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特表2024-529926XL-MIMOシステムにおける可視クラスタ及び非定常性をモデル化するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】XL-MIMOシステムにおける可視クラスタ及び非定常性をモデル化するための方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20240806BHJP
【FI】
H04B7/0413 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503733
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2022070202
(87)【国際公開番号】W WO2023001825
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021207881.8
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】522296653
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1, 30175 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダビド ゴンザレス ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】オスバルド ゴンサ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ タデウ フレイタス デ アブレウ
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 寛貴
(57)【要約】
同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、複数の送信アンテナによって表される同相空間コンスタレーションシンボル及び直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングするXL-MIMOシステムにおける可視クラスタ及び非定常性をモデル化するための方法であって、所与のエリア内でランダムに配置されたクラスタをモデル化するマタンクラスタ点過程が、アンテナアレイの埋め込まれるエリアを定義する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、前記複数の送信アンテナによって表される前記同相空間コンスタレーションシンボル及び前記直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングするXL-MIMOシステムにおける可視クラスタ及び非定常性をモデル化するための方法であって、所与のエリア内でランダムに配置されたクラスタをモデル化するマタンクラスタ点過程が、アンテナアレイの埋め込まれるエリアを定義する、方法。
【請求項2】
範囲制限及び硬閾値法によるボックス化を介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)に対する修正が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ボックス化ハード反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)を用いて、アンテナ位置インデックス及びシンボル推定値の位置の貪欲選択と、対応するアンテナ変調ビット及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記貪欲検出と並行して行われる過程が、所与の有限の1セットのインデックスベクトルからのインデックスベクトルの有効な推定値が前記方法の出力において生成されることを確保するため、また確認された値を用いて干渉キャンセルを適用するために、
-前記貪欲選択からどのインデックスが取得されたかを追跡しながら、すべての繰り返しの前に、現在復号されているインデックスから最終確認ができるか否かのチェックが実行され、
-前記最終確認ができない場合、先行する貪欲選択による干渉を取り除き、次の繰り返しを行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
プロセッサと、揮発性及び/又は不揮発性メモリと、に通信チャネルにおいて信号を受信するように適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信機(R)であって、前記不揮発性メモリが、マイクロプロセッサによる実行時に請求項1~4の1つ以上の方法を実施するように前記受信機を構成するコンピュータプログラム命令を記憶する、受信機(R)。
【請求項6】
コンピュータ上での実行時に前記コンピュータに請求項1~4のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項7】
請求項6のコンピュータプログラム製品を記憶及び/又は送信する、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過負荷チャネルにおけるデジタル通信の復号の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
誰でも何でも情報にいつでもどこでもアクセスしたりデータ共有したりすることができる真の「ネットワーク社会」を実現するために、いわゆる5G無線通信システムが対処すべき3つの主要な課題がある。3つの主要な課題とは次の通りである。
○接続されるデバイスの数の大幅な増加。
○トラフィック量の大幅な増加。
○ますます広範になる、様々な要件及び特性を有するアプリケーション。
【0003】
トラフィック量の大幅な増加に対処するためには、より広い周波数帯域と、新しいスペクトラムと、シナリオによっては、より高密度なデプロイメントとが必要となる。トラフィックの増加のほとんどが屋内であると予想されるため、屋内カバレッジが重要になる。
【0004】
無線通信ネットワークのスループット及びユーザ容量は、多入力多出力(multiple-input multiple-output、MIMO)技術のおかげで、過去10年間にわたって指数関数的に向上しており、MIMO技術は将来のシステムにおいても重要な役割を担い続けるはずである。実際、現在デプロイされているシステムでは、空間自由度(degrees of freedom、DoF)、チャネル硬化、スペクトル効率、固有のチャネル直交性、及びマッシブアレイ利得に関して、マッシブMIMOシステムの魅力の一部しか実現されていない。
【0005】
