(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】多方向作動膜を用いたウェーハ形状を調整する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500283
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022033748
(87)【国際公開番号】W WO2023283032
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】カトラー,シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シェピス,アンソニー
(57)【要約】
本明細書の技術は、ウェーハの裏側に単層アクチュエータ膜又は多層アクチュエータ膜をコーティングする方法を含む。アクチュエータ膜は、1つ以上の化学アクチュエータを含む。化学アクチュエータは、化学アクチュエータに外部刺激を加えることに応答して、方向性のある応力を加えることができる様々な分子、結晶、化学化合物、及びその他の化学組成物である。外部刺激には、特定の、光の波長又は光の偏光、或いは熱(又は指向性赤外線)、或いは負荷応答作動又は圧力応答作動を含み得る負荷が含まれることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する方法であって、前記方法は、
ウェーハの第1の表面にアクチュエータ膜を形成する工程であって、前記ウェーハは、前記第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面とを含み、前記アクチュエータ膜は、アクチュエータ材料を含み、前記アクチュエータ膜は、所定の活性化刺激に反応性であり、前記アクチュエータ膜は、前記アクチュエータ材料の活性化に応答して位置変化を受けるように構成される工程と、
前記ウェーハの前記第1の表面に沿った位置で前記所定の活性化刺激を介して前記アクチュエータ膜における前記アクチュエータ材料を活性化し、前記アクチュエータ膜内に応力を生じさせる工程であって、前記応力は、前記ウェーハの形状を修正する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の表面は、前記ウェーハの裏面であり、前記第2の表面は、少なくとも部分的に形成された構造体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の表面は、少なくとも部分的に形成された構造体を含み、裏面の反対側にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アクチュエータ膜は、前記少なくとも部分的に形成された構造体の各構造体の間に形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アクチュエータ膜は、前記少なくとも部分的に形成された構造体を含む領域の周囲に沿って形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエータ膜におけるアクチュエータを活性化することにより、前記アクチュエータ膜において圧縮応力が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクチュエータ膜における前記アクチュエータ材料を活性化することにより、前記アクチュエータ膜において引張応力を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アクチュエータ膜は、第1のアクチュエータ材料の第1の層と、第2のアクチュエータ材料の第2の層とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアクチュエータ材料の前記第1の層は、前記第2のアクチュエータ材料の前記第2の層とは異なる所定の活性化刺激に応答する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のアクチュエータ材料の前記第1の層は、圧縮応力を与え、前記第2のアクチュエータ材料の前記第2の層は、引張応力を与える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記アクチュエータ膜は、第1のアクチュエータ材料と、第2のアクチュエータ材料とを含み、前記第1のアクチュエータ材料は、前記第2のアクチュエータ材料とは異なる所定の活性化刺激に応答する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ膜における前記アクチュエータ材料を活性化する工程は、直接書き込みシステムを使用して露光された光のパターンに前記第1の表面を露光する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ウェーハの前記第1の表面にアクチュエータ膜を形成する工程は、
前記ウェーハの前記第1の表面に第1のアクチュエータ材料の第1の層を堆積させる工程であって、前記第1のアクチュエータ材料の前記第1の層は、第1の所定の活性化刺激に応答する工程と、
前記第1のアクチュエータ材料の前記第1の層に第2のアクチュエータ材料の第2の層を堆積する工程であって、前記第2のアクチュエータ材料の前記第2の層は、第2の所定の活性化刺激に応答し、前記第1の所定の活性化刺激は、前記第2の所定の活性化刺激とは異なる工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アクチュエータ膜における前記アクチュエータ材料を活性化する工程は、
前記第1の所定の活性化刺激を使用して、前記第1のアクチュエータ材料の前記第1の層を活性化する工程と、
前記第2の所定の活性化刺激を使用して、前記第2のアクチュエータ材料の前記第2の層を活性化する工程と、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のアクチュエータ材料の前記第1の層には、第1の方向に沿ってプレストレスが与えられ、前記第2のアクチュエータ材料の前記第2の層には、第2の方向に沿ってプレストレスが与えられ、前記第1の方向及び前記第2の方向は、整列していない、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ウェーハの前記第1の表面に沿った位置で所定の非活性化刺激を介して前記アクチュエータ膜における前記アクチュエータ材料を非活性化する工程と、前記アクチュエータ膜内の前記応力を除去する工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の表面は、完全に形成されたデバイスを含み、裏面の反対側にあり、
