(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電気化学素子用の分離膜及びそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240730BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240730BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/426
H01M50/489
H01G11/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503974
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2022010656
(87)【国際公開番号】W WO2023003369
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0095122
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0095123
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0095124
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ボン-テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・シク・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ア-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キル-アン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジェ・ハン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078AB01
5E078CA06
5E078CA07
5E078CA19
5E078CA20
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物混成空隙層を含み、前記バインダー高分子が第1バインダー高分子を含み、前記第1バインダー高分子が動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)で測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene))である電気化学素子用の分離膜及びそれを備える電気化学素子に関する。本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、電極との接着力が優秀であり、高温における安全性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子多孔支持体と、
前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物混成空隙層と、を含み、
前記バインダー高分子が第1バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子は、動的機械分析による測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)であることを特徴とする、電気化学素子用の分離膜。
【請求項2】
前記第1バインダー高分子のヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量が、ビニリデンフルオライド反復単位の含量とヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量の合計100重量%を基準にして4重量%~22重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項3】
前記バインダー高分子が第2バインダー高分子をさらに含み、
前記第2バインダー高分子は、動的機械分析による測定時、-11℃~0℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン)であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項4】
前記第2バインダー高分子が155℃以上の溶融温度を有することを特徴とする、請求項3に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項5】
前記第2バインダー高分子のクロロトリフルオロエチレン反復単位の含量が、ビニリデンフルオライド反復単位の含量とクロロトリフルオロエチレン反復単位の含量の合計100重量%を基準にして10重量%~30重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項6】
前記第1バインダー高分子と第2バインダー高分子との重量比が、50:50~95:5であることを特徴とする、請求項3に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項7】
前記無機物混成空隙層の厚さが10μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項8】
前記電気化学素子用の分離膜を130℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD)及び直角方向(TD)において各々25%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項9】
前記電気化学素子用の分離膜を150℃で30分間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD)及び直角方向(TD)において各々55%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項10】
前記電気化学素子用の分離膜が、40gf/25mm以上の電極接着力を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項11】
前記第1バインダー高分子が、γ型の結晶構造を有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項12】
前記第1バインダー高分子が、155℃以上の溶融温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項13】
正極、負極及び前記正極と負極の間に介在された電気化学素子用の分離膜を含み、
前記電気化学素子用の分離膜が、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気化学素子用の分離膜であることを特徴とする、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気化学素子用の分離膜及びそれを含む電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2021年7月20日出願の韓国特許出願第2021-0095122号、第2021-0095123号及び第2021-0095124号 に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダ及びノートブックPC、ひいては電気自動車のエネルギーにまで適用分野が広かるにつれ、このような電子器機の電源に使用される電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求を最もよく満たす電気化学素子であって、現在、それに関わる研究が盛んに進んでいる。
【0004】
このようなリチウム二次電池の製造及び使用において、リチウム二次電池の安全性の確保は重要な解決課題である。特に、リチウム二次電池において通常使用される分離膜は、その材料的特性及び製造工程上の特性によって高温などの状況で激しい熱収縮挙動を示すことから、内部短絡などの安全性の問題を有している。
【0005】
