(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】多層極端紫外線反射材料
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20240820BHJP
G03F 1/52 20120101ALI20240820BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512085
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022039266
(87)【国際公開番号】W WO2023033975
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルゲス, ビンニ
(72)【発明者】
【氏名】ジンダル, ビブー
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB25
2H195BB27
2H195BB35
2H195BC04
2H195BC19
2H195BC27
2H195CA01
2H195CA05
2H195CA07
2H195CA16
2H195CA23
(57)【要約】
極端紫外線(EUV)マスクブランク、その製造システム、及び多層膜の反射率を高める方法が開示される。EUVマスクブランクは基板上に二重層膜を備えている。二重層膜は、ケイ素(Si)を含む第1の膜層と、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、及びそれらのケイ化物からなる群より選択される元素を含む第2の膜層とを含む。一部のEUVマスクブランクは、二重層膜上に交互の層を含む多層反射スタックと、該多層反射スタック上のキャッピング層とをさらに含む。一部のEUVマスクブランクは、多層反射スタック上にケイ化モリブデン(MoSi)、炭化ホウ素(B
4C)、及び窒化ケイ素(SiN)からなる群より選択される平滑化層と、該平滑化層上のキャッピング層と、該キャッピング層上の吸収層とを備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線(EUV)マスクブランクにおいて、
基板上の二重層膜であって、ケイ素(Si)を含む第1の膜層と、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、及びそれらのケイ化物からなる群より選択される元素を含む第2の膜層とを含む、二重層膜、
前記二重層膜上の多層反射スタックであって、交互の層を含む多層反射スタック、並びに
前記多層反射スタック上のキャッピング層
を備えた、極端紫外線(EUV)マスクブランク。
【請求項2】
前記多層反射スタック上の平滑化層と、該平滑化層上の前記キャッピング層とをさらに含み、前記平滑化層が、ケイ化モリブデン(MoSi)、炭化ホウ素(B
4C)、及び窒化ケイ素(SiN)からなる群より選択される、請求項1に記載のEUVマスクブランク。
【請求項3】
前記第1の膜層が3nmから5nmの範囲の厚さを有し、前記第2の膜層が1nmから3nmの範囲の厚さを有する、請求項2に記載のEUVマスクブランク。
【請求項4】
前記第2の膜層が、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、及びチタン(Ti)のうちの1つ以上のケイ化物を含む第1の層と、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、及びチタン(Ti)からなる群より選択される元素を含む第2の層と、前記EUVマスクブランクのアニーリング後にルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、及びチタン(Ti)のうちの1つ以上のケイ化物を含む第3の層とを含む三重層を備えている、請求項3に記載のEUVマスクブランク。
【請求項5】
前記第1の層及び前記第3の層の各々が1nmから3nmの範囲の厚さを有する、請求項4に記載のEUVマスクブランク。
【請求項6】
前記多層反射スタックの前記交互の層の各々の間に少なくとも1つの界面層をさらに含む、請求項1に記載のEUVマスクブランク。
【請求項7】
前記少なくとも1つの界面層の各々が、アニーリング後に20%を超えて増加しない厚さを有する、請求項6に記載のEUVマスクブランク。
【請求項8】
前記少なくとも1つの界面層が、0.5nmから2nmの範囲の厚さを有する、請求項7に記載のEUVマスクブランク。
【請求項9】
前記平滑化層が0.5nmから2nmの範囲の厚さを有する、請求項2に記載のEUVマスクブランク。
【請求項10】
前記EUVマスクブランクが0.10nmから0.20nmの範囲の表面粗さを有する、請求項9に記載のEUVマスクブランク。
【請求項11】
前記キャッピング層が2nmから5nmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のEUVマスクブランク。
【請求項12】
前記キャッピング層がルテニウム(Ru)を含む、請求項11に記載のEUVマスクブランク。
【請求項13】
多層膜の反射率を高める方法において、
基板上に第1の膜層と第2の膜層とを含む二重層膜を形成することであって、前記第1の膜層がケイ素(Si)を含み、前記第2の膜層がルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、及びそれらのケイ化物からなる群より選択される元素を含む、二重層膜を形成すること、
前記二重層膜上に交互の層を含む多層反射スタックを形成すること、
前記多層反射スタック上にキャッピング層を形成すること、並びに
前記多層膜をアニーリングすること
を含む、方法。
【請求項14】
前記多層反射スタック上に平滑化層を形成すること、及び前記平滑化層上に前記キャッピング層を形成することをさらに含み、前記平滑化層がケイ化モリブデン(MoSi)、炭化ホウ素(B
