(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ジオルガノ錫ジハロゲン化物の製造
(51)【国際特許分類】
C07F 7/22 20060101AFI20240806BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07F7/22 D CSP
C07F7/22 H
G03F7/004 531
G03F7/004
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505361
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2022071186
(87)【国際公開番号】W WO2023006871
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン・ジャロッド・シー
【テーマコード(参考)】
2H225
4H049
【Fターム(参考)】
2H225AB03
2H225AN80P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC01
4H049VN03
4H049VP01
4H049VQ12
4H049VR22
4H049VR32
4H049VR42
4H049VS12
4H049VS22
4H049VS32
4H049VU24
4H049VV02
4H049VV03
4H049VW02
4H049VW06
4H049VW07
(57)【要約】
開示及び特許請求された発明は、合成された時の状態でテトラアルキル錫(R4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3)種を含まない、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の安全でかつ効率のよい合成、並びにそれらの合成及び使用法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式R
2SnX
2
[式中、(i)Rは、置換されていない線状C
1-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C
1-C
6アルキル基、アミノ基で置換された線状C
1-C
6アルキル基、置換されていない分岐状C
3-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH
3)
3、置換されていないC
3-C
8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC
3-C
8環状アルキル基、置換されていないC
3-C
8芳香族基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8芳香族基、アミノ基で置換されたC
3-C
8芳香族基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、及びC
3-C
10アルキニル基であり、そして
(ii)Xは、Cl、Br、FまたはIである]
のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物であって、合成された時の状態でR
4Sn、R
3SnX及びRSnX
3を含まないジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物。
【請求項2】
Rがメチル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rがエチル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
XがClである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Rがメチル基であり、XがClである(すなわち、ジメチル錫ジクロライド;Me
2SnCl
2)、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Rがエチル基であり、XがClである(すなわち、ジエチル錫ジクロライド;Et
2SnCl
2)、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式R
2SnX
2の化合物が約98重量%以上の純度を有する、請求項1~6のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項8】
式R
2SnX
2の化合物が約98.5重量%以上の純度を有する、請求項1~6のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項9】
式R
2SnX
2の化合物が約99重量%以上の純度を有する、請求項1~6のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項10】
式R
2SnX
2の化合物が約99.5重量%以上の純度を有する、請求項1~6のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一つに記載の化合物を製造する方法であって、
(i)ジオルガノ錫酸化物(R
2SnO)(式中、(i)Rは、置換されていない線状C
1-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C
1-C
6アルキル基、アミノ基で置換された線状C
1-C
6アルキル基、置換されていない分岐状C
3-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH
3)
3、置換されていないC
3-C
8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC
3-C
8環状アルキル基、置換されていないC
3-C
8芳香族基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8芳香族基、アミノ基で置換されたC
3-C
8芳香族基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、及びC
3-C
10アルキニル基である)と有機溶剤との混合物を生成し;
(ii)式HX(式中、Xは、Cl、Br、FまたはIのうちの一つである)の酸の水溶液をステップ(i)の混合物に加えて、有機相と水性相とを含む二相系混合物を生成し;
(iii)ステップ(ii)の二相系混合物を、しばらくの期間、攪拌し;
(iv)前記二相系混合物の有機相及び水性相を分離し;
(v)任意に、水性相を更に抽出し;
(vi)式R
2SnX
2の化合物を単離し; 及び
(vii)任意に、式R
2SnX
2の化合物を精製する、
ことを含む、前記方法。
【請求項12】
Rがメチル基である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Rがエチル基である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
XがClである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
Rがメチル基であり、XがClである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
Rがエチル基であり、XがClである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
ジオルガノ錫酸化物が、ジメチル錫酸化物((Me)
2SnO)である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ジオルガノ錫酸化物がジエチル錫酸化物((Et)
2SnO)である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
溶剤が、線状、分岐状、環状またはポリ-エーテル、線状、分岐状または環状アルカン、アルケン、芳香族類及び炭化水素、及びこれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む、請求項11~18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
溶剤がメチレンクロライドを含む、請求項11~19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
水性酸がHClを含む、請求項11~20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
水性酸がHBrを含む、請求項11~13及び17~20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
水性酸がHFを含む、請求項11~13及び17~20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
水性酸がHIを含む、請求項11~13及び17~20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項25】
ジオルガノ錫酸化物がジメチル錫酸化物((Me)
2SnO)であり、溶剤がメチレンクロライドを含み、水性酸がHClを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
ジオルガノ錫酸化物がジエチル錫酸化物((Et)
2SnO)であり、溶剤がメチレンクロライドを含み、水性酸がHClを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(iii)の期間が約10分間から約12時間までである、請求項11~26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項28】
ステップ(iii)の期間が約10分間から約10時間までである、請求項11~26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項29】
ステップ(iii)の期間が約10分間から約6時間までである、請求項11~26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
ステップ(iii)の期間が約10分間から約3時間までである、請求項11~26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項31】
ステップ(iii)の期間が、約10分間から約1時間までである、請求項11~26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項32】
ステップ(iii)の期間が、約10分間から約30分間までである、請求項11~26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項33】
水性部分が、ステップ(i)で使用したものと同じ溶剤を用いて抽出される、請求項11~32のいずれか一つに記載の方法。
【請求項34】
式R
2SnX
2の化合物がトルエンを用いて単離される、請求項11~32のいずれか一つに記載の方法。
【請求項35】
式R
2SnX
2の化合物が蒸留により精製される、請求項11~34のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
式R
2SnX
2の化合物が結晶化により精製される、請求項11~35のいずれか一つに記載の方法。
【請求項37】
前記方法のステップのうちの一部または全てが、約-40℃から、使用した溶剤(複数可)の沸点以下の温度までの間の温度で行われる、請求項11~36のいずれか一つに記載の方法。
【請求項38】
