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特表2024-530853金属化溶液のホウ酸分析およびプロセス制御の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】金属化溶液のホウ酸分析およびプロセス制御の方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/16 20060101AFI20240820BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01N31/16 Z
G01N31/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572583
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022039271
(87)【国際公開番号】W WO2023014786
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/228,894
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/857,600
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン ワン
(72)【発明者】
【氏名】サイッタ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シャリト ユージーン
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BB15
2G042CB03
2G042DA06
2G042FA01
2G042FA02
2G042FA06
2G042FB03
(57)【要約】
処理溶液中のホウ酸濃度の選択的測定およびモニタリングのための技術が提供される。方法は、電位差滴定において、加水分解イオン、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)酸塩と反応する錯化剤の使用を含む。このような方法では、処理液中のホウ酸濃度を正確に測定し、モニタリングすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理溶液中のホウ酸の濃度を測定する方法であって、
前記処理溶液に錯化剤を添加するステップと、
電位差滴定を行って前記ホウ酸の濃度を決定するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記処理溶液は、半導体処理溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理溶液は、ニッケル、コバルト、鉄、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるめっき金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理溶液は、ニッケルを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理溶液は、鉄を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記処理溶液は、ニッケルおよび鉄を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記処理溶液は、ニッケル、コバルト、または鉄以外の1つ以上の追加の金属を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記錯化剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸、アミノポリカルボン酸、ニトリロ三酢酸、イミノジコハク酸、ポリアスパラギン酸、S,S-エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、メチルグリシンジ酢酸、L-グルタミン酸、N,N-ジ酢酸、それらの塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記錯化剤は、アミノポリカルボン酸またはその塩であり、アミノポリカルボン酸は、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、エチレングリコール-ビス(P-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-テトラ酢酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電位差滴定は、第1の平衡に達するまでアルカリ溶液で滴定することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ溶液は、水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の平衡に達した後、処理溶液にポリオールを添加し、第2の平衡に達するまで水酸化ナトリウムで滴定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオールは、マンニトールであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ホウ酸濃度は、第1の平衡に達するために使用されたアルカリ溶液の量と第2の平衡に達するために使用されたアルカリ溶液の量との差に基づいて決定されるステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理溶液、例えば半導体処理溶液の分析およびプロセス制御に関し、より詳細には、そのような処理溶液中のホウ酸濃度の選択的測定およびモニタリングのための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の参照
本出願は、米国仮特許出願63/228,894号(2021年8月3日)に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
処理溶液は、所望の特性を有する製品を製造するために、半導体産業を含むいくつかの産業で使用されている。そのような処理溶液は、ホウ酸またはホウ素およびその化合物を含むことができ、その分析的決定は、そのようなホウ素化合物の測定、監視および制御が必要とされる、合金電気/無電解めっき、冶金、化学、製薬、および他の産業において有用であり得る。ホウ酸は、例えば、クロマトグラフィー、分光光度法、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)、および滴定法などを含むいくつかの方法を用いて定量することができる。チトリメティック法は、水性サンプル中のホウ酸濃度をモニタリングする際に広く使用され、正確で、効率的で、比較的迅速で、経済的で、広い測定範囲を有する方法を提供する。方法は、サンプルをポリオール(例えば、マンニトール)と混合し、得られたマンノホウ酸をアルカリ溶液で滴定することを含む。滴定終点は、例えばガラス電極によって電位差測定で検出することができる。
【0004】
ホウ酸以外のさらなる酸および/または塩基を含む錯化処理溶液サンプルでは、マトリックス干渉を低減または最小限に抑えるために、ポリオール(例えば、マンニトール)を添加する前に初期pH調整を行うことができる。この方法は、2つの別々の滴定試行を有することができ、第1の滴定においてpH値が設定点に達することができることを確実にするためにアルカリを使用する。第2の滴定では、ポリオール(例えば、マンニトール)を添加してホウ酸と反応させ、pHを低下させ、続いて所定のpH値に達するまでアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム(NaOH))で再滴定することができる。ホウ酸濃度は、2つの滴定手順において消費されるアルカリの相違に基づいて計算することができる。加水分解することができるイオン(例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)めっきである)を用いた金属合金めっきプロセスにおけるホウ酸濃度の正確な決定のために、既存の滴定法は滴定終点を正確に検出することができない。例えば、水酸化鉄(Fe(OH)2)の沈殿は、滴定の終わり付近で観察することができる。特定の方法は、滴定が2回の別々の試行(例えば、マンニトールを添加したものおよび添加しないもの)であり、ホウ酸含有量が、所定の電位における滴定終了体積を比較することによって計算されるので、ホウ酸濃度の決定のための正確な結果を提供しない。
【0005】
あるいは、滴定は、マンニトールの添加前に同じ電位に達するように第2の滴定終了体積によって計算されたホウ酸含有量を用いて、1回の試行において2液滴定で実施することができる(例えば、第1の滴定後のマンニトールの添加)。したがって、電位差滴定における正確な終点検出を可能にするために、これらのイオンを錯化によって隔離することができる。錯化化合物は、酸または塩基として作用する場合、滴定を妨害し得る。
【0006】
