(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】基礎インスリンおよびボーラスインスリンの滴定を行うためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/17 20180101AFI20240730BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G16H20/17
A61M5/142 530
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503370
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022037442
(87)【国際公開番号】W WO2023003800
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】スワティー・トータワット
【テーマコード(参考)】
4C066
5L099
【Fターム(参考)】
4C066QQ77
4C066QQ78
5L099AA25
(57)【要約】
第1および第2のタイプのインスリンの推奨用量をユーザデバイスに提供するシステムについて説明する。このシステムは、処方箋と、血糖値の測定値と、第1のタイプのインスリンの用量値を記憶するように構成されたデータ記憶装置と;データ記憶装置に連結され、測定値と、第1のタイプのインスリンの用量値と、処方によって指定された用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定し;ユーザデバイスのユーザインターフェースに、第1のタイプのインスリンの次の用量値を表示させ;用量維持規則に基づいて、第2のタイプのインスリンの次の用量値を決定し;ユーザインターフェースに、第2のタイプのインスリンの次の用量値を表示させるように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記憶装置を含むシステムであって:
該データ記憶装置は:
患者の血糖値を安定させるための用量計画を指定する処方箋であって、用量計画は、(i)第1のタイプのインスリンの用量を調整するための複数の用量調整規則と、(ii)第2のタイプのインスリンの用量を維持するための用量維持規則とを含む、処方箋と、
血糖測定ユニットによって生成された血糖値の複数の測定値と、
該複数の測定値が生成される前に適用された第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、
を記憶するように構成されており、
該システムはさらに、
データ記憶装置に動作可能に連結された1つまたはそれ以上のプロセッサを含み、該1つまたはそれ以上のプロセッサは:
血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定し、
コンピューティングデバイスのユーザインターフェースに、第1のタイプのインスリンの次の用量値を表示させ、
用量維持規則に基づいて、第2のタイプのインスリンの次の用量値を決定し、
ユーザインターフェースに、第2のタイプのインスリンの次の用量値を表示させる
ように構成されている、
前記システム。
【請求項2】
第1のタイプのインスリンは基礎インスリンであり、第2のタイプのインスリンはボーラスインスリンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
血糖値の複数の測定値は、複数の空腹時血糖値を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
第1のタイプのインスリンはボーラスインスリンであり、第2のタイプのインスリンは基礎インスリンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
血糖値の複数の測定値は、複数の食後血糖値を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
複数の用量調整規則は血糖値の目標範囲を定義し、目標範囲は下限値と上限値とを含み、血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することは:
血糖の複数の測定値における直近に生成された測定値に基づいて、直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することであって、直近に生成された測定値は、第1のタイプのインスリンの複数の用量値における直近に適用された用量値が適用された後に生成されたものであることと;
複数の用量調整規則に従って、直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することは:
直近に生成された測定値が目標範囲内であると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの次の用量値として設定すること;
直近に生成された測定値が目標範囲の上限値を上回ると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、インスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ増量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定すること;または
直近に生成された測定値が目標範囲の下限値を下回ると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ減量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定すること
を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
1つまたはそれ以上のプロセッサは:
複数の測定値に基づいて低血糖イベントが発生したか否かを判定し;
低血糖イベントが発生したと判定したことに応答して、ユーザインターフェースに、医療従事者に連絡するように患者に対して催促を表示させる
ようにさらに構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
低血糖イベントが発生したか否かを判定することは、複数の測定値のうちの少なくとも1つが予め決められた低血糖血糖閾値を下回るか否かを判定することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
コンピュータ実装方法であって:
データ記憶装置から入力データを取得することを含み、入力データは:
患者の血糖値を安定させるための用量計画を指定する処方箋であって、用量計画は、(i)第1のタイプのインスリンの用量を調整するための複数の用量調整規則と、(ii)第2のタイプのインスリンの用量を維持するための用量維持規則とを含む、処方箋と、
血糖測定ユニットによって生成された血糖値の複数の測定値と、
該複数の測定値が生成される前に適用された第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、
を含み、
該コンピュータ実装方法はさらに、
血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、
コンピューティングデバイスのユーザインターフェースに、第1のタイプのインスリンの次の用量値を表示させることと、
用量維持規則に基づいて、第2のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、
ユーザインターフェースに、第2のタイプのインスリンの次の用量値を表示させることと、
を含む、前記コンピュータ実装方法。
【請求項11】
第1のタイプのインスリンは基礎インスリンであり、第2のタイプのインスリンはボーラスインスリンである、請求項10に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
血糖値の複数の測定値は、複数の空腹時血糖値を含む、請求項10または11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
第1のタイプのインスリンはボーラスインスリンであり、第2のタイプのインスリンは基礎インスリンである、請求項10に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
血糖値の複数の測定値は、複数の食後血糖値を含む、請求項10~13のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
複数の用量調整規則は血糖値の目標範囲を定義し、目標範囲は下限値と上限値とを含み、血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することは:
血糖の複数の測定値における直近に生成された測定値に基づいて、直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することであって、直近に生成された測定値は、第1のタイプのインスリンの複数の用量値における直近に適用された用量値が適用された後に生成されたものであることと;
複数の用量調整規則に従って、直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、
を含む、請求項10~14のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することは:
