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特表2024-529409再生可能な炭素を多く含むアミン硬化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】再生可能な炭素を多く含むアミン硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20240730BHJP
   C07D 307/14 20060101ALI20240730BHJP
   C07D 307/52 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08G59/50
C07D307/14
C07D307/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503883
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070595
(87)【国際公開番号】W WO2023006598
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188304.6
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227352
【弁理士】
【氏名又は名称】白倉 加苗
(72)【発明者】
【氏名】エディス カセミ
(72)【発明者】
【氏名】ウルスラ シュタデルマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラマー
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ブルクハルト
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA02
4J036AA05
4J036AB01
4J036AB10
4J036AD08
4J036AF06
4J036DA01
4J036DA05
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC06
4J036DC09
4J036DC14
4J036DC17
4J036JA01
4J036JA07
4J036JA15
(57)【要約】
本発明は、エポキシ樹脂を硬化するための、式(I)の少なくとも1種のアミンを含む硬化剤の使用に関する。式(I)のアミンは、高い再生可能炭素指数(RCI)を有し、特に持続可能なエポキシ樹脂製品を可能にする。これは驚くほど簡単に製造することができ、臭気が少なく、エポキシ樹脂を特によく希釈し、驚くほど少ない発熱作用での迅速且つ問題のない硬化を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂の硬化のための、式(I)
【化1】
(式中、Aは2~10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基を表し、XはH又はフルフリルを表す)
の少なくとも1種のアミンを含有する硬化剤の使用。
【請求項2】
Aが、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、及び1,6-ヘキシレンからなる群から選択される基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Aが1,2-エチレンを表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
XがHを表すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記式(I)のアミンが、少なくとも0.45、好ましくは少なくとも0.6、特に少なくとも0.7、最も好ましくは1のRCIを有し、前記RCIが、前記式(I)のアミンの炭素原子の総数に対するバイオベース原料由来の炭素原子の数の比率であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記式(I)のアミンが、フルフラール及び水素と、式HN-A-NHの少なくとも1種のアミンとの還元的アルキル化を行うこと、及びそれに続いて式HN-A-NHの未反応アミンを除去すること、から得られる反応生成物の形態で用いられることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
フルフラールに対する前記式HN-A-NHのアミンのモル比が1~2、好ましくは1~1.5の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
XがHを表し、前記硬化剤が、前記式(I)のアミンと式
【化2】
のアミンとの重量比が70/30~99/1、好ましくは80/20~98/2の範囲で前記式
【化3】
のアミンを追加的に含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記式(I)のアミンが、1モル当量のエポキシ基に対して少なくとも1モルの式(I)のアミンの化学量論比で、少なくとも1種のエポキシ樹脂又はモノエポキシドとのアミン官能性付加物の形態で部分的に又は完全に存在することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記硬化剤が、式(I)に従わない追加のアミン、促進剤、及び希釈剤から選択される少なくとも1種の追加の成分、特に式(I)に従わない少なくとも1種の追加のアミンを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記硬化剤が、式(I)に従わない追加のアミンとして、RCIが1である少なくとも1種のアミンを含み、特に2,5-ビス(アミノメチル)フラン、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン、ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)メタン、ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)メタン、2,2-ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)プロパン、及び2,2-ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)プロパンから選択される、アミンを含み、前記RCIが、前記アミンの炭素原子の総数に対するバイオベース原料由来の炭素原子の数の比率であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化剤を含む硬化剤成分と、
を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂成分と前記硬化剤成分とを混合した後、請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物から得られる硬化したエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
フルフラール及び水素と、式HN-A-NHのアミンとの還元的アルキル化を、フルフラールに対する前記式HN-A-NHのアミンが1~2、好ましくは1~1.5の範囲のモル比で行い、続いて、式HN-A-NHのアミンを、反応生成物を基準として最大1重量%、好ましくは最大0.5重量%、特に最大0.2重量%の含有量まで除去することにより得られ、式中のAが、2~10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、特に1,2-エチレンを表す、反応生成物。
【請求項15】
Aが1,2-エチレンを表し、前記反応生成物が、前記反応生成物を基準として
50重量%~80重量%のN-フルフリル-1,2-エタンジアミン、
5重量%~50重量%、特に5重量%~40重量%のN,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミン、
0重量%~20重量%、特に2重量%~15重量%のN-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミン、
1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、特に0.2重量%未満の1,2-エタンジアミン、
及び任意選択的に、さらなる成分、特に前記還元的アルキル化からのさらなる副生成物を含有することを特徴とする、請求項14に記載の反応生成物。
【請求項16】
少なくとも1種の式
【化4】
のアミンと、少なくとも1種の式
【化5】
のアミンとを、70/30~99/1、好ましくは80/20~98/2の範囲の重量比で含むアミン混合物であって、式中のAが、2~10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基を表し、特に1,2-エチレンを表す、アミン混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な炭素を多く含むアルキル化アミン、及びエポキシ樹脂用の硬化剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミンは、特にエポキシ樹脂組成物における硬化剤として産業界及び建築業界において使用されている。用途に応じて、要求される特性には、低い発熱での高い反応性、及び/又はブラッシングによる曇り、汚れ、若しくはクレーターのない均一な表面を有するコーティング若しくは物体を得るための、周囲温度における迅速で問題のない硬化が含まれる。硬化した物体又はコーティングは、機械的応力にできるだけ耐えるために低い脆性で高い硬度を有する必要があり、また光学的に要求の厳しい用途のためには、高い光沢と低い黄変傾向を有する必要がある。多くの用途のためには、エポキシ樹脂組成物ができるだけ迅速且つ容易に塗布できるように低い粘度を有し、良好なレベリング特性と脱気特性を有し、場合によっては基材に容易に浸透することが重要である。多くのエポキシ樹脂はかなり高い粘度を有するため、アミン硬化剤による効率的な希釈は、より少量の希釈剤若しくは溶剤を使用すること、及び/又は適切な粘度にするためにより高い充填剤含有量を実現することを可能にするため、特に有利である。
【0003】
現在、持続可能なエポキシ樹脂組成物に対する需要が高まっている。特に、それらは再生可能な生物源由来の原料を多く含む必要がある。すなわち、かなりの程度までバイオベースである必要がある。そのため、持続可能なアミン硬化剤が必要とされている。化学原料の持続可能性の一般的な尺度は、再生可能な生物源由来の炭素含有量を示す再生可能炭素指数(RCI)である。これは、再生可能資源に由来する炭素原子の数を原料中の炭素原子の総数で割ることによって得られる。
【0004】
高い再生可能炭素指数を有するアミンを含有する硬化剤は、例えば米国特許第9,676,898号明細書又は国際公開第2015/124792号パンフレットから公知であり、これらの中には、ビス(アミノメチル)フラン及びビスフルフリルアミン、並びにエポキシ樹脂用の硬化剤としてのそれらの使用が記載されている。しかしながら、これらのアミンの製造は高コストであり、実行しにくく、ブラッシングの傾向があり、またエポキシ樹脂に対するそれらの希釈効果は改善が必要とされる。
