(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】単結晶シリコンからエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20240808BHJP
C30B 15/20 20060101ALI20240808BHJP
C30B 33/00 20060101ALI20240808BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20240808BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20240808BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240808BHJP
H01L 21/322 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C30B29/06 502G
C30B15/20
C30B33/00
C30B33/02
C23C16/24
H01L21/205
H01L21/322 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024509452
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022071628
(87)【国際公開番号】W WO2023020825
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンゲルベルガー,カール
(72)【発明者】
【氏名】ホイビーザー,バルター
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077AB06
4G077AB09
4G077BA04
4G077CF10
4G077EA04
4G077EG18
4G077EG19
4G077EG25
4G077EH06
4G077EH08
4G077EJ02
4G077FE00
4G077FG11
4G077HA12
4G077PF51
4G077PF55
4G077UA03
4K030AA03
4K030AA17
4K030BA29
4K030BB02
4K030CA04
4K030JA01
4K030JA10
5F045AA03
5F045AB02
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AD15
5F045AD16
5F045AF03
5F045HA16
(57)【要約】
単結晶シリコンからエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハを製造する方法であって、
るつぼ内にシリコンの溶融物を提供することと、
CZ法により、引き上げ速度vで前記溶融物の表面からシリコンの単結晶を引き上げることであって、前記単結晶中に酸素およびホウ素が取り込まれ、前記単結晶中の前記酸素の濃度は6.4×1017原子/cm3以上8.0×1017原子/cm3以下であり、前記単結晶の抵抗率は10mΩcm以上25mΩcm以下であり、前記溶融物に窒素および炭素によるドーピングがない、シリコンの単結晶を引き上げることと、
熱シールドに取り囲まれた、シリコンの前記単結晶の前記引き上げ中に前記溶融物にカスプ磁場を印加することと、
前記引き上げ速度vおよび前記単結晶と前記溶融物との間の相境界における軸方向温度勾配Gを、商v/Gが0.13mm2/℃分以上0.20mm2/℃分以下となるように制御することと、
前記溶融物の上方に配置され、前記単結晶を取り囲むリング状ヒータを用いて前記単結晶を加熱することと、
シリコンの前記単結晶を加工することによって、研磨された水平面を有する単結晶シリコンから基板ウェハを製造することと、
前記基板ウェハの前記研磨された水平面上にシリコンのエピタキシャル層を堆積させることであって、前記エピタキシャル層を堆積させることは、前記基板ウェハが700℃以上の温度に加熱される過程において最初の熱処理である、エピタキシャル層を堆積させることと、
を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンからエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハを製造する方法であって、
るつぼ内にシリコンの溶融物を提供することと、
CZ法により、引き上げ速度vで前記溶融物の表面からシリコンの単結晶を引き上げることであって、前記単結晶中に酸素およびホウ素が取り込まれ、前記単結晶中の前記酸素の濃度は6.4×10
17原子/cm
3以上8.0×10
17原子/cm
3以下であり、前記単結晶の抵抗率は10mΩcm以上25mΩcm以下であり、前記溶融物に窒素および炭素によるドーピングがない、シリコンの単結晶を引き上げることと、
