(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】がんを治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240730BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240730BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240730BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240730BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240730BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P35/00 ZNA
A61P17/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P15/08
A61P1/00
A61P35/04
A61P13/12
A61P13/10
A61P13/02
A61P37/04
A61K39/395 N
A61K39/395 D
C07K16/46
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504960
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 US2022074279
(87)【国際公開番号】W WO2023010095
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カオ, ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】マーケルト, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア, クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】メン, レイモンド ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ミュッケ, メルリンド
(72)【発明者】
【氏名】タイヒグレーバー, フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びリンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)を標的とする二重特異性抗体を対象に投与することによって、対象におけるがんを治療することにおける使用のための方法及び組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含み、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
がんが固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がんが、局所進行性又は転移性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
がんが、皮膚がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、又は食道がんである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
皮膚がんが、黒色腫である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
皮膚がんが、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
黒色腫が、
(a)測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫;
(b)切除不能なステージIIIの黒色腫;又は
(c)ステージIVの黒色腫
であり、場合により、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
肝臓がんが、肝細胞癌(HCC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
肺がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
腎臓がんが、腎細胞癌(RCC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
膀胱がんが、転移性尿路上皮癌(mUC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
乳がんが、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
食道がんが、食道扁平上皮癌(ESCC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
黒色腫を有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含み、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含み、ここで、黒色腫は、
(a)切除不能なステージIIIの黒色腫であるか;又は
(b)ステージIVの黒色腫である、方法。
【請求項15】
対象が眼内黒色腫を有していない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
肝臓がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含み、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む、方法。
【請求項17】
肝臓がんが、肝細胞癌(HCC)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
HCCが、局所進行性、転移性、及び/又は切除不能である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象が、全身性抗がん療法を以前に受けていない、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さが21日間である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
方法が、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に二重特異性抗体を対象に投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
方法が、二重特異性抗体を対象に静脈内投与することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
方法が、ベバシズマブを約15mg/kgの用量で3週間ごとに対象に投与することをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さが21日間であり、前記方法が、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目にベバシズマブを対象に投与することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ベバシズマブが静脈内投与される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
対象が、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
対象が、免疫調節剤を含む抗がん療法で以前に治療されていない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
対象が、抗LAG3療法で以前に治療されていない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;
(ii)アミノ酸配列GGRを含むHVR-H2配列;及び
(iii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに
(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;
(ii)アミノ酸配列RSSを含むHVR-L2配列;及び
(iii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメイン
を含む、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;
(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H2配列;及び
(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに
(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L2配列;及び
(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメイン
を含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第1の抗原結合ドメインが、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第2の抗原結合ドメインが、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
二重特異性抗体が完全長抗体である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、IgGであるFcドメインを含み、任意選択で、IgG FcドメインはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
Fcドメインが、Fc受容体への結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含み、任意選択で、Fc受容体はFcγ受容体である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(a)アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのFcドメイン;及び/又は
(b)Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含むFcドメイン
を含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
Fcドメインの第1のサブユニットが、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットが、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、Fcドメイン、第1の抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及び第2の抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体のFab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられており、任意選択で、第1のFab断片において可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記Fab断片のうちの1つの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、任意選択で、第2のFab断片の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
二重特異性抗体が、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、請求項29~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
二重特異性抗体が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
二重特異性抗体が、腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成する、請求項2~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
対象がヒトである、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
がんを有する対象を治療する方法における使用のための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体であって、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体。
【請求項45】
がんが固形腫瘍である、請求項44に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項46】
がんが、局所進行性又は転移性である、請求項44又は45に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項47】
がんが、皮膚がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、又は食道がんである、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項48】
皮膚がんが黒色腫である、請求項47に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項49】
皮膚がんが、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫である、請求項47又は48に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項50】
黒色腫が、
(a)測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫;
(b)切除不能なステージIIIの黒色腫;又は
(c)ステージIVの黒色腫
であり、場合により、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない、請求項48に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項51】
肝臓がんが、肝細胞癌(HCC)である、請求項47に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項52】
肺がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項47に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項53】
腎臓がんが、腎細胞癌(RCC)である、請求項47に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項54】
膀胱がんが、転移性尿路上皮癌(mUC)である、請求項47に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項55】
乳がんが、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、請求項47に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項56】
食道がんが、食道扁平上皮癌(ESCC)である、請求項47に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項57】
黒色腫を有する対象を治療する方法における使用のための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体であって、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含み、黒色腫は、
(a)切除不能なステージIIIの黒色腫であるか;又は
(b)ステージIVの黒色腫である、
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体。
【請求項58】
患者は眼内黒色腫を有していない、請求項57に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項59】
肝臓がんを有する対象を治療するための方法における使用のための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体であって、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体。
【請求項60】
肝臓がんが、HCCである、請求項59に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項61】
HCCが、局所進行性、転移性、及び/又は切除不能である、請求項60に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項62】
対象が、全身性抗がん療法を以前に受けていない、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項63】
1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さが21日間である、請求項44~62のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項64】
方法が、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に二重特異性抗体を対象に投与することを含む、請求項63に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項65】
方法が、二重特異性抗体を対象に静脈内投与することを含む、請求項44~64のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項66】
方法が、ベバシズマブを約15mg/kgの用量で3週間ごとに対象に投与することをさらに含む、請求項44~65のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項67】
1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さが21日間であり、前記方法が、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目にベバシズマブを対象に投与することを含む、請求項66に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項68】
ベバシズマブが静脈内投与される、請求項66又は67に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項69】
対象が、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない、請求項44~68のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項70】
対象が、免疫調節剤を含む抗がん療法で以前に治療されていない、請求項44~69のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項71】
対象が、抗LAG3療法で以前に治療されていない、請求項44~70のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項72】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;
(ii)アミノ酸配列GGRを含むHVR-H2配列;及び
(iii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに
(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;
(ii)アミノ酸配列RSSを含むHVR-L2配列;及び
(iii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメイン
を含む、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む、請求項44~71のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項73】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;
(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H2配列;及び
(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに
(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L2配列;及び
(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメイン
を含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、請求項72に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項74】
第1の抗原結合ドメインが、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第2の抗原結合ドメインが、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項72又は73に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項75】
二重特異性抗体が完全長抗体である、請求項72~74のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項76】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、IgGであるFcドメインを含み、任意選択で、IgG FcドメインはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである、請求項75に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項77】
Fcドメインが、Fc受容体への結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含み、任意選択で、Fc受容体はFcγ受容体である、請求項76に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項78】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(a)アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのFcドメイン;及び/又は
(b)Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含むFcドメイン
を含む、請求項72~77のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項79】
Fcドメインの第1のサブユニットが、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットが、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む、請求項76~78のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項80】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、Fcドメイン、第1の抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及び第2の抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む、請求項72~79のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項81】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体のFab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられており、任意選択で、第1のFab断片において可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている、請求項80に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項82】
前記Fab断片のうちの1つの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、任意選択で、第2のFab断片の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項80又は81に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項83】
二重特異性抗体が、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、請求項44~82のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項84】
二重特異性抗体が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、請求項83に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項85】
二重特異性抗体が、腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成する、請求項44~84のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項86】
対象がヒトである、請求項44~85のいずれか一項に記載の方法における使用のための二重特異性抗体。
【請求項87】
がんを有する対象を治療するための医薬の製造における、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用であって、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該二重特異性抗体は、3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与されるものである、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用。
【請求項88】
がんが固形腫瘍である、請求項87に記載の使用。
【請求項89】
がんが、局所進行性又は転移性である、請求項87又は88に記載の使用。
【請求項90】
がんが、皮膚がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、又は食道がんである、請求項87~89のいずれか一項に記載の使用。
【請求項91】
皮膚がんが、黒色腫である、請求項90に記載の使用。
【請求項92】
皮膚がんが、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫である、請求項90又は91に記載の使用。
【請求項93】
黒色腫が、
(a)測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫;
(b)切除不能なステージIIIの黒色腫;又は
(c)ステージIVの黒色腫
であり、場合により、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない、請求項91に記載の使用。
【請求項94】
肝臓がんが、肝細胞癌(HCC)である、請求項90に記載の使用。
【請求項95】
肺がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項90に記載の使用。
【請求項96】
腎臓がんが、腎細胞癌(RCC)である、請求項90に記載の使用。
【請求項97】
膀胱がんが、転移性尿路上皮癌(mUC)である、請求項90に記載の使用。
【請求項98】
乳がんが、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、請求項90に記載の使用。
【請求項99】
食道がんが、食道扁平上皮癌(ESCC)である、請求項90に記載の使用。
【請求項100】
黒色腫を有する対象を治療するための医薬の製造における、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用であって、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該二重特異性抗体は、3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与されるものであり、黒色腫は、(a)切除不能なステージIIIの黒色腫であるか;又は(b)ステージIVの黒色腫である、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用。
【請求項101】
対象が眼内黒色腫を有していない、請求項100に記載の使用。
【請求項102】
肝臓がんを有する対象を治療するための医薬の製造における、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用であって、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該二重特異性抗体は、3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与されるものである、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用。
【請求項103】
肝臓がんが、HCCである、請求項102に記載の使用。
【請求項104】
HCCが、局所進行性、転移性、及び/又は切除不能である、請求項103に記載の使用。
【請求項105】
対象が、全身性抗がん療法を以前に受けていない、請求項102~104のいずれか一項に記載の使用。
【請求項106】
1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さが21日間である、請求項87~105のいずれか一項に記載の使用。
【請求項107】
二重特異性抗体が、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に対象に投与されるものである、請求項106に記載の使用。
【請求項108】
二重特異性抗体が対象に静脈内投与されるものである、請求項87~107のいずれか一項に記載の使用。
【請求項109】
ベバシズマブが、3週間ごとに約15mg/kgの用量で対象に投与されるものである、請求項87~108のいずれか一項に記載の使用。
【請求項110】
1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さが21日間であり、ベバシズマブが1回又は複数回の投薬のそれぞれの1日目に対象に投与されるものである、請求項109に記載の使用。
【請求項111】
ベバシズマブが静脈内投与される、請求項109又は110に記載の使用。
【請求項112】
対象が、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない、請求項87~111のいずれか一項に記載の使用。
【請求項113】
対象が、免疫調節剤を含む抗がん療法で以前に治療されていない、請求項87~111のいずれか一項に記載の使用。
【請求項114】
対象が、抗LAG3療法で以前に治療されていない、請求項87~111のいずれか一項に記載の使用。
【請求項115】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;
(ii)アミノ酸配列GGRを含むHVR-H2配列;及び
(iii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに
(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;
(ii)アミノ酸配列RSSを含むHVR-L2配列;及び
(iii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメイン
を含む、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む、請求項87~114のいずれか一項に記載の使用。
【請求項116】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;
(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H2配列;及び
(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに
(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L2配列;及び
(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメイン
を含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、請求項115に記載の使用。
【請求項117】
第1の抗原結合ドメインが、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第2の抗原結合ドメインが、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項115又は116に記載の使用。
【請求項118】
二重特異性抗体が完全長抗体である、請求項115~117のいずれか一項に記載の使用。
【請求項119】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、IgGであるFcドメインを含み、任意選択で、IgG FcドメインはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである、請求項118に記載の使用。
【請求項120】
Fcドメインが、Fc受容体への結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含み、任意選択で、Fc受容体はFcγ受容体である、請求項119に記載の使用。
【請求項121】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、
(a)アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのFcドメイン;及び/又は
(b)Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含むFcドメイン
を含む、請求項115~120のいずれか一項に記載の使用。
【請求項122】
Fcドメインの第1のサブユニットが、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットが、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む、請求項119~121のいずれか一項に記載の使用。
【請求項123】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体が、Fcドメイン、第1の抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及び第2の抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む、請求項115~122のいずれか一項に記載の使用。
【請求項124】
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体のFab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられており、任意選択で、第1のFab断片において可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている、請求項123に記載の使用。
【請求項125】
前記Fab断片のうちの1つの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、任意選択で、第2のFab断片の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項123又は124に記載の使用。
【請求項126】
二重特異性抗体が、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、請求項115~125のいずれか一項に記載の使用。
【請求項127】
二重特異性抗体が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、請求項126に記載の使用。
【請求項128】
二重特異性抗体が、腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成する、請求項87~127のいずれか一項に記載の使用。
【請求項129】
対象がヒトである、請求項87~128のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に援用される。2022年07月27日に作成された前記XMLコピーの名称は50474-304WO2_Sequence_Listing_7_27_22であり、サイズは68,756バイトである。
【0002】
発明の分野
本発明は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びリンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)を標的とする二重特異性抗体(PD1-LAG3)を、任意に抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)又はVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)とともに対象に投与することによって、対象におけるがんを治療することにおける使用のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、細胞亜集団の制御されない増殖を特徴とする。がんは、先進国における主な死因であり、発展途上国における2番目に多い死因であり、1400万を超える新たながん症例が診断され、毎年800万を超えるがんによる死亡が発生している。このように、がん治療は重大かつ増大し続ける社会的負担となっている。
【0004】
特に、一般的で治療が困難ながんの治療手法が急務である。
【0005】
黒色腫はメラノサイトの悪性腫瘍である。この死亡に至る可能性のある皮膚がんは、最も急速に増加している悪性腫瘍のひとつである。現在、世界中で毎年30万人以上が黒色腫と診断され、5万7000人がこの疾患で亡くなっている。進行した黒色腫のほとんどは予後不良である。リンパ節転移を有する患者(ステージIII)は、手術後の局所再発及び遠隔再発のリスクが高く、この患者群における5年生存率は32~93%である。発症時に転移性疾患(ステージIV)を有する患者はほとんどいないが、最初の根治的治療後に転移を発症する患者もいる。免疫療法と標的治療により、これらの患者の予後は改善され、5年生存率は約50%となっている。黒色腫は依然として深刻な健康問題であり、医療ニーズは高く、発生率は過去30年間で着実に増加している。したがって、このような集団における新規治療手法の必要性は依然として高い。
【0006】
肝臓がんは、世界で5番目に多いがんであり、がん関連死の2番目に多い原因であり、年間854,000件の新規症例及び810,000件の死亡がある。肝細胞癌(HCC)は、原発性肝臓がんの最も一般的な形態であり、全ての原発性肝悪性腫瘍の約90%を占める。あまり一般的でない原発性肝臓がんには、肝内胆管がん(iCCA)、血管肉腫及び肝芽腫が含まれる。診断時に、原発性肝臓がんを有するほとんどの患者は進行性疾患を有しており、治癒的療法による治療が推奨されない段階である。WHOは、2030年に100万人を超える人々が肝臓がんで死亡すると推定しており、重大な世界的な公衆衛生問題を強調している。
【0007】
したがって、この分野では、黒色腫及び肝臓がんを含むがんの治療のために有効な免疫療法及びその投与方法の開発に対する満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む。
【0009】
いくつかの態様では、がんは、固形腫瘍である。
【0010】
いくつかの態様では、がんは、局所進行性又は転移性である。
【0011】
いくつかの態様では、がんは、皮膚がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、又は食道がんである。いくつかの態様では、皮膚がんは、黒色腫である。いくつかの態様では、皮膚がんは、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫である。いくつかの態様では、黒色腫は、(a)測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫;(b)切除不能なステージIIIの黒色腫;又は(c)ステージIVの黒色腫であり、場合により、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない。いくつかの態様では、肝臓がんは、肝細胞癌(HCC)である。いくつかの態様では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの態様では、腎臓がんは、腎細胞癌(RCC)である。いくつかの態様では、膀胱がんは、転移性尿路上皮癌(mUC)である。いくつかの態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん(triple negative breast cancer:TNBC)である。いくつかの態様では、食道がんは、食道扁平上皮癌(ESCC)である。
【0012】
別の態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含み、黒色腫は、(a)切除不能なステージIIIの黒色腫であるか;又は(b)ステージIVの黒色腫である。いくつかの態様では、対象は眼内黒色腫を有していない。
【0013】
別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む。
【0014】
いくつかの態様では、肝臓がんは、肝細胞癌(HCC)である。いくつかの態様では、HCCは、局所進行性、転移性、及び/又は切除不能である。
【0015】
いくつかの態様では、対象は、全身性抗がん療法を以前に受けていない。
【0016】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に二重特異性抗体を対象に投与することを含む。
【0017】
いくつかの態様では、該方法は、二重特異性抗体を対象に静脈内投与することを含む。
【0018】
いくつかの態様では、該方法は、ベバシズマブを約15mg/kgの用量で3週間ごとに対象に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間であり、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目にベバシズマブを対象に投与することを含む。いくつかの態様では、ベバシズマブは静脈内投与される。
【0019】
いくつかの態様では、対象は、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない。
【0020】
いくつかの態様では、対象は、免疫調節剤を含む抗がん療法で以前に治療されていない。
【0021】
いくつかの態様では、対象は、抗LAG3療法で以前に治療されていない。
【0022】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;(ii)アミノ酸配列GGRを含むHVR-H2配列;及び(iii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;(ii)アミノ酸配列RSSを含むHVR-L2配列;及び(iii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメインを含む、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
【0023】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H2配列;及び(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L2配列;及び(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
【0024】
いくつかの態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第2の抗原結合ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0025】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は完全長抗体である。
【0026】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、IgGであるFcドメインを含み、任意選択で、IgG FcドメインはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである。いくつかの態様では、Fcドメインは、Fc受容体への結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含み、任意選択で、Fc受容体はFcγ受容体である。
【0027】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(a)アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのFcドメイン;及び/又は(b)Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含むFcドメインを含む。
【0028】
いくつかの態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0029】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、Fcドメイン、第1の抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及び第2の抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む。いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体のFab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられており、任意選択で、第1のFab断片において可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている。いくつかの態様では、Fab断片のうちの1つの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、任意選択で、第2のFab断片の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0030】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。
【0031】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成する。
【0032】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0033】
別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療する方法における使用のための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む。
【0034】
いくつかの態様では、がんは、固形腫瘍である。
【0035】
いくつかの態様では、がんは、局所進行性又は転移性である。
【0036】
いくつかの態様では、がんは、皮膚がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、又は食道がんである。いくつかの態様では、皮膚がんは、黒色腫である。いくつかの態様では、皮膚がんは、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫である。いくつかの態様では、黒色腫は、(a)測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫;(b)切除不能なステージIIIの黒色腫;又は(c)ステージIVの黒色腫であり、場合により、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない。いくつかの態様では、肝臓がんは、肝細胞癌(HCC)である。いくつかの態様では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの態様では、腎臓がんは、腎細胞癌(RCC)である。いくつかの態様では、膀胱がんは、転移性尿路上皮癌(mUC)である。いくつかの態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん(triple negative breast cancer:TNBC)である。いくつかの態様では、食道がんは、食道扁平上皮癌(ESCC)である。
【0037】
別の態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療する方法における使用のための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含み、黒色腫は、(a)切除不能なステージIIIの黒色腫であるか;又は(b)ステージIVの黒色腫である。いくつかの態様では、患者は眼内黒色腫を有していない。
【0038】
別の態様では、本開示は、肝臓がんを有する対象を治療するための方法における使用のための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む。いくつかの態様では、肝臓がんはHCCである。いくつかの態様では、HCCは、局所進行性、転移性、及び/又は切除不能である。
【0039】
いくつかの態様では、対象は、全身性抗がん療法を以前に受けていない。
【0040】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に二重特異性抗体を対象に投与することを含む。
【0041】
いくつかの態様では、該方法は、二重特異性抗体を対象に静脈内投与することを含む。
【0042】
いくつかの態様では、該方法は、ベバシズマブを約15mg/kgの用量で3週間ごとに対象に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間であり、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目にベバシズマブを対象に投与することを含む。いくつかの態様では、ベバシズマブは静脈内投与される。
【0043】
いくつかの態様では、対象は、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない。
【0044】
いくつかの態様では、対象は、免疫調節剤を含む抗がん療法で以前に治療されていない。
【0045】
いくつかの態様では、対象は、抗LAG3療法で以前に治療されていない。
【0046】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;(ii)アミノ酸配列GGRを含むHVR-H2配列;及び(iii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;(ii)アミノ酸配列RSSを含むHVR-L2配列;及び(iii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメインを含む、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
【0047】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H2配列;及び(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L2配列;及び(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
【0048】
いくつかの態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第2の抗原結合ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0049】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は完全長抗体である。
【0050】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、IgGであるFcドメインを含み、任意選択で、IgG FcドメインはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである。いくつかの態様では、Fcドメインは、Fc受容体への結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含み、任意選択で、Fc受容体はFcγ受容体である。
【0051】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(a)アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのFcドメイン;及び/又は(b)Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含むFcドメインを含む。
【0052】
いくつかの態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0053】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、Fcドメイン、第1の抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及び第2の抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む。いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体のFab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられており、任意選択で、第1のFab断片において可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている。いくつかの態様では、Fab断片のうちの1つの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、任意選択で、第2のFab断片の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0054】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。
【0055】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成する。
【0056】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0057】
別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための医薬の製造における、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該二重特異性抗体は、3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与されるものである。
【0058】
いくつかの態様では、がんは、固形腫瘍である。
【0059】
いくつかの態様では、がんは、局所進行性又は転移性である。
【0060】
いくつかの態様では、がんは、皮膚がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、又は食道がんである。いくつかの態様では、皮膚がんは、黒色腫である。いくつかの態様では、皮膚がんは、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫である。いくつかの態様では、黒色腫は、(a)測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫;(b)切除不能なステージIIIの黒色腫;又は(c)ステージIVの黒色腫であり、場合により、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない。いくつかの態様では、肝臓がんは、肝細胞癌(HCC)である。いくつかの態様では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの態様では、腎臓がんは、腎細胞癌(RCC)である。いくつかの態様では、膀胱がんは、転移性尿路上皮癌(mUC)である。いくつかの態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん(triple negative breast cancer:TNBC)である。いくつかの態様では、食道がんは、食道扁平上皮癌(ESCC)である。
【0061】
別の態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療するための医薬の製造における、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該二重特異性抗体は、3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与されるものであり、黒色腫は、(a)切除不能なステージIIIの黒色腫であるか;又は(b)ステージIVの黒色腫である。いくつかの態様では、対象は眼内黒色腫を有していない。
【0062】
別の態様では、本開示は、肝臓がんを有する対象を治療するための医薬の製造における、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該二重特異性抗体は、3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与されるものである。いくつかの態様では、肝臓がんはHCCである。いくつかの態様では、HCCは、局所進行性、転移性、及び/又は切除不能である。
【0063】
いくつかの態様では、対象は、全身性抗がん療法を以前に受けていない。
【0064】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に対象に投与されるものである。
【0065】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は対象に静脈内投与されるものである。
【0066】
いくつかの態様では、ベバシズマブは、3週間ごとに約15mg/kgの用量で対象に投与されるものである。いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間であり、ベバシズマブは1回又は複数回の投薬のそれぞれの1日目に対象に投与されるものである。いくつかの態様では、ベバシズマブは静脈内投与される。
【0067】
いくつかの態様では、対象は、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない。
【0068】
いくつかの態様では、対象は、免疫調節剤を含む抗がん療法で以前に治療されていない。
【0069】
いくつかの態様では、対象は、抗LAG3療法で以前に治療されていない。
【0070】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;(ii)アミノ酸配列GGRを含むHVR-H2配列;及び(iii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;(ii)アミノ酸配列RSSを含むHVR-L2配列;及び(iii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメインを含む、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
【0071】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H1配列;(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H2配列;及び(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H3配列を含むVHドメイン;並びに(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L1配列;(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L2配列;及び(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-L3配列を含むVLドメインを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
【0072】
いくつかの態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、第2の抗原結合ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0073】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は完全長抗体である。
【0074】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、IgGであるFcドメインを含み、任意選択で、IgG FcドメインはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである。いくつかの態様では、Fcドメインは、Fc受容体への結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含み、任意選択で、Fc受容体はFcγ受容体である。
【0075】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、(a)アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのFcドメイン;及び/又は(b)Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含むFcドメインを含む。
【0076】
いくつかの態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0077】
いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、Fcドメイン、第1の抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及び第2の抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む。いくつかの態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体のFab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられており、任意選択で、第1のFab断片において可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている。いくつかの態様では、Fab断片のうちの1つの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、任意選択で、第2のFab断片の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)、又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位及び213位のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0078】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。
【0079】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成する。
【0080】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】
図1は、黒色腫患者を対象とした第Ib/II相臨床試験の研究デザインを示すフローチャートである。Atezo=アテゾリズマブ;CIT=がん免疫療法;CLND=完全リンパ節郭清;Ipi=イピリムマブ;Nivo=ニボルマブ;R=無作為化;Tira=チラゴルマブ。
【
図2】
図2は、黒色腫患者を対象とした第Ib/II相臨床試験のコホート1における研究スケジュールと活動の概要を示す研究スキームの概略図である。CLND=完全リンパ節郭清;Comp.=完了;CT=コンピューター断層撮影;Discon.=中止;M=月;R=無作為化;Q3M=3か月ごと;SFU=生存追跡;Tx=治療;W=週。
【
図3】
図3は、ペムブロリズマブの最小生理学的薬物動態(mPBPK)モデルを示す概略図である。Jt=腫瘍コンパートメントへのペムブロリズマブの流入;kint=ペムブロリズマブ-PD-1複合体内部移行速度定数;koff=解離速度定数;kon=結合速度定数;kdeg=PD-1の分解速度;Ksyn=PD-1の合成速度;Lt=腫瘍コンパートメントからのリンパ流;L1=密着組織コンパートメントからのリンパ流;L2=漏出組織コンパートメントからのリンパ流;mAb=ペムブロリズマブ濃度;Qt=腫瘍血漿流量;RC=ペムブロリズマブ-PD-1複合体濃度;Rmax=総PD-1濃度;Vleaky=漏出血管構造を有する組織コンパートメントの容積;Vlymph=リンパコンパートメントの容積;Vp=血漿コンパートメントの容積;Vtight=密着血管構造を有する組織コンパートメントの容積;Vtumor=腫瘍コンパートメントの容積;σtight=密着組織の血管反射係数;σleaky=漏出組織の血管反射係数;σLy=リンパ反射係数。
【
図4】
図4は、PD1-LAG3のmPBPKモデルに追加された追加のLAG3受容体を示す模式図である。
【
図5】
図5は、NP41300試験の用量漸増(パートA1、Q2W)部分における安全性評価可能な患者における有害事象の概要を示す表である。
【
図6】
図6は、NP41300試験の用量漸増(パートA1、Q2W)部分における安全性評価可能な患者における有害事象の概要を示す表である。
【
図7】
図7は、Q2W(2週間ごと)又はQ3W(3週間ごと)の投薬レジメンにおける600mg又は1200mgの用量でのPD1-LAG3の1回目及び3回目の投与後の予測C
troughを示す一連の箱ひげ図である。下ヒンジと上ヒンジは、第1四分位数と第3四分位数(25パーセンタイルと75パーセンタイル)に対応している。上ひげは、ヒンジから、ヒンジから1.5*IQRを超えない最大値まで伸びている(ここでIQRは四分位範囲、つまり第1四分位数と第3四分位数の間の距離である)。下ひげはヒンジから、ヒンジの最大1.5*IQRの最小値まで伸びている。ひげの終端を越えたデータは「外側」点と呼ばれ、個別にプロットされる。シミュレーションは、集団薬物動態モデル(非線形混合効果モデリング手法)を使用して実行された。各投薬レジメンについて、元の解析データセットからブートストラップ(置換あり)された共変量セットを用いて500個体がシミュレートされた。
【
図8】
図8は、3サイクル後にQ3W投与されたRO7247669の用量範囲にわたるシミュレートされたPD1及びLAG3結合を示すグラフである。
【
図9】
図9は、黒色腫患者を対象としたBP43963試験の研究デザインを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、GO42216臨床試験の研究デザインを示すフローチャートである。CIT=がん免疫療法;HCC=肝細胞癌;R=無作為化。
【
図11】