【0005】
欧州特許第3,350,245号明細書には、テトラヒドロフラン環を有するアルキル化アミンを含有する持続可能な硬化剤が開示されている。これらの硬化剤は、特に2次元用途で、及び例えば8℃などの低温条件で不完全な硬化を示し、最終硬度が低下する。
【0006】
例えば欧州特許第2731927号明細書、欧州特許第3180383号明細書、又は欧州特許第3344677号明細書から、ベンジル化アミンも公知である。エポキシ樹脂の硬化剤として、これらのアミンは良好な希釈効果を有し、2次元用途や低い周囲温度の場合であっても、迅速で問題のない硬化を可能にする。しかしながら、そのバイオベースの製造は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、高い再生可能炭素指数(RCI)を有し、製造が簡単であり、エポキシ樹脂の良好な希釈効果を有し、且つ問題のない硬化を可能にする、エポキシ樹脂用の硬化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、驚くべきことに、請求項1に記載の式(I)のアミンを含有する硬化剤を用いて達成される。式(I)のアミンは、再生可能な原料に基づくフルフラールによる一級脂肪族アミンの還元的アルキル化から単純なプロセスで得られる。式(I)のアミンは、高いRCI、好ましくは少なくとも0.45、特に少なくとも0.7のRCIを有する。
【0009】
式(I)のアミンを含有する硬化剤は、驚くほど高い希釈が可能である。特に、N-フルフリル-1,2-エタンジアミンを用いると、エポキシ樹脂は特に効率的に希釈され、公知のN-ベンジル-1,2-エタンジアミンよりもさらに高度に希釈される。エポキシ樹脂を硬化させるために必要なN-フルフリル-1,2-エタンジアミンの量は、そのアミン当量の低さのためN-ベンジル-1,2-エタンジアミンよりも少なく、またフラン環中の酸素及びその結果生じる水素結合形成の可能性が見込まれるためN-ベンジル-1,2-エタンジアミンよりも希釈効果が低いことから、これは驚くべきことである。本発明による硬化剤は臭気が非常に少なく、これは多くの用途のためにさらに大きな利点である。これにより、高い最終硬度への迅速且つ問題のない硬化が可能になる。特に驚くべきことは、硬化中の発熱がN-ベンジル-1,2-エタンジアミンを使用した場合よりも大幅に少なく、N-フルフリル-1,2-エタンジアミンを用いた処理時間及び硬化速度が、N-ベンジル-1,2-エタンジアミンを用いた場合よりもわずかに長い/遅いのみであることである。発熱が少ないため、成形体、ポッティングコンパウンド、又は複合材料のマトリックス樹脂などの厚い層で使用されるエポキシ樹脂製品に、大きい発熱による膨れ、変色、又はその他の不均一性を生じることなく使用することができる。2次元用途の場合、この硬化剤により、魅力的で光沢のある表面を持ち且つブラッシング現象の傾向が非常に低い、周囲温度で硬化可能なエポキシ樹脂コーティングを実現することができる。また、N-フルフリル-1,2-エタンジアミンが、エポキシ樹脂の硬化中に認識できるほどの悪影響なしに、精製度が低く、特に安価に製造可能な反応生成物の形態でも使用できることも特に驚くべきことである。
【0010】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、エポキシ樹脂の硬化のための式(I)
【化1】
(式中、Aは2~10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基を表し、XはH又はフルフリルを表す)
の少なくとも1種のアミンを含有する硬化剤の使用を提供する。
【0012】
「RCI」は、物質又は物質混合物の「再生可能炭素指数」であり、RCIは、物質又は物質混合物の炭素原子の総数に対するバイオベース原料由来の炭素原子の数の比率である。
【0013】
「一級アミノ基」は、1つの有機基に結合しており2つの水素原子を持つアミノ基を指し;「二級アミノ基」は、2つの有機基に結合しており、1つの水素原子を持つアミノ基を指し、2つの有機基は一緒になって環の一部を形成していてもよく;「三級アミノ基」は、3つの有機基に結合しており、そのうちの2つ又は3つが1つ以上の環の一部であってもよい、水素原子を持たないアミノ基を指す。
【0014】
「アミン水素」は、一級及び二級アミン基の水素原子を指す。
【0015】
「アミン水素当量」は、1モル当量のアミン水素を含むアミン又はアミン含有組成物の質量を指す。これは「g/eq」の単位で表される。
【0016】
「エポキシ当量」は、1モル当量のエポキシ基を含むエポキシ基含有化合物又は組成物の質量を指す。これは「g/eq」の単位で表される。
【0017】
ポリアミン又はポリエポキシドなどの「ポリ」で始まる物質名は、形式的にはその名前に含まれる官能基を1分子あたり2つ以上含む物質を指す。
【0018】
「希釈剤」は、エポキシ樹脂に可溶でありその粘度を低下させ、且つ硬化プロセス中にエポキシ樹脂ポリマーに化学的に取り込まれない物質を指す。
【0019】
「分子量」は、分子のモル質量(1モルあたりのグラム数)を指す。「平均分子量」は、オリゴマー分子又はポリマー分子の多分散混合物の数平均Mを指し、これは、通常ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0020】
「ポットライフ」は、成分を混合してからエポキシ樹脂組成物を塗布するまでの時間であって、混合した組成物が十分に自由流動状態にあり、且つ基材表面を濡らす十分な能力を有する最大の時間を指す。
【0021】
「ゲルタイム」は、エポキシ樹脂組成物の成分を混合してからそれがゲル化するまでの時間である。
【0022】
「室温」は23℃の温度を指す。
【0023】
本明細書で言及されている全ての業界標準及び規格は、別段の記載がない限り、最初の出願日に有効なバージョンを指す。
【0024】
重量パーセント(重量%)の値は、別段の記載がない限り、組成物全体を基準とした組成物中の成分の質量分率を指す。「質量」及び「重量」という用語は、本明細書では同義的に使用される。
【0025】
Aは、好ましくは、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、1,6-ヘキシレン、1,7-ヘプチレン、1,8-オクチレン、1,9-ノニレン、又は1,10-デシレンを表す。
【0026】
Aは、特に好ましくは、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、及び1,6-ヘキシレンからなる群から選択される。これらのアミンは、特に簡単に、高いRCIで得ることができ、エポキシ樹脂との相溶性が特に良好である。
【0027】
Aは、最も好ましくは、1,2-エチレンを表す。そのような式(I)のアミンは、基Aの炭素原子がバイオベースの原料に由来しない場合であっても、特に迅速且つ問題のない硬化を行うエポキシ樹脂組成物を実現することを可能にし、特に高いRCIを有する。
【0028】
XがHを表す場合が好ましい。そのような式(I)のアミンは、エポキシ樹脂を特によく希釈し、特に迅速な硬化及び特に高い最終硬度を達成することを可能にする。
【0029】
式(I)のアミンが、N-フルフリル-1,2-エタンジアミン、N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミン、N-フルフリル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジフルフリル-1,3-プロパンジアミン、N-フルフリル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジフルフリル-1,4-ブタンジアミン、N-フルフリル-1,5-ペンタンジアミン、N,N’-ジフルフリル-1,5-ペンタンジアミン、N-フルフリル-1,6-ヘキサンジアミン、及びN,N’-ジフルフリル-1,6-ヘキサンジアミンからなる群から選択される場合が好ましい。
【0030】
これらの中でも、N-フルフリル-1,2-エタンジアミン又はN,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンが好ましい。N-フルフリル-1,2-エタンジアミンが特に好ましい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)のアミンは、X=Hである式(I)のアミンと、X=フルフリルである式(I)のアミンとの、重量比が50/50~98/2、特に60/40~95/5の範囲の混合物として使用される。そのような混合物は特に安価に製造することができ、エポキシ樹脂の迅速で問題のない硬化を可能にする。
【0032】
式(I)のアミンは、好ましくは、フルフラール及び水素と、式HN-A-NHの少なくとも1種のアミンとの還元的アルキル化を行うことによって製造される。
【0033】
フルフラールは、好ましくは再生可能な原料に基づいており、1のRCIを有する。これにより、式(I)のアミンに高いRCIを持たせることが可能になる。
【0034】
市販のフルフラールは、典型的にはバイオベースの原料に由来する。大規模な工業スケールでは、フルフラールは、例えば植物性原料由来のヘミセルロースから、特に脱水においてそこに存在するC5糖に硫酸を作用させることによって、又は重亜硫酸マグネシウムプロセスによるパルプ製造において(遊離したフルフラールは黒液から抽出することができる)、得られる。
【0035】
式HN-A-NHの好ましいアミンは、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、又は1,6-ヘキサンジアミンであり、特に1,2-エタンジアミンである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、式HN-A-NHのアミンの炭素原子も再生可能な原料に由来する。これにより、特にRCIが1である式(I)の極めて持続可能なアミンを実現することができる。
【0037】
式(I)のアミンが少なくとも0.45、好ましくは少なくとも0.6、特に少なくとも0.7、最も好ましくは1のRCIを有する場合が好ましい。
【0038】
還元的アルキル化は、好ましくは、適切な触媒の存在下で行われる。好ましい触媒は、木炭上のパラジウム(Pd/C)、木炭上の白金(Pt/C)、アダムス触媒、又はラネーニッケルであり、特に木炭上のパラジウム又はラネーニッケルである。
【0039】
還元的アルキル化は、好ましくは、5~120bar、特に10~100barの水素圧で、加圧装置内で行われる。これは、バッチ式プロセス、又は好ましくは連続プロセスで行うことができる。
【0040】
還元的アルキル化は、好ましくは40℃~120℃、特に60℃~100℃の範囲の温度で行われる。
【0041】
式HN-A-NHのアミンとフルフラールとの間の化学量論に応じて、得られる反応混合物は、式HN-A-NHのモノアルキル化アミン、すなわちX=Hである式(I)のアミンと、式HN-A-NHのジアルキル化アミン、すなわちX=フルフリルである式(I)のアミンとを異なる割合で含有する。
【0042】
X=フルフリルである式(I)のアミンが製造される場合、式HN-A-NHのアミン対フルフラールのモル比は、好ましくは0.4~0.7の範囲、特に0.5である。このようにして得られる反応混合物は、X=フルフリルである式(I)のアミンを特に高含有量で含む。