前記アクチュエータ膜は、前記完全に形成されたデバイスの各々の上に形成され、前記アクチュエータ膜の各膜は、互いに分離され、前記完全に形成されたデバイスの各々に局在化される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ウェーハの前記第1の表面に沿った前記位置で前記所定の活性化刺激を介して前記アクチュエータ膜における前記アクチュエータ材料を活性化する工程は、前記ウェーハのウェーハ形状変形応力マップに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ウェーハ形状変形応力マップは、前記ウェーハの前記第1の表面に沿った座標位置に渡って緩和する応力値を示す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
基板を処理する方法であって、前記方法は、
ウェーハの第1の表面に第1の構造体を含む前記ウェーハを受け取る工程であって、前記ウェーハは、形状を含む工程と、
前記ウェーハのウェーハ形状変形応力マップを生成し、前記第1の構造体の位置において応力を決定する工程と、
前記第1の構造体にアクチュエータ膜を形成する工程であって、前記アクチュエータ膜は、アクチュエータ材料を含み、前記アクチュエータ膜は、所定の活性化刺激に反応性であり、前記アクチュエータ膜は、前記アクチュエータ材料の活性化に応答して位置変化を受けるように構成される工程と、
前記第1の構造体の前記位置で前記所定の活性化刺激を介して前記アクチュエータ膜における前記アクチュエータ材料を活性化し、前記アクチュエータ膜内に応力を生じさせる工程であって、前記アクチュエータ膜内に生じた前記応力は、前記第1の構造体の前記位置で前記応力を緩和する工程と、
前記活性化されたアクチュエータ膜がそれに形成された前記第1の構造体を前記ウェーハの前記第1の表面から除去する工程と、を含む、基板を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2021年7月8日に出願された米国仮特許出願第63/219,414号、及び2022年3月2日に出願された米国仮特許出願第17/684,473号の利益を主張するものであり、これらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、半導体製造方法に関し、特にウェーハ形状の最適化に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書で提供される背景の説明は、本開示の背景を一般的に提示するためのものである。この背景のセクションで説明される範囲における本発明者らの研究、及び出願の時点で先行技術として本来なら認定されないであろう記載の態様は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0004】
半導体製造は、複数の様々な工程及びプロセスを含む。典型的な製造プロセスの1つは、フォトリソグラフィー(マイクロリソグラフィーとも知られている)として知られている。フォトリソグラフィーは、紫外又は可視光等の照射を用いて、半導体素子の設計において微細パターンを形成する。フォトリソグラフィー、エッチング、膜堆積、表面洗浄、金属化等の半導体製造技術を用いてダイオード、トランジスタ、及び集積回路等、各種の半導体素子を構築することができる。これらの処理技術は全て、ウェーハ上及びウェーハ内の応力に影響を与える可能性がある。
【0005】
フォトリソグラフィー技術の実施には露光システム(露光ツールとも呼ばれる)が使用される。露光システムは、典型的には、照明システムと、回路パターンを作成するレチクル(フォトマスクとも呼ばれる)又は空間光変調器(SLM)と、投影システムと、感光レジストで覆われた半導体ウェーハをアライメントするウェーハライメントステージとを含む。照明システムは、レチクル又はSLMの一領域を(好ましくは)矩形スロットの照明フィールドで照明する。投影システムは、レチクルパターンの照明された領域の像をウェーハ上に投影する。投影を正確に行うためには、好ましくは高さの偏差が10ミクロン未満である、比較的平坦であるか平面であるウェーハを光のパターンに露光することが重要である。従って、ウェーハ形状を最適化する方法が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ウェーハの第1の表面にアクチュエータ膜を形成する工程であって、ウェーハは、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを含み、アクチュエータ膜は、アクチュエータ材料を含み、アクチュエータ膜は、所定の活性化刺激に反応性であり、アクチュエータ膜は、アクチュエータ材料の活性化に応答して位置変化を受けるように構成される工程と、ウェーハの第1の表面に沿った位置で所定の活性化刺激を介してアクチュエータ膜におけるアクチュエータ材料を活性化し、アクチュエータ膜内に応力を生じさせる工程であって、応力は、ウェーハの形状を修正する工程と、を含む、基板を処理する方法に関する。
【0007】
加えて、本開示は、ウェーハの第1の表面に第1の構造体を含むウェーハを受け取る工程であって、ウェーハは、形状を含む工程と、ウェーハの形状変形応力マップを生成し、第1の構造体の位置において応力を決定する工程と、第1の構造体にアクチュエータ膜を形成する工程であって、アクチュエータ膜は、アクチュエータ材料を含み、アクチュエータ膜は、所定の活性化刺激に反応性であり、アクチュエータ膜は、アクチュエータ材料の活性化に応答して位置変化を受けるように構成される工程と、第1の構造体の位置で所定の活性化刺激を介してアクチュエータ膜におけるアクチュエータ材料を活性化し、アクチュエータ膜内に応力を生じさせる工程であって、アクチュエータ膜内に生じた応力は、第1の構造体の位置で応力を緩和する工程と、活性化されたアクチュエータ膜がそれに形成された第1の構造体をウェーハの第1の表面から除去する工程と、を含む、基板を処理する方法に関する。
【0008】
この概要のセクションは、本開示又は特許請求の範囲に記載される本発明の全ての実施形態及び/又は段階的に新規な態様を指定するわけではないことに留意されたい。その代わりに、本発明の概要は、異なる実施形態、及び新規性に関する対応点についての、予備的な考察を提供するだけである。本発明及び実施形態の更なる詳細及び/又は予想される観点については、読者は、以下で更に論じる本開示の「発明を実施するための形態」セクション及び対応する図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
例として提案する本開示の様々な実施形態について、以下の図を参照しながら詳細に説明する。図では、類似の番号は類似の要素を参照する。
【0010】
【
図1A】層のうちの1つに欠陥が導入されているウェーハにおける層の概略斜視図である。
【
図1B】結果として得られるウェーハの反りの様々な種類及び程度の概略図である。
【
図2A】本開示の一実施形態による、化学構造体の概略図及び前述の化学構造体からのアクチュエータ膜特性の光学画像である。
【
図2B】本開示の一実施形態による、絡み合ったポリマー鎖の概略図である。
【
図2C】本開示の一実施形態による、基板からのアゾポリマー膜の剥離の光学画像である。
【
図2D】本開示の一実施形態による、アゾポリマーP1-100kの膜の曲げの概略図及び付随する光学画像である。
【
図2E】本開示の一実施形態による、アゾポリマーP1-100kの膜の曲げの概略図及び付随する光学画像である。
【
