(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-07
(54)【発明の名称】広周波数レンジ、高帯域幅、高分解能を同時に実現するマルチ・アナログ・デジタル・コンバータ・システム
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240731BHJP
G01R 13/20 20060101ALI20240731BHJP
H03M 1/10 20060101ALI20240731BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20240731BHJP
G01R 23/16 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R13/20 L
H03M1/10 A
H03M1/12 C
G01R23/16 D
G01R19/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501728
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022036864
(87)【国際公開番号】W WO2023287820
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】クラウスカ・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
2G035
5J022
【Fターム(参考)】
2G035AA13
2G035AC01
2G035AD28
2G035AD51
2G035AD59
2G035AD65
5J022AA01
5J022BA02
5J022CF09
(57)【要約】
複合アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)は、アナログ・データを受信してデジタル化するように構成された低分解能及び高速動作速度の低分解能ADCと、低分解能ADCよりも高い分解能と、低分解能ADCの高速動作速度よりも低い動作速度とを有し、アナログ・データを受信してデジタル化するように構成された1つ以上の高分解能ADCと、サンプル・クロック信号を低分解能ADCとクロック分周器に供給するサンプル・クロック生成部と、アナログ・データを受信し、1つ以上の高分解能ADCのうちの少なくとも1つに接続されるミキサと、ミキサに接続され、1つ以上の高分解能ADCをチューニングして、第1ADCのスペクトルの特定成分をサンプリングできるようにする局部発振器とを具える。試験測定装置は、複合ADCを含む。複合ADCの動作方法は、高速で動作する低分解能ADCでアナログ信号を受信する処理と、低分解能ADCよりも高い分解能で動作すると共に低分解能ADCの動作速度よりも遅い速度で動作する1つ以上の高分解能ADCでアナログ信号を受信する処理と、1つ以上の高分解能ADCの信号経路を低分解能ADCの信号経路に位相アライメント及び時間アライメントするように高分解能ADCをチューニングする処理と、低分解能ADCからスペクトルを生成する処理と、1つ以上の高分解能ADCからのスペクトルの特定成分を生成する処理とを具える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)であって、
アナログ・データを受信してデジタル化するように構成された低分解能及び高速動作速度の低分解能ADCと、
上記低分解能ADCよりも高い分解能と、上記低分解能ADCの上記高速動作速度よりも低い動作速度とを有し、上記アナログ・データを受信してデジタル化するように構成された1つ以上の高分解能ADCと、
サンプル・クロック信号を上記低分解能ADCとクロック分周器に供給するサンプル・クロック生成部と、
上記アナログ・データを受信し、上記1つ以上の高分解能ADCのうちの少なくとも1つに接続されるミキサと、
該ミキサに接続され、上記1つ以上の高分解能ADCのうちの少なくとも1つをチューニングして、上記第1ADCのスペクトルの特定成分をサンプリングできるようにする局部発振器と
を具える複合アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)。
【請求項2】
上記1つ以上の高分解能ADCが、上記クロック分周器からクロック信号を受信する請求項1に記載の複合ADC。
【請求項3】
上記アナログ・データと上記低分解能ADCとの間の信号経路から上記ミキサをアイソレーションするための、上記アナログ・データと上記ミキサとの間のバッファを更に具える請求項1に記載の複合ADC。
【請求項4】
上記低分解能ADCが、上記高速動作速度よりも低い動作速度を有する複数のADCを有し、該複数のADCが、上記高速動作速度で合成出力信号を生成する請求項1に記載の複合ADC。
【請求項5】
上記1つ以上の高分解能ADCが、上記低分解能ADCのスペクトルの異なる成分に夫々チューニングされる複数の高分解能ADCを有する請求項1に記載の複合ADC。
【請求項6】
試験測定装置であって、
被試験デバイスからアナログ・データを受信するポートと、
複合アナログ・デジタル・コンバータと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