ある特定の方法は、鉱物(例えば、アッシュアライト)を濾過して、より高い純度のホウ酸を生成するときに、サンプルをそのホウ酸含有量レベルについて分析する状況において、ある特定の金属イオンを錯化除去することに関する。さらに、このような濾液に対して実施される滴定は比色定量であり得、電位差定量ではない。加えて、錯化剤は、ニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金の競技状況において使用することができるが、ホウ酸濃度を正確に測定するのではなく、めっきされた金属/合金をもたらす特定の所望の特性を達成するために使用することができる。他の方法は、例えば、ホウ酸を安定化するため、またはホウ素-シレックスガラス形成を防止するために、ホウ酸に添加剤(例えば、エタノールアミン(MEA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))を提供することを含む。また、比色定量的に滴定される系において溶液中のスルホネートの分解を防止するために、重金属イオンを隔離する特定の方法において、より複雑な添加剤を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0063564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、処理溶液中のホウ酸濃度の正確な選択的測定およびモニタリングのための経済的、効率的、比較的迅速かつ広い測定範囲を提供するためのプロセスおよび装置を提供することが望ましい。例えば、これは、ホウ酸含有量の電位差滴定を行ってその濃度を決定する場合に当てはまり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ホウ酸測定中にキレート配位子で鉄イオンおよび鉄イオンを隔離するためのある種の方法が、例えば、改善された測定のためにニッケル(Ni)めっき溶液中で必要とされる。本開示は、半導体処理溶液などの処理溶液中のホウ酸の選択的測定およびモニタリングのための技術を提供することによって、これらおよび他の必要性に対処する。本開示の技術は、溶液中のホウ酸の選択的かつ正確な測定およびモニタリングを提供するための錯化剤の使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】処理溶液のホウ酸分析のための本開示の例示的な装置を概略的に示す図である。
図2】電位(mV)対滴定剤添加体積(mL)におけるホウ酸の滴定の結果を、2回の試験について、すなわち、実施例2によるマンニトール錯化試薬の添加の有無について示す。
図3】1回の試験、すなわち実施例3による第1の滴定変曲後のマンニトールの添加についての電位(mV)対滴定添加体積(mL)におけるホウ酸の滴定の結果を示す。
図4】実施例4による錯化試薬の使用の有無についての電位(mV)対滴定剤添加体積(mL)のホウ酸滴定比較の結果を示す。
図5】実施例5による錯化剤を含むサンプルおよび含まないサンプルについての、勾配におけるホウ酸濃度対滴定剤添加体積(mL)の結果を示す。
図6】実施例5による、勾配におけるホウ酸濃度対滴定剤添加体積(mL)の結果を示す。
図7】実施例5に従って滴定の第1ピークの位置によって調整されたX軸スケール(すなわち、滴定剤添加体積(mL))による、勾配におけるホウ酸濃度対滴定剤添加体積(mL)の結果を示す。
図8】実施例5による、Y軸としてのpHにおけるホウ酸濃度対X軸としての滴定剤添加体積(mL)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、半導体処理溶液などの処理溶液中のホウ酸の選択的測定およびモニタリングのための技術を提供する。特定の態様では、本開示の技術は、水性環境で加水分解するイオンを含む処理溶液中のホウ酸濃度分析のための広い測定範囲を有する正確で迅速かつ効率的な方法を提供することができる。特定の実施形態では、本開示の方法は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、および鉄(Fe)めっきなどの金属合金めっき浴におけるホウ酸のプロセス制御を助けることができる。
【0012】
そのような方法は、電位差滴定において加水分解イオン、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)酸塩と反応することができる錯化剤の使用を含む。
【0013】
本開示で使用される技術用語は、当業者に一般に知られている。本明細書で使用される「所定の濃度」という語句は、溶液中の成分の既知の、目標の、または最適な濃度を指す。本明細書で使用される場合、「選択的」または「選択的に」という用語は、例えば、特定のまたは特定の成分の特徴の特定のモニタリング、測定、または決定を指す。例えば、ハロゲン化物イオンの選択的測定は、溶液中に存在する複数のハロゲン化物イオンからの1つの特定のまたは所定のターゲットハロゲン化物イオンの測定を指す。本明細書で使用される場合、「正確な」または「正確に」という用語は、例えば、既存のもしくは真の値、標準、または既知の測定値もしくは値に比較的近いか、またはそれに近い測定値または決定を指す。特定の実施形態では、測定または決定誤差は5%未満であり、および/または相対標準偏差(RSD)は2%未満である。本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し、これは、その値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、所与の値の最大20%、最大10%、最大5%、および/または最大1%の範囲を意味し得る。
