(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】シリカ粒子を製造するための方法、かかる方法によって製造されるシリカ粒子、かかるシリカ粒子の組成物および使用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240816BHJP
C01B 33/141 20060101ALI20240816BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240816BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20240816BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C01B33/141
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510300
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022072412
(87)【国際公開番号】W WO2023020906
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャックノウ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ハヌス,レオ
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,ギアリー
【テーマコード(参考)】
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC01
4G072CC13
4G072DD06
4G072EE01
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH08
4G072JJ21
4G072LL06
4G072MM01
4G072MM08
4G072MM14
4G072MM40
4G072PP05
4G072RR05
4G072RR12
4G072UU30
5F057AA06
5F057BA21
5F057BB16
5F057BB25
5F057BC01
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA16
(57)【要約】
本出願は、シリカ粒子を製造するための方法に、およびかかる方法によって製造されるシリカ粒子に関する。本出願は、さらに、かかる方法によって製造されるシリカ粒子を含む組成物に、ならびに、かかるシリカ粒子およびかかるシリカ粒子を含む組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子の製造のための方法であって、該方法が、以下のステップ:
(a)塩化ケイ素を水性溶液中で加水分解し、それによってケイ酸および塩化水素を含むゲルを製造すること、ここで、塩化ケイ素は、以下の式(1’):
【化1】
Rは、出現毎に独立して、1、2、または3個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される;ならびに、cは、出現毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される;ならびに、dは、出現毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される;ただし、c+d≦3、
で表されるものである;
(b)塩化水素の少なくとも一部をゲルから除去して、精製されたゲルを得ること;
(c)精製されたゲルのpHを少なくとも9へ調整すること;ならびに、
(d)次いでケイ酸を重縮合して、シリカ粒子を形成すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
塩化ケイ素が、以下の式(1):
【化2】
Rが、出現毎に独立して、1、2、または3個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される;ならびに、aは、出現毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される、
で表されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、出現毎に独立して、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソ-プロピルからなる群から選択される;好ましくは、メチルまたはエチルである;ならびに、最も好ましくは、メチルである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
aが、0または1であり、および好ましくは、aが、0である、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
塩化ケイ素が、独立して、SiCl
4、MeSiCl
3、Me
2SiCl
2、Me
3SiCl、EtSiCl
3、Et
2SiCl
2、Et
3SiCl、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から;好ましくは、SiCl
4、MeSiCl
3、Me
2SiCl
2、Me
3SiCl、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から選択される;より好ましくは、SiCl
4またはMeSiCl
3であり、ならびに、最も好ましくは、SiCl
4である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、少なくとも0℃および最大120℃の温度で実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)において、塩化物もしくはフッ化物または両方における組み合わされた含量が、シリカ(「SiO
2」)に対して、最大40,000ppmへ低減される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)が、以下のステップ:
(b1)ゲルを水の添加およびこれに続く水の除去によって洗浄すること;ならびに、
(b2)好ましくは、ステップ(b1)に続いて、ゲルをアニオン性交換樹脂を通過させて、精製されたゲルを得ること、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)および/またはステップ(b)の後、ケイ酸が乾燥されない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)において、ゲルのpHが、精製されたゲルへ塩基を添加することによって調整され、塩基が、好ましくは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、アンモニア、有機アミン、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)において、ゲルのpHが、少なくとも10へ調整される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)において、ゲルのpHが、最大13へ調整される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)において形成されるシリカ粒子が、コロイド状シリカ粒子である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(d)がまた、シリカシードを導入し、その上にケイ酸を重縮合させて、シリカ粒子を形成することをも含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
そのように製造されたシリカ粒子が、電子産業における化学的機械的研磨、触媒支持体、プライムウェハ研磨等々において使用される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法によって得られる、シリカ粒子。
【請求項17】
請求項16に記載のシリカ粒子の水性分散体を含む、配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、シリカ粒子を製造するための方法に、および、かかる方法によって製造されるシリカ粒子に関する。本出願は、さらに、かかる方法によって製造されるシリカ粒子を含む組成物に、ならびに、かかるシリカ粒子およびかかるシリカ粒子を含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
シリカ粒子は、広範な用途に使用され得る。それらは、ほんの一例を挙げれば、例えば、砥粒として、紙作製におけるおよび紙それ自体における添加剤として、触媒支持体として、薬物担体として、コーティングまたは塗料において、使用され得る。
【0003】
これらの用途のより多くが、シリカ粒子が高純度であること、すなわち低レベルの夾雑物、例えば微量金属および/または有機夾雑物などを含有することを必要とする。これは、例えば、夾雑物の不在が所望される製品の収量における増加へつながり得る、触媒および触媒担体におけるケースである。最新の電子デバイス、例えば半導体デバイス、メモリデバイス、集積回路等などがより小さくなりつつあることに起因して、かかる最新の電子デバイスの製造において使用されるシリカ粒子は、より高まる純度要件に適合する必要がある。
【0004】
加えて、環境的懸念および政治的圧力は、例えば、より低いエネルギー消費または低減された廃棄物に起因したより有利であり得る、より持続可能な製品および製造プロセスを開発および実行するように産業に要求する。代替的に、かかるプロセスが異なる製造プロセスの副産物または廃棄物産物の上に成り立つ場合、製造プロセスはより持続的になり得る。
【0005】
シリカ粒子を製造するための典型的な従来の「湿潤」プロセス、すなわち水性媒体において本質的に実施されるシリカ粒子を製造するためのプロセスにおいて、オルトケイ酸ナトリウムまたはオルトケイ酸カリウム(Na4SiO4またはK4SiO4、またはより一般にSiO2・xM2O(MがNaまたはKである))は、イオン交換プロセスに供与され、オルトケイ酸(「Si(OH)4」)をもたらし、それは次いで、重縮合されてシリカ粒子(「SiO2」)を形成する。このプロセスは、しかしながら、(夫々の精製ステップによって除去されない場合)、有意な量の金属夾雑物、例えばナトリウムなどをシリカ粒子中に導入するという不利な点を有する。
【0006】
代替的に、例えばUS 2007/0237701 A1に開示されるとおり、テトラメトキシシラン(TMOS)またはテトラエトキシシラン(TEOS)を加水分解して、オルトケイ酸を製造し、それは次いで、重縮合されてシリカ粒子を形成することが知られている。このプロセスは、低レベルの金属夾雑物を有するシリカ粒子を製造することができるが、出発材料からの有機残渣ならびに製造プロセスにおいて有機溶媒を使用する必要性は、望ましくない有機夾雑物をシリカ粒子中に導入する。
【0007】
US 2012/0145950 A1に開示されるとおり、高純度のコロイド状シリカは、ヒュームドシリカを水酸化アルカリ金属を含む水性溶媒中に溶解し、ケイ酸アルカリを製造し、イオン交換を介してアルカリ金属を除去して、ケイ酸溶液を生成すること;ならびに、核形成および粒子成長を開始させることによって製造され得る。しかしながら、高純度のシリカ粒子を製造できる一方で、この方法は、出発材料として、その製造がただでさえ有意な量のエネルギーを消費する、ヒュームドシリカに依存する不利な点を有する。
【0008】
異なる製造プロセスおよび経路のこれらの例が示すとおり、産業において、シリカ粒子を製造するための改善された方法についての必要性がある。
よって、本出願は、シリカ粒子を製造するための改善された方法、具体的には改善された持続可能性または高純度、もしくは好ましくは、改善された持続可能性および高純度の両方を可能にする方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0009】
概要
本発明者らは、驚くべきことに、これらの目的が、本製造方法による個々または任意の組み合わせのいずれかにおいて達成され得ることを見出した。
【0010】