上記複合アナログ・デジタル・コンバータが、
上記アナログ・データを受信して低分解能及び高速動作速度でデジタル化するように構成された低分解能ADCと、
上記アナログ・データを受信して、上記低分解能ADCの上記低分解能よりも高い分解能及び上記低分解能ADCの上記高速動作速度よりも低い動作速度でデジタル化するように構成された1つ以上の高分解能ADCと、
サンプル・クロック信号を上記低分解能ADCに供給するサンプル・クロック生成部と、
上記ポートと上記1つ以上の高分解能ADCの間に接続されるミキサと、
該ミキサに接続され、上記1つ以上の高分解能ADCをチューニングして、上記低分解能ADCのスペクトルの特定成分をサンプリングできるようにする局部発振器と
を有し、
上記1つ以上のプロセッサが、
上記低分解能ADCのスペクトルの特定成分に上記局部発振器をチューニングする処理と、
上記低分解能ADCの上記スペクトル及び該スペクトルの上記特定成分のうちの少なくとも1つを表示する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成される試験測定装置。
【請求項7】
上記スペクトルの上記特定成分に上記局部発振器をチューニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記低分解能ADCの上記スペクトル内の所望の周波数位置に上記局部発振器をチューニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項6に記載の試験測定装置。
【請求項8】
上記1つ以上のプロセッサが、ユーザ入力又は試験測定装置内部信号のいずれかから生じる信号の存在下で、上記高分解能ADCを使用して上記低分解能ADCを校正する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成される請求項6に記載の試験測定装置。
【請求項9】
上記高分解能ADCからのデータを用いて上記低分解能ADCを校正する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、1つ以上のスプリアスが上記高分解能ADCに存在しない場合に、上記低分解能ADCに存在する1つ以上のスプリアスを除去する処理を上記1つ以上のプロセッサに更に行わせる請求項8に記載の試験測定装置。
【請求項10】
上記低分解能ADCに存在する1つ以上のスプリアスを除去する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、
上記高分解能ADCの経路における信号を測定する処理と、
上記低分解能ADCの経路における信号を測定する処理と、
上記高分解能ADCの上記経路には存在しない上記低分解能ADCの上記経路におけるスプリアス信号を求める処理と、
上記低分解能ADCの上記経路から除去するスプリアス信号にフラグを立てる処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項9に記載の試験測定装置。
【請求項11】
上記プロセッサが、
上記低分解能ADCの帯域全体を掃引する処理と、
上記スプリアス信号にフラグを立てる処理と、
上記低分解能ADCの動作中にスプリアス信号を除去するために将来使用するように上記フラグを校正ファイルとして保存する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項8に記載の試験測定装置。
【請求項12】
上記校正が、通常動作中又は工場での校正中のいずれかで行われる請求項8に記載の試験測定装置。
【請求項13】
上記低分解能ADCのスペクトルの特定成分に上記局部発振器をチューニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、
上記低分解能ADCのダイナミック・レンジ中に存在する信号を検出する処理と、
上記信号の周波数を求める処理と、
上記高分解能ADCを上記信号の中心に配置するように上記高分解能ADCをチューニングする処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項6に記載の試験測定装置。
【請求項14】
上記1つ以上のプロセッサが、上記低分解能ADC専用のプロセッサと、上記1つ以上の高分解能ADC夫々の専用のプロセッサとを有し、上記低分解能ADC用の上記プロセッサと、上記1つ以上の高分解能ADC専用の上記プロセッサの夫々とが相互に接続される請求項6に記載の試験測定装置。
【請求項15】
相互に接続された上記プロセッサが、上記低分解能ADCの信号経路と上記高分解能ADCの信号経路との間の任意の時間オフセットを解消し、これら信号経路の位相をアライメントさせる処理を相互に接続された上記プロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成される請求項14に記載の試験測定装置。
【請求項16】
上記1つ以上のプロセッサが、上記低分解能ADCの上記スペクトルを表示する処理と、上記高分解能ADCの上記スペクトルの上記特定成分を表示する処理とを同時に行わせるプログラムを実行するように更に構成される請求項6に記載の試験測定装置。
【請求項17】
表示される上記高分解能ADCの上記スペクトルの上記特定成分は、上記低分解能ADCの上記スペクトルに対するユーザ入力によって決定される請求項16に記載の試験測定装置。
