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特表2024-529773改善された断熱特性を有するモジュラーグリーンウォールエレメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】改善された断熱特性を有するモジュラーグリーンウォールエレメント
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
E04B1/76 400A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512145
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022073267
(87)【国際公開番号】W WO2023025699
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21192845.2
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227352
【弁理士】
【氏名又は名称】白倉 加苗
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート カール
(72)【発明者】
【氏名】ロイ ツロッツ
(72)【発明者】
【氏名】アリーネ ロッツェター
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト アッカーマン
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア ハイトマン
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DH15
2E001FA04
2E001GA12
2E001HA03
2E001HD03
2E001HD04
2E001HD09
(57)【要約】
本発明は、第1及び第2の区画(6、6’)を有するケーシング(2)を含むモジュラーグリーンウォールエレメント(1)であって、第1の区画(6)が、植物用栽培材料を収容するように配置され、第2の区画(6’)が、エレメント(1)に改善された断熱特性を提供するために、少なくとも部分的に発泡材料によって充填される、エレメントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の区画(6、6’)を有するケーシング(2)を含むモジュラーグリーンウォールエレメント(1)であって、前記第1の区画(6)が植物用栽培材料を収容するように配置され、前記第2の区画(6’)が発泡材料によって少なくとも部分的に充填されている、エレメント。
【請求項2】
前記発泡材料が、500kg/m(g/l)以下、好ましくは300kg/m(g/l)以下の密度を有する、請求項1に記載のエレメント。
【請求項3】
前記発泡材料が、発泡合成有機又は無機材料である、請求項1又は2に記載のエレメント。
【請求項4】
前記発泡材料が、
a)少なくとも1種のミネラルバインダーB、及び
b)任意選択的に少なくとも1種の合成有機ポリマーSP
を含む発泡無機材料である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項5】
前記少なくとも1種のミネラルバインダーBが、前記発泡無機材料の総重量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも50重量%を構成する、請求項4に記載のエレメント。
【請求項6】
前記少なくとも1種のミネラルバインダーBが、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、潜在水硬性バインダー材料、ポゾラン系バインダー材料、硫酸カルシウム、及び水和石灰からなる群から選択される、請求項4又は5に記載のエレメント。
【請求項7】
前記発泡無機材料中の前記少なくとも1種のミネラルバインダーBの量対前記少なくとも1種の合成ポリマーSPの量の重量比が、100:0~70:30、好ましくは100:0~80:20である、請求項4~6のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項8】
前記ケーシング(2)が、
-2つの長手方向側壁(4、4’)によって連結された前壁及び後壁(3、3’)、
-前記前壁、後壁及び長手方向側壁(3、3’、4、4’)の間に形成された内部空間を前記第1及び第2の区画(6、6’)に分割する中間壁(5)、並びに
-底壁(7)
を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項9】
前記中間壁(5)が、前記長手方向側壁(4、4’)の方向に対して横方向に延在する、請求項8に記載のエレメント。
【請求項10】
前記長手方向側壁(4、4’)の方向で測定された前記第2の区画(6’)の深さが、前記長手方向側壁(4、4’)の方向で測定された前記第1の区画(6)の深さよりも少なくとも10%小さい、好ましくは少なくとも25%小さい、請求項8又は9に記載のエレメント。
【請求項11】
前記エレメントが、前記中間壁(5)の反対側に向いた前記後壁(3’)の外面を介して基材の表面に取り付けられるように配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項12】
前記ケーシング(2)がポリマー材料から構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項13】
I)第1及び第2の区画(6、6’)を有するケーシング(2)を提供するステップ、
II)発泡組成物を提供するステップ、
III)前記発泡組成物によって前記第2の区画(6’)を少なくとも部分的に充填するステップ、並びに
IV)前記発泡組成物を硬化させるステップ
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のモジュラーグリーンウォールエレメント(1)の製造方法。
【請求項14】
前記発泡組成物が、500kg/m(g/l)以下、好ましくは300kg/m(g/l)以下の密度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記発泡組成物が、
a)少なくとも1種のミネラルバインダーB、
b)任意選択的に少なくとも1種の合成有機ポリマーSP、
c)任意選択的に少なくとも1種の界面活性剤S、及び
d)水
を含む発泡無機組成物である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種のミネラルバインダーBが、前記発泡無機組成物の総重量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも50重量%を構成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップII)が、
- 水性発泡体と、前記少なくとも1種のミネラルバインダーB及び任意選択的に前記少なくとも1種の合成有機ポリマーSPを含む水性スラリーとを別々に提供すること、並びに
- 前記水性発泡体を前記水性スラリーと混合し、前記発泡無機組成物を得ること
を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
I.請求項1~12のいずれか一項に記載の1又は複数のモジュラーグリーンウォールエレメント(1)を提供するステップ、
II.各エレメント(1)が前記後壁(3’)の外面を介して基材(8)の表面に直接的又は間接的に連結されるように、前記1又は複数のエレメントを前記基材(8)の前記表面に取り付けるステップ、並びに
III.任意選択的に、対向する長手方向側壁(4、4’)の外面を介して隣接するエレメントを互いに取り付けるステップ
を含む、グリーンウォールの提供方法。
【請求項19】
前記基材(8)が、建築エレメント、好ましくは建築物の壁又はファサードである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンウォールエレメントの分野に関する。特に、本発明は、改善された断熱特性を有するモジュラープレハブ式グリーンウォールエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外面は、風雨などの環境的影響力から保護されなければならない。また、熱エネルギーが建物の内部から外部へ、又はその逆へと不必要に流れるのを防ぐため、建物は断熱されていなければならない。さらに、生態学的な理由から、建物のファサードをグリーン(植生)ウォールシステムで覆うことが非常に望ましい。これは、都市の微気候を改善し、いくらかの断熱性をもたらし、美観を向上させる。特にグリーンウォールシステムは、二酸化炭素の隔離によってのみならず、ヒートアイランド現象の緩和、一般的な空気の質の改善、遮音及び断熱、並びにエネルギー及び水の節約、都市の生物多様性の改善、及び都市住民の福利厚生によって、都市の気候緩衝材として重要な役割を果たす。その結果、モジュラーグリーンウォールエレメントの重要性が高まっている。
【0003】
グリーンウォールを提供するためのモジュラーシステムは、かなり以前から市販されている。しかし、現在入手可能なグリーンウォールモジュールは、建物外壁の外面上に取り付けられる「アドオン」システムであり、既存の断熱層の上に接着されなければならない。十分な接着強度を確保するため、グリーンウォールエレメントを建築構造体に固定するには、断熱層を貫通する金属ファスナーが典型的に使用されている。これには、断熱層の下側と建物の外部とを連結するヒートブリッジを発生させるという重大な欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、一体化された断熱材を有するモジュラーグリーンウォールエレメントは、設置されるとファサード全領域を実質的に覆い、建物外壁の内部側と外部側との間の熱橋の形成を回避することができるため、非常に望ましい。グリーンウォールエレメントは、好ましくは軽量及び優れた耐火性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、一体化された断熱材を有するモジュラーグリーンウォールエレメントを提供することであり、このモジュラーグリーンウォールエレメントは、建築外壁の内側と外側との間に熱橋を形成することなく、ファサードの外面全体を覆うグリーンウォールを提供するために使用することができる。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、軽量及び耐火性に優れたモジュラーグリーンウォールエレメントを提供することである。
【0007】
本発明の対象は、請求項1に定義されるモジュラーグリーンウォールエレメントである。
【0008】