しかしながら、MIMOシステムのスケール及び密度が真のマッシブ構成に向かって成長するにつれ、インフラストラクチャのコスト及び様々な物理的制約に加えて、数波長オーダーのアンテナ分離、完全なチャネル状態情報(channel state information、CSI)の把握、及び完全に空間的に無相関且つ豊富で多様なチャネルなどの理想的な仮定は、現実からますます遠ざかることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの課題に対処することを目的として、最近、分散型マッシブMIMOの新しいコンセプトが提案されており、中でも、セルフリーMIMO(cell-free MIMO、CF-MIMO)システム及び超大規模MIMO(extra large MIMO、XL-MIMO)システムがある。空間分散型MIMOコンセプトの一例と見なされ得るセルフリーマッシブMIMOシステムでは、特定のサービスエリアにわたって地理的に分散され、フロントホールリンクを介して共通の中央処理装置(central processing unit、CPU)に接続された多数のアクセスポイント(access point、AP)が、複数のユーザ機器(user equipment、UE)に同時にサービス提供する。空間ダイバーシティのおかげで、CF-MIMOは本質的に空間相関にロバストであるが、これを実現するためには、限られたフロントホール接続の影響を緩和するために、大容量フロントホールリンク若しくは圧縮技法のいずれか、又はこれらの両方を必要とするという犠牲を伴う。対照的に、XL-MIMOシステムは、ビル、スタジアム、駅、及び空港の壁及び天井に膨大な数のアンテナを埋め込むことによって、これらを環境に直接組み込む「MIMO連続体(MIMO continuum)」を形成する戦略に従うものといえる。XL-MIMOシステムは、広範囲にわたる表面上で使用される大開口サブアレイの使用に依拠するため、XL-MIMOシステムは、空間的非定常性など、その特殊性に対処しなければならず、つまり、各ユーザからの信号が、XL-MIMOのアンテナアレイの分散した部分(XL-MIMOのアンテナアレイの見通し領域(visibility region、VR)と呼ばれる)にしか見えていないという事実に対処しなければならない。
【0007】
このような影響を捉える初期の試みの1つでは、アレイ全体のレイリー距離に対するユーザと散乱体との間の近接に起因する非平面波面を記述するために、球面波伝播分析モデルが検討された。上記の試みの後、いくつかの研究が提案されている。少し例を挙げると、XL-MIMOビームフォーミングにおいて、ユーザグループ化ベースの近似ゼロフォーシング(zero-forcing、ZF)プリコーディング設計が提案されており、これはパフォーマンスと複雑度とのトレードオフが妥当であることが示された。
【0008】
上記に加えて、技術水準では、XL-MIMOシステムの別のボトルネック、つまり、XL-MIMOの地理的に分散されるという性質に起因して、各ユーザからの信号を観測できるのは全アンテナの一部に過ぎないという事実が議論されている。XL-MIMOにおけるこの空間的非定常性に様々な側面から対処する、いくつかの研究が提示されている。非定常性の影響を受けるXL-MIMOにおけるチャネル推定(channel estimation、CE)問題が、グラントベースのアクセスプロトコルを黙示的に仮定しながら検討された。XL-MIMOシステムにおける期待値伝播(expectation propagation、EP)ベースのマルチユーザデータ検出メカニズムが提案されており、XL-MIMO構成におけるよりエネルギー効率の高い通信のためのアレイ選択方法も提案された。アクセスの観点から、アクティブユーザインデックスが完全に把握されるものと仮定して、XL-MIMOシステムにおけるグラントベースのランダムアクセスストラテジが検討された。アップリンクXL-MIMOシステムで実現可能なスループットの理論的解釈が既に説明されている。
【0009】
システムからアクセスの視点に戻ると、将来の超高信頼低遅延通信(ultra reliable low latency communications、URLLC)及び大規模マシンタイプ通信(massive machine type communications、mMTC)を実現する上で、グラントフリー(grant-free、GF)アクセス技術が果たす重要な役割について考える。実際、GFアクセス方式は、従来の(グラントベースの)アクセス方式と比較してオーバーヘッドを著しく削減することができる一方で、アクティビティ及びチャネルの同時推定(joint activity and channel estimation、JACE)が実現可能であることが必要になる。
【0010】
JACE方式を設計する一般的な手法は共分散ベースの方法であり、共分散ベースの方法では、アクティブユーザ検出(active user detection、AUD)が、瞬時受信信号のサンプル共分散を利用することによって実行され、続いて、推定されたアクティブユーザインデックスを所与として、従来のCEが実行される。別の主要な手法は、機械学習(machine learning、ML)支援の方法であり、その一例が提案される方式であり、提案される方式では、JACEを実行するために深層ニューラルネットワーク(deep neural network、DNN)が採用された。他の有望な手法はベイズ推定ベースのJACEメカニズムであり、ベイズ推定ベースのJACEメカニズムでは、JACEタスクを達成するために、近似された(線形)ループのある(loopy)信念伝播(belief propagation、BP)アルゴリズムが活用される。本発明者らは、最近、以前の線形ベイズ推定方法よりも優れる新たな双線形ベイズ推定フレームワークを採用してGFアクセスにベイズ推定ベースのJACEを実行することができることを示した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願では、GF XL-MIMOシステムにおける新規なJACE方法を提案することにより、上述の両方の課題に寄与する。特に、チャネル係数並びにXL-MIMO構成におけるユーザ及びサブアレイのアクティビティ(すなわち、非定常性)を同時推定する双線形推定方法の設計が開示され、これは、知る限り、技術水準において最初のものである。
【0012】
空間的非定常性をモデル化するいくつかの試みが存在するが、本発明者らの知る限り、確率幾何学による空間的非定常性のモデル化方法はまだ知られていない。本発明は、まったく異なる手法、すなわち確率幾何学を用いた解決策を提供する。
【0013】
既存の手法のほとんどが、XL-MIMOシステムにおける可視クラスタを捉えるために、一様にランダムなアクティブパターンを考慮した。しかしながら、この手法では、このようなクラスタの凝集性を説明することはできない、つまり、既存の解決策では現象の本質を捉えることができない。本発明者らは、確率幾何学的モデル化によるクラスタ点過程を用いることにより、この課題への対処を試みる。
【0014】
本発明は、空間的非定常性の影響を受ける超大規模多入力多出力(XL-MIMO)システムにおける部分的可視クラスタのためのモデルを提案する。アンテナアレイが、ビル、スタジアム、駅、及び空港の壁及び天井に埋め込まれる場合、各ユーザからの信号は、XL-MIMOアンテナアレイの特定の部分にしか見えていない。本発明は、確率幾何学を利用することにより、これらの現象をエミュレートする解決策を提供する。
【0015】
本開示のシステム、方法、及びデバイスは、それぞれいくつかの態様を有するものであり、これらの態様の1つが単独で、その望ましい属性を担うものではない。後に続く特許請求の範囲によって表される本開示の範囲を限定することなく、ここで、いくつかの特徴を簡単に論じる。ここで論じたことを検討すれば、また特に「発明を実施するための形態」と題するセクションを読めば、XL-MIMOシステムをモデル化するために、本開示の特徴がどのように提供するかを理解するはずである。
【0016】
新しいXL-MIMOモデルが説明される。非定常性、ユーザアクティビティパターン、及びチャネルフェージングは同時に(jointly)、入れ子になったベルヌーイ・ガウス分布に従う確率変数の新しい推定問題をもたらす。このことについては、本出願のシステムのセクションにおいて取り上げる。本発明者らの知る限り、この定式化が文献に登場するのは初めてである。
【0017】
新しい、扱いやすいJACE手法が説明される。関心対象の変数が入れ子の性質を有することから、JACE問題は扱いやすい双線形推定問題に分離される。
【0018】
更に、新しい、効率的なJACE方法が説明される。再定式化された双線形推定問題を解くために、推定値が閉形式で得られる新規なメッセージパッシング規則が導出されている。導出されたメッセージパッシング規則に基づいて、非定常性の影響を受けるGF XL-MIMOシステムにおける反復JACE方法が提案される。
