(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】光化学反応を実現するための装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20240806BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20240806BHJP
F21V 29/58 20150101ALI20240806BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20240806BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240806BHJP
F21Y 107/00 20160101ALN20240806BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B01J19/12 E
F21V29/503
F21V29/58
F21V33/00 400
F21Y115:10
F21Y107:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506185
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022070722
(87)【国際公開番号】W WO2023011951
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プルベール,ソリン
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ビッシュ,ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーゲマン,ティル クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ブッフビンダー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】チルヒヴィッツ,シュテフェン
【テーマコード(参考)】
3K014
4G075
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014RB09
4G075AA15
4G075AA23
4G075BA04
4G075BD04
4G075BD07
4G075CA32
4G075CA33
4G075DA02
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4G075EB27
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4G075FB01
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4G075FB04
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4G075FB11
4G075FB12
4G075FC04
4G075FC11
(57)【要約】
本発明は、管状ハウジング(40)を備える光反応器用の照明デバイスに関し、管状ハウジングは、長手方向軸(41)と、ハウジング(40)の内面上に装着された複数の個々の光源(30)とを有し、ハウジング(40)は、熱伝達流体用のフローチャネル(46)を備え、フローチャネル(46)は、個々の光源の背後においてハウジング(40)の内面の裏側に配置されて、個々の光源用のコンフォーマルな冷却通路を形成する。本発明は更に、照明デバイスと、少なくとも1つの管状フローチャネルを有する反応チャンバであって、反応チャンバは照明デバイスの内部に配置され、チャネル壁は光源により放出される光に対して透過性を有する材料で作製されている、反応チャンバと、を備える光反応器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状ハウジング(40)を備える光反応器用の照明デバイスであって、前記管状ハウジングは、長手方向軸(41)と、前記ハウジング(40)の内面上に装着された複数の個々の光源(30)とを有し、前記ハウジング(40)は、熱伝達流体用のフローチャネル(46)を備え、前記光源(30)に向かって導かれる前記フローチャネル(46)のチャネル壁が、前記光源(30)が配置されている領域において前記管状ハウジング(40)の前記内面の形状に基本的に追随するように、前記フローチャネル(46)が、前記個々の光源の背後において前記ハウジング40の前記内面の裏側に配置されて、前記個々の光源用のコンフォーマルな冷却通路を形成することを特徴とする、照明デバイス。
【請求項2】
前記光源(30)は250nm~800nmの波長を有する発光ダイオード(LED)であることを特徴とする、請求項1に記載の照明デバイス。
【請求項3】
前記光源(30)により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され長手方向軸(51)を有する管状保護シェル(50)が、前記管状ハウジングの内部に配置され、前記保護シェル(50)の外面及び前記ハウジング(40)の前記内面が環状チャネル(52)を形成し、前記保護シェル(50)の前記長手方向軸(51)は、好ましくは前記ハウジング(40)の前記長手方向軸(41)と同軸又は同一であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の照明デバイス。
【請求項4】
前記環状チャネル(52)の両端が、前記ハウジング(40)及び前記保護シェル(50)に封止状態で取り付けられたカバー(60)により閉じられていることを特徴とする、請求項3に記載の照明デバイス。
【請求項5】
前記ハウジング(40)は、前記光源(30)が前記内面に取り付けられる位置において、前記ハウジング(40)の前記内面と前記外面との間の前記フローチャネル(46)を通る通路(43)を備え、前記通路(43)は前記フローチャネル(46)に対して封止されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項6】
前記ハウジング(40)は、前記ハウジング(40)の前記内面と前記外面との間の前記フローチャネル(46)内にブラインドホールの形の受け口(49)を備え、前記受け口(49)は、前記個々の光源を固定するためのねじ山を備え、前記フローチャネル(46)に対して封止されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項7】
前記ハウジング(40)は、8W/(m・K)を超える熱伝導率を有する材料から作製され、前記材料は、好ましくは、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項8】
