(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ポリアミド6I/6Tおよび/またはポリアミドDT/DIを含む非晶性焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結による成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240806BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240806BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240806BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240806BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240806BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240806BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y50/02
B29C64/153
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024508683
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022071860
(87)【国際公開番号】W WO2023016898
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ゴトケ,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】クレン,ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA29
4F213AB05
4F213AB06
4F213AB16
4F213AB25
4F213AC04
4F213AR08
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL44
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
本発明は、成形体の製造方法であって、工程i)で、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを少なくとも70質量%含む非晶性焼結粉末(SP)の層を提供し、そして工程ii)で、工程i)で提供された層を選択的に焼結する方法に関する。本発明はさらに、非晶性焼結粉末(SP)の製造方法、およびこの方法によって得ることができる非晶性焼結粉末(SP)に関する。本発明はまた、非晶性焼結粉末(SP)の焼結方法における使用、および本発明の方法によって得ることができる成形体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的レーザー焼結による成形体の製造方法であって、以下の工程:
i) 以下の成分、
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤
を含む非晶性焼結粉末(SP)の層を提供する工程、
ii) 工程i)で提供された層をレーザー焼結する工程であって、工程ii)における体積に対するエネルギー密度(E
V)が少なくとも1000mJ/mm
3であり、体積に対するエネルギー密度(E
V)が以下の式:
【数1】
(式中、
Pは、工程ii)で使用されるレーザーのワットで表すレーザー出力であり、
vは、工程ii)で使用されるレーザーのm/sで表す走査速度であり、
hは、工程ii)におけるmmで表す走査間隔であり、
dは、工程i)で提供された層のmmで表す厚さであり、
nは、工程ii)で行われるレーザー走査の数である)
によって計算される、工程
を含み、
以下のレーザー焼結パラメータ:
Pは、15~40ワットの範囲であり、
vは、2~10m/sの範囲であり、
hは、0.05~0.3mmの範囲であり、
dは、0.03~0.15mmの範囲であり、
nは、1~3の範囲である、
が、工程i)およびii)に適用される、方法。
【請求項2】
前記非晶性焼結粉末(SP)が、各場合において該非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶性焼結粉末(SP)が、10~250μmの範囲のサイズを有する粒子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記非晶性焼結粉末(SP)が、
10~60μmの範囲のD10、
25~90μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成分(B)が、安定剤、導電性添加剤、末端基官能化剤、染料、色顔料および難燃剤からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
成分(C)が、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ホウ素ファイバー、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカファイバー、セラミックファイバー、バサルトファイバー、アルミノシリケート、アラミドファイバーおよびポリエステルファイバーからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の非晶性焼結粉末(SP)の製造方法であって、以下の工程、
a) 以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤、
を混合する工程、
b) 工程a)で得られた混合物を粉砕して焼結粉末(SP)を得る工程
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法によって得ることができる非晶性焼結粉末(SP)。
【請求項9】
非晶性焼結粉末(SP)の焼結プロセスにおける使用であって、
該非晶性焼結粉末(SP)が、以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤、
を含む、使用。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる成形体。
【請求項11】
以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤
を含む、非晶性焼結粉末(SP)。
【請求項12】
10~250μmの範囲のサイズを有する粒子を含む、請求項11に記載の非晶性焼結粉末(SP)。
【請求項13】
10~60μmの範囲のD10、
25~90μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する、請求項11または12に記載の非晶性焼結粉末(SP)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法であって、工程i)で、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを少なくとも70質量%含む非晶性焼結粉末(SP)の層を提供し、そして工程ii)で、工程i)で提供された層を選択的に焼結する方法に関する。本発明はさらに、非晶性焼結粉末(SP)の製造方法、およびこの方法によって得ることができる非晶性焼結粉末(SP)に関する。本発明はまた、非晶性焼結粉末(SP)の焼結方法における使用、および本発明の方法によって得ることができる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプの迅速な提供は、最近よく取り組まれている課題である。この「ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)」に特に好適な1つの方法は、選択的レーザー焼結(SLS)である。これは、プラスチック粉末をチャンバ内でレーザービームに選択的に暴露することを伴う。粉末が溶融し、溶融した粒子が融合して再凝固する。プラスチック粉末の繰り返し適用およびその後のレーザーへの暴露により、三次元成形体の形成が可能となる。
【0003】
粉末状ポリマーから成形体を製造するための選択的レーザー焼結の方法は、特許明細書US6,136,948およびWO96/06881に詳細に記載されている。
