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特表2024-531056有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置
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  • 特表-有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置 図1
  • 特表-有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20240822BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240822BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20240822BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K50/10
C08G75/045
G09F9/30 365
G09F9/30 309
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501806
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2022006954
(87)【国際公開番号】W WO2023017966
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0104652
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ソン リョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ミョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ジ ヒュン
【テーマコード(参考)】
3K107
4J030
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107CC33
3K107CC45
3K107EE49
3K107FF03
3K107FF06
3K107FF14
4J030BA03
4J030BA04
4J030BA33
4J030BA43
4J030BA44
4J030BA48
4J030BB06
4J030BB07
4J030BB13
4J030BC15
4J030BC37
4J030BC43
4J030BE04
4J030BF09
4J030BF12
4J030BG08
5C094AA31
5C094AA38
5C094BA27
5C094DA07
(57)【要約】
窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物;炭素、水素、硫黄および酸素のみからなるチオール基含有化合物;および開始剤を含むものである、有機発光素子封止用組成物およびそれにより形成された有機層を含む有機発光素子表示装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物、炭素、水素、硫黄および酸素のみからなるチオール基含有化合物および開始剤を含むものである、有機発光素子封止用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、
前記窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物20重量部~90重量部、
前記チオール基含有化合物10重量部~80重量部、
前記窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物と前記チオール基含有化合物の合計100重量部に対して、前記開始剤0.01重量部~10重量部を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項3】
前記チオール基含有化合物は、下記化学式4の化合物を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物:
【化1】

(前記化学式4で、
Aは、置換または非置換の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、或いは置換または非置換の炭素数6~10の芳香族炭化水素基、
,R,Rは、互いに独立して、チオール基、下記化学式4-1、下記化学式4-2または下記化学式4-3で、
【化2】

(前記化学式4-1で、*は元素の連結部位、
11は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基)
【化3】

(前記化学式4-2で、*は元素の連結部位、
12,R13は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基、
eは、0または1)
【化4】

(前記化学式4-3で、*は元素の連結部位、
14,R15は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基、
fは、0または1)
10は、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、或いは置換または非置換の炭素数6~10のアリール基で、
a,b,cはそれぞれ0~5の整数、a+b+cは1以上の整数、
dは0~5の整数)。
【請求項4】
前記チオール基含有化合物は、下記化学式5-1~化学式5-9の1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物:
【化5】
【請求項5】