このような安全性の問題を解決するために、無機フィラーとバインダー高分子の混合物を高分子多孔支持体にコーティングした分離膜が提案された。しかし、この際、使用されるバインダー高分子の溶融温度(Tm)値が約120℃前後であるため、依然として150℃のような高温では分離膜が熱収縮挙動を示すという問題点が存在する。また、電極と分離膜を積層して電極組立体を形成する場合、層間接着力が十分ではなくて電極と分離膜とが互いに分離し、この過程で脱離する無機フィラーが電気化学素子内で局所的欠陷として作用し得るという問題点が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電極との接着力が優秀であり、かつ高温における安全性が改善された電気化学素子用の分離膜及びそれを備える電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明の一面によれば、下記具現例の電気化学素子用の分離膜が提供される。
【0008】
第1具現例は、
高分子多孔支持体と、
前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物混成空隙層と、を含み、
前記バインダー高分子が第1バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子は、動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)による測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene))であることを特徴とする電気化学素子用の分離膜に関する。
【0009】
第2具現例は、第1具現例において、
前記第1バインダー高分子のヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量が、ビニリデンフルオライド反復単位の含量とヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量の合計100重量%を基準にして4重量%~22重量%であり得る。
【0010】
第3具現例は、第1具現例または第2具現例において、
前記バインダー高分子が第2バインダー高分子をさらに含み、
前記第2バインダー高分子は、動的機械分析による測定時、-11℃~0℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン)(poly(vinylidene fluoride-co-chlorotrifluoroethylene))であり得る。
【0011】
第4具現例は、第3具現例において、
前記第2バインダー高分子が155℃以上の溶融温度を有し得る。
【0012】
第5具現例は、第3具現例または第4具現例において、
前記第2バインダー高分子のクロロトリフルオロエチレン反復単位の含量が、ビニリデンフルオライド反復単位の含量とクロロトリフルオロエチレン反復単位の含量の合計100重量%を基準にして10重量%~30重量%であり得る。
【0013】
第6具現例は、第3具現例から第5具現例のいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子と第2バインダー高分子との重量比が、50:50~95:5であり得る。
【0014】
第7具現例は、第1具現例から第6具現例のいずれか一具現例において、
前記無機物混成空隙層の厚さが10μm以下であり得る。
【0015】
第8具現例は、第1具現例から第7具現例のいずれか一具現例において、
前記電気化学素子用の分離膜を130℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向(Machine Direction;MD)及び直角方向(Transverse Direction;TD)において各々25%以下であり得る。
【0016】
第9具現例は、第1具現例から第8具現例のいずれか一具現例において、
前記電気化学素子用の分離膜を150℃で30分間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD)及び直角方向(TD)において各々55%以下であり得る。
【0017】
第10具現例は、第1具現例から第9具現例のいずれか一具現例において、
前記電気化学素子用の分離膜が、40gf/25mm以上の電極接着力を有し得る。
【0018】
第11具現例は、第1具現例から第10具現例のいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子が、γ型の結晶構造(crystal form)を有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)であり得る。
【0019】
第12具現例は、第1具現例から第11具現例のいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子が、155℃以上の溶融温度を有するものであり得る。
【0020】
第13具現例は、
正極、負極及び前記正極と負極の間に介在された電気化学素子用の分離膜を含み、
前記電気化学素子用の分離膜が、第1具現例から第12具現例のいずれか一具現例に記載の電気化学素子用の分離膜であることを特徴とする電気化学素子に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、動的機械分析による測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)を含むことで、電極との接着力が優秀であり、かつ高温における熱収縮率を改善することができる。
【0022】
本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、動的機械分析による測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)と動的機械分析による測定時、-11℃~0℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン)を含むことで、電極との接着力が優秀であり、かつ高温における熱収縮率を改善することができる。
【0023】
本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、前記第1バインダー高分子が電極との接着力を具現し、前記第2バインダー高分子が高分子多孔支持体と無機物混成空隙層との接着力を具現することで、電極との接着力が優秀である。
【0024】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis;DMA)によって測定した実施例1~3及び比較例1で使用した第1バインダー高分子の温度とtanδの関係を示したグラフである。
【
図2】動的機械分析(DMA)によって測定した実施例1で使用した第2バインダー高分子の温度とtanδの関係を示したグラフである。
【
図3】広角X線回折(Wide angle X-ray diffraction;WAXS)によって測定した実施例1で使用した第1バインダー高分子の結晶構造を示した図である。
【
図4】広角X線回折によって測定した実施例2で使用した第1バインダー高分子の結晶構造を示した図である。
【
図5】広角X線回折によって測定した実施例3で使用した第1バインダー高分子の結晶構造を示した図である。
【
図6】広角X線回折によって測定した比較例1で使用した第1バインダー高分子の結晶構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応じた意味及び概念で解釈されねばならない。
【0027】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0028】
前記第1、第2などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用され、各構成要素が前記用語によって制限されることではない。
【0029】
本発明の一面による電気化学素子用の分離膜は、
高分子多孔支持体と、
前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物混成空隙層と、を含み、
前記バインダー高分子が第1バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子が、動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)で測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene))であることを特徴とする。