【0004】
選択的レーザー焼結では、半結晶性ポリマーを使用するのが通例であり、これは結晶性ポリマーは急激な融点を有するからである。S.Kloos,M.A.Dechet,W.Peukert,J.Schmidt,Production of spherical semi-crystalline polycarbonate microparticles for Additive Manufacturing by liquid-liquid phase separation,Powder Technology 335(2018年)275~284には、選択的レーザー焼結における半結晶性ポリアミドPA12、PA11およびPA6の使用が記載されている。この文献はさらに、非晶性ポリカーボネートは選択的レーザー焼結における加工性が乏しく、そして非晶性ポリカーボネートの使用は非常に限定的であると述べている。これらはポリカーボネートの非晶性の性質により、例えばファインキャスト法など、製造される成形体の寸法精度があまり重要ではない方法でのみ使用される。
【0005】
選択的レーザー焼結において非晶性ポリカーボネートを使用できるようにするために、S.Kloos,M.A.Dechet,W.Peukert,J.Schmidt,Production of spherical semi-crystalline polycarbonate microparticles for Additive Manufacturing by liquid-liquid phase separation,Powder Technology 335(2018年)275~284は、非晶性ポリカーボネートを半結晶性ポリカーボネートに変換する改質方法を記載している。
【0006】
J.-P.Kruth,G.Levy,F.Klocke,T.H.C.Childs,Consolidation phenomena in laser and powder-bed based layered manufacturing,Annals of the CIRP第56/2巻(2007年)730~759は、レーザー焼結のための半結晶性ポリマーおよび非晶性ポリマーの基本的な特性を記載している。この文献では、非晶性ポリマーの焼結特性は一般的に劣ることが指摘されている。非晶性ポリマーから作られた焼結成分は、多孔質で機械的特性が劣ると記載されている。
【0007】
US10500763B2およびUS2020/0048481A1も同様に、レーザー焼結プロセスにおける元々非晶性のポリカーボネートの使用を記載しており、ここで焼結性は、好適な方法で非晶性ポリカーボネートを半結晶性ポリカーボネートに変換することによって達成される。US10500763B2およびUS2020/0048481A1も同様に、レーザー焼結プロセスにおける非晶性ポリマーの使用は、方法の再現性が低く、且つ得られる成形体の機械的特性が低く、寸法精度も低いので、困難であることを指摘している。
【0008】
どの引用文献にも、選択的レーザー焼結における非晶性ポリアミドの使用は記載されていない。
【0009】
WO2018/019728A1は、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結による成形体の製造方法を開示している。焼結粉末(SP)は、少なくとも1つの半結晶性ポリアミド、少なくとも1つのポリアミド6I/6T、および少なくとも1つの補強剤を含む。
【0010】
WO2018/019727A1も同様に、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結による成形体の製造方法を開示している。焼結粉末(SP)は、少なくとも1つの半結晶性ポリアミドおよび少なくとも1つのポリアミド6I/6Tを含む。
【0011】
EP3491065B1も同様に、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結による成形体の製造方法を開示している。焼結粉末(SP)は、少なくとも1つの半結晶性ポリアミド、少なくとも1つのポリアミド6I/6T、および少なくとも1つのポリアリルエーテルを含む。
【0012】
WO2019/224016A1は、付加製造によりポリマー物品を形成する方法を開示しており、この方法は、低い処理温度で物品を形成する手段を提供し、製造された物品は高い寸法安定性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US6,136,948
【特許文献2】WO96/06881
【特許文献3】US10500763B2
【特許文献4】US2020/0048481A1
【特許文献5】WO2018/019728A1
【特許文献6】WO2018/019727A1
【特許文献7】EP3491065B1
【特許文献8】WO2019/224016A1
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】S.Kloos,M.A.Dechet,W.Peukert,J.Schmidt,Production of spherical semi-crystalline polycarbonate microparticles for Additive Manufacturing by liquid-liquid phase separation,Powder Technology 335(2018年)275~284
【非特許文献2】J.-P.Kruth,G.Levy,F.Klocke,T.H.C.Childs,Consolidation phenomena in laser and powder-bed based layered manufacturing,Annals of the CIRP第56/2巻(2007年)730~759
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって本発明の目的は、先行技術に記載されたプロセスの前述の欠点を、もしあったとしても低減された程度でしか有しない、選択的レーザー焼結による成形体の製造方法を提供することである。この方法はさらに、簡単かつ安価で実行可能である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、選択的レーザー焼結による成形体の製造方法であって、以下の工程:
i) 以下の成分、
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤
を含む非晶性焼結粉末(SP)の層を提供する工程、
ii) 工程i)で提供された層をレーザー焼結する工程であって、工程ii)における体積に対するエネルギー密度(E
V)が少なくとも1000mJ/mm
3であり、体積に対するエネルギー密度(E
V)が以下の式:
【数1】
(式中、
Pは、工程ii)で使用されるレーザーのワットで表すレーザー出力であり、
vは、工程ii)で使用されるレーザーのm/sで表す走査速度であり、
hは、工程ii)におけるmmで表す走査間隔であり、
dは、工程i)で提供された層のmmで表す厚さであり、
nは、工程ii)で行われるレーザー走査の数である)
によって計算される、工程
を含み、
以下のレーザー焼結パラメータ:
Pは、15~40ワットの範囲であり、
vは、2~10m/sの範囲であり、
hは、0.05~0.3mmの範囲であり、
dは、0.03~0.15mmの範囲であり、
nは、1~3の範囲である、
が、工程i)およびii)に適用される、
方法によって達成される。
【0017】
驚くべきことに、非晶性ポリマー成分を含む非晶性焼結粉末(SP)であって、該非晶性ポリマー成分がその総質量に対して、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを少なくとも70質量%含む、非晶性焼結粉末(SP)が、選択的レーザー焼結の方法に使用できることが見出された。
【0018】
本発明の方法により製造された成形体は、良好な機械的特性を有する。本発明の方法により製造された成形体は、さらに、広い温度範囲にわたって一定の機械的特性を有する。本発明の方法は、さらに、標準的なレーザー焼結システム、および、より短い波長を有するレーザーが使用され、限られた造形空間温度で操作される比較的新しいデスクトップ機を含む装置で行うことができる。本発明の方法により製造された成形体は、酸素、二酸化炭素および水分に対して良好なバリア性を示す。さらに、脂肪族および芳香族炭化水素に対する溶媒安定性も良好である。
【0019】
以下に本発明のプロセスを詳細に説明する。
【0020】