前記コンフォーマルな冷却通路は、前記通路の一端における熱伝達流体用の入口(44)と前記通路の他端における前記熱伝達流体用の出口(45)とを有する、前記長手方向軸(41)に沿って向けられた少なくとも2つのフローチャネル(46)を備え、前記少なくとも2つのフローチャネル(46)は流体連通されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項9】
前記コンフォーマルな冷却通路は、前記通路の一端における熱伝達流体用の入口(44)と、前記通路の他端における前記熱伝達流体用の出口(45)と、前記長手方向軸(41)に沿って向けられた互いに平行な少なくとも2つのフローチャネル(46)とを備え、各フローチャネル(46)は、前記熱伝達流体用の前記入口(44)及び前記出口(45)に流体連通していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の照明デバイスと、長手方向軸(21)を有する少なくとも1つの管状フローチャネル(20)を有し、前記照明デバイスの内部に配置された、反応チャンバ(10)であって、前記反応チャンバ(10)の前記外面と前記照明デバイスの前記ハウジング(40)の前記内面との間にギャップ(11)が形成され、前記フローチャネル(20)の前記チャネル壁(22)は前記光源(30)により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され、前記個々の光源(30)は、前記フローチャネル(20)の前記長手方向軸(21)に対して半径方向に前記反応チャンバ(10)の周りに配置された発光ダイオード(LED)である、反応チャンバ(10)と、を備える、光反応器。
【請求項11】
前記ハウジング(40)の前記長手方向軸(41)は、前記フローチャネル(20)の前記長手方向軸(21)と同軸又は同一であることを特徴とする、請求項10に記載の光反応器。
【請求項12】
前記光源(30)により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され長手方向軸(51)を有する管状保護シェル(50)が、前記ギャップ(11)内に配置されて、前記反応チャンバ(10)の前記外面と前記保護シェル(50)との間に環状チャネルを形成し、前記保護シェル(50)の前記長手方向軸(51)は、好ましくは前記フローチャネル(20)の前記長手方向軸(21)と同軸又は同一であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の光反応器。
【請求項13】
前記フローチャネル(20)の前記長手方向軸(21)に対して垂直な前記ハウジング(40)の前記内面の横断面がn多角形の形状を有し、nは前記内面の平坦部分の数であり、前記数nは3~700、より好ましくは6~350であることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の光反応器。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の光反応器において光反応を実現するためのプロセスであって、前記反応チャンバを通して少なくとも1種の反応物を流すステップと、前記光源から放出された光を前記反応物に照射するステップとを含む、プロセス。
【請求項15】
前記光反応の少なくとも1つの生成物がビタミンAであることを特徴とする、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状ハウジングを備える光反応器用の照明デバイスに関し、管状ハウジングは、長手方向軸と、ハウジングの内面上に装着された複数の個々の光源とを有する。本発明は更に、照明デバイスと、少なくとも1つの管状フローチャネルを有する反応チャンバとを備える光反応器に関し、反応チャンバは照明デバイスの内部に配置され、チャネル壁は光源により放出される光に対して透過性を有する材料で作製されている。
【背景技術】
【0002】
光反応器は、光反応、例えば光触媒反応又は光開始反応を実現することを可能にする反応器であり、当該技術分野においてよく知られている。光反応器は、バイオ反応、化学合成反応、又は水処理のような様々な種類の反応のために使用される。
【0003】
工業規模での光化学変換のための最も一般的な光源は、これまで中圧水銀ランプであり、これは、150Wの研究室ランプから60kWのバーナーまで広範囲にわたる用途に構築されている。工業用途のチューブは、典型的には5cmの直径を有し、小さい空間内に莫大な量の光を生成する。すなわち光密度は非常に高い。
【0004】
基本的に、これらのランプは水銀の発光スペクトルを有し、この発光スペクトルは、UV及び可視範囲におけるいくつかのラインによって特徴付けられる。可視範囲における光の強度を増加させる場合、例えば、これらランプにヨウ化タリウムを添加することが可能である。通常、中圧水銀ランプは管状構造であり、これらは、水中ランプとして撹拌される反応器、又は反応媒体がランプを通過するように連続的にポンプ輸送されるポンピング回路内の反応器内のいずれかに浸漬されて動作する。中圧水銀ランプは、ランプ本体の大部分にわたって光を均一に放出する。ランプからの光の強度は、電源によって非常に限定された範囲で制御することのみが可能である。水銀ランプの主な欠点は、消費される電力に対して5%~20%という比較的低い発光効率である。更なる欠点は、ランプの短い有効寿命であり、それは多くの場合、僅か約1年である。他の主な欠点は、有毒な重金属水銀の使用であり、それは、有効寿命後にチューブから回収されなければならない。
【0005】
現在まで数年にわたって、高輝度発光ダイオード(「LED」)が、照明セクターのためだけでなく、通常は所望の範囲における準単色光を生成する化学工業での用途のためにも構築されてきた。この場合、単色光は、発光最大に対して±10nm~30nmの半値全幅(FWHM)を有する光を意味する。これらダイオードの発光効率は、消費される電力に対して10%~60%の範囲にある。
【0006】
現在、市場に出ているLEDフロースルー反応器(例えばCorning光反応器)は、100%未満の量子効率を有する反応の場合、変換の増加に伴い、吸収される光量が減少するという事実を殆ど考慮していない。これら反応器は、基本的に、蛇行したチャネルを内部に有するガラスプレートである。チャネルは、ガラスプレートの表面の約50%~80%だけをカバーする。ガラスプレートの各々が両側から均一に照射される。したがって、相当な量の光が反応チャンバに入らない。加えて、変換が増加するにつれて、生成された光は、もはや完全に吸収されることはなくなる。
【0007】
市販のCorning光反応器とは別に、いくつかの他の種類の光反応器が文献で開示されている。
【0008】
国際公開第2008/145719A1号パンフレットは、放射線源として少なくとも1つのLED発光体がプラスチックマトリックス中に組み込まれたLEDプラスチック成形部品を備える、バイオ反応用の光反応器について開示している。放射線源は、光反応器の内部に配置されている。
【0009】