前記方法のステップのうちの一部または全てが、約-40℃から約100℃までの間の温度で行われる、請求項11~36のいずれか一つに記載の方法。
【請求項39】
前記方法のステップのうちの一部または全てが、約-40℃から約30℃までの間の温度で行われる、請求項11~36のいずれか一つに記載の方法。
【請求項40】
前記方法のステップのうちの一部または全てが、約-40℃からおおよそ室温までの間の温度で行われる、請求項11~36のいずれか一つに記載の方法。
【請求項41】
前記ステップの全てが、約-40℃から、使用した溶剤(複数可)の沸点以下の温度までの間の温度で行われる、請求項11~36のいずれか一つに記載の方法。
【請求項42】
前記方法のステップの全てが室温で行われる、請求項11~36のいずれか一つに記載の方法。
【請求項43】
式R
2SnX
2の化合物の収率が約80%であるかまたは80%超である、請求項11~42のいずれか一つに記載の方法。
【請求項44】
式R
2SnX
2の化合物の収率が約85%であるかまたは85%超である、請求項11~42のいずれか一つに記載の方法。
【請求項45】
式R
2SnX
2の化合物の収率が約90%であるかまたは90%超である、請求項11~42のいずれか一つに記載の方法。
【請求項46】
式R
2SnX
2の化合物の収率が約95%であるかまたは95%超である、請求項11~42のいずれか一つに記載の方法。
【請求項47】
式R
2SnL
2の化合物を製造する方法であって、請求項1~10のいずれか一つに記載の式R
2SnX
2の化合物を、式R
2SnL
2の化合物に転化することを含み、ここで、Lはアルコキシ(-OR
1)、有機アミノ(-NR
2R
3)、カルボキシレート(-OOCR
4)、アミジナート(-R
5N(CR
6)NR
7、イミド(-N(COR
8)(COR
9)、アルキニド(-CCR
10)のうちの一つ以上であり、ここで、R
1-10は、それぞれ独立して、水素、線状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10環状アルキル基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、C
3-C
10アルキニル基、及びC
4-C
10アリール基から選択され、但し、R
1は水素であることはできず、かつR
2-3は双方とも水素であることはできない、前記方法。
【請求項48】
式RSnL
3の化合物を製造する方法であって、請求項1~10のいずれか一つに記載の式R
2SnX
2の化合物を、式RSnL
3の化合物に転化することを含み、ここで、Lは、アルコキシ(-OR
1)、有機アミノ(-NR
2R
3)、カルボキシレート(-OOCR
4)、アミジナート(-R
5N(CR
6)NR
7、イミド(-N(COR
8)(COR
9)、アルキニド(-CCR
10)のうちの一つ以上であり、ここでR
1-10は、それぞれ独立して、水素、線状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10環状アルキル基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、C
3-C
10アルキニル基、及びC
4-C
10アリール基から選択され、但し、R
1は水素であることはできず、かつR
2-3は双方とも水素であることはできない、前記方法。
【請求項49】
式R
nSnX
4-nの化合物を製造する方法であって、請求項1~10のいずれか一つに記載の式R
2SnX
2の化合物を式R
nSnX
4-nの化合物に転化することを含み、ここで、nは1~3であり、XはSnとの加水分解可能な結合を有する配位子である、前記方法。
【請求項50】
錫前駆体を製造する方法であって、請求項1~10のいずれか一つに記載の式R
2SnX
2の化合物を、
tBu
2Sn(NEt
2)
2、
tBu
2Sn(NMe
2)
2、
nBu
2Sn(NMe
2)
2、
iPr
2Sn(NMe
2)
2、
tAm
2Sn(NMe
2)
2、(シクロペンチル)
2Sn(NMe
2)
2、Me
2Sn(NMe
2)
2、(シクロブチル)
2Sn(NMe
2)
2、(シクロペンチル)
2Sn(NMe
2)
2、(シクロヘキシル)
2Sn(NMe
2)
2、((C
6H
5)CH
2)
2Sn(NMe
2)
2、((C
6H
5)(CH
3)CH)
2Sn(NMe
2)
2、((C
6H
5)(CH
3)
2C)
2Sn(NMe
2)
2、((CH
3)
2(CN)C)
2Sn(NMe
2)
2、((CH
3)(CN)CH)
2Sn(NMe
2)
2、
tBu
2Sn(O
tBu)
2、Me
2Sn(O
tBu)
2、
nBu
2Sn(O
tBu)
2、
iPr
2Sn(O
tBu)
2、
tAm
2Sn(O
tBu)
2、(シクロブチル)
2Sn(O
tBu)
2、(シクロペンチル)
2Sn(O
tBu)
2、(シクロヘキシル)
2Sn(O
tBu)
2、((C
6H
5)CH
2)
2Sn(O
tBu)
2、((C
6H
5)(CH
3)CH)
2Sn(O
tBu)
2、((C
6H
5)(CH
3)
2C)
2Sn(O
tBu)
2、((CH
3)
2(CN)C)
2Sn(O
tBu)
2、((CH
3)(CN)CH)
2Sn(O
tBu)
2、
tBu
2Sn(O
tAm)
2、Me
2Sn(O
tAm)
2、
nBu
2Sn(O
tAm)
2、
iPr
2Sn(O
tAm)
2、
tAm
2Sn(O
tAm)
2(シクロブチル)
2Sn(O
tAm)
2、(シクロペンチル)
2Sn(O
tAm)
2、(シクロヘキシル)
2Sn(O
tAm)
2、((C
6H
5)CH
2)
2Sn(O
tAm)
2、((C
6H
5)(CH
3)CH)
2Sn(O
tAm)
2、((C
6H
5)(CH
3)
2C)
2Sn(O
tAm)
2、((CH
3)
2(CN)C)
2Sn(O
tAm)
2、((CH
3)(CN)CH)
2Sn(O
tAm)
2、
tBuSn(NEt
2)
3、
tBuSn(NMe
2)
3、
tBuSn(O
tBu)3、
iPrSn(NMe
2)
3、MeSn(O
tBu)
3、
nBuSn(O
tBu)
3、
nBuSn(NMe
2)
3、(CH
3)
3CSn(NMe
2)
3、(CH
3)
2CHSn(NMe
2)
3、(CH
3)
2(CH
3CH
2)CSn(NMe
2)
3、シクロペンチルSn(NMe
2)
3、CH
3Sn(NMe
2)
3、シクロブチルSn(NMe
2)
3、シクロペンチルSn(NMe
2)
3、シクロヘキシルSn(NMe
2)
3 (C
6H
5)CH
2Sn(NMe
2)
3、(C
6H
5)(CH
3)CHSn(NMe
2)
3、(C
6H
5)(CH
3)
2CSn(NMe
2)
3、(CH
3)
2(CN)CSn(NMe
2)
3、(CH
3)(CN)CHSn(NMe
2)
3、(CH
3)
3CSn(O
tBu)
3、(CH
3)
2CHSn(O
tBu)
3、(CH
3)
2(CH
3CH
2)CSn(O
tBu)
3、(CH
2)
2CHSn(O
tBu)
3、CH
3Sn(O
tBu)
3、(CH
2)
3CHSn(O
tBu)
3、(CH
2)
4CHSn(O
tBu)
3、(C
6H
5)CH
2Sn(O
tBu)
3、(C
6H
5)(CH
3)CHSn(O
tBu)
3、(C
6H
5)(CH
3)
2CSn(O
tBu)
3、(CH
3)
2(CN)CSn(O
tBu)
3、(CH
3)(CN)CHSn(O
tBu)
3、(CH
3)
3CSn(O
tAm)
3、(CH
3)
2CHSn(O
tAm)
3、(CH
3)
2(CH
3CH
2)CSn(O
tAm)
3、シクロプロピルSn(O
tAm)
3、CH
3Sn(O
tAm)
3、シクロブチルSn(O
tAm)
3、シクロペンチルSn(O
tAm)
3、シクロヘキシルSn(O
tAm)
3、(C
6H
5)CH
2Sn(O
tAm)
3、(C
6H
5)(CH
3)CHSn(O
tAm)
3、(C
6H
5)(CH
3)
2CSn(O
tAm)
3、(CH
3)
2(CN)CSn(O
tAm)
3、(CH
3)(CN)CHSn(O
tAm)のうちの一つ以上に転化することを含む、前記方法。
【請求項51】
有機溶剤と式RSn(OR’)
3の第一のモノアルキル錫トリアルコキシドとを含む、約0.004Mから約1.0Mまでの錫濃度を有する、放射線でパターン化可能なコーティングのための調節された前駆体溶液を製造する方法であって、
(i)請求項1~10のいずれか一つに記載の式R
2SnX
2の化合物を、式RSn(OR’)
3の第一のモノアルキル錫トリアルコキシドに転化し; 及び
(ii)有機溶剤及び前記第一のモノアルキル錫トリアルコキシドを混合して、調節された前駆体溶液を調製する、
ことを含み、
但し、
(a)前記溶剤は、選択された値の±15%内の含水率を有するように調節されたものであり、
(b)前記調節された含水率はせいぜい10,000重量ppmであり、及び
(c)R’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル及びt-アミルのうちの一つ以上である、
前記方法。
【請求項52】
前記選択された値が約250重量ppmから約10,000重量ppmまでである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記選択された値が約300重量ppmから約5,000重量ppmまでである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
(i)前駆体溶液を用いて、基材表面上にコーティングを形成し、
ここで、前記前駆体溶液は、(a)請求項1~10のいずれか一つに記載の式R
2SnX
2の化合物から調製され、(b)前記調節された前駆体溶液を生成するために使用した溶剤の含水率が目的値の約±15%内に調節された結果として均一な組成を有し、及び(c)約300重量ppmから約10,000重量ppmまでの選択された含水率を有し、
(ii)前記コーティングを乾燥し; 及び
(iii)前記乾燥したコーティングを照射して潜像を形成する、
ことを含むプロセスにおいて、感放射線性コーティングをパターン化することを使用する方法。
【請求項55】
式R
2SnX
2の化合物を使用する前に、式R
2SnX
2の化合物を製造するために請求項11~46のいずれか一つに記載の方法を実施することを含む、請求項47~54のいずれか一つに記載の方法。
【請求項56】
98重量%以上の、請求項1~10のいずれか一つに記載の式R
2SnX
2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物;
0重量%の、R
4Sn、R
3SnX及びRSnX
3; 及び
2重量%までの他の不純物;
を含み、前記式中、
(i)Rは、置換されていない線状C
1-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C
1-C
6アルキル基、アミノ基で置換された線状C
1-C
6アルキル基、置換されていない分岐状C
3-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH
3)
3、置換されていないC
3-C
8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC
3-C
8環状アルキル基、置換されていないC
3-C
8芳香族基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8芳香族基、アミノ基で置換されたC
3-C
8芳香族基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、及びC
3-C
10アルキニル基であり、そして
(ii)XはCl、Br、FまたはIである、
組成物。
【請求項57】
合成された時の状態でR
4Sn、R
3SnX及びRSnX
3を含まない、式R
2SnX
2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するためのジオルガノ錫酸化物(R
2SnO)の使用であって、前記式中、(i)Rは、置換されていない線状C
1-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C
1-C
6アルキル基、アミノ基で置換された線状C
1-C
6アルキル基、置換されていない分岐状C
3-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH
3)
3、置換されていないC
3-C
8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC
3-C
8環状アルキル基、置換されていないC
3-C
8芳香族基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8芳香族基、アミノ基で置換されたC
3-C
8芳香族基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、及びC
3-C
10アルキニル基であり、そして
(ii)XはCl、Br、FまたはIである、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示及び特許請求される発明は、対応するテトラアルキル錫(R4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3)種は合成された時の状態では含まない式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の安全で効率のよい合成、並びにそれらの合成及び使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業では、パターン化用のEUV(極端紫外線)フォトレジスト材料として金属含有材料の使用が現在検討されている。多くの有機金属錯体、特に錫含有化合物が、スピンコート法または化学蒸着法を介したフォトレジスト材料の形成のための潜在的前駆体として評価されてきた。EUVパターン化用途のためのオルガノ錫前駆体の製造には、ありふれたハロゲン及び有機錫原料を使用しそしてこれらを最終生成物に変換する一連のステップを含む。主要なスターター材料の一つは、テトラメチル錫(Me4Sn)である。しかし、テトラメチル錫は毒性が極めて高いために、EUVプロセスに使用するための原料としてこの化合物を他の材料に置き換えることに強い要望がある。
【0003】
例えば、US10,787,466(特許文献1)は、式RSn(OR’)3のモノアルキル錫トリアルコキシド化合物または式RSn(NR’2)3のモノアルキル錫トリアミド化合物の組成物を開示しており、ここで、(i)Rは炭素原子数1~31のヒドロカルビル基であり、及びR’は炭素原子数1~10のヒドロカルビル基であり、及び(ii)前記組成物は、ジアルキル錫化合物の含有率が、錫の全量に対してせいぜい4モル%である。また、式RSn-(NR’COR”)3のモノアルキルトリアミド錫化合物を含む組成物も開示されており、この場合、Rは炭素原子数1~31のヒドロカルビル基であり、及びR’及びR’’は独立して炭素原子数1~10のヒドロカルビル基である。調合物中に(不純物として)ジアルキル錫化合物が含まれると、性能に影響を与えると考えられる。
【0004】
WO2019246254(特許文献2)は、有機溶剤及びモノアルキル錫トリアルコキシドを用いて形成された放射線でパターン化可能なコーティングのための前駆体溶液を開示しており、前記溶剤の含水率は、選択された値の10%以内になるように調節される。一般的に、溶剤の含水率は水を加えて調節されるが、水の削除も使用できる。例えば、幾つかの態様では、溶剤の調節された含水率は、約250重量ppmから約10,000重量ppmまでであることができる。適切な配位子の選択のために、調節された前駆体溶液は、少なくとも約42日間、幾つかの場合では少なくとも8カ月間、安定していると主張されている。
【0005】
US10,732,505(特許文献3)は、金属酸化物水酸化物ケミストリーに基づく高解像度リソグラフィパターニングコーティングの形成のための有機金属前駆体を開示している。その前駆体組成物は、一般的に、適度な条件下で水蒸気または他の-OH源によって簡単に加水分解され得る配位子を含む。特に、前記有機金属前駆体は、錫への感放射線性有機配位子を含み、その結果、比較的低い放射線線量でも高解像度パターニングに効果的であり得、そしてEUVパターニングに特に有用なコーティングを得ることができる。
【0006】
WO2018179704(特許文献4)は、パターン形成のための方法であって:(1)下層膜形成用のコンパウンドを基材上に施用し; (2)レジスト膜形成用の感放射線性コンパウンドを、前記下層に直接または間接的に施用し; (3)レジスト膜を露光し; 及び(4)露光されたレジスト膜を現像することを含む、方法を開示している。前記コンパウンドは、(i)スルホ基、カルボキシ基、ホスホノ基、リン酸基、硫酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、-CRF1RF2-OH基またはこれらの基の組み合わせから選択される酸基を有する成分を熱の作用下に生成する第一の成分、及び(ii)第一の成分とは異なるが、前記の酸基のうちの一つである第二の成分を含む。前記感放射線性コンパウンドは、固形物含有率として、金属含有化合物を50質量%以上の割合で含む。
【0007】
典型的には、前記の特許及び刊行物に記載の錫含有化合物を製造するためには、有機錫塩化物が原料として使用されてきた。アルキル錫塩化物を製造するための合成経路は非常に限られており、これらのいずれも、毒性が非常に高い副生成物を生成することなく、これらの材料を安全でかつ大規模に製造するためには適していない。
【0008】
例えば、還流させた1,4-ジオキサン中でポリマー性ジオルガノ錫酸化物(R2SnO)n(R=Me、Et、Bu、C8H17、Cy、iPr、Ph)を飽和水性NH4X(X=F、Cl、Br、I、OAc)と反応させると、高い収率で二量体型テトラオルガノジスタンノキサン類[R2(X)SnOSn(X)R2]2、及び幾つかの場合にはジオルガノ錫ジハロゲン化物もしくはジアセテートR2SnX2が生じることが開示されている。J.Beckmann et al.,“A novel route for the preparation of dimeric tetraorganodistannoxanes”,J.Organomet.Chem.,659(1-2):73-83(2002)(非特許文献1)を参照されたい。報告された方法は、フッ素化されたテトラオルガノジスタンノキサン類の合成に適しているようである。(錫-119NMRスペクトルをベースに確立された)反応混合物中の[Bu2(OH)SnOSn(X)Bu2]2(X=Cl、Br)及び[Bu2(OH)SnOSn(X)Bu2][Bu2(X)SnOSn(X)Bu2]の共存は、[R2(OH)SnOSn(OH)R2]2から出発した連続的置換機序を示唆している。[Cy2(F)SnOSn(F)Cy2]2と[Cy2(Cl)SnOSn(Cl)Cy2]2との間の再分配は、定量的な収率で混合ハロゲン化物[Cy2(F)SnOSn(Cl)Cy2]2を与えた。[Me2(AcO)SnOSn(OAc)Me2]2、[iPr2(Br)SnOSn(Br)iPr2]2、[Cy2(F)SnOSn(F)Cy2]2についてはX線結晶構造データが報告されている。これらは、酸素原子を介してR2Sn部分に接続する中央の(R2Sn)2O2コアの存在を示している。アセテート及びハライドが、錫センター周りの配位を完全にする。
【0009】
US2,675,399(特許文献5)は、単一のステップで、Mg及び有機ハロゲン化物を用いてSnハロゲン化物から製造された有機錫ハロゲン化物を開示している。溶剤としては炭化水素が使用され、そして反応は、65~185℃で行われる。典型的な例では、1.5mLのEtBr、12mLのEt2O、4.5gのBuCl、及び30mLのMePhを、24.5gのMgで処理し、反応が始まるまで攪拌し、そして88gのBuCl、250mLのMePh、及び98.5gのBuSnCl3の混合物で処理し、そしてこれをH2Oで処理すると、その後に、それぞれ8.8gのBu2SnCl2、91.7gのBu3SnCl及び7.2gのBu4Snが生じる。同様に、少量のヨウ素を5mLのBuCl、5mLのEt2O及び24.4gのMgに加え、そして反応を開始した時に、50mLのMePhを加え、その後に、160mLのMePh中の151.9gのBu2SnCl2を加える。次いで、この混合物を95℃までゆっくりと加熱し、1mLのEtBrと共にBuCl(全部で92.5g)で徐々に処理し、そして数時間還流すると、0.3gのBu2SnCl2、77.2gのBu3SnCl及び72gのBu4Snが生じる。
【0010】
前記の合成法にもかかわらず、それでもなお、製造される有機錫化合物の多くは、毒性が高いか、または製造に有毒の原料の使用を必要とし、これは転じて有毒の不純物を有する材料を生じさせる。このことは、錫化合物の広範な使用を考慮する際に特に懸念される事柄である。事実、錫は、商業的な使用では、他のどの元素よりも、より数多くのそれの有機金属誘導体を有することが報告されている。M.Hoch,“Organotin compounds in the environment - an overview,”Appl.Geochem.,16(7-8):719-743(2001)(非特許文献2)を参照されたい。ここ50年間の間に増加した有機錫化合物の世界的な製造の結果、かなりの量の有機スズが様々な生態系に入り込んでいる。無機形態のSnは無毒であると考えられる一方で、有機錫化合物の毒学的パターンは複雑である。Snカチオンに結合した有機基の性質及び数に依存して、幾つかの有機錫は、非常に低い濃度でも様々な生物に対して特定の毒性効果を示す。それ故、個々の有機錫化合物の特異的定量が必要である。近年では、様々な環境サンプルにおける有機錫化合物の検出のために新しい高感度の分析技術が開発された。多量の有毒のトリブチル錫及び幾つかの他の有機錫誘導体は、水及び堆積物中にだけでなく、様々な水生生物中にも確認でき、並びに哺乳類及び鳥類の組織もこれらの化合物によって汚染されている。事実、ヒトの血液及び肝臓についての他の研究は、幾つかの有機錫誘導体の増加した濃度を示している。
【0011】
例えば、Snアルキル中毒は、Pb(C2H5)4の場合と類似した症状を示すことが、臨床的観察を介して分かっている。W.Zeman et al.,“The genesis of disturbances of circulatory regulation.Toxic effect of tin peralkyls” Dtsch.Arch.Klin.Med.,198:713-721(1951)(非特許文献3)を参照されたい。他の研究では、Snアルキルは、皮膚または肺を通して簡単に吸収されることが示されている。マウスに対する腹腔内注射による毒性試験は、Sn(CH3)4の2-hr.LD50は140mg/kgであり、Sn(C2H5)4では660mg/kgであることを示す。24-hr.の値は、それぞれ、18mg/kg及び130mg/kgである。これらの結果は、金属アルキルの慢性毒性効果を示唆している。N(C2H5)4Clを用いた場合は、LD50は“僅か”60mg/kgであるが、25分間生存した動物は全て回復した。
【0012】