本出願は、したがって、シリカ粒子の製造のための方法であって、該方法が、以下のステップ:
(a)塩化ケイ素を水性溶液中で加水分解し、それによってケイ酸および塩化水素を含むゲルを製造すること、ここで、塩化ケイ素は、以下の式(1’):
【化1】
Rは、出現毎に独立して、1、2、または3個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される;ならびに、cは、出現毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される;ならびに、dは、出現毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される;ただし、c+d≦3、
で表されるものである;
(b)塩化水素の少なくとも一部をゲルから除去して、精製されたゲルを得ること;
(c)精製されたゲルのpHを少なくとも9へ調整すること;ならびに、
(d)次いでケイ酸を重縮合して、シリカ粒子を形成すること、
を含む、前記方法を提供する。
【0011】
加えて、本出願は、かかる方法によって得られるシリカ粒子を、ならびに、かかるシリカ粒子の水性分散体を含む配合物を提供する。
【0012】
詳細な記載
本出願を通して、「Me」は、メチル基(-CH3)を示すためのものであり、「Et」は、エチル基(-CH2-CH3)を示すためのものであり、「nPr」は、n-プロピル基(-CH2-CH2-CH3)を示すためのものであり、および、「iPr」は、イソ-プロピル基(-CH(CH3)2)を示すためのものである。
本出願の目的のために、用語「シリケート」は、本出願を通して「ケイ酸」とも称され得るオルトケイ酸(Si(OH)4)の塩およびエステル、ならびに、その縮合生成物を示すために使用される。ケイ酸のゲルまたは溶液は一般にケイ酸の縮合物も含むことが理解されることもまた注記される。
【0013】
本出願の目的のために、用語「シリカ粒子(単数)」および「シリカ粒子(複数)」は、好ましくは、コロイド状シリカ粒子を示すために使用される。用語「コロイド状」は、少なくとも、1つの方向において、1nmと1μmとの間の寸法を有する、媒体中に分散される粒子を示すために使用される(Compendium of Chemical Terminology, Gold Book, International Union of Pure and Applied Chemistry, Version 2.3.3, 2014-02-24, page 295)。
【0014】
一般に記述すると、本出願は、シリカ粒子の製造のための方法であって、方法が、以下のステップ:
(a)塩化ケイ素を水性溶液中で加水分解し、それによってケイ酸および塩化水素を含むゲルを製造すること;
(b)塩化物の少なくとも一部および(存在する場合)フッ化物をゲルから除去して、精製されたゲルを得ること;
(c)精製されたゲルのpHを調整すること;ならびに、
(d)次いでケイ酸を重縮合して、シリカ粒子を形成すること、
を含む、前記方法に関する。
【0015】
本方法のステップ(a)において加水分解される塩化ケイ素は、以下の式(1’):
【化2】
式中、R、cおよびdは、本明細書に定義されるとおりである、
によって表され得る。
【0016】
Rは、出現毎に独立して、1、2、または3個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される。よって、Rは、出現毎に独立して、メチル(-CH3)、エチル(-CH2-CH3)、n-プロピル(-CH2-CH2-CH3)、およびイソ-プロピル(-CH(CH3)2)からなる群から選択され得る。好ましくは、Rは、出現毎に独立して、メチルまたはエチルである。最も好ましくは、Rは、メチルである。
cは、出願毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される。
dは、出願毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される。
【0017】
cおよびdは、任意のケースにおいて、c+d≦3の規定に基づき選択される。
よって、cが0である場合、dは、0、1、2、および3からなる群から選択され得る;ならびに、cが1である場合、dは、0、1、および2からなる群から選択され得る;おならびに、cが2である場合、dは、0、または1のいずれかであり得る;ならびに、cが3である場合、dは、0である。
【0018】
好ましくは、本方法のステップ(a)において加水分解される塩化ケイ素は、以下の式(1):
【化3】
式中、Rおよびaは、本明細書に定義されるとおりである、
によって表され得る。
aは、出現毎に独立して、0、1、2、および3からなる群から選択される整数である。好ましくは、出現毎に独立して、aは、0、または1である。最も好ましくは、aは、0である。
【0019】
異なるように表現すると、ステップ(a)において加水分解される塩化ケイ素は、好ましくは、SiCl4、MeSiCl3、Me2SiCl2、Me3SiCl、EtSiCl3、Et2SiCl2、Et3SiCl、nPrSiCl3、nPr2SiCl2、nPr3SiCl、iPrSiCl3、iPr2SiCl2、iPr3SiCl、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から;より好ましくは、SiCl4、MeSiCl3、Me2SiCl2、Me3SiCl、EtSiCl3、Et2SiCl2、Et3SiCl、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から;さらによりこのましくは、SiCl4、MeSiCl3、Me2SiCl2、Me3SiCl、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から選択され得る;なおさらにより好ましくは、SiCl4またはMeSiCl3であり、ならびに、最も好ましくは、SiCl4である。
【0020】
本プロセスのための出発材料としてのSiCl4の選択は、それがシリコンウェハ製造の副産物または廃棄物産物であり、およびしたがって、高純度および有意な体積において入手可能であるため、具体的に有利である。代替的に、SiCl4はまた、還元剤、例えば炭素などの存在における塩素化によってSiO2から得ることができる。