工程i)
工程i)で、非晶性焼結粉末(SP)の層が提供される。
【0021】
焼結粉末(SP)の層は、当業者に既知の任意の方法によって提供することができる。典型的には、焼結粉末(SP)の層は、造形プラットフォーム上の造形空間内に提供される。造形空間の温度は任意に制御してよい。
【0022】
造形空間は、例えば、非晶性ポリアミド6I/6Tまたは非晶性ポリアミドDT/DIのガラス転移温度(Tg)よりも1~20K(ケルビン)の範囲、好ましくは1~15Kの範囲、およびより好ましくは1~10Kの範囲で高い温度、好ましくは非晶性ポリマー成分のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度、およびより好ましくは非晶性焼結粉末(SP)のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度である。
【0023】
造形空間は、例えば125~164℃の範囲、好ましくは125~159℃の範囲、および特に好ましくは125~154℃の範囲の温度である。
【0024】
造形空間は、例えばPA6I/6Tの場合、125~145℃の範囲、好ましくは125~140℃の範囲、および特に好ましくは125~135℃の範囲の温度である。
【0025】
造形空間は、例えばPA DT/DIの場合、144~164℃の範囲、好ましくは144~159℃の範囲、および特に好ましくは144~154℃の範囲の温度である。
【0026】
非晶性焼結粉末(SP)の層は、方法工程i)において、当業者に既知の任意の方法により提供することができる。例えば、非晶性焼結粉末(SP)の層は、コーティングバー又はロールによって造形空間で達成される厚さで提供される。
【0027】
工程i)で提供された非晶性焼結粉末(SP)の層の層厚(d)は、一般に0.03~0.15mmの範囲、好ましくは0.04~0.13mmの範囲、および特に好ましくは0.05~0.11mmの範囲である。
【0028】
非晶性焼結粉末(SP)
本発明によれば、非晶性焼結粉末(SP)は、成分(A)として非晶性ポリマー成分、任意に成分(B)として少なくとも1つの添加剤、及び任意に成分(C)として少なくとも1つの補強剤を含む。
【0029】
本発明の文脈において、用語「成分(A)」および「非晶性ポリマー成分」は同義的に使用され、従って同じ意味を有する。
【0030】
同じことが、用語「成分(B)」および「少なくとも1つの添加剤」にも適用される。これらの用語は同様に、本発明の文脈において同義的に使用され、従って同じ意味を有する。
【0031】
同様に、用語「成分(C)」および「少なくとも1つの補強剤」も本発明の文脈において同義的に使用され、そして同じ意味を有する。
【0032】
非晶性焼結粉末(SP)は、成分(A)、および任意に(B)および(C)を、如何なる所望の量でも含んでよい。
【0033】
例えば、非晶性焼結粉末(SP)は、各場合において成分(A)、および任意に(B)および(C)の合計総質量パーセンテージに対して、好ましくは非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0034】
従って、本発明はさらに、非晶性焼結粉末(SP)が、各場合において非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む方法も提供する。
【0035】
成分(A)および任意に(B)および(C)の質量パーセンテージは、典型的には加算すると100質量%である。
【0036】
非晶性焼結粉末(SP)は粒子を含む。これらの粒子は、例えば10~250μmの範囲、好ましくは15~200μmの範囲、より好ましくは20~120μmの範囲、および特に好ましくは20~110μmの範囲のサイズを有する。
【0037】
本発明の非晶性焼結粉末(SP)は、例えば、
10~60μmの範囲のD10、
25~90μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する。
【0038】
好ましくは、本発明の非晶性焼結粉末(SP)は、
20~50μmの範囲のD10、
40~80μmの範囲のD50、および
80~125μmの範囲のD90
を有する。
【0039】
従って本発明は、焼結粉末(SP)が、
10~60μmの範囲のD10、
25~90μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する方法も提供する。
【0040】
本発明の文脈において、「D10」とは、粒子の総体積に対する粒子の10体積%がD10以下であり、粒子の総体積に対する粒子の90体積%がD10より大きい場合の粒径を意味すると理解される。類推により、「D50」とは、粒子の総体積に対する粒子の50体積%がD50以下であり、粒子の総体積に対する粒子の50体積%がD50より大きい場合の粒径を意味すると理解される。同様に、「D90」とは、粒子の総体積に対する粒子の90体積%がD90以下であり、粒子の総体積に対する粒子の10体積%がD90より大きい場合の粒径を意味すると理解される。
【0041】
粒径を決定するために、非晶性焼結粉末(SP)を、圧縮空気を使用して乾燥状態で、または溶媒、例えば水またはエタノールに懸濁し、この懸濁液を分析する。D10、D50およびD90は、Malvern MasterSizer3000を使用したレーザー回折によって決定する。評価はフラウンホーファー回折による。
【0042】
非晶性焼結粉末(SP)は、好ましくは融点を有しない。焼結粉末(SP)は、好ましくは結晶化温度(Tc)も有しない。
【0043】
本発明の文脈における「非晶性」とは、非晶性焼結粉末(SP)が、ISO11357に従い示差走査熱量測定(DSC)によって測定して如何なる融点も有しないことを意味する。
【0044】
「融点がない」とは、非晶性焼結粉末(SP)の融解エンタルピーΔH2(SP)が、各場合においてISO11357-4:2014に従い示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、10J/g未満、好ましくは8J/g未満および特に好ましくは5J/g未満であることを意味する。
【0045】
よって本発明の非晶性焼結粉末(SP)は、典型的には、各場合においてISO11357-4:2014に従い示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、10J/g未満、好ましくは8J/g未満および特に好ましくは5J/g未満の融解エンタルピーΔH2(SP)を有する。
【0046】
本発明の非晶性焼結粉末(SP)は、典型的にはガラス転移温度(TG(SP))を有し、ガラス転移温度(TG(SP))は、ISO11357-4:2014によって決定して、典型的には90~150℃の範囲、好ましくは92~148℃の範囲、および特に好ましくは94~146℃の範囲である。
【0047】
非晶性焼結粉末(SP)は、当業者に既知の任意の方法によって製造することができる。例えば、焼結粉末は粉砕により、または沈殿により製造される。
【0048】
焼結粉末(SP)を沈殿により製造する場合、まず、非晶性ポリマー成分(A)またはその構成成分及び如何なる添加物及び/又は添加剤も溶媒と混合し、そして非晶性ポリマー成分またはその構成成分を溶媒中に、任意に加熱しながら溶解して溶液を得るのが通例である。次に、焼結粉末(SP)を、例えば溶液の冷却、溶媒の溶液からの蒸留、又は溶液への沈殿剤の添加により、沈殿させる。
【0049】
粉砕は当業者に既知の如何なる方法によっても行うことができる。例えば、成分(A)および任意に(B)および(C)をミルに導入し、ミル中で粉砕する。
【0050】
好適なミルには、当業者に既知のあらゆるミル、例えば分級ミル、対向ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、またはピン付きディスクミルおよび旋風ミルなどのローターミルが含まれる。
【0051】
ミルでの粉砕は同様に、当業者に既知の如何なる方法によっても行うことができる。例えば、粉砕は、不活性ガス下で、および/または液体窒素で冷却しながら行うことができる。液体窒素での冷却が好ましい。粉砕中の温度は所望の通りである。粉砕は、好ましくは、液体窒素の温度、例えば-210~-195℃の範囲の温度で行う。その場合の粉砕時の成分の温度は、例えば、-40~-30℃の範囲である。
【0052】
好ましくは、まず成分を互いに混合し、次いで粉砕する。この場合、焼結粉末(SP)の製造方法は、好ましくは以下の工程:
a) 成分(A)および任意に(B)および(C)を混合する工程、