モノ-、ジ-及びトリメチル錫は、水底堆積物からの微生物に対して毒性があり、そしてジ-及びトリメチル化合物は、生細胞数または[3H]チミジン取り込みのいずれかで測定して、モノメチル化合物よりも毒性が高かったことも判明している。G.W.Pettibone,and J.J.Cooney,“Toxicity of methyltins to microbial populations in estuarine sediments”J.Ind.Microbiol.,2(6):373-378(1988)(非特許文献4)を参照されたい(この文献は、ボストン港からの堆積物中の微生物の自然集団に対する三種の有機錫化合物の毒性を検査、開示している)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US10,787,466
【特許文献2】WO2019246254
【特許文献3】US10,732,505
【特許文献4】WO2018179704
【特許文献5】US2,675,399
【特許文献6】US10,73287,466
【特許文献7】US2019/0391486
【特許文献8】US2020/117085A
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J.Beckmann et al.,“A novel route for the preparation of dimeric tetraorganodistannoxanes”,J.Organomet.Chem.,659(1-2):73-83(2002)
【非特許文献2】M.Hoch,“Organotin compounds in the environment - an overview,”Appl.Geochem.,16(7-8):719-743(2001)
【非特許文献3】W.Zeman et al.,“The genesis of disturbances of circulatory regulation.Toxic effect of tin peralkyls” Dtsch.Arch.Klin.Med.,198:713-721(1951)
【非特許文献4】G.W.Pettibone,and J.J.Cooney,“Toxicity of methyltins to microbial populations in estuarine sediments”J.Ind.Microbiol.,2(6):373-378(1988)
【非特許文献5】Kennedy,J.D.,“Auto-association in organometallic compounds: a nuclear magnetic double resonance study of methyl- and n-butyl-tin alkoxides.” J.Chem.Soc.,Perkin Trans.,2(2):242-248(1977)
【非特許文献6】Reuter, H.and D.Schroeder,“Preparation,crystal structure and reactions of isopropyltin triisopropoxide” J. Organomet.Chem.,455(1-2):83-87(1993)
【非特許文献7】Jones,K.and M.F.Lappert “Aminostannanes, stannylamines,and stannazanes”Proc.Chem.Soc.,London,358-359,(1962)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それ故、文献にはジオルガノ錫ジハロゲン化物材料(例えば、ジメチル錫ジクロライド)を製造するための数多くの経路が記載されているが、これらは、煩雑で不経済である(例えば、再分配法はテトラメチル錫及び錫四塩化物を用い、多くは、触媒及び比較的高い温度を使用した直接的な方法であり、他は融解した錫及びメチル塩化物を使用し、また他は、四塩化錫への慣用のグリニャール試薬の添加である)、及び/または有毒な材料に頼るものである。従って、合成された時の状態で有毒な不純物を僅かにしか含まないかまたはこのような不純物を含まず、及び経済的に実行可能でかつ環境的に安全な方法で製造される、ジオルガノ錫ジハロゲン化物を開発することに対する要望がある。加えて、テトラ有機錫を錫テトラハロゲン化物と反応させてジオルガノ錫ジハロゲン化物を製造することを介する慣用の合成法の場合のような有毒な原料(例えば、テトラメチル錫)を利用しない新しい合成経路に対する要望もある。また、合成された時に有毒な材料を含まず、それ故、製造及び/または精製からの廃棄物流が、有害及び/または有毒な未反応原料(例えば、テトラメチル錫及び部分的に反応したトリメチルクロロ錫)は含まず、その結果、(例えば濾液中の)これらの有害な物質との下流での接点を少なくする、ジオルガノ錫ジハロゲン化物を合成するための環境的にフレンドリーな方法を提供することに対する要望もある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの態様では、開示及び特許請求される発明は、合成された状態で(すなわち、更に精製していない状態で)、対応するテトラアルキル錫(R4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3)種を含まない式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物(式中、(i)Rは置換されていない線状C1-C10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C1-C6アルキル基、アミノ基で置換された線状C1-C6アルキル基、置換されていない分岐状C3-C10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C3-C10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C3-C10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH3)3、置換されていないC3-C8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC3-C8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC3-C8環状アルキル基、置換されていないC3-C8芳香族基、ハロゲンで置換されたC3-C8芳香族基、アミノ基で置換されたC3-C8芳香族基、C3-C10ヘテロ環状基、C3-C10アルケニル基、及びC3-C10アルキニル基であり、そして(ii)XはCl、Br、FまたはIである)に関する。この態様の一つの観点では、Rはメチル基である。この態様の他の観点の一つでは、Rはエチル基である。この態様の一つの観点では、XはClである。この態様の他の観点の一つでは、Rはメチル基であり、XはClである。この態様の他の観点の一つでは、Rはエチル基であり、XはClである。
【0017】
他の態様の一つでは、開示及び特許請求される発明は、合成された状態で(すなわち、更に精製していない状態で)、対応するテトラアルキル錫(R4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3)種を本質として含まない式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物の、合成(I)に従うジオルガノ錫酸化物(R2SnO)からの合成に関する:
【0018】
【化1】
式中、(i)Rは、置換されていない線状C
1-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C
1-C
6アルキル基、アミノ基で置換された線状C
1-C
6アルキル基、置換されていない分岐状C
3-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH
3)
3、置換されていないC
3-C
8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC
3-C
8環状アルキル基、置換されていないC
3-C
8芳香族基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8芳香族基、アミノ基で置換されたC
3-C
8芳香族基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基及びC
3-C
10アルキニル基であり、そして(ii)Xは、Cl、Br、FまたはIである。この態様の一つの観点では、Rはメチル基である。この態様の他の観点の一つでは、Rはエチル基である。この態様の一つの観点では、XはClである。この態様の他の観点の一つでは、Rはメチル基であり、XはClである。この態様の他の観点の一つでは、Rはエチル基であり、XはClである。
【0019】
他の観点の一つでは、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物は、式(II)を介して式R2SnL2の化合物に転化することもできる:
【0020】
【化2】
式中、Lは、化学交換または他の化学反応を介してXを置き換えることができる加水分解可能なモノアニオン性配位子であり、そしてLは、アルコキシ(-OR
1)、有機アミノ(-NR
2R
3)、カルボキシレート(-OOCR
4)、アミジナート(-R
5N(CR
6)NR
7、イミド(-N(COR
8)(COR
9)、アルキニド(-CCR
10)の群から選択することができ、ここで、R
1-10は、各々独立して、水素、線状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10環状アルキル基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、C
3-C
10アルキニル基、及びC
4-C
10アリール基から選択され、但し、R
1は水素であることはできず、R
2-3は双方とも水素であることはできない。
【0021】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法を、スピンコート材料としてのEUVフォトレジスト組成物を更に形成するための原料または前駆体としてあるいは蒸着用の前駆体として適したRSnX3またはRSnL3などの他の有機錫化合物を製造するための原料/ステップとして使用することを包含する。例えば、式RSnX3の化合物は、式(III)を介して前駆体から製造できる:
【0022】
【化3】
式RSnX
3の化合物は、次に、式(IV)を介して式RSnL
3の化合物に転化することができる。
【0023】
【化4】
式中、Lは、化学交換または他の化学反応を介してXを置き換えることができる加水分解可能なモノアニオン性配位子であり、そしてLは、アルコキシ(-OR
1)、有機アミノ(-NR
2R
3)、カルボキシレート(-OOCR
4)、アミジナート(-R
5N(CR
6)NR
7、イミド(-N(COR
8)(COR
9)、アルキニド(-CCR
10)の群から選択することができ、ここで、R
1-10は、それぞれ独立して、水素、線状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10環状アルキル基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、C
3-C
10アルキニル基、及びC
4-C
10アリール基から選択される。
【0024】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法を、例えばUS10,732,505(特許文献3)(この文献は、その内容が本明細書に掲載されたものとする)に記載される式RnSnX4-n(式中、Rは、金属-炭素結合によりSnに結合した1~31個の炭素原子を有する有機配位子であり、そしてXは、Snとの加水分解可能な結合を有する配位子である)の前駆体を合成するための方法に使用することを包含する。
