」または「CD20」は、本明細書で使用される場合、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)、ならびに齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源の任意の天然CD20を指す。この用語は、「完全長」の未処理CD20、ならびに細胞内での処理によりもたらされる任意の形態のCD20を包含する。この用語は、また、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントを含む、CD20の天然に存在するバリアントも包含する。CD20は、例えば、ヒトCD20タンパク質(例えば、NCBI参照配列番号NP_068769.2(配列番号47)およびNP_690605.1(配列番号48)を参照すること)を含み、これは、例えば、297個のアミノ酸長であり、例えば、5’UTRの一部を欠くバリアントmRNA転写物(例えば、NCBI参照配列番号NM_021950.3(配列番号49)を参照すること)、またはより長いバリアントmRNA転写物(例えば、NCBI参照配列番号NM_152866.2(配列番号50)を参照すること)から生成され得る。
【0095】
用語「抗CD20/抗CD3二重特異性抗体」、「二重特異性抗CD20/抗CD3抗体」、ならびに「CD20およびCD3に結合する抗体」またはこれらのバリアントは、抗体がCD20および/またはCD3を標的にする診断剤および/または治療剤として有用であるように十分な親和性によって、CD20および/またはCD3に結合することが可能である多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を指す。一実施形態において、無関係の非CD3タンパク質および/または非CD20タンパク質への、CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定して、CD3および/またはCD20への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体は、異なる種のCD3の間で保存されているCD3のエピトープおよび/または異なる種のCD20の間で保存されているCD20のエピトープに結合する。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「結合する」、「~に特異的に結合する」、または「~に特異的である」は、標的と抗体との間の結合などの測定可能および再生可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む分子の異種集団の存在下において、標的の存在を決定付けるものである。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合活性で、より容易に、および/またはより長い期間にわたって結合する抗体である。一実施形態において、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定して、標的への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(KD)を有する。ある特定の実施形態において、抗体は、異なる種のタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態おいて、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、必須ではない。本明細書で使用される用語は、例えば、10-4M以下、あるいは10-5M以下、あるいは10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下、あるいは10-12M以下の標的に対するKD、または10-4M~10-6M、もしくは10-6M~10-10M、もしくは10-7M~10-9Mの範囲のKDを有する分子によって示され得る。当業者に理解されるように、親和性とKD値は逆相関する。抗原への高い親和性は、低いKD値により測定される。一実施形態において、用語「特異的結合」は、分子が、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0097】
開示されている方法は、CD20およびCD3に結合する治療用二重特異性抗体(すなわち、高CD20/高CD3抗体)が、CD20陽性細胞増殖性障害、例えば、B細胞増殖性障害(例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(例えば、再発性および/もしくは難治性DLBCL、またはリヒター形質転換)、濾胞性リンパ腫(FL)(例えば、再発性および/または難治性FL、または形質転換FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、高悪性度B細胞リンパ腫、または縦隔原発(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(PMLBCL))または慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に使用される場合に使用され得る。
【0098】
いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、モスネツズマブであり、国際医薬品一般名(INN)リスト117(WHO Drug Information,Vol.31,No.2,2017,p.303)またはCAS登録番号1905409-39-3を有し、(1)それぞれ配列番号17および18の重鎖配列および軽鎖配列を含む抗CD20アームと、(2)それぞれ配列番号19および20の重鎖および軽鎖配列を含む抗CD3アームとを有する。いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む第1の結合ドメインを含む抗CD20アーム、および(2)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む第2の結合ドメインを含む抗CD3アーム含む。モスネツズマブの様々なエレメント(HVR、VH、VL、HCおよびLCを表1に示す。
【0099】
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、組換え方法および組成物を使用して産生され得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法に有用な抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、グロフィタマブである。グロフィタマブ(Proposed INN: List 121 WHO Drug Information, Vol. 33, No. 2, 2019, page 276、また、CD20-TCB、RO7082859、またはRG6026としても知られている)は、B細胞上のCD20への二価結合およびT細胞上のCD3、特にCD3イプシロン鎖(CD3e)への一価結合のための2:1の分子構成を有する新規T細胞係合二重特異性全長抗体である。そのCD3結合領域は、可動性リンカーを介して、CD20結合領域のうちの1つにヘッドトゥーテールで融合している。この構造により、グロフィタマブは、1:1構成の他のCD20-CD3二重特異性抗体に対して優れたin vitro効力を有し、前臨床DLBCLモデルにおいて大きな抗腫瘍効果をもたらす。CD20の二価性は、競合する抗CD20抗体の存在下でこの効力を保全し、これらの薬剤による前治療または共治療の機会を提供する。グロフィタマブは、FcgRおよびClqへの結合を完全に消滅させた改変ヘテロ二量体化Fc領域を含む。ヒトCD20発現腫瘍細胞とT細胞上のT細胞受容体(TCR)複合体のCD3eに同時に結合することにより、グロフィタマブは、T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン放出に加えて腫瘍細胞の溶解を誘導する。グロフィタマブによるB細胞媒介性の溶解はCD20特異的であり、CD20が発現していない場合、またはT細胞のCD20発現細胞への同時結合(架橋)がない場合には起こらない。死滅に加えて、T細胞はCD3架橋により活性化し、これはT細胞活性化マーカー(CD25とCD69)、サイトカイン放出(IFNγ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-10)、細胞傷害性顆粒放出(グランザイムB)、およびT細胞増殖の増加によって検出される。アミノ酸配列を表2および3に示す。
【0101】
用語「二重特異性抗体治療」は、本明細書で使用される場合、二重特異性抗体を使用する治療を指す。
【0102】
用語「オントリートメント」期間は、本明細書で使用される場合、治療(または、治療のサイクル)の投与が開始されるときから始まり、治療(または、治療のサイクル)の投与が完了(事前定義された緩衝時間間隔により潜在的に延長される)が終了するまでの期間を指す。例えば、オントリートメント期間は、治療投与の完了の30分後に終了し得る。オントリートメント期間は、治療(または、治療のサイクル)が対象に注入される時間を含んでもよい。オントリートメント期間は、(例えば)、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、または少なくとも8時間であり得る。オントリートメント期間は、(例えば)、24時間未満、12時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間、または6時間未満であり得る。例えば、オントリートメント期間は、3~5時間の長さであり得る。別の例として、オントリートメント期間は、7~9時間の長さであり得る。オントリートメント期間は、複数の別個のオントリートメント時点、例えば、治療投与の中間に対応する時点および治療投与の終了に対応する時点を含む。
【0103】
用語「サイトカインのオントリートメントレベル」または「オントリートメントサイトカインレベル」は、本明細書で使用される場合、オントリートメント期間で収集された生物学的試料(例えば、血液試料または組織試料)において検出された特定のサイトカインのレベルを指す。複数の生物学的試料がオントリートメント期間で所定の対象から収集され、サイトカインレベルが各試料で決定された場合、サイトカインのオントリートメントレベルは、これらのサイトカインレベルの最大であると定義され得る。サイトカインのオントリートメントレベルは、(例えば)サイトカインの捕捉および検出抗体を、オントリートメント期間に収集された生物学的試料に導入することを使用して決定され得る。
【0104】
用語「ベースライン」期間は、本明細書で使用される場合、投与期間の開始によって終了する期間を指す。ベースライン期間は、治療が開始される時点まで延長することができ、その時点を含んでもよい。ベースライン期間は、前治療が投与される時間を含んでもよい。
【0105】
用語「サイトカインのベースラインレベル」または「ベースラインサイトカインレベル」は、本明細書で使用される場合、ベースライン期間で収集された生物学的試料(例えば、血液試料または組織試料)において検出された特定のサイトカインのレベルを指す。特定のサイトカインのベースラインレベルを特定するために処理される生物学的試料は、治療投与の開始前の事前定義された時間、または治療投与の開始前の事前定義された時間間隔内で収集された試料を含むことができるサイトカインのベースラインレベルは、(例えば)サイトカインの捕捉および検出抗体を、ベースライン期間の間に収集された生物学的試料に導入することを使用して決定され得る。
【0106】
対象の「ベースライン特性」という用語は、ベースライン期間の間に検出された対象の特性、ベースライン期間の前に検出されたが、静的であると推測された特性、静的である特性、または確定された方法で変化する特性を含む。例えば、対象にはベースライン期間の前に疾患のサブタイプが診断されたが、ベースライン期間それ自体にいずれのサブタイプ診断を含まない場合、対象の疾患が同じサブタイプのままであると推測され得る。よって、サブタイプはベースライン特性であり得る。別の例としては、対象の人種が、ベースライン期間の前、ベースライン期間の間、またはオントリートメント期間の間に記録され得るが、このタイプの特性が人生の全体にわたって一般に静的であることを考慮に入れると、人種はいつ記録されたかにかかわらずベースライン特性として特徴付けられてもよい。一方で、より動的な変数(例えば、年齢)では、ベースライン特性はベースライン期間の間に検出された値と定義され得る、および/またはベースライン期間の相対的時間に基づいて計算され得る。ベースライン特性は、ベースライン期間の間に収集された試料の査定に基づいてもよい。例えば、ベースライン特性は、悪性細胞が存在するか否かによって、および/または悪性細胞が体成分(試料が収集される)内に存在する程度によって特徴付けられてもよい。ベースライン特性は、ベースライン期間の間に収集された1つまたは複数の画像に基づいて決定され得る。例えば、ベースライン特性は、コンピュータ断層撮影(CT)画像または他の医用画像に基づいて腫瘍負荷または腫瘍拡散を特徴付けることができる。ベースライン特性は、静的な、または変動する人口統計学的属性および/または併存疾患(例えば、対象が任意の併存疾患を有するか否か、対象が特定のタイプの併存疾患を有するか否か、および/またはどのようなタイプの併存疾患を対象が有するか)を含むことができる。
【0107】
用語「サイトカイン倍率変化」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つのサイトカインレベルを使用して計算される値を指す。少なくとも2つのサイトカイン値は、サイトカインのベースラインレベルおよびサイトカインの任意の他のレベル(同じ対象に関連する)を含むことができる。例えば、サイトカインの任意の他のレベルは、サイトカインの別のベースラインレベル、サイトカインのオントリートメントレベル、またはオントリートメント期間の後に対象から収集された試料を使用して決定されたサイトカインのレベルを含むことができる。サイトカイン倍率変化は、サイトカインの他のレベルの対数から、サイトカインのベースラインレベルの対数を差し引くことに基づくことができる、または差し引いたものに等しいと定義され得る。対数は、任意の正の底(例えば、対数底2または対数底10)であり得る。
【0108】
用語「オントリートメントサイトカイン倍率変化」は、本明細書で使用される場合、サイトカインの他のレベルがサイトカインのオントリートメントレベルであるサイトカイン倍率変化を指す。
【0109】
用語「サイトカイン放出症候群リスクスコア」は、本明細書で使用される場合、サイトカイン放出症候群を経験する対象の予測リスクを表す1つまたは複数のベースライン特性を使用して生成されるスコア(すなわち、典型的には数値であるが、カテゴリであってもよい)を指す。予測リスクは、対象が任意のグレート、少なくとも閾値悪性度(例えば、悪性度2もしくはそれ以上)または特定の悪性度のサイトカイン放出症候群を経験するリスクであり得る。予測リスクは、対象が、所定の時間範囲、例えば、治療投与の開始または完了から始まる時間範囲、および事前定義された時間数または日数(例えば、1日、2日間、3日間、5日間、7日間もしくは14日間)の持続期間を有する時間範囲の範囲内でサイトカイン放出症候群を経験するリスクであり得る。
【0110】
用語「サイトカイン放出症候群リスク」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数のサイトカイン値、治療投与量または曝露、および1つまたは複数のリスクスコアから誘導されるスコア(典型的にはカテゴリであるが、数値であってもよい)を指す。
【0111】
用語「データ記録」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の指数に関連するデータのコレクションを指す。1つまたは複数の指数は、(例えば)所定の対象の特定、所定の時間および/または所定の期間に対応することができる。例えば、データ記録は、特定の時点で収集された特定の対象についての情報を含むことができる。データ記録は、対象(および潜在的に1つまたは複数の他の制約、例えば時点)を特定するクエリーを提供することによって検索されるデータの任意のコレクションを含むことができる。例えば、データ記録は、ファイル、表の横列、表の縦列、アレイのエレメント、全てのサブセットが1つまたは複数の指数に関連する記録データのサブセットなどを含むことができる。
【0112】
用語「治療投与量」、「治療の投与量」または「治療の少なくとも一部の投与量」は、本明細書で使用される場合、治療または治療の活性成分の投与量を指す。投与量は、治療の1つのサイクル(例えば、第1サイクル)で投与されたもの、または治療全体にわたって投与されたものであり得る。
【0113】
III.サイトカイン放出症候群リスクを予測する差次的なモニタリングのために対象を階層化する例示的なネットワーク
図1は、いくつかの実施形態によるサイトカインリスク症候群事象を経験する1人または複数人の個別の対象のリスクを予測する示差的なモニタリングまたは治療のために対象を階層化する、例示的ネットワーク100を示す。ネットワーク100は、ユーザ装置110からリクエストを受け取り、特定の対象がサイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも特定の悪性度のもの、および/または事前定義された期間内のもの)を後に経験するリスクを予測するサイトカイン放出症候群予測質テム105を含む。ユーザ装置110は、(例えば)医師、看護師、医療技術者または臨床研究のコーディネーターにより操作され得る。リクエストは、特定の対象を名前および/または1つもしくは複数の識別子(例えば、社会保障番号または特有の識別子)によって特定することができる。リクエストは、特定の対象が診断されている疾患、ならびに/または特定の対象が処方されている、および/もしくは受けている治療を特定することができる。
【0114】
III.A.例示的な対象特性
特定の対象には、がん、例えば非ホジキンリンパ腫が診断され得る。
【0115】
III.A.I.非ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫は、世界中で10番目に最も一般的ながんである、組織および分子の悪性腫瘍である。一年間に280,000件を超える非ホジキンリンパ腫の新たな症例が世界中で診断されている。特定の対象は、任意の地理的地域に居住していても、出生していてもよい。非ホジキンリンパ腫の発生率は地理的地域によって変わるが、非ホジキンリンパ腫の発生率の高い地域は、北アメリカ、ヨーロッパおよびオーストラリア、ならびにアフリカのおよび南アメリカのいくつかの国々である。米国がん協会によると、非ホジキンリンパ腫は、米国において最も一般的ながんの1つであり、全てのがんの約4%を占める。2021年には、米国の約81,500人に非ホジキンリンパ腫が診断され、約20,720人がこのがんで死亡している。
【0116】
非ホジキンリンパ腫は任意の年齢で起こり得るので、特定の対象は任意の年齢であり得る。事実、小児、十代および青年の間で最も一般的ながんの1つである。全体として、男性がその人生で非ホジキンリンパ腫を発生する機会は41人あたり約1人である。女性では、リスクは53人あたり約1人である。しかし、各人のリスクは、いくつかのリスク因子により影響され得る。非ホジキンリンパ腫を有する多くの人々は、明確なリスク因子を有していない。複数のリスク因子を有し、非ホジキンリンパ腫をいっさい発生しない可能性もある。非ホジキンリンパ腫のリスクを増加し得るいくつかの因子は、高齢(診断されたときに大部分の人々が60歳以上である);免疫抑制薬の使用;感染、特にHIV、エプスタイン・バーウイルスまたはヘリコバクター・ピロリによる感染;ならびにある特定の化学薬品への曝露、例えば除草剤および殺虫剤への曝露を含む。
【0117】
非ホジキンリンパ腫は、ホジキンリンパ腫を除く全てのタイプのリンパ腫のグループ名である。非ホジキンリンパ腫は、免疫系の一部であるリンパ球(白血球)から全て生じる血液がんの多様な群である。これらの細胞は、リンパ節、脾臓、胸腺、骨髄および身体の他の部分にある。非ホジキンリンパ腫は、臓器、例えば、皮膚、胃および腸に見出され、リンパ節およびリンパ組織に一般に発生し、いくつかの場合には骨髄および血液における関与を呈する。
【0118】
非ホジキンリンパ腫は、細胞がリンパ節の中にあるとき、または変異を受けている別のリンパ構造内にあるときに発生する。疾患は、感染と戦う抗体を産生するBリンパ球(B細胞);伴Bリンパ球を抗体の産生で援助することを含む、いくつかの機能を保有するTリンパ球(T細胞);またはウイルス感染細胞もしくは腫瘍細胞を攻撃するナチュラルキラー(NK)細胞から出発することができ、非ホジキンリンパ腫症例のおよそ85~90パーセントは、対象のB細胞から出発する。突然変異または異常リンパ球は、制御されない増殖を呈し、蓄積して腫瘍を形成する多くの異常細胞を産生する。最後には、非ホジキンリンパ腫が未治療のまま放置される場合、異常細胞(すなわち、がん性細胞)は、正常な白血球に密集し、免疫系は感染に対して有効に保護することができない。
【0119】
非ホジキンリンパ腫の初期は、多くの場合に無症候である。したがって、通常の健康診断が、非ホジキンリンパ腫の公知のリスク因子(例えば、HIV感染、臓器移植、自己免疫疾患または以前のがん治療)を有する人々にとって重要である。これらの人々は、多くの場合にリンパ腫にはならないが、彼らの医師は、典型的には、リンパ腫の可能性のある症状および徴候について気を配っている。非ホジキンリンパ腫を有する対象における最も一般的な症状の1つは、頸部、腋窩または鼠径部にある1つまたは複数のリンパ節の腫脹である。時折、疾患は、リンパ節以外の部位から出発し、例えば、骨、肺、胃腸管または皮膚である。これらの状況では、対象は、特定の部位に関連する症状を経験し得る。徴候および症状は変わるが、一般的な症状は、また、未解明な発熱、寝汗、持続性疲労、食欲不振、未解明な体重減少、咳または胸部痛、腹部痛、腹部膨満、皮膚の痒み、脾臓または肝臓の腫脹、および発疹または皮膚のしこりも含む。特定の対象は、上記の症状のうちの任意の1つまたは複数を経験したことがある、または経験していることがある。
【0120】
III.A.1.a非ホジキンリンパ腫の診断
特定の対象は、診断が疑われた(例えば、症状に基づいて)後に非ホジキンリンパ腫が診断されていることがある。診断は、疾患を管理するために有効な治療の処方を促進することができる。
【0121】