直近に生成された測定値が目標範囲内であると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの次の用量値として設定すること;
直近に生成された測定値が目標範囲の上限値を上回ると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、インスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ増量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定すること;または
直近に生成された測定値が目標範囲の下限値を下回ると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ減量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定すること
を含む、請求項15に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
複数の測定値に基づいて低血糖イベントが発生したか否かを判定することと;
低血糖イベントが発生したと判定したことに応答して、ユーザインターフェースに、医療従事者に連絡するように患者に対して催促を表示させることと、
をさらに含む、請求項10~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項18】
1つまたはそれ以上のプロセッサに連結され、命令を記憶している1つまたはそれ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、該命令は、1つまたはそれ以上のプロセッサによって実行されると、1つまたはそれ以上のプロセッサに:
患者の血糖値を安定させるための用量計画を指定する処方箋であって、用量計画は、(i)第1のタイプのインスリンの用量を調整するための複数の用量調整規則と、(ii)第2のタイプのインスリンの用量を維持するための用量維持規則とを含む、処方箋と、
血糖測定ユニットによって生成された血糖値の複数の測定値と、
該複数の測定値が生成される前に適用された第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、を含む入力データを
データ記憶装置から取得することと、
血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、
コンピューティングデバイスのユーザインターフェースに、第1のタイプのインスリンの次の用量値を表示させることと、
用量維持規則に基づいて、第2のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、
ユーザインターフェースに、第2のタイプのインスリンの次の用量値を表示させることと、
を含む動作を実行させる、前記1つまたはそれ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
第1のタイプのインスリンは基礎インスリンであり、第2のタイプのインスリンはボーラスインスリンである、請求項18に記載の1つまたはそれ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
第1のタイプのインスリンはボーラスインスリンであり、第2のタイプのインスリンは基礎インスリンである、請求項18に記載の1つまたはそれ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月19日に出願された米国特許仮出願第63/233,429号および2021年10月27日に出願された欧州特許出願第21315203.6号の通常出願であり、それらの優先権を主張するものであり、それら出願の内容全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病は、膵臓で十分なインスリンが産生されないかまたは産生されるインスリンに細胞が反応しないかのいずれかの理由で、高血糖となる、代謝性疾患の一群である。糖尿病の治療は、低血糖症を引き起こすことなく、血糖値を可能な限り正常値(「正常血糖」)の近くで維持することが中心となる。これは通常、食事療法、運動、ならびに適切な医薬品、例えば、1型糖尿病の場合はインスリン、2型糖尿病では経口医薬品、および場合によってはインスリンの使用によって達成することができる。
【0003】
インスリン治療は、一般的な糖尿病治療であり、血糖値を下げる効果的な方法である。インスリンによる糖尿病の管理は、通常、処方された治療の経過および成功に関する定期的な情報を得るために、患者自身が行う血液中のグルコース濃度の定期的なチェックを含む。血糖値が適切に管理されている患者では、糖尿病の合併症は、はるかに少なくかつ重症度も低いため、患者の参加はきわめて重要である。患者の血糖値は、投与されたインスリンの量とともに、消費される食事の量および種類、運動レベル、ならびにストレスなどの生活要因に直接影響されるため、1日を通して変動する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概して、本明細書に記載する主題の1つの革新的な態様は、第1のタイプのインスリンおよび第2のタイプのインスリンの推奨用量を患者のコンピューティングデバイスに提供するシステムにおいて具現化することができる。本システムは、データ記憶装置を含み、データ記憶装置は:患者の血糖値を安定させるための用量計画を指定する処方箋を記憶するように構成され、用量計画は、第1のタイプのインスリンの用量を調整するための複数の用量調整規則と、第2のタイプのインスリンの用量を維持するための用量維持規則とを含む。血糖値の複数の測定値が血糖測定ユニットによって生成され、複数の測定値が生成される前に、第1のタイプのインスリンの複数の用量値が適用される。本システムは、データ記憶装置に動作可能に連結された1つまたはそれ以上のプロセッサを含み、1つまたはそれ以上のプロセッサは:血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定し、コンピューティングデバイスのユーザインターフェースに、第1のタイプのインスリンの次の用量値を表示させ、用量維持規則に基づいて、第2のタイプのインスリンの次の用量値を決定し、ユーザインターフェースに、第2のタイプのインスリンの次の用量値を表示させるように構成されている。
【0005】
本明細書に記載する主題の別の革新的な態様は、第1のタイプのインスリンおよび第2のタイプのインスリンの推奨用量を患者のコンピューティングデバイスに提供する方法において具現化することができる。本方法は、データ記憶装置から入力データを取得することを含み、入力データは:患者の血糖値を安定させるための用量計画を指定する処方箋を含み、用量計画は、第1のタイプのインスリンの用量を調整するための複数の用量調整規則と、第2のタイプのインスリンの用量を維持するための用量維持規則とを含む。血糖値の複数の測定値が血糖測定ユニットによって生成され、複数の測定値が生成される前に、第1のタイプのインスリンの複数の用量値が適用される。本方法は、血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、コンピューティングデバイスのユーザインターフェースに、第1のタイプのインスリンの次の用量値を表示させることとをさらに含む。本方法は、用量維持規則に基づいて、第2のタイプのインスリンの次の用量値を決定することと、ユーザインターフェースに、第2のタイプのインスリンの次の用量値を表示させることとを含む。
【0006】
この態様の他の実施形態は、各々が上記方法のアクションを実行するように構成されている、対応するコンピュータシステム、装置、および、1つまたはそれ以上のコンピュータ記憶デバイス上に記録されたコンピュータプログラムを含む。1つまたはそれ以上のコンピュータのシステムは、特定のアクションを、動作中にシステムにそうしたアクションを実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせをシステムにインストールすることによって、実行するように構成することができる。1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムは、特定のアクションを、データ処理装置によって実行されると装置にそうしたアクションを実行させる命令を含むことによって、実行するように構成することができる。
【0007】
前述の実施形態および他の実施形態は各々、場合により、以下の構成のうちの1つまたはそれ以上を、単独でまたは組み合わせて含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のタイプのインスリンは基礎インスリンであり、第2のタイプのインスリンはボーラスインスリンである。血糖値の複数の測定値は、複数の空腹時血糖値を含むことができる。第1のタイプのインスリンはボーラスインスリンであってもよく、第2のタイプのインスリンは基礎インスリンであってもよい。血糖値の複数の測定値は、複数の食後血糖値を含むことができる。複数の用量調整規則は、血糖値の目標範囲を定義することができる。目標範囲は下限値と上限値とを含むことができる。
【0008】
血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することは:血糖の複数の測定値における直近に生成された測定値に基づいて、直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することであって、直近に生成された測定値は、第1のタイプのインスリンの複数の用量値における直近に適用された用量値が適用された後に生成されたものであることと;複数の用量調整規則に従って、直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することとを含むことができる。