独国特許第10 2010 014 712B3号明細書は、少なくとも1つの放射線源を備える中心軸照射ユニットを備える、流体化媒体を光化学的に処理するためのモジュール式光管状反応器について開示しており、照射ユニットは、反応器壁により同軸に取り囲まれ、環状ギャップを包囲し、環状ギャップは、反応器壁と照射ユニットとの間に照射体積を提供している。
【0010】
独国特許出願公開第10 2014 012 217A1号明細書、同第10 2014 012 218A1号明細書、同第10 2014 012 219A1号明細書、国際公開第2020/228980A1号パンフレットは、光化学反応器の中に挿入するランプモジュールについて開示しており、ランプモジュールは、その外側に配置された少なくとも1つのLEDを有し、少なくとも1つの支持構造を有する、冷却本体と、その一方が他方の中に配置されている少なくとも2つのイマージョンチューブと、少なくとも1つのLEDの電気接続のための、そしてランプモジュールを光反応器の内部に装着するための、ヘッド部分とを備える。
【0011】
中国特許第209393167U号明細書は、光反応器として使用するための反応チューブについて開示しており、反応チューブは、内側チューブ及び外側チューブを備え、内側チューブと外側チューブとの間に反応チャンバを形成している。反応チャンバに面する内側チューブ上にLEDランプビードが配置されている。内側チューブを通って冷却媒体が流れることができる。
【0012】
米国特許出願公開第2015/0114912A1号明細書は、水の浄化を含む様々な用途のために、流体流れにおいてUV光反応又はUV光開始反応を実現するための、紫外線発光ダイオード(UV-LED)と共に動作する反応器について開示している。UV-LED反応器は、流体流れを通すための導管手段と、紫外線発光ダイオード(UV-LED)と、流体へのUV-LED放射を導管の長手方向に集束させるための放射線集束要素とから構成される。UV-LED反応器は、光触媒又は化学的酸化剤を含んでもよく、これらは、光触媒反応及び光開始反応のために、UV-LEDにより放出されるUVにより活性化される。
【0013】
国際公開第2019/056135A1号パンフレットは、長手方向に延びる主要フローチャネルを有する本体と、主要フローチャネルの中に流体を導入するための入口であって、入口から主要フローチャネルに入る流体の平均速度が長手方向とは非平行な入口流れ方向に向けられるように形作られた入口と、流体を主要フローチャネルから取り出すように送るための出口と、を備える流体流れ導管について開示している。流体導管は、主要フローチャネルを長手方向に照らす少なくとも1つの光源を有する光反応器の一部であってもよい。光源は、可視光LED又はUV-LEDであってもよい。
【0014】
産業界におけるLEDの使用が、従来の中圧水銀ランプに勝る多くの利点を既にもたらしているが、既知の反応器には依然としていくつかの欠点がある。例えば、多くの反応器の設計は、例えば、封止、電源、及び浸漬ランプの冷却に関して、複雑である。反応器の長さにわたる均一なエネルギー入力、又は反応器の特定部分に目標を定めた選択的なエネルギー入力は、既知の反応器では殆ど不可能である。したがって、例えば反応器の長さにわたる変換に関して、目標を定めた反応制御はより困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
析出物の変換の観点から見て完全な反応制御を可能にして構築及び維持が容易な光反応器を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このタスクは、請求項1に記載の光反応器用の照明デバイスにより、及び請求項10に記載の光反応器により、本発明により解決される。照明デバイス及び光反応器の有利な変形形態が、請求項2~9及び11~13に提示される。本発明の更なる主題は、請求項14及び15による、光反応を実現するためのプロセスである。
【0017】
本発明の第1の主題は、管状ハウジングを備える光反応器用の照明デバイスに関し、管状ハウジングは、長手方向軸と、ハウジングの内面上に装着された複数の個々の光源とを有する。本発明によれば、ハウジングは、熱伝達流体用のフローチャネルを備え、フローチャネルは、個々の光源の背後においてハウジングの内面の裏側に配置されて、個々の光源用のコンフォーマルな冷却通路を形成する。個々の光源の裏側にコンフォーマルな冷却通路を設けることにより、光源の効率的且つ急速な冷却が可能になる。従来技術と比較して、より高いエネルギー放出を有する光源が可能であり、それにより、光反応のための予想される用途領域が拡張される。更なる利点として、コンフォーマルなチャネルを設けることによりハウジングの薄壁が可能になり、小さい寸法を有する軽量の光反応器を実現する可能性がもたらされる。
【0018】
個々の光源は、ハウジングの内面に個々に装着することができる。代替として、個々の光源をラック上で集団とすることができ、ラックがハウジングの内面上に装着されている。個々の光源の装着、及び光源のラック又は集団の装着を組み合わせることも可能である。
【0019】
本発明によれば、照明デバイスは、複数の個々の光源を備える。好ましい実施形態では、光源は発光ダイオード(LED)である。個々の光源は、光反応、例えば光触媒反応又は光開始反応の実現を可能にするのに好適ないかなるLEDであってもよい。照明デバイスを備える光反応器において行われる反応に応じて、個々の光源の数、サイズ及び形状を適切に適合させることができる。好ましくは、250nm~800nmの波長範囲の光を放出する発光ダイオードが使用される。最も好ましくは、LEDにより放出される光は、近紫外範囲(300nm~400nm)又は可視範囲(400nm~800nm)にある。
【0020】
本発明による照明デバイスの好ましい実施形態では、光源により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され長手方向軸を有する管状保護シェルが、管状ハウジングの内部に配置され、保護シェルの外面及びハウジングの内面が環状チャネルを形成する。好ましくは、保護シェルの長手方向軸は、ハウジングの長手方向軸と同軸である又は同一である。光源が、保護シェルにより遮蔽され、したがって管状ハウジングの内部で反応器から分離されていることが、本実施形態の利点である。反応器の漏出又は故障の場合、危険な可能性のある成分、例えば、反応物、生成物、又は溶媒のような揮発性成分が、光源に接触することが防止される。
【0021】
環状チャネルの両端が、ハウジング及び保護シェルに封止状態で取り付けられたカバーにより閉じられていることが、この実施形態にとって更に好ましい。
【0022】
カバーを有する照明デバイスの好ましい変形形態では、少なくとも1つのカバーが電源ケーブル用の封止可能な開口部を備える。カバーのない照明デバイスの好ましい変形形態では、管状ハウジングが電源ケーブル用の封止可能な開口部を備える。これらの好ましい変形形態を組み合わせて、例えば、管状ハウジング並びに少なくとも1つのカバーが電源ケーブル用の封止可能な開口部を備えるようにすることもできる。封止可能な開口部は、個々の光源に又は個々の光源のラックに電力を簡単且つ安全に供給することを可能にする。