4C)、及び窒化ケイ素(SiN)からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多層膜が、アニーリング前に約66.8%の反射率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多層膜が、アニーリング後に約66.1%の反射率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記平滑化層を形成することにより、平滑化層を有しない多層膜と比較して前記多層膜の表面粗さが低減される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記多層膜の前記表面粗さが0.10nmから0.20nmの範囲にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記多層膜内の応力が、アニーリング前の約600nmからアニーリング後の約200nmに低減される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記多層膜をアニーリングすることが、180℃から250℃の範囲の温度で5分から60分の範囲の時間行われる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、極端紫外線リソグラフィに関する。より詳細には、本開示は、二重層膜を含む極端紫外線マスクブランク、及び多層反射フィルムの反射率を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極端紫外線(EUV)リソグラフィは、0.0135ミクロン以下の最小フィーチャーサイズの半導体デバイスの製造に使用することができる。無反射吸収マスクパターンでコーティングされた一連のミラー又はレンズ素子、並びに反射素子又はマスクブランクの使用を通じて、パターン化された光がレジストでコーティングされた半導体基板上で反射される。
【0003】
極端紫外線リソグラフィシステムのレンズ素子及びマスクブランクは、モリブデン及びケイ素などの材料の反射多層コーティングでコーティングされる。
図1は、EUVマスクブランクから形成される従来のEUV反射マスク10を示しており、これは、基板14上に反射多層スタック12を備えており、マスクされていない部分ではブラッグ干渉によってEUV放射を反射する。従来のEUV反射マスク10のマスクされた(非反射)領域16は、バッファ層18及び吸収層20をエッチングすることによって形成される。キャッピング層22が反射多層スタック12の上に形成され、エッチングプロセス中に反射多層スタック12を保護する。エッチングされたマスクブランクは、(非反射)領域16と、反射領域24とを有する。
【0004】
アニーリングは通常、多層反射スタック内の交互層間に、より厚い界面層の形成を誘発する。多層反射スタック内のより厚い界面層は、多くの場合、EUVマスクブランクの反射率の低下を引き起こす。より厚い界面層を有する典型的な多層反射スタックでは、アニーリング後に反射率が約1.5%低下する。また、反射率が低いとスループットも低下し、EUVリソグラフィプロセスの消費電力が増加する。
【0005】
したがって、スループットを高め、電力消費を低減するためには、アニーリングの前後に高い反射率を有する多層反射スタックを有するEUVマスクブランクを提供する必要がある。加えて、多層反射スタックは、粗さ、均一性、応力、及び熱安定性を含む、EUVマスクブランクの他の要件を満たさなければならない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の1つ以上の実施形態は、基板上に二重層膜を含む極端紫外線(EUV)マスクブランクを対象とする。二重層膜は、ケイ素(Si)を含む第1の膜層と、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、及びそれらのケイ化物からなる群より選択される元素を含む第2の膜層とを含む。EUVマスクブランクは、二重層膜上の交互層を含む多層反射スタックと、該多層反射スタック上のキャッピング層とを備えている。
【0007】
追加の実施形態は多層膜の反射率を高める方法を対象とする。該方法は、基板上に第1の膜層と第2の膜層とを含む二重層膜を形成することであって、第1の膜層がケイ素(Si)を含み、第2の膜層がルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、及びそれらのケイ化物からなる群より選択される元素を含む、二重層膜を形成すること;該二重層膜上に交互の層を含む多層反射スタックを形成すること;該多層反射スタック上にキャッピング層を形成すること;並びに、多層膜をアニーリングすることを含む。
【0008】
本開示の上記特徴を詳細に理解することができるように、その一部が添付の図面に示されている実施形態を参照することにより、上に簡単に要約されている本開示のより詳細な説明を得ることができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しているのであり、したがって、本開示は他の同等に有効な実施形態も許容しうることから、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来の吸収体を用いた背景技術のEUV反射マスクの概略図
【
図2】極端紫外線リソグラフィシステムの一実施形態の概略図
【
図3】極端紫外線反射素子製造システムの一実施形態を示す図
【
図4】アニーリング前のEUVマスクブランクなどの極端紫外線反射素子の一実施形態を示す図
【
図5】アニーリング後の
図4の極端紫外線反射素子の一実施形態を示す図
【
図6】マルチカソード物理的堆積チャンバの一実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示が、以下の説明に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態も可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することができる。
【0011】
本明細書で用いられる「水平」という用語は、その配向性とは無関係に、マスクブランクの平面又は表面に平行な平面として定義される。「垂直」という用語は、先に定義された水平に対して垂直な方向を指す。「上」、「下」、「底部」、「上部」、「側面」(「側壁」など)、「より高い」、「より低い」、「上部」、「上方」、「下方」などの用語は、図に示すように、水平面に対して定義される。「~上(on)」という用語は、要素間に直接的な接触が存在することを示す。「~のすぐ上(directly on)」という用語は、介在する要素なしで、要素間に直接的な接触が存在することを示す。本明細書で用いられる場合、「前駆体」、「反応物」、「反応性ガス」などの用語は、基板表面と反応することができる任意のガス状種を指すために交換可能に用いられる。本明細書で用いられる場合、「反射多層スタック」、「多層反射スタック」、「反射層の多層スタック」という用語は、EUVマスクブランクなどの反射素子を指すために交換可能に用いられる。
【0012】