図3A】本開示の一実施形態による、単層カーボンナノチューブ(CNT)及び多層CNTの概略図である。
【
図3B】本開示の一実施形態による、フラーレンC
60(左)及びフラーレンC
70(右)の概略図である。
【
図3C】本開示の一実施形態による、単層グラフェン及び酸化グラフェンの概略図である。
【
図4A】本開示の一実施形態による、PDMS及びキトサンと共に炭素材料を組み込んだ多方向アクチュエータの光学画像である。
【
図4B】本開示の一実施形態による、時間の関数としてのアクチュエータ材料の曲率のグラフである。
【
図4C】本開示の一実施形態による、アクチュエータの様々な特性のグラフである。
【
図5A】
図5Aは、本開示の一実施形態による、ジュール加熱に応答するCNT-窒化ホウ素(BN)二層アクチュエータの概略図である。
【
図5B】本開示の一実施形態による、温度に応答するCNT-BN二層アクチュエータの光学画像である。
【
図6A】本開示の一実施形態による、CNT-BN二層アクチュエータの撓みの概略図及び式である。
【
図6B】本開示の一実施形態による、CNT-BN二層膜の製造及び特性評価を示す一連の概略図及び画像である。
【
図7】本開示の一実施形態による、単層CNT-ポリマー二層アクチュエータの光学特性のグラフ及び単層CNT(SWCNT)の様々な溶液の画像である。
【
図8】本開示の一実施形態による、ウェーハ形状の最適化の概略図である。
【
図9A】本開示の一実施形態による、表面に形成された構造体又はデバイスを示す基板セグメントの断面図である。
【
図9B】本開示の一実施形態による、ウェーハの裏側に形成された反り修正アクチュエータ膜を示す基板セグメントの断面図である。
【
図9C】本開示の一実施形態による、直接書き込みレーザー投影中のウェーハ1105の断面セグメントである。
【
図10】本開示の一実施形態による、半導体デバイスを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の開示は、提示する主題の様々な特徴を実施するための多様な実施形態又は例を示す。本開示を簡略化するために、構成要素及び構成の具体例を以下で説明する。当然のことながら、これらは単なる例に過ぎず、限定することを意図するものではない。例えば、以下に続く説明における第2の特徴の上方又は上での第1の特徴の形成は、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触して形成される実施形態を含んでもよく、また、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触し得ないように、第1の特徴と第2の特徴との間に追加の特徴が形成され得る実施形態を含んでもよい。加えて、本開示は、様々な実施例において参照番号及び/又は文字を繰り返す場合がある。この繰り返しは、簡潔さ及び明瞭さを目的としており、それ自体が、議論する様々な実施形態及び/又は構成間の関係について言及するものではない。更に、本明細書では、説明を簡単にするために、「上部」、「下部」、「下」、「下方」、「より下」、「上方」、「より上」等の空間的に相対的な用語を用いて、図に示すような1つの要素又は特徴の、別の要素又は特徴に対する関係を説明する場合がある。空間的に相対的な用語は、図に示されている向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図している。装置は、他の向き(90度回転された、又は他の向き)であってよく、本明細書で用いる空間的に相対的な記述子も同様に適宜解釈されてもよい。
【0012】
本明細書に記載する異なる工程の説明の順序は、分かり易さを目的として示している。一般に、これらの工程は任意の適切な順序で実行することができる。加えて、本明細書における異なる特徴、技術、構成等のそれぞれに本開示の異なる場所で言及する場合があるが、それぞれの概念は互いに独立して又は互いに組み合わせて実行できるものとする。従って、本発明は、多くの異なる方法で具現化及び検討することができる。
【0013】
3D NANDメモリデバイスの製造において、デバイス構造体はウェーハの加工面から垂直方向に延び得る。より大きなウェーハ(例えば、5/6インチ、100mm、150mm、200mm、300mm、及び450mmなど)の使用と、最先端の集積回路の製造に必要な層の数の増加により、多くの場合にウェーハ形状の大きな変形が発生する。3D NANDにはより多くの垂直層が組み込まれるため、デバイスも重くなる。
図1Aは、層のうちの1つに欠陥が導入されているウェーハにおける層の概略斜視図である。例えば、300mmのウェーハ上の3D NANDデバイスには、128の層が使用され得る。図示のように、下地となる前の層にある欠陥が拡大して、後の層で深刻な反りを生じることがある。
図1Bは、前側の3D NANDスタックの層の数を系統的に増やすと、ウェーハ形状が更に変形し、問題の深刻度が増すことを示している。これは、非均一性、非平面性、リソグラフィー又は他のプロセスに対するオーバーレイ(overlay)の不一致、及びウェーハの取り扱いの劣化を含む問題を引き起こす可能性がある。ウェーハ形状の変形は、オーバーレイの不一致において特に望ましくなく、その理由は、これらの問題は、製造プロセスの初期に発生し、その後の工程に持ち越され、デバイスの性能及び歩留まりに更なる問題を引き起こす可能性があるからである。
【0014】
ウェーハ形状を正確に最適化するための、好ましくは簡易な手段を見つけることが望まれている。いくつかの緩和戦略には、例えば、化学気相成長法(CVD)によってウェーハの裏側に窒化シリコン(SiN)膜を堆積させることが含まれるが、これはウェーハとデバイスに大きな応力を与える可能性がある。即ち、SiN膜は、堆積時にウェーハに応力を与える。この反応力(counter stress)を緩和し、リソグラフィーパターニングによって位置的に反りを制御する。即ち、窒化シリコンの所定の部分を、画像化、照射、又は露光し、その後除去して、ウェーハ上の特定の点の応力を緩和し、これによりウェーハを異なる方法で再形成することができる。窒化シリコン膜法によってもたらされる問題は、この方法では異なるツールが必要であるということであり、これは、簡易なトラックベースの(track-based)プロセスと互換性がない可能性があることを意味する可能性があるため、ウェーハをまったく別のツールにロードする必要があり、費用が高く、処理能力が低下する可能性があることである。更に、この方法はまた、ウェーハの裏側に所望の量の窒化シリコンを付けるのに時間がかかり得る。加えて、この方法は、一般に、水の反りを緩和するために窒化シリコン膜を像形成したり、窒化シリコン膜においてパターンを調整したりする非常に複雑なプロセスである。大量生産の場合、処理能力が懸念される場合がある。
【0015】
本明細書では、高処理能力プロセスを使用してウェーハ形状及びオーバーレイを制御及び最適化する方法について説明する。処理能力を部分的に向上させることができるのは、本明細書の技術が、トラックツール(track tool)又はコータ-デベロッパツール(coater-developer tool)のモジュールとして、又はその中で具体化できるためである。トラックツールを使用することによって達成される効率に加えて、本明細書の技術は、パターニング直後にウェーハにおける応力を修正することができる。従って、パターン化された膜から応力を解放する又は生成するために別のエッチングプロセスを行う必要はない。