驚くべきことに、請求項1の特徴によって目的を達成可能であることが判明した。
【0009】
本発明の利点の1つは、建物外壁の断熱特性に悪影響を与えることなく、ファサード全面をグリーンウォールエレメントで覆うことができることである。
【0010】
本発明の核は、少なくとも2つの空洞(区画)を有するケーシングを含むモジュラーグリーンウォールエレメントであって、第1の空洞は土壌などの植物用栽培材料で充填することができ、第2の空洞はエレメントの断熱特性を向上させるために発泡有機又は無機材料で少なくとも部分的に充填されている。
【0011】
本発明の他の対象は、他の独立請求項に示されている。本発明の好ましい態様は従属請求項に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1及び第2の区画(6、6’)を有するケーシング(2)を含むグリーンウォールエレメント(1)を示しており、第2の区画(6’)の内部空間は発泡材料で部分的に充填されている。
図2図2は、2つの長手方向側壁(4、4’)によって連結された前壁及び後壁(3、3’)と、底壁(7)と、前壁、後壁及び長手方向側壁(3、3’、4、4’)の間に形成された内部空間を第1及び第2の区画(6、6’)に分割する中間壁(5)とを含むグリーンウォールエレメントのケーシング(2)を示す。
図3図3は、2つの長手方向側壁(4、4’)によって連結された前壁及び後壁(3、3’)と、底壁(7)と、前壁、後壁及び長手方向側壁(3、3’、4、4’)の間に形成された内部空間を第1及び第2の区画(6、6’)に分割する中間壁(5)と、第1の区画(6)の内部空間を第1及び第2の小区画(6a、6b)に分割するさらなる中間壁(5’)とを含むグリーンウォールエレメントのケーシング(2)を示す。
図4図4は、基材(8)と、各エレメント(1)が後壁(3’)の外面を介して基材(8)の表面に連結されるように、基材(8)の表面に取り付けられた複数のモジュラーグリーンウォールエレメントとを含むグリーンウォールを示す。隣接するエレメントは、対向する長手方向の側壁(4、4’)の外面を介して互いに取り付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の対象は、第1及び第2の区画(6、6’)を有するケーシング(2)を含むモジュラーグリーンウォールエレメント(1)であって、第1の区画(6)は、土壌などの植物用栽培材料を収容するように配置され、第2の区画(6’)は、発泡材料によって少なくとも部分的に充填されているものである。
【0014】
「ポリ」で開始する物質名は、1分子あたり2個以上の官能基を正式に含有する物質を意味する。例えば、ポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物を指す。ポリエーテルは、少なくとも2個のエーテル基を有する化合物を指す。
【0015】
「ポリマー」という用語は、多反応(重合、重付加、重縮合)によって生じる、重合度、分子量及び鎖長に関して異なる化学的に均一な高分子の集合体を意味する。この用語はまた、多反応から生じる前記高分子の集合体の誘導体、すなわち、所定の高分子中の官能基の、例えば付加又は置換などの反応によって得られ、化学的に均一であり得るか又は化学的に不均一であり得る化合物も含む。
【0016】
本開示において、「コポリマー」という用語は、2種以上のモノマー(「構造単位」)から誘導されるポリマーを指す。モノマーのコポリマーへの重合は、共重合と呼ばれる。2種のモノマー種の共重合によって得られるコポリマーはバイポリマーとして知られ、3種及び4種のモノマー種から得られるものは、それぞれターポリマー及びクウォーターポリマーと呼ばれる。
【0017】
「ゴム」という用語は、大きな変形から回復することができ、沸騰溶媒、特にキシレンに本質的に不溶性の(しかし膨潤することができる)状態に変性することができるか、又はすでに変性されているポリマー又はポリマーブレンドを意味する。典型的なゴムは、外部から力を加えられると、元の寸法の少なくとも200%まで伸長又は変形することができ、外力が解放された後は、実質的に元の寸法に戻り、永久変形はわずかである(典型的には約20%以下)。「ゴム」という用語は、「エラストマー」という用語と互換的に使用することができる。
【0018】
「融解温度(T)」という用語は、ISO 11357-3:2018規格に定義されている測定方法を使用し、2℃/分の加熱速度を使用して示差走査熱量測定(DSC)によって決定される曲線の最大値として決定される融点を指す。測定は、Mettler Toledo DSC 3+装置を用いて実行することができ、DSC-ソフトウェアの補助によって測定されたDSC-曲線からT値を決定することができる。測定されたDSC曲線が複数のピーク温度を示す場合、サーモグラムの低温側から来る最初のピーク温度を融解温度(T)とする。
【0019】
組成物中の「少なくとも1種の成分Xの量又は含有量」、例えば、「少なくとも1種の合成ポリマーの量」とは、組成物中に含まれる全ての合成ポリマーの個々の量の合計を指す。例えば、組成物が20重量%の少なくとも1種の合成ポリマーを含む場合、組成物中に含まれる全ての合成ポリマーの量の合計は20重量%に等しい。
【0020】
「通常の室温」という用語は23℃を指す。
【0021】
グリーンウォールエレメントは、好ましくは予成形品である。「予成形」又は「プレハブ式」という用語は、エレメントで覆われる表面に適用される前にエレメントが成形されていることを意味すると理解される。特に、「予成形品」という用語は、その場で成形されない、すなわち、エレメントで覆われる基材の表面上で成形されないエレメントを指す。予成形グリーンウォールエレメントは、必ずしも必要ではないが、典型的には、建設現場から離れた場所で製造され、現場に搬入され、エレメントで覆われる下地の表面上に配置される。
【0022】
「発泡材料」という用語は、その中に形成された多数の明瞭な空隙を有する材料を指す。本発明のグリーンウォールエレメントに使用するために適切な発泡材料には、独立気泡、半独立(半連続)気泡、及び連続気泡の合成有機及び無機発泡体が含まれる。液体、特に発泡材料の水を吸収する能力を最小化するために、独立気泡及び半独立気泡発泡体が好ましい場合がある。
【0023】
好ましくは、発泡材料は、500kg/m(g/l)以下、より好ましくは300kg/m(g/l)以下、さらに好ましくは250kg/m(g/l)以下、さらに好ましくは200kg/m(g/l)以下、例えば15~250kg/m(g/l)、好ましくは25~150kg/m(g/l)の密度を有する。
【0024】
発泡材料の密度は、好ましくは、例えば以下の手順を使用することによって重量測定する。まず、10×10×10cmの寸法を有する試料立方体を発泡材料から切り出し、温度70℃のオーブン中で材料の重量が一定になるまで乾燥させる。その後、試料立方体の重量を測定し、測定された重量及び立方体の体積に基づいて材料の密度が得られる。
【0025】
1つ又は複数の実施形態によれば、発泡材料は合成有機発泡材料であり、好ましくは、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、及びポリオレフィン発泡体、並びに膨張ゴムからなる群から選択される。
【0026】
ポリオレフィン発泡体及び膨張ゴムは、通常、ポリオレフィン溶融体又は硬化性ゴム組成物に化学発泡剤を添加することによって製造される。発泡ポリスチレン(EPS)及び膨張押出ポリスチレン(XPS)などのポリスチレンベースの発泡体は、出発組成物をペンタンなどの膨張剤で膨張させるか、又は溶融組成物を押出機のノズルから押し出すことによって得られ、この場合、圧力の減少によって液体材料の膨張が引き起こされる。
【0027】
ポリウレタン(PUR)及びポリイソシアヌレート(PIR)発泡体は、イソシアネーとポリオールを反応させることによって形成される。膨張プロセスの間に、閉じた孔は二酸化炭素又はヘキサンなどの膨張ガスで充填される。
【0028】
1つ又は複数の実施形態によれば、合成有機発泡材料は、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、及びポリオレフィン発泡体からなる群から選択される。
【0029】
1つ又は複数の好ましい実施形態によれば、発泡材料は、
a)少なくとも1種のミネラルバインダーB、及び
b)任意選択的に少なくとも1種の合成有機ポリマーSP
を含む発泡無機材料である。
【0030】
発泡有機材料に比べ、発泡無機材料は優れた耐火性を有するという大きな利点がある。
【0031】
適切なミネラルバインダーには、セメント及び水硬性石灰などの水硬性バインダー、硫酸カルシウム、非水硬性石灰などの空気硬化性バインダー、潜在水硬性バインダー及びポゾラン系バインダー材料が含まれる。
【0032】
水硬性バインダーは、水と混合するとペースト状になり、一連の水和反応によって硬化して固体鉱物水和物又は水和物相を形成する無機材料又はブレンドであり、水中に溶解しないか、又は水溶性が非常に低い。ポルトランドセメント(Portland cement)などの水硬性バインダーは、例えば、水中又は高湿度の条件下で水に曝露された時であっても硬化し、強度を保持することができる。「非水硬性バインダー」という用語は、二酸化炭素との反応によって硬化する物質のことであり、湿潤状態又は水中では硬化しない。
【0033】
適切な非水硬性バインダーの例としては、空気消石灰(非水硬性石灰)及び硫酸カルシウムが挙げられる。「硫酸カルシウム」という用語は、硫酸カルシウム無水物(CaSO)、硫酸カルシウム半水和物(CaSO・1/2HO)及び硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO)を含むと理解される。さらに、「硫酸カルシウム半水和物」という用語は、α及びβ硫酸カルシウム半水和物の両方を含むものと理解される。好ましい硫酸カルシウムには、REA石膏、リン石膏、及び自然石膏に由来するものが含まれる。「REA石膏」という用語は、ここではいわゆる排煙脱硫プラントで得られる石膏を指す。
【0034】
「潜在水硬性バインダー材料」という用語は、DIN EN 206-1:2000規格で定義されている「潜在水硬性」を有するタイプIIのコンクリート添加剤を指す。これらの種のミネラルバインダーは、水との混合時に直接硬化しないか、又は硬化が遅いアルミノケイ酸カルシウムである。アルカリ活性剤の存在下では硬化が促進され、バインダーの非晶質(又はガラス質)相の化学結合が切断され、イオン種の溶解及びアルミノケイ酸カルシウム水和物相の形成が促進される。潜在水硬性バインダーの例としては、高炉水砕スラグが挙げられる。高炉水砕スラグは、通常、高炉からの溶融鉄スラグを水又は蒸気で急冷してガラス状の粒状生成物を形成し、その後、これを乾燥、粉砕して微粉末にしたものである。
【0035】