【0025】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法を、例えばUS10,73287,466(特許文献6)(この文献は、その内容が本明細書に掲載されたものとする)に記載されるモノアルキル錫トリアミド化合物を製造するための方法に使用することを包含し、該方法は、RMgX、R2Zn、RZnNR’2またはこれらの組み合わせから選択されるアルキル化剤を、有機溶剤を含む溶液中でSn(NR’2)4と反応させることを含み、前記式中、Rは炭素原子数1~31のヒドロカルビル基であり、Xはハロゲンであり、及びR’は炭素原子数1~10のヒドロカルビル基である。
【0026】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法を、例えば、その内容が本明細書中に掲載されたものとするUS2019/0391486(特許文献7)に記載された、有機溶剤と第一のモノアルキル錫トリアルコキシド(RSn(OR’)3)との、約0.004Mから約1.0Mまでの錫濃度を有する混合物を含む放射線によりパターン化可能なコーティングのための調節された前駆体溶液を合成するための方法に使用することを包含し、前記方法は、前記有機溶剤及び第一モノアルキル錫トリアルコキシドを混合して前記の調節された前駆体溶液を形成することを含み、ここで、前記溶剤は、選択された値の±15%内の含水率を有するように調節されており、及びこの調節された含水率はせいぜい10,000重量ppmであり、及び前記第一モノアルキル錫トリアルコキシドは、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物から及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法から製造される。
【0027】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、開示及び特許請求される発明のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を、EUVプロセスに有用な調合物中にまたはそのような調合物の調製に使用することを包含する。そのような調合物は、次の(i)、(ii)及び(iii)を含むプロセスにおいて、感放射線性コーティングをパターン化するために使用されるまたは使用できる:
(i)前駆体溶液を用いて、基材表面上にコーティングを形成し、ここで、前記前駆体溶液は、(a)前記のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物から調製される及び/またはこれを製造するための方法を利用したものであり、(b)調節された前駆体溶液を生成するために使用された溶剤の含水率を目標値の約±15%に調節した結果として生じる均一な組成を有し、及び(c)約300重量ppmから約10,000重量ppmまでの選択された含水率を有し;
(ii)前記コーティングを乾燥し; 及び
(iii)乾燥された前記コーティングに照射して潜像を形成する。
【0028】
この概要セクションは、開示及び特許請求される発明の全ての態様及び/または斬進的に新規な観点を特定するものではない。その代わりに、この概要は、様々な態様の予備的な記載、及び慣用の技術及び既知技術に対する新規性の対応するポイントのみを提供するものである。開示及び特許請求された発明及び態様の追加的な詳細及び/または可能な展望については、以下に更に記載される発明の詳細な説明及び対応する図面を参照されたい。
【0029】
ここに記載の異なるステップの記載順序は、明確さの目的で提供したものである。一般的に、ここに開示されるステップは、任意の適当な順番で行うことができる。追加的に、ここに記載の異なる特徴、技術、配置などはそれぞれ、本明細書の異なる箇所で説明している場合があるが、これらのコンセプトの各々は、互いに独立してまたは適当ならば互いの組み合わせとして実施できることが意図されている。それ故、開示及び特許請求される発明は、多くの異なる方法で具体化し、見ることができる。
【0030】
定義
他に記載が無ければ、本明細書及び特許請求の範囲に使用される以下の用語は、本願では次の意味を有する。
【0031】
本願において、単数形の使用は複数を包含し、他に具体的に記載がなければ、単数形は「少なくとも一つ」を意味する。更に、「含む」という記載、並びに「含まれる」などの他の動詞形の使用は限定的ではない。また、「要素」または「成分」などの記載は、他に具体的に記載がなければ、一つの構成単位を含む要素または成分、並びに1つ超の構成単位を含む要素または成分の両方を包含する。他に指示がなければ、ここで使用する「及び」という接続詞は両立的であることを意図しており、「または」という接続詞は排他的であることを意図していない。例えば、「またはその代わりに」というフレーズは、排他的であることを意図している。ここで使用する「及び/または」という記載は、単一要素の使用も含む、前述される要素の任意の組み合わせを指す。
【0032】
測定可能な数値変数と関連して使用される時の「約」または「おおよそ」という記載は、変数の指示値と、指示値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼限界内)または指示値の百分率内(例えば、±10%、±5%)のいずれか大きい方の内の変数の全ての値とを指す。
【0033】
ここで使用される場合、「Cx-y」(x及びyはそれぞれ整数)は、鎖中の炭素原子数を指定するものである。例えば、C1-6アルキルは、炭素数1と炭素数6との間の鎖を有するアルキル鎖を指す(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル)。他に具体的に記載が無ければ、上記鎖は線状または分岐状であることができる。
【0034】
他に指示がない限り、「アルキル」は、炭化水素基を指し、これは、線状もしくは分岐状炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチルなど)、環状炭化水素基(例えば、シクロヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチルなど)または多環式炭化水素基(例えば、ノルボルニル、アダマンチルなど)であることができる。適当な非環状基は、メチル、エチル、n-もしくはiso-プロピル、n-、iso-もしくはtert-ブチル、線状もしくは分岐状ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル及びヘキサデシルであることができる。他に記載がなければ、アルキルは、炭素原子数が1~10の部分を指す。環状アルキル基は、単環式または多環式であってよい。単環式アルキル基の適当な例としては、置換されたシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル基などが挙げられる。ここに記載されるように、環状アルキル基は、前記非環式アルキル基のいずれをも置換基として有していてよい。これらのアルキル部分は、置換されていても、置換されていなくともよい。
【0035】
「ハロゲン化アルキル」は、水素の一つ以上がハロゲン(例えば、F、Cl、Br及びI)で置き換えられた先に定義された線状、環状または分岐状飽和アルキル基を指す。それ故、例えば、フッ素化アルキル(別称では「フルオロアルキル」)は、水素の一つ以上がフッ素で置き換えられた先に定義した線状、環状または分岐状飽和アルキル基を指す(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロシクロヘキシルなど)。このようなハロアルキル部分(例えば、フルオロアルキル部分)は、パーハロゲン化/マルチハロゲン化されていない場合には、置換されていなくとも、または更に置換されていてもよい。
【0036】
「アルコキシ」(別称では「アルキルオキシ」)とは、オキシ(-O-)部分を介して結合した先に定義したアルキル基を指す(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、1,2-イソプロポキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなど)。これらのアルコキシ部分は、置換されていても、置換されていなくともよい。
【0037】
「アルキルカルボニル」とは、カルボニル基(-C(=O-))部分を介して結合した先に定義したアルキル基を指す(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニルなど)。これらのアルキルカルボニル部分は、置換されていても、置換されていなくともよい。
【0038】
「ハロ」または「ハライド」はハロゲンを指す(例えば、F、Cl、Br及びI)。
【0039】
「ヒドロキシ」(別称は「ヒドロキシル」)は-OH基を指す。
【0040】
「アリール」という用語は、炭素原子数が4~10、炭素原子数が5~10、または炭素原子数が6~10の芳香族環状官能基を意味する。例示的なアリール基としては、限定はされないが、フェニル、1-フェニルエチル(Ph(Me)CH-)、1-フェニル-1-メチル-エチル(Ph(Me)2C-)、ベンジル、クロロベンジル、トリル、o-キシリル、1,2,3-トリアゾリル、ピロリル、及びフラニルなどが挙げられる。
【0041】
他に記載がなければ、「置換された」という記載は、アルキル、アルコキシ、フッ素化アルキル及び類似物に言及するときは、限定はされないがアルキル、置換されたアルキル、置換されていないアリール、置換されたアリール、アルキルオキシ、アルキルアリール、ハロアルキル、ハライド、ヒドロキシ、アミノ及びアミノアルキルを始めとした一つ以上の置換基も含むこれらの部分のうちの一つを指す。同様に、「置換されていない」という記載は、水素以外の置換基が存在しないこれらの同部分を指す。
【0042】
ここで使用する各章の表題は、文書構成を目的としたものであって、記載の主題を限定するものと解釈するべきではない。限定はされないが特許、特許出願、論文、書籍及び専門書を始めとした本願で引用する全ての文献または文献の一部は、全ての目的に関してそれらの内容の全てが本明細書中に掲載されたものとする。ここに掲載されたものとする文献及び類似の資料のいずれかにおける用語の定義が、本願明細書におけるものと矛盾する場合は、本願の定義が優先する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
前記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は双方とも例示、説明のためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明に関してそれを限定するものではないと理解するべきである。開示された発明の課題、特徴、利点及び思想は、本明細書に記載の説明から当業者には明らかであり、加えて、開示された発明は、ここに記載の説明に基づいて当業者によって容易に実施可能である。開示された発明を実施するための好ましいモードを示す「好ましい態様」及び/または実施例の記載は、いずれも説明の目的で含まれるものであり、特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。
【0044】
ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物