【0009】
直近に生成された測定値が目標範囲内であるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定することに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することは:直近に生成された測定値が目標範囲内であると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの次の用量値として設定すること;直近に生成された測定値が目標範囲の上限値を上回ると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、インスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ増量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定すること;または直近に生成された測定値が目標範囲の下限値を下回ると判定したことに応答して、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ減量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定することを含むことができる。
【0010】
1つまたはそれ以上のプロセッサは:複数の測定値に基づいて低血糖イベントが発生したか否かを判定し;低血糖イベントが発生したと判定したことに応答して、ユーザインターフェースに、医療従事者に連絡するように患者に対して催促を表示させるようにさらに構成することができる。低血糖イベントが発生したか否かを判定することは、複数の測定値のうちの少なくとも1つが予め決められた低血糖血糖閾値を下回るか否かを判定することを含むことができる。
【0011】
本明細書に記載する主題は、特定の実施形態において、以下の技術的利点のうちの1つまたはそれ以上を実現するように実装することができる。
【0012】
本明細書に記載する技術により、コンピューティングシステムは、患者によって提供される血糖値の測定値および用量値などのリアルタイムデータに基づいて、処方された用量計画に含まれる1つまたはそれ以上の治療レジメンに従って、患者の1つまたはそれ以上のタイプのインスリンの次の用量値を動的にかつ正確に決定することができる。
【0013】
特に、コンピューティングシステムは、医療従事者(HCP)アプリケーションを提供し、このアプリケーションにより、HCPは、患者の血糖値を安定させるための用量計画を処方することができる。用量計画は、1つまたはそれ以上のタイプのインスリンに対応する1つまたはそれ以上の治療レジメンを含むことができる。コンピューティングシステムにより、HCPは、患者の入力された血糖測定値および用量値にリアルタイムでアクセスするとともにそれを監視し、必要に応じて、変更された用量計画を患者のデバイスに送信することができる。コンピューティングシステムはさらに、モバイル/ウェブアプリケーションを通じて、処方された用量計画に従って、次の適切な用量のインスリン(例えば、基礎インスリンおよび/またはボーラスインスリン)の推奨を患者に提供する。このアプリケーションを通じて、コンピューティングシステムは、処方された用量計画に基づいて、空腹時血糖(FBG)値および/または食後血糖(PBG)値を測定するための自動リマインダを患者に提供する。これらのFBGおよびPBG測定値に基づいて、コンピューティングシステムは、処方された用量計画に含まれる複数の用量調整規則および用量維持規則に基づいて、インスリンの次の用量を自動的に計算する。コンピューティングシステムは、1つまたはそれ以上のタイプのインスリン(例えば、基礎インスリンおよび/またはボーラスインスリン)の注射を投与するための自動リマインダを患者に提供する。
【0014】
したがって、患者によって提供される血糖値の測定値および用量値などのリアルタイムデータを考慮しない多くの既存のシステムと比較して、記載する技法を実装するシステムは、(i)HCPが、複数のタイプのインスリンを含むより複雑な用量計画を処方し、必要に応じて処方された用量計画を容易に変更することができるようにし、(ii)患者が提供するリアルタイムデータおよび処方された用量計画に記載されている用量調整/維持規則に基づいて、次の用量を動的に計算することにより、(既存のシステムによって生成された次の推奨用量と比較して)より適時でかつより正確な次の推奨用量を患者に提供することによって、患者がより良好な血糖コントロールを達成するのに役立つことができる、
【0015】
本明細書の主題の1つまたはそれ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に示す。主題の他の構成、態様、および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】1つまたはそれ以上のタイプのインスリンの滴定を行うためのデータ処理システムを含むコンピューティング環境の一例を示す図である。
【
図2】HCPアプリケーションの画面例を示す図である。
【
図3】HCPアプリケーションの画面例を示す図である。
【
図4】HCPアプリケーションの画面例を示す図である。
【
図5】HCPアプリケーションの画面例を示す図である。
【
図6】HCPアプリケーションの画面例を示す図である。
【
図7】HCPアプリケーションの画面例を示す図である。
【
図8】HCPアプリケーションの画面例を示す図である。
【
図9】患者アプリケーションの画面例を示す図である。
【
図10】患者アプリケーションの画面例を示す図である。
【
図11】患者アプリケーションの画面例を示す図である。
【
図12】患者アプリケーションの画面例を示す図である。
【
図13】第1および第2のタイプのインスリンの推奨用量をユーザデバイスに提供するプロセス例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
さまざまな図面における同様の参照番号および表記は、同様の要素を示す。
【0018】
本明細書は、1つまたはそれ以上のタイプのインスリンの滴定を行い、患者のユーザデバイスに次の推奨用量を提供する、システムおよび方法について説明する。
【0019】
真性糖尿病は、膵臓で十分なインスリンが産生されないかまたは産生されるインスリンに細胞が反応しないかのいずれかの理由で、高血糖となる、代謝性疾患の一群である。糖尿病の治療は、低血糖症を引き起こすことなく、血糖値を可能な限り正常値(「正常血糖」)の近くで維持することが中心となる。これは通常、食事療法、運動、ならびに適切な医薬品、例えば、1型糖尿病の場合はインスリン、2型糖尿病では経口医薬品、および場合によってはインスリンの使用によって達成することができる。
【0020】
インスリン治療は、一般的な糖尿病治療であり、血糖値を下げる効果的な方法である。インスリンによる糖尿病の管理の本質的な要素は、処方された治療の経過および成功に関する定期的な情報を得るために、患者自身が行う血液中のグルコース濃度の定期的なチェックである。血糖値が適切に管理されている患者では、糖尿病の合併症は、はるかに少なくかつ重症度も低いため、患者の参加はきわめて重要である。患者の血糖値は、投与されたインスリンの量とともに、消費される食事の量および種類、運動レベル、ならびにストレスなどの生活要因に直接影響されるため、1日を通して変動する可能性がある。良好なまたは完璧な血糖コントロールのためには、目標血糖値を達成するために、患者の血糖値の測定値に基づいて、患者ごとにインスリンの用量を調整する必要がある。患者の血糖値の測定値に基づいてインスリンの用量を調整することは、インスリンの「滴定」と称される。
【0021】
血糖測定値には主に2つのタイプ:空腹時血糖(FBG)測定値および食後血糖(PBG)測定値がある。
【0022】
空腹時血糖測定値は、食事をとらずに数時間(6~8時間)後に得られる。空腹時血糖測定値は、通常、朝、朝食前に測定され、持効型溶解インスリン(例えば、基礎インスリンまたはインスリングラルギン)の滴定の質を評価するために使用されるため、インスリン治療患者の間で最も一般的に実施される検査である。持効型溶解インスリンの利点は、中間型インスリンによって提供される作用の持続時間と比較して、作用の持続時間が長い(例えば、24時間以上またはさらにはそれ以上)ということである。したがって、そのプロファイルは、正常な膵β細胞の基礎インスリン分泌により近いものとなる。
【0023】
食後血糖測定値は食後に得られる。糖尿病患者においても非糖尿病患者においても、食後約5~6時間は食物の吸収が持続するため、食後グルコース濃度を測定する最適な時間は、各個人に対して決定することができる。一般に、食事開始から2時間後の食後血糖の測定が、実際的であり、一般に糖尿病患者のピーク値に近似しており、食後高血糖症の妥当な評価を提供する。妊娠糖尿病、または糖尿病を合併した妊娠など、特定の臨床状態では、食事1時間後の検査が有益な場合がある。速効型インスリン治療を受けている糖尿病患者の場合、食後血糖測定値を使用して、速効型インスリン(例えば、ボーラスインスリン)の滴定の質が評価される。
【0024】