「ポゾラン系バインダー材料」という用語は、DIN EN 206-1:2000規格で定義されている「ポゾラン特性」を有するタイプIIのコンクリート添加剤を指す。これらの種のミネラルバインダーは、水及び水酸化カルシウムと反応してケイ酸カルシウム水和物又はアルミノケイ酸カルシウム水和物相を形成するシリカ又はアルミノシリケート化合物である。ポゾラン系バインダーの例としては、トラスなどの天然ポゾラン、フライアッシュ及びシリカフュームなどの人工ポゾランが挙げられる。「フライアッシュ」とう用語は、微粉炭の燃焼によって発生する細かく砕かれた灰分残渣のことで、石炭を燃焼させる炉から排出されるガスとともに得られる。「シリカフューム」という用語は、アモルファス状の微粒子シリコンを指す。シリカフュームは通常、シリカ製錬所での石英の製錬のようなシリカ鉱石の処理の副産物として得られ、その結果、一酸化ケイ素ガスが形成され、空気に曝露時にさらに酸化して非晶質シリカの小粒子を生成する。
【0036】
好ましくは、少なくとも1種のミネラルバインダーBは、発泡無機材料の総重量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、さらに好ましくは少なくとも75重量%を構成する。
【0037】
好ましくは、少なくとも1種のミネラルバインダーBは、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、潜在水硬性バインダー材料、ポゾラン系バインダー材料、硫酸カルシウム、及び水和石灰からなる群から選択される。
【0038】
1つ又は複数の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のミネラルバインダーBは、好ましくは、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、及びスルホアルミン酸カルシウムセメントからなる群から選択される、少なくとも1種の水硬性バインダーB1を含む。
【0039】
一般に、「少なくとも1種の成分Xは少なくとも1種の成分XNを含む」、例えば、「少なくとも1種のミネラルバインダーBは少なくとも1種の水硬性バインダーB1を含む」という表現は、本開示に関して、組成物が少なくとも1種のミネラルバインダーBの代表として1種若しくは複数種の水硬性バインダーB1を含むことを意味すると理解される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ポルトランドセメント」という用語は、通常、「ポルトランドセメント」であると理解されているセメント、特に欧州規格EN-197に記載されているセメントを含む。ポルトランドセメントは、主にケイ酸三カルシウム(アライト)(CS)及びケイ酸二カルシウム(ベライト)(CS)からなる。好ましいポルトランドセメントは、欧州規格EN197-1:2018-11のタイプCEM I、CEM II、CEM III、CEM IV及びCEM V組成を含む。しかしながら、他の規格、例えばASTM規格、英国(BSI)規格、インド規格、又は中国規格に従って製造される全ての他のポルトランドセメントも適切である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「アルミネートセメント」という用語は、水硬化アルミン酸カルシウム、好ましくはアルミン酸モノカルシウムCA(CaO-Al2O3)を主成分(相)として含むセメント系材料を含むことを意図している。アルミネートセメントの種類によって、CA、CA及びC12などの他のアルミン酸カルシウムが存在してもよい。好ましいアルミネートセメントとしては、ベライト(CS)、アライト(CS)、フェライト(CF、CAF、CAF)、テルネサイト(CS)などの他の成分も含まれる。アルミネートセメントの中には、炭酸カルシウムを含むものもある。
【0042】
少なくとも1種の水硬性バインダーB1として使用するための最も好ましいアルミネートセメントには、EN4647(「アルミン酸カルシウムセメント」)の規格要件を満たすアルミン酸カルシウムセメント(CAC)が含まれる。適切なアルミン酸カルシウムセメントは、例えば、Imerys Aluminates及びRoyal White Cementから市販されている。
【0043】
「スルホアルミン酸カルシウムセメント(CSA)」という用語は、xが0、1、2又は3の値を有するC4(A3-xFx)3S(4CaO・3-xAl・xFe2O3・CaSO4)を主成分(相)として含むセメント系材料を含むことを意図している。典型的に、スルホアルミン酸カルシウムセメントには、アルミネート(CA、CA、C12)、ベライト(CS)、フェライト(CF、CAF、CAF)、テルネサイト(CS)及び硫酸カルシウムなどの他の成分も含まれる。少なくとも1種の水硬性バインダーB1として使用するための好ましいスルホアルミン酸カルシウムセメントは、スルホアルミン酸カルシウムセメントの総重量に基づいて、20~80重量%のイーリマイト(C4A3S)、0~10重量%のアルミン酸カルシウム(CA)、0~70重量%のベライト(CS)、0~35重量%のフェライト、好ましくは四カルシウムアルミノフェライト(CAF)、及び0~20重量%のテルネサイト(C5S2S)を含有する。適切なアルミン酸カルシウムセメント(CAS)は、例えば、Heidelberg Cement AG、Vicat SA及びCaltra B.V.から市販されている。
【0044】
好ましくは、少なくとも1種の水硬性バインダーB1は、少なくとも1種のミネラルバインダーBの総重量の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、さらにより好ましくは少なくとも75重量%を構成する。1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種のミネラルバインダーBは、好ましくは、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、及びスルホアルミン酸カルシウムセメントからなる群から選択される水硬性バインダーであり、好ましくはポルトランドセメントである。
【0045】
1つ又は複数の実施形態によれば、発泡無機材料中の少なくとも1種のミネラルバインダーBの量対少なくとも1種の合成ポリマーSPの量の重量比は、100:0~70:30、好ましくは100:0~80:20である。
【0046】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の合成ポリマーSPの割合は、発泡無機材料中の少なくとも1種のミネラルバインダーBの重量に対して、1~25重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは8~12重量%である。
【0047】
少なくとも1種の合成有機ポリマーSPは、発泡無機材料の機械的特性、特に圧縮強度及び/又は曲げ強度を向上させるために使用されてもよい。合成ポリマーSPの種類は特に制限されない。適切な有機合成ポリマーとしては、例えば、ポリウレタンポリマー、並びにエチレン、プロピレンブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、ビニルエステル、ネオデカン酸ビニル、ビニルアルコール、及び塩化ビニルからなる群から選択される1種若しくは複数種のモノマーのフリーラジカル重合から得られるホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートを指し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルを指す。
【0048】
「ポリウレタンポリマー」という用語は、いわゆるジイソシアネート重付加プロセスによって調製されるポリマーを指し、ウレタン基をほとんど又は完全に含まないポリマーを含む。適切なポリウレタンポリマーの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌレート、及びポリカルボジイミドが挙げられる。
【0049】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の合成有機ポリマーSPは、ポリウレタンポリマーであり、好ましくは、少なくとも1種のポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリオール及び/又はポリアミンモノマーをベースとする。
【0050】
適切なポリイソシアネートには、モノマーポリイソシアネート、並びにモノマーポリイソシアネートのオリゴマー、ポリマー及び誘導体、並びにそれらの混合物が含まれる。
【0051】
ポリウレタンポリマーに適切なモノマーポリイソシアネートとしては、少なくとも芳香族二官能及び三官能イソシアネート、例えば、2,4-及び2,6-トルイレンジイソシアネート及びその異性体の混合物(TDI)、4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びその異性体の混合物(MDI)、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナトベンゾール、ナフタリン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、1,3,5-トリス-(イソシアナトメチル)ベンゼン、トリス-(4-イソシアナトフェニル)メタン及びトリス-(4-イソシアナトフェニル)チオホスフェートが挙げられる。
【0052】
ポリウレタンポリマーにさらに適切なモノマーポリイソシアネートとしては、脂肪族二官能及び三官能イソシアネート、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアナト、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアナト、リジン及びリジンエステレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-及び-1,4-ジイソシアネート、1-メチル-2,4-及び-2,6-ジイソシアナトシクロヘキサン及びその異性体の混合物(HTDI又はH6TDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソ-シアナトメチル-シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、ペルヒドロ-2,4’-及び-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI又はH12MDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-及び1,4-ビス-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-及びp-キシリレンジイソシアネート(m-及びp-XDI)、m-及びp-テトラメチル-1,3-及び-1,4-キシリレンジイソシアネート(m-及びp-TMXDI)、ビス-(1-イソシアナト-1-メチル-エチル)ナフタリン、二量体及び三量体脂肪酸イソシアネート、例えば、3,6-ビス-(9-イソシアナトノニル)-4,5-ジ-(1-ヘプテニル)シクロヘキセン(ジメリルジイソシアナート)及びα、α、α’、α’’、α’’-ヘキサメチル-1,3,5-メシチレントリイソシアナートが挙げられる。