前記窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物は、下記化学式1、下記化学式2の1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物:
【化6】

(前記化学式1で、
、R、Rは、それぞれ、アリル基、メタアリル基、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~10のアリール基、置換または非置換の炭素数7~10のアリールアルキル基またはグリシジル基で、
、R、Rの一つ以上は、アリル基またはメタアリル基である)。
【化7】

(前記化学式2で、
は、アリル基またはメタアリル基、
は、置換または非置換の、窒素含有環型官能基、
は、アリル基、メタアリル基、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~10のアリール基、置換または非置換の炭素数7~10のアリールアルキル基あるいはグリシジル基で、又は、
とRは、互いに連結されて、置換または非置換の、窒素含有環型官能基を形成する)。
【請求項6】
前記窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物は、下記化学式3-1~化学式3-11の1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物:
【化8】

【化9】
【請求項7】
前記開始剤は、光反応開始波長が200nm~400nmを有する、リン系開始剤、ケトン系開始剤の1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、無溶剤タイプのものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項9】
前記組成物は、25±2℃で粘度が7cps~100cpsのものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の有機発光素子封止用組成物で形成された有機層を含む、有機発光素子表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、外部の水分、酸素等が浸透すると、損傷し易くなり、機能が失われて信頼性が下がり得る。よって、有機発光素子は、有機発光素子封止用組成物で形成される有機層と無機層を含む封止層によって封止される必要がある。
【0003】
一方、有機発光素子表示装置において、有機発光素子には封止層以外にも各種ディスプレイ素子が上部、下部にそれぞれ追加積層される。ところが、前記ディスプレイ素子から出る各種電気、静電気または電磁波は、有機発光素子に影響を及ぼすことになる。これらディスプレイ素子から出る各種電気、静電気または電磁波によって、有機発光素子は誤作動を起こしたり、或いは機能が相殺し得る。
【0004】
よって、有機発光素子を封止する基本的な機能を備えつつ、誘電率が低く有機発光素子に追加素子が積層されても影響を最小化する必要がある。一方、近年、フレキシブル表示装置に対する関心が急増すると共に、柔軟性に優れてフレキシブル表示装置に使用できる有機層を形成することのできる組成物が要求されている。
【0005】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第10-2016-0150255号等に記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、硬化後の誘電率が低い有機層を形成できる有機発光素子封止用組成物を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、硬化後の耐プラズマ性に優れた有機層を形成できる有機発光素子封止用組成物を提供することである。
【0008】
本発明のまた別の目的は、表面が均一な有機層を形成し、硬度、硬化率およびインクジェットのジェッティング性に優れた有機発光素子封止用組成物を提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、柔軟性に優れてフレキシブル(flexible)表示装置に適用される有機層を形成する有機発光素子封止用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点は、有機発光素子封止用組成物である。
【0011】
有機発光素子封止用組成物は、窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物;炭素、水素、硫黄および酸素のみからなるチオール基含有化合物;および開始剤を含む。
【0012】
本発明の有機発光素子表示装置は、本発明の有機発光素子封止用組成物で形成された有機層を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、硬化後の誘電率が低い有機層を形成できる有機発光素子封止用組成物を提供する。
【0014】
本発明は、硬化後の耐プラズマ性に優れた有機層を形成できる有機発光素子封止用組成物を提供する。
【0015】
本発明は、適正粘度を有して表面が均一な有機層を形成し、硬度、硬化率およびインクジェットのジェッティング性に優れた有機発光素子封止用組成物を提供する。
【0016】
本発明は、柔軟性に優れてフレキシブル表示装置に適用される有機層を形成する有機発光素子封止用組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明にかかる一実施例の有機発光表示装置の断面図である。
図2図2は、本発明にかかる別の実施例の有機発光表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明を実施するための最善の形態]