【0030】
本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、高分子多孔支持体を備える。
【0031】
前記高分子多孔支持体は、電気化学素子用の分離膜の素材として通常に使用可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。このような高分子多孔支持体は、高分子材料が含まれた薄膜のものであって、前記高分子材料の非制限的な例には、オレフィン高分子、エチレンテレフタレート高分子、ブチレンテレフタレート高分子、アセタール高分子、アミド高分子、カーボネート高分子、イミド高分子、エーテルエーテルケトン高分子、エーテルスルホン高分子、フェニレンオキシド高分子、フェニレンスルフィド高分子、エチレンナフタレン高分子などが挙げられる。また、前記高分子多孔支持体は、前述したような高分子材料から形成された不織布または多孔性高分子フィルムまたはこれらの二つ以上の集層物などが使用され得る。具体的には、前記高分子多孔支持体は、下記a)~e)のいずれか一つであり得る。
【0032】
a)高分子材料を溶融及び押出して成膜した多孔性フィルム
b)前記a)の多孔性フィルムが2層以上積層された多孔性膜
c)高分子材料を溶融/放射して得たフィラメントを集積して製造された不織布ウェブ
d)前記c)の不織布ウェブが2層以上積層された多層膜
e)前記a)~d)の二つ以上を含む多層構造の多孔性膜
【0033】
前記高分子多孔支持体は、前述した物質から優秀な通気性及び孔隙率を確保するために当業界における公知の方法、例えば、溶媒、希釈剤または気孔形成剤を使用する湿式法または延伸方式を使用する乾式法によって気孔を形成することで製造され得る。
【0034】
本発明の一実施様態において、前記高分子多孔支持体の厚さは特に制限されないが、1μm~100μm、または1μm~30μmであり得る。高分子多孔支持体の厚さが前述した範囲である場合、電池の使用中に分離膜が損傷しやすい問題を防止できると共に、エネルギー密度を確保することが可能である。
【0035】
本明細書において、前記高分子多孔支持体の厚さは、例えば、厚さ測定器(Mitutoyo社、VL-50S-B)を用いて測定され得る。
【0036】
一方、前記高分子多孔支持体の平均気孔サイズ及び気孔度は、電気化学素子の用途に適すれば、特に制限されず、平均気孔サイズは0.01μm~50μm、または0.1μm~20μmであり、気孔度は5%~95%であり得る。前記気孔サイズ及び気孔度が前述した範囲である場合、高分子多孔支持体が抵抗で作用することを容易に防止することができ、高分子多孔支持体の機械的物性を容易に維持することができる。
【0037】
前記高分子多孔支持体の平均気孔サイズ及び気孔度は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター(Mercury porosimeter)、キャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometer)またはポロシメトリー分析装置(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp-II mini)を使用して流通式窒素ガス吸着法によってBET6点法で測定し得る。
【0038】
または、前記高分子多孔支持体の気孔度は、多孔支持体の密度(見かけ密度)と多孔支持体に含まれた材料の組成比と各成分の密度から多孔支持体の真密度(net density)を計算し、見かけ密度(apparent density)と真密度の差から多孔支持体の気孔度を計算して測定され得る。例えば、下記式1によって気孔度を算出することができる。
【0039】
[式1]
気孔度(体積%)={1-(見かけ密度/真密度)}×100
【0040】
前記式1における見かけ密度は、下記式2から算出され得る。
【0041】
[式2]
見かけ密度(g/cm3)=(多孔支持体の重量(g))/{(多孔支持体の厚さ(cm))×(多孔支持体の面積(cm2))}
【0042】
本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に無機物混成空隙層を備える。前記無機物混成空隙層は、高分子多孔支持体の一面または両面に形成され得る。
【0043】
前記無機物混成空隙層は、無機フィラーと、前記無機フィラーが互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(即ち、バインダー高分子が無機フィラー同士を連結及び固定)させるバインダー高分子を含み、前記バインダー高分子によって無機フィラーと高分子多孔支持体が結着した状態を維持できる。
【0044】
前記無機フィラーは、電気化学的に安定すれば、特に制限されない。即ち、本発明において使用可能な無機フィラーは、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+を基準にして0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されない。特に、無機フィラーとして誘電率の高い無機フィラーを使用する場合、液体電解質中の電解質塩、例えば、リチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0045】
前述した理由によって、本発明の一実施様態において、前記無機フィラーは誘電率定数が5以上、望ましくは10以上である高誘電率の無機フィラーを含み得る。誘電率定数が5以上である無機フィラーの非制限的な例には、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、SiO2、Y2O3、Al2O3、AlOOH、Al(OH)3、SiC、TiO2またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0046】
また、本発明の他の実施様態において、前記無機フィラーとしては、リチウムイオン伝達能力を有する無機フィラー、即ち、リチウム元素を含むが、リチウムを保存せず、かつリチウムイオンを移動させる機能を有する無機フィラーを使用し得る。リチウムイオン伝達能力を有する無機フィラーの非制限的な例には、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li2O-9Al2O3-38TiO2-39P2O5などのような(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.25P0.75S4などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li3Nなどのようなリチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4-Li2S-SiS2などのようなSiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-Li2S-P2S5などのようなP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0047】
本発明の一実施様態において、前記無機フィラーの平均粒径は0.01μm~1.5μmであり得る。前記無機フィラーの平均粒径が前述した範囲を満たす場合、均一な厚さ及び適切な気孔度を有する無機物混成空隙層の形成が容易になり、無機フィラーの分散性が良好であり、かつ所望のエネルギー密度を提供することができる。
【0048】
この際、前記無機フィラーの平均粒径はD50粒径を意味し、「D50粒径」は、粒径による粒子個数累積分布の50%地点における粒径を意味する。前記粒径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定し得る。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して粒子がレーザービームを通過するときに粒子サイズによる回折パターン差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の50%になる地点における粒子直径を算出することで、D50粒径を測定することができる。
【0049】