【0053】
ポリウレタンポリマーに特に適切なポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオール、及び炭化水素ポリオール、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリヒドロキシ官能性油脂、ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル-ブタジエンコポリマーが挙げられる。
【0054】
特に適切なポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレンジオール及び/又はポリオキシアルキレントリオール、特にエチレンオキシド又は1,2-プロピレンオキシド又は1,2-又は2,3-ブチレンオキシド又はオキセタン又はテトラヒドロフラン又はそれらの混合物の重合生成物が挙げられ、これは、2個又は3個の活性水素、特に1個の活性水素を有するスターター分子、例えば水、アンモニア、又はいくつかのOH基若しくはNH基を有する化合物、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-若しくは1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール又はトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3-若しくは1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール又はアニリン、或いは前述の化合物の混合物を用いて重合することができる。
【0055】
適切なポリエステルポリオールには、液状ポリエステルポリオール、並びに25℃の温度で固体である非晶質、部分結晶質、結晶質ポリエステルポリオールが含まれる。これらは、二価及び三価、好ましくは二価のアルコール、例えば、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、二量体脂肪アルコール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、又は前述のアルコールの混合物を、有機ジカルボン酸又はトリカルボン酸、好ましくは、ジカルボン酸、又はその無水物若しくはエステル、例えば、コハク酸、グルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、二量体脂肪酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、又は前述の酸の混合物と反応させることによって得ることができ、また、ポリエステルポリオールは、例えば、ポリカプロラクトンとしても知られるε-カプロラクトンなどのラクトンから製造される。
【0056】
適切なポリアミンモノマーは、2個以上のイソシアネート反応性アミン基を有する化合物である。使用可能なポリアミンモノマーの例としては、ジエチルトリレンジアミン、メチルビス(メチルチオ)フェニレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、イソホロンジアミン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、ポリオキシアルキレンアミン、2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-1-スルホン酸(AMPS)及びエチレンジアミンの塩の付加物、(メタ)アクリル酸及びエチレンジアミンの塩の付加物、1,3-プロパンスルホン及びエチレンジアミンの付加物、又はこれらのポリアミンの任意の組合せである。
【0057】
1つ又は複数の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の合成有機ポリマーSPは、ポリアクリレート、スチレン-アクリレートコポリマー、ポリビニルエステル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、酢酸ビニル-ネオデカン酸ビニル(VeoVa)コポリマー、及びポリウレタンポリマーからなる群から選択される。
【0058】
1つ又は複数の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の合成有機ポリマーSPは、少なくとも1種のエチレン-酢酸ビニルコポリマー及び/又はエチレン、酢酸ビニル及びビニルエステルモノマーの少なくとも1種のターポリマーを含む。
【0059】
少なくとも1種の合成有機ポリマーSPとして使用するために特に適切なエチレン-酢酸ビニルコポリマーは、コポリマーの重量に基づいて、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下の酢酸ビニル由来の構造単位の含有量を有する。
【0060】
1つ又は複数の実施形態によれば、発泡無機材料は、少なくとも1種の界面活性剤Sをさらに含む。「界面活性剤」という用語は、ここでは表面張力を低下させる物質を指し、通常、疎水性基及び親水性基の両方を含む有機化合物である。
【0061】
界面活性剤は、発泡無機材料を調製する際に、発泡構造を安定化させるために使用することができる。
【0062】
界面活性剤は、専門家にはよく知られており、例えば、「Surfactants and Polymers in aqueous solutions」(Wiley-VCH,K.Holmbergetal,2ndEdition,2007)に要約されている。適切な界面活性剤としては、少なくとも非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。両性(双性イオン性)界面活性剤は、同一分子中にカチオン及びアニオンの両中心が結合している。
【0063】
非イオン性界面活性剤は、セメント相に吸収される傾向が低いため、使用するのが特に有利である。しかし、カチオン性、アニオン性又は両性(双性イオン性)界面活性剤を使用することも可能である。
【0064】
本発明に関して適切な界面活性剤には、コレート、グリココレート、脂肪酸塩、グリセリド、糖脂質及びリン脂質などの脂質が含まれる。これらは天然由来のものであっても、又は合成的に製造されたものであってもよい。特定の実施形態では、非イオン性脂質が好ましい。
【0065】
適切なアニオン性界面活性剤としては、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、又はスルホネート基を含む化合物、例えば、オルガノスルフェート、アルキルエーテルカルボキシレート、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、脂肪アルコールスルフェート、アルキルスルホスクシネート、アルキルフェノールエトキシレート、オレフィンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、及びアルキルベンゼンスルホネートが挙げられる。
【0066】
適切な非イオン性界面活性剤としては、特に、脂肪酸アルコキシレート、アルコキシル化アルコール、特に脂肪酸アルコールアルコキシレート及びグリセロール及びペンタエリスリトールのアルコキシレート、アルキルフェノールアルコキシレート、アルコキシル化多糖類、アルコキシル化重縮合物、脂肪酸アミドアルコキシレート、エタノールアミド、脂肪酸のエステル、特にメタノール、ソルビタンの脂肪酸エステル、ソルビタン、グリセロール又はペンタエリスリトール、6~20個の炭素原子からなるアルキル基を有するアルコキシル化アルキルアミン、アルキルグリコシド、アルキルグルカミド、脂肪酸及び糖のエステル、ポリシロキサン、並びにアルコキシル化ソルビタン、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、ラウリルエーテルスルホネート、ナフタレンスルホネート、疎水化デンプン、疎水化セルロース又はシロキサンベースの界面活性剤が挙げられる。これに関連して好ましいアルコキシレートは、特にエトキシレートである。
【0067】
適切なカチオン性界面活性剤は、特にアンモニウム基又は第4級窒素原子を含み、少なくとも1個の長鎖アルキル基を有する。適切なカチオン性界面活性剤の例は、少なくとも1個のアルキル基を有する第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、イミダゾリン化合物、例えば、N,N-ジアルキルイミダゾリン化合物、ジメチルジステアリルアンモニウム化合物、N-アルキルピリジン化合物、アンモニウム塩化物、及びアミンN-オキシドである。例えば、カチオン性界面活性剤は、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、及びドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)から選択することができる。
【0068】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の界面活性剤Sは、少なくとも1種のジェミニ(Gemini)界面活性剤を含むか、又はジェミニ界面活性剤からなる。
【0069】
ジェミニ界面活性剤は、2個の親水性ヘッド基と、ヘッド基において、又はヘッド基の付近でスペーサーによって分離された2個の疎水性テールを含む。両方の疎水性テールが同一であり、及び親水性基が同一である場合、ジェミニ界面活性剤は対称構造を有すると言われる。ジェミニ界面活性剤の置換基は、溶液中でのこれらの化合物の挙動及びそれらの潜在的な用途に大きく関わる。特に、ジェミニ界面活性剤は4級窒素原子を含んでいてもよく、これは通常非環式で存在する。しかし、飽和及び不飽和環に窒素を含むジェミニ界面活性剤も存在する。スペーサーは、剛性又は柔軟性があり、疎水性又は親水性の傾向がある。ジェミニ界面活性剤の特殊な特性は、親水性-親油性バランス(HLB値)を最適化することで影響を与えることができる。これは、例えば、ヘッド基、テール基又はスペーサーの両方にバランスのとれた極性基又は疎水性基以下を導入することによって行うことができる。好ましいジェミニ界面活性剤の例は、特にアルコキシル化されたアセチルジオール、又は欧州特許第0884298号明細書に記載されているジェミニ界面活性剤である。
【0070】