【0014】
本開示の方法は、処理溶液を含む様々な種類の溶液に適用することができる。ある実施形態では、処理溶液は半導体処理溶液であり得る。
【0015】
ある実施形態では、処理溶液は、ホウ酸またはホウ素およびその化合物を含むことができる。当業者は、ホウ酸またはホウ素の形態およびその化合物の広範な変形が本開示での使用に適していることを理解するであろう。特定の実施形態では、処理溶液はホウ酸を含むことができる。
【0016】
ある実施形態では、処理溶液は、例えば、めっき金属等の1つ以上の金属を含むことができる。当業者は、めっき金属の広範な組み合わせが、本開示との使用に好適であることを理解するであろう。ある実施形態では、1つ以上のめっき金属は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、またはそれらの組み合わせを含むことができる。ある実施形態では、1つ以上のめっき金属は、ニッケル(Ni)を含むことができる。ある実施形態では、1つ以上のめっき金属は、鉄(Fe)を含むことができる。ある実施形態では、1つ以上のめっき金属は、ニッケル(Ni)および鉄(Fe)を含むことができる。いくつかの態様では、処理溶液は、1つまたは複数の追加の金属を含むことができる。特定の実施形態では、本明細書を通して、処理溶液は、「めっき溶液」または「金属化溶液」と呼ばれる。
【0017】
本開示の方法は、例えば、処理溶液中のホウ酸濃度を選択的に測定および監視するための技術を提供する。このような方法は、電位差滴定において、限定されないが、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)塩などの加水分解イオンと反応する錯化剤の使用を含む。ある特定の実施形態では、錯化剤は、多座金属キレート剤、例えば、アミノポリカルボン酸およびそれらの塩(EDTA、DTPA、EGTAおよびそれらの塩)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジコハク酸(IDS)、ポリアスパラギン酸、S,S-エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)を含むが、これらに限定されない錯化試薬を含むことができる。およびL-グルタミン酸N,N-ジ酢酸、テトラナトリウム塩(GLDA)、またはこれらの組み合わせ。本明細書を通して、当業者によって容易に理解されるように、錯化試薬は、キレート剤、キレート剤または錯化剤とも呼ばれる。特定の実施形態では、合金めっき溶液(例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、または鉄(Fe)めっきサンプルである)を錯化試薬と組み合わせることができる。混合物は、第1の平衡に達するまで、例えば水酸化ナトリウム(NaOFI)で滴定することができる。特定の実施形態では、ポリオール(例えば、マンニトール)を溶液に添加することができる。滴定は、第2の平衡に達するまで継続することができる。ある実施形態では、処理溶液のホウ酸イオン濃度は、以下のように決定することができる。鉄などの金属めっきを含むサンプルでは、錯化剤を使用して、例えば滴定曲線の形態を改善することができる。そのような滴定曲線は、例えば、本開示の実施例に記載されるように、サンプルのホウ酸濃度を決定するために利用することができる。図1は、金属化溶液111中のホウ酸の濃度を決定するための本開示の例示的な装置10を概略的に示す。装置10は、試験溶液102を含有する分析セル101を含むことができる。分析セル101は、例えば、電極のためのフィードスルーを伴う開放ビーカーまたは閉鎖セルを含む、任意の好適な形状であることができ、例えば、任意の好適な材料、ガラスまたはポリオレフィンプラスチックを含んでもよい。試験溶液102は、所定の体積の金属化溶液111を含むことができる。特定の実施形態では、試験溶液102は、所定の体積の錯化剤および/またはキレート剤131(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)酸塩)を含むことができる。試験溶液102は、所定量のポリオール試薬(例えば、マンニトール)171をさらに含むことができる。特定の態様では、ポリオール試薬は、試験溶液102中のホウ酸と反応して強酸を形成することができる。
【0018】