通常、ポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)の場合、ヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量が増加するほど、接着力は増加するが耐熱性が減少するという問題点が存在した。
【0050】
本発明の発明者は、ポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)が特定の温度範囲でtanδピークを有する場合、ヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量に関係なく、接着力と耐熱性とが共に優秀になることを見出して本発明を完成した。
【0051】
本明細書において、前記ポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)の反復単位の含量は、例えば、前記無機物混成空隙層中のHFP(ヘキサフルオロプロピレン)作用基の含量の測定によって測定され得る。例えば、前記無機物混成空隙層に対してフッ素原子核磁気共鳴分光法(Fluorine atomic Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy)でHFPの含量を確認することによって測定され得る。
【0052】
本発明の一具現例において、前記フッ素原子核磁気共鳴分光法による方法として、例えば、19F NMR(Bruker社、DRX-300)分析器を使用し、基準物質としてCFCl3を使用して、次のような方法によって測定し得る。例えば、先ず、測定対象の試料を重水素に置き換えられたアセトンに8wt%溶解する。重量平均分子量は、屈折率検出器と二つのPLgel-10μm Mixed-B columns(Polymer Laboratory)が取り付けられたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、high temperature PL 220、Waters)によって確認する。移動相溶媒としては、0.1MのLiBrが添加されたジメチルホルムアミドを使用し、遂行条件は80℃で1.0mL/分の流速で測定し得る。標準試料は、例えば、平均分子量2,000g/mol~2,000,000g/molの範囲を有するポリスチレンを使用し得る。
【0053】
本発明の他の具現例において、前記フッ素原子核磁気共鳴分光法による方法として、例えば、376.3MHzでユニティ(Unity)400分光光度計を使用し得る。例えば、スペクトルは、50℃重水素ジメチルホルムアミドで8.0マイクロ秒の励起(excitation)パルス幅、10秒の再循環遅滞、または50℃重水素ジメチルスルホキシドで6.0マイクロ秒の励起パルス幅、5秒の再循環遅滞または50℃重水素アセトンで8.0マイクロ秒の励起パルス幅、20秒の再循環遅滞によって得られる。
【0054】
前記バインダー高分子は、動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)による測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン) (poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene))を第1バインダー高分子として含む。
【0055】
本明細書において、前記tanδとは、貯蔵弾性率(storage modulus)E’に対する損失弾性率(loss modulus)(E’’)の比を意味し、前記tanδピークの大きさは、試料に存在する無定形(amorphous)領域の量を意味する。
【0056】
前記「tanδピーク」とは、x軸を温度にし、y軸をtanδにしてこれらの関係を示したグラフにおいて、前記グラフに対する接線の勾配が正(+)から負(-)に変わる変曲点を意味する。または、前記グラフに対する接線の勾配が0になる地点を意味する。この際、前記tanδピークは、複数のtanδピークのうち二番目のピークを指し得る。
【0057】
前記第1バインダー高分子は、前述した温度範囲でtanδピークを有することで、接着力が優秀であり、かつ高温における耐熱性が優秀である。例えば、ヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量と関係なく耐熱性が優秀であり得る。ヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量が増加しても耐熱性が優秀であり得る。
【0058】
これによって、前記第1バインダー高分子を含む本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜の高温における安全性が改善されることが可能である。例えば、130℃で1時間放置した後の分離膜の熱収縮率が機械方向(Machine Direction;MD)及び直角方向(Transverse Direction;TD)において各々25%以下、または20%以下、または15%以下、または10%以下、または5%以下であり得る。
【0059】
また、150℃で30分間放置した後の分離膜の熱収縮率が、機械方向(MD)及び直角方向(TD)において各々55%以下、または50%以下、または45%以下、または40%以下、または35%以下、または30%以下、または25%以下、または20%以下、または15%以下、または10%以下、または5%以下であり得る。
【0060】
ここで、前記「機械方向(Machine Direction)」とは、分離膜が連続生産されるときの進行方向または製造された分離膜が巻き取られる方向であって、分離膜の長手方向を指し、「直角方向(Transverse Direction)」とは、機械方向の横方向、即ち、分離膜の連続生産時における進行方向に垂直な方向または製造された分離膜が巻き取られる方向である分離膜の長手方向に垂直な方向を指す。
【0061】
第1バインダー高分子が前述した温度範囲でtanδピークを有さない場合、例えば、17℃~28℃でtanδピークを有する場合には、ヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量が増加するほど接着力は増加するが、耐熱性が弱くなる。
【0062】
本発明の一実施様態において、前記第1バインダー高分子は、動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)による測定時、-15℃以上、または-13℃以上、または-12.12℃以上、または-12℃以上、または-10℃以上、または-9.68℃以上、または-9℃以上、または-8.74℃であり、かつ-6℃以下、または-7℃以下、または-8℃以下、または-8.74℃以下、または-9℃以下、または-9.68℃以下、または-12℃以下、または-12.12℃以下で、tanδピークを有し得る。
【0063】
前記動的機械分析は、高分子試片に振動する力または変形を加えて弾性率(Modulus)とエネルギー損失(damping)を温度や周波数によって測定する分析法である。
【0064】
本発明の一実施様態において、第1バインダー高分子を190℃で加圧して厚さ0.5mmのバインダー試片を製作した後、動的機械分析を用いて前記バインダー試片を-80℃で10分間維持した後、5℃/分の速度で140℃まで常温しながら貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’の割合を測定して前記tanδ値を測定し得る。
【0065】
本発明の一実施様態において、前記動的機械分析は、TA Instruments社のDMA Q800を用いて測定され得る。
【0066】
本発明の一実施様態において、前記第1バインダー高分子の溶融温度が155℃以上、または160℃以上、または165℃以上、または165.36℃以上、または166℃以上、または166.31℃以上、または166.37℃以上であり得る。また、前記第1バインダー高分子の溶融温度が200℃以下、190℃以下、または180℃以下、または170℃以下、または166.37℃以下、または166.31℃以下、または166℃以下、または165.36℃以下であり得る。前記第1バインダー高分子は、動的機械分析による測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有しながら、前述した範囲の溶融温度を有し得る。前記第1バインダー高分子の溶融温度が前述した範囲を満たす場合、前記第1バインダー高分子を含む本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜が、高温における耐熱性の面でより有利になる。例えば、高温でより優秀な熱収縮率を有し得る。