熱シールドに取り囲まれた、シリコンの前記単結晶の前記引き上げ中に前記溶融物にカスプ磁場を印加することと、
前記引き上げ速度vおよび前記単結晶と前記溶融物との間の相境界における軸方向温度勾配Gを、割合v/Gが0.13mm
2/℃分以上0.20mm
2/℃分以下となるように制御することと、
前記溶融物の上方に配置され、前記単結晶を取り囲むリング状ヒータを用いて前記単結晶を加熱することと、
シリコンの前記単結晶を加工することによって、研磨された水平面を有する単結晶シリコンから基板ウェハを製造することと、
前記基板ウェハの前記研磨された水平面上にシリコンのエピタキシャル層を堆積させることであって、前記エピタキシャル層を堆積させることは、前記基板ウェハが700℃以上の温度に加熱される過程において最初の熱処理である、エピタキシャル層を堆積させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶融物から引き上げられた前記単結晶を、1000℃から800℃までの温度範囲内の冷却速度である0.7℃/分以上1℃/分以下で冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融物の前記表面からの前記熱シールドの下縁の距離は、35mm以上45mm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カスプ磁場は、105mT以上116mT以下の最大磁場強度に達し、0mTの磁場強度を有する前記カスプ磁場の平面は、前記溶融物の前記表面下で30mm以上80mm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記るつぼを3.5rpm未満および6.0rpm以下の速度で回転させることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
圧力が2500Pa以上8500Pa以下であるパージガスの雰囲気中で単結晶を引き上げることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記単結晶は300mmの直径を有し、前記リング状ヒータの出力は7kW以上13kW以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコンからエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハを製造する方法を提供し、これはCMOSイメージセンサ(CIS)などの電子部品を得るためのさらなる加工に特に適している。
【背景技術】
【0002】
先行技術/課題
上述の用途に適するために、金属不純物は、エピタキシャル層内に収容された電子構造に到達してはならない。
【0003】
米国特許出願公開第2014/0374861号明細書は、エピタキシャル層が堆積された基板ウェハ中にBMD(バルク微小欠陥)と呼ばれる酸素析出物が存在すると、BMDの濃度が少なくとも1.0×109/cm3であれば、金属不純物による混入に起因する典型的な部品欠陥が抑制されると述べている。
【0004】
そのような比較的高いBMDの混入を提供することを可能にするために、基板ウェハを提供する単結晶を窒素または炭素でドープすること、および/または基板ウェハをエピタキシャル層の堆積前に、後の段階でBMDが形成され得る核を安定化させる熱処理に供することがしばしば提案される。
【0005】
しかしながら、窒素または炭素によるドーピングのために、エピタキシャル層にも表面欠陥が生じる可能性があり、基板ウェハの熱処理は、製造コストを増加させる追加の方法ステップを構成する。
【0006】
独国特許第102014221421号明細書には、窒素によるドーピングを必要とせず、エピタキシャル層の堆積前にいかなる熱処理も必要としない方法が記載されている。しかしながら、この方法の欠点は、少なくとも1.0×109/cm3の必要なBMD密度が達成されず、均一に分布せず、エピタキシャル層を有する半導体ウェハの縁部に向かって低下することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、その縁部領域を含めて少なくとも1.0×109/cm3に達するBMD密度を生成することが可能なエピタキシャル層を有する半導体ウェハを提供するそのような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、単結晶シリコンからエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハを製造する方法であって、
るつぼ内にシリコンの溶融物を提供することと、
CZ法により、引き上げ速度vで溶融物の表面からシリコンの単結晶を引き上げることであって、単結晶中に酸素およびホウ素が取り込まれ、単結晶中の酸素の濃度は6.4×1017原子/cm3以上8.0×1017原子/cm3以下であり、単結晶の抵抗率は10mΩcm以上25mΩcm以下であり、溶融物に窒素および炭素によるドーピングがない、シリコンの単結晶を引き上げることと、