身体検査に加えて、感染または他の疾患を除外するために血液および尿検査が多くの場合に実施された。例えば、X線、CT、MRIまたは陽電子放射断層撮影(PET)などの画像検査を使用して、身体全体にわたって腫瘍を検出することができる。関わるリンパ節または他の腫瘍部位の生検を使用して、非ホジキンリンパ腫の診断およびサブタイプを確証した。さらなる検査は、試料中のがん細胞の特定のタイプを特定するための免疫表現型検査もしくはフローサイトメトリー、細胞における染色体変化もしくは異常を探すための細胞遺伝学的分析、および/または対象のがん性細胞に差次的に発現した遺伝子を特定するための遺伝子発現プロファイリングを含むことができる。
【0122】
特定の対象には、任意の種類の非ホジキンリンパ腫、例えば、世界保健機関(WHO)により特定されている非ホジキンリンパ腫の60を超えるサブタイプのうちの1つまたは複数が診断されていることがある。これらのサブタイプは、リンパ腫細胞の特性によってカテゴリ化され、これらの外観、特定の細胞表面タンパク質の存在およびこれらの遺伝子プロファイルが含まれる。非ホジキンリンパ腫の徴候、症状および治療が、サブタイプおよび疾患の進行速度に応じて変わり得ることを考慮に入れると、疾患進行の正確な診断およびモニタリングは、所定のサブタイプを治療する治療を特定すること、および特定の対象における現在の進行を特定するために重要である。
【0123】
病理学は、多くの場合に非ホジキンリンパ腫を悪性度で記載する。高悪性度リンパ腫は、迅速に成長し、かつ正常な細胞と異なる形態を有する細胞を有する。低悪性度リンパ腫は、正常な細胞にかなり似ており、ゆっくりと増える。中悪性度リンパ腫は、これらの中間に位置する。これらのタイプの挙動も、無痛性および侵襲性と記載される。
【0124】
病理学者が高悪性度または中悪性度リンパ腫を記載する場合、これらのタイプのリンパ腫は、通常は体内で素早く成長し、それによってこれらの2つのタイプのリンパ腫は、侵襲性リンパ腫と考察される。一方で低悪性度非ホジキンリンパ腫は、ゆっくりと成長し、これらのリンパ腫は無痛性リンパ腫と呼ばれる。病理学者は、また、非ホジキンリンパ腫を濾胞性またはびまん性リンパ腫と分類する。濾胞性リンパ腫では、がん細胞は、それ自体を、濾胞と呼ばれる球状クラスターに配置する。びまん性非ホジキンリンパ腫では、細胞はクラスター化することなく拡散する。一般に、低悪性度非ホジキンリンパ腫または無痛性非ホジキンリンパ腫は、濾胞に見え、中悪性度または高悪性度非ホジキンリンパ腫(侵襲性非ホジキンリンパ腫)は、生検スライドでびまん性に見える。
【0125】
侵襲性リンパ腫は、全ての非ホジキンリンパ腫症例の約60パーセントを占め、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が、最も一般的な侵襲性非ホジキンリンパ腫サブタイプである。無痛性リンパ腫は、ゆっくりと移動し、最初に診断されたときには、ゆっくりと成長し、徴候および症状をほとんど有さない傾向がある。低悪性度または無痛性サブタイプは、全ての非ホジキンリンパ腫症例の約40パーセントを表し、濾胞性リンパ腫(FL)が無痛性非ホジキンリンパ腫の最も一般的なサブタイプである。いくつかの場合において、無痛性非ホジキンリンパ腫は、侵襲性非ホジキンリンパ腫に形質転換し得る。対象の疾患進行速度が無痛性と侵襲性の間である場合、対象は中悪性度疾患を有すると考察される。
【0126】
表4は、WHO分類に基づき、細胞タイプ(B歳、T細胞またはNK細胞)および進行速度(侵襲性または無痛性)によりカテゴリ化された非ホジキンリンパ腫のいくつかの診断名を提供する。列挙された百分率は、最も一般的な非ホジキンリンパ腫サブタイプの診断症例の頻度を反映する。
【0127】
特定の対象は、表4に示されているリンパ腫サブタイプのいずれかが診断されていることがある、および/または有していることがある。特定の対象は、診断が疑われた(例えば、症状に基づいて)後に非ホジキンリンパ腫が診断されていることがある。診断は、疾患を管理するために有効な治療の処方を促進することができる。
【0128】
診断は、また、がんの位置、がんの影響を受けたリンパ節の数および疾患が身体の元の部位から他の部分、例えば肝臓または肺へ拡散しているか否かを特定するために、非ホジキンリンパ腫の悪性度診断または病期診断も含むこともできる。大多数のリンパ腫は、結節性リンパ腫であり、すなわち、リンパ節に由来する。しかし、リンパ腫は人体のどこにでも生じ得る。リンパ腫が主に結節に存在する場合、結節性疾患と称される。時折、大部分のリンパ腫は、リンパ系の一部ではない臓器、例えば、胃、皮膚または脳にあり得る。これらの例では、リンパ腫は節外性と称される。結節性および節外性は、疾患の原発部位を指す。リンパ腫は、リンパ節で発展し、続いて他の構造に関与する。これらの場合では、節外性関与を有する結節性リンパ腫と称される。
【0129】
特定の対象は、様々な病期の以下の定義に基づいて非ホジキンリンパ腫の悪性度に割り当てられ得る。
・病期I:がんは、単一の領域または臓器、通常は1つのリンパ節および周囲域に見出される。
・病期II:がんは、横隔膜の上側または下側のいずれかの同じ側面の2つ以上のリンパ節領域に見出される。
・病期III:がんが、隔膜の両側のリンパ節に見出される。がんが、リンパ系の外側にもある場合、病期IIIEと呼ばれる。脾臓にもある病期IIIリンパ腫は、病期IIISである。病期IIISであり、リンパ系の外側に拡散している場合、病期IIIE+Sである。
・病期IV:がんは、肝臓、肺または骨などのリンパ系の外側の1つまたは複数の組織または臓器に拡散しており、これらの臓器の近くまたは遠くにあるリンパ節に見出され得る。
・病期V:死亡。
【0130】
III.A.1.b.非ホジキンリンパ腫の治療
特定の対象は、サイトカイン放出症候群をトリガする潜在性を有する治療を受けるように処方されていることがある、または既に受けていることがある。治療は、(例えば)下記のセクションII.A.1.b.i.またはIII.A.1.b.ii.において特定されている治療を含んでもよい。特定の対象は、治療が投与される前に前治療を受けるようにさらに処方されていることがある、または既に受けていることがある。前治療の範囲内の組成物および/または活性剤は、治療のものと同一であっても異なっていてもよい。
【0131】
非ホジキンリンパ腫の治療は、非ホジキンリンパ腫のサブタイプ、進行速度および/または疾患の病期によって左右され得る。徴候および症状を引き起こさないリンパ腫は、数年間にわたって治療を必要としないことがある。いくつかの場合では、初期がんが小さい場合、腫瘍を生検で除去することができ、さらなる治療を提供しないことがある。しかし、非ホジキンリンパ腫が侵襲性である、または徴候および症状を引き起こす場合、治療は多くの場合に処方される。
【0132】
無痛性非ホジキンリンパ腫の治療は、成り行きを見守る(wait-and-see)手法から侵襲的療法までの範囲であり得る。
【0133】
III.A.1.b.i.無痛性サブタイプ
特定の対象は、無痛性サブタイプの非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)が診断されていることがある。無痛性非ホジキンリンパ腫の管理は、予後因子、疾患病期、年齢および他の医学的状態によって左右される。濾胞性リンパ腫は、最も一般的なタイプの無痛性非ホジキンリンパ腫であり、非常にゆっくりと成長する疾患である。幾人かの対象への治療は数年間にわたって推奨されることはなく、一方で他は、広範囲のリンパ節または臓器関与を有していることがあり、よって、即時治療が推奨され得る。対象の少ない割合において、濾胞性リンパ腫は、より侵襲性の疾患に形質転換し得る。
【0134】
悪性度1または悪性度2の濾胞性リンパ腫は、定期検査および画像検査または放射線療法を伴う、成り行きを見守る手法により治療され得る。放射線療法は、がんが身体の一部のみにある初期非ホジキンリンパ腫の治療に最も多く使用されている。治療は、通常、短時間に、毎日のセッションにより通常は長くても3週間にわたって与えられる。いくつかの例において、初期の無痛性非ホジキンリンパ腫は、化学療法、放射線療法と組み合わせた化学療法、または免疫療法、例えばモノクローナル抗体療法と組み合わせた化学療法により治療され得る。リツキシマブ(Rituxan(登録商標))(Genentech,San Francisco,CA)は、多くの異なるタイプのB細胞非ホジキンリンパ腫の治療に使用されるモノクローナル抗体である。リツキシマブは、B細胞およびB細胞非ホジキンリンパ腫の表面上のCD20を標的にすることによって作用する。抗体がB細胞上のCD20に結合すると、対象の免疫系は活性化されて、いくつかのリンパ腫細胞を破壊する、またはリンパ腫細胞を化学療法による破壊に、より感受性があるようにする。リツキシマブは、それ自体良好に作用し得るが、研究は、大部分のタイプのB細胞非ホジキンリンパ腫を有する対象への化学療法に加えられたときに、さらに良好に作用することを示している。リツキシマブは、また、寛解の長さを増やすために無痛性リンパ腫の寛解後に与えられる。リンパ腫への使用がFDAにより承認されている、CD20に対する他のモノクローナル抗体があり、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、リツキシマブ-abbs(Truxima(登録商標))、リツキシマブ-arrx(Riabni(登録商標))、およびリツキシマブ-pvvr(Ruxience(登録商標))である。
【0135】
悪性度によりリンパ腫を分類することに加えて、幾人かの対象は、また、再発性または再発濾胞性リンパ腫を有すると分類される。濾胞性リンパ腫の国際予後指標(FLIPI)は、濾胞性リンパ腫を有する対象のうちで、どの対象に疾患再発の高いリスクがあり得るかを予測するために使用されるスコア付けシステムである。1ポイントが以下のリスク因子(NoLASHの頭字語によって公知である)のそれぞれに割り当てられる。
・関与する結節-5つ以上
・乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル-正常の上限より高い
・60歳を超える年齢
・悪性度3または悪性度4の疾患
・ヘモグロビン濃度-12g/dL未満
【0136】
リスクは次の通りに分類される。低リスク:0~1ポイント、中間リスク:2ポイント、および高リスク:3~5ポイント。
【0137】
大きなリンパ節を有する悪性度2の濾胞性リンパ腫、悪性度3の濾胞性リンパ腫、または悪性度4の濾胞性リンパ腫もしくは進行期再発性濾胞性リンパ腫を有する対象では、治療は、症状、対象の年齢および健康状態、疾患の程度、および対象の選択に基づいている。他の治療選択肢は、症状を引き起こしているリンパ節への、もしくは存在する場合には大きな局在化腫瘤への放射線療法、または免疫療法(リツキシマブ)と一緒にした化学療法(単一の化学療法薬として、もしくは化学療法併用として)を含む。
【0138】
化学療法剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、クロラムブシル、ベンダムスチン、イホスファミド)、白金薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチン)、プリン類似体(例えば、シタラビン(ara-C)、ゲムシタビン、メトトレキセート、プララトレキセート)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはリポソームドキソルビシン)、ビンクリスチン、ミトキサントロン、エトポシド(VP-16)、ならびにブレオマイシンを含むがこれらに限定されない。多くの場合、異なる群の薬物が組み合わされる。最も一般的な組合せのうちの1つは、CHOPと呼ばれ、シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシンとしても公知である)、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))およびプレドニゾンを含む。別の一般的な組合せであるCVPは、ドキソルビシンを含まない。CHOPまたはCVPは、リツキシマブと組み合わせて(CHOP-RまたはCVP-R)投与され得る。
【0139】
大きなリンパ節を有する悪性度2の濾胞性リンパ腫、悪性度3の悪性度の濾胞性リンパ腫、または進行性悪性度の再発性濾胞性リンパ腫を有する幾人かの対象は、幹細胞移植(自家性および同種異系)により、またはキナーゼ阻害剤(例えば、イデラリシブ(Zydelig((登録商標))コパンリシブ(Aliquopa((登録商標))およびデュベリシブ(Copiktra(商標));レナリドミド(Revlimid(登録商標));またはタゼメトスタット(Tazverik(商標)))を用いる標的化療法により治療され得る。
【0140】
対象が受けることになっている、または受けた治療は、二重特異性抗体を含んでもよい。二重特異性抗体は、難治性または再発性の濾胞性リンパ腫を有する対象への免疫療法薬として提供または推奨され得る。二重特異性T細胞係合抗体(BiTE)およびノブ・イントゥー・ホール抗体(KIH)二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合する例示的な抗体に基づく分子改変であり、一方が悪性細胞を標的にし、他方がエフェクター細胞、通常は、腫瘍細胞破壊を媒介するTリンパ球を標的にする。T細胞依存性二重特異性であるモスネツズマブ(Genentech)およびKIH T細胞二重特性であるグロフィタマブ(Genentech)は、両方ともCD20およびCD3に特異的に結合し、両方ともT細胞係合二重特異性抗体であり、再発性濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む複数のタイプの非ホジキンリンパ腫の治療に使用することができる。
【0141】
グロフィタマブ(RO7082859、RG6026としても公知である)およびモスネツズマブは、悪性B細胞に係合し、排除することをT細胞に再指示するように設計される、治験中の完全長CD20およびCD3標的化T細胞特異的抗体である(Bacacら、Clin.Cancer Res.doi:10.1158/1078-0432.CCR-18-0455;Sunら、Science Translational Medicine 7(287):287ra70;DOI:10.1126/scitranslmed.aaa4802)。これらの抗体は、T細胞の表面上のT細胞受容体の成分であるCD3に同時に結合しながら、大多数分のB細胞悪性腫瘍に発現するB細胞表面タンパク質であるCD20に結合するように設計される。強力な免疫刺激を誘導するT細胞指向性療法は、サイトカイン放出症候群のリスクを有し、これらの用量および有用性を潜在的に制限している。グロフィタマブおよびモスネツズマブは、Fc結合部位の標的化突然変異を含有して、誘引T細胞の不要な溶解およびオフターゲット毒性(例えば、サイトカイン放出症候群)を軽減する。
【0142】
濾胞性リンパ腫は、侵襲性の大細胞型B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に形質転換する小さなリスクを有する。特定の対象には、侵襲性の大細胞型B細胞リンパ腫が(例えば、濾胞性リンパ腫が以前に診断された後に)診断されていることがある。
【0143】
形質転換B細胞濾胞性リンパ腫を有する対象は、単独の、または化学療法と組み合わせたリツキシマブ療法によって利益を受けることができる。他の選択肢は、アキシカブタゲンシロロイセル(Yescarta(登録商標))およびチサゲンレクルロイセル(Kymriah(登録商標))を含み、両方ともCAR T細胞療法である。典型的なCAR-T細胞療法プロトコールでは、T細胞は、対象の血液から収集され、T細胞がキメラ抗原受容体(CAR)をT細胞表面上に産生するように修飾される。これらのCAR-T細胞は対象に最注入され、そこでCARは対象の腫瘍細胞の特異的抗原に結合し、腫瘍細胞を死滅させる。例えば、Lullaら、“The Use of Chimeric Antigen Receptor T Cells in Patients with Non-Hodgkin Lymphoma,Clin.Adv.Hematol.Oncol.16(5):375-386(2018)を参照すること。上記に記述されたように、二重特異性抗体療法、例えば、グロフィタマブまたはモスネツズマブを使用して、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療することもできる。
【0144】
皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は、非ホジキンリンパ腫症例の約4%までを構成する一群の無痛性非ホジキンリンパ腫である。CTCLは、主に皮膚において発展し、成長してリンパ節、血液および他の臓器に関与し得る。菌状息肉症は、最も一般的なタイプのCTCLであり、顕著な皮膚関与が特徴付けられる。悪性リンパ腫が侵入し、血液中に蓄積する場合、疾患はセザリー症候群と呼ばれる。CTCLの療法は、皮膚病変の性質および疾患がリンパ節に存在するか否かによって左右される。
【0145】
局所療法は、多くの場合に皮膚病変の治療に使用される。これらは、皮膚に薬物を直接適用すること、ならびに皮膚病変を紫外線療法または電子ビーム療法を介して光に曝露することを含む。紫外線をソラレン(光に曝露されると活性化される薬物)と一緒に使用する併用療法(PUVA)も使用される。リンパ節および他の区域の広範囲な関与がある場合、化学療法または体外循環式光化学療法を使用することができる。光化学療法は、白血球がアフェレーシスにより除去され、ソラレンで処理され、紫外線Aに曝露され、次いで対象の血流に戻される方法である。
【0146】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(IV点滴により与えられる、ロミデプシン(Istodax(登録商標))および経口で与えられる、ボリノスタット(Zolinza(登録商標))、ならびにモノクローナル抗体(IVで与えられる、モガムリズマブ(Poteligeo(登録商標))の投与は、以前に全身療法を受けていた再発性疾患または難治性疾患のいずれかを有する成人対象の治療に指示される。
【0147】
III.A.1.b.ii.侵襲性サブタイプ
侵襲性非ホジキンリンパ腫を有する対象は、頻繁に、4つ以上の薬剤から構成される化学療法で治療される。ほとんどの場合、これは、上記に記載されたCHOPまたはR-CHOP併用療法である。この集中的な多剤化学療法は、侵襲性リンパ腫の非常に有効であり得、治癒が達成されている。化学療法には、例えば、非ホジキンリンパ腫の大きな腫瘤が診断および病期診断過程で見出される場合、選択された症例において化学療法を補うことができる。
【0148】
多くのタイプの侵襲性非ホジキンリンパ腫があるが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が最も一般的な非ホジキンリンパ腫サブタイプであり、米国における全ての非ホジキンリンパ腫症例の約31パーセントまで構成する。リンパ節で素早く成長し、頻繁に脾臓、肝臓、骨髄または他の臓器に関与する。通常、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の発展は、頸部または腹部のリンパ腫から出発し、大細胞型B細胞の塊によって特徴付けられる。加えて、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、多くの場合、B症状(発熱、寝汗、および6か月にわたる10パーセントを超える体重の減少)を経験する。幾人かの対象では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は初めの診断であり得る。他の対象では、無痛性リンパ腫、例えば、小リンパ球性リンパ腫または濾胞性リンパ腫は形質転換し、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫になる。治療は、CHOP、用量調整EPOCH-R(用量調整エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、シクロホスファミド、ヒドロキシドキソルビシン(ドキソルビシン)+リツキシマブ、ならびにリツキシマブおよびヒトヒアルロニダーゼ(Rituxan Hycela(商標))を含む。二重特異性抗体療法、例えば、グロフィタマブまたはモスネツズマブを使用して、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療することもできる。
【0149】
いくつかのタイプの侵襲性非ホジキンリンパ腫は、標準的な用量の化学療法に応答しない、または再発の高いリスクを有する。医師は、これらの症例のいくつかを治療するために、高用量の化学療法を与え、続いて幹細胞移植を与えることを考察してもよい。いくつかの例において、再発性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を、CAR-T細胞療法により、例えば、Yescarta(登録商標)、Kymriah(登録商標)またはBreyanzi(リソカブタゲンマラルロイセル)により治療することができる。アキシカブタゲンシロロイセル(Yescarta(登録商標))は、少なくとも2つの以前のタイプの治療を受けていたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する対象の治療に承認されている、CAR T細胞療法である。チサゲンレクルロイセル(Kymriah(登録商標))は、2つ以上の以前の全身治療の後に、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む難治性B細胞リンパ腫の治療が承認されている別のCAR T細胞療法である。さらなるCAR T細胞療法が開発中であり、臨床試験で研究されている。リソカブタゲンマラルロイセル(Breyanzi(登録商標))は、2つ以上の分野の全身療法の後に、再発性または難治性大細胞型B細胞リンパ腫を有する成人に承認されているCAR T細胞療法である。特定不能のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ種、および濾胞性リンパ腫の治療に使用され得る。
【0150】
ポラツズマブベドチン-piiq(Polivy(登録商標))は、CD79bを標的にするモノクローナル抗体である。ポラツズマブは、少なくとも2つの他の治療の後に再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するために、ベンダムスチンおよびリツキシマブと組み合わせて使用される。
【0151】
タファシタマブ-cxix(Monjuvi(登録商標))は、CD19分子を標的にするモノクローナル抗体である。自家性骨髄/幹細胞移植を受けることができない人において再発性または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するために、レナリドミドと組み合わせて使用され得る。
【0152】