添付の図面を参考して、実施例によって本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明を詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似する構成要素については、同じ図面符号を付けた。図面において各構成要素の長さ、大きさは、本発明を説明するためのものであり、本発明が図面に記載の各構成要素の長さ、大きさに制限されるのではない。
【0019】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0020】
本明細書において、「置換された」は、別途の定義がない限り、本発明の官能基の一つ以上の水素原子が、ハロゲン(F,Cl,BrまたはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、イミノ基(=NH,=NR,Rは、炭素数1~10のアルキル基である)、アミノ基(-NH,-NH(R’),-N(R”)(R”’),R’,R”,R”’は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジンまたはヒドラゾン基、カルボキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロアリール基、または炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基で置換されることを意味し得る。
【0021】
本明細書の数値範囲の記載時、「X~Y」は、X以上Y以下(X≦そして≦Y)を意味する。
【0022】
本発明の一実施例の有機発光素子封止用組成物(以下、「組成物」とする)は、窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物;炭素、水素、硫黄および酸素だけからなるチオール基含有化合物;および開始剤を含む。本発明の組成物を光硬化させて形成された有機層は、プラズマに対するエッチング率が低く耐プラズマ性に優れて有機発光素子の寿命を延ばすことができ、誘電率が低く有機層に絶縁性能を付与することにより、有機層の外部から有機発光素子への電気、静電気または電磁波の移動を遮断することで、封止層内の有機発光素子の性能具現を妨害しなくなり得る。また、本発明の組成物は、インクジェットのジェッティング性に適した粘度を有することにより、インクジェットのジェッティング性に優れて表面が均一な有機層を形成することができる。また、本発明の組成物は、柔軟性に優れてフレキシブル表示装置に適用される有機層を形成することができる。また、本発明の組成物は、硬度に優れた有機層を形成することができる。
【0023】
一実施例において、本発明の組成物は、硬化後の誘電率が3.5以下、具体的には2.0~3.3になり得る。前記範囲において、外部の静電気または電気によって影響を受けず、有機発光素子の性能がうまく具現されるようにすることができる。
【0024】
一実施例において、本発明の組成物は、硬化後に下記数式1によるプラズマエッチング率が6.5%以下、具体的には0%~6.5%、より具体的には0%~3.5%になり得る。前記範囲で、有機層上に無機層を形成する際に有機層が損傷しなくなることにより、有機発光素子の寿命を延ばすことができる:
【0025】
【数1】
【0026】
(前記数式1で、T1は、前記組成物をシリコンウエハに蒸着および100mW/cmで10秒間UV照射して光硬化させて得た有機層の初期厚さ(単位:μm)、
T2は、ICP power:2500W,RE power:300W,DCbias:200V,Ar flow:50sccm,ethching time:1min,pressure:10mtorrの条件で前記有機層にICP CVD(inductively coupled plasma chemical vapor deposition)を用いて誘導結合プラズマ(ICP,inductively coupled plasma)を処理した後の前記有機層の厚さ(単位:μm))。
【0027】
前記有機層の厚さ(又は高さ)は、FE-SEM(Hitachi High Technologies Corporation社)によって測定できるが、これに制限されるのではない。
【0028】
以下、本発明の一実施例の組成物中の各成分に対して詳しく説明する。
【0029】
(A)窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物
窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物は、組成物に含まれて有機層の誘電率を下げ、プラズマエッチング率の改善を助け得る。本発明者は、窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物が下記で詳述するチオール基含有化合物と一緒に硬化された際に形成された有機層が、誘電率が低くプラズマエッチング率の改善効果を具現できることを確認した。
【0030】
窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物は、光硬化性化合物として、1個以上、好ましくは1個~3個のアリル基またはメタアリル基を有し、下記で詳述する開始剤によって硬化し得る。これにより、本発明の組成物は、本発明の上述の効果を容易に具現することができる。
【0031】
窒素含有環型構造は、1個以上の窒素および炭素で形成される脂環族または芳香族の環型構造を含み得る。一具体例において、前記環型構造は、環型構造を形成する炭素個数が3~10で、単一環または複素環の、脂環族または芳香族環型構造を含み得る。好ましくは、前記環型構造は1個以上、好ましくは1個~3個のカルボニル基(-(C=O)-)を有することにより、本発明の効果の具現がより容易になり得る。