【0019】
新しいXL-MIMO非定常性システムが開示される。既存の文献とは異なり、サブアレイアクティビティのクラスタ的性質を捉えるために、マタンクラスタ点過程(Matern-cluster point process、MCPP)ベースのサブアレイアクティビティシステムが説明され、これに基づいて異なる手法の推定パフォーマンスが比較される。
【0020】
本解決策は、確率幾何学に由来する技法であるクラスタ点過程に基づく。より正確には、本発明は、所与のエリア(すなわち、アンテナアレイが組み込まれているエリア)内のランダムに配置されたクラスタをモデル化したマタンクラスタ点過程を利用することを提案する。主なアイデアは、このようなクラスタ点過程を介してXL-MIMOシステムで観測される空間的非定常性をモデル化することである。この手法は当業者にとって自明ではなく、可視クラスタの凝集性を捉えることを可能にする。各ユーザからの信号が粒子アレイにおいてのみ観測され得るこのような可視クラスタの理解を助ける例については、以下の図1を参照されたい。このアイデアは、シナリオ固有の特性をマタンクラスタ点過程のパラメータにマッピングして、望ましいユーザクラスタ化を得ることである。本方法に基づいて、将来のXL-MIMOシステムにおける更なる設計上の仮定を行うことができる。より良い(現実により近い)モデル化、容易に実装できること、異なる特定のシナリオ条件(例えば、クラスタのサイズ、相関など)をモデル化する際の柔軟性などである。提案される方法は、XL-MIMOが適用される将来の無線システム(例えば、5G+、6G)に適用することができる。
【0021】
上記の課題を解決する1つの好ましい実施形態は、同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、複数の送信アンテナによって表される同相空間コンスタレーションシンボル及び直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングするXL-MIMOシステムにおける可視クラスタ及び非定常性をモデル化するための方法であって、所与のエリア内でランダムに配置されたクラスタをモデル化するマタンクラスタ点過程が、アンテナアレイの埋め込まれるエリアを定義する、方法である。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態は、範囲制限及び硬閾値法によるボックス化を介した反復縮小閾値アルゴリズム(iterative shrinkage-thresholding algorithm、ISTA)に対する修正が行われる方法を特徴とする。
【0023】
別の実施形態は、ボックス化ハード反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)を用いて、アンテナインデックス及びシンボル推定値の位置の貪欲選択と、対応するアンテナ変調ビット及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号が決定される方法を特徴とする。
【0024】
本方法の更なる実施形態は、貪欲検出と並行して行われる過程が、所与の有限の1セットのインデックスベクトルからのインデックスベクトルの有効な推定値が本方法の出力において生成されることを確保するため、また確認された値を用いて干渉キャンセルを適用するために、貪欲選択からどのインデックスが取得されたかを追跡しながら、すべての繰り返しの前に、現在復号されているインデックスから最終確認ができるか否かのチェックが実行され、最終確認ができない場合、先行する貪欲選択による干渉を取り除き、次の繰り返しを行うことを特徴とする。
【0025】
本発明の一実施形態は、プロセッサと、揮発性及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルにおいて信号を受信するように適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信機(R)であって、不揮発性メモリが、マイクロプロセッサによる実行時に上記の方法を実施するように受信機を構成するコンピュータプログラム命令を記憶する、受信機(R)を特徴とする。
【0026】
上記の課題が、コンピュータ上での実行時にコンピュータに上記の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品によって解決される。
【0027】
上記の課題が、上記のコンピュータプログラム製品を記憶及び/又は送信するコンピュータ可読媒体によって解決される。
【0028】
本発明の本質をより十分に理解するためには、添付の図面と併せて読まれるべき以下の詳細な説明を参照されたい。上で簡潔に要約した本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、より具体的な説明が態様を参照することによってなさえることがあり、態様のいくつかを図面に示す。しかしながら、添付の図面は、本開示の特定の態様のみを示すものであり、説明は他の均等に効果的な態様が認められ得るため、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】各ユーザが伝播条件に応じて10のXL-MIMOのアレイの異なるサブアレイを独立にアクティブ化する、空間的非定常性を伴うマルチユーザXL-MIMOシステムのアップリンクの図を示す。
図2図2a、図2bは、異なるパイロット長における、N=400且つM=200の場合のSNRに対するNMSEパフォーマンスを示す。
図3】異なるパイロット長における、N=400且つM=200の場合のSNRに対するAERパフォーマンスを示す。
図4】異なるサブアレイアクティビティ指標に対する提案されるアルゴリズムのレジリエンスを比率で示す。
図5】アルゴリズムの繰り返し回数に対する提案されるアルゴリズムの収束挙動を示す。
図6】MCPPベースのサブアレイアクティビティを示す。
図7】一様にランダムなサブアレイアクティビティを示す。
図8図8a、図8b、図8cは、異なるμにおける、MCPPでN=400、M=200、且つL=70の場合のSNRに対するNMSEパフォーマンスを示す。
図9図9a、図9b、図9cは、異なるμにおける、MCPPでN=400、M=200、且つL=70の場合のSNRに対するAERパフォーマンスを示す。
図10】異なるクラスタ強度における提案される方法のNMSEパフォーマンスを示す。μ=3、6、及び9における実際のアレイアクティビティ比率を矢印で注釈する。
図11】異なるクラスタ半径サイズにおける提案される方法のNMSEパフォーマンスを示す。μ=3、6、及び9における実際のアレイアクティビティ比率を矢印で注釈する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
超大規模MIMO(XL-MIMO)システムは、各サブアレイにおける各ユーザのアクティビティが入れ子にされたベルヌーイ・ガウス分布を特徴とし得るような受信信号の二重スパース且つユーザ固有の構造をもたらす空間的非定常性の影響を受ける。本出願は、空間的非定常性の影響を受けるXL-MIMOシステムにおけるアクティビティ及びチャネルの同時推定(JACE)問題を考え、この問題を解決する2つの主要な実施形態を提供する。
【0031】
第1の実施形態は、期待値最大化(expectation maximization、EM)ベースの自動パラメータ化によって強化された、サブアレイアクティビティパターン(別称、空間的非定常性)、ユーザアクティビティパターン、及び関連するチャネル係数を同時に推定することができる新規な双線形ベイズ推定方法である。
【0032】