1つ又は複数のさらなる実施形態によれば、少なくとも1種の界面活性剤Sは、アニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤、好ましくはアニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤の混合物を含む。
【0071】
1つ又は複数のさらなる実施形態によれば、少なくとも1種の界面活性剤Sは、両性界面活性剤であり、好ましくは、アミノカルボン酸及びベタイン、特に脂肪酸アミドアルキルベタイン、特にコカミドプロピルベタインから選択される。ベタインは、第4級アンモニウム又はホスホニウムカチオンなどの、水素原子を有さない正に帯電したカチオン性官能基と、カルボキシレート基などの、カチオン部位に隣接していなくてもよい負に帯電した官能基とを有する中性の化合物である。したがって、ベタインは双性イオンの特別な種類である。この種の界面活性剤は、発泡無機材料中に通常存在するさらなる成分との相溶性が高いため、本発明に関連して非常に有益であることが判明した。
【0072】
1つ又は複数の実施形態によれば、ケーシング(2)は、
-2つの長手方向側壁(4、4’)によって連結された前壁及び後壁(3、3’)、
-前壁、後壁及び長手方向側壁(3、3’、4、4’)の間に形成された内部空間を第1及び第2の区画(6、6’)に分割する中間壁(5)、並びに
-底壁(7)
を有する。
【0073】
好ましくは、中間壁(5)は、長手方向側壁(4、4’)の方向に対して横方向に延在している。この場合、第1の区画(6)は、図1及び図2に示すように、前壁、中間壁、及び長手方向側壁(3、5、4、4’)によって限定され、第2の区画(6’)は、後壁、中間壁、及び長手方向側壁(3’、5、4、4’)によって限定される。
【0074】
ケーシング(2)が、第1及び/又は第2の区画(6、6’)の内部空間をさらなる小区画に分割する、さらなる中間壁を含むことも可能であるが、必ずしも好ましいわけではない。1つ又は複数の実施形態によれば、ケーシング(2)は、図3に示すように、第1の区画(6)の内部空間を第1及び第2の小区画(6a、6b)に分割するさらなる中間壁(5’)を含む。
【0075】
1つ又は複数の実施形態によれば、後壁(3’)及び中間壁(5)は、実質的に同じ高さを有し、及び/又は前壁(3)の高さは、後壁(3’)の高さよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも35%小さい。「実質的に同じ高さ」という表現は、後壁及び中間壁(3’,5)の高さの差が、後壁及び中間壁(3’,5)の高さの合計の1.5%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満などの無視できる程度であることを意味すると理解される。
【0076】
1つ又は複数の実施形態によれば、長手方向側壁(4、4’)の方向で測定された第2の区画(6’)の深さは、長手方向側壁(4、4’)の方向で測定された第1の区画(6)の深さよりも少なくとも10%小さい、好ましくは少なくとも25%小さい、より好ましくは少なくとも35%小さい。
【0077】
好ましくは、グリーンウォールエレメントは、中間壁(5)の反対側に向いた後壁(3’)の外面を介して、基材の表面、特に建物の壁及びファサードなどの建築エレメントに取り付けられるように配置される。
【0078】
一旦基材に取り付けられると、後壁(3’)の外表面及び基材の表面は、互いに間接的又は直接的に連結されることができる。「直接連結される」という表現は、本発明に関連して、層の間にさらなる層又は物質が存在せず、層の対向する表面が互いに直接結合しているか、又は互いに接着していることを意味すると理解される。2つの層の間の移行領域では、層の材料が互いに混合して存在することもできる。対向する表面は、接着剤の層などの連結層を介して間接的に互いに連結することができる。
【0079】
後壁(3’)の平面と底壁(7)の平面との間、及び/又は中間壁(5)の平面と底壁(7)の平面との間、及び/又は前壁(3)の平面と底壁(7)の平面との間、及び/又は長手方向側壁(4、4’)の平面と底壁(7)の平面との間に形成される角度は、好ましくは85~95°、より好ましくは87.5~92.5°、さらに好ましくは88.5~91.5°の範囲である。
【0080】
また、エレメントがケーシング(2)の後壁(3’)を介して建物の壁又はファサードなどの基材の垂直面に取り付けられる場合、前壁、後壁、中間壁、及び長手方向側壁(3、3’、5、4、4’)が実質的に垂直に延在することが好ましい。
【0081】
さらに、エレメントがケーシング(2)の後壁(3’)を介して壁やファサードや建物のような下地の垂直面に取り付けられる場合、底壁(7)が実質的に水平に延在することが好ましい。
【0082】
ケーシング(2)の壁の厚さは、それぞれの壁の長さ及び/又は幅にわたって一定であっても、又は一定でなくてもよい。1つ又は複数の実施形態によれば、前壁、後壁、長手方向側壁、中間壁、及び底壁(3、3’、4、4’、5、7)の厚さは、それぞれの壁の長さ及び/又は幅にわたって実質的に一定である。
【0083】
好ましくは、壁(3、3’、4、4’、5、7)の厚さは25mm以下、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。1つ又は複数の実施形態によれば、ケーシング(2)の壁(3、3’、4、4’、5、7)は、0.1~5mm、好ましくは0.25~3.5mm、より好ましくは0.35~2.5mmの厚さを有する。上記範囲に入る壁の厚さを有するケーシングは、押出成形、射出成形、付加製造技術などの熱可塑性プラスチック材料の従来の加工技術を用いて容易に製造することができる。
【0084】
グリーンウォールエレメントの好ましい寸法は、適用要件に依存する。好ましくは、エレメントは、15~300cm、より好ましくは25~250cm、さらに好ましくは35~200cmの幅及び/又は長さを有し得る。
【0085】
グリーンウォールエレメントのケーシングは、好ましくはポリマー材料から構成される。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、主成分として1種若しくは複数種のポリマーを有する材料を指す。
【0086】
グリーンウォールエレメントのケーシングに使用するために適切なポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、エチレンケトンエステル、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン、ゴムが挙げられる。
【0087】
適切なポリオレフィンとしては、エチレンベースのポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、並びにエチレンコポリマー、例えば、エチレンと1種若しくは複数種のα-オレフィンとのコポリマー、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、及びエチレンとアクリル酸エステルとのコポリマーが挙げられる。さらに適切なポリオレフィンとしては、プロピレンベースのポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、及びプロピレンコポリマー、例えば、プロピレンと1種若しくは複数種のα-オレフィンとのコポリマーが挙げられる。適切な熱可塑性ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
【0088】
適切なゴムとしては、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、合成1,4-シス-ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、イソプレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、メチルメタクリレート-ブタジエンコポリマー、メチルメタクリレート-イソプレンコポリマー、アクリロニトリル-イソプレンコポリマー及びアクリロニトリル-ブタジエンコポリマーが挙げられる。
【0089】
1つ又は複数の実施形態によれば、ケーシングのポリマー材料は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレンα-オレフィンコポリマー、エチレンアクリルエステルコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、及びプロピレンα-オレフィンコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーPを含む。
【0090】
少なくとも1種のポリマーPとして使用するために適切なポリエチレンとしては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。
【0091】
適切なエチレン-α-オレフィンコポリマーとしては、エチレンと、1種若しくは複数種のC~C20α-オレフィンモノマー、特にプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ヘキサドデセンの1種若しくは複数種とのランダム及びブロックコポリマーであって、好ましくは、コポリマーの重量に基づいて、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも65重量%のエチレン由来の単位を含むものが挙げられる。
【0092】
適切なエチレンランダムコポリマーとしては、例えば、Affinity(登録商標)EG 8100G、Affinity(登録商標)EG 8200G、Affinity(登録商標)SL 8110G、Affinity(登録商標)KC 8852G、Affinity(登録商標)VP 8770G及びAffinity(登録商標)PF 1140GなどのAffinity(登録商標)(全てDow Chemical Company製)の商品名;Exact(登録商標)3024、Exact(登録商標)3027、Exact(登録商標)3128、Exact(登録商標)3131、Exact(登録商標)4049、Exact(登録商標)4053、Exact(登録商標)5371及びExact(登録商標)8203などのExact(登録商標)(全てExxon Mobil製)の商品名;並びにQueo(登録商標)(Borealis AG製)の商品名で市販されているエチレンベースのプラストマー、並びに、例えば、Engage(登録商標)7256、Engage(登録商標)7467、Engage(登録商標)7447、Engage(登録商標)8003、Engage(登録商標)8100、Engage(登録商標)8480、Engage(登録商標)8540、Engage(登録商標)8440、Engage(登録商標)8450、Engage(登録商標)8452、Engage(登録商標)8200及びEngage(登録商標)8414などのEngage(登録商標)(全てDow Chemical Company製)の商品名で市販されているエチレンベースのポリオレフィンエラストマー(POE)が挙げられる。