【0032】
例えば、窒素含有環型構造は、イソシアヌレート基、ピペリジン基、ピペリジンオン基、ピペリジンジオン基、ピロリジン基、ピロリジンジオン基、ピリジン基、インドール基、少なくとも一部が水素化されたインドール基、インドールジオン基、少なくとも一部が水素化されたイソインドールジオン基、ピリジンジオン基、ピロールジオン基の1種以上を含み得る。好ましくは、窒素含有環型構造は、イソシアヌレート基になり得る。
【0033】
一具体例において、前記化合物は、下記化学式1、下記化学式2の1種以上を含み得る:
【0034】
【化1】
【0035】
(前記化学式1で、
、R、Rは、それぞれ、アリル基、メタアリル基、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~10のアリール基、置換または非置換の炭素数7~10のアリールアルキル基またはグリシジル基で、
、R、Rの一つ以上は、アリル基またはメタアリル基である)。
【0036】
【化2】
【0037】
(前記化学式2で、
は、アリル基またはメタアリル基、
は、置換または非置換の、窒素含有環型官能基、
は、アリル基、メタアリル基、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~10のアリール基、置換または非置換の炭素数7~10のアリールアルキル基あるいはグリシジル基で、又は、
とRは、互いに連結されて、置換または非置換の、窒素含有環型官能基を形成する)。
【0038】
前記化学式2で、窒素含有環型官能基は、ピペリジン基、ピペリジンオン基(特に制限されないが、下記化学式2-1)、ピペリジンジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-2)、ピロリジン基、ピロリジンジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-3)、ピリジン基(特に制限されないが、下記化学式2-10)、インドール基、少なくとも一部が水素化されたインドール基、インドールジオン基、少なくとも一部が水素化されたイソインドールジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-4、下記化学式2-5、化学式2-8または化学式2-9)、ピリジンジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-6)、ピロールジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-7)の一つ以上になり得る:
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
(前記化学式2-1~化学式2-10で、*は化学式2のRとの連結部位である)。
【0042】
好ましくは、窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物は、下記化学式3-1~化学式3-11の1種以上を含み得る:
【0043】
【化5】
【0044】
【化6】
【0045】
窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物は、前記(A)成分と下記(B)成分の合計100重量部中、20重量部~90重量部、具体的には、20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90重量部、例えば20重量部~80重量部で含まれ得る。前記範囲で、組成物で形成された有機層の誘電率が低くなり、プラズマエッチング率の改善を助け得る。
【0046】
(B)チオール基含有化合物
チオール基(-SH)含有化合物は、組成物に含まれて組成物の硬化率を高めることにより、有機層の鉛筆硬度を高めることができる。チオール基含有化合物は、組成物に含まれて組成物の粘度を調節することにより、インクジェッティング性も改善することができる。
【0047】
チオール基含有化合物は、1個以上のチオール基を有する光硬化性化合物を含み得る。好ましくはチオール基含有化合物は1個~3個、より好ましくは1個~2個のチオール基を有することにより、組成物の硬化率をより高め、インクジェッティング性を改善することができる。
【0048】
チオール基含有化合物は、炭素、水素、硫黄および酸素だけからなる化合物である。
【0049】
チオール基含有化合物は、下記化学式4の化合物を含み得る:
【0050】
【化7】
【0051】
(前記化学式4で、
Aは、置換または非置換の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、或いは置換または非置換の炭素数6~10の芳香族炭化水素基、
,R,Rは、互いに独立して、チオール基(-SH)、下記化学式4-1、下記化学式4-2または下記化学式4-3で、
【0052】
【化8】
【0053】
(前記化学式4-1で、*は元素の連結部位、
11は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基)
【0054】
【化9】
【0055】
(前記化学式4-2で、*は元素の連結部位、
12,R13は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基、
eは、0または1)
【0056】
【化10】
【0057】
(前記化学式4-3で、*は元素の連結部位、
14,R15は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基、
fは、0または1)
10は、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、或いは置換または非置換の炭素数6~10のアリール基で、