【請求項18】
複合アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を動作させる方法であって、
高速で動作する低分解能ADCでアナログ信号を受信する処理と、
上記低分解能ADCよりも高い分解能で動作すると共に上記低分解能ADCの動作速度よりも遅い速度で動作する1つ以上の高分解能ADCで上記アナログ信号を受信する処理と、
上記1つ以上の高分解能ADCの信号経路を上記低分解能ADCの信号経路に位相アライメント及び時間アライメントするように上記高分解能ADCをチューニングする処理と、
上記低分解能ADCに由来するスペクトルを生成する処理と、
上記1つ以上の高分解能ADCに由来するスペクトルの特定成分を生成する処理と
を具える複合アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を動作させる方法。
【請求項19】
上記1つ以上の高分解能ADCからの情報を使用して、スプリアスの除去を含む上記低分解能ADCを校正する処理を更に具える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記低分解能ADCの上記スペクトルの周波数を求める処理と、上記1つ以上の高分解能ADCを上記スペクトルの中心にチューニングする処理とを更に具える請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2021年7月12日に出願された米国仮特許出願第63/220,923号、発明の名称「広周波数レンジ、高帯域幅、高分解能を同時に実現するマルチ・アナログ・デジタル・コンバータ・システム」の利益を主張し、その開示の全文を参照により本願に組み込む。
【0002】
本開示は、試験測定装置に関し、より詳細には、オシロスコープなどの試験測定装置で使用するためのデジタル化システムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の試験測定装置は、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を使用して、被試験デバイス(DUT)から受信した波形をデジタル化する。概して、これらは、高速で、比較的低分解能のADCを使用する。例えば、10ビットADCは、100ギガ・サンプル/秒(100GS/s)のクロック・レートでサンプリングし、各サンプルは10ビットである。これらサンプルは、下流に運ばれ、更に処理される。
【0004】
従来のADCは、256個の低速ADCなど、複数のサブADCから構成されている場合がある。これらのADCの出力をインターリーブすると、上述の100GS/sの速度が生成される。複数のADCを1つに組み合わせると、スプリアス信号(spurious signals)が発生し、これらは、高調波又はインターリーブ・スプリアスとも呼ばれ、しばしば、スプリアス(spurs)と呼ばれる。これらスプリアスは、信号の完全性を損ない、これらスプリアスのために、ノイズを可能な限り除去又は制限するための処理が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3618283号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0197068号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0111184号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「絶縁 (電気)」の記事、特に「isolation」について、Wikipedia(日本語版)、[online]、[2021年4月8日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/絶縁_(電気)>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一部のスプリアスは、時間や温度によって変化するため、後の処理で除去するのが困難である。
【0008】
低速のADCを使用すると、スプリアスが小さく、分解能が高いという利点があるが、サンプル・レートは低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の実施形態は、高速ADCと比較して低速なADCの比較的大きな有効ビット数(ENOB:effective number of bits)に基づいて、単一のADCに対して、40dB以上改善した広帯域幅及び高分解能を同時に提供するマルチ・アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)試験測定装置を開示する。これは、現在の最先端技術よりも優れている。これらの実施形態は、通常、通常の計測器動作時又は計測器の校正中に、高速ADCからのスプリアス信号(本願ではスプリアスとも呼ぶ)の自動的又はガイド付き除去を可能にする。これにより、信号を送受信する電子部品の性能を測定するために使用される、ダイナミック・レンジが改善されると共に、エラー・ベクトル振幅(EVM:error vector magnitude)の不確かさが改善される。
【0010】
