(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】燃料電池作動のために、メタノールまたはアンモニアから高純度水素を取得するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/32 20060101AFI20240822BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20240822BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240822BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240822BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20240822BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240822BHJP
【FI】
C01B3/32 A
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
B01D53/22
H01M8/0606
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506935
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2022071783
(87)【国際公開番号】W WO2023016879
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヘンシェル、カーステン
(72)【発明者】
【氏名】マッハハマー、オットー
(72)【発明者】
【氏名】フュッスル、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4D006
4G140
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006KA01
4D006KB30
4D006KE07R
4D006MA01
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4G140EA02
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4G140FE03
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB03
5H127AB05
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA03
5H127BA12
5H127BA17
5H127BA19
5H127BA21
5H127BA57
5H127EE12
5H127FF20
(57)【要約】
本発明は、例えば燃料電池作動のために、メタノールまたはアンモニアから水素を取得するための方法を含み、メタノールまたはアンモニアを、第1の工程において気化し、第2の工程において改質して水素含有ガス混合物を形成し、第3の工程において、300~600℃の温度でこのガス混合物から膜プロセスで水素を分離し、第4の工程において、膜プロセスのガス状残渣物を周囲空気で燃焼させ、このとき、第2の工程は、第3の工程とは別個の、この第3の工程の上流にあるプロセス工程であり、また燃焼ガスを少なくとも2つの異なる熱交換器に通過させることにより、燃焼ガスの流れ方向において、(i)まず、メタノールまたはアンモニアを改質するための反応熱を提供し、(ii)続いて、改質器フィードを気化するための気化熱を提供し、また膜プロセスの浸透物が、熱交換器においてバーナー用の周囲空気を予熱し、また(a)流出する浸透物と流入する周囲空気との間の温度差、および(b)流出する燃焼ガスと流入するメタノールまたはアンモニアとの間の温度差は、それぞれ1~200℃であり、また第3のプロセス工程中に、最大0~100℃のさらなる温度上昇が行われることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールまたはアンモニアから水素を取得するための方法において、メタノールまたはアンモニアを、第1の工程において気化し、第2の工程において改質して水素含有ガス混合物を形成し、第3の工程において、300~600℃の温度で前記ガス混合物から膜プロセスで水素を分離し、第4の工程において、前記膜プロセスの前記ガス状残渣物を周囲空気で燃焼させ、このとき、前記第2の工程は、前記第3の工程とは別個の、前記第3の工程の上流にあるプロセス工程であり、また燃焼ガスを少なくとも2つの異なる熱交換器に通過させることにより、前記燃焼ガスの流れ方向において、(i)まず、メタノールまたはアンモニアを改質するための反応熱を提供し、(ii)続いて、改質器フィードを気化するための気化熱を提供し、また前記膜プロセスの浸透物が、熱交換器においてバーナー用の前記周囲空気を予熱し、また(a)前記流出する浸透物と前記流入する周囲空気との間の温度差、および(b)前記流出する燃焼ガスと前記流入するメタノールまたはアンモニアとの間の温度差は、それぞれ1~200℃であり、また前記第3のプロセス工程中に、0~100℃の最大温度上昇が行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記燃焼ガスを、少なくとも3つの異なる熱交換器に通過させることにより、前記燃焼ガスの流れ方向において、(0)まず、前記改質物ガスを加熱し、次に、(i)メタノールまたはアンモニアを改質するための前記反応熱を提供し、(ii)続いて、メタノールまたはアンモニアを気化するための前記気化熱を提供することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改質の転化率は、80~95%であることを特徴とする、請求項1~3の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項4】
蒸発器熱交換器において、メタノールまたはアンモニアは、前記熱交換器の外部空間を通過し、前記燃焼ガスは前記熱交換器の配管を通過することを特徴とする、請求項1~3の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
前記周囲空気は、ジェットポンプを用いて吸引されることを特徴とする、請求項1~4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記流出する浸透物と前記流入する周囲空気との間の前記温度差、および(b)前記流出する燃焼ガスと前記流入するメタノールまたはアンモニアとの間の前記温度差は、それぞれ5~100℃であることを特徴とする、請求項1~5の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第3のプロセス工程中に、0~50℃の最大温度上昇が行われることを特徴とする、請求項1~6の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の工程では、膜プロセスにおいて400~600℃の温度で水素が分離されることを特徴とする、請求項1~7の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項9】
前記燃焼ガスは、改質器熱交換器と前記蒸発器熱交換器との間で第2のバーナーによって中間加熱されることを特徴とする、請求項1~8の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項10】
前記バーナーには、前記膜プロセスの残渣物に加えて、メタノールまたはアンモニアが供給されることを特徴とする、請求項1~9の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項11】
メタノールを使用して、前記燃焼ガスを少なくとも4つの異なる熱交換器に通過させることにより、前記燃焼ガスの流れ方向において、(i)まず、前記改質からの前記水素含有ガス混合物を加熱し、(ii)次に、前記改質のための前記反応熱を提供し、(iii)続いて、前記改質器フィードを気化するための前記気化熱を提供し、(iv)最後に、メタノールまたはメタノール・水混合物を予熱することを特徴とする、請求項1から10の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項12】
アンモニアを使用して、前記燃焼ガスを少なくとも3つの異なる熱交換器に通過させることにより、
前記燃焼ガスの流れ方向において、(0)まず、アンモニアを改質するために前記反応熱を提供し、次に、(i)蒸気のアンモニアをさらに加熱し、(ii)最後に、アンモニアを気化するための前記気化熱を提供する、
または
前記燃焼ガスの流れ方向において、(0)まず、前記改質ガスを加熱し、次に、(i)アンモニアを改質するために前記反応熱を提供し、(ii)さらに、蒸気のアンモニアをさらに加熱し、(iii)最後に、アンモニアを気化するための前記気化熱を提供することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12の少なくとも一項に記載の方法を実行するための装置であって、
-任意でメタノールまたはアンモニアを加熱するための装置と、
-蒸発装置と、
-改質反応器と、
-膜装置と、
-少なくとも1つのバーナーと、
-少なくとも2つの熱交換器と、
-前記蒸発装置、前記改質反応器、前記膜装置、前記バーナー、前記熱交換器、および任意でメタノールまたはアンモニアを加熱するための前記装置において、液体を導入および/または排出するための手段と、
を含む装置。
【請求項14】