a,b,cはそれぞれ0~5の整数、a+b+cは1以上の整数、
dは0~5の整数)。
【0058】
前記化学式4中の「置換」において、置換基は、炭素、水素、硫黄および酸素だけからなる。
【0059】
前記化学式4中「脂肪族炭化水素基」、「芳香族炭化水素基」は、1価~4価の炭化水素基になり得る。一具体例において、「炭素数1~10の脂肪族炭化水素基」は、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルキレン基になり得る。一具体例において、「炭素数6~10の芳香族炭化水素基」は、炭素数6~10のアリーレン基または炭素数6~10のアリール基になり得る。
【0060】
好ましくは、a,b,cは、それぞれ0~3の整数になり得る。好ましくは、a+b+cは1~5の整数、1~3の整数になり得る。好ましくは、dは0~3の整数になり得る。
【0061】
好ましくは、チオール基含有化合物は、下記化学式5-1~化学式5-9の1種以上を含み得る:
【0062】
【化11】
【0063】
チオール基含有化合物は、前記(A)成分と(B)成分の合計100重量部中、10重量部~80重量部、具体的には、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80重量部、例えば20重量部~80重量部で含まれ得る。前記範囲で、組成物の硬化率を高めて形成された有機層の鉛筆硬度を高め、プラズマエッチング率および誘電率の改善を助け得る。
【0064】
(A)窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物および(B)チオール基含有化合物の合計は、組成物中の光硬化性成分100重量部中95重量部以上、例えば98重量部~100重量部、例えば100重量部で含まれ得る。
【0065】
開始剤
開始剤は、光ラジカル開始剤として光硬化性反応を行える通常の光重合開始剤を制限なく含むことができる。例えば、光重合開始剤は、トリアジン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、リン系、ケトン系、オキシム系またはこれらの混合物を含み得る。
【0066】
好ましくは、開始剤は、200nm~410nm、好ましくは300nm~400nm、より好ましくは360nm~400nmで光反応開始波長を有する、リン系開始剤、ケトン系開始剤の1種以上を含み得る。前記開始剤を使用する場合、本発明の組成物において長波長のUV(例:300nm~410nm)でより良い開始性能を表し得る。前記「光反応開始波長」は、当業者に知られている通常の方法で測定したり、該当物質の製品カタログを参照することができる。
【0067】
リン系開始剤は、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィナート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィナート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)メトキシフェニルホスフィナート、ビスアシルホスフィンオキシド、メチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、またはこれらの混合物になり得る。
【0068】
ケトン系開始剤は、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等になり得るが、これに制限されるのではない。
【0069】
前記「光反応開始波長」は、当業者に知られている通常の方法で測定されたり、製品カタログを参考して得た値になり得る。
【0070】
開始剤は、単独または2種以上を混合して含むことができる。開始剤は、前記(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01重量部~10重量部、例えば1重量部~5重量部で含まれ得る。前記範囲で、組成物の硬化率が高くなり、残量の開始剤が残って光透過率が低くなることを防ぐことができる。
【0071】
本発明の組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分および開始剤を混合して形成できる。例えば、本発明の組成物は、溶剤を含まない無溶剤タイプに形成することができる。
【0072】
本発明の組成物は、光硬化型組成物として、UV波長で10mW/cm~500mW/cmで1秒~50秒間UV照射によって光硬化されることより、封止層を形成することができる。
【0073】
本発明の組成物は、当業者に知られている通常の添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤等を含むことができるが、これに制限されるのではない。
【0074】
本発明の組成物は、25±2℃(23℃~27℃)における粘度が7cps~100cps、好ましくは7cps~60cps、より好ましくは7cps~50cpsになり得る。前記範囲で、封止用組成物のインクジェッティング性に優れ得る。
【0075】
本発明の組成物は、光硬化率が85%以上、具体的には85%~100%になり得る。前記範囲で、組成物で形成された有機層の膜強度が優れて素子の寿命を延ばすことができる。
【0076】
本発明の組成物は、光硬化後に得た有機層の鉛筆硬度が4H以上、例えば4H~6Hになり得る。前記範囲で、強い膜強度で後続工程の安定した進行が可能になり得る。
【0077】
本発明の組成物は、有機発光素子を封止する際に使用できる。具体的には、前記組成物は、無機層と有機層が順に形成される封止構造で有機層を形成することができる。
【0078】