先に記載したように、開示された発明は、合成された時に(すなわち更に精製していない状態で)、対応するテトラアルキル錫(R4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3)種を含まない、式R2SnX2(式中、Rは、置換されていない線状C1-C10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C1-C6アルキル基、アミノ基で置換された線状C1-C6アルキル基、置換されていない分岐状C3-C10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C3-C10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C3-C10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH3)3、置換されていないC3-C8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC3-C8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC3-C8環状アルキル基、置換されていないC3-C8芳香族基、ハロゲンで置換されたC3-C8芳香族基、アミノ基で置換されたC3-C8芳香族基、C3-C10ヘテロ環状基、C3-C10アルケニル基、及びC3-C10アルキニル基であり、そして(ii)XはCl、Br、FまたはIである)のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物に関する。
【0045】
この態様の一つの観点では、Rは、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物においてメチル基である。この態様の他の観点の一つでは、Rは、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物においてエチル基である。この態様の一つの観点では、Xは、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物においてClである。この態様の他の観点の一つでは、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物において、Rはメチル基であり、XはClである(すなわち、ジメチル錫ジクロライド;Me2SnCl2)。この態様の他の観点の一つでは、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物において、Rはエチル基であり、XはClである(すなわち、ジエチル錫ジクロライド;Et2SnCl2)。
【0046】
この態様の一つの観点では、式R2SnX2の化合物は、NMR、GCまたは他の標準的な分析法などの分析法に基づいて、約98重量%以上の純度を有する。
【0047】
この態様の一つの観点では、式R2SnX2の化合物は、NMR、GCまたは他の標準的な分析法などの分析法に基づいて、約98.5重量%以上の純度を有する。
【0048】
この態様の一つの観点では、式R2SnX2の化合物は、NMR、GCまたは他の標準的な分析法などの分析法に基づいて、約99重量%以上の純度を有する。
【0049】
この態様の一つの観点では、式R2SnX2の化合物は、NMR、GCまたは他の標準的な分析法などの分析法に基づいて、約99.5重量%以上の純度を有する。
【0050】
以下により詳しく記載する通り、特にMe2SnCl2及びEt2SnCl2を始めとした、開示及び特許請求される発明のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物は、(i)合成された時に(すなわち、更に精製してない状態で)、対応するテトラアルキル錫(R4Sn;例えば(Me)4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX;例えば(Me)3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3;例えばMeSnX3)種を含まず、及び(ii)堆積及びEUVプロセスで有用な他の前駆体及び/または調合物に使用できるかあるいはこのような前駆体及び/または調合物を製造するために使用することができる。
【0051】
ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の製造方法
先に記載したように、開示された発明は、合成(I)に従う、ジオルガノ錫酸化物(R2SnO)からの式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の合成に関する:
【0052】
【化5】
式中、(i)Rは、置換されていない線状C
1-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C
1-C
6アルキル基、アミノ基で置換された線状C
1-C
6アルキル基、置換されていない分岐状C
3-C
10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C
3-C
10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH
3)
3、置換されていないC
3-C
8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC
3-C
8環状アルキル基、置換されていないC
3-C
8芳香族基、ハロゲンで置換されたC
3-C
8芳香族基、アミノ基で置換されたC
3-C
8芳香族基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、及びC
3-C
10アルキニル基であり、そして(ii)XはCl、Br、FまたはIである。式R
2SnX
2の生じる化合物は、合成された時に(すなわち更に精製していない状態で)、対応するテトラアルキル錫(R
4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R
3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX
3)種を含まない。
【0053】
この態様の一つの観点では、Rは、ジオルガノ錫酸化物(R2SnO)化合物においてメチル基である(すなわち、ジメチル錫酸化物;(Me)2SnO))。この態様の他の観点の一つでは、Rは、ジオルガノ錫酸化物(R2SnO)化合物においてエチル基である(すなわち、ジエチル錫酸化物;(Et)2SnO))。商業的に利用可能なジオルガノ錫酸化物(R2SnO)化合物としては、限定はされないが、ジブチル錫(IV)酸化物、ジオクチル錫酸化物及びビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)錫酸化物などが挙げられ;他の望ましいジオルガノ錫酸化物(R2SnO)化合物を製造することができる。
【0054】
前記合成に従い製造され、かつ合成された時に、テトラアルキル錫(R4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3)を含まない、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の例には、限定はされないが、表1に示すものなどが挙げられる:
【0055】
【表1】
この態様の一つの観点では、Rが、式R
2SnX
2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物においてメチル基であることが好ましい。この態様の他の観点の一つでは、Rが、式R
2SnX
2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物においてエチル基であることが好ましい。この態様の一つの観点では、Xが、式R
2SnX
2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物においてClであることが好ましい。この態様の一つの観点では、式R
2SnX
2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物において、Rがメチル基であり、そしてXがClであることが好ましい(すなわち、ジメチル錫ジクロライド;Me
2SnCl
2)。この態様の一つの観点では、式R
2SnX
2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物において、Rがエチル基であり、XがClであることが好ましい(すなわち、ジエチル錫ジクロライド;Et
2SnCl
2)。
【0056】
開示及び特許請求される式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を合成するための方法は、
(i)ジオルガノ錫酸化物(R2SnO)(式中、(i)Rは、置換されていない線状C1-C10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C1-C6アルキル基、アミノ基で置換された線状C1-C6アルキル基、置換されていない分岐状C3-C10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C3-C10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C3-C10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH3)3、置換されていないC3-C8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC3-C8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC3-C8環状アルキル基、置換されていないC3-C8芳香族基、ハロゲンで置換されたC3-C8芳香族基、アミノ基で置換されたC3-C8芳香族基、C3-C10ヘテロ環状基、C3-C10アルケニル基、及びC3-C10アルキニル基である)と適当な有機溶剤との混合物を生成するステップ;
(ii)式HX(式中、XはCl、Br、FまたはIのうちの一つである)の酸の水溶液をステップ(i)の混合物に加えて、二相系混合物(すなわち、有機相と水性相)を生成するステップ;
(iii)ステップ(ii)の二相系混合物を、しばらくの期間、攪拌するステップ;
(iv)前記二相系混合物の有機相及び水性相を分離するステップ;
(v)任意に、水性相を更に抽出するステップ;
(vi)式R2SnX2の化合物を単離するステップ; 及び
(vii)任意に、式R2SnX2の化合物を精製するステップ、
を含む。
【0057】
ステップ(i)においては、ジオルガノ錫酸化物(すなわち、R2SnO)を、適当な有機溶剤と組み合せて、混合物を生成する。先に示したように、Rは、置換されていない線状C1-C10アルキル基、ハロゲンで置換された線状C1-C6アルキル基、アミノ基で置換された線状C1-C6アルキル基、置換されていない分岐状C3-C10アルキル基、ハロゲンで置換された分岐状C3-C10アルキル基、アミノ基で置換された分岐状C3-C10アルキル基、置換されていないアミン、置換されたアミン、-Si(CH3)3、置換されていないC3-C8環状アルキル基、ハロゲンで置換されたC3-C8環状アルキル基、アミノ基で置換されたC3-C8環状アルキル基、置換されていないC3-C8芳香族基、ハロゲンで置換されたC3-C8芳香族基、アミノ基で置換されたC3-C8芳香族基、C3-C10ヘテロ環状基、C3-C10アルケニル基、及びC3-C10アルキニル基である。この態様の一つの観点では、Rはメチル基である(すなわち、ジメチル錫酸化物;(Me)2SnO)。この態様の他の観点の一つでは、Rはエチル基である(すなわち、ジエチル錫酸化物;(Et)2SnO)。
【0058】