第2の実施形態は、サブアレイアクティビティパターンをシミュレートする、現実的なポアソン点過程(Poisson point process、PPP)及びマタンクラスタ点過程(MCPP)の確率幾何学(stochastic-geometry、SG)モデルの導入であり、これにより、構造化された仕方で様々な条件下における提案されるXL-MIMO JACE解決策と、技術水準(SotA)のXL-MIMO JACE解決策との両方のパフォーマンス評価が可能となる。提案される双線形JACE方法の有効性は数値シミュレーションによって確認され、数値シミュレーションは、提案される方法がSotAよりも著しくパフォーマンスが優れるだけではなく、広い信号対雑音比(SNR)範囲にわたって、ジニー支援(genie-aided)(理論的)方式のパフォーマンスに到達し得ることを示す。
【0033】
マタンクラスタ点過程は一種のクラスタ点過程であり、つまり、マタンクラスタ点過程のランダムに配置された点がランダムなクラスタを形成する傾向がある。空間統計学に由来する技法を用いて、クラスタ化の定義をより正確にすることが可能である。この点過程は、空間統計及び電気通信で用いられているネイマン・スコット点過程(Neyman-Scott point process)として知られるクラスタ点過程族の一例である。
【0034】
マタンクラスタ点過程は、まったく異なる種類の点過程であるマタンハードコア点過程と混同してはならない。ベルティル・マタンは少なくとも4種類の点過程を提案しており、彼の名前はガウス過程を定義するのに使用される特定のタイプの共分散関数も指す。
【0035】
マタンクラスタ点過程をシミュレートするには、まず、矩形などの何らかのシミュレーション窓で強度λ>0を有する一様ポアソン点過程をシミュレートする必要があり、ここではシミュレーション窓として矩形を用いる。次に、この基礎となる点過程の各点について、一定半径r>0を有する円盤上で一様に平均μ>0を有するポアソン過程に従う点の数をシミュレートする。基礎となる点過程は親(点)過程と呼ばれることもあり、その点はクラスタ円盤の中心となる。
【0036】
すべての円盤上の後続の点過程は娘(点)過程と呼ばれ、クラスタを形成する。矩形及び円盤で一様ポアソン点過程をシミュレートすることについては既知であるため、これらの投稿は良い出発点であり、これらの工程の詳細についてはあまり重点的に記載しない。
【0037】
この点過程をサンプリングする際の主な課題は、シミュレーション窓の外にある親点に由来する娘点がシミュレーション窓に出現する可能性があることである。換言すれば、シミュレーション窓の外にある親点は、窓の中にある点に寄与する。これらの周辺効果を排除するためには、点過程を拡張バージョンのシミュレーション窓でシミュレートする必要がある。そして、シミュレーション窓の中にある娘点だけを残し、それ以外は除去する。その結果、点は拡大された窓でシミュレートされるが、見えるのはシミュレーション窓の中にある点だけである。
【0038】
拡張されたシミュレーション窓を作るために、シミュレーション窓の全周に幅rの細長い部分を追加することができる。距離rは、シミュレーション窓の中に娘点を依然として有しながら、(シミュレーション窓の外にある)寄与する可能性のある親点が存在し得るシミュレーション窓からの最大距離である。このことは、この距離を超えた(拡張された窓の外にある)仮定の親点が、シミュレーション窓の中に含まれ得る娘点を生成することは不可能であることを意味する。
【0039】
基礎となるポアソン点過程、すなわちポアソン親点過程を矩形上にNP個の点でシミュレートする。次に、各点について、ポアソン点過程に従う数の点をシミュレートする。ここで、各円盤はDi個の点を有する。そうすると、点の総数は単純にN=D1+...+DP=ΣNPi=1Diとなる。確率変数P及びDiは、それぞれ平均λA及びμであるポアソン確率変数であり、Aは矩形シミュレーション窓の面積である。MATLABでこれらの確率変数をシミュレートするには、poissrnd関数を使用する。Rでこれを行うには、標準関数rpoisを使用する。Pythonでは、SciPyライブラリ又はNumPyライブラリのscipy.stats.poisson関数又はnumpy.random.poisson関数を使用することができる。
【0040】
親点過程の点は、デカルト座標を用いてランダムに配置される。一様ポアソン点過程の場合、各点のx座標及びy座標は独立した一様な点であり、これは以前の投稿で取り上げた二項点過程の場合も同様である。すべての娘点過程の点は、極座標を用いてランダムに配置される。一様ポアソン点過程の場合、各点のθ座標及びρ座標は、それぞれ一様分布及び三角分布の独立した変数であり、これは以前の投稿で取り上げた。次に、座標をデカルト形式に変換して戻す。これはMATLABでpol2cart関数により容易に行うことができる。このような関数を持たないプログラミング言語では、x=ρcos(θ)であり、y=ρsin(θ)である。
【0041】
実際には、すべての娘点は原点を中心とする円盤でシミュレートされる。次に、各クラスタ円盤について、すべての点をクラスタの中心である原点に移動させ、これによりシミュレーション工程が完了する。
【0042】
コード内でベクトル化を使用するために、MATLABではrepelem関数、Rではrep関数、Pythonではrepeat関数を使用することにより、各クラスタ点の座標が対応するクラスタ内の娘の数だけ繰り返される。
【0043】
図1は、各ユーザが伝播条件に応じてXL-MIMOのアレイの異なるサブアレイを独立にアクティブ化する、空間的非定常性を伴うマルチユーザXL-MIMOシステムのアップリンクの図を示している。
【0044】
システムモデルの説明
S個のサブアレイから構成されるXL-MIMOシステムを考える。ここで、各サブアレイがNs個のアンテナ素子を備え、アンテナアレイ素子の総数が、
【数1】
で与えられ、そして、G∈CN×MをXL-MIMOアレイとM個の単一アンテナユーザとの間の有効チャネル行列とし、これが、ユーザアクティビティ、サブアレイVR、及びフェージング利得を同時に記述する。そうすると、図1に示すような対応するシステムモデルは、次式
【数2】
で与えられ、上式で、X∈CM×Lは、各ユーザによって送信されるL個の信号を集めたパイロット行列であり、W∈CN×Lは、vec(W)~CN(0,σI)であるようなゼロ平均単位分散独立同分布(independent and identically-distributed、iid)加法性白色ガウス雑音(additive white Gaussian noise、AWGN)を表す。
【0045】
式(1)において、M人のユーザのうちごく一部だけがアクティブである一方、残りはL回の送信の時間間隔中に休止したままであると仮定する。所与の時間間隔におけるアクティブユーザの数を表す確率変数をKとすると、平均ユーザアクティビティ確率は次のように表すことができる。
【数3】
【0046】
更に、XL-MIMO構成において観測される非定常性のおかげで、チャネル行列Gは、ユーザアクティビティとそれらのVRにおけるサブアレイ(すなわち、アクティブなサブアレイ)との両方を捉えるブロックスパース性を有して、m番目のユーザに対するGのm番目の列を次のようにモデル化することができる。
【数4】
上式で、
【数5】
はアダマール積(要素ごとの積)を表し、a∈{0,1}はユーザアクティビティ指標であり、
【数6】
はチャネル応答ベクトルであり、
【数7】
は、次式
【数8】
で定義されるサブアレイアクティビティ指標を表す。
【0047】
【数9】
が、通常と同様にガウス分布に従うと仮定すると、gは、次のように表すことができ、
【数10】
上式で、δ(・)はディラックのデルタ関数を表し、Γsmはs番目のサブアレイに対するm番目のユーザのチャネルの共分散行列であり、φsmはm番目のユーザに対するs番目のサブアレイの平均アクティビティを表し、
【数11】
であり、上式で、φはアクティブ確率であり、μは特定の平均を表し、Σは所与の共分散行列である。
【0048】
同時推定ストラテジ