図11は、GO42216臨床試験の詳細な研究デザインを示すフローチャートである。Bev=ベバシズマブ;HCC=肝細胞癌;Q2W=2週間ごと;Q3W=3週間ごと;R=無作為化。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、がんの治療のための治療方法及び組成物を提供する。そのような組み合わせ及び/又は投薬レジメンを含む組成物、使用及びキットも本明細書で提供される。
【0083】
【0084】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者であれば容易に理解する、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書中の値又はパラメーターに対する「約」の言及は、その値又はパラメーターそれ自体に向けられる態様を含む(及び記述する)。例えば、「約X」との記載には「X」の記載が含まれる。
【0085】
本明細書に使用される「TIGIT」又は「Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(T-cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)」は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然のTIGITを指す。TIGITはまた、当技術分野において、DKFZp667A205、FLJ39873、Vセット及び免疫グロブリンドメイン含有タンパク質9、Vセット及び膜貫通ドメイン含有タンパク質3、VSIG9、VSTM3、及びWUCAMとしても知られている。この用語は、「完全長」の未プロセシングTIGIT(例えば、配列番号20のアミノ酸配列を有する完全長ヒトTIGIT)、並びに細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のTIGIT(例えば、シグナル配列を有さず、配列番号21のアミノ酸配列を有する、プロセシングされたヒトTIGIT)を包含する。この用語は、TIGITの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトTIGITのアミノ酸配列は、例えば、UniProt受託番号Q495A1に見出すことができる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「チラゴルマブ」は、TIGITに結合し、配列番号23の重鎖配列及び配列番号24の軽鎖配列を含む、Open Monoclonal Technology(OMT)ラットに由来する完全ヒトIgG1/カッパMAbである。チラゴルマブは、Fcドメインに2つのN結合型グリコシル化部位(N306)を含む。チラゴルマブは、WHO医薬品情報(医薬品物質の国際一般名)、提案されたINN:リスト117,Vol.31,No.2,2017年7月7日発行(343ページを参照)にも記載されている。
【0087】
「抗TIGITアンタゴニスト抗体」という用語は、TIGITの生物学的活性を実質的に又は完全に阻害するように十分な親和性でTIGITに結合することができる抗体又はその抗原結合断片若しくはバリアントを指す。例えば、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、T細胞による機能不全状態(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞殺傷)から抗原刺激への機能的応答を回復させるために、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3を介したシグナル伝達を遮断し得る。例えば、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、PVR-CD226相互作用に影響を与えることなく、PVRを介したシグナル伝達を遮断し得る。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、別のTIGIT活性に影響を及ぼすことなく、1つのTIGIT活性に拮抗し得ることが当業者によって理解されるであろう。例えば、本明細書中に記載される特定の方法又は使用における使用のための抗TIGITアンタゴニスト抗体は、例えば、他のTIGIT相互作用のいずれかに影響を及ぼすことなく、又は最小限に影響を及ぼす、PVR相互作用、PVRL3相互作用又はPVRL2相互作用の1つに応答してTIGIT活性に拮抗する抗TIGITアンタゴニスト抗体である。一態様では、非関連非TIGITタンパク質への抗TIGITアンタゴニスト抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合に、TIGITへの抗体の結合の約10%未満である。特定の態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体に結合するTIGITは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10--13M)の解離定数(KD)を有する。特定の態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、異なる種からのTIGITの間で保存されているTIGITのエピトープ、又は交差種反応性を可能にするTIGIT上のエピトープに結合する。いくつかの態様では、抗TIGIT結合抗体は、インタクトなFc媒介エフェクター機能を有する(例えば、チラゴルマブ、ビボストリマブ、エチグリマブ、EOS084448又はTJ-T6)。いくつかの態様では、抗TIGIT結合抗体は、増強されたFc媒介エフェクター機能(例えば、SGN-TGT)を有する。他の態様では、抗TIGIT結合抗体は、Fc媒介エフェクター機能を欠いている(例えば、ドムバナリマブ、BMS-986207、ASP8374、又はCOM902)。いくつかの態様では、抗TIGIT結合抗体はIgG1クラスの抗体(例えば、チラゴルマブ、ビボストリマブ、ドムバナリマブ、BMS-986207、エチギリマブ、BGB-A1217、SGN-TGT、EOS084448(EOS-448)、TJ-T6、又はAB308)である。いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、IgG4クラス抗体(例えば、ASP8374又はCOM902)である。一態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、チラゴルマブである。
【0088】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、及び/又は標的細胞死滅)を復元又は増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。いくつかの実例では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト又はPD-1結合アンタゴニストを含む好ましい態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。
【0089】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1と、PD-1及び/又はB7-1などのその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する分子を指す。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及び/又はB7-1への結合を阻害する。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、並びにPD-L1と、PD-1及び/又はB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する他の分子を含む。一例では、PD-L1結合アンタゴニストは、機能不全T細胞を機能不全にしないようにする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、PD-L1を介するシグナル伝達を介してTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストはPD-L1に結合する。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体(例えば、抗PD-L1アンタゴニスト抗体)である。例示的な抗PD-L1アンタゴニスト抗体としては、アテゾリズマブ、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、MSB0010718C(アベルマブ)、SHR-1316、CS1001、エンバホリマブ、TQB2450、ZKAB001、LP-002、CX-072、IMC-001、KL-A167、APL-502、コシベリマブ、ロダポリマブ、FAZ053、TG-1501、BGB-A333、BCD-135、AK-106、LDP、GR1405、HLX20、MSB2311、RC98、PDL-GEX、KD036、KY1003、YBL-007及びHS-636が挙げられる。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、又はMSB0010718C(アベルマブ)である。特定の一態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、MDX-1105である。別の特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、MEDI4736(デュルバルマブ)である。別の特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、MSB0010718C(アベルマブ)である。他の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、小分子、例えばGS-4224、INCB086550、MAX-10181、INCB090244、CA-170又はABSK041であり得、いくつかの例では経口投与され得る。他の例示的なPD-L1結合アンタゴニストとしては、AVA-004、MT-6035、VXM10、LYN192、GB7003及びJS-003が挙げられる。好ましい態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0090】
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1と、PD-1及び/又はB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する分子を指す。PD-1(プログラム死1)は、当技術分野で「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも呼ばれる。例示的なヒトPD-1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q15116に示される。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、その結合パートナーのうちの1つ又は複数に対する結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及び/又はPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、並びにPD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する他の分子を含む。一例では、PD-1結合アンタゴニストは、機能不全T細胞を機能不全にしないようにする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、PD-1を介するシグナル伝達を介してTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストはPD-1に結合する。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1アンタゴニスト抗体)である。例示的な抗PD-1アンタゴニスト抗体としては、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MEDI-0680、PDR001(スパルタリズマブ)、REGN2810(セミプリマブ)、BGB-108、プロルゴリマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタリマブ、レチファンリマブ、ササンリマブ、ペンプリマブ、CS1003、HLX10、SCT-I10A、ジンベレリマブ、バルスチリマブ、ゲノリムズマブ、BI 754091、セトレリマブ、YBL-006、BAT1306、HX008、ブジカリマブ、AMG404、CX-188、JTX-4014、609A、Sym021、LZM009、F520、SG001、AM0001、ENUM 244C8、ENUM 388D4、STI-1110、AK-103及びhAb21が挙げられる。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはMDX-1106(ニボルマブ)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはMK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-L2 Fc融合タンパク質、例えばAMP-224である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、MED1-0680である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001(スパルタリズマブ)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810(セミプリマブ)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、プロルゴリマブである。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、カンレリズマブである。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、シンチリマブである。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、チスレリズマブである。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、トリパリマブである。他のさらなる例示的なPD-1結合アンタゴニストとしては、BION-004、CB201、AUNP-012、ADG104及びLBL-006が挙げられる。
【0091】
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2と、PD-1などのその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する分子を指す。PD-L2(プログラム死リガンド2)は、当技術分野で「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」及び「PDL2」とも呼ばれる。例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9BQ51に示される。いくつかの実例では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2の、その結合パートナーの1つ以上への結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。例示的なPD-L2アンタゴニストとしては、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2と、PD-1などのその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する他の分子が挙げられる。一態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、機能不全T細胞をより機能不全に陥らせないように(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強するように)、PD-L2を介してシグナル伝達を媒介するTリンパ球上に発現された細胞表面タンパク質によって媒介される、又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させる。いくつかの態様では、PD-L2結合アンタゴニストはPD-L2に結合する。いくつかの態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。他の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2アンタゴニスト抗体である。
【0092】
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書では、天然配列のヒトPD-L1ポリペプチドを指す。天然配列PD-L1ポリペプチドは、Uniprot受託番号Q9NZQ7で提供される。例えば、天然配列PD-L1は、Uniprot受託番号Q9NZQ7-1(アイソフォーム1)(配列番号22)に記載のアミノ酸配列を有し得る。別の例において、天然配列PD-L1は、Uniprot受託番号Q9NZQ7-2(アイソフォーム2)に記載のアミノ酸配列を有し得る。さらに別の例において、天然配列PD-L1は、Uniprot受託番号Q9NZQ7-3(アイソフォーム3)に記載のアミノ酸配列を有し得る。PD-L1はまた、当技術分野において「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」とも呼ばれる。
【0093】
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照)。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabatら(上記参照)で報告されるEUインデックス)。「KabatにおけるEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0094】
本明細書において、「アテゾリズマブ」は、PD-L1を結合し、配列番号62の重鎖配列及び配列番号63の軽鎖配列を含むFc操作され、ヒト化された非グリコシル化IgG1カッパ免疫グロブリンである。アテゾリズマブは、Fc領域アミノ酸残基のEU番号付けを使用して重鎖上の297位に単一のアミノ酸置換(アスパラギンをアラニンへ)(N297A)を含み、Fc受容体への最小限の結合を有する非グリコシル化抗体をもたらす。アテゾリズマブは、WHO医薬品情報(医薬品物質の国際一般名)、提案されたINN:リスト112,Vol.28,No.4,2015年1月16日発行(485ページを参照)にも記載されている。
【0095】
「がん」という用語は、身体の一部における異常細胞の制御されない分裂によって引き起こされる疾患を指す。一例では、がんは皮膚がん(例えば、黒色腫、基底細胞癌(BCC)、扁平上皮癌、皮膚T細胞性リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、メルケル細胞癌、又は脂腺癌)である。別の実例では、がんは、肝臓がん(例えば肝細胞癌(HCC)、例えば局所進行性若しくは転移性HCC及び/又は切除不能なHCC)である。がんには、固形腫瘍がん及び非固形腫瘍がん並びに局所進行性がん又は転移性がん(例えば、局所進行性又は転移性腫瘍)が含まれる。がんの例には、限定されないが、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が含まれる。そのようながんのより具体的な例としては、限定されないが、局所進行性及び転移性UC(mUC)、膀胱がん(例えば、筋肉浸潤性膀胱がん(MIBC)及び非筋肉浸潤性膀胱がん(NMIBC)、例えば、BCG不応性NMIBC)、MIBC尿路上皮膀胱がん(UBC)を含む尿路上皮癌(UC);腎臓がん又は腎がん(例えば、腎細胞癌(RCC));尿路がん;小細胞肺がん(SCLC)等の肺がん(進展型SCLC(ES-SCLC)を含む);非小細胞肺がん(NSCLC)(局所進行性切除不能NSCLC(例えば、IIIB NSCLC)、又は再発若しくは転移性NSCLC(例えば、IV期のNSCLC)を含む)、肺の腺癌、又は扁平上皮がん(例えば、扁平上皮がん(例えば、肺の扁平上皮癌));膵臓がん(例えば、膵管腺癌(PDAC)、例えば、転移性PDAC));頭頸部がん(例えば、SCCHN、例えば、再発/転移性PD-L1陽性SCCHN、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC);卵巣がん(OC);食道がん;腹膜がん;肝細胞がん;胃がん(GC)(例えば、胃食道接合部(GEJ)がん)又は胃腸がん及び胃腸間質がんを含む胃がん;神経膠芽腫;尿路がん;肝がん;乳がん(例えば、HER2+乳がん及びトリプルネガティブ乳がん(TNBC(例えば、早期TNBC(eTNBC))、エストロゲン受容体(ER-)、プロゲステロン受容体(PgR-)、及びHER2(HER2-)陰性);去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)等の前立腺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん又は胃がん(胃腸がん及び胃腸間質がんを含む)膵がん(例えば、膵管腺癌(PDAC));神経膠芽腫;子宮頸がん(例えば、IVB期、転移性、再発、又は持続性の子宮頸がん、例えば、転移性及び/又は再発PD-L1陽性子宮頸がん);卵巣がん;肝がん;結腸がん;直腸がん;結腸直腸がん(CRC;例えば、マイクロサテライト安定(MSS)及びマイクロサテライト不安定性(MSI)低い(MSI-Low)を伴うCRC);子宮内膜又は子宮癌;唾液腺癌;前立腺がん;外陰がん;甲状腺がん;肝臓癌;肛門癌;陰茎癌;黒色腫(表在性転移性黒色腫、黒色腫悪性黒色腫、先端黒色腫、結節性黒色腫を含む);多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む));小リンパ球(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中間悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度非切断細胞NHL;巨大腫瘤性疾患NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びWaldenstromのマクログロブリン血症);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性筋原性白血病(AML);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病(CML);移植後リンパ増殖性障害(PTLD);及び骨髄異形成症候群(MDS)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するもの等)、メグズ症候群、脳がん、頭頸部がん、及び関連する転移に関連する異常な血管増殖が挙げられる。
【0096】
いくつかの実例では、がん(例えば、皮膚がん(例えば、黒色腫)又は肝臓がん(例えば、HCC))は、LAG3発現CD8+ T細胞を含む腫瘍微小環境を有する腫瘍である。
【0097】
いくつかの実例では、がんは切除不能であり得る(例えば、切除不能な局所進行性がん又は転移性がん)。
【0098】
がんのさらなる例には、限定されないが、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が挙げられる。がんのより特定の例としては、限定されないが、食道がん(例えば、扁平上皮癌(例えば、食道扁平上皮癌(ESCC))、腺癌(例えば、食道腺癌(EAC))、又は神経内分泌組織病理を有する食道がん(例えば、食道神経内分泌癌(ENEC))が挙げられる。さらなる例としては、転移性食道がん(例えば、転移性ESCC、転移性EAC、又は転移性ENEC)が挙げられる。一例では、がんは結腸直腸がん(CRC)である。本明細書で使用される場合、「結腸直腸がん」、「CRC」、「結腸がん」、又は「腸がん」という用語は、大腸、例えば結腸又は直腸から発生するがん(例えば結腸直腸腺癌)を指す。がんの例としては、限定されないが、成熟B細胞癌等の血液がん、例えばホジキンリンパ腫を除くが、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えばびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が挙げられ、これらは再発性若しくは難治性DLBCL又はリヒターの形質転換であり得る。また、がんの他の具体例としては、胚中心B細胞様(GCB)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、活性型B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換FL、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、形質転換MZL、高悪性度B細胞リンパ腫、縦隔原発(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(PMLBCL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、形質転換LL、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞性前リンパ球性白血病、脾臓辺縁帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能、脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、重鎖白血病、α重鎖病、γ重鎖病、μ重鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、結節性辺縁帯リンパ腫、小児結節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL、脚型、高齢者のEBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球型リンパ腫、HV8関連多中心性キャッスルマン病に起因する大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫:DLBCLとバーキットリンパ腫との間の中間型の特徴を有する、分類不可能なB細胞リンパ腫、及びDLBCLと古典的ホジキンリンパ腫との間の中間型の特徴を有する、分類不可能なB細胞リンパ腫が挙げられる。がんのさらなる例としては、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病又はB細胞リンパ腫を含むリンパ系悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。このようながんのより具体的な例としては、多発性骨髄腫(MM);低グレード/濾胞性NHL;小リンパ球性(SL)NHL;中間グレード/濾胞性NHL;中間グレードびまん性NHL;高グレード免疫芽球性NHL;高グレードリンパ性NHL;高グレード小型非分割細胞NHL;巨大腫瘤病変NHL;AIDS関連リンパ腫;及び急性リンパ性白血病(ALL);慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
「B細胞増殖性障害」又は「B細胞悪性腫瘍」という用語は、ある程度異常なB細胞増殖性に関連し、例えば、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び骨髄異形成症候群を含む疾患を指す。いくつかの実例では、B細胞増殖性障害は、例えば、濾胞性リンパ腫(FL)(例えば、再発性及び/又は難治性FL又は形質転換FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(例えば、再発性若しくは難治性のDLBCL又はリヒター形質転換)、MCL、高悪性度B細胞リンパ腫、又はPMLBCL)を含む、非ホジキンリンパ腫(NHL)などのリンパ腫である。別の実施態様では、B細胞増殖性障害は、慢性リンパ性白血病(CLL)などの白血病である。一実施態様では、B細胞増殖性障害は、再発性及び/又は難治性である。
【0100】
「腫瘍」という用語は、悪性又は良性にかかわらず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、並びに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0101】
本明細書で使用される場合、「腫瘍細胞」は、腫瘍又はその試料中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当技術分野で公知であり、且つ/又は本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍試料中に存在し得る他の細胞、例えば、間質細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞と区別され得る。
【0102】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識及び排除を回避する過程を指す。したがって、治療的概念として、腫瘍免疫は、そのような回避が減弱し、腫瘍が免疫系によって認識かつ攻撃されるときに「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍退縮、及び腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「転移」は、その原発部位から体内の他の場所へのがんの拡がりを意味する。がん細胞は、原発腫瘍から離脱し、リンパ管及び血管に浸透し、血流を通じて循環し、体内の他の場所の正常組織内の遠位焦点で成長する(転移する)場合がある。転移は、局所的又は遠位であり得る。転移は、腫瘍細胞が原発腫瘍から離脱し、血流を通じて移動し、遠位部位で停止することを条件とする逐次プロセスである。新たな部位で、細胞は、血液供給を確立し、成長して、生命を脅かす塊を形成し得る。腫瘍細胞内の刺激性と阻害性との両方の分子経路がこの挙動を制御し、遠隔部位における腫瘍細胞と宿主細胞との間の相互作用もまた重要である。
【0104】
本明細書で使用される場合、「治療する」には、有効量の治療剤(例えば、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体))を用いた効果的ながん治療が含まれる。本明細書における治療には、とりわけ、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、非転移性がん療法(例えば、局所進行性がん治療)及び転移性がん療法が含まれる。治療は、第一選択治療(例えば、患者は以前に治療されていない可能性がある、又は事前の全身療法を受けたことがない)又は第二選択治療若しくはそれ以降の治療であり得る。
【0105】
本明細書において、「有効量」とは、治療結果を達成する治療剤(例えば、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体又は治療剤(例えば、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体、及び抗TIGITアンタゴニスト抗体、チラゴルマブ、又はVEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ))の組み合わせ)の量を指す。いくつかの例では、治療剤又は治療剤の組み合わせの有効量は、改善された病理学的奏効率(PRR)、改善された全奏効率(ORR)、改善された病勢コントロール率(DCR)、完全奏効(CR)、病理学的完全奏功(pCR)、部分奏功(PR)、改善された生存(例えば、無病生存期間(DFS)、及び/又は無増悪生存期間(PFS)、及び/又は全生存期間(OS))、及び/又は改善された奏効期間(DOR)の臨床評価項目を達成する治療剤又は治療剤の組み合わせの量である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「完全奏効」及び「CR」は、全ての標的病巣の消滅を指す。
【0107】
本明細書で使用される場合、「部分奏功」又は「PR」は、治療前のベースラインSLDを基準として、標的病巣の最長径の合計(SLD)の少なくとも30%の減少を指す。
【0108】
ここで使用される「進行性疾患」及び「PD」とは、ベースラインを含む試験中の最小合計(最下点)を基準として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加を指す。1つ以上の新たな病変の出現もPDとみなされ得る。
【0109】
本明細書で使用される場合、「安定した疾患」及び「SD」は、最小合計を基準として、PRに適格となるのに十分な縮小も、PDに適格となるのに十分な増大も意味しない。
【0110】
本明細書で使用される場合、「病勢コントロール率」及び「DCR」は、CR、PR、及び安定した疾患(SD)を達成した進行性又は転移性のがんを有する患者のパーセンテージを指す。例えば、DCRは、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定された、12週間以上のSD又はCR若しくはPRを有する患者の割合として定義される。
【0111】
本明細書で使用される場合、「全奏効率」、「客観的奏効率」及び「ORR」は、CR率とPR率の和を互換的に指す。例えば、客観的奏効とは、治験責任医師の評価により決定され、最初の記録から4週間以上経過した後に再度評価することにより確認される、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)v.1.1によるCR又はPRとして定義され得る。
別の例では、ORRは、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される、4週間以上離れた2回の連続した機会にCR又はPRを有する患者の割合として定義され得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、「病理学的奏効率」及び「pRR」は、互換的に、例えば手術時に、病理学的完全奏効(pCR、例えば、治療された腫瘍床に生存可能な腫瘍が完全に存在しない)、病理学的ほぼ完全奏効(pnCR、例えば、治療された腫瘍床の<10%が生存可能な腫瘍細胞で占められている)、及び病理学的部分奏効(pPR、例えば、治療された腫瘍床の<50%が生存可能な腫瘍細胞で占められている)を有する患者の割合を指す。
【0113】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」及び「PFS」は、その間にがんが悪化しない治療中及び治療後の時間の長さを指す。PFSは、患者がCR又はPRを経験した時間の量、及び患者が安定な疾患を経験した時間の量を含み得る。例えば、PFSは、治験責任医師によって決定されたRECIST v.1.1による、最初の試験治療から何らかの原因による進行又は死亡の最初の発生までの時間のうちいずれか早く発生する方として定義され得る。別の例では、PFSは、治験責任医師によって決定されたRECIST v.1.1による、最初の試験登録から何らかの原因による進行又は死亡の最初の発生までの時間のうちいずれか早く発生する方として定義され得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「全生存期間」及び「OS」は、患者がまだ生存している、診断の日又は疾患(例えばがん)の治療の開始日のいずれかからの時間の長さを指す。例えば、OSは、最初の試験治療から何らかの原因で死亡するまでの時間として定義され得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「奏効の期間」及びDORという用語は、腫瘍応答の記録から疾患進行又は何らかの原因による死亡のうちいずれか早い方までの時間の長さを指す。例えば、DORは、治験責任医師によって決定されるRECIST v1.1に従って、文書化された客観的応答の最初の発生から、最初に文書化された疾患進行又は何らかの原因による死亡のいずれか早い方の時点までの時間として定義され得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、がんの治療において有用な化合物を指す。化学療法剤の例としては、EGFR阻害剤(低分子阻害剤を含む(例.エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.);PD183805(CI1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルフォリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチナミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU5271;Pfizer);及びラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016又はN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[(2-メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリナミンのようなデュアルEGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤);チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、EGFR阻害剤;TAK165(Takeda)などの低分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤;CP-724,714、ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤(Pfizer及びOSI);EGFRと優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能)などのデュアルHER阻害剤;PKI-166(Novartis);カネルチニブ(CI-1033;Pharmacia)などの汎HER阻害剤;Raf-1シグナル伝達を阻害するアンチセンス薬剤ISIS-5132(ISIS Pharmaceuticals)などのRaf-1阻害剤;メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKline)などの非HER標的チロシンキナーゼ阻害剤;スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizer)などのマルチターゲットチロシンキナーゼ阻害剤;バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AG)などのVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤;MAPK細胞外調節キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmacia);PD153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリンなどのキナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えばCGP59326、CGP60261及びCGP62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含むチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERをコードする核酸に結合するもの);キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);CI-1033(Pfizer)などの汎HER阻害剤;アフィニタック(ISIS3521;Isis/Lilly);PKI166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone);及びラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)));ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標),Millennium Pharm.)などのプロテアソーム阻害剤;ジスルフィラム;没食子酸エピガロカテキン;サリノスポラミドA;カルフィルゾミブ;17-AAG(ゲルダナマイシン);ラジシコール;乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A);フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca);レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis);フィナスネート(VATALANIB(登録商標)、Novartis);オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi);5-FU(5-フルオロウラシル);ロイコボリン;ロナファミブ(SCH66336);ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs);AG1478、チオテパ及びシトキサン(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチルメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメルアミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;5α-リダクターゼ(フィナステリド及びデュタステリドを含む);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン;アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成アナログKW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エネジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1及びカリケアマイシンω1);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連するクロモプロテイン・エネディイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノミシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナリン剤;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダムノール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖体複合体(JHS Natural Products);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガセトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、プロドラッグ及び誘導体が挙げられる。
【0117】
また、化学療法剤としては、(i)腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフィン)を含む抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)など;(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)など;(iii)抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;ブセレリン、トリプテレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全トランスレチノイン酸、フェンレチニド及びトロキサシタビン(a1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Ralf及びH-Rasなど;(vii)リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤;(viii)遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)及びVAXID(登録商標);(ix)ビンカ(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)、NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン)、タキサン(例えば、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、及びドセタキセル)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシン)及びDNAアルキル化剤(例えば、タモキシゲン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル及びara-C)を含む増殖阻害剤;並びに(x)上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、プロドラッグ、及び誘導体が挙げられる。
【0118】
本明細書で使用される「細胞傷害性剤」という用語は、細胞に有害な(例えば、細胞死を引き起こす、増殖を阻害する、又は細胞機能を妨げる)任意の薬剤を指す。細胞傷害性剤としては、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤;核酸分解酵素などの酵素及びその断片;並びにその断片及び/又はバリアントを含む、細菌、真菌、植物又は動物由来の低分子毒素又は酵素的に活性な毒素などの毒素が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な細胞傷害性剤は、抗微小管剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、LDH-Aの阻害剤、脂肪酸生合成の阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、並びにがん代謝の阻害剤から選択され得る。一例では、細胞傷害性剤は白金系化学療法剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)である。一例では、細胞傷害性剤は、EGFRのアンタゴニスト、例えば、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ)である。一例では、細胞傷害性剤は、RAF阻害剤、例えばBRAF及び/又はCRAF阻害剤である。一例では、RAF阻害剤はベムラフェニブである。一例では、細胞傷害性剤はPI3K阻害剤である。
【0119】
「患者」又は「対象」という用語は、ヒトの患者又は対象を指す。例えば、患者又は対象は成人であり得る。
【0120】
「抗体」という用語は、具体的には、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。一例では、抗体は完全長モノクローナル抗体である。
【0121】
本明細書において使用されるIgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、その定常領域の化学特性及び抗原特性によって決まる免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
【0122】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知であり、一般的に、例えば、Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に記載されている。抗体は、抗体と1つ又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
【0123】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。この用語は、Fc領域を含む抗体を指す。
【0124】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域が含まれる。一態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、宿主細胞によって産生された抗体は、重鎖のC末端から1つ又は複数、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後切断を受けることがある。したがって、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現により宿主細胞によって生成された抗体は、完全長重鎖を含み得るか、又は完全長重鎖の切断されたバリアントを含み得る。これは、重鎖の最後の2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447)である場合にあり得る。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(Lys447)は存在する場合もあれば、存在しない場合もある。Fc領域を含む重鎖のアミノ酸配列は、別途示されない限り、本明細書ではC末端リジン(Lys447)なしで示される。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、さらなるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447)を含む。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、さらなるC末端グリシン残基(G446)を含む。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、さらなるC末端リジン残基(K447)を含む。一実施態様では、Fc領域は、重鎖の単一アミノ酸置換N297Aを含む。本明細書に別途指定がない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されているような、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けに従う。
【0125】
「ネイキッド抗体」とは、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体のことを指す。ネイキッド抗体は、薬学的組成物中に存在し得る。
【0126】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち該集団を構成する個々の抗体が、可能性のあるバリアント抗体(これらは例えば天然に存在する変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の製造中に生じ、そのようなバリアントは通常少量存在する)を除き、同一であり且つ/又は同じエピトープに結合する。モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、種々の決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明によるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な技術によって製造することができる。
【0127】
本明細書で使用される「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列内で超可変であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを意味する。
【0128】
一般に、抗体は、6つのCDR:VHに3つ(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、VLに3つ(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含む。本明細書の例示的なCDRには、以下が含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))、並びに
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)に存在する抗原接触部位(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))。
【0129】
特に指示がない限り、CDRは、上掲のKabatらに従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上掲のChothia、上掲のMcCallum、又は任意の他の科学的に認められた命名システムに従い決定することもできることを理解するであろう。
【0130】
「フレームワーク」又は「FR」は、相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4からなる。したがって、CDR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)において次の配列で現れる:FR1-CDR-H1(CDR-L1)-FR2-CDR-H2(CDR-L2)-FR3-CDR-H3(CDR-L3)-FR4。
【0131】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基番号付け」又は「Kabatにおけるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の直鎖状のアミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮形に対応するより少ないアミノ酸又は可変ドメインのFR若しくはHVRへの挿入物に対応する追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabat番号付けは、抗体の配列の相同領域における「標準的な」Kabat番号付け配列とのアライメントによって、所与の抗体について決定することができる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「単一特異性」抗体という用語は、同じ抗原の同じエピトープにそれぞれ結合する1つ以上の結合部位を有する抗体を示す。本明細書で使用される「二重特異性」抗体という用語は、抗体が少なくとも2つの異なる抗原に特異的に結合できること、例えば、異なる抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに結合する抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)の対によってそれぞれ形成される2つの結合部位を意味する。このような二重特異性抗体は、1+1フォーマットである。他の二重特異性抗体フォーマットは、2+1フォーマット(第1の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位と、第2の抗原又はエピトープに対する1つの結合部位とを含む)、又は2+2フォーマット(第1の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位と、第2の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位とを含む)である。典型的には、二重特異性抗体は2つの抗原結合部位を含み、これらの各々は異なる抗原に対して特異的である。
【0133】
本明細書で使用される場合、「PD-L1陽性腫瘍細胞分率」は、免疫組織化学(IHC)アッセイ、例えば抗体SP263、SP142、22C3、又は28-8を使用してPD-L1を染色するためのIHCアッセイに関連した試料の染色後に、試料中に存在する全ての生存腫瘍細胞に対して任意の強度で部分的又は完全な膜染色(細胞質染色を除く)を示す生存腫瘍細胞のパーセンテージである。したがって、PD-L1陽性腫瘍細胞分率は、PD-L1 IHC SP142(Ventana)アッセイを使用して、例えば、式:PD-L1陽性腫瘍細胞分率=(PD-L1陽性腫瘍細胞の数)/(PD-L1陽性及びPD-L1陰性腫瘍細胞の総数)によって計算することができ、腫瘍細胞及び全ての非腫瘍細胞(例えば、腫瘍浸潤免疫細胞、正常細胞、壊死細胞及び残屑)のPD-L1細胞質染色は、評価及びスコアリングから除外される。任意の所与の診断PD-L1抗体は、PD-L1陽性腫瘍細胞分率を得るために使用することのできる特定のIHCアッセイプロトコール及び/又はスコアリング用語に対応し得ることが理解されるであろう。例えば、PD-L1陽性腫瘍細胞分率は、それぞれBenchmark ULTRAでのOPTIVIEW(登録商標)検出、AutostainerLink 48でのEnVision Flex、Benchmark ULTRAでのOPTIVIEW(登録商標)検出及び増幅、又はAutostainerLink 48でのEnVision Flexを使用して、SP263、22C3、SP142、又は28-8で染色した腫瘍細胞試料から得ることができる。
【0134】
本明細書で使用される場合、「Ventana SP142 IHCアッセイ」は、Ventana PD-L1(SP142)アッセイ添付文書(アリゾナ州ツーソン:Ventana Medical Systems,Inc.)に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0135】
本明細書で使用される場合、「Ventana SP263 IHCアッセイ」は、Ventana PD-L1(SP263)アッセイ添付文書(アリゾナ州ツーソン:Ventana Medical Systems,Inc.)に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0136】
本明細書で使用される場合、「pharmDx 22C3 IHCアッセイ」は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPD-L1 IHC 22C3 pharmDx添付文書(カリフォルニア州カーピンテリア:Dako,Agilent Pathology Solutions)に従って行われる。
【0137】
本明細書で使用される場合、「pharmDx 28-8 IHCアッセイ」は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPD-L1 IHC 28-8 pharmDx添付文書(カリフォルニア州カーピンテリア:Dako,Agilent Pathology Solutions)に従って行われる。
【0138】
「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通例含まれる説明書であって、そのような治療用製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告についての情報を含む説明書を指すために使用される。
【0139】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて(in combination with)」とは、別の治療様式に加えて1つの治療様式を投与することであり、例えば、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)を標的とする二重特異性抗体と、抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)又はVEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の投与を含む治療レジメンを指す。したがって、「と組み合わせて」とは、患者への他の治療様式の投与前、投与中、又は投与後の1つの治療様式の投与を指す。
【0140】
1つ又は複数の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同一治療サイクル中、1つ又は複数の他の薬物と同じ治療日に、また必要に応じて1つ又は複数の他の薬物と同じ時間に投与される。例えば、3週間ごとに行われるがん療法の場合、同時に投与される薬物はそれぞれ3週間のサイクルの1日目に投与される。
【0141】
本明細書で使用される場合、「有害事象」又は「AE」という用語は、医学的治療又は手順に関連すると考えられても考えられなくてもよい医学的治療又は手順の使用に時間的に関連する任意の好ましくない意図しない徴候(異常な検査所見を含む)、症状又は疾患を指す。有害事象は、国立がん研究所有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)v4.0又はv5.0(NIH CTCAE)によって定義される「グレード」によって分類することができる。いくつかの態様では、AEは低グレードAE、例えばグレード1又はグレード2AEである。グレード1には、無症候性又は軽度の症状を有するAEが含まれる。グレード2には、中等度であり、年齢に応じた手段的日常生活動作(例えば、食事の準備、食料品又は衣類の買い物)を制限し、局所的又は非侵襲的介入の必要を示すAEが含まれる。他の実例では、AEは高グレードAE、例えばグレード3、グレード4、又はグレード5のAEである。いくつかの実例では、AEはグレード3又はグレード4のAEである。グレード3には、重篤又は医学的に重大であるが、直ちに生命を脅かすものではなく、入院又は長期の入院の必要を示すAEが含まれる。グレード4には、生命を脅かす結果を有し、緊急の介入治療の必要を示すAEが含まれる。グレード5には、死をもたらし、又は死に関連するAEが含まれる。
【0142】
本明細書で使用される場合、「治療関連AE」という用語は、治療、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト療法(例えば、アテゾリズマブ療法)及び/又は抗TIGITアンタゴニスト抗体療法(例えば、チラゴルマブ療法)の結果として発生したと治験責任医師により判断されるAEを指す。
【0143】
本出願内で使用される「価」という用語は、抗原結合分子内に特定の数の結合ドメインが存在することを意味する。この場合、「二価」、「四価」及び「六価」という用語は、抗原結合分子中のそれぞれ2個の結合ドメイン、4個の結合ドメイン及び6個の結合ドメインの存在を示す。本発明の二重特異性抗体は、少なくとも「二価」であり、「三価」又は「多価」(例えば、「四価」又は「六価」)であってもよい。特定の態様では、本発明の抗体は、2つ以上の結合部位を有し、二重特異性である。すなわち、2つより多い結合部位が存在する(すなわち、抗体が三価又は多価である)場合でも、抗体は二重特異性であり得る。
【0144】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、交差Fab断片;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);抗体断片から作られる多重特異性抗体及び単一ドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の総説としては、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994を参照。また、国際公開第93/16185号及び米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が長くなったFab及びF(ab’)2断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照。ダイアボディは、二価又は二重特異性である2つの抗原結合ドメインを含む抗体断片であり、例えば、EP第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む抗体断片である。特定の実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照)。これに加え、抗体断片は、VHドメインに特徴的な(すなわち、VLドメインと共に集合させることが可能な)、又はVLドメインに特徴的な(すなわち、機能的抗原結合部位にVHドメインと共に集合させることが可能な)単鎖ポリペプチドを含み、それによって、完全長抗体の抗原結合特性を与える。抗体断片は、本明細書に記載のように、組換え宿主細胞(例えば大腸菌又はファージ)による産生の他、インタクトな抗体のタンパク質消化を含むがこれらに限定されない種々の技術で作製することができる。
【0145】
インタクト抗体のパパイン消化により、2つの同一の抗原結合断片を生じ、これは、それぞれ重鎖及び軽鎖可変ドメインと、さらに、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む「Fab」断片と呼ばれる。従って、本明細書で使用される場合、「Fab断片」との用語は、軽鎖のVLドメイン及び定常ドメイン(CL)を含む軽鎖断片と、重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を担持するFab’断片である。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)と、Fc領域の一部とを有するF(ab’)2断片が得られる。
【0146】
「cross-Fab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」という用語は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されたFab断片を指す。クロスオーバーFab分子の2つの可能な鎖組成が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の可変領域は交換されており、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(VLVH)とも呼ばれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(CLCH1)とも呼ばれる。
【0147】
「単鎖Fab断片」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、ここで前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端方向に次の順序:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し;前記リンカーは、少なくとも30アミノ酸、好ましくは32~50アミノ酸のポリペプチドである。前記単鎖Fab断片は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然のジスルフィド結合を介して安定化されている。加えて、これらの一本鎖Fab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabat番号付けによると、可変重鎖の44位及び可変軽鎖の100位)を介した鎖間ジスルフィド結合の生成によってさらに安定化される可能性がある。
【0148】
「クロスオーバー単鎖Fab断片」又は「x-scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーから成るポリペプチドであり、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端方向に次の順序:a)VH-CL-リンカー-VL-CH1及びb)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し;VHとVLは一緒になって、ある抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成し、且つ前記リンカーは、少なくとも30アミノ酸のポリペプチドである。加えて、これらのx-scFab分子は、システイン残基(例えばKabat番号付けによる可変重鎖の44位及び可変軽鎖の100位)の挿入による鎖間ジスルフィド結合の生成によってさらに安定化されることがある。
【0149】
「単鎖可変断片(scFv)」は、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドを用いて連結された、抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンが豊富であり、同様に可溶性のためにセリン又はスレオニンが豊富であり、VHのN末端をVLのC末端に連結することができ、その逆も可能である。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にも関わらず、元の抗体の特異性を保持している。scFv抗体は、例えばHouston,J.S.,Methods in Enzymol.203(1991)4696に記載されている。これに加え、抗体断片は、VHドメインに特徴的な(すなわち、VLドメインと共に集合させることが可能な)、又はVLドメインに特徴的な(すなわち、機能的抗原結合部位にVHドメインと共に集合させることが可能な)単鎖ポリペプチドを含み、それによって、完全長抗体の抗原結合特性を与える。
【0150】