当業者は、処理領域を説明するための「第1」及び「第2」などの序数の使用は、処理チャンバ内の特定の位置、又は処理チャンバ内での露出の順序を意味しないことを理解するであろう。本明細書で用いられる場合、「基板」という用語は、処理が行われる表面又は表面の一部を指す。基板に対しての言及は、文脈上他のことが明示されない限り、基板の一部分のみを指すこともありうることもまた、当業者に理解されよう。さらには、基板上への堆積についての言及は、ベア基板と、1つ以上の膜又はフィーチャーがその上に堆積又は形成されている基板の両方を意味する。
【0013】
次に
図2を参照すると、極端紫外線リソグラフィシステム100の例示的な実施形態が示されている。極端紫外線リソグラフィシステム100は、極端紫外線光112を生成するための極端紫外線光源102、一組の反射素子、及びターゲットウエハ110を備えている。反射素子は、集光器104、EUV反射マスク106、光学縮小アセンブリ108、マスクブランク、ミラー、又はそれらの組合せを含む。
【0014】
極端紫外線光源102は極端紫外線光112を生成する。極端紫外線光112は、5から50ナノメートル(nm)の範囲の波長を有する電磁放射線である。例えば、極端紫外線光源102は、レーザ、レーザ生成プラズマ、放電生成プラズマ、自由電子レーザ、シンクロトロン放射光、又はそれらの組合せを含む。極端紫外線光源102は、ある範囲の波長にわたって広帯域の極端紫外線放射を生成する。例えば、極端紫外線光源102は、5から50nmの範囲の波長を有する極端紫外線光112を生成する。
【0015】
1つ以上の実施形態では、極端紫外線光源102は、狭い帯域幅を有する極端紫外線光112を生成する。例えば、極端紫外線光源102は、13.5nmの極端紫外線光112を生成する。波長ピークの中心は13.5nmである。
【0016】
集光器104は、極端紫外線光112を反射して集光するための光学ユニットである。集光器104は、極端紫外線光源102からの極端紫外線光112を反射して集光し、EUV反射マスク106を照明する。集光器104は単一の元素として示されているが、幾つかの実施形態における集光器104は、極端紫外線光112を反射し集光するために、凹面鏡、凸面鏡、平面鏡、又はそれらの組合せなどの1つ以上の反射素子を含むものと理解される。例えば、図示される実施形態における集光器104は、単一の凹面鏡、又は凸面、凹面、及び平坦な光学素子を有する光学アセンブリである。
【0017】
EUV反射マスク106は、マスクパターン114を有する極端紫外線反射素子である。EUV反射マスク106は、ターゲットウエハ110上に形成される回路レイアウトを形成するためのリソグラフィパターンを生成する。EUV反射マスク106は極端紫外線光112を反射する。マスクパターン114は回路レイアウトの一部を画定する。
【0018】
光学縮小アセンブリ108は、マスクパターン114の画像を縮小するための光学ユニットである。EUV反射マスク106からの極端紫外線光112の反射は、光学縮小アセンブリ108によって縮小され、ターゲットウエハ110上へと反射される。幾つかの実施形態の光学縮小アセンブリ108は、ミラー、及びマスクパターン114の画像サイズを縮小するための他の光学素子を含む。例えば、幾つかの実施形態における光学縮小アセンブリ108は、極端紫外線光112を反射し集光するための凹面鏡を含む。
【0019】
光学縮小アセンブリ108は、ターゲットウエハ110のマスクパターン114の画像サイズを縮小する。例えば、ターゲットウエハ110上の光学縮小アセンブリ108によって4:1の比でマスクパターン114が結像され、ターゲットウエハ110上のマスクパターン114によって表される回路を形成する。極端紫外線光112は、ターゲットウエハ110と同期してEUV反射マスク106を走査し、ターゲットウエハ110上にマスクパターン114を形成する。
【0020】
次に
図3を参照すると、極端紫外線反射素子製造システム200の一実施形態が示されている。極端紫外線反射素子は、EUVマスクブランク204、極端紫外線ミラー205、又はEUV反射マスク106などの他の反射素子を含む。
【0021】
極端紫外線反射素子製造システム200は、マスクブランク、ミラー、又は
図2の極端紫外線光112を反射する他の要素を製造する。極端紫外線反射素子製造システム200は、ソース基板203に薄いコーティングを施すことによって反射素子を製造する。
【0022】
EUVマスクブランク204は、
図2のEUV反射マスク106を形成するための多層構造である。EUVマスクブランク204は、半導体製造技法を使用して形成される。EUV反射マスク106は、エッチング及び他のプロセスによってEUVマスクブランク204上に形成された
図2のマスクパターン114を有する。
【0023】
極端紫外線ミラー205は、極端紫外線光の範囲を反射する多層構造である。極端紫外線ミラー205は、半導体製造技法を使用して形成される。EUVマスクブランク204及び極端紫外線ミラー205は、幾つかの実施形態では、各要素上に形成される層に関して同様の構造であるが、極端紫外線ミラー205はマスクパターン114を有しない。
【0024】
反射素子は極端紫外線光112の効率的なリフレクタである。ある実施形態では、EUVマスクブランク204及び極端紫外線ミラー205は、60%を超える極端紫外線反射率を有する。60%を超える極端紫外線光112を反射する場合、反射素子は効率的である。
【0025】
極端紫外線反射素子製造システム200は、ソース基板203がロードされ、反射素子がアンロードされるウエハローディング及びキャリアハンドリングシステム202を含む。大気ハンドリングシステム206は、ウエハハンドリング真空チャンバ208へのアクセスを提供する。ウエハローディング及びキャリアハンドリングシステム202は、基板搬送ボックス、ロードロック、及び基板を大気からシステム内部の真空へと移送するための他の部品を含む。EUVマスクブランク204は非常に小さいスケールでデバイスを形成するために用いられることから、ソース基板203及びEUVマスクブランク204は、汚染及び他の欠陥を防ぐために真空システム内で処理される。
【0026】
ウエハハンドリング真空チャンバ208は、2つの真空チャンバ、すなわち、第1の真空チャンバ210及び第2の真空チャンバ212を含む。第1の真空チャンバ210は第1のウエハハンドリングシステム214を含み、第2の真空チャンバ212は第2のウエハハンドリングシステム216を含む。2つの真空チャンバを有するウエハハンドリング真空チャンバ208が記載されているが、本システムは任意の数の真空チャンバを有することができるものと理解される。