b) 工程a)で得られた混合物を粉砕して焼結粉末(SP)を得る工程
を含む。
【0053】
従って本発明はまた、以下の工程、
a) 以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤、
を混合する工程、
b) 工程a)で得られた混合物を粉砕して焼結粉末(SP)を得る工程
を含む、非晶性焼結粉末(SP)の製造方法を提供する。
【0054】
工程a)における配合のための(混合のための)プロセスは、当業者にそのものが知られている。例えば、混合は押出機、特に好ましくは二軸押出機で行うことができる。
【0055】
工程b)における粉砕に関して、上述の詳細および選好が対応して粉砕に関し適用可能である。
【0056】
従って本発明はまた、本発明の方法によって得ることができる焼結粉末(SP)をさらに提供する。
【0057】
成分(A)
成分(A)は非晶性ポリマー成分であり、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む。
【0058】
本発明の文脈において、用語「ポリアミド6I/6T」は、厳密に1つのポリアミド6I/6T、または2つ以上の異なるポリアミド6I/6Tの混合物のいずれかを意味する。成分(A)は、好ましくは、厳密に1つのポリアミド6I/6Tを含む。
【0059】
本発明の文脈において、用語「ポリアミドDT/DI」は、厳密に1つのポリアミドDT/DI、または2つ以上の異なるポリアミドDT/DIの混合物のいずれかを意味する。成分(A)は、好ましくは、厳密に1つのポリアミドDT/DIを含む。
【0060】
本発明の文脈における「非晶性」とは、非晶性ポリマー成分(成分(A))が、ISO11357に従い示差走査熱量測定(DSC)によって測定して如何なる融点も有しないことを意味する。
【0061】
「融点がない」とは、非晶性ポリマー成分の融解エンタルピーΔH2(A)が、各場合においてISO11357-4:2014に従い示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、10J/g未満、好ましくは8J/g未満および特に好ましくは5J/g未満であることを意味する。
【0062】
よって好適な非晶性ポリマー成分は、典型的には、各場合においてISO11357-4:2014に従い示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、10J/g未満、好ましくは8J/g未満および特に好ましくは5J/g未満の融解エンタルピーΔH2(A)を有する。
【0063】
本発明の成分(A)は、典型的にはガラス転移温度(TG(A))を有し、ガラス転移温度(TG(A))は、ISO11357-2:2014によって決定して、典型的には90~150℃の範囲、好ましくは92~148℃の範囲、および特に好ましくは94~146℃の範囲である。
【0064】
本発明により使用されるポリアミド6I/6Tは、典型的にはガラス転移温度(TG(6I/6T))を有し、ガラス転移温度(TG(6I/6T))は、ISO11357-2:2014によって決定して、典型的には120~130℃の範囲、好ましくは122~129℃の範囲、および特に好ましくは123~128℃の範囲である。
【0065】
本発明により使用されるポリアミドDT/DIは、典型的にはガラス転移温度(TG(DT/DI))を有し、ガラス転移温度(TG(DT/DI))は、ISO11357-2:2014によって決定して、典型的には140~150℃の範囲、好ましくは141~148℃の範囲、および特に好ましくは142~147℃の範囲である。
【0066】
好適なポリアミド6I/6Tは、6Iおよび6T構造単位の如何なる所望の割合も含んでよい。好ましくは、6I構造単位対6T構造単位のモル比は、1:1~3:1の範囲、より好ましくは1.5:1~2.5:1の範囲、および特に好ましくは1.8:1~2.3:1の範囲である。
【0067】
好適なポリアミド6I/6TのMVR(275℃/5kg)(メルトボリュームフローレート)は、好ましくは10mL/10分~200mL/10分の範囲、より好ましくは40mL/10分~150mL/10分の範囲である。
【0068】
好適なポリアミド6I/6Tの240℃でのゼロせん断速度粘度η0は、例えば、300~5000Pasの範囲、好ましくは500~3500Pasの範囲である。ゼロせん断速度粘度η0は、TA Instrumentsの「DHR-1」回転粘度計、および直径25mmおよびプレート間隙1mmのプレート-プレート配置を用いて求められる。ポリアミド6I/6Tの試料を、減圧下80℃で7日間乾燥させ、次いでこれを、角周波数範囲500~0.5rad/sの時間依存的な周波数掃引(シーケンステスト)を用いて分析する。以下のさらなる分析パラメーターを使用した。すなわち、変形:1.0%、分析温度:240℃、分析時間:20分、試料準備後の予熱時間:1.5分。
【0069】
好適なポリアミド6I/6Tは、例えば、好ましくは30~50mmol/kgの範囲、および特に好ましくは35~45mmol/kgの範囲のアミノ末端基濃度(AEG)を有する。
【0070】
アミノ末端基濃度(AEG)を求めるには、1gのポリアミド6I/6Tを30mLのフェノール/メタノール混合物(フェノール:メタノールの体積比75:25)に溶解し、次いで0.2N塩酸水溶液を用いる電位差滴定に供する。
【0071】
好適なポリアミド6I/6Tは、例えば、好ましくは60~155mmol/kgの範囲、および特に好ましくは80~135mmol/kgの範囲のカルボキシル末端基濃度(CEG)を有する。
【0072】
カルボキシル末端基濃度(CEG)を求めるには、1gのポリアミド6I/6Tを30mLのベンジルアルコールに溶解する。この後、0.05N水酸化カリウム水溶液を用いて120℃で目視滴定を行う。
【0073】
好適なポリアミドDT/DIは、任意の所望の割合のDT構造単位およびDI構造単位を含んでよい。好ましくは、DT構造単位対DI構造単位のモル比は、1:1~3:1の範囲、より好ましくは1.5:1~2.5:1の範囲、および特に好ましくは1.8:1~2.3:1の範囲である。
【0074】
好適なポリアミドDT/DIの240℃でのゼロせん断速度粘度η0は、例えば、500~1000Pasの範囲、好ましくは1000~5000Pasの範囲である。ゼロせん断速度粘度η0は、TA Instrumentsの「DHR-1」回転粘度計、および直径25mmおよびプレート間隙1mmのプレート-プレート配置で決定される。ポリアミドDT/DIの試料を、減圧下80℃で7日間乾燥させ、次いでこれを、角周波数範囲を500~0.5rad/sとする時間依存的な周波数掃引(シーケンステスト)を用いて分析する。以下のさらなる分析パラメーターを使用した。すなわち、変形:1.0%、分析温度:240℃、分析時間:20分、試料調製後の予熱時間:1.5分。
【0075】
好適なポリアミドDT/DIは、例えば、好ましくは20~60mmol/kgの範囲、および特に好ましくは25~50mmol/kgの範囲のアミノ末端基濃度(AEG)を有する。
【0076】
アミノ末端基濃度(AEG)を求めるには、1gのポリアミドDT/DIを30mLのフェノール/メタノール混合物(フェノール:メタノールの体積比75:25)に溶解し、次いで0.2N塩酸水溶液を用いる電位差滴定に供する。
【0077】
好適なポリアミドDT/DIは、例えば、好ましくは60~155mmol/kgの範囲、および特に好ましくは80~135mmol/kgの範囲のカルボキシル末端基濃度(CEG)を有する。
【0078】
カルボキシル末端基濃度(CEG)を求めるには、1gのポリアミドDT/DIを30mLのベンジルアルコールに溶解する。この後、0.05N水酸化カリウム水溶液を用いて120℃で目視滴定を行う。
【0079】
ポリアミドDT/DIは、モノマーのイソフタル酸、テレフタル酸および2-メチルペンタメチレンジアミンに由来し、Shakespeare社を含むサプライヤーからNovadyn(登録商標)DT/DIの商品名で販売されている。
【0080】
ポリマー成分(成分(A))は、ポリアミド6I/6Tおよび/またはポリアミドDT/DIと同様に、ポリマー成分の総質量に対して30質量%以下の、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DI以外の少なくとも1つのポリマー(P)を含んでもよい。
【0081】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのポリマー(P)」とは、厳密に1つのポリマー(P)または2つ以上のポリマー(P)の混合物のいずれかを意味する。