【0016】
本明細書に記載の方法は、ウェーハの裏側に単層アクチュエータ膜又は多層アクチュエータ膜をコーティングすることを含む。アクチュエータ膜は、1つ以上の化学アクチュエータを含む。化学アクチュエータは、化学アクチュエータに外部刺激を加えることに応答して、方向性のある応力を加えることができる様々な分子、結晶、化学化合物、及びその他の化学組成物である。外部刺激には、特定の、光の波長又は光の偏光、或いは熱(又は指向性赤外線)、或いは更には負荷応答作動又は圧力応答作動を含み得る「負荷」が含まれることができる。従って、加えることができるいくつかの異なる外部刺激が存在する。活性化刺激は、例えば、ウェーハのウェーハ形状補正マップに従って、ウェーハ膜上の特定の位置で加えられることもできる。本明細書では、作動は、前側反り測定からのウェーハ応力マップから全体的及び/又は局所的形状或いは反りを緩和するために必要なものに従って、プログラム化可能又はパターン化可能であり得る。こうした化学アクチュエータは、生成されたストレスが刺激後に残るという点で、本質的に「形状記憶」であり得る。アクチュエータは、可逆的又は多方向であり得る。本明細書では、アクチュエータ膜を横切って走査されるレーザーを使用するなどの直接書き込み露光を使用することができる。
【0017】
本明細書の実施形態は、化学アクチュエータ膜を堆積する工程と、ウェーハ形状の修正を引き起こす位置特異的刺激を加えることよって少なくとも1つの化学アクチュエータを活性化する工程とを含み、全てコータ-デベロッパツールで実行される。スタンドアロンツール(stand-alone tool)を使用して本明細書の技術を実行することもできるが、トラックツール上で本明細書の技術を実行することには大きな利点がある。トラックツールは、スキャナー及びステッパーに接続でき、ウェーハ上のフォトレジスト膜のコーティング、ウェーハの現像、及びウェーハの洗浄などのいくつかの処理工程に使用できる。スキャナー及びステッパー、或いはその他のフォトリソグラフィーツールは、比較的平坦なウェーハ、即ち、曲率及び反りのないウェーハを有することによって多大な恩恵を受ける。従って、リソグラフィーパターンの露光前にこのようなウェーハ形状の変形を補正することは、より良く、より正確なパターニングを意味する。
【0018】
また、本明細書に記載の方法には、ウェーハに加えられる力の可逆的な調整が含まれる。従って、本明細書におけるウェーハ形状補正は、パターン化可能なポリマー架橋のみによって達成されるウェーハ形状補正には存在しない適応能力を有する。好ましくは、化学アクチュエータ膜は、ウェーハの裏面に堆積されるが、実施形態は、化学アクチュエータ材料を同様に前側面に堆積することを含むことができる。
【0019】
アクチュエータ膜の裏側(又は前側)形成プロセスは、形成されるアクチュエータプラットフォームの種類に応じて異なる場合がある。しかしながら、一般に、化学アクチュエータ膜は、ウェーハ全体の処理の前と後で、或いはその間の任意の段階で、ウェーハの裏側に形成することができる。ウェーハ形状補正の場合、全体的及び/又は局所的な反りの応力マップを使用して、応力補正パターンをプログラム化することができ、これは、作動時に裏側アクチュエータ膜によって課される逆応力パターンであり得る。本明細書の技術は、スタンドアロンツール内で具体化することも、トラック(コータ-デベロッパ)ツール又は他の半導体システム内の1つ以上のモジュールとして具体化することもできる。
【0020】
化学アクチュエータは、刺激に応答して、物理的な位置又は方向が変化する分子又は化合物又はその他の材料である。言い換えれば、化学アクチュエータ材料は、伸びる、縮む、曲がる、結晶方位又は化学配置を変化させる、或いは内部応力を修正するその他の物理的変化を起こすことができる。一部の化学アクチュエータは、根本的な再配置を行うことができる。化学アクチュエータの利点の1つは、応力又は物理的変化を反転させることが一部のアクチュエータの機能であることである。架橋された膜の結合を解くのは難しいため、これは架橋と比較して有益である。可逆的なアクチュエータ及び/又は段階的変化の可用性により、単一のアクチュエータ膜を何度も活性化して内部応力を修正できる。構造体がパターン化され、ウェーハに層が追加されると、ウェーハ表面が、ますます反り湾曲するようになる可能性があるため、これは非常に有用であり得る。更に、ウェーハに渡る応力は、多くの場合に不均一である。本明細書のアクチュエータ膜は、局所的なウェーハの歪みと全体的なウェーハ(全ウェーハ)の歪みの両方に対処する多目的型である。
【0021】
一実施形態では、ウェーハは、第1の表面と、第2の表面とを含むことができる。第1の表面は、加工面であり得、第2の表面は、ウェーハの裏側であり得る。アクチュエータ膜は、ウェーハの裏側に堆積されることができ、最初の一連の製造工程が実行された後(浅いトレンチ分離、ドーピング、初期チャネル形成など)、ウェーハを測定して反りを特定できる。一実施形態では、ウェーハに沿った位置におけるウェーハ形状の変形の程度に相関してウェーハ応力マップを生成することができる。例えば、ウェーハ応力マップは、ウェーハの第1の表面に沿った座標位置に渡る緩和する応力値を示すことができる。ウェーハ応力マップに基づくウェーハ形状補正画像又はパターンを、アクチュエータ膜に露光することができる。この露光により、アクチュエータ膜内のアクチュエータに物理的な位置変化が生じる可能性がある。結果、この物理的変化は、アクチュエータ膜内の内部応力を修正することができ、結果、ウェーハに応力を及ぼすことができる。これらの応力により、ウェーハの初期の反りを平坦にする、又は反りを所望の閾値内に低減することができる。ウェーハが平坦化されると、追加の処理工程を実行できる。平坦化されたウェーハにより、特にフォトリソグラフィーパターニングにおいてオーバーレイが改善される。追加の材料の堆積及び除去及び修正を伴う製造が続くと、ウェーハ内に応力が再び蓄積し、所望の量を超える反りを引き起こす。この時点で、ウェーハの反りを再度測定し、第2のウェーハ形状補正パターンを計算させ、次いで、アクチュエータ膜を第2のウェーハ形状補正パターンに露光することができる。第2のウェーハ形状補正パターンは、追加の露光が必要とされる最初の露光を考慮することができる。アクチュエータ膜によっては、これは、活性化刺激の強度又は持続時間が追加されることを意味する場合がある。
【0022】
一実施形態では、アクチュエータ膜は、リセットされることができる。アクチュエータ膜をリセット又は反転する方法は、使用するアクチュエータの種類によって異なり得る。例えば、一部のアクチュエータは、熱又は特定の光波長を加えることで物理的変化を初期状態に戻すことができる。従って、アクチュエータ膜を段階的に変化させる代わりに、アクチュエータ膜が活性化されるたびに、アクチュエータ膜を最初にリセットすることができる。アクチュエータ膜の変化は、熱を加えることなどによって、元に戻すことができる。次いで、ウェーハを測定してウェーハ形状の変形を特定し、アクチュエータ膜に適用する第2のウェーハ形状補正パターンを計算する。次いで、対応する刺激を使用して、第2のウェーハ形状補正パターンをアクチュエータ膜に適用することができる。ウェーハ形状補正パターンは、目に見えてウェーハ形状変形パターンの反転のように見えることもある、又は光学近接効果補正パターンによってなど、異なって見えることもある点に留意されたい。特定のウェーハ形状補正パターンは、必要な応力の量、必要な応力の方向、アクチュエータ膜の種類、及びウェーハ上に積層される材料又はデバイスによって異なる。