ステップ(i)においては、適当な溶剤を使用し得る。このような溶剤の例としては、限定はされないが、線状、分岐状、環状またはポリ-エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグリム、及び/またはテトラグリム); 線状、分岐状または環状アルカン、アルケン、芳香族類及びハロカーボン(例えば、ペンタン、ヘキサン類、トルエン及びジクロロメタン)、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。好ましい溶剤としては、トルエン及びジクロロメタン(別称では、メチレンクロライド)などが挙げられる。特に好ましい溶剤の一つは、メチレンクロライドである。前記混合物は、調製された時には、スラリーの形態であることができる。
【0059】
ステップ(ii)では、式HX(式中、XはCl、Br、FまたはIのうちの一つである)の酸の水溶液を、ステップ(i)からのジオルガノ錫酸化物の混合物(例えば、ジメチル錫酸化物及び有機溶剤)に加える。この態様の一つの観点では、前記酸はHClである。この態様の一つの観点では、前記酸はHBrである。この態様の一つの観点では、前記酸はHFである。この態様の一つの観点では、前記酸はHIである。前記酸の水溶液の添加は、この酸溶液中の水の存在の故に、(有機相と水性相とを含む)二相系混合物を生成する。前記酸溶液中の水の量は、変えることができ及び/または望むようにもしくは必要に応じて調節することができる点に留意されたい。一つの態様では、前記ジオルガノ錫酸化物はジメチル錫酸化物((Me)2SnO)であり、前記溶剤はメチレンクロライドを含み、前記水性酸はHClを含む。他の態様の一つでは、前記ジオルガノ錫酸化物は、ジエチル錫酸化物(Et)2SnO)であり、前記溶剤はメチレンクロライドを含み、前記水性酸はHClを含む。
【0060】
ステップ(iii)において、ステップ(ii)からの二相系混合物は、しばらくの期間、攪拌する。時間の長さは、比較的短時間(例えば10から60分間まで)であることができるが、望ましい場合にはより長くすることができる。一つの観点では、プロセス反応時間は約10分間から約12時間までである。他の観点の一つでは、反応時間は約10分間から約10時間までである。他の観点の一つでは、反応時間は約10分間から約6時間までである。他の観点の一つでは、反応時間は約10分間から約3時間までである。他の観点の一つでは、反応時間は約10分間から約1時間までである。他の観点の一つでは、反応時間は約10分間から約30分間までである。
【0061】
ステップ(iv)において及び前記攪拌の後に、前記二相系混合物の水性相及び有機相を分離する。この分離は、任意の許容可能な方法で為し得る。
【0062】
ステップ(v)において、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を更に回収するために、水性相を任意に更に抽出することができる。この抽出は、任意の適当な溶剤(例えば、先に記載した溶剤)を用いて行うことができる。一つの態様では、これは、ステップ(i)で使用したものと同じ溶剤を用いて行われる。例えば、この態様の一つの観点では、前記水性相は、追加のメチレンクロライドを用いて抽出する。
【0063】
ステップ(vi)においては、式R2SnX2の化合物が単離される。このステップでは、使用された有機溶剤が除去される。溶剤の除去は、任意の適当な手順(複数可)を用いて行うことができる。その後、単離された材料を、任意の適当な溶剤中で戻すことができる。この態様の一つの観点では、単離された材料はトルエン中で戻すことができる。
【0064】
先に記載した通り、合成された時の式R2SnX2の化合物(例えば、Me2SnCl2)は、対応するテトラアルキル錫(R4Sn)、トリアルキル錫ハロゲン化物(R3SnX)及びモノアルキル錫トリハロゲン化物(RSnX3)種を本質として含まない。しかし、ステップ(vii)において、式R2SnX2の化合物は、任意に、他の不純物を除去するために更に精製される。この精製は、任意の適当な手順(複数可)を用いて行うことができる。一つの観点では、式R2SnX2の化合物は、蒸留により精製することができる。他の観点の一つでは、式R2SnX2の化合物は、結晶化により精製することができる。一つの観点では、式R2SnX2の化合物は精製して、NMR、GCまたは他の標準的な分析方法などの分析方法に基づいて、約98重量%以上の純度とする。一つの観点では、式R2SnX2の化合物は精製して、NMR、GCまたは他の標準的な分析方法などの分析方法に基づいて、約99重量%以上の純度とする。他の観点の一つでは、式R2SnX2の化合物は精製して、1H NMR、GCまたは他の標準的な分析方法などの分析方法に基づいて、約99.5重量%以上の純度とする。
【0065】
一つの観点では、当該方法の一部のまたは全てのステップは、約-40℃と、使用する溶剤(複数可)の沸点以下の温度との間の温度で行われる。他の観点の一つでは、当該方法の一部のまたは全てのステップは、約-40℃と約100℃との間の温度で行われる。他の観点の一つでは、当該方法の一部のまたは全てのステップは、約-40℃と約30℃との間の温度で行われる。他の観点の一つでは、当該方法の一部のまたは全てのステップは、約-40℃と約室温との間の温度で行われる。他の観点の一つでは、全てのステップは、約-40℃と、使用する溶剤(複数可)の沸点以下の温度との間の温度で行われる。他の観点の一つでは、当該方法の全てのステップは、室温で行われる。
【0066】
一つの観点では、当該方法からの式R2SnX2の化合物の収率は約80%または80%超である。他の観点の一つでは、当該方法からの式R2SnX2の化合物の収率は約85%または85%超である。他の観点の一つでは、当該方法からの式R2SnX2の化合物の収率は約90%または90%超である。他の観点の一つでは、当該方法からの式R2SnX2の化合物の収率は約95%または95%超である。
【0067】
ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の使用及びそれを製造する方法
先に記載した通り、他の観点の一つでは、式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物は、式(II)を介して式R2SnL2の化合物に転化することもできる。
【0068】
【化6】
式中、Lは、化学交換または他の化学反応を介してXを置き換えることができる加水分解可能なモノアニオン性配位子であり、そしてLは、アルコキシ(-OR
1)、有機アミノ(-NR
2R
3)、カルボキシレート(-OOCR
4)、アミジナート(-R
5N(CR
6)NR
7、イミド(-N(COR
8)(COR
9)、アルキニド(-CCR
10)の群から選択することができ、ここで、R
1-10は、それぞれ独立して、水素、線状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10環状アルキル基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、C
3-C
10アルキニル基、及びC
4-C
10アリール基から選択され、但し、R
1は水素であることはできず、及びR
2-3は、両方が水素であることはできない。
【0069】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法を、スピンコート材料としてのEUVフォトレジスト組成物を更に形成するための原料または前駆体としてあるいは蒸着用の前駆体として適したRSnX3またはRSnL3などの他の有機錫化合物を製造するための原料/ステップとして使用することを包含する。例えば、式RSnX3の化合物は、式(III)を介して前駆体から製造できる:
【0070】
【化7】
式RSnX
3の化合物は、次に、式(IV)を介して式RSnL
3の化合物に転化することができる。
【0071】
【化8】
式中、Lは、化学交換または他の化学反応を介してXを置き換えることができる加水分解可能なモノアニオン性配位子であり、そしてLは、アルコキシ(-OR
1)、有機アミノ(-NR
2R
3)、カルボキシレート(-OOCR
4)、アミジナート(-R
5N(CR
6)NR
7、イミド(-N(COR
8)(COR
9)、アルキニド(-CCR
10)の群から選択することができ、ここで、R
1-10は、それぞれ独立して、水素、線状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10環状アルキル基、C
3-C
10ヘテロ環状基、C
3-C
10アルケニル基、C
3-C
10アルキニル基、及びC
4-C
10アリール基から選択され、但し、R
1は水素であることはできず、及びR
2-3は、両方が水素であることはできない。
【0072】
例えば、式R2SnX2の前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法は、式R2SnL2またはRSnL3の化合物を製造するための化学交換反応、例えば式(V)及び(VI)に例示される反応において原料/ステップとして使用することができる:
【0073】
【化9】
これらの反応は、例えば、Kennedy,J.D.,“Auto-association in organometallic compounds: a nuclear magnetic double resonance study of methyl- and n-butyl-tin alkoxides.” J.Chem.Soc.,Perkin Trans.,2(2):242-248(1977)(非特許文献5);Reuter, H.and D.Schroeder,“Preparation,crystal structure and reactions of isopropyltin triisopropoxide” J. Organomet.Chem.,455(1-2):83-87(1993)(非特許文献6);及びJones,K. and M.F.Lappert “Aminostannanes,stannylamines,and stannazanes”Proc.Chem.Soc.,London,358-359,(1962)(非特許文献7)に記載されており、これらの文献は、それぞれその内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。
【0074】
同様に、R2SnL2またはRSnL3(Lはアルコキシまたはカルボキシレートである)は、R2SnX2またはRSnX3を、例えば式(VII)に示されるように、有機アミンの存在下に対応するアルコ-ルまたはカルボン酸と反応させることによっても製造できる(例えば、US2020/117085A(特許文献8)を参照。この特許文献の内容はその全てがここに掲載されたものとする)。
【0075】
【化10】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための方法を、例えばUS10,732,505(特許文献3)(この文献は、その内容の全てが本明細書に掲載されたものとする)に記載される、式R
nSnX
4-n(式中、Rは、金属-炭素結合によりSnに結合した1~31個の炭素原子を有する有機配位子であり、そしてXは、Snとの加水分解可能な結合を有する配位子である)の前駆体を合成するための方法に使用することを包含する。このような方法は、式R
2SnX
2の化合物を、式R
nSnX
4-nの化合物に転化することを含み、ここで、nは1~3であり、そしてXは、Snとの加水分解可能な結合を有する配位子である。
【0076】