【0021】
ステップ(a)の塩化ケイ素は、様々な種々の塩化ケイ素の混合物、例えば、上記に定義される任意の1以上の塩化ケイ素の混合物であり得ることが注記される。しかしながら、塩化ケイ素は、塩化ケイ素の総重量に対するwt%で、少なくとも90wt%において、より好ましくは95wt%において、さらにより好ましくは少なくとも97wt%において、なおさらにより好ましくは少なくとも99.0wt%において、および、最も好ましくは少なくとも99.5wt%において、これらの1のみを含むことが好ましい。
【0022】
ステップ(a)における塩化ケイ素の加水分解は、好ましくは少なくとも0℃の、例えば少なくとも5℃または10度の、より好ましくは少なくとも20℃の、さらにより好ましくは少なくとも30℃の、なおさらにより好ましくは少なくとも40℃の、および、最も好ましくは少なくとも50℃の温度で実施される。
【0023】
ステップ(a)における塩化ケイ素の加水分解は、好ましくは最大120℃の、より好ましくは最大110℃の、さらにより好ましくは最大100℃の、および、最も好ましくは最大90℃の温度で実施される。一般に、ステップ(a)における塩化ケイ素の加水分解は、大気圧下で実施される。しかしながら、ステップ(a)における塩化ケイ素の加水分解は、上がった圧力で、例えば最大10barで実施することもまた可能であり、それによって、ステップ(a)における塩化ケイ素の加水分解を、より高い温度で、例えば最大150℃で実施させることを許容する。
【0024】
ステップ(a)における塩化ケイ素の加水分解は水性媒体の温度を上昇させることによって加速され得ることがさらに注記される。しかしながら、それは有意な量のエネルギーを必要とし、それによってプロセスを持続可能ではないものにさせるため、これは商業用の製品にとって有利ではない。塩化ケイ素の加水分解は発熱性であり、よって水性媒体の温度における上昇につながり、これは別々の加熱が必要とされ得ないことを意味することもまた留意される必要がある。さらにまた、さらなるプロセスステップについて、その結果得られるゲルは冷却される必要があり、よって再度エネルギーおよび/または追加の時間を必要とする。
【0025】
ステップ(b)の開始時、水性溶液は、好ましくは少なくとも0℃の温度で、より好ましくは少なくとも10℃の温度で、または溶液がなお液体である同等に最も低い温度である。ステップ(b)の開始時、水性溶液は、最大50℃の、より好ましくは最大40℃の、さらにより好ましくは最大30℃の、および、最も好ましくは最大20℃の温度である。よって、ステップ(b)の開始時、水性溶液は、好ましくは、0℃~50℃、または0℃~40℃、または0℃~30℃、または0℃~20℃の範囲においてであり得る。
【0026】
好ましくは、ステップ(a)において、塩化ケイ素に対する、例えばSiCl4に対する水の重量比は、少なくとも5、より好ましくは少なくとも6である。好ましくは、該塩化ケイ素、例えばSiCl4に対する水の重量比は、最大20(例えば、最大19、または最大18、または最大17、または最大16)、および最も好ましくは最大15(例えば、最大14、または最大13、または最大12、または最大11、または最大10)である。よって、好ましくは、該塩化ケイ素、例えばSiCl4に対する水の重量比は、5~20の範囲において、6~20の範囲において、および最も好ましくは5~15の範囲において、または6~15の範囲においてであり得る。
【0027】
任意に、本方法のステップ(a)において製造されたケイ酸を溶解することを促進するために、溶解補助剤が水性溶液に添加されてもよい。かかる溶解補助剤は、例えば、フッ化水素(HF)であり得る。
【0028】
理論によって拘束されることは望まないが、aが1、2、および3からなる群から選択される上記に定義されるとおりの塩化ケイ素の加水分解は、最初は塩化物の加水分解を介して、これに続き縮合反応によって進行し、よってa=3の以下の方程式によって例示されるとおりのシロキサン中間体をもたらし、シロキサンは次いでケイ酸にさらに加水分解されると考えられる:
【化4】
ステップ(a)における塩化ケイ素の加水分解は、有意な量の塩化水素(HCl)を製造し、本プロセスのこれに続くステップ(b)において、その少なくとも一部はゲルから除去され、精製されたゲルを得る。
【0029】
よって、本プロセスのステップ(b)において、塩化物および(例えば、本明細書に定義されるとおりの溶解補助剤を使用する必要性に起因して、存在する場合)フッ化物の両方の総含量は、シリカ(「SiO2」)に対するppmで、好ましくは最大40,000ppmへ(例えば、最大30,000ppmへ、または最大20,000ppmへ);より好ましくは最大10,000ppmへ(例えば、最大9,000ppmへ、または最大8,000ppmへ、または最大7,000ppmへ、または最大6,000ppmへ、または最大5,000ppmへ、または最大4,000ppmへ、または最大3,000ppmへ、または最大2,000ppmへ);さらにより好ましくは最大1,000ppmへ(例えば、最大900ppmへ、または最大800ppmへ、または最大700ppmへ、または最大600ppmへ);および最も好ましくは最大500ppmへ(例えば、最大400ppmへ、または最大300ppmへ、または最大200ppmへ、または最大100ppmへ)低減される。塩化物および(存在する場合)フッ化物の最大総量はそのように製造されるシリカ粒子が使用される本出願の要件に基づき選択され得ることが注記される。
【0030】
精製されたゲルを得るための、本プロセスのステップ(b)におけるゲルからの塩化物および(存在する場合)フッ化物の少なくとも一部の除去は、任意の好適な方法によってなされてもよい。しかしながら、ステップ(b)は、ゲルを水を用いて洗浄する、すなわちゲルを水、好ましくは脱イオン水、より好ましくは超純水の添加およびこれに続く除去によって洗浄する、ステップ(b1)を含むことが好ましい。好ましくは、各洗浄は大量の水を用いてなされ、該体積は、ゲルが調製される反応体積の、好ましくは50%~200%、より好ましくは70%~150%、および、最も好ましくは80%~120%である。洗浄水およびゲルは、濾過によって、または水の少なくとも一部をゲルから蒸留することによって、再度分離され得る。達成される塩化物およびフッ化物の含量に依存して、ステップ(b1)はしばしば必要に応じて反復されてもよい。