【0082】
一実施形態では、成分(A)はこのように、各場合において成分(A)の総質量に対して、少なくとも70質量%のポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミド、および0質量%~30質量%の少なくとも1つのポリマー(P)を含む。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、成分(A)は、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つのポリアミドからなる。
【0084】
非晶性焼結粉末(SP)が、各場合において非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含み、そして成分(A)が、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つのポリアミドからなる場合、焼結粉末(SP)が、非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して50質量%~100質量%のポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIを含むことは、当業者には明白であろう。
【0085】
従って本発明は、焼結粉末(SP)が、非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して50質量%~100質量%のポリアミド6I/6Tおよび/またはポリアミドDT/DIを含むプロセスも提供する。
【0086】
さらに好ましい実施形態では、成分(A)はポリアミド6I/6Tからなる。
【0087】
同様に、非晶性焼結粉末(SP)が、各場合において非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含み、そして成分(A)が、ポリアミド6I/6Tからなる場合、焼結粉末(SP)が、非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して50質量%~100質量%のポリアミド6I/6Tを含むことは、当業者には明白であろう。
【0088】
少なくとも1つのポリマー(P)は、存在する場合、成分(A)中でブレンドまたは粉末混合物の形態をとってよい。少なくとも1つのポリマー(P)は、存在する場合、好ましくは成分(A)中のブレンドの形態をとる。
【0089】
少なくとも1つのポリマー(P)は、好ましくは、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DI以外のポリアミドである。ポリアミドは非晶性でも半結晶性でもよい。
【0090】
ポリマー(P)は、例えば、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DI以外の非晶性半芳香族ポリアミドであってもよい。この種の非晶性半芳香族ポリアミドは当業者に知られており、例えば、PA6I、PA6/3TおよびPA PACM12からなる群から選択される。
【0091】
ポリマー(P)は、例えば、半結晶性ポリアミドであってもよい。この実施形態では、ポリマー(P)は好ましくは、ポリアミド6I/6Tおよび/またはポリアミドDT/DIとのブレンドの形態をとり、成分(A)が融点を有しないようになる。
【0092】
本発明の文脈における「半結晶性」とは、ポリマー(P)が、各場合においてISO11357-4:2014に従い示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、45J/gより大きい、好ましくは50J/gより大きい、および特に好ましくは55J/gより大きい融解エンタルピーΔH2(P)を有することを意味する。
【0093】
好適な半結晶性ポリアミドは、例えば、4~12個の環員を有するラクタムに由来する半結晶性ポリアミドである。また、ジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られる半結晶性ポリアミドも好適である。少なくとも1つのラクタム由来半結晶性ポリアミドの例には、ポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタムおよび/またはポリラウロラクタムに由来するポリアミドが含まれる。
【0094】
ジカルボン酸およびジアミンから得ることができる半結晶性ポリアミドを使用する場合、使用するジカルボン酸は、6~12個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸であってもよい。芳香族ジカルボン酸も好適である。
【0095】
ここでジカルボン酸の例には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸が含まれる。
【0096】
好適なジアミンの例には、4~12個の炭素原子を有するアルカンジアミン、および芳香族または環状ジアミン、例えばm-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパンまたは2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパンが含まれる。
【0097】
好ましい半結晶性ポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン-6)およびナイロン-6/6,6コポリアミドである。ナイロン-6/6,6コポリアミドは、好ましくは、ナイロン-6/6,6コポリアミドの総質量に対して、5質量%~95質量%の割合のカプロラクタム単位を有する。
【0098】
半結晶性ポリアミドとして、上記および下記に述べるモノマーの2つ以上の共重合によって得ることができるポリアミド、および任意の所望の混合比での複数のポリアミドの混合物も好適である。ナイロン-6と他のポリアミド、特にナイロン-6/6,6コポリアミドとの混合物が特に好ましい。さらに好ましい半結晶性ポリアミドは、ナイロン-6,6およびナイロン-6,10である。
【0099】
以下の非網羅的なリストは、前述のポリアミド、およびポリマー(P)として使用することができ、且つポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIとは異なるさらなる好適なポリアミド、および存在するモノマーを含む。
【0100】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
P11 11-アミノウンデカン酸
P12 ラウロラクタム。
【0101】
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 ドデカン-1,12-ジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6/66 (PA6およびPA66を参照されたい)
PA6/12 (PA6およびPA12を参照されたい)
PA6/6.36 ε-カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、C36ダイマー酸
PA6T/6 (PA6TおよびPA6を参照されたい)。
【0102】
ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DI以外のポリアミド(ポリマー(P))は、好ましくは、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6/6.36、PA6T/6、PA12.12、PA13.13、PA6T、PA MXD6、PA6/66、PA6/12およびこれらのコポリアミドからなる群から選択される。
【0103】
最も好ましくは、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DI以外のポリアミド(ポリマー(P))は、ナイロン-6、ナイロン-12およびナイロン-6/6,6、さらにはナイロン-6,10およびナイロン-6,6からなる群から選択される。
【0104】
成分(B)
成分(B)は、少なくとも1つの添加剤である。
【0105】
本発明の文脈において、「少なくとも1つの添加剤」とは、厳密に1つの添加剤または2つ以上の添加剤の混合物のいずれかを意味する。
【0106】
そのような添加剤は当業者に知られている。例えば、少なくとも1つの添加剤は、安定剤、導電性添加剤、末端基官能化剤(end group functionalizers)、染料、色顔料および難燃剤からなる群から選択される。