本セクションでは、空間的非定常性の影響を受けるXL-MIMOシステムにおけるアクティビティ及びチャネルの同時推定のための新規な双線形メッセージパッシング方法を提案する。この目的のために、式(1)で与えられるシステムモデルの分解が行われ、続いてメッセージパッシング規則の詳細な導出が行われる。
【0049】
なお、一般性のために、本セクションを通して、チャネルベクトルの要素
【数12】
は独立であるが同一分布に従わないことが仮定されており、このことは、共分散行列Γsmが、すべて対角行列であるが、異なるノルムを有するということと同値である。これは、図1に示すように、一般にXL-MIMOアレイにおける各ユーザのVRは、異なる伝播経路からの信号の入射に起因するという事実に動機づけられる。
【0050】
後の便宜のために、まず式(4)を次のように再定式化し、
【数13】
この再定式化では、
【数14】
を用いており、上式で、
【数15】
はブロックフェージングチャネル行列であり、M×Mの対角行列A(但し、diag(A)=[a,a,...,a]∈{0,1}である)がユーザアクティビティ指標を捉える。
【0051】
表記を簡単にするために、以下、次の量
【数16】
を導入して(但し、
【数17】
である)、s番目のサブアレイにおける累積サブアレイアンテナインデックス群を表す。非定常性がチャネル行列Hの列ベクトルに与える影響をより詳しく把握するために、Hのm番目の列を詳しく見たものを考える。これは次式で与えられ、
【数18】
上式で、pms∈{0,1}(但し、s∈{1,2,...,S}である)は、サブアレイアクティビティ指標を表し、ベクトル
【数19】
はs番目のサブアレイに対応するアンテナインデックスの集合である。
【0052】
より好都合なことに、チャネル行列のm番目の列及びs番目のサブアレイは、ベルヌーイ・ガウス確率変数として次式のようにモデル化することができる。すなわち、
【数20】
であり、上式で、φsmはpmsの平均を表す。
【0053】
以上から、ユーザ及びサブアレイのアクティビティ指標、並びにチャネル係数を同時に推定する問題は、双線形推定問題のクラスに属することが容易に理解されよう。より正確には、受信信号行列Y及び事前に定義された参照信号行列Xを所与として、本発明者らの目標は、互いに線形乗算されるすべてのm∈{1,2,...,M}及びs∈{1,2,...,S}について、a、pms、及びhΦ(s)mを同時に推定することである。次のサブセクションでは、この困難な問題に取り組むために考案されたメッセージパッシング規則の導出を行い、非定常性の影響を受けるXL-MIMOのための新しいアクティビティ及びチャネルの同時推定を提案する。
【0054】
Yのn番目の行且つl番目の列における受信信号要素ynlに注目すると、暫定的推定値を用いた軟判定干渉除去(soft interference cancellation、Soft-IC)後の受信信号は次のように書くことができ、
【数21】
上式で、軟推定
【数22】
は、以前の繰り返しにおける変数ノードにおいて生成され、wnlは、AWGN行列Wのn番目の行且つl番目の列の雑音要素を表す。
【0055】
式(9)の残留干渉及び雑音成分を中心極限定理に従って複素ガウス確率変数として近似することができると仮定すると、所与のhnmに対する式(9)の条件付き確率密度関数(probability density function、PDF)は次のように書くことができ、
【数23】
上式で、誤差分散は次のように与えられ、
【数24】
上式で、γnmはHのn番目の行且つm番目の列の分散を表し、これにより、本発明者らは後の便宜のために黙示的に残差分散
【数25】
を定義した。
【0056】
同様に、所与のaの条件付きPDF
【数26】
は、
【数27】
と近似することができ、分散は次のように与えられ、
【数28】
上式で、a∈{0,1}であるため、E[a ]=E[a]=λであるという事実を利用している。
【0057】
変数ノード
上で示したSoft-ICメカニズム及びその結果として得られる統計量を利用して、l番目の時間インデックスを除くすべての利用可能な時間リソースにわたって組み合わされたs番目のサブアレイに対応する信念により、所与のhΦ(s)mの外部信念
【数29】
のPDFが得られ、次式で与えられ、
【数30】
このとき、
【数31】
であり、上式で、
【数32】
である。
【0058】
次に、所与のaの外部信念
【数33】
のPDFは、同様に次のように得ることができ、
【数34】
上式で、
【数35】
である。
【0059】
式(14)のPDFを式(8)の前のチャネルPDFと組み合わせることにより、チャネルの事後分布が得られる。したがって、後者に対するhΦ(s)mの期待値を考慮すると、l番目の変数ノードにおける対応する軟推定値
【数36】
が得られ、次式で与えられ、
【数37】
上式で、被積分関数の分母は正規化のために導入されている。
【0060】
【数38】
に関連する誤差共分散は、次式によって与えられ、
【数39】
但し、
【数40】
である。
【0061】
次に、ユーザアクティビティ指標の軟レプリカ
【数41】
は、同様に次のように得ることができ、
【数42】
ここで、
【数43】
は、強度λを用いるベルヌーイ確率質量関数(probability mass function、PMF)を表し、これは、次式
【数44】
によって与えられる平均二乗誤差(mean square error、MSE)を伴う。
【0062】
上記の式(19)~(22)を計算するためには、結果としての計算を扱いやすくするために有効分布
【数45】
の分析が不可欠である。その目的で、式(8)及び(14)をhΦ(s)mの有効分布に代入すると、次が得られる。
【数46】
【0063】
したがって、対応する正規化係数は次のように書くことができ、
【数47】
上式で、アクティビティ検出係数τl,msは次式で与えられる。
【数48】
【0064】
式(23)及び(24)を利用して、l番目のノードにおけるhΦ(s)mの軟レプリカは次のように書き直すことができ、
【数49】
また、そのMSE
【数50】
は、次のように表すことができる。
【数51】
【0065】
次に、有効分布
【数52】
は、次のように簡単化でき、
【数53】
ここで、α∈{0,1}及び関連する正規化係数は次のように書くことができる。
【数54】
【0066】
したがって、αの軟レプリカは次のように得ることができ、
【数55】
また、その誤差分散は次のように書くことができ、
【数56】
これにより、
【数57】
が容易に分かる。
【0067】
期待値最大化によるアレイアクティビティの把握
本セクションでは、サブアレイアクティビティ指標を把握するために、期待値最大化(EM)により支援される自動パラメータ化手法を検討する。サブアレイアクティビティ指標φsmは瞬間的な伝播環境に依存し、瞬間的な伝播環境は、実際には得ることが困難な場合があり、また長期的な統計的知識では補えない場合がある。したがって、付録Aの議論に従って、以下によりφsmの推定値を求めることを提案し、
【数58】
このとき、この最大化は次の1次の必要条件を満たすように制約され、
【数59】
上式で、導関数は次のように書くことができる。
【数60】
【0068】
Φ(s)m=0の近傍とそれ以外とを別々に扱うと、式(33)は以下の等価条件に至る。これにより容易に以下を得ることができる。
【数61】
【0069】
サブアレイアクティビティ指標間が一様(すなわち、すべてのm及びsについてφ=φsmである)であると仮定すると、上記の導出は、空間及びユーザのドメインにわたって利用可能なすべての情報を組み合わせるように更に一般化できる、つまり、
【数62】
であり、これにより最終的に
【数63】
が得られる。
【0070】
アクティビティ検出ポリシー
最後に、このサブセクションでは、事前に定義されたユーザアクティビティポリシーに従ってユーザアクティビティ推定を精密にすることに対応する最後の工程について説明する。この工程を実行するために様々な手法が考えられる。ここでは、対数尤度比(log-likelihood ratio、LLR)ベースであり、