熱シールドに取り囲まれた、シリコンの単結晶の引き上げ中に溶融物にカスプ(CUSP)磁場を印加することと、
引き上げ速度vおよび単結晶と溶融物との間の相境界における軸方向温度勾配Gを、商v/Gが0.13mm2/℃分以上0.20mm2/℃分以下となるように制御することと、
溶融物の上方に配置され、単結晶を取り囲むリング状ヒータを用いて単結晶を加熱することと、
シリコンの単結晶を加工することによって、研磨された水平面を有する単結晶シリコンから基板ウェハを製造することと、
基板ウェハの研磨された水平面上にシリコンのエピタキシャル層を堆積させることであって、エピタキシャル層を堆積させることは、基板ウェハが700℃以上の温度に加熱される過程において最初の熱処理である、エピタキシャル層を堆積させることと、
を含む、方法によって達成される。
【0009】
p/p+ドーピングを有し、本方法によって製造された単結晶シリコンのエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハは、特に、エピタキシャル層の真下の熱処理によって生成することができる半径方向に均一なBMD分布のために、CIS部品の製造に特に適している。熱処理は、好ましくは、エピタキシャルコーティングされた半導体ウェハを先ず3時間にわたって780℃の温度まで、次いで16時間にわたって1000℃の温度まで加熱することを含む。あるいは、エピタキシャルコーティングされた半導体ウェハをさらに加工して電子部品を得る過程において、同等のサーマルバジェットを有する熱処理を行うことも可能である。
【0010】
本方法の過程においてエピタキシャルコーティングされた基板ウェハが分割される単結晶は、るつぼ内で生成され、磁場に曝された溶融物から種結晶を使用して単結晶を引き上げるMCZ法により製造される。軸対称磁場で使用される磁場はカスプ磁場である。カスプ磁場は、好ましくは105mT以上116mT以下の最大磁場強度に達し、0mTの磁場強度を有するカスプ磁場の平面は、溶融物の表面下で好ましくは30mm以上80mm以下、より好ましくは50mmである。
【0011】
単結晶は能動的に冷却されることが好ましい。1000℃から800℃までの温度範囲における冷却速度は、0.7℃/分以上1℃/分以下であることが好ましい。
【0012】
溶融物の表面からの熱シールドの下縁の距離は、35mm以上45mm以下であることが好ましい。
【0013】
単結晶を引き上げる過程において単結晶に入る酸素の量は、プロセスパラメータの調整によって制御される。これらのプロセスパラメータには、特に、カスプ磁場の強度、るつぼの回転速度、および溶融物から単結晶の環境から漏れ出る二酸化ケイ素を除去するために溶融物を通過するパージガスの圧力が含まれる。るつぼの回転速度は3.5rpm以上6.0rpm以下であることが好ましい。パージガス、たとえばアルゴン、水素またはこれらの2つのガスの混合物の圧力は、2500Pa以上8500Pa以下であることが好ましい。
【0014】
単結晶中の点欠陥分布は、エピタキシャルコーティングされた半導体ウェハにおいて後に形成されるBMDの能力に特に影響を及ぼす。周知のように、点欠陥分布は、単結晶の引き上げ時に商v/Gが有する値に依存する。したがって、材料係数は、引き上げ速度vと軸方向温度勾配Gとの比、および溶融物上の成長中の単結晶間の相境界である。本発明による方法は、0.13mm2/℃分以上0.20mm2/℃分以下の商v/Gを必要とする。引き上げ速度は、0.4mm/分以上0.48mm/分以下であることが好ましい。
【0015】
成長中の単結晶の縁部領域における軸方向温度勾配Gは、溶融物の上方に配置され、単結晶を取り囲むリング状ヒータを用いた単結晶の加熱によってさらに影響を受ける。300mmの直径を有する単結晶の場合、リング状ヒータの出力は7kW以上13kW以下であることが好ましい。
【0016】
引き上げられた単結晶は、好ましくは少なくとも200mm、より好ましくは少なくとも300mmの直径を有し、単結晶シリコンの基板ウェハを得るために加工される。作業ステップには、単結晶をウェハに分割することに加えて、ウェハの水平面のラッピングおよび/または研削、ならびにウェハの縁部の丸めなどのさらなる機械的加工ステップも含まれる。基板ウェハはまた、化学的にエッチングされること、特に化学的に機械的に研磨されることが好ましい。したがって、基板ウェハは、研磨された縁部および少なくとも1つの研磨された水平面を有する。好ましくは、研磨ステップは、基板ウェハの表面および裏面の同時研磨(DSP)および基板ウェハの表面の研磨(CMP)を含む。
【0017】