本願でいう「高速」及び「低速」という用語は、複数のコンポーネントが、互いに対して相対的に高速又は低速で動作することを意味する。この説明では、他のADCよりも高速で動作するものを、高速ADCと呼ぶ。同様に、ADCを「高分解能」と「低分解能」と言及する説明は、あるADCが、他のADCよりもビット深度が大きいことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、試験測定装置における従来のADCデータ・ストリームを示す。
【
図2】
図2は、複数のアナログ・デジタル・コンバータを有する試験測定装置の図を示す。
【
図3】
図3は、2つの低速、高分解能のアナログ・デジタル・コンバータを使用する実施形態を示す。
【
図4】
図4は、アナログ・デジタル・コンバータのグループの中の2つに基づく代表的な周波数表示をグラフを用いて表したものを示す。
【
図5】
図5は、アナログ・デジタル・コンバータのグループの中の2つに基づく代表的な時間表示をグラフを用いて表したものを示す。
【
図6】
図6は、複合アナログ・デジタル・コンバータを用いたノイズ除去のグラフィック表現を示す。
【
図7】
図7は、複合アナログ・デジタル・コンバータを用いたノイズの除去をグラフを用いて表したものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、従来の高速ADCを示す。ADC14は、ポート12からのアナログ波形データを処理する。ポートは、コネクタ又はプローブを介して被試験デバイスに接続されても良く、アナログ波形データを高速ADCに提供する。一例では、高速ADCが、10ビットのADC14から構成されても良い。ADCは、通常、サンプル・クロック生成部(16など)が供給するクロック・レートf
clockでアナログ・データをサンプリングする。ADC14は、100ギガ・サンプル/秒(GS/s)及び10ビットで波形をサンプリングし、プロセッサ18などでの処理のために更に下流にサンプルを配信しても良い。結果として得られるデータ・ストリームには、プロセッサが除去できないスプリアスがいくつか存在する場合がある。これにより、信号品質が低下する。
【0013】
本願で用いる高速、低分解能という用語は、複数のADCから構成され、結合された又はインターリーブされた1つの高速低分解能信号を生成するADCの実施形態を含む、「一体型」ADCに言及するものである。以下の説明では、実施形態において、複数の低速高分解能ADCを取り上げることになるが、その違いは、複数のADCが、それぞれ他の低速高分解能ADCとは別個の独自の信号を生成することである。
【0014】
図2は、試験測定装置20中の複合型又はハイブリッド型ADC22を示す。この試験測定装置には2つの信号経路がある。データ・ストリーム1のための第1信号経路は、
図1のものと同様である。高速、低分解能の第1ADC(ADC1)14は、アナログ波形データを受信し、サンプル・クロック16を用いて高速かつ低分解能でサンプルを生成する。本願の実施形態では、複合ADC22には、第2信号経路のデータ・ストリーム2がある。アナログ波形データは、第2信号経路(典型的には、試験測定装置20の第2チャンネル中にある)に入る。この第2データ経路には、第2ADC(ADC2)24があり、これは、より高い分解能で動作するが、より遅い速度で動作する。その違いを明確に示すために両者の例を用いるなら、第2ADC24は、1GS/s、16ビットの分解能で動作する。
【0015】
図2に示す複合ADCは、各ADC単体の欠点を克服し、低速高分解能ADC2と高速低分解能ADC1の問題の多くを解決する。ADC2は、ADC2及びミキサの2つ以上のコピーから構成されても良く、低分解能ADC1のスペクトルの様々な成分におけるスプリアス補正を拡充する。ミキサは、両側波帯タイプ、単側波帯タイプ又はダイレクト・コンバージョン(direct conversion:直接変換)タイプであっても良く、このとき、ADC2は、
図3に示すように、ADC2A及びADC2Bを使って実装される。
図3の実施形態では、ダイレクト・コンバージョン・タイプが、直交するコサイン及びサイン出力信号を使ってLO信号を生成する、いくつかの方法の中の1つを使用する。
図3の実施形態では、ミキサ28は、スプリッタ40と、2つのミキサ41及び46を有し、第1局部発振器(LO1)26の出力信号をsin(2*pi*LO1*t)として使用して、ミキサ41、フィルタ42及びADC2A44によって、直交(quadrature)出力信号を生成する。ミキサ28は、第1局部発振器(LO1)26の出力信号をcos(2*pi*LO1*t)として使用して、ミキサ46、フィルタ48及びADC2B50によって、同相(in-phase)出力信号を生成する。ダイレクト・コンバージョンの出力は、ADC2A44とADC2B46の同相(I)及び直交(Q)のデジタル出力信号を生成する。ダイレクト・コンバージョン(直接変換)では、LO1を所望のサンプリング周波数に正確に調整できるが、両側波帯及び単側波帯変換では、オフセット周波数が必要である。
【0016】