単一ドメイン抗体は、一本の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である。第1の単一ドメインは、ラクダ由来の抗体重鎖の可変ドメインに由来した(ナノボディ又はVHH断片)。さらに、単一ドメイン抗体という用語は、自律的なヒト重鎖可変ドメイン(aVH)又はサメ由来VNAR断片を含む。フィブロネクチンは、抗原に結合するように操作可能な足場である。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15反復単位の10番目のドメインの天然アミノ酸配列を有する骨格からなる。β-サンドイッチの片方の端にある3つのループを、アドネクチンが対象となる治療標的を特異的に認識することができるように操作することができる。さらなる詳細については、Protein Eng.Des.Sel.18,435-444(2005)、米国特許出願公開第20080139791号、国際公開第2005056764号及び米国特許第6818418号を参照されたい。ペプチドアプタマーは、定常足場タンパク質、典型的には活性部位に挿入された制限された可変ペプチドループを含むチオレドキシン(TrxA)からなるコンビナトリアル認識分子である。さらなる詳細については、Expert Opin.Biol.Ther.5,783797(2005)を参照されたい。ミクロボディは、3~4のシステイン架橋を含む、25~50アミノ酸長の天然に存在する微小タンパク質に由来し、微小タンパク質の例としては、KalataBI、コノトキシン及びノッチンが挙げられる。微小タンパク質は、ミクロタンパク質の全体的な折りたたみに影響を与えることなく、25アミノ酸までを含むように操作することができるループを有する。操作されたノッチンドメインのさらなる詳細については、国際公開第2008098796号を参照されたい。
【0151】
「PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体」、「PD-1及びLAG3に特異的に結合する二重特異性抗体」、「PD-1及びLAG3に特異的な二重特異性抗原結合分子」又は「抗PD-1/抗LAG3抗体」は、本明細書で相互に置き換え可能に使用され、PD-1及びLAG3に、抗体がPD-1及びLAG3を標的とする際に診断及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性で結合することが可能な二重特異性抗体を指す。
【0152】
「PD-1」という用語は、プログラム細胞死タンパク質1としても知られ、1992年に最初に記述された288アミノ酸のI型膜タンパク質である(Ishida et al.,EMBO J.,11(1992),3887-3895)。PD-1は、T細胞制御因子の伸長したCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、2つのリガンドPD-L1(B7-H1、CD274)及びPD-L2(B7-DC、CD273)を有する。このタンパク質の構造は、細胞外IgVドメインと、その後に膜貫通領域と、細胞内尾部とを含む。細胞内尾部は、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ及び免疫受容体チロシン系スイッチモチーフ中に位置する2つのリン酸化部位を含み、PD-1がTCRシグナルを負の方向に制御することを示唆している。このことは、リガンド結合の際の、PD-1の細胞質尾部に対するSHP-1及びSHP-2ホスファターゼの結合に一致している。PD-1は、ナイーブT細胞では発現しないが、T細胞受容体(TCR)が介在する活性化に従ってアップレギュレーションされ、活性化したT細胞及び疲弊したT細胞の両方で観察される(Agata et al.,Int.Immunology 8(1996)、765-772)。これらの疲弊したT細胞は、機能不全の表現型を有し、適切に応答することができない。PD-1は、比較的広い発現パターンを有するが、その最も重要な役割は、T細胞に対する共抑制受容体としての役割であろう(Chinai et al、Trends in Pharmacological Sciences 36(2015)、587-595)。したがって、現在の治療手法は、T細胞応答を向上させるために、PD-1とそのリガンドとの相互作用をブロックすることに集中している。「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD1」、「PDCD1」、「hPD-1」及び「hPD-I」という用語は、相互に置き換え可能に使用することができ、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、PD-1と共通の少なくとも1つのエピトープを有するアナログを含む。ヒトPD-1のアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)受託番号Q15116(配列番号55)に示される。
【0153】
「LAG3」又は「Lag-3」又は「リンパ球活性化遺伝子-3」又は「CD223」という用語は、本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意の天然LAG3を指す。この用語は、「完全長」の未プロセシングLAG3、並びに細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のLAG3を包含する。この用語は、天然に存在するLAG3のバリアント、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。好ましい一実施態様では、「LAG3」という用語は、ヒトLAG3を指す。プロセシングされた(シグナル配列なし)例示的なLAG3のアミノ酸配列を配列番号56に示す。例示的な細胞外ドメイン(ECD)LAG3のアミノ酸配列を配列番号57に示す。
【0154】
「抗LAG3抗体」及び「LAG3に結合する抗体」という用語は、抗体がLAG3を標的とする診断剤及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性でLAG3に結合することができる抗体を指す。一態様では、無関係な非LAG3タンパク質に対する抗LAG3抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるLAG3に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施態様では、LAG3に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、又は0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。特定の態様では、抗LAG3抗体は、異なる種由来のLAG3の中で保存されているLAG3のエピトープに結合する。好ましい一実施態様では、「抗LAG3抗体」、「ヒトLAG3に特異的に結合する抗体」、及び「ヒトLAG3に結合する抗体」とは、ヒトLAG3抗原又はその細胞外ドメイン(ECD)に、KD値が1.0x10-8mol/l以下、一実施態様ではKD値が1.0x10-9mol/l以下、一実施態様ではKD値が1.0x10-9mol/lから1.0x10-13mol/lの結合親和性で特異的に結合する抗体を指す。この観点で、結合親和性は、標準的な結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴技術(BIAcore(登録商標)、GE-Healthcare Uppsala、スウェーデン)を用いて、例えば、LAG3細胞外ドメインを用いて決定される。「抗LAG3抗体」という用語は、LAG3及び第2の抗原に結合することが可能な二重特異性抗体も包含する。
【0155】
このノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5731168号、米国特許第7695936号;Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの接触面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの接触面にある対応する空洞(「ホール」)とを導入し、突起を空洞内に配置してヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるようにする方法である。突起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えることによって構築される。大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、突起と同じ又は同様の大きさの相補的な空洞が第2のポリペプチドの接触面に作られる。突起及び空洞は、例えば部位特異的変異導入又はペプチド合成によって、ポリペプチドをコードする核酸を変化させることにより作製することができる。具体的な実施態様では、ノブ修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの1つにアミノ酸置換T366Wを含み、ホール修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの他の1つにアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。さらに具体的な実施態様では、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換S354Cをさらに含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換Y349Cをさらに含む。これら2つのシステイン残基の導入によってFc領域の2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、それにより二量体をさらに安定化させる(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
【0156】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のアイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);抗体依存性細胞貪食(ADCP);サイトカイン分泌;抗原提示細胞による免疫複合体媒介抗原取り込み;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞の活性化が含まれる。
【0157】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域による結合に続いて、受容体保有細胞を刺激してエフェクター機能を発揮させるシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)が含まれる。特定の活性化Fc受容体は、ヒトFcγRIIIaである(UniProt受託番号P08637、バージョン141を参照されたい)。
【0158】
「ペプチドリンカー」という用語は、1つ以上のアミノ酸、典型的には、約2~20のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当技術分野で知られているか、又は本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば(G4S)n、(SG4)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーであり、ここで「n」は通常1から10、典型的には2から4の数字、特に2であり、すなわちGGGGS(配列番号46)、GGGGSGGGGS(配列番号47)、SGGGGSGGGG(配列番号48)及びGGGGSGGGGSGGGG(配列番号49)から成る群より選択されるペプチドであるが、配列GSPGSSSSGS(配列番号50)、(G4S)3(配列番号51)、(G4S)4(配列番号52)、GSGSGSGS(配列番号53)、GSGSGNGS(配列番号54)、GGSGSGSG(配列番号55)、GGSGSG(配列番号56)、GGSG(配列番号57)、GGSGNGSG(配列番号58)、GGNGSGSG(配列番号59)及びGGNGSG(配列番号60)も含む。特に興味深いペプチドリンカーは、(G4S)(配列番号46)、(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号47)、(G4S)3(配列番号51)、及び(G4S)4(配列番号53)、より具体的には(G4S)2(配列番号47)又はGGGGSGGGGS(配列番号47)である。
【0159】
「~に融合する」又は「~に連結する」とは、構成要素(例えば、抗原結合ドメイン及びFcドメイン)が、ペプチド結合によって直接的に、又は1つ若しくは複数のペプチドリンカーを介して連結することを意味する。
【0160】
「VEGFアンタゴニスト」又は「VEGF特異的アンタゴニスト」という用語は、VEGFに結合するか、VEGF発現レベルを低減させるか、又はVEGFの生物学的活性(1つ以上のVEGF受容体へのVEGF結合、VEGFシグナル伝達、及びVEGF媒介性血管新生、並びに内皮細胞生存又は増殖を含むが、これらに限定されない)を中和、遮断、阻害、抑止、低減、又は妨害することができる分子を指す。例えば、VEGFの生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減、又は妨害することができる分子は、1つ以上のVEGF受容体(VEGFR)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、膜結合型VEGF受容体(mbVEGFR)、又は可溶性VEGF受容体(sVEGFR))に結合することによって、その効果を発揮し得る。このようなアンタゴニストは、本明細書では「VEGFR阻害剤」とも称される。本発明の方法に有用なVEGF特異的アンタゴニストとしては、VEGFに特異的に結合するポリペプチド、抗VEGF抗体及びその抗原結合断片、VEGFに特異的に結合し、それによって1つ以上の受容体への結合を封じる、受容体分子及び誘導体、融合タンパク質(例えば、VEGF-Trap(Regeneron))、及びVEGF121-ゲロニン(Peregrine)が挙げられる。VEGF特異的アンタゴニストとしてはまた、VEGFポリペプチドのアンタゴニストバリアント、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補的な低分子RNA、VEGFを標的とするリボザイム、VEGFに対するペプチボディ、及びVEGFアプタマーが挙げられる。VEGFアンタゴニストとしてはまた、VEGFRに結合するポリペプチド、抗VEGFR抗体(例えば、ベバシズマブ)、及びその抗原結合断片、並びにVEGFRに結合し、それによってVEGFの生物学的活性(例えば、VEGFのシグナル伝達)を遮断、阻害、抑止、低減、若しくは妨害する誘導体、又は融合タンパク質が挙げられる。VEGF特異的アンタゴニストとしてはまた、VEGF又はVEGFRに結合し、VEGF生物学的活性を、遮断、阻害、抑止、低減、又は妨害することができる非ペプチド低分子が挙げられる。したがって、「VEGF生物活性」という用語は、具体的には、VEGFのVEGF媒介性生物学的活性を含む。特定の実施態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベル又は生物学的活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減させるか又は阻害する。いくつかの実施態様では、VEGF特異的アンタゴニストによって阻害されるVEGFは、VEGF(8-109)、VEGF(1-109)、又はVEGF165である。
【0161】
本明細書で使用される場合、VEGFアンタゴニストとしては、抗VEGFR2抗体及び関連する分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体及び関連する分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap-Eye、EYLEA(登録商標))、及びジブ-アフリベルセプト(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP-0250、バヌシズマブ(VEGF-ANG2)、及びUS2001/0236388に開示されている二重特異性抗体)、抗VEGFアーム、抗VEGFR1アーム、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGFA抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ)、抗VEGFB抗体、抗VEGFC抗体(例えば、VGX-100)、抗VEGFD抗体、並びに非ペプチド低分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニブ、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、VEGFアンタゴニストは、受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ又はアキシチニブなどの多重標的化受容体チロシンキナーゼ阻害剤)を含むチロシンキナーゼ阻害剤であり得る。
【0162】
「抗VEGF抗体」とは、十分な親和性及び特異性でVEGFに結合する抗体である。特定の実施態様では、抗体は、VEGFに対して十分に高い結合親和性を有し、例えば、抗体は、100nM~1pMのKD値でhVEGFに結合し得る。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴系アッセイ(PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されているようなBIAcore(登録商標)アッセイ等)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び競合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA))によって決定され得る。
【0163】
特定の実施態様では、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患又は状態を標的とし、且つそれを妨害する際に治療剤として使用され得る。また、抗体は、例えば治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイに供され得る。そのようなアッセイは、当技術分野で既知であり、抗体に対する標的抗原及び意図される使用に依存する。例としては、HUVEC阻害アッセイ;腫瘍細胞成長阻害アッセイ(例えば、国際公開第89/06692号に記載のもの);抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体媒介性細胞傷害(CDC)アッセイ(米国特許第5,500,362号);並びにアゴニスト活性又は造血アッセイ(国際公開第95/27062号を参照)が挙げられる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF-B又はVEGF-C等の他のVEGFホモログにも、PIGF、PDGF、又はbFGF等の他の成長因子にも結合しない。一実施態様では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生される、モノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。別の実施態様では、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(BV;AVASTIN(登録商標))として知られる抗体を含むがこれに限定されない、Presta et al.(Cancer Res.57:4593-4599,1997)に従って生成される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。
【0164】
「rhuMAb VEGF」又は「AVASTIN(登録商標)」としても知られる抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BV)」は、Presta et al.(Cancer Res.57:4593-4599,1997)に従って作製された組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFの、その受容体への結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域の大部分を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%は、ヒトIgG1に由来し、配列の約7%は、マウス抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、分子量が約149,000ダルトンであり、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行された米国特許第6884879号にさらに記載されており、その全開示が参照により本明細書中に援用される。
【0165】
II.がんの治療方法及び組成物
A.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含む方法
一態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を約600mgの固定用量(例えば600mgの固定用量)で3週間ごとに対象に投与することを含む。
【0166】
PD-1及びLAG3を標的とする例示的な二重特異性抗体は、以下のセクションVIIIに提供される。PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の特定の例は、本明細書に定義されるPD1-LAG3である。
【0167】
最近、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫を有する患者におけるレラトリマブとニボルマブの併用による、PD-1とLAG3の二重阻害に関する臨床的概念実証が行われた(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34、2022)。機能不全腫瘍特異的Tリンパ球上のPD-1及びLAG-3の両方を標的とすることによって、PD-1とLAG3を標的とする二重特異性抗体は、効果的な抗腫瘍免疫応答を回復させ、現在利用可能なチェックポイント阻害剤よりもさらに多くの延命効果をがん患者に提供することを目指している。PD-1/LAG-3共発現機能不全T細胞を優先的に標的化し、潜在的に腫瘍微小環境におけるLAG-3発現Tregの標的化を減少させることによって、PD-1とLAG3を標的とする二重特異性抗体は、抗腫瘍免疫応答を回復させながらTreg媒介免疫抑制効果の再活性化を回避し得る。
【0168】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に二重特異性抗体を対象に投与する(例えば、静脈内投与する)ことを含む。
【0169】
がんは、固形腫瘍(例えば、LAG3発現CD8+ T細胞を含む腫瘍微小環境を有する固形腫瘍)であり得る。例えば、いくつかの態様では、がんは、皮膚がん(例えば、黒色腫)、肝臓がん(例えば、肝細胞癌(HCC))、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、腎臓がん(kidney cancer)、腎臓がん(renal cancer)(例えば、腎細胞癌(RCC))、膀胱がん(例えば、膀胱がん(転移性尿路上皮がん(mUC)など)、乳がん(トリプルネガティブ乳がん(TNBC)など)、食道がん(食道扁平上皮癌(ESCC)など)、膵臓がん、子宮頸がん、頭頸部がん、胃がん、大腸がん、又は卵巣がんであり得る。いくつかの態様では、がんは皮膚がん(例えば、黒色腫)、肝臓がん(例えば、HCC)、肺がん(例えば、NSCLC)、腎臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、腎臓がん(renal cancer)(例えば、RCC)、膀胱がん(例えば、mUC)、乳がん(例えば、TNBC)、又は食道がん(例えば、ESCC)である。がんは、局所進行性又は転移性であり得る。
【0170】
皮膚がんが黒色腫である態様では、黒色腫は、例えば、以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫(例えば、米国がん合同委員会(AJCC)病期分類システム(切除不能なステージIII又はステージIV)により組織学的に確認された切除不能又は転移性黒色腫)であり得る。いくつかの態様では、黒色腫は、(a)測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫;(b)切除不能なステージIIIの黒色腫;又は(c)ステージIVの黒色腫である。いくつかの態様では、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない。
【0171】
いくつかの態様では、対象は、全身性抗がん療法を以前に受けていない。
【0172】
いくつかの態様では、対象は、免疫調節剤を含む抗がん療法により以前に治療されておらず、例えば、チェックポイント阻害剤(CPI)を含む抗がん剤により治療されておらず、例えば、抗プログラム死リガンド1(PD-L1)/PD-1剤により治療されておらず、又は抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4)剤により治療されていない。他の態様では、対象は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法として免疫調節剤(例えば、CPI)により以前に治療されている。
【0173】
いくつかの態様では、対象は、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない。
【0174】
いくつかの態様では、対象は、抗LAG3療法で以前に治療されていない。
【0175】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成し、例えば、腫瘍において少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のROを達成する。
【0176】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0177】
B.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体とベバシズマブを含む方法
いくつかの態様では、該方法は、VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を対象に投与すること(例えば、静脈内投与すること)をさらに含む。例示的なVEGFアンタゴニストは、以下のセクションIXに提供される。
【0178】
いくつかの態様では、VEGFアンタゴニストは、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の前に投与される。他の態様では、VEGFアンタゴニストは、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の後に投与される。なおさらなる態様では、VEGFアンタゴニストと、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体とが同時に投与される。
【0179】
いくつかの態様では、該方法は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を約15mg/kgの用量(例えば、15mg/kgの用量)で3週間ごとに対象に投与することを含む。
【0180】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間であり、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目にVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を対象に投与することを含む。
【0181】
したがって、一態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、(1)PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体(例えば、以下のセクションVIIIで提供されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体)及び(2)VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、対象に、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で投与し、VEGFアンタゴニストを3週間ごとに15mg/kgの用量で投与することを含む。
【0182】
他の態様では、該方法は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を約10mg/kgの用量(例えば、10mg/kgの用量)で2週間ごとに対象に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは28日間であり、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目及び15日目にVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を対象に投与することを含む。
【0183】
別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療する方法における使用のための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体(例えば、上記の方法のいずれかで使用するための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体)を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含む。PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の特定の例は、本明細書に定義されるPD1-LAG3である。
【0184】
別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための医薬の製造における、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の使用を提供し、ここで、該二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含み、該二重特異性抗体は、3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与されるものである。
【0185】
C.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体と抗TIGITアンタゴニスト抗体を含む方法
いくつかの態様では、該方法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)を対象に投与すること(例えば、静脈内投与すること)をさらに含む。
【0186】
例示的な抗TIGITアンタゴニスト抗体は、以下のセクションVIIに提供される。
【0187】
いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の前に投与される。他の態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の後に投与される。なおさらなる態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体と、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体とが同時に投与される。
【0188】
いくつかの態様では、該方法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)を約600mgの固定用量(例えば、600mgの固定用量)で3週間ごとに対象に投与することを含む。
【0189】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間であり、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの約1日目(例えば、1日目)に抗TIGITアンタゴニスト抗体を対象に投与することを含む。
【0190】
したがって、一態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、(1)PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体(例えば、以下のセクションVIIIで提供されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体;特に本明細書で定義されるPD1-LAG3)及び(2)抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、対象に、二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で投与し、抗TIGITアンタゴニスト抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で投与することを含む。
【0191】
III.肝臓がんの治療方法及び組成物
A.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含む方法
一態様では、本開示は、肝臓がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を約600mgの固定用量(例えば600mgの固定用量)で3週間ごとに対象に投与することを含む。
【0192】
PD-1及びLAG3を標的とする例示的な二重特異性抗体は、以下のセクションVIIIに提供される。PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の特定の例は、本明細書に定義されるPD1-LAG3である。
【0193】
別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに1200mgの固定用量で対象に投与することを含む。
【0194】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目に二重特異性抗体を対象に投与する(例えば、静脈内投与する)ことを含む。
【0195】
別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を2週間ごとに2100mgの固定用量で対象に投与することを含む。
【0196】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは28日間である。いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルの1日目及び15日目に二重特異性抗体を対象に投与する(例えば、静脈内投与する)ことを含む。
【0197】
いくつかの態様では、肝臓がんは、肝細胞癌(HCC)である。いくつかの態様では、肝臓がん(例えば、HCC)は、LAG3発現CD8+ T細胞を含む腫瘍微小環境を有する。HCCは、例えば、局所進行性、転移性、及び/又は切除不能であり得る。
【0198】
いくつかの態様では、対象は全身性抗がん療法を以前に受けていない。
【0199】
いくつかの態様では、対象は、免疫調節剤を含む抗がん療法により以前に治療されておらず、例えば、チェックポイント阻害剤(CPI)を含む抗がん剤により治療されておらず、例えば、抗プログラム死リガンド1(PD-L1)/PD-1剤により治療されておらず、又は抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4)剤により治療されていない。他の態様では、対象は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法として免疫調節剤(例えば、CPI)により以前に治療されている。
【0200】
いくつかの態様では、対象は、転移性疾患又は切除不能な疾患について以前に治療されていない。
【0201】
いくつかの態様では、対象は、抗LAG3療法で以前に治療されていない。
【0202】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は腫瘍において少なくとも90%のLAG3受容体占有率(RO)を達成し、例えば、腫瘍において少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のROを達成する。
【0203】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0204】
B.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体とベバシズマブを含む方法
いくつかの態様では、該方法は、VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を対象に投与すること(例えば、静脈内投与すること)をさらに含む。例示的なVEGFアンタゴニストは、以下のセクションIXに提供される。
【0205】
いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の前に投与される。他の態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の後に投与される。なおさらなる態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体と、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体とが同時に投与される。
【0206】
いくつかの態様では、該方法は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を約15mg/kgの用量(例えば、15mg/kgの用量)で3週間ごとに対象に投与することを含む。
【0207】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間であり、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目にVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を対象に投与することを含む。
【0208】
したがって、一態様では、本開示は、がんを有する対象を治療するための方法であって、(1)PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体(例えば、以下のセクションVIIIで提供されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体、特にPD1-LAG3)及び(2)VEGFアンタゴニストの1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、対象に、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で投与し、VEGFアンタゴニストを3週間ごとに15mg/kgの用量で投与することを含む。
【0209】
別の態様では、本開示は、肝臓がんを有する対象を治療するための方法であって、(1)PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体(例えば、以下のセクションVIIIで提供されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体)及び(2)VEGFアンタゴニストの1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、対象に、該二重特異性抗体を3週間ごとに1200mgの固定用量で投与し、VEGFアンタゴニストを3週間ごとに15mg/kgの用量で投与することを含む。
【0210】
他の態様では、該方法は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を約10mg/kgの用量(例えば、10mg/kgの用量)で2週間ごとに対象に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは28日間であり、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの1日目及び15日目にVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)を対象に投与することを含む。
【0211】
したがって、別の態様では、本開示は、肝臓がんを有する対象を治療するための方法であって、(1)PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体(例えば、以下のセクションVIIIで提供されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体)及び(2)VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブ)の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、対象に、該二重特異性抗体を2週間ごとに2100mgの固定用量で投与し、VEGFアンタゴニストを2週間ごとに10mg/kgの用量で投与することを含む。
【0212】
IV.黒色腫の治療方法及び組成物
A.抗TIGITアンタゴニスト抗体とPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含む方法
一態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療するための方法であって、抗TIGITアンタゴニスト抗体と、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体とを対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体及び二重特異性抗体は、1回又は複数回の投薬サイクルを含む投薬レジメンで対象に投与される。
【0213】
いくつかの態様では、該方法は、対象に、(a)抗TIGITアンタゴニスト抗体を約600mgの固定用量(例えば、600mgの固定用量)で3週間ごとに投与すること;及び(b)二重特異性抗体を約2100mgの固定用量(例えば、2100mgの固定用量)で3週間ごとに投与することを含む。
【0214】
いくつかの態様では、該方法は、対象に、(a)抗TIGITアンタゴニスト抗体を約600mgの固定用量(例えば、600mgの固定用量)で3週間ごとに投与すること;及び(b)二重特異性抗体を約600mgの固定用量(例えば、600mgの固定用量)で3週間ごとに投与することを含む。
【0215】
別の態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体(例えば、以下のセクションVIIIで提供されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体、特にPD1-LAG3)の1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、該方法は、該二重特異性抗体を3週間ごとに600mgの固定用量で対象に投与することを含み、黒色腫は、(a)切除不能なステージIIIの黒色腫であるか;又は(b)ステージIVの黒色腫(例えば、米国がん合同委員会(AJCC)病期分類システム(切除不能なステージIII又はステージIV)により組織学的に確認された切除不能又は転移性黒色腫)である。
【0216】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの約1日目(例えば、1日目)に抗TIGITアンタゴニスト抗体及び二重特異性抗体を対象に投与することを含む。
【0217】
いくつかの態様では、該方法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体の前に二重特異性抗体を対象に投与することを含む。他の態様では、該方法は、二重特異性抗体の前に抗TIGITアンタゴニスト抗体を対象に投与することを含む。
【0218】
いくつかの態様では、該方法は、二重特異性抗体及び抗TIGITアンタゴニスト抗体を対象に静脈内投与することを含む。
【0219】
i.ネオアジュバント療法
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルはネオアジュバント療法として投与される。
【0220】
いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体と、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、ネオアジュバント療法として投与される。
【0221】
いくつかの態様では、黒色腫は、測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫である。
【0222】
いくつかの態様では、対象は、治療開始前の6か月以内にin-transit転移を有していない。
【0223】
いくつかの態様では、対象は、がん免疫療法で以前に治療されていない。
【0224】
いくつかの態様では、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない。
【0225】
いくつかの態様では、第1の投薬サイクルは、手術の前に開始される。
【0226】
いくつかの態様では、少なくとも1回の投薬サイクル又は(例えば、1回、2回、3回、4回、又は4回を超える投薬サイクル)、又は少なくとも2回の投薬サイクル(例えば、2回、3回、4回、又は4回を超える投薬サイクル)が、手術前に完了する。いくつかの態様では、手術の前に2回の投薬サイクルが完了する。
【0227】
いくつかの態様では、手術は最後の投薬サイクル後約1週間以内に行われる。
【0228】
いくつかの態様では、手術は完全リンパ節郭清(CLND)である。
【0229】
いくつかの態様では、治療は、基準pRRと比較して病理学的奏効率(pRR)の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準pRRは、対照療法を受けた対象の集団のpRRである。いくつかの態様では、対照療法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含み、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含まない療法;PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含み、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含まない療法;又はイピリムマブ及びニボルマブを含む療法である。
【0230】
いくつかの態様では、治療は、基準EFSと比較して無症候生存期間(EFS)の増加;基準RFSと比較して無再発生存期間(RFS)の増加;基準OSと比較して全生存期間(OS)の増加;及び/又は基準ORRと比較して全奏効率(ORR)の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準EFS、RFS、OS、又はORRは、対照療法を受けた対象の集団のうちの1つである。いくつかの態様では、対照療法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含み、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含まない療法;PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含み、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含まない療法;又はイピリムマブ及びニボルマブを含む療法である。
【0231】
ii.ステージIV黒色腫の治療
いくつかの態様では、黒色腫は、ステージIVの黒色腫である。
【0232】
いくつかの態様では、(a)対象は、過去に2ライン以下の全身治療を受けており;又は(b)黒色腫がBRAF変異黒色腫であり、対象は過去に3ライン以下の全身治療を受けている。
【0233】
いくつかの態様では、治療は、基準ORRと比較して全奏効率(ORR)の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準ORRは、(a)PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含み、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含まない治療;及び/又は(b)抗TIGITアンタゴニスト抗体を含み、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含まない治療を受けた対象の集団のORRである。
【0234】
いくつかの態様では、治療は、基準PFSと比較して無増悪生存期間(PFS)の増加;基準DORと比較して奏効期間(DOR)の増加;基準OSと比較してOSの増加;基準DCRと比較して病勢コントロール率(DCR、例えば、12週間以上の安定した疾患、完全奏効(CR)、又は部分奏効(PR))の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準PFS、OS、DOR、又はDCRは、対照療法を受けた対象の集団のうちの1つである。いくつかの態様では、対照療法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含み、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含まない療法;PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含み、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含まない療法;又はイピリムマブ及びニボルマブを含む療法である。
【0235】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0236】
B.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含む方法
別の態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療するための方法であって、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を対象に投与することを含む方法を特徴とする。いくつかの実施態様では、二重特異性抗体は、1回又は複数回の投薬サイクルを含む投薬レジメンで対象に投与される。いくつかの実施態様では、1回又は複数回の投薬サイクルはネオアジュバント療法として投与される。
【0237】
いくつかの態様では、該方法は、二重特異性抗体を約2100mgの固定用量(例えば、2100mgの固定用量)で3週間ごとに対象に投与することを含む。
【0238】
特定の態様では、該方法は、二重特異性抗体を約600mgの固定用量(例えば、600mgの固定用量)で3週間ごとに対象に投与することを含む。
【0239】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの約1日目(例えば、1日目)に二重特異性抗体を対象に投与することを含む。
【0240】
いくつかの態様では、該方法は、二重特異性抗体を対象に静脈内投与することを含む。
【0241】
いくつかの態様では、黒色腫は、測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫である。
【0242】
いくつかの態様では、対象は、治療開始前の6か月以内にin-transit転移を有していない。
【0243】
いくつかの態様では、対象は、がん免疫療法で以前に治療されていない。
【0244】
いくつかの態様では、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない。
【0245】
いくつかの態様では、第1の投薬サイクルは、手術の前に開始される。
【0246】
いくつかの態様では、少なくとも1回の投薬サイクル又は(例えば、1回、2回、3回、4回、又は4回を超える投薬サイクル)、又は少なくとも2回の投薬サイクル(例えば、2回、3回、4回、又は4回を超える投薬サイクル)が、手術前に完了する。いくつかの態様では、手術の前に2回の投薬サイクルが完了する。
【0247】
いくつかの態様では、手術は最後の投薬サイクル後約1週間以内に行われる。
【0248】
いくつかの態様では、手術は完全リンパ節郭清(CLND)である。
【0249】
いくつかの態様では、治療は、基準pRRと比較して病理学的奏効率(pRR)の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準pRRは、対照療法を受けた対象の集団のpRRである。いくつかの態様では、対照療法は、イピリムマブ及びニボルマブを含む療法である。
【0250】
いくつかの態様では、治療は、基準EFSと比較して無症候生存期間(EFS)の増加;基準RFSと比較して無再発生存期間(RFS)の増加;基準OSと比較して全生存期間(OS)の増加;及び/又は基準ORRと比較して全奏効率(ORR)の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準EFS、RFS、OS、又はORRは、対照療法を受けた対象の集団のうちの1つである。いくつかの態様では、対照療法は、イピリムマブ及びニボルマブを含む療法である。
【0251】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0252】
C.抗TIGITアンタゴニスト抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストを含む方法
別の態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療するための方法であって、抗TIGITアンタゴニスト抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストの1回又は複数回の投薬サイクルを対象に投与することを含む方法を特徴とし、ここで、1回又は複数回の投薬サイクルはネオアジュバント療法として投与される。別の態様では、本開示は、黒色腫を有する対象を治療するための方法であって、抗TIGITアンタゴニスト抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストを対象に投与することを含む方法を特徴とし、ここで、抗TIGITアンタゴニスト抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストはネオアジュバント療法として投与される。
【0253】
いくつかの態様では、該方法は、対象に、(a)抗TIGITアンタゴニスト抗体を約600mgの固定用量(例えば、600mgの固定用量)で3週間ごとに投与すること;及び(b)PD-1軸結合アンタゴニストを約600mgの固定用量(例えば、600mgの固定用量)で3週間ごとに投与することを含む。
【0254】
いくつかの態様では、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの長さは21日間である。
【0255】
いくつかの態様では、該方法は、1回又は複数回の投薬サイクルのそれぞれの約1日目(例えば、1日目)に抗TIGITアンタゴニスト抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストを対象に投与することを含む。
【0256】
いくつかの態様では、該方法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体の前にPD-1軸結合アンタゴニストを対象に投与することを含む。いくつかの態様では、該方法は、PD-1軸結合アンタゴニストの前に抗TIGITアンタゴニスト抗体を対象に投与することを含む。
【0257】
いくつかの態様では、該方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト及び抗TIGITアンタゴニスト抗体を対象に静脈内投与することを含む。
【0258】
いくつかの態様では、黒色腫は、測定可能なリンパ節転移を有するステージIIIの黒色腫である。
【0259】
いくつかの態様では、対象は、治療開始前の6か月以内にin-transit転移を有していない。
【0260】
いくつかの態様では、対象は、がん免疫療法で以前に治療されていない。
【0261】
いくつかの態様では、黒色腫は粘膜黒色腫又はぶどう膜黒色腫ではない。
【0262】
いくつかの態様では、第1の投薬サイクルは、手術の前に開始される。
【0263】
いくつかの態様では、少なくとも1回の投薬サイクル又は(例えば、1回、2回、3回、4回、又は4回を超える投薬サイクル)、又は少なくとも2回の投薬サイクル(例えば、2回、3回、4回、又は4回を超える投薬サイクル)が、手術前に完了する。いくつかの態様では、手術の前に2回の投薬サイクルが完了する。
【0264】
いくつかの態様では、手術は最後の投薬サイクル後約1週間以内に行われる。
【0265】
いくつかの態様では、手術は完全リンパ節郭清(CLND)である。
【0266】
いくつかの態様では、治療は、基準pRRと比較して病理学的奏効率(pRR)の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準pRRは、対照療法を受けた対象の集団のpRRである。いくつかの態様では、対照療法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含み、PD-1軸結合アンタゴニストを含まない療法;PD-1軸結合アンタゴニストを含み、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含まない療法;又はイピリムマブ及びニボルマブを含む療法である。
【0267】
いくつかの態様では、治療は、基準EFSと比較して無症候生存期間(EFS)の増加;基準RFSと比較して無再発生存期間(RFS)の増加;基準OSと比較して全生存期間(OS)の増加;及び/又は基準ORRと比較して全奏効率(ORR)の増加をもたらす。いくつかの態様では、基準EFS、RFS、OS、又はORRは、対照療法を受けた対象の集団のうちの1つである。いくつかの態様では、対照療法は、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含み、PD-1軸結合アンタゴニストを含まない療法;PD-1軸結合アンタゴニストを含み、抗TIGITアンタゴニスト抗体を含まない療法;又はイピリムマブ及びニボルマブを含む療法である。
【0268】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0269】
D.黒色腫の治療方法における使用のための薬剤
i.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体
PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体、及びその投薬レジメンのさらなる例は、以下のセクションVIIIに提供される。PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体の特定の例は、本明細書に定義されるPD1-LAG3である。
【0270】
ii.抗TIGITアンタゴニスト抗体
例示的な抗TIGITアンタゴニスト抗体、及びその投薬レジメンは、以下のセクションVIIに提供される。
【0271】
iii.PD-1軸結合アンタゴニスト
例示的な抗TIGITアンタゴニスト抗体、及びその投薬レジメンは、以下のセクションVIIに提供される。
【0272】
V.PD-L1発現の評価
PD-L1の発現は、本明細書に記載の使用のための方法及び組成物のいずれかに従って治療された対象において評価され得る。使用のための方法及び組成物は、がん(例えば、食道がん(例えば、転移性食道がん))を有する対象から得られた生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のPD-L1の発現レベルを決定することを含み得る。他の例では、対象から得られた生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のPD-L1の発現レベルは、治療開始前又は治療開始後に決定されている。PD-L1発現は、任意の適切なアプローチを使用して決定され得る。例えば、PD-L1発現は、米国特許出願公開第15/787,988号及び同第15/790,680号に記載されているように決定され得る。任意の適切な腫瘍試料、例えばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管腫瘍試料、新鮮腫瘍試料又は凍結腫瘍試料が使用され得る。
【0273】
例えば、PD-L1の発現は、検出可能な発現レベルのPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞によって構成される腫瘍試料のパーセンテージに関して、検出可能な発現レベルのPD-L1を発現する腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞のパーセンテージとして、及び/又は検出可能な発現レベルのPD-L1を発現する腫瘍試料中の腫瘍細胞のパーセンテージとして決定され得る。前述の例のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞によって構成される腫瘍試料のパーセンテージは、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、SP142抗体)を用いたIHCによって評価される、対象から得られた腫瘍試料の切片における腫瘍浸潤免疫細胞によって覆われた腫瘍面積のパーセンテージであってもよいことが理解される。例えば、SP142(Ventana)、SP263(Ventana)、22C3(Dako)、28-8(Dako)、E1L3N(Cell Signaling Technology)、4059(ProSci,Inc.)、h5H1(Advanced Cell Diagnostics)及び9A11を含む任意の適切な抗PD-L1抗体を使用することができる。いくつかの例では、抗PD-L1抗体はSP142である。他の例では、抗PD-L1抗体はSP263である。
【0274】
いくつかの例では、対象から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料中の1%未満の腫瘍細胞、腫瘍試料中の1%以上の腫瘍細胞、腫瘍試料中の1%~5%未満の腫瘍細胞、腫瘍試料中の5%以上の腫瘍細胞、腫瘍試料中の5%~50%未満の腫瘍細胞又は腫瘍試料中の50%以上の腫瘍細胞において、検出可能なPD-L1発現レベルを有する。
【0275】
いくつかの例では、対象から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%未満、腫瘍試料の1%超、腫瘍試料の1%~5%未満、腫瘍試料の5%超、腫瘍試料の5%~10%未満、又は腫瘍試料の10%超を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中の検出可能なPD-L1発現レベルを有する。
【0276】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法のいずれかに従って治療された対象の食道がんは、5%未満(<5%)のPD-L1陽性の腫瘍細胞(TC)画分又は腫瘍浸潤免疫細胞(IC)画分を有する。いくつかの態様では、食道がんは、1%未満のPD-L1陽性TC画分を有する。他の態様では、本明細書で提供される方法のいずれかに従って治療された対象の食道がんは、5%以上(≧5%)のPD-L1陽性のTC画分又はIC画分を有する。いくつかの態様では、PD-L1は、Ventana SP142 IHCアッセイ、Ventana SP263 IHCアッセイ、pharmDx 22C3 IHCアッセイ、又はpharmDx 28-8 IHCアッセイを使用して検出される。
【0277】
いくつかの例では、腫瘍試料は、表2及び/又は表3にそれぞれ示される診断評価のための基準に従って、腫瘍浸潤免疫細胞及び/又は腫瘍細胞におけるPD-L1陽性についてスコア化され得る。
【0278】
【0279】
【0280】
VI.TIGIT発現の評価
TIGITの発現レベルは、本明細書に記載の方法、使用、及び使用のための組成物のいずれかに従って治療されたがん(例えば、食道がん(例えば、転移性食道がん))を有する対象において評価され得る。使用のための方法、使用及び組成物は、対象から得られた生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のTIGITの発現レベルを決定することを含み得る。他の例では、対象から得られた生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のTIGITの発現レベルは、治療開始前又は治療開始後に決定されている。TIGIT発現は、任意の適切なアプローチを使用して決定され得る。任意の適切な腫瘍試料、例えばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管腫瘍試料、新鮮腫瘍試料又は凍結腫瘍試料が使用され得る。
【0281】
例えば、TIGITの発現は、TIGITの検出可能な発現レベルを発現する腫瘍浸潤免疫細胞に含まれる腫瘍試料のパーセンテージに関して、TIGITの検出可能な発現レベルを発現する腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞のパーセンテージとして、及び/又はTIGITの検出可能な発現レベルを発現する腫瘍試料中の腫瘍細胞のパーセンテージとして決定され得る。前述の例のいずれかにおいて、腫瘍浸潤免疫細胞によって構成される腫瘍試料のパーセンテージは、例えば、抗TIGITアンタゴニスト抗体を使用してIHCによって評価される場合、対象から得られた腫瘍試料の切片中の腫瘍浸潤免疫細胞によって覆われた腫瘍面積のパーセンテージに関してであり得ることが理解されるべきである。任意の適切な抗TIGITアンタゴニスト抗体を使用することができる。いくつかの例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は10A7(国際公開第2009/126688号A3;米国特許第9,499,596号)である。
【0282】
VII.抗TIGITアンタゴニスト抗体
本発明は、がんを有する対象(例えば、ヒト)におけるがんを治療するのに有用な抗TIGITアンタゴニスト抗体を提供する。
【0283】
いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体はチラゴルマブ(CAS登録番号:1918185-84-8)である。チラゴルマブ(Genentech)は、MTIG7192Aとしても知られている。
【0284】
特定の実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、以下から選択される少なくとも1、2、3、4、5、又は6つのHVRを含む:(a)SNSAAWN(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)KTYYRFKWYSDYAVSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)ESTTYDLLAGPFDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)KSSQTVLYSSNNKKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)WASTRES(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び/若しくは(f)QQYYSTPFT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3、又は、上記のHVRの1つ以上と、配列番号1~6のいずれか1つに対して少なくとも約90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性)の配列同一性を有するその1つ以上のバリアントとの組み合わせ。
【0285】
いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、(a)SNSAAWN(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)KTYYRFKWYSDYAVSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)ESTTYDLLAGPFDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)KSSQTVLYSSNNKKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)WASTRES(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)QQYYSTPFT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み得る。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、EVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSS(配列番号17)の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくはEVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSS(配列番号17)の配列、又はQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSS(配列番号18)の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくはQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSS(配列番号18)の配列を含むVHドメイン;及び/又はDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQTVLYSSNNKKYLAWYQQKPGQPPNLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPFTFGPGTKVEIK(配列番号19)の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%)を有するアミノ酸配列、若しくはDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQTVLYSSNNKKYLAWYQQKPGQPPNLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPFTFGPGTKVEIK(配列番号19)の配列を含むVLドメインを有する。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、配列番号17に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号17の配列を含むVHドメイン、及び/又は配列番号19に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号19の配列を含むVLドメインを有する。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号19のアミノ酸配列を含むVLドメインを有する。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、配列番号18に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号18の配列を含むVHドメイン、及び/又は配列番号19に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号19の配列を含むVLドメインを有する。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号19のアミノ酸配列を含むVLドメインを有する。
【0286】
いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、重鎖配列及び軽鎖配列を含み、ここで、(a)重鎖配列は、アミノ酸配列:EVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号23)を含み;且つ(b)軽鎖配列は、アミノ酸配列:DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQTVLYSSNNKKYLAWYQQKPGQPPNLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPFTFGPGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号24)を含む。
【0287】
いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、以下の軽鎖可変領域フレームワーク領域(FR):DIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-L1;WYQQKPGQPPNLLIY(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-L2;GVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYC(配列番号9)のアミノ酸配列を含むFR-L3;及び/若しくはFGPGTKVEIK(配列番号10)のアミノ酸配列を含むFR-L4のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくは4つ、又は、上記FRの1つ以上と、配列番号7~20のいずれか1つに対して少なくとも約90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性)を有するその1つ以上のバリアントとの組み合わせをさらに含む。いくつかの実例では、例えば、抗体は、DIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-L1;WYQQKPGQPPNLLIY(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-L2;GVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYC(配列番号9)のアミノ酸配列を含むFR-L3;及びFGPGTKVEIK(配列番号10)のアミノ酸配列を含むFR-L4を含む。
【0288】
いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、以下の重鎖可変領域FR:X1VQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVS(配列番号11)のアミノ酸配列を含むFR-H1(X1はE又はQである);WIRQSPSRGLEWLG(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-H2;RITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTR(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-H3;及び/若しくはWGQGTLVTVSS(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-H4のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくは4つ、又は、上記FRの1つ以上と、配列番号11~14のいずれか1つに対して少なくとも約90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性)を有するその1つ以上のバリアントとの組み合わせをさらに含む。抗TIGITアンタゴニスト抗体は、例えば、以下の重鎖可変領域フレームワーク領域FR:EVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVS(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-H1;WIRQSPSRGLEWLG(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-H2;RITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTR(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-H3;及び/若しくはWGQGTLVTVSS(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-H4のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくは4つ、又は、上記FRの1つ以上と、配列番号12~15のいずれか1つに対して少なくとも約90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性)を有するその1つ以上のバリアントとの組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、EVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVS(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-H1;WIRQSPSRGLEWLG(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-H2;RITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTR(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-H3;及びWGQGTLVTVSS(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-H4を含む。別の実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、以下の重鎖可変領域フレームワーク領域FR:QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVS(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR-H1;WIRQSPSRGLEWLG(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-H2;RITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTR(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-H3;及び/若しくはWGQGTLVTVSS(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-H4のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくは4つ、又は、上記FRの1つ以上と、配列番号12~14及び16のいずれか1つに対して少なくとも約90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性)を有するその1つ以上のバリアントとの組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVS(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR-H1;WIRQSPSRGLEWLG(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-H2;RITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTR(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-H3;及びWGQGTLVTVSS(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-H4を含む。
【0289】
別の態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体が提供され、該抗体は、上記いずれかの実例のようなVH及び上記いずれかの実例のようなVLを含み、可変ドメイン配列の一方又は両方が翻訳後修飾を含む。
【0290】
いくつかの実例では、上記の抗TIGITアンタゴニスト抗体のいずれか1つは、ヒトTIGITに加えてウサギTIGITに結合することができる。いくつかの実例では、上記の抗TIGITアンタゴニスト抗体のいずれか1つは、ヒトTIGIT及びカニクイザル(cyno)TIGITの両方に結合することができる。いくつかの実例では、上記の抗TIGITアンタゴニスト抗体のいずれか1つは、ヒトTIGIT、カニクイザルTIGIT及びウサギTIGITに結合することができる。いくつかの実例では、上記の抗TIGITアンタゴニスト抗体のいずれか1つは、ヒトTIGIT、カニクイザルTIGIT及びウサギTIGITに結合することができるが、マウスTIGITには結合できない。
【0291】
いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、約10nM以下のKDでヒトTIGITに結合し、約10nM以下のKDでカニクイザルTIGITに結合する(例えば、約0.1nM~約1nMのKDでヒトTIGITに結合し、約0.5nM~約1nMのKDでカニクイザルTIGITに結合し、例えば、約0.1nM以下のKDでヒトTIGITに結合し、約0.5nM以下のKDでカニクイザルTIGITに結合する)。
【0292】
いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、TIGITに特異的に結合し、ポリオウイルス受容体(PVR)とのTIGIT相互作用を阻害又は遮断する(例えば、アンタゴニスト抗体は、PVRへのTIGIT結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害する)。いくつかの実例では、アンタゴニスト抗体は、10nM以下(例えば、1nM~約10nM)のIC50値でヒトPVRへのヒトTIGITの結合を阻害又は遮断する。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、TIGITに特異的に結合し、PVR-CD226相互作用に影響を与えることなく、PVRとのTIGIT相互作用を阻害又は遮断する。いくつかの実例では、アンタゴニスト抗体は、カニクイザルPVRへのカニクイザルTIGITの結合を50nM以下(例えば、1nM~約50nM、例えば、1nM~約5nM)のIC50値で阻害又は遮断する。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、CD226とTIGITとの相互作用を阻害及び/又は遮断する。いくつかの実例では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、TIGITがCD226ホモ二量体化を破壊する能力を阻害及び/又は遮断する。
【0293】
いくつかの実例では、本明細書に記載の方法又は使用は、TIGITへの結合について上記の抗TIGITアンタゴニスト抗体のいずれかと競合する単離された抗TIGITアンタゴニスト抗体を使用又は投与することを含み得る。例えば、方法は、以下の6つのHVRを有する抗TIGITアンタゴニスト抗体とTIGITへの結合について競合する単離された抗TIGITアンタゴニスト抗体を投与することを含み得る:(a)SNSAAWN(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)KTYYRFKWYSDYAVSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)ESTTYDLLAGPFDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)KSSQTVLYSSNNKKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)WASTRES(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)QQYYSTPFT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3。本明細書に記載の方法はまた、上記の抗TIGITアンタゴニスト抗体と同じエピトープに結合する単離された抗TIGITアンタゴニスト抗体を投与することを含み得る。
【0294】
いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、Fc媒介エフェクター機能を示し、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に関与する。いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、インタクトなFc媒介エフェクター機能(例えば、チラゴルマブ、ビボストリマブ、エチグリマブ、EOS084448又はTJ-T6)又は増強されたエフェクター機能(例えば、SGN-TGT)を有する抗体である。
【0295】
他の態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、Fc媒介エフェクター機能を欠く抗体(例えば、ドムバナリマブ、BMS-986207、ASP8374、又はCOM902)である。
【0296】
いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体はIgGクラス抗体である。いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体はIgG1クラスの抗体、例えば、チラゴルマブ、ビボストリマブ、ドムバナリマブ、BMS-986207、エチギリマブ、BGB-A1217、SGN-TGT、EOS084448(EOS-448)、TJ-T6、又はAB308である。いくつかの態様では、抗体は、Fc領域を含むヒトモノクローナル完全長IgG1クラス抗体である。
【0297】
いくつかの態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、ヒトIgG1 Fc領域、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトモノクローナル完全長IgG1サブクラス抗体である。
【0298】
他の態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、IgG4クラス抗体、例えばASP8374又はCOM902である。
【0299】
このような抗体を含有する組成物を含む、本発明において有用な抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1アンタゴニスト抗体、例えば、アテゾリズマブ)、PD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1アンタゴニスト抗体、例えば、ペムブロリズマブ)及びPD-L2結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L2アンタゴニスト抗体))と組み合わせて使用され得る。
【0300】
いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、TIGITシグナル伝達を阻害するように機能する。いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、その結合パートナーへのTIGITの結合を阻害する。例示的なTIGIT結合パートナーには、CD155(PVR)、CD112(PVRL2又はネクチン-2)及びCD113(PVRL3又はネクチン-3)が含まれる。いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、TIGITとCD155との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、TIGITとCD112との間の結合を阻害し得る。いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、TIGITとCD113との間の結合を阻害する。いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、免疫細胞のTIGIT媒介性細胞シグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、抗TIGITアンタゴニスト抗体は、制御性T細胞(例えば、FcγR)を枯渇させることによってTIGITを阻害する。
【0301】
いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群より選択される抗体断片である。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体はヒト化抗体である。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体はヒト抗体である。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗TIGIT抗体は、ヒトTIGITに結合する。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体はFc融合タンパク質である。
【0302】
いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、チラゴルマブ(MTIG7192A、RG6058又はRO7092284)、ビボストリマブ(MK-7684)、ASP8374(PTZ-201)、EOS884448(EOS-448)、SEA-TGT(SGN-TGT)、BGB-A1217、BMS-986207(ONO-4686)、COM902(CGEN-15137)、IBI939、ドムバナリマブ(AB154)、M6223、AB308、AB154、TJ-T6、MG1131、NB6253、HLX301、HLX53、SL-9258(TIGIT-Fc-LIGHT)、STW264、及びYBL-012からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、チラゴルマブ(MTIG7192A、RG6058又はRO7092284)、ビボストリマブ(MK-7684)、ASP8374(PTZ-201)、EOS-448、及びSEA-TGT(SGN-TGT)からなる群から選択される。抗TIGIT抗体は、チラゴルマブ(MTIG7192A、RG6058又はRO7092284)であり得る。
【0303】
いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかの少なくとも1、2、3、4、5、又は6つの相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかの6つのCDRを含む。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、チラゴルマブ、ASP8374(PTZ-201)、BGB-A1217、BMS-986207(ONO-4686)、COM902(CGEN-15137)、M6223、IBI939、EOS884448(EOS-448)、ドムバナリマブ(AB154)、ビボストリマブ(MK-7684)、及びSEA-TGT(SGN-TGT)からなる群から選択される抗体のいずれか1つの6つのCDRを含む。
【0304】
いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれか1つの重鎖可変領域(VH)配列を含み、軽鎖は、同じ抗体の軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、チラゴルマブ、ASP8374(PTZ-201)、BGB-A1217、BMS-986207(ONO-4686)、COM902(CGEN-15137)、M6223、IBI939、EOS884448(EOS-448)、ドムバナリマブ(AB154)、ビボストリマブ(MK-7684)、及びSEA-TGT(SGN-TGT)からなる群から選択される抗TIGIT抗体のVH及びVLを含む。
【0305】
いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖を含む。いくつかの実施態様では、抗TIGIT抗体は、チラゴルマブ、ASP8374(PTZ-201)、BGB-A1217、BMS-986207(ONO-4686)、COM902(CGEN-15137)、M6223、IBI939、EOS884448(EOS-448)、ドムバナリマブ(AB154)、ビボストリマブ(MK-7684)、及びSEA-TGT(SGN-TGT)からなる群から選択される抗TIGIT抗体の重鎖及び軽鎖を含む。
【0306】
VIII.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体
A.PD-1及びLAG3に結合する例示的な二重特異性抗体
一態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を提供し、ここで、PD-1に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインは、
(i)GFSFSSY(配列番号25)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列GGRを含むHVR-H2、及び
(iii)TGRVYFALD(配列番号26)のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHドメイン;並びに
(i)SESVDTSDNSF(配列番号27)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;
(ii)アミノ酸配列RSSを含むHVR-L2、及び
(iii)NYDVPWのアミノ酸配列(配列番号28)を含むHVR-L3を含むVLドメイン
を含む。
【0307】
一態様では、二重特異性抗体は、IgGであるFcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインは、エフェクター機能を低下させるか、又は無効にしさえする。特に、Fcドメインは、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。
【0308】
さらなる態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、該二重特異性抗体は、IgGであるFcドメインを含み、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインは、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を減少させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。
【0309】
別の態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、
(i)DYTMN(配列番号31)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)VISWDGGGTYYTDSVKG(配列番号32)のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)GLTDTTLYGSDY(配列番号33)のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHドメイン;並びに
(i)RASQSISSYLN(配列番号34)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;
(ii)AASTLQSのアミノ酸配列(配列番号35)を含むHVR-L2、及び
(iii)QQTYSSPLTのアミノ酸配列(配列番号36)を含むHVR-L3を含むVLドメイン
を含む。
【0310】
さらなる態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSFSSYTMSWVRQAPGKGLEWVATISGGGRDIYYPDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCVLLTGRVYFALDSWGQGTLVTVSS(配列番号29)のアミノ酸配列を含むVHドメイン及びDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKASESVDTSDNSFIHWYQQKPGQSPKLLIYRSSTLESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQNYDVPWTFGQGTKVEIK(配列番号30)のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0311】
別の態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFIFDDYTMNWVRQAPGKGLEWVAVISWDGGGTYYTDSVKGRFTISRDDFKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKGLTDTTLYGSDYWGQGTLVTVSS(配列番号37)のアミノ酸配列を含むVHドメイン及びDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTYSSPLTFGGGTKVEIK(配列番号38)のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0312】
一態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、ここで、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VHドメイン、及び配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VLドメインを含む。一態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0313】
一態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、ここで、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VHドメイン、及び配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VLドメインを含む。一態様では、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0314】
一態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、ここで、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VHドメイン、及び配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VLドメインを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VHドメイン、及び配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%以上の同一性を有する)VLドメインを含む。
【0315】
別の態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、
PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0316】
さらなる態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。特に、二重特異性抗体は、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0317】
一態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は二価である。このことは、二重特異性抗体が、PD-1に特異的に結合する1個の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する1個の抗原結合ドメインとを含む(1+1フォーマット)ことを意味する。
【0318】
一態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、二重特異性抗体は、Fcドメイン、PD-1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及びLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む。特定の態様では、Fab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられている。特定の態様では、PD-1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFab断片において、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換えられている。
【0319】
特定の態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、二重特異性抗体は、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。例えば、一態様では、二重特異性抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む(PD1-LAG3)。
【0320】
さらなる態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、二重特異性抗体は、Fcドメイン、PD-1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFab断片、及びFcドメインのC末端に融合するLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFab断片を含む。特に、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFab断片は、そのVHドメインを介し、FcドメインのC末端に融合している(trans 1+1フォーマット)。
【0321】
一態様では、二重特異性抗体は、配列番号39の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号61の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。より具体的には、二重特異性抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号40のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号61のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。
【0322】
i.Fc受容体の結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾
特定の態様では、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供され、ここで、二重特異性抗体は、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させ、エフェクター機能を低下させるか、又は無効にする1つ又は複数のアミノ酸修飾を含むFcドメインを含む。
【0323】
特定の態様では、1つ又は複数のアミノ酸修飾を、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0324】
以下のセクションは、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾を含む、本発明の二重特異性抗原結合分子の好ましい態様を記載する。一態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関し、ここで、Fcドメインは、Fc受容体、特に、Fcγ受容体に対する結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。特に、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインである。
【0325】
Fcドメインは、本発明の二重特異性抗体に、標的組織への良好な蓄積に寄与する長い血清半減期、望ましい組織-血液分布比を含め、望ましい薬物動態特性を与える。しかしながら、同時に、好ましい抗原を担持する細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する本発明の二重特異性抗体の望ましくない標的化を引き起こす場合がある。したがって、特定の実施態様では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、天然IgG Fcドメイン、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を示す。より具体的には、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。
【0326】
1つのそのような態様では、Fcドメイン(又は上記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)は、天然IgG1 Fcドメイン(又は天然IgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の結合親和性を示し、及び/又は天然IgG1 Fcドメイン(又は天然IgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)は、Fc受容体に実質的に結合せず、且つ/又はエフェクター機能を誘導しない。特定の態様では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。特定の態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一態様では、Fc受容体は、阻害性Fc受容体である。特定の態様では、Fc受容体は、阻害性ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcRIIBである。一態様では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP、及びサイトカイン分泌のうちの1つ又は複数である。特定の態様では、エフェクター機能はADCCである。一態様では、Fcドメインのドメインは、天然IgG1 Fcドメインと比較して、新生児Fc受容体(FcRn)に対して実質的に同様の結合親和性を示す。FcRnに対する実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は該Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、天然IgG1 Fcドメイン(又は天然IgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、FcRnに対して約70%より大きく、特に約80%より大きく、より詳しくは約90%より大きい結合親和性を示す場合に達成される。
【0327】
特定の態様では、Fcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性が低下し、且つ/又はエフェクター機能が低下するように操作される。特定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させる、1つ又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、1つ又は複数の同じアミノ酸変異が、Fcドメインの2つのサブユニットの各々に存在する。一態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を低下させる。別の態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に低下させる。一態様では、操作されたFcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、操作されていないFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の20%未満、特に10%未満、より詳しくは5%未満を示す。特定の態様では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。別の態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体は、阻害性Fc受容体である。特定の態様では、Fc受容体は、阻害性ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcRIIBである。いくつかの態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。特定の態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの各受容体への結合が低下する。いくつかの態様では、補体成分に対する結合親和性、特にC1qに対する結合親和性も低下する。一態様では、新生児Fc受容体(FcRn)への結合親和性は低下しない。FcRnに対する実質的に同様の結合(すなわち、上記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保存)は、Fcドメイン(又は上記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、FcRnに対するFcドメインの操作されていない形態(又はFcのこの操作されていない形態を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)の結合親和性の約70%を超える結合親和性を示す場合に達成される。Fcドメイン、又は上記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、そのような親和性の約80%より大きく、さらに約90%より大きい親和性を示してもよい。特定の実施態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、エフェクター機能が低下するように操作される。エフェクター機能の低下としては、限定されないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:補体依存性細胞障害(CDC)の低下、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低下、NK細胞への結合の低下、マクロファージへの結合の低下、単球への結合の低下、多形核細胞への結合の低下、アポトーシスを誘導する直接シグナル伝達の低下、樹状細胞の成熟の低下、又は減少したT細胞プライミング。
【0328】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ又は複数の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位及び327位のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体が挙げられる。FcRへの結合が改善又は減少した特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、国際公開第2004/056312号、及びShields et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604を参照)。
【0329】
本発明の一態様では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の位置にアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235A(「LALA」)を含む。1つのそのような実施態様では、FcドメインはIgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。一態様では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含む。より具体的な態様では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである。一実施態様では、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含み、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sからなる群から選択されるさらなるアミノ酸置換を含む。さらに特定の実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A、及びP329G(「P329G LALA」)を含む。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、PCT出願国際公開第2012/130831A1号に記載されるように、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体の結合をほとんど完全になくす。前記文献はまた、このような変異体Fcドメインを調製する方法及びFc受容体の結合又はエフェクター機能などの特性を決定する方法も記載する。このような抗体は、変異L234A及びL235A、又は変異L234A、L235A及びP329G(KabatらのEUインデックスによる番号付け;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991)を有するIgG1である。
【0330】
一態様では、本発明の二重特異性抗体は、(i)場合により変異P329G、L234A及びL235Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモ二量体Fc領域、又は(ii)場合により変異P329G、S228P及びL235Eを有する、ヒトIgG4サブクラスのホモ二量体Fc領域、又は(iii)場合により変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310A及びH435Aを有するか、又は場合により変異P329G、L234A、L235A、H310A、H433A及びY436Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモ二量体Fc領域、又は(iv)1つのFc領域ポリペプチドが変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヘテロ二量体Fc領域、又は(v)両Fc領域ポリペプチドが、変異P329G、L234A及びL235Aを含み、1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヒトIgG1サブクラスのヘテロ二量体Fc領域を含む(全て、KabatのEUインデックスによる位置)。
【0331】
一態様では、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。より具体的な実施態様では、Fcドメインは、位置S228(Kabat番号付け)にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである。より具体的な実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L235E及びS228P及びP329Gを含む、IgG4 Fcドメインである。このアミノ酸置換は、in vivoでのIgG4抗体のFabアーム交換を減少させる(Stubenrauch et al.,Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照)。したがって、一態様では、ヒトIgG4サブクラスのヘテロ二量体Fc領域(全ての位置はKabatのEUインデックスに従う)を含む二重特異性抗体が提供され、ここで、両方のFc領域ポリペプチドが変異P329G、S228P及びL235Eを含み、一方のFc領域ポリペプチドが変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが変異T366S、L368A及びY407Vを含み、又は、一方のFc領域ポリペプチドが変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが変異T366S、L368A、Y407V、及びS354Cを含み、又は、一方のFc領域ポリペプチドが変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む。
【0332】
半減期が延長され、且つ、母体IgGの胎児への輸送を担う新生児型Fc受容体(FcRn)(Guyer,R.L.et al.,J.Immunol.117(1976)587593、及びKim,J.K.et al.,J.Immunol.24(1994)24292434)に対する結合が改善された抗体は、米国特許出願公開第2005/0014934号に記載されている。そのような抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を改善する1つ又は複数の置換を伴うFc領域を含む。このようなFcバリアントは、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ又は複数に置換、例えば、Fc領域残基434の置換を含むものを含む(米国特許第7371826号)。Fc領域バリアントの他の例に関して、Duncan,A.R.及びWinter,G.、「Nature」第322巻(1988年)第738~740頁;米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照。
【0333】
Fc受容体への結合は、例えばELISAによって、又はBIAcore装置(GEヘルスケア)などの標準的な装置を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって容易に決定することができ、そのようなFc受容体は組換え発現によって得ることができる。このような適切な結合アッセイは、本明細書に記載されている。或いは、Fc受容体に対するFcドメイン又はFcドメインを含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株(例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞)を用いて評価されてもよい。Fcドメインの、又はFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体のエフェクター機能は、当技術分野で既知の方法により測定することができる。ADCCを測定するための適切なアッセイは、本明細書に記載されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例は、米国特許第5500362号;Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,70597063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82,14991502(1985);米国特許第5821337号;Bruggemann et al.,J Exp Med 166,13511361(1987)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA);及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば動物モデル(Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されているものなど)において評価されてもよい。
【0334】
以下のセクションは、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン改変を含む、本発明の二重特異性抗体の好ましい態様を記載する。一態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関し、Fcドメインは、Fc受容体、特に、Fcγ受容体に対する結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。別の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関し、Fcドメインは、エフェクター機能を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。特定の態様では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインである。
【0335】
ii.ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合した異なる抗原結合ドメインを含み、よって、Fcドメインの2つのサブユニットは、2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれ得る。これらのポリペプチドの組換え共発現及びその後の二量体化により、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。よって、組換え産生において本発明の二重特異性抗体の収率及び純度を改善するために、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、所望のポリペプチドの会合を促進する修飾を導入することは有利であろう。
【0336】
したがって、特定の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで、Fcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間でタンパク質間相互作用が最大である部位は、FcドメインのCH3ドメインである。したがって、一態様では、前記修飾はFcドメインのCH3ドメイン内にある。
【0337】
特定の態様では、前記修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの1つに「ノブ」修飾を含み、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの他方に「ホール」修飾を含む、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」修飾である。したがって、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体に関し、ノブ・イントゥ・ホール法に従って、Fcドメインの第1のサブユニットがノブを含み、Fcドメインの第2のサブユニットがホールを含む。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスに従って番号付け)。
【0338】
このノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5731168号、米国特許第7695936号;Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。通常、この方法は、隆起(「ノブ」)が対応する空洞(「ホール」)内に配置されて、ヘテロ二量体形成を促進し、且つ、ホモ二量体形成を妨げることができるように、第1のポリペプチドの接触面に隆起を、空洞を第2のポリペプチドの接触面に導入することを伴う。隆起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、隆起と同じ又は同様の大きさの相補的な空洞が第2のポリペプチドの接触面に作られる。
【0339】
このように、一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に配置可能な隆起が生成され、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の隆起を配置可能な空洞が生成される。隆起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を改変することによって、例えば、部位特異的突然変異誘発によって、又はペプチド合成によって作製することができる。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、366位のスレオニン残基はトリプトファン残基(T366W)で置き換えられ、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、407位のチロシン残基はバリン残基(Y407V)で置き換えられる。一態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、さらに、366位のスレオニン残基はセリン残基(T366S)で置き換えられ、368位のロイシン残基はアラニン残基(L368A)で置き換えられる。
【0340】
なおさらなる態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、さらに、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換えられており(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、さらに、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換えられている(Y349C)。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fcドメインの2つのサブユニット間にジスルフィド架橋の形成をもたらし、二量体をさらに安定化する(Carter(2001),J Immunol Methods 248,7-15)。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスに従って番号付け)。
【0341】
しかし、欧州特許第1870459号に記載されている他のノブ・イン・ホール技術も、代替的に、又は追加的に使用することができる。一実施態様では、多重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインに変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインに変異D399K及びE357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0342】
一態様では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を含み、「ホール」鎖のCH3ドメインに変異T366S、L368A及びY407Vを含み、さらに、「ノブ鎖」のCH3ドメインに変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインに変異D399K及びE357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0343】
一態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいて、変異Y349C及びT366Wを含み、2つのCH3ドメインの他方において、変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は多重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいて、変異Y349C及びT366Wを含み、2つのCH3ドメインの他方において、変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、さらに、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいて、変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいて、変異D399K及びE357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0344】
代替的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、例えば、PCT国際公開第2009/089004号に記載されるような静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。通常、この方法は、ホモ二量体形成が静電的に望ましくなくなり、ヘテロ二量体化が静電的に望ましくなるような、荷電アミノ酸残基による2つのFcドメインサブユニットの接触面における1つ又は複数のアミノ酸残基の置き換えを伴う。
【0345】
「ノブ・イントゥ・ホール技術」の他に、ヘテロ二量体化を強制するために多特異性抗体の重鎖のCH3ドメインを修飾する他の技術も当技術分野で知られている。これらの技術、特に、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号、及び国際公開第2013/096291号に記載される技術は、二重特異性抗体との組み合わせで「ノブ・イントゥ・ホール」に対する代替として、本明細書で想定される。
【0346】
一態様では、二重特異性抗体において、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、欧州特許第1870459号に記載される手法を用いる。この手法は、第1及び第2の重鎖の間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置への反対の電荷で帯電したアミノ酸の導入に基づく。
【0347】
したがって、この態様では、多重特異性抗体の三次構造において、第1の重鎖のCH3ドメインと第2の重鎖のCH3ドメインは、それぞれの抗体CH3ドメインの間に存在する接触面を形成し、第1の重鎖のCH3ドメインのそれぞれのアミノ酸配列及び第2の重鎖のCH3ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、抗体の三次構造中の前記接触面内に位置する一連のアミノ酸を含み、ここで、1つの重鎖のCH3ドメインの接触面に位置する一連のアミノ酸のうち、第1のアミノ酸が正に荷電したアミノ酸で置換されており、もう一方の重鎖のCH3ドメインの接触面に位置する一連のアミノ酸のうち、第2のアミノ酸が負に荷電したアミノ酸に置換されている。この態様の二重特異性抗体は、本明細書では、「CH3(+/-)操作された二重特異性抗体」とも呼ばれる(ここで、省略語「+/-」は、それぞれのCH3ドメインに導入されたのと反対の電荷に帯電したアミノ酸を表す)。
【0348】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、K、R及びHから選択され、負に帯電したアミノ酸は、E又はDから選択される。
【0349】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、K及びRから選択され、負に帯電したアミノ酸は、E又はDから選択される。
【0350】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、Kであり、負に帯電したアミノ酸は、Eである。
【0351】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、1つの重鎖のCH3ドメイン中、位置409のアミノ酸RがDによって置換されており、位置のアミノ酸KがEによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置399のアミノ酸DがKによって置換されており、位置357のアミノ酸EがKによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0352】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2013/157953号に記載される手法を用いる。一実施態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、位置351のアミノ酸LがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0353】
別の態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、位置351のアミノ酸LがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらに、以下の置換の少なくとも1つが他の重鎖のCH3ドメインに含まれる。位置349のアミノ酸YがEによって置換されており、位置349のアミノ酸YがDによって置換されており、位置368のアミノ酸LがEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一実施態様では、位置368のアミノ酸Lは、Eによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0354】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2012/058768号に記載される手法を用いる。一態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがYによって置換されており、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがAによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施態様では、上述の置換に加え、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置411(元はT)、399(元はD)、400(元はS)、405(元はF)、390(元はN)及び392(元はK)のアミノ酸の少なくとも1つが置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。好ましい置換は次のとおりである。
- 位置411のアミノ酸Tを、N、R、Q、K、D、E及びWから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置399のアミノ酸Dを、R、W、Y及びKから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置400のアミノ酸Dを、E、D、R及びKから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置405のアミノ酸Fを、I、M、T、S、V及びWから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置390のアミノ酸Nを、R、K及びDから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置392のアミノ酸Kを、V、M、R、L、F及びEから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0355】
別の態様では、二重特異性抗体が、国際公開第2012/058768)号に従って操作されており、すなわち、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがYによって置換されており、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがVによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。多重特異性抗体の別の実施態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがAによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。後者の上述の実施態様では、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置392のアミノ酸KがEによって置換されており、位置411のアミノ酸TがEによって置換されており、位置399のアミノ酸DがRによって置換されており、位置400のアミノ酸SがRによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0356】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2011/143545号に記載される手法を用いる。一態様では、両重鎖のCH3ドメイン中のアミノ酸改変は、位置368及び/又は409に導入される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0357】
一態様では、二重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2011/090762号に記載される手法を用いる。国際公開第2011/090762は、「ノブ・イントゥ・ホール」(KiH)技術によるアミノ酸修飾に関する。一実施態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがWによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがAによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがYによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがTによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0358】