【0023】
個々の光源又は光源のラックは、ポジティブロック又は摩擦接続のような既知の方法により、例えば、接着、ねじ留め、又はリベット留めにより、ハウジングの内面に装着することができる。
【0024】
好ましい一実施形態では、ハウジングは、光源が内面に取り付けられる位置において、ハウジングの内面と外面との間のフローチャネルを通る通路を備え、通路はフローチャネルに対して封止されている。この実施形態では、個々の光源又は光源のラックは、例えば、通路を通して挿入されるボルトにより、ハウジングの内面に容易に装着することができる。更には、フローチャネルの中に延び、動作時に熱伝達流体によって取り囲まれる通路の壁が、光源の熱い裏側から冷たい熱伝達流体への熱伝達を増加させることが判明した。
【0025】
別の好ましい実施形態では、ハウジングは、ハウジングの内面と外面との間のフローチャネル内にブラインドホールの形の受け口を備え、受け口は、個々の光源を固定するためのねじ山を備え、フローチャネルに対して封止されている。受け口は、前述した実施形態の通路と同等であるが、それらがハウジングの外面の外部に延びていないという違いを有する。この実施形態では、個々の光源又は光源のラックは、例えば受け口のねじ山にねじ込まれるボルトにより、ハウジングの内面に容易に装着することができる。更には、フローチャネルの中に延び、動作時に熱伝達流体によって取り囲まれる受け口の壁が、光源の熱い裏側から冷たい熱伝達流体への熱伝達を増加させることが判明した。
【0026】
フローチャネルを通る通路と、フローチャネル内のブラインドホールの形の受け口との組合せを用いる実施形態も可能である。
【0027】
照明デバイスの好ましい実施形態では、ハウジングは、8W/(m・K)を超える熱伝導率を有する材料から作製され、材料は、好ましくは、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群から選択される。これらの好ましい熱伝達特性は、光源から、フローチャネル内を流れる熱伝達流体への、効率的な熱伝達を可能にする。
【0028】
本発明によれば、フローチャネルは、個々の光源のためのコンフォーマルな冷却通路を形成する。用語「コンフォーマル」は、光源が配置される領域において、光源に向かって導かれるフローチャネルのチャネル壁が、管状ハウジングの内面の形に基本的に追随することを意味する。好ましくは、フローチャネルのチャネル壁は、管状ハウジングの内面に平行に設けられる。この有利な設計により、光源とフローチャネルとの間で基本的に一定の壁厚が保証され、したがって、個々の光源から熱伝達流体への均一な熱伝達が保証される。
【0029】
好ましい実施形態では、コンフォーマルな冷却通路は、通路の一端における熱伝達流体用の入口と通路の他端における熱伝達流体用の出口とを有する、長手方向軸に沿って向けられた少なくとも2つのフローチャネルを備え、少なくとも2つのフローチャネルは流体連通されている。この実施形態では、冷却通路は、直列接続された少なくとも2つのフローチャネルを備える。
【0030】
好ましくは、コンフォーマルな冷却通路は、第1の通路の一端における熱伝達流体用の入口と通路の他端における熱伝達流体用の出口とを有する、長手方向軸に沿って向けられた、2~100個の、より好ましくは6~50個の、特に8~36個のフローチャネルを備え、各フローチャネルはその隣接するフローチャネルに流体連通されている。フローチャネルの直列接続は、多くの総量を伴う熱交換を、製造努力を殆ど要することなく実現できるという利点を有する。特に、フローチャネル用の少数の入口及び出口だけが必要である。
【0031】
別の好ましい実施形態では、コンフォーマルな冷却通路は、通路の一端における熱伝達流体用の入口と、通路の他端における熱伝達流体用の出口と、長手方向軸に沿って向けられた互いに平行な少なくとも2つのフローチャネルとを備え各フローチャネルは、熱伝達流体用の入口及び出口に流体連通している。この実施形態では、冷却通路は、並列接続された少なくとも2つのフローチャネルを備える。フローチャネルの並列接続は、フローチャネルに沿った圧力降下が小さい状態で熱交換を実現できるという利点を有する。更なる利点は、例えばハウジングの異なる側面上に、対称なフローチャネルを設けるという可能性である。
【0032】
直列接続されたフローチャネルと、並列接続されたフローチャネルとの組合せも可能である。
【0033】
コンフォーマルな冷却通路は、個々の光源の効率的な冷却を提供するように設計されることが好ましく、これが、照明デバイスの軸方向及び半径方向に均一な温度プロファイルをもたらす。
【0034】
フローチャネルを通して低温熱伝達流体を流すことにより、フローチャネルを使用して、光源により生成される熱を除去することが好都合である。熱伝達流体は、例えば、水、脱塩水、グリコール水溶液、塩水、及び熱媒油から選択されてもよい。
【0035】
管状ハウジングは、その上に光源を取り付けるのに好適ないかなる形状を有してもよい。好ましくは、管状ハウジングの内面は、n多角形として形成され、nは内面の平坦部分の数である。好ましくは、数nは、3~700、好ましくは3~350、特に6~36である。
【0036】
少なくとも個々の光源が取り付けられる位置における、照明デバイスの好ましい実施形態では、光源の裏側と、対応する冷却チャネルの内壁との間における、ハウジングの内面の壁厚は、0.3~2.5m、好ましくは0.7~1.5mmである。好ましい範囲にある壁厚は、ハウジングの安定性を確実にしながら、熱い光源から冷たい熱伝達流体への良好な熱伝達を促進することが判明した。
【0037】
管状ハウジングは、いかなる既知の製造プロセスにより生産されてもよい。管状ハウジングを生産する好ましいプロセスは、選択的レーザー溶解法(SLM)、レーザービーム粉末床溶融結合法、電子ビーム溶解法、電子ビーム粉末床溶融結合法、バインダージェッティング、FDMプロセス、又はFDM様のプロセスのような付加製造プロセスである。これらプロセスにより、従来の生産プロセスでは実現が殆どできない又は全くできない、かなり複雑な幾何学的形状を実現することが可能になる。
【0038】
フローチャネルの内面の粗さに応じて、内面が、研磨方法により、例えばハイドロエローシブ研削により、後処理されることが好ましい。これは、粗さを低減させ、したがって、より低い熱伝導率に起因して効率低下につながり得るチャネル内での付着物の可能性を低減させる。
【0039】
管状ハウジングの内面が、その生産後に研磨されることが更に好ましい。研磨された表面は、表面と光源との間の完全な接続を可能にし、それにより、光源から、ハウジングの表面を介してその壁を通り、フローチャネル内を流れる熱交換流体に至る効率的な熱伝達が可能になる。
【0040】
管状ハウジングは、1つの部品として作製されてもよく、又は複数の部品で構成され、それが後で組み立てられて管状ハウジングを形成してもよい。好ましい実施形態では、管状ハウジングが、一体として作製される。