【0027】
ウエハハンドリング真空チャンバ208は、さまざまな他のシステムを取り付けるためにその外縁に複数のポートを有する。第1の真空チャンバ210は、ガス抜きシステム218、第1の物理的気相堆積システム220、第2の物理的気相堆積システム222、及び前洗浄システム224を有する。ガス抜きシステム218は、基板から水分を熱的に脱着させるためのものである。前洗浄システム224は、ウエハ、マスクブランク、ミラー、又は他の光学部品の表面を洗浄するためのものである。
【0028】
第1の物理的気相堆積システム220及び第2の物理的気相堆積システム222などの物理的気相堆積システムは、幾つかの実施形態では、ソース基板203上に導電性材料の薄膜を形成するために用いられる。例えば、幾つかの実施形態の物理的気相堆積システムは、マグネトロンスパッタリングシステム、イオンスパッタリングシステム、パルス状レーザ堆積、カソードアーク堆積などの真空堆積システム、又はそれらの組合せを含む。マグネトロンスパッタリングシステムなどの物理的気相堆積システムは、ソース基板203上に、ケイ素、金属、合金、化合物、又はそれらの組合せの層を含む薄膜を形成する。
【0029】
1つ以上の実施形態では、物理的気相堆積システムは、反射層、キャッピング層、及び吸収層を形成する。例えば、物理的気相堆積システムは、ケイ素、モリブデン、酸化チタン、二酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ニオブ、ルテニウムタングステン、ルテニウムモリブデン、ルテニウムニオブ、クロム、タンタル、窒化物、化合物の層、又はこれらの組合せの層を形成するように構成される。幾つかの化合物が酸化物として記載されているが、該化合物は、酸化物、二酸化物、酸素原子を有する原子混合物、又はそれらの組合せを含むものと理解される。
【0030】
第2の真空チャンバ212は、第1のマルチカソード源226、化学気相堆積システム228、硬化チャンバ230、及びそれに接続された超平滑堆積チャンバ232を有する。例えば、幾つかの実施形態の化学気相堆積システム228は、流動性化学気相堆積システム(FCVD)、プラズマ支援化学気相堆積システム(CVD)、エアロゾル支援CVD、ホットフィラメントCVDシステム、又は同様のシステムを含む。別の例では、化学気相堆積システム228、硬化チャンバ230、及び超平滑堆積チャンバ232は、極端紫外線反射素子製造システム200とは別のシステム内にある。
【0031】
化学気相堆積システム228は、ソース基板203上に材料の薄膜を形成する。例えば、化学気相堆積システム228は、単結晶層、多結晶層、アモルファス層、エピタキシャル層、又はそれらの組合せを含む材料の層をソース基板203上に形成するために用いられる。化学気相堆積システム228は、ケイ素、酸化ケイ素、シリコンオキシカーバイド、炭素、タングステン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属、合金、及び化学気相堆積に適した他の材料の層を形成する。例えば、化学気相堆積システムは平坦化層を形成する。
【0032】
第1のウエハハンドリングシステム214は、大気ハンドリングシステム206と連続真空内の第1の真空チャンバ210の周囲のさまざまなシステムとの間でソース基板203を移動させることができる。第2のウエハハンドリングシステム216は、連続真空内でソース基板203を維持しつつ、第2の真空チャンバ212の周囲でソース基板203を移動させることができる。極端紫外線反射素子製造システム200は、連続真空中でソース基板203及びEUVマスクブランク204を第1のウエハハンドリングシステム214と第2のウエハハンドリングシステム216との間で移送する。
【0033】
本開示の幾つかの実施形態は、多層膜の反射率を高める方法を提供する。該方法は、第1の膜層と第2の膜層とを含む二重層膜を基板上に形成すること;該二重層膜上に交互の層を含む多層反射スタックを形成すること;該多層反射スタック上にキャッピング層を形成すること;及び、多層膜をアニーリングすることを含む。
図4及び
図5のうちの1つ以上を参照して、反射率を高める方法を説明することができる。
図5は、アニーリングして多層膜400を形成した後の
図4の極端紫外線反射素子300の一実施形態を示している。
【0034】
次に
図4を参照すると、
図3のEUVマスクブランク204又は
図3の極端紫外線ミラー205などの極端紫外線反射素子300の一実施形態が示されている。EUVマスクブランク204及び極端紫外線ミラー205は、
図2の極端紫外線光112を反射させるための構造である。EUVマスクブランク204は、必要な回路のレイアウトで吸収層380をパターン化することによって
図2に示されるEUV反射マスク106を形成するために用いられる。
【0035】
本明細書で用いられる場合、簡単にするために、EUVマスクブランク204の用語は、極端紫外線ミラー205の用語と交換可能に用いられる。1つ以上の実施形態では、EUVマスクブランク204は、
図2のマスクパターン114の形成に加えて、吸収層380が追加された極端紫外線ミラー205の部品を含む。
【0036】
極端紫外線反射素子300は、基板310、該基板310上の二重層膜320、該二重層膜320上の多層反射スタック340、及び多層反射スタック340上のキャッピング層370を含む。1つ以上の実施形態では、極端紫外線ミラー205は、
図2の集光器104又は
図2の光学縮小アセンブリ108で使用するための反射構造を形成するために用いられる。
【0037】
EUVマスクブランク204は、マスクパターン114を有するEUV反射マスク106を形成するために用いられる光学的に平坦な構造である。1つ以上の実施形態では、EUVマスクブランク204の反射面は、
図2の極端紫外線光112などの入射光を反射するための平坦な焦点面を形成する。
【0038】
図4に示される実施形態は、基板310、該基板310上の二重層膜320、該二重層膜320上の多層反射スタック340、該多層反射スタック340上の平滑化層360、及び該平滑化層360上のキャッピング層370を有する極端紫外線反射素子300を含む。
【0039】
基板310は、極端紫外線反射素子300に構造的支持を提供するための要素である。1つ以上の実施形態では、基板310は、温度変化中に安定性を提供するために、低い熱膨張係数(CTE)を有する材料でできている。1つ以上の実施形態では、基板310は、機械的循環、熱循環、結晶形成、又はそれらの組合せに対する安定性などの特性を有する。1つ以上の実施形態による基板310は、ケイ素、ガラス、酸化物、セラミック、ガラスセラミック、又はそれらの組合せなどの材料から形成される。