一態様では、二重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2009/089004号に記載される手法を用いる。一実施態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置392のアミノ酸K又はNが、負に帯電したアミノ酸によって(一実施態様では、E又はDによって、好ましい一実施態様では、Dによって)置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置399のアミノ酸D、位置356のアミノ酸E又はD、又は位置357のアミノ酸Eが、正に帯電したアミノ酸によって置換されており(一実施態様では、K又はR、好ましい一実施態様では、Kによって置換されており、好ましい一実施態様では、位置399又は356のアミノ酸が、Kによって置換されている)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる一実施態様では、上述の置換に加え、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置409のアミノ酸K又はRが、負に帯電したアミノ酸によって(一実施態様では、E又はDによって、好ましい一実施態様では、Dによって)置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。1つのなおさらなる態様では、上述の置換に加えて、又は上述の置換に代えて、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置439のアミノ酸K及び/又は位置370のアミノ酸Kが、互いに独立して、負に帯電したアミノ酸によって(一実施態様では、E又はDによって、好ましい一実施態様では、Dによって)置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0359】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロ二量体化を補助するために、国際公開第2007/147901号に記載される手法を用いる。一実施態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置253のアミノ酸KがEによって置換されており、位置282のアミノ酸DがKによって置換されており、位置322のアミノ酸KがDによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置239のアミノ酸DがKによって置換されており、位置240のアミノ酸EがKによって置換されており、位置292のアミノ酸KがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0360】
本明細書に報告される二重特異性抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であってもよい。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基の1つ又は2つが除去された短縮されたC末端であり得る。1つの好ましい態様では、重鎖のC末端は、短縮されたC末端で終わるPGである。
【0361】
本明細書に報告される全ての態様のうちの一態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、C末端グリシン-リジンジペプチドを含む(G446およびK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)。本明細書に報告される全ての態様のうちの一実施態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、C末端グリシン残基を含む(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0362】
iii.Fabドメインにおける修飾
一態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1のFab断片と、LAG3に特異的に結合する第2のFab断片とを含む二重特異性抗体に関し、ここで、Fab断片の1つにおいて、可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCH1とCLのいずれかが交換されている。二重特異性抗体は、Crossmab技術に従って調製される。
【0363】
1つの結合アームにドメインの置き換え/交換を有する多重特異性抗体(CrossMabVH-VL又はCrossMabCH-CL)は、国際公開2009/080252号、国際公開2009/080253号及びSchaefer,W.et al,PNAS,108(2011)11187-1191に記載される。これらの多重特異性抗体は、明確に、第1の抗原に対する軽鎖と、第2の抗原に対する誤った重鎖のミスマッチにより生じる副産物を減らす(そのようなドメイン交換がない手法と比較した場合)。
【0364】
特定の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1のFab断片と、LAG3に特異的に結合する第2のFab断片とを含む二重特異性抗体に関し、ここで、Fab断片の1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換えられている。特定の態様では、二重特異性抗体は、PD-1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFab断片において、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換えられている、二重特異性抗体である。
【0365】
別の態様では、正しい対形成をさらに向上させるために、PD-1に特異的に結合する第1のFab断片と、LAG3に特異的に結合する第2のFab断片とを含む二重特異性抗体は、異なる帯電したアミノ酸置換(いわゆる「帯電した残基」)を含んでいてもよい。これらの修飾は、交差又は非交差のCH1ドメイン及びCLドメインに導入される。これらの修飾は、例えば、国際公開第2015/150447号、国際公開第2016/020309号及び国際出願PCT/EP2016/073408号に記載される。
【0366】
特定の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1のFab断片と、LAG3に特異的に結合する第2のFab断片とを含む二重特異性抗体に関し、Fab断片の1つにおいて、定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換され(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1では、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。特定の態様では、二重特異性抗体は、TIM3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFab断片の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、二重特異性抗体である。
【0367】
特定の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1のFab断片と、LAG3に特異的に結合する第2のFab断片とを含む二重特異性抗体に関し、ここで、CLドメインの1つにおいて、位置123のアミノ酸(EU番号付け)はアルギニン(R)によって置き換えられており、位置124のアミノ酸(EU番号付け)はリジン(K)によって置換されており、CH1ドメインの1つにおいて、位置147(EU番号付け)及び位置213(EU番号付け)のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されている。特定の態様では、二重特異性抗体は、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFab断片において、位置123のアミノ酸(EU番号付け)がアルギニン(R)によって置き換えられており、位置124のアミノ酸(EU番号付け)がリジン(K)によって置換されており、CH1ドメインの1つにおいて、位置147(EU番号付け)及び位置213(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている、二重特異性抗体である。
【0368】
さらなる態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖及び第1の重鎖、及び
b)第2の抗原に特異的に結合する抗体の第2の軽鎖及び第2の重鎖
を含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている、二重特異性抗体である。
【0369】
a)の抗体は、b)で報告される改変を含まず、a)の重鎖及び軽鎖は単離された鎖である。
【0370】
(b)の抗体では、軽鎖内で、可変軽鎖ドメインVLが、前記抗体の可変重鎖ドメインVHによって置き換えられており、重鎖内で、可変重鎖ドメインVHが、前記抗体の可変軽鎖ドメインVLによって置き換えられている。
【0371】
一態様では、(i)(a)の第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸(Kabatによる番号付け)は、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、(a)の第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸(Kabat EUインデックスによる番号付け)は、負に帯電したアミノ酸によって置換されており、又は(ii)(b)の第2の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸(Kabatによる番号付け)は、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、(b)の第2の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸(Kabat EUインデックスによる番号付け)は、負に帯電したアミノ酸によって置換されている。
【0372】
別の態様では、(i)(a)の第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(好ましい一実施態様では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており)、(a)の第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、又は(ii)(b)の第2の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(好ましい一実施態様では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており)、(b)の第2の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0373】
一態様では、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸は、Kによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0374】
一態様では、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置123のアミノ酸は、Rによって置換されており、位置124のアミノ酸は、Kによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0375】
一態様では、第2の軽鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、Eによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0376】
一態様では、第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸がEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0377】
一態様では、第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置123のアミノ酸がRによって置換されており、位置124のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸が両方ともEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0378】
一態様では、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸がKによって置換されており、第2の軽鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸がEによって置換されており、第1の軽鎖の可変ドメインVLにおいて、位置38のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の可変ドメインVHにおいて、位置39のアミノ酸がEによって置換されており、第2の重鎖の可変ドメインVLにおいて、位置38のアミノ酸がKによって置換されており、第2の軽鎖の可変ドメインVHにおいて、位置39のアミノ酸がEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0379】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖及び第1の重鎖、及び
b)第2の抗原に特異的に結合する抗体の第2の軽鎖及び第2の重鎖
を含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられている、二重特異性抗体である。
【0380】
a)の抗体は、b)で報告される改変を含まず、a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。(b)の抗体において、軽鎖内で、可変軽鎖ドメインVLは、前記抗体の可変重鎖ドメインVHによって置き換えられており、定常軽鎖ドメインCLは、前記抗体の定常重鎖ドメインCH1によって置き換えられており、重鎖内で、可変重鎖ドメインVHは、前記抗体の可変軽鎖ドメインVLによって置き換えられており、定常重鎖ドメインCH1は、前記抗体の定常軽鎖ドメインCLによって置き換えられている。
【0381】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖及び第1の重鎖、及び
b)第2の抗原に特異的に結合する抗体の第2の軽鎖及び第2の重鎖
を含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられている、二重特異性抗体である。
【0382】
a)の抗体は、b)で報告される改変を含まず、a)の重鎖及び軽鎖は単離された鎖である。b)の抗体において、軽鎖内で、定常軽鎖ドメインCLが、前記抗体の定常重鎖ドメインCH1によって置き換えられており、重鎖内で、定常重鎖ドメインCH1が、前記抗体の定常軽鎖ドメインCLによって置き換えられている。
【0383】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖及び2つの抗体軽鎖からなる完全長抗体、並びに
b)第2の抗原に特異的に結合する1つ、2つ、3つ又は4つの単鎖Fab断片、
を含む二重特異性抗体であり、
ここで、b)の前記単鎖Fab断片は、前記完全長抗体の重鎖又は軽鎖のC末端又はN末端で、ペプチドリンカーを介して、a)の前記完全長抗体に融合している。
【0384】
一態様では、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の単鎖Fab断片は、前記完全長抗体の重鎖又は軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して、当該完全長抗体に融合している。
【0385】
一態様では、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の単鎖Fab(scFab)断片は、前記完全長抗体の重鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して、当該完全長抗体に融合している。
【0386】
一態様では、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の単鎖Fab(scFab)断片は、前記完全長抗体の軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して、当該完全長抗体に融合している。
【0387】
一態様では、第2の抗原に結合する2つの同一の単鎖Fab(scFab)断片は、前記完全長抗体の各重鎖又は軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して、当該完全長抗体に融合している。
【0388】
一態様では、第2の抗原に結合する2つの同一の単鎖Fab(scFab)断片は、前記完全長抗体の各重鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して、当該完全長抗体に融合している。
【0389】
一態様では、第2の抗原に結合する2つの同一の単鎖Fab(scFab)断片は、前記完全長抗体の各軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して、当該完全長抗体に融合している。
【0390】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖からなる完全長抗体
b)
ba)抗体重鎖可変ドメイン(VH)、又は
bb)抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体定常ドメイン1(CH1)
からなる第1のポリペプチドであって、
前記第1のポリペプチドは、そのVHドメインのN末端によって、ペプチドリンカーを介して、前記完全長抗体の2つの重鎖のうちの一方のC末端に融合している、第1のポリペプチド、
c)
ca)抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、又は
cb)抗体軽鎖可変ドメイン(VL)及び抗体軽鎖定常ドメイン(CL)
からなる第2のポリペプチドであって、
前記第2のポリペプチドは、VLドメインのN末端によって、ペプチドリンカーを介して、前記完全長抗体の2つの重鎖のうちの他方のC末端に融合している、第2のポリペプチド
を含み、
ここで、第1のポリペプチドの抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び第2のポリペプチドの抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は一緒になって、第2の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成する、三価抗体である。
【0391】
一態様では、b)のポリペプチドの抗体重鎖可変ドメイン(VH)及びc)のポリペプチドの抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は、以下の位置の間にジスルフィド結合を導入することによって、鎖間ジスルフィド架橋を介して連結され、安定化される:
(i)重鎖可変ドメイン位置44から軽鎖可変ドメイン位置100、又は
(ii)重鎖可変ドメイン位置105から軽鎖可変ドメイン位置43、又は
(iii)重鎖可変ドメイン位置101から軽鎖可変ドメイン位置100(番号付けは常にKabat EUインデックスに従う)。
【0392】
安定化のために非天然のジスルフィド架橋を導入する技術が、例えば、国際公開第94/029350号、Rajagopal,V.,et al.,Prot.Eng.(1997)1453-1459;Kobayashi,H.,et al.,Nucl.Med.Biol.25(1998)387-393;及びSchmidt,M.,et al.,Oncogene 18(1999)1711-1721に記載されている。一実施態様では、b)及びc)のポリペプチドの可変ドメインの間の任意のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置44と軽鎖可変ドメインの位置100との間にある。一実施態様では、b)及びc)のポリペプチドの可変ドメインの間の任意のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置105と軽鎖可変ドメインの位置43との間にある(番号付けは常にKabat EUインデックスに従う)。一実施態様では、単鎖Fab断片の可変ドメインVHとVLとの間に前記任意のジスルフィド安定化を有しない三価の二重特異性抗体が好ましい。
【0393】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合する完全長抗体の第1の軽鎖及び第1の重鎖、並びに
b)第2の抗原に特異的に結合する完全長抗体の第2の(修飾された)軽鎖及び第2の(修飾された)重鎖であって、可変ドメインVLとVHは互いに置き換えられており、且つ/又は定常ドメインCLとCH1は互いに置き換えられている、第2の(修飾された)軽鎖及び第2の(修飾された)重鎖
を含み、
c)1つ又は2つのさらなる抗原に特異的に結合する(すなわち、第3及び/又は第4の抗原に結合する)1つから4つの抗原結合ドメインが、ペプチドリンカーを介して、a)及び/又はb)の軽鎖又は重鎖のC末端又はN末端に融合している、三重特異性抗体又は四重特異性抗体である。
【0394】
a)の抗体は、b)で報告される改変を含まず、a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0395】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、c)で、1つ又は2つのさらなる抗原に特異的に結合する1つ又は2つの抗原結合ドメインを含む。
【0396】
一態様では、抗原結合ドメインは、scFv断片及びscFab断片からなる群から選択される。
【0397】
一態様では、抗原-結合ドメインは、scFv断片である。
【0398】
一態様では、抗原結合ドメインは、scFab断片である。
【0399】
一態様では、抗原結合ドメインは、a)及び/又はb)の重鎖のC末端に融合している。
【0400】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、c)で、1つのさらなる抗原に特異的に結合する1つ又は2つの抗原結合ドメインを含む。
【0401】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、c)で、第3の抗原に特異的に結合する2つの同一の抗原結合ドメインを含む。好ましい一実施態様では、そのような2つの同一の抗原結合ドメインは、a)及びb)の重鎖のC末端に対し、同じペプチドリンカーを介して両方とも融合している。好ましい一実施態様では、2つの同一の抗原結合ドメインは、scFv断片又はscFab断片のいずれかである。
【0402】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、c)で、第4の抗原に特異的に結合する2つの抗原結合ドメインを含む。一実施態様では、前記2つの抗原結合ドメインは、a)及びb)の重鎖のC末端に対し、同じペプチド連結部を介して両方とも融合している。好ましい一実施態様では、前記2つの抗原結合ドメインは、scFv断片又はscFab断片のいずれかである。
【0403】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し(且つ2つのFab断片を含む)、抗体の2つの軽鎖及び2つの重鎖、
b)第2の抗原に特異的に結合する、抗体の2つの付加的なFab断片であって、前記付加的なFab断片が、a)の重鎖のC末端又はN末端のいずれかにペプチドリンカーを介して融合している、抗体の2つの付加的なFab断片
を含む二重特異性四価抗体であり、
ここで、該Fab断片において、以下の修飾が行われている。
(i)a)の両方のFab断片、又はb)の両方のFab断片において、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、且つ/又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられており、又は
(ii)a)の両方のFab断片において、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられており、b)の両方のFab断片において、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられており、又は
(iii)a)の両方のFab断片において、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられており、b)の両方のFab断片において、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられており、又は
(iv)a)の両方のFab断片において、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、b)の両方のFab断片において、定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられており、又は
(v)a)の両方のFab断片において、定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換えられており、b)の両方のFab断片において、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられている。
【0404】
一態様では、前記追加のFab断片は、a)の重鎖のC末端又はa)の重鎖のN末端のいずれかにペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0405】
一態様では、前記追加のFab断片は、a)の重鎖のC末端にペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0406】
一態様では、前記追加のFab断片は、a)の重鎖のN末端にペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0407】
一態様では、Fab断片において、以下の修飾が行われる:a)の両Fab断片において、又はb)の両Fab断片において、可変ドメインVLとVHが互いに置き換えられており、且つ/又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換えられている。
【0408】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し、第1のVH-CH1ドメイン対を含む第1の抗体の(修飾)重鎖であって、前記重鎖のC末端に、前記第1の抗体の第2のVH-CH1ドメイン対のN末端がペプチドリンカーを介して融合している、第1の抗体の(修飾)重鎖、
b)a)の前記第1の抗体の2つの軽鎖
c)第2の抗原に特異的に結合し、第1のVH-CLドメイン対を含む第2の抗体の(修飾)重鎖であって、前記重鎖のC末端に、前記第2の抗体の第2のVH-CLドメイン対のN末端がペプチドリンカーを介して融合している、第2の抗体の(修飾)重鎖、及び
d)c)の前記第2の抗体の2つの(修飾)軽鎖であって、各々がCL-CH1ドメイン対を含む、前記第2の抗体の2つの(修飾)軽鎖
を含む、四価抗体である。
【0409】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合する第1の完全長抗体の重鎖及び軽鎖、並びに
b)第2の抗原に特異的に結合する第2の完全長抗体の重鎖及び軽鎖であって、重鎖のN末端がペプチドリンカーを介して軽鎖のC末端に連結されている、重鎖及び軽鎖
を含む。
【0410】
a)の抗体は、b)で報告される改変を含まず、重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0411】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖及び2つの抗体軽鎖からなる完全長抗体、並びに
b)VH2ドメイン及びVL2ドメインを含み、両ドメインがジスルフィド架橋を介して互いに連結されている、第2の抗原に特異的に結合するFv断片、を含み
ここで、VH2ドメイン又はVL2ドメインのいずれかのみが、ペプチドリンカーを介して、第1の抗原に特異的に結合する完全長抗体の重鎖又は軽鎖に融合している。
【0412】
二重特異性抗体において、a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0413】
一態様では、VH2ドメイン又はVL2ドメインのうち他方は、第1の抗原に特異的に結合する完全長抗体の重鎖又は軽鎖にペプチドリンカーを介して融合していない。
【0414】
本明細書で報告される全ての態様では、第1の軽鎖は、VLドメインとCLドメインとを含み、第1の重鎖は、VHドメインと、CH1ドメインと、ヒンジ領域と、CH2ドメインと、CH3ドメインとを含む。
【0415】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合する2つのFab断片と、
b)第2の抗原に特異的に結合し、CH1ドメインとCLドメインが互いに交換されている、1つのCrossFab断片と、
c)第1のFc領域の重鎖及び第2のFc領域の重鎖を含む1つのFc領域と
を含む三価抗体であり、
ここで、2つのFab断片のCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に連結しており、CrossFab断片のCLドメインのC末端は、Fab断片の1つのVHドメインのN末端に連結している。
【0416】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合する2つのFab断片と、
b)第2の抗原に特異的に結合し、CH1ドメインとCLドメインが互いに交換されている、1つのCrossFab断片と、
c)第1のFc領域の重鎖及び第2のFc領域の重鎖を含む1つのFc領域と
を含む三価抗体であり、
ここで、第1のFab断片のCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドの1つのN末端に連結しており、CrossFab断片のCLドメインのC末端は、他の重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に連結しており、第2のFab断片のCH1ドメインのC末端は、第1のFab断片のVHドメインのN末端に、又はCrossFab断片のVHドメインのN末端に連結している。
【0417】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、完全長抗体、並びに
b)重鎖断片及び軽鎖断片を含むVH2ドメイン及びVL2ドメインを含む第2の抗原に特異的に結合するFab断片であって、軽鎖断片内で、可変軽鎖ドメインVL2が、前記抗体の可変重鎖ドメインVH2によって置き換えられており、重鎖断片内で、可変重鎖ドメインVH2が、前記抗体の可変軽鎖ドメインVL2によって置き換えられている、Fab断片
を含み、
ここで、重鎖Fab断片は、完全長抗体の重鎖の1つのCH1ドメインと、完全長抗体のそれぞれのFc領域との間に挿入され、軽鎖Fab断片のN末端は、完全長抗体の重鎖と対を形成する完全長抗体の軽鎖のC末端にコンジュゲートされ、その中に重鎖Fab断片が挿入される。
【0418】
一態様では、二重特異性抗体は、
a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、完全長抗体、並びに
b)重鎖断片及び軽鎖断片を含むVH2ドメイン及びVL2ドメインを含む第2の抗原に特異的に結合するFab断片であって、軽鎖断片内で、可変軽鎖ドメインVL2が、前記抗体の可変重鎖ドメインVH2によって置き換えられており、重鎖断片内で、可変重鎖ドメインVH2が、前記抗体の可変軽鎖ドメインVL2によって置き換えられており、Fab断片の重鎖断片のC末端は、完全長抗体の重鎖の1つのN末端にコンジュゲートされており、Fab断片の軽鎖断片のC末端は、完全長抗体の重鎖と対を形成する完全長抗体の軽鎖のN末端にコンジュゲートされており、これに対し、Fab断片の重鎖断片がコンジュゲートされている、Fab断片
を含む。
【0419】
B.PD-1及びLAG3に結合する二重特異性抗体の投薬
疾患の予防又は治療のために、本発明のPD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体の適切な投薬量は、(単独で使用されるとき、又は1つ以上の他のさらなる治療薬剤と組み合わせて使用される場合)、治療される疾患の種類、投与経路、対象の体重、融合タンパク質の種類、疾患の重篤度及び経過、二重特異性抗体が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前又は現在の治療介入、対象の病歴及び融合タンパク質に対する応答、及び主治医の判断によって変わる。いずれにせよ、投与を担当する施術者は、組成物中の1つ又は複数の活性成分の濃度及び個々の対象に対する1つ又は複数の適切な用量を決定する。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない種々の投薬スケジュールが企図される。
【0420】
本明細書で定義されるPD-1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン及びLAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体は、好適には、対象に一度に又は一連の治療にわたって投与される。疾患の種類及び重篤度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の二重特異性抗体が、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続的な注入によるかによらず、対象に投与するための初期の候補投薬量であってもよい。上記の要因に応じて、典型的な1日あたりの投薬量は、約1μg/kg~100mg/kg又はそれ以上の範囲である可能性がある。数日間又はそれ以上にわたる反復投与の場合、治療は通常、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。二重特異性抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲である。他の例では、投薬量はまた、投与あたり、約1μg/kg体重、約5μg/kg体重、約10μg/kg体重、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約350mg/kg体重、約500mg/kg体重から約1000mg/kg体重まで、又はもっと多く、又はその間の誘導可能な任意の範囲を含んでいてもよい。本明細書に挙げた数字から導き出せる範囲の例では、上記の数字に基づいて、約5mg/kg体重~約100mg/kg体重、約5μg/kg体重~約500mg/kg体重等の範囲が投与され得る。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1つ又は複数の用量が、対象に投与され得る。このような用量を、断続的に、例えば、毎週、又は3週間ごとに投与してもよい(例えば、患者は、約2~約20回、又は例えば約6回の融合タンパク質の投薬を受ける)。最初のより高い負荷用量、続いて1回以上のより低い用量を投与することができる。しかしながら、他の投与レジメンが有用であってもよい。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
【0421】
特定の一態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、3週間ごと(Q3W)に約600mgの固定用量、例えば、Q3Wで600mgの固定用量で対象に投与される。
【0422】
別の態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、3週間ごとに約1200mgの固定用量、例えば、Q3Wで1200mgの固定用量で対象に投与される。
【0423】
別の態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体は、2週間ごと(Q2W)に約2100mgの固定用量、例えば、Q2Wで2100mgの固定用量で対象に投与される。
【0424】
IX.VEGFアンタゴニスト
VEGFアンタゴニストとしては、VEGFに結合するか、VEGF発現レベルを低減するか、又はVEGFの生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減、又は妨害し得る任意の分子が挙げられる。例示的なヒトVEGFは、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P15692、Gene ID(NCBI):7422として示される。
【0425】
いくつかの実例では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。いくつかの実施態様では、抗VEGF抗体は、「rhuMab VEGF」又は「AVASTIN(登録商標)」としても公知のベバシズマブである。ベバシズマブは、Prestaら(Cancer Res.57:4593-4599,1997)に従って生成される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFの、その受容体への結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域の大部分を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%は、ヒトIgG1に由来し、配列の約7%は、マウス抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、分子量が約149,000ダルトンであり、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行された米国特許第6884879号にさらに記載されており、その全開示が参照により本明細書中に援用される。
【0426】
追加の好ましい抗体としては、PCT出願公開の国際公開第2005/012359号に記載されているG6又はB20シリーズ抗体(例えば、G6-31、B20-4.1)が挙げられる。追加の好ましい抗体については、米国特許第7060269号、同第6582959号、同第6703020号;同第6054297号;国際公開第98/45332号;国際公開第96/30046号;国際公開第94/10202号;欧州特許第0666868号;米国特許出願公開第2006/009360号、同第2005/0186208号、同第2003/0206899号、同第2003/0190317号、同第2003/0203409号及び同第2005/0112126号;並びにPopkov et al.(Journal of Immunological Methods 288:149164,2004)を参照のこと。他の好ましい抗体としては、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、191、K101、E103、及びC104を含むか、あるいは残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、183、及びQ89を含む、ヒトVEGF上の機能的エピトープに結合する抗体が挙げられる。
【0427】
他の実例では、VEGFアンタゴニストは、抗VEGFR2抗体又は関連する分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体又は関連する分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap-Eye、EYLEA(登録商標))、又はジブ-アフリベルセプト(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標)))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP-0250、バヌシズマブ(VEGF-ANG2)、又はUS2001/0236388に開示されている二重特異性抗体)、抗VEGFアーム、抗VEGFR1アーム、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGFA抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ)、抗VEGFB抗体、抗VEGFC抗体(例えば、VGX-100)、抗VEGFD抗体、又は非ペプチド低分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニブ、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、又はチボザニブ)である。いくつかの例では、VEGFアンタゴニストは、受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ又はアキシチニブなどの多重標的化受容体チロシンキナーゼ阻害剤)を含むチロシンキナーゼ阻害剤であり得る。
【0428】
X.PD-1軸結合アンタゴニスト
PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれ得る。任意の適切なPD-1軸結合アンタゴニストが、がんを有する対象を治療するために使用され得る。
【0429】
A.PD-L1結合アンタゴニスト
いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ又は複数への結合を阻害する。他の例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。さらに他の例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。PD-L1結合アンタゴニストは、限定されないが、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド又は小分子であり得る。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を阻害する小分子(例えば、GS-4224、INCB 086550、MAX-10181、INCB 090244、CA-170又はABSK 041)である。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1及びVISTAを阻害する小分子である。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、CA-170(AUPM-170としても知られる)である。いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1及びTIM3を阻害する小分子である。いくつかの実例では、小分子は、国際公開第2015/033301号及び/又は国際公開第2015/033299号に記載されている化合物である。
【0430】
いくつかの実例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。様々な抗PD-L1抗体が本明細書において企図され、記載されている。本明細書の実例のいずれにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7-1に示されるようなヒトPD-L1、又はそのバリアントに結合することができる。いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間及び/又はPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。例示的な抗PD-L1抗体としては、アテゾリズマブ、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、MSB0010718C(アベルマブ)、SHR-1316、CS1001、エンバホリマブ、TQB2450、ZKAB001、LP-002、CX-072、IMC-001、KL-A167、APL-502、コシベリマブ、ロダポリマブ、FAZ053、TG-1501、BGB-A333、BCD-135、AK-106、LDP、GR1405、HLX20、MSB2311、RC98、PDL-GEX、KD036、KY1003、YBL-007及びHS-636が挙げられる。本発明の方法において有用な抗PD-L1抗体及びそれらを作製する方法の例は、国際公開第2010/077634号及び米国特許第8217149号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0431】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、
(a)それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号64)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号65)及びRHWPGGFDY(配列番号66)のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列、並びに
(b)それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号67)、SASFLYS(配列番号68)、及びQQYLYHPAT(配列番号69)のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列
を含む。
【0432】
一実施態様では、抗PD-L1抗体は、
(a)アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号70)を含む重鎖可変領域(VH)、及び
(b)アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号71)を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0433】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号9の配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号9の配列を含むVHドメイン;(b)配列番号10の配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号10の配列を含むVLドメイン;又は(a)のVH及び(b)のVLを含む。
【0434】
一実施態様では、抗PD-L1抗体は、
(a)重鎖アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号62)、及び
(b)軽鎖アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号63)
を含むアテゾリズマブを含む。
【0435】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体はアベルマブ(CAS登録番号:1537032-82-8)である。MSB0010718Cとしても知られるアベルマブは、ヒトモノクローナルIgG1抗PD-L1抗体(Merck KGaA、Pfizer)である。
【0436】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ(CAS登録番号:1428935-60-7)である。MEDI4736としても知られるデュルバルマブは、国際公開第2011/066389号及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載されている、Fc最適化ヒトモノクローナルIgG1カッパ抗PD-L1抗体(MedImmune、AstraZeneca)である。
【0437】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、MDX-1105(Bristol Myers Squibb)である。BMS-936559としても知られているMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載されている抗PD-L1抗体である。
【0438】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、LY3300054(Eli Lilly)である。
【0439】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、STI-A1014(Sorrento)である。STI-A1014はヒト抗PD-L1抗体である。
【0440】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、KN035(Suzhou Alphamab)である。KN035は、ラクダファージディスプレイライブラリーから生成されたシングルドメイン抗体(dAB)である。
【0441】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、(例えば、腫瘍微小環境中のプロテアーゼによって)切断されると、抗体抗原結合ドメインを活性化して、例えば、非結合性立体部分を除去することによって、その抗原を結合させることができるようにする、切断可能な部分又はリンカーを含む。いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、CX-072(CytomX Therapeutics)である。
【0442】
いくつかの実例では、抗PD-L1抗体は、米国特許出願公開第20160108123号、国際公開第2016/000619号、国際公開第2012/145493号、米国特許第9205148号、国際公開第2013/181634号又は国際公開第2016/061142号に記載されている、抗PD-L1抗体の6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)並びに/又は重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0443】
なおさらなる特定の態様では、抗PD-L1抗体は、低下した又は最小のエフェクター機能を有する。さらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターレスFc変異(effector-less Fc mutation)」又は非グリコシル化(aglycosylation)変異に起因する。なおさらなる実例では、エフェクターレスFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。なおさらなる実例では、エフェクターレスFc変異は、定常領域内のN297A置換である。いくつかの実例では、単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化されている。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。よって、ポリペプチドにおけるこれらトリペプチド配列のいずれかの存在が、潜在的なグリコシル化部位をつくる。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1種が除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン又はスレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン又は保存的置換)との置換によって行われ得る。
【0444】
B.PD-1結合アンタゴニスト
いくつかの例では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ又は複数への結合を阻害する。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する。他の実例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する。さらに他の実例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2両方への結合を阻害する。PD-1結合アンタゴニストは、限定されないが、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド又は小分子であり得る。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1若しくはPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。例えば、いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。B7-DCIgとしても知られているAMP-224は、国際公開第2010/027827号及び同第2011/066342号に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、ペプチド又は低分子化合物である。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、AUNP-12(PierreFabre/Aurigene)である。例えば、国際公開第2012/168944号、国際公開第2015/036927号、国際公開第2015/044900号、国際公開第2015/033303号、国際公開第2013/144704号、国際公開第2013/132317号及び国際公開第2011/161699号を参照されたい。いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を阻害する小分子である。
【0445】
いくつかの実例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。様々な抗PD-1抗体が、本明細書に開示の方法及び使用において利用され得る。本明細書のいずれの実例においても、PD-1抗体は、ヒトPD-1又はそのバリアントに結合することができる。いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、ヒト化抗体である。他の実例では、抗PD-1抗体はヒト抗体である。例示的な抗PD-1アンタゴニスト抗体としては、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MEDI-0680、PDR001(スパルタリズマブ)、REGN2810(セミプリマブ)、BGB-108、プロルゴリマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタリマブ、レチファンリマブ、ササンリマブ、ペンプリマブ、CS1003、HLX10、SCT-I10A、ジンベレリマブ、バルスチリマブ、ゲノリムズマブ、BI 754091、セトレリマブ、YBL-006、BAT1306、HX008、ブジカリマブ、AMG404、CX-188、JTX-4014、609A、Sym021、LZM009、F520、SG001、AM0001、ENUM 244C8、ENUM 388D4、STI-1110、AK-103及びhAb21が挙げられる。
【0446】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号946414-94-4)である。ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb/Ono)は、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558及びOPDIVO(登録商標)としても知られており、国際公開第2006/121168号に記載の抗PD-1抗体である。
【0447】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(CAS登録番号1374853-91-4)である。ペンブロリズマブ(Merck)は、MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、SCH-900475及びKEYTRUDA(登録商標)としても知られており、国際公開第2009/114335号に記載の抗PD-1抗体である。
【0448】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、MEDI-0680(AMP-514;Astra Zeneca)である。MEDI-0680は、ヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0449】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、PDR001(CAS登録番号1859072-53-9;Novartis)である。PDR001は、PD-1へのPD-L1及びPD-L2の結合を遮断するヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0450】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、REGN2810(Regeneron)である。REGN2810は、ヒト抗PD-1抗体である。
【0451】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、BGB-108(BeiGene)である。
【0452】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、BGB-A317(BeiGene)である。
【0453】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、JS-001(Shanghai Junshi)である。JS-001はヒト化抗PD-1抗体である。
【0454】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、STI-A1110(Sorrento)である。STI-A1110は、ヒト抗PD-1抗体である。
【0455】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、INCSHR-1210(Incyte)である。INCSHR-1210は、ヒトIgG4抗PD-1抗体である。
【0456】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、PF-06801591(Pfizer)である。
【0457】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011としても知られている;Tesaro/AnaptysBio)である。
【0458】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、AM0001(ARMO Biosciences)である。
【0459】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、ENUM 244C8(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 244C8は、PD-1へのPD-L1の結合を遮断することなくPD-1機能を阻害する抗PD-1抗体である。
【0460】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、ENUM 388D4(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 388D4は、PD-1へのPD-L1の結合を競合的に阻害する抗PD-1抗体である。
【0461】
いくつかの実例では、抗PD-1抗体は、国際公開第2015/112800号、国際公開第2015/112805号、国際公開第2015/112900号、米国特許出願公開第20150210769号、国際公開第2016/089873号、国際公開第2015/035606号、国際公開第2015/085847号、国際公開第2014/206107号、国際公開第2012/145493号、米国特許第9205148号、国際公開第2015/119930号、国際公開第2015/119923号、国際公開第2016/032927号、国際公開第2014/179664号、国際公開第2016/106160号、及び国際公開第2014/194302に記載されている、抗PD-1抗体の6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)並びに/又は重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0462】
なおさらなる特定の態様では、抗PD-1抗体は、低下した又は最小のエフェクター機能を有する。さらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターレスFc変異(effector-less Fc mutation)」又は非グリコシル化(aglycosylation)変異に起因する。なおさらなる実例では、エフェクターレスFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。いくつかの実例では、単離された抗PD-1抗体は、非グリコシル化されている。
【0463】
C.PD-L2結合アンタゴニスト
いくつかの実例では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの実例では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合リガンドパートナーは、PD-1である。PD-L2結合アンタゴニストは、限定されないが、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド又は小分子であり得る。
【0464】
いくつかの実例では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体である。本明細書の実例のいずれかでは、抗PD-L2抗体は、ヒトPD-L2又はそのバリアントに結合することができる。いくつかの実例では、抗PD-L2抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実例では、抗PD-L2抗体は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実例では、抗PD-L2抗体は、ヒト化抗体である。他の実例では、抗PD-L2抗体はヒト抗体である。なおさらなる特定の態様では、抗PD-L2抗体は、低下した又は最小のエフェクター機能を有する。さらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターレスFc変異(effector-less Fc mutation)」又は非グリコシル化(aglycosylation)変異に起因する。なおさらなる実例では、エフェクターレスFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。いくつかの実例では、単離された抗PD-L2抗体は、非グリコシル化されている。
【0465】
XI.薬学的組成物及び製剤
また、本明細書では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体、及び任意選択で薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物及び製剤も提供される。本開示は、(i)PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、並びに任意選択で薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物及び製剤;(ii)抗TIGITアンタゴニスト抗体、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体、並びに任意選択で薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物及び製剤も提供する。本明細書に記載のPD-1及びLAG3及び/又は他の薬剤(例えば、デキサメタゾン)を標的とする二重特異性抗体の薬学的組成物及び製剤を、1つ又は複数の任意選択的な薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と、凍結乾燥組成物又は水溶液の形態に混合することにより調製され得る。いくつかの実施態様では、モスネツズマブは、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施態様では、モスネツズマブは、静脈内投与用に製剤化される。
【0466】
本明細書に記載される薬学的組成物及び製剤は、所望の純度を有する活性成分(例えば、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体、抗TIGITアンタゴニスト抗体、及び/又は抗VEGF抗体)を、1つ又は複数の任意選択的な薬学的に許容される担体(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)を参照)と、例えば、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に混合することにより調製され得る。
【0467】
例示的なチラゴルマブ製剤は、ポリソルベート20、スクロース、L-メチオニン及びWFIを含有するヒスチジン溶液を含む。チラゴルマブは、60mg/mLのチラゴルマブ抗体のおおよその濃度で10mLのチラゴルマブ製剤を含有する15mLバイアルで提供され得る。
【0468】
薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投与量及び濃度ではレシピエントに非毒性であり、それらとしては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤をさらに含む。rHuPH20を含む特定の例示的なsHASEGP及び使用法については、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、1つ又は複数のさらなるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と組み合わされる。
【0469】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は酢酸ヒスチジン緩衝液を含む。
【0470】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要に応じて2つ以上の活性成分を含んでもよく、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含んでもよい。例えば、追加の治療剤(例えば、化学療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、及び/又は抗ホルモン剤、例えば、本明細書において上記で言及されたもの)をさらに提供することが望ましい場合がある。そのような活性成分は、好適には、意図する目的に有効な量で組み合わせて存在する。
【0471】
活性成分は、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション法又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入され得る。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0472】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例としては、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。
【0473】
in vivo投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌状態は、例えば滅菌濾過膜に通して濾過することにより、容易に達成することができる。
【0474】
XII.製造品又はキット
A.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体と抗TIGITアンタゴニスト抗体を含むキット
別の態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)を含む製造品又はキットが本明細書で提供される。いくつかの実例では、製造品又はキットは、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるために、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体と組み合わせて抗TIGITアンタゴニスト抗体を使用するための説明書を含む添付文書をさらに含む。本明細書に記載されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び/又は抗TIGITアンタゴニスト抗体のいずれも、製造品又はキットに含まれ得る。
【0475】