【0043】
X=Hである式(I)のアミンが製造される場合、式HN-A-NHのアミン対フルフラールのモル比は、好ましくは1~10、特に1~5の範囲である。このようにして得られる反応混合物は、X=Hである式(I)のアミンを高含有量で含む。
【0044】
式HN-A-NHの過剰なアミンは、好ましくは、反応後に、特に放出された水と一緒に蒸留することによって反応混合物から除去される。
【0045】
反応混合物は、特に蒸留/分別によってさらに精製することができる。式(I)のアミンから副生成物を除去することができ、及び/又はX=Hである式(I)のアミンを、X=フルフリルである式(I)のアミンから分離することができる。
【0046】
フルフラール及び水素と、式HN-A-NHの少なくとも1種のアミンとの還元的アルキル化を行うこと、及びそれに続いて式HN-A-NHの未反応アミンを除去すること、から得られる反応生成物の形態で式(I)のアミンが用いられる場合が好ましい。
【0047】
反応生成物は、好ましくはさらには精製されず、特に式(I)のアミンの蒸留/分別が避けられる。
【0048】
そのような反応生成物は、特に安価に製造することができる。それは、式HN-A-NHのアミンを低含有量で含み、好ましくは反応生成物全体を基準として2重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、特に0.5重量%未満の低含有量で式HN-A-NHのアミンを含む。
【0049】
反応生成物は、還元的アルキル化からの副生成物、特にジ-又はトリ-アルキル化された窒素原子を有するアミン、及び水素化されたフラン環を有するアミンを含み得る。これらの割合は低いことが好ましい。
【0050】
反応生成物が、ジ-又はトリ-アルキル化窒素原子を有するアミン、特に式
【化2】
のアミンを、合計で反応生成物全体を基準として10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満、特に2重量%未満含有することが好ましい。
【0051】
反応生成物が、水素化フラン環を有するアミン、特に式
【化3】
のアミンを、合計で反応生成物全体を基準として20重量%未満、特に15重量%未満含有することが好ましい。
【0052】
本発明の特に好ましい実施形態では、式(I)のアミンは、フルフラール及び水素と、式HN-A-NHの少なくとも1種のアミンとの還元的アルキル化と、及びそれに続いて式HN-A-NHの未反応アミンの除去からの反応生成物の形態で得られ、フルフラールに対する式HN-A-NHのアミンのモル比は1~2、好ましくは1~1.5の範囲である。Aが1,2-エチレンを表す場合が好ましい。
【0053】
この反応生成物中の式HN-A-NHのアミンの含有量は、反応生成物全体を基準として好ましくは最大1重量%、特に好ましくは最大0.5重量%、特に最大0.2重量%である。
【0054】
そのような反応生成物は、X=Hである式(I)のアミンを驚くほど多量に含有し、且つX=フルフリルである式(I)のアミンを驚くほど少量で含有し、この反応生成物はX=Hである式(I)のほぼ純粋なアミンとほぼ遜色なくエポキシ樹脂に対して驚くほど高い反応性を示す。これは、従来技術からは予期できなかった。フルフラールの代わりにベンズアルデヒドを用いた1,2-エタンジアミンとの対応する反応では、対応する化学量論でN,N’-ジアルキル化1,2-エタンジアミンの含有量が大幅に高くなる。
【0055】
反応生成物中のX=Hである式(I)のアミンとX=フルフリルである式(I)のアミンとの重量比が、反応生成物を基準として50/50~98/2、好ましくは60/40~95/5の範囲にある場合が好ましい。
【0056】
したがって、本発明は、さらに、フルフラール及び水素と、式HN-A-NHのアミンとの還元的アルキル化を、フルフラールに対する式HN-A-NHのアミンが1~2、好ましくは1~1.5の範囲であるモル比で行い、続いて、式HN-A-NHのアミンを、反応生成物を基準として最大1重量%、好ましくは最大0.5重量%、特に最大0.2重量%の含有量まで除去することにより得られる、Aが2~10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、特に1,2-エチレンを表す反応生成物を提供する。
【0057】
Aが1,2-エチレンを表し、反応生成物が、反応生成物を基準として
50重量%~80重量%のN-フルフリル-1,2-エタンジアミン、
5重量%~50重量%、特に5重量%~40重量%のN,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミン、
0重量%~20重量%、特に2重量%~15重量%のN-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミン、
1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、特に0.2重量%未満の1,2-エタンジアミン、
及び任意選択的に、さらなる成分、特に還元的アルキル化からのさらなる副生成物を含有することが好ましい。
【0058】
そのような反応生成物は、容易且つ安価に製造可能であり、さらなる精製なしで、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤の成分として非常に適しており、前記生成物は、実質的に純粋なN-フルフリル-1,2-エタンジアミンと比較してほぼ遜色がないエポキシ樹脂に対する高い反応性を有する。
【0059】
X=Hである式(I)のアミンと式
【化4】
のアミンとの重量比が70/30~99/1、好ましくは80/20~98/2の範囲で、X=Hである式(I)のアミンを式
【化5】
のアミンとの混合物として使用することが好ましく、式中のAは上で規定した通りである。
【0060】
そのようなアミン混合物は製造が簡単であり、驚くほど迅速に問題なくエポキシ樹脂を硬化させることができる。
【0061】
したがって、本発明は、少なくとも1種の式
【化6】
のアミンと、少なくとも1種の式
【化7】
のアミンとを、70/30~99/1、好ましくは80/20~98/2の範囲の重量比で含むアミン混合物をさらに提供し、式中、Aは、2~10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基を表し、特に1,2-エチレンを表す。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)のアミンは、1モル当量のエポキシ基に対して少なくとも1モルの式(I)のアミンの化学量論比で、少なくとも1種のエポキシ樹脂又はモノエポキシドとのアミン官能性付加物の形態で部分的に又は完全に使用される。
【0063】
そのような付加物は、式(I)のアミンから誘導される少なくとも2個、典型的には3個又は4個のアミン水素を有する付加した分子と、遊離の付加していない式(I)のアミンとの混合物の形態である。これにより、適度な粘度で、特に8℃の低温でも特に迅速な硬化が可能になる。
【0064】
エポキシ樹脂は、好ましくは150~500g/eq、好ましくは156~250g/eqの範囲の平均エポキシ当量を有する。
【0065】
2~4の範囲の平均官能価を有する芳香族エポキシ樹脂、特にビスフェノールA、F、若しくはA/Fジグリシジルエーテル又はノボラックエポキシ樹脂が好ましい。これらの付加物により、特に迅速な硬化と高いガラス転移温度が可能になる。
【0066】
ポリオキシプロピレン及び/又はポリオキシエチレン単位を有するエポキシ樹脂も好ましい。これらは特に、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、又はビスフェノールA、F、若しくはA/Fジグリシジルエーテルとポリプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールとの反応生成物である。そのような付加物は、エポキシ樹脂用の水系硬化剤の成分として特に適している。
【0067】
芳香族ジエポキシド、特にビスフェノールA、F、若しくはA/Fジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0068】
ビスフェノールAとバイオベースのエピクロロヒドリンとの反応から得られる、RCIが0.28のビスフェノールAジグリシジルエーテルが非常に好ましい。これにより、特に持続可能な付加物を得ることが可能になる。
【0069】
エポキシ基のモル当量あたりの式(I)のアミンのモル単位での化学量論比が1~10、好ましくは1.2~5、特に1.4~3の範囲で付加が行われる場合が好ましい。
【0070】
硬化剤は、好ましくは、式(I)に従わない追加のアミン、促進剤、及び希釈剤から選択される少なくとも1種の追加の成分、特に式(I)に従わない少なくとも1種の追加のアミンを含有する。
【0071】
硬化剤が、式(I)のアミンの製造からの副生成物ではない式(I)に従わない少なくとも1種の追加のアミンを含む場合が好ましい。
【0072】
式(I)に従わない好ましい追加のアミンは、脂肪族アミノ基と少なくとも3個のアミン水素とを有するアミン、特にN-ベンジル-1,2-エタンジアミン、N-ベンジル-1,2-プロパンジアミン、N-ベンジル-1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、N-(2-エチルヘキシル)-1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-ペンタンジアミン(DAMP)、1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン(C11-ネオジアミン)、1,6-ヘキサンジアミン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,2(4),4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMD)、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,2-、1,3-、若しくは1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、2(4)-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA)、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、1,8-メンタンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(MXDA)、1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼン、ビス(2-アミノエチル)エーテル、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-2,9-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、5,8-ジオキサドデカン-3,10-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、又はこれらのジアミンの高次のオリゴマー、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン又は他のポリテトラヒドロフランジアミン、ポリオキシアルキレンジ-若しくはトリアミン、特にポリオキシプロピレンジアミン又はポリオキシプロピレントリアミン、例えばJeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、又はJeffamine(登録商標)T-403(全てHuntsmanより)、フラン系アミン、例えば2,5-ビス(アミノメチル)フラン、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン、ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)メタン、ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)メタン、2,2-ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)プロパン又は2,2-ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)プロパン、又はジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N3-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(N4-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、N5-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N3-(3-アミノペンチル)-1,3-ペンタンジアミン、N5-(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(BHMT)、N-アミノエチルピペラジン、3-ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、3-(3-(ジメチルアミノ)プロピルアミノ)プロピルアミン(DMAPAPA)、列挙されたアミンとエポキシドとのアミン官能性付加物、カルダノールと、アルデヒド、特にホルムアルデヒドとの反応生成物であるフェナルカミン、並びにポリアミン、又はこれらのアミンの2種以上の混合物である。
【0073】
硬化剤は、好ましくは、N-ベンジル-1,2-エタンジアミン、N,N’-ジベンジル-1,2-エタンジアミン、MPMD、TMD、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、IPDA、2(4)-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、MXDA、DETA、TETA、TEPA、N3-アミン、N4-アミン、DPTA、BHMT、200~500g/molの範囲の平均分子量Mを有するポリオキシプロピレンジアミン、300~500g/molの範囲の平均分子量Mを有するポリオキシプロピレントリアミン、2,5-ビス(アミノメチル)フラン、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン、ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)メタン、ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)メタン、2,2-ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)プロパン、2,2-ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)プロパン、及びフェナルカミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミンを含む。
【0074】
これらの中でも、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、特に1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。これにより、特に迅速な硬化が可能になる。
【0075】
これらの中でもIPDAがさらに好ましい。これにより、特に高いガラス転移温度が達成され、高い使用温度に対して特に優れたロバスト性が可能になる。特に持続可能な硬化剤の実現を可能にするバイオベースのアセトンからの高いRCIを有するIPDAを使用することが特に好ましい。
【0076】
これらの中でもMXDAがさらに好ましい。これにより、速い硬化速度と特に高い強度が実現する。
【0077】
これらの中でも、N-ベンジル-1,2-エタンジアミンがさらに好ましい。そのような硬化剤により、特に魅力的な表面を有する、特に低粘度のエポキシ樹脂製品が可能になる。
【0078】
これらの中でも、2,5-ビス(アミノメチル)フラン、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン、ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)メタン、ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)メタン、2,2-ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)プロパン、又は2,2-ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)プロパン、特に2,5-ビス(アミノメチル)フランがさらに好ましい。これにより、特に持続可能な硬化剤を実現することが可能になる。
【0079】
硬化剤は、特に、式(I)に従わない2種以上の追加のアミンを含有してもよい。
【0080】
硬化剤は、特に好ましくは、式(I)に従わない追加のアミンとして、RCIが1である少なくとも1種のアミンを含み、特に2,5-ビス(アミノメチル)フラン、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン、ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)メタン、ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)メタン、2,2-ビス(5-アミノメチルフラン-2-イル)プロパン、及び2,2-ビス(5-アミノメチルテトラヒドロフラン-2-イル)プロパンから選択される、アミンを含む。
【0081】
全てのアミン水素の5%~95%、好ましくは10%~80%、特に15%~60%が式(I)のアミンに起因して存在するような量で、硬化剤が式(I)に従わない追加のアミンを含有する場合が好ましい。式(I)のアミンがエポキシ樹脂との付加物の形態で存在する場合、そのような付加物のアミン水素は同様に式(I)のアミンのアミン水素として数えられる。
【0082】
適切な促進剤は、特に酸又は酸で加水分解可能な化合物、特に酢酸、安息香酸、サリチル酸、2-ニトロ安息香酸、乳酸などの有機カルボン酸;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又は4-ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸;スルホン酸エステル;特にリン酸などの他の有機酸若しくは無機酸;又は上記酸及び酸エステルの混合物;特に硝酸カルシウムなどの硝酸塩;特に1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどの三級アミン;特にN-メチルイミダゾール、N-ビニルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール;そのような三級アミンの塩;特に塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの四級アンモニウム塩;特に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エンなどのアミジン;特に1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどのグアニジン;特に2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、又はフェノールとホルムアルデヒドとN,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミンとから製造されるポリマーなどの、フェノール、特にビスフェノール、フェノール樹脂、又はマンニッヒ塩基;特にジ-若しくはトリフェニルホスファイトなどのホスファイト;又はメルカプト基を有する化合物である。
【0083】
酸、硝酸塩、三級アミン、又はマンニッヒ塩基、特にサリチル酸、硝酸カルシウム、又は2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、又はこれらの促進剤の組み合わせが好ましい。
【0084】
適切な希釈剤は、特に、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、キシレン、2-メトキシエタノール、ジメトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチレート、ジフェニルメタン、ジイソプロピルナフタレン、鉱油留分、例えばSolvesso(登録商標)グレード(Exxon)、アルキルフェノール、例えばtert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、カルダノール、スチレン化フェノール、ビスフェノール、芳香族炭化水素樹脂、特にフェノール基を含むタイプ、アルコキシル化フェノール、特にエトキシル化若しくはプロポキシル化フェノール、特に2-フェノキシエタノール、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、安息香酸エステル、有機リン酸エステル、又はスルホン酸エステル、又はスルホンアミドである。
【0085】
これらの中でも、沸点が200℃を超える希釈剤、特にベンジルアルコール、スチレン化フェノール、エトキシル化フェノール、フェノール基を含む芳香族炭化水素樹脂、例えば特にNovares(登録商標)グレードLS500、LX200、LA300、又はLA700(Ruetgers製)、ジイソプロピルナフタレン、又はカルダノール、特にベンジルアルコールが特に好ましい。
【0086】
フェノール含有希釈剤も促進剤として有効である。
【0087】
これらの中で、特に高い希釈効果を有する芳香族希釈剤、特にキシレンも好ましい。
【0088】
これらの中でも、RCIが1である希釈剤、特にカルダノールが特に好ましい。これらにより、特に持続可能な硬化剤を実現することが可能になる。
【0089】
硬化剤は、好ましくは希釈剤を少量のみ含有し、特に硬化剤全体を基準として0重量%~50重量%、好ましくは0重量%~30重量%の希釈剤を含有する。
【0090】