前記熱交換器の管径は1~6mmである、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池作動のために、メタノールまたはアンモニアから水素を取得するための方法を含み、メタノールまたはアンモニアを、第1の工程において気化し、第2の工程において改質して水素含有ガス混合物を形成し、第3の工程において、300~600℃の温度でこのガス混合物から膜プロセスで水素を分離し、第4の工程において、膜プロセスのガス状残渣物を周囲空気で燃焼させ、このとき、第2の工程は、第3の工程とは別個の、この第3の工程の上流にあるプロセス工程であり、また燃焼ガスを少なくとも2つの異なる熱交換器に通過させることにより、燃焼ガスの流れ方向において、(i)まず、メタノールまたはアンモニアを改質するための反応熱を提供し、(ii)続いて、改質器フィードを気化するための気化熱を提供し、また膜プロセスの浸透物が、熱交換器においてバーナー用の周囲空気を予熱し、また(a)流出する浸透物と流入する周囲空気との間の温度差、および(b)流出する燃焼ガスと流入するメタノールまたはアンモニアとの間の温度差は、それぞれ1~200℃であり、また第3のプロセス工程中に、最大0~100℃のさらなる温度上昇が行われることを特徴とする。
【0002】
さらに、本発明は、メタノールまたはアンモニアから高純度水素を取得するための装置も含み、例えば燃料電池作動や水素スタンド、または小規模産業用途の分散型供給のために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】オンボード改質の全プロセスを示す図である。
【
図4】改質物ヒーター付きの変形形態を示す図である。
【
図5】改質物ヒーターなしの変形形態を示す図である。
【
図6】メタノールまたはアンモニアから高純度水素を取得するための装置を示す図である。
【
図7】改質物ヒーター付きの変形形態を示す図である。
【
図8】流出する流れと流入する流れとの温度差が、装置の熱交換器面積ならびにエネルギー利用率に及ぼす影響を示す図である。
【0004】
水素は、将来のエネルギー供給の重要な要素になるための望ましい前提条件を提供する。特に、輸送部門は、気候への配慮をさらに高めるという大きな課題に直面している。ドイツでは、CO2の全排出量のほぼ20パーセントを輸送が占めており、そのうちの約半分は自家輸送によるものである。
【0005】
バッテリ式電気自動車および燃料電池式電気自動車を含むエレクトロモビリティの導入により、輸送部門は石油ベースの燃料への依存度を減らすことができる。最適なケースでは、車両の作動に必要な電気または水素が再生可能エネルギー源から生産される。輸送部門では新しい燃料として水素が導入され、この水素は、燃料電池技術を使用する場合に有害物質を生成しない。
【0006】
燃料電池の使用において水素を使用可能にするには、非常に高い品質の水素がなければならない。というのも、不純物が触媒コンバータおよび膜に影響を及ぼすからである。
【0007】
水素は、現在、主に比較的大規模な水蒸気メタン改質(SMR)製造ユニットで集中的に製造される。次に、水素は高圧圧縮(最大350bar)され、希なケースでは液化も行われ、適切な輸送車両を使って水素スタンドなど、水素が必要な場所まで輸送される。しかし、より大きな水素スタンドでは、毎日トラックで水素を運ぶ必要があるので、車両による水素の輸送は不経済であり、かつ環境に優しくはない。
【0008】
車両輸送の他に、独立した純水素パイプラインが存在する。しかし、水素を大規模に水素スタンドに供給可能にするには、天然ガスネットワークと同様に、専用の高密度水素パイプラインネットワークを構築する必要があるだろう。しかしながら、その種のパイプラインネットワークは、インフラコストが非常に高く、しかも手間のかかる認可手続きが必要であるため、近い将来実現する可能性は低いと思われる。
【0009】
さらに、例えば電気分解または水蒸気メタン改質(SMR)のように、より小規模な製造ユニットにおいて水素を分散的に製造し、輸送経路を短縮したり、完全になくしたりすることも考えられる。
【0010】
水の電気分解には非常に大量の電気が必要であるが、水素スタンドのH2の貯蔵能力が低いため、その必要な電気は利用可能な系統電源から需要に応じて供給されなければならない。しかし、例えばドイツでは、系統電源が今後10年は高いカーボンフットプリントを有すると予想されるため、系統電源で製造された電気分解H2駆動車両は、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジン車よりも、今後10年間に全世界でより多くのCO2を排出することになる。
【0011】
メタノール(MeOH)は大規模に生産される基礎化学物質であり、19.9MJ/kgという高いエネルギー密度を持つため、優れたエネルギー源である。水素とは対照的に、メタノールは低コストで輸送することができる(O.Machhammer,「Regenerativer Strom aus Deutschland oder e-Fuels aus Chile:Worauf sollte die zukunftige Mobilitat bauen?,」Chemie Ingenieur Technik,No.4,2021)。輸送には、既存の原油輸送インフラが利用可能である。
【0012】
さらに、自動車にはメタノールを充填できるので、大がかりな改造をすることなく、既存の燃料スタンド網を利用することができる。
【0013】
メタノールは現在も、例えば、ホルムアルデヒド、酢酸、塩化メチル、メタクリル酸メチル、メチルアミンなどの基礎化学品として主に使用される。これらのプロセスでは、エネルギー収支は下位の役割を果たし、二次生成物の付加価値の方が重要である。
【0014】