【0107】
従って本発明は、成分(B)が、安定剤、導電性添加剤、末端基官能化剤、染料、色顔料および難燃剤からなる群から選択される方法も提供する。
【0108】
好適な安定剤は、例えばフェノール、ホスファイトおよび銅安定剤である。好適な導電性添加剤は、カーボンファイバー、金属、ステンレス鋼ファイバー、カーボンナノチューブおよびカーボンブラックである。好適な末端基官能化剤は、例えば、テレフタル酸、アジピン酸およびプロピオン酸である。好適な染料および色顔料は、例えば、カーボンブラックおよび酸化クロム鉄である。
【0109】
焼結粉末が成分(B)を含む場合、焼結粉末は、成分(A)、(B)および任意に(C)の質量パーセントの総合計に対して、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に対して、少なくとも0.1質量%の成分(B)、好ましくは少なくとも50質量%の成分(B)を含む。
【0110】
好適な流動助剤は、例えばシリカまたはアルミナである。好ましい流動助剤はアルミナである。好適なアルミナの例は、Evonik社のAeroxide(登録商標)Alu Cである。
【0111】
高温で水を放出する難燃剤が好ましい。従って好ましい鉱物難燃剤は、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムおよび/または水酸化酸化アルミニウムである。水酸化マグネシウムは、鉱物難燃剤として特に好ましい。
【0112】
鉱物難燃剤は、例えば鉱物の形態で使用してもよい。好適な鉱物の例はベーマイトである。ベーマイトは、化学組成AlO(OH)またはγ-AlOOH(酸化水酸化アルミニウム)を有する。
【0113】
水酸化アルミニウムは、ATHまたは三水酸化アルミニウムとも呼ばれる。水酸化マグネシウムは、MDHまたは二水酸化マグネシウムとも呼ばれる。
【0114】
難燃剤は、例えば、0.3~1.2μmの範囲のD10、1.2~2μmの範囲のD50、および2~5μmの範囲のD90を有する。
【0115】
好ましくは、難燃剤は、0.5~1μmの範囲のD10、1.3~1.8μmの範囲のD50、および2~4μmの範囲のD90を有する。
【0116】
D10、D50およびD90は、焼結粉末(SP)のD10、D50およびD90について上述したように決定される。
【0117】
難燃剤はさらに表面改質されていてもよい。例えば、難燃剤はアミノシラン変性されている。
【0118】
成分(C)
本発明によれば、成分(C)は少なくとも1つの補強剤である。
【0119】
本発明の文脈において、「少なくとも1つの補強剤」は、厳密に1つの補強剤、または2つ以上の補強剤の混合物のいずれかを意味する。
【0120】
本発明の文脈において、補強剤は、本発明の方法により製造された成形体の機械的特性を、補強剤を含まない成形体よりも向上させる材料を意味すると理解される。
【0121】
このような補強剤は当業者に知られている。成分(C)は、例えば、球形、プレートレット形、または繊維形であってよい。
【0122】
好ましくは、少なくとも1つの補強剤は、プレートレット形または繊維形である。
【0123】
「繊維状補強剤」とは、繊維状補強剤の長さ対繊維状補強剤の直径の比が、2:1~40:1の範囲、好ましくは3:1~30:1の範囲、および特に好ましくは5:1~20:1の範囲である補強剤を意味すると理解され、繊維状補強剤の長さおよび繊維状補強剤の直径は、灰化後の試料の画像評価を用いた顕微鏡検査によって決定され、灰化後の繊維状補強剤の少なくとも70000部の評価が行われる。
【0124】
その場合、繊維状補強剤の長さは、灰化後の画像評価を用いた顕微鏡検査によって決定され、典型的には5~1000μmの範囲、好ましくは10~600μmの範囲、および特に好ましくは20~500μmの範囲である。
【0125】
その場合、直径は、灰化後の画像評価を用いた顕微鏡検査によって決定され、例えば1~30μmの範囲、好ましくは2~20μmの範囲、および特に好ましくは5~15μmの範囲である。
【0126】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの補強剤はプレートレット形である。本発明の文脈において、「プレートレット形」とは、少なくとも1つの補強剤の粒子が、灰化後の画像評価を用いた顕微鏡検査によって決定して4:1~10:1の範囲の直径対厚さの比を有することを意味すると理解される。
【0127】
好適な補強剤は当業者に知られており、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ホウ素ファイバー、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカファイバー、セラミックファイバー、バサルトファイバー、アルミノシリケート、アラミドファイバーおよびポリエステルファイバーからなる群から選択される。
【0128】
少なくとも1つの補強剤は、好ましくは、アルミノシリケート、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカファイバーおよびカーボンファイバーからなる群から選択される。
【0129】
少なくとも1つの補強剤は、より好ましくは、アルミノシリケート、ガラスファイバー、ガラスビーズおよびカーボンファイバーからなる群から選択される。これらの補強剤は、さらにアルミノシラン官能化されていてもよい。
【0130】
好適なシリカファイバーは、例えばウォラストナイトである。
【0131】
好適なアルミノシリケートは、それ自体当業者に知られている。アルミノシリケートは、Al2O3およびSiO2を含む化合物を指す。構造的には、アルミノシリケートに共通する要因は、シリコン原子が酸素原子によって四面体に配位し、アルミニウム原子が酸素原子によって八面体に配位していることである。アルミノシリケートは、さらなる元素をさらに含んでもよい。
【0132】
好ましいアルミノシリケートは、シート状シリケートである。特に好ましいアルミノシリケートは、焼成したアルミノシリケート、特に好ましくは焼成したシート状シリケートである。アルミノシリケートは、さらに、アミノシラン官能化されていてもよい。
【0133】
少なくとも1つの補強剤がアルミノシリケートである場合、アルミノシリケートは如何なる形態で使用してもよい。例えば、それは純アルミノシリケートの形態で使用することができるが、アルミノシリケートを鉱物の形態で使用することも同様に可能である。好ましくは、アルミノシリケートは鉱物の形態で使用される。好適なアルミノシリケートは、例えば、長石、ゼオライト、ソーダライト、シリマナイト、アンダルサイトおよびカオリンである。カオリンは、好ましいアルミノシリケートである。
【0134】
カオリンは、粘土岩の1種であり、そして本質的に鉱物カオリナイトを含む。カオリナイトの実験式はAl2[(OH)4/Si2O5]である。カオリナイトはシート状シリケートである。カオリナイトと同様に、カオリンは、典型的にさらなる化合物、例えば二酸化チタン、酸化ナトリウムおよび酸化鉄も含む。本発明により好ましいカオリンは、カオリンの総質量に対して少なくとも98質量%のカオリナイトを含む。
【0135】
焼結粉末が成分(C)を含む場合、焼結粉末は、成分(A)および任意に(B)および/または(C)の質量パーセントの総合計に対して、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に対して、少なくとも1質量%の成分(C)を含む。
【0136】
工程ii)
工程ii)では、工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層を露光する。
【0137】
露光すると、焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部が自由流動性となる。液化した焼結粉末(SP)が凝集する。露光後、焼結粉末(SP)の層の液化部分は再び冷却され、再び凝固する。
【0138】
好適な露光方法には、当業者に知られているあらゆる方法が含まれる。好ましくは、工程ii)における露光は、放射線源を用いて行われる。放射線源は、好ましくは、レーザーである。
【0139】
好適なレーザーは、当業者に知られており、例えばファイバーレーザー、Nd:YAGレーザー(ネオジムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)、二酸化炭素レーザーまたはダイオードレーザーである。