本発明の別の実施態様では、本明細書に記載の方法のいずれかに従ってがんを有する対象を治療するための抗TIGITアンタゴニスト抗体と組み合わせて使用するための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含むキットが提供される。いくつかの実例では、キットは抗TIGITアンタゴニスト抗体をさらに含む。いくつかの実例では、製造品又はキットは、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるために、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を抗TIGITアンタゴニスト抗体(例えば、チラゴルマブ)と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書をさらに含む。
【0476】
いくつかの実例では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体と抗TIGITアンタゴニスト抗体は、同じ容器又は別々の容器に入っている。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、バッグ及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(例えばポリ塩化ビニル若しくはポリオレフィン)、又は金属合金(例えばステンレス鋼若しくはハステロイ)といった種々の材料から形成され得る。いくつかの実例では、容器は製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製造品又はキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書付きの添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。いくつかの実例では、製造品は、1つ又は複数の別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗腫瘍剤)をさらに含む。1つ又は複数の薬剤のための好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、バッグ、及びシリンジが挙げられる。
【0477】
本明細書に記載されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び/又は抗TIGITアンタゴニスト抗体のいずれも、製造品又はキットに含まれ得る。製造品又はキットのいずれかには、本明細書に記載の方法のいずれか、例えば、上のセクションIIIに記載の方法のいずれかに従って、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び/又は抗TIGITアンタゴニスト抗体を対象に投与するための説明書を含み得る。
【0478】
B.PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体と抗VEGF抗体を含むキット
別の態様では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)を含む製造品又はキットが本明細書で提供される。いくつかの実例では、製造品又はキットは、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるために、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体と組み合わせて抗VEGF抗体を使用するための説明書を含む添付文書をさらに含む。本明細書に記載されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び/又は抗VEGF抗体のいずれも、製造品又はキットに含まれ得る。
【0479】
本発明の別の実施態様では、本明細書に記載の方法のいずれかに従ってがんを有する対象を治療するための抗VEGF抗体と組み合わせて使用するための、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を含むキットが提供される。いくつかの実例では、キットは抗VEGF抗体をさらに含む。いくつかの実例では、製造品又はキットは、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるために、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体を抗VEGF抗体と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書をさらに含む。
【0480】
いくつかの実例では、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体と抗VEGFアンタゴニスト抗体は、同じ容器又は別々の容器に入っている。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、バッグ及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(例えばポリ塩化ビニル若しくはポリオレフィン)、又は金属合金(例えばステンレス鋼若しくはハステロイ)といった種々の材料から形成され得る。いくつかの実例では、容器は製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製造品又はキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書付きの添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。いくつかの実例では、製造品は、1つ又は複数の別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗腫瘍剤)をさらに含む。1つ又は複数の薬剤のための好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、バッグ、及びシリンジが挙げられる。
【0481】
本明細書に記載されるPD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び/又は抗VEGF抗体のいずれも、製造品又はキットに含まれ得る。製造品又はキットのいずれもが、本明細書に記載の方法のいずれか、例えば、上のセクションIIIに記載される方法のいずれかに従って、PD-1及びLAG3を標的とする二重特異性抗体及び/又は抗VEGF抗体を対象に投与するための説明書を含み得る。
【実施例】
【0482】
実施例1:黒色腫患者における複数の治療の組み合わせの有効性と安全性を評価する、第Ib/II相、非盲検、多施設共同、無作為化包括的試験
黒色腫は潜在的に致死性の皮膚がんであり、最も急速に増加している悪性腫瘍の1つである(Algazi et al.Cancer Manag Res.2:197-211,2010;Finn et al.BMC Med.10:23,2012)。現在、世界中で毎年30万人以上が黒色腫と診断され、5万7000人がこの疾患で亡くなっている。黒色腫患者の臨床転帰は、発症時のステージに大きく依存する。より進行した黒色腫を呈する人のほとんどは予後不良である(Finn et al.BMC Med.10:23,2012)。リンパ節転移を有する患者(ステージIII)は、手術後の局所再発及び遠隔再発のリスクが高く、この患者群における5年生存率は32~93%である(Gershenwald et al.CA Cancer J Clin.67:472-492,2017)。発症時に転移性疾患(ステージIV)を有する患者はほとんどいないが、最初の根治的治療後に転移を発症する患者もいる。免疫療法と標的治療により、これらの患者の予後は改善され、5年生存率は約50%となっている(Larkin et al.N Engl J Med.373:23-34,2015;Wolchok et al.N Engl J Med.377:1345-1356,2017;Larkin et al.N Engl J Med.381:1535-1546,2019;Robert et al.Lancet Oncol.20:1239-1251,2019;Long et al.J Clin Oncol.38(Suppl 15):10013,2020)。最近の治療法の進歩にも関わらず、黒色腫は依然として深刻な健康問題であり、医療ニーズは高く、発生率は過去30年間で着実に増加している(Bataille.Expert Rev Dermatol.4:533-539,2009)。
【0483】
BO43328は、切除可能なステージIII(コホート1)又はステージIV(コホート2)の黒色腫患者を対象とした、第Ib/II相、非盲検、多施設共同、無作為化、包括的試験である。この試験は、新しい治療法が利用可能になったときに新しい治療群を開設したり、最小限の臨床活性又は許容できない毒性を示した既存の治療群を閉鎖したり、患者集団を変更したり(例えば、事前の抗がん治療又はバイオマーカーの状態に関して)、他の種類の黒色腫患者の追加コホートを導入したりすることができる柔軟性を備えて設計されている。
【0484】
A.研究デザインの概要
この研究では、切除可能なステージIIIの悪性黒色腫を有するがん免疫療法(CIT)未治療患者(コホート1)及びステージIVの悪性黒色腫患者(コホート2)における、治療の組み合わせの有効性、安全性、及び薬物動態を評価する。コホート1(表5を参照)及びコホート2(表6を参照)について、研究の具体的な目的と対応する評価項目を以下に概説する。
【0485】
表5.コホート1の目標及び対応する評価項目
ADA=抗薬物抗体;ASTCT=米国移植細胞学会;CLND=完全リンパ節郭清;CR=完全奏効;CRS=サイトカイン放出症候群;EFS=無症候生存期間;NCI CTCAE v5.0=国立がん研究所有害事象共通用語規準、バージョン5.0;ORR=客観的奏効率;OS=全生存期間;pCR=病理学的完全奏効;PK=薬物動態;pnCR=病理学的ほぼ完全奏効;pPR=病理学的部分奏効;PR=部分奏効;pRR=病理学的奏効率;RECIST v1.1=固形腫瘍における応答評価基準、バージョン1.1;RFS=無再発生存期間。
【0486】
表6.コホート2の目標及び対応する評価項目
ADA=抗薬物抗体;ASTCT=米国移植細胞学会;CR=完全奏効;CRS=サイトカイン放出症候群;DOR=奏効期間;iRECIST=免疫ベースの治療薬のための修正RECIST v1.1;NCI CTCAE v5.0=国立がん研究所有害事象共通用語規準、バージョン 5.0;ORR=客観的奏効率;OS=全生存期間;PFS=無増悪生存期間;PK=薬物動態;PR=部分奏効;RECIST v1.1=固形腫瘍における応答評価基準、バージョン1.1。
注:1つの時点での全奏効が、RECIST v1.1を使用して治験責任医師によって評価される。
【0487】
この研究では、2つのコホートが並行して登録されている。コホート1では、生検が可能で、RECIST v1.1(固形腫瘍における応答評価基準、バージョン1.1)に従って測定可能なリンパ節転移を有する切除可能なステージIIIの黒色腫患者であって、過去6か月以内にin-transit転移の病歴がなく、PD-1/PD-L1及び/又はCTLA-4ブロッキング剤又は他の薬剤の全身CITを受けていない患者を登録する。
【0488】
コホート2は、転移性疾患に対する1ライン以上、2ライン以下の治療中又は治療後に疾患進行を経験したステージIVの黒色腫患者を登録する。最大2ラインのチェックポイント阻害療法(単剤療法又は併用療法)が許可される。BRAF変異疾患を有する患者は、標的治療の追加ライン(チェックポイント阻害療法の前、間欠的、又は後のいずれか)を受けているか、又は標的治療とチェックポイント阻害療法を1つの併用治療として同時に受けている可能性がある。
【0489】
治療の割り当て
コホート1では、患者は対照群(ニボルマブ+イピリムマブ(Nivo+Ipi))又はRO7247669(PD-1及びLAG3に結合する二重特異性抗体)、アテゾリズマブとチラゴルマブの併用(Atezo+Tira)、又はRO7247669とチラゴルマブの併用(RO7247669+Tira)からなる実験群に無作為に割り当てられる。患者は、地理的地域(オーストラリア対世界のその他の地域)及びベースラインのLDH(正常上限値(ULN)以下対ULN超)によって層別化される。治療レジメンの詳細は表7と
図1に示す。
【0490】
コホート2では、患者はRO7247669とチラゴルマブの併用(RO7247669+Tira)からなる実験群に登録される。登録は、6人の患者の安全性導入段階から開始される。
【0491】
コホート2の安全性導入段階に登録された約6人の患者を含め、試験期間中に約61~191名の患者が登録される。実験群への登録は、予備段階と拡大段階の2段階で行われる。予備段階では、各治療群に約15~20人の患者が登録される。予備段階で臨床活性(コホート1における病理学的奏効)が実験群で観察された場合、拡大段階でその群に約20名の患者を追加登録することができる。
【0492】
試験依頼者は、特定の治療群内での登録を延期又は一時停止することを決定することができる。不十分な臨床活性又は許容できない毒性を有する実験群は拡大されない。さらなるサブグループ分析を可能にするために、潜在的な予測バイオマーカーを含む人口統計学的及びベースライン特性に関して治療群間のバランスを確保するために、さらなる患者を登録することができる。
【0493】
無作為化は、利用可能な実験群の数(例えば、予備段階からの結果の分析を待って、群が追加されるか、又は群への登録が一時停止される場合)に依存し、対照群に割り当てられる可能性は35%以下であるという規定がある。無作為化は、群特異的排除基準を考慮に入れる。患者は、その群について概説された除外基準のいずれかを満たす場合、特定の群に対して不適格である。
【0494】
治療レジメンの詳細は表7に示す。
【0495】
表7.治療レジメン
a試験依頼者は、所与の治療群内への登録を遅延又は中断することを決定し得る。したがって、全ての実験群が同時に登録を開始できるわけではない。
b安全性導入段階では、患者は使用可能な治療群に割り当てられる。治療割り当ての比率は、登録を受け付けている実験群の数によって決まる。
c無作為化率は、無作為化を受け付けている実験群の数(例えば、予備段階からの結果の分析を待って、群が追加されるか、又は群への無作為化が一時停止される場合)に依存し、対照群に割り当てられる可能性は35%以下であるという規定がある。
b予備段階中に実験群で臨床活性が観察される場合、拡大段階中に約20人の追加の患者がその群に登録される。最小限の臨床活性又は許容できない毒性を有する実験群は、拡大を受けない。
e最低6人の患者での安全性評価を可能にするため、コホート1のRO7247669、Atezo+Tira、RO7247669+Tira群では登録が一時停止される。
fコホート2での治療の組み合わせの安全性評価後、コホート1でRO7247669+Tira群への登録が開始される。
【0496】
コホート1では、対照群と実験群の患者が6週間のネオアジュバント治療を受ける。ネオアジュバント治療終了後、又は毒性による中止の場合、及び疾患進行がない場合、患者は7週目に手術(完全リンパ節郭清(CLND))を受ける。治験責任医師の裁量により、この試験以外では、患者はその後アジュバント療法又は観察を13週目に開始する(
図2)。
【0497】
CITによるT細胞応答(偽進行と呼ばれる)に関連した免疫細胞浸潤によって引き起こされる転移性リンパ節のサイズの初期増加の可能性のために、RECIST v1.1による臨床的又は放射線学的進行の疑いは、実際の疾患進行を示していない可能性がある。許容できない毒性がない場合、CIT薬物による治療を受けている間にRECIST v1.1による疾患進行の基準を満たす患者は、手術まで試験治療を継続することが許可される。試験治療の中止及び/又は手術の中止の前に、追加の専門審査員による生検又は放射線学的繰り返し評価によって進行が確認される。遠隔転移がなく、外科医が疾患を完全に切除可能と判断すれば、全ての患者が手術に進むことが期待される。
【0498】
コホート2では、患者は、放射線学的及び生化学的データ、局所生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態(例えば、疾患に続発する疼痛等の症候性の悪化)の統合評価の後に治験責任医師によって決定される許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで試験治療を受ける。アテゾリズマブ及び他のCITによるによるT細胞応答(偽進行と呼ばれる)の状況では、免疫細胞浸潤によって引き起こされる腫瘍負荷の初期増加の可能性のために、RECIST v1.1による放射線学的進行は、真の疾患進行を示さない可能性がある。許容できない毒性がない場合、CIT併用による治療を受けている間にRECIST v1.1による疾患進行の基準を満たす患者は、以下の基準の全てを満たす場合、治療を継続することが許可される:
・ 全ての利用可能なデータの再検討後に治験責任医師によって決定される臨床的利益の証拠。
・ 疾患の明確な進行を示す症候及び徴候(検査値、例えば、新たな又は悪化する高カルシウム血症を含む)がないこと。
・ 疾患進行に起因し得るECOGパフォーマンスステータスの低下がないこと。
・ プロトコールで許可された医学的介入によって管理することができない重要な解剖学的部位(例えば、軟髄膜疾患)における腫瘍進行の欠如。
【0499】
進行を超えた治療を受ける資格のある患者は、治験責任医師から、試験治療を継続しながら臨床的利益をもたらすことが知られている他の治療選択肢を控える可能性があることを知らされる。患者は、何らかの理由でいつでも試験から自発的に離脱する権利を有する。さらに、治験責任医師は、治験責任医師又は試験依頼者が、治験を継続した場合に患者の安全が脅かされる可能性があると判断した医学的状態について、患者を試験から離脱させる権利を有する。
【0500】
その後の腫瘍評価で偽進行が除外され、疾患進行が確認された場合、患者は試験治療を中止する。
【0501】
安全性評価段階(コホート1)
ネオアジュバント設定における実験的治療の毒性を評価するため、安全性評価を可能にするために約6人の患者が登録された後、登録を中断する。安全性評価は、少なくとも1用量の治療(すなわち、所与の組み合わせに対して各薬剤の1回の用量)を受け、手術までの安全性追跡評価を完了した少なくとも6人の患者からの安全性データに基づく。注目すべきは、手術の適時実施(CLND)が治療忍容性の指標となることである。6人の患者の安全性評価中、又は安全性評価後の任意の時点で、患者の30%以上が、少なくとも試験治療に関連している可能性があると考えられる以下の事象の1つ以上を経験している場合、試験依頼者がその治療の利益とリスクのプロファイルを評価している間、その組み合わせへの登録は保留される:
・ 治療に関連したグレード3以上の有害事象で、(治療の有無にかかわらず)2週間以内にグレード2以上に改善しない。
・ 手術に2週間を超える遅延を引き起こす治療関連の有害事象。
・ 治療に関連した重篤な有害事象。
・ 試験薬の永久中止を必要とする治療関連の有害事象。
・ 疾患進行又は事故などの無関係な原因に疑いの余地のない関連があるものを除く死亡。
【0502】
新たな安全性シグナルが検出されなければ、その治療群での登録が再開される。
【0503】
安全性導入段階(コホート2)
初めて臨床試験される新しい組み合わせの安全性と忍容性を評価するために、コホート2では初期の安全性導入段階が実施される。転移性疾患を有する約6人の患者が新規組み合わせ(すなわち、RO7247669+Tira)で治療され、最低28日間安全性と忍容性が評価される。
【0504】
コホート2では、少なくとも6人の患者が、最初の安全性導入段階を完了する必要がある。RO7247669+Tiraの組み合わせが忍容性があると判断された場合、予備段階の登録が開始され、コホート1のRO7247669+Tira群の登録を開始することができる。安全導入段階の患者は登録され、最初の患者と残りの患者との間に少なくとも1週間の間隔をあけて順次治療される。
【0505】
安全性評価は、少なくとも1用量の治療(すなわち、各薬剤の1回の用量)を受け、少なくとも28日間の安全性追跡評価を完了した少なくとも6人の患者からの安全性データに基づく。患者の30%以上が、少なくとも試験治療に関連している可能性があると考えられる以下の事象の1つ以上を経験している場合、試験依頼者がその治療の利益とリスクのプロファイルを評価している間、その組み合わせへの登録は保留される:
・ 治療に関連したグレード3以上の有害事象で、(治療の有無にかかわらず)2週間以内にグレード2以上に改善しない。
・ 治療に関連した重篤な有害事象。
・ 試験薬の永久中止を必要とする治療関連の有害事象。
・ 疾患進行又は事故などの無関係な原因に疑いの余地のない関連があるものを除く死亡。
【0506】
新たな安全性シグナルが検出されなければ、コホート1でも組み合わせが開始される。
【0507】
B.試験終了及び試験期間
この試験の終了日は、電話又はクリニックで行われる生存追跡訪問を含め、最後の患者が最後の訪問を完了した日として定義される。最初の患者のスクリーニングから試験終了までの試験の総期間はおよそ5年と予想される。
【0508】
C.研究デザインの理論的根拠
患者集団の理論的根拠
コホート1は、生検可能な測定可能なリンパ節転移(RECIST v1.1による)を有し、過去6か月以内にin-transit転移の病歴がない、切除可能なステージIII黒色腫の患者を登録する。登録患者は、その疾患に対して以前に免疫療法を受けていてはならない。
【0509】
この同じ患者集団が、PRADO延長コホートを含むOpACIN及びOpACIN-neo研究に登録されている。これらの研究では、切除可能な黒色腫患者におけるニボルマブとイピリムマブのネオアジュバント(及びアジュバント)の組み合わせが評価された。ネオアジュバント療法は、アジュバント療法と比較して、統計的に有意で臨床的に意味のある利益があることが判明した(Rozeman et al.Lancet Oncol.20:948-960,2019;Blank et al.J Clin Oncol.38:15S,2020;Rozeman et al.Nat Med.27:256-263,2021)。さらに、最適化された治療スケジュールにおいて、治療の安全性プロファイルは忍容可能であることが判明した。
【0510】
チェックポイント阻害療法の利益が最近実証されたにもかかわらず、切除可能な黒色腫患者にとって、より効果的で(すなわち、手術標本におけるより広範囲且つより深い病理学的奏効)、より忍容性の高い治療レジメンが引き続き必要とされている。この研究における複数の治療選択肢は、様々なメカニズムを通じて免疫系を刺激すると期待されている。その目的は、切除可能な悪性黒色腫を有するより多くの集団に対して、CITの利益を現在のチェックポイント阻害のそれ以上に拡大することである。
【0511】
コホート2は、転移性疾患に対する1ライン以上、2ライン以下の治療中又は治療後に疾患進行を経験したステージIVの黒色腫患者を登録する。最大2ラインのチェックポイント阻害療法(単剤療法又は併用療法)が許可される。BRAF変異疾患を有する患者は、標的治療の追加ライン(チェックポイント阻害療法の前、間欠的、又は後のいずれか)を受けているか、又は標的治療とチェックポイント阻害療法を1つの併用治療として同時に受けている可能性がある。
【0512】
コホート2では、抗黒色腫活性の臨床的及び/又は生物学的理論的根拠を有する化合物の新規な組み合わせで、まだ臨床試験が行われていないものを調査する。重要なのは、新規の組み合わせが検討されている個々の化合物については、安全性と忍容性が他の研究ですでに確立されており、安全な用量とスケジュールが利用可能であることである。コホート2の安全性導入段階では、潜在的な重複する毒性に関して、新規の組み合わせの安全性を評価する。
【0513】
i.組み入れ基準
コホート1及びコホート2の共通の組み入れ基準
患者は、コホート1及びコホート2に適格であるためには、以下の基準の全てを満たさなければならない:
・ インフォームド・コンセントフォームへの署名時の年齢が18歳以上であること。
・ 中央検査によるPD-L1及び/又は追加のバイオマーカーの状態の決定に適した代表的な腫瘍標本の入手可能性。
- ベースライン腫瘍組織試料は、スクリーニング時に転移性リンパ節(コホート1)又は他の転移性病変(コホート2)の生検によって全ての患者(コホート2の安全性導入段階の患者を除く)から収集される。
- さらに、もし利用可能であれば、全ての患者からアーカイブ原発腫瘍組織が提出される。アーカイブ原発組織が利用できない場合(原発腫瘍が不明の患者など)、登録は許可される。アーカイブ組織の場合、十分なサイズと腫瘍内容物の表示、できれば浸潤断端を含むパラフィンブロック内のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍標本(推奨)、又は未染色の新たに切断された連続切片を含む少なくとも16枚のスライドを、関連する病理学レポートとともに提出しなければならない。10~15枚のスライドしか利用できない場合でも、患者は依然として研究に適格であり得る。
・ 研究治療の開始の前の14日以内に得られた、以下の臨床検査結果によって定義される適切な血液学的機能及び終末器官機能:絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L(1500/μL);リンパ球数≧0.5×109細胞/L(500/μL)(機械リンパ球数のボーダーラインは手動カウントによって確認できる);血小板数≧100×109(100,000/μL);ヘモグロビン≧90g/L(9g/dL);AST、ALT、ALP≦2.5×ULN(肝転移が確認されている参加者はASTとALTが5×ULN以下である可能性がある;肝転移又は骨転移が確認されている参加者はALPが5×ULN以下ある可能性がある);総ビリルビン≦1.5×ULN(ギルバート病が判明している患者はビリルビン値が3×ULN以下である可能性がある);クレアチニン≦1.5×ULN又はクレアチニンクリアランス≧30mL/分(Cockcroft-Gault式を使用して計算);血清アルブミン≧25g/L(2.5g/dL)。治療用抗凝固療法を受けていない患者は、INRとaPTTが1.5×ULN以下である可能性がある。
・ 治療用抗凝固療法を受けている患者について:安定した抗凝固療法レジメン(すなわち、試験治療開始前3か月以内に新たな血栓症、血栓塞栓症事象、又は出血エピソードがないこと)。
・ スクリーニング時のHIV検査が陰性。事前の陽性HIV検査結果がない患者は、地域の規制によって許可されない限り、スクリーニング時にHIV検査を受ける。
・ スクリーニング時のB型肝炎表面抗体(HBsAb)及び全B型肝炎コア抗体(HBcAb)検査が陰性。患者のスクリーニング時にB型肝炎表面抗原(HBsAg)検査が陰性で、総HBcAb検査が陽性の場合は、活動性HBVを除外するためにB型肝炎ウイルス(HBV)DNA検査も実施しなければならない。
・ スクリーニング時にC型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査が陰性、又はスクリーニング時にHCV抗体検査が陽性で、その後HCV RNA検査が陰性。HCV RNA検査は、HCV抗体検査陽性の患者に対してのみ行う。
・ 妊娠可能な女性の場合:禁欲を続けること(異性間の性交を控える)又は避妊手段を使用することに同意する。
・ 男性の場合:特定の治療群ごとに概説されているように、禁欲を続けること(異性間性交を控える)又は避妊手段を使用することに同意し、且つ精子の提供を控えることに同意する。
【0514】
コホート1の組み入れ基準
患者は、コホート1に適格であるためには、以下の基準の全てを満たさなければならない:
・ ECOGパフォーマンスステータスが0又は1。
・ 組織学的に切除可能なステージIII黒色腫が確認され(T:T0、Tx又はT1-4;N:cN1-3、pN1b/2b/3b;M:M0、AJCC-8による(Gershenwald et al.CA Cancer J Clin.67:472-492,2017))、過去6か月以内にin-transit転移の病歴がない。
- 患者は、局所的なリンパ節転移を伴う原発性黒色腫、又は原発性黒色腫の病歴、又は臨床的に局所的なリンパ節再発が検出された未知の原発性黒色腫を呈する可能性があり、以下のグループのいずれかに属する可能性がある:臨床的/放射線学的に明らかな領域リンパ節転移を同時に有する原発性皮膚黒色腫;臨床的/放射線学的に検出された、近位領域リンパ節転移巣での再発黒色腫;又は臨床的/放射線学的に検出された、原発不明から発生した結節性黒色腫(単一部位の場合)。
- CLNDに適合しており、予定されている(地域のガイドラインに従って無作為化前に外科医が評価した)。
・ RECIST v1.1による測定可能な疾患(少なくとも1つの標的病変)少なくとも1つの巨視的リンパ節転移(RECIST v1.1に従って測定可能)を生検する。
【0515】
コホート2の組み入れ基準
患者は、コホート2に適格であるためには、以下の基準の全てを満たさなければならない:
・ ECOG PSが0、1、又は2。
・ 治験責任医師が決定した平均余命≧3か月。
・ AJCC-8(Gershenwald et al.CA Cancer J Clin.67:472-492,2017)に従って組織学的にステージIV(転移性)と確認された黒色腫。
・ 転移性疾患に対する少なくとも1ライン、ただし2ライン以内の治療中、又は治療後の疾患進行。最大2ラインのチェックポイント阻害療法(単剤療法又は併用療法)が許可される。BRAF変異疾患を有する患者は、標的治療の追加ライン(チェックポイント阻害療法の前、間欠的、又は後のいずれか)を受けたことがあるか、又は標的治療とチェックポイント阻害療法を1つの併用治療として同時に受けている可能性がある。
・ 局在性黒色腫に対するアジュバント療法の最中又は終了後6か月以内に再発又は全身的に進行した患者は適格となる場合もある。
・ RECIST v1.1による測定可能な疾患(少なくとも1つの標的病変)。
【0516】
少なくとも1つの転移(RECIST v1.1に従って測定可能)。
【0517】
E.除外基準
患者は、以下の治療群で指定されているように、後続のセクションで概要を説明する該当する基準のいずれかを満たしている場合、特定の治療群への登録から除外される:
【0518】
コホート1及びコホート2の除外基準
以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験登録から除外される:
・ 粘膜及びぶどう膜黒色腫。
- 末端部黒子黒色腫はコホート1では除外される。
- コホート2では、末端部黒子黒色腫は許可される;ただし患者の割合は奏効評価可能患者の20%を超えてはならない。
・ 試験治療の開始前28日以内の治験療法による治療。
・ 試験治療の開始前の4週間以内又は5つの薬物除去半減期(いずれか長い方)以内の全身免疫刺激剤(限定されないが、IFN及びIL-2を含む)による治療。
・ 事前の同種異系幹細胞又は固形臓器移植。
・ 既知の免疫不全又は全身免疫抑制薬(シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド、及び抗腫瘍壊死因子α剤を含むがこれらに限定されない)による治療を必要とする状態、又は試験治療中の全身免疫抑制薬の必要性が予想される状態、以下の例外を除く:下垂体機能低下症又は副腎機能不全を管理するためにコルチコステロイドの補充投与を受けている患者は本研究に適格である;急性の低用量の全身免疫抑制薬、又は1回パルス用量の全身免疫抑制薬(例えば、造影剤アレルギーに対する48時間のコルチコステロイド)を受けた患者は、メディカルモニターとの協議後、本研究に適格である;ミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、慢性閉塞性肺疾患又は喘息に対するコルチコステロイド、あるいは起立性低血圧又は副腎不全に対する低用量コルチコステロイドの投与を受けた患者は本研究に適格である。
・ 試験治療開始前4週間以内の弱毒化生ワクチンによる治療、又は試験治療中若しくは試験治療の最終投与後5か月以内にそのようなワクチンの必要性の予測。
・ 重症筋無力症、筋炎、自己免疫性肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、ギラン・バレー症候群、又は多発性硬化症を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患又は免疫不全が活動性であるもの、又はその病歴、ただし、以下を除く:
【0519】
甲状腺補充ホルモンを服用している自己免疫関連甲状腺機能低下症の病歴を有する患者は試験に適格である。
【0520】
安定なインスリンレジメンを受けている制御された1型糖尿病患者は試験に適格である。
- 湿疹、乾癬、慢性単純苔癬、又は皮膚症状のみの尋常性白斑の患者(例えば、乾癬性関節炎の患者は除外される)には、以下の条件が全て満たされている場合に本研究に適格である:発疹が体表面積の10%未満であること;ベースライン時に疾患が良好にコントロールされており、低効力の局所コルチコステロイドのみを必要とすること;過去12か月以内に、プソラレン+紫外線A照射、メトトレキサート、レチノイド、生物学的製剤、経口カルシニューリン阻害剤、高効力又は経口コルチコステロイドを必要とする基礎疾患の急性増悪が発生していないこと。
・ 特発性肺線維症、器質化肺炎(例えば、閉塞性細気管支炎)、薬物誘発性間質性肺炎(drug-induced pneumonitis)、若しくは特発性間質性肺炎の病歴、又はスクリーニング胸部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンでの活動性間質性肺炎の証拠。グレード2未満のCIT関連肺炎の病歴を持つ患者は、メディカルモニターとの協議後に適格となる場合がある。
適切に治療された子宮頸部上皮内癌、非黒色腫皮膚癌、限局性前立腺がん、上皮内乳管癌、又はステージI子宮がん等、転移又は死亡のリスクが無視できる(例えば、5年OS率>90%)悪性腫瘍を除いて、スクリーニング前2年以内の悪性黒色腫以外の悪性腫瘍の病歴。
・ 活動性結核(TB)。
・ 試験治療の開始前4週間以内の重度の感染症(感染症、菌血症、又は重度の肺炎の合併症のための入院が含まれるが、これらに限定されない)、又は治験責任医師の見解では患者の安全性に影響を及ぼし得る任意の活動性感染症。
・ 試験治療開始前2週間以内の治療的又は予防的な経口又はIV抗生物質による治療。
・ 試験治療開始前3か月以内の重大な心血管疾患、例えば、ニューヨーク心臓病(クラスII以上)、心筋梗塞又は脳血管障害、不安定性不整脈又は不安定狭心症。
・ 制御されていない高血圧(2回以上の連続測定で安静時収縮期血圧>150mmHg及び/又は拡張期血圧>100mmHgとして定義される)。
・ 試験治療の開始前4週間以内の診断以外の大きな外科手技、又は試験中のCLND以外の大きな外科手技の必要性の予想。
- 中心静脈アクセスカテーテル(例えば、ポート等)の配置は、大きな外科手技とは考えられておらず、したがって許容される。
・ 治験薬の使用を禁忌にする任意の他の疾患、代謝機能不全、身体検査所見、又は臨床検査所見は、結果の解釈に影響を及ぼし得るか、患者が試験に参加する能力を損ない得るか、又は患者を治療合併症のリスクを高くし得る。
・ キメラ若しくはヒト化抗体又は融合タンパク質に対する重度のアレルギー反応の病歴。
・ チャイニーズハムスター卵巣細胞生成物又は組換えヒト抗体に対する既知の過敏症。
・ 試験薬又はその添加物のいずれかに対する既知のアレルギー又は過敏症。
・ 前投薬に必要な任意の薬物に対する既知の不耐性(アセトアミノフェン、ラニチジン、ジフェンヒドラミン、及びメチルプレドニゾロン)。
・ 妊娠若しくは授乳、又は試験中に妊娠する意図。
- 妊娠可能な女性は、試験治療の開始前14日以内に血清妊娠検査結果が陰性でなければならない。
・ 対照群のみの適格性。
【0521】
コホート1の除外基準
以下の基準のいずれかを満たす患者は、コホート1から除外される:
・ 遠隔転移性黒色腫
・ 過去6か月以内のin-transit転移の病歴
・ 放射線治療歴
・ 抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1治療抗体などの免疫療法、及び黒色腫に対する他の全身療法を受けたことがある
【0522】
コホート2の除外基準
以下の基準のいずれかを満たす患者は、コホート2から除外される:
・ 症候性、未治療、又は進行性のCNS転移。
- 治療されたCNS病変を有する無症候性患者は、以下の基準の全てが満たされるならば適格である:RECIST v1.1によると、測定可能な疾患がCNSの外側に存在すること;患者には頭蓋内出血又は脊髄出血の病歴がないこと;CNS転移が試験開始前4週間以上安定しているか、又は脳神経外科的切除が試験治療開始の28日以上前に行われていること;患者は試験治療開始前の少なくとも14日間、CNS疾患の治療としてコルチコステロイドを必要としないこと;安定した用量での抗けいれん療法が許可されていること。
・ 癌性髄膜炎/軟髄膜疾患の活動中又は病歴。
・ 制御されない腫瘍関連疼痛。鎮痛薬を必要とする患者は、スクリーニング時に安定したレジメンを受けていなければならない。緩和的放射線療法に適した症候性病変(例えば、神経インピンジメントを引き起こす骨転移又は転移)は、登録前に治療されなければならない。患者は、放射線の影響から回復されなければならない。必要な最小回復期間は定められていない。さらなる成長(例えば、脊髄圧迫に現在関連していない硬膜外転移)を伴う機能障害又は難治性疼痛を引き起こす可能性が高い無症候性転移性病変は、登録前に適切な場合、局所領域治療について検討されるべきである。
・ 制御されていない胸水、心内膜液滲出又は腹水があり、反復的なドレナージ処置(月1回又はそれ以上の頻度)が必要である。留置カテーテル(例えば、PLEURX(登録商標))を有する患者は許容される。
・ 制御不能又は症候性の高カルシウム血症(イオン化カルシウム>1.5mmol/L、カルシウム>12mg/dL、又は補正カルシウム>ULN)。
・ 以前の免疫療法剤の永続的な中止をもたらした、以前のCITに起因する免疫介在性グレード4有害事象(補充療法で管理された内分泌不全症、又は血清アミラーゼ若しくはリパーゼの無症候性上昇以外)の病歴。
・ ベースラインまで完全に回復していない、以前の免疫調節療法に関連した全ての免疫介在性有害事象(補充療法で管理された内分泌疾患又は安定した白斑を除く)。副腎不全に対するコルチコステロイド補充療法(患者がプレドニゾン1日あたり10mg以下又は同等の投与を受けている場合)を除き、免疫介在性有害事象に対してコルチコステロイドによる治療を受けた患者は、コルチコステロイド中止後4週間以上、関連する症状又は徴候が認められないこと。
以前の放射線療法、化学療法、標的療法、CPI療法又は外科手技に関連した有害事象は、グレード1以上に回復している必要がある。ただし、脱毛症(任意のグレード)、グレード2の末梢神経障害、安定投薬量のホルモン補充療法(例えば、チロキシン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、その他)を受けている甲状腺機能低下症及び/又は下垂体機能低下症を除く。
【0523】
RO7247669を含む群の除外基準(コホート1及びコホート2)
以下の基準のいずれかを満たす患者は、RO7247669を含む群から除外される:
・ 抗LAG-3剤による前治療。
・ 心筋炎の病歴(病因に関係なく)。
・ 試験治療開始前6か月以内に経胸壁心エコー図(TTE)又はマルチゲート取得(MUGA)スキャン(TTEが望ましい検査)で評価された左室駆出率(LVEF)が50%未満。
・ トロポニンT(TnT)又はトロポニンI(TnI)>施設内ULN。TnT又はTnIレベルがULNの1倍超から2倍未満の患者は、24時間以内の反復レベルが1×ULN以下であれば適格である。24時間以内の反復レベルがULNの1倍超から2倍未満である場合、患者は心臓の評価を受ける必要があり、臨床的に重要な所見がなければ治療を考慮することができる。
【0524】
チラゴルマブを含む群の除外基準(コホート1及びコホート2)
以下の基準のいずれかを満たす患者は、チラゴルマブを含む群から除外される:
・ 抗TIGIT剤による前治療。
・ スクリーニング時の活動性エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染及び既知又は疑われる慢性活動性EBV感染。スクリーニング時にEBVウイルスカプシド抗原(VCA)IgM検査が陽性であった患者は、チラゴルマブを含む群から除外される。活動性感染又は慢性活動性感染の疑いをスクリーニングするために、臨床的に必要とされるEBV PCR検査を実施する必要がある。EBV PCR検査が陽性の患者は、チラゴルマブを含む群から除外される。
【0525】
F.試験治療
この研究の治験医薬品は、アテゾリズマブ、チラゴルマブ、RO7247669、ニボルマブ、及びイピリムマブである。
【0526】
対照群(ニボルマブ+イピリムマブ)
ニボルマブ+イピリムマブ(Nivo+Ipi)対照群の患者は、表8に概要を示したとおり、手術まで、又は許容できない毒性又は臨床的利益の喪失のいずれか早い方まで、2サイクル(6週間)の治療を受ける。無作為化後7日以内に治療を開始することが推奨される。
【0527】
【0528】
ニボルマブは、各21日サイクルの1日目に(Q3W)3mg/kgの用量でIV注入によって投与される。イピリムマブは、各21日サイクルの1日目に(Q3W)1mg/kgの用量でIV注入によって投与される。
【0529】
RO7247669群
RO7247669群の患者は、表9に概要を示したとおり、手術まで、又は許容できない毒性又は臨床的利益の喪失のいずれか早い方まで、2サイクル(6週間)の治療を受ける。無作為化後7日以内に治療を開始することが推奨される。
【0530】
【0531】
RO7247669は、2100mg Q3Wの固定用量(各21日サイクルの1日目に2100mg)で投与される。RO7247669の投与は、訓練された人員並びに潜在的に重篤な反応を管理するための適切な機器及び薬剤に直ちにアクセスできる監視された設定で行われる。RO7247669注入は、表10に概説される指示に従って投与される。
【0532】
表10.RO7247669の1回目及び2回目の注入の投与
IRR=注入関連反応。
【0533】
グレード2の注入関連反応(IRR)を経験した患者の場合、その後の注入前にパラセタモール500~1000mg経口(PO)又はIV、及びジフェンヒドラミン25~50mgPO又はIV(又は適切な用量の代替ヒスタミンH1/2アンタゴニスト)による前投薬が必要である。試験治療に関連するグレード3又は4のIRRの場合、患者は試験治療を永久に中止する必要がある。
【0534】
RO7247669の用量変更は許容されない。
【0535】
アテゾリズマブ+チラゴルマブ
アテゾリズマブ+チラゴルマブ(Atezo+Tira)群の患者は、表11に概要を示したとおり、手術まで、又は許容できない毒性又は臨床的利益の喪失のいずれか早い方まで、2サイクル(6週間)の治療を受けるであろう。無作為化後7日以内に治療を開始することが推奨される。
【0536】
表11.アテゾリズマブ+チラゴルマブ群の治療レジメン
【0537】
アテゾリズマブは、3週間ごと(Q3W)に1200mgの固定用量で投与される(各21日サイクルの1日目に1200mg)。アテゾリズマブの投与は、訓練された人員並びに潜在的に重篤な反応を管理するための適切な機器及び薬剤に直ちにアクセスできる監視された設定で行われる。アテゾリズマブ注入は、表12に概説される指示に従って投与される。
【0538】
アテゾリズマブの用量変更は許可されない。
【0539】
表12.アテゾリズマブの1回目及び2回目の注入の投与
IRR=注入関連反応。
【0540】
チラゴルマブは、600mg IV Q3Wの固定用量(21日間の各サイクルの1日目に600mg)で投与される。チラゴルマブの投与は、訓練された人員並びに潜在的に重篤な反応を管理するための適切な機器及び薬剤に直ちにアクセスできる監視された設定で行われる。チラゴルマブ注入は、表13に概説される指示に従って投与される。
【0541】
表13.1回目及びその後のチラゴルマブ注入の投与
IRR=注入関連反応。
【0542】
アテゾリズマブ及び/又はチラゴルマブ治療は、試験治療に関連すると考えられる毒性を経験している患者において一時的に中断され得る。毒性の治療のためにコルチコステロイドを開始した場合、必要に応じて試験治療を再開する前に、1か月以上かけて10mg/日以下の経口プレドニゾン相当量まで漸減しなければならない。ネオアジュバント設定では、試験治療は手術前期間の6週間に限定される。この期間の治療は、患者が毒性を示さない限り、中断すべきではない。毒性がアテゾリズマブ及び/又はチラゴルマブの中断/保留の基準を満たしている場合、アテゾリズマブ及び/又はチラゴルマブは中断/保留されるべきである。毒性消失後、その後の治療サイクルは、ベネフィット/リスクプロファイルが許容でき、手術が予定日から2週間以内に実施できる場合にのみ考慮されるべきである。そうでなければ、それ以降の治療サイクルは省略し、患者がそれ以上遅れることなく直接手術に進むことができるようにすべきである。
【0543】
作用機序の利用可能な特性評価に基づいて、チラゴルマブは、アテゾリズマブと類似しているが独立した有害事象を引き起こす可能性がある。チラゴルマブはまた、アテゾリズマブ関連有害事象の頻度又は重症度を悪化させ得るか、又はアテゾリズマブと重複しない毒性を有し得る。これらのシナリオは臨床現場では互いに区別できない可能性があるため、有害事象は一般に両方の薬剤に起因するはずであり、有害事象に応答した用量中断又は治療中止は、チラゴルマブとアテゾリズマブの両方に適用しなければならない。アテゾリズマブが保留又は中止された場合、チラゴルマブも保留又は中止されるべきである。チラゴルマブが保留又は中止される場合、アテゾリズマブも保留又は中止されるべきである。
【0544】
RO7247669+チラゴルマブ(コホート1及び2)
RO7247669とチラゴルマブ(RO7247669+Tira)群の患者は、表14に概説される治療を受ける。
【0545】
コホート1の患者は、手術まで、又は許容できない毒性又は臨床的利益の喪失のいずれか早い方まで、2サイクル(6週間)の治療を受ける。
【0546】
コホート2の患者は、放射線学的及び生化学的データ、局所生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態(例えば、疾患に続発する疼痛等の症候性の悪化)の統合評価の後に治験責任医師によって決定される許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで試験治療を受ける。
【0547】
無作為化(コホート1)又は登録(コホート2)後7日以内に治療を開始することが推奨される。
【0548】
表14.RO7247669+チラゴルマブ群の治療レジメン
a安全性の導入後、試験依頼者はより低い用量(例えば1200mg及び600mg)を検討することを決定することができる。
【0549】
RO7247669は、各21日サイクルの1日目に2100mgの固定用量でIV注入によって投与される。チラゴルマブは、表13に記載のように、各21日間サイクルの1日目に600mgの固定用量でIV注入によって投与され、注入後観察期間を有する。
【0550】
RO7247669の投与は、訓練された人員並びに潜在的に重篤な反応を管理するための適切な機器及び薬剤に直ちにアクセスできる監視された設定で行われる。RO7247669注入は、表15に概説される指示に従って投与される。
【0551】
表15.1回目、2回目、及びその後のRO7247669注入の投与
IRR=注入関連反応。
【0552】
グレード2の注入関連反応(IRR)を経験した患者の場合、その後の注入前にパラセタモール500~1000mg経口(PO)又はIV、及びジフェンヒドラミン25~50mgPO又はIV(又は適切な用量の代替ヒスタミンH1/2アンタゴニスト)による前投薬が必要である。試験治療に関連するグレード3又は4のIRRの場合、患者は試験治療を永久に中止する必要がある。
【0553】
RO7247669の用量変更は許容されない。ただし、新たな安全性と有効性のデータに基づいて、試験依頼者はより低い用量(例えば、1200mg及び600mg)を検討することができる。RO7247669の治療は、毒性以外の理由(例えば、外科手技)で中断され得る。
【0554】
治験責任医師とメディカルモニターは、許容される治療中断期間を決定することになる。
【0555】
試験治療に関連すると考えられる毒性を経験している患者では、RO7247669とチラゴルマブによる治療が一時的に中止され得る。毒性の治療のためにコルチコステロイドを開始した場合、必要に応じて試験治療を再開する前に、1か月以上かけて10mg/日以下の経口プレドニゾン相当量まで漸減しなければならない。
【0556】
コホート1について、ネオアジュバント設定では、試験治療は手術前期間の6週間に限定される。この期間の治療は、患者が毒性を示さない限り、中断すべきではない。毒性がRO7247669及びチラゴルマブの中断/保留の基準を満たしている場合、RO7247669及びチラゴルマブは中断/保留されるべきである。毒性消失後、その後の治療サイクルは、ベネフィット/リスクプロファイルが許容でき、手術が予定日から2週間以内に実施できる場合にのみ考慮されるべきである。そうでなければ、それ以降の治療サイクルは省略し、患者がそれ以上遅れることなく直接手術に進むことができるようにすべきである。
【0557】
コホート2について、毒性のためにRO7247669及びチラゴルマブが12週間以上保留される場合、患者はRO7247669及びチラゴルマブを中止するべきである。しかしながら、患者が治療を再開する前にコルチコステロイドを漸減させることを可能にするために、RO7247669及びチラゴルマブを12週間以上保留してもよい。RO7247669及びチラゴルマブは、患者が臨床的利益を得る可能性が高いとメディカルモニターが同意した場合、12週間以上保留された後でも再開することができる。RO7247669及びチラゴルマブ治療は、毒性以外の理由(例えば、外科手技)で中断され得る。延長期間の許容可能な長さについては、治験責任医師とメディカルモニターが合意しなければならない。
【0558】
作用機序の利用可能な特性評価に基づいて、チラゴルマブは、RO7247669と類似しているが独立した有害事象を引き起こす可能性がある。チラゴルマブはまた、RO7247669関連有害事象の頻度又は重症度を悪化させ得るか、又はRO7247669と重複しない毒性を有し得る。これらのシナリオは臨床現場では互いに区別できない可能性があるため、有害事象は一般に両方の薬剤に起因するはずであり、有害事象に応答した用量中断又は治療中止は、チラゴルマブとRO7247669の両方に適用しなければならない。RO7247669が保留又は中止された場合、チラゴルマブも保留又は中止されるべきである。チラゴルマブが保留又は中止される場合、RO7247669も保留又は中止されるべきである。
【0559】
G.併用療法
併用療法は、試験薬の開始の7日前から治療中止の来院までのプロトコールに定められた試験治療に加えて、患者によって使用される任意の医薬(例えば、処方薬、市販薬、ワクチン、ハーブ療法又はホメオパシー療法、栄養補助食品)からなる。
【0560】
一般に、治験責任医師は、臨床上適応がある場合、現地の標準診療に従って、注意又は禁止されている治療法として定義されるもの以外の支持療法で患者のケア(既存の症状を含む)を管理すべきである。注入に関連する症候を経験する患者は、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ジフェンヒドラミン、及び/又はH2受容体アンタゴニスト(例えば、ファモチジン、シメチジン)、又は現地の標準的慣行による同等の薬物で対症的に治療することができる。呼吸困難、低血圧症、喘鳴、気管支痙攣、頻脈、酸素飽和度低下、又は呼吸促拍によって現れる重度の注入関連事象は、臨床的に示される支持療法(例えば、酸素補充及びβ2アドレナリン作用性アゴニスト)によって管理されなければならない。
【0561】
RO7247669、Atezo+Tira、RO7247669+Tira群の許可された治療法
患者は、試験中に以下の治療法を使用することが許される。
・ 失敗率が年間1%未満の経口避妊薬。
・ ホルモン補充療法。
・ 予防的又は治療的抗凝固療法(安定用量のワルファリン又は低分子量ヘパリン等)。
・ 不活化ワクチン接種(インフルエンザなど)。
・ 食欲刺激剤として投与される酢酸メゲストロール。
・ ミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)。
・ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は喘息のために投与されるコルチコステロイド。
・ 起立性低血圧又は副腎皮質機能不全のために投与される低用量コルチコステロイド。
・ 局所療法(例えば、手術(完全リンパ節郭清(CLND)を除く、黒色腫に特異的でないもの)。
【0562】
RO7247669群の場合、抗ヒスタミン剤、解熱剤、及び/又は鎮痛剤による前投薬は、治験責任医師の裁量で、2回目のRO7247669注入のためにのみ投与され得る。
【0563】
アテゾリズマブとチラゴルマブの群では、抗ヒスタミン剤、解熱剤、及び/又は鎮痛剤による前投薬は、治験責任医師の裁量で、アテゾリズマブとチラゴルマブの2回目の注入のためにのみ投与され得る。
【0564】
コホート2におけるRO7247669+Tira群の追加の許可された治療法
患者は、試験中に以下の治療法を使用することが許される。
・ 概説されるような緩和的放射線療法(例えば、既知の骨転移の治療又は疼痛の症候性軽減):緩和的放射線療法は、腫瘍標的病変(例えば、照射される病変は、測定可能な疾患の唯一の部位であってはならない)の評価を妨げない限り許可される。チラゴルマブによる治療は、緩和的放射線療法中に継続され得る。RO7247669による治療は、緩和的放射線療法中も継続可能であるが、1つの例外がある:緩和的放射線療法は、RO7247669が投与される日には許可されない。
・ 概説されるような局所療法(例えば、外科手技、定位的放射線手術、放射線療法、高周波アブレーション):3つ以下の病変の制御のために局所療法を必要とする混合応答を経験している患者は、メディカルモニターの承認が得られた後も試験治療を継続するのに依然として適格であり得る。標的病変に対する局所療法を受けた患者は、放射線学的効果については評価できなくなるが、進行度については引き続き評価できる。
【0565】
抗ヒスタミン剤、解熱剤、及び/又は鎮痛剤による前投薬は、治験責任医師の裁量で、2回目以降のRO7247669及びチラゴルマブ注入のためにのみ投与され得る。
【0566】
H.評価
全ての患者は、試験を通して有害事象について綿密に監視される。有害事象は、国立がん研究所有害事象共通用語規準、バージョン5.0(NCI CTCAE v5.0)に従って等級付けされる。サイトカイン放出症候群(CRS)の重症度は、米国移植細胞治療学会(ASTCT)のCRSコンセンサス等級スケールに従っても等級付けされる。
【0567】
コホート1の患者はネオアジュバント治療を2サイクル(6週間)受け、7週目に手術(CLND)を受ける。遠隔転移がなく、外科医が疾患を完全に切除可能と判断すれば、全ての患者が手術に進むことが期待される。病理学的応答は、局所的に及び独立した病理学的レビューによって評価される。
【0568】
許容できない毒性のために治療を中止し、引き続き転移性疾患の証拠がない患者でも手術の対象となり、有害事象が消散し、再病期分類によりステージIIIの疾患が確認された後にCLNDに進む。患者の病勢進行が確認された場合、患者の管理と治療法の選択は治療する医師の裁量に委ねられる。このような患者は、追跡のために試験に残る。
【0569】
患者は手術(CLND)に先立ち、6週目(1サイクル目の1日目から)に放射線学的腫瘍評価を受ける。奏効は、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって評価及び決定されるが、その後の画像検査による確認は必要ではない。
【0570】
コホート2の患者は、最初の54週間は9週間ごとに(サイクル1の1日目から開始して)、その後は12週間ごとに腫瘍評価を受ける。応答は、RECIST v1.1を使用して治験責任医師によって評価される。免疫ベースの治療薬(iRECIST)用の修正RECIST v1.1による応答は、治験責任医師が評価した個々の病変データに基づいて、試験依頼者によってプログラム的に決定される。
【0571】
コホート1及びコホート2について、臨床活性が実験群で実証された場合、試験依頼者は、その群の腫瘍評価スキャンが独立した審査施設による評価に提出されることを要求し得る。
【0572】
腫瘍評価及び応答評価
全ての測定可能及び評価可能な病変は、スクリーニング時に評価及び記録されなければならない。インフォームドコンセントを取得する前、及び無作為化/登録前の14日以内に標準治療として実施される腫瘍評価は、スクリーニング時に繰り返す必要はない。
【0573】
ベースラインで特定された全ての測定可能及び/又は評価可能な病変は、コホート1及び2についてその後の腫瘍評価で再評価されるべきである。スクリーニング時に疾患部位を評価するために使用したのと同じ放射線撮影手順を、その後の腫瘍評価にも使用するべきである(例えば、CTスキャンの場合と同じコントラストプロトコール)。
【0574】
コホート1の腫瘍評価及び応答評価
コホート1の患者は、治療に対する病理学的及び放射線学的応答を評価される。患者はベースライン時と治療6週間後の手術時(CLND)に病理学的腫瘍評価を受ける。7週目のステージIIIリンパ節の完全切除(CLND)は、治療的リンパ節郭清のための適切な外科手技の基準に従って行われなければならない。CLNDは、患者が免疫介在性有害事象の管理のためにコルチコステロイドやその他の抗炎症薬を投与されている場合、それらが安定した用量又は漸減用量で投与され、有害事象の重症度がグレード2以上であれば、計画通りに実施すべきである。手術予定時に試験治療に関連した有害事象が十分に改善されていない場合は、CLNDを最大2週間延期することができる。病理学的応答は、INMCガイドライン(Tetzlaff et al.Ann Oncol.29:1861-1868,2018)に従って、局所的且つ独立した病理学的レビューによって決定される。
【0575】
手術合併症は、Clavien-Dindo分類に従ってスコア化される。CLNDを受けた患者について、各グレードの合併症率が報告され、スコア化される。
【0576】
患者は、RECIST v1.1に従って、ベースライン時、手術前(CLND)6週間の治療後、及び13週目の治療完了/中止時に放射線学的腫瘍評価を受ける。
【0577】
1つの時点での全奏効が、RECIST v1.1を使用して治験責任医師によって評価される。
【0578】
疾患の追跡及び疾患進行又は再発の確認
ネオアジュバント治療中、疾患進行の診断は、臨床所見、検査所見、放射線学的所見、及び/又は組織学的所見によって確認される必要がある。手術後、アジュバント治療又は観察を開始する前に、ネオアジュバント療法と手術介入の期間を終了するために、13週目に腫瘍評価が実行される。
【0579】
その後、研究外のアジュバント治療/観察段階(すなわち、13週目から開始)では、各群で概説されているように、疾患の再発と生存を評価するために全ての患者を追跡する必要がある。
【0580】
治療期間を完了した患者は、手術後3か月後に最初の生存追跡検査を受ける。試験薬を早期に中止した患者は、試験治療の最終投与から3か月後に最初の生存追跡訪問を受ける。疾患再発の指定は、局所的、領域的、又は遠隔であっても、臨床的、検査的、放射線学的及び/又は組織学的所見によって診断が確認された場合にのみ行うことができる。
【0581】
手術後の期間中、施設のガイドラインに従って疾患の状態を臨床的に評価し、文書化する必要がある(例えば、最初の2年間は3か月ごと、3年目は6か月ごと、4年目以降は年に1回)。さらに、転移性疾患を除外するために、臨床的に適応があれば、肝機能検査、骨スキャン、胸部X線/診断用CTスキャン、肝臓画像検査、及び/又はその他のX線撮影法が考慮される場合がある。
【0582】
進行又は再発の診断は、臨床的に可能な限り組織学的に確認されるべきである。疾患進行又は再発を診断した最も早い日付を使用し、記録すべきである。この日付は、客観的な臨床的、放射線学的、組織学的、又は細胞学的証拠に基づくべきである。再発には、局所的、領域的、又は遠隔再発が含まれる。
【0583】
追跡における疾患の再発、死亡、及びその他の注目すべき事象の定義と確認手順を以下に示す。再発の文書化には、再発のパターンを確立するために、関係する全ての部位の特定が必要である。以下の治療不成功の基準は、疾患再発の唯一許容できる証拠を構成する:
・ 肺単一の新規病変が存在する場合、又は転移性疾患と一致する複数の病変が出現した場合の細胞診又は生検が陽性
・ 肝臓単一の新規病変が存在する場合、又は転移性疾患と一致する複数の病変が出現した場合の細胞診又は生検が陽性
・ 中枢神経系:脳CT若しくはMRIスキャン、又はCSF細胞診が陽性である
・ 皮膚、皮下、及びリンパ節の再発:単一の新規病変が存在する場合、又は転移性疾患と一致する複数の病変が出現した場合の細胞診又は生検が陽性
・ 骨及びその他の臓器:単一の新規病変が存在する場合、又は2つの異なるX線検査(すなわち、核骨スキャン又はPETスキャン陽性、造影GIシリーズ又は腹部疾患に対する超音波検査、X線検査又は腹部CT)で特定された転移性疾患と一致する複数の病変が出現した場合、細胞診又は生検が陽性である。
【0584】
コホート2の腫瘍評価及び応答評価
コホート2の患者は、用量の遅れに関係なく最初の54週間は9(±1)週間ごとに(サイクル1の1日目から)、その後は12(±2)週間ごとに腫瘍評価を受ける。例外は、放射線学的疾患進行後に治療を継続する患者である。このような患者は、治験責任医師が臨床的利益が失われると判断するまで、9週間ごとに腫瘍の評価を受ける。したがって、臨床的利益の喪失以外の理由で治療を中止した患者においては、プロトコールに規定されていない新規抗がん療法を開始した場合でも、腫瘍評価はスケジュールに従って継続される。治験責任医師の裁量により、進行性疾患が疑われる場合はいつでも腫瘍評価を繰り返すことができる。
【0585】
放射線療法又は手術で治療された脳転移は、測定可能又は評価可能であるとはみなされないが、転移性疾患の部位として文書化される。放射線療法又は手術で治療されたことがあるベースラインで同定された脳転移は、脳内に疾患進行が疑われない限り(すなわち、患者は症候性になる)、測定可能又は評価可能とはみなされない。したがって、臨床的に示されない限り、その後の頭部スキャンは必要ない。
【0586】
コホート2におけるiRECISTによる応答の評価を容易にするために、腫瘍評価を、進行を超えて治療を受けた患者について、RECIST v1.1による疾患進行後に継続しなければならない。これには、標的病変の継続的な測定、非標的病変の評価(明確な進行を示した任意の非標的病変のさらなる悪化の監視を含む)、及びその後の全ての評価での任意の新たに同定された病変(病変が測定可能である場合、測定値を含む)の評価が含まれる。
【0587】
1つの時点での全奏効が、RECIST v1.1を使用して治験責任医師によって評価される。
【0588】
バイオマーカー評価
ベースライン腫瘍組織試料は、スクリーニング時に転移性リンパ節(コホート1)又は他の転移性病変(コホート2)の生検によって全ての患者(コホート2の安全性導入段階の患者を除く)から収集される。コホート1の患者については、治療中の組織試料は、サイクル2の1日目と手術時(CLND)に生検によって収集される。コホート2に登録された患者の場合、治療中の組織試料はサイクル2の8日目に生検によって収集される。
【0589】
探索的バイオマーカー分析は、有効性及び安全性評価項目を考慮して、バイオマーカーと試験薬に対する応答との関連性を理解するために行われる。探索的バイオマーカー研究には、腫瘍免疫生物学、PD-L1、リンパ球亜集団、T細胞受容体レパートリー、又はT細胞活性化に関連するサイトカインに関連する遺伝子又は遺伝子シグネチャーの分析が含まれ得るが、これらに限定されない。研究には、DNA又はRNAの抽出、体細胞変異の分析、次世代配列決定(NGS)(全エクソーム配列決定(WES)を含む)の使用が含まれ得る。研究は、DNA、無細胞DNA又はRNAの抽出;変異、一塩基多型、及び他のゲノムバリアントの分析;並びに包括的な遺伝子パネルのNGSの使用によるゲノムプロファイリングを含み得る。血液から抽出されたDNAを組織から抽出されたDNAと比較して、生殖系列バリアントを体細胞バリアントと区別することによって体細胞バリアントを同定することができる。
【0590】
NGS法は、組織及び血液試料の全ゲノム配列決定(WGS)又はWESを含み得る。参加施設では、血液試料をDNA抽出のために収集して、WGS又はWESが試験薬に対する応答を予測する、より重篤な疾患状態への進行に関連する、試験薬に対する獲得耐性に関連する、有害事象の発生に対する感受性に関連する、有害事象の監視又は調査の改善をもたらすことができる、又は疾患生物学及び薬物安全性の知識及び理解を高めることができるバリアントを同定することを可能にする。血液から抽出されたDNAを組織から抽出されたDNAと比較して、生殖系列バリアントを体細胞バリアントと区別することによって体細胞バリアントを同定することができる。
【0591】
I.分析
最終試験分析は、試験の中止を通して収集された患者データに基づく。特に明記しない限り、有効性分析は、割り当てられた治療レジメンに対して各薬物の少なくとも1回の用量を受けた全ての患者として定義される有効性評価可能な集団に基づき、安全性分析は、任意の量の試験治療を受けた全ての患者として定義される安全性評価可能な集団に基づく。
【0592】
登録は地域、国、治験責任医師ごとに治療群ごとにまとめられている。患者の性質は治療群ごとにまとめられている。組み入れ基準及び除外基準に関する主な逸脱を含むプロトコールの主な逸脱は、治療群ごとにまとめられている。
【0593】
安全性評価が可能な患者については、試験薬投与データが治療群ごとに表にまとめられるかリスト化され、用量の変更にはフラグが付けられる。平均値及び標準偏差は、各試験薬の総用量と用量強度を要約するために使用される。試験薬の中止の理由が表にまとめられている。
【0594】
人口統計学的特性及びベースライン特性(年齢、性別、人種/民族、体重、悪性腫瘍期間、転移性疾患部位(該当する場合)、及びベースラインECOG PSを含む)が全体的及び治療群ごとに要約されている。
【0595】
試料サイズの決定
この試験は、仮説検定のための明示的な検定力及びタイプIエラーを考慮するように設計されていない。代わりに、この試験は、黒色腫患者に投与された場合の治療又は治療の組み合わせに関する予備的な有効性、安全性、PKデータを得るように設計されている。コホート1は、これまでに全身療法を受けていない切除可能なステージIII黒色腫の患者からなる。コホート2は、転移性疾患に対する1ライン以上、2ライン以下の治療中又は治療後に疾患進行を経験したステージIVの黒色腫患者からなる。
【0596】
コホート1では、試験中、約55~145人の患者を無作為に対照群及び実験群に割り当てる。コホート2では、約6~46人の患者が実験群に割り当てられる。
【0597】
有効性分析
コホート1における主要有効性評価項目
コホート1の主要有効性評価項目は手術時のpRRであり、pRRはネオアジュバント治療の完了後(7週目)のCLND時に評価される。pRRは、独立した病理学的レビューによって決定されたpCR(治療された腫瘍床に生存可能な腫瘍が完全に存在しない)、病理学的ほぼ完全奏効(pnCR;治療した腫瘍床で生存腫瘍が<10%)、病理学的部分奏効(pPR;治療した腫瘍床の<50%が生存可能な腫瘍細胞で占められている)を達成した患者の割合として定義される。pRRは各群について90%CIとともに計算される。実験群と対照群との間のpRRの差も、90%CIとともに計算される。信頼区間は、試料サイズに応じて、正確な方法又はWald法によって推定される。
【0598】
コホート1における副次的有効性評価項目
コホート1における副次的有効性評価項目は、局所病理学的評価によって決定される手術時のpRR、手術前の無症候生存期間(EFS)、RFS、OS、及びORRである。pRRは表5で定義される。
【0599】
EFSは、無作為化から、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって評価される手術を妨げる疾患進行;局所的、領域的又は遠隔疾患再発;又は何らかの原因による死亡の事象のいずれか(いずれか早く発生する方)までの時間として定義される。そのような事象を経験していない患者は、最後の腫瘍後腫瘍評価時に打ち切られる。
【0600】
RFSは、手術から疾患の再発又は何らかの原因による死亡が最初に文書化されるまでの時間として定義される。疾患の再発又は死亡が文書化されていない患者については、RFSは最後の腫瘍評価の日に打ち切られる。
【0601】
OSは、無作為化から死亡に至るまでの時間として定義される。OS分析時にまだ生存している患者は、生存が判明した最後の日付で打ち切られる。
【0602】
Kaplan-Meier法を使用してPFS、OS、及びOSの中央値を推定し、90%CIをBrookmeyer及びCrowley法を使用して構築する。特定の時点での RFS、EFS、及びOS率もまた、Kaplan-Meier法を用いて推定され、90%CIは、分散についてのGreenwoodの推定値に基づいて計算される。
【0603】
RECIST v1.1によるORRは、ネオアジュバント治療の完了後(7週目)に評価され、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定したCR又はPRを有する患者の割合として定義される。応答評価が欠落しているか又は応答評価がない患者は、非応答者として分類される。ORRは未確認の術前放射線学的応答を使用して決定されることに注意。RECIST v1.1では、初回応答から少なくとも4週間後に確認的な画像評価を完了する必要があるが、CLNDのタイミングにより、これらの応答はその後の画像では確認することはできない。
【0604】
ORRは、Clopper-Pearson法を使用して、90%CIとともに各群に対して計算される。実験群と対照群との間のORRの差も、90%CIとともに計算される。CIは、試料サイズに応じて、正確法又はWald法によって推定される。
【0605】
コホート1における探索的有効性評価項目
コホート1における探索的有効性評価項目は、特定の時点(1年、2年、3年、及び5年)におけるランドマークEFS、ランドマークRFS、ランドマークOSである。
【0606】