【0041】
別の好ましい実施形態では、管状ハウジングは2つのシェルで作製され、各シェルが、ハウジングの長手方向セクションを形成する。この場合、管状ハウジングは、2つのハーフシェルで作製されることが好ましく、その各々が、180°の角度範囲を取り囲んでいる。好ましくは、各シェルは、他のシェルへの流体接続がない1つ以上のフローチャネルを備える。
【0042】
管状ハウジングは、好ましくは、高熱伝導率を有し付加製造技術により処理できる材料から作製される。好ましくは、材料は、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群から選択される。
【0043】
本発明の第2の主題は、本発明による照明デバイスと、長手方向軸を有する少なくとも1つの管状フローチャネルを有し、照明デバイスの内部に配置された、反応チャンバであって、反応チャンバの外面と照明デバイスのハウジングの内面との間にギャップが形成され、フローチャネルのチャネル壁は光源により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され、個々の光源は、フローチャネルの長手方向軸に対して半径方向に反応チャンバの周りに配置された発光ダイオード(LED)である、反応チャンバと、を備える光反応器である。
【0044】
本発明による光反応器は、少なくとも以下を備える:
(a)管状ハウジングを有する照明デバイスであって、管状ハウジングは、長手方向軸と、ハウジングの内面上に装着された複数の個々の光源とを有し、ハウジングは、熱伝達流体用のフローチャネルを備え、フローチャネルは、個々の光源の背後においてハウジングの内面の裏側に配置されて、個々の光源用のコンフォーマルな冷却通路を形成する、照明デバイス、及び、
(b)長手方向軸を有する少なくとも1つの管状フローチャネルを有し、照明デバイスの内部に配置された、反応チャンバであって、反応チャンバの外面と照明デバイスのハウジングの内面との間にギャップが形成され、フローチャネルのチャネル壁は光源により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され、個々の光源は、フローチャネルの長手方向軸に対して半径方向に反応チャンバの周りに配置された発光ダイオード(LED)である、反応チャンバ。
【0045】
光源が反応チャンバの周りに、したがってその外側に配置されていることは、反応チャンバに向かって放出される光の強度を個々に制御することができ、従来技術から既知の光反応器の概念におけるよりも、より柔軟であり得るという利点を有する。更には、光源により生じる熱は、反応チャンバの内部の光源の場合よりも、より簡単で、より効率的且つより柔軟な形で除去できる。
【0046】
本発明の範囲内で、用語「光反応器」は、反応物用の少なくとも1つの入口と、生成物用の少なくとも1つの出口とを有するフロー反応器を意味する。反応物は、反応チャンバを通って流れ、そこで、反応物は、反応物に発せられる光の影響を受けて化学的に反応して生成物が形成される。
【0047】
本発明によれば、反応チャンバは、少なくとも1つの管状フローチャネルを備え、そこを反応物及び結果として生じる生成物が流れる。管状フローチャネルは、その長さがその直径よりも大きい細長い中空チャネルとして、例えばチューブ又はパイプとして理解されるべきである。管状フローチャネルは、長手方向軸を有する。
【0048】
好ましくは、ハウジングの長手方向軸は、フローチャネルの長手方向軸と同軸又は同一である。用語「同軸」は、ハウジング及びフローチャネルの長手方向軸が、平行及び/又は同一であることを意味する。
【0049】
光反応器の第1の実施形態では、反応チャンバは、単一の管状フローチャネルを備える。その場合、管状フローチャネルは、反応チャンバを表す。この実施形態は、反応物が高い光吸収性を有する反応システムに特に好適である。そのような場合、所望の生成物を高い変換率及び収率で得るには、1つの経路で動作する単一の管状流れで十分であり得る。
【0050】
光反応器の第2の実施形態では、反応チャンバは、反応チャンバ内に同軸で配置され、互いに流体接続されている、多数の管状フローチャネルを備える。これに関連して、用語「同軸」は、管状フローチャネルの長手方向軸が平行及び/又は同一であることを意味する。この実施形態は、反応物が中程度から低い光吸収性を有する反応システムに特に好適である。そのような場合、反応空間として多数の管状フローチャネルを提供することにより、供給される光の量を最適に使用することが可能になる。
【0051】
第2の実施形態の好ましい変形形態では、管状フローチャネルは直列接続されるが、これは、フローチャネルの出口が別のフローチャネルの入口に接続されることを意味する。管状フローチャネルの互いに対する配置に応じて、接続は、例えば順繰りに配置されたフローチャネルについては、入口を出口に直接連結することにより、又は、例えば並列に互いに隣に配置されたフローチャネルについては、u字型の曲管を使用することにより実現できる。フローチャネルを組み合わせた構成も可能である。
【0052】
第2の実施形態の別の好ましい変形形態では、管状フローチャネルは並列接続されており、このことは、それらの入口が入口マニホールドに接続され、それらの出口が出口マニホールドに接続されていることを意味する。
【0053】
第2の実施形態の別の好ましい変形形態では、管状フローチャネルは、部分的に直列接続されており、部分的に並列接続されている。
【0054】
第2の実施形態の別の好ましい変形形態では、多数の管状フローチャネルは、両端部が開いている少なくとも1つの内側チューブと、その一方の端部が開いており反対側の端部が閉じている少なくとも1つの外側チューブとを備え、内側チューブは、内側チューブの1つの開いた端部と外側チューブの閉じた端部との間に軸方向の距離を有して、外側チューブ内で同心状に配置されている。
【0055】
光反応器において実施される反応に応じて、管状フローチャネルの数、サイズ及び形状を適切に適合させることができる。
【0056】
好ましい実施形態では、管状フローチャネルは、その対応する長手方向軸に対して軸方向に対称であり、これは、長手方向軸に対して垂直な横断面ごとに、チャネルの内壁が長手方向軸に対して点対称であることを意味する。
【0057】
更なる好ましい実施形態では、管状フローチャネルは、その対応する長手方向軸に対して回転対称であり、これは、フローチャネルの内壁が円形横断面を有することを意味する。
【0058】
管状フローチャネルの横断面は、フローチャネルの長さにわたって一定であってもよく又は変動してもよい。一実施形態では、管状フローチャネルは、流れ方向に向かって広がる横断面を有する円錐形状を有する。この実施形態は、反応物の変換が光吸収に依存する反応にとって好都合に使用できる。管状フローチャネルの内壁の横断面の増加と共に、流速は減少し、チャネル内部における反応混合物の滞留時間は増加し、したがって、反応物におけるよりも、生成物において、より低い光吸収が補償される。
【0059】