硬化剤は、硬化剤全体を基準として好ましくは1重量%~99重量%、より好ましくは5重量%~90重量%、より好ましくは10重量%~80重量%、特に好ましくは15重量%~70重量%の式(I)のアミンを含有する。
【0091】
硬化剤は水系であってよく、15重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%の範囲の水を含有する。
【0092】
硬化剤は、好ましくは水系ではない。これは、硬化剤全体を基準として好ましくは15重量%未満、特に10重量%未満の水を含有する。そのような硬化剤は、非水性エポキシ樹脂製品に特に適している。
【0093】
硬化剤は、特に以下の追加の成分を含み得る:
・追加の付加物、特にMPMD又は1,2-エタンジアミン又は1,2-プロパンジアミンと、クレシルグリシジルエーテル又は芳香族エポキシ樹脂との付加物であって、未反応のMPMD、1,2-エタンジアミン、又は1,2-プロパンジアミンが反応後に蒸留によって除去されたもの、
・特にベンジルアミン又はフルフリルアミンなどのモノアミン、
・ポリアミドアミン、特に一塩基性若しくは多塩基性カルボン酸、又はそのエステル若しくは無水物、特に二量体脂肪酸と、化学量論過剰で使用されるポリアミン、特にDETA又はTETAとの反応生成物、
・マンニッヒ塩基、
・特に4,4’-、2,4’ 、及び/又は2,2’-ジアミノジフェニルメタン、2,4(6)-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4(6)-トルエンジアミン、又は3,5-ジエチル-2,4(6)-トリレンジアミンなどの芳香族ポリアミン、
・メルカプト基を有する化合物、特に液体のメルカプタン末端ポリスルフィドポリマー、メルカプタン末端ポリオキシアルキレンエーテル、メルカプタン末端ポリオキシアルキレン誘導体、チオカルボン酸のポリエステル、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、トリエチレングリコールジメルカプタン、又はエタンジチオール、
・界面活性剤、特に消泡剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、又はレベリング剤、又は
・安定剤、特に酸化、熱、光、又は紫外線に対する安定剤。
【0094】
本発明は、さらに、
・少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分と、
・上記式(I)の少なくとも1種のアミンを含有する硬化剤を含む硬化剤成分と、
を含有するエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0095】
適切なエポキシ樹脂は、公知の方法で、特にエピクロロヒドリンと、ポリオール、ポリフェノール、又はアミンとの反応から得られる。
【0096】
適切なエポキシ樹脂は、特に芳香族エポキシ樹脂、特に以下のもののグリシジルエーテルである:
・ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールA/F(Aはアセトンを表し、Fはこれらのビスフェノールの製造で反応物として使用されるホルムアルデヒドを表す)。ビスフェノールFの場合、位置異性体、より具体的には2,4’-又は2,2’-ヒドロキシフェニルメタンに由来するものも存在する場合がある;
・レゾルシノール、ヒドロキノン、又はカテコールなどのジヒドロキシベンゼン誘導体;
・ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールP)、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、4,4’-ジヒドロキシジフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシナフト-1-イル)メタン、ビス(4-ヒドロキシナフト-1-イル)メタン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、又はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどの追加のビスフェノール又はポリフェノール;
・ノボラック、特にフェノール又はクレゾールと、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド又はアセトアルデヒド又はクロトンアルデヒド又はイソブチルアルデヒド又は2-エチルヘキサナール又はベンズアルデヒド又はフルフラールとの縮合生成物;
・アニリン、トルイジン、4-アミノフェノール、4,4’-メチレンジフェニルジアミン、4,4’-メチレンジフェニルジ(N-メチル)アミン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンP)、又は4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンM)などの芳香族アミン。
【0097】
さらに適切なエポキシ樹脂は、脂肪族又は脂環式ポリエポキシド、特に、
・飽和又は不飽和の、分岐又は非分岐の、環状又は開鎖の、二、三、又は四官能性のC~C30アルコール、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール、ヒマシ油、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、若しくはグリセロール、又はアルコキシル化グリセロール若しくはアルコキシル化トリメチロールプロパン;
・水素化ビスフェノールA、F、若しくはA/F液体樹脂、又は水素化ビスフェノールA、F、若しくはA/Fのグリシジル化生成物;
・アミド又は複素環式窒素塩基のN-グリシジル誘導体(トリグリシジルシアヌレート又はトリグリシジルイソシアヌレートなど)、又はエピクロロヒドリンとヒダントインとの反応生成物;
である。
【0098】
さらに適切なエポキシ樹脂は、高いRCIを有するエポキシ樹脂、特にバイオベースのヒドロキシ官能性原料とエピクロロヒドリンとの反応から得られるものである。特にバニリンアルコールのジグリシジルエーテルなどのバニリンに基づくエポキシ樹脂、及び特にバイオベースのグリセロールのトリグリシジルエーテルなどのグリセロールに基づくエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0099】
エポキシ樹脂は、好ましくは、液体樹脂、又は2種以上の液体エポキシ樹脂を含有する混合物である。
【0100】
「液体エポキシ樹脂」は、25℃未満のガラス転移温度を有する工業用ポリエポキシドを指す。
【0101】
樹脂成分は、一定割合の固体エポキシ樹脂を任意選択的にさらに含有する。
【0102】
エポキシ樹脂は、特にビスフェノール又はノボラックに基づく液体樹脂であり、特に156~210g/eqの範囲の平均エポキシ当量を有する。
【0103】
特に適しているものは、例えばOlin、Huntsman、又はMomentiveから市販されているようなビスフェノールAジグリシジルエーテル及び/又はビスフェノールFジグリシジルエーテルである。これらの液体樹脂は、エポキシ樹脂としては粘度が低く、迅速な硬化と高い硬度を可能にする。これらは、固体のビスフェノールA樹脂又はノボラックエポキシ樹脂を一定割合で含み得る。
【0104】
非常に好ましいものは、ビスフェノールAとバイオベースのエピクロロヒドリンとの反応から得られる、RCIが0.28のビスフェノールAジグリシジルエーテルである。これにより、特に持続可能なエポキシ樹脂組成物を実現することが可能になる。
【0105】
また、特に2.3~4、好ましくは2.5~3の範囲の平均官能価を有するフェノール-ホルムアルデヒドノボラックグリシジルエーテルも特に適している。これらは、一定割合の他のエポキシ樹脂、特にビスフェノールAジグリシジルエーテル又はビスフェノールFジグリシジルエーテルを含み得る。
【0106】
また、バニリンアルコールのジグリシジルエーテル又はグリセロールのトリグリシジルエーテル、特にバニリンアルコールのジグリシジルエーテルも特に適している。
【0107】
樹脂成分は反応性希釈剤を含み得る。
【0108】
好ましい反応性希釈剤は、エポキシ基を含む反応性希釈剤であり、特にブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ-若しくはトリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、グアイアコールグリシジルエーテル、4-メトキシフェニルグリシジルエーテル、p-n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-ノニルフェニルグリシジルエーテル、4-ドデシルフェニルグリシジルエーテル、カルダノールグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、又は天然アルコールのグリシジルエーテル、例えば特にC~C10又はC12~C14又はC13~C15アルキルグリシジルエーテルである。
【0109】
エポキシ樹脂組成物が、希釈剤、促進剤、充填剤、顔料、及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の成分を含有することが好ましい。
【0110】
適切な希釈剤又は促進剤としては、特に本明細書の上で記載したものが挙げられる。
【0111】
適切な充填剤は、特に、任意選択的に脂肪酸、特にステアリン酸塩で被覆されていてもよい粉砕若しくは沈降炭酸カルシウム、バライト(重晶石)、タルク、石英粉末、石英砂、炭化ケイ素、鉄雲母、ドロマイト、ウォラストナイト、カオリン、マイカ(ケイ酸アルミニウムカリウム)、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、セメント、石膏、フライアッシュ、カーボンブラック、黒鉛、金属粉末(アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、銀、又は鋼など)、PVC粉末、又は中空ビーズである。これらの中でも、炭酸カルシウム、バライト、石英粉末、タルク、アルミニウム粉末、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0112】
適切な顔料としては、特に、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム(III)、有機顔料、カーボンブラック、又は防食顔料、特に対イオンとして特にクロム、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、ストロンチウム、若しくはこれらの金属の組み合わせを含むリン酸塩、オルトリン酸塩、又はポリリン酸塩が挙げられる。二酸化チタンが特に適している。
【0113】
適切な界面活性剤は、特に消泡剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、レベリング剤、及び/又は分散パラフィンワックスである。
【0114】
エポキシ樹脂組成物は、任意選択的には、追加の助剤及び添加剤、特に以下のものを含み得る:
・反応性希釈剤、特に既に述べたもの、又はエポキシ化ダイズ油若しくは亜麻仁油、アセトアセテート基を含む化合物、特にアセトアセチル化ポリオール、ブチロラクトン、カーボネート、アルデヒド、イソシアネート、又は反応性基を有するシリコーン;