バーキットリンパ腫は、非常に迅速に成長および拡散する侵襲性のB細胞サブタイプである。顎、顔の骨、腸、腎臓、卵巣、骨髄、血液、中枢神経系(CNS)および他の臓器に関与し得る。バーキットリンパ腫は、脳および脊髄(CNSの一部)に拡散していることがあり、したがって、バーキットリンパ腫の拡散を防止する治療は、いずれの治療レジメンにも頻繁に含まれている。医師は、典型的には、高度に侵襲性の化学療法を使用して、この非ホジキンリンパ腫のサブタイプを治療する。一般的に使用されるレジメンは、IVAC(イホスファミド、エトポシドおよび高用量シタラビン)と交互のCODOX-M/IVAC(シクロホスファミド、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、ドキソルビシンおよび高用量のメトトレキセート);メトトレキセートおよびシタラビンと交互の高CVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))およびデキサメタゾン)を含む。小規模の研究において、リツキシマブは高CVADと組み合わせて使用され、DA-EPOCH-R(用量調整エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、シクロホスファミド、ドキソルビシン+リツキシマブ)に使用された。
【0153】
侵襲性または無痛性非ホジキンリンパ腫として存在し得るマントル細胞リンパ腫(MCL)は、リンパ節のマントル層のリンパ球に由来し、非ホジキンリンパ腫症例の約6%を表す。リンパ節から始まって、脾臓、血液、骨髄および時には食道、胃および腸に拡散する。幾人かの対象は、疾患の徴候または症状を示さないので、治療の遅延が彼らの選択肢になり得る。しかし、大部分の対象は診断後に治療を開始する必要がある。標準治療は、自家性幹細胞移植を用いる、または用いない組合せ化学療法レジメンである。一般的な治療レジメンは、ベンダムスチン+リツキシマブを含み、ビンクリスチンの代わりにボルテゾミブが使用されるCHOPの一形態である。以下の薬剤が再発性および難治性MCLのために指示されており、経口で与えられるアカラブルチニブ(Calquence(登録商標));IVまたは皮下注射で与えられるボルテゾミブ(Velcade(登録商標));経口で与えられるイブルチニブ(Imbruvica(登録商標));経口で与えられるザヌブルチニブ(Brukinsa(商標));および経口で与えられるレナリドミド(Revlimid(登録商標))である。標準的または強度軽減移植前治療による同種異系移植が、第二選択療法後に寛解を達成した、再発性および難治性MCLを有する対象に考察され得る。ブレクスカブタジェンアウトルーセル(Tecartus(登録商標))は、再発性または難治性のマントル細胞リンパ腫を有する成人のために承認されている。
【0154】
末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は、成熟T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞から発展する希な侵襲性の非ホジキンリンパ腫の一群である。これらは、非ホジキンリンパ腫症例のおよそ10パーセントを占める。特定不能のPTCL(PTCL NOS)は、PTCLの最も一般的なサブタイプであり、PTCL症例の約30パーセントを占める。PTCLの大部分のサブタイプでは、初期治療は、典型的には組合せ化学療法レジメンであり、例えば、CHOP、CHOEP(エトポシド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)、または他の多剤レジメンである。PTCLを有する大部分の対象が再発するので、幾人かの医師は、高用量の化学療法、その後に自家性幹細胞移植を推奨した。CD30発現PTCLでは、ブレンツキシマブベドチン(Adecetris(登録商標))は、初期治療にシクロホスファミド、ドキソルビシン、およびプレドニゾンと組み合わせて使用することが承認されている。ブレンツキシマブベドチンは、別のタイプのモノクローナル抗体であり、抗体-薬物コンジュゲートと呼ばれる。抗体-薬物コンジュゲートは、がん細胞上の標的に結合し、次いで少量の化学療法または他の毒素を腫瘍細胞に直接放出する。化学療法と組み合わせたブレンツキシマブベドチンは、ある特定のタイプの末梢性T細胞リンパ腫、例えば、CD30タンパク質を発現する限り、特定不能の末梢性T細胞リンパ腫を有する成人の治療に承認されている。
【0155】
III.A.1.c.非ホジキンリンパ腫の治療の副作用
非ホジキンリンパ腫の各タイプの治療は、可能性のある副作用の異なるセットを有し、これらは軽度から重度の範囲であり得る。免疫療法、化学療法、放射線療法またはこれらの組合せに関連する一般的な副作用は、貧血(低赤血球)、血小板減少症(低血小板)、好中球減少症(低白血球)、感染リスク、悪心、嘔吐、腸の問題、疲労、ブレインフォグ、脱毛症、末梢性神経障害、皮膚乾燥、口腔粘膜炎、睡眠障害、早発閉経および繁殖力低下を含む。特に免疫療法は、より重度の副作用、例えば、肺炎症、糖尿病、下垂体炎(下垂体の炎症)またはサイトカイン放出症候群をトリガし得る。したがって、医療提供者は、典型的には、免疫療法、特に二重特異性T細胞係合抗体またはCAR-T細胞療法を受けた、非ホジキンリンパ腫を有する任意の対象において、サイトカイン放出症候群を注意深くモニターする。
【0156】
III.B.例示的なベースライン特性の主要な供給源
サイトカイン放出症候群予測システム105は、1つまたは複数の供給源(例えば、1つもしくは複数のデータ格納または1つもしくは複数の計算システム)から、特定の対象についての情報を要求および/または検索することができる。例えば、サイトカイン放出症候群予測システム105は、ベースライン特性データ格納115から対象のベースライン特性のセットを検索することができる。(
図1は、ベースライン特性データ格納115を単一のデータ格納として描写しているが、ベースライン特性は、代わりに、複数の別個のベースライン特性データ格納115に格納またはそれらから検索され得ることが理解される。)それぞれのベースライン特性は、ベースライン期間の間に検出された対象の特性、ベースライン期間の前に検出されたが、静的であると推測された特性、静的である特性、または確定された方法で変化する特性を含む。ベースライン特性は、医療提供者システム120、画像化システム125または検査システム130から受け取ったデータに基づいて決定され得る。それぞれのベースライン特性は、ベースライン特性データ記録内に格納され得、これはベースライン特性データ格納115に格納され得る。それぞれのベースライン特性データ記録は、特定の対象に関連し得る。いくつかの例において、ベースライン特性データ記録は、特定の対象がベースライン特性により特徴付けられる特定の時点に関連する。
【0157】
III.B.1.医療提供者システム
医療提供者システム120は、特定の対象の1つまたは複数の現在の特性、特定の対象に関連する1つまたは複数の医学的査定、特定の対象に以前に処方または投与された1つまたは複数の治療の明細、特定の対象により経験された1つまたは複数の医学的事象を表す、対象のデータを検出する1つまたは複数の計算システムを含むことができる。
【0158】
特定の対象の過去または現在の特性は、(例えば)人口統計学的特性(例えば、年齢、人種、性別)、地域特性(例えば、居住都市)、職業的特性(例えば、現在または以前の職業の特定)、現在または以前の症状、病歴情報(例えば、1つもしくは複数の診断、以前の有害事象、特定の対象により報告された併存疾患、および/または1つもしくは複数の疾患タイプに関連する家族歴を特定することができる。特定の対象の過去または現在の医学的査定は、(例えば)現存するまたは新たな診断(例えば、疾患、疾患の状態、疾患サブタイプの特定)、院内評価の結果(例えば、所定のタスクがどれほど上手に実行できたか、任意の医学的な異常が観察されたか、バイタルサインなどの査定)および/または医療専門家の診断による併存疾患を含むことができる。医学的査定は、(例えば)同じまたは異なる医療提供者システム120に関わる医師または看護師により実施され得る。以前の治療の明細は、特定の対象に以前に投与された医薬の特定、いつ医薬が投与されたかの指示(例えば、1つもしくは複数の日数、または1つもしくは複数の年数の特定)、医薬の1つもしくは複数の投与量、投与経路、および/または治療スケジュール(例えば、どれほどの投与量が受け取られたか、および投与量の相対的タイミングの特定)を含むことができる。特定の対象により経験された医学的に関連する事象は、症状、有害事象、外科手技、入院を含むことができる。
【0159】
いくつかの、または全ての対象データは、医療提供者システム120のインプット構成要素を介して受け取られた入力を処理することにより、医療提供者システム120において検出され得る。入力構成要素は、キーボード、カメラ、スキャナ、マイクロフォン、マウス、トラックパッドなどを含むことができる。入力は、(例えば)医療提供者からの医学的注意点、特定の対象により完了されたフォーム、医療提供者からの処方順序などに相当する。追加的または代替的に、いくつかの、または全ての対象データは、電子健康記録から引用され得る。
【0160】
ベースライン期間の間に検出された、ベースライン期間の前に検出されたが、静的であると推定された、静的である、または確定された方法で変化した対象データは、ベースライン特性であり、ベースライン特性データ格納115に格納され得る。ベースライン特性は、特定の対象の識別子に関連して格納され得る。
【0161】
医療提供者システム120は、特定の対象に現在処方されている、または投与されている治療の1つまたは複数の明細をさらに特定することができる。1つまたは複数の治療明細は、医薬、投与量、投与経路、および/または治療スケジュールを特定することができる。1つまたは複数の治療明細は、前治療剤、前治療の投与量、または前治療のタイミング(最初の治療投与量に対する)を特定することができる。前治療剤は、CD3二重特異性抗体ではない薬剤を含むことができる。例えば、前治療剤は、オビヌツズマブを含むことができる。
【0162】
医薬(例えば、CD3二重特異性抗体)の複数の異なる投与量が、治療の過程で投与される場合、治療スケジュールは、異なる投与量が投与される相対的時間を特定することができる。例えば、治療明細のセットは、10mgのグロフィタマブが最初の治療日に投与され、16mgのグロフィタマブが最初の治療日の27日後に投与されることを特定することができる。複数の異なる医薬が、治療の過程で投与される場合、治療スケジュールは、異なる医薬が投与される相対的時間を特定することができる。例えば、治療明細のセットは、10mgのグロフィタマブが最初の治療日に投与され、10mgのグロフィタマブと1000mgのオビヌツズマブの組合せが、最初の治療日の16日および35日後にそれぞれ投与されることを特定することができる。1つまたは複数の治療投与量を、治療投与量データ格納135に、特定の対象の識別子に関連付けて格納することができる。いくつかの例において、治療明細(治療投与量データ格納135に格納されている)は、治療(または、対応する前治療)が開始される時間をさらに特定することができる。
【0163】
III.B.2 画像化システム
画像化システム125は、医用画像を収集および/または査定する1つまたは複数の計算システムを含む。医用画像は、(例えば)コンピュータ断層撮影(CT)画像、X線、磁気共鳴画像化(MRI)スキャン、陽電子放射断層撮影(PET)スキャン、またはデジタル病理画像であり得る。よって、医用画像は、(例えば)CT機器、X線機器、MRI機器、PET機器、または顕微鏡を使用して収集され得る。いくつかの例において、画像化システム125は、医用画像を収集する機器または装置を含む。いくつかの例において、医用画像は、遠隔画像化機器または装置を使用して収集され、画像化システム125へ転送される(例えば、画像化システム125に応答して、画像のリクエストを送信する)。
【0164】
医用画像(例えば、CT画像、X線、MRIスキャン、またはPETスキャン)は、潜在的に造影剤が特定の対象に投与されたに後、特定の対象の一部分の画像化によってに収集され得る。医用画像は、二次元画像であっても、三元画像であってもよい。いくつかの例において、複数の二次元画像が収集される。医用画像は、コンピュータビジョンアルゴリズム(例えば、画像化システムで実行される)を使用して、または1つもしくは複数の腫瘍注釈を特定するために注釈者による注釈(例えば、画像化システム125により検出された)に基づいて、処理され得る。それぞれの腫瘍注釈は、腫瘍の一部を描写する医用画像の一部分を特定することができる。例えば、画像化システム125は、医用画像を描写するインターフェースを提供することができ、画像化システム125は、医用画像のどの部分が、画像化システム125により表示された画像において、腫瘍の境界として注釈者により(入力を介して)特定されたかを示す注釈データを受け取ることができる。画像化システム125は、それぞれの特定された腫瘍の1つまたは複数の測定値を特定することができる。空間測定値は、(例えば)腫瘍体積、腫瘍面積、腫瘍の最長軸に沿った長さ(最長直径と称される)および/または腫瘍の縦横比を含むことができる。
【0165】
画像化システム125は、さらに、臓器のそれぞれの描写を自動的に検出(例えば、コンピュータビジョンアルゴリズムを使用して)および分類することができる、または描写された各臓器の境界を特定する注釈者からの入力を受け取ることができる。次いで画像化システム125は所定の腫瘍および臓器の注釈を使用して、どのタイプの腫瘍が位置するかを検出することができる。
【0166】
画像化システム125は、腫瘍特徴付け統計量、例えば、検出された腫瘍の総量、腫瘍の総体積(検出された腫瘍の合計)、腫瘍の最長直径の平均、少なくとも1つの腫瘍が検出された早期タイプの数、腫瘍負荷、および/または腫瘍における全体的な最長腫瘍直径の積和を生成することができる。
【0167】
腫瘍特徴付け統計量は、医用画像がベースライン期間の間に収集された場合、ベースライン特性(ベースライン特性データ格納115に格納されている)として特徴付けることができる。いくつかの例において、ベースライン特性(次いでベースライン特性データ格納115に格納されている)は、数値腫瘍特徴付け統計量に基づいて定義される。例えば、数値腫瘍特徴付け統計量を1つまたは複数の閾値と比較して、統計量が単一の閾値を超えているか否か判断するバイナリインジケータを生成する。別の例として、数値腫瘍特徴付け統計量は、複数の閾値を比較して、統計量を含む1つまたは複数の範囲を特定することができ、カテゴリインジケータはカテゴリを特定することができる。
【0168】
いくつかの例において、医用画像は、リンパ節のサイズを検出するために使用される。腫脹リンパ節は、リンパ腫を示し得る。よって、ベースライン統計量は、リンパ節の推定体積、推定断面積、または推定最長直径と定義され得る。
【0169】
あるいは、医用画像(例えば、デジタル病理画像)は、特定の対象から試料(例えば、生検、組織試料および/または血液試料)を収集し、試料を固定し、潜在的に試料を切片にし、またはスライドに液体試料を滴下し、試料切片を染色することによって収集され得る。次いで画像化システム125は、染色された切片を画像化することができ、または遠隔画像化システムは、染色された切片を画像化することができ、画像化システム125は、画像をアクセスすることができる。
【0170】
画像化システム125は、画像を処理して、所定のタイプ(例えば、特定の細胞タイプ)の任意の生物学的対象の存在、位置および/または密度を検出することができる。例えば、画像化システム125は、それぞれの腫瘍細胞および/またはそれぞれの免疫細胞の点位置(または面積もしくは体積)を決定することができる。画像化システム125は、ベースライン特性を定義し(および、ベースライン特性データ格納115にベースライン特性を格納して)、任意の腫瘍細胞のバイナリプレゼンス、腫瘍細胞の密度、免疫細胞の密度などを示すことができる。
【0171】
III.B.3.検査システム
検査システム130は、生物学的試料を処理して、1つまたは複数の検査結果を生成することができる。それぞれの検査結果は、1つまたは複数の生物学的構造のそれぞれの存在、カウント、濃度および/またはタイプを特定することができる。生物学的試料は、医用画像(すなわち、画像化システム125により処理された)を収集するために使用された任意の試料と異なっていてもよい。生物学的試料は、(例えば)血液試料、尿試料、汗試料または組織試料を含み得る。
【0172】
生物学的構造(検査システム130で測定された)は、細胞タイプ、細胞断片、またはタンパク質であり得る。例えば、生物学的構造は、白血球、単球、血小板、ヘモグロビン、フィブリノゲン、C反応性タンパク質(CRP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアルカリホスファターゼ(ALP)を含み得る。高白血球数、高単球数、低血小板数は、様々なタイプのがん(例えば、リンパ腫)で一致し得る。低ヘモグロビンレベルは、ある特定のタイプのがん(例えば、非ホジキンリンパ腫)または進行期のある特定のタイプのがん(例えば、病期IIIもしくは病期IVのホジキンリンパ腫)で一致し得る。高レベルのフィブリノゲンおよび/またはC反応性タンパク質は、炎症を示し得る。高レベルのASTおよび/またはALPは、がん(例えば、非ホジキンリンパ腫)が肝臓に拡散したことを示し得る。
【0173】
生物学的試料がベースライン期間中に収集された場合、検査結果は、ベースライン特性と特徴付けられ、ベースライン特性データ格納115に格納され得る。
【0174】
検査システム130は、生物学的試料(または、異なる生物学的試料)における1つまたは複数のサイトカインのそれぞれのレベル(例えば、濃度)をモニタリングする、サイトカイン検出サブシステム140を含む。検査システム130は、それぞれのサイトカインレベルを、対象の識別子、測定時間および/またはサイトカイン識別子と関連して生サイトカインレベルデータ格納145に格納する。例えば、単一のサイトカインレベルデータ記録は、個別の測定時間および個別の対象に対応するように生成されてもよく、その測定時間に対象から収集された試料に検出されたサイトカインのそれぞれのレベルを含んでもよい。別の例として、単一のサイトカインレベルデータ記録は、個別の対象に対応するように生成されてもよく、その対象から収集された任意の試料に検出されたサイトカインのそれぞれのレベルを含んでもよい。単一のサイトカインレベルデータ記録は、サイトカインのそれぞれのレベルを、試料がサイトカインレベルを測定するために使用された対象から収集された時を示す測定時間と関連付けることができるそれぞれの測定時間は、絶対時間または所定の治療期間の開始に対する時間であり得る。
【0175】
一例として、サイトカイン検出サブシステム140は、血液試料中の以下のサイトカイン:IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、MIP1b、MCP1、IL-10、IFN-γ、TGF-β、およびTNF-αのうちの1つまたは複数のそれぞれのレベルを検出することができる。
【0176】
III.C.例示的なサイトカイン放出症候群予測システム
サイトカイン放出症候群予測システム105は、特定の対象がサイトカイン放出症候群を経験するリスクを予測する機械学習モデルを使用して、1つまたは複数のベースライン特性(ベースライン特性データ格納115からのもの)、1つまたは複数の治療投与量(治療投与量データ格納135からのもの)、および1つまたは複数のサイトカインレベル(生サイトカインレベルデータ格納145からのもの)を処理することができる。
【0177】
III.C.1.サイトカイン放出症候群
サイトカイン放出症候群は、非ホジキンリンパ腫を治療するとき、特に治療抗体、CAR-T細胞療法、または同種異系移植により非ホジキンリンパ腫を治療するときにトリガされ得る制御されない炎症応答である。サイトカイン放出症候群は、いくつかの抗体に基づいた療法、例えば、グロフィタマブ、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アレムツズマブ、ブレンツキシマブ、ダセツズマブまたはニボルマブのいずれかの点滴の後に起こり得る。サイトカイン放出症候群は、抗体に基づかないがん薬、例えば、オキサリプラチンおよびレナリドミドの投与後にも観察される。サイトカイン放出症候群は、T細胞係合免疫療法剤の投与後に起こる最も頻繁で重篤な有害作用の1つである。T細胞係合免疫療法は、二重特異性抗体コンストラクトおよびキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を含み、両方とも、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むいくつかの血液腫瘍に治療有効性を示している。サイトカイン放出症候群は、治療後の数日間もしくは数週間にわたって、または即時発症サイトカイン放出症候群として治療の直後に起こり得る。通常、サイトカインシグナル伝達は、迅速で強力な免疫応答をもたらす。この応答は、通常、悪性細胞または感染細胞が排除されたときに平衡になり、消散する。しかし、いくつかの例において、活性化された細胞がより多くのサイトカインを放出し続け、サイトカイン放出のためにより多くの細胞を活性化するこのポジティブフィードバックループは、制御不能になり、過剰に高レベルの炎症促進性サイトカインを産生するサイトカイン症候群をもたらす。
【0178】
サイトカイン放出症候群は、多くの場合、発熱、低酸素症、低血圧症および毛細管漏出症候群の組合せとして、臓器所見を伴って、または伴うことなく現れる。サイトカイン放出症候群は、免疫療法に影響されて免疫細胞、例えばT細胞から血液中への大量の素早いサイトカイン放出を引き起こす。
【0179】
サイトカインは、免疫系の特定の細胞により分泌されるタンパク質、ペプチドおよび糖タンパク質の大きな群である。サイトカインは、細胞活性化の後に一過的に産生されて、免疫、炎症および造血を媒介および制御することを助けるシグナル伝達分子である。これらの分子は、個別の細胞の機能を調節する制御因子として作用する。サイトカインは、自己分泌、パラ分泌または内分泌応答修飾剤として局所的に作用することができ、これらの作用は、これらの標的細胞の特定の細胞表面受容体を介して発揮される。本明細書で使用される場合、「自己分泌」または「自己分泌作用」は、サイトカインが、それが分泌される同じ細胞の膜の受容体に結合することによって、その作用を発揮することを意味する。「パラ分泌」または「パラ分泌作用」は、サイトカインが、サイトカインを産生した細胞に近接する標的細胞の受容体に結合することを意味する。「内分泌」または「内分泌作用」は、サイトカインが循環を通って移動し、身体全体の部分にある標的細胞に作用することを意味する。
【0180】