【0140】
工程ii)における露光に使用される放射線源がレーザーである場合、工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層は典型的には、局所的に且つ短時間でレーザービームに露光される。これにより、レーザービームに露光された焼結粉末(SP)の一部のみが選択的に自由流動性となる。この方法は選択的レーザー焼結とも称される。選択的レーザー焼結は、それ自体が当業者に知られている。
【0141】
驚くべきことに、方法工程ii)における本発明のレーザー焼結パラメータを遵守すると、良好な機械的特性を有し、変色が、あるとしても低度でしか有しない成形体が得られることが見出された。成形体はさらに、広い温度範囲にわたって比較的均一な機械的特性を有する。
【0142】
工程i)で提供された層のレーザー焼結において、工程ii)における体積ベースのエネルギー密度(EV)は、本発明によれば、少なくとも1000mJ/mm3である。
【0143】
本発明によれば、体積ベースのエネルギー密度(E
V)は以下の式:
【数2】
によって計算される。
【0144】
式中、
Pは、工程ii)で使用されるレーザーのワットで表すレーザー出力であり、
vは、工程ii)で使用されるレーザーのm/sで表す走査速度であり、
hは、工程ii)におけるmmで表す走査間隔であり、
dは、工程i)で提供された層のmmで表す厚さであり、
nは、工程ii)で行われるレーザー走査の数である。
【0145】
好ましい実施形態では、工程ii)における体積ベースのエネルギー密度(EV)は、1000~3000mJ/mm3の範囲、より好ましくは1100~2750mJ/mm3の範囲、および特に好ましくは1200~2600mJ/mm3の範囲である。
【0146】
方法工程ii)で使用されるレーザーの出力Pは、15~40ワットの範囲、好ましくは20~35ワットの範囲、より好ましくは22~32ワットの範囲、および特に好ましくは23~30ワットの範囲である。
【0147】
方法工程ii)における走査速度vは、1~15m/sの範囲、好ましくは2~12m/sの範囲、より好ましくは3~10m/sの範囲、および特に好ましくは4~8m/sの範囲である。
【0148】
方法工程ii)における走査間隔hは、0.05~0.3mmの範囲、好ましくは0.07~0.25mmの範囲、より好ましくは0.08~0.2mmの範囲、および特に好ましくは0.08~0.18mmの範囲である。
【0149】
走査間隔hは、レーザー間隔またはレーン間隔としても知られる。選択的レーザー焼結は、典型的には、縞状に走査するものである。走査間隔により、縞の中央の間、すなわち、2本の縞のためのレーザービームの2箇所の中央の間に、距離が生じる。
【0150】
方法工程ii)におけるレーザー走査の数nは1~3の範囲であり、nは好ましくは1または2であり、そしてnは最も好ましくは2である。
【0151】
工程ii)の後、焼結粉末(SP)の層は、典型的には、工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層の層厚によって低下し、そして焼結粉末(SP)のさらなる層が適用される。続いて、これを工程ii)で再び露光する。
【0152】
これは、まず、焼結粉末(SP)の上層を焼結粉末(SP)の下層に結合する。さらに、上層内の焼結粉末(SP)の粒子は、液化によって互いに結合する。
【0153】
本発明の方法では、このように工程i)およびii)を繰り返すことができる。
【0154】
粉末床の低下、焼結粉末(SP)の適用および露光、そして焼結粉末(SP)の液化を繰り返すことにより、三次元の成形体が製造される。例えば、空洞を有する成形体を製造することも可能である。未溶融の焼結粉末(SP)自体がサポート材料として機能するので、追加のサポート材料は必要ではない。
【0155】
従って本発明はさらに、本発明の方法により得ることができる成形体も提供する。
【0156】
従って本発明は、以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤
を含む焼結粉末(SP)の、焼結プロセスにおける使用も提供する。
【0157】
成形体
本発明の方法により、成形体が得られる。成形体は、工程ii)で露光時に液化した焼結粉末(SP)の凝固後、直接粉末床から取り外すことができる。同様に、最初に成形体を冷却し、その後にのみ粉末床から除去することが可能である。液化していない焼結粉末のあらゆる付着粒子は、既知の方法によって表面から機械的に除去することができる。成形体の表面処理方法には、例えば、振動粉砕またはバレル研磨、およびまたサンドブラスト、ガラスビーズブラストまたはマイクロビーズブラストが含まれる。
【0158】
得られた成形体をさらなる処理に供すること、または例えば表面を処理することも可能である。
【0159】
従って本発明はさらに、本発明の方法により得ることができる成形体を提供する。
【0160】
得られる成形体は、典型的には、各場合に成形体の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0161】
本発明によれば、成分(A)は、焼結粉末(SP)中に存在した成分(A)である。成分(B)は、存在する場合、同様に焼結粉末(SP)中に存在した成分(B)であり、成分(C)は、存在する場合、同様に焼結粉末(SP)中に存在した成分(C)である。
【0162】
焼結粉末(SP)の露光の結果、成分(A)および任意に(B)および(C)が化学反応を起こし、そしてその結果変化できることは、当業者には明らかであろう。そのような反応は、当業者に既知である。
【0163】
好ましくは、成分(A)および任意に(B)および(C)は、工程ii)における露光時に如何なる化学反応も起こさず、代わりに、焼結粉末(SP)は単に自由流動性となる。
【0164】
以下で、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0165】
以下の成分を使用した。
【0166】
使用した非晶性ポリマー成分(成分(A))は、EMS社のGrivory G16(非晶性ポリアミド6I/6T)、DuPont社のZytel HTN301(非晶性ポリアミド6I/6T)、Shakespeare社(米国)のNovadyn DT/DI(非晶性ポリアミドDT/DI)であった。
【0167】
使用した成分(B)は、BASF SE社のIrganox(登録商標)1098(N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))であった。
【0168】
使用した半結晶性ポリアミドは、BASF 3D Printing Solutions GmbH(ハイデルベルク)社のUltrasint(登録商標)PA6(ポリアミドPA6)、およびBASF SE社のUltramid(登録商標)B27E(ポリアミドPA6)であった。
【0169】
使用した非晶性焼結粉末(SP)は、Grivory G16、Zytel HTN301、Ultrasint(登録商標)PA6、およびGrivory G16とUltramid(登録商標)B27とIrganox(登録商標)1098との混合物(混合比:74.6質量%、25質量%、0.4質量%)であった。
【0170】
【0171】
融点Tm2[℃]、ガラス転移温度Tg2[℃]、240℃におけるゼロせん断粘度η0[Pas]は、上記のように測定した。
【0172】
【0173】
焼結特性
焼結実験は、標準的なFarsoon HT251P SLSシステム(二酸化炭素レーザー波長10.6μm)で行った。
【0174】
非晶性PA6I6Tの焼結特性は、Grivory G16の例を用いて、Farsoon HT251PのSLSパラメータ研究により詳細に検討した(表3)。Zytel HTN301(AP2)の結果を表4に示す。
【0175】
【0176】
【0177】
レーザーの走査速度(v)はすべての場合で5m/sであった。
【0178】
機械試験は、3点曲げ試験により室温で行った。試験装置はStable Micro Systems社のTA-HD plusであった。試験は室温で行った。試験片は焼結後、さらなる前処理なしで試験した。試験片:幅10mm、長さ80mm、厚さ4mm、サポート間隔64mm。速度:弾性率の決定は0.1mm/s、他の測定は0.3mm/s。
【0179】
レーザー焼結時の体積ベースのエネルギー密度は以下のように計算した:
【0180】
【0181】
この式において、Pはレーザー出力[W]、vはレーザーの走査速度[m/s]、hは走査間隔[mm]、dは層厚[mm]、およびnはレーザー走査の数である。面積ベースのエネルギー密度は、体積ベースのエネルギー密度から層厚を乗算することで得られる。