【0067】
本明細書の全体において、バインダー高分子の溶融温度は、示差走査熱量計(Differential scanning calorimeter;DSC)を用いて測定し得る。前記示差走査熱量計は、試料と基準物質の温度を高めるのに必要な熱量差を温度の関数として測定する熱分析装置である。
【0068】
本発明の一実施様態において、バインダー高分子の溶融温度は、バインダー高分子を25℃で200℃まで10℃/分で加熱し、200℃で10分間放置した後、25℃まで10℃/分で冷却してから、25℃で10分間放置した後、200℃まで10℃/分でさらに加熱したときの、155℃~180℃範囲における示差走査熱量計の曲線ピークの温度から計算し得る。
【0069】
本発明の一実施様態において、前記第1バインダー高分子のヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量が、ビニリデンフルオライド反復単位の含量とヘキサフルオロプロピレン反復単位の含量の合計100重量%を基準にして4重量%以上、7重量%以上、または9重量%以上、または10重量%以上、または11重量%以上、または13重量%以上、または15重量%以上、または17重量%以上、または18重量%以上、または18.1重量%以上、または18.5重量%以上であり、かつ22重量%以下、または20重量%以下、または19重量%以下、または18.5重量%以下、または18.1重量%以下、または18重量%以下、または17重量%以下、または15重量%以下、または13重量%以下、または11重量%以下、または10重量%以下であり得る。前記第1バインダー高分子が前述した含量のヘキサフルオロプロピレン反復単位を含む場合、電極との接着力確保により有利になり得る。
【0070】
本発明の一実施様態において、前記第1バインダー高分子は、γ型の結晶構造(γ-crystal form)を有し得る。
【0071】
本明細書において、γ型の結晶構造とは、trans-trans-trans-gauche構造を有する結晶構造を指す。前記第1バインダー高分子がγ型の結晶構造を有する場合、trans-trans-trans-gauche構造を有するので、第1バインダー高分子がより優秀な耐熱性を有することが容易である。即ち、前記第1バインダー高分子は、動的機械分析による測定時、-18℃~-5℃でtanδピークを有し、かつγ型の結晶構造を有することができる。
【0072】
前記第1バインダー高分子がγ型結晶構造を有するか否かは、広角X線回折(Wide angle X-ray diffraction;WAXS)で測定して確認し得る。前記第1バインダー高分子がγ型結晶構造を有する場合、広角X線回折による測定時、約20.73゜の2θポジション付近で回折ピーク(diffraction peak)が相対的に、例えばα型結晶構造やβ型結晶構造に比べて広く観察され、約20.73°の2θポジション付近でショルダーピーク(shoulder peak)が示される。また、2θポジションが17.7゜、18.44゜、20.04゜、20.73゜、26.72゜、27.70゜である場合の回折ピークの相対的な割合が各々46、62、100、52、15、8である。ここで、 回折ピークの相対的な割合は、第1バインダー高分子の結晶化程度を示す。
【0073】
本発明の一実施様態において、前記バインダー高分子が前記第1バインダー高分子以外に第2バインダー高分子をさらに含み得る。
【0074】
前記第2バインダー高分子は、動的機械分析による測定時、-11℃以上、または-9℃以上、または-7℃以上、または-6.26℃以上であり、かつ0℃以下、または-2℃以下、または-4℃以下、または-6℃以下、または-6.26℃以下でtanδピークを有するポリ(ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン)(poly(vinylidene fluoride-co-chlorotrifluoroethylene))であり得る。この際、前記tanδピークは、複数のtanδピークのうち二番目のピークであり得る。前記第2バインダー高分子が前述した温度範囲でtanδピークを有することによって、高温における耐熱性が優秀になることが可能である。
【0075】
そのため、前記第1バインダー高分子と第2バインダー高分子を共に含む場合、本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜の高温における安全性をより容易に改善することができる。
【0076】
また、本発明の一実施様態において、前記第1バインダー高分子と第2バインダー高分子が共に含まれる場合、第1バインダー高分子は、分離膜と電極との間の界面側へ移動して、電気化学素子用分離膜の電極との接着力を確保する役割を果たし、第2バインダー高分子は、高分子多孔支持体と無機物混成空隙層との接着力を確保する役割を果たし得る。
【0077】
ポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)とポリ(ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン)の相分離速度が相異なることによって、第1バインダー高分子は、分離膜と電極との間の界面側へ移動して電気化学素子用分離膜の電極との接着力を確保する役割を果たし、第2バインダー高分子は、高分子多孔支持体と無機物混成空隙層との接着力を確保する役割を果たし得る。
【0078】
無機物混成空隙層にバインダー高分子を含む分離膜を製造した後、前記分離膜を電池に適用する過程で前記無機物混成空隙層に含まれたバインダー高分子が電解液によって溶出するなどのバインダー高分子の消失が発生し得る。特に、電解液によるバインダー高分子の溶出は、電池内部の温度が上昇する場合にさらに悪化する。通常、電池を製造した後、60℃以上の温度条件でエイジング(aging)が行われるが、前記エイジングが行われる間に無機物混成空隙層中のバインダー高分子が電解液によって溶出され、無機物混成空隙層の結着力が低下して、無機物混成空隙層が高分子多孔支持体から剥離するか、または無機物混成空隙層中の無機フィラーが脱離する問題が発生し得る。
【0079】
本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、前記第2バインダー高分子を含むことでバインダー高分子の溶出が減少することが可能である。これによって、無機フィラーの脱離を容易に防止することができる。
【0080】
本発明の一実施様態において、前記第2バインダー高分子の溶融温度が155℃以上、または160℃以上、または165℃以上、または166℃以上、または166.6℃以上であり得る。また、前記第2バインダー高分子の溶融温度が200℃以下、190℃以下、または180℃以下、または170℃以下、または166.6℃以下であり得る。前記第2バインダー高分子は、動的機械分析による測定時、-11℃~0℃でtanδピークを有し、かつ前述した範囲の溶融温度を有し得る。前記第2バインダー高分子の溶融温度が前述した範囲を満たす場合、前記第2バインダー高分子を含む本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜が高温における耐熱性の面でより有利になることが可能である。例えば、高温でさらに優秀な熱収縮率を有し得る。
【0081】
本発明の一実施様態において、前記第2バインダー高分子のクロロトリフルオロエチレン反復単位の含量が、ビニリデンフルオライド反復単位の含量とクロロトリフルオロエチレン反復単位の含量の合計100重量%を基準にして、10重量%以上、または15重量%以上、または17重量%以上、または20重量%以上であり、かつ30重量%以下、または25重量%以下、または22重量%以下、または20重量%以下であり得る。前記第2バインダー高分子が、動的機械分析による測定時、-11℃~0℃でtanδピークを有し、前述した含量のクロロトリフルオロエチレン反復単位を有するポリ(ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン)を含み得る。前記第2バインダー高分子が前述した含量の反復単位を含む場合、電極との接着力をより有利に確保することができる。
【0082】