本発明の組成物は、装置用部材、特に、ディスプレイ装置用部材として周辺環境の気体または液体、例えば大気中の酸素および/または水分および/または水蒸気と電子製品に加工する際に使用された化学物質の透過によって分解されたり、不良となり得る装置用部材の封止用途としても使用できる。例えば、装置用部材は、照明装置、金属センサーパッド、マイクロディスクレーザー、電気変色装置、光変色装置、マイクロ電子機械システム、太陽電池、集積回路、電荷結合装置、発光重合体等になり得るが、これに制限されるのではない。
【0079】
本発明の有機発光素子表示装置は、本発明の一実施例の有機発光素子封止用組成物で形成された有機層を含み得る。具体的には、有機発光素子表示装置は、有機発光素子、および有機発光素子の上に形成され、無機層と有機層を含む障壁スタックを含み、有機層は、本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物で形成することができる。その結果、有機発光素子表示装置の信頼性が良くなり得る。
【0080】
好ましくは、有機発光素子表示装置は、フレキシブル有機発光素子表示装置になり得る。
【0081】
以下、図1を参考して本発明の一実施例の有機発光素子表示装置を説明する。図1は、本発明の一実施例の有機発光素子表示装置の断面図である。
【0082】
図1を参照すると、有機発光素子表示装置100は、基板10、基板10の上に形成された有機発光素子20、および有機発光素子20の上に形成され、無機層31と有機層32を含む障壁スタック30を含み、無機層31は有機発光素子20と接触する状態からなっており、有機層32は本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物で形成できる。
【0083】
基板10は、有機発光素子が形成され得る基板であれば特に制限されない。例えば、透明ガラス、プラスチックシート、シリコンまたは金属基板等のような物質からなり得る。
【0084】
有機発光素子20は、有機発光素子表示装置で通常使用されるものであり、図1で示してはいないが、第1電極、第2電極、第1電極と第2電極間に形成された有機発光膜を含み、有機発光膜は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が順に積層されたものになり得るが、これに制限されるのではない。
【0085】
障壁スタック30は、有機層と無機層を含み、有機層と無機層は、それぞれ層を構成する成分が互いに異なり、それぞれ有機発光素子封止機能を具現できる。
【0086】
無機層は、有機層と成分が相違することにより、有機層の効果を補完できる。例えば、無機層は、金属、非金属、金属間の化合物または合金、非金属間の化合物または合金、金属または非金属の酸化物、金属または非金属のフッ化物、金属または非金属の窒化物、金属または非金属の炭化物、金属または非金属の酸素窒化物、金属または非金属のホウ化物、金属または非金属の酸素ホウ化物、金属または非金属のシリサイド、またはこれらの混合物になり得る。金属または非金属は、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、セレニウム(Se)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、遷移金属、ランタン族金属、等になり得るが、これに制限されるのではない。具体的には、無機層は、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸素窒化物(SiOxNy)、ZnSe、ZnO、Sb、Al等を含むAlOx、In、SnOになり得る。
【0087】
無機層は、プラズマ工程、真空工程、例えば、スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴-プラズマ蒸気蒸着およびその組合せで蒸着され得る。
【0088】
有機層は、無機層と交互に蒸着する際、無機層の平滑化特性を確保し、無機層の欠陥がまた別の無機層に伝播されることを防ぐことができる。
【0089】
有機層は、本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物のコーティング、蒸着、硬化等の組合せによって形成され得る。例えば、有機発光素子封止用組成物を1μm~50μmの厚さにコーティングし、10mW/cm~500mW/cmで1秒~50秒間UV照射して硬化させることができる。
【0090】
障壁スタックは、有機層と無機層を含むが、有機層と無機層の総個数は制限されない。有機層と無機層の総個数は、酸素および/または水分および/または水蒸気および/または化学物質に対する透過抵抗性のレベルによって変更できる。例えば、有機層と無機層の総個数は10層以下、例えば2~7層になり得、具体的には、無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層の順に7層に形成することができる。
【0091】
障壁スタックで有機層と無機層は、交互に蒸着することができる。これは上述の組成物が有する物性によって生成された有機層に対する効果のためである。これによって、有機層と無機層は、装置に対する封止効果を補完または強化することができる。
【0092】
以下、図2を参考して本発明の別の実施例の有機発光素子表示装置を説明する。図2は、本発明の別の実施例の有機発光素子表示装置の断面図である。
【0093】
図2を参照すると、有機発光素子表示装置200は、基板10、基板10の上に形成された有機発光素子20、および有機発光素子20の上に形成され、無機層31と有機層32を含む障壁スタック30を含み、無機層31は有機発光素子20が収容された内部空間40を封止し、有機層32は本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物で形成できる。無機層が有機発光素子と接触しない点を除いては、本発明の一実施例の有機発光素子表示装置と実質的に同一である。