【0182】
【0183】
成分の特性評価
室温での機械的特性
表5に示す焼結パラメータを使用して、機械的試験用の試験片を作製し、標準的な方法で試験を行った。結果を表6に示す。
【0184】
【0185】
「乾燥」とは、減圧下80℃で336時間の貯蔵を意味する。
【0186】
「調整済」とは、70℃および相対湿度72%で336時間の貯蔵を意味する。
【0187】
表6から、レーザー焼結の特許請求するプロセスパラメータを用いた非晶性ポリアミドPA6I6T(Grivory G16およびZytel HTN301)は、全体として良好な機械的特性を達成し、且つ成分の変色は低度でしかなかったことがわかる。
【0188】
温度による機械的特性の変化
貯蔵弾性率G’は、-100℃~200℃の温度範囲で動的機械分析(DMTA)により測定した。表7に特定する温度範囲について、それぞれの温度範囲における貯蔵弾性率G’の変化を評価した。この目的のため、それぞれの温度範囲における最高温度での貯蔵弾性率G’を最低温度での貯蔵弾性率G’の値から引き、この差を温度間隔で正規化した。特定された温度範囲は、典型的な適用温度範囲を網羅している。
【0189】
DMTA試験装置 Rheometrics RDA1
試験条件:
規格 ISO6721-7
温度ランプ 1K/分
温度 -100℃~200℃(窒素下)
周波数 1Hz
初期ひずみ 0.2%
形状 40mm×10mm×4mm
試験片の長さ 60mm。
【0190】
【0191】
所与の温度範囲における弾性率の変化が、SLS法で使用される他の材料、例えばUltrasint(登録商標)PA6に比べて小さいことが、ポリアミド6I6Tの特徴である。PA6の場合、特に20℃~80℃および20℃~120℃の温度範囲において、弾性率の変化はPA6I6Tの場合よりも数倍大きい。
【0192】
非晶性ポリアミドPA6I6Tと半結晶性ポリアミドPA6の混合物
Grivory G16とUltramid(登録商標)B27とIrganox(登録商標)1098との混合物(混合比:74.6質量%、25質量%、0.4質量%)を製造した。
【0193】
PA6I6TとPA6の混合物の組成(スクリュー直径25mmの二軸押出機で製造)。スクリュー速度200 1/分、処理量20kg/h、および押出ゾーンでのハウジング温度280℃であった。直径4mmの押出ノズルで得られた圧力は10バールとなった):
PA6I6T Grivory G16natur 74.6質量%
PA6 Ultramid B27E 25質量%
安定剤 Irganox1098 0.4質量%
この混合物を粉砕して焼結粉末を製造した。
【0194】
PA6I6Tと25質量%のPA6との混合物も処理することができ、そして同様に良好な成分特性を達成できることが見出された。
【0195】
材料分析:
【0196】
【0197】
2回目の加熱運転(加熱速度20K/分)では、融解エンタルピーが非常に低いので、混合物は実質的に非晶性とみなすことができる。冷却運転(冷却速度20K/分)では、結晶化は観察されなかったので、これは結晶化温度もないことを意味すると考えられる。
【0198】
【0199】
【0200】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的レーザー焼結による成形体の製造方法であって、以下の工程:
i) 以下の成分、
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤
を含む非晶性焼結粉末(SP)の層を提供する工程、
ii) 工程i)で提供された層をレーザー焼結する工程であって、工程ii)における体積に対するエネルギー密度(E
V)が少なくとも1000mJ/mm
3であり、体積に対するエネルギー密度(E
V)が以下の式:
【数1】
(式中、
Pは、工程ii)で使用されるレーザーのワットで表すレーザー出力であり、
vは、工程ii)で使用されるレーザーのm/sで表す走査速度であり、
hは、工程ii)におけるmmで表す走査間隔であり、
dは、工程i)で提供された層のmmで表す厚さであり、
nは、工程ii)で行われるレーザー走査の数である)
によって計算される、工程
を含み、
以下のレーザー焼結パラメータ:
Pは、15~40ワットの範囲であり、
vは、2~10m/sの範囲であり、
hは、0.05~0.3mmの範囲であり、
dは、0.03~0.15mmの範囲であり、
nは、1~3の範囲である、
が、工程i)およびii)に適用され
、
前記非晶性焼結粉末(SP)が、各場合において該非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む、方法。
【請求項2】
前記非晶性焼結粉末(SP)が、10~250μmの範囲のサイズを有する粒子を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶性焼結粉末(SP)が、
10~60μmの範囲のD10、
25~90μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
成分(B)が、安定剤、導電性添加剤、末端基官能化剤、染料、色顔料および難燃剤からなる群から選択される、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成分(C)が、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ホウ素ファイバー、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカファイバー、セラミックファイバー、バサルトファイバー、アルミノシリケート、アラミドファイバーおよびポリエステルファイバーからなる群から選択される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の非晶性焼結粉末(SP)の製造方法であって、以下の工程、
a) 以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤、
を混合する工程、
b) 工程a)で得られた混合物を粉砕して焼結粉末(SP)を得る工程
を含
み、
前記非晶性焼結粉末(SP)が、各場合において該非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む、方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の方法によって得ることができる非晶性焼結粉末(SP)。
【請求項8】
非晶性焼結粉末(SP)の焼結
方法における使用であって、
該非晶性焼結粉末(SP)が、以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤、
を含
み、
前記非晶性焼結粉末(SP)が、各場合において該非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む、使用。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる成形体であって、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含み、質量%が各場合に該成形体の総質量に対するものである、成形体。
【請求項10】
以下の成分:
(A) 非晶性ポリマー成分であって、ポリアミド6I/6TおよびポリアミドDT/DIからなる群から選択される少なくとも1つの非晶性ポリアミドを、該非晶性ポリマー成分の総質量に対して少なくとも70質量%含む、非晶性ポリマー成分、
(B) 任意に少なくとも1つの添加剤、および
(C) 任意に少なくとも1つの補強剤、
を含む、非晶性焼結粉末(SP)
であって、
各場合において該非晶性焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%~100質量%の範囲の成分(A)、0質量%~50質量%の範囲の成分(B)、および0質量%~50質量%の範囲の成分(C)を含む、非晶性焼結粉末(SP)。
【請求項11】
10~250μmの範囲のサイズを有する粒子を含む、請求項
10に記載の非晶性焼結粉末(SP)。
【請求項12】
10~60μmの範囲のD10、
25~90μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する、請求項
10または
11に記載の非晶性焼結粉末(SP)。
【国際調査報告】