良好な血糖コントロールを達成するためには、各個人について、その個人の血糖値の最新の測定値に基づいて、インスリンの用量を高頻度で調整する必要がある。しかしながら、実際には、このようなインスリン滴定は、多くの一次医療従事者(HCP)および患者にとって困難である。医師が管理する滴定には、患者の注意深い観察と、定期的な外来またはHCPと患者との連絡が必要である。不都合なことに、フォローアップの必要性に対する患者の意識が低いため、およびHCPと患者とが互いに連絡するための効果的なツールがないため、外来または連絡の頻度が低くなる可能性がある。患者自身が滴定を行うように訓練することができるが、患者にとって、用量計画に基づいて次の用量を計算することはおろか、自身の血糖値のすべての測定値および適用された対応する用量値を記録することは容易ではないため、多くの患者は自己滴定を行うことができないかまたは行いたがらない。用量計画が複数のタイプのインスリンに対応する複数の治療レジメンを含む場合、用量計画の複雑さは増大し、患者が自己滴定を行うことはさらに困難になる。これらの患者および臨床医の要因は、意図しない投与ミスおよび治療レジメンにおけるインスリンの量の増量または減量の遅れの原因となる可能性がある。したがって、高性能なインスリン送達デバイスが導入されたにもかかわらず、多くの糖尿病患者は、インスリン滴定/管理のための効果的なツールがないために、最適に及ばない血糖コントロールを受け続けている。
【0025】
本明細書に記載する技法は、患者のための1つまたはそれ以上のタイプのインスリンの次の用量値を、コンピューティングシステムが、患者によって提供される血糖値の測定値および用量値などのリアルタイムデータに応答して、処方された用量計画に記載されている1つまたはそれ以上の治療レジメンに従って、動的にかつ正確に決定することができるようにすることによって、上記の難題のうちのいくつかに対処する。
【0026】
特に、コンピューティングシステムにより、HCPは、HCPアプリケーションを通じて、患者の血糖値を安定させるための用量計画を処方することができ、この用量計画は、複数のタイプのインスリンに対応する複数の治療レジメンを含むことができる。このコンピューティングシステムにより、HCPは、患者の入力された血糖測定値および用量値にリアルタイムでアクセスするとともにそれらを監視し、必要に応じて、変更された用量計画を患者のデバイスに送信することができる。コンピューティングシステムはさらに、モバイル/ウェブアプリケーションを通じて、処方された用量計画に従って、インスリン(例えば、基礎インスリンおよび/またはボーラスインスリン)の次の適切な用量の推奨を患者に提供する。アプリケーションを通じて、コンピューティングシステムは、処方された用量計画に基づいて、空腹時血糖(FBG)値および/または食後血糖(PBG)値を測定するための自動リマインダを患者に提供する。これらのFBGおよびPBG測定値に基づいて、コンピューティングシステムは、処方された用量計画に記載されている複数の用量調整規則および用量維持規則に基づいて、インスリンの次の用量を自動的に計算する。コンピューティングシステムは、1つまたはそれ以上のタイプのインスリン(例えば、基礎インスリンおよび/またはボーラスインスリン)の注射を投与するための自動リマインダを患者に提供する。
【0027】
したがって、多くの既存のシステムと比較して、記載する技法を実装するシステムは、HCPが、複数のタイプのインスリンを含むより複雑な用量計画を処方し、必要に応じて処方された用量計画を容易に変更することができるようにすることによって、かつ、患者が提供するリアルタイムデータおよび処方された用量計画に記載されている用量調整/維持規則に基づいて次の用量を動的に計算することにより、より適時でかつより正確な次の推奨用量を患者に提供することによって、患者がより良好な血糖コントロールを達成するのに役立つことができる。
【0028】
図1は、1つまたはそれ以上のタイプのインスリンの滴定を実行し、患者のユーザデバイスに次の推奨用量を提供する、コンピューティング環境の一例を示す。
【0029】
コンピューティング環境100は、データ処理システム110と、血糖測定ユニット150と、患者アプリケーション108がインストールされている患者の第1のユーザデバイス102と、HCPアプリケーション112がインストールされている医療従事者(HCP)の第2のユーザデバイス104とを含む。患者アプリケーション108およびHCPアプリケーション112は、モバイルアプリケーションまたはウェブアプリケーションとすることができる。データ処理システム110は、1つまたはそれ以上の場所にある1つまたはそれ以上のコンピュータ上のコンピュータプログラムとして実装されるサーバシステムの一例であり、そこに、後に説明するシステム、構成要素、および技法を実装することができる。
【0030】
データ処理システム110は、データベースシステム116および用量レコメンダ118を含む。データベースシステム116は、例えば、第2のユーザデバイス104から受信した処方箋、患者の血糖測定値、および測定値が生成される前に患者に適用されたインスリンの用量値を含む患者データを記憶するように構成されている。いくつかの実施態様では、データベースシステム116は、ローカルサーバシステム(例えば、病院または医療センタのサーバシステム)に常駐する。他のいくつかの実施態様では、データベースシステム116は、クラウドベースのデータベースシステムである。用量レコメンダ118は、血糖値の測定値、適用されたインスリンの用量値、および処方された用量計画に基づいて、患者のためのインスリンの次の用量値を決定するように構成されている。そして、用量レコメンダ118は、次の用量値および次の用量を投与すべき時間を含む次の推奨用量が患者アプリケーション108に表示されるようにする。用量レコメンダ118は、1つまたはそれ以上の場所にある1つまたはそれ以上のコンピュータにインストールされた、1つまたはそれ以上のソフトウェアモジュールまたはコンポーネントとして実装されるエンジンである。場合によっては、1つまたはそれ以上のコンピュータが特定のエンジンに特化されることになり、他の場合には、複数のエンジンが同じ1つのコンピュータまたは複数のコンピュータ上にインストールされ、そこで実行することができる。
図1は、デバイス102とは別個の用量レコメンダ118を示すが、いくつかの実施態様では、用量レコメンダ118は、デバイス102に常駐することができる。すなわち、いくつかの実施態様では、用量レコメンダ118は、デバイス102の構成要素とし、患者が患者アプリケーションに入力する血糖測定値および用量値ならびに/または他のデータに基づいて、かつHCPの処方された用量計画に基づいて、次の推奨用量を計算するように構成することができる。いくつかの他の実施態様では、用量レコメンダ118は、クラウドコンピューティングシステム上でホストされるサービスとすることができ、次の用量の計算は、クラウドコンピューティングシステム上で実行される。
【0031】
第1のユーザデバイス102および第2のユーザデバイス104は、データ処理システム110と通信し、通信ネットワーク(図示せず)を介して互いに通信することができる。第1のユーザデバイス102および第2のユーザデバイス104の各々は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ネットワークアプライアンス、カメラ、スマートフォン、拡張汎用パケット無線サービス(EGPRS:enhanced general packet radio service)携帯電話、メディアプレーヤ、ナビゲーションデバイス、電子メールデバイス、ゲーム機、またはこれらのデバイスもしくは他のデータ処理デバイスのうちの任意の2つ以上の適切な組み合わせなど、任意の適切なタイプのコンピューティングデバイスを含むことができる。通信ネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、セルラネットワーク、電話ネットワーク(例えば、PSTN)、または任意の数の通信デバイス、モバイルコンピューティングデバイス、固定コンピューティングデバイス、およびサーバシステムを接続するそれらの適切な組み合わせなど、大規模コンピュータネットワークを含むことができる。
【0032】
図1の例に示すように、第1のユーザデバイス102は患者の携帯電話であり、モバイルアプリケーションである患者アプリケーション108がこのモバイルデバイスにインストールされている。第2のユーザデバイス104は、HCPアプリケーション112を有するHCPのコンピュータである。いくつかの実施態様では、第2のユーザデバイス104は、ウェブブラウザを介してHCPアプリケーションにアクセスする。他のいくつかの実施態様では、第2のユーザデバイス104は、(例えば、モバイルアプリケーションとして)HCPアプリケーション112をインストールしている。データ処理システム110は、患者のモバイルデバイスにインストールされた患者アプリケーション102と、HCPの第2のユーザデバイス104によってアクセスされるHCPアプリケーション112との間のアクティビティを調整する。
【0033】
HCPアプリケーション112により、HCPは、糖尿病治療のための処方された用量計画を必要とする患者を登録し、または、登録された患者の中から患者を見つけることができる。HCPが患者を登録するか、または既存の患者の中から患者を選択すると、HCPは、HCPアプリケーション112を通じて、患者のための特定の用量計画を処方する。HCPアプリケーション112により、HCPは、1つまたはそれ以上のタイプのインスリン(例えば、基礎インスリンおよび/またはボーラスインスリン)に対応する1つまたはそれ以上の治療レジメンを含む用量計画を処方することができる。
【0034】
その後、HCPアプリケーション112は、処方された用量計画を、患者アプリケーション108およびデータ処理システム110に送信する。場合により、HCPアプリケーション112は、患者が初めて患者アプリケーション108にアクセスし/患者アプリケーション108を開くことができるようにする起動シーケンスを、患者アプリケーション108に送信することができる。