アンモニア(NH3)は、例えば肥料の生産で大規模に生産される基礎化学品である。アンモニアは優れたエネルギー源であり、18.6MJ/kgの質量エネルギー密度は、19.9MJ/kgのメタノール(MeOH)とほぼ同じである。アンモニアは-33℃の沸点を有し、10barの低圧容器に入れて周囲温度での輸送が可能である。
【0015】
将来のエネルギー源の重要な特徴は、カーボンフットプリントが低いことである。NH3の場合、カーボンフットプリントの低いH2に加えて、窒素(N2)も必要であり、この窒素は約80%という高濃度で大気中に存在しており、空気分離プラントで簡単かつ安価に入手することができる。
【0016】
日射量および/または風量が少なすぎる国、および/または空き地が少ない国では、再生可能エネルギーで製造される水素に対する需要を自国で賄うことができない。従って、MENA(中東・北アフリカ)諸国など、再生可能エネルギーに非常に有利な前提条件を備えた国々では、将来再生可能エネルギーのこうした需要量を生産する取り組みが、今日すでに始まっている。その一例が、サウジアラビアにおける世界最大のグリーン水素/アンモニアプロジェクト(NEOM HELIOS)である。
【0017】
例えば肥料など、今日の主要事項であるアンモニアの材料リサイクルの場合、エネルギー収支は従属的な役割を果たす。この関連において重要なのは、肥料の効果である。
【0018】
N2とH2を分離する周知のプロセスとしては、蒸留法、収着法、膜処理法が知られている。好ましいのは膜処理法である。というのも、分離する2つの成分の沸点が低いということが、ここでは問題にされないからである。
【0019】
水素は、燃料電池(FC)車への充填のために燃料スタンドで提供することができる。そのために、中間貯蔵用の水素は必要な圧力950barまで圧縮され、充填時には必要な温度-40℃まで冷却される。
【0020】
しかしながら、燃料電池(FC)に必要な水素は、有利には自動車(KFZ)内で、
図1によるオンボード改質によってメタノールまたはアンモニアから取得することができる。このとき放出されたH2は、引き続き、燃料電池で電気に変換され、電気自動車を作動させることができる。
【0021】
メタノールまたはアンモニアを使用することにより、燃料電池車を普及させることが可能になる前に、複雑かつ非常に高価なH2輸送および燃料スタンドのインフラを最初に整備する必要はない。
【0022】
これに対し、メタノールまたはアンモニアをエネルギー源として使用する場合、全プロセスのエネルギー収支が重要な役割を果たす。メタノールまたはアンモニアの改質からH2の放出までの全プロセスにおいて、有利には、元々使用されていたエネルギーをできるだけ多く保持するために、エネルギー損失は少ないほうがよい。
【0023】
燃料電池(FC)の作動には、非常に高純度(99.99%以上)の水素が必要である。オンボードでメタノールまたはアンモニアから最高純度の水素を取得するには、いくつかのプロセス工程、すなわちメタノールまたはアンモニアの気化と分解、ならびにその際に生じるガス混合物からの高純度水素の分離という複数のプロセス工程が必要である。このとき、気化と分解に必要な熱エネルギーは、外部から供給するか、使用したメタノールの一部、使用したアンモニアの一部、または改質の生成物の一部を燃焼させることによって提供されなければならない。
【0024】
オンボード燃料電燃料電池の先行技術は、主に、最適化された改質の転化率と最適化された水素分離に焦点が当てられている。全体的なエネルギー効率は、これまで下位の役割を果たしてきた。
【0025】
メタノール:
米国特許第5,741,474号は、膜反応器においてメタノールから水素を取得するための方式を開示しており、ここでは、メタノールが第1の工程で気化され、第2の工程において改質室である膜反応器で改質され、水素含有ガス混合物を形成し、発生した水素は同時に膜を用いてガス混合物から分離される。メタノールおよび膜プロセスのガス状残渣物は、バーナー内で空気とともに燃焼するので、気化および改質に必要な熱は、熱交換によって提供される。すなわち、米国特許第5,741,474号は、改質反応と水素の分離を、単一のプロセス工程および単一のチャンバ内において組み合わせているので、これらのプロセスのプロセス条件は同じである。従って、改質の温度は水素分離の温度に相当する。さらに、米国特許第5,741,474号には、燃焼ガスの連続的な熱交換も、浸透物を用いたバーナー用周囲空気の予熱も開示されていない。
【0026】
国際公開第2004/2616号は、300~500℃での触媒メタノール改質と、それに続く、圧力スイング吸着(PSA)またはパラジウム合金膜を用いたH2分離とからなる方法を開示している。改質および水素分離のためのエネルギーは、内部または外部のエネルギー源から提供されるが、H2分離の残渣物を燃料として使用する変形形態は開示されていない。
【0027】
国際公開第2003/86964号には、メタノール改質と、この改質物からパラジウムベースの膜またはPSAを用いてH2分離とを行う改質装置が記載されている。改質温度は200~700℃が開示され、メタノール改質温度は200~400℃が開示されている。エネルギー源として、H2分離の残渣物を燃焼させる。必要な熱交換器の接続に関するデータは開示されていない。さらに、バーナー空気またはメタノールの予熱についても説明されていない。℃