【0023】
一実施形態では、アクチュエータ膜の2つ以上の層、又は複数のアクチュエータを含むアクチュエータ膜を使用することができる。複数のアクチュエータ及び/又は膜を使用すると、追加の機能が可能になる。例えば、所定のアクチュエータは、異なる種類の物理的変化及び異なる活性化刺激を有することができる。従って、一実施形態では、第1のアクチュエータは、第1の所定の波長の化学線又は光で活性化することができ、一方、第2のアクチュエータは、第2の所定の波長の化学線で活性化することができる。理解されるように、第1のアクチュエータ又は第2のアクチュエータは、第1の所定の波長の化学線又は第2の所定の波長の化学線を分離し適用することによって個別に活性化されることができる。一例では、第1のアクチュエータは、活性化時に膨張することができ、一方、第2のアクチュエータは、収縮することができる。アクチュエータ膜内の膨張と収縮の両方が利用可能であるため、圧縮応力又は引張応力のいずれかを同時に誘発することができ、これにより、膜の応力修正を更に制御する。例えば、第1のアクチュエータは、圧縮応力を与えることができ、一方、第2のアクチュエータは、引張応力を与えることができる。例えば、第1のアクチュエータは、圧縮応力を与えることができ、一方、第2のアクチュエータも、圧縮応力を与えることができる。例えば、第1のアクチュエータは、引張応力を与えることができ、一方、第2のアクチュエータは、圧縮応力を与えることができる。例えば、第1のアクチュエータは、引張応力を与えることができ、一方、第2のアクチュエータも、引張応力を与えることができる。二層膜には、熱膨張係数の違いがある場合があり、これを利用して膜の応力を更に制御できる。
【0024】
本明細書のアクチュエータ膜は、半導体産業における典型的な堆積方法を含む様々な方法で堆積することができる。例えば、堆積は、スピンオン堆積によって実現することができる。トラックツールモジュールは、アクチュエータを含む液体形成物を分配するように構成することができる。ウェーハ表面に液体を分配した状態でウェーハを回転させ、次いで、膜を硬化させる又は溶媒を除去するためにベーキングを実行することができる。また、堆積は、スプレーコーティング、蒸着、及び他の技術によって実現できることが理解されることができる。
【0025】
本明細書では、ウェーハ形状の最適化に使用するために選択できるアクチュエータ材料について説明する。ウェーハ形状の最適化に好ましいアクチュエータ材料には、液晶エラストマー、形状記憶ポリマー、及び電熱/光熱二層アクチュエータ、又はこれらのプラットフォームの複合体が含まれるが、これらに限定されない。包まれた又はシールドされたイオン性電気活性ポリマー或いはポリマー/無機圧電体の適用も、本明細書で企図される。選択された材料をウェーハの表面に堆積させて保護できる限り、アクチュエータの反りの緩和に使用される材料の範囲は、広範囲に及ぶことができる。こうしたアクチュエータ材料は、層形成を容易にするために他の膜材料と組み合わせることができる。更に、一部のアクチュエータ材料は、化学線又は光の異なる波長又は偏光に応じて異なる方向に曲がることができる。
【0026】
一実施形態では、液晶エラストマー又はチオレンポリマーは、低いガラス転移温度(Tg)及び低い使用温度を有し、アクチュエータ材料として使用することができる。しかしながら、複合システム、及びより高いTgのアクリレート材料を含むことにより、熱安定性及び膜の完全性が向上する可能性がある。光活性化される液晶エラストマーの例を、
図2A~4Bに示す。これらは、全て比較的柔らかい材料であり、高温では安定しない可能性がある。
【0027】
図2Aは、本開示の一実施形態による、化学構造体の概略図、及び前述の化学構造体からのアクチュエータ膜特性の光学画像である。一実施形態では、アクチュエータ膜は、光異性化を受けることができるアゾポリマーP1を含む。光異性化は、P1粉末の固体から液体への転移(例えば、UV光による)、アゾポリマーP1で形成された膜の傷の治癒、及びアゾポリマーP1で形成された自立膜の曲げを誘発することができる(Chen,M.,et al.,Entangled Azobenzene-Containing Polymers with Photoinduced Reversible Solid-to-Liquid Transitions for Healable and Reprocessable Photoactuators.Adv.Funct.Mater.2020,30,1906752.https://doi.org/10.1002/adfm.201906752を参照)。
【0028】
図2Bは、本開示の一実施形態による、絡み合ったポリマー鎖の概略図である。一実施形態では、低分子量アゾポリマーP1のポリマー鎖は、ほとんど絡み合うことができないが、高分子量アゾポリマーP1のポリマー鎖は、絡み合うことができる。
【0029】
図2Cは、本開示の一実施形態による、基板からのアゾポリマー膜の剥離の光学画像である。一実施形態では、モル質量が100kg/モルのアゾポリマーP1の膜は、モル質量が10kg/モルのアゾポリマーP1の膜と比較して、容易に剥離及び延伸されることができる。アゾポリマーP1-100kの自立膜を得ることができるが、アゾポリマーP1-10kの自立膜は、ポリマー鎖の絡み合いが不足し得、これにより硬くて脆くなり得るため、得られない場合がある。
【0030】
図2D及び
図2Eは、本開示の一実施形態による、アゾポリマーP1-100kの膜の曲げの概略図及び付随する光学画像である。一実施形態では、曲げは、光誘導性及び可逆性であり得る。第1の光機械的応答を誘導するUV光(例えば、365nm、51 mW cm
-2)などの化学線への露光の第1の持続時間(例えば、10分間)に渡って、アゾポリマーP1-100kの膜は、曲がる又はカールすることができる。第2の光機械的応答を誘導する青色光(例えば、470nm、9 mW cm
-2)などの化学線への露光の第2の持続時間(例えば、50秒)に渡って、アゾポリマーP1-100kの膜は、UV露光と比較して反対方向に曲がる又はカールすることができる。従って、膜は、可逆的に光機械的に作動されることができる。
図2Dでは、アゾポリマーP1-100kの膜は、露光前に延伸されることができる。
図2Eでは、アゾポリマーP1-100kの膜は、露光前に非延伸であり得る。
【0031】
図3Aは、本開示の一実施形態による、単層カーボンナノチューブ(CNT)及び多層CNTの概略図である。
図3Bは、本開示の一実施形態による、フラーレンC
60(左)及びフラーレンC
70(右)の概略図である。