一実施形態では、管状フローチャネルの内壁及び外壁の横断面は同一であり、好ましくは円形、楕円形、又は多角形である。
【0060】
更なる実施形態では、管状フローチャネルの内壁及び外壁の横断面は形状が異なる。この実施形態の好ましい変形形態では、内壁の横断面は円形であり、外壁の横断面は多角形である。この変形形態を使用して、個々の光源を多角形の表面上に配置して、放出された光が表面に垂直に当たり、光源の効率的な使用につながるという効果をもたらすことが好都合な場合がある。
【0061】
熱管理のため又は安全対策のために、反応チャンバの外面とハウジングの内面との間のギャップを使用することが好都合な場合がある。熱管理の場合、ギャップは、空であり得る又は絶縁物質で充填され得る。好ましくは、光源により放出される光に対して透過性を有する熱担体媒体が、好ましくは、シリコーンオイル、水、又は水とエチレングリコールとを含む混合物が、ギャップを通って流れる。安全対策の場合、ギャップは、好ましくは窒素である不活性媒体により充填される、又は不活性媒体が流れる。
【0062】
光反応器の一実施形態では、管状フローチャネルの壁は二重被覆である。被覆の内壁と外壁との間の環状空間が、熱管理又は安全対策のために使用されることが好都合であり得る。熱管理の場合、環状空間は、空であり得る又は絶縁物質で充填され得る。好ましくは、光源により放出される光に対して透過性を有する熱担体媒体が、好ましくは、シリコーンオイル、水、又は水とエチレングリコールとを含む混合物が、環状空間を通って流れる。安全対策の場合、環状空間は、好ましくは窒素である不活性媒体により充填される、又は不活性媒体が流れる。
【0063】
光源により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され、長手方向軸を有する、管状保護シェルが、反応チャンバの外面と照明デバイスのハウジングの内面との間のギャップ内に配置されて、反応チャンバの外面と保護シェルとの間に環状チャネルが形成されることが更に好ましい。保護シェルの長手方向軸は、好ましくは、フローチャネルの長手方向軸と同軸又は同一である。
【0064】
熱管理のため又は安全対策のために、反応チャンバの外面と保護シェルとの間の環状チャネルを使用することが好都合な場合がある。熱管理の場合、環状チャネルは、空であり得る又は絶縁物質で充填され得る。好ましくは、光源により放出される光に対して透過性を有する熱担体媒体が、好ましくは、シリコーンオイル、水、又は水とエチレングリコールとを含む混合物が、環状チャネルを通って流れる。安全対策の場合、環状チャネルは、好ましくは窒素である不活性媒体により充填される、又は不活性媒体が流れる。
【0065】
管状フローチャネルは、バッフル又は偏向板のような内部構造を備えてもよい。
【0066】
本発明によれば、フローチャネルの壁が、そして好ましい実施形態では、保護シェルが、光源により放出される光に対して透過性を有する材料で作製されている。用語「透過性」は、光源により放出される光の大部分が材料を通過することを意味する。好ましくは、この材料は、放出された光の入射波長範囲においてフィルタとして機能しない。好ましくは、この材料は、半透明又は透明であり、特に透明である。
【0067】
好ましくは、材料は、ガラスセラミック、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、プレキシガラス(アクリルガラス)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、シクロオレフィン共重合体(COC)、微結晶性ポリアミド(PA)、ポリエーテル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)、又はフッ素含有ポリマー、例えばFEP、を含む物質群から選択される。材料は、上述した物質の少なくとも2種の混合物又は複合材料であってもよい。フッ素含有ポリマーは、ポリマーの中でも好ましい。
【0068】
プレキシガラス(アクリルガラス)は、異なる立体規則性のポリメタクリル酸メチル(PMMA)、異なる立体規則性のフッ化ポリメタクリル酸メチル、及び異なる立体規則性のポリメチルメタクリルイミド(PMMI)を含む。ポリカーボネート(PC)は、形式的には炭酸のポリエステルである熱可塑性プラスチックである。ポリ塩化ビニル(PVC)は、エマルジョン重合(E-PVC)、懸濁重合(S-PVC)、又は塩化ビニル自体からの塊状重合(M-PVC)、により得られるポリマーである。ポリスチレン(PS)は、スチレンから生成されるアタクチックポリマー、シンジオタクチックポリマー、又はアイソタクチックポリマーである。シクロオレフィン共重合体(COC)は、シクロヘキセン環及びモノマーエテンを有するモノマーオレフィンから得られるアモルファスポリオレフィンである。微結晶性ポリアミド(PA)は、アミノカルボン酸(ASタイプ)から、又はジカルボン酸と、結晶性ドメインを形成するダイヤモンド(ASSAタイプ)との混合物から調製されるポリマーである。ポリエーテルは、長鎖の、大部分が芳香族エーテルであり、例えばポリエーテルエーテルケトンである。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、エチレングリコール及びテレフタル酸から生成されるポリマーである。ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)は、2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールから調製されるポリマーである。FEPは、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体を意味する。
【0069】
管状フローチャネルの数及び配置に応じて、反応チャンバは、異なるサイズ及び形状を有することができる。単一の管状フローチャネル、又は同心状に配置された複数の管状フローチャネルの場合、最も外側の管状フローチャネルの外壁は、反応チャンバの外面を表す。互いに隣に配置された複数の管状フローチャネルの場合、反応チャンバの外面は、最も外側のフローチャネルの外壁の部分により形成される。
【0070】
光反応器の好ましい実施形態では、反応チャンバの外面は、平坦な又は凹状のチャネル壁の部分を備える。光源により放出される光に関するカップリングエネルギーは、平坦又は凹状部分を有するエリアにおいてより高いことが、この実施形態の利点である。
【0071】
光反応器の更なる好ましい実施形態では、反応チャンバの外面は、反射防止コーティングでコーティングされている。この実施形態の利点は、光の伝達が、したがって光反応器の効率が増加することである。
【0072】
光反応器の更なる好ましい実施形態では、反応チャンバの外面は、ドーム形状、円錐形状、又はピラミッド形状である窪みを有する、チャネル壁の部分を備える。
【0073】