図2に戻ると、試験測定装置20は、例えば、1つ以上のデジタル・シグナル・プロセッサ(32及び34など)で構成されるプロセッサ回路網もある。このプロセッサ回路網は、汎用又は中央処理装置を含む、別のタイプ及び多数のプロセッサを備えても良い。プロセッサは、例えば、埋め込まれていても良いし、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)又は専用デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)から構成されても良い。1つ以上のプロセッサは、プロセッサに複合ADCを制御させるプログラム(コード)を実行するように構成されても良い。この試験測定装置は、また、ディスプレイ36及びユーザ・インタフェース38を含んでもよい。
【0017】
低速のADC2は、サンプル・クロックfclockを基準にした分周クロックで動作する。上記の例では、実施形態の理解を助けるために、高速ADC1は100GS/sで動作し、低速ADC2は1GS/sで動作し、クロック分周器23は発振器16からのクロックを100の係数Kで分周する。このクロックは、局部発振器(シンセサイズドLO又はLO1)26にも供給されても良い。バッファ30は、ミキサ28に入る前の入力信号をバッファリングする。このバッファは、波形データと高速の第1ADC(ADC1)14との間の信号経路からミキサをアイソレーションする。また、ミキサ28及びLO26からの漏れが波形入力に到達するのを防止する。ミキサ28は、局部発振器26から同期信号を得る。局部発振器26により、低速ADC24のスペクトルを、高速ADC14に基づくスペクトルの中の特定の成分に同調させることが可能になる。
【0018】
フィルタ27は、ADC24によって使用される選択されたナイキスト帯域に一致するように構成されたローパス、バンドパス又はハイパス・フィルタから構成されても良い。典型的には、このフィルタは、ローパス・フィルタから構成されることになろう。一実施形態では、フィルタ27は、切替型(switched)又はバラクタ同調型アーキテクチャのチューナブル(チューニング可能な)バンドパス・フィルタから構成される。ナイキスト帯域の中心周波数は、目的のナイキスト帯域に関して、(fclock/K)*0.25*J、ここで、J=1,3,5など(奇数の整数)で与えられる。ナイキスト帯域幅は、最大で(0.5*fclock)/Kであるが、実際には、0.32*(fclock/K)のような、もっと小さな部分が選択される。
【0019】
図4及び
図5は、複合ADCによって可能になる2つの代表的な時間及び周波数表示を示す。周波数表示は、
図4の「スペクトル」、「スペクトログラム」及び「ACPR」(Adjacent Channel Power Ratio:隣接チャンネル電力比)のようなものを含んでもよい。
図5は、時間対振幅、時間対位相又は時間対周波数などの時間表示を示す。低分解能ADCは、60dBの低分解能スペクトラム54を生成する。この信号には、信号に存在しないはずのアーチファクト(artifacts)を表す上述のスプリアスも含まれることがある。
図2のユーザ・インタフェース36により、ユーザは、より広いスペクトルのどの成分をズームイン(拡大)して表示したいかを指定することができるであろう。
【0020】
図2の第2ADC(ADC2)24の前にあるミキサ28の局部発振器26をチューニングすることによって、スペクトル54のある成分にチューニングできると共に、同時に拡大されたスペクトル52を示すことができる。例として、低分解能のADC1が、40GHz幅の信号を捕捉したとする。高分解能ADC2は、400MHz幅の信号を100dBで捕捉できる。更に、第2ADCは、より広いダイナミック・レンジを有し、高分解能ADCのスプリアスのない信号を提供できる。別の例では、低分解能ADCのADCは100GS/s、高分解能ADCは5GS/sでK=20とすることもでき、結果として、同期クロック分周器は、20分周になる。
【0021】
図6~
図7は、上述したような複合ADCを使用したノイズ除去のグラフ表示を示す。
図6は、低速、高分解能ADC2のノイズ・フロア60を示し、これは、dBFS(フルスケールに対するデシベル)を単位として、No_ADC2+SFDR_ADC2に等しい。No_ADC2は、広帯域ADCのノイズ項を示し、SFDRは、スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ(Spurious Free Dynamic Range)である。ADC2のSFDR(単位:dB)は、6.02ENOB_ADC2+1.76dBに等しい。高速、低分解能のADC1のノイズ・フロア62も同様に求められ、No_ADC1、SFDR及びENOBは、ADC1の特性値である。64などの矢印は、インターリーブから生じるスプリアス信号に加えて、他のスプリアス信号を表す。
図6の領域又はゾーン66は、除去が可能なスプリアス信号の周囲のゾーンを表す。
図7に示すように、ADC2の出力では、そのスプリアス信号が除去されている。これにより、ADC2(又は、ADC2A及びADC2Bを利用する場合は、ADC2A及びADC2B)の帯域幅に基づいて、周波数領域において、40dB改善する。
【0022】
もしDSPで処理されるADC1の全帯域幅の信号が、ADC2の狭い帯域幅を含む場合、