【0031】
意図された用途および夫々の要件、例として純度に関する要件に依存して、塩化物および/または(存在する場合)フッ化物の総含量は、シリカ(「SiO2」)に対するppmで、最大500ppmの、好ましくは最大400ppmもしくは300ppmもしくは200ppmの、より好ましくは最大100ppmの、および、最も好ましくは最大50ppmの、低減された塩化物および/または(存在する場合)フッ化物の含量を達成するために、好適な方法(例えば、アニオン交換ステップ、またはマイクロ濾過膜方法もしくはナノ濾過膜方法)によって低含量へ低減され得る、
【0032】
任意に、本プロセスのステップ(b)は、ステップ(b1)に続く、ゲルをアニオン性交換体、例えばアニオン性交換樹脂と接触させて精製されたゲルを得る、ステップ(b2)をさらに含む。これは、例えば、アニオン性交換樹脂およびゲルを、好ましくはバッチ反応器における混合下で、互いに接触させることによってなされ得る。代替的に、これは、例えば、ゲルをアニオン性交換樹脂を通過させて、精製されたゲルを得ることによってなされてもよい。
【0033】
ステップ(b1)および(b2)において、または使用される方法に依存して、一般にステップ(b)において、使用される水は、脱イオン水である。
一般に実行可能であるけれども、ステップ(a)および(b)のいずれか1つの後、ケイ酸は乾燥されないことが好ましい。
【0034】
ステップ(b)に続いて、本プロセスは、精製されたゲルのpHを、好ましくは少なくとも9へ、より好ましくは少なくとも10へ、および最も好ましくは少なくとも11へ調整する、ステップ(c)を含む。
好ましくは、本プロセスのステップ(c)において、pHは、最大13へ、および好ましくは最大12へ調整される。
【0035】
好ましくは、ステップ(c)において、ゲルのpHは、塩基を精製されたゲルへ添加することによって調整される。かかる塩基は、任意の好適な塩基であってもよい。しかしながら、かかる塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、アンモニア、有機アミン、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から選択されることが好ましい。これらのうち、水酸化カリウムおよびアンモニアが、殊更好ましい。
好適な有機アミンは、アルキルアミン、アルカノールアミン、および、これらの任意のブレンドからなる群から選択され得、アルカノールアミンが好ましい。
【0036】
好適なアルキルアミンの例は、以下の式(2):
【化5】
式中、bは、出現毎に独立して、1、2、および3からなる群から選択される整数である;ならびに、R
1は、1、2、または3個の炭素原子を有するアルキル基である、
によって表され得る。好ましいアルキルアミンは、メチルアミン(H
2NMe)、ジメチルアミン(HNMe
2)、トリメチルアミン(NMe
3)、エチルアミン(H
2NEt)、ジエチルアミン(HNEt
2)、トリエチルアミン(NEt
3)、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から選択され得る。
【0037】
好適なアルカノールアミンの例は、以下の式(3):
【化6】
式中、R
2は、出現毎に独立して、少なくとも1個および最大5個の炭素原子を有するアルカンジイルである、
によって表され得る。よって、R
2は、出現毎に独立して、メチレン(-CH
2-)、エタンジイル(-CH
2-CH
2-)、プロパンジイル(-(CH
2-)
3)、ブタンジイル(-(CH
2-)
4)、およびプロパンジイル(-(CH
2-)
5)からなる群から選択され得る。
好ましいアルカノールアミンは、2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、および4-アミノブタノールからなる群から選択され得、2-アミノエタノールが最も好ましい。
【0038】
添加される塩基のタイプに依存して、本方法は、有利なことに、低微量金属含量もしくは低有機残渣含量または両方によって特徴付けられるシリカ粒子を製造することを可能にする。例えば、水酸化カリウムとは異なる塩基を選択することは、低カリウム含量および/または低有機残渣含量および水酸化カリウム中に存在する他の微量金属夾雑物を有するシリカ粒子の製造を可能にする。好ましく選択され得る、水酸化カリウムとは異なる塩基の例は、アンモニアである。よって、ステップ(c)における塩基の選択は、目標とされた本出願の要件に依存してなされ得る。塩基のブレンドはまた、本出願の要件に依存して、および、異なる塩基中に典型的に存在する微量金属夾雑物を最小化しながら所望される効果を達成するために、好ましくあり得る。
【0039】
ステップ(c)の後、精製されたケイ酸は、重縮合されてシリカ粒子を形成する。かかる重縮合は、以下の一般化された反応スキーム(I):
【化7】
によって表され得る。
任意に、ステップ(d)において、所謂シード粒子が導入されてもよく、次いでその上に、ケイ酸が重縮合されてシリカ粒子を形成する。代替的に、シリカ粒子の形成は「in situ」、すなわちシード粒子を導入することなく直接的に精製されたシリカ粒子から開始され得る。
【0040】
本プロセスに従って製造されるシリカ粒子の形状および寸法は、かかる粒子が意図された用途に好適であることを条件として、具体的に限定されない。それらは、球状の場合、少なくとも2nmおよび最大200nmの平均直径を有する。かかるシリカ粒子は、例えば、球状、楕円状、曲線状、湾曲状、細長い形状、分枝状または繭の形状であり得る。細長い形状または楕円状のシリカ粒子は、少なくとも1.1のアスペクト比を有し得る。シリカ粒子の形状および寸法は、意図された用途に依存し得、およびまた、異なる寸法および/またはサイズのシリカ粒子を包含し得る。
【0041】