装置10は、サンプル容器112に収容された所定の体積の金属化溶液111を試験溶液102に提供するための導入器110を含むことができる;容器132に収容された所定の体積の錯化剤および/またはキレート剤131を試験溶液102に提供するための導入器130と、そして、容器172に収容された所定量のポリオール試薬171を試験液102に供給するための導入部170を備える。ある実施形態では、容器112、132、172のうちの1つ以上は、分析セル101に流体的に連結され、所定の体積の金属化溶液111、錯化剤および/またはキレート剤131、ならびにポリオール試薬171をそれぞれ試験溶液102に受容するように適合される、貯留部を含むことができる。
【0019】
分析セル101内の試験溶液102にサンプル容器112に収容された所定体積の金属化溶液111を供給するのに適した導入器110は、例えば手動送達用のシリンジ、メスフラスコ、またはメスシリンダー、または自動送達用の自動シリンジ、または例えば自動送達用の関連配管および配線を有する計量ポンプを含むことができる。所定の体積のメタライゼーション溶液111の送達は、自動レベルセンサによって検出されるプリセットレベルまで行うこともできる。サンプル容器112は、生産タンクまたはサンプルリザーバであり得る。メタライゼーション溶液111の自動送達のために、導入器110は、例えば、サンプル容器112と分析セル101との間に延びるパイプ113に接続することができる。
【0020】
所定量のキレート剤および/またはキレート剤131を容器132から分析セル101内の試験溶液102に提供するための適切な導入器130は、例えば手動送達用のシリンジ、メスフラスコ、またはメスシリンダー、あるいは例えば自動送達用の関連配管および配線を有する自動シリンジまたは定量ポンプを含むことができる。所定量のキレート剤および/またはキレート剤131の送達はまた、自動レベルセンサによって検出されるプリセットレベルまで実施することができる。容器132はリザーバとすることができる。キレート剤および/またはキレート剤131の自動送達のために、導入器130は、例えば、試薬貯留部132と分析セル101との間に延在するパイプ133に接続することができる。
【0021】
容器172に含まれる所定量のポリオール試薬171を分析セル101内の試験溶液102に提供するのに適した導入器170は、例えば手動送達用のシリンジ、メスフラスコ、もしくはメスシリンダー、または例えば自動送達用の関連配管および配線を有する自動シリンジもしくは定量ポンプを含むことができる。所定量のポリオール試薬171の送達は、自動レベルセンサによって検出されるプリセットレベルまで行うこともできる。容器172はリザーバとすることができる。ポリオール試薬171の自動送達のために、導入器170は、例えば、容器172と分析セル101との間に延びるパイプ173に接続することができる。
【0022】
装置10は、試験溶液102の滴定をさらに提供することができる。ある特定の実施形態では、装置10は、塩基滴定剤(例えば、水酸化ナトリウム(NaOH))を試験溶液102に送達するための1つまたは複数のデバイスをさらに含むことができる。ある実施形態では、装置10は、酸(例えば、塩酸(HCl))および/または水を試験溶液102に送達するための1つ以上のデバイスをさらに含むことができる。限定ではなく例として、装置10は、水貯留部122から分析セル101への水121の定量流を提供するように動作可能な1つ以上の希釈デバイスを含むことができる。水121の自動送達のために、1つ以上の希釈デバイスは、例えば、水貯留部122と分析セル101との間に延在する1つ以上のパイプ123に接続することができる。ある実施形態では、装置10は、分析セル101に連結される希釈デバイス120を含むことができる。希釈デバイス120は、例えば手動送達用のシリンジ、メスフラスコ、もしくはメスシリンダー、または例えば自動送達用の関連配管および配線を有する自動シリンジもしくは定量ポンプを含むことができる。コンピューティングデバイスまたはマイクロプロセッサ151は、希釈デバイス120を制御するように動作することができる。さらなる検出器140を設けて、試験溶液102の滴定の終点を検出することができる。例えば、ある実施形態では、装置10は、1つ以上の電極141、142を含むことができる。1つ以上の電極141、142は、pH電極を含むことができる。ある実施形態では、1つ以上の電極141、142は、例えば、1つ以上の電極141、142の信号出力を測定するために、電圧計または他の測定電子デバイス143と接触することができる。メモリ要素152を有するコンピューティングデバイスまたはマイクロプロセッサ151は、適切な機械的および電気的インターフェースを介して、所定の動作シーケンスをもたらすように動作可能な記憶された命令を提供され得る。コンピューティングデバイスまたはマイクロプロセッサ151は、例えば、1つ以上の電極141、142からの出力を処理することができ、試験溶液102の滴定の等価点を計算することができる。特定の実施形態では、コンピュータ装置またはマイクロプロセッサ151は、試験溶液102中のホウ酸の濃度を計算することができる。