図2を再度参照すると、この処理を行う2つのDSPフィルタF1(s)及びF2(s)を構築できる。これらフィルタには、H(s)=F1'(s)+F2(s)という関係がある。F1(s)は、ADC1の正しい応答であって、校正された場合、可能な限り周波数が平坦(フラット)になる。F2(s)は、選択された帯域幅に対するADC2(又はADC2A+ADC2B)の補正された応答である。F1'(s)は、F1の応答中の算出されたノッチ(Notch:V字形の切り込み)であって、これを用いることで、F2が上記の関係を満たすことができる。この応答は、バンドパス・デュプレクサで、実合成法(real synthesis technique)又はフーリエ項抽出(Fourier term extraction)によって算出される。F1(s)及びF1'(s)は、ADC1からの複素数データ/実数データのシリアル・ストリームについて計算される。F2(s)は、ADC2/ADC2A+ADC2Bのデータ・ストリームについて計算され、フィルタ処理されて、ADC1のデータ・ストリームと同じレートに一致するようにアップサンプリングが行われる。このADC1のストリームは、ADC1のフル・サンプル・レートであって、周知の再サンプリング方法を使用して、アップサンプリング又はダウンサンプリングしても良い。これに代えて、ADC2の狭い帯域幅について、ADC1と同時に表示や処理することもできる。
【0023】
2つのADCで構成される複合ADCは、名目上、同じクリッピング・レベルでダイナミック・レンジを有する。ミキサ28内に存在するそれらの利得は、低速ADCの基準電圧と同様に揃えられることになろう。ユーザは、LO26を使用して第2ADCを所望の周波数位置にチューニングするだけで、低分解能ADCの測定値で特定される任意のスペクトル・データを高分解能でズームイン(拡大)できるという利点が得られる。これにより、ユーザは、広帯域のスキャンと、狭い動作範囲の深い分析とを同時に行うことができ、時間的にアライメント(時間的に整合)された2つの信号経路を同時に利用できる。
【0024】
上記の説明は、1つの高分解能低速ADCと、これに対応するミキサに焦点を当てているが、このシステムは、様々な帯域で同時に動作する複数のADCが含まれても良いことに注意されたい。
【0025】
試験測定装置20内に1つ以上のプロセッサが存在することにより、ADC1及びADC2の両方の周波数範囲内に入力信号が生じる場合に、ADC2によるADC1の校正が可能になる。これにより、ユーザ入力信号又は試験測定装置内部の基準信号のいずれかが存在する場合に、通常の使用中に自動的に又は試験所(laboratory:ラボ、研究所)の信号を使用した意図的な工場での校正中に、ADC2によるADC1のリアルタイム校正が可能になる。例えば、ADC1に存在するスプリアスは、ADC2には存在しないであろう。1つ以上のプロセッサは、ADC2からのこの情報を使用して、問題のあるスプリアスを除去できる。
【0026】
1つ以上のプロセッサが、ソフトウェア/ファームウェアのプログラム(コード)を実行すると、ADC1のダイナミック・レンジ内の信号の存在を判断できる。次いで、1つ以上のプロセッサは、第1DSP32におけるフーリエ又は同様の技術などによって、信号の周波数を自動的に求めることができる。次いで、プロセッサは、ADC2の前にあるLO26をチューニングして、特定された信号の中心にADC2を配置することができる。ADC2の経路(パス)での測定により、ADC1の経路(パス)で測定された信号を確認できる。プロセッサは、ADC2の経路に存在せず、予想される帯域幅内に存在しない信号にスプリアスとしてフラグを立て、ADC1の信号から除去することができる。
【0027】
上記の校正動作には、試験所(Loboratory:ラボ、研究所)の信号発生装置又は任意波形発生装置(AWG:arbitrary waveform generator)からのガイダンス(guidance:手本となる)信号をADC1とADC2の入力に供給することが含まれても良い。この信号源とLO1は、帯域全体を段階的に(ステップ・バイ・ステップで)掃引する。次に、1つ以上のプロセッサが、ADC1における望ましくない信号のレベル、周波数及び位相をカタログ化する。これらの結果を校正ファイルとして保存することにより、第1DSP(DSP1)は、スプリアス信号を除去できるであろう。
【0028】
図2に示すアーキテクチャでは、各ADCには、専用プロセッサ又は対応するプロセッサがある。これは、あり得る1つの実装形態を与えるものである。例えば、ADC2の信号経路の測定から第2DSP(DSP2)が得た情報により、第1DSP(DSP1)は、補正を行うことができる。ADC2は、複数の低速高分解能ADCから構成されても良く、それぞれが独自の専用プロセッサを持っていても良い。次の説明は、これら追加のプロセッサに適用される。
【0029】
2つのプロセッサ(この実施形態ではDSP1及びDSP2)は、これらの動作が相互接続されており、これにより、周波数を組み合わせて、校正、ノイズ低減又はスプリアス低減のための相互相関及びその他の測定の実行が可能になる。これら2つのADCは、同じ入力信号を共有しているので、相互相関によって各信号経路の任意の時間オフセットを解消(resolve)できる。これらDSPセクション内では、オーバー・サンプリング(補間とも呼ばれる)を実行して、2つの信号経路の位相アライメント(位相整合)処理を正確に行うことができる。局部発振器LO1には、クロック信号を受信する位相ロック・ループ(PLL)がある。そのクロック信号は、ADC1から直接来たクロック、ADC2から直接来たクロック、又は、どちらかのクロックを分周したもの又は乗算したものである。