図3Cは、本開示の一実施形態による、単層グラフェン及び酸化グラフェンの概略図である。一実施形態では、熱安定性が向上し、熱(赤外線(IR)/近赤外線)及び光熱作動の両方の可能性を示すアクチュエータの部類は、カーボンナノチューブ又はグラフェンを含むものである(
図3A~3Cを参照)。ほとんどの炭素材料は、光熱活性であり、様々な波長の光を吸収する広帯域の光吸収を有し、ほとんどのものが高い光熱変換率を有する。これらのアクチュエータは、複合材料(即ち、同一層における炭素の種類+他の液晶エラストマー)(
図4A~4Cを参照)、又は、カーボンナノチューブ及び窒化ホウ素などの熱膨張係数(CTE)が大きく異なる他の材料とカーボンナノチューブが積層されることができる光熱二層(
図5A~5Bを参照)のいずれかであり得る。カーボンナノチューブ及びグラフェン(酸化グラフェン)を処理する技術は、著しく進歩しており、これらの材料は溶液処理が可能であるだけでなく(
図6A~6Bを参照)、単層カーボンナノチューブのキラリティに基づいて特定の波長の光に調整することもできる(
図7を参照)。
【0032】
図4Aは、本開示の一実施形態による、PDMS及びキトサンと共に炭素材料を組み込んだ多方向アクチュエータの光学画像である。一実施形態では、光学画像及び赤外画像(挿入図)は、照射時間が異なるPDMS-CNT/キトサンアクチュエータの光駆動作動を示す(Xu,H.,et al.,(2019),An Ultra-large Deformation Bidirectional Actuator Based on a Carbon Nanotube/PDMS Composite and a Chitosan Film.J.Mater.Chem.B,7,7558-7565.https://doi.org/10.1039/C9TB01841Gを参照)。
【0033】
図4Bは、本開示の一実施形態による、時間の関数としてのアクチュエータ材料の曲率のグラフである。一実施形態では、左のグラフは、PDMS-CNTアクチュエータの1回の作動及び回復サイクルを示し、一方、右のグラフは、光駆動PDMS-CNTアクチュエータの再現性試験を示す。
【0034】
図4Cは、本開示の一実施形態による、アクチュエータの様々な特性のグラフである。一実施形態では、左上のグラフは、異なる光出力密度に対するPDMS-CNT/キトサンアクチュエータの軸力測定を示し、右上のグラフは、温度に対するPDMS-CNT/キトサンアクチュエータ(15%CNT)の電気伝導度の変化を示し、下のグラフは、光-湿度-光駆動作動の切り替えを受けた時間に対するPDMS-CNT/キトサンアクチュエータの曲率を示す。特に、挿入図は、異なる作動時間におけるPDMS-CNT/キトサンアクチュエータの光学画像である。正の値は、PDMS-CNT側への曲げを示し、負の値は、キトサン側への曲げを示す。
【0035】
図5Aは、本開示の一実施形態による、ジュール加熱に応答するCNT-窒化ホウ素(BN)二層アクチュエータの概略図である。一実施形態では、選択的ジュール加熱を介して、例えば、10μmの厚さを有する自立U字型CNT薄膜を、100ms以内に2000Kまで加熱することができ、このとき、アクチュエータは、BN側に曲がる(Wang,C.,et al.,(2016),A Solution-Processed High-Temperature,Flexible,Thin-Film Actuator.Adv.Mater.,28:8618-8624.https://doi.org/10.1002/adma.201602777を参照)。電流が除かれると、アクチュエータは、放射及び熱伝導によって室温まで急速に冷却されることができる。CNT薄膜の大きな表面積及び高い熱伝導率により、急速な冷却が可能になる。
【0036】
図5Bは、本開示の一実施形態による、温度に応答するCNT-BN二層アクチュエータの光学画像である。一実施形態では、二層アクチュエータの低速度撮影画像は、加熱及び冷却サイクル中に加えられた熱に対する応答及び可能な高速応答ウィンドウ(fast response windows)を示している。特に、CNT-BNアクチュエータは、高温(例えば、1726℃)まで安定し得、薄く柔軟であり、高速スイッチング(例えば、100msの応答時間)を有し、10,000サイクルを超える耐久性がある。
【0037】
図6Aは、本開示の一実施形態による、CNT-BN二層アクチュエータの撓みの概略図及び式である。一実施形態では、CNT-BN二層アクチュエータは、式及び付随する説明図(左)及びCNT膜及びCNT-BN二層膜の応力歪み測定(右)によって示されるように、高温作動後に特性評価することができる(Wang,C.et al.,(2016),A Solution-Processed High-Temperature,Flexible,Thin-Film Actuator.Adv.Mater.,28:8618-8624.https://doi.org/10.1002/adma.201602777を参照)。
【0038】
図6Bは、本開示の一実施形態による、CNT-BN二層膜の製造及び特性評価を示す一連の概略図及び画像である。一実施形態では、製造には、安定で均一なBN及びCNT溶液の使用が含まれ得る。CNTとBNナノシートはどちらも、溶媒に懸濁して安定したインクを形成できるため、二層薄膜は、2段階の真空濾過プロセスによって製造できる。光学画像及び走査型電子顕微鏡画像は、CNT-BN二層膜の膜トポロジーを示している。
【0039】
図7は、本開示の一実施形態による、単層CNT-ポリマー二層アクチュエータの光学特性のグラフ及び単層CNT(SWCNT)の様々な溶液の画像である。一実施形態では、3種類のSWCNTを使用して光吸収特性を調整することができる:i)高圧一酸化炭素不均化(HiPCO)SWCNT、ii)約700nmに単一の吸収ピークを持つ金属ナノチューブ、並びにiii)約560及び970に特徴的な吸収ピークを持つ単一キラリティナノチューブ。種類に依存するSWCNTは、優れた光吸収体及び波長感受性媒体として機能することができる。この特殊な光学特性により、単色の光駆動機能を備えたアクチュエータが可能になった(Wang,T.,et al.,(2017),Maximizing the Performance of Photothermal Actuators by Combining Smart Materials with Supplementary Advantages.Sci.Adv.3,e1602697.DOI:10.1126/sciadv.1602697を参照)。
【0040】
本明細書の技術は、製造プロセスを材料の選択及び活性化と組み合わせて裏側の作動又は応力の修正を達成できる反り緩和の複数の態様を網羅する。同様の材料及びプロセスを、前側の反りの緩和にも使用できる。本明細書の技術には、全体的な反りと局所的な反りの両方を補正するための可逆的又は多方向の作動材料が含まれる。また、その場でのウェーハ形状補正を可能にし、製造プロセスを通して反りが発生した場合に、反りを補正する又は補正することができる。例えば、処理中にウェーハと共に「移動」する裏側アクチュエータ膜を使用して、必要に応じてウェーハ形状の変形を調整することができる。外部刺激は、アクチュエータ材料の種類に対応して、要望に応じて異なる段階又は時間で適用できる。従って、同じアクチュエータ膜で製造プロセスを通じて複数の応力補正を有効にし、必要に応じて応力を段階的に固定又は調整することができる。光で活性化される刺激の場合、直接書き込みツール又はコータ-デベロッパツール内のモジュールを使用して、座標位置によってアクチュエータを活性化することができる。例えば、座標位置によって光強度を調整できる走査レーザービームを使用することができる。