【0040】
極端紫外線反射素子300は、アニーリング前に約66.8%の反射率を有する。典型的なEUVマスクブランクは、アニーリング前に約65.6%の反射率を有する。以下にさらに記載されるように、本開示のEUVマスクブランク204は、アニーリングの前後で、典型的なEUVマスクブランクより高い反射率を有する。
【0041】
1つ以上の実施形態では、二重層膜320は、ケイ素(Si)を含む第1の膜層322を含む。1つ以上の実施形態では、二重層膜320の第1の膜層322は、3nmから5nmの範囲、3.5nmから5nmの範囲、又は3.5nmから4.5nmの範囲の厚さを有する。
【0042】
二重層膜320は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、及びそれらのケイ化物からなる群より選択される元素を含む第2の膜層324を含む。1つ以上の実施形態では、二重層膜320の第2の膜層324は、1nmから3nmの範囲、1.5nmから2.5nmの範囲、又は1.5nmから2nmの範囲の厚さを有する。
【0043】
ほとんどの材料は極端紫外波長の光を吸収することから、用いられる光学要素は他のリソグラフィシステムで用いられるような透過型ではなく反射型になる。多層反射スタック340は、異なる光学特性を有する材料の薄層を交互に有することによって反射構造を形成し、ブラッグリフレクタ又はミラーを生成する。
【0044】
1つ以上の実施形態では、多層反射スタック340は二重層膜320上にある。1つ以上の実施形態では、多層反射スタック340は、極端紫外線光112を反射させる構造である。1つ以上の実施形態では、多層反射スタック340は、第1の層342と第2の層346とを含む交互の層の複数の対を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342及び第2の層346は、ケイ素(Si)とモリブデン(Mo)、及びケイ素(Si)とルテニウム(Ru)のうちの1つ以上を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はケイ素(Si)を含み、第2の層346はモリブデン(Mo)を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はモリブデン(Mo)を含み、第2の層346はケイ素(Si)を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はケイ素(Si)を含み、第2の層346はルテニウム(Ru)を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はルテニウム(Ru)を含み、第2の層346はケイ素(Si)を含む。
【0045】
第1の層342及び第2の層346は、さまざまな構造を有することができる。ある実施形態では、第1の層342及び第2の層346の両方が、単一層、多層、分割層構造、非均一構造、又はそれらの組合せで形成される。
【0046】
1つ以上の実施形態では、多層スタック340の第1の層342及び第2の層346は、反射対を形成する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「反射対」及び「交互の層の複数の対」という用語は、1つ以上の反射層を指すために互換的に用いられうる。非限定的な実施形態では、多層反射スタック340は、合計で最大120の反射層に20~60の範囲の反射対を含む。別の非限定的な実施形態では、多層反射スタック340は、合計40の反射層に20の反射対を含む。
【0047】
1つ以上の実施形態によれば、多層スタック340の第1の層342及び第2の層346は、屈折率nに比較的大きい差を有しており、例えば、第1の層342の材料のn(高n)は0.94~1.01でありえ、第2の層346の材料のn(低n)は0.87~0.93でありえ、高いEUV反射を有する界面を形成することができる。1つ以上の実施形態では、第1の層342及び第2の層346の両方の材料は、多層によるEUV吸収を最小限に抑えるために低い消光係数(例えば、k<0.03)を有する。多層反射スタック340は、さまざまな方法で形成される。ある実施形態では、第1の層342及び第2の層346は、マグネトロンスパッタリング、イオンスパッタリングシステム、パルス状レーザ堆積、カソードアーク堆積、又はそれらの組合せを用いて形成される。
【0048】
例示的な実施形態では、多層反射スタック340は、マグネトロンスパッタリングなどの物理気相堆積技法を使用して形成される。ある実施形態では、多層反射スタック340の第1の層342及び第2の層346は、正確な厚さ、低い粗さ、及び層間のクリーンな界面を含む、マグネトロンスパッタリング技法によって形成される特性を有する。ある実施形態では、多層反射スタック340の第1の層342及び第2の層346は、正確な厚さ、低い粗さ、及び層間のクリーンな界面を含む、物理気相堆積によって形成される特性を有する。
【0049】
ある実施形態では、交互の層342、346の各々は、極端紫外線光112について異なる光学定数を有する。交互の層の厚さの周期が極端紫外線光112の波長の半分である場合、交互の層は共鳴反射率を提供する。ある実施形態では、13nmの波長の極端紫外線光112では、交互の層は約6.5nmの厚さである。提供されるサイズ及び寸法は、典型的な要素の通常の工学公差内であることが理解される。
【0050】
物理気相堆積技法を使用して形成された多層反射スタック340の層の物理的寸法は、反射率を高めるために正確に制御される。層の厚さにより、極端紫外線反射素子のピーク反射率波長が決定する。層の厚さが正確でない場合、所望の波長13.5nmでの反射率が低下する。1つ以上の実施形態では、第1の層342及び第2の層346の各々は、3nmから5nmの範囲、3.5nmから4.5nmの範囲、又は3nmから4nmの範囲の厚さを有する。1つ以上の実施形態では、第1の層342の厚さと第2の層346の厚さとは異なる。
【0051】