ランドマークEFS率、ランドマークRFS率、及びランドマークOS率は、Kaplan-Meier法を使用して各試験群について推定され、90%CIはGreenwoodの式を使用して計算される。
【0607】
コホート2における主要有効性評価項目
コホート2における主要有効性評価項目はORRであり、表6に定義されている。ORRは、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される。応答評価が欠落しているか又は応答評価がない患者は、非応答者として分類される。
【0608】
完全奏効又は部分奏効を有する患者の割合であるORRは、90%CI(Clopper-Pearson法)とともに各群について計算される。CIは、試料サイズに応じて、正確法又はWald法によって推定される。
【0609】
コホート2における副次的有効性評価項目
コホート2における副次的有効性評価項目は、表6に定義されているように、PFS、OS、特定の時点(例えば6か月)におけるOS、奏効期間(DOR)、及び病勢コントロールである。PFS、DOR及び病勢コントロールは、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される。
【0610】
DORは、CR又はPRを有する有効性評価可能な患者について導出される。
【0611】
疾患進行又は死亡が文書化されていない患者については、PFS及びDORは最後の腫瘍評価の日に打ち切られる。
【0612】
OS分析時にまだ生存している患者は、生存が判明した最後の日付で打ち切られる。
【0613】
Kaplan-Meier法を使用してPFS、OS、及びDORの中央値を推定し、90%CIをBrookmeyer及びCrowley法の使用によって構築する。特定の時点でのOS率もまた、Kaplan-Meier法を用いて推定され、90%CIは、分散についてのGreenwoodの推定値に基づいて計算される。
【0614】
病勢コントロール率(12週間以上にわたってSDを有する患者の割合として定義される)、PR、又はCRは、Clopper-Pearsonの正確法を使用して推定された90%CIを使用して、各治療群に対して計算される。
【0615】
コホート2における探索的有効性評価項目
探索的有効性評価項目は、iRECISTに従って治験責任医師が決定したORR、PFS、DOR、及び病勢コントロールである。
【0616】
ORR、PFS、DOR、及び病勢コントロールは、上記のセクション「コホート2の主要有効性評価項目」及び「コホート2における副次的有効性評価項目」に記載されたのと同じ方法を使用して分析される。DORを、完全奏効又は部分奏効を有する有効性評価可能な患者について導出する。
【0617】
安全性分析
逐語的有害事象用語は、医薬品規制用語集のシソーラス用語にマッピングされ、有害事象の重症度は、NCI CTCAE v5.0及びASTCT CRSコンセンサス等級スケールに従って等級付けされる。
【0618】
安全性は、有害事象の要約、臨床検査結果の変化、バイタルサイン及びECGの変化、及び試験薬への曝露を通じて評価される。併用治療への曝露と安全性追跡の長さは、治療群によって要約される。
【0619】
全ての逐語的有害事象用語は、医薬品規制用語集のシソーラス用語にマッピングされる。有害事象の重症度はNCI CTCAE v5.0に従って等級付けされ、CRSの重症度もASTCTコンセンサス等級に従って治験責任医師によって等級付けされる(Lee et al.Biol Blood Marrow Transplant.25:625-638,2019)。試験治療の初回投与時又はその後に発生した全ての有害事象、重篤な有害事象、死亡に至った有害事象、特に関心のある有害事象、及び試験治療の中止に至った有害事象(すなわち、治療中に発現した有害事象)は、マッピングされた用語、適切なシソーラスレベル、及び重症度グレードごとに要約される。様々な重症度の事象について、最高グレードが要約に使用される。死亡及び死亡原因を要約する。
【0620】
関連する検査室、バイタルサイン(脈拍数、呼吸数、血圧、パルスオキシメトリ、及び体温)、及びECGデータは、必要に応じて識別されたグレードと共に時間によって表示されるであろう。さらに、選択された臨床検査結果のシフト表を使用して、ベースライン及びベースライン後の最大重症度グレードが要約される。バイタルサイン及びECGの変化が要約される。
【0621】
さらに、コホート1では、最初の12週間におけるグレード3以上の免疫関連有害事象の発生率、性質、及び治療関連有害事象による手術遅延の割合及び期間が治療群ごとに要約される。手術予定時に試験治療に関連した有害事象が十分に改善されていない場合は、CLNDを最大2週間延期することができる。
【0622】
さらに、手術合併症は、Clavien-Dindo分類に従ってスコア化される。CLNDを受けた患者について、各グレードの合併症率が報告され、スコア化される。
【0623】
免疫原性分析
免疫原性は、アテゾリズマブ及び必要に応じて他の試験治療について評価され得る。免疫原性分析には、少なくとも1つの抗薬物抗体(ADA)評価を受けた全ての患者が含まれる。患者は、受けた治療に従って、又は試験中止前に治療を受けていない場合は割り当てられた治療に従ってグループ分けされる。
【0624】
アテゾリズマブについては、ベースライン時(ベースライン有病率)と薬物投与後(ベースライン後発生率)のADA陽性患者とADA陰性患者の数と割合が治療群ごとにまとめられている。ベースライン後の発現率を決定する際、ベースライン時にADA陰性またはデータが欠落しているが、試験薬曝露後にADA応答を発症する場合(治療誘発性ADA反応)、又はベースライン時にADA陽性であり、ベースライン後の1つ以上の試料の力価がベースライン試料の力価より少なくとも0.60力単位大きい場合(治療増強ADA応答)、患者はADA陽性とみなされる。ベースライン時にADA陰性又はデータが欠落しており、ベースライン後の試料が全て陰性である場合、又はベースライン時にADA陽性であるが、ベースライン試料の力価より0.60力価以上大きい力価を有するベースライン後の試料がない(治療は影響を受けない)場合、患者はADA陰性とみなされる。
【0625】
ADAを検査する他の試験治療については、陽性は、その薬物の以前の試験で確立された標準的な方法に従って決定される。
【0626】
ADAの状態と安全性、有効性、PK、及びバイオマーカー評価項目との間の関係は、記述統計学によって分析及び報告され得る。
【0627】
中間分析
本試験の探索的性質を考慮すると、試験期間中に中間解析が実施されることが予想され、最も早い中間解析は、少なくとも1つの実験群が予備段階の登録を完了し、患者の病理学的奏効評価が終了した時点(コホート1)、又は少なくとも1つの実験群が予備段階の登録を完了し、主要評価項目分析(ORR)のために最低9週間患者を追跡した時点(コホート2)で実施される。試験依頼者が適切と判断した場合、さらなる中間分析が実施される場合がある。コホート1では、事後確率を使用して、対照群と比較した実験群における臨床活性の中間分析に基づいてさらなる登録を導くことができる。中間分析が、実験群の活性が対照群の活性よりも高いことを示唆する場合、実験群にさらに20人の患者を登録することができる(拡大段階)。
【0628】
コホート2では、標準治療に対する改善として定義される、事前に定義されたORR閾値と比較した実験群の臨床活性の中間分析に基づいて、事後確率を使用して、治療群へのさらなる登録を誘導することができる。例えば、利用可能なデータが標準治療のORRが10%であることを示唆しており、ORRの10%改善が臨床的に意味のある変化であるとみなされる場合、事後確率の計算におけるORR閾値は20%になる。
【0629】
標準治療に対するORRは、分析時に少なくとも2ラインの前治療を受けているコホート2の患者集団について、クラス内の免疫調節治験化合物及びその他の化合物に関する新たな内部及び外部データに基づいている。
【0630】
試験依頼者は、観察された応答の期間、PFS、および潜在的に初期のOSデータを含むがこれらに限定されない、利用可能なデータの全体に基づいて、群への登録を拡大する決定を下す場合がある。適切な利益とリスク評価の観点から、安全性とバイオマーカーのデータ(この決定時に入手可能)も考慮される。
【0631】
実施例2:600mg Q3W用量とスケジュールの理論的根拠
A.序論
RO7247669(PD1-LAG3)は、炎症性固形腫瘍型の治療のために研究されている新規二重特異性抗体である。PD-1とLAG-3という2つの共抑制性チェックポイント受容体をブロックすることで、T細胞を活性化させることを目的としている。RO7247669は、PD-1に対する一価の高親和性結合とLAG-3に対する一価の高親和性結合(PD-1に対する結合より20倍低い)を組み込んでおり、アビディティを介した選択性の獲得が可能である。LAG-3は制御性T細胞上で他のT細胞よりも高レベルで発現しており、単一特異性抗LAG3抗体によるLAG-3の遮断により抑制活性を有害に高めることが報告されている。しかし、Tregは機能不全T細胞よりも低いレベルのPD-1を発現しているため、PD-1への結合がハンドルとしても機能する、RO7247669による治療に応答して標的化され「活性化」される可能性は低くなる。LAG3は、最近、抗PD-1抗体ニボルマブと組み合わせた抗LAG3抗体レラトリマブの承認により、黒色腫の第一選択(1L)治療における臨床標的として検証された。
【0632】
近年、腫瘍学における用量の最適化と用量選択のパラダイムは、細胞傷害性剤からがん免疫療法及び分子標的薬剤への移行が求められている。登録試験に先立ち、用量とスケジュールを十分に特徴づける必要があるにもかかわらず、高用量であればあるほど有効性が高いという考え方が依然として存在する。
【0633】
阻害性チェックポイント受容体をブロックする薬剤の薬理学的効果は、免疫細胞上の受容体に結合することによって引き起こされる。したがって、標的結合(TE)の飽和は、薬理学的飽和、すなわち下流のシグナル伝達に対する最大効果の代用として用いることができる。したがって、標的受容体の飽和に達した後は、薬物を追加しても追加の薬理効果が得られるとは期待できない。したがって、腫瘍内の標的飽和に必要な用量を第II相の推奨用量として提案することができる。
【0634】
B.方法
i.臨床研究
RO7247669は現在、第I相試験NP41300において単剤として評価されている。NP41300試験は、局所進行性及び/又は転移性固形腫瘍患者におけるRO7247669の安全性/忍容性、薬物動態(PK)、薬力学、及び予備的な抗腫瘍活性を評価するための非盲検、多施設共同、用量漸増、第I相試験である。本試験は、2つのスケジュールを有する用量漸増群(パートA)と腫瘍特異的拡大群(パートB)から構成される。パートAは、固形腫瘍患者におけるRO7247669の最大耐容量(MTD)及び/又は推奨拡大用量(RDE)を決定するための、パートA1(2週間に1回投与(Q2W))及びパートA2(3週間に1回投与(Q3W))の用量漸増デザインから構成される。パートBは、選択された固形腫瘍の適応症を持つ患者のサブセットにおける将来の開発のために、MTD及び/又はRDE、及びその他の関心のある用量で投与されるRO7247669の腫瘍特異的拡張で構成される。進行性及び/又は転移性固形腫瘍の成人患者がプロトコールに従って登録された。
【0635】
ii.臨床薬物動態
検証された標的結合コンピテントPKアッセイを使用して、RO7247669の血清濃度を測定した。RO7247669のPKの評価のために、NP41300試験の患者において血清試料が定期的に事前に指定された時点で収集された。これらには、ピーク(注入終了後30分以内)と谷(次の投与前24時間以内)の両方の試料と、サイクル1及び5での豊富なサンプリングが含まれる。
【0636】
集団PK分析は、非線形混合効果モデリング手法を使用して実行された。1コンパートメントモデルと2コンパートメントモデルが評価され、その後、様々な残差誤差構造が試験された。次に、各PKパラメーターについて個体間変動性を検定し、続いて約的なオメガ構造の開発をガイドするためにランダム効果値間の相関を検査することによってモデルが改良された。モデルの選択は、対数尤度基準、適合度プロット、及び科学的妥当性に基づいて行われた。
【0637】
iii.腫瘍受容体占有率モデリング
PD1-LAG3の薬理学的効果は、CD8+ T細胞上のPD1及びLAG3結合によって駆動される。したがって、CD8細胞上のこれらの受容体の飽和は、下流のシグナル伝達に対する最大効果の代用として使用することができる;PD1-LAG3が追加されても、追加の薬理効果がもたらされるとは期待されない。
【0638】
腫瘍受容体占有率のモデリングを行った。目的は、RO7247669の濃度と用量の関数として、腫瘍内のPD1及びLAG3結合を特徴づけることであった。PKデータを用いて標的を飽和させるのに必要な用量を推定する目的で、最小生理学的薬物動態(mPBPK)モデルが用いられた。このモデルは、異なる組織/臓器をRO7247669の全身濃度を記述するのに十分な2つの異なるタイプの組織に単純化し、腫瘍内RO7247669濃度とPD1及びLAG3結合を記述するための腫瘍コンパートメントを含み、目的に適合したアプローチを提供する。2つの腫瘍サブコンパートメントは、血管及び間質腔を表していた。PD1-LAG3は腫瘍の血流量に基づいて腫瘍血管腔に出入りする。腫瘍内に入ると、PD1-LAG3は腫瘍関連免疫細胞上のPD-1及び/又はLAG3と結合し、標的媒介薬物体内動態(TMDD)により除去され、あるいは対流により除去される。RO7247669の腫瘍取り込みを説明するために、腫瘍コンパートメントもモデルに追加された。ペムブロリズマブの第2相推奨用量を予測するための、より単純なモデル(標的が1つだけ)が、Li et al.,Clinical Pharmacology and Therapeutics,110(1):200-209,2021によって以前に記載されている(
図3)。その後、無作為化用量比較研究により、Liらによって提示されたRP2Dが腫瘍の種類全体にわたる極めて重要な用量であることが確認された。PD1-LAG3のモデルに追加された追加のLAG3受容体を
図4に示す。集団PKモデルのパラメーターを表16に示す。Liらによって報告されたペムブロリズマブのモデルに加えて、モデルパラメーターを表17に示す。
【0639】
表16.集団PKモデルパラメーター
CL:クリアランス;V1:中心容積、Q:コンパートメント間クリアランス;V2:末梢容積;IIV:個体間変動。
【0640】
表17.ペムブロリズマブモデルに追加するモデルパラメーター
【0641】
C.結果
i.臨床的有効性と安全性
臨床データカットオフ時点(2022年3月1日)で、合計35人の患者がパートA1(Q2W)で6つのRO7247669用量レベルで治療されている。パートBでは、合計83人の患者が治療されている。表18は、NP41300においてRO7247669を受けた患者の概要を提供する。
【0642】
最大耐量(MTD)には到達せず、Q2Wで50mgから2100mgまで用量を漸増する際に用量制限毒性(DLT)は観察されなかった。50mgのRO7247669の初回投与後、末梢CD8+細胞上のPD-1及びLAG3受容体の90%以上の占有が観察され、2100mgまでの全ての用量で飽和が観察された。20%未満の患者で、RO7247669に対する持続性ADAの形成が観察された。300mg以下の投与を受けた一部のADA陽性患者では、曝露量の減少が見られた。用量漸増段階では、600mg以上の用量で臨床応答が観察された。
【0643】
平均曝露量は、臨床用量範囲(50~2100mg Q2W)全体で用量に比例して用量とともに増加した。
【0644】
表18.NP41300においてRO7247669を受けた患者の概要
【0645】
2022年3月1日の時点で、NP41300試験のパートAにおける病勢コントロール率(DCR)は51.4%(18/35人)、客観的奏効率(ORR)は17.1%(6/35人)であった。2100mg Q2WのRDEで投与された患者のうち、患者13人中7人(53.8%)は疾患が安定以上の最良奏効(DCR 53.8%)を示し、ORRは30.8%(患者13人中4人)であった。
【0646】
RDEで確認された部分奏効(cPR)に加え、600mgの用量レベルでも2件のcPRが認められた(ORR 50.0%)。
【0647】
パートBでは、2022年3月1日の時点で、2100mq Q2WのRDEで治療された本試験の患者(パートB1、B2、B3)において、DCRは48.3%(28/58)、ORRは5.2%(3/58)であった。600mg Q2W(パートB5)で治療された患者において、DCRは40%(4/10)、ORRは10%(1/10)であった。600mg Q3Wで治療された患者では、DCRは28.6%(2/7)、ORRは14.3%(1/7)であった。
【0648】
2022年3月1日の時点で、パートB1、チェックポイント阻害剤(CPI)経験のある悪性黒色腫患者におけるDCRは43.8%(14/32)、ORRは6.3%(2/32)であった。パートB2では、CPI経験のあるNSCLCでは、患者の50%が臨床的利益を経験したが(9/10 DCR)、応答を示した患者はいなかった。パートB3のCPI未治療の食道扁平上皮癌(ESCC)では、DCRは62.5%、ORRは12.5%であった(1/8患者)。バイオマーカーコホートでは、DCRはパートB5及びパートBでそれぞれ40%(44/10)及び28.6%(2/7)、一方ORRはパートB5及びパートBでそれぞれ10%(1/10)及び14.3%(1部分奏効(PR)/7)であった。
【0649】
パートA1(Q2W投薬)では、患者の大部分(94.3%)が少なくとも1つの有害事象(AE)を報告した。最も頻繁に報告された有害事象(患者の少なくとも20%で発生)は、貧血(37.1%)、便秘(31.4%)、呼吸困難(28.6%)、疲労(25.7%)、無力症、食欲減退(各22.9%)、下痢、発熱(各20.0%)であった。全体として、62.9%の患者が治療関連AEを報告した。重篤な有害事象(SAE)の発生率は25.7%で、治療関連SAEは6件(17.1%)であった。合計6人の患者が、治験責任医師が試験治療に関連すると考えられたSAEを経験した。治療関連のSAEには、150mgコホートにおける血中ビリルビン増加1件、600mgコホートにおける筋炎1件、1200mgコホートにおける2件のAE(呼吸困難1件と甲状腺機能亢進症1件)、2100mgコホートにおける2件のAE(胸水1件と貧血1件)が含まれる。
【0650】
2022年3月1日の臨床カットオフ日の時点で、パートA1及びパートBにおいてRO7247669の単剤療法をQ2W又はQ3Wで受けている固形腫瘍患者118名について予備的な安全性データが入手可能であった。患者118人中112人(94.9%)で、合計748件の有害事象(AE)が報告された。全体として、19人(54.3%)の患者が最大重症度としてグレード1又は2のAEを報告し、14人(40.0%)の患者が21のグレード3のAEを報告した。グレード4~5の有害事象は認められなかった。21件のグレード3の有害事象のうち、6件(17.1%)の患者でグレード3の有害事象が報告され、試験治療に関連していると考えられた。これらの6件の関連したグレード3のAEのうち、4件は重篤とみなされた。
図5及び6は、試験の用量漸増(パートA1、Q2W)部分における安全性評価可能な患者における有害事象の概要を示す表である。
【0651】
ii.臨床薬物動態
PopPKモデルを使用して、Q2W及びQ3Wの両方の投薬レジメンについて600mg及び1200mgのC
troughをシミュレートした。
図7に示すように、Q3W及びQ2W後のトラフ濃度600mg及び1200mgは、1回目と3回目の投与後に重複すると予測される。
【0652】
データセットが限られているため、腫瘍型を含む共変量解析はPD1-LAG3 PopPKモデルでまだ実施されていない;しかしながら、ニボルマブ及びペムブロリズマブの分析では、腫瘍型が薬物動態に及ぼす影響は最小であることが報告されている。ニボルマブの分析では、クリアランス(CL)はNSCLC、黒色腫、RCCの腫瘍型全体で同様であり、PKは腫瘍型に依存しないことが示された。(Bajaj et al.,CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol,6(1):49-57,2017)。ペムブロリズマブの分析では、PopPK モデルには進行性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、及びその他の固形腫瘍型の患者データが含まれていた。NSCLC患者のクリアランスは他の腫瘍型に比べて13.9%増加したが、これは臨床的には関連はなかった。(Ahamadi et al.,CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol,6(1):58-66,2017)。
【0653】
iii.腫瘍受容体結合モデリング
0.015~1500mgをQ3Wで投与するなど、RO7247669の幅広い用量についてPD1及びLAG3結合をシミュレートした(
図8)。シミュレーションによると、60mg Q3WではPD1とLAG3は腫瘍内で飽和し、LAG3受容体占有率(RO)は60mgで90%、PD1受容体占有率(RO)は2.37mg Q3Wで90%と予測された。集団PKモデルから、クリアランスはこの用量で直線的であり、標的媒介薬物体内動態(TMDD)は飽和していることが示唆され、これは腫瘍受容体結合モデルの予測と一致する。
【0654】
腫瘍が空間的に不均一であるという事実と、RO7247669が一定範囲の腫瘍透過性を有するという予測を説明するために、モデルは一定範囲の血管新生をシミュレートし、血管新生が不十分な領域は血管新生が良好な領域よりも25分の1であった。さらに、RO7247669曝露においてある程度の対象間のばらつきが予想される:したがって、600mg Q3Wにより、腫瘍取り込みレベルに関係なく、大多数の患者が少なくとも90%のLAG3 ROを有するであろうと予測される。
【0655】
D.考察
RO7247669の推奨用量と600mg Q3Wのスケジュールは、固形腫瘍における用量漸増試験であるNP41003の臨床データとPKデータを使用して推定された。公開されたモデルに基づき、RO7247669 PopPKモデルとPD1及びLAG3標的の特性に関するデータを組み込んだ定量的モデルを使用して、Q3Wレジメンにおける臨床用量範囲にわたる標的結合をシミュレートした。腫瘍の曝露と血管新生の両方における対象間及び対象内の変動を考慮して、600mg Q3Wは腫瘍内のCD8細胞上のPD1及びLAG3受容体の両方を飽和させると予測された。阻害性チェックポイント受容体をブロックする薬理学的効果は、免疫細胞上の受容体に結合することによって引き起こされる;したがって、標的結合の飽和は、薬理飽和、つまり下流シグナル伝達に対する最大効果の代用として使用できる。したがって、標的受容体の飽和に達した後は、薬物を追加しても追加の薬理効果が得られるとは期待できない。
【0656】
この結論は、NP41300の臨床データによって裏付けられ、600mg Q2W以上の用量コホートで応答が観察された。さらに、用量漸増コホートでは、600mg Q2Wの忍容性は良好であった。600mgのQ2WとQ3Wの予測Ctroughは重複していたため、2つのスケジュール間に臨床的に関連する差異はないと予想される。したがって、さらなる検討のために、600mg Q3Wというより患者中心のスケジュールが選択された。
【0657】
実施例3:以前に治療されていない切除不能又は転移性黒色腫の参加者を対象としたRO7247669の複数回投与の無作為化、非盲検、多施設共同、第II相試験
A.研究デザイン
がんは、いくつかの新規な薬剤により患者に生存利益がもたらされるにもかかわらず、依然として世界中で主要な死亡原因となっている。多くのがん適応症は予後不良であり、腫瘍再発率又は遠隔転移の発生率が高いため、最も進行した固形腫瘍の管理は依然として困難である。黒色腫を含む様々な腫瘍型において、現在利用可能なチェックポイント阻害剤(CPI)療法が有効であるにもかかわらず、患者は初期応答後に最終的には進行するか、PD-1/L1又は細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)チェックポイント遮断に応答できなかったりするため、免疫チェックポイントを標的とする新たな治療選択肢が必要とされている。
【0658】
転移性黒色腫に対する現在の標準治療には、免疫チェックポイント阻害剤(CPI)を単独又は組み合わせて使用する治療と、標的化v-Rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログB1(BRAF)及びマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤療法による治療が含まれる。インターロイキン2(IL-2)、腫瘍溶解性ウイルス、及びインターフェロン(IFN)療法は、一部の患者に対する選択肢として残っている。全体として、治療選択肢の進歩にも関わらず、転移性黒色腫患者は依然として長期的な臨床転帰が不良であり、この疾患の攻撃的な性質と複雑な病因を反映しており、満たされていない医療ニーズが続いていることを浮き彫りにしている。
【0659】
RO7247669(PD1-LAG3)は、抗プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)/リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)二重特異性抗体(BsAb)であり、満たされていない医療ニーズの高いがん患者において、有効な抗腫瘍免疫応答を確立又は回復させるために、機能不全の腫瘍抗原特異的Tリンパ球を標的とするよう設計された。RO7247669は、機能不全の腫瘍特異的Tリンパ球上のPD-1とLAG3の両方を標的とすることで、効果的な抗腫瘍免疫応答を回復させ、現在利用可能な薬剤よりも多くのがん患者に生存利益をもたらすことを目指している。LAG3とPD-1を組み合わせて遮断すると、PD-1を単独で遮断する場合と比較して、重大な毒性を追加することなく有効性を改善できる可能性があり、黒色腫患者の治療選択肢となる可能性がある。
【0660】
PD-1とLAG3の二重阻害に関する臨床的概念実証は、最近、以前に治療されていない転移性又は切除不能黒色腫を有する患者におけるレラトリマブとニボルマブの併用によって提供された(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34、2022)。両方の免疫チェックポイントの阻害は、PD-1単独の阻害よりも無増悪生存期間(PFS)に関して大きな利益を提供した。
【0661】
本実施例に記載された試験(BP43963)の目的は、切除不能又は転移性黒色腫を有する患者における、RO7247669の2つの用量レベルの有効性、安全性、薬物動態(PK)、及び薬力学を評価し、今後の開発に推奨される用量を選択することである。本研究の目的及び評価項目は表19に要約されている。
【0662】
【0663】
主な目的は、表20に示す5つの属性を通じて、推定対象フレームワークにおいて表現される。
【0664】
表20.推定対象
ORR:客観的奏効率、PFS:無増悪生存期間、Q3W:3週ごと、TA:腫瘍評価。
【0665】
i.全体のデザイン
BP43963試験は、切除不能又は転移性黒色腫を有し、これまでに転移性又は切除不能な疾患に対して全身療法を受けたことのない参加者を対象に、2つの異なる用量レベルのRO7247669の安全性と臨床活性を評価するために設計された第II相、無作為化、非盲検国際多施設共同研究である。試験デザインの概要を
図9に示す。
【0666】
本試験では、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが0又は1の18歳以上の参加者約80名が登録される。参加者は、RO7247669を600mgを3週間ごと(Q3W)に投与する群と1200mgを3週間ごと(Q3W)に投与する群に1:1の割合で無作為化された。事前のアジュバント又はネオアジュバントCPI治療(はい対いいえ)及びPD-L1の発現(抗体クローン22C3、SP263、又は28-8を使用した免疫組織化学(IHC)に基づく発現1%以上対1%未満)が層別因子として使用される。
【0667】
治療は、X線写真データ、生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態の統合評価後に疾患進行に起因する許容できない毒性又は症候性悪化がない場合、治験責任医師によって評価される臨床的利益を参加者が経験している限り、最長24か月間継続され得る。RECIST v1.1による疾患進行の基準を満たす参加者は、進行を超えた治療の基準を全て満たしている場合、試験治療を継続することが許可される。
【0668】
参加者は、サイクル1の1日目(C1D1)の日付から12週間(±1週間)の時点で最初の腫瘍評価を受ける。その後の腫瘍評価は、治療の遅れに関係なく、C1D1の日付を基準にして48週間までは9週間(±1週間)ごと、その後は12週間(±1週間)ごとに行われる。
【0669】
応答をRECIST v1.1に従って評価する。単一の時点での客観的奏効は、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される。RECIST v1.1による試験治療の中止及び病勢進行後、生存追跡情報は、死亡、追跡不能、試験終了、又は無作為化後最長24か月のいずれか早い方まで、約3か月ごとに電話、参加者の医療記録、及び/又はクリニック受診によって収集される。
【0670】
試験中、RO7247669のPKを評価し、RO7247669に対する抗体の存在を検出するために血清試料が収集される。バイオマーカー評価のために、アーカイブ及び新鮮な腫瘍組織、血清、血漿、及び血液試料などの参加者試料も収集される。
【0671】
安全性評価には、有害事象(AE)の発生率、性質及び重症度、並びに試験の安全性評価にとって重要であると考えられる検査異常等の他のプロトコール指定の試験が含まれる。
【0672】
試験期間及び試験終了
参加者1人あたりのスクリーニングから安全性追跡訪問までの試験期間は、最長約25か月である(長期追跡(LTFU)は含まない)。
【0673】
各参加者の各試験期間中の期間は以下の通りである:
・ スクリーニング無作為化の28日前まで
・ 治療期間サイクル1の1日目(C1D1)から最長24か月まで。
・ 生存追跡:試験治療の最終投与後90(±1週間)日;その後、死亡、追跡不能、試験終了、又は無作為化後最長24か月まで3か月(±2週間)ごと。
【0674】
試験の終了は、最後の参加者の最後の観察(LPLO)が行われた日として定義される。LPLOは、最後の参加者が無作為化されてから遅くとも24か月後に実施される予定である。
【0675】
参加者集団
参加者集団は、切除不能又は転移性黒色腫を患い、切除不能又は転移性疾患に対して以前に全身性抗がん療法を受けていない女性及び男性の参加者で構成されている。
【0676】
参加者の数
試験治療に無作為に割り付けられる予定の参加者の数は80名で、約80名の参加者が主要評価項目の分析で評価可能となるであろう。
【0677】
併用薬物療法
一般的に、黒色腫治療のための併用薬物療法は、有害事象(AE)を治療するための薬物療法を除き、例外の根拠が議論され、明確に文書化されない限り、許可されない。
【0678】
黒色腫に関する背景情報
皮膚がんは、あらゆるがんの中で最も一般的なものである。黒色腫は全皮膚がんのわずか1%を占めるに過ぎないが、メラノサイトから発生する最も高悪性度で危険な皮膚がんである。米国がん協会によると、2022年に米国で新たに約10万例の浸潤性黒色腫が診断されるという。速やかに診断された表在性腫瘍の転帰は良好であるが、転移性の場合、黒色腫は最も致命的ながんの1つであり続け、5年生存率は27%である(Surveillance,Epidemiology,and End Results(SEER)2021、米国癌協会のウェブページで入手可能)。2011年以前は、転移性黒色腫の治療に承認された治療法は限られており、化学療法と免疫療法(IL-2)が含まれていた。それ以来、チロシンキナーゼ経路を標的とする薬剤、CTLA-4やPD-1受容体を標的とするCPI療法、ワクチンなど、新たな治療選択肢が承認されている。
【0679】
抗CTLA-4抗体イピリムマブは、臨床転帰の有意な改善を示した最初のCPIであり、その結果、切除不能又は転移性の黒色腫への使用が承認された(Hodi et al.,N Engl J Med,363:711-723,2010)。その後、PD-1受容体に結合するモノクローナル抗体(ペムブロリズマブ又はニボルマブ)により転帰が改善され、毒性が軽減された(Robert et al.,N Engl J Med,372:320-330,2010;Robert et al.,N Engl J Med,372(26):2521-2532,2010;Weber et al.,Lancet Oncol,16(4):375-384,2015)。CTLA-4/PD-1遮断を組み合わせた場合、それぞれの単一薬剤の活性と比較して、高い奏効率と長いOSをもたらした。しかし、併用療法は毒性の増加を伴っていた(Wolchok et al.,Abstract 9506 ASCO Annual Meeting 2021)。
【0680】
以前に治療されていない転移性又は切除不能な黒色腫を対象とした第2/3相試験(RELATIVITY-047)の最近の結果では、PD-1(ニボルマブによる)とLAG3(レラトリマブによる)の併用遮断により、PD-1単独の阻害と比較してPFSが改善することが示された(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34,2022)。この組み合わせで観察されたPFSの利益は、ニボルマブとイピリムマブの組み合わせと比較して同様に見えるが、安全性プロファイルはより良好である(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34,2022,Wolchok et al.,Abstract 9506 ASCO Annual Meeting 2021)。同時に、レラトリマブとニボルマブの併用療法では、ニボルマブ単独による治療と比較して、新たな安全性シグナルは示されなかった。
【0681】
転移性黒色腫に対する現在の標準治療には、免疫CPIを単独又は組み合わせて使用する治療と、標的化BRAF及びMEK阻害剤療法による治療が含まれる。IL-2、腫瘍溶解性ウイルス、及びIFN療法は、一部の患者に対する選択肢として残っている。
【0682】
全体として、治療選択肢の進歩にも関わらず、転移性黒色腫患者は依然として長期的な臨床転帰が不良であり、この疾患の攻撃的な性質と複雑な病因を反映しており、満たされていない医療ニーズが続いていることを浮き彫りにしている。
【0683】
RO7247669に関する背景情報
RO7247669は、PD-1とLAG3の2つのCPIのそれぞれへの一価結合を組み込んだ、1+1フォーマットの新規FcサイレントIgG1ベース二重特異性抗体である。RO7247669は、PD-1とLAG3の両方を共発現する、又は程度は低いがPD-1若しくはLAG3のいずれかを単独で発現する腫瘍微小環境内のT細胞に優先的に結合するように設計されている。腫瘍微小環境内のT細胞に優先的に結合することで、腫瘍内及び末梢の制御性T細胞(高レベルのPD-1を発現しない)などの他のLAG3発現細胞の標的化が回避される。LAG3への一価結合は、T細胞表面への結合時の抗体(Ab)の内部移行を減少させる。PD-1 BsAbの追加の特徴は、LALA P329G変異の導入によってFcガンマ受容体への結合を妨げる、操作されたIgG1ベースのFc領域である。これにより、ペムブロリズマブやニボルマブなどのIgG4ベースの抗体で観察されている薬物のシェービング、ひいては腫瘍関連のマクロファージ耐性メカニズムが回避される(Arlauckas et al.,Sci Transl Med,9(389):eaal3604,2017。
【0684】
RO7247669は現在、4つの進行中の臨床研究で評価されている:
1.第二選択黒色腫拡大コホートを含む、進行性及び/又は転移性固形腫瘍の参加者を対象としたヒトへの第I相臨床試験(NP41300試験);
2.進行性又は転移性食道扁平上皮癌を有する第二選択参加者を対象とした第II相試験(BP42772試験);
3.進行性肝細胞がんを有する第一選択参加者を対象としたベバシズマブと組み合わせた第Ib/II相試験(GO42216試験);及び
4.切除可能なステージIII及びそれ以降のステージIVの黒色腫患者を対象とした、チラゴルマブを含めるか又は含めない、術前補助療法による第Ib/II相試験(BO43328試験)。
【0685】
全ての試験を通じて、RO7247669は試験された最大用量(2100mg Q2W)まで良好な忍容性を示し、RO7247669に関連する安全性に関する特別な懸念は確認されなかった。NP41300試験の用量漸増の部分では、用量制限毒性(DLT)は認められず、最大耐用量(MTD)も確認されなかった。
【0686】
BP42772試験は盲検試験であり、GO42216試験及びBO43328試験への募集は最近開始されたばかりである。関連する有効性データは、現在NP41300試験から入手可能である。2022年1月14日のデータカットオフ日の時点で、本試験の用量漸増における病勢コントロール率(DCR)は51%(評価可能な参加者35人中18人)、客観的奏効率(ORR)は17%(参加者35人中6人)であった。CPI未経験参加者とCPI経験参加者の両方で、様々な腫瘍型にわたって、600mgを2週間ごと(Q2W)及び2100mgをQ2Wにおいて応答が観察された。600mg未満の用量(N=12)では応答者はいなかったが、600mg以上の用量をQ2Wでは23人中7人(7/23)の応答者があり、用量応答関係が示された。600mg以上の用量をQ2Wでは、曝露と最良全奏効(BOR)との間に明らかな関係は観察されなかった。進行性疾患を有する患者の平均Cavess(定常状態における平均濃度)は、600mgと2100mgコホート内で部分奏効を示した患者と同様であった。
【0687】
2022年1月14日現在、NP41300の拡大コホートにおいて、CPIを経験した28人のぶどう膜(28人中9人)及び非ぶどう膜(28人中19人)のPDL-1及びLAG3オールカマー黒色腫参加者を対象に、2100mgQ2Wでの有効性が評価されている。非ぶどう膜黒色腫参加者では、ORRは21%(19人中4人)、DCRは58%(19人中11人)であった。
【0688】
以前にペムブロリズマブを受けた2人の参加者、ニボルマブを受けた1人の参加者、及びニボルマブとイピリムマブの併用治療を受けた1人の参加者で応答が観察された。登録はまだ継続中である。
【0689】
ベネフィット・リスク評価
RO7247669の臨床経験は限られているが、抗PD-1/PD-L1モノクローナル抗体の臨床的有効性と安全性プロファイルは十分に特徴づけられ、確立されている。近年、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びイピリムマブという3つのCPIが切除不能又は転移性黒色腫の治療薬として食品医薬品局(FDA)及びその他の保健当局によって承認されている。進行性黒色腫患者の全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブとイピリムマブの組み合わせで72.1か月、ニボルマブ単剤療法で36.9か月、イピリムマブ単剤療法で19.9か月と報告されている(Wolchok et al.,Abstract 9506 ASCO Annual Meeting 2021)。
【0690】
次世代の併用療法は、進行黒色腫患者における抗PD-1と抗CTLA-4の組み合わせで指摘されているように、臨床的に意味のある安全性プロファイルの改善とともに、より高い奏効率、より深い奏効、より長い、あるいは同等のOSをもたらす可能性がある。したがって、単一特異性PD-1指向性抗体と比較して、主にPD-1とLAG3が媒介する免疫抵抗性機序の両方を標的とすることからより優れた有効性が期待できるかもしれない。
【0691】
上で論じたように、PD-1とLAG3の二重阻害に関する臨床的概念実証は、最近、以前に治療されていない転移性又は切除不能黒色腫を有する患者におけるレラトリマブとニボルマブの併用によって提供された(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34、2022)。両方の免疫チェックポイントの阻害は、PD-1単独の阻害よりもPFSに関して大きな利益を提供した。同時に、レルトリマブとニボルマブの併用療法は、ニボルマブとイピリムマブの併用療法と遡及的に比較した場合、新たな安全性シグナルを示さず、安全性プロファイルが有意に改善された(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34,2022,Wolchok et al.,Abstract 9506 ASCO Annual Meeting 2021)。
【0692】
上で論じたように、RO7247669は、ニボルマブとイピリムマブの併用治療を含むCPI療法に抵抗性を示した黒色腫及び他の腫瘍型の患者において応答を誘導できることが示された。特に、NP41300試験で観察された非ぶどう膜黒色腫参加者のORR21%は、同等の患者集団におけるレラトリマブとニボルマブの併用療法の過大な奏効率11.5%(Ascierto et al.,Ann Oncol,v611-v612,2017)と比較して劣らない。
【0693】
RO7247669はQ2Wで最大2100mgの用量で許容されている;AEは管理可能であり、安全性プロファイルは、承認されたPD-1指向性抗体だけでなく、異なる固形腫瘍の適応症にわたって一貫していることが観察されている。要約すると、RO7247669はニボルマブ単剤療法と比較して、同様の安全性プロファイルで利益を増加させる可能性がある。
【0694】
予備的な有効性と管理可能な安全性プロファイル、及び二重チェックポイント阻害の作用機序による転帰改善の可能性を考慮すると、RO7247669による治療は、黒色腫のような固形腫瘍における治療の可能性がある。上記の考慮事項、現在利用可能なデータ、及び計画されている安全性監視及び管理ガイダンスに基づいて、提案された試験治療は、この試験に含まれる集団にとって適切な利益/リスクプロファイルを有すると考えられる。
【0695】
B.理論的根拠
試験集団の理論的根拠
本試験では、切除不能又は転移性黒色腫を有し、切除不能又は転移性疾患に対して以前に全身性抗がん療法を受けたことのない参加者が登録される。単一特異性抗PD-1抗体と単一特異性抗LAG3抗体の組み合わせの臨床検証が、この治療環境において最近行われた(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34,2022)。現在進行中のNP41300試験のCPI経験黒色腫コホートから得られた新たな有効性データと合わせて、RO7247669による治療がこの適応症において臨床的利益をもたらすことが期待される。
【0696】
また、第一選択の黒色腫は、化学療法を伴わないCPI治療がこの集団における現在の標準治療であることを考慮し、単剤療法RO7247669の2つの異なる用量レベルの試験が可能であることから選択された。したがって、組み合わせパートナーによる潜在的な交絡効果がない場合でも、用量依存的な効果を評価することが可能である。
【0697】
本試験の疾患特異的適格基準は、RELATIVITY-047で使用されたものと同様である。レラトリマブとニボルマブの組み合わせによる治療の利益は、ニボルマブ単独と比較して、腫瘍のPD-L1及びLAG3発現に依存せず、患者のBRAF変異状態に関係なく観察された。このため、参加者は腫瘍のPD-L1及びLAG3発現及びBRAF変異状態とは無関係に本試験に適格である。現在のガイドラインでは、BRAF及びMEK阻害剤による治療の前に免疫療法による治療を検討することが推奨されており、治療を中止した後でも非常に長期的な病勢コントロールが得られる可能性があるため、BRAF変異黒色腫の参加者を含めることも正当化されると考えられる(Keilholz et al.,Ann Oncol,31(11):1435-1448,2020)。
【0698】
主要評価項目の理論的根拠
OSは依然として臨床的利益を証明するためのゴールドスタンダードであるが、この評価項目を測定するには、他の評価項目よりも多くの患者数と長い追跡期間が必要であり、その後の治療によって混乱する可能性がある(Pazdur et al.,Oncologist,13 Suppl.2:19-21,2008)。対照的に、PFS(ランドマークPFSを含む)は、過去に第一選択の黒色腫における治療効果の区別を可能にした初期の読み出し情報である(Wolchok et al.,Abstract 9506 ASCO Annual Meeting 2021)。その結果、PFSは許容可能な規制評価項目として認識されている。例えば、ダブラフェニブとトラメチニブの単剤療法及び併用療法は、主要評価項目がPFSである第3相臨床試験に基づいて、切除不能又は転移性黒色腫の治療としてFDAによって承認された(Flaherty et al.,N Engl J Med,367:107-114,2012;Hauschild et al.,Lancet,380:358-365,2012;Long et al.,ASCO Annual Meeting Abstracts;32:9011,2014)。PFSはRELATIVITY-047試験の主要評価項目でもあり、6か月の治療後に利益がすでに実証されている(Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34,2022)。
【0699】
OSと比較して、PFSは試験終了後の治療による影響を受けない。したがって、切除不能又は転移性黒色腫の患者において、臨床的に有効な治療選択肢(例えば、ニボルマブ、イピリムマブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ)が利用できるようになってきており、現在の試験で疾患進行後にそれらを使用するとOSの評価項目が混乱する可能性があるため、選択された患者集団にとってPFSが好ましい選択肢であると考える。
【0700】
これらの理由から、6か月時点のPFSが有効性の主要評価項目として選択された。
【0701】
層別因子の理論的根拠
治療群間の不均衡の可能性を最小限にするため、試験では2つの層別因子が利用されている:事前のアジュバント又はネオアジュバントチェックポイント阻害剤治療(はい対いいえ)及びPD-L1発現(抗体クローン22C3、SP263、又は28-8を使用したIHCに基づく腫瘍細胞表面発現1%以上対腫瘍細胞表面発現1%未満)。
【0702】
CPI治療の使用により、高リスクのステージII/III黒色腫の完全切除後の無再発生存期間(RFS)が改善されたため、事前のアジュバント又はネオアジュバントCPI治療(はい対いいえ)が選択された。CPIによるアジュバント及びネオアジュバント治療は、黒色腫治療における標準治療の一部であり、あるいは今後そうなるであろう。このため、アジュバント又はネオアジュバントの抗PD-1療法又は抗CTLA-4療法を完了し、最終投与から再発日までの期間が6か月以上ある参加者は本試験に適格である。切除不能又は転移性疾患における抗PD-1及び抗LAG3併用療法に対する応答性に対する、事前のアジュバント又はネオアジュバント抗PD-1又は抗CTLA-4療法の影響はまだわかっていないため、現在の試験の参加者はそれに応じて層別化される。
【0703】
PD-L1発現に関しては、ニボルマブ単剤療法を用いたこれまでの臨床試験で、PD-L1陽性の腫瘍を有する患者は、発現が不確定な患者よりも高い奏効率を有し得ることが示されている(Robert et al.,N Engl J Med,372:320-330,2010)。同様に、リラトリマブとニボルマブの組み合わせによる治療を受けた患者のPFS中央値は、PD-L1発現が1%以上の患者では12.6か月であったが、PD-L1発現が1%未満の患者では、リラトリマブとニボルマブの組み合わせによるPFS中央値は6.4か月であったと報告されている((Tawbi et al.,N Engl J Med,386(1):24-34,2022)。
【0704】
バイオマーカー評価の理論的根拠
この研究の主な仮説は、PD-1-LAG3による追加のチェックポイント遮断により、疲弊したT細胞が再び活性化され、腫瘍微小環境におけるCD8 T細胞の浸潤と増殖の増加をもたらすというものである。
そのため、治療誘導性バイオマーカーの探索は、腫瘍微小環境と末梢血の両方におけるPD-1-LAG3に関連するベースラインからの変化に焦点を当てる。末梢血の連続採血も、免疫細胞プロファイルの動態変化を評価するために行われ、プロファイルはその後、RO7247669による治療との関連性について調べられるであろう。
【0705】
RO7247669の応答の予測マーカーを調査するために、最初の仮説は、応答とベースラインのPD-L1、CD8、LAG3、及び/又はPD-1発現との関連に焦点を当てている。その他の探索的バイオマーカーとしては、末梢血や腫瘍微小環境におけるベースラインの免疫細胞サブセット/エフェクター遺伝子シグネチャー、あるいはその他の可溶性マーカー(血中腫瘍変異負荷、循環腫瘍デオキシリボ核酸(ctDNA)など)の評価が含まれる。初期データがこれらの測定に対する強力な科学的根拠につながる場合、追加のバイオマーカーを測定することができる。
【0706】
用量の正当性
RO7247669は、600mg又は1200mgをQ3W(各21日サイクルの1日目)の用量で投与される。
【0707】
実施例2で議論したように、NP41300試験において、RO7247669は許容され、RO7247669に関連する新たな安全性の懸念は同定されなかった。最高用量の2100mg Q2WまでDLTは観察されず、MTDも同定されなかった。
・ 放射線学的PRによって測定した抗腫瘍活性は、600mg及び2100mg Q2Wで観察された(NP41300試験)。
・ RO7247669のPKは、NP41300試験で試験された用量範囲内で用量直線的であった。
・ 腫瘍内RO7247669濃度を記述するための最小限の生理学的ベースの薬物動態モデルを使用した、腫瘍におけるPD-1及びLAG3標的結合のさらなるモデリングと、RO7247669の結合特性によって特徴づけられる標的媒介薬物動態の推定を実施した。600mg Q3WのRO7247669は、参加者間のPKの変動性と腫瘍内でのRO7247669の分布の空間的不均一性の両方を考慮すると、大多数の参加者において、治療期間を通じて腫瘍部位でのPD-1とLAG3の標的結合が90%を超えると推定された。同様のアプローチを使用して、ペムブロリズマブの重要な用量として推奨される第II相用量を確認した(Li et al.,Clinical Pharmacology and Therapeutics,110(1):200-209,2021)。
・ 腫瘍受容体占有シミュレーションは、600mg Q2W及び600mg Q3Wで実行され、どちらのレジメンでも、治療期間を通じてPD-1及びLAG3受容体占有率が90%以上となったため、参加者の治療負担を最小限に抑えるために、頻度の少ないQ3Wのレジメンが選択された。
・ RO7247669の免疫原性及び抗薬物抗体(ADA)の発現が曝露及び有効性に及ぼす影響については、まだ十分に理解されていない。しかし、NP41300試験において、300mg以下の用量で観察されたADAを介した曝露への影響の証拠がある。現在までのところ、600mgではADAは観察されていないため、600mgにおけるADAを介した曝露への影響の可能性については不確実性が残っている。
【0708】
1200mgと2100mgでADAを発現した参加者では、現在までに曝露への影響は観察されていない。したがって、1200mgで循環ADAが飽和し、曝露への影響が最小化されると予想される。
【0709】
したがって、この試験の参加者に投与するために、600mg及び1200mg Q3Wの用量及びレジメンが選択された。
【0710】
C.組み入れ基準及び除外基準
参加者集団は、切除不能又は転移性黒色腫と診断され、切除不能又は転移性疾患に対して以前に全身性抗がん療法を受けておらず、所定の組み入れ基準を全て満たし、除外基準をいずれも満たさない参加者で構成される。
【0711】
組み入れ基準
参加者は、以下の基準の全てが当てはまる場合にのみ、試験に含まれる資格がある:
【0712】
概要
1.書面によるインフォームドコンセントを提供し、医薬品規制調和国際会議(ICH)及び現地の規制に従って試験プロトコールを遵守する能力及び意欲がある。
2.年齢18歳以上
【0713】
参加者の種類と疾患の特徴
3.参加者は、AJCC病期分類システム(切除不能なステージIII又はステージIV)に従って、切除不能又は転移性黒色腫が組織学的に確認されていなければならない。
4.RECIST v1.1に従って放射線学的に測定可能な疾患。以前に放射線照射を受けた病変は、放射線療法後に明らかに進行しなかった場合を除き、標的病変としてカウントすべきではあない。
5.ECOGパフォーマンスステータスが0-1。
6.参加者はBRAF V600の変異状態を知っていなければならない。
7.参加者はPD-L1の状態を知っていなければならない。
・ PD-L1発現は、抗体クローン22C3、SP263、又は28-8を使用する承認されたIHCアッセイを使用して、任意の強度の原形質膜PD-L1染色を示す腫瘍細胞のパーセントとして定義される。
・ PD-L1発現は、登録前3か月以内に採取された組織試料において、取得時とPD-L1検査の間に介入治療を行わずに測定する必要がある。
8.バイオマーカー分析のために、切除不能又は転移性の疾患部位からの腫瘍組織を提供しなければならない。
9.参加者は、治療医師の臨床判断に従って、生検が可能な非標的腫瘍病変を少なくとも1つ有しており、必須の治療中の生検を受けることに同意しなければならない。
【0714】
医学的症状
10.十分な心血管系機能。
11.以前の放射線療法、化学療法、又は外科手技による有害事象は、脱毛症(グレードを問わず)、白斑、補充療法で管理された内分泌障害、及びグレード2の末梢神経障害を除き、グレード≦1に回復していなければならない。
12.十分な血液機能。
13.十分な肝機能。
14.十分な腎機能。
15.追加の適切な検査パラメーターが得られた:
・ 血清アルブミン≧25g/L(2.5g/dL)
・ 治療的抗凝固薬を受けていない参加者について:プロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間≦1.5×ULN
・ 治療的抗凝固療法を受けている参加者について:安定な抗凝固薬レジメン。
【0715】
避妊
16.男性及び/又は女性の参加者:
避妊と禁欲の条件は、胚が試験治療にさらされるのを防ぐことを目的としている。男性及び/又は女性の登録資格に関する性的禁欲の信頼性は、臨床研究の期間及び参加者の好みの通常のライフスタイルに関連して評価されなければならない。周期性禁欲(例えば暦、排卵、症候体温法、又は排卵後法)及び禁断は、許容される避妊方法ではない。
・ 女性参加者:女性参加者は、妊娠しておらず、母乳を与えておらず、且つ以下の条件の少なくとも1つが適用される場合に参加する資格がある。
・ 妊娠可能な女性(WOCBP)ではないこと。
・ WOCBP:
・ 治療期間中、禁欲を続けること(異性間性交を控える)又は失敗率が年間1%未満である効果の高い避妊法を少なくとも4か月間使用することに同意すること
・ 試験薬の最終投与後。女性は、この同じ期間中に卵子を提供することを控えなければならない。
・ 無作為化前の7日以内に妊娠検査(血液)が陰性である。
・ 男性参加者:治療期間中及び試験薬最終投与後少なくとも4か月間、以下の事項に同意すること:
・ WOCBP又は妊娠している女性のパートナーとは、胚の露出を避けるため、禁欲を続けるか(異性間性交を控える)又はコンドームなどの避妊手段を使用する。
・ 精子提供を控える。
【0716】
除外基準
参加者は、以下の基準のいずれかが当てはまる場合、試験から除外される:
【0717】
概要
1.妊娠、授乳又は母乳栄養。
2.RO7247669のいずれかの成分に対する既知の過敏症(チャイニーズハムスター卵巣細胞産物又は他の組換えヒト抗体若しくはヒト化抗体に対する過敏症を含むがこれらに限定されない)。
【0718】
参加者の種類と疾患の特徴
3.参加者は眼内黒色腫を有していてはならない。
【0719】
医学的症状
4.症候性中枢神経系(CNS)転移。以前に脳転移の治療を受けている参加者は、以下の条件を満たす場合に参加できる:
・ 安定している(無作為化前の少なくとも28日間、コンピュータ断層撮影法(CT)又は磁気共鳴画像法(MRI)による進行の証拠がない)。
・ 無作為化前の少なくとも28日間、新たな脳転移又は拡大した脳転移の証拠がない。
・ 無作為化前の少なくとも28日間、全身性ステロイドによる治療を受けていない。
5.脊髄圧迫は、手術及び/又は放射線で確定的に治療されておらず、又は無作為化前に疾患が14日以上臨床的に安定していたという証拠はない。
6.・癌性髄膜炎/軟髄膜疾患の活動中又は病歴。
7.無症候性CNS原発腫瘍又は転移があり、無作為化前の過去28日間にステロイド又は酵素誘導性抗けいれん薬の投与が必要な場合。
8.制御されない腫瘍関連疼痛。鎮痛薬を必要とする参加者は、試験開始時に安定したレジメンを受けていなければならない。
9.活動性の二次悪性腫瘍を有する参加者。悪性腫瘍の併発の例外として、治癒的に治療された子宮頸部上皮内がん、予後良好な乳房上皮内乳管癌、基底細胞がん又は扁平上皮皮膚がん、又は低悪性度の早期限局性前立腺がん、及び少なくとも2年間寛解している、以前に治療を受けた初期段階の非血液悪性腫瘍が挙げられる。
10.糖尿病、関連する肺疾患の病歴、既知の自己免疫疾患又は免疫不全、又は進行中の線維症を伴うその他の疾患(強皮症、肺線維症、肺気腫、神経線維腫症、手掌/足底線維腫症など)を含む、プロトコールの順守又は結果の解釈に影響を与える可能性のある、制御されていない重大な付随疾患の証拠。
11.インフォームドコンセント前の1年間に、脳炎、髄膜炎、又は制御不能な発作が発生した。
12.無作為化前6か月以内の重篤な心血管疾患/脳血管疾患(以下のいずれかを含む):
・ 高血圧クリーゼ/脳症。
・ 不安定狭心症。
・ 一過性脳虚血発作/脳卒中。
・ うっ血性心不全。
・ 治療を必要とする重篤な不整脈(心房細動、発作性上室性頻拍は例外)。
・ 血栓塞栓症の病歴(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症など)
13.無作為化前28日以内に、活動性又は未制御の細菌性、ウイルス性、真菌性、マイコバクテリア性(結核及び典型的なマイコバクテリア性疾患を含むが、これらに限定されない)、寄生虫性、又はその他の感染症(爪甲の真菌感染症を除く)、又は抗生物質の静注による治療又は入院(腫瘍熱の場合を除き、抗生物質のコースの完了に関連する)を必要とする重大な感染症のエピソードがあること。
14.アルコール性肝炎、肝硬変、遺伝性肝疾患などの既知の臨床的に重大な肝疾患。
15.無作為化前28日以内に大規模な外科手技又は重大な外傷(生検を除く)、又は研究期間中に大規模な手術の必要性が予測されること。
16.治験薬の使用に禁忌を示す疾患又は状態の合理的な疑いを与えるか、結果の解釈に影響を及ぼし得るか、又は参加者を治療合併症に対して高リスクにする可能性がある任意の他の疾患、代謝機能障害、健康診断所見、又は臨床研究所見。
17.インフォームド・コンセントを妨げるような認知症又は精神状態の変化。
18.制御されていない胸水(PLEURX(登録商標)などの留置カテーテルを使用している参加者を除く)、心内膜液滲出、又はドレナージ処置を繰り返し必要とする腹水(毎月1回又はそれ以上の頻度で起こると予想される)。
19.以下の例外を除き、自己免疫疾患又は免疫不全の活動性又は既往歴がある:
・ 自己免疫介在性甲状腺機能低下症又は内分泌障害の病歴があり、甲状腺補充ホルモン又は適切な補充療法で安定している参加者は本試験に適格である。
・ インスリンレジメンを受けている、制御されている1型糖尿病を有する参加者は、本試験に適格である。
・ 皮膚症状のみ見られる湿疹、乾癬、慢性単純性苔癬又は白斑を有する参加者(例えば乾癬性関節炎を有する参加者は除外される)は、以下の条件を全て満たす場合に限り、本試験に適格である:
・ 発疹が覆っている体表面積は10%未満でなければならない。
・ 疾患はベースラインで十分に制御されており、低効力の局所コルチコステロイドのみを必要とする。
・ 過去12か月以内に、ソラレン+紫外線A照射、メトトレキサート、レチノイド、生物学的薬剤、経口カルシニューリン阻害剤、又は高力価若しくは経口コルチコステロイドを必要とする基礎疾患の急性増悪が発生していない。
20.スクリーニング時にヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査陽性。
21.スクリーニング時のB型肝炎表面抗原(HBsAg)又は全B型肝炎コア抗体(HBcAb)検査が陽性。HBsAg又は全HBcAb検査が陽性で、その後スクリーニング時にB型肝炎ウイルス(HBV)デオキシリボ核酸(DNA)検査が陰性の参加者は適格である。
22.スクリーニング時のC型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査が陽性。HCV抗体検査が陽性で、その後スクリーニング時にHCVリボ核酸(RNA)検査が陰性の参加者は適格である。
【0720】
事前療法/併用療法
23.切除不能又は転移性黒色腫に対する事前の全身性抗がん療法。
24.CPI(抗PD-L1/PD-1及び抗CTLA-4など)を含む免疫調節薬による事前の抗がん療法。以下の事前のアジュバント療法又はネオアジュバント療法は、関連する全ての有害事象がベースラインに戻っているか、安定している場合に許可される:
・ 抗PD-1及び/又は抗CTLA-4ベースの治療で、最後の投与から再発日までの間隔が少なくとも6か月ある。(ネオ)アジュバント治療中又は完了後6か月以内に再発した参加者は対象外とする。
・ 最後の投与が無作為化の少なくとも6週間前であるIFN療法。
25.抗LAG3療法による前治療。
26.以前の免疫療法(例えば、抗CTLA-4若しくは抗PD-1/PD-L1治療、又はT細胞共刺激若しくは免疫チェックポイント経路を特異的に標的とするその他の抗体若しくは薬物)に関連した生命を脅かす毒性の病歴。ただし、標準的な対策で再発する可能性が低いもの(副腎クリーゼ後のホルモン補充など)は除く。
27.無作為化前の28日以内に生ワクチンを接種している、又は試験中に弱毒化生ワクチンが必要になることが予想される。
28.無作為化前14日以内の治療用経口又はIV抗生物質による治療。
29.無作為化前の28日間又は薬物の5半減期(いずれか短い方)未満での他の治験薬(現時点で規制当局に承認された適応がない治療として定義される)との併用療法。
30.以下の例外を除く、無作為化前の5半減期又は28日間(いずれか短い方)未満での免疫調節剤及び免疫抑制剤/薬物による治療:
・ 吸入コルチコステロイド及びミネラルコルチコイド(フルドロコルチゾンなど)の使用は許可されている。
・ 急性及び/又は低用量の全身性免疫抑制薬の投与を受けた参加者(例えば、吐き気に対するデキサメタゾンの限定的使用、又は10mg/日以下のプレドニゾン又は用量当量のコルチコステロイドの慢性使用)は許可される。
31.定期的な免疫抑制療法(臓器移植、慢性リウマチ性疾患など)。
32.RO7247669による治療開始前28日以内の放射線治療は、限定的な緩和的放射線治療を除き、許可されていない。
33.キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法などの養子細胞療法による前治療。
【0721】
D.試験治療
表21は、実施された治療をまとめたものである。
【0722】
表21.実施された治療の概要
IMP=治験医薬品、NIMP=治験医薬品
【0723】
RO7247669は静脈内(IV)に投与される。投与中は、0.2μm又は0.22μmのインラインフィルターを輸液セットとともに使用しなければならない。
【0724】
RO7247669の初回用量は、60±10分間(注入関連症状を経験した参加者の場合には注入は遅延又は中断される可能性がある)にわたって送達され、その後60分間の観察期間が続く。注入関連有害事象を伴わずに60分間の注入が許容された場合、その後の全ての注入は30±10分間にわたって送達され、その後30分間の観察期間が続く。
【0725】
前投薬
RO7247669の初回投与前に前投薬は予定されていない。
【0726】
前回の注入でグレード2の注入関連反応(IRR)を経験した参加者は、次回以降の注入のために前投薬を受ける必要がある。将来のサイクルの前投薬レジメンは、参加者が現在の注入でグレード2以上のIRR事象を経験しない場合には、減らされる可能性がある。
【0727】
許可された治療
参加者は、試験中に以下の治療法を使用することが許される。
・ 失敗率が年間1%未満の経口避妊薬
・ ホルモン補充療法
・ 予防的又は治療的抗凝固療法(安定用量のワルファリン又は低分子量ヘパリン等)
・ 不活化インフルエンザワクチン接種
・ 食欲刺激剤として投与される酢酸メゲストロール。
・ 吸入コルチコステロイド及びミネラルコルチコイド(フルドロコルチゾンなど)。
・ 急性及び/又は低用量の全身性免疫抑制薬(例えば、吐き気に対するデキサメタゾンの1回投与、又は10mg/日以下のプレドニゾン又は用量当量のコルチコステロイドの慢性使用)。
・ 限定領域姑息的放射線治療は、RO7247669が投与される日を除き、試験期間中いつでも許可される。
【0728】
ハーブ療法の併用は、それらのPK、安全性プロファイル、及び潜在的薬物-薬物相互作用が一般的に不明であるため、推奨されない。しかしながら、がんの治療を意図しないハーブ療法は、試験中に使用され得る。
【0729】
禁止される治療法
原則として、AEを治療するための薬物療法を除き、併用薬物療法は許可されない。
【0730】
試験期間中(生存追跡を除く)、無作為化前及び試験治療期間中、少なくとも28日間又は薬物の5半減期のいずれか短い期間、以下に特に指定がない限り、以下の治療法の使用を禁止する:
・ 治験薬又は無許可/未承認の薬剤。
・ がんの治療を目的とした療法(化学療法、ホルモン療法、免疫療法、標的病巣の外科的切除、放射線療法(限定的な緩和的放射線療法を除く)、及びラベルに抗がん作用を記載したハーブ療法又は伝統的な漢方薬を含むが、これらに限定されない)。
・ ベースラインでのプレドニゾン1日あたり10mg(又は同等物)以下のステロイドの慢性使用(吸入及び局所ステロイドは許可される)。高用量の全身性コルチコステロイドの併用。
・ 弱毒生ワクチンの投与、又は試験期間中若しくは試験薬の最終用量の投与後4か月以内にそのような弱毒生ワクチンが必要になることが予想される場合。
・ 全身性免疫刺激剤(IFN及びIL-2を含むが、これらに限定されない)。これらの薬剤は、CPIと組み合わせて投与すると自己免疫状態のリスクを増加させる可能性があるため。
・ 全身性免疫抑制剤(シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイドを含むがこれらに限定されない)。これらの薬剤は試験薬の有効性と安全性を変える可能性があるため。
・ CAR-T療法などの養子細胞療法。
【0731】
E.有効性評価
参加者は、無作為化日から12週間(±1週間)の時点で最初の腫瘍評価を受ける。その後の腫瘍評価は、治療の遅れに関係なく、無作為化日を基準として48週間までは9週間(±1週間)ごと、その後は12週間(±1週間)ごとに行われる。腫瘍の評価は、RECIST v1.1による放射線学的疾患進行、新規抗がん療法の開始、同意の撤回、死亡、試験の終了、又は無作為化後最長24か月のいずれか早い方まで、治療の遅れに関係なく、記載された間隔で実行される。
したがって、疾患進行又は臨床的利益の喪失以外の理由で治療を中止した参加者に対しても、腫瘍評価はスケジュールに従って継続されることになる。RECIST v1.1に従って進行性疾患後に治療を継続する参加者については、試験治療が中止されるまで腫瘍評価がスケジュールに従って継続される。
【0732】
米国東海岸がん臨床試験グループのパフォーマンスステータス
ECOGパフォーマンスステータスは、スクリーニング時、各試験治療投与前、及び中止来院時に評価される。可能であれば、参加者のパフォーマンスステータスは、試験全体を通じて同じ人によって評価されることが推奨される。
【0733】
G.注入関連反応
治療用抗体の投与は、発熱、悪寒、めまい、高血圧、低血圧、呼吸困難、落ち着きのなさ、発汗、紅潮、発疹、頻脈、頻呼吸、頭痛、腫瘍痛、吐き気、及び/又は嘔吐などの症状を特徴とするIRRを引き起こす可能性がある。気管支痙攣、喉頭・咽頭刺激感、喘鳴、喉頭浮腫、心房細動などの呼吸器・心臓症状も起こることがある。このような反応は通常、注入中若しくは注入直後、又は試験治療注入後24時間以内に、主に初回注入時に発生する。発生率と重症度は、通常、その後の注入で減少する。
【0734】
また、参加者は免疫グロブリン(Ig)E媒介過敏症反応を発症する可能性がある。IRR はアナフィラキシー反応と区別できない場合がある。しかし、IgE媒介過敏症の場合、症状は通常、以前の曝露後に起こり、初回注入で起こることは非常にまれである。IgE媒介過敏症反応が確認された場合は、治療を永久に中止すべきである。注入関連反応の予防と管理に関する推奨事項を表22に示す。
【0735】
表22.注入関連反応の予防と管理に関する推奨事項
IRR=輸液関連反応;NCI CTCAE=国立がん研究所有害事象共通用語規準。
a症状の等級付けについては、NCI-CTCAE v5.0の尺度を参照のこと。
b支持療法:参加者は、過去4時間以内に投与されていない場合、アセトアミノフェン/パラセタモール及びジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤で治療されるべきである。臨床的に必要な場合には、静脈内輸液(例えば、生理食塩水)を投与してもよい。気管支痙攣、蕁麻疹、又は呼吸困難に対しては、施設内の診療に従って、抗ヒスタミン剤、酸素、コルチコステロイド(例えば、100mgのプレドニゾロン又は同等物を静脈内投与)、及び/又は気管支拡張剤を投与することができる。
【0736】
H.統計的考察
試料サイズの決定
予定されている登録参加者数は80名であり、600mg又は1200mgの用量でRO7247669 Q3Wの投与を受けるよう1:1の比率で無作為化される。主要評価項目の評価のため、参加者は最後の参加者から少なくとも6か月間追跡され、6か月間PFSを計算する際に管理上の打ち切りがないことが保証される。この試験は、2つの用量レベルを定性的に特徴づけ、用量間の明らかな違いを評価することを目的としている。しかし、この試験は臨床的に意味のある差異を全て検出するのに十分な能力を備えているわけではない。