【数64】
の両方を考慮した新しい手法を採用する。
【0071】
そのために、まず認識すべきことは、
【数65】
の対角要素上の二値量によって捉えられるユーザアクティビティパターンを、等価的に
【数66】
の列スパース性として表すことができ、このことは、アクティビティ検出ポリシーがAUDのために
【数67】
及び
【数68】
を同時に考慮しなければならないことを示唆しているということである。推定される有効チャネル行列を
【数69】
と表すと、要素ごとのLLRは次のように書くことができる。
【数70】
【0072】
以上から、ユーザアクティビティは、すべての受信アンテナ次元NについてLLR Λnmを組み合わせることによって検出することができる。しかしながら、このような検出ポリシーは、空間的非定常性に起因するブロック単位のスパース性の存在を無視し、検出パフォーマンスの劣化につながる。この問題に対処するために、次のようなサブアレイアクティビティを考慮したAUDポリシーを考える。
【数71】
【0073】
方法1 非定常性を伴うXL-MIMOにおけるJACEのための双線形メッセージパッシング
【数72】
【数73】
【0074】
方法の説明
このセクションでは、上で提案したJACEのためのメッセージパッシング及び合意のメカニズムについていくつか述べる。このメカニズムは、便宜のためにアルゴリズム1に簡潔にまとめてある。アルゴリズム1を参照すると、まず留意されたいのは、2つの初期化量、すなわち、チャネル行列
【数74】
の初期値と、誤差共分散行列
【数75】
とが必要であることであり、これは、AUDを考慮した近似BPアルゴリズムなどの多くの技術水準の方法によって得ることができ、複雑度とパフォーマンスとのトレードオフの利点からここで採用した。これに加えて、提案されるJACEアルゴリズムは、受信信号行列Y及びパイロット行列Xを入力とし、これに対してチャネル行列
【数76】
の推定と、ユーザアクティビティ行列
【数77】
の推定とを出力する。
【0075】
本アルゴリズムは2つの重要な段階、すなわち、3行目~18行目に記述されている、信念が伝播され、因子と変数ノードとの間で交換される繰り返し段階と、19行目~24行目に要約されているような、得られた信念に基づいて最終的に出力量が決定される合意段階とを有する。17行目及び18行目は、周知のダンピング手順に対応することに留意されたい。ダンピング手順は、特に繰り返しの初期段階において、下記の量
【数78】
がゆっくりと更新されるのを許容して推定値が局所最適に落ちるということを避けることを目的とする。
【0076】
これは、繰り返し過程の初期段階において、式(9)で仮定したガウス近似が実際の有効ノイズの統計量を捉えていない可能性があり、これにより局所最適点への収束につながる可能性があるという事実に起因する。
【0077】
また、同意段階は、22行目に自己フィードバック工程を含んでおり、この工程では、関心対象の変数の所望の次元が得られるように、インデックス除外なしで和演算が実行されることに留意されたい。また、ここで繰り返し回数は、後で示す複雑度解析のためだけにtmaxに固定されることにも留意されたい。実際には、より少ない(適応的に決定された)繰り返し回数で過程を終了させることができ、その結果、全体の複雑度が低下する。繰り返し回数を減らす可能性については、後でアルゴリズムの収束挙動を介して検討するが、信号対雑音比(SNR)レベルに関係なく、収束には約9回の繰り返しで十分であることが示されている。
【0078】
シミュレーション結果
このパートでは、様々なシステム構成の下で、提案される双線形推定方法の推定パフォーマンスを評価する。特に、正規化平均二乗誤差(normalized mean square error、NMSE)及びアクティビティ誤り率(activity error rate、AER)を、それぞれ、チャネル係数及びユーザアクティビティ指標の推定精度を測定するための重要なパフォーマンス指標と見なす。
【0079】
NMSE及びAERはそれぞれ次式のように定義され、
【数79】
上式で、
【数80】
はそれぞれ推定されるチャネル行列及びユーザアクティビティ行列を表し、Aは真のアクティビティ指標集合を表し、|・|は所与の集合の濃度(cardinality)を表し、次のような演算子\は差集合を表す。
【数81】
【0080】
このセクションを通して、特に指定しない限り以下のパラメータを使用する。全アンテナ素子及びサブアレイの数をそれぞれN=400及びS=100と仮定すると、各サブアレイはN=4個のアンテナ素子を有することになる。この構成は、例えば、それぞれが2×2のパッチアンテナアレイである複数のサブアレイから構成されるXL-MIMOシステムと解釈することができる。時間インデックス及び潜在的ユーザの総数は、それぞれL={50,70}及びM=200に設定される。ユーザアクティビティ比率はλ=0.1と仮定され、各チャネル実現におけるアクティブユーザの数は平均λMの二項確率変数としてモデル化される。チャネル係数の分散は同一であると仮定され、すべてのm及びsについてφ=φsm=1/Mとしてモデル化されるが、非定常性現象については異なるモデルが考えられる。
【0081】
アルゴリズムのパラメータに関しては、最大繰り返し回数をtmax=32と仮定し、ダンピング係数ηを0.5に設定する。サブアレイアクティビティ指標φは、セクションIII-Dに提示したEMフレームワークにより、繰り返しを経て自動的に把握される。初期推定値(すなわち、
【数82】
)は、低複雑度の複数観測近似信念伝播(multiple measurement approximate belief propagation、MMVABP)アルゴリズムによって得られると仮定する。
【0082】
複雑度に関する論評
提案されるJACEのための双線形推定方法の実際のパフォーマンスに関する結果を示す前に、アルゴリズムの各繰り返しにおいて必要とされる浮動小数点演算の回数(フロップス)の観点から、その計算の複雑度を分析する。アルゴリズム1における計算はすべて、スカラー同士の計算であり、必要な逆演算は対角行列で行われるため、乗算、除算、減算、及び加算演算の回数はO(NML)のオーダーとなり、これは利用可能なリソース次元のそれぞれに対して線形である。アルゴリズム1では、繰り返し回数はtmaxに設定され、このことは、総複雑度がO(tmaxNML)のオーダーであることを示唆している。同様に、既存の線形推定アルゴリズムの計算の複雑度も次のようなオーダー
【数83】
であり、上式で、
【数84】
は、既存の線形推定アルゴリズムの繰り返しの総数である。また、提案されるアルゴリズムも既存のJACEアルゴリズムもベイズメッセージパッシング手法に基づくため、本方法が必要とする収束までの繰り返しの総数は、既存の代替手法と同程度(すなわち、
【数85】
である)であり、提案されるアルゴリズムと既存のJACE方法とは複雑度のオーダーが同じであると結論づけることができる。しかしながら、結局、提案される方法は、式(41)及び(42)で定義されるNMSE及びAERによって測定される推定精度の点で、既存の代替策よりも著しくパフォーマンスが優れることが示される。
【0083】
一様にランダムな非定常性
提案されるJACEアルゴリズムによって達成される基本的なパフォーマンスの改善を評価することを目的として、本サブセクションでは、一様にランダムなサブアレイアクティビティパターンの影響を受けるXL-MIMOシステムについて考える。換言すれば、すべてのm及びsについてのサブアレイアクティビティ指標pmsは、ベルヌーイ確率変数として独立に生成され、対応する平均φsmはφsm=0.2と設定されて、各チャネルの実現における総アクティブサブアレイの数がオーダーSの二項分布に従い、各チャネル実現において総サブアレイの20%が平均的な意味でアクティブであるようにされる。
【0084】