【0093】
適切なエチレン-α-オレフィンブロックコポリマーとしては、Infuse(登録商標)9100、Infuse(登録商標)9107、Infuse(登録商標)9500、Infuse(登録商標)9507及びInfuse(登録商標)9530(全てDow Chemical Company製)などのInfuse(登録商標)の商品名で市販されているエチレンベースのオレフィンブロックコポリマー(OBC)が挙げられる。
【0094】
少なくとも1種のポリマーPとして使用するために適切なエチレンと酢酸ビニルとのコポリマーとしては、コポリマーの重量に基づいて、4~95重量%、好ましくは6~90重量%、より好ましくは8~90重量%の範囲の酢酸ビニル由来の構造単位の含有量を有するものが含まれる。適切なエチレン-酢酸ビニルビポリマー及びターポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素ターポリマーは、例えば、Escorene(登録商標)(ExxonMobil製)の商品名、Primeva(登録商標)(Repsol Quimica S.A.製)の商品名、Evatane(登録商標)(Arkema Functional Polyolefins製)の商品名、Greenflex(登録商標)(Eni versalis S.p.A.製)の商品名、及びLevapren(登録商標)(Arlanxeo GmbH製)の商品名、及びElvaloy(登録商標)(Dupont製)の商品名で市販されている。
【0095】
少なくとも1種のポリマーPとして使用するために適切なポリプロピレンとしては、例えば、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)及びホモポリマーポリプロピレン(hPP)などが挙げられる。
【0096】
適切なプロピレンコポリマーとしては、プロピレン-エチレンランダム及びブロックコポリマー、並びにプロピレンと1種若しくは複数種のC~C20α-オレフィンモノマー、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ヘキサドデセンの1種若しくは複数種とのランダム及びブロックコポリマーであって、好ましくは、コポリマーの重量に基づいて、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも65重量%のプロピレン由来の単位を含むものが挙げられる。
【0097】
適切なプロピレンランダム及びブロックコポリマーは、例えば、Intune(登録商標)及びVersify(Dow Chemical Company社製)の商品名、並びにVistamaxx(登録商標)(Exxon Mobil製)の商品名で市販されている。
【0098】
少なくとも1種のポリマーPとして使用するのにさらに適切なプロピレンコポリマーとしては、ヘテロ相プロピレンコポリマーが挙げられる。これらは、高結晶質ベースポリオレフィンと低結晶質又は非晶質ポリオレフィン変性剤とを含むヘテロ相ポリマー系である。ヘテロ相形態は、主にベースポリオレフィンから構成されるマトリックス相と、主にポリオレフィン変性剤から構成される分散相からなる。適切な市販のヘテロ相プロピレンコポリマーとしては、ベースポリオレフィンとポリオレフィン変性剤との反応器ブレンドが挙げられ、「in-situ TPO」又は「反応器TPO」又は「インパクトコポリマー(ICP)」とも呼ばれ、これらは典型的に逐次重合プロセスで製造され、マトリックス相の成分が第1の反応器で製造され、第2の反応器に移送され、そこで分散相の成分が製造され、マトリックス相中にドメインとして組み込まれる。ポリプロピレンホモポリマーをベースポリマーとして含むヘテロ相プロピレンコポリマーは、しばしば「ヘテロ相プロピレンコポリマー(HECO)」と呼ばれ、ポリプロピレンランダムコポリマーをベースポリマーとして含むヘテロ相プロピレンコポリマーは、しばしば「ヘテロ相プロピレンランダムコポリマー(RAHECO)」と呼ばれる。「ヘテロ相プロピレンコポリマー」という用語は、本開示において、ヘテロ相プロピレンコポリマーのHECO型及びRAHECO型の両方を包含する。
【0099】
ポリオレフィン変性剤の量に応じて、市販のヘテロ相プロピレンコポリマーは、典型的に、「インパクトコポリマー」(ICP)として、又は「反応器-TPO」として、又は「ソフト-TPO」として特徴付けられる。これらの種類のヘテロ相プロピレンコポリマーの主な違いは、ポリオレフィン変性剤の量が、典型的にICPでは、反応器-TPO及びソフト-TPOよりも少なく、例えば40重量%以下、特に35重量%以下であることである。その結果、典型的なICPは、反応器-TPO及びソフト-TPOと比較して、ISO 161522005規格に従って決定されるキシレン冷可溶性(XCS)含有量が低く、ISO 178:2010規格に従って決定される曲げ弾性率が高い傾向がある。
【0100】
適切なヘテロ相プロピレンコポリマーとしては、LyondellBasell社のCatalloyプロセス技術によって製造された反応器TPO及びソフトTPOが挙げられ、これらは、Adflex(登録商標)、Adsyl(登録商標)、Clyrell(登録商標)、Hiflex(登録商標)、Softell(登録商標)及びHifax(登録商標)、例えば、Hifax(登録商標)CA10A、Hifax(登録商標)CA12A、及びHifax(登録商標)CA60A、並びにHifax CA212Aの商品名で市販されている。さらに適切なヘテロ相プロピレンコポリマーは、Borsoft(登録商標)(Borealis Polymers製)、例えば、Borsoft(登録商標)SD233CFの商品名で市販されている。
【0101】
発泡無機材料が使用される場合、一般に、ケーシングの内面、特に発泡材料を収容する第2の区画の内面は、発泡無機材料との結合を形成するように作動することが好ましい。
【0102】
一部のポリマー材料は、ミネラルバインダー組成物との結合を形成するために本質的に動作可能であるが、他の材料は、反応性又は非反応性プライマーを使用するか、又は火炎(「フレーミング」)、オキソフルオロ化、プラズマ、コロナ、又は同様の技術を使用して、材料の表面を1つ又は複数の前処理工程を行う必要があり得る。発泡無機材料のケーシング内面への接着は、接着剤組成物又は多孔質材料、例えば、不織布又は織布をベースとした接触層を使用することによっても改善することができる。
【0103】
1つ又は複数の実施形態によれば、ケーシングのポリマー材料は、全てポリマーの総重量に基づく割合で、
A)少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、さらにより好ましくは少なくとも60重量%、なおより好ましくは少なくとも65重量%の少なくとも1種のポリマーP、
B)1.5~65重量%、好ましくは2.5~50重量%、より好ましくは5~45重量%、さらにより好ましくは10~40重量%、なおより好ましくは15~35重量%の少なくとも1種の無機フィラーF
を含む。
【0104】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種のポリマーPは、少なくとも1種のエチレン酢酸ビニルコポリマーP1を含む。好ましくは、少なくとも1種のエチレン-酢酸ビニルコポリマーP1は、コポリマーの重量に基づいて、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、さらにより好ましくは少なくとも25重量%、なおより好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも45重量%の酢酸ビニルから誘導される構造単位の含有量を有する。
【0105】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種のエチレン酢酸ビニルコポリマーP1は、コポリマーの重量に基づいて、5~95重量%、好ましくは15~90重量%、より好ましくは25~90重量%、さらに好ましくは35~90重量%、さらに好ましくは45~90重量%の酢酸ビニルから誘導される構造単位の含有量を有する。
【0106】
1つ又は複数の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のエチレン酢酸ビニルコポリマーP1は、コポリマーの重量に基づいて、35~95重量%、好ましくは45~95重量%、より好ましくは55~90重量%、さらに好ましくは65~90重量%、さらに好ましくは70~90重量%の酢酸ビニルから誘導される構造単位の含有量を有する。
【0107】
酢酸ビニルから誘導される構造単位の含有量が上記の範囲にあるエチレン酢酸ビニルコポリマーは、発泡無機材料との結合を形成するケーシングの能力を向上させることが判明しているので、ケーシングのポリマーに使用するのに特に適切である。
【0108】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種のエチレン酢酸ビニルコポリマーP1は、少なくとも1種のポリマーPの総重量の少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、なおより好ましくは少なくとも50重量%を構成する。
【0109】
少なくとも1種の無機フィラーFとして使用するために適切な化合物には、不活性ミネラルフィラー及びミネラルバインダーが含まれる。
【0110】
本明細書において「不活性ミネラルフィラー」という用語は、実質的に水に不溶であり、ミネラルバインダーとは異なり、水の存在下で水和反応を起こさないミネラルフィラーを指す。適切な不活性ミネラルフィラーとしては、例えば、砂、花崗岩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、粘土、膨張粘土、珪藻土、軽石、雲母、カオリン、ドロマイト、キソノトライト、パーライト、バーミキュライト、ウォラストナイト、バライト、クリストバライト、シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、ガラスビーズ、中空ガラス球、セラミック球、ボーキサイト、粉砕コンクリート、及びゼオライトが挙げられる。
【0111】
少なくとも1種の無機フィラーFとして使用するために適切なミネラルバインダーには、セメント及び水硬性石灰などの水硬性バインダー、硫酸カルシウム半水和物、無水石灰、非水硬性石灰などの空気硬化性バインダー、潜在水硬性バインダー及び/又はポゾラン系バインダーが含まれる。