【0028】
国際公開第2003/27006号は、メタノール気化および改質、H2分離、燃料電池からなるオンボードの全システムを説明している。改質およびH2分離は膜反応器内で同時に行われ、このとき、膜反応器は100℃で作動する。著者らによれば、Pd膜反応器は、H2分圧(>5bar)と温度(>200℃)が高くなると脆くなる。エネルギー源としては、H2分離の残渣物および燃料電池のオフガスの触媒燃焼が説明されている。必要な熱交換器の接続に関するデータは開示されていない。さらに、バーナー空気またはメタノールの予熱についても説明されていない。
【0029】
Emontsら(B.Emonts,J.B.Hansen,H.Schmidt,T.Grube,B.Hohlein,R.Peters,A.Tschauder,「Fuel cell drive system with hydrogen generation in test,」Journal of Power Sources,No.86,pp.228-236,2000)は、小型メタノール改質器(CMR)と固体高分子形燃料電池(PEMFC)からなるオンボード燃料電池システムの制御挙動試験について説明している。CMRには、メタノール改質、パラジウム膜を用いた水素分離、残渣物を燃焼して得られた熱を改質に提供する触媒バーナーが含まれている。メタノールを燃料とする第2の触媒バーナーは、気化ユニットに供給する。通常作動において、燃焼ガスは180℃の温度でシステムから排出される。改質およびH2分離は、260~280℃の温度で実行される。
【0030】
Y.-M.Linら(Y.-M.Lin,M.-H.Rei,「Study on the hydrogen production from methanol steam reforming in supported palladdium membrane reactor,」Catalysis Today,No.67,pp.77-84,2001; Y.-M.Lin,G.-L.Lee,M.-H.Rei,「An integrated purification and production of hydrogen with a palladium membrane-catalytic reactor,」Catalysis Today,No.44,pp.343-349,1998)は、電気で作動するステンレス鋼支持体上にパラジウム膜を備える膜反応器内のメタノール改質について、300~400℃の好ましい温度範囲を説明している。300℃を下回ると、パラジウム膜に脆化現象が発生し、400℃を超えると、パラジウム膜とステンレス鋼支持体との間に金属間拡散が起こり、H2浸透性が低下することが開示されている。
【0031】
アンモニア:
米国特許第7,811,529号は、膜反応器においてアンモニアから水素を取得するための方法を開示しており、アンモニアは、第1の工程で気化され、第2の工程において水素膜反応器で改質され、発生した水素は膜を用いて同時に分離される。アンモニアおよび膜プロセスのガス状残渣物は、バーナー内で空気とともに燃焼するので、気化および改質に必要な熱は、熱交換によって提供される。従って、米国特許第7,811,529号は、改質反応と水素分離を水素膜反応器内で組み合わせているので、これらのプロセスのプロセス条件は同じである。
【0032】
英国特許第1,079,660号は、触媒的NH3分解と、それに続くPd合金膜によるH2分離とからなる全プロセスを開示している。NH3分解の好ましい温度範囲は650~930℃であることが説明されているが、好ましい圧力は開示されていない。NH3気化および分解のエネルギーは電気的に生成される。
【0033】
NH3の気化および分解に電気エネルギーを使用する場合の欠点は、この電気が、もっとも有利なケースでも下流のFCにおいて最大70%の効率でしか発電されないことである。従って、NH3の気化および分解のために残渣物の燃焼エネルギーを直接利用する場合よりも、NH3の気化および分解、ならびにH2分離および高価なFCをより大型化する必要があるだけでなく、効率損失によってさらに多くのNH3も必要となる。
【0034】
国際公開第2018/235059号には、低温プラズマと、Pd-Ag膜による同時H2分離とを用いたNH3分解によって、オンボードで発電するための膜反応器および方法が開示されている。恒久的なH2分離により、200~500℃の低温と8~10barの比較的高い圧力で、ほぼ完全なNH3転化がすでに達成される。分解エネルギーは、やはり電気的に供給される。
【0035】