サイトカイン、例えば、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、MIP1b、MCP1、IL-10、IFN-γ、TGF-β、およびTNF-αからなる群から選択される1つまたは複数のサイトカインのレベルの上昇は、多くの場合にサイトカイン放出症候群に関連する。下記の表5は、サイトカイン放出症候群に関連する主なサイトカインおよびこれらの効果を列挙する(Yildizahan and Kaynar,Journal of Oncological Sciences,4(3):134-141(2018))。
【0181】
III.C.1.a.機序
サイトカイン放出症候群は、通常、二重特異性抗体またはCAR T細胞受容体がその抗原に結合すること、続いてバイスタンダー免疫細胞および非免疫細胞、例えば内皮細胞を活性化することによって誘導されるオンターゲット効果によるものである。バイスタンダー細胞の活性化は、一連のサイトカインの大量放出をもたらす。宿主、腫瘍および治療剤のいくつかの特性に応じて、T細胞係合療法の投与は、対抗制御的ホメオスタシス機序を圧倒する炎症回路を始動させることができ、対象に有害な効果を有し得るサイトカイン症候群をもたらす。
【0182】
免疫療法を投与すると、T細胞の活性化または免疫細胞の溶解は、インターフェロンガンマ(IFN-γ)または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の放出を誘導する。TNF-αは、発熱、全身倦怠および疲労を伴うIFN-γと同様に、インフルエンザ様症状を誘発し、水様性下痢、血管漏出、心筋症、肺損傷、および急性期タンパク質(例えば、C反王制タンパク質)の合成の原因でもある。INF-γは、発熱、寒気、頭痛、めまい、および疲労を引き起こす。分泌IFN-γは、マクロファージ、樹状細胞、他の免疫細胞、および内皮細胞の活性化を誘導する。活性化されたマクロファージは、過剰量の炎症促進性サイトカイン、例えば、IL-6、TNF-α、およびIL-10を産生する。重要なことに、マクロファージおよび内皮細胞は、T細胞および他の免疫細胞を活性化してサイトカイン症候群を導く大量のインターロイキン6(IL-6)を産生する。
【0183】
インターロイキン6(IL-6)は、広範囲の免疫および造血活性により、ならびに急性期タンパク質を誘導する能力により、宿主防御に中心的な役割を果たす抗炎症性および炎症促進性を有する多面発現サイトカインである。IL-6は、サイトカイン放出症候群の毒性の中心的な媒介物質である。IL-6シグナル伝達は、広範囲に発現している細胞会合gp130(CD130)およびIL-6受容体(IL-6R)(CD126)への結合を必要とする。IL-6Rは、マクロファージ、好中球、肝細胞、およびいくつかのT細胞で発現し、古典的なシグナル伝達を媒介し、IL-6レベルが低い場合にこれが優勢である。しかし、IL-6レベルが上昇している場合、可溶性IL-6Rは、トランスシグナル伝達も開始することができ、これは、より幅広い細胞に起こる。IL-6mの抗炎症性は、古典的なシグナル伝達により媒介され、一方で炎症促進応答は、トランスシグナル伝達の結果として起こると思われる。高レベルのIL-6は、サイトカイン放出症候群の文脈において存在し、炎症促進性IL-6媒介シグナル伝達を媒介すると思われる。
【0184】
III.C.2.前処理:サイトカイン倍率変化の生成
サイトカイン放出症候群予測システム105は、サイトカインレベルを標準時点で整列させ、サイトカイン倍率変化を生成するサイトカイン調整器150を含む。例えば、1人または複数人の対象では、サイトカイン調整器150は、治療または前治療が対象に開始された時間を(例えば、治療投与量データ格納135から)検索することができる。複数の対象が、機械学習モデルを訓練するために使用されるデータに関連する対象セットを含んでもよく、また特定の対象も含んでもよい。
【0185】
複数の対象のそれぞれにおいて、サイトカイン調整器150は、治療または前治療が開始された時間を使用して、ベースライン期間を定義することができる。例えば、ベースライン期間は、治療または前治療が開始された時間が終了したこと(または、そのような開始の前の事前定義された時間、例えば、治療開始の1日前)を定義してもよい。いくつかの例において、ベースライン期間は、事前定義された持続期間を有することであり、サイトカイン調整器150は、持続期間に基づいてベースライン期間の始まりから、ベースライン期間の終了時間までを特定することができる。いくつかの例において、ベースライン期間は、終了時間に先行する全ての時間がベースライン期間内にあるように、終了時間のみに基づいて定義される。
【0186】
複数の対象のそれぞれにおいて、サイトカイン調整器150は、対象の識別子に関連して格納された各サイトカインレベル(例えば、生サイトカインレベルデータ格納145から)に関連する測定時間を(例えば、生サイトカインレベルデータ格納145から)検索するサイトカイン調整器150は、ベースライン期間およびサイトカインレベルに関連する測定時間を使用して、どのサイトカインレベルがベースライン期間内の測定時間に関連するかを検出することができる。サイトカイン調整器150は、ベースライン期間内の測定時間に関連する各サイトカインレベルを、ベースラインサイトカインレベル155と特徴付けることができる。
【0187】
対象セット(訓練に使用されるデータに関連する)のそれぞれ、および潜在的には特定の対象において、サイトカイン調整器150は、治療または治療サイクルが完了した時間を(例えば、治療投与量データ格納135から)さらに検索することができる。いくつかの例において、治療の持続期間または治療サイクルの持続期間は、公知である(例えば、所定の信頼の程度および所定の精度の程度で)、または、治療もしくは治療サイクルが完了した、もしくは完了する時間が推定され得るように推定される。
【0188】
対象セットのそれぞれ、および潜在的には特定の対象において、サイトカイン調整器150は、治療が始まった、またはサイクルが始まった(例えば、治療投与量データ格納135から検索されたデータにおいて特定されたように)時間で(例えば)始まるオントリートメント期間を定義することができる。オントリートメント期間の開始はベースライン期間の終了と異なり得ることが理解される。いくつかの例において、治療明細は、治療投与が終了した、または治療サイクルの投与が終了した時間を特定し、サイトカイン調整器150は、その時間に完了するオントリートメント期間の終了を定義することができる。いくつかの例において、治療または治療サイクルの持続期間は、公知である(例えば、所定の信頼の程度および所定の精度の程度で)、サイトカイン調整器は、持続期間およびオントリートメント期間の開始に基づいて、オントリートメント期間の終了を定義することができる。
【0189】
サイトカイン調整器150は、オントリートメント期間およびサイトカインレベルに関連する測定時間を使用して、どのサイトカインレベルがオントリートメント期間内の測定時間に関連するかを検出することができる。サイトカイン調整器150は、オントリートメント期間内の測定時間に関連する各サイトカインレベルを、オントリートメントサイトカインレベル160と特徴付けることができる。対象セットのそれぞれにおいて、サイトカイン調整器150は、オントリートメント期間に後続する測定時間に関連する各サイトカインレベルを、治療後サイトカインレベルとさらに特徴付けることができる。
【0190】
サイトカイン調整器150は、1つまたは複数のベースラインサイトカインレベル155および1つまたは複数のオントリートメントサイトカインレベル160を使用して、少なくとも1つのサイトカイン倍率変化を生成することができる。サイトカイン倍率変化170は、ベースラインレベル項を別の項から差し引くことによって決定され得る。所定の対象では、ベースラインレベル項は、少なくとも1つのベースラインサイトカインレベル155であると定義され、またはこれに基づいて定義され、他の項は、少なくとも1つのオントリートメントサイトカインレベル160または少なくとも1つの他のベースラインサイトカインレベル155であると定義される、またはこれに基づいて定義される。
【0191】
基準サイトカインレベルは、ベースライン期間の特定の部分の範囲内である測定時間に関連するサイトカインレベルであると定義され得る。例えば、基準サイトカインレベルは、前治療の6~8日前に測定されたベースラインサイトカインレベル155を含むことができる。いくつかの例において、サイトカイン倍率変化170は、基準サイトカインレベルおよび生サイトカインレベルに基づいて所定の対象で測定された、それぞれのサイトカインレベルにおいて定義される。
【0192】
ベースラインレベル項および他の項におけるそれぞれの項では、項は対数関数を使用して決定され得る。しかし、対数ゼロは未定義である。よって、対応するサイトカインレベルおよび事前定義された正の値の合計の対数が、対応するサイトカインレベルの対数を計算する代わりに計算され得る。事前定義された値は、例えば、分数、1、2などであり得る。
【0193】
III.C.3.機械学習モデル訓練
サイトカイン放出症候群予測システム105は、1つまたは複数の機械学習モデルを訓練して、1つまたは複数のベースライン特性115および治療投与量135に基づいてサイトカイン放出症候群リスク180を予測する、モデル訓練サブシステム175を含む。モデル訓練サブシステムは、その上または代替的に、サイトカイン倍率変化170に基づいてサイトカイン放出症候群リスク180を予測することができる。サイトカイン放出症候群予測システム105は、1つまたは複数のベースラインサイトカインレベル155をさらに使用して、サイトカイン放出症候群リスク180を予測することができる。機械学習モデルは、(例えば)、ランダムフォレストモデル、回帰モデル(例えば、線形ロジスティック回帰モデル)、判断木モデルおよび/またはニューラルネットワークモデルを含むことができる。
【0194】
モデル訓練サブシステム175が予測モデルを訓練するために使用する訓練データは、対象セットと関連することができ、治療投与量および各対象がサイトカイン放出症候群を経験するか否か(および、する場合)の指示、ならびにそうであれば、その事象の悪性度の指示を含むことができる。サイトカイン放出症候群の悪性度を決定する基準は、セクションIII.A.1.a.に含まれ得る。
【0195】
モデル訓練サブシステム175は、サイトカイン放出症候群情報をサイトカイン放出症候群(CRS)報告データ格納182から得ることができる。CRS報告データ格納182は、複数のCRS報告記録を含むことができ、それぞれ、対象、各CRS事象ではサイトカイン放出症候群の悪性度、およびサイトカイン放出症候群の時間を特定する。各CRS報告記録は、(例えば、対象に治療を投与する、サイトカイン放出症候群を診断する、および/またはサイトカイン放出症候群を治療する医療提供システム120に対応する医療提供者によって)対象に関連付けられた医療提供者システム120から受け取ったデータまたは入力に基づいて生成され得る。よって、モデル訓練サブシステム175は、CRS報告データ格納182を照会して、対象セットのそれぞれにおいてサイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)が観察されたか否かを決定することができる。
【0196】
III.C.3.a.決定木モデルを訓練して、ベースラインパラメータ、投与量およびサイトカインレベル入力を予測サイトカイン放出症候群リスクに変換する
いくつかの例において、モデル訓練サブシステム175は、対象セットのそれぞれにおいて、サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)が観察されたか否かの指示、ベースラインパラメータ、治療投与量、1つまたは複数のサイトカイン倍率変化170(例えば、オントリートメント期間に対応する)を含む訓練データエレメントを定義することができる訓練データは、対象セットに対応する訓練データエレメントから構成され得る。サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)が観察されたか否かの指示は、訓練データエレメントのラベルとして定義され得る。
【0197】
いくつかの例において、モデル訓練サブシステム175は、ベースラインパラメータ(単一のベースライン特性115またはベースラインサイトカイン放出症候群リスクスコア184)をサイトカイン放出症候群リスク180に変換することを促進するモデルパラメータのセットを学習するように、モデルを訓練することができる。いくつかの例において、モデル訓練サブシステムは、ベースラインパラメータ、治療投与量135および/またはサイトカイン倍率変化170をサイトカイン放出症候群リスク180に変換ことを促進するモデルパラメータのセットを学習するように、モデルを訓練することができる。学習モデルは、(例えば)判断木モデル183を含むことができ、モデルパラメータは、判断木閾値のセットを含むことができる。
【0198】
予測モデルの判断木閾値は、投与量閾値、ベースラインサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)閾値および1つまたは複数のサイトカインレベル閾値を含むことができる。よって、判断木モデル183は、治療投与量が投与量閾値を超えているか否か、ベースラインサイトカイン放出症候群リスクスコアがCRSRS閾値を超えているか否か、および/またはサイトカイン倍率変化170が1つもしくは複数のサイトカインレベル閾値のそれぞれを超えているか否かを決定することができる。例えば、投与量が投与量閾値を超えない場合と比較して、投与量が閾値を超える場合には異なる(例えば、低い)サイトカインレベル閾値が使用され得る。いくつかの例において、各訓練データエレメントは、複数のサイトカイン倍率変化170を含む。判断木モデル183は、オントリートメント期間に対応する各「オントリートメント」サイトカイン倍率変化170を特定するように、および閾値比較のために最大オントリートメントサイトカイン倍率変化を使用するように構成され得る。
【0199】
III.C.3.b.特徴選択モデルおよび/またはリスクスコア生成モデルを、ベースライン特性をリスクスコアに変換するように訓練する
いくつかの例において、ベースライン特性のセットのうちの少なくともいくつか(例えば、ベースライン特性データ格納115から検索されたもの)を、(例えば、治療投与量およびサイトカイン倍率変化170と一緒に)使用して、サイトカイン放出症候群リスク180を予測することができる。例えば、リスクスコア生成モデル184は、ベースライン特性のセットのうちの少なくともいくつかをサイトカイン放出症候群リスクスコアに変換することができ、次いで、これを判断木モデル183により単一予因子として使用して、サイトカイン症候群リスク180を予測することができる。
【0200】
モデル訓練サブシステム175は、特徴選択を実施して、どのベースライン特性がリスクスコア生成モデル184により使用されて、サイトカイン放出症候群リスク180を予測するかを特定することができる。いくつかの例において、特徴は、各ベースライン特性で単変量分析を実施するように構成され得る特徴選択モデル185を使用して選択される。単変量分析は、特性間で有意な関係があるか否かを示すことができる有意値、およびサイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも悪性度1の重症度の事象または少なくとも悪性度2の重症度の事象などの少なくとも閾値悪性度のもの)が起こるか否かの指示を出力することができる。ベースライン特性の初期サブセットは、事前定義された閾値未満(例えば、0.1未満または0.3未満)のp値のベースライン特性と定義される。このサブセットは、浮動順方向/逆方向重回帰またはランダムフォレスト分析などの多変量技術を適用することによって、185によりさらに精緻化される。
【0201】
いくつかの例において、特徴選択モデル185はκ分割交差検証を実施することができる。交差検証は、複数回実施することができ、それぞれの交差検証の実施は、ベースライン特性のサブセットに関連している。それぞれの交差検証の実施およびそれぞれの分割では、訓練データを、訓練部分と、モデルの性能の査定に使用される試験部分に分けることができる。特徴選択に使用される訓練データは、対象セットのそれぞれにおいて、ベースライン統計量のセットおよびサイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)が観察されたか否かの指示を含むことができる。
【0202】
層別化因子は、疾患歴および治療投与量を含むことが定義され得る。よって、特徴選択に使用される訓練および試験データセットは、試験データセットとほぼ同じ訓練データ中の疾患病歴の分配、および試験データセットとほぼ同じ訓練データ中の治療投与量の分配を含むことが定義され得る。訓練データセットを使用して、特徴選択モデルを訓練することができ、訓練データセットを使用して、性能測定値を決定することができる。性能統計量は、対応する分割における性能統計量に基づいて、各ベースライン特性サブセットで生成され得る。低減された特徴セットは、最高性能および安定性の統計量に関連するサブセットであると定義され得る。
【0203】
次いでモデル訓練サブシステム175は、リスクスコア生成モデル184を、モデルパラメータのセット(例えば、重みのセット)を学習するように訓練して、低減された特徴セットの値をサイトカイン放出症候群リスクスコアに変換することができる。リスクスコア生成モデル184は、回帰モデルまたはベースラインパラメータ値の重み付け合計を含んでもよい。いくつかの例において、モデルパラメータの学習セットは、低減された特徴セット(例えば、ベースライン特性のセットのサブセットに対応するもの)に提示された各ベースライン特性のパラメータ値を学習することを含み得る。例えば、パラメータは、低減された特徴セットに提示された各ベースライン特性の重みを含んでもよい。
【0204】
モデルパラメータは、(例えば)1つまたは複数の関数を訓練データに当てはめることによって学習され得る。例えば、モデル訓練サブシステムは、低減された特徴セットに提示された各ベースライン特性の重みを学習してもよく、重みは、訓練データにおける最大分類精度および安定性のものが特定され得る。各重みは、関与するパラメータ値および薬物用量(曝露)に関するサイトカイン放出症候群オッズ比をモデル形成する用量調整ロジスティック回帰モデルにおける対数(サイトカイン放出症候群オッズ比)から主に誘導され得る。重みは、ランダムフォレストおよび浮遊特徴選択実験による変数の安定性についての情報を含むことによって、さらに調整され得る。
【0205】
追加的または代替的に、モデル訓練サブシステム175は、機械学習および損失関数を反復使用することにより損失関数を使用して、リスクスコア生成モデル184のパラメータを学習することができる。例えば、機械学習モデルは、低減された特徴セットのパラメータ値を使用して1つまたは複数の予測出力を生成し(例えば、サイトカイン放出症候群が起こるか否かを予測し)、予測出力を訓練データのラベルと比較し、比較および損失関数に基づいて損失を計算し、損失に基づいてリスクスコア生成モデル184のパラメータを調整することができる。このプロセスを複数の訓練サイクルで繰り返してもよい。損失または損失の移動平均が事前定義損失閾値内に入った後、および/またはいくつかの訓練サイクルが事前定義訓練サイクル閾値と交差した後、モデル訓練サブシステム175は、パラメータセットを固定することができる。
【0206】
モデル訓練サブシステム175は、リスクスコア生成モデル184を訓練するように、訓練済みバージョンのリスクスコア生成モデル184を調整するように、または後処理アルゴリズムを構成して、モデルパラメータの選択されたサブセットのみならず、1つまたは複数の治療明細(例えば、治療投与量)を、サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)を所定の対象が経験する予測リスクに変換するように構成され得る。例えば、リスクスコア生成モデル184のパラメータは、ベースライン特性サブセットの値を含む入力データを、リスクスコア生成モデル184に供給すること、モデルによるサイトカイン放出症候群リスクスコア出力が、サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度のもの)が観察されることを正確に予測するか否か、またはその程度を決定すること、およびサイトカイン放出症候群リスクスコア出力が正確であるか否か、またはその程度に基づいて損失を計算することによって学習され得る。パラメータのセットは、対象に投与された治療投与量に無関係に使用され得る、またはパラメータの異なるセットが、複数の治療投与量のそれぞれにおいて学習され得る。別の例として、リスクスコア生成モデル184は、ベースライン特性に基づいてサイトカイン放出症候群リスクスコアを予測するパラメータのセットを学習するために、最初に訓練され得る。次いで、リスクスコア生成モデル184は、バラメータセット、ベースライン特性および治療投与量を使用して、所定の対象のサイトカイン放出症候群リスクを決定することができる。
【0207】
III.C.3.c.リスクスコア出力およびサイトカインレベル入力を予測サイトカイン放出症候群リスクに変換するように、判断木を訓練する
いくつかの例において、判断木モデル183は、1つまたは複数のサイトカインレベルおよびリスクスコアを入力として受け取るように構成される。リスクスコアは、サイトカイン放出症候群リスクスコア(180のベースライン特性を使用して決定される)であり得る。判断木モデル183は、治療投与量を追加の入力変数としてさらに受け取ることができる。
【0208】
モデル訓練サブシステム175は、リスクスコア閾値および1つまたは複数のサイトカインレベル閾値を含むことができる閾値セットを学習するように、判断木モデル183を訓練することができる。よって、判断木モデル183は、リスクスコア180がリスクスコア閾値を超えているか否か、および/またはサイトカイン倍率変化170が1つもしくは複数のサイトカインレベル閾値のそれぞれを超えているか否かを決定することができる。いくつかの例において(例えば、判断木モデル183がサイトカイン放出症候群リスクスコア180を入力として受け取る場合)、閾値セットは、投与量閾値をさらに含むことができ、判断木モデル183は、投与量が投与量閾値を超えるか否かを決定することができる。
【0209】
1つまたは複数のサイトカインレベル閾値は、複数の閾値を含むことができる。例えば、サイトカイン放出症候群リスクスコアがリスクスコア閾値を超える場合(リスクスコアがリスクスコア閾値を超えない場合と比較して)、および/または投与量が投与量閾値を超える場合(投与量が投与量閾値を超えない場合と比較して)、異なる(例えば、低い)サイトカインレベル閾値が使用され得る。いくつかの例において、各訓練データエレメントは、複数のサイトカイン倍率変化170を含む。判断木モデル183は、オントリートメント期間に対応する各「オントリートメント」サイトカイン倍率変化170を特定するように、および閾値比較のために最大オントリートメントサイトカイン倍率変化を使用するように構成され得る。
【0210】
III.C.4.サイトカイン放出症候群リスクを予測する
サイトカイン放出症候群予測システム105は、1つまたは複数の訓練済み機械学習モデルを使用して、特定の対象に対応する対象特異的入力データセットを、特定のサイトカイン放出症候群リスク180に変換するCRSリスク検出器190を含む。対象特異的データセットは、1つまたは複数のベースライン特性(例えば、腫瘍負荷、腫瘍拡散、末梢血内の悪性細胞の存在または量、骨髄の悪性細胞の存在または量、人口統計学的属性、年齢、ベースラインLDHレベル、ベースラインWBCレベル、および/または併存疾患)を含むことができる。対象特異的データセットは、特定の対象に関連する1つまたは複数のサイトカイン倍率変化170、および特定の対象に関連する治療投与量(例えば、対象に投与された治療の量、対象に処方された治療の量、または対象に考察されている治療の量を示す)をさらに含むことができる。よって、対象特異的データセットは、(1)1つまたは複数のベースライン特性、(2)1つまたは複数のベースライン特性および治療投与量、または(3)1つまたは複数のベースライン特性、治療投与量、および1つまたは複数のサイトカイン倍率変化170を含むことができる。
【0211】
CRSリスク検出器190は、特定の対象に関連する1つまたは複数のサイトカイン倍率変化170および1つまたは複数の他の対象特異的な値を判断木モデル183と組み合わせて、特定の対象でサイトカイン放出症候群リスク180(治療の投与量を受けた後にサイトカイン放出症候群を対象が経験する予測リスクを表す)を生成することができる。1つまたは複数の他の対象特異的な値は、特定の対象および/またはリスクスコアに関連する治療を含むことができる。予測リスクは、(例えば)カテゴリ値(例えば、非常に低いリスク、低いリスク、中程度のリスク、高いリスク、もしくは非常に高いリスクを表す)、または二進値(例えば、高いリスク、もしくは高くないリスクを表す)を含むことができる。
【0212】
CRSリスク検出器190は、入院患者モニタリング条件193にアクセスし、特定の対象のために生成されたサイトカイン放出症候群リスク180を使用して、条件を評価することができる。入院患者モニタリング条件193は、サイトカイン放出症候群リスクが特定の値(例えば、高いリスク)である場合、または特定の閾値(例えば、中程度もしくは高いリスク)を超える場合を満たすように構成され得る。
【0213】
CRSリスク検出器190は、条件評価に基づいてサイトカイン放出症候群予測システム105によって、ユーザ装置110に向けられるように出力を選択または生成することができる。例えば、「入院患者モニタリングを考察する」または「入院患者モニタリングが推奨される」出力は、入院患者モニタリング条件193が満たされる場合に選択されてもよく、「外来患者モニタリングを考察する」または外来患者モニタリングが推奨される」出力は、入院患者モニタリング条件が満たされる場合に選択されてもよい。出力は、(例えば)1つまたは複数のサイトカイン倍率変化(例えば、サイトカイン放出症候群リスク180の生成に使用される)、1つまたは複数の数値リスクスコア、1つまたは複数の生サイトカインレベル、1つまたは複数のベースライン特性、および/または特定の対象に関連する投与量をさらに含むことができる。
【0214】
ユーザ装置110はユーザに出力を提示することができるユーザ(または、別の実体)は、推奨を受け入れるか否かを決定し、これに従って入院または外来患者モニタリング条件を促進することができる。
【0215】
III.D.例示的な入院または外来患者モニタリング
特定の対象が外来患者としてモニターされる場合、特定の対象は、セクションIII.D.1.で特定された症状の任意の1つ、それ以上、もしくは全てをモニターすること、および医療提供者に注意を促すこと、またはいずれかの症状が起こった場合に医療施設に行くことを(例えば、医療提供者により)助言され得る。
【0216】
特定の対象が入院患者としてモニターされる場合、医療提供者(例えば、医師および/または看護師)は、セクションIII.D.1.で特定された症状の任意の1つ、それ以上、もしくは全てをモニターすることができ、特定の対象そのような症状のいずれかをモニターするように要請され得る。さらに、特定の対象が入院患者としてモニターされる場合、1つまたは複数の臨床検査を定期的に実施して(例えば、サイトカインレベルを検出するため)、任意のサイトカイン放出症候群を迅速に検出することができる。
【0217】
III.D.1.症状
サイトカイン放出症候群は、軽症のインフルエンザ様症状から重症の致命的症状までの範囲であり得る。サイトカイン放出症候群の軽度の症状は、発熱、疲労、頭痛、発疹、関節痛、および倦怠感を含む。より重度の症例は、低血圧、ならびに高熱により特徴付けられ、昇圧薬を要する循環性ショック、血管漏出、播種性血管内凝固症候群および多臓器系不全を伴う、制御されない全身炎症応答に進行し得る。呼吸器の症状は、サイトカイン放出症候群を有する対象において一般的である。軽度の症例は、咳および頻呼吸を示し得るが、呼吸困難、低酸素血症、および胸部X線における両側混濁を伴う、急性呼吸促迫症候群(ARDS)に進行し得る。
【0218】
症状発症のタイミングおよびサイトカインの重症度は、免疫療法薬および免疫細胞活性化の大きさによって左右される。CD20+悪性のためのリツキシマブの後のサイトカイン放出症候群は、典型的に数分から数時間内で起こり、>50×109/Lの循環リンパ球を有する対象は、サイトカイン放出症候群の速度を増加する(Winklerら、Blood,94(7):2217-2224(1999))。対照的に症状発症は、T細胞点滴後には数日(CAR T細胞療法)から数週間(細胞障害性T細胞(CTL)療法)で典型的に起こり、in vivoにおける最大のT細胞増殖と一致する(Leeら、Blood,124(2):188-195(2014))。
【0219】
サイトカイン放出症候群に関連する症状および重症度は、大きく異なり、管理は、これらの対象における同時発生的な状態によって複雑になり得る。発熱は、サイトカイン放出症候群の顕著な特徴であり、サイトカイン放出症候群の多くの特徴は感染を模倣している。対象が40.0℃を超える温度を経験することが希ではないので、サイトカイン放出症候群を表す全ての対象において、感染が代替的な説明として考察される。
【0220】
サイトカイン放出症候群の潜在的に致死的な合併症は、心臓機能不全、成人呼吸促進症候群、神経毒性、腎および/または肝機能不全、ならびに播種性血管内凝固症候群を含む。特に懸念されるものは、サイトカイン放出症候群の状況での急性心臓毒性であり、敗血症に関連する心筋症およびストレス心筋症に似ている。サイトカイン放出症候群の文脈で起こる神経症状は、様々である。神経症状は、サイトカイン放出症候群の他の症状と一緒に起こり得る、またはサイトカイン放出症候群の他の症状が消散したときに生じ得る。
【0221】
サイトカイン放出症候群は、また、マクロファージ活性化症候群/血球貪食性(hemophagocytoic)リンパ組織球症(HLH)の知見にも関連することがあり、これらの症候群の生理学は一部が重複し得る。HLH/MAS様症候群を発生するサイトカイン放出症候群の対象において、追加のサイトカイン、例えば、IL-18、IL-8、IP-10、MCP1、MIG、およびMIP1βも上昇する。これらのサイトカインは、伝統的なHLHおよびMASにおいても上昇されることが報告されている。幾人かの対象は、HLH/MASを発生しやすくなる遺伝変異を有し得る。加えて、IL-6は、HLHおよびMASの顕著な特徴である、TおよびNK細胞への機能障害的な細胞障害活性の誘導によって、サイトカイン放出症候群の状況でHLH/MASの発生も促進し得る。
【0222】
腫瘍溶解症候群も、サイトカイン放出症候群と同時に起こることがあり、これは、対象の免疫細胞活性化および増殖が抗腫瘍有効性と相関するからである。
【0223】
III.D.2.診断
特定の対象が入院患者としてモニターされる場合、医療提供者は、特定の対象がサイトカイン放出症候群を有しているか否か(例えば、1つまたは複数の症状が観察された後)を決定することができる。同様に、特定の対象が外来患者としてモニターされるが、後に医療施設に到着する場合(例えば、1つまたは複数の症状が観察された後)、医療提供者は、特定の対象がサイトカイン放出症候群を有しているか否かを決定することができる。
【0224】
サイトカイン放出症候群は、特定の対象の基礎的な医学的状態の文脈で診断される。この基礎的な問題は、既に公知であり得る、または自己診断が必要であり得る。非ホジキンリンパ腫の治療の文脈において、治療選択に頻繁に影響を及ぼし得る因子は、特定の対象の非ホジキンリンパ腫のサブタイプ、サイクル、および対象に投与された療法のタイプを含む。病歴および身体検査は、診断の出発点を提供する。
【0225】
医療提供者は、サイトカイン放出症候群の発生を示し得る徴候について対象を検査することができ、それは、サイトカイン放出症候群は、身体の多くの異なるシステムに影響し得るからである。上記に示されたように、異常に低い血圧、発熱、および低酸素は、サイトカイン放出症候群を示し得る。
【0226】
臨床検査を実施して、異常を特定することができる。1つまたは複数のサイトカインのレベルの増加、免疫細胞の数の低下、腎臓または肝臓損傷のマーカーの情報、C反応性タンパク質などの炎症性マーカーの上昇、凝血のマーカーの異常、およびフェリチンの上昇は、全てサイトカイン放出症候群の発生と一致している。
【0227】
医用画像化を実施することができる。例えば、胸部X線またはCTスキャンは、サイトカイン放出症候群の肺への関与を特定することができる。
【0228】
身体検査、臨床検査、医用画像化などの結果に基づいて、医療提供者は、対象がサイトカイン放出症候群を有しているか否かを決定し、有している場合には、対象にサイトカイン放出症候群の悪性度を割り当てることができる。サイトカイン放出症候群の悪性度診断または病期診断は、治療選択肢を導く。サイトカイン放出症候群が起こったかを決定する前に、医療提供者は、身体検査、臨床検査、医用画像化などの結果に一致し得る他の潜在的な医学的状態を除外することができる例えば、医療提供者は、感染、好中球減少性敗血症、腫瘍溶解症候群または副腎機能不全のいずれかを罹患している特定の対象を除外することができ、それは、これらの状態下でサイトカイン放出症候群の明確な証拠を有することなく投与される抗サイトカイン療法が有害であり得るからである。
【0229】
米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準(The National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)(CTCAE v.4.0)は、抗体療法に関連するサイトカイン放出症候群について設計された以下の悪性度診断システムを含む。下記の表6は、サイトカイン放出症候群のそれぞれの悪性度についての特徴的な症状および治療推奨を示す。
【0230】
III.D.3.サイトカイン放出症候群の治療
特定の対象がサイトカイン放出症候群を経験していることが検出されると、医療提供者は、このセクションで特定された治療を投与または提供することができる。サイトカイン放出症候群の管理は、モニタリングおよび治療の悪性度適応およびリスク適応戦略に従うことができる(Shimabukuro-Vornhagenら、J.Immunother.Cancer 6:56(2018))。
【0231】
低悪性度サイトカイン放出症候群は、抗ヒスタミン、解熱剤、鎮痛剤、および輸液により対蹠的に治療することができる。追加的な診断検査を頻繁に実施して、異なる診断を除外することができる。感染を確実に除外できない場合、経験的抗体療法を考察してもよい。さらに、特定の対象がサイトカイン放出症候群の初期徴候を表す場合、さらなる悪化の徴候について対象を積極的にモニタリングする(入院患者モニタリングによる)頻度を増やすことができる。
【0232】
重度のサイトカイン放出症候群は、迅速で侵襲的な治療を必要とする致命的な状況を表す。よって、特定の対象が重度のサイトカイン放出症候群を経験する場合、サイトカイン放出症候群の治療は迅速に投与され得る。サイトカイン放出症候群の治療は、抗サイトカイン療法、例えばトシリズマブを、コルチコステロイドを伴って、または伴うことなく(悪性度3以上のサイトカイン放出症候群または悪性度2の高リスク対象のために)含むことができる。いくつかの例では、免疫療法のタイプに応じて、抗サイトカイン療法を伴うことなく、コルチコステロイドを、対象が悪性度2のサイトカイン放出症候群またはそれ以上を有するまで待つことなく、悪性度1で投与して、免疫療法関連サイトカイン放出症候群および神経学的事象を低減することができる。例えば、Liuら、Blood Cancer J.10(2):15(2020)を参照すること。別の例として、ブリナツモマブ(急性リンパ芽球性白血病の治療のための免疫療法薬)を、重度のサイトカイン放出症候群の検出に応答して特定の対象に投与してもよい。
【0233】
IL-6は、免疫療法、例えば、CAR T細胞療法または二重特異性T細胞エンゲージャー療法の後にサイトカイン放出症候群を有する対象の血清中で上昇しているので、トシリズマブ(抗IL-6療法)を、重度のサイトカイン放出症候群を有すると診断される場合に特定の対象に投与することができる。IL-6は適切な標的であり得、それは、IL-6がT細胞機能にとって重要ではないが、上記に記述されたようにサイトカイン放出症候群の多くの症状を駆り立てるからである。膜結合型、ならびに可溶型IL-6受容体に結合することによって、トシリズマブは、伝統的およびトランスシグナル伝達経路の両方に干渉し得る。研究は、モノクローナル抗体をIL6(シルツキシマブ)およびその受容体(トシリズマブ)に対して投与することは、サイトカイン放出症候群の症状の素早い消散を導くことを確証した(Shimabukuro-Vornhagen(2018))。初期臨床治験において、トシリズマブは、重度のまたは致命的なサイトカイン放出症候群を有する対象において69%の応答率を実証した。したがって、トシリズマブは、多くの場合、CAR T細胞を受けている対象において重度のサイトカイン放出症候群の初期治療のために使用される。
【0234】
2017年8月にFDAは、2歳以上の対象におけるサイトカイン放出症候群の治療のためにトシリズマブを承認した。サイトカイン放出症候群のためのトシリズマブの承認投与量は、体重30kg未満の対象では12mg/kg、体重30kg以上の対象では8mg/kgである。発熱および低血圧症は、トシリズマブに応答する対象において一般に数時間以内に改善される。しかし、幾人かの対象では、支持治療を数日間にわたって続けることが必要であり得る。トシリズマブは非常に長い半減期(11~14日間)を有するが、十分な臨床的改善が48時間以内に達成されない場合、一般的な手法は、コルチコステロイドを伴って、または伴わないで用量を繰り返すことである。対象が依然として改善されず、高いIL-6レベルが存続する場合、高用量のトシリズマブが考察され得る。悪性度3または4のサイトカイン放出症候群を発生する対象には、典型的にはほぼ直後に治療(例えば、コルチコステロイドを伴う、または伴わないトシリズマブ)が投与される。トシリズマブの投与後には、C反応性タンパク質の素早い減少をもたらすIL-6シグナル伝達のブロックのため、もはやC反応性タンパク質をサイトカイン放出症候群重症度の指示薬として使用しなくてもよい。
【0235】
サイトカイン放出症候群の治療のための後期臨床開発では、いくつかの他のIL-6標的化モノクローナル抗体が存在する。シルツキシマブは、ヒトIL-6に結合し、それと膜結合型および可溶型の両方のIL-6受容体との相互作用を防止する、キメラIGκモノクローナル抗体である。クラザキズマブはIL-6を標的にする別のモノクローナル抗体である。
【0236】
IL-6を直接標的にし、それによって循環から除外するモノクローナル抗体は、対象が重度のサイトカイン放出症候群および同時発生的な神経毒性を経験する場合、トシリズマブが血液脳関門を横断せず、したがって、CNSにおけるIL-6シグナル伝達を阻害できないので、特定の対象の治療に使用され得る。コルチコステロイドは、HLHI/MASがサイトカイン放出症候群の一部として発生する場合に、特定の対象の治療に使用され得る。コルチコステロイドが、T細胞係合免疫療法を受けている対象に使用される場合には、治療の持続期間を可能な限り短期間に保って、免疫療法の有効性への任意の潜在的な有害作用を最小限にすることができる。
【0237】
トシリズマブもグルココルチコイドも有効ではない場合、TNF-αシグナル伝達のブロックを使用することができる。しかし、トシリズマブ、エタネルセプト(抗TNFD抗体)およびグルココルチコイドに応答しない重度のサイトカイン放出症候群の場合もある。これらの場合では、他の免疫抑制剤、例えば、IL-6モノクローナル抗体のシルツキシマブ、T細胞枯渇抗体療法、例えば、アレムツズマブおよびATG、IL-1Rに基づいた阻害剤(アナキンラ)、またはシクロホスファミドを投与または提供してもよい。
【0238】
サイトカイン放出症候群のための他の実験的療法は、イブルチニブである。また、サイトカイン吸着もサイトカイン放出症候群の治療に有効であり得る。体外循環式サイトカイン吸着の他の療法手法に対する利点は、特定の受容体またはシグナル伝達カスケードを選択的にブロックしないことである。代わりに、この方法は、様々な炎症性媒介物質、例えば、IL-6、TNF-αおよびインターフェロンなどの炎症促進性および抗炎症性機能を有するサイトカインの特定の上昇濃度を低減する。この方法では、血液が対象の循環から採血され、血液を循環に戻す前に、サイトカインが血液から取り出される。
【0239】
III.E.例示的な代替実施形態
上記に記載された、または
図1に描写されたものに対する様々な代替実施形態がネットワーク100に関して企図されることが理解される。例えば、入院患者モニタリング条件を評価するためにサイトカイン放出症候群リスク180を使用する代わりに、またはそれに加えて、CRSリスク検出器190をサイトカイン放出症候群リスク180に使用して、特定の対象を臨床研究のコホートに割り当てる。コホート割当は、サイトカイン放出症候群リスクに関してコホート間で高い重複があるようにコホート割当の定義を最適化する、または定義に優先順位を付けるアルゴリズムまたは技術に基づいていてもよい。よって、コホート割当は、少なくとも1人の他の対象と関連するコホート割当およびサイトカイン放出症候群リスク180に基づいて生成され得る。サイトカイン放出症候群予測システム105からの出力は、コホート割当を特定することができる。
【0240】
別の例として、入院患者モニタリング条件193を評価するためにサイトカイン放出症候群リスク180を使用する代わりに、またはそれに加えて、CRSリスク検出器190をサイトカイン放出症候群リスク180に使用して、臨床研究の特定の適格基準が満たされるか否かを決定する。特定の適格基準は、対象が、臨床研究に登録するために、特定のサイトカイン放出症候群リスクを有すること、および少なくとも閾値レベルのサイトカイン放出症候群を有することを必要とし得る。よって、基準を、特定の対象のサイトカイン放出症候群リスク180を使用して評価して、基準特定結果を決定することができる。基準が満たされない場合、出力は、特定の対象が臨床研究に不適格であることを示し得る。基準が満たされる場合、それぞれの残りの基準が満たされるか否かを決定することができ、出力は、対象が研究に適格であるか否かを示すことができる。
【0241】
なお別の例として、入院患者モニタリング条件193を評価するためにサイトカイン放出症候群リスク180を使用する代わりに、またはそれに加えて、CRSリスク検出器190をサイトカイン放出症候群リスク180に使用して、サイトカイン放出症候群発生の可能性を低減する1つまたは複数の薬剤を推奨、提供、および/または投与するか否かを決定する。1つまたは複数の薬剤は、(例えば)ステロイド剤(例えば、コルチコステロイドもしくはメチルプレドニゾロン)、またはサイトカイン指向性治療(IL-6阻害剤、例えばトシリズマブ)を含むことができる。
【0242】
IV.サイトカイン放出症候群リスクを予測するために対象を階層化する例示的なプロセス
IV.A.サイトカイン放出症候群のリスクを予測する例示的なプロセス
図2Aは、対象がサイトカイン放出症候群を経験するリスクを予測するプロセス200aのフローチャートを図解する。プロセス200aは、ブロック205から始まり、ここでサイトカイン調整器150はベースラインサイトカインレベル155を検出する。ベースラインサイトカインレベル155を検出することは、対象に関連するサイトカインレベルデータ記録(例えば、生サイトカインレベルデータ格納145からのもの)または対象に関連する入力の1つまたは複数を処理してベースライン期間内のタイムスタンプに関連するサイトカインレベルを抽出することを含むことができる。
【0243】
ブロック210では、サイトカイン調整器150はオントリートメントサイトカインレベル160を検出する。オントリートメントサイトカインレベル160を検出することは、対象に関連するサイトカインレベルデータ記録(例えば、生サイトカインレベルデータ格納145からのもの)または対象に関連する入力の1つまたは複数を処理してオントリートメント期間内のタイムスタンプに関連するサイトカインレベルを抽出することを含むことができる。
【0244】
ブロック215では、サイトカイン調整器150は、ベースラインサイトカインレベルおよびオントリートメントサイトカインレベルに基づいて、サイトカイン倍率変化170を決定する。例えば、サイトカイン倍率変化170は、オントリートメントサイトカインレベルからベースラインサイトカインレベルを引くことによって定義され得る。別の例として、サイトカイン倍率変化170は、オントリートメントサイトカインレベル+定数の対数から、ベースラインサイトカインレベル+定数の対数を引くことによって定義され得る。
【0245】
ブロック220では、CRSリスク検出器190は、1つまたは複数のベースライン特性を検出する。ベースライン特性を検出することは、対象に関連するベースライン特性データ記録(例えば、ベースライン特性データ格納115からのもの)または対象に関連する入力の1つまたは複数を処理してベースライン特性を抽出することを含むことができる。いくつかの例では、1つもしくは複数のデータ記録に関連する、および/または1つもしくは複数の入力に関連する1つまたは複数のタイムスタンプが検出され、ブロック220は、1つまたは複数のタイムスタンプのうちのどれがベースライン期間内にあるかを決定し、次いで1つまたは複数の対応するデータ記録および/または入力を抽出することを含む。
【0246】