【0737】
試料サイズの検討は、6か月前に打ち切りが発生しないと仮定して、6か月PFS評価項目の付近で行うことができる。打ち切りがなければ、6か月PFSは、最初の6か月以内に進行又は死亡を経験しなかった参加者の割合と一致し、これは二項分布で説明することができる。
【0738】
表23は、最も効果の低い群で6か月の時点で進行又は死亡を経験しなかった参加者の割合が約43%(RELATIVITY-047試験におけるニボルマブ群で観察された6か月PFS)であると仮定した、6か月PFSにおけるいくつかの考えられる真の根底にある差異に対する検出力を示している。
【0739】
この表は、6か月PFSの20%の差異を検出する検出力が70%であるのに対し(20%の両側アルファを仮定)、15%の差異が存在する場合は検出力が53%に低下することを示している。
【0740】
表23.いくつかの考えられる真の6か月PFS率に対する検出力(6か月前に打ち切りがないと仮定)
PFS=無増悪生存期間
【0741】
分析用セット
分析のため、母集団は表24に示すように定義されている。
【0742】
【0743】
人口統計及びベースライン特性
試験登録、試験薬投与、試験薬中止の理由、及び試験中止の理由が治療群ごとに要約される。人口統計特性(年齢、性別、自己申告の人種/民族を含む)及びベースライン疾患の特性(ECOGパフォーマンスステータスなど)が全体的及び治療群ごとに要約される。記述統計(平均、中央値、標準偏差、及び範囲)は連続データに対して表示され、頻度とパーセンテージはカテゴリデータに対して必要に応じて表示される。
【0744】
ベースライン測定値は、参加者が試験治療を受ける前に取得された最後の利用可能なデータである。
【0745】
有効性分析
主要有効性分析及び副次的有効性分析は、治療意図(ITT)集団の全参加者を含み、参加者は無作為化時に割り付けられた用量レベルに従ってグループ分けされる。有効性の統計解析法を表25に示す。
【0746】
表25.有効性の統計分析法
CI=信頼区間;CR=完全奏効;DCR=病勢コントロール率;DoR=奏功期間;
EORTC=欧州がん研究治療機構;
HR=ハザード比;ORR=客観的奏効率;OS=全生存期間;PFS=無増悪生存期間;
PR=部分奏効;RECIST=固形腫瘍における応答評価基準。
【0747】
実施例4:進行性肝がんを有する患者における複数の免疫療法に基づく治療の組み合わせの有効性と安全性を評価する、第Ib/II相、非盲検、多施設共同、無作為化包括的試験(MORPHEUS-Liver)
A.研究デザイン
GO42216は、進行性肝がんを有する患者における免疫療法に基づく治療の組み合わせの有効性、安全性、及び薬物動態を評価する第Ib/II相、非盲検、多施設共同、無作為化包括的試験である。この試験は、新しい治療法が利用可能になったときに新しい治療群を開設したり、最小限の臨床活性又は許容できない毒性を示した既存の治療群を閉鎖したり、患者集団を変更したり(例えば、事前の抗がん治療又はバイオマーカーの状態に関して)、他の型の進行性原発性肝がん(例えば、肝内胆管がん(iCCA))を有する患者の追加コホートを導入したりすることができる柔軟性を備えて設計されている。
【0748】
コホート1は、局所進行性又は転移性肝細胞癌(HCC)を有し、これまでに疾患に対する全身療法を受けていない患者を登録する(
図10及び11)。適格な患者は、最初にいくつかの治療群のうちの1つに無作為に割り当てられる(ステージ1)。ステージ1の間に臨床的利益の喪失又は許容できない毒性を経験する患者は、異なる治療組み合わせによる治療を受けるのに適格であり得る(ステージ2)。
【0749】
ステージ1
ステージ1では、患者は対照群(アテゾリズマブ+ベバシズマブ(Atezo+bev))又はベバシズマブとRO7247669の組み合わせ(RO7247669+bev)からなる実験群に無作為に割り当てられる。本試験の具体的な目的と対応する評価項目は表26に概説されている。
【0750】
表26.有効性の統計分析法
ADA=抗薬物抗体;DOR=奏効期間;HCC=肝細胞癌;HCC mRECIST=HCC特異的修正RECIST;iRECIST;NCI CTCAE v5.0=国立がん研究所有害事象共通用語規準、バージョン5.0;ORR=客観的奏効率;OS=全生存期間;PFS=無増悪生存期間;PK=薬物動態;RECIST v1.1=固形腫瘍における応答評価基準、バージョン1.1。注:1つの時点での全奏効が、RECIST v1.1及びHCC mRECISTを使用して治験責任医師によって評価される。
【0751】
ステージ1の間に約170~320人の患者が登録される。実験群への登録は、予備段階と拡大段階の2段階で行われる。ほとんどの治療群では、予備段階で約20人の患者が登録される。予備段階中に実験群で臨床活性が観察される場合、拡大段階中に約20人の追加の患者がその群に登録され得る。一部の群では、最低6人の患者における安全性評価を可能にするために無作為化が中断される。最小限の臨床活性又は許容できない毒性を有する実験群は、拡大を受けない。さらなるサブグループ分析を可能にするために、潜在的な予測バイオマーカーを含む人口統計学的及びベースライン特性に関して治療群間のバランスを確保するために、さらなる患者を登録することができる。
【0752】
プロトコールを修正することによって、試験期間中に新たな実験群を追加することができる。ステージ1の患者は治療群に無作為に割り当てられ、無作為化率は、登録を受け付けている実験群の数(例えば、予備段階からの結果の分析を待って、群が追加されるか、又は群への登録が中断される場合)に依存し、対照群に割り当てられる可能性は35%以下であるという規定がある。無作為化は、群特異的排除基準を考慮に入れる。患者は、その群について概説された除外基準のいずれかを満たす場合、特定の群に対して不適格である。治療の割り当てと無作為化の詳細を表27に示す。
【0753】
表27.ステージ1の治療レジメン
Atezo=アテゾリズマブ;Bev=ベバシズマブ;Q2W=2週間ごと;Q3W=3週間ごと。
e最低6人の患者での安全性評価を可能にするため、RO7247669 2100mg Q2W+Bev群では登録が一時停止される。
【0754】
対照群と実験群の患者は、放射線学的及び生化学的データ、局所生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態(例えば、疾患に続発する疼痛等の症候性の悪化)の統合評価の後に決定される許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで治療を受け続ける。がん免疫療法(CIT)によるT細胞応答(偽進行と呼ばれる)の状況では、免疫細胞浸潤によって引き起こされる腫瘍負荷の初期増加の可能性のために、固形腫瘍における応答評価基準、バージョン1.1(RECIST v1.1)による放射線学的進行は、真の疾患進行を示さない可能性がある。許容できない毒性がない場合、CIT併用による治療を受けている間にRECIST v1.1による疾患進行の基準を満たす患者は、以下の基準の全てを満たす場合、治療を継続することが許可されるであろう:
・ 全ての利用可能なデータの再検討後に決定される臨床的利益の証拠。
・ 疾患の明確な進行を示す症候及び徴候(検査値、例えば、新たな又は悪化する高カルシウム血症を含む)がないこと。
・ 疾患進行に起因し得るECOGパフォーマンスステータスの低下がないこと。
・ プロトコールで許可された医学的介入によって管理することができない重要な解剖学的部位(例えば、軟髄膜疾患)における腫瘍進行の欠如。
【0755】
安全性評価段階
RO7247669 2100mgを2週間ごと(Q2W)+Bev群における潜在的な重複毒性を考慮するため、安全性評価を可能にするために約6人の患者が登録された後、登録を中断する。安全性評価は、少なくとも1用量の治療(すなわち、所与の組み合わせに対して各薬剤の1回の用量)を受け、少なくとも1つの完全な治療サイクル中に安全性追跡評価を完了した最低6人の患者からの安全性データに基づく。組み合わせが十分に安全であると判定された場合、その群で登録が再開される。登録を再開しないという決定は、少なくとも3分の1の患者において管理不能であり、全ての試験薬の中止につながる試験治療関連のグレード3以上の事象に基づく。
【0756】
ステージ2
対照群又は実験群の患者で、ステージ1の間で臨床的利益(上記の通り)の喪失を経験した患者には、適格基準を満たし、ステージ2群が登録を受け付けていれば、ステージ2の間で異なる治療の組み合わせを受ける選択肢が与えられる。ステージ1の間で許容できない毒性を示した患者は、ステージ2の間で治療を受ける資格があり得る。
【0757】
ステージ2の治療は、患者がステージ1で臨床的利益の喪失又は許容できない毒性を経験してから3か月以内に開始しなければならず、許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで継続する。しかしながら、患者は可能な限り早くステージ2の治療を開始することが推奨される。現在利用可能なステージ2の治療レジメンはない。
【0758】
評価及び監視
全ての患者は、試験を通して有害事象について綿密に監視され、有害事象は、国立がん研究所有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events,Version 5.0(NCI CTCAE v5.0))に従って等級付けされる。サイトカイン放出症候群(CRS)の重症度はまた、米国移植細胞療法学会CRSコンセンサス等級スケールに従って等級付けされる。
【0759】
患者は、最初の48週間は6週間ごとに(サイクル1の1日目から)、その後は6週間ごと又は12週間ごとに腫瘍評価を受ける。応答はRECIST v1.1及びHCC特異的修正RECIST(HCC mRECIST)を使用して評価される。
【0760】
ベースライン腫瘍組織試料は、好ましくは試験登録時に行われた生検によって全ての患者から収集される。これらの試料はバイオマーカー研究のために利用される。
【0761】
治療剤の薬物動態(PK)特性及び/又は免疫原性を特性評価するために、試験治療の投与の前及び投与中の様々な時点で血液試料を取得する。
【0762】
リアルタイムの安全性データ及び利用可能なPKデータの再検討に基づいて、治療レジメンを適切と思われるように修正することができる。
【0763】
標的集団
ステージ1の組み入れ基準
患者は、ステージ1に適格であるためには、以下の基準の全てを満たさなければならない:
・ 年齢≧18歳。
・ 無作為化前7日以内の0又は1のECOGパフォーマンスステータス。
・ 肝硬変患者における組織学/細胞学によって、又は臨床的に米国肝疾患研究学会(AASLD)基準によって確認された診断を伴う局所進行性若しくは転移性及び/又は切除不能HCC。診断の組織学的確認がない肝硬変患者については、AASLD基準に従って臨床的確認が必要である。
・ 無作為化前7日以内のChild-PughクラスA。
・ 治癒的外科療法及び/又は局所領域療法に適していない疾患。外科的及び/又は局所領域療法後に進行性疾患を有する患者が適格である。
・ HCCに対する以前の全身治療(全身治験薬を含む)なし。ラベルに記載されている抗がん活性を有する伝統的な漢方薬を含むハーブ療法による前治療は、これらの薬剤が無作為化前に中止されることを条件として許容される。
・ 平均余命3か月以上。
・ 中央検査によるPD-L1及び/又は追加のバイオマーカーの状態の決定に適した代表的な腫瘍標本の入手可能性。ベースライン腫瘍組織試料は、好ましくは試験登録時に行われた生検によって全ての患者から収集される。
【0764】
ステージ1及びステージ2の組み入れ基準
患者は、コホート1に適格であり且つコホート2に適格であるためには、以下の基準の全てを満たさなければならない:
・ 試験プロトコールを遵守する能力。
・ RECIST v1.1による測定可能な疾患(少なくとも1つの標的病変)。以前に局所領域療法(例えば、高周波アブレーション、経皮エタノール又は酢酸注入、凍結融解壊死治療、高密度焦点式超音波療法、動脈化学塞栓療法、経動脈塞栓術など)を受けた患者は適格である。ただし、標的病変が以前に局所領域療法で治療されていない場合、又は局所療法の領域内の標的病変がその後RECIST v1.1に従って進行していることを条件とする。
・ 試験治療の開始の前、7日以内に得られた、以下の臨床検査結果によって定義される適切な血液学的機能及び終末器官機能:
- 顆粒球コロニー刺激因子支持なしでANC≧1.5×109/L(≧1500/μL)。
- リンパ球数≧0.5×109/L(≧500/μL)。
- 輸血なしで血小板数≧75×109/L(≧75,000/μL)。
- 輸血なしでヘモグロビン≧90g/L(≧9.0g/dL)。
- この基準を満たすためには、患者はスクリーニング中又はスクリーニング前2週間以内に輸血を必要とした患者であってはならない。
- AST、ALT、及びALP≦5×正常値上限(ULN)。
- ビリルビン≦3×ULN。
- クレアチニン≦1.5×ULN又はクレアチニンクリアランス≧50mL/分(Cockcroft-Gault式で計算)。
- 輸血なしでアルブミン≧28g/L(≧2.8g/dL)。
- 抗凝固療法を受けていない患者について:INR又はaPTT≦1.5×ULN。
・ B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)のスクリーニング検査により確認された、肝炎のウイルス学的状態を文書化したもの。活動性HBV患者の場合:スクリーニング中のHBV DNA<500IU/mL、無作為化の少なくとも14日前に抗HBV治療を開始していること、抗HBV治療を継続する意思があること(地域の標準治療による;例えばエンテカビル)。感染が回復した(検出可能な抗体によって証明される)又は慢性感染している(検出可能なHCV RNAによって証明される)HCV患者が適格である。
・ スクリーニング時のHIV検査が陰性。
・ 妊娠可能な女性の場合:禁欲を続けること(異性間の性交を控える)又は避妊手段を使用することに同意する:
・ 男性の場合:禁欲を続けること(異性間性交を控える)又は避妊手段を使用することに同意し、且つ精子の提供を控えることに同意する。
【0765】
ステージ2の選択基準
患者は、ステージ2に適格であるためには、以下の基準の全てを満たさなければならない:
・ ECOGパフォーマンスステータスが0、1、又は2。
・ アテゾリズマブ又はRO7247669に関連しない許容できない毒性を経験した後、又はステージ1の治療を受けている間に臨床的利益の喪失を経験した後、3か月以内にステージ2の治療を開始できる能力。
・ ステージ1の中止時に実施される生検からの腫瘍標本の入手可能性(臨床的に可能な場合)。
【0766】
除外基準
以下に概説する基準のいずれかを満たしている患者は、ステージ1の間の特定の治療群への登録、又はステージ2の間の登録から除外される。
【0767】
ステージ1の除外基準
・ 以下の基準のいずれかを満たす患者はステージ1から除外される:
・ CD137アゴニスト又は抗CTLA-4、抗PD-1、及び抗PD-L1治療用抗体を含む免疫チェックポイント遮断療法による前治療。
・ 試験治療開始前28日以内に治験治療による治療。
・ 試験治療開始前28日以内の肝臓への局所領域療法による治療(例えば、高周波アブレーション、経皮エタノール又は酢酸注入、凍結融解壊死治療、高密度焦点式超音波療法、動脈化学塞栓療法、経動脈塞栓術など)、又はそのような手技の副作用から回復していないこと。
・ 未治療又は治療が不完全な食道静脈瘤及び/又は胃静脈瘤で出血を伴うもの、又は出血の危険性が高いもの。
・ 患者は登録前に食道胃十二指腸内視鏡検査(EGD)を受け、全ての大きさの静脈瘤(小さいものから大きいものまで)が評価され、地域の標準治療に従って治療されなければならない。試験治療の開始前6か月以内にEGDを受けた患者は、この手技を繰り返す必要はない。
・ 試験治療開始前6か月以内の食道及び/又は胃静脈瘤による以前の出血事象。
・ 任意のグレードの脱毛症を除き、グレード1以上に回復していない、以前の抗がん治療からの有害事象。
・ コントロール不十分な高血圧。収縮期血圧(BP)>150mmHg及び/又は拡張期血圧>100mmHg(2回以上のセッションでの少なくとも3回の測定値の平均)と定義される。これらのパラメーターを達成するための降圧療法が許容される。
・ 高血圧性クリーゼ又は高血圧性脳症の病歴。
・ 試験治療開始前6か月以内の有意な血管疾患(例えば、外科的修復を必要とする大動脈瘤又は最近の末梢動脈血栓症)。
・ 試験治療開始前1か月以内の喀血の病歴(1回あたり2.5mL以上の鮮紅色の血液)。
・ 出血性素因又は有意な凝固障害の証拠(治療的抗凝固療法の非存在下)。
・ 現在又は最近(試験治療の開始前10日以内)のアスピリンの使用(>325mg/日)、又はクロピドグレル、ジピラミドール、チクロピジン、若しくはシロスタゾールによる治療。
・ 現在又は最近(試験治療開始の10日前以内)、(予防ではなく)治療目的で経口又は非経口の抗凝固薬又は血栓溶解剤を全用量使用している。静脈アクセス装置の開存性のための予防的抗凝固療法は、試験治療開始前14日以内に薬剤の活性がINR<1.5xULNとなり、aPTTが正常範囲内である場合に許可される。抗凝固薬又は血栓溶解療法の予防的使用については、現地のラベルに記載されている承認用量を使用することができる。
・ 試験治療開始前3日以内の、血管アクセス装置の設置を除く、コア生検又は他の軽微な外科手技。
・ 試験治療開始前6か月以内の腹部又は気管食道瘻、胃腸(GI)穿孔、又は腹腔内膿瘍の病歴。
・ 腸閉塞の病歴及び/又は基礎疾患に関連する亜閉塞症候群若しくは閉塞症性候群を含む胃腸閉塞の臨床徴候若しくは症状、又は試験治療開始前の定期的な非経口水分補給、非経口栄養若しくは経管栄養の必要性。初診時に閉塞性下症候群又は閉塞性症候群の徴候又は症状を有する患者、あるいは腸閉塞を有する患者は、症状の消散のために確定的治療(外科的治療)を受けた場合は登録され得る。
・ 穿刺又は最近の外科手技によって説明されない腹部遊離空気の証拠。
・ 重篤な治癒していない創傷若しくは裂開性の創傷、進行性の潰瘍、又は未治療の骨折。
・ ディップスティック尿検査で2+以上の蛋白、及び24時間の採尿で1.0g以上の蛋白によって実証される、グレード2以上の蛋白尿。スクリーニング時のディップスティック尿検査で2+以上の蛋白を有する全ての患者は、蛋白について24時間の尿採取を受けなければならない。ディップスティック尿検査で蛋白が2+未満の患者は試験に適格である。
・ 主要な気道若しくは血管を侵す転移性疾患、又は中央に位置する体積の大きい縦隔腫瘍塊(気管分岐部からから30mm未満)。門脈又は肝静脈に脈管侵襲のある患者も登録可能である。
・ 限定されないが、消化性潰瘍疾患、憩室炎又は大腸炎を含む、試験治療の開始前6か月以内の腹腔内炎症過程の病歴。
・ 試験治療開始前7日以内の骨病変に対する緩和的放射線療法を除き、試験治療開始前28日以内の放射線療法、又は試験治療開始前60日以内の腹部/骨盤放射線療法。
・ 試験治療の開始前28日以内の主要な外科手技、切開生検、又は重大な外傷性損傷;又は試験治療の開始前60日以内の腹部手術、腹部介入又は重大な腹部外傷性損傷;又は、試験の過程における主要な外科手技の必要性の予測、又はそのような治療の副作用からの回復の欠如。
・ 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による慢性的な毎日の治療。頭痛や発熱などの病状の症状緩和を目的としたNSAIDの時折の使用は認められている。
【0768】
ステージ1及びステージ2の除外基準
以下の基準のいずれかを満たす患者は、ステージ1及びステージ2から除外される:
・ 既知の線維層状HCC、肉腫様HCC、又は胆管癌とHCCの混合。
・ 肝性脳症の病歴。
・ 中等度又は重度の腹水。
・ HBVとHCVの同時感染。HCV感染の病歴があるが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でHCV RNAが陰性である患者は、HCV非感染とみなされる。
・ 症候性、未治療、又は活発に進行する中枢神経系(CNS)転移。治療されたCNS病変を有する無症候性患者は、以下の基準の全てが満たされるならば適格である:
- RECIST v1.1による測定可能な疾患はCNS外に存在しなければならない。
- 患者は頭蓋内出血又は脊髄出血の病歴がない。
- 患者は、試験治療の開始前7日間以内の定位放射線療法、試験治療の開始前14日間以内の全脳放射線療法、又は試験治療の開始前28日間以内の神経外科的摘出を受けたことがない。
- 患者は、CNS疾患の治療としてのコルチコステロイドに対する継続的な要求がない。安定な用量での抗痙攣療法が許容される。
- 転移は小脳又はテント上領域に限定される(すなわち、中脳、橋、延髄、又は脊髄への転移がない)。
- CNSに向けられた治療の完了と試験治療の開始との間の暫定進行の証拠はない。スクリーニング時に新たに検出されたCNS転移を有する無症候性患者は、放射線療法又は手術を受けた後に試験に適格であり、スクリーニング脳スキャンを繰り返す必要はない。
・ 軟髄膜疾患の病歴。
・ 制御されない腫瘍関連疼痛。鎮痛薬を必要とする患者は、試験登録時に安定したレジメンを受けていなければならない。緩和的放射線療法に適した症候性病変(例えば、神経インピンジメントを引き起こす骨転移又は転移)は、登録前に治療されなければならない。患者は、放射線の影響から回復されなければならない。必要な最小回復期間は定められていない。さらなる成長(例えば、脊髄圧迫に現在関連していない硬膜外転移)を伴う機能障害又は難治性疼痛を引き起こす可能性が高い無症候性転移性病変は、登録前に適切な場合、局所領域治療について検討されるべきである。
・ 制御されていない胸水、心内膜液滲出又は腹水があり、反復的なドレナージ処置(月1回又はそれ以上の頻度)が必要である。留置カテーテル(例えば、PLEURX(登録商標))を有する患者は許容される。
・ 制御不能又は症候性の高カルシウム血症(イオン化カルシウム>1.5mmol/L、カルシウム>12mg/dL、又は補正カルシウム>ULN)。
・ 重症筋無力症、筋炎、自己免疫性肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、ギラン・バレー症候群、又は多発性硬化症を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患又は免疫不全が活動性であるもの、又はその病歴、ただし、以下を除く:
- 甲状腺補充ホルモンを服用している自己免疫関連甲状腺機能低下症の病歴を有する患者が試験に適格である。
- インスリンレジメンを受けている、制御されている1型糖尿病を有する患者は、本試験に適格である。
- 皮膚症状のみ見られる湿疹、乾癬、慢性単純性苔癬又は白斑を有する患者(例えば乾癬性関節炎を有する患者は除外される)は、以下の条件を全て満たす場合に限り、本試験に適格である:
- 発疹が覆っている体表面積は10%未満でなければならない。
- 疾患はベースラインで十分に制御されており、低効力の局所コルチコステロイドのみを必要とする。
- 過去12か月以内に、ソラレン+紫外線A照射、メトトレキサート、レチノイド、生物学的薬剤、経口カルシニューリン阻害剤、又は高力価若しくは経口コルチコステロイドを必要とする基礎疾患の急性増悪が発生していない。
・ 特発性肺線維症、器質化肺炎(例えば、閉塞性細気管支炎)、薬物誘発性間質性肺炎(drug-induced pneumonitis)、若しくは特発性間質性肺炎の病歴、又はスクリーニング胸部コンピュータ断層撮影スキャンでの活動性間質性肺炎の証拠。放射線照射野における放射線肺臓炎(線維症)の病歴は許容される。
・ 活動性結核(TB):精製蛋白誘導体(PPD)皮膚検査又はTB血液検査で陽性と証明され、試験治療開始前3か月以内に胸部X線検査で陽性と確認される。PPD皮膚検査又はTB血液検査が陽性で、その後胸部X線検査が陰性となった患者は、本試験に適格となる場合がある。
・ 試験治療の開始前3ヶ月以内の有意な心血管疾患(New York Heart Association Class II以上の心疾患、心筋梗塞、脳血管障害等)、不安定な不整脈又は不安定狭心症。
・ 試験治療の開始前4週間以内の大きな外科手技(診断以外)、又は試験中の大きな外科的治療の必要性の予想。
・ 適切に治療された子宮頸部上皮内癌、非黒色腫皮膚癌、限局性前立腺がん、上皮内乳管癌、又はステージI子宮がん等、転移又は死亡のリスクが無視できる(例えば、5年OS率>90%)悪性腫瘍を除いて、スクリーニング前5年以内のHCC以外の悪性腫瘍の病歴。
・ 試験治療の開始前4週間以内の重度の感染症(感染症、菌血症、又は重度の肺炎の合併症のための入院が含まれるが、これらに限定されない)、又は患者の安全性に影響を及ぼし得る任意の活動性感染症。
・ 試験治療開始前2週間以内の治療用経口又はIV抗生物質による治療。
【0769】
予防用抗生物質(例えば、尿路感染症又は慢性閉塞性肺疾患の増悪を予防するため)を受ける患者は試験に適格である。
・ 事前の同種異系幹細胞又は固形臓器移植。
・ 治験薬の使用を禁忌にする任意の他の疾患、代謝機能不全、身体検査所見、又は臨床検査所見は、結果の解釈に影響を及ぼし得るか、又は患者を治療合併症のリスクを高くし得る。
・ 妊娠中若しくは授乳中、又は試験中に妊娠する予定がある。
・ 試験治療開始前の4週間以内に弱毒化生ワクチンによる治療。
・ キメラ若しくはヒト化抗体又は融合タンパク質に対する重度のアレルギーアナフィラキシー反応の病歴。
・ チャイニーズハムスター卵巣細胞生成物又は組換えヒト抗体に対する既知の過敏症。
・ 試験薬のいずれか又はその添加物のいずれかに対する既知のアレルギー又は過敏症。
・ 試験治療の開始前の4週間以内又は5つの薬物除去半減期(いずれか長い方)以内の全身免疫刺激剤(限定されないが、インターフェロン及びインターロイキン2を含む)による治療
・ 以下を除いて、試験治療の開始前2週間以内の全身免疫抑制薬(限定されないが、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド及び抗腫瘍壊死因子剤を含む)による治療、又は試験治療中の全身免疫抑制薬の必要性の予測:
- 急性低用量全身免疫抑制薬又は1回パルス用量の全身免疫抑制薬(例えば、造影剤アレルギーのための48時間のコルチコステロイド)を受けた患者は適格である。
- ミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、慢性閉塞性肺疾患若しくは喘息のためのコルチコステロイド、又は起立性低血圧若しくは副腎機能不全のための低用量コルチコステロイドを受けた患者は試験に適格である
・ 試験治療の開始前8週間以内のグレード≧3の出血又は出血事象。
・ ステージ2に入る患者:以下の例外を除いて、同意時にグレード1以上又はベースラインまで回復していない免疫療法関連有害事象:補充療法で適切に管理されている進行中の内分泌事象を有する患者が適格である。
【0770】
RO7247669を含む群の除外基準
以下の基準のいずれかを満たす患者は、ステージ1の間、RO7247669を含む群から除外される:
・ 抗リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)剤による前治療。
・ 最初の試験薬投与から6か月以内に経胸壁心エコー図(TTE)又はマルチゲート取得(MUGA)スキャン(TTEが望ましい検査)で評価された左室駆出率(LVEF)が50%未満。
・ トロポニンT(TnT)又はトロポニンI(TnI)>施設内ULN。TnT又はTnIレベルがULNの1倍超から2倍未満の患者は、24時間以内の反復レベルが1×ULN以下であれば適格である。24時間以内の反復レベルがULNの1倍超から2倍未満である場合、患者は心臓の評価を受け、治療を考慮することができる。
【0771】
試験終了及び試験期間
この試験の終了日は、電話又はクリニックで行われる生存追跡訪問を含め、最後の患者が最後の訪問を完了した日として定義される。最初の患者のスクリーニングから試験終了までの試験の総期間はおよそ3~5年と予想される。
【0772】
RO7247669の用量とスケジュールの理論的根拠
RO7247669は、HCC患者の治療のためにベバシズマブと組み合わせて投与した場合のRO7247669の最適用量を同定するため、600mg Q3W(各21日サイクルの1日目に600mg)、2100mg Q2W(各28日サイクルの1日目と15日目に2100mg)又は1200mg Q3W(各21日サイクルの1日目に1200mg)の固定用量で投与される。NP41300試験から入手可能な臨床薬物動態、有効性、及び安全性データに基づいて、600mg Q3Wの固定用量レジメンが選択された。本試験の用量漸増パートA段階では、RO7247669は患者の忍容性は良好であり、RO7247669に関連する特異的な安全性の懸念は確認されなかった。2週間ごと(Q2W)の最高用量2100mgまでDLTは観察されず、MTDは同定されなかった。放射線学的PRによって測定した抗腫瘍活性は、600mg Q2Wの用量から観察された。RO7247669の薬物動態は、NP41300試験で試験された用量範囲内で用量直線的であった。推定された標的特性を使用して、腫瘍内PD-1及びLAG3標的関与のさらなるモデリングを行った。RO7247669の600mg Q3Wの用量とスケジュールにより、治療期間を通じて腫瘍部位において90%を超えるPD-1及びLAG3標的結合が生じると推定された。さらに、RO7247669は、優良試験所基準の毒性試験と用量範囲決定サル毒性試験の両方において、最高用量の100mg/kgまで良好な忍容性を示した。毒性学的所見は、市販のCPIを用いたカニクイザル試験で報告された所見と一致していた。
【0773】
ベバシズマブの用量とスケジュールの理論的根拠
Q3W治療群では、ベバシズマブは、ベバシズマブの承認用量である15mg/kg Q3W(各21日サイクルの1日目に15mg/kg)の用量で投与される。
【0774】
Q2W治療群では、ベバシズマブは、ベバシズマブの承認用量である10mg/kg Q2W(各28日サイクルの1日目と15日目に10mg/kg)の用量で投与される。
【0775】
対照群(atezo+bev)
アテゾリズマブとベバシズマブ(Atezo+bev)群の患者は、放射線学的及び生化学的データ、局所生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態(例えば、疾患に続発する疼痛等の症候性の悪化)の統合評価の後に決定される許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで、表28に概説される治療を受ける。無作為化後7日以内に治療を開始することが推奨される;しかし、試験治療の最初の用量は、コア生検又は他の外科手技後3日以内に行われるべきではない。
【0776】
表28.atezo+bev群の治療レジメン
Atezo+Bev=アテゾリズマブ+ベバシズマブ。
a各サイクルの1日目に、アテゾリズマブ注入の完了から少なくとも5分後にベバシズマブが投与される。
【0777】
RO7247669 2100mg Q2W+bev
RO7247669 2100 Q2W+bev群の患者は、放射線学的及び生化学的データ、局所生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態(例えば、疾患に続発する疼痛等の症候性の悪化)の統合評価の後に決定される許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで、表29に概説される治療を受けることになる。無作為化後7日以内に治療を開始することが推奨される;しかし、試験治療の最初の用量は、コア生検又は他の外科手技後3日以内に行われるべきではない。
【0778】
表29.RO7247669 2100mg Q2W+bev群の治療レジメン
Q2W=2週間ごと。RO7247669+Bev=RO7247669+ベバシズマブ。
aサイクル1の1日目に、RO7247669注入の完了から少なくとも90分後にベバシズマブが投与される。最初の注入が注入関連反応(IRR)なしで許容される場合、ベバシズマブはRO7247669注入の少なくとも60分後に投与される。2回目の注入がIRRなしで許容される場合、ベバシズマブはその後の全てのRO7247669注入の少なくとも30分後に投与される。
【0779】
RO7247669 1200mg Q3W+bev
RO7247669 1200 Q3W+bev群の患者は、放射線学的及び生化学的データ、局所生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態(例えば、疾患に続発する疼痛等の症候性の悪化)の統合評価の後に決定される許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで、表30に概説される治療を受ける。無作為化後7日以内に治療を開始することが推奨される;しかし、試験治療の最初の用量は、コア生検又は他の外科手技後3日以内に行われるべきではない。
【0780】
表30.RO7247669 1200mg Q3W+bev群の治療レジメン
Q3W=3週間ごと。RO7247669+Bev=RO7247669+ベバシズマブ。
aサイクル1の1日目に、RO7247669注入の完了から少なくとも90分後にベバシズマブが投与される。最初の注入が注入関連反応(IRR)なしで許容される場合、ベバシズマブはRO7247669注入の少なくとも60分後に投与される。2回目の注入がIRRなしで許容される場合、ベバシズマブはその後の全てのRO7247669注入の少なくとも30分後に投与される。
【0781】
RO7247669 600mg Q3W+bev
RO7247669 600 Q3W+bev群の患者は、放射線学的及び生化学的データ、局所生検結果(利用可能な場合)、及び臨床状態(例えば、疾患に続発する疼痛等の症候性の悪化)の統合評価の後に決定される許容できない毒性又は臨床的利益の喪失まで、表31に概説される治療を受ける。無作為化後7日以内に治療を開始することが推奨される;しかし、試験治療の最初の用量は、コア生検又は他の外科手技後3日以内に行われるべきではない。
【0782】
表31.RO7247669 600mg Q3W+bev群の治療レジメン
Q3W=3週間ごと。RO7247669+bev=RO7247669+ベバシズマブ。
aサイクル1の1日目に、RO7247669注入の完了から少なくとも90分後にベバシズマブが投与される。最初の注入が注入関連反応(IRR)なしで許容される場合、ベバシズマブはRO7247669注入の少なくとも60分後に投与される。2回目の注入がIRRなしで許容される場合、ベバシズマブはその後の全てのRO7247669注入の少なくとも30分後に投与される。
【0783】
B.統計的方法
一次分析:
主要有効性評価項目は、表26に定義されているように、ステージ1の間の客観的奏効率(ORR)である。
ORRは、RECIST v1.1に従って決定される。応答評価が欠落しているか又は応答評価がない患者は、非応答者として分類される。完全奏効又は部分奏効を有する患者の割合であるORRは、95%CI(Clopper-Pearson法)とともに各群について計算される。実験群と対照群との間のORRの差も、二項分布の正規近似を使用して90%CIとともに計算される。
【0784】
試料サイズの決定
この試験は、進行性肝がんを有する患者に投与した場合の免疫療法に基づく治療の組み合わせに関する予備的な有効性、安全性、及びPKデータを得るように設計されている。コホート1は、これまでに全身療法を受けていない局所進行性又は転移性HCCを有する患者からなる。試験中、約170~320人の患者を無作為に対照群及び実験群に割り付ける。
【0785】
中間解析
試験の間に中間分析が実施され、少なくとも1つの実験群が予備段階での登録を完了し、患者が最低6週間追跡されたときに、最も早い(ステージ1)中間分析が行われることが予想される。事後確率を使用して、対照群と比較した実験群における臨床活性の暫定分析に基づいて、治療群へのさらなる登録を導くことができる。中間分析が、実験群の活性が対照群の活性よりも高いことを示唆する場合、実験群にさらに20人の患者を登録することができる。
【0786】
約15人の患者がステージ2治療群に登録され、最低6週間追跡された後にも中間分析が行われる。
ステージ2の治療群で臨床活性が観察されない場合、その群へのさらなる登録を停止する。
【0787】
C.背景と理論的根拠
患者集団の理論的根拠
本試験では、PD-L1発現やHCCの病因にかかわらず、これまでに全身療法を受けていない局所進行性又は転移性HCC患者が登録されている。この広範な集団は、HCC患者におけるアテゾリズマブとベバシズマブの併用療法を評価する2つの試験(最初の第Ib相試験であるGO30140試験、及びソラフェニブと比較して併用療法が統計学的に有意且つ臨床的に意味のある利益を示した無作為化第III相試験であるYO40245試験)に登録された集団と類似している。
【0788】
進行性HCCは、満たされていない医療ニーズの高い不治の病である。ソラフェニブは現在、進行性HCCを有する患者の第一選択治療として承認されており、この疾患における標準治療とみなされている。しかし、予後は依然として不良で、全生存期間の中央値は6.5~10.7か月であり、治療には重大な毒性が伴う。アテゾリズマブ+ベバシズマブの臨床的利益が最近証明されたにもかかわらず、局所進行性又は転移性HCC患者に対する、より効果的で忍容性の高い治療の組み合わせレジメンが引き続き必要とされている。
【0789】
この試験に登録する患者は、Child-PughクラスAと定義される適切な肝機能を有することも求められる。Child-PughクラスB又はクラスCの肝機能を有する患者は、基礎となる肝硬変による死亡リスクが高く、治療に関連した抗腫瘍効果の適切な評価を混乱させる可能性がある;したがって、これらの患者は本試験から除外される。提案された試験集団は、米国肝疾患研究学会(AASLD)が招集した専門家パネルが指摘したように、HCCに対する新規薬剤又は薬剤の組み合わせの初期試験において推奨される患者集団である(Llovet et al.,N Engl J Med,359:378-380,2008)。
【0790】
初期の放射線学的進行を超える免疫療法に基づく治療の理論的根拠
免疫療法剤の研究では、完全奏功、部分奏効(PR)、及び安定疾患はそれぞれ、腫瘍負荷の明らかな増加の放射線学的証拠の後に起こることが示されている。T細胞応答の状況における免疫細胞浸潤によって引き起こされる腫瘍負荷のこの初期の増加は、偽進行と呼ばれている(Hales et al.,Ann Oncol,21:1944-1951,2010)。いくつかの腫瘍型において腫瘍成長とそれに続く応答の証拠が観察された。さらに、進行の放射線学的証拠を有するいくつかの応答患者において、新たな病変又は既存の病変における新たな成長領域の生検により、免疫細胞が明らかにされ、生存可能ながん細胞は明らかにされなかった。偽進行後の応答の可能性のために、この試験は、免疫療法に基づく治療群に無作為に割り当てられた患者が、利益とリスクの比が良好であると判断されれば、RECIST v1.1による明らかな放射線学的進行後に併用治療を継続することを可能にする。
【0791】
HCC特異的修正RECISTを使用する理論的根拠
進行性HCCの場合、RECISTはSHARP試験やソラフェニブの他の臨床研究で実証された臨床的利益との相関が低いことが判明した(Llovet et al.,N Engl J Med,359:378-380,2008;Liu et al.,Clin Cancer Res,20:1623-1631,2014;Takada et al.,BMC Res Notes,8:609,2015)。同様の所見は、高周波アブレーション及び化学塞栓術などのHCCの局所療法後にも見られた。これらの治療法は腫瘍の血管分布を減少させ、必ずしも全体的な腫瘍サイズの変化を引き起こすことなく壊死を引き起こす。HCCにおける臨床試験のデザインに共通の枠組みを提供するために、AASLDは、評価のための改善された評価項目を提供するために腫瘍の生存可能な部分のみを定量化する修正基準(HCC mRECIST)を提案した(Llovet et al.,J Natl Cancer Inst,100:698-711,2008;Lencioni and Llovet,Semin Liver Des,30:52-60,2010;Lencioni et al.,J Hepatol,66:1166-1172,2017)。
【0792】
ベバシズマブの抗血管新生作用機序を考慮すると、探索的有効性評価項目には、HCC mRECISTに基づく分析が含まれる。これらの分析により、局所進行性又は転移性HCCを有する患者における標準的なRECIST v1.1と比較して、改善された有効性の尺度としてのHCC mRECISTの評価が可能になる。
【0793】
肝臓がんの背景
肝臓がんは、世界で5番目に多いがんであり、がん関連死の2番目に多い原因であり、年間854,000件の新規症例及び810,000件の死亡がある。肝細胞癌(HCC)は、原発性肝臓がんの最も一般的な形態であり、全ての原発性肝悪性腫瘍の約90%を占める。あまり一般的でない原発性肝臓がんには、肝内胆管がん(iCCA)、血管肉腫及び肝芽腫が含まれる。診断時に、原発性肝臓がんを有するほとんどの患者は進行性疾患を有しており、治癒的療法による治療が推奨されない段階である。WHOは、2030年には100万人以上が肝臓がんで死亡すると推定しており、世界的な公衆衛生上の重大な問題を浮き彫りにしている(Villanueva,N Engl J Med,380:1450-1462,2019)。
【0794】
肝細胞癌の背景
HCCの大部分は、B型肝炎ウイルス(HBV)又はC型肝炎ウイルス(HCV)感染やアルコール乱用の結果として、基礎肝疾患を有する患者に発生する。HBV感染は世界中のHCC症例の大部分を占めている;しかし、欧米諸国と日本では、HCVがHCCの主な原因となっている(Villanueva,N Engl J Med,380:1450-1462,2019)。HBVワクチンの普遍的接種とHCVに対する直接作用型抗ウイルス剤の広範な導入は、HCCの病因論的状況を変える可能性がある。しかし、HCCの危険因子である非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の発生率は世界的に増加しており、NAFLDは間もなく西側諸国で肝がんの主な原因となるだろう(Villanueva,N Engl J Med,380:1450-1462,2019)。
【0795】
HCCは、固形腫瘍の中で最も高い死亡率対発生率(0.98)を示す致死性の高い疾患である(Kamangar et al.,J Clin Oncol,24:2137-2150,2006)。HCCを初めて発症した患者の最大80%は、症状の出現が遅いため、切除不能又は転移性の進行した病変を有している。HCC患者の大多数は基礎疾患の肝硬変を有しており、悪性腫瘍と肝硬変の両方の管理が必要であるため、HCCは医学的に複雑で治療が難しい疾患である。米国では、HCC患者の5年全生存(OS)率は17%であり、遠隔転移が存在する場合、実質的にわずか3%に低下する(Siegel et al.,CA Cancer J Clin,66:7-30,2016)。中国では、HCC患者の5年OS率は10.1%である(Chen et al.,CA Cancer J Clin,66:115-132,2016)。
【0796】
進行性肝細胞癌に対する第一選択治療
ソラフェニブは経口マルチキナーゼ阻害剤であり、現在、進行性HCC患者の第一選択治療の世界標準治療と考えられている。ソラフェニブの有効性は、2つの大規模な多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験である、ソラフェニブHCC評価無作為化プロトコール(SHARP)試験及びアジア太平洋地域で実施された試験で証明されている。両試験とも、プラセボと比較してソラフェニブの生存上の利益を実証した。SHARP試験では、OS中央値はソラフェニブで10.7か月だったのに対し、プラセボでは7.9か月であり;アジア太平洋地域の試験では、OS中央値は6.5か月対4.2か月であった。放射線学的進行までの時間の中央値における利点も実証された;SHARP試験では5.5か月対2.8か月、アジア太平洋試験では2.8か月対1.4か月であった。客観的奏効率(固形腫瘍における応答評価基準、バージョン1.0(RECISTv1.0)による)は、SHARP試験では2.3%(患者299名中7名)、アジア太平洋試験では3.3%(患者150名中5名)であった。アジア太平洋地域の試験におけるOSと利益の持続期間が数値的に短いのは、患者は募集時点でより進行した疾患を有していたこと、及び潜在的には病因や支持療法における地域差に起因する可能性がある(Llovet et al.,N Engl J Med,359:378-380,2008;Cheng et al.,Eur J Cancer,48:1452-1465,2009;Cheng et al.,Lancet Oncol,10:25-34,2012)。
【0797】
これら2つの第III相試験から報告された生存利益にもかかわらず、既知の毒性のため、ソラフェニブの全体的な利益とリスクの比は控えめである。両方のソラフェニブ研究で共通して報告された有害事象には、手足の皮膚反応、下痢、高血圧、体重減少、疲労、食欲不振、脱毛症、吐き気、及び発疹/落屑が含まれる。ソラフェニブの承認以来、スニチニブ、ブリバニブ、リニファニブを含む、ソラフェニブとの直接比較で否定的な第III相試験が多数行われてきた(Cheng et al.,J Clin Oncol,31:4067-4075,2013;Johnson et al.,J Clin Oncol,31:3517-3524,2013;Cainap et al.,J Clin Oncol,33:172-179,2015)。多重標的化受容体型チロシンキナーゼ阻害剤であるレンバチニブによる第一選択治療は、OSにおいてソラフェニブに対して非劣性であることが示されたが、標準治療と比較したOSにおける臨床的に意味のある差は、最近まで見いだせないままであった(Kudo et al.2018)。
【0798】
YO40245試験(IMbrave150)は、進行性又は転移性HCCを有する患者における第一選択治療として、アテゾリズマブ+ベバシズマブ対ソラフェニブを評価する無作為化第III相試験である。この試験は、ソラフェニブとの直接比較における新規な治療の組み合わせについて、OS及び無増悪生存期間(PFS)における統計学的に有意で臨床的に有意な改善を実証した最初の試験である。一次分析の時点では、ソラフェニブ群と比較して、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群の死亡リスクは42%減少していた(層別化ハザード比(HR)=0.58(95%CI:0.42~0.79);p=0.0006;OS中央値、推定不能(NE)対13.24か月)。独立した審査機関が評価したRECIST v1.1によるPFSでも、併用治療に有利な統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善が実証された(層別化HR=0.59(95%CI:0.47~0.76];p<0.0001;PFS中央値、6.83対4.27か月)。全体として、HCCにおけるアテゾリズマブとベバシズマブの併用療法は、管理可能な毒性で一般に良好な忍容性を示し、安全性プロファイルは個々の試験治療の既知のリスク及び基礎疾患と一致していた(Finn et al.,N Engl J Med,382:1894-1905,2020)。
【0799】
研究の理論的根拠
がん免疫療法(CIT)は明確な臨床的有効性を示しており、複数の進行性悪性腫瘍で有意な生存利益が観察されている。現在、一般的なCITアプローチは、PD-L1/PD-1などのT細胞阻害因子を標的とすることで免疫回避機構を回避し、抗腫瘍応答を再活性化するものである。これらの標的は、様々ながんの適応症に対して顕著な臨床的治療の成功をもたらしてるが、進行中の研究では、継続的な抗腫瘍免疫応答の生成には、一連の段階的事象が必要であることが示されている(Chen and Mellman,Immunity,39:1-10,2013)。各事象は有効な応答にとって重要であり、それぞれがいくつかの腫瘍免疫回避機構の影響を受けやすい。したがって、有効な抗がん免疫応答の欠如を説明する様々な因子を同定及び回避する必要性は、おそらくは複合標的療法レジメンを通じて、がん免疫を伝播し、CITの分野を進歩させるために重要であろう。
【0800】
この第Ib/II相臨床試験は、進行性肝がん患者における初期シグナルを同定し、概念実証臨床データを確立することによって、CITの組み合わせの開発を加速するように設計されている。
【0801】
この試験では、免疫細胞のプライミングと活性化、腫瘍浸潤、及び/又は排除のための腫瘍細胞の認識を介した免疫回避の複数のメカニズムを同時に標的にすることの重要性を評価している。実験群における臨床的シグナル検出の信頼性を向上させるため、本試験には対照群も含まれている。さらに、最初の治療レジメン(ステージ1)で疾患の進行を経験した患者は、別の治療レジメン(ステージ2)で治療を継続できる場合があり、これにより、CITレジメンによる治療に応答しなかった患者、又は治療中に疾患の進行を経験した患者における免疫回避メカニズムの科学的理解を進める可能性がある。
【0802】
この試験は、これまでに全身療法を受けていない局所進行性又は転移性HCCを有する患者を登録する。アテゾリズマブ+ベバシズマブの臨床的利益が最近証明されたにもかかわらず、切除不能な局所進行性又は転移性HCCを有する患者に対する満たされていない医療ニーズは依然として高く、新規でより効果的な治療の組み合わせをさらに評価する必要がある。
【0803】
各実験的治験医薬品(IMP)の標的及び提案された作用機序の分類を表32にまとめる。
【0804】
表32.実験的治験医薬品の標的及び提案された作用機序分類
IMP=治験医薬品;LAG-3=リンパ球活性化遺伝子-3;NK=ナチュラルキラー;VEGF=血管内皮増殖因子。
aWallin et al.,Nat Commun,7:12624,2016.
【0805】
D.安全性の評価
安全性評価は、有害事象(重篤な有害事象及び特に関心のある有害事象を含む)の監視及び記録、プロトコール指定の安全性臨床検査評価の実施、プロトコール指定のバイタルサインの測定、及び試験の安全性評価にとって重要であると考えられる他のプロトコール指定の試験の実施からなる。
【0806】
臨床試験の実施(Good Clinical Practice)のためのICHガイドラインによれば、有害事象は、原因の属性にかかわらず、医薬品を投与された臨床試験対象における何らかの不都合な医学的事象である。したがって、有害事象は以下のいずれかであり得る:
・ 医薬に関連すると考えられるか否かにかかわらず、医薬品の使用に一時的に関連するあらゆる好ましくない意図しない徴候(異常な検査所見を含む)、症候又は疾患。
・ 新規疾患又は既存疾患の増悪(既知の症状の特徴、頻度、又は重症度の悪化)。
・ ベースラインに存在しない間欠的な医学的症状(例えば、頭痛)の再発。
・ 症状に関連した臨床検査値又は他の臨床検査(ECG、X線など)の悪化、あるいは試験治療若しくは併用治療の変更若しくは試験治療の中止につながるもの。
・ プロトコールに定められた介入に関連する有害事象。これには、試験治療の割り当て前に発生する有害事象(生検などのスクリーニング侵襲的処置など)が含まれる。
【0807】
E.統計的考察及び分析計画
最終試験分析は、試験の中止を通して収集された患者データに基づく。特に明記しない限り、有効性分析は、割り当てられた治療レジメンに対して各薬物の少なくとも1回の用量を受けた全ての患者として定義される有効性評価可能な集団に基づき、安全性分析は、任意の量の試験治療を受けた全ての患者として定義される安全性評価可能な集団に基づいている。
【0808】
分析結果は、患者が実際に受けた治療レジメン及び適用可能であればステージ(ステージ1又はステージ2)によって要約される。データは、試料サイズによって保証されるように記載され、要約される。連続変数を、平均、標準偏差、中央値、範囲、及び四分位範囲を使用して要約する。カテゴリ変数は、カウント及びパーセンテージの使用によって要約される。
試料サイズが小さい場合、表の代わりにリストを使用する。
【0809】
ステージ2の有効性及び安全性分析のために新しいベースライン値が確立される。
【0810】
主要有効性評価項目
主要有効性評価項目は、上で定義したように、ステージ1の間のORRである。ORRは、RECIST v1.1に従って決定される。応答評価が欠落しているか又は応答評価がない患者は、非応答者として分類されるであろう。
【0811】
完全奏効又は部分奏効を有する患者の割合であるORRは、95%CI(Clopper-Pearson法)とともに各群について計算される。実験群と対照群との間のORRの差も、二項分布の正規近似を使用して90%CIとともに計算される。
【0812】
副次的有効性評価項目
副次的有効性評価項目は、上で定義したように、PFS、OS、特定の時点(例えば6か月)におけるOS、奏効期間(DOR)、及びステージ1の間の病勢コントロールである。PFS、DOR及び病勢コントロールは、RECIST v1.1に従って決定される。
【0813】
DORを、完全奏効又は部分奏効を有する有効性評価可能な患者について導出する。試験段階で疾患の進行又は死亡が文書化されていない患者については、PFS及びDORを最後の腫瘍評価の日に打ち切る。OS分析時にまだ生存している患者は、生存が判明した最後の日付で打ち切られる。
【0814】
Kaplan-Meier法を使用してPFS、OS、及びDORの中央値を推定し、95%CIをBrookmeyer及びCrowley法の使用によって構築する。特定の時点でのOS率もまた、Kaplan-Meier法を用いて推定され、95%CIは、分散についてのGreenwoodの推定値に基づいて計算される。病勢コントロール率(12週間以上にわたって安定した疾患を有する患者の割合)、部分奏効、又は完全奏効は各治療群に対して計算され、95%CIはClopper-Pearsonの正確法を用いて推定される。
【0815】
探索有効性評価項目
探索的有効性評価項目は、HCC mRECIST に従って決定されたステージ1の間のORR、PFS、DOR、及び病勢コントロール;RECIST v1.1及びHCC mRECISTに従って決定されたステージ2の間のORR、PFS、DOR、及び病勢コントロールである。ORR、PFS、DOR、及び病勢コントロールは、上記と同じ方法を使用して分析される。DORは、完全奏効又は部分奏効を示した有効性評価可能な患者に対して導出される。
【0816】
F.RO7247669+bev群に特異的な試験の詳細
RO7247669の背景
RO7247669は、2つの免疫チェックポイントタンパク質:PD-1及びリンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)への一価結合を組み込んだ、1+1フォーマットの新規のフラグメント結晶化可能(Fc)サイレントIgG1ベースの二重特異性抗体(bsAb)である。RO7247669は、機能不全の腫瘍抗原特異的Tリンパ球(PD-1及びLAG-3を発現)を標的として、がん患者における効果的な抗腫瘍免疫応答を確立又は再確立するように設計されており、その結果、現在利用可能な治療法よりも治療応答が改善される可能性がある。さらに、RO7247669はFc-ガンマ受容体への結合を防ぐように設計されており、ペムブロリズマブやニボルマブなどのIgG4ベースの抗PD-1抗体で観察されている腫瘍関連マクロファージ耐性メカニズムを回避できる可能性がある(Arlauckas et al.,Sci Transl Med,9:389,2017)。
【0817】
RO7247669の臨床評価は、チェックポイント阻害剤(CPI)曝露歴のある患者とない患者を対象とした単剤としてのファースト・イン・ヒューマン用量設定試験(NP41300)で進行中である。
【0818】
ベバシズマブの背景
ベバシズマブは、血管内皮増殖因子(VEGF)の全てのアイソフォームを認識する組換えヒト化モノクローナル抗体である。ベバシズマブは、腫瘍環境に結合し、腫瘍微小環境からVEGFを除去することによって直接的な抗血管新生効果を発揮し得る。さらなる抗腫瘍活性は、腫瘍血管系、間質圧及び血管透過性に作用する可能性があり、腫瘍細胞への化学療法の送達を促進する(Jain,Nat Med,7:987-989,2001)。
【0819】
ベバシズマブは、転移性結腸直腸がん(mCRC)の第一選択及び第二選択の治療、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)、転移性乳がん、進行性腎細胞癌(RCC)、卵巣がんの第一選択治療、及び再発性神経膠芽腫の治療として承認されている。ベバシズマブは現在、第I~III相臨床試験でアテゾリズマブと組み合わせて試験されている。ベバシズマブは一般的に良好な忍容性を示しており、有害事象は管理可能である。
【0820】
RO7247669 600mg Q3W+bev群の理論的根拠
PD-1/PD-L1経路
腫瘍免疫療法の分野における有望な臨床データは、がんに対するT細胞応答の増強に焦点を当てた治療は、進行性悪性腫瘍を有する患者において有意な生存利益をもたらすことができることを実証している(Hodi et al.,N Engl J Med,363:711-723,2010;Kantoff et al.,N Engl J Med,363:411-422,2010;Chen et al.,Clin Cancer Res,18:6580-6587,2012)。
【0821】
PD-1/PD-L1経路は、慢性感染症やがんなどの慢性抗原刺激状態において免疫応答を一時的に弱める免疫チェックポイントとして機能する。PD-1は、変異腫瘍抗原(ネオ抗原)を認識する腫瘍浸潤CD8+ T細胞を含む、活性化及び疲弊したT細胞上で発現される抑制性受容体である。PD-L1のPD-1への結合は、T細胞の増殖、活性化、サイトカイン産生、細胞溶解活性を阻害し、機能的に不活性化され疲弊したT細胞の状態に導く(Butte et al.,Immunity,27:111-122.2007;Yang et al.,J Immunol,187:1113-1119,2011)。
【0822】
抗腫瘍T細胞応答を増強するためのPD-1/PD-L1経路の治療標的は、単剤としても、化学療法や他の標的薬剤との併用としても、複数の固形腫瘍で臨床的に検証されている。がん免疫療法(CIT)剤、特に免疫CPIは、近年、進行性悪性腫瘍患者の治療に大きな影響を与えている。しかし、これらの治療法の顕著な臨床的有効性にもかかわらず、多くの患者にとって単剤療法としては十分な効果が得られないことが明らかになってきた。現在までのところ、PD-1/PD-L1経路を標的とする単剤CPIによる治療は、肝細胞癌(HCC)患者の治療において最小限の活性しか示していない。
【0823】
LAG-3経路
LAG-3は、抗腫瘍免疫及び慢性感染症の制御に関与する免疫チェックポイントタンパク質である。LAG-3は、活性化T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、寛容原性形質細胞様樹状細胞(DC)のサブセット、及び制御性T細胞で構成的に発現している(Huard et al.,Immunogenetics,39:213-217,1994)。CD4と構造的に類似したLAG-3はIgスーパーファミリーのメンバーであり、主要組織適合性複合体クラスII(MHC-II)に結合する。LAG-3とMHC-IIとの相互作用は、T細胞の増殖、活性化、細胞溶解機能、及び炎症性サイトカインの産生を阻害する(Goldberg and Drake,Curr Top Microbiol Immunol,344:269-278,2011)。制御性T細胞に対するLAG-3発現の影響については議論の余地がある。初期の報告では、LAG-3は制御性T細胞媒介免疫抑制を促進すると結論している(Camisaschi et al.,J Immunol,184:6545-6551,2010)。しかし、同じ著者による最近の報告では、LAG-3が制御性T細胞媒介免疫抑制を制限することが記載されている(Zhang et al.,Sci Immunol,2eaah4569,2017)。
【0824】
LAG-3の発現は、乳がん、卵巣がん、NSCLC、黒色腫、RCC、前立腺がん、HCCなど様々な腫瘍型で報告されており、予後不良と関連している(Matsuzaki et al.,Proc Natl Acad Sci USA,107:7875-7800,2010;Baitsch et al.,J Clin Invest,121:2350-2360,2011;Thommen et al.,Cancer Immunol Res,31344-55,2015;He et al.,Cancer Sci,107:1193-1197,2016;Norstrom et al.,Oncotarget,7:23581-23593,2016)。抗LAG-3剤の、単剤としての又は他のCPIと併用した臨床評価は、進行性固形腫瘍患者を対象としたいくつかの初期段階試験で進行中である(Long et al.,Genes Cancer,9(5-6):176-189,2018)。
【0825】
予備データは、抗LAG-3療法が単剤としても、抗PD-1療法と併用しても良好な忍容性を示し、安全性プロファイルが他のCPIの安全性プロファイルと一致していることを示している(Ascierto et al.,Ann Onco,28(Suppl.5):c611-612,2017;Hong et al.,J Clin Oncol,36:3012,2018;Stratton et al.,Society for Immunotherapy of Cancer(SITC)Abstract P325 2018)。
【0826】
新たな臨床データは、HCCの病因におけるLAG-3経路の役割を強調している。LAG-3の発現は、B型肝炎ウイルスに感染したHCC患者の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)において、末梢血リンパ球と比較して有意に上昇しており、このことは腫瘍部位における重度の機能的T細胞欠損と関連している(Li et al.,Immunol Lett,150:1116-1122,2013)。以前に疾患に対する全身療法を受けていないHCC患者においても、TILにおけるLAG-3発現の同様の上昇が報告されており、LAG-3発現とウイルス状態を含む疾患関連特性との間に関連性は確認されなかった(Yarchoan et al.,Clin Cancer Res,23:7333-7339,2017)。
【0827】
LAG-3発現は、最近、HCC患者の生存転帰不良の予後因子(血管浸潤、腫瘍サイズ、肝硬変に加えて)としても同定された(Guo et al.,J Transl Med,18:306,2020)。
【0828】
これらを総合すると、LAG-3の治療標的化は、HCC患者の治療にとって魅力的な戦略である可能性がある。
【0829】
VEGF経路
VEGF-Aは内皮、腫瘍、及び腫瘍関連マクロファージによって産生される血管新生促進分子である。腫瘍の血管新生を促進することに加えて、VEGF経路は、いくつかの機序を通じて免疫抑制腫瘍微小環境を発揮し維持することにより、がんの免疫回避にも重要な役割を果たしているという証拠が増えている。
【0830】
VEGF-Aは、樹状細胞(DC)の成熟を阻害し、腫瘍内CD8+T細胞上の抑制性免疫チェックポイント分子の発現を促進し、内皮細胞上でFasリガンド(FasL)の発現を誘導し、これはエフェクターCD8+T細胞を死滅させる能力を獲得したが、制御性T細胞は死滅させない(Gabrilovich et al.,Nat Med,2:1096-1103,1996;Huang et al.,Blood,110:624-631,2007;Motz et al.,Nat Med,20:607-615,2014;Voron et al.,J Exp Med,212:139-148,2015)。活性化内皮細胞を用いた実験では、VEGFが腫瘍微小環境における血管壁へのリンパ球の接着を減少させ、腫瘍部位への免疫細胞の動員の減少に寄与する可能性があることも示唆されている(Bouzin et al.,J Immunol,178:1505-1511,2007)。さらに、VEGFは、一般的に創傷治癒に関与するM2分極状態を持つマクロファージを腫瘍微小環境に動員する。これらのM2腫瘍関連マクロファージは、最終的に免疫抑制性微小環境の確立と維持に役立っている(Chen and Mellman,Immunity,39:1-10,2013)。
【0831】
ベバシズマブのような薬剤でVEGF経路を標的とすることは臨床的に検証されており、いくつかの進行性悪性腫瘍患者において抗腫瘍活性が実証されている。しかし、肝細胞癌患者にベバシズマブを単剤で投与した場合、最小限の活性しか示さなかった(Siegel et al.,J Clin Oncol,26:2992-2998,2008;Boige et al.,Oncologist,17:1063-1072,2012)。
【0832】
抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体と抗VEGF剤の併用治療
持続的な臨床的利益は、単剤のPD-L1/PD-1阻害剤で治療された少数の患者に限定されている。固形がん患者の転帰を改善するためには、抗PD-L1/PD-1療法に対する耐性のメカニズムを標的とした治療法が必要である。強力な科学的根拠及び新たな臨床データは、PD-1、LAG-3及びVEGFの併用阻害がいくつかの腫瘍型において臨床的に有益であり得ることを示唆している。
【0833】
抗VEGF剤は腫瘍血管系の正常化を促進し、それによって治療剤の利用を増加させる(Jain,Nat Med,7:987-989,2001)。さらに、ベバシズマブは、DCの抗原提示能力を回復及び/又は維持することができ、腫瘍におけるT細胞浸潤の増強につながる(Oelkrug and Ramage,Clin Exp Immunol,178:1-8,2014;Wallin et al.,Nat Commun,7:12624,2016)。抗VEGF-Aの投与は、腫瘍内皮FasL発現を減弱させ、腫瘍拒絶性CD8+ T細胞の流入を有意に増加させ、腫瘍増殖抑制につながることが示されている(Motz et al.,Nat Med,20:607-615,2014)。抗VEGF療法はまた、骨髄由来サプレッサー細胞の頻度を減少させ、抑制性サイトカインの産生を減少させることができる(Roland et al.,PLoS One,4:e7669,2009)。さらに、VEGF-Aは、CD8+ T細胞上のPD-1、並びにTIM-3及びLAG-3などの他の阻害性免疫チェックポイントタンパク質の発現を誘導することが示されており、これらはVEGF阻害によって逆転される可能がある(Voron et al.,J Exp Med,212:139-148,2015)。
【0834】
ベバシズマブの免疫調節作用は、CD8+ T細胞の動員を増加させ、腫瘍内免疫抑制を軽減し、それによって免疫療法の効果を高めると予想される。実際、臨床データは、PD-L1/PD-1経路遮断の状況における抗血管新生及び免疫調節の有益な効果を実証している。初期段階の研究では、転移性尿路上皮癌、RCC、卵巣がん、及び子宮内膜がん患者において、抗PD-1療法であるニボルマブ及びペムブロリズマブと異なる血管新生阻害剤との併用治療が応答を誘発できることが実証されている(Apolo et al.,J Clin Oncol,35(Suppl.6):293,2017;Lee et al.,Ann Oncol,28(Suppl.5):v295-v329,2017;Makker et al.,J Clin Oncol,35(Suppl 15):5598,2017;Liu et al.,JAMA Oncol,5:1731-1738,2019;Dudek et al.,J Clin Oncol,38:1138-1145,2020)。抗PD-L1療法であるアテゾリズマブとベバシズマブの併用治療の有効性は、NSCLC、RCC、HCC患者を対象とした複数の大規模無作為化第III相臨床試験でも実証されている(Socinski et al.,N Engl J Med,378:2288-2301,2018;Rini et al.,Lancet,393:2404-2415,2019;Finn et al.,N Engl J Med,382:1894-1905,2020)。PD-L1/PD-1遮断に対する抵抗性は、エフェクターT細胞の表面に複数の共抑制性免疫チェックポイントの発現をもたらし得る。LAG-3は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)上でPD-1としばしば共発現しており、PD-1とLAG-3の二重遮断は非臨床モデルにおいてCD8+ T細胞のエフェクター機能を増強し、抗腫瘍免疫を増強することが示されている。結腸、線維肉腫、又は卵巣腫瘍を有するマウスでこれら2つの受容体を遮断すると、いずれかの単剤では10~40%であったのに対し、約80%の動物で腫瘍が寛解した(Woo et al.,Cancer Res,72:917-927,2012;Huang et al.,Oncotarget,6:27359-27377,2015)。卵巣がん患者のTILは、PD-1とLAG-3を共発現している抗原特異的CD8+ T細胞は、1つのチェックポイント分子を発現しているCD8+ T細胞と比較して、同族抗原刺激に応答する能力において大きな障害を示すことを示した(Matsuzaki et al.,Proc Natl Acad Sci USA,107:7875-7880,2010)。NSCLC患者では、TIL上のLAG-3の過剰発現はPD-1/PD-L1発現と相関し、再発リスクの上昇と生存転帰の不良に関連していた(He et al.,J Thorac Oncol,12:814-823,2017)。未治療のHCC患者からの臨床試料では、大部分がLAG-3とPD-1の共染色を示し、バックグラウンドの肝組織での発現と比較してTILでの発現が高かった(Yarchoan et al.,Clin Cancer Res,23:7333-7339,2017)。上記のデータに基づき、bsAb RO7247669によるPD-1経路とLAG-3経路の同時標的化は、ベバシズマブの免疫調節作用と組み合わせることにより、抗腫瘍免疫応答を増強し、その結果HCC患者において改善され、より持続的な臨床的利益をもたらす可能性があると考えられる。
【0835】
他の実施態様
前述の発明は明確な理解のために例示及び実例によって幾分詳細に説明されているが、これらの説明及び実例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【配列表】
【国際調査報告】