・ポリマー、特にポリアミド、ポリスルフィド、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PUR)、カルボキシル基を有するポリマー、ポリアミド、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ブタジエン-スチレンコポリマー、不飽和モノマーのホモポリマー若しくはコポリマー、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル、又はアルキル(メタ)アクリレートを含む群からの不飽和ホモポリマー若しくはコポリマー、特にクロロスルホン化ポリエチレン又はフッ素含有ポリマー又はスルホンアミド変性メラミン;
・繊維、特にガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、又はポリアミド繊維又はポリエチレン繊維などのポリマー繊維;
・ナノフィラー、特にカーボンナノチューブ;
・レオロジー調整剤、特に増粘剤又は沈降防止剤;
・接着性向上剤、特にオルガノアルコキシシラン;
・難燃性物質、特に既に述べた水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム充填剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ホウ酸(B(OH))、ホウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ホウ酸メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリ臭素化ジフェニルオキシド又はジフェニルエーテル、リン酸エステル、例えば特にジフェニルクレシルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールジホスフェートオリゴマー、テトラフェニルレゾルシノールジホスファイト、エチレンジアミンジホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロイソプロピル)ホスフェート、トリス[3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピル]ホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、臭素化エポキシ樹脂、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ジブロモノボルナンジカルボキシイミド)、1,2-ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエノ)シクロオクタン、又はクロロパラフィン;又は
・酸化、熱、光、紫外線、若しくは殺生物剤に対する安定剤。
【0115】
エポキシ樹脂組成物は、好ましくは少量の希釈剤しか含有しない。これは、好ましくは20重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、特に5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の希釈剤を含有する。
【0116】
エポキシ樹脂組成物は水を含んでいてもよい。
【0117】
一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は水系である。エポキシ樹脂は、好ましくは水中に50重量%~85重量%の量で乳化されており、硬化剤成分は、好ましくは20重量%~80重量%の水を含有する。
【0118】
しかしながら、エポキシ樹脂組成物は、好ましくは水を少量のみ、好ましくは水を5重量%未満、特に1重量%未満含有する。そのような非水系エポキシ樹脂組成物は、特に汎用性があり、特に耐水性である。
【0119】
以下のものを含むエポキシ樹脂組成物が好ましい:
・少なくとも1種のエポキシ樹脂と、特にエポキシ含有反応性希釈剤、希釈剤、充填剤、顔料、及び/又は界面活性剤などの任意選択的な追加の成分とを含む樹脂成分、並びに
・少なくとも1種の式(I)のアミンと、特に追加のアミン、促進剤、及び/又は希釈剤などの任意選択的な追加の成分とを含む硬化剤成分。
【0120】
エポキシ樹脂組成物の樹脂成分と硬化剤成分は別々の容器で保管される。
【0121】
樹脂成分又は硬化剤成分の保管に適した容器は、特にバット、ホボック、バッグ、バケツ、缶、カートリッジ、又はチューブである。成分は保管可能である。すなわち、これらを使用前に数か月~最大1年以上、使用に関わる程度までそれぞれの特性を変化させずに保管できることを意味する。
【0122】
樹脂成分と硬化剤成分は、塗布の直前又は塗布中に混合される。混合比は、好ましくは、エポキシ基に対するエポキシ反応性基のモル比が0.5~1.5、特に0.7~1.2の範囲になるように選択される。重量部では、樹脂成分と硬化剤成分との混合比は、典型的には1:2~20:1の範囲内である。
【0123】
成分の混合と塗布との間に時間が経過しすぎないように、且つ塗布がポットライフ内に行われるように注意しながら、成分は適切な方法で連続的に又はバッチ式で混合される。混合及び塗布は、典型的には約5℃~40℃の範囲、好ましくは約10℃~35℃の範囲である周囲温度で、又は高温、特に40℃~150℃、好ましくは50℃~120℃の範囲で行うことができる。
【0124】
成分を混合すると、化学反応によるエポキシ樹脂組成物の硬化が始まる。一級及び二級アミノ基、並びにエポキシ基に対して反応性を有する存在する追加的な基は、エポキシ基と反応し、その結果、その開環が生じる。主にこれらの反応の結果として、組成物は重合し、それによって硬化する。
【0125】
硬化は、典型的には数時間~数日間要する。継続時間は、温度、成分の反応性、その化学量論、及び促進剤の存在/量などの要因に依存する。
【0126】
混合したての状態では、エポキシ樹脂組成物は低い粘度を有する。20℃で樹脂成分と硬化剤成分とを混合した5分後の粘度は、10s-1のせん断速度でコーンプレート粘度計を使用して測定した場合に、好ましくは0.1~20Pa・s、好ましくは0.2~10Pa・s、特に好ましくは0.3~5Pa・sの範囲にある。
【0127】
エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1つの基材及び/又は少なくとも1つの鋳型に塗布される。
【0128】
適切な基材は、特に、
・ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、セメントスクリード、繊維セメント、レンガ、タイル、漆喰、又は花崗岩若しくは大理石などの自然石;
・PCC(ポリマー改質セメントモルタル)又はECC(エポキシ樹脂改質セメントモルタル)に基づく補修コンパウンド又はレベリングコンパウンド;
・アルミニウム、鉄、鋼、銅、その他の非鉄金属などの金属又は合金(亜鉛メッキ又はクロムメッキされた金属などの表面仕上げされた金属又は合金を含む);
・アスファルト又はビチューメン;
・革、布地、紙、木材、樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、又はエポキシ樹脂)と接合された木質材料、樹脂-布地複合材料、又はさらなるポリマー複合材料;
・硬質及び軟質のPVC、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、PMMA、ABS、SAN、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、PUR、POM、TPO、PE、PP、EPM、又はEPDMなどのプラスチック(いずれも未処理であるか、又は例えばプラズマ、コロナ、若しくは火炎などによって表面処理されたもの);
・炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、及びシートモールディングコンパウンド(SMC)などの繊維強化プラスチック;
・断熱フォーム、特にEPS、XPS、PUR、PIR、ロックウール、グラスウール、又は発泡ガラスから製造されたもの;
・コーティング又は塗装された基材、特に塗装されたタイル、コーティングされたコンクリート、パウダーコーティングされた金属若しくは合金、又は塗装された金属シート;
・コーティング、塗料、又はワニス、特に床被覆層でさらにオーバーコートされたコーティングされた床;
である。
【0129】
基材は、必要に応じて、塗布前に、特に物理的及び/若しくは化学的な洗浄方法又は活性化剤若しくはプライマーの塗布によって前処理することができる。
【0130】
基材は、特にコーティング及び/又は接着により接合される。
【0131】
適切な鋳型は、混合された液状エポキシ樹脂組成物をその中に流し入れて中で硬化させることができ、硬化後にそこから離型すること又は取り出すことができ、硬化した組成物が成形体を形成する器具である。
【0132】
鋳型は、好ましくは、硬化したエポキシ樹脂組成物を傷付けることなく再び離すことができる表面の材料から、特に金属、セラミック、プラスチック、又はシリコーンから製造されており、任意選択的に非粘着性コーティング、特にテフロン、シリコーン、又はワックスの非粘着性コーティングを備えている材料から少なくとも構成される。
【0133】
本発明は、さらに、樹脂成分と硬化剤成分とを混合した後に本記載のエポキシ樹脂組成物から得られる硬化した組成物を提供する。
【0134】
エポキシ樹脂組成物は、コーティング、プライマー、接着剤、シーラント、ポッティングコンパウンド、注型樹脂、含浸樹脂として、又は成形体として、又は特にCFRP(炭素繊維を含む)若しくはGFRP(ガラス繊維を含む)若しくは木材複合材料などの複合材料のためのマトリックスとして、好ましくは使用される。
【0135】
この使用により、記載されたエポキシ樹脂組成物から構成される硬化した組成物を含む物品が形成される。
【0136】
物品は、特に床のコーティング、壁のコーティング、部品のコーティング、パイプのコーティング、屋根のコーティング若しくは防食コーティング、又は接着接合された物品若しくは成形体、特に複合材料である。
【実施例
【0137】
以下は、記載されている発明をより具体的に説明することを目的とした例示的な実施形態である。本発明は、当然、これらの記載されている例示的な実施形態に限定されない。
【0138】
「AHEW」はアミン水素当量を表す。
【0139】
「EEW」はエポキシ当量を表す。
【0140】
「標準気候条件」(「SCC」)は、23±1℃の温度且つ50±5%の相対大気湿度を指す。
【0141】
別段の記載がない限り、使用した化学薬品はSigma-Aldrich Chemie GmbHから入手した。
【0142】
測定方法の説明:
粘度は、サーモスタット付きRheotec RC30コーンプレート粘度計(コーン径50mm、コーン角度1°、コーン先端プレート距離0.05mm、せん断速度10s-1)で測定した。100mPa・s未満の粘度は100s-1のせん断速度で測定した。
【0143】
アミン価は滴定(クリスタルバイオレットに対して、酢酸中0.1NのHClOを使用)によって決定した。
【0144】
ガスクロマトグラム(GC)は、15℃/分の加熱速度、320℃における保持時間10分間で、60℃~320℃の温度範囲で測定した。インジェクター温度は250℃であった。Zebron ZB-5カラムを1.5ml/分のガス流量で使用した(L=30m、ID=0.25mm、dj=0.5μm)。検出は水素炎イオン化(FID)により行った。