1つ以上の実施形態では、多層反射スタック340は、交互の第1の層342及び第2の層346の各々の間に少なくとも1つの界面層344を含む。理論に束縛されることは意図していないが、アニーリングにより、多層反射スタックの交互の層間に、より厚い界面層の形成が誘発されると考えられる。多層反射スタック内のより厚い界面層は、多くの場合、EUVマスクブランクの反射率の低下を引き起こす。より厚い界面層を有する典型的な多層反射スタックでは、アニーリング後に反射率が約1.5%低下する。また、反射率が低いとスループットが低下し、EUVリソグラフィプロセスの消費電力が増加する。有利なことに、本明細書に記載される界面層344は、アニール後の厚さの増加が少なく、従って、典型的なEUVマスクブランクと比較して、反射率の低下が少なく、スループットが向上し、消費電力が削減されることが判明した。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344は、アニーリング後に20%を超えて増加しない厚さを有する。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344は、アニーリング後に15%を超えて増加しない厚さ、アニーリング後に10%を超えて増加しない厚さ、アニーリング後に5%を超えて増加しない厚さ、又はアニーリング後に1%を超えて増加しない厚さを有する。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344は、0.5nmから2nmの範囲、0.8nmから1.5nmの範囲、又は0.8nmから1.2nmの範囲の厚さを有する。
【0052】
1つ以上の実施形態では、第1の層342及び第2の層346は、ケイ素(Si)とモリブデン(Mo)、及びケイ素(Si)とルテニウム(Ru)のうちの1つ以上を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はケイ素(Si)を含み、第2の層346はモリブデン(Mo)を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はモリブデン(Mo)を含み、第2の層346はケイ素(Si)を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はケイ素(Si)を含み、第2の層346はルテニウム(Ru)を含む。1つ以上の実施形態では、第1の層342はルテニウム(Ru)を含み、第2の層346はケイ素(Si)を含む。
【0053】
1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344は、シリコン・オン・モリブデン、モリブデン・オン・シリコン、シリコン・オン・ルテニウム、及びルテニウム・オン・シリコンのうちの1つ以上を含む。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344は、多層スタック340の密度の少なくとも95%の密度を有する。1つ以上の実施形態では、界面層344は、多層スタック340の密度の少なくとも85%、少なくとも75%、少なくとも65%、又は少なくとも50%の密度を有する。
【0054】
1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344が第1の層342又は第2の層346のうちの1つ以上の上又はすぐ上にない場合に、少なくとも1つの界面層344は、少なくとも1400℃、少なくとも1200℃、少なくとも1000℃、少なくとも800℃、少なくとも600℃、又は少なくとも400℃の温度で熱的に安定している。1つ以上の実施形態では、前述の温度は、各温度における界面層材料自体の安定性を指す。言い換えれば、界面層材料が他の材料と接触せずに単独で温度に曝露される場合、その材料は上記の温度で安定である。しかしながら、界面層が他の材料、例えばその上下の層と接触している場合、600℃を超える高温では、隣接する層からの材料の原子が界面層へと拡散しうる。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344が約600℃を超える温度で第1の層342上に存在する場合、第1の層342からのケイ素(Si)が界面層344内に拡散しうる。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの界面層344が約600℃を超える温度で第2の層346上に存在する場合、第2の層346の1つ以上の元素は界面層344内に拡散しうる。1つ以上の実施形態では、界面層344は、少なくとも500℃、少なくとも300℃、又は少なくとも200℃の温度で、厚さが増加しない、又は化学量論を変化させない。
【0055】
1つ以上の実施形態では、極端紫外線反射素子300は、平滑化層360を備えている。
図4に示される実施形態では、平滑化層360は多層反射スタック340上にあり、キャッピング層340は平滑化層360上にある。1つ以上の実施形態では、平滑化層360は、ケイ化モリブデン(MoSi)、炭化ホウ素(B
4C)、及び窒化ケイ素(SiN)からなる群より選択される。1つ以上の実施形態では、ケイ化モリブデン(MoSi)、炭化ホウ素(B
4C)、及び窒化ケイ素(SiN)の各々は、破壊するのが難しい強力な結合を形成する。1つ以上の実施形態では、平滑化層360は熱的に安定している。1つ以上の実施形態では、平滑化層360は、0.5nmから2nmの範囲、0.8nmから1.5nmの範囲、又は0.8nmから1.2nmの範囲の厚さを有する。
【0056】
極端紫外線反射素子300は、多層反射スタック340上にキャッピング層370を含む。
図4に示される実施形態では、極端紫外線反射素子300は、平滑化層360上にキャッピング層370を含む。1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、洗浄中の浸食に耐えるのに十分な硬さを有するさまざまな材料から形成される。一実施形態では、ルテニウム(Ru)は、良好なエッチング停止材であり、動作条件下で比較的不活性であることから、キャッピング層材料として用いられる。しかしながら、幾つかの実施形態では、キャッピング層370を形成するために他の材料が用いられることが理解される。1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、2nmから5nmの範囲、2.5nmから4nmの範囲、又は2.5nmから3nmの範囲の厚さを有する。
【0057】
1つ以上の実施形態では、より硬い材料で形成された多層反射スタック340の上にキャッピング層370を形成することにより、反射率が向上する。幾つかの実施形態では、反射率の増加は、低粗さの層、層間のクリーンな界面、改良された層材料、又はそれらの組合せを使用して達成される。
【0058】