【0035】
例えば、HCPは、HCPアプリケーション112で用量計画を設定し、次いで、ボタン、例えば「送信」をクリックする。これにより、患者アプリケーション108へのリンク、認証コード/トークン、および用量計画の詳細(詳細はメッセージ内に隠されている)を含むメッセージ(例えば、SMSメッセージまたは電子メール)が、患者の第1のユーザデバイス102に送信されるようにトリガされる。患者は、第1のユーザデバイス102でリンクを選択し、これにより、患者は、認証情報(例えば、姓、名、および/または生年月日)を入力することによって、起動を実行する。入力された情報が認証コード/トークンに関連付けられた情報と一致する場合、患者アプリケーション108の起動は成功する。その後、患者アプリケーション108は、患者がアプリケーション108を使用することができるようにするオンボーディング画面を表示する。
【0036】
処方された用量計画はデータベースシステム116に記憶される。患者は、起動シーケンスを使用して患者アプリケーション108を起動し、処方された用量計画を確認する。患者は、血糖測定ユニット150を使用して血糖測定値を測定する。患者は、患者アプリケーション108を使用して、血糖測定値と、ユニット150によって血糖測定値が生成される前に処方された用量計画に従って適用された用量値とを、記録する。患者は、低血糖イベントの発生も記録する。低血糖イベントは、患者の血糖値の測定値が所定の低血糖血糖閾値を下回った場合に発生する。低血糖血糖閾値はHCPが決定することができる。
【0037】
患者アプリ108は、用量値、BG測定値、および低血糖発生をデータ処理システム110に送信する。これらの用量値、BG測定値、および低血糖発生は、データベースシステム116に記憶される。
【0038】
用量レコメンダ118は、HCPによって処方された用量計画を使用し、患者の血糖値の測定値、適用された用量値、および低血糖発生に基づいて、患者アプリケーション108に推奨用量を提供する。HCPは、HCPアプリケーション112で、患者が入力したデータ(例えば、用量およびBG値)を確認し、必要に応じて、変更した用量計画を患者アプリに送信することができる。患者もまた、患者アプリケーションで、患者が入力したデータ(例えば、用量およびBG値)を確認することができる。HCPアプリケーションの画面例を
図2~
図8に示し、患者アプリケーションの画面例を
図9~
図12に示す。
【0039】
HCPアプリケーション112により、HCPは、1つまたはそれ以上のタイプのインスリンを含む患者固有の用量計画を構成することができる。例えば、HCPは、以下の一般的な計画オプションのうちの1つから患者固有の用量計画を構成することができる:
・基礎滴定
・ボーラス滴定
・基礎滴定およびボーラス維持
・基礎維持およびボーラス滴定
【0040】
一般な計画が選択されると、HCPは、次いで、一般的な計画に変更を加えて、個々の患者のニーズに対するHCPの医療活動に基づいて患者固有の用量計画を生成することができる。
【0041】
基礎滴定用量計画(基礎インスリンのみの患者)
基礎滴定用量計画は、持効型溶解基礎インスリンの1日1回用量を調整することにより、血糖値の安定化に役立つように意図されている。
【0042】
基礎滴定用量計画は、初期基礎用量および基礎用量調整規則を含む。初期基礎用量は、インスリン製剤のタイプおよびその力価、用量値、ならびに基礎インスリンを投与する時間を指定する。
【0043】
例えば、初期基礎用量は以下のように指定することができる。
・ランタス100単位/ml
・毎日朝食30分前に20単位
・最大基礎用量:1日40単位
【0044】
基礎滴定用量計画における基礎用量調整規則の一例を
図5に示し、以下に説明する。
・少なくとも2回の空腹時血糖測定で記録しているという条件で、3日後に患者の用量を調整する。
・血糖が180mg/dLを超える場合、次の適切な基礎インスリン用量を20%増量する。
・血糖が140mg/dL~180mg/dLである場合、次の適切な基礎インスリン用量を10%増量する。
・血糖が110mg/dL~139mg/dLである場合、次の適切な基礎インスリン用量を1単位増量する。
・血糖が70mg/dL~109mg/dLである場合、調整は行わない。
・血糖が40mg/dL~69mg/dLである場合、次の適切な基礎インスリン用量を20%減量する。
・血糖が40を下回る場合、次の適切な基礎インスリン用量を40%減量する。
・低血糖(69mg/dL)の場合、患者アプリケーションは:
〇 患者にケアチームに連絡して、用量計画を継続するように促す。
〇 用量調整規則に従って、患者の次の基礎インスリン用量を減量する。
【0045】
特に、予め決められた低血糖BG閾値を下回る血糖値が患者によって入力されると、患者の用量計画および低血糖BG値自体に従って、次の提案基礎用量が減量される。
・低血糖BG値により、新たな滴定インターバルが開始されることが確実になる。
・いくつかの実施態様では、複数の低血糖BG値は、次の提案用量に累積的な影響を与えない。むしろ、最も低い低血糖BG値を使用して、次の提案用量が調整される。例えば、最後の提案用量が20単位であり、患者が、60mg/dLの低血糖BG値を記録し(この場合、用量計画は2単位の用量減量を要求する)、次に50mg/dLの2回目の低血糖BG値を記録した(この場合、用量計画は5単位の用量減量を要求する)場合、患者の次の提案用量は15単位(20単位から5単位を引いた値)となる。
・患者によって低血糖BG値が入力されると、ユーザが入力した測定時間に関係なく、その入力が評価され、次の提案用量に反映される。
【0046】
ボーラス滴定用量計画(ボーラスインスリンのみの患者)
ボーラス滴定用量計画は、食事時ボーラスインスリンの毎日1回または複数回の用量を調整することにより、BG値の安定化に役立つように意図されている。HCPは、HCPアプリケーションを使用して、以下のようにボーラス滴定用量計画を処方する。
・HCPは、インスリン製剤のタイプおよびその力価を選択する。
・HCPは、ボーラスインスリンイベントごとに初期ボーラス用量(デフォルト値例は5単位)と、患者が従う必要のあるボーラスインスリン(食前)イベントの数(デフォルト値例は3イベント:朝食、昼食、夕食)とを処方する。
・HCPは、用量の調整が開始するときを指定する。例えば、ボーラス用量の調整は、
〇 1日後、または
〇 3日間後に開始する(平均)。この場合、患者アプリケーションは、これら3日間に生成されたBG値の平均をとって、次の推奨用量を決定する。
・HCPは、用量計画の期間を指定する(デフォルト値例は12週間)。
・HCPはボーラス用量調整規則を構成する。デフォルト値による調整規則の例を表1に示す。HCPは、医療アクションに基づき、HCPアプリケーションを使用してこれらの値を調整することができる。
【0047】
【0048】
低血糖イベントが発生した場合、患者アプリケーションで患者に対して以下のアクションが提案される:
〇 用量計画を継続する
〇 医師に連絡し、用量計画を継続する
〇 医師に電話し、推奨用量を停止する
【0049】
HCPによって処方された用量計画に基づいて、食前ボーラスインスリン用量は、滴定サイクル中に得られた食事の少なくとも2時間後かつ次の食事前のBG測定値に従って増量または減量する。夕食ボーラスイベントが処方された場合は、食後2時間のBG測定がない場合、就寝時のBGを使用して翌日の夕食食前ボーラスインスリンが滴定される。
【0050】
ボーラスインスリン用量に続いて低血糖イベントが発生した場合、患者は、HCPの指示に従って行動するように求められる。さらに、翌日の低血糖イベントに対応する食前ボーラスインスリン用量は、選択された滴定サイクルの持続時間にかかわらず、調整規則に従って減量される。
【0051】
特に、低血糖BG値が患者によって入力された場合、翌日の低血糖イベントに対応する食前ボーラスインスリン用量は、患者の用量計画と低血糖BG値自体とに従って減量される。
【0052】
いくつかの実施態様では、複数の低血糖BG値は、次の提案用量に累積的な影響を与えない。むしろ、最も低い低血糖BG値を使用して、次の提案用量が調整される。ボーラスイベントに対して複数の低血糖BG値が記録された場合、最も低い低血糖BG値を使用して、患者の用量計画と低血糖BG値自体とに従って、翌日の低血糖イベントに対応する提案用量が調整される。
【0053】
詳細なボーラス滴定例:
用量計画例:HCPは、10単位でのボーラスの開始用量で、3回のボーラス注射を朝食、昼食、夕食時に行う必要がある、ボーラス1日滴定用量計画を処方する。低血糖値は70mg/dLで構成されている。用量調整規則例を表2に示す。
【0054】
【0055】
用量計画例および用量調整規則例を適用して、用量レコメンダ118は、次の用量を計算し、以下の表3に記載するように、患者に表示するために患者アプリケーションに提案用量を提供する。
【0056】
【0057】
基礎滴定およびボーラス維持用量計画
基礎滴定およびボーラス維持用量計画は、HCPが基礎インスリンの調整を優先すると判定した場合に、BG値の安定化に役立つように意図されている。この計画では、食事時のボーラスインスリン用量を維持しながら、持効型溶解基礎インスリンの1日1回用量を滴定する。基礎滴定およびボーラス維持用量計画は、HCPアプリケーションを通じてHCPによって以下のように構成される。
・(上記基礎滴定用量計画セクションに示すような)基礎滴定規則
・ボーラス維持規則
〇 ボーラスインスリン製剤および力価
〇 その日のボーラス維持用量
〇 BGが低血糖値を下回った場合の低血糖作用
【0058】