図2は、異なるパイロット長における、N=400且つM=200の場合のSNRに対するNMSEパフォーマンスを示している。比較のために、2つの技術水準の方法、すなわち、従来の線形最小平均二乗誤差(minimum mean square error、MMSE)推定器と、複数観測ベクトル近似メッセージパッシング(multiple measurement vector approximate message passing、MMVAMP)アルゴリズムの一般化であるMMVABP方式とを検討した。これら3つのアルゴリズムを比較することにより、グラントフリーアクセスに起因するチャネル行列の列単位のスパース性と、空間的非定常性に起因するチャネル行列のアクティブ列のブロック単位のスパース性との両方を考慮することによるパフォーマンス向上が明らかになる。例えば、異なるパイロット長(すなわち、L∈{50,70}である)について、図2に示すように、デシベル単位のSNRの関数として、3つの異なるアルゴリズムのNMSEパフォーマンスの比較を考える。ここで、パイロット系列は、X∈CM×L(但し、M>>Lである)の非直交構造に起因するパイロット汚染を軽減するために、凸最適化を介した2次複素逐次反復無相関化(quadratic complex sequential iterative decorrelation via convex optimization、QCSIDCO)アルゴリズムを介して設計される。
【0085】
更に参考のため、ジニー支援の(すなわち、アクティブユーザ及びサブアレイアクティビティ指標を完全に把握した上で)最小二乗(least square、LS)推定器によって得られた下界値計算(lower-bounding)NMSEパフォーマンスに対応する曲線(マーカーなしの実線)も含む。
【0086】
図2は、チャネル行列に構造化されたスパース性を課す2つの異なる因子の影響を明確に示している。特に、パイロット系列の長さに関係なく、MMSE推定器はそのNMSEパフォーマンスに関して高いエラーフロアを被るが、MMVABPアルゴリズムはSNRが増加するにつれて向上することが分かる。MMSE方法に対するMMVABPの利得は、MMSE方法は組み込んでおらず、MMVABP方法には組み込まれている、チャネル行列における列ごとのスパース性の考慮、すなわちユーザアクティビティの考慮に起因する。MMVABPのパフォーマンスと下界値との間には大きな隔たりが存在する。後者の2つの方法と比較すると、提案される方法は、提案される技法がユーザアクティビティだけでなく、空間的非定常性によるサブアレイアクティビティも考慮しているという事実のおかげで、MMVABP手法に対する実質的な利得を呈する。その結果、提案される方法は、広いSNR範囲にわたって、また比較的低いSNRから始めて、実際に理論下界値に達することが分かる。
【0087】
これらの論評から、MMSE方法とMMV-ABP方法との間の利得はユーザアクティビティを考慮した結果であり、MMVABP方法と提案される方法との間の利得はサブアレイアクティビティを考慮した結果であると結論づけることができる。また、サブアレイアクティビティ指標φsmは、セクションIII-Dで示したEMフレームワークにより、チャネル実現のたびに自動的に把握されて、送信前にそのようなパラメータを推定する必要がなく、XL-MIMOシステムの効率の改善に寄与するということに留意されたい。
【0088】
図3a、図3bは、異なるパイロット長における、N=400且つM=200の場合のSNRに対するAERパフォーマンスを示している。提案される方法と最も優れた技術水準の方法(すなわち、MMVABP)のAERパフォーマンスを検討する。MMSE方式は後者に劣ることが判明したため、MMSE方式の結果は省略した。加えて、ジニー支援の下界値計算の結果を示すことは有用ではないことに留意されたい。これは、ジニー支援のLS推定器が、ユーザ及びサブアレイのアクティビティを完全に把握しており、AERパフォーマンスは常に0であるためである。
【0089】
図3に、図2で行ったのと同様、異なるパイロット長についての結果を示す。予想どおりであるが、興味深いことに、提案される方法は、AERパフォーマンスに関してもMMVABPよりも著しくパフォーマンスが優れることが分かった。例えば、MMVABPに対する提案される方法の相対AER利得は、短いパイロットシナリオと長いパイロットシナリオとの両方で、AERの10-5においてSNRが4[dB]超であることが分かる。加えて、提案されるアルゴリズムのAER曲線の勾配は、MMVABP手法よりも急であることが分かる。
【0090】
図4は、異なるサブアレイアクティビティ指標に対する提案される方法のレジリエンスを比率で示している。提案される方法のNMSE及びAERの利得を明らかにした上で、提案されるアルゴリズムのレジリエンス及び収束の態様に注目して考慮する。図4では、サブアレイアクティビティ指標の関数として、MMVABP、ジニー支援LS、及び提案される推定器の間でNMSEパフォーマンスを比較している。サブアレイ強度が100%のとき(すなわち、図の右端では)、チャネルは定常であるが、サブアレイ強度が低下するにつれて非定常性の影響が深刻になることに留意されたい。この結果が示唆していることは、提案される方法がMMVABP方法の一般化であり、ユーザアクティビティの影響だけではなく、サブアレイアクティビティの影響も捉えているということである。よって、提案されるアルゴリズムのパフォーマンスは、定常チャネル(すなわち、φsm=1である)の場合にはMMVABPのパフォーマンスに近づくが、非定常性が増加するにつれて、MMVABPよりも著しい利点をもたらす。
【0091】
図5は、アルゴリズムの繰り返し回数に対する提案されるアルゴリズムの収束挙動を示している。図5では、アルゴリズムの繰り返し回数の関数として、異なるパイロット長における提案されるアルゴリズムの収束挙動が示されている。最大繰り返し回数は比較的大きな値(t=32)が仮定されているが、本アルゴリズムは、検討されているパイロット長の両方で10回以内の繰り返しで収束していることが図から分かる。このことは、サブセクションIV-Aで論評した方法の総複雑度は、特定の収束基準を設定することにより更に(半分超)削減することができるということを示唆している。
【0092】
マタンクラスタ点過程ベースの非定常性
前のサブセクションで示した比較結果は、特に、ユーザアクティビティとサブアレイアクティビティとの両方を検出するための寄与される方式の能力に由来する、提案される方法によって達成可能な、技術水準の代替策に対する利得を定量化する目的に役立つ。しかしながら、一様にランダムなサブアレイアクティビティパターンは、現実的なシナリオではVRによって特徴付けられるため、いくぶん人工的であるともいえる。確かに、実際には、特定のサブアレイがアクティブになる尤度は、VRがクラスタで発生する傾向があるように、隣接するサブアレイのものと高い相関がある。このサブセクションでは、上で報告したテストの繰り返しであるが、今度は、図1に示すように、VRのクラスタ的性質を模倣するために、サブアレイのアクティビティ指標間の上述の幾何学的相関をモデル化するために、確率幾何学的手法を利用する。この目的のため、XL-MIMOシステムにおける非定常性の影響をモデル化するために、マタンクラスタ点過程(MCPP)(マタンハードコア点過程と混同してはならない)を考える。
【0093】
MCPPをシミュレーション構成に含めるために、等間隔のグリッド上にサブアレイが配置される矩形のエリアを考える。このエリア内で、MCPPは、一定半径rを有し、中心が強度μを有する一様ポアソン点過程(PPP)上にあるランダムなクラスタを生成するように活用される。MCPPによって生成された各クラスタはVRと見なされるため、クラスタに配置されたサブアレイはアクティブであると考えられ、クラスタの外に配置されたサブアレイは非アクティブであると仮定される。
【0094】