この実施形態では、光源が多数の個々の光源を備え、これら光源が窪みに割り当てられて、窪みの方向に光を放出することが更に好ましい。この実施形態では、光源により放出される光の反射によるエネルギー損失を最小化することができる。
【0074】
反応チャンバは、任意の既知の製造技術により、例えば加熱成形、機械加工、又は付加製造により生産できる。
【0075】
本発明によれば、光反応器は、個々の光源としてのLEDを備え、LEDは、フローチャネルの長手方向軸に対して半径方向に、反応チャンバの周りに配置されている。
【0076】
光反応器の更に好ましい実施形態では、光源は、反応チャンバの長手方向軸に対して光源の軸対称性を有して反応チャンバの周りに配置されており、これは、長手方向軸に対して垂直な横断面ごとに、光源の発光面が長手方向軸に対して点対称であることを意味する。
【0077】
好ましい実施形態では、フローチャネルの長手方向軸に垂直な、管状ハウジングの内面の横断面は、n多角形の形状を有し、nは内面の平坦部分の数である。好ましくは、数nは、3~700、好ましくは3~350、特に6~36である。n多角形の平坦な内面は、個々の光源、又は光源のラック若しくはグループを装着するのに十分に好適である。
【0078】
本発明の第3の主題は、本発明による光反応器内で光反応を実現するためのプロセスであり、このプロセスは、反応チャンバを通して少なくとも1種の反応物を流すステップと、光源から放出された光を反応物に照射するステップとを含む。
【0079】
光反応を実行するためのプロセスの好ましい実施形態では、光源は多数の個々の光源を備え、個々の光源により放出される光の強度は、フローチャネルに沿った光反応の変換率に応じて適合される。
【0080】
光反応の少なくとも1種の生成物がビタミンAであることが更に好ましい。
【0081】
本発明を、図面を参照して更に詳細に説明する。図面は、原理を表す提示として解釈すべきである。図面は、例えば特定の寸法又は設計変形形態に関して、本発明のいかなる制限をも構成しない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】本発明による第1の実施形態としての、単一のフローチャネルを有する光反応器の長手方向切断図及び横断面切断図を示す。
【
図2】
図1の光反応器の4つの異なる変形形態の横断面切断図を示す。
【
図3】本発明による第2の実施形態としての、内側チューブ及び外側チューブを備えるフローチャネルを有する光反応器の長手方向切断図及び横断面切断図を示す。
【
図4】本発明による、照明デバイスの第1の実施形態用の管状ハウジングのシェルの3次元図を示す。
【
図6】本発明による、照明デバイスの第2の実施形態の3次元図を示す。
【
図7】
図6の照明デバイスの長手方向切断図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
使用される参照番号のリスト
10 反応チャンバ
11 環状空間
20 フローチャネル
21 長手方向軸
22 壁
23 内側チューブ
24 外側チューブ
30 光源
40 ハウジング
41 長手方向軸
42 装着要素
43 通路
44 熱伝達流体用の入口
45 熱伝達流体用の出口
46 フローチャネル
47 フローチャネルの偏向部
48 電源用の開口部
49 受け口
50 保護シェル
51 長手方向軸
52 環状チャネル
53 封止
54 封止
60 カバー
【実施例】
【0084】
実施例1
図1は、本発明による第1の実施形態としての、単一のフローチャネルを有する光反応器の長手方向切断図(左)及び横断面切断図(右)を示す。光反応器は、照明デバイスと反応チャンバ10とを備える。照明デバイスは、管状ハウジング40を備え、管状ハウジング40は、長手方向軸41と、ハウジング40の内面上に装着された複数の個々の光源30とを有する。反応チャンバ10は、反応混合物が底部から上部に流れる(矢印)管状フローチャネル20を備える。フローチャネル20は、円形の横断面を有する中空円筒であり、長手方向軸21の周りにチャネル壁22が対称に整列されている。したがって、チャネル壁22の内面及び外面は、光源30から見たときに凸面である。この第1の実施形態では、反応チャンバ10はフローチャネル20と同一である。チャネル壁22は、光源30により放出される光に対して透過性を有する材料で作製されている。個々の光源30は、発光ダイオード(LED)であり、フローチャネル20の長手方向軸21に対して半径方向に反応チャンバ10の周りに配置されている。管状フローチャネル20は照明デバイスの内部に配置されて、反応チャンバ10の外面と、照明デバイスのハウジング40の内面との間にギャップ11を形成する。ギャップ11は、光源30により放出される光に対して透過性を有する熱伝達流体により、好ましくはシリコーンオイルにより充填され得る又はそのような熱伝達流体が流れ得る。ハウジング40の長手方向軸41は、フローチャネル20の長手方向軸21と同一である。
【0085】
図2A~
図2Dは、
図1による光反応器の4つの異なる変形形態の横断面切断図を示す。これら変形形態は、チャネル壁22を取り囲む光源30としてのLEDに関して、チャネル壁22の横断面及び管状ハウジングの横断面が互いに異なり、
図1による変形形態とも異なる。全ての変形形態において、チャネル壁22及び光源30は、長手方向軸(図面では「+」として示される)に対して対称である。
【0086】
図2Aによる光反応器の変形形態では、チャネル壁22及び光源30用の管状ハウジングは横断面が正方形である。LEDは、その光がチャネル壁22の平坦な外面上に垂直に放出されるように、管状ハウジングの内面上に配置される。チャネル壁22の内面も平坦である。
【0087】
図2Bによる光反応器の変形形態では、チャネル壁22及び光源30用の管状ハウジングは横断面が三角形である。LEDは、その光がチャネル壁22の平坦な外面上に垂直に放出されるように、管状ハウジングの内面上に配置される。チャネル壁22の内面も平坦である。
【0088】
図2Cによる光反応器の変形形態では、反応チャンバはチャネル壁22の4つの部分により形成され、この部分は、内向きに湾曲し、それらのエッジにて接続され、横断面においてエッジは正方形を形成する。チャネル壁22の4つの壁セグメントは、光源30から見たときに、凹状の内面及び外面を有する。光源30用の管状ハウジングは、横断面が正方形である。光源30としてのLEDは、管状ハウジングの内壁に平坦に装着されて、チャネル壁22の凹状の外面上に、その光を放出する。
【0089】
図2Dによる光反応器の変形形態では、チャネル壁22の外面の横断面、及び光源30用の管状ハウジングの外面の横断面は、正十二角形である。LEDは、その光がチャネル壁22の外面の12個の平坦なセグメント上に垂直に放出されるように、管状ハウジングの内面上に配置される。チャネル壁22の内面は横断面が円形である。
【0090】
実施例2