球状のシリカ粒子について、平均直径は、好ましくは少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nm、および最も好ましくは少なくとも15nmである。球状の粒子について、平均直径は、好ましくは最大200nm、より好ましくは最大150nmまたは100nm、さらにより好ましくは最大90nmまたは80nmまたは70nmまたは60nm、なおさらにより好ましくは最大50nmまたは45nmまたは40nmまたは35nmまたは30nm、および、最も好ましくは最大25nmである。例えば、殊更好ましいシリカ粒子は、少なくとも15nmおよび最大25nmの平均直径を有する。
【0042】
細長い形状、曲線状、湾曲状、分枝状、および楕円状のシリカ粒子について、それらの平均直径は、好ましくは、球状のコロイド状シリカ粒子について上記に記載されるとおりである。好ましくは、かかる細長い形状または楕円状のコロイド状シリカ粒子は、少なくとも1.1の、より好ましくはなくとも1.2または1.3または1.4または1,5、さらにより好ましくは少なくとも1.6または1.7または1.8または1.9、および最も好ましくは少なくとも2.0のアスペクト比、すなわち平均直径に対する長さの比率を有する。該アスペクト比は、好ましくは最大10、より好ましくは最大9または8または7または6、および最も好ましくは最大5である。
【0043】
本方法に従って製造されるシリカ粒子は組成物中に含まれていてもよく、組成物は水をさらに含む。よって、かかる組成物は、本シリカ粒子および水を含む。好ましくは、水は、脱イオン水である。
かかる組成物は濃縮物として提供されてもよく、それは次いで、意図された用途におけるその使用に先立ち、水、好ましくは脱イオン水で希釈されてもよい。かかる濃縮物は、本シリカ粒子を、本組成物または濃縮物の総重量に対するwt%で、最大20wt%までにおいて、好ましくは最大25wt%までにおいて、より好ましくは最大30wt%までにおいて、さらにより好ましくは最大35wt%までにおいて、なおさらにより好ましくは最大40wt%までにおいて、および、最も好ましくは最大50wt%までにおいて含んでもよい。
【0044】
代替的に、ユースポイントで、例えば化学的機械的研磨プロセスにおいて使用されるとき、本組成物は、好ましくは、本組成物の総重量に対するwt%で、修飾されたシリカ粒子を、少なくとも0.1wt%において(例えば、少なくとも0.2wt%または0.3wt%または0.4wt%において)、より好ましくは少なくとも0.5wt%において、さらにより好ましくは少なくとも1.0wt%において、なおさらにより好ましくは少なくとも1.5wt%において、および、最も好ましくは少なくとも2.0wt%において含む。このケースにおいて、本組成物は、好ましくは、本組成物の総重量に対するwt%で、本シリカ粒子を、最大40wt%において、より好ましくは最大30wt%において、さらにより好ましくは最大20wt%において、なおさらにより好ましくは最大15wt%において、および、最も好ましくは最大10wt%において含む。ユースポイントにおける本組成物のシリカ粒子の濃度または量は、意図された用途ならびに実施要件に依存してもよい。ユースポイントにおける本組成物のシリカ粒子の濃度または量は、本組成物または濃縮物を好ましくは脱イオン水で希釈することにより容易に改変されてもよい。
【0045】
任意に、本組成物は、殺生物剤、pH調整剤、pH緩衝剤、酸化剤、キレート剤、腐食抑制剤、界面活性剤、および、意図された用途によって必要とされるとおりの性能を達成または改変するために必要とされ得る任意の他の添加剤からなる群の任意の1以上をさらに含む。
【0046】
かかる酸化剤は、本組成物を使用して研磨される基板の1以上の金属または金属合金に任意の好適な酸化剤であり得る。例えば、酸化剤は、臭素酸塩、亜臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、過酸化水素、次亜塩素酸塩、ヨウ素酸塩、モノペルオキシ硫酸塩、モノペルオキシ亜硫酸塩、モノペルオキシリン酸塩、モノペルオキシ次亜リン酸塩、モノペルオキシピロリン酸塩、有機-ハロ-オキシ化合物、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、ペルオキシ酢酸、硝酸鉄、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から選択されてもよい。かかる酸化剤は、ユースポイントにおける本組成物の総重量に対するwt%で、好適な量において、例えば、0.1wt%および最大6.0wt%において、本組成物へ添加されてもよい。
【0047】
例えばフィルム形成剤であり得るかかる腐食抑制剤は、任意の好適な腐食抑制剤であり得る。例えば、腐食抑制剤は、グリシンであってもよく、それは、ユースポイントにおける本組成物の総重量に対するwt%で、少なくとも0.001wt%~3.0wt%の量において添加されてもよい。
【0048】
かかるキレート剤は、除去される夫々の材料、好ましくは金属もしくは金属合金の除去率を増加させるため、または研磨プロセスにおいてもしくは完成したデバイスにおいて好ましくない性能を与え得る微量金属夾雑物を捕捉するために、代替的にまたは組み合わせにおいて、任意の好適なキレート剤または錯化剤であり得る。例えば、キレート剤は、酸素を含む1以上の官能基(例えば、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基など)または窒素を含む1以上の官能基(例えば、アミン基または硝酸塩など)を含む化合物であり得る。好適なキレート剤の例は、非限定的に、アセチルアセトナート、酢酸塩、アリールカルボン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、没食子酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸およびそれらの塩、エチレングリコール、ピロガロール、ホスホン酸塩、アンモニア、アミノアルコール、ジ-およびトリ-アミン、硝酸塩(例として、硝酸鉄)、および、任意のこれらの任意のブレンドを包含する。
【0049】
かかる殺生物剤は、任意の好適な殺生物剤から選択され得る。好適な殺生物剤の例として、イソチアゾリン誘導体を含む殺生物剤への言及がなされ得る。かかる殺生物剤は、ユースポイントにおける本組成物の総重量に対するppmで、少なくとも1ppmおよび最大100ppmの活性化合物の量において一般に添加される。添加される殺生物剤の量は、例えば、組成物および予定される保管期間に依存して適合されてもよい。