シリコンのエピタキシャル層は、基板ウェハの研磨された表面上に堆積されることが好ましい。このステップは、単一ウェハ反応器、たとえばApplied Materialsによって供給されるCentura(登録商標)型の反応器において行われることが好ましい。堆積ガスは、水素含有シラン、たとえばトリクロロシラン(TCS)を含有することが好ましい。TCSが使用される場合の堆積温度は、1000℃以上1250℃以下の温度範囲内であることが好ましい。エピタキシャル層の厚さは、少なくとも1μmであることが好ましい。エピタキシャル層の堆積は、基板ウェハが700℃以上の温度に加熱される過程において最初の熱処理である。したがって、エピタキシャル層の堆積前に、BMD種の核生成のための熱処理は存在しない。基板ウェハはまた、窒素および/または炭素で意図的にドープされていない。
【0018】
このようにして製造された単結晶シリコンのエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハは、基板ウェハの領域において、基板ウェハの元となる単結晶の格子間酸素の濃度および抵抗率を有する。したがって、酸素の濃度は6.4×1017原子/cm3以上8.0×1017原子/cm3以下(標準の新ASTMによる)であり、抵抗率は10mΩcm以上25mΩcm以下である。
【0019】
単結晶シリコンのエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハが、3時間にわたって780℃の温度まで、次いで16時間にわたって1000℃の温度まで加熱することを含む標準的な熱処理、または同等のサーマルバジェットを有する熱処理に供される場合、BMDは、半径方向に均一な分布で少なくとも1×109/cm3の密度でエピタキシャル層の真下に形成される。式((BMDmax-BMDmin)/BMDmean)×100%によって計算される、半径にわたるBMD密度の変動は170%未満であり、式中、BMDmax、BMDminおよびBMDmeanは、測定された最大、最小および平均のBMD密度を表す。
【0020】
本発明を、図面を参照して以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による方法を実行するのに適した装置の特徴を示す。
【
図2】標準的な熱処理後に本発明に従って製造されたエピタキシャルコーティングされた半導体層の平均BMD密度を、単結晶中の対応する基板ウェハの相対軸方向位置(raP)に応じて相対軸方向位置の関数として示す。
【
図3】本発明に従って製造された5つのエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハの平均BMD密度を、BMD密度が測定された半径方向位置(Pos)に応じて示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の実施例の詳細な説明
図1は、本発明による方法の実施に適した装置の使用による、単結晶の製造中の単結晶の周囲環境(ホットゾーン)の概略図を示す。成長中の単結晶1は熱シールド2に取り囲まれており、その下端は溶融物3から短い距離にある。さらに、熱シールド2の下端の領域には、単結晶1と溶融物3との間の相境界の縁部に熱を供給するリング状ヒータ4が存在する。リング状ヒータ4は、成長中の単結晶1と量3との間の相境界の縁部における温度勾配の制御を補助し、好ましくは単結晶の直径の制御システムの一部でもある。熱シールド2の中央領域および上部領域の高さ、ならびにリング状ヒータ4から一定の距離において、単結晶1はまた、単結晶を冷却するためのデバイス5、好ましくは水冷冷却器に取り囲まれている。溶融物3は、石英で作られたるつぼ6内に存在し、次にこのるつぼ6は、グラファイトで作られた外側るつぼ7によって保持されている。るつぼ6、7および溶融物3は、回転可能、昇降可能および下降可能なシャフト8の端部に載っている。溶融物3は、主に、外側るつぼ7の周囲に配置された抵抗ヒータ9を介して熱を供給される。溶融物3に印加されるカスプ磁場を発生させるためのデバイス10は、抵抗ヒータ9を順に取り囲んでいる。
【0023】
シリコンの複数の単結晶は、
図1に示す特徴を有するデバイスにおいて本発明の方法で引き上げられ、300mmの直径を有するエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハを得るためにさらに加工される。
【0024】
図2は、標準的な熱処理後の半導体ウェハの平均BMD密度(BMD-D)を、単結晶中の対応する基板ウェハの相対軸方向位置(raP)に応じて示す。
【0025】
図3は、本発明に従って製造された5つのエピタキシャルコーティングされた半導体ウェハの平均BMD密度(BMD-D)を、BMD密度が測定された半径方向位置(Pos)に応じて示す。
【符号の説明】
【0026】
使用した符号のリスト
1 単結晶
2 熱シールド
3 溶融物
4 リング状ヒータ
5 単結晶冷却デバイス
6 るつぼ
7 外側るつぼ
8 シャフト
9 抵抗ヒータ
10 カスプ磁場発生デバイス
【国際調査報告】