1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、極端紫外線光112の透過を可能にする保護層である。1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、多層反射スタック340のすぐ上に形成される。1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、多層反射スタック340を汚染物質及び機械的損傷から保護する。一実施形態では、多層反射スタック340は、酸素、炭素、炭化水素、又はそれらの組合せによる汚染に敏感である。一実施形態によるキャッピング層370は、汚染物質と相互作用して汚染物質を中和する。
【0059】
1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、極端紫外線光112に対して透明な光学的に均一な構造である。極端紫外線光112は、キャッピング層370を通過して、多層反射スタック340で反射する。1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、1%から2%の全反射率損失を有する。1つ以上の実施形態では、異なる材料の各々は、厚さに応じて異なる反射率損失を有するが、それらはすべて、1%から2%の範囲であろう。
【0060】
1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は滑らかな表面を有する。例えば、幾つかの実施形態におけるキャッピング層370の表面は、0.2nmRMS(平均二乗根測定)未満の粗さを有する。別の例では、キャッピング層370の表面は、1/100nmと1/1μmの間の範囲の長さについて、0.08nmRMSの粗さを有する。
【0061】
キャッピング層370はさまざまな方法によって形成される。ある実施形態では、キャッピング層370は、マグネトロンスパッタリング、イオンスパッタリングシステム、イオンビーム堆積、エレクトロンビーム蒸発、高周波(RF)スパッタリング、原子層堆積(ALD)、パルス状レーザ堆積、カソードアーク堆積、又はそれらの組合せを用いて、多層反射スタック340上又は多層反射スタック340のすぐ上に形成される。1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、正確な厚さ、低い粗さ、及び層間のクリーンな界面を含む、マグネトロンスパッタリング技法によって形成される物理的特性を有する。ある実施形態では、キャッピング層370は、正確な厚さ、低い粗さ、及び層間のクリーンな界面を含む、物理気相堆積によって形成される物理的特性を有する。1つ以上の実施形態では、キャッピング層370は、本明細書に記載される方法のいずれかを使用して、平滑化層360上又は平滑化層360のすぐ上に形成される。
【0062】
吸収層380は、極端紫外線光112を吸収する層である。吸収層380は、極端紫外線光112を反射しない領域を提供することによって、EUV反射マスク106上にパターンを形成するために用いられる。吸収層380は、1つ以上の実施形態によれば、約13.5nmなどの極端紫外線光112の特定の周波数に対して高い吸収係数を有する材料を含む。ある実施形態では、吸収層380はキャッピング層370のすぐ上に形成され、吸収層380は、フォトリソグラフィプロセスを使用してエッチングされて、EUV反射マスク106のパターンを形成する。
【0063】
1つ以上の実施形態によれば、キャッピング層370の上に吸収層380を形成することにより、EUV反射マスク106の信頼性が高まる。キャッピング層370は、吸収層380のためのエッチング停止層として機能する。
図2のマスクパターン114が吸収層380内へとエッチングされると、吸収層380の下のキャッピング層370がエッチング動作を停止し、多層反射スタック340を保護する。1つ以上の実施形態では、吸収層380はキャッピング層370に対して選択的にエッチングされる。幾つかの実施形態では、キャッピング層370はルテニウムを含み、吸収層380はルテニウムに対して選択的にエッチングされる。
【0064】
1つ以上の実施形態では、吸収層380は0.93未満の「n」値を有し、これは約180度から約220度の範囲の位相シフトを提供する。約0.93未満の「n」値は、正規化画像対数勾配(NILS)を改善し、3D効果を軽減する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「正規化画像対数勾配(NILS)」とは、空中像のリソグラフィ品質を説明する指標を指す。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「n」又は「n値」は屈折率を指す。屈折率は、ある媒体から別の媒体へと通過するときの光線の曲がりを測定したものである。「n」値が低いと、NILSが改善され、3D効果が軽減される。
【0065】
ある実施形態では、吸収層380は、約50nm未満、約45nm未満、約40nm未満、約35nm未満、約30nm未満、約25nm未満、約20nm未満、約15nm未満、約10nm未満、約5nm未満、約1nm未満、又は約0.5nm未満を含む、約55nm未満の厚さを有する。他の実施形態では、吸収層380は、約1nmから約54nm、1nmから約50nm、及び15nmから約50nmの範囲を含む、約0.5nmから約55nmの範囲の厚さを有する。
【0066】
図5には、アニールして多層膜400を形成した後の
図4の極端紫外線反射素子300の一実施形態が示されている。
図5に示される実施形態は、基板310上の多層膜400、基板310上のアニーリングされたシリコン層321、該アニーリングされたシリコン層321上の三重層325、該三重層325上の多層反射スタック340、該多層反射スタック340上の平滑化層360、該平滑化層上のキャッピング層370、及び該キャッピング層370上の吸収層380を含む。
【0067】
1つ以上の実施形態では、アニーリング多層膜400は、180℃から250℃の範囲の温度で5分から60分の範囲の時間行われる。
【0068】
極端紫外線反射素子300は、アニーリング前に約66.8%の反射率を有する。1つ以上の実施形態では、多層膜400は、アニーリング後に約66.1%の反射率を有する。典型的なEUVマスクブランクは、アニーリング前に約65.6%の反射率、アニーリング後に約64.2の反射率を有する。以下にさらに記載されるように、本開示のEUVマスクブランク204は、アニーリングの前後で、典型的なEUVマスクブランクより高い反射率を有する。
【0069】
1つ以上の実施形態では、アニーリングプロセスは、
図4の第2の膜層324を