【0050】
かかるpH調整剤は、必要に応じて選択されてもよく、および、任意に好適な酸または塩基であり得る。好適な酸は、例えば、非限定的に、塩酸、硝酸または硫酸からなる群から選択されてもよく、硝酸または硫酸が好ましく、および、硝酸が殊更好ましい。好適な塩基は、例えば、上記に定義されるとおりのアルカリ金属水酸化物、アンモニア、有機アミン、および、任意のこれらの任意のブレンドからなる群から選択され得る。アルカリ金属水酸化物について、アルカリ金属は、Li、Na、K、およびCsからなる群から、好ましくはLi、Na、およびKからなる群から選択され得る;および、最も好ましくは、アルカリ金属は、Kである。
【0051】
かかる界面活性剤は、任意の好適な界面活性剤、例えば、カチオン性、アニオン性、および、非イオン性の界面活性剤から選択され得る。殊更好ましい例は、エチレンジアミンポリオキシエチレン界面活性剤である。一般に、界面活性剤は、ユースポイントにおける本組成物の総重量に対するwt%で、100ppm~1wt%の量において添加され得る。
【0052】
これらの化合物のいくつかは、金属塩などの塩、酸の形態において、または部分的な塩として存在してもよい。同様に、これらの化合物のいくつかは、化学的機械的研磨に好適な組成物中に含まれる場合、1より多くの機能を満たしてもよい。例えば、硝酸鉄、具体的にはFe(NO3)3は、キレート剤および/または酸化剤および/または触媒剤として作用し得る。
【0053】
本明細書に定義されるとおりのかかる組成物は、当業者に周知である標準的な方法によって調製され得る。一般に、かかる調製物は、混合相および攪拌相を含む。連続的な様式またはバッチ式のいずれかにおいて実施され得る。
【0054】
本方法によって製造されるシリカ粒子ならびにかかるシリカ粒子を含む組成物は、従来の湿潤製造プロセスによるケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムを介して製造されるシリカのとおり、任意の用途において使用されてもよい。よって、本方法によって製造されるシリカ粒子は、ほんの一例を挙げれば、例えば、砥粒として、紙作製におけるおよび紙自体における添加剤として、触媒支持体として、薬物担体として、コーティングまたは塗料において、使用されてもよい。
【0055】
好ましくは、本シリカ粒子ならびにかかるシリカ粒子を含む組成物は、導電性層、半導電性層、および、誘電性(絶縁性)層(誘電性層は、互いの導電性層を絶縁する)の交互に重なった層(alternating layer)を含む、最新の半導体デバイス、メモリデバイス、集積回路等において使用され得る。導電性層間の接続は、例えば、金属ビアによって、確立され得る。かかるデバイスの製造において、導電性、半導電性、および/または、誘電性材料は、半導電性ウェハの表面上に連続的に堆積され、および、半導電性ウェハの表面から部分的に再度除去される。
【0056】
化学的機械的研磨(CMP)は、半導体デバイス等を製造するプロセスにおいて層の一部またはすべてを平坦化させるかまたは部分的に除去するために幅広く使用される方法である。CMPプロセスにおいて、砥粒および/または腐食性の化学的なスラリー、例えば、シリカ粒子のスラリーなどが、研磨パッドと一緒に使用される。パッドおよび基板または表面、例としてウェハは、一緒にプレスされ、および一般に非同心円状に、すなわち異なる回転軸をもって回転され、それによって表面または基板を研磨し、および、表面または基板から材料を除去する。
【0057】
CMPは、広範な材料、例えば、金属または金属合金(例えば、アルミニウム、銅、またはタングステンなど)、金属酸化物、二酸化ケイ素、またはさらにポリマー材料などを研磨するために使用され得る。各材料について、研磨スラリーは、その性能を最適化させるために特異的に配合される必要がある。例えば、二酸化ケイ素層に堆積されているタングステン層が研磨される場合、研磨スラリーは、タングステンを効率的に除去するが、二酸化ケイ素層の大部分は無傷とするために、好ましくは、タングステンについての高い除去率を有するが、二酸化ケイ素については低い除去率を有する。
【0058】
さらに、研磨は好ましくは機械的研磨および化学的腐食の組み合わせによってなされるため、シリカ粒子は、配合物に完全に適合するために所定の要件を満たす必要がある。例えば、シリカ粒子の組成物は、シリカ粒子がアニオン性またはカチオン性であるかどうかに依存して改変される必要がある。
【0059】
本明細書に記載されるとおりの組成物は、好ましくは化学的機械的研磨(CMP)プロセスであって、基板が研磨されるものにおいて使用され得る。化学的機械的研磨のための本方法は、したがって、以下のステップ:
(A)研磨される基板を提供すること;および
(B)本明細書に定義されるとおりの組成物を提供すること、
を含む。
【0060】
CMPプロセスにおいて、研磨表面を有する研磨パッドが基板の実際の研磨のために使用される。かかる研磨パッドは、例えば、織られたまたは不織の研磨パッドであり得、および、好適なポリマーを含むかまたは本質的に好適なポリマーからなる。例示のポリマーは、ほんの一例を挙げれば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、ポリ-プロピレン、ポリウレタン、および、これらの任意のブレンドを包含する。研磨パッドおよび研磨される基板は、一般に研磨装置上に設置され、一緒にプレスされ、および一般に非同心円状に、すなわち異なる回転軸をもって回転され、それによって表面または基板を研磨し、および、表面または基板から材料を除去する。よって、本CMPプロセスは、以下のステップ:
(C)研磨表面を有する化学的機械的研磨パッドを提供すること;
(D)化学的機械的研磨パッドの研磨表面を基板に接触させること;および
(E)基板の少なくとも一部が除去されるように基板を研磨すること、
をさらに含む。
【0061】