【0094】
[発明を実施のための形態]
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0095】
実施例と比較例で使用した成分の具体的な仕様は次の通りである。
【0096】
(A)窒素含有環型構造を有する、アリル系またはメタアリル系化合物
(A1)トリアリルイソシアヌレート(Aldrich社)
(A2)1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート(Shikoku社)
(A3)ジアリルn-プロピルイソシアヌレート(TCI社)
(A4)トリメタアリルイソシアヌレート(TCI社)
(B)チオール基含有化合物
(B1)1,10-デカンジチオール(TCI社)
(B2)1,4-ブタンジオールビス(チオグリコレート)(TCI社)
(B3)ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド(TCI社)
(C)ビニルエーテル系化合物
(C1)ジエチレングリコールジビニルエーテル(Aldrich社)
(C2)トリエチレングリコールジビニルエーテル(Aldrich社)
(D)開始剤
(D1)リン系開始剤(Irgacure TPO-L,(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィナート,BASF社,IGM社,光反応開始波長225~410nm))
(D2)光酸発生剤(Miphoto NIT,ミウォン商事)
(D3)ケトン系開始剤(Irgacure 369,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,IGM社,光反応開始波長:260~390nm) 。
【0097】
実施例1
(A1)55重量部,(B3)45重量部,(D1)3重量部を125mlの褐色ポリプロピレンの瓶に入れ、シェーカーを用いて3時間室温で混合して封止用組成物を製造した。
【0098】
実施例2~実施例8と比較例1~比較例6
実施例1で各成分の含量を下記表1(単位:重量部)のように変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で封止用組成物を製造した。下記表1で「-」は、該当成分が含有されていないことを意味する。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例と比較例で製造した組成物について下記物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0101】
(1)粘度(単位:cps):実施例と比較例の封止用組成物に対して、24.8℃で粘度測定器LV DV-II Pro(Brookfield社)を用いてスピンドル番号(No.spindle)40で測定した。
【0102】
(2)誘電率(単位なし):実施例と比較例の封止用組成物をクロム(Cr)板の上に所定の厚さで塗布し、100mW/cmで10秒間UV照射して光硬化させることにより、厚さ8μmの塗膜を形成した。前記塗膜の上にアルミニウムを蒸着した後、インピーダンス測定器(RDMS-200)で200kHz,25℃で誘電率を測定した。
【0103】
(3)インクジェットのジェッティング性:実施例と比較例の封止用組成物の滴下速度2.5μm/sec、インクジェットヘッド温度25~35℃でインクジェットをジェッティングさせた。インクジェットをジェッティングさせた際、dropの形態が正確な球形の場合はOK、球形ではない場合はNGで評価した。
【0104】
(4)鉛筆硬度:ガラス基板の上に封止用組成物をコーティングし、100mW/cmで10秒間UV照射してUV硬化させて、有機層試片を得る。有機層試片に対して鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定時、電動式鉛筆硬度テスト機(Lab-Q D300A)と鉛筆は、Mitsubishi社の6B~9Hの鉛筆を使用した。試片に対する鉛筆の荷重は500g、鉛筆の引っ掻き角度は45°、鉛筆を引っ掻く速度は48mm/minで行った。5回評価して1回以上スクラッチが発生したら鉛筆硬度の下の段階の鉛筆を用いて測定し、5回評価時に5回全てにスクラッチがなかった時の最大鉛筆硬度値である。
【0105】
(5)プラズマエッチング率(単位:%):封止用組成物をSiウエハに蒸着および100mW/cmで10秒間UV照射して光硬化させて有機層を形成した。光硬化させて有機層の初期厚さ(T1,単位:μm)を測定した。ICP power:2500W,RE power:300W,DC bias:200V,Ar flow:50sccm,ethching time:1min,pressure:10mtorrで有機層にICP CVD(BMR Technology社)を用いて誘導結合プラズマを処理した後、有機層の厚さ(T2,単位:μm)を測定した。下記数式1によってプラズマによる有機層のエッチング率を計算した。前記有機層の高さ(厚さ)はFE-SEM Hitachi High Technologies Corporation社によって測定した。
【0106】
【数2】
【0107】
【表2】
【0108】
*前記表2で、「-」は、比較例4~比較例6は硬化しなかったため結果を測定できなかったことを意味する。
【0109】
前記表2のように、本発明の有機発光素子封止用組成物は硬化後の誘電率が低く、耐プラズマ性に優れ、硬度に優れた有機層を形成した。また、本発明の組成物はインクジェットのジェッティング性に優れた。
【0110】
一方、本発明の組成から外れる比較例の組成物は、本発明の全ての効果を得ることができなかった。
【0111】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
図1
図2
【国際調査報告】