【0112】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の無機フィラーFは、少なくとも1種の不活性ミネラルフィラー及び/又は少なくとも1種のミネラルバインダーを含むか、又はそれらから構成され、ここで、少なくとも1種の不活性ミネラルフィラーは、好ましくは、砂、花崗岩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、粘土、膨張粘土、珪藻土、軽石、雲母、カオリン、ドロマイト、キソノトライト、パーライト、バーミキュライト、ウォラストナイト、バライト、クリストバライト、シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、ガラスビーズ、中空ガラス球、セラミック球、ボーキサイト、粉砕コンクリート、及びゼオライトからなる群から選択され、そして少なくとも1種のミネラルバインダーは、好ましくは、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、水硬性石灰、硫酸カルシウム半水和物、無水石灰、非水硬性石灰、潜在水硬性バインダー材料、及びポゾラン系バインダー材料からなる群から選択される。
【0113】
少なくとも1種の無機フィラーFは、好ましくは微細に分割された粒子の形態で熱可塑性材料中に存在し、好ましくは500μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは100μm以下の中央粒子d50径を有する。「粒子径」という用語は、粒子の面積相当球径を意味する。
【0114】
中央粒子径d50という用語は、体積比で全粒子の50%未満がd50値より小さい粒子径を指す。粒子径分布は、ASTM C136/C136M-14規格(「細骨材及び粗骨材のふるい分析のための標準試験方法(Standard Test Method for Sieve Analysis of Fine and Coarse Aggregates)」)に記載されている方法に従って、ふるい分析によって決定することができる。
【0115】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の無機フィラーFは、0.1~100μm、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは0.1~25μm、さらに好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.1~5μmの中央粒子d50径を有する。
【0116】
少なくとも1種のミネラルバインダーB、少なくとも1種の合成有機ポリマーSP、少なくとも1種の界面活性剤S、少なくとも1種のポリマーP、及び少なくとも1種の無機フィラーFについて上記で示した好ましさは、特に断らない限り、本発明の他の全ての対象に等しく適用される。
【0117】
本発明の別の対象は、本発明のグリーンウォールエレメント(1)の製造方法であって、
I)上記で定義されたような第1及び第2の区画(6、6’)を有するケーシング(2)を提供するステップと、
II)発泡組成物を提供するステップと、
III)ケーシング(2)の第2の区画(6’)を発泡組成物で少なくとも部分的に充填するステップと、
IV)発泡組成物を硬化させるステップと
を含む方法である。
【0118】
好ましくは、発泡組成物は、500kg/m(g/l)以下、好ましくは300kg/m(g/l)以下、より好ましくは250kg/m(g/l)以下、さらに好ましくは200kg/m(g/l)以下、例えば15~250kg/m(g/l)、好ましくは25~150kg/m(g/l)の密度を有する。
【0119】
発泡組成物を提供する方法のステップII)は、ケーシングの第2の区画を発泡組成物で充填するステップIII)より前に実施することも、又はステップIII)と同時に実施することもできる。1つ又は複数の実施形態によれば、ステップII)はステップIII)より前に実施される。
【0120】
1つ又は複数の実施形態によれば、発泡組成物は、発泡合成有機組成物であり、好ましくは、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、及びポリオレフィン発泡組成物、並びに発泡ゴム組成物からなる群から選択され、より好ましくは、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、及びポリオレフィン発泡組成物からなる群から選択される。
【0121】
1つ又は複数の実施形態によれば、発泡組成物は、
a)少なくとも1種のミネラルバインダーB、
b)任意選択的に少なくとも1種の合成有機ポリマーSP、
c)任意選択的に少なくとも1種の界面活性剤S、及び
d)水
を含む発泡無機組成物である。
【0122】
好ましくは、少なくとも1種のミネラルバインダーBは、発泡無機組成物の総重量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、さらに好ましくは少なくとも75重量%を構成する。
【0123】
1つ又は複数の実施形態によれば、発泡無機組成物中の少なくとも1種のミネラルバインダーBの量対少なくとも1種の合成ポリマーSPの量の重量比は、100:0~70:30、好ましくは100:0~80:20である。
【0124】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の合成ポリマーSPの割合は、発泡無機組成物中の少なくとも1種のミネラルバインダーBの重量に対して、1~25重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは8~12重量%である。
【0125】
1つ又は複数の実施形態によれば、ステップII)は、
-水性発泡体と、少なくとも1種のミネラルバインダーB及び任意選択的に少なくとも1種の合成有機ポリマーSPを含む水性スラリーとを別々に提供することと
-水性発泡体を水性スラリーと混合し、発泡無機組成物を得ることと
を含む。
【0126】
少なくとも1種の合成有機ポリマーSPは、使用される場合、好ましくは分散ポリマーとして水性スラリー中に存在する。
【0127】
水性スラリーは、少なくとも1種の合成有機ポリマーSPを水性ポリマー分散体の形態及び/又は再分散性ポリマー粉末の形態で提供し、水性ポリマー分散体及び/又は再分散性ポリマー粉末を、少なくとも1種のミネラルバインダーBと、任意選択的に追加量の水と、任意の従来の混合技術を用いて混合することによって得ることができる。
【0128】
少なくとも1種の合成有機ポリマーSPの水性ポリマー分散体は、例えば、当業者に公知の物質、溶液、懸濁又は乳化重合技術を用いたフリーラジカル重合によって、或いは再分散性ポリマー粉末を水と混合することによって調製することができる。2種以上の異なる合成有機ポリマーSPを含む水性ポリマー分散体は、市販の水性ポリマー分散体及び/又は再分散性ポリマーの混合物を使用することにより容易に調製することができる。
【0129】
適切な水性ポリマー分散体は、例えば、
Synthomer(UK) limitedから、Lipaton(登録商標)の商品名、例えば、Lipaton(登録商標)SB 2540、Lipaton(登録商標)SB 3040、及びLipaton(登録商標)SB 2740(スチレンブタジエンコポリマー)、並びにPlextol(登録商標)の商品名、例えば、Plextol E 303及びPlextol X 4002(純粋アクリル);
Celaneseから、Mowilith(登録商標)の商品名、例えば、Mowilith(登録商標)LDM 7978(アクリル)及びMowilith(登録商標)LDM 7651(スチレンアクリル);
BASFから、Acronal(登録商標)の商品名、例えば、Acronal(登録商標)V 278(アクリレート)、Acronal(登録商標)V 212(アクリレート)、Acronal(登録商標)81 D(アクリレート)、Acronal(登録商標)4 F(アクリレート)、
Acronal(登録商標)DS 5017(純粋アクリレート)、及びAcronal(登録商標)A 107(純粋アクリレート);
Airproductsから、Airflex(登録商標)の商品名、例えば、Airflex(登録商標)EF811(ビニルアクリルコポリマー);
Arkemaから、Encor(登録商標)の商品名、例えば、Encor(登録商標)flex 187(アクリル)、Encor(登録商標)123(スチレンアクリル)、Encor(登録商標)flex 192(スチレンアクリル)、及びEncor(登録商標)9176(スチレンアクリル);
Wacker Chemieから、Vinnapas(登録商標)の商品名、例えば、Vinnapas(登録商標)EAF 60及びVinnapas(登録商標)EAF 67(酢酸ビニル/エチレン/アクリレートポリマー);並びに
Dow Chemicalsから、Primal(登録商標)の商品名、例えば、Primal(登録商標)CA-162及びPrimal(登録商標)CA-172(アクリル)
で入手可能である。
【0130】
水性スラリーを得るために、好ましくは、少なくとも1種の合成有機ポリマーSPを再分散性ポリマー粉末の形態で使用してよい。再分散性ポリマー粉末は、一般に、水性ポリマー分散体から噴霧乾燥技術によって製造される。再分散性ポリマー粉末は、コロイド安定剤及びブロッキング防止剤から選択される1種若しくは複数種の化合物をさらに含んでもよい。再分散性ポリマー粉末及びその製造方法の例は、例えば、特許出願、米国特許出願公開第2005/0014881A1号明細書に開示されている。
【0131】
適切な再分散性ポリマー粉末は、例えば、
Wacker Chemieから、Vinnapas(登録商標)の商品名、例えば、Vinnapas(登録商標)2000シリーズ、Vinnapas(登録商標)3000シリーズ、Vinnapas(登録商標)4000シリーズ、Vinnapas(登録商標)5000シリーズ、Vinnapas(登録商標)7000シリーズ、及びVinnapas(登録商標)8000シリーズ;並びに
Synthomerから、Axilat(登録商標)の商品名、例えば、Axilat(登録商標)HP8000シリーズ、Axilat(登録商標)UPシリーズ、Axilat(登録商標)PSB150(スチレンブタジエンコポリマー)、及びAxilat(登録商標)PAVシリーズ(酢酸ビニルバーサチック酸(versatate)ビニルコポリマー)
で入手可能である。
【0132】
水性発泡体は、液体壁で囲まれた気体泡を含むか、又は気体泡からなる。気泡の気体は、空気、窒素、二酸化炭素、希ガス、又はそれらの混合物などの任意の種類の気体であることができ、好ましくは空気である。
【0133】
水性発泡体は、好ましくは、気体、特に空気、窒素及び/又は二酸化炭素及び/又は希ガスの存在下で、水性混合物を機械的に発泡させることによって調製される。機械的発泡とは、気体を発生させる化学反応を行うことなく、気体と水とを混合することにより、気体泡を水性発泡体の水中に導入する方法を指す。
【0134】