ブロック225では、CRSリスク検出器190は、治療の少なくとも一部が特定される投与量を特定する。投与量は、(例えば)治療投与量データ格納135を対象の識別子で照会すること、または投与量を、ユーザ装置110から受け取った入力内の投与量を検出することによって特定され得る。投与量は、活性成分または治療の投与量を含み得る。投与量は、(例えば)多サイクル治療のサイクル内の投与量または累積投与量を含み得る。投与量は、対象に既に投与された投与量、対象に投与される投与量、対象に処方された投与量、または対象への治療選択肢として考察されている投与量(例えば、活性成分または治療全体のもの)を含み得る。
【0247】
ブロック230では、CRSリスク検出器190は、機械学習モデルを使用してベースライン特性および任意選択で投与量を処理することによって、サイトカイン放出症候群リスクスコアを決定する。サイトカイン放出症候群リスクスコアは、サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度、および/または治療開始からの事前定義時間の範囲内のもの)を経験する対象のリスクの中間予測を表すことができる。サイトカイン放出症候群リスクスコアは、リスクスコア生成モデル184を使用して決定され得る。サイトカイン放出症候群リスクスコアは、(例えば)リスクスコア生成モデル184で1つまたは複数の学習パラメータ(例えば、2つ以上の特性のそれぞれに関連するパラメータ)を検索すること、ならびにパラメータ、およびベースライン特性、および任意選択で投与量を使用してリスクスコアを生成することによって決定され得る。
【0248】
いくつかの例において、リスクスコアが生成される前に、CRSリスク検出器190は、特徴選択モデル185または特徴選択モデル185により生成された結果を使用して、リスクスコアの決定に使用されるベースライン特性のサブセットを検出する。次いでブロック230はベースライン特性のサブセットを(潜在的に投与量と共に)選択的に使用して、リスクスコアを決定することができる。
【0249】
ブロック235では、CRSリスク検出器190は、CRSRSおよび(潜在的に)用量およびサイトカイン倍率変化に基づいて、サイトカイン放出症候群(例えば、少なくとも閾値悪性度、および/または事前定義期間内のもの)を対象が経験するリスクを予測する。対象がサイトカイン放出症候群を経験する予測リスクは、サイトカイン放出症候群リスク180であり得、判断木モデル183を使用して決定され得る。
【0250】
ブロック240では、サイトカイン放出症候群予測システム105は、予測リスクに基づいて結果を出力する。結果は、プロセス200sを開始するユーザ装置110への出力、および/または対象に関連する医療提供者シスツム120への出力であり得る。結果は、予測リスクを特定することができる。結果は、予測リスクに基づいた条件(例えば、入院患者モニタリング条件193)の評価に応答して特定される動作(例えば、実施される、推奨される、または考察を表す)をさらに、または代替的に特定することができる。例えば、結果は、対象が治療後の事前定義モニタリング期間で入院患者モニタリングを有すること、または考察されることを示すことができる。別の例として、結果は、対象が治療後の事前定義モニタリング期間で外来患者モニタリングを有すること、または考察されることを示すことができる。結果は、(例えば)伝送または表示を介した出力であり得る。
【0251】
プロセス200に対する変更が企図されることが理解される例えば、ブロック205、210、215および225の1つ、それ以上、または全てをプロセス200から省いてもよい。一例証として、ブロック205、210、215および225のそれぞれは、プロセス200から省かれ、ブロック230で生成されたサイトカイン放出症候群リスクスコアは、1つまたは複数ベースライン特性に基づく(例えば、および/または、それのみに基づく)。
【0252】
IV.B.リスク予測に基づいて入院または外来患者モニタリングを選択する例示的なプロセス
図2Bは、対象にサイトカイン放出症候群のための入院または外来患者モニタリングを推奨するか否かを決定するために予測リスクを使用するプロセス200bを示す。プロセス200bは、ブロック220で検出されたベースライン特性のいくつかまたは全てを含み得る、ベースライン特性255にアクセスすることによって始まる。ベースライン特性を使用して、ベースラインリスク(例えば、数値リスクスコアまたはカテゴリリスク)を(例えば、リスクスコア生成モデル184により)決定することができ、これは、同様にまたは代替的に、治療投与量によって左右され得る。1つまたは複数ベースラインサイトカインレベルを、(例えば、ベースライン期間の間に収集された試料を処理することにより)決定することもできる。
【0253】
ブロック260は、判断木モデル183はベースラインリスクが高い場合を決定することができる。例えば、判断木モデル183はリスクを閾値と比較することができる。リスクが低いと決定される場合、プロセス200bはブロック265に進み、そこで初期プランが外来患者モニタリングのために開始され得る。例えば、対象には、治療が完了したら退院する可能性、または医療施設から退所できる可能性が通告され得る。一方、リスクが高いと決定される場合、プロセス200bはブロック270に進み、そこで初期プランが入院患者モニタリングのために開始され得る。例えば、対象には、治療が完了したら退院する可能性、または医療施設から退所できる可能性が通告され得る、入院情報が対象から求められることもある、および/または治療後にある期間にわたって対象に空間もしくは病室を確保するデータが開始され得る。
【0254】
ブロック275では、治療の点滴が完了する。この時点において、および/または治療が点滴されている間、1つまたは複数の治療試料を対象から収集することができる、および/または試料内の1つまたは複数のサイトカインの1つまたは複数のオントリートメントレベルを測定することができる。1つまたは複数のオントリートメントレベルおよび1つまたは複数のベースラインレベルを使用して、サイトカイン倍率変化を決定することができる。
【0255】
対象が予備的に低リスクであると(ブロック265において)定義された場合、プロセス200bはブロック275から280aに進む。ブロック280aでは、サイトカイン倍率変化がサイトカインレベル閾値を下回るか否かが決定される。いくつかの例において、サイトカインレベル閾値は、対象が低リスク分類に割り当てられた以前の決定(ブロック260において)に基づいて選択される。サイトカイン倍率変化がサイトカインレベル閾値を下回ることが決定される場合、プロセス200bはブロック285に進み、ここで対象は外来患者モニタリングによりモニターされる。そうでなければ、プロセス200bはブロック290に進み、ここで対象は入院患者モニタリングによりモニターされる。
【0256】
対象が予備的に高リスクであると(ブロック265において)定義された場合、プロセス200bはブロック275から280bに進む。ブロック280bでは、サイトカイン倍率変化がサイトカインレベル閾値を超えるか否かが決定される。いくつかの例において、サイトカインレベル閾値は、対象が低リスク分類に割り当てられた以前の決定(ブロック260において)に基づいて選択される。よって、ブロック280aで考察されたサイトカインレベル閾値は、ブロック280bで考察されたサイトカインレベル閾値と異なることが可能である。サイトカイン倍率変化がサイトカインレベル閾値を超えることが決定される場合、プロセス200bはブロック290に進み、ここで対象は入院患者モニタリングによりモニターされる。そうでなければ、プロセス200bはブロック285に進み、ここで対象は外来患者モニタリングによりモニターされる。
【0257】
入院および/または外来患者モニタリング(ブロック290または285における)は、対象がそのタイプのモニタリングを実際に受け取ること、医療提供者が入院(または、代替的には外来)患者モニタリングを推奨すること、指示が対象にそのタイプのモニタリングの準備をするように提供されること、および/または推奨が対象にそのタイプのモニタリングを提供することを示すことができる。
【実施例】
【0258】
I.V.実施例
IV.A.実施例1:サイトカイン放出症候群の発生を予測する多変量モデルの例示的な訓練および使用
臨床データおよび検査値を使用して多変量モデル(リスクスコア生成モデルおよび判断木モデル)を訓練して、CD3係合二重特異性がん免疫療法(グロフィタマブ)の投与後にサイトカイン放出症候群の発生率および/または重症度を予測した。様々な変数がサイトカイン放出症候群の発生率および/または重症度を予測する程度を、さらに特徴付けた。なおさらに、訓練モデルを使用して、対象サブセットに、ベースライン観察結果および検査値に基づいて悪性度2+の低い(<10%)リスクのサイトカイン放出症候群が特定され得る程度を決定した。
【0259】
IV.A.1.訓練および検証データ
機械学習モデルの訓練および検証に使用されるデータは、臨床研究NP30179からのものであり、これは第1相多施設用量漸増研究であった。研究における1つの介入は、1日目のIV点滴による1000mgのオビヌツズマブの投与、続いて1日または複数日間のグロフィタマブ(スケジュール特定投与量)の投与を含んだ。この介入に対応するデータを分析した。研究は、再発性/難治性B細胞非ホジキンリンパ腫に関して対象において有効性、安全性、忍容性および薬物動態を評価した。
【0260】
この実施例で査定されたコホートは、以下を含む:
3つの固定用量コホート:
・MQ2W(1日目の前治療の後の単剤療法レジメン):1日目に投与された1000mgのオビヌツズマブ、ならびに8、22および36日目のそれぞれに投与された複数の確定投与量のグロフィタマブ(同じ投与量が8、22および36日目のそれぞれに投与され、投与量は0.6mg~25mgであった);
・MQ3W(1日目の前治療の後の単剤療法レジメン):1日目に投与された1000mgのオビヌツズマブ、ならびに8、22および43日目のそれぞれに投与された複数の確定投与量のグロフィタマブ(同じ投与量が8、22および36日目のそれぞれに投与され、投与量は0.6mg~16mgであった);
・CQ3W(1日目の前治療の後の併用療法レジメン):0日目に投与された1000mgのオビヌツズマブ、8、22および43目のそれぞれに投与された複数の確定投与量のグロフィタマブ(同じ投与量が22および36日目のそれぞれに投与され、投与量は0.6mg~16mgであった)、ならびに1000mgのオビヌツズマブが22および43日目に投与された。
1つの分割用量コホート:
・10/16Q3W:1日目に投与された1000mgのオビヌツズマブ、22日目に投与された10mgのグロフィタマブ、および43日目に投与された16mgのグロフィタマブ、
2つのステップアップ用量(SUD)コホート:
・2.5/10/16SUD Q3W:1日目に投与された1000mgのオビヌツズマブ、8日目に投与された2.5mgのグロフィタマブ、15日目に投与された10mgのグロフィタマブ、22日目に投与された16mgのグロフィタマブ、および43日目に投与された16mgのグロフィタマブ、
・2.5/10/30SUD Q3W:1日目に投与された1000mgのオビヌツズマブ、8日目投与された2.5mgのグロフィタマブ、15日目に投与された10mgのグロフィタマブ、22日目に投与された30mgのグロフィタマブ、および43日目に投与された30mgのグロフィタマブ。
【0261】
図3は、様々なコホートにおける投与量タイミングを表す。「サイクル1」は、8日目に始まると定義され、「サイクル2」は、22日目に出発すると定義され、「サイクル3」は、36日目(Q2Wレジメン)または43日目(Q3Wレジメン)に始まると定義された。よって、単剤療法固定用量コホート(MQ2WおよびMQ3W)、ならびに併用療法固定用量コホート(CQ3W)は、サイクル1の間に投与された療法薬のタイプに関してコホート間で異ならず、このサイクルに焦点を合わせた分析にためにデータを組み合わせることができた。
【0262】
2.5/10/30SUD Q3Wコホートを検証データセットとして使用した。
【0263】
非ホジキンリンパ腫の組織学(マントル細胞非ホジキンリンパ腫の組織学を除く)に、さらにアクセスした。
【0264】
表7は、サイクル1で治療完了記録を有する対象の数を示し、治療レジメンおよび非ホジキンリンパ腫のサブタイプ(侵襲性、無痛性、または不明)により分けられている。2.5/10/30SUD Q3W用量群を検証データセットとして使用し、このレジメンの対象カウントをボックス内に示す。
【0265】
表8は、どれぐらいの対象(各治療レジメンおよび投与量群における)がサイクル2で治療完了記録を有したかを示す。
【0266】
訓練/検証データに表される各対象では、入手可能な場合、以下のデータがこの研究で特定された。
・対象が固定用量コホートにある場合に投与されたグロフィタマブの投与量;
・投与された前治療剤(オビヌツズマブ)の投与量が200g/mLであるか否か;
・サイクル1の1日目(C1D1)に測定/観察された以下の検査変数:
○血小板数
○単球レベル
○ヘモグロビンレベル
○白血球数(WBC)
○フィブリノゲンレベル
○酪酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル
○C反応性タンパク質(CRP)レベル
○TNF-α血漿レベル
○インターロイキン-6(IL-6)血漿レベル
○アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベル
○アルカリホスファターゼ(ALP)レベル
・Gz前グロフィタマブ(<200g/ml)
・1日目に、またはその前に測定/観察された以下の臨床変数:
○小細胞非ホジキンリンパ腫が、侵襲性サブタイプ(aNHL;濾胞性リンパ腫の悪性度1、悪性度2もしくは悪性度3Aを含むことが定義される)または無痛性サブタイプ(iNHL;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞性リンパ種、リヒター形質転換、形質転換濾胞性リンパ腫、形質転換辺縁層リンパ腫を含むことが定義される)
○対象が以前にB細胞リンパ球増加症を有したか否か
○対象が任意の併存疾患を有したか否か
○対象が、以下のいずれかを含む任意の心臓併存疾患を有したか否か:
・心臓不整脈(不整脈、上室性不整脈、心房細動、心房粗動、心房頻拍、洞性徐脈、洞性頻脈、上室性期外収縮、上室性頻拍、頻拍、発作性頻脈、心室性期外収縮、または心室頻拍);
・心臓障害、徴候および症状NEC(心臓障害または高血圧性心疾患);
・心臓弁膜障害(大動脈弁狭窄症または僧帽弁逸脱症);
・環状動脈障害(急性心筋梗塞、狭心症、動脈硬化性環状動脈、心筋梗塞、または心筋虚血);
・心不全(心臓不全または慢性心臓不全);
・心筋障害(心筋症、細胞傷害性心筋症、拡張機能障害、または虚血性心筋症);あるいは
・心膜障害(心膜炎)
・1日目に測定/観察された以下の病理学に基づいた変数:
○非ホジキンリンパ腫による骨髄(BM)浸潤が検出されたか否か
○非ホジキンリンパ腫による末梢血(PB)浸潤が検出されたか否か
○非ホジキンリンパ腫による節外性関与が検出されたか否か
○腫瘍全体の最長直径(SPD)の積和を特定する腫瘍負荷、および/または腫瘍負荷が3000mm2以上であるか否か
○Ann Arborリンパ腫病期診断(および/または病期が少なくとも病期IIIである)
・1日目に測定/観察された以下の人口統計学的変数:
○対象の年齢(および/または対象が少なくとも64歳であるか否か)
【0267】
研究は、セクションIII.D.2.の表9に記述された悪性度診断基準を使用して、グロフィタマブの点滴の最中または後に起こった任意のサイトカイン放出症候群をモニターおよび悪性度診断した。任意のサイトカイン放出症候群が起こった時間を記録した(例えば、対応するコホートで定義された1日目に対して)。
【0268】
IV.A.2モデル訓練および検証におけるデータの分割
図4は、特徴選択モデル(低減特徴セットおよび閾値を特定して、任意の非二進ベースライン特性を二進変数に変換する)、リスクスコア生成モデル(低減特徴セットの二進値をリスクスコアに変換する)および判断木モデル(リスクスコアおよびサイトカイン倍率変化を、悪性度2+サイトカイン放出症候群が起こるか否かの予測に変換する)を訓練および検証するために、どのデータが使用されるかを描写する。
【0269】
非ランダム化または正確に階層化された治験(例えば、NP30179)によりもたらされるモデル開発の課題は、複数の交絡現象を示すと予想される対象サブコホートの大きさである。予測または予後因子は、治療コホートおよび対象部分群において不均衡であり得る。例えば、グロフィタマブの投与量によるサイトカイン放出症候群の発生率の交絡があり得る。
【0270】
したがって、非重複訓練および検証データセットを使用した。訓練データセットは、標的2.5/10/30SUD Q3W治療レジメンを除いて、全ての利用可能なレジメンに対応するデータを含んだ。特徴選択モデルは訓練データ(n=196)を使用して、悪性度2+のサイトカイン放出症候群が最初のグロフィタマブ点滴から7日以内に起こったか否かにおいて、訓練セットのどのベースライン特性が有意に関係するかを特定する。低減された特徴セットは、悪性度2+のサイトカイン放出症候群の発生率に有意に関係する各ベースライン特性を含むように定義された。非二進値を有する(例えば、実数値を有する)低減された特徴セットにおける任意のベースライン特性では、特徴選択モデルは、ベースライン特性に関連する重み、および悪性度2+のサイトカイン放出症候群の発生を予測するベースライン特性の値と、悪性度2+のサイトカイン放出症候群の発生を予測しないベースライン特性の他の値とを最も正確に分ける閾値をさらに決定した。分けられた低減特性セットおよび閾値は、侵襲性および全ての非ホジキンリンパ腫の組織学について決定された。
【0271】
予測モデルは、低減された特徴セット(関連する重み、および任意の閾値を使用して)をリスクスコアに変換するリスクスコア生成モデルを含むこと、および対象特定的に解釈可能および臨床的に実行可能な出力(例えば、入院患者または外来患者モニタリングを使用して、治療後の潜在的なサイトカイン放出症候群をモニターするか否かの推奨)を生成する判断木も含むことが定義された。
【0272】
2.5/10/30ステップアップ投与量(SUD)Q3W治療レジメンに対応するデータは、検証SUDコホートであると定義された。よって、この治療レジメンを受けた対象に対応するデータを使用して、低減特徴セットおよび予測モデルにおけるベースライン特性の重みを検証した。
【0273】
判断木モデルは、1つまたは複数の閾値(例えば、リスク閾値およびサイトカインレベル閾値)を使用して、所定の対象はサイトカイン放出症候群の「高リスク」に対して「低リスク」であるか否かを予測する。訓練データセットは、非ランダム化または階層化されている多回用量レジメンの組合せであり、2.5mgの最初の用量の多くの症例を含まなかった。現行の2.5/10/30SUDのCRS軽減戦略も、初期コホートのものに正確に適合しなかった。これらのデータセット特性は、標的SUDスケジュールに正確な分類指標をもたらすように訓練データセットを使用して、分類指標判断カットオフを固定する難題を特徴的に表している。
【0274】
IV.A.3.サイトカイン放出症候群のタイミング
セクションIV.A.1.に示されているように、NP30179研究データは、サイトカイン放出症候群データを含んだ。それぞれのサイトカイン放出症候群は、対象、治療レジメン、重症度、および治療レジメンの範囲内でいつサイトカイン放出症候群が起こったかを示す時間計量に関連した。よって時間計量を使用して、どの治療サイクルにおいてサイトカイン放出症候群が起こったか、およびサイクル内での事象の時間を決定した。
【0275】
図5は、各分析コホートにおけるサイトカイン放出症候群のタイミングを示す。各サイトカイン放出症候群は、符号により表されている。複数のサイトカイン放出症候群が所定の対象で検出された場合、最初に観察された事象のみが
図5に表されている。(対数)OY軸における符号の位置は、対象における最初のサイトカイン放出症候群のタイミングを示す。重症度は、米国移植細胞治療学会(the American Society for Transplantation and Cellular Therapy)(ASTCT)合意悪性度診断推奨(上記の表6に示されている)を使用して決定した。各事象の重症度は、OX軸に沿った符号およびまた符号の色の両方で表されている。
【0276】
図5に示されているように、サイトカイン放出症候群の最初の出現の大多数が、治療レジメンのサイクル1で起こった。最も早い事象は、サイクル1の最初の点滴の終了の1日以内に起こった。
【0277】
さらに、サイトカイン放出症候群の発生率、単剤療法の投与量が増加すると増加した。例えば、4~10mgのグロフィタマブ投与量を受けたコホートと比べて、10~25mgのグロフィタマブ投与量を受けたコホート(10/16コホートおよび16~25コホートのいずれかを含む)で起こったサイトカイン放出症候群の数は2倍を超えていた。同様に、1~2.5mgのグロフィタマブ投与量を受けたコホートと比べて、4~10mgのグロフィタマブ投与量を受けたコホートで起こったサイトカイン放出症候群の数は2倍を超えていた。
【0278】
第2のサイクルにおけるサイトカイン放出症候群は、定量投与単剤療法コホートにいずれにおいても検出されなかった。分割用量およびステップアップ用量コホートにおいても、サイトカイン放出症候群は、サイクル2ではめったに起こらなかった。よって、この実施例に提示された後続分析は、サイクル1に起こったサイトカイン放出症候群の予測に焦点を合わせた。
【0279】
IV.A.4.サイトカイン放出症候群の用量依存性
図6は、サイクル1の第1週にサイトカイン放出症候群事象を経験した、それぞれのコホート内の訓練および検証データセットによる対象の百分率を示す。青色棒は、任意のタイプのサイトカイン放出症候群に対応する。橙色棒は、悪性度2以上のサイトカイン放出症候群に対応する。サイトカイン放出症候群の発生率は、投与量が相関した。
【0280】
1.8~2.5mgの単剤療法コホートにおけるサイトカイン放出症候群の発生率は、ステップアップ用量(最初の投与量に2.5mgを使用する)では異なっているよう見受けられた。この差は、臨床モニタリングまた軽減実行における差(例えば、点滴時間は、ステップアップコホートでは多くの対象において8時間まで延長されている)を反映し得る。代替的または追加的に、サイトカイン放出症候群の差は、ベースラインの主なリスク因子に関する2つのコホートの差(ベースラインリスクプロファイルが1.8~2.5mgの単剤療法コホートに比べてステップアップ用量コホートのほうが低いリスクである。
図13も参照すること)によってもたらされ得る。
【0281】
IV.A.5.予測因子の学習および多変量モデルの定式化