【0041】
カーボンナノチューブ二層の作動により、カーボンベースのアクチュエータデバイスを活性化することが知られているIR光源を使用した「ウェーハを介した」反りの緩和及びパターニングが可能になる。従って、ウェーハは、裏側を下にしてウェーハホルダに留まることができ、一方、上からのIR光は、ウェーハに向けて、又はウェーハを通して照射することができる。特に、シリコンは、IR波長に対してほとんど透明である。従って、ウェーハを介したパターニングでは、処理中にウェーハを反転する回数を減らすことができる。
【0042】
アクチュエータ材料の適用をウェーハの前側に拡張することで、様々なプロセスの選択肢が可能になる。一実施形態では、各ダイの端部に力を加えて、ダイごとに反りを大まかに補正することができる。カスタムレチクル(Custom reticle)には、各ダイの端部にアクチュエータを活性化するための領域を組み込むことができ、これにより、スキャナーが、パターンの印刷とウェーハ形状補正の両方を実行できるため、処理能力が向上する。一実施形態では、アクチュエータ材料をデバイス自体に埋め込むことができる。一実施形態では、アクチュエータ膜は、製造されたデバイスへの影響を最小限に抑えるために、パッケージング中にデバイス自体の上部における前側処理の最後に適用され得る。
【0043】
図8は、本開示の一実施形態による、ウェーハ形状の最適化の概略図である。一実施形態では、ウェーハ歪みマップを生成することができ、次いで、ウェーハ形状補正パターンを適用することができ、その結果、修正された又は平面的なウェーハのZ高さ測定がもたらされる。
【0044】
図9Aは、本開示の一実施形態による、表面に形成された構造体又はデバイス1199を示す断面基板セグメントである。一実施形態では、ウェーハ305は、第1の表面1110と第2の表面1115とを含む。例えば、ウェーハの第1の表面1110は、ターゲットデバイスが製造される加工面であり得、第2の表面1115は、ウェーハの裏側であり得る。加工面1110上に形成されるデバイス1199は、トランジスタ又はメモリセルなどの能動デバイス又は構造体、或いは部分的に形成された能動デバイス又は構造体であり得る。ウェーハ1105は、コータ-デベロッパツール又は他のトラックベースのツールのコーティングモジュールで受け取られ得る。
【0045】
図9Bは、本開示の一実施形態による、ウェーハ1105の裏側1115上に形成された反り修正アクチュエータ膜1125(本明細書では「アクチュエータ膜1125」と呼ばれる)を示す断面基板セグメントである。一実施形態では、ウェーハ1105を反転させてアクチュエータ膜1125を裏側1115に形成することができるが、ウェーハ1105を反転させる必要はない。例えば、ツールは、垂直上向きのコーティング、スプレー、又は堆積用のシステムを含み得る。即ち、ウェーハ1105は、トラック上を進み、ツールは、スプレーコーティングによってウェーハの裏側1115にアクチュエータ膜1115を形成することができる。いずれにしても、アクチュエータ膜1125を、裏側1115に形成することができ、アクチュエータ膜1125は、
図2A-7に記載のアクチュエータを参照して前述したとおり、光、温度、電流、化学物質などに応答する1つ又は複数のアクチュエータを含むことができる。加工面1110に配置されたデバイス1199については、ウェーハ1105の取り扱いを容易にするために、保護フィル(protective fill)又は保護膜を堆積させることができる、又はキャリアウェーハを取り付けることができる。
【0046】
図9Cは、本開示の一実施形態による、直接書き込みレーザー投影中のウェーハ1105の断面セグメントである。一実施形態では、アクチュエータ膜1125は、例えば、ウェーハ1105が依然としてツール内のトラック上にある間に、ウェーハ1105の裏側1115に直接書き込みレーザー投影によって活性化されることができる。ウェーハ1105の生成されたウェーハ形状変形応力マップに基づいて、ウェーハ形状補正パターンは、デジタル光処理チップ、レーザーガルバノメータなどを用いて投影されることができる。走査レーザービームを使用することもできる。また、アクチュエータ膜1115を活性化するためにウェーハ1105を反転させることができるが、反転させる必要はないことに留意されたい。有利なことに、前述したように、ウェーハ1105の裏側1115をトラック上でアクチュエータ膜1125でコーティングすることができ、トラック上でウェーハ1105を移動又は反転させることなくアクチュエータ膜1125を活性化することもできる。
【0047】
露光により、アクチュエータ膜1125内のアクチュエータの物理的な位置変化を引き起こすことができる。結果、この物理的変化は、アクチュエータ膜1125内の内部応力を修正することができ、結果、ウェーハ1105に応力を及ぼすことができる。これらの応力は、ウェーハ1105を初期の反りから平坦にすることができる、又は反りを所望の閾値内に低減することができる。ウェーハ1105の処理が進むにつれて、ウェーハ1105の反りが、再度測定され、第2のウェーハ形状補正パターンが計算され、次いで、アクチュエータ膜1125を第2のウェーハ形状補正パターンに露光することができる。第2のウェーハ形状補正パターンは、追加の露光が必要とされる最初の露光を考慮することができる。アクチュエータ膜1125に応じて、これは、活性化刺激の更なる強度又は持続時間を意味し得る。
【0048】
一実施形態では、前述したように、アクチュエータ膜1125をリセットすることができる。例えば、一部のアクチュエータは、熱又は特定の光波長を加えることで物理的変化を初期状態に戻すことができる。従って、アクチュエータ膜1125を段階的に変化させる代わりに、アクチュエータ膜1125が活性化されるたびに、アクチュエータ膜1125を最初にリセットすることができる。アクチュエータ膜1125の変化は、熱を加えるなどして元に戻すことができる。次いで、ウェーハ1105を測定して、ウェーハ形状の変形を特定し、アクチュエータ膜1125に適用する第2のウェーハ形状補正パターンを計算することができる。次いで、第2のウェーハ形状補正パターンは、例えば、依然としてツール内のトラック上にある間に、対応する刺激を使用してアクチュエータ膜1125に適用することができる。
【0049】