図6は、MCPPベースのサブアレイアクティビティを示し、図7は、一様にランダムなサブアレイアクティビティを示している。MCPPベースの非定常性モデルと一様にランダムな非定常性モデルとの間の違いを視覚化するために、図6及び図7において、所与の実現における2つの異なるモデルのサブアレイアクティビティパターンの比較を示す。ここで、両方の場合のアクティブアンテナの数は同じに設定してある。各図において、白の四角形及び黒の四角形はそれぞれ非アクティブアンテナ及びアクティブアンテナを示し、2×2の正方形サブアレイ、高さ=30[m]、幅=30[m]、μ=4、及びr=5を仮定した。各図から分かるように、MCPPベースの手法ではクラスタ化されたVRを明確に示し、非定常性の挙動をより現実的に捉えているのに対し、一様にランダムな手法ではより散乱したVR分布が示されている。
【0095】
確率幾何学的VR生成モデルを説明した上で、このMCPPベースの非定常性モデルの下でJACEアルゴリズムのパフォーマンス評価を行う。このセクションでは、異なるクラスタ強度μ及び半径rを考慮し、両方のパラメータが検出パフォーマンスに与える影響を調べることにより、2つの技術水準の推定器と比較した提案される方法の推定パフォーマンスと、異なるクラスタ構成におけるジニー支援理想パフォーマンスとを評価する。
【0096】
図8a、図8b、及び図8cは、異なるμにおける、MCPPでN=400、M=200、且つL=70の場合のSNRに対するNMSEパフォーマンスを示している。図8では、3つの異なる検出アルゴリズムのNMSEパフォーマンスが、異なるクラスタ強度μ及び固定半径サイズr=5[m]に関して比較され、参考のためにジニー支援理想パフォーマンスも含めてある。以前の図2及び図4の結果から予想されるように、提案される方法は、MMVABP方法及び従来の線形MMSE方法の両方よりもパフォーマンスが優れるが、クラスタ強度が大きくなるにつれてパフォーマンス利得はわずかに低下する。このことは、クラスタ強度が大きいほどアクティブサブアレイの数自体が増えることから予想される。また、提案されるアルゴリズムは、クラスタ強度レベルに関係なく、SNRの広い範囲でジニー支援理想パフォーマンスに再び達することが観測されている。
【0097】
図9a、図9b、及び図9cは、異なるμにおける、MCPPでN=400、M=200、且つL=70の場合のSNRに対するAERパフォーマンスを示している。図9では、提案されるアルゴリズムとMMVABP方式とのAERパフォーマンスを、異なるクラスタ強度レベルについて、SNRの関数として比較している。この図から、提案される方法がAERパフォーマンスに関しても有効であることが確認される。
【0098】
図10は、異なるクラスタ強度における提案される方法のNMSEパフォーマンスを示している。μ=3、6、及び9における実際のアレイアクティビティ比率を矢印で注釈する。
【0099】
図11は、異なるクラスタ半径サイズにおける提案される方法のNMSEパフォーマンスを示している。μ=3、6、及び9における実際のアレイアクティビティ比率を矢印で注釈する。
【0100】
クラスタ化されたサブアレイアクティビティの場合でも提案されるアルゴリズムが有効であることを示した上で、図10及び図11では、2つの異なるSNRレベルについて、それぞれクラスタ強度μ及び半径rの関数として提案されるアルゴリズムのNMSEパフォーマンスが計算される。結果の解釈を容易にするために、アクティブサブアレイの数とサブアレイの総数との間の比率として定義される実際のサブアレイアクティビティ比率をμ=3、6、及び9について矢印で注釈する。各図は、提案されるJACEアルゴリズムのパフォーマンスが、クラスタの形状ではなく実際のアクティビティ指標にほとんど依存しているという事実を示しており、空間的非定常性の性質に対する固有のロバスト性を示唆している。
【0101】
本出願では、ユーザアクティビティとサブアレイアクティビティとが同時にチャネル行列に構造化されたスパース性を課す、空間的非定常性の影響を受けるグラントフリーアップリンクXL-MIMOシステムにおけるJACE問題が解かれる。このようなシステムについて、チャネルの構造化されたスパース性を特徴付けるために新しいシステムモデルが導入され、入れ子のベルヌーイ・ガウス分布に従う変数の推定問題が定式化される。この扱いにくい推定問題に取り組むために、双線形ベイズ推定フレームワークに基づいて、すべての更新を閉形式で導出する新規な推定方法が提案される。提案される方法は、受信アンテナアレイの次元、ユーザの数、及び時間資源に関して、それぞれ線形複雑度を有する。提案される方法の利点を数値的に検討するため、モンテカルロシミュレーションによるパフォーマンス評価を評価して、NMSEパフォーマンス指標及びAERパフォーマンス指標の観点から提案されるアルゴリズムの有効性を明らかにした。本出願はまた、空間的非定常性に起因するXL-MIMOのアレイの部分観測のクラスタ的性質をモデル化するために確率幾何学(SG)を採用した最初の試みの1つを報告する。特に、このような観測されたクラスタをモデル化するMCPPを提案して、クラスタサイズ、強度、及びサブアレイアクティビティ比率に関係なく、提案される方法が優れていることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、前記複数の送信アンテナによって表される前記同相空間コンスタレーションシンボル及び前記直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングするXL-MIMOシステムにおける可視クラスタ及び非定常性をモデル化するための方法であって、所与のエリア内でランダムに配置されたクラスタをモデル化するマタンクラスタ点過程が、アンテナアレイの埋め込まれるエリアを定義する、方法。
【請求項2】
範囲制限及び硬閾値法によるボックス化を介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)に対する修正が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ボックス化ハード反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)を用いて、アンテナ位置インデックス及びシンボル推定値の位置の貪欲選択と、対応するアンテナ変調ビット及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記貪欲検出と並行して行われる過程が、所与の有限の1セットのインデックスベクトルからのインデックスベクトルの有効な推定値が前記方法の出力において生成されることを確保するため、また確認された値を用いて干渉キャンセルを適用するために、
-前記貪欲選択からどのインデックスが取得されたかを追跡しながら、すべての繰り返しの前に、現在復号されているインデックスから最終確認ができるか否かのチェックが実行され、
-前記最終確認ができない場合、先行する貪欲選択による干渉を取り除き、次の繰り返しを行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プロセッサと、揮発性及び/又は不揮発性メモリと、に通信チャネルにおいて信号を受信するように適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信機(R)であって、前記不揮発性メモリが、マイクロプロセッサによる実行時に請求項1~4のいずれか一項に記載の方法を実施するように前記受信機を構成するコンピュータプログラム命令を記憶する、受信機(R)。
【請求項6】
コンピュータ上での実行時に前記コンピュータに請求項1~4のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項7】
請求項6のコンピュータプログラム製品を記憶及び/又は送信する、コンピュータ可読媒体。
【国際調査報告】