1つ又は複数の実施形態によれば、発泡体は、化学的に作用する細孔形成剤及び/又は化学的に作用する発泡剤の不存在下で実施される。化学的に作用する細孔形成剤及び/又は化学的に作用する発泡剤の不存在下とは、化学的に作用する細孔形成剤及び/又は化学的に作用する発泡剤の割合が、水性発泡体の水の重量に対して、0.1重量%より低く、特に0.01重量%より低く、特に0.001重量%より低いことを意味する。最も好ましくは、化学的に作用する細孔形成剤及び/又は化学的に作用する発泡剤は存在しない。
【0135】
1つ又は複数の実施形態によれば、水性発泡体は、水性混合物を気体、好ましくは空気で機械的に発泡させることによって得られる。
【0136】
好ましくは、水性発泡体は、少なくとも1種の界面活性剤S、好ましくはアニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を含む。界面活性剤は、水性発泡体の発泡体構造の安定化に役立つ。適切な種類の界面活性剤については既に上述した。少なくとも1種の界面活性剤Sは、発泡前に水性混合物中に供給されることがさらに好ましくなり得る。
【0137】
少なくとも1種の界面活性剤Sは、水性発泡体の総重量に対して、好ましくは0.001~10重量%、より好ましくは1~4重量%、さらに好ましくは2~3重量%を構成する。
【0138】
1つ又は複数の実施形態によれば、水性スラリーは、少なくとも1種の固体フィラーSFをさらに含む。少なくとも1種の固体フィラーSFとして使用するために適切な化合物には、水の存在下で水和反応を起こさず、水に実質的に不溶性である無機材料、有機材料、及び合成有機材料が含まれる。特に、少なくとも1種の固体フィラーSFは、発泡無機組成物の他の構成成分とは化学的及び/又は物理的に異なる。
【0139】
好ましくは、少なくとも1種の固体フィラーSFは、20℃の温度で、0.1g/100g水未満、より好ましくは0.05g/100g水未満、さらに好ましくは0.01g/100g水未満の水溶性を有する。水中での化合物の溶解度は、さらに化合物を添加しても溶液の濃度は増加しない、すなわち、過剰量の物質が沈殿し始める、飽和濃度として測定することができる。水中での化合物の水溶解度の測定は、OECD試験ガイドライン105(採択1995年7月27日)に定義されている標準的な「シェイクフラスコ」法を用いて行うことができる。
【0140】
少なくとも1種の固体フィラーSFの粒径は特に制限されず、サブミクロンサイズの粒子、マイクロメートルサイズの粒子、ミリメートルサイズの粒子からセンチメートルサイズの粒子まで全て適切である。
【0141】
好ましくは、少なくとも1種の固体フィラーSFは、20mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下の最大粒径を有する。
【0142】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の固体フィラーSFは、砂、石灰石、人造石、石英粉、石英砂、重晶石、タルク、ドロマイト、ウォラストナイト、雲母、パーライト、軽石、バーミキュライト、ノルライト、フライアッシュ、マイクロシリカ、カオリン、メタカオリン、シリカフューム、ヒュームドシリカ、高炉水砕スラグ、発泡高炉スラグ、火山スラグ、膨張粘土、膨張頁岩、膨張粘板岩、発泡ガラス、ポゾラン、珪藻土、セラミック粒子、セラミック球体、及び多孔質シリカからなる群から選択される。
【0143】
好ましくは、少なくとも1種の固体フィラーSFの割合は、水性スラリー中の少なくとも1種のミネラルバインダーBの総重量に対して、0.001~25重量%、より好ましくは0.001~10重量%、さらに好ましくは0.001~5重量%である。
【0144】
1つ又は複数の実施形態によれば、水性スラリーは、少なくとも1種の可塑剤PLをさらに含む。適切な可塑剤は、低い蒸気圧を有する液体不活性有機物質であり、好ましくは1バールの圧力で測定した沸点が200℃より高いものである。
【0145】
1つ又は複数の実施形態によれば、少なくとも1種の可塑剤PLは、リグノスルホネート、グルコネート、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、ビニルコポリマー、ポリカルボネートエーテル、アジピン酸及びセバシン酸可塑剤、リン酸可塑剤、クエン酸可塑剤、脂肪酸エステル及びエポキシ化脂肪酸エステル、ベンゾエート、フタレート、及び1,2-ジカルボキシシクロヘキサンのエステルからなる群から選択される。好ましい可塑剤としては、ポリカルボキシレートエーテルが挙げられる。特に少なくとも1種の可塑剤PLは、少なくとも1種の合成有機ポリマーSPとは化学的に異なる。
【0146】
少なくとも1種の可塑剤PL、特にポリカルボキシレートエーテルの割合は、水性スラリー中の少なくとも1種のミネラルバインダーBの総重量に対して、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%である。
【0147】
さらに、他の添加剤を水性発泡体及び/又は水性スラリーに添加してもよい。
【0148】
このような添加剤としては、増粘剤、粘性付与剤、促進剤、硬化遅延剤、着色顔料、中空ガラスビーズ、フィルム形成剤、疎水剤又は脱汚染剤、例えばゼオライト又はチタン二酸化物、ラテックス、有機又は鉱物繊維、ミネラル添加物又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、添加剤はいずれの消泡剤も含まない。
【0149】
「増粘剤」という用語は、一般に、不均質な物理相を平衡に維持すること、又はこの平衡を促進することを可能にする任意の化合物と理解される。適切な増粘剤は、好ましくはガム、セルロース又はその誘導体、例えばセルロースエーテル又はカルボキシメチルセルロース、デンプン又はその誘導体、ゼラチン、寒天、カラギーナン及び/又はベントナイト粘土である。
【0150】
油圧バインダー用の促進剤はよく知られており、本発明では、任意の固化及び硬化促進剤を使用することができる。例えば、促進剤は、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カルボン酸、金属酸化物、金属水酸化物、無機酸、水酸化アルカリ、アルカリ金属ケイ酸塩硝酸塩、及び/又は亜硝酸塩から選択されてよい。特に有利な促進剤としては、アルミニウム含有促進剤、例えば硫酸アルミニウムが挙げられる。
【0151】
好ましくは、促進剤、特にアルミニウム化合物は、水性スラリー中の少なくとも1種のミネラルバインダーBの総重量に対して、0.15~5重量%、好ましくは0.25~3重量%、特に0.5~2.5重量%の量で使用されてよい。
【0152】
水性発泡体及びミネラルバインダーBの水性スラリーは、好ましくは過圧条件下で互いに混合される。好ましくは、環境気圧に対して1~15バール、特に2~5バールの過圧で行う。これにより、発泡ミネラルバインダー組成物の密度を広い範囲で容易に調整することができる。
【0153】
最も好ましくは、混合はスタティックミキサーを用いて行われ、それにより、好ましくは、水性発泡体及びミネラルバインダーBの水性スラリーは、スタティックミキサーを通して加圧空気によって駆動される。好ましくは、加圧空気は、環境空気圧よりも1~15バール、特に6~10バール高い圧力を有する。それにより、安定な発泡ミネラルバインダー組成物が信頼できる様式で得られる。水性発泡体は、バッチ式でも連続式でもスラリーと混合することができる。
【0154】
水性スラリー中の少なくとも1種のミネラルバインダーBに対する水の重量比は、好ましくは0.2~0.7、より好ましくは0.25~0.5、さらに好ましくは0.3~0.4である。
【0155】
本発明の別の対象は、基材(8)と、基材の表面に取り付けられた本発明による1又は複数のモジュラーグリーンウォールエレメント(1)とを含むグリーンウォールである。
【0156】
各グリーンウォールエレメントは、好ましくは、その後壁(3’)の外面を介して基材の表面に取り付けられる。
【0157】
1つ又は複数の実施形態によれば、隣接するグリーンウォールエレメントは、それらの対向する長手方向側壁(4、4’)の外面を介して互いに取り付けられる。
【0158】
基材(8)は、好ましくは建築エレメント、特に建築物の壁又はファサードである。
【0159】
グリーンウォールエレメントは、基材(8)の表面上に任意のパターンで配置されることができ、例えば、図4に示すように、エレメントが列になって並ぶように、又は列の間で相殺する(offset)ように配置することができる。
【0160】
本発明のさらに別の対象は、グリーンウォールを提供するための方法であって、
I.本発明による1つ又は複数のモジュラーグリーンウォールエレメントを提供するステップと、
II.各エレメント(1)が後壁(3’)の外面を介して基材の表面に直接的又は間接的に連結されるように、エレメントを基材(8)の表面に取り付けるステップと、
III.任意選択的に、対向する長手方向側壁(4、4’)の外面を介して、隣接するエレメントを互いに取り付けるステップと
を含む、グリーンウォールを提供するための方法である。
【0161】
基材(8)は、好ましくは建築エレメント、特に建築物の壁又はファサードである。
【0162】
グリーンウォールエレメントは、機械的固定又は接着剤又は熱接着手段を用いることによってなど、従来の任意の手段を用いて基材の表面及び/又は互いに取り付けることができる。
【0163】
グリーンウォールエレメントを基材の表面及び/又は互いに取り付けるために適切な機械的固定手段には、金属棒、ねじ、釘、クレビスボルト、金網エレメント、及び固定ブラケットが含まれる。
【0164】
グリーンウォールエレメントを基材の表面及び/又は互いに取り付けるために適切な接着剤には、例えば、一成分及び多成分反応性及び非反応性ポリウレタン、アクリル及びエポキシド接着剤が含まれる。適切な接着剤には、感圧接着剤、接触接着剤及び構造用接着剤が含まれる。
【0165】
「熱結合手段」という用語は、熱エネルギーを加えて少なくとも1つの基材の組成物を少なくとも部分的に溶融させた後、基材の対向面を好ましくは圧力の影響下で互いに接触させ、そして基材を冷却することにより、接着剤を使用せずに層間の結合を形成するプロセスを指す。
【0166】
1つ又は複数の実施形態によれば、各エレメントの後壁(3’)の外面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%が、基材(8)の表面に直接的又は間接的に連結される。また、各エレメントの後壁(3’)が、基材(8)の表面に対して、その実質的に全外面にわたって直接的又は間接的に連結されていることも好ましい。「実質的に全表面」という表現は、それぞれの表面の少なくとも95%、好ましくは少なくとも97.5%、より好ましくは少なくとも99%を意味すると理解される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】