【0145】
赤外スペクトル(FT-IR)は、ダイヤモンド結晶を有する水平ATR測定ユニットを備えたThermo ScientificのNicolet iS5 FT-IR装置で未希釈フィルムとして測定した。吸収帯は波数(cm-1)で報告される。
【0146】
H NMRスペクトルは、Bruker Ascend 400タイプの分光計で400.14MHzで測定した。ケミカルシフトδは、テトラメチルシラン(TMS)に対するppmで報告される。真のカップリングパターンと擬似カップリングパターンは区別されなかった。
【0147】
使用した物質及び略語:
Araldite(登録商標)GY 250:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、EEW約187g/eq(Huntsman)
Araldite(登録商標)DY-E:C12~C14アルコールのモノグリシジルエーテル、EEW約290g/eq(Huntsman)
D.E.N.(登録商標)438:フェノール-ホルムアルデヒドノボラックグリシジルエーテル、EEW約179g/eq、平均官能価約3.6(Olin)
IPDA 3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、AHEW 42.6g/eq(Vestamin(登録商標)IPD、Evonik)
MXDA:1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、AHEW 34g/eq(Mitsubishi Gas Chemical)
Ancamine(登録商標)K54 2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(Evonik)。
【0148】
アミンの製造:
反応生成物P-1:(N-フルフリル-1,2-エタンジアミンを含有;1:1の化学量論)
室温で、最初に30.05g(0.5mol)のエタン-1,2-ジアミンを窒素雰囲気で丸底フラスコに入れた。よく撹拌しながら、48.05g(0.5mol)のフルフラール(フラン-2-カルバルデヒド、RCI=1)を添加し、40℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物を1000mlのイソプロパノールと混合し、次いでラネーニッケル固定床触媒を備えた連続水素化装置内で、水素圧70bar、温度70℃、流量5.5ml/分で水素化した。反応を監視するために、IR分光法を使用して、約1665cm-1のイミンのバンドが消失したか否かを確認した。その後、水素化した溶液を65℃でロータリーエバポレーターで濃縮して、未反応の1,2-エタンジアミン、水、及びイソプロパノールを除去した。そのようにして得られた反応混合物は、アミン価が695mgKOH/gであり、20℃における粘度が10mPa・sであり、GC測定によるN-フルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約57.9重量%(保持時間7.3分)であり、N-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約8.2重量%(保持時間8.0分)であり、N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約31.6重量%(保持時間11.9分)であり、フラン環水素化N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約2.3重量%(保持時間12.5分)である、透明でわずかに黄色がかった液体であった。さらに使用するために、58.9g/eqのAHEWを使用した。
【0149】
反応生成物P-2:(N-フルフリル-1,2-エタンジアミンを含有;2:1の化学量論)
室温で、最初に60.1g(1mol)のエタン-1,2-ジアミンを窒素雰囲気で丸底フラスコに入れた。よく撹拌しながら、48.05g(0.5mol)のフルフラール(フラン-2-カルバルデヒド、RCI=1)を添加し、40℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物を1000mlのイソプロパノールと混合し、次いでラネーニッケル固定床触媒を備えた連続水素化装置内で、水素圧70bar、温度70℃、流量5.5ml/分で水素化した。反応を監視するために、IR分光法を使用して、約1665cm-1のイミンのバンドが消失したか否かを確認した。その後、水素化した溶液を65℃でロータリーエバポレーターで濃縮して、未反応の1,2-エタンジアミン、水、及びイソプロパノールを除去した。そのようにして得られた反応混合物は、アミン価が772mgKOH/gであり、20℃における粘度が11mPa・sであり、GC測定によるN-フルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約78.2重量%(保持時間7.3分)であり、N-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約12.3重量%(保持時間8.0分)であり、N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約9.1重量%(保持時間11.9分)である、透明でわずかに黄色がかった液体であった。さらに使用するために、56.6g/eqのAHEWを使用した。
【0150】
反応生成物P-3:(N-フルフリル-1,2-エタンジアミンを含有;3:1の化学量論)
室温で、最初に60.1g(1mol)のエタン-1,2-ジアミンを窒素雰囲気で丸底フラスコに入れた。よく撹拌しながら、32.0g(0.33mol)のフルフラール(フラン-2-カルバルデヒド、RCI=1)を添加し、40℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物を1000mlのイソプロパノールと混合し、次いでラネーニッケル固定床触媒を備えた連続水素化装置内で、水素圧65bar、温度65℃、流量5.5ml/分で水素化した。反応を監視するために、IR分光法を使用して、約1665cm-1のイミンのバンドが消失したか否かを確認した。その後、水素化した溶液を65℃でロータリーエバポレーターで濃縮して、未反応の1,2-エタンジアミン、水、及びイソプロパノールを除去した。そのようにして得られた反応混合物は、アミン価が757mgKOH/gであり、20℃における粘度が10mPa・sであり、GC測定によるN-フルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約86.1重量%(保持時間7.3分)であり、N-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約3.3重量%(保持時間8.0分)であり、N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約2.8重量%(保持時間11.9分)であり、フラン環水素化N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約1.5重量%(保持時間12.5分)であり、N,N,N’-トリスフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約6.0重量%(保持時間14.2分)である、透明でわずかに黄色がかった液体であった。さらに使用するために、51.6g/eqのAHEWを使用した。
【0151】
反応生成物P-4:(N-フルフリル-1,2-エタンジアミンを含有;3.5:1の化学量論、Pd/C)
室温で、最初に105.2g(1.75mol)のエタン-1,2-ジアミンを窒素雰囲気で丸底フラスコに入れた。よく撹拌しながら、200mlのイソプロパノール中の48.05g(0.5mol)のフルフラール(フラン-2-カルバルデヒド、RCI=1)の溶液を添加し、40℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物を追加の1000mlのイソプロパノールと混合し、次いでPd/C固定床触媒を備えた連続水素化装置内で、水素圧80bar、温度80℃、流量5ml/分で水素化した。反応を監視するために、IR分光法を使用して、約1665cm-1のイミンのバンドが消失したか否かを確認した。その後、水素化した溶液を65℃でロータリーエバポレーターで濃縮して、未反応の1,2-エタンジアミン、水、及びイソプロパノールを除去した。そのようにして得られた反応混合物は、アミン価が691mgKOH/gであり、20℃における粘度が13.5mPa・sであり、GC測定によるN-フルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約72.8重量%(保持時間7.3分)であり、N-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約7.8重量%(保持時間8.0分)であり、N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約3.3重量%(保持時間11.9分)であり、フラン環水素化N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約3.0重量%(保持時間12.5分)であり、N,N,N’-トリスフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約9.9重量%(保持時間14.2分)であり、フラン環水素化N,N,N’-トリスフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約3.2重量%(保持時間14.7分)である、透明でわずかに黄色がかった液体であった。さらに使用するために、55g/eqのAHEWを使用した。
【0152】
N-フルフリル-1,2-エタンジアミン(F-EDA):
上述した通りに製造した41.2gの反応生成物P-4を70℃で減圧蒸留し、蒸気温度約50℃且つ0.1barで25.6gの蒸留物を回収した。これにより、アミン価が802mgKOH/gであり、AHEWが約46.7g/eqであり、RCIが0.71であり、20℃における粘度が3.2mPa・sであり、GC測定によるN-フルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約94.6重量%(保持時間7.3分)であり、N-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約5.3重量%(保持時間8.0分)である、無色の液体が得られた。これは以降でF-EDAとして使用した。
H NMR(CDCl):7.33(d,1H,Ar-H),6.27(m,1H,Ar-H),6.14(m,1H,Ar-H),3.76(s,2H,Ar-CH),2.78(m,2H,NHCHCH),2.65(m,2H,CHNH),1.52(br s,3H,NH及びNH).
FT-IR:3284,3043,2945,2838,1567,1504,1455,1382,1306,1219,1146,1108,1073,1009,916,883,806,738.