図3は、本発明による第2の実施形態としての、内側チューブ及び外側チューブを備えるフローチャネルを有する光反応器の長手方向切断図(左)、及び横断面切断図(右)を示す。光反応器は、照明デバイスと反応チャンバ10とを備える。照明デバイスは、管状ハウジング40を備え、管状ハウジング40は、長手方向軸41と、ハウジング40の内面上に装着された複数の個々の光源30とを有する。反応チャンバ10は、両端部が開いている内側チューブ23と、その下端部が開いており、その上端部が閉じている外側チューブ24とを備える。内側チューブ23は、内側チューブの上側の開いた端部と外側チューブ24の上側の閉じた端部との間に軸方向の距離を有して、外側チューブの内部に同心状に配置されている。内側チューブ23及び外側チューブ24は、反応混合物が、内側チューブ23の底部から上部に、そして外側チューブ24(矢印)の上部から底部に流れる1つの管状フローチャネルを形成する。フローチャネルは、円形の横断面を有する中空円筒であり、長手方向軸21の周りにチャネル壁22が対称に整列されている。したがって、チャネル壁22の内面及び外面は、光源30から見たときに凸面である。
【0091】
この第2の実施形態では、反応チャンバ10はフローチャネル20と同一である。チャネル壁22は、光源30により放出される光に対して透過性を有する材料で作製されている。個々の光源30は、発光ダイオード(LED)であり、フローチャネル23、24の長手方向軸21に対して半径方向に反応チャンバ10の周りに配置されている。管状フローチャネルは照明デバイスの内部に配置されて、反応チャンバ10の外面と、照明デバイスのハウジング40の内面との間にギャップ11を形成する。ギャップ11は、光源30により放出される光に対して透過性を有する熱伝達流体により、好ましくはシリコーンオイルにより充填され得る又はそのような熱伝達流体が流れ得る。ハウジング40の長手方向軸41は、フローチャネルの長手方向軸21と同一である。
【0092】
実施例3
図4は、本発明による、照明デバイスの第1の実施形態用の管状ハウジング40のシェルの3次元図を示す。
図5は、
図4のシェルの切欠図を示し、管状ハウジングの外壁は示されていない。この例示的実施形態では、
図4で示すような2つのシェルが組み立てられて、管状ハウジング40を形成する。シェルは、ハウジングの長手方向セクションを形成し、180°の角度範囲を取り囲んでいる。シェルは、シェルのうちの2つを組み立てて管状ハウジングを形成するための複数のフランジを備える。管状ハウジング40の外側に装着要素42が設けられて、ハウジングを支持体に装着することを可能にしている。
【0093】
シェルの内面及び外面は、その各々が8つの平坦部分を有して、多角形として形成されている。したがって、組み立てられた管状ハウジングの内面は、内面の16個の平坦部分を有する多角形として形成される。管状ハウジング40は、(
図4に示されない)多数個の個々の光源をハウジング40の内面に取り付けることが可能となるように構成されている。個々の光源は、個々のLED、又は複数のLEDを備えるラックのいずれかとしての、発光ダイオード(LED)であってもよい。この目的のため、多角形の各セクションが、シェルの内面と外面との間に通路43を備える。個々の光源又は光源のラックは、例えば、通路43を通して挿入され外側から固定されるボルトにより、ハウジングの内面に容易に装着することができる。
【0094】
管状ハウジング40を通って熱伝達流体が流れるように構成されている。ハウジング40は、熱伝達流体用のフローチャネル46を備え、フローチャネル46は、個々の光源の背後においてハウジング40の内面の裏側に配置されて、個々の光源用のコンフォーマルな冷却通路を形成する。
図5に示す実施例では、コンフォーマルな冷却通路は、ハウジング40の長手方向軸に沿って向けられた8つのフローチャネル46を備え、多角形の8つの部分の各々に1つのフローチャネル46がある。フローチャネル46は、ハウジングの内壁の裏側からハウジングの外壁の裏側まで延びる壁によって互いに分離されている。各フローチャネル46は、フローチャネルの偏向部47を構成する分離壁の切欠きによって、その隣接するフローチャネルに流体連通している。冷却通路は、通路の一端における熱伝達流体44用の入口と、通路の他端における熱伝達流体45用の出口との間に延びる迷路の形状を有する。
【0095】
光源を固定するための通路43は、光源30が内面に取り付けられる位置において、ハウジング40の内面と外面との間のフローチャネル46を通って延びている。図示する実施例では、通路43は、半径方向に閉じられ、したがってフローチャネル46に対して封止されている、チャネルにより形成されている。封止の他に、通路のこの構成は、フローチャネルの中に延び、動作時に熱伝達流体によって取り囲まれる通路の壁が、光源の熱い裏側から冷たい熱伝達流体への熱伝達を増加させるという更なる利点を有することが判明した。
【0096】
実施例4
図6は、本発明による、照明デバイスの第2の実施形態の3次元図を示す。
図7は、
図6の照明デバイスの長手方向切断図を示す。光反応器用の照明デバイスは、長手方向軸41を有する管状ハウジング40を備える。この例示的実施形態では、管状ハウジング40は、一体として製作される。管状ハウジング40の外側に装着要素42が設けられて、ハウジングを支持体に装着することを可能にしている。長手方向ラック上で集団化されたLEDが、個々の光源30としてハウジング40の内面上に装着されている。
【0097】
ハウジング40は、熱伝達流体用のフローチャネル46を備え、フローチャネル46は、個々の光源30の背後においてハウジング40の内面の裏側に配置されて、個々の光源30用のコンフォーマルな冷却通路を形成する。前述した実施例と同様に、
図6及び
図7に示す実施形態では、コンフォーマルな冷却通路は、ハウジング40の長手方向軸41に沿って向けられたいくつかのフローチャネル46を備える。フローチャネル46は、ハウジングの内壁の裏側からハウジングの外壁の裏側まで延びる壁によって互いに分離されている。各フローチャネル46は、フローチャネルの偏向部を構成する分離壁の切欠きによって、その隣接するフローチャネルに流体連通している。冷却通路は、通路の一端における熱伝達流体44用の入口と、通路の他端における熱伝達流体45用の出口との間に延びる迷路の形状を有する。この例では、ハウジング40は、ハウジング40の内面と外面との間のフローチャネル46内にブラインドホールの形の受け口49を備え、受け口49は、個々の光源のラックを固定するためのねじ山を備え、フローチャネル46に対して封止されている。
【0098】
この実施形態による照明デバイスは、光源30により放出される光に対して透過性を有する材料で作製され、長手方向軸51を有し、管状ハウジング40の内部に配置された、管状保護シェル50を更に備える。保護シェル50の外面及びハウジング40の内面は、環状チャネル52を形成する。保護シェル50の長手方向軸51は、ハウジング40の長手方向軸41と同一である。環状チャネル52の両端が、ハウジング40及び保護シェル50に封止状態で取り付けられたカバー60により閉じられている。管状ハウジング40の上端に電源ケーブル用の開口部48が設けられている。これらの開口部は、フローチャネル46に対して封止されている。
【国際調査報告】