基礎滴定およびボーラス維持用量計画の一例を
図7に示す。
【0059】
この計画では、低血糖イベントは以下のように管理される。
【0060】
空腹時血糖(FBG)について患者によって低血糖BG値が入力され、滴定日に追加の低血糖BG値が入力されなかった場合、次の基礎用量は患者の用量計画と低血糖BG値とに従って減量される。
【0061】
FBGについて患者によって低血糖BG値が入力され、滴定日に1つまたはそれ以上の低血糖BG値が入力された場合、患者アプリは、「推奨用量を中止」し、さらなるアクションについてケアチームに連絡するよう患者に助言する。
【0062】
患者のFBGが低血糖範囲にないが、同じボーラスイベントの後に2つ以上の低血糖BG(すなわち、朝食ボーラスで低血糖になり、炭水化物で治療して好転したが、昼食前に再び低血糖になる)が入力された場合、患者アプリは、「推奨用量を中止」し、さらなるアクションについてケアチームに連絡するよう患者に助言する。
【0063】
患者のFBGが低血糖範囲にないが、1日の異なるボーラスイベントで2つ以上の低血糖BGが入力された場合、アプリは、「推奨用量を中止」し、さらなるアクションについてケアチームに連絡するよう患者に助言する。
【0064】
夜間低血糖BG値(就寝後BGおよびFBG前/朝食前)が入力された場合、患者アプリは「推奨用量を中止」し、さらなるアクションについてケアチームに連絡するよう患者に助言する。
【0065】
ボーラス滴定および基礎維持用量計画
ボーラス滴定および基礎維持用量計画は、HCPがボーラスインスリンの調整を優先すると判定した場合に、BG値の安定化に役立つように意図されている。この計画では、1日1回の持効型溶解基礎インスリン用量を維持しながら、食事時のボーラスインスリン用量を滴定する。ボーラス滴定および基礎維持用量計画は、HCPにより以下のように構成される。
・(上記ボーラス滴定用量計画セクションに示すような)ボーラス滴定規則
・基礎維持規則
〇 基礎インスリン製剤
〇 基礎維持用量
〇 基礎用量時間
〇 FBGが低血糖値を下回った場合の低血糖作用
【0066】
ボーラス滴定および基礎維持用量計画の一例を
図8に示す。
【0067】
この計画では、低血糖イベントは以下のように管理される。
【0068】
FBGについて患者によって低血糖BG値が入力され、滴定日に追加の低血糖BG値が入力されなかった場合、次の基礎用量は患者の用量計画と低血糖BG値とに従って減量される。
【0069】
FBGについて患者によって低血糖BG値が入力され、滴定日に1つまたはそれ以上の低血糖BG値が入力された場合、アプリは、「推奨用量を中止」し、さらなるアクションについてケアチームに連絡するよう患者に助言する。
【0070】
患者のFBGが低血糖範囲にないが、同じボーラスイベントの後に1つまたはそれ以上の低血糖BGが入力された場合(すなわち、朝食ボーラスで低血糖になり、炭水化物で治療して好転したが、昼食前に再び低血糖になる)、アプリは、患者の用量計画と最も低い低血糖BG値とに従って、前のボーラスイベントに対応する次の提案用量を減量する。
【0071】
患者のFBGが低血糖範囲にないが、その日の異なるボーラスイベントについて1つまたはそれ以上の低血糖BGが入力された場合、アプリは、患者の用量計画と低血糖BG値とに従って、低血糖イベントの各々に対応する翌日のボーラスイベントに対する提案用量を減量する。
【0072】
患者によって夜間低血糖BG(就寝後BGおよびFBG前/朝食前)が入力された場合、アプリは、「推奨用量を中止」し、さらなるアクションについてケアチームに連絡するよう患者に助言する。
【0073】
図2~
図8は、HCPアプリケーションの画面例を示す。
【0074】
上述したように、HCPアプリケーションにより、HCPは、糖尿病治療のための処方された用量計画を必要とする患者を登録し、または、登録された患者の中から患者を見つけることができる。
図2は、HCPアプリケーションの画面例200を示し、これにより、HCPは、ボックス202に患者の名前を入力することによって患者を検索し、または、登録された患者のリスト204から患者(例えば、患者206)を選択することができる。
【0075】
HCPが患者を登録するか、または既存の患者の中から患者を選択すると、HCPは、HCPアプリケーションに表示される患者ダッシュボード上で患者の情報および病歴を確認する。例えば、
図3において、患者ダッシュボード300は、患者に対して現在処方されている有効な用量計画302、患者の最近の血糖測定値を示すチャート304、および患者に対して以前に処方された1つまたはそれ以上の過去の用量計画306を含む。
【0076】
HCPは、HCPアプリケーションを通じて、患者に対する特定の用量計画を処方する。HCPアプリケーションにより、HCPは、1つまたはそれ以上のタイプのインスリン(例えば、基礎インスリンおよび/またはボーラスインスリン)に対応する1つまたはそれ以上の治療レジメンを含む用量計画を処方することができる。例えば、
図4は、HCPが患者に処方することができる4つの用量計画オプション:基礎滴定用量計画402、ボーラス滴定用量計画404、ボーラス維持を伴う基礎滴定用量計画406、および基礎維持を伴うボーラス滴定用量計画408を示す。
【0077】
図5は、HCPが基礎滴定用量計画を構成することができるようにするHCPアプリケーションの画面例を示す。画面500は、HCPが初期基礎インスリン用量を構成することができるようにする領域502と、HCPが複数の基礎用量調整規則を構成することができるようにする領域504と、HCPが、低血糖イベントが発生した場合に患者アプリケーションによって実行されるアクションを指定することができるようにする領域506とを含む。
【0078】
図6は、HCPがボーラス滴定用量計画を構成することができるようにするHCPアプリケーションの画面例を示す。画面600は、HCPが初期ボーラスインスリン用量を構成することができるようにする領域602と、HCPが複数のボーラス用量調整規則を構成することができるようにする領域604と、HCPが、低血糖イベントが発生した場合に患者アプリケーションによって実行されるアクションを指定することができるようにする領域606とを含む。
【0079】
図7は、HCPが基礎滴定およびボーラス維持用量計画を構成することができるようにするHCPアプリケーションの画面例を示す。画面700は、HCPがボーラス維持規則を構成することができるようにする領域702と、HCPが初期基礎用量および複数の基礎用量調整規則を構成することができるようにする領域704と、HCPが、低血糖イベントが発生した場合に次の基礎/ボーラスインスリン用量を調整するために患者アプリケーションによって実行されるアクションを指定することができるようにする領域706とを含む。
【0080】
図8は、HCPがボーラス滴定および基礎維持用量計画を構成することができるようにするHCPアプリケーションの画面例を示す。画面800は、HCPが基礎維持規則を構成することができるようにする領域802と、HCPが初期ボーラス用量および複数のボーラス用量調整規則を構成することができるようにする領域804と、HCPが、低血糖イベントが発生した場合に次の基礎/ボーラスインスリン用量を調整するために患者アプリケーションによって実行されるアクションを指定することができるようにする領域806とを含む。
【0081】
図9~
図12は、患者アプリケーションの画面例を示す。患者アプリケーションは、(「今日」ビューに示すように)処方された基礎およびボーラスイベントを、提案された用量とともに、スケジュールされた順序で自動的に表示する。例えば、
図9の画面900に示すように、患者アプリケーションは、ボーラスインスリンの次の用量、例えば、6単位のアピドラ(Apidra)を、ボーラスインスリンを投与すべき時間、例えば、朝食前の午前7時とともに、自動的に提案する(902)。患者アプリケーションは、前日の同じ時間に摂取された前回の用量も表示することができる(904)。
図10は、患者アプリケーションの画面例1000を示し、これにより、ユーザは、患者の血糖値の血糖測定値およびそれが測定された時間を入力し、その後、測定値を保存することができる。
図11は、患者アプリケーションの画面例1100を示し、これにより、ユーザは、所与のイベントのために摂取されたインスリンの量と摂取された時間とを示すインスリン用量値を入力し、その後、データを保存することができる。ユーザが血糖測定値およびインスリン用量値を患者アプリケーションに入力すると、これらの値は、患者アプリケーションに記憶され、任意の時点で日誌において見ることができる。
図12は、日誌の画面例1200を示す。
【0082】
血糖測定値およびインスリン用量値の各々が患者アプリケーションに入力された後、患者アプリケーションは、データベースシステム116に記憶するために、その値をデータ処理システム110に自動的に送信する。次に、用量レコメンダ118は、データベースシステム116から血糖測定値およびインスリン用量値を取得し、処方された用量計画と取得された血糖測定値およびインスリン用量値とに基づいて次のインスリン用量を動的に計算する。次いで、用量レコメンダ118は、次のインスリン用量が患者アプリケーション上に表示されるようにする。
【0083】
HCPアプリケーションは、データベースシステム116にアクセスして、血糖測定値および適用されたインスリン用量値を取得することができる。HCPは、より良好な血糖コントロールを達成するために、取得された血糖測定値およびインスリン用量値に基づいて、現用量計画を変更することができる。例えば、HCPは、基礎滴定用量計画を基礎滴定およびボーラス維持用量計画に変更することができる。別の例として、HCPは、基礎滴定およびボーラス維持用量計画をボーラス滴定および基礎維持用量計画に変更することができ、またはその逆も可能である。その後、HCPアプリケーションは、変更された用量計画をデータ処理システム110に送信することができる。用量レコメンダ118は、変更された用量計画に基づいてインスリンの次の用量値を動的に計算し、患者アプリケーションに次の用量を患者に表示させることができる。