【0023】
コンピューティングデバイス151は、例えば、統合された構成要素を有するコンピュータを含むことができ、または別個の構成要素、マイクロプロセッサ、およびメモリ要素152を含むメモリデバイスを含むことができる。メモリ素子152は、例えば、コンピュータハードドライブ、マイクロプロセッサチップ、読取り専用メモリ(ROM)チップ、プログラマブル読取り専用メモリ(PROM)チップ、磁気記憶デバイス、コンピュータディスク(CD)、およびデジタルビデオディスク(DVD)を含む、利用可能なメモリ素子の組合せのいずれか1つであり得る。メモリ要素152は、コンピューティングデバイス151の不可欠な部分であり得るか、または別個のデバイスであり得る。測定が完了した後、試験溶液102を廃棄物パイプ163を介して廃棄物容器162に流すことができる。ホウ酸分析の決定の間に、分析セル101は、例えば、水または水スプレーですすがれ、洗浄され得る。分析セル101は、希釈デバイス120によって提供される水を使用して、または別個のすすぎシステムによってすすぐことができる。したがって、反応容器からの化学物質の排出がある。廃棄物160を廃棄することができる。ある実施形態では、装置10は、溶液、例えば、試験溶液102を混合または混合するために提供することができる。ある実施形態では、装置10は、1つ以上の撹拌機を含むことができる。
【0024】
ある実施形態では、装置10は、例えば、試験溶液102中のホウ酸の計算された濃度に基づいて、プロセス調整を提供することができる。例えば、装置10は、メタライゼーション溶液111中のホウ酸の補充、メタライゼーション溶液111の水による希釈、メタライゼーション溶液111の部分ブリードおよび供給、またはそれらの組み合わせの各々を提供することができる。
【0025】
ある実施形態では、装置10は、例えば、試験溶液102の温度を測定するための温度センサ180を含むことができる。温度センサ180は、例えば、温度計、熱電対、サーミスタ、またはNIR分光計を含む、任意の好適なタイプであり得る。コンピューティングデバイス151は、温度センサ180から温度データを取得するように動作することができる。
【0026】
ある実施形態では、メタライゼーションタンク112から分析セル101に流されたメタライゼーション溶液111は、例えば、パイプ113のジャケット付き部分または放熱デバイスを含み得る、冷却デバイス183を通過することができる。
【0027】
本開示の装置10は、試験溶液102の温度の制御を提供することができる。好適な制御は、当技術分野において周知であり、分析セル内の液体の温度を制御するために使用することができる、温度センサからのフィードバックを伴うホットプレートまたは浸漬ヒータを含むことができる。試験溶液102の温度を制御するための1つの技術は、水または別の熱交換液体をサーキュレータ/コントローラ(または別の恒温源)から分析セル101上の冷却ジャケットに通すことである。
【0028】
ある実施形態では、ホウ酸濃度を測定および監視するための本開示の方法および装置のための分析器に関連して、種々のプロセスツールを使用することができる。例えば、限定するものではないが、1つ以上のプロセスツールは、所定の体積のメタライゼーション溶液を分析器に供給することができる。ある実施形態では、1つ以上のプロセスツールは、再循環ループから所定の体積の金属化溶液を抽出することができる。再循環ループから抽出された金属化溶液は、1つ以上のプロセスツールによって、試験のために分析器に提供することができる。当業者であれば、様々なプロセスツールを分析器と併せて使用することができ、そのような装置を多数のプロセスシステムに構成することができることを理解するであろう。
【実施例
【0029】
本開示の主題は、以下の実施例を参照することによってより良く理解されるであろう。以下の実施例は、本開示の主題の単なる例示であり、決して主題の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0030】
実施例1:ホウ酸濃度決定-めっき溶液
本開示の方法は、めっき溶液、例えばニッケル(Ni)、コバルト(Co)、または鉄(Fe)合金めっき溶液中のホウ酸濃度の分析を提供する。そのような溶液中のホウ酸濃度は、以下のように決定することができる。
(1)合金めっきサンプル(例えば、Ni/Co/Fe合金めっきサンプル)を、脱イオン水(DI)水、0.5mLの1M塩酸(HCl)、および20mLの0.5メチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)二ナトリウムマグネシウムとともにビーカーに加え、よく混合した;