本発明の一実施様態において、前記第1バインダー高分子と第2バインダー高分子の重量比が、50:50~95:5、または86:14~80:20、または84:16~80:20、または82:18~80:20であり得る。前記第1バインダー高分子と第2バインダー高分子の重量比が前述した範囲を満たす場合、電極との接着力を確保し、電解液への含浸時、高温におけるバインダーの溶出をより容易に抑制することができる。また、微細空隙(microvoid)の減少にも有利になる。
【0083】
本発明の一実施様態において、前記無機フィラーと前記バインダー高分子の重量比は、無機物混成空隙層の厚さ、気孔サイズ及び気孔度を考慮して決定するが、50:50~99.9:0.1、または50:50~80:20、または80:20~99.9:0.1、または95:5~99.9:0.1であり得る。前記無機フィラーとバインダー高分子の重量比が前述した範囲である場合、無機フィラーの間に形成される空間を充分に確保して無機物混成空隙層の気孔サイズ及び気孔度をより容易に確保することができる。また、無機フィラー同士と、無機フィラーと高分子多孔支持体との接着力も容易に確保することができる。
【0084】
本発明の一実施様態において、前記無機物混成空隙層は、分散剤及び/または増粘剤のような添加剤をさらに含み得る。本発明の一実施様態において、前記添加剤は、クエン酸(citric acid)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl cellulose;HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose;HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(ethyl hydroxyethyl cellulose;EHEC)、メチルセルロース(methyl cellulose;MC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、ヒドロキシアルキルメチルセルロース(hydroxyalkyl methyl cellulose)、シアノエチレンポリビニルアルコール、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0085】
本発明の一実施様態において、前記無機物混成空隙層は、前記無機フィラーが充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これによって無機フィラーの間にインタースティシャルボリューム(interstitial volumes)が形成され、前記無機フィラー同士の間のインタースティシャルボリュームは空間になって気孔を形成する構造を備え得る。
【0086】
無機フィラー、第1バインダー高分子及び前記第1バインダー高分子に対する溶媒を含む無機物混成空隙層形成用のスラリーを製造し、それを前記高分子多孔支持体の少なくとも一面にコーティング及び乾燥して無機物混成空隙層を形成し得る。
【0087】
前記第1バインダー高分子に対する溶媒は前記第2バインダー高分子をさらに含む場合を考慮して第2バインダー高分子に対する溶媒としても作用し得る。
【0088】
本発明の一実施様態において、前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone)、アセトン(acetone)、メチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone)、ジメチルホルムアミド(Diemthylformaide)、ジメチルアセトアミド(Dimethyl acetamide)、またはこれらの二つ以上を含み得る。
【0089】
前記無機物混成空隙層形成用のスラリーは、前記第1バインダー高分子、または前記第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を、前記第1バインダー高分子に対する溶媒に溶解または分散させた後、無機フィラーを添加して、それを分散させて製造し得るが、前記スラリーの製造方法はこれに限定されない。
【0090】
本発明の一実施様態において、前記無機物混成空隙層形成用のスラリーが高分子多孔支持体の少なくとも一面にコーティングされた後、当業界における公知の方法によって前記第1バインダー高分子に対する非溶媒を用いて相分離する段階をさらに含み得る。前記相分離段階は、前記無機物混成空隙層中に気孔構造を形成するために行われ得る。前記相分離は、加湿相分離あるいは浸漬相分離方式で行われ得る。
【0091】
前記相分離のうち、加湿相分離について説明する。
【0092】
先ず、加湿相分離は、15℃~70℃範囲の温度または20℃~50℃範囲の温度及び15%~80%範囲の相対湿度または30%~50%範囲の相対湿度の条件で行い得る。前記無機物混成空隙層形成用のスラリーが乾燥過程を経ながら当業界における公知の相分離(vapor-induced phase separation)現象によって相転移特性を有し得る。
【0093】
前記加湿相分離のために、前記第1バインダー高分子に対する非溶媒が気体状態で導入され得る。前記第1バインダー高分子に対する非溶媒は、第1バインダー高分子を溶解せず、前記第1バインダー高分子に対する溶媒と部分相溶性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、25℃条件で第1バインダー高分子の溶解度が5重量%未満であるものが使用され得る。
【0094】
前記第1バインダー高分子に対する非溶媒は、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒であってもよい。即ち、第2バインダー高分子を溶解せず、例えば、25℃条件で第2バインダー高分子の溶解度が5重量%未満であるものが使用され得る。
【0095】
例えば、前記第1バインダー高分子に対する非溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはこれらの二種以上であり得る。
【0096】
以下、前記相分離のうち浸漬相分離について説明する。
【0097】
前記無機物混成空隙層形成用のスラリーを前記高分子多孔支持体の少なくとも一面にコーティングした後、前記第1バインダー高分子に対する非溶媒を含む凝固液に所定時間浸漬する。これによって、コーティングされた無機物混成空隙層スラリーで相分離現象が誘発されながら第1バインダー高分子を固化させる。このような工程で多孔化した無機物混成空隙層が形成される。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥する。前記乾燥は、当業界における公知の方法を用いてもよく、使用された第1バインダー高分子に対する溶媒の蒸気圧を考慮した温度範囲でオーブンまたは加熱式チャンバを使用してバッチ式または連続式で可能である。前記乾燥は、前記スラリー中に存在する第1バインダー高分子に対する溶媒をほとんど除去することであり、これは生産性などを考慮して可能な限り速いことが望ましく、例えば、1分以下または30秒以下の時間で行われ得る。
【0098】
前記凝固液としては、前記第1バインダー高分子に対する非溶媒のみを使用するか、または前記第1バインダー高分子に対する非溶媒と前記第1バインダー高分子に対する溶媒との混合溶媒を使用し得る。前記第1バインダー高分子に対する非溶媒と前記第1バインダー高分子に対する溶媒との混合溶媒を使用する場合には、良好な多孔構造を形成し、生産性を向上させる観点で、凝固液100重量%に対して前記第1バインダー高分子に対する非溶媒の含量が50重量%以上であり得る。
【0099】
本発明の一実施様態において、前記無機物混成空隙層の平均気孔サイズは、0.001μm~10μmであり得る。前記無機物混成空隙層の平均気孔サイズは、キャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometer)によって測定し得る。キャピラリーフローポロメトリーは、厚さ方向において最も小さい気孔の直径が測定される方式である。そのため、キャピラリーフローポロメトリーによって無機物混成空隙層のみの平均気孔サイズを測定するためには、無機物混成空隙層を高分子多孔支持体から分離し、分離した無機物混成空隙層を支持できる不織布で囲んだ状態で測定する必要があり、この際、前記不織布の気孔サイズは、無機物混成空隙層の気孔サイズよりも遥かに大きい必要がある。
【0100】