【0030】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0031】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0032】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0033】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気、基板集積導波路(SIW)、ガラス/石英基板導波路又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0034】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0035】
明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0036】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
実施例
【0037】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0038】
実施例1は、複合アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)であって、アナログ・データを受信してデジタル化するように構成された低分解能及び高速動作速度の低分解能ADCと、上記低分解能ADCよりも高い分解能と上記低分解能ADCの上記高速動作速度よりも低い動作速度とを有し、上記アナログ・データを受信してデジタル化するように構成された1つ以上の高分解能ADCと、サンプル・クロック信号を上記低分解能ADCとクロック分周器に供給するサンプル・クロック生成部と、上記アナログ・データを受信し、上記1つ以上の高分解能ADCのうちの少なくとも1つに接続されるミキサと、該ミキサに接続され、上記1つ以上の高分解能ADCのうちの少なくとも1つをチューニングして、上記第1ADCのスペクトルの特定成分をサンプリングできるようにする局部発振器とを具える。
【0039】
実施例2は、実施例1の複合ADCであって、上記1つ以上の高分解能ADCが、上記クロック分周器からクロック信号を受信する。
【0040】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかの複合ADCであって、上記アナログ・データと上記低分解能ADCとの間の信号経路から上記ミキサをアイソレーションするための、上記アナログ・データと上記ミキサとの間のバッファを更に具える。
【0041】
実施例4は、実施例1から実施例3のいずれかの複合ADCであって、上記低分解能ADCが、上記高速動作速度よりも低い動作速度を有する複数のADCを有し、該複数のADCが、上記高速動作速度で合成出力信号を生成する。
【0042】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの複合ADCであって、上記1つ以上の高分解能ADCが、上記低分解能ADCのスペクトルの異なる成分に夫々チューニングされる複数の高分解能ADCを有する。
【0043】
実施例6は、試験測定装置であって、
被試験デバイスからアナログ・データを受信するポートと、
複合アナログ・デジタル・コンバータと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
上記複合アナログ・デジタル・コンバータが、
上記アナログ・データを受信して低分解能及び高速動作速度でデジタル化するように構成された低分解能ADCと、
上記アナログ・データを受信して、上記低分解能ADCの上記低分解能よりも高い分解能及び上記低分解能ADCの上記高速動作速度よりも低い動作速度でデジタル化するように構成された1つ以上の高分解能ADCと、
サンプル・クロック信号を上記低分解能ADCに供給するサンプル・クロック生成部と、
上記ポートと上記1つ以上の高分解能ADCの間に接続されるミキサと、
該ミキサに接続され、上記1つ以上の高分解能ADCをチューニングして、上記低分解能ADCのスペクトルの特定成分をサンプリングできるようにする局部発振器と
を有し、
上記1つ以上のプロセッサが、
上記低分解能ADCのスペクトルの特定成分に上記局部発振器をチューニングする処理と、
上記低分解能ADCの上記スペクトル及び該スペクトルの上記特定成分のうちの少なくとも1つを表示する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成される。
【0044】
実施例7は、実施例6の試験測定装置であって、上記スペクトルの上記特定成分に上記局部発振器をチューニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記低分解能ADCの上記スペクトル内の所望の周波数位置に上記局部発振器をチューニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0045】
実施例8は、実施例6又は7のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、ユーザ入力又は試験測定装置内部信号のいずれかから生じる信号の存在下で、上記高分解能ADCを使用して上記低分解能ADCを校正する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成される。