(2)混合物を0.500M水酸化ナトリウム(NaOH)(認定標準溶液)で、pH組合せ電極を備えた自動電位差滴定装置を使用して第1の平衡(反応変曲)に達するまで撹拌しながら滴定した;
(3)10mLの100g/Lマンニトール溶液を撹拌しながら(2)に加えたが、溶液の電位は直ちに上昇した;
(4)滴定を0.500M水酸化ナトリウム(NaOH)で第2の平衡(反応変曲)まで続けた。2つの終点間の水酸化ナトリウム(NaOH)の消費を記録した;
(5)(4)の滴定終点間の水酸化ナトリウム(NaOH)標準溶液の濃度および水酸化ナトリウム(NaOH)標準溶液の消費量を用いて、溶液中のホウ酸含量/濃度を計算した;(1)で使用されるサンプル体積は、サンプル中のホウ酸の濃度に応じて調整することができる。
【0031】
ホウ酸濃度は、誤差<5%およびRSD<2%で測定することができる。
【0032】
実施例2:ホウ酸滴定-マンニトールを伴うおよび伴わない(先行方法)
本実施例では、既存の方法に従って、2回の別々の試験、すなわちマンニトールを添加した試験とマンニトールなしの試験におけるホウ酸の滴定を行った。ホウ酸濃度は、予め設定された固定電位で異なる滴定剤終了体積によって計算した。それは期待値よりも小さいと判定された。結果を図2に示す。
【0033】
実施例3:ホウ酸滴定-第1の変曲後のマンニトール添加(第1の方法)
本実施例では、ホウ酸の滴定は、既存の方法に従って、第1の滴定変曲後にマンニトールを添加して行った。ホウ酸濃度は、マンニトールを添加する前に同じ電位に達する第2の滴定終了体積によって計算した。第2の滴定終了体積は0.354mLであることが分かり、予想値(1.682mL)よりはるかに小さいことがわかった。
結果を図3に示す。
【0034】
実施例4:ホウ酸滴定-錯化試薬の使用の有無の比較曲線
本実施例では、錯化試薬の使用の有無によるホウ酸の滴定曲線比較を行った。錯化試薬を用いたホウ酸滴定曲線は、2つの鋭い滴定変曲を示し、これら2つの間の滴定剤体積差を用いてホウ酸濃度を算出した。錯化試薬を含まないホウ酸滴定曲線は、1つの変曲を示す。マンニトール添加後の第2の変曲は検出できなかった。結果を図4に示す。
【0035】
実施例5:ホウ酸滴定-錯化試薬を用いたサンプル調製および滴定
本実施例において、サンプル1~5は、以下の表1に提供されるように調製された。各サンプルは、錯化試薬を用いて測定した。錯化試薬なしでは、ホウ酸滴定の終点は検出できなかった。結果を以下の表1および図5~7に示す。錯化剤の使用は、イオンを加水分解しない溶液を含めた改善をもたらした。
【表1】
【0036】
図5に示すように、ホウ酸濃度は、2つのピークの間隔に基づいて測定した。加水分解イオン(例えば、Fe)が存在しない場合、ピークは、錯化剤がなくても検出可能である。しかし、錯化剤はピークを増強する。加水分解イオン(例えば、Fe)が存在する場合、ピークは、錯化剤の存在下でのみ検出可能である。図6は、勾配におけるホウ酸濃度対滴定剤添加体積(mF)の結果を提供する。図7は、第1のピークの位置によって調整された調整されたX軸スケールをさらに提供する。
【0037】
図8に示すように、滴定当量点を変曲点とした。変曲点は、(加水分解イオンの有無にかかわらず)錯化剤の存在下で明確に定義される。錯化剤なしでは、加水分解イオンの非存在下で測定することは困難であり、加水分解イオンの存在下では測定できない。
【0038】
本明細書における説明は、単に、開示される主題の原理を例示するにすぎない。本明細書の教示を考慮することで、説明される実施形態に対する様々な修正及び変更が当業者に明らかとなるであろう。したがって、本明細書の開示は、開示された主題の範囲の限定ではなく例示を意図している。さらに、開示される主題の原理は、様々な構成で実施することができ、本明細書で提示される特定の実施形態に決して限定されることを意図するものではない。
【0039】
図示され特許請求される様々な実施形態に加えて、開示される主題はまた、本明細書で開示され特許請求される特徴の他の組み合わせを有する他の実施形態を対象とする。したがって、本明細書で提示される特定の特徴は、開示される主題が本明細書で開示される特徴の任意の好適な組み合わせを含むように、開示される主題の範囲内の他の方法で互いに組み合わせることができる。開示される主題の特定の実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。網羅的であること、または開示された主題を開示された実施形態に限定することを意図するものではない。
【0040】
開示される主題の精神または範囲から逸脱することなく、開示される主題のシステムおよび方法において、種々の修正および変形例が行われ得ることが、当業者に明白となるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】