本発明の一実施様態において、前記無機物混成空隙層の気孔度(porosity)は、5%~95%、または10%~95%、または20%~90%、または30%~80%であり得る。前記気孔度は、前記無機物混成空隙層の厚さ、横及び縦を用いて計算した体積から、前記無機物混成空隙層の各構成成分の重さと密度から換算した体積を減算(subtraction)した値になる。
【0101】
前記無機物混成空隙層の気孔度は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター(Mercury porosimeter)、キャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometer)またはポロシメトリー分析装置(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp-II mini)を用いて流通式窒素ガス吸着法によってBET6点法で測定し得る。
【0102】
本発明の一実施様態において、前記無機物混成空隙層の厚さが10μm以下、または8μm以下、または6μm以下、または5μm以下、または4μm以下であり、かつ3μm以上、または4μm以上であり得る。ここで、前記無機物混成空隙層の厚さとは、高分子多孔支持体の両面の各々における無機物混成空隙層の厚さを合わせた値を指す。前記無機物混成空隙層の厚さが前述した範囲を満たす場合、電極との接着力が優秀であり、かつ電池のセル強度がさらに増加し得る。
【0103】
本発明の一実施様態による電気化学素子用の分離膜は、動的機械分析による測定時、-18℃~-8℃でtanδピークを有する第1バインダー高分子を含むことで、高温における安全性が改善され、電極との接着力が優秀になる。
【0104】
本発明の一実施様態において、前記電気化学素子用の分離膜を130℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD)及び直角方向(TD)において各々25%以下、または20%以下であり得る。
【0105】
また、150℃で30分間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD)及び直角方向(TD)で各々55%以下、または50%以下であり得る。
【0106】
本発明の一実施様態において、前記電気化学素子用の分離膜が40gf/25mm以上、または50gf/25mm以上、または60gf/25mm以上であり、かつ70gf/25mm以下の電極接着力を有し得る。
【0107】
本発明の一実施様態において、前記電極接着力は、100μmのPETフィルムの間に分離膜と電極を挟んだ後、水平ラミネータで温度60℃、1,000kgfの圧力で1秒間押圧して互いに接着した後、接着された分離膜に測定速度300mm/分で180゜方向へ力を加えたときに分離膜が分離されるのに必要な力から測定し得る。
【0108】
例えば、分離膜と電極各1枚を対向して重ね合った後、100μmのPETフィルムの間に挟んだ後、60℃の水平ラミネータを1,000kgf/cm2の圧力で1秒間加熱しながら通過させて電極と分離膜を互いに接着させ、接着された電極と分離膜を、電極面が付着されるように両面テープが貼り付けられたガラスの上に付着した後、分離膜の末端部をUTM装備(LLOYD Instrument LF Plus)に装着した後、測定速度300mm/分で180゜方向へ力を加えて、接着された分離膜が分離するのに必要な力から分離膜の電極接着力を測定し得る。
【0109】
前記電気化学素子用の分離膜を正極と負極の間に介在して電気化学素子を製造し得る。
【0110】
本発明の電気化学素子は、電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的に例を挙げると、全種類の一次、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタ(capacitor)などがある。
【0111】
特に、前記電気化学素子がリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池であり得る。
【0112】
本発明の電気化学素子用の分離膜と共に適用される電極は特に制限されず、当業界に知られた通常の方法によって電極活物質、導電材、及びバインダーを含む電極活物質層が電流集電体に結着した形態に製造し得る。
【0113】
前記電極活物質のうち正極活物質の非制限的な例には、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や一つまたはそれ以上の遷移金属に置き換えられた化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、x=0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O5、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1)またはLi2Mn3MO5(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;科学式Liの一部がアルカリ土類金属イオンに置き換えられたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらのみに限定されない。
【0114】
負極活物質の非制限的な例には、従来に電気化学素子の負極に使用されていた通常の負極活物質が使用可能であり、特に、リチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性炭(activated carbon)、グラファイト(graphite)またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが使用され得る。
【0115】
正極電流集電体の非制限的な例には、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどが挙げられ、負極電流集電体の非制限的な例には、銅、金、ニッケルまたは銅合金またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどが挙げられる。
【0116】
本発明の一実施様態において、負極及び正極で使用される導電材は、通常、各々の活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0117】
本発明の一実施様態において、負極及び正極で使用されるバインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助かる成分であって、通常、各々の活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このようなバインダーの例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、でん粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0118】
本発明の一実施様態において、前記電気化学素子は電解液を含み、前記電解液は、有機溶媒とリチウム塩を含むものであり得る。また、前記電解液として、有機固体電解質、または無機固体電解質などが使用され得る。
【0119】
前記有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-オキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラハイドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0120】
前記リチウム塩は、前記有機溶媒に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0121】
また、前記電解液に、充放電特性、難燃性などの改善のために、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加され得る。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭酸ガスをさらに含んでもよい。