【0153】
N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミン(BisF-EDA)
室温で、最初に200mlのイソプロパノール中の11.12g(0.185mol)の1,2-エタンジアミンを窒素雰囲気で丸底フラスコに入れた。よく撹拌しながら、35.0g(0.37mol)のフルフラール(フラン-2-カルバルデヒド、RCI=1)を添加し、混合物を40℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物をさらに800mlのイソプロパノールと混合し、次いでラネーニッケル固定床触媒を備えた連続水素化装置内で、水素圧65bar、温度65℃、流量5.5ml/分で水素化した。反応を監視するために、IR分光法を使用して、約1665cm-1のイミンのバンドが消失したか否かを確認した。その後、水素化した溶液を65℃でロータリーエバポレーターで濃縮して、未反応の1,2-エタンジアミン、水、及びイソプロパノールを除去した。これにより、透明なわずかに黄色がかった液体が得られ、これを110℃~130℃で真空蒸留し、蒸留物を蒸気温度105℃~110℃且つ0.15barで回収した。これにより、アミン価が502mgKOH/gであり、AHEWが110g/eqであり、20℃における粘度が28mPa・sであり、GC測定によるN,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約79.0重量%(保持時間11.9分)であり、フラン環水素化N,N’-ジフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約11.9重量%(保持時間12.4~12.5分)であり、N,N,N’-トリスフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約4.4重量%(保持時間14.2分)であり、フラン環水素化N,N,N’-トリスフルフリル-1,2-エタンジアミンの割合が約3.7重量%(保持時間14.6~14.7分)である、無色の液体が得られた。これは以降でBisF-EDAとして使用した。
【0154】
N-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミン(THF-EDA):
室温で、最初に60.1g(1mol)のエタン-1,2-ジアミンを窒素雰囲気で丸底フラスコに入れた。200mlのイソプロパノール中の32.0g(0.33mol)のフルフラールの溶液を、よく撹拌しながらゆっくりと滴下し、撹拌を40℃でさらに1時間継続した。追加の300mlのイソプロパノールと反応混合物を混合し、次いでラネーニッケル固定床触媒を備えた連続水素化装置内で、水素圧90bar、温度110℃、流量5ml/分で水素化した。反応を監視するために、IR分光法を使用して、約1665cm-1のイミンのバンドが消失したか否かを確認した。その後、水素化された溶液を65℃でロータリーエバポレーターで濃縮して、未反応の1,2-エタンジアミン、水、及びイソプロパノールを除去した。
【0155】
これにより、透明なわずかに黄色がかった液体が得られ、これを70℃で真空蒸留し、蒸気温度約50℃且つ0.1barで35.6gの蒸留物を回収した。これにより、20℃における粘度が4.3mPa・sであり、アミン価が728mgKOH/gであり、AHEWが48.1g/eqであり、GC測定によるN-テトラヒドロフルフリル-1,2-エタンジアミンの含有量が約97重量%(保持時間8.0分)である、無色の液体が得られた。これは以降でTHF-EDAとして使用した。
【0156】
N-ベンジル-1,2-エタンジアミン(B-EDA):
室温で180.3g(3mol)の1,2-エタンジアミンを最初に入れ、1200mlのイソプロパノール中の106.0g(1mol)のベンズアルデヒドの溶液と混合し、2時間撹拌し、次いでPd/C固定床触媒を備えた連続水素化装置内で、80℃、水素圧80bar、流量5ml/分で水素化し、水素化された溶液を65℃でロータリーエバポレーターで濃縮して、未反応の1,2-エタンジアミン、水、及びイソプロパノールを除去した。このようにして得られた反応混合物は、GC測定によるN-ベンジル-1,2-エタンジアミンの含有量が約81重量%(保持時間8.5分)であり、N,N’-ジベンジルエタン-1,2-ジアミンの含有量が約14重量%(保持時間14.3分)である、透明な淡く黄色がかった液体であった。前記混合物を80℃で減圧蒸留することにより精製した。これにより、AHEWが50.1g/eqであり、GC測定によるN-ベンジル-1,2-エタンジアミンの含有量が>97%である、無色の液体が得られた。これは以降でB-EDAとして使用した。
【0157】
付加物の調製:
付加物A1:
51.3gのN-フルフリル-1,2-エタンジアミン(F-EDA、0.366mol)を70℃に加熱し、よく撹拌しながら45.0gのAraldite(登録商標)GY250(0.241molのEP基)をゆっくりと添加した。その際反応混合物の温度を70℃~90℃に維持した。反応混合物をこの温度範囲で1時間撹拌し、その後冷却した。これにより、20℃における粘度が124Pa・sであり、アミン価が419mgKOH/gであり、計算されるAHEWが112.3g/eqである、透明でわずかに黄色がかった液体が得られた。
【0158】
付加物A2:
58.6gのN-フルフリル-1,2-エタンジアミン(F-EDA、0.418mol)を70℃に加熱し、よく撹拌しながら37.3gのD.E.N.(登録商標)438(0.208molのEP基)をゆっくりと添加した。その際反応混合物の温度を70℃~90℃に維持した。反応混合物をこの温度範囲で1時間撹拌し、その後冷却した。これにより、20℃における粘度が40.8Pa・sであり、アミン価が492mgKOH/gであり、計算されるAHEWが91.6g/eqである、透明でわずかに黄色がかった液体が得られた。
【0159】
付加物A3(参照):
55.0gのN-ベンジルエタン-1,2-ジアミン(B-EDA、0.366mol)を70℃に加熱し、よく撹拌しながら45.0gのAraldite(登録商標)GY250(0.241molのEP基)をゆっくりと添加した。その際反応混合物の温度を70℃~90℃に維持した。反応混合物をこの温度範囲で1時間保持し、その後冷却した。これにより、20℃における粘度が262Pa・sであり、アミン価が408mgKOH/gであり、計算されるAHEWが116.3g/eqである、透明でわずかに黄色がかった液体が得られた。
【0160】
エポキシ樹脂組成物の製造:
実施例Z-1及びRef-1~Ref-3
各実施例について、表1で規定した樹脂成分と硬化剤成分とを別々に60℃の温度まで加熱した。次いで、これらの予熱した成分を使用して、遠心ミキサー(SpeedMixer(商標)DAC150、FlackTek Inc.)を使用して表1に規定されている重量比で成分を15秒間混合することによって合計20gのエポキシ樹脂組成物を製造し、その後すぐに以下の通りに試験を行った。
【0161】
水浴を使用して60℃に温度調節した試験管の中に混合した組成物を入れ、温度センサーを混合した材料の中央に配置した。これを使用して、混合した材料の最高温度に到達するまでの時間(ピーク発熱までの時間として表で報告)及び最高温度レベル(ピーク発熱温度)を決定した。表1に示されている値は、3回の測定からの平均値である。
【0162】
Tg値(ガラス転移温度)は、上述した測定からの、試験管の中央から硬化したサンプルについてDSCにより測定した。これらのサンプルは、測定前にさらに標準気候条件で14日間保管した。測定は、Mettler Toledo DSC3+700装置及び測定プログラム(1)-10℃で2分間、(2)加熱速度10K/分で-10~200℃(=1回目の実施)、(3)冷却速度-50K/分で200~-10℃、(4)-10℃で2分間、(5)加熱速度10K/分で-10~180℃(=2回目の実施)、を使用して行った。
【0163】
結果は表1に報告されている。
【0164】
エポキシ樹脂組成物Z-1は本発明の実施例である。エポキシ樹脂組成物Ref-1~Ref-3は比較例である。
【0165】
【表1】
【0166】
実施例Z-2~Z-11及びRef-4~Ref-8
各実施例について、表2~4に報告されている樹脂成分の原料を、遠心ミキサー(SpeedMixer(商標)DAC150、FlackTek Inc.)を使用して規定量(重量部)で混合し、水分を排除して保管した。
【0167】
表2~4で規定されている硬化剤成分の原料も処理し、保管した。
【0168】
次いで、遠心ミキサーを使用して各組成物の2つの成分を処理して均一な液体を得てから、前記液体を以下の通りに直ちに試験した。
【0169】
粘度は、樹脂成分と硬化剤成分とを混合してから5分後に、記載の通りに20℃の温度で測定した。
【0170】
ゲルタイムは、標準気候条件で新たに混合した約3gの量を、塊がゲル化するまで一定の間隔でスパチュラで動かすことによって決定した。
【0171】
ショアD硬度は、一方は標準気候条件で、他方は8℃且つ相対湿度80%で保管した2つの円筒型試験片(直径20mm、厚さ5mm)について、DIN 53505に従って決定し、硬度はそれぞれの場合で1日後(24時間後)と2日後に測定した。
【0172】
さらに、ガラス板に500μmの層厚さでフィルムを塗布し、これを標準気候条件で保管/硬化した。このフィルムについて、1日後、2日後、7日後、及び14日後(1d SCC)、(2d SCC)、(7d SCC)、(14d SCC)のケーニッヒ硬度(DIN EN ISO 1522に準拠したケーニッヒ振り子硬度)を決定した。14日後、フィルムの外観(SCC)を評価した。透明なフィルムは、光沢のある非粘着性表面を有しており且つ構造がないものを「魅力的である」と表現した。「構造」とは、表面上のあらゆる種類の模様又はパターンを指す。
【0173】
ガラス板に500μmの層厚さでさらなるフィルムを塗布し、塗布直後に8℃且つ相対湿度80%で7日間、その後標準気候条件で2週間、保管/硬化した。塗布してから24時間後、湿らせたスポンジを下に置いたポリプロピレン製ボトルの蓋をフィルム上に置いた。さらに24時間後、スポンジとボトルの蓋を取り除き、フィルム上の新しい位置に配置し、さらに24時間後にこれらを取り除いて置き直し、これを合計4回行った。その後、このフィルムの外観を、外観(SCC)について記載した方法と同じ方法で評価した(表では「外観(8°/80%)」と表す)。ここでは、それぞれの場合で、湿ったスポンジ又はボトルの蓋を上に置いた結果としてフィルムに形成された目に見える跡の数と性質も報告した。白く変色したスポットの数は「ブラッシング」を意味する。かすかに白く変色したスポットは「(1)」とした。はっきりと白く変色したスポットは「1」とした。塗布してから24時間後に、適用した最初のボトルの蓋の沈み込みに起因するリング形状の跡が存在した場合、「リング」という表現で報告した。そのようなリング形状の跡は、コーティングがまだ歩ける状態ではなかったことを示す。次に、このようにして硬化したフィルムのケーニッヒ硬度を、それぞれ8℃且つ相対湿度80%で7日後(ケーニッヒ(7d 8°/80%))、その後さらにSCCで2日後(ケーニッヒ(+2d SCC))、又はSCCで7日後(ケーニッヒ(+7d SCC))、又はSCCで14日後(ケーニッヒ(+14d SCC))に決定した。
【0174】
結果を表2~表4に示す。
【0175】
エポキシ樹脂組成物Z-2~Z-10は本発明の実施例である。エポキシ樹脂組成物Ref-4~Ref-8は比較例である。
【0176】
【表2】
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【国際調査報告】