前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の製造方法を用いて製造できる式R2SnL2またはRSnL3の他の化合物としては、以下のものなどが挙げられる:tBu2Sn(NEt2)2、tBu2Sn(NMe2)2、nBu2Sn(NMe2)2、iPr2Sn(NMe2)2、tAm2Sn(NMe2)2、(シクロペンチル)2Sn(NMe2)2、Me2Sn(NMe2)2、(シクロブチル)2Sn(NMe2)2、(シクロペンチル)2Sn(NMe2)2、(シクロヘキシル)2Sn(NMe2)2、((C6H5)CH2)2Sn(NMe2)2、((C6H5)(CH3)CH)2Sn(NMe2)2、((C6H5)(CH3)2C)2Sn(NMe2)2、((CH3)2(CN)C)2Sn(NMe2)2、((CH3)(CN)CH)2Sn(NMe2)2、tBu2Sn(OtBu)2、Me2Sn(OtBu)2、nBu2Sn(OtBu)2、iPr2Sn(OtBu)2、tAm2Sn(OtBu)2、(シクロブチル)2Sn(OtBu)2、(シクロペンチル)2Sn(OtBu)2、(シクロヘキシル)2Sn(OtBu)2、((C6H5)CH2)2Sn(OtBu)2、((C6H5)(CH3)CH)2Sn(OtBu)2、((C6H5)(CH3)2C)2Sn(OtBu)2、((CH3)2(CN)C)2Sn(OtBu)2、((CH3)(CN)CH)2Sn(OtBu)2、tBu2Sn(OtAm)2、Me2Sn(OtAm)2、nBu2Sn(OtAm)2、
iPr2Sn(OtAm)2、tAm2Sn(OtAm)2 (シクロブチル)2Sn(OtAm)2、(シクロペンチル)2Sn(OtAm)2、(シクロヘキシル)2Sn(OtAm)2、((C6H5)CH2)2Sn(OtAm)2、((C6H5)(CH3)CH)2Sn(OtAm)2、((C6H5)(CH3)2C)2Sn(OtAm)2、((CH3)2(CN)C)2Sn(OtAm)2、((CH3)(CN)CH)2Sn(OtAm)2、tBuSn(NEt2)3、tBuSn(NMe2)3、
tBuSn(OtBu)3、iPrSn(NMe2)3、MeSn(OtBu)3、nBuSn(OtBu)3、nBuSn(NMe2)3、(CH3)3CSn(NMe2)3、(CH3)2CHSn(NMe2)3、(CH3)2(CH3CH2)CSn(NMe2)3、シクロペンチルSn(NMe2)3、CH3Sn(NMe2)3、シクロブチルSn(NMe2)3、シクロペンチルSn(NMe2)3、シクロヘキシルSn(NMe2)3 (C6H5)CH2Sn(NMe2)3、(C6H5)(CH3)CHSn(NMe2)3、(C6H5)(CH3)2CSn(NMe2)3、(CH3)2(CN)CSn(NMe2)3、(CH3)(CN)CHSn(NMe2)3、(CH3)3CSn(OtBu)3、(CH3)2CHSn(OtBu)3、(CH3)2(CH3CH2)CSn(OtBu)3、(CH2)2CHSn(OtBu)3、CH3Sn(OtBu)3、(CH2)3CHSn(OtBu)3、(CH2)4CHSn(OtBu)3、(C6H5)CH2Sn(OtBu)3、(C6H5)(CH3)CHSn(OtBu)3、(C6H5)(CH3)2CSn(OtBu)3、(CH3)2(CN)CSn(OtBu)3、(CH3)(CN)CHSn(OtBu)3、(CH3)3CSn(OtAm)3、(CH3)2CHSn(OtAm)3、(CH3)2(CH3CH2)CSn(OtAm)3、シクロプロピルSn(OtAm)3、CH3Sn(OtAm)3、シクロブチルSn(OtAm)3、シクロペンチルSn(OtAm)3、シクロヘキシルSn(OtAm)3、(C6H5)CH2Sn(OtAm)3、(C6H5)(CH3)CHSn(OtAm)3、(C6H5)(CH3)2CSn(OtAm)3、(CH3)2(CN)CSn(OtAm)3、(CH3)(CN)CHSn(OtAm)。
【0077】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の製造方法を、例えば、その内容の全てが本明細書中に掲載されたものとするUS2019/0391486(特許文献7)に記載された、有機溶剤と第一のモノアルキル錫トリアルコキシド(RSn(OR’)3)との、約0.004Mから約1.0Mまでの錫濃度を有する混合物を含む放射線でパターン化可能なコーティングのための調節された前駆体溶液を合成する方法に使用することを包含し; この方法は、前記有機溶剤及び前記第一のモノアルキル錫トリアルコキシドを混合して、前記の調節された前駆体溶液を生成し、ここで前記溶剤は、選択された値の±15%内の含水率を有するように調節されたものであり及びこの調節された含水率はせいぜい10,000重量ppmであり、及び前記第一のモノアルキル錫トリアルコキシドは、前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物から及び/または前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物の製造方法から製造される。幾つかの態様では、式RSn(OR’)3のアルキル錫トリアルコキシド化合物において、R及びR’は独立してヒドロカルビル基、例えば、炭素原子数1~31のアルキルまたはシクロアルキルであり、これらのアルキルまたはシクロアルキルは、任意に、O、N、Si、Ge、Sn、Te及び/もしくはハロゲン原子を含む一つ以上のヘテロ原子官能基でまたはフェニルもしくはシアノ基で更に官能化されたアルキルもしくはシクロアルキルで置換された一つ以上の炭素原子を有する。一部の態様では、R’は≦10個の炭素原子を含み、そして例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、またはt-アミルであることができる。このような方法は、例えば、(i)式R2SnX2の化合物を、式RSn(OR’)3の第一のモノアルキル錫トリアルコキシドに転化し、及び(ii)有機溶剤及び第一のモノアルキル錫トリアルコキシドを混合して、調節された前駆体溶液を生成することを含み、ここで、(a)前記溶剤は、選択された値の±15%の含水率を有するように調節されており、(b)この調節された含水率はせいぜい10,000重量ppmであり、及び(c)R’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチルまたはt-アミルのうちの一つ以上である。この態様の一つの観点では、前記の選択された値は約250重量ppmから約10,000重量ppmまでである。この態様の他の観点の一つでは、前記の選択された値は約300重量ppmから約5,000重量ppmまでである。
【0078】
他の観点の一つでは、開示及び特許請求される発明は、開示及び特許請求される発明のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を、EUVプロセスに有用な調合物中にまたはそのような調合物の調製に使用することを包含する。このような調合物は、(i)前駆体溶液を用いて、基材表面上にコーティングを形成し、ここで前駆体溶液は、(a)前記ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物から調製した及び/またはそれの製造方法を利用したものであり、(b)前記調節された前駆体溶液を生成するために使用した溶剤の含水率を目的値の約±15%内に調節した結果として均一な組成を有し、及び(c)約300重量ppmから約10,000重量ppmまでの選択された含水率を有し; (ii)前記コーティングを乾燥し; 及び(iii)この乾燥したコーティングを照射して潜像を形成することを含むプロセスにおいて、感放射線性コーティングをパターン化するために使用されるかまたは使用できる。
【0079】
開示及び特許請求される発明の他の観点の一つは、98重量%以上の先に記載した式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物;0重量%のR4Sn、R3SnX及びRSnX3; 及び2重量%までの他の不純物を含む組成物である。
【0080】
開示及び特許請求される発明の他の観点の一つは、合成された状態でR4Sn、R3SnX及びRSnX3を含まない、先に記載した式R2SnX2のジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を製造するための、先に記載したジオルガノ錫酸化物(R2SnO)の使用である。
【0081】
本明細書中に記載の観点に基づいた開示された発明の実施の仕方において、ここに開示される発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく様々な改良が可能であることも当業者には明らかである。
【実施例】
【0082】
以下、本願の開示のより具体的な態様、及びこのような態様の裏付けとなる実験結果を記載する。これらの例は、開示された発明をより十分に説明するために以下に記載したものであり、どのような形でも開示された発明を限定するものと解釈するべきではない。
【0083】
様々な改良及び変更を、開示された発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、開示された発明及びここに提供される具体例に対して行うことができることは当業者には明らである。それ故、以下の例によって提供される記載を含めた開示された発明は、いずれの請求項及びそれらと等価のものの範囲内に入る、開示された発明の改良及び変更を包含することが意図される。
【0084】
材料及び方法:
開示及び特許請求される方法は、商業的に利用可能な材料(例えば、ジメチル錫酸化物、メチレンクロライドなど)を利用する。
【0085】
例1:ジメチル錫ジクロライドの合成
ガラス攪拌シャフト及びテフロン攪拌パドル、工業的凝縮器、2.5L添加漏斗、ガラスサーモウェル及びサイドアームアダプタを22Lのフラスコに装備し、そしてこのフラスコを窒素ガスでフラッシュし、そして1983gのジメチル錫酸化物をそれに仕込んだ。10Lのジクロロメタン(CH2Cl2)をこのフラスコに仕込み、そして生じたスラリーの攪拌を開始した。水中の12.2M HClの5.0Lを前記添加漏斗に(二回に分けて)加えた。この溶液を、1時間の期間にわたって前記攪拌中のスラリーに加えた。その間に、温度は約24℃から約35℃に上昇した。このスラリーは最終的に透明な黄色の溶液となった。反応を数時間攪拌し、そして攪拌を停止すると、直ぐに層が発生した。有機層を水性層から分離し、そしてこの水性層をCH2Cl2で三回抽出し、そして各有機層を一緒にし、そして溶剤を真空下に除去した。固形物を2Lのトルエン中に取り入れ、70℃に加熱し、そして材料を結晶化するためにフラスコをクーラー中に入れた。トルエンを材料から濾別し、そして無色の固形物を低温のペンタンで洗浄し、そして真空下において乾燥した。ジメチル錫ジクロライド(2385g;90%収率)が、自由流動性の粉末として単離された。対応するテトラアルキル錫、トリアルキル錫ハロゲン化物またはモノアルキル錫トリハロゲン化物種は、1H NMR/119Sn NMRでは検出されなかった。
【0086】
比較例
Me2SnCl2を、テトラメチル錫及び錫テトラクロライドから、90~135℃で15~16時間攪拌してニート(無溶媒)反応で製造した。次いで、溶剤をその混合物に加え、そして冷却して結晶化を誘発させた。次いで、結晶を単離しそして洗浄して、残留する有毒な不純物を除去した。メチル錫クロライドを最大で4%含む上澄み液はボトル詰めし、そして適切な廃棄のために有害廃棄物に移した。テトラアルキル錫は検出されなかった。最終の材料は、Me2SnCl2の>99%純度として試験した。
【0087】
この比較方法のMe2SnCl2は、反応の相当なワークアップの後に精製できるものの、検出可能な不純物無しでは直接は(すなわちインサイチューでは)合成できなかった。これに対して、当該方法は、「粗」R2SnO原料がトリもしくはテトラアルキル錫不純物を含まないため、合成された状態でテトラもしくはトリアルキル錫種を全く含まない、ジオルガノ錫ジハロゲン化物化合物を直接生成する。R2SnO種へのHXの添加は、GC及び1H NMR/119Sn NMRによって99.5%超の純度、幾つかのケースでは99.9%超の純度で単離される対応するR2SnX2しか生成しない。
【0088】
本発明を、或る程度の詳細さをもって記載及び例示したが、この開示は例示として行ったものに過ぎないこと、及び各ステップの条件及び順番の数々の変化は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって採用できることが理解される。
【国際調査報告】