本CMPプロセスは、フラットパネルディスプレー、集積回路(IC)、メモリまたはリジッドディスク、金属、層間絶縁デバイス(ILD)、半導体、微小電気機械的システム、強誘電体、および、磁気ヘッドの製造において適用され得る。換言すれば、本CMPプロセスにおいて研磨される基板は、フラットパネルディスプレー、集積回路(IC)、メモリまたはリジッドディスク、金属、層間絶縁デバイス(ILD)、半導体、微小電気機械的システム、強誘電体、および、磁気ヘッドからなる群から選択され得る。
【0062】
本出願の実施および利点は、非限定的な例示において、以下の例と共に例示される。
【0063】
例
以下の例において使用される材料のすべては、市販のものである。99.0%+純度における塩化ケイ素(IV)をMerck KGaA, Darmstadt, Germanyの子会社であるSigmaAldrichから、または、99.8%+純度における塩化ケイ素(IV)をThermo Fisher ScientificのブランドであるAcros Organicsから入手した。水は、Merck KGaA, Darmstadt, Germanyから入手可能であるMilli-Q(登録商標)水精製システムを用いて調製し、超純水として使用した。
使用したカチオン交換樹脂は、Rohm andHaas Company, Philadelphia、Pennsylvania、USAによって供給されている、AMBERJET(商標)1200 Hであった。
【0064】
例1
800mlの超純水を、室温にて、1.5l丸底フラスコに提供した。次いで、117.5gのSiCl4を100mlプラスチックシリンジ中に取り込み、ここから攪拌下で約5分の期間を超えて超純水中に導入し、フラスコ内部の水性反応混合物の温度の、約57℃への上昇がもたらされた。続いて、水性反応混合物を攪拌せずに約30分間落ち着かせるようにし、その時間の間にゲルが形成された。その後、ゲルを含む水性反応混合物をWhatman濾紙0965を使用するブフナー漏斗中で濾過し、854mlの濾過物が生産された。
【0065】
ブフナー漏斗中で保持されるゲルを800mlの超純水を用いて室温で洗浄し、ビーカーに移し、その中で36mlの水酸化カリウム溶液(45.65wt%)を用いて、70℃で、攪拌しながら1.5時間処置し、10wt%SiO2(ケイ酸カリウム溶液の総重量に対するwt%で)および2.23のK2Oに対するSiO2の重量比を有するケイ酸カリウム溶液(415g理論収率)が生産された。
【0066】
例2
次いで、上記の例1において得られたケイ酸の溶液を使用して、9nmの直径を有するシリカ粒子を調製することができる。2.8lの体積を有するステンレス鋼反応器をまず、およそ450mlの脱イオン水で、次いでおよそ5.6wt%(水性のケイ酸溶液の重量に対して)のシリカ濃度および2.75のpHを有する1155gの水性ケイ酸溶液で満たす。これへ、(上記の例1において得られた対応する体積のケイ酸溶液へのKOHの添加、これに続き所望される体積への蒸発を通じた濃縮によって得られる)およそ5.8gのシリカおよびSiO2/K2O=0.953の重量比を含む、およそ29gの水性ケイ酸カリウム溶液を、攪拌しながら添加する。その結果得られる反応媒体を加熱して煮沸し、およそ5.6wt%(水性ケイ酸溶液の重量に対して)のシリカ濃度および2.75のpHを有するさらなる2240gの水性ケイ酸溶液をおよそ8g/minの速度にて添加しながら、煮沸を維持する。一旦水性ケイ酸溶液の添加が完了したら、いくらかの時間、例えば0.5時間、加熱を継続してもよく、次いで停止し、反応媒体を冷却するようにする。その結果得られる水性(コロイド状)シリカ組成物は、およそ1.13g/cm3の特定の密度、シリカについておよそ300m2/gの表面面積、およそ10.3のpH、およそ19wt%(シリカ組成物の総重量に対して)のシリカ含量、およびおよそ2mPasの粘度を有することが期待される。
【0067】
例3
例2の手順を適用して、ほぼ40nmの直径を有するシリカ粒子を製造し、下記の表1に指し示されるとおりの粒子直径を測定した。
【0068】
例4-研磨
化学的機械的研磨を、従来の「湿潤」プロセスによって製造された比較のシリカ粒子(S-4aと示す)、すなわち本出願のプロセスに従わずに製造された市販のシリカ粒子、ならびに、本出願に従う例3において上記に記載されるとおりに製造されたシリカ粒子(S-4およびS-4cと示す)の水性組成物を用いて実施した。水性組成物の特性は、夫々の水性組成物の総重量に対するwt%で、表1に指し示されるとおりであった。研磨において使用される前に、水性組成物を濾過した(0.3μm)。
【0069】
【表1】
指し示される粒子直径は、動的光散乱(DLS)によって決定されるz-平均粒子サイズである。
【0070】
次いで、化学的機械的研磨を、4インチTEOS(酸化ケイ素)ウェハに対して、IC1000(商標) CMP研磨パッド(DuPont de Nemours、Wilmington、Delaware、USAから入手可能)を使用して、Bruker CP-4 system(Bruker Corporation、Billerica、Massachusetts、USAから入手可能)上で実施した。さらなる研磨条件は、以下の表2に指し示されるとおりであった。
【表2】
【0071】
化学的機械的研磨についての結果は、下記の表3に示されるとおりであり、PC-1は比較例であった。
【表3】
【0072】
本出願の方法に従って製造されたシリカ粒子S-4bおよびS-4cの研磨性能は、本出願の方法に従わずに製造されたが同様の物理的特性のシリカ粒子と比較して有意に増大した除去速度によっても分かるとおり、さらに(期待に反して)改善された。
【0073】
一般に、シリカ粒子の製造についての本方法は、従来の「湿潤」プロセス、すなわちケイ酸ナトリウムがイオン交換プロセスを使用してオルトケイ酸へ変換されるプロセスによって製造されたシリカ粒子より低いレベルの金属夾雑物を有するシリカ粒子を製造することを可能にする利点を提供する。さらにまた、およびこれは大きな驚きであるが、本プロセスに従って製造されるシリカ粒子は、従来の「湿潤」プロセスによって製造されるシリカ粒子と比較して改善された研磨性能をさらに有する。したがって、本方法を用いて製造されるシリカ粒子は、例えば、半導体産業において、化学的機械的研磨プロセスにおける使用に極めて十分に好適であると考えられる。
【国際調査報告】