【0084】
図13は、第1および第2のタイプのインスリンの推奨用量をユーザデバイスに提供するプロセス例のフロー図である。便宜上、プロセス1400は、1つまたはそれ以上の場所に配置された1つまたはそれ以上のコンピュータのシステムによって実行されるものとして説明する。例えば、本明細書に従って適切にプログラムされたデータ処理システム、例えば、
図1のデータ処理システム110が、プロセス1300を実行することができる。
【0085】
システムは、データ記憶装置から、入力データを取得する(工程1302)。入力データは:患者の血糖値を安定させるための用量計画を指定する処方箋と;血糖値測定ユニットによって生成された血糖値の複数の測定値と;複数の測定値が生成される前に適用された第1のタイプのインスリンの複数の用量値とを含む。用量計画は、(i)第1のタイプのインスリンの用量を調整するための複数の用量調整規則と、(ii)第2のタイプのインスリンの用量を維持するための用量維持規則とを含む。複数の用量調整規則は、血糖値の目標範囲を定義する。目標範囲は、下限値と上限値とを含む。
【0086】
いくつかの実施態様では、第1のタイプのインスリンは基礎インスリンであり、第2のタイプのインスリンはボーラスインスリンである。これらの実施態様では、血糖値の複数の測定値は、複数の空腹時血糖値を含む。
【0087】
いくつかの他の実施態様では、第1のタイプのインスリンはボーラスインスリンであり、第2のタイプのインスリンは基礎インスリンである。これらの実施態様では、血糖値の複数の測定値は、複数の食後血糖値を含む。
【0088】
システムは、血糖値の複数の測定値と、第1のタイプのインスリンの複数の用量値と、複数の用量調整規則とに基づいて第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定する(工程1304)。特に、システムは、血糖の複数の測定値における直近に生成された測定値に基づいて、その直近に生成された測定値が目標範囲内にあるか、下限値を下回るか、または上限値を上回るかを判定し、ここで、直近に生成された測定値は、第1のタイプのインスリンの複数の用量値における直近に適用された用量値が適用された後に生成されたものである。
【0089】
直近に生成された測定値が目標範囲内であると判定したことに応答して、システムは、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの次の用量値として設定する。
【0090】
直近に生成された測定値が目標範囲の上限値を上回ると判定したことに応答して、システムは、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、インスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ増量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定する。
【0091】
直近に生成された測定値が目標範囲の下限値を下回ると判定したことに応答して、システムは、第1のタイプのインスリンの直近に適用された用量値を、第1のタイプのインスリンの予め決められた量だけ、または直近に適用された用量値の予め決められた割合だけ減量することによって、第1のタイプのインスリンの次の用量値を決定する。
【0092】
システムは、コンピューティングデバイスのユーザインターフェースに、第1のタイプのインスリンの次の用量値を表示させる(工程1306)。
【0093】
システムは、用量維持規則に基づいて、第2のタイプのインスリンの次の用量値を決定する(工程1308)。
【0094】
システムは、ユーザインターフェースに、第2のタイプのインスリンの次の用量値を表示させる(工程1310)。いくつかの実施態様では、システムは、第1のタイプのインスリンおよび/または第2のタイプのインスリンの次の用量のリマインダを、追加の通信チャネルを介してユーザのユーザデバイスに送信することができる。追加の通信チャネルは、例えば、電子メール、ショートメッセージサービス(SMS)テキストメッセージ、マルチメディアメッセージサービス(MMS)メッセージ、電話、ボイスオーバーIP(VoIP:Voice-over-IP)通信、ソーシャルメディアプラットフォーム通知システム、携帯電話プッシュ通知、および他のモバイルデバイス通知システムであり得る。
【0095】
本明細書は、システムおよびコンピュータプログラムコンポーネントに関連して、「構成された」という用語を使用する。1つまたはそれ以上のコンピュータのシステムに関して、特定の動作またはアクションを実行するように構成されていることは、動作時、システムに動作またはアクションを実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせがシステムにインストールされていることを意味する。1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムに関して、特定の動作またはアクションを実行するように構成されていることは、1つまたはそれ以上のプログラムが、データ処理装置によって実行されたときにその装置に動作またはアクションを実行させる命令を含むことを意味する。
【0096】
本明細書に記載した主題および機能的動作の実施形態は、デジタル電子回路において、有形に具現化されたコンピュータソフトウェアもしくはファームウェアにおいて、本明細書に開示した構造およびそれらの構造的均等物を含むコンピュータハードウェアにおいて、またはそれらのうちの1つもしくはそれ以上の組み合わせにおいて実装することができる。本明細書に記載した主題の実施形態は、データ処理装置によって実行されるために、またはデータ処理装置の動作を制御するために、有形の非一時的記憶媒体に符号化された1つまたはそれ以上のコンピュータプログラム、すなわちコンピュータプログラム命令の1つまたはそれ以上のモジュールとして実装することができる。コンピュータ記憶媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリデバイス、またはそれらのうちの1つもしくはそれ以上の組み合わせであり得る。代替的にまたは加えて、プログラム命令は、人為的に生成されて伝搬される信号、例えば、データ処理装置によって実行されるために好適な受信装置に伝送するための情報を符号化するように生成される、機械が生成する電気信号、光信号、または電磁信号に符号化することができる。
【0097】
「データ処理装置」という用語は、データ処理ハードウェアを指し、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを含む、データを処理するあらゆる種類の装置、デバイス、機械を包含する。装置はまた、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)であり得るか、またはこれらをさらに含むことができる。装置は、場合により、ハードウェアに加えて、コンピュータプログラムのための実行環境を生成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらのうちの1つもしくはそれ以上の組み合わせを構成するコードを含むことができる。
【0098】
プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリ、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、もしくはコードと称されるかまた記述される場合もあるコンピュータプログラムは、コンパイル型もしくはインタプリタ型言語、または宣言型もしくは手続き型言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で書くことができ;スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境で使用されるのに適した他のユニットとしてなど、任意の形式でデプロイすることができる。プログラムは、必須ではないが、ファイルシステム内のファイルに対応してもよい。プログラムは、他のプログラムもしくはデータ、例えば、マークアップ言語のドキュメントに記憶された1つまたはそれ以上のスクリプトを保持するファイルの一部に、当該プログラムに専用の単一のファイルに、または複数の統合されたファイル、例えば、1つまたはそれ以上のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部を記憶するファイルに記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つのサイトに配置された、もしくは複数のサイトにわたって分散されてデータ通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で、実行されるようにデプロイすることができる。
【0099】
本明細書では、「データベース」という用語は、データの任意の集まりを指すために広義に使用されており:データは、いずれかの特定の方法で構造化されている必要はなく、またはまったく構造化されている必要はなく、1つまたはそれ以上の場所の記憶デバイスに記憶することができる。したがって、例えば、インデックスデータベースはデータの複数の集まりを含むことができ、それら各々は異なる方法で編成しアクセスすることができる。