【0122】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0123】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiのチッ化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0124】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池の製造工程における適切な段階で行われ得る。即ち、電池の組立前または電池組立の最終段階などで適用され得る。
【0125】
本発明の一実施様態において、前記電気化学素子用の分離膜を電池に適用する工程としては、通常の工程である巻取(winding)以外にも、分離膜と電極の積層(lamination、stack)及び折畳み(folding)工程が可能である。
【0126】
本発明の一実施様態において、前記電気化学素子用の分離膜は、電気化学素子の正極と負極の間に介在され得、複数のセルまたは電極を集合して電極組立体を構成するとき、隣接するセルまたは電極の間に介在され得る。前記電極組立体は、単なるスタック型、ゼリーロール型、スタック-フォールディング型、ラミネーション-スタック型などの多様な構造を有し得る。
【0127】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は他の多様な形態に変更可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明が属する分野における平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0128】
以下、実施例及び比較例において、HFPの含量は、376.3MHzでユニティ(Unity)400分光光度計を使用し、スペクトルは、50℃重水素ジメチルホルムアミドで8.0マイクロ秒の励起(excitation)パルス幅、10秒の再循環遅滞によって得られた値を示した。
【0129】
実施例1
高分子多孔支持体として、厚さ9μmのエチレン高分子多孔性フィルムを準備した。
【0130】
無機フィラーとしてAl2O3(D50:300nm)と、第1バインダー高分子としてポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene))(Kynar3121-50、DSCで測定したTm:166.31℃、HFP含量:10重量%)と、第2バインダー高分子としてポリ(ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン)(poly(vinylidene fluoride-co-chlorotrifluoroethylene))(Solvay社、solef32008、DSCで測定したTm:166.6℃、CTFE含量:20重量%)と、を80:16:4の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加した後、ボールミル法を用いて無機フィラーを破砕及び分散させて無機物混成空隙層形成用のスラリーを製造した。
【0131】
前記無機物混成空隙層形成用のスラリーを前記高分子多孔支持体の少なくとも両面にコーティングした後、水とNMPが6:4の重量比に維持される凝固液に浸漬して浸漬相分離を行った。その後、多段階にかけて水洗した後、乾燥して分離膜を製造した。
【0132】
実施例2
第1バインダー高分子としてポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(Kynar3121-50)の代わりに、ポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(Kynar3031-10、DSCで測定したTm:166.37℃、HFP含量:18.5重量%)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0133】
実施例3
第1バインダー高分子としてポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(Kynar3121-50)の代わりに、ポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(Kynar3031-50、DSCで測定したTm:165.36℃、HFP含量:18.1重量%)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0134】
比較例1
第1バインダー高分子としてポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(Kynar3121-50)の代わりに、ポリ(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン)(Solef20808、DSCで測定したTm:151.53℃、HFP含量:8重量%)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0135】
評価例1:バインダー高分子のtanδピーク温度分析
実施例1~3及び比較例1で使用した第1バインダー高分子の温度とtanδの関係を
図1に示した。
【0136】
実施例1~3及び比較例1で使用した第1バインダー高分子を190℃で加圧して厚さ0.5mmのバインダー試片で製作した後、TA Instruments社のDMA Q800を使用して前記バインダー試片を-80℃で10分間保持した後、5℃/分の速度で140℃まで常温して貯蔵弾性率(storage modulus)E’と損失弾性率(loss modulus)E’’の割合を測定してtanδ値を測定した。
【0137】
また、実施例1で使用した第2バインダー高分子の温度とtanδの関係を
図2に示した。
【0138】
実施例1で使用した第2バインダー高分子を190℃で加圧して厚さ0.5mmのバインダー試片に製作した後、TA Instruments社のDMA Q800を使用して前記バインダー試片を-80℃で10分間保持した後、5℃/分の速度で140℃まで常温して貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’の割合を測定してtanδ値を測定した。
【0139】
図1から確認できるように、実施例1で使用した第1バインダー高分子は、-12.12℃で二番目のtanδピークを有することを確認することができた。また、実施例2で使用した第1バインダー高分子は、-9.68℃で二番目のtanδピークを有することを確認することができた。実施例3で使用した第1バインダー高分子は、-8.74℃で二番目のtanδピークを有することを確認することができた。
【0140】
一方、比較例1で使用した第1バインダー高分子は、約20℃で二番目のtanδピークを有することを確認することができた。
【0141】
また、
図2から確認できるように、実施例1で使用した第2バインダー高分子は、-6.26℃で二番目のtanδピークを有することを確認することができた。
【0142】
評価例2:第1バインダー高分子の結晶構造分析
実施例1~3及び比較例1で使用した第1バインダー高分子の結晶構造を広角X線回折(Wide angle X-ray diffraction;WAXS)を用いて測定し、各々
図3~
図6に示した。
【0143】
図3~
図5において、広角X線回折(WAXS)で測定したとき、実施例1~3で使用した第1バインダー高分子は、2θポジションが17.7゜、18.44゜、20.04゜、20.73゜、26.72゜、27.70゜である場合において回折ピーク強度の相対的な割合が各々46、62、100、52、15、8であった。また、20.73゜の2θポジション付近で回折ピークが相対的に広く観察されており、20.73゜付近でショルダーピークが示されることを確認することができた。
【0144】
このことから、実施例1~3で使用した第1バインダー高分子がγ型の結晶構造を有することを確認することができた。
【0145】
一方、
図6において、広角X線回折で測定したとき、17.65゜、18.43゜、19.93゜、21.29゜、26.75゜、32.05゜の2θポジションにおける回折ピークの強度の相対的な割合が、各々52、64、100、17、70、41であった。また、20.73゜の2θポジション付近で回折ピークが相対的に狭く観察されており、20.73゜付近でショルダーピークが示されないことを確認することができた。
【0146】
このことから、比較例1で使用した第1バインダー高分子がγ型の結晶構造を有さないことを確認することができた。
【国際調査報告】