図7は、様々なベースライン特性(または「リスク因子」)がサイトカイン放出症候群の発生の予測に寄与する程度およびモデルのパラメータが学習される方法を特定するために使用されるワークフローを示す。この図に表されている訓練コホートは、各固定用量コホートおよび2.5/10/16SUD Q3W分割投与量コホートを含んだ。合計で、196人の対象が訓練コホートに表された。対象セットは、侵襲性非ホジキンリンパ腫または無痛性非ホジキンリンパ腫が診断された対象を含んだ。
【0282】
データを3つの分割交差検証でランダムに階層化した。階層化因子は、非ホジキンリンパ腫組織学(濾胞性病期I-IIIA、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞性リンパ腫、リヒター形質転換、形質転換濾胞性リンパ腫、形質転換、辺縁層リンパ腫)を含んだ。それぞれの反復では、およそ130人の対象に対応するデータを訓練に使用し、およそ65人の対象に対応するデータを試験に使用した。
【0283】
交差検証(訓練データを使用する)を、サイトカイン放出症候群の発生のベースライン特性予測を(特徴選択モデルにより)選択するため、選択されたリスク因子をサイトカイン放出症候群の予測確率に関係付ける、回帰モデルのパラメータを(リスクスコア生成モデルにより)調整するため、安定分析(リスクスコア生成モデルおよび特徴選択モデルによる)のため、ならびに回帰モデルの性能を推定する(リスクスコア生成モデルにより)ために使用した。リスクスコア生成モデルは、CRSリスクスコア(CRSRS)およびグロフィタマブ用量の二変量ロジスティック回帰モデル、またはベースラインパラメータ値(CRSRS組合せスコアと同じパラメータセット)およびグロフィタマブ用量の多変量ロジスティック回帰モデルのいずれかを含んだ。サイトカイン放出症候群リスクスコアの予測におけるベースラインパラメータの最終セットおよび単一ベースラインパラメータの重みは、ランダムフォレストおよび浮遊回帰モデル形成の助けを借りて完結させた。予測因子の安定性を、階層化交差検証設定で査定した。
【0284】
2.5/10/30SUD Q3W分割投与量コホートを、検証のため、および1つまたは複数の臨床関連リスクスコア閾値を特定するために使用した。より具体的には、リスクスコア生成モデルは、2.5mgのグロフィタマブの最初の用量の後に起こるサイトカイン放出症候群(ASTCT悪性度2+CRS)の予測確率に対応する、数値出力を出力するように構成した。予測確率スケールに対するいくつかの閾値の性能を、検証コホートで検証した。
【0285】
2つのタイプの分析を、「全ての組織学」データ(対象に侵襲性非ホジキンリンパ腫または無痛性非ホジキンリンパ腫のいずれかが診断されている場合のデータに対応する)のぞれぞれのため、および侵襲性非ホジキンリンパ腫(aNHL)データのために実施した。リスクスコア生成モデルを使用した最初の分析は、複数の単変量回帰を実施して、悪性度2以上のサイトカイン放出症候群が最初のグロフィタマブ投与後の1週間以内に観察されたか否かを、複数の変数のそれぞれが独立して予測する程度を決定した。
【0286】
IV.A.5.a.個別の変数が事象を予測する程度を査定する単変量分析
図8は、複数のベースライン特性のそれぞれが、サイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ投与量後に悪性度2+のもの)の発生の予測であった程度を示すプロットである。各ベースライン特性の用量調整予測強度は、因子レベルの1単位変化当たりのオッズ比に関して提供される。信頼区間(複数の試験では調整されず)は、有意性を解釈するのを助ける。オッズ比は、所定の特性が、サイトカイン放出症候群が起こるか否かを予測する程度を表す。大きなオッズ比は、示された因子レベルでサイトカイン放出症候群のリスクの増加を示す。オッズ比の統計量は、分離における単一変数の予測を考察する。
【0287】
追加の入力は、ランダムフォレストおよび浮遊回帰(多変量)実験により提供した。非二進(例えば、実数)変数に対応する低減特徴セットにおける任意の特徴では、特徴は、特定の不均等が非二進変数の使用により確立したか否か(例えば、所定の実数が特徴の閾値セット未満であったか否か)を示す二進値であると定義された。
【0288】
図9Aは、多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、どのようにしてサイトカイン放出リスクを予測できるかを図解する。図は、モデルの出力、グロフィタマブ用量の関数(最初の予測因子)としての悪性度2+のサイトカイン放出症候群の予測確率、腫瘍負荷(SPDカテゴリ化)、末梢血浸潤状態、およびAnn Arbor病期カテゴリ(IまたはII対IIIまたはIV)を図解する。これらのパラメータのあらゆる特定の組合せにおいて、モデルは悪性度2+のサイトカイン放出症候群のある特定のリスクを予測する。2.5mgのグロフィタマブおよび他のベースラインパラメータの特定値(縦破線および赤色矢印で示されている)では、予測リスクは約25%と推定された。
【0289】
IV.A.5.b.事象を予測する組合せサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)
組合せサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)は、ベースラインでの選択された(低減特徴セット)対象特性の重み付け合計であることが定義された。リスクスコア生成モデルは、訓練データにおける最大分類精度および安定性のある重みを定義した。それぞれの重みは、用量および対応するパラメータのベースライン値から悪性度2+CRSのオッズ比を予測する、単変量用量調整ロジスティック回帰の対数(オッズ比)に主に由来する。重みは、ランダムフォレストおよび浮遊特徴選択実験による特徴の安定性についての情報を含むことによって、さらに調整した。(
図7を参照すること。)
【0290】
この実施例において、リスクスコア生成モデル184は、サイトカイン放出症候群リスクスコアを生成することが定義され、これは特定の対象の特定のグロフィタマブ投与量で起こる悪性度2+のサイトカイン放出症候群を予測する。対象がサイトカイン放出症候群を経験するリスクは、サイトカイン放出症候群リスクスコアおよび治療投与量に基づいて決定した。
【0291】
この実施例において、判断木モデルは、サイトカイン放出リスクスコアおよび投与量の合計がリスクスコア閾値を超えるか否かに基づいてサイトカイン放出症候群が起こるかについて、実数のサイトカイン放出リスクスコアを二進予測に翻訳するように構成された分類指標を含んだ。サイトカイン放出リスクスコアは、最小値の0および最大値の8.5を有することが定義された。
【0292】
図9Bはサイトカイン放出リスクスコアが、どのようにして予測モデルの投与量と一緒に計算および使用されるかを図解する。
図9Bに図解されているように、悪性度2+サイトカイン放出症候群の発生率をサイトカイン放出リスクスコアに関係付けるプロットの勾配は、悪性度2+サイトカイン放出症候群の発生率を投与量に関係付けるプロットの勾配よりも急勾配であり得る。
【0293】
表9は、ベースライン特徴に割り当てられた最終重み(または、その二進変換)は、サイトカイン放出症候群リスクに寄与することを示す。最高の重みに関連する特性は、Ann Arbor病期が少なくともIIIであるか否か、および腫瘍における全体的な最長腫瘍直径の積和が少なくとも3000mm
2であるか否かを示した。中間の重みに関連する特性は、対象が64歳を超えるか否か、骨髄浸潤が観察されるか否か、および非定型細胞が末梢血で検出されるか否かを示した。最低の重みに関連する特性は、対象が心臓の併存疾患を有するか否か、白血球数が4.5×10
9細胞/lであるか否か、および乳酸デヒドロゲナーゼが280U/lを超えるか否かを示した。
【0294】
IV.A.6.訓練および検証データセットの性能
図10は、リスクスコア生成モデルの2つのバージョンによるリスクスコアに対応する予測陰性症例に関する陰性的中率(NPV)を示す。1つの場合において、リスクスコア生成モデルは、低減特徴セットに表されている二進バージョンのベースライン特性を組合せサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS、青色線、
図9Bも参照すること)に変換した。別の場合において、リスクスコア生成モデルは、低減特徴セットに表されている生型のベースライン特性を多変量モデル出力(橙色線、
図9Aも参照すること)に変換した。
【0295】
図10のあらゆるポイントが特有のカットオフに対応し(例えば、判断木モデルを使用する)、ここでカットオフを超える値は、少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群が起こる予測に対応すると考察され、カットオフを下回る値は、反対の予測と考察された。カットオフセットのそれぞれでは、陰性的中率および予測陰性症例百分率がカットオフに記録された。
【0296】
図10では、OX座標は、そのカットオフの陰性コール率を示し、これは判断木モデルにより「低リスク」と分類されたデータセットにおける症例の割合である。各ポイントのOY座標は、カットオフに関連するポイントでの陰性的中率を特定する。陰性的中率は、低リスクと分類された対象が悪性度2以上のサイトカイン放出症候群を実際に発生しない確率である。
図10の網掛け域は、機会範囲であり、対象の20%~50%が、最初のグロフィタマブ用量の後に悪性度2以上のサイトカイン放出症候群を発生する10%未満の機会を有した。
【0297】
図10に図解されているように、モデル変動性は、陰性的中率が80~90%に達すると、はっきりと増加する。機会範囲は、「全ての組織学」および侵襲性非ホジキンリンパ腫データの療法に存在する。
【0298】
標的2.5/10/30SUDコホートにおけるサイトカイン放出症候群(最初のグロフィタマブ用量の後の悪性度2+のもの)を予測する性能を特徴付けるため、最初のグロフィタマブ用量を2.5mgと定義した。
図11は、2.5/10/30mgのステップアップ投与量コホートのモデル検証データセットにおける、予測陰性症例に対する陰性的中率を示す。各ドットは、サイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量の後に悪性度2以上のもの)が起こるか否かについての二進予測にリスクスコアを変換するために判断木モデルにより使用される、異なる閾値に対応する。リスクスコアと投与量の合計が閾値より低い場合、分類指標は、サイトカイン放出症候群が起こる予測に対応する「低リスク」の結果を生成した。よって、「低リスク」の結果に対応する予測の百分率(悪性度2+のサイトカイン放出症候群が第1のグロフィタマブ用量の後に起こる予測に対応する)は、閾値が増加すると増加する。
【0299】
図12Aは、事象が発生するまたは発生しないことが予測されるかどうかを識別する3つの例示的閾値のそれぞれにおけるサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)に応じて発生する、サイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)の確率を示す。低い閾値は、より多くの事象が起こる予測に対応した。
【0300】
図12A中の表は、閾値が4.0から6.0に増加すると、どのようにして陽性症例の予測数が17(49%)から7(20%)に減少するかを示す。低リスクであること、およびサイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)を経験しないこと、または経験することが予測された対象の部分集団のデータを、さらに検査した。
【0301】
カットオフ閾値の4.0が使用された場合、判断木モデルは、対象の51%がサイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)を経験しなかったことを予測し、そのような事象は、観察された陰性的中率が1.0であったように、閾値を下回るスコアを有する対象では観察されなかった。カットオフ閾値の6.0が使用された場合、判断木モデルは、対象の80%がサイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)を経験しなかったことを予測したが、閾値を下回る対象の14%では、そのような事象が実際に観察された(その結果陰性的中率は0.86であった)。カットオフ閾値の5.0が使用された場合、判断木モデルは、対象の60%がサイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)を経験しなかったことを予測し、そのような事象は、対象のわずか5%で観察された。まるで5.0に近いカットオフが陽性症例と陰性症例を区別するために最適であるように見受けられた。閾値5.0を下回った結果に対応する対象の部分集団のうち、サイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)を経験する低いリスクであることが予測される対象の95%は、事実、そのような事象を経験しなかった。
【0302】
訓練済みCRSRSモデルをさらに使用して、完全(モデルおよび判断カットオフ)検証セットにCRSリスク予測を生成した。検証セットにおけるそれぞれの対象は、NHLが診断されており、NP30179臨床研究の参加者であった。各スコアを、2つの閾値(4.0または5.0)のうちの1つと比較して、対象が第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のサイトカイン放出症候群を経験するか否かに付いての二進予測を生成した。検証セットは、156人の対象のデータを含んだ。この分析のデータを
図12Bに示す。
【0303】
図12Bのプロットに示されているように、CRSRS閾値は、予測陰性症例の百分率と正に相関し、陰性的中率と負に相関したままである。表に示されているように、カットオフ閾値の4.0が検証データの査定に使用された場合、訓練済み判断木モデルは、対象の42%がサイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)を経験しなかったことを予測し、このことは、閾値を下回るスコアを有する対象の98%で正確であった(陰性的中率の0.98をもたらした)。(悪性度2以上のサイトカイン放出症候群を経験しなかった対象の検出割ありは、40%であった)。標準誤差は0.02であり、信頼区間は0.92~0.99であった。
【0304】
カットオフ閾値の5.0が検証データの査定に使用された場合、訓練済み判断木モデルは、対象の52%がサイトカイン放出症候群(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)を経験しなかったことを予測し、このことは、閾値を下回るスコアを有する対象の98%で正確であった(陰性的中率の0.98をもたらした)。
【0305】
注目すべきは、訓練データ(
図12Aに示されている)を使用して決定された陰性症例の予測百分率は、検証データ(
図12Bに示されている)を使用して決定されたものと非常に類似している。
【0306】
さらに、検証データに関して、ベースラインのCRSRSとグロフィタマブの第1点滴後に起こった任意の観察されたサイトカイン放出症候群の悪性度との関連性を、CARTナイーブおよび経験済み対象の両方において、ならびにデキサメタゾンまたは他のコルチコステロイドで前治療された対象において観察した。
【0307】
IV.A.7.サイトカイン放出症候群リスクスコアの分布および予測
図13は、臨床研究NP30179に対応するベースラインサイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)の分布を示す。示されているように、分布は多モードであり、2.3、5.6および5.6のあたりにモードを有する。
【0308】
さらに、ベースラインリスクは、コホートにわたって異なっていることがあり、このことは、同じ治療投与量を受けた対象間でサイトカイン放出症候群の観察における差のいくつかを説明し得る。この検出相違は、これらのコホートにおけるサイトカイン放出症候群発生率で観察された差の多くを説明し得る。
図13に示されている表は、これらの用量群のサイトカイン放出症候群リスクスコア(第1のグロフィタマブ用量後に悪性度2以上のもの)の統計量分布を要約する。(
図6は、第1のグロフィタマブ点滴後のサイクル1におけるサイトカイン放出症候群発生率の要約を示す)。
【0309】
IV.B.実施例2:サイトカインレベルの初期変化がサイトカイン放出症候群の発生率および重症度をどのように予測し得るかについての例示的な分析
NP30179研究の対象セット(
図4のボックスに示されているように、訓練に使用されたコホート内にもいた)のそれぞれにおいて、サイトカインデータを収集および分析して、サイトカイン動態、および様々なタイプのサイトカインレベルがサイトカイン放出症候群の発生率および/または重症度を示す程度を決定した。対象セットにおけるそれぞれの対象は、非ホジキンリンパ腫が診断されており、
図3に示されているように、C1D1のGptの後、研究の8日目に固定用量のグロフィタマブを受けている、NP30179の固定用量コホート内であった。表10は、グロフィタマブの投与量のそれぞれに基づいた、および対象が診断された(侵襲性または無痛性)非ホジキンリンパ腫のサブタイプにも基づいた、対象セットの内訳を示す。
【0310】
それぞれの投与量範囲について、表11は、最初のグロフィタマブ投与の持続期間の分布を示す。示されているように、大部分の点滴は4時間かけて行われた。
【0311】
IV.B.1.例示的なサイトカイン動力学
図14Aおよび
図14Bは、最初のグロフィタマブ治療サイクルにおけるIL-6およびTNF-α(それぞれ)の倍率変化を示す。各線は、サイトカイン放出症候群(いずれかの悪性度のもの)を経験した異なる対象に対応する。第1のx位置はC1D1のGptの投与前に対応する。第2のx位置はC1D8のグロフィタマブの投与前に対応する。全ての対象のサイトカインレベルデータを、グロフィタマブの第1投与の前に収集した第2の時点に正規化した。第3のx位置(MI)は、グロフィタマブ点滴の中間に対応する。第4のx位置(EOI)は、グロフィタマブ点滴の終了に対応する。第5、6および7のx位置(6H EOI、24H EOI、および120H EOI)は、グロフィタマブ点滴の終了の(それぞれ)6、24および120時間後に対応する。
【0312】
両方のサイトカインのピークが治療開始後に観察された。IL-6に関して、ピークは点滴終了(EOI)時点で発生し始めた。TNF-αに関して、ピークは点滴中間(MI)時点でさらに早く発生し始めた。
【0313】
図15は、サイトカイン放出症候群を経験しなかった対象(左側プロット)およびサイトカイン放出症候群を経験した対象(右側プロット)のIL-6におけるサイトカイン倍率変化の対比である。注目すべきは、矢印を別として、
図15の右側プロットは
図14Aと同じである。
【0314】
「オントリートメント」(OT)時点は、点滴中間時点および点滴終了時点を含むことが定義され、「ベースライン」(BL)時間は、治療が始まる時点(C1D8投与前)であることが定義された。
図15に示されているように、治療開始後の時点(例えば、MI、EOI、6H EIOなど)のIL-6の倍率変化は、一般に、サイトカイン放出症候群を経験した対象において実質的に陽性であり(右側グラフ、治療の変化を比較する-緑色矢印-グロフィタマブ投与前の変動性-赤色矢印)、一方、この関係性は、サイトカイン放出症候群を経験しなかった対象では観察されなかった(左側グラフ)。
【0315】
各対象において、オントリートメントサイトカイン倍率変化は、以下の定義で計算された:
log2(1+OT)-log2(1+BL)
式中、OTは、オントリートメント期間中の最大サイトカインレベル(1ミリリットル当たりのピコグラム)であり、BLは、ベースライン時点中のサイトカインレベル(1ミリリットル当たりのピコグラム)である。次にこれらのオントリートメントサイトカイン倍率変化を、サイトカイン放出症候群が対象に起こったか否か、および任意の観察されたサイトカイン放出症候群の悪性度に基づいて分けた。
【0316】
図16Aおよび
図16Bは、最初のサイトカイン放出症候群の存在または悪性度に、オントリートメントサイトカイン倍率変化がどのように依存しているかを示すボックスプロットを示す。各ポイントは対象を表す。各ポイントは、色付けされて、対象が受けたグロフィタマブの投与量を示す。
【0317】
図16Aにおいて、x値の0は、サイトカイン放出症候群が観察されなかったことを示す。各非ゼロx値は、観察されたサイトカイン放出症候群の悪性度を示す。
図16Bでは、データポイントを、少なくとも2の悪性度のサイトカイン放出症候群が観察されたか否かに基づいて分けた。
【0318】
示されているように、オントリートメントサイトカイン倍率変化は、最初のサイトカイン放出症候群事象の悪性度で増加し(左側プロット)、少なくとも2の悪性度のサイトカイン放出症候群が観察されたか否かに基づいて定義された群において異なっていた(右側プロット)。具体的には、オントリートメントサイトカイン倍率変化は、サイトカイン放出症候群の悪性度が高いほど高くなった。
【0319】
オントリートメントサイトカイン倍率変化は、最大サイトカインレベル+1の対数と、ベースラインサイトカインレベル+1の対数との差を捕捉するが、他のサイトカイン倍率変化は、任意の時点のサイトカインレベルとベースライン時点のサイトカインレベルとの差を表すように計算され得る。すなわち、サイトカイン倍率変化は、以下のように定義され得る:
log2(1+T)-log2(1+BL)
式中、Tは、任意の期間中のサイトカインレベル(1ミリリットル当たりのピコグラム)であり、BLは、ベースライン時点中のサイトカインレベル(1ミリリットル当たりのピコグラム)である。
【0320】
ベースラインサイトカインレベルがサイトカイン放出症候群と関連する場合、サイトカインレベルとサイトカイン放出症候群の発生率との関係性は、サイトカイン倍率変化を評価することによって捕捉することができない。しかし、このサイトカイン倍率変化測定値は、対象変化内の特徴付けを促進し、対象内変動性を低減することができる。このサイトカイン倍率変化測定値は、誘導における薬力学的概念の捕捉をさらに促進することができる。したがって、この実施例の後続サイトカインレベル分析は、サイトカイン倍率変化測定値(またはオントリートメントサイトカイン倍率変化)に焦点を合わせる。
【0321】
サイトカイン倍率変化は、治療の誘導における薬力学的概念を反映することができる。絶対倍率変化は、サイトカイン動態特性を伝えるので、対象におけるベースライン変動性をより良く補償し得る。
【0322】
IV.B.3.早期サイトカイン変化およびサイトカイン放出症候群の関連性への用量の効果
図17Aおよび