図5に示されるアニーリングされたシリコン層321の三重層325へと変換する。1つ以上の実施形態では、三重層325は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、及びチタン(Ti)のうちの1つ以上のケイ化物を含む第1の層326と、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、及びチタン(Ti)からなる群より選択される元素を含む第2の層328と、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、鉄(Fe)、及びチタン(Ti)のうちの1つ以上のケイ化物を含む第3の層330とを含む。1つ以上の実施形態では、三重層325の第1の層326は、1nmから3nmの範囲、1nmから2nmの範囲、又は1.5nmから2nmの範囲の厚さを有する。1つ以上の実施形態では、三重層325の第2の層328は、1nmから3nmの範囲、1.5nmから2.5nmの範囲、又は1.5nmから2nmの範囲の厚さを有する。1つ以上の実施形態では、三重層325の第3の層330は、1nmから3nmの範囲、1.5nmから2.5nmの範囲、又は1.5nmから2nmの範囲の厚さを有する。1つ以上の実施形態では、第1の層326、第2の層328、及び第3の層330の各々は、同じ厚さを有する。1つ以上の実施形態では、第1の層326、第2の層328、及び第3の層330の各々は、異なる厚さを有する。
【0070】
理論に束縛されることは意図していないが、アニーリングにより、多層反射スタックの交互の層間に、より厚い界面層の形成が引き起こされると考えられる。ルテニウム・オン・シリコンを含む界面層の形成は、表面粗さの増加に寄与すると考えられる。有利なことに、ルテニウム・オン・シリコンを含む界面層346上の平滑化層が表面粗さを低減することが発見された。
【0071】
1つ以上の実施形態では、平滑化層360は、平滑化層を有しない多層膜と比較して、多層膜400の表面粗さを低減する。1つ以上の実施形態では、多層膜400の表面粗さは、0.10nmから0.20nmの範囲内にある。1つ以上の実施形態では、平滑化層を有しない多層膜は、少なくとも0.20nmの表面粗さを有する。
【0072】
1つ以上の実施形態では、多層膜の応力は、干渉計を使用してEUVマスクブランク204、又は多層膜400の全体的な平坦度を測定することによって測定することができる。1つ以上の実施形態では、干渉計は、アニーリング前とアニーリング後の全体的な平坦度を測定するために用いられる。1つ以上の実施形態では、平滑化層360は、EUVマスクブランク204又は多層膜400のうちの1つ以上の応力を軽減する。1つ以上の実施形態では、多層膜400の応力は、アニーリング前の約600nmからアニーリング後の約200nmに減少する。1つ以上の実施形態では、平滑層のない多層膜の応力は、アニーリング前の約800nmからアニーリング後の約400nmに減少する。
【0073】
次に
図6を参照すると、一実施形態によるマルチカソード源チャンバ600の上部が示されている。マルチカソードチャンバ600は、上部アダプタ604によって蓋がされた円筒形の本体部分602を備えたベース構造601を含む。上部アダプタ604は、該上部アダプタ604の周りに位置づけられたカソード源606、608、610、612、及び614などの複数のカソード源を備えている。1つ以上の実施形態によるカソード源606、608、610、612、及び614は、多層反射スタック、吸収材、キャッピング層、二重層膜、及び平滑化層を形成するように、本明細書に記載されるような異なる材料を含む。
【0074】
幾つかの実施形態では、マルチカソード源チャンバ600は、
図3に示されるシステムの一部である。ある実施形態では、極端紫外線(EUV)マスクブランク製造システムは、真空を生成するための基板ハンドリング真空チャンバ、基板ハンドリング真空チャンバにロードされた基板を真空中で搬送するための基板ハンドリングプラットフォーム、及びEUVマスクブランクを形成するために基板ハンドリングプラットフォームによってアクセスされる複数のサブチャンバであって、基板上に反射層の多層スタックを含み、該多層スタックが複数の反射層の対、反射層の多層スタック上のキャッピング層、及びキャッピング層上の吸収層を含む、複数のサブチャンバを含む。該システムは、
図4又は
図5に関して示されるEUVマスクブランクを製造するために用いられ、
図4~5に関して記載されるEUVマスクブランクに関して説明される特性のいずれかを有する。
【0075】
プロセスは、概して、プロセッサによって実行されると、処理チャンバに本開示の処理を実行させるソフトウェアルーチンとしてメモリに格納されうる。ソフトウェアルーチンはまた、プロセッサによって制御されているハードウェアから遠隔に位置している第2のプロセッサ(図示せず)によって格納及び/又は実行することができる。本開示の方法の幾つか又はすべてをハードウェアで実行することもできる。したがって、プロセスは、ソフトウェアに実装されてもよく、かつ、例えば、ハードウェア内のコンピュータシステムを特定用途向け集積回路又は他の種類のハードウェアの実装、若しくはソフトウェアとハードウェアとの組合せとして使用して、プロセスを実行することもできる。ソフトウェアルーチンは、プロセッサによって実行されると、汎用コンピュータを、プロセスが実行されるようにチャンバの動作を制御する特定用途向けコンピュータ(コントローラ)に変換する。
【0076】
この明細書全体を通じての、「一実施形態(one embodiment)」、「ある特定の実施形態(certain embodiments)」、「1つ以上の実施形態(one or more embodiments)」、又は、「実施形態(an embodiment)」に対する言及は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに、この明細書全体のさまざまな箇所での「1つ以上の実施形態で」、「ある実施形態で」、「一実施形態で」、又は「実施形態において」などの表現の表出は、必ずしも、本開示の同一の実施形態に言及するものではない。さらには、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0077】
本明細書の開示は特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は単なる例示であるものと理解されたい。本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に対してさまざまな修正及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内である修正及び変形を含むことが意図されている。
【国際調査報告】