【0046】
実施例9は、実施例8の試験測定装置であって、上記高分解能ADCからのデータを用いて上記低分解能ADCを校正する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、1つ以上のスプリアスが上記高分解能ADCに存在しない場合に、上記低分解能ADCに存在する1つ以上のスプリアスを除去する処理を上記1つ以上のプロセッサに更に行わせる。
【0047】
実施例10は、実施例9の試験測定装置であって、上記低分解能ADCに存在する1つ以上のスプリアスを除去する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記高分解能ADCの経路における信号を測定する処理と、上記低分解能ADCの経路における信号を測定する処理と、上記高分解能ADCの上記経路には存在しない上記低分解能ADCの上記経路におけるスプリアス信号を求める処理と、上記低分解能ADCの上記経路から除去するスプリアス信号にフラグを立てる処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0048】
実施例11は、実施例8から10のいずれかの試験測定装置であって、上記プロセッサが、上記低分解能ADCの帯域全体を掃引する処理と、スプリアス信号にフラグを立てる処理と、上記低分解能ADCの動作中にスプリアス信号を除去するために将来使用するように上記フラグを校正ファイルとして保存する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0049】
実施例12は、実施例8から11のいずれかの試験測定システムであって、上記校正が、通常動作中又は工場での校正中のいずれかで行われる。
【0050】
実施例13は、実施例6から12のいずれかの試験測定装置であって、上記低分解能ADCのスペクトルの特定成分に上記局部発振器をチューニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記低分解能ADCのダイナミック・レンジ中に存在する信号を検出する処理と、上記信号の周波数を求める処理と、上記高分解能ADCを上記信号の中心に配置するように上記高分解能ADCをチューニングする処理とを含む。
【0051】
実施例14は、実施例6から13のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記低分解能ADC専用のプロセッサと、上記1つ以上の高分解能ADC夫々の専用のプロセッサとを有し、上記低分解能ADC用の上記プロセッサと、上記1つ以上の高分解能ADC専用の上記プロセッサの夫々とが相互に接続される。
【0052】
実施例15は、実施例14の試験測定システムであって、相互に接続された上記プロセッサが、上記低分解能ADCの信号経路と上記高分解能ADCの信号経路との間の任意の時間オフセットを解消し(resolve:取り除き)、これら信号経路の位相を整合(アライメント:揃える)させる処理を相互に接続された上記プロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成される。
【0053】
実施例16は、実施例6から15のいずれかの試験測定システムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記低分解能ADCの上記スペクトルを表示する処理と、上記高分解能ADCの上記スペクトルの上記特定成分を表示する処理とを同時に行わせるプログラムを実行するように更に構成される。
【0054】
実施例17は、実施例16の試験測定システムであって、表示される上記高分解能ADCの上記スペクトルの上記特定成分は、上記低分解能ADCの上記スペクトルに対するユーザ入力によって決定される。
【0055】
実施例18は、複合アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を動作させる方法であって、高速で動作する低分解能ADCでアナログ信号を受信する処理と、上記低分解能ADCよりも高い分解能で動作すると共に上記低分解能ADCの動作速度よりも遅い速度で動作する1つ以上の高分解能ADCで上記アナログ信号を受信する処理と、上記1つ以上の高分解能ADCの信号経路を上記低分解能ADCの信号経路に位相アライメント及び時間アライメントするように上記高分解能ADCをチューニングする処理と、上記低分解能ADCに由来するスペクトルを生成する処理と、上記1つ以上の高分解能ADCに由来するスペクトルの特定成分を生成する処理とを具える。
【0056】
実施例19は、実施例18の方法であって、上記1つ以上の高分解能ADCからの情報を使用して、スプリアスの除去を含む上記低分解能ADCを校正する処理を更に具える。
【0057】
実施例20は、実施例18又は19のいずれかの方法であって、上記低分解能ADCの上記スペクトルの周波数を求める処理と、上記1つ以上の高分解能ADCを上記スペクトルの中心にチューニングする処理とを更に具える。
【0058】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【国際調査報告】