図17Bは、グロフィタマブ治療の最初のサイクルにおいて、2つのサイトカイン(IL-6、TNF-α)のそれぞれのオントリートメントレベルがどのように変化するかを示す。各図に示されている4つのサブプロットは、4つの異なる投与量範囲に対応する。各符号は対象を表す。符号の色は、対象がサイトカイン放出症候群を有するか否かを示し、有するのであれば、事象の悪性度を示す。サイトカイン放出症候群の各発生率および重症度、ならびに各投与量範囲では、平均サイトカイン倍率変化も、発生率/重症度に関連する、および投与量範囲に関連する対象のサイトカインレベルを使用して計算した。これらの平均値を、
図17Aおよび
図17Bに実線で示す。
【0323】
これらの図面は、投与されたグロフィタマブの投与量と、サイトカイン誘導のレベルとの間に明確な依存性があることを示す。すなわち、サイトカイン倍率変化のピークの大きさは、グロフィタマブの高い投与量が投与されるほど大きくなる。
【0324】
さらに、サイトカイン倍率変化のピークの大きさは、サイトカイン放出症候群の重症度に相関する。すなわち、サイトカイン放出症候群の悪性度が高いほど(紫色または赤色の線で表されている)、高いピークサイトカインレベルに関連する。
【0325】
加えて、IL-6、TNF-αおよびIL-8に関して、ピークサイトカインレベルの大きさは、ピークサイトカインレベルのタイミングに相関する。より具体的には、ピークサイトカインレベルが高いほど(および、サイトカイン放出症候群の重症度が大きいほど)、早期のピーク時間と関連する。
【0326】
サイトカイン放出症候群を経験しなかった対象に関して、IL-6、TNF-α、IL-8およびIL-10サイトカインのオントリートメントサイトカイン倍率変化と投与量との間の依存性は、4mgを超える投与量のグロフィタマブで見られた。MIPbのオントリートメントサイトカイン倍率変化と投与量との間の依存性は、2mgを超える投与量のグロフィタマブで見られた。10mgの投与量のグロフィタマブでの対象特定的オントリートメントサイトカイン倍率変化の平均は、IL-6で1.55倍、TNF-αで2倍、IL-8で1.55倍、MIPbで4倍、およびIL-10で8倍であった。20mgの投与量のグロフィタマブでの対象特定的オントリートメントサイトカイン倍率変化の平均は、IL-6で16倍、TNF-αで8倍、IL-8で4倍、MIPbで100倍、およびIL-10で100倍であった。
【0327】
サイトカイン放出症候群を経験しなかった対象に関して、投与量依存性は、グロフィタマブの最低の投与量でも始まった。IL-6のオントリートメントサイトカイン倍率変化は、30~1000の大きさであた。
【0328】
図18Aおよび
図18Bは、IL-6およびTNF-αのそれぞれにおける対象の最大の対数2倍率変化を示す。データは、任意の非ゼロ悪性度のサイトカイン放出症候群が治療の最初のサイクルで観察されたか否かに基づいて分けられた。
図18Aおよび
図18Bのぞれぞれでは、左側のサブプロットにおける各線は、サイトカイン放出症候群が最初のサイクルで観察されなかった対象に対応し、一方、右側のサブプロットにおける各線は、サイトカイン放出症候群が最初のサイクルで観察された対象に対応する。これらの線プロットは、TNF-αの最高ピークが点滴中間(MI)時点で観察されていることを示す。一方、IL-6の最高ピークは、点滴の終了(EOI)時または6時間後に起こる。
【0329】
IV.B.4.早期サイトカイン変化およびサイトカイン放出症候群の関連性への用量の効果のタイミング
サイトカインレベルの動力学がサイトカイン放出症候群発生率の動力学に関連する程度を調査するため、
図19Aおよび
図19Bを、サイトカイン倍率変化の例示的な経時変化を示し、同時に、治療開始に関するサイトカイン放出症候群の発症の時間に従って対象を階層化するように生成した。
【0330】
縦列は、任意の最初のサイトカイン放出症候群の異なるタイミングに対応する。具体的には、第1縦列は、サイトカイン放出症候群が起こらなかった場合に対応する。第2、3、4および5縦列は、サイトカイン放出症候群が、治療点滴開始の2時間以内に、点滴開始の2~4時間で、点滴開始の4~10時間で、および点滴開始から10時間を超えて起こった場合にそれぞれ対応する。
【0331】
異なる横列は、異なるグロフィタマブの投与量に対応する。低い横列ほど高い投与量に対応する。
【0332】
各線は、単一の対象に対応し、時間における(点滴開示の始まり)所定のサイトカインのサイトカイン倍率変化を示す。線の色は、サイトカイン放出症候群の悪性度を表す(暗緑色線は、そのような事象が起こらなかったことに対応する)。
【0333】
サイトカイン放出症候群発症のタイミングは、網掛け領域内で示されている。よって、網掛けされていない領域内の0を超えるサイトカイン倍率変化は、サイトカイン放出症候群発症に先立ち、切迫したサイトカイン放出症候群の指標として機能し得る。
【0334】
IL-6(
図19A)に関して、正の倍率変化は、全てではないが幾人かの対象においてサイトカイン放出症候群の症状の前に検出された。TNF-α(
図19B)に関して、対象がサイトカイン放出症候群を経験する大多数の場合は、サイトカイン放出症候群発症に先立つ時間範囲において、特に1mgを超えるグロフィタマブ投与量によって、サイトカイン倍率変化のピークに関連した。
【0335】
サイトカイン誘導についての投与量の観察された効果を最小限にするために、1.8~10mgの第1グロフィタマブ投与量に対応するデータのみを処理する、より焦点を合わせた分析を実施した。さらに、予測の精度を査定するため、「真」予測(サイトカイン放出症候群発生のもの)を、サイトカイン倍率変化が点滴開始の前または4.0の時点で0を超えていた場合に記録し、「偽」予測を、そうでない場合に記録した。
【0336】
図20Aおよび
図20Bのそれぞれに関して、左側サブプロットは、
図19Aおよび19Bに示されているデータ(1.8~10mgの投与量範囲に対応するもの)のサブセットを示す。図解されているように、複数の症例において、サイトカインのサイトカイン倍率変化は、4時間の投与時間でy=0のラインと交差せず(よって、ベースラインに対するサイトカインレベルの増加を表さなかった)。
【0337】
右側サブプロットは、任意のタイプのサイトカイン放出症候群が発生するか否か、または少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群が発生するか否かに基づいて識別された事例において、サイトカインレベルのサイトカイン倍率変化を比較するボックスプロットを示す。これらのプロットは、サイトカインレベルが、サイトカイン放出症候群が発生した(通常のもの、または少なくとも悪性度2のもの)事例において高いことを示す。
【0338】
真陽性、偽陽性、真陰性および偽陰性の統計量を
図20Aおよび
図20Bにさらに示す。予測事象発生は、サイトカイン対数2倍率変化が≦4時間のx軸範囲でゼロを超えるか否かに基づいた。
【0339】
提示されたデータは、サイトカインにおいて真陽性が偽陽性を凌ぎ、真陰性が偽陰性を凌いだ。さらに、感受性、特異性、陽性的中率および陰性的中率は、サイトカインにおいてほぼ全てが機会を超えた(>0.5)。
【0340】
IV.B.5.サイトカイン放出症候群リスクスコアとサイトカインレベルの変化との関連性
本明細書に記載されているように、様々なサイトカインの倍率変化は、サイトカイン放出症候群発生の発生率および重症度を示す。さらに、実施例に1説明されているように(例えば、
図8の「リスクスコア」の結果を参照すること)、サイトカイン放出症候群リスクスコア(CRSRS)も発生率を予測する。
【0341】
潜在的に、倍率変化サイトカインレベルの予測は、サイトカイン放出症候群リスクスコアの予測と部分的または完全に重複している。あるいは、潜在的にこれらの変数(倍率変化サイトカインレベルおよびリスクスコア)の組合せは、いずれかの変数単独よりも有益である(および、より正確な予測を支持する)。
【0342】
これらの問題を調査するため、多次元プロットを生成した。具体的には、
図21Aおよび
図21Bは、様々なサイトカイン(全ての投与量)において、サイトカイン放出症候群リスクスコアに対するサイトカインレベルの最大対数2倍率変化を比較する散布図を示す。サイトカイン放出症候群リスクスコアを、セクションIV.A.5.b.に開示された技術に従って各対象で計算した。
【0343】
4.5を超えるサイトカイン放出症候群リスクスコアは、低いリスクスコアと比較して少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群発生の高いリスクを表すことが考察されるので、CRSRS閾値は4.5と定義された。倍率変化閾値は、最初に4.5未満のサイトカイン放出症候群リスクスコアに関連する全ての対象において最大サイトカイン倍率変化を特定し、次いで値を平均化することによっても定義された。
図21Aおよび
図21Bのそれぞれにおける破線は、倍率変化閾値に等しいy値を有し、CRSRS閾値に等しい低い値を有するx範囲まで伸びている。
【0344】
各サイトカインでは、これらの閾値を使用して、少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群が、(1)対象のサイトカイン放出症候群リスクスコアが少なくとも4.5である場合、および(2)対象のサイトカイン最大対数2倍率変化が倍率変化閾値を超える場合に起こることを予測した。これらの条件のいずれか(または、両方)が満たされない場合、対象は少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群を経験しないことが予測された。よって、
図20Aおよび
図20Bのそれぞれにおいて、破線の上方にある各データポイントは、少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群に対応すること、および破線の下方または破線の左側にある各符号は、少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群に対応しないことが予測された。
【0345】
破線の上方にある各赤色または紫色の符号(悪性度2、3または4のサイトカイン放出症候群に対応する)は、真陽性である。破線の下方または破線の左側にある各赤色または紫色の符号は、偽陰性である。破線の上方にある各緑または青色の符号(サイトカイン放出症候群なし、または悪性度1のサイトカイン放出症候群に対応する)は、偽陽性である。破線の下方または破線の左側にある各緑色または青色の符号は、真陰性である。
【0346】
5つの査定されたサイトカインの全てにおいて、少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群の大多数が、それぞれの閾値を超えるサイトカイン放出症候群リスクスコアおよび最大対数2倍率変化と関連した。しかし、いくつかの偽陰性が観察された。偽陰性の少なくともいくつかは、ピーク倍率変化が点滴期間で達成されなかった動態プロファイルを有するサイトカインが原因であり得る。
【0347】
両方の基準(CRSRS閾値および倍率変化閾値に関する)を使用して、いずれかの閾値を個別に使用することに比べて、高い特異性値をもたらした。各特異性値は、真陰性および偽陽性の合計に対する真陰性の数であることが定義された。
【0348】
IV.B.6.解釈
サイトカイン放出症候群の発生率および重症度の両方は、サイトカイン誘導の発生率および投与量と同様に、強い用量依存性の現象である。(例えば、
図16A、
図16B、および
図19A~
図19Bを参照すること)。よって、サイトカイン放出症候群の発生率および重症度を予測するサイトカインシグナルの予測値の査定は、比較群および/または交絡因子の対照を伴わない第I相非無作為化検査では非常に難題である。
【0349】
いくつかのサイトカイン(例えば、TNF-α、IL-8、M1P1b、IL-6、およびIL-10)のそれぞれに関して、サイトカイン放出症候群の発生率および重症度のオンセラピー動態間の関連性が観察された。
【0350】
サイトカインレベルが、レベルがサイトカイン放出症候群の発生率または悪性度を予測するか否かを決定するために単独で評価される場合、サイトカイン倍率変化は、妥当な予測を送り出す。いくつかのサイトカイン(例えば、IL-6)の動態は、点滴後およびベースラインレベルを使用するサイトカイン倍率変化の計算が、1つまたは複数のサイトカインのオントリートメントレベルおよびベースラインレベルを使用して計算されたサイトカイン倍率変化と比較して、サイトカイン放出症候群にとってより予測的であり得る。サイトカイン倍率変化の大きさは、いくつかのサイトカインでは比較的小さかった(TNF-αおよびIL-8では、1.4~2倍の増加であった)。これらの対象群間の差が小さい場合、十分な信頼性または精度でサイトカインレベルに基づいたサイトカイン放出症候群を予測する高い感度を有するアッセイを開発することが有利であり得る、または潜在的に必要でもあり得る。
【0351】
サイトカイン変化単独では、陽性的中率と陰性的中率の両方に関して、重度のサイトカイン放出症候群(悪性度2以上のもの)の信頼できる精度の予測を達成することができない。改善された的中率は、早期サイトカイン変化を、ベースラインサイトカイン放出症候群リスクスコアと組み合わせた場合に達成することができる。
【0352】
IV.C.実施例3:サイトカイン放出症候群の発生を予測する多変量モデルの例示的な訓練および使用
サイトカイン放出症候群リスクスコアを使用して、サイトカイン放出症候群(悪性度2以上のもの)の発生率を高い信頼性で予測できる程度を決定するために、スコアのスコア閾値を決定した。より具体的には、閾値を、訓練データの使用により学習させて、少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群が観察された事例と、そのような事象が観察されなかった、または悪性度1のサイトカイン放出症候群が観察された事例とを最適に分離するものにした。
図22は、悪性度2またはそれ以上のサイトカイン放出症候群の発生(第1のグロフィタマブ用投与量に調整された)の確率が、正規化バージョンのサイトカイン放出症候群リスクスコアとどのように関係するかについてのランドマーク分析による結果を示す。点滴の終了後に起こった事象のみが提示される。具体的には、各データポイントは、侵襲性非ホジキンリンパ腫が診断され、グロフィタマブの治療を受けた対象を表す。符号の色は、観察されたサイトカイン放出症候群の悪性度を表す(ある場合には、暗緑色符号はサイトカイン放出症候群が観察されなかったことを表す)。ジッタがy軸に沿って導入され、これは、符号のy軸が任意のサイトカイン放出症候群または対象の任意の特性を表さないことを意味する。
【0353】
サイトカインデータが入手可能な89人の対象のうち、サイトカイン放出症候群リスクスコアとスコア閾値との比較は、対象の41人(46%)が悪性度2以上のサイトカイン放出症候群を経験する高いリスクがある、および48人の対象(54%)が悪性度2以上のサイトカイン放出症候群を経験する低いリスクがあるという予測をもたらした。高いリスクがあると予測される対象のうち、これらの対象の23人は悪性度2以上のサイトカイン放出症候群を経験し、一方で18人は経験しなかった。低リスクがあると予測された対象のうち、これらの対象の4人は悪性度2のサイトカイン放出症候群を経験し(しかし、これらの4人の対象のうちで悪性度3以上のサイトカイン放出症候群を経験したものはいなかった)、これらの対象のうちで44人は経験しなかった。
【0354】
図22および
図23は、任意の観察されたサイトカイン放出症候群の悪性度が、TNF-αのサイトカイン放出症候群リスクスコアおよびサイトカイン倍率変化の両方にどのように関係するかを示す。よって、
図22に表されている各データポイントは、x軸値が同一である
図23に表されている対応するデータポイントを有する。しかし、
図23のy軸値は、TNF-αのサイトカイン倍率変化を示し、
図23は、
図22に示されているものと同じスコア閾値(サイトカイン放出症候群リスクスコアに対応する)をx軸に沿って示す。
【0355】
図23は、TNF-αのサイトカイン倍率変化の閾値に対応する2つのサイトカイン変化閾値(訓練データを使用して学習した)を、y軸に沿ってさらに描写する。具体的には、TNF-αのサイトカイン倍率変化の異なるサイトカイン変化閾値が特定され、サイトカイン放出症候群リスクスコアに選択されたサイトカイン変化閾値がスコア閾値を上回ったことに対して、TNF-αのサイトカイン倍率変化の高いサイトカイン変化閾値が、サイトカイン放出症候群リスクスコアに選択された。
【0356】
この分析において、各対象では、サイトカイン放出症候群リスクスコアを使用してTNF-aのカットオフを特定し、ここで閾値は、サイトカイン放出症候群スコアの5を使用して、少なくとも悪性度2のサイトカイン放出症候群を経験する低いリスクおよび高いリスクの対象を識別できるように選択された。
図23に示されているように、観察された悪性度2以上のサイトカイン放出症候群の大多数は、高リスクであると予測された対象(28人のうち24人)で観察された。さらに、低リスクであると予測された対象(54人の対象)に対応する悪性度2以上のサイトカイン放出症候群が観察されなかった大多数の事例は、正確に予測された(わずかな偽陰性を伴った)。よって、TNF-aのサイトカイン倍率変化とサイトカイン放出症候群リスクスコアの両方に基づいて生成された正確度、精度およびリコールは、サイトカイン放出症候群リスクスコアのみに基づいたものより良好であった。
【0357】
IV.D.実施例4:例示的なベースライン特性の重み
実施例1において、表9は、ベースライン特性セット(または、その二進変換)に割り当てられた重みを示し、重みを使用して、サイトカイン放出症候群リスクスコアを生成した。しかし、いくつかの例において、表9において特定されたベースライン特性に対応する全ての変数の値は、利用可能ではない。例えば、末梢血における非定型細胞を検出する試験(例えば、血液塗抹試験)は、常套的に実施されない。さらに、治療が決定される時点では、骨髄試料(骨髄浸潤を決定するため)は利用不能であり得る、または浸潤分析の結果は利用不能であり得る。
【0358】
したがって、サイトカイン放出症候群リスクスコアは、ベースライン特性の低減セットに基づいていてもよい表12は、例示的なベースライン特性の例示的な低減セットを特定する。ベースライン特性の低減セットにおける各特性の重みは、ベースライン特性の完全セットが分析された場合に決定された重みと同じであることが定義された。
【0359】
ベースライン特性の低減セットが使用される場合、予測出力の信頼度は低減され得る。よって、サイトカイン放出症候群の予測発生とサイトカイン放出症候群の予測不発生とを区別する信頼カットオフは、検証コホート(2.5/10/30mgのSUD)からのデータの分析に基づいて5から4へと下げられた。
【0360】
図24は、SUDコホート(n=109、aNHL症例)におけるカットオフ値セットにおける陰性的中率および低リスク検出率を示す。左側パネルは、元のサイトカイン放出症候群リスクスコア(表9において特定された8つのベースライン特性を使用して計算されたCRSRS)に対応するデータを示し、右側パネルは、ベースライン特性の低減セット(表12において特定されたCRSRS.5p)に対応するデータを示す。
【0361】
表13は、2つの調整済み信頼度カットオフ(4または5)のそれぞれ、およびベースライン特性の2つのセットのそれぞれを使用する予測のための例示的な性能測定値を示す。具体的には、表13は、予測が表9において特定されたベースライン特性を使用して行われたときの性能測定値を示し、表は、予測が表12において特定されたベースライン特性を使用して行われたときの性能測定値を示す。さらに、各表における第1横列は、4.0のカットオフ(実数値出力を二進予測に変換するため)に対応し、各表における第2横列は、5.0のカットオフに対応する。欠測値はゼロで帰属させ、それによって「基本ケース」シナリオに対応し、ベースラインリスクを過小評価し得る。調整済み信頼度カットオフの4を使用すると、低減分類指標の予測性能は、8つのベースライン特性を使用した分類指標の性能に匹敵した。
【0362】
IV.追加の考察
本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されるとき、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つもしくは複数の方法の一部または全部および/あるいは1つもしくは複数のプロセスの一部または全部を実施させる、命令を収容する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部および/または1つまたは複数のプロセスの一部または全部を実施させるように構成された命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において、有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0363】
用いられている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されかつ説明された特徴のいかなる均等物またはその部分も除外する意図はなく、特許請求された発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。よって、特許請求の範囲に記載された本発明は、実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変更および変形は、当業者によってあてにされてもよく、そのような変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。
【0364】
本明細書は、好ましい例示的実施形態のみを提供し、本開示の範囲、応用性、または構成を限定することは意図されていない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の説明は、様々な実施形態を実装するための可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に示されるような趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置において様々な変更がなされてよいことが理解される。
【0365】
実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明において具体的な詳細が与えられる。しかし、これらの具体的な詳細なしで実施形態が実施され得ることが理解されよう。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス、および他の構成要素は、実施形態を不必要に詳細に不明瞭にしないために、ブロック図形式の構成要素として示されてもよい。他の例では、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術が不必要な詳細なしに示されてもよい。
【0366】
潜在的に特許請求可能な主題の例は、以下を含むが、これらに限定されない。
【国際調査報告】