一実施形態では、前述したように、アクチュエータ膜1125の2つ以上の層、又は複数のアクチュエータを含むアクチュエータ膜1125を使用することができる。複数のアクチュエータ及び/又は膜1125を使用することにより、更なる機能性が可能になる。例えば、所定のアクチュエータは、異なる種類の物理的変化及び異なる活性化刺激を有することができる。従って、一実施形態では、アクチュエータ膜1125の第1の層の第1のアクチュエータは、第1の所定の波長の光で活性化されることができ、一方、アクチュエータ膜1125の第2の層の第2のアクチュエータは、第2の所定の波長の光で活性化されることができる。理解されるように、第1のアクチュエータ又は第2のアクチュエータは、第1の所定の波長の光又は第2の所定の波長の光を分離し適用することによって個別に活性化されることができる。更に、一実施形態では、アクチュエータ膜1125の各層は、異なるウェーハ形状補正パターンに対応することができる。例えば、第1のウェーハ形状補正パターンは、アクチュエータ膜1125の第1の層の露光中に使用することができ、一方、第2のウェーハ形状補正パターンは、アクチュエータ膜1125の第2の層の露光中に使用することができる。アクチュエータ膜1125の複数の層は、複数の方法により複数の方向の応力を緩和する更なる柔軟性を提供する。即ち、ブランケットアクチュエータ膜1125は、全体的な曲げ(即ち、1D)の特徴を緩和することができ、一方、多方向アクチュエータ膜1125は、局所的な曲げ(即ち、2D+)の歪みに対処することができる。例えば、第1のアクチュエータ材料の第1の層には、第1の方向に沿ってプレストレスが与えられ、第2のアクチュエータ材料の第2の層には第2の方向に沿ってプレストレスが与えられ、第1の方向と第2の方向は、整列している。例えば、第1のアクチュエータ材料の第1の層には、第1の方向に沿ってプレストレスが与えられ、第2のアクチュエータ材料の第2の層には、第2の方向に沿ってプレストレスが与えられ、第1の方向と第2の方向は、整列していなく、例えば、第1の方向と第2の方向は、互いに直交している。
【0050】
再び、アクチュエータ膜1125の複数の層を、裏側1115ではなく加工面1110に適用することができる。膜の裏側の統合は、デバイスの歩留まりに影響を与える場合があるトレードオフにつながる場合がある。多方向の前側統合が計画されている設計技術の協調最適化を使用すると、この方法の利点を、トレードオフなしに実現できる可能性がある。一実施形態では、多方向作動膜1125の選択的な適用/除去は、多方向作動膜1125がウェーハ1105上のストリート(デバイス1199の間の領域)にのみ存在するように制御され得る。一実施形態では、アクチュエータ膜1125は、ウェーハの周縁に沿って形成されることができる。次いで、ウェーハ1105の周囲に力を加えることによって、ダイの局所的なウェーハ1105の形状を制御することができる。
【0051】
一実施形態では、単一化の前に、ウェーハ1105全体が、チップレットに影響を与える応力を減衰/フィルタリングすることができる。ダイシングされると、バルクウェーハ1105が、応力をフィルタリングしていない可能性があるため、チップレットは、解放時にはじける(pop)/破損する可能性がある。従って、多方向作動膜1125は、チップごとに予想される応力を打ち消すために、解放前にチップレットの上部に堆積され得る。
【0052】
一実施形態では、アクチュエータ膜1125は、製造プロセス中に発生又は形成される反りを補正できる、その場での反りの緩和又は補正を可能にすることができる。即ち、応力応答性アクチュエータは、アクチュエータ膜1125が曲げの形成時にかかる応力を緩和するように、曲げの形成時に活性化することができる。
【0053】
一実施形態では、アクチュエータ膜1125を非活性化することができる。例えば、アクチュエータ膜1125は、アクチュエータ膜1125内の応力を除去するために、ウェーハの第1の表面に沿った位置で所定の非活性化刺激を介して非活性化することができる。
【0054】
一実施形態では、第1の表面は、完全に形成されたデバイスを含み、裏面の反対側にあり、アクチュエータ膜は、完全に形成されたデバイスのそれぞれの上に形成され、アクチュエータ膜1125の各膜は、互いに分離され、前述のそれぞれの完全に形成されたデバイスのそれぞれのデバイスに局在化される。
【0055】
図10は、本開示の一実施形態による、基板を処理する方法1000のフローチャートである。
【0056】
工程1005において、ウェーハ1105は、ツールによって受け取られ、ウェーハ1105は、第1の表面1110(加工面1110)及び第2の表面1115(裏側1115)を含み得る。
【0057】
工程1010において、アクチュエータ膜1125は、第1の表面1110又は第2の表面1115に形成され得る。アクチュエータ膜1125は、アクチュエータを含むことができ、アクチュエータ膜1125は、アクチュエータ材料の活性化に応答して位置変化を受けるように構成される。
【0058】
工程1015において、アクチュエータ膜におけるアクチュエータ材料は、ウェーハの第1の表面に沿った位置で活性化刺激を介して活性化されることができ、アクチュエータ膜内に応力を引き起こし、その応力は、ウェーハの反りを修正する。
【0059】
一実施形態では、アクチュエータ膜がその上に形成されたウェーハにおける構造体を、ウェーハの表面から除去することができる。
【0060】
これまでの説明において、処理システムの特定の幾何学的形状、及び用いられる各種の構成要素及び処理の記述等、具体的な詳細を記載してきた。しかしながら、本明細書における技術がこれらの具体的な詳細とは異なる他の実施形態で実施されてよいこと、及びこのような詳細は説明目的であって限定するためのものではないことを理解されたい。本明細書に開示する複数の実施形態について添付の図面を参照しながら説明してきた。同様に、説明目的で、理解を徹底すべく特定の数、材料、及び構成を示してきた。しかし、複数の実施形態が、このような特定の詳細事項が無くても実施され得る。実質的に同一の機能的構造を有する構成要素を同様の参照符号で示しているため、冗長な記述が省略されている場合がある。
【0061】
様々な実施形態の理解を助けるべく、様々な技術を複数の動作として説明してきた。記述の順序を、これらの動作が必然的に順序に依存するものとして解釈すべきではない。実際、これらの動作は提示する順序で実行されなくてもよい。記述した動作が記述した実施形態とは異なる順序で実行されてよい。追加的な実施形態では様々な追加的な動作が実行されてよく、及び/又は記述した動作が省略されてもよい。
【0062】
本明細書で使用される「基板」又は「ターゲット基板」は、本発明に従って処理される物体を総称して指す。基板は、デバイス、特に半導体デバイス又は他の電子デバイスの、任意の材料部分又は構造を含んでもよく、例えば、半導体ウェーハなどのベース基板構造、レチクル、或いはベース基板構造上の層又はベース基板構造に重なる層、例えば薄膜であってもよい。従って、基板は、パターニングされているか否かに依らず、いかなる特定のベース構造、下地層又は被覆層にも限定されず、むしろ、任意のこのような層又はベース構造、並びに層及び/又はベース構造の任意の組合せを含むことが企図されている。説明は、特定の種類の基板を参照し得るが、これは、例示のみを目的とするものである。
【0063】
当業者はまた、上記で説明した技術の動作に対して多くの変更がなされても、依然として本発明の同じ目的を達成できることを理解されよう。このような変形形態は、本開示の範囲に包含されることが意図されている。従って、本発明の実施形態の上述の説明は、限定することを意図したものではない。むしろ、本発明の実施形態に対する限定は以下の特許請求の範囲に提示される。
【国際調査報告】