【0100】
同様に、本明細書では、「エンジン」という用語は、1つまたはそれ以上の特定の機能を実行するようにプログラムされているソフトウェアベースのシステム、サブシステム、またはプロセスを指すように広義に使用されている。一般に、エンジンは、1つまたはそれ以上の場所にある1つまたはそれ以上のコンピュータにインストールされた、1つまたはそれ以上のソフトウェアモジュールまたはコンポーネントとして実装される。場合によっては、1つまたはそれ以上のコンピュータが特定のエンジンに専用になり、他の場合では、複数のエンジンが同じ1つのコンピュータまたは複数のコンピュータにインストールされ、そこで実行することができる。
【0101】
本明細書に記載するプロセスおよび論理フローは、入力データに対して動作して出力を生成することによって機能を実施するように1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムを実行する1つまたはそれ以上のプログラマブルコンピュータによって実行することができる。プロセスおよび論理フローは、専用論理回路、例えばFPGAもしくはASICによって、または専用論理回路と1つもしくはそれ以上のプログラムされたコンピュータとの組み合わせによっても実行することができる。
【0102】
コンピュータプログラムの実行に適したコンピュータは、汎用もしくは専用マイクロプロセッサまたは両方、または他の任意の種類の中央処理装置に基づくことができる。一般に、中央処理装置は、リードオンリメモリもしくはランダムアクセスメモリまたは両方から命令とデータを受け取る。コンピュータの必須要素は、命令を遂行または実行するための中央処理装置と、命令およびデータを記憶する1つまたはそれ以上のメモリデバイスとである。中央処理装置およびメモリは、専用論理回路によって補足することができ、または専用論理回路に組み込むことができる。一般に、コンピュータは、データを記憶する1つまたはそれ以上の大容量記憶デバイス、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクも含むか、またはそれらからデータを受け取り、もしくはそれらにデータを転送し、またはその両方を行うように動作可能に連結される。しかしながら、コンピュータがそのようなデバイスを有することは必須ではない。さらに、コンピュータは、別のデバイス、例えば、わずかに例を挙げると、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、モバイルオーディオもしくはビデオプレーヤ、ゲーム機、全地球測位システム(GPS)受信機、またはポータブルストレージデバイス、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブに組み込むことができる。
【0103】
コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに適したコンピュータ可読媒体には、例として、半導体メモリデバイス、例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク;光磁気ディスク;ならびにCD ROMおよびDVD-ROMディスクを含む、すべての形態の不揮発性メモリ、媒体、およびメモリデバイスが含まれる。
【0104】
ユーザとのインタラクションを提供するために、本明細書に記載する主題の実施形態は、ユーザに情報を表示する表示デバイス、例えばCRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、ユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボードおよびポインティングデバイス、例えばマウスまたはトラックボールとを有するコンピュータ上で実装することができる。他の種類のデバイスを使用して、同様にユーザとのインタラクションを提供することができ;例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形式の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバックとすることができ;ユーザからの入力は、音響、音声または触覚入力を含む、任意の形式で受け取ることができる。加えて、コンピュータは、ユーザが使用するデバイスにドキュメントを送信し、そうしたデバイスからドキュメントを受信することによって;例えば、ウェブブラウザから受け取った要求に応じて、ユーザのデバイス上のウェブブラウザにウェブページを送信することによって、ユーザとインタラクションすることができる。また、コンピュータは、テキストメッセージまたは他の形式のメッセージを個人デバイス、例えば、メッセージングアプリケーションを実行しているスマートフォンに送信し、応答のメッセージをユーザから受信することによって、ユーザとインタラクションすることができる。
【0105】
本明細書に記載する主題の実施形態は、例えばデータサーバとしてバックエンドコンポーネントを含むコンピューティングシステム、またはミドルウェアコンポーネント、例えばアプリケーションサーバを含むコンピューティングシステム、またはフロントエンドコンポーネント、例えばグラフィカルユーザインターフェース、ウェブブラウザ、もしくはユーザが本明細書に記載する主題の実施態様とインタラクションするのを可能にするアプリを有するクライアントコンピュータを含むコンピューティングシステム、または1つもしくはそれ以上のそのようなバックエンド、ミドルウェア、もしくはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムにおいて、実装することができる。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体、例えば通信ネットワークによって相互接続することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)および広域ネットワーク(WAN)、例えばインターネットが挙げられる。
【0106】
コンピューティングシステムは、クライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは、一般に、互いに遠隔であり、通常、通信ネットワークを通じてインタラクションする。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行するとともに互いにクライアント-サーバの関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。いくつかの実施形態では、サーバは、例えば、クライアントとして作用するデバイスとインタラクションするユーザに対してデータを表示し、そうしたユーザからのユーザ入力を受け取る目的で、データ、例えばHTMLページをユーザデバイスに送信する。ユーザデバイスで生成されたデータ、例えばユーザインタラクションの結果は、デバイスからサーバで受信することができる。
【0107】
本明細書は、多くの具体的な実施態様の詳細を含むが、これらは、いかなる発明の範囲に対する、または特許請求することができるものの範囲に対する限定としてではなく、むしろ、特定の発明の特定の実施形態に特有であり得る構成の説明として解釈されるべきである。本明細書において別個の実施形態の文脈で記載されているいくつかの構成は、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。反対に、単一の実施形態の文脈で記載するさまざまな構成は、複数の実施形態において、別々にまたは任意の好適なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、構成について、いくつかの組み合わせで作用するものとして上述し、場合によっては、最初はそのように特許請求する場合もあるが、特許請求する組み合わせからの1つまたはそれ以上の構成は、場合によってはその組み合わせから除外することができ、特許請求する組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形を対象としてもよい。
【0108】
同様に、動作について、特定の順序で、図面に描くとともに特許請求の範囲に記載しているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作を図示する特定の順序でもしくは逐次的順序で実行すること、または図示するすべての動作を実行することを必要とするものとして理解されるべきではない。特定の環境では、マルチタスクおよび並列処理が有利な場合がある。さらに、上述した実施形態におけるさまざまなシステムモジュールおよびコンポーネントの分離は、すべての実施形態においてそのような分離が必要であると理解されるべきではなく、記載したプログラムコンポーネントおよびシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に統合することも、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化することも可能であることが理解されるべきである。
【0109】
主題の特定の実施形態について説明した。他の実施形態は、以下の請求項の範囲内にある。例えば、請求項に記載するアクションは、異なる順序で実行することができ、依然として望ましい結果を達成することができる。1つの例として、添付の図に示すプロセスは、望ましい結果を達成するために、図示する特定の順序、または逐次的な順序を必ずしも必要としない。場合によっては、マルチタスクおよび並列処理が有利なこともある。
【国際調査報告】