国際公開第02/071451号2は、オンボード用途のためのH2生成装置を開示している。中心となるのは、多数のチャネルで実施されたコンパクトな熱交換器反応器である。チャネルの半分では、ルテニウムニッケル触媒コンバータ上で550~650℃の温度でNH3がN2とH2に分解される一方、チャネルのもう半分では、NH3分解のための熱を提供するために燃料が触媒燃焼される。大部分がN2とH2からなる、NH3分解からの改質物は、FC内で電気に変換される。燃料電池を未転化NH3から保護するため、前もってプロセスガスが吸着床を介して送られる。好ましくは酸性の吸着材は、オンボードで再生されるのではなく、交換される。分解エネルギーは、NH3の触媒燃焼または好ましくは同伴ブタンの触媒燃焼によって提供されることが提案されている。プロセスを開始するには、バッテリの電気によって装置を反応温度にする必要がある。しかしながら、開示されている方法は、発電には適しているが、N2とH2の分離がないことから、例えば燃料スタンドなどで使用される高純度水素の生成には適していない。純粋なH2の代わりに、N2とH2の混合物が燃料電池に供給される場合、燃料電池の効率は低くなる。
【0036】
L.Linら(L.Lin,Y.Tian,W.Su,Y.Luo,C.Chen,L.Jiang,「Techno-economic analysis and comprehensive optimizaition of an on-site hydrogen refuelling station system unsing ammonia:hybrid hydrogen purification with both high H2 purity and high recovery,」Sustainable Energy Fuels,Bd.4,pp.3006-3017,2020)は、H2充填スタンド用にNH3から高純度H2を製造する多段階の方法を説明している。結果はシミュレーションに基づく。そこでは、500℃で触媒的NH3を分解する段階、PSA(圧力スイング吸着)において未転化NH3を分離する段階、PSAと膜処理の組み合わせによってN2/H2ガス流を分離する段階、ならびに純度99.97%の生成物流を充填スタンドの燃料ポンプ用に900barの圧力まで圧縮する段階、というプロセス段階を持つ方法が考察されている。NH3分解からのガス流の15.5%は、必要な反応エンタルピーを賄うために燃焼される。NH3分解の反応エンタルピーは、改質物(N2、H2、未転化NH3)の燃焼によって提供され、残渣物の燃焼によっては提供されないという事情から、残渣物を介するH2の喪失をできる限り少なくしなければならないことになる。さらに、後で示されるように、このことは、N2/H2分離のための促成分圧差を低下させ、全体としてエネルギー効率を低下させる。
【0037】
Lambら(K.E.Lamb,D.M.Viano,M.J.Langley,S.S.Hla,M.D.Dolan,「High-Purity H2 Production from NH3 via a Ruthenium-Based Decomposition Catalyst and Vanadium-Based Membrane」,「Industrial & Engineering Chemistry Research,Bd.57,pp.7811-7816,2018)は、NH3から高純度水素を製造する方法を説明している。NH3分解は、5barおよび450℃で実行され、膜分離は340℃で実行されている。浸透物側では、0.1barの負圧が設定された。スタンドアローン設備の場合、著者らは浸透物流内に残っている水素を燃焼させることにより、NH3分解のためのエネルギーを提供することを提案している。著者らは、NH3分解から得た水素の75%を生成物として取得し、残りの25%をNH3分解のために燃焼させることを推奨している。吸熱改質および気化のためのエネルギー伝達の設計に関する詳細は開示されていない。
【0038】
膜反応器を使用する欠点は、改質およびH2分離を必然的に同じ温度レベルで行わなければならないことである。従って、膜反応器において、改質プロセスと分離プロセスの両方を最適な範囲で行うことは不可能である。次のような相互作用により、常にプロセス技術的な妥協が必要である。すなわち、膜反応器の温度がより低いと、エネルギー利用率に有利に働き、温度がより高いと、水素分離に対して有利に働く。改質プロセス中にH2が連続的に分離されることにより、一方で、反応混合物中のCO2は増加する。他方、必要な反応熱は、加熱された反応器壁を介して供給する必要がある。CO2濃度が高くなり、反応器壁が高温になると、コークスの沈着につながる。これにより、膜の目詰まりの危険が高くなる。このことを防ぐため、追加的に反応に水を投入する必要があるが、これによってエネルギー効率は低下する。
【0039】
膜反応器は、反応とH2分離のプロセス技術的結合により、学術的には非常に興味深いものであるが、上記の欠点により、今日まで実用的にはほとんど意味を持たなかった。
【0040】
しかしながら、最高のエネルギー効率と最低の投資コストという視点から、気化、改質、H2分離からなるプロセスチェーン全体を考慮した場合、驚くべきことに、改質とH2分離を切り離すことが、H2製造コストを低く抑えるという意味でより合目的的であることが判明したのである。
【0041】
従って、燃料電池の作動、水素ステーション、あるいは小規模な産業用途の分散型供給のために、メタノールやアンモニアから高純度水素を取得する方法が探られており、この方法では、できる限り少ないエネルギー損失によって水素が製造される。さらに、設備への支出が少ないため、低コストという利点もある。これに加え、膜面積に対する材料必要量が少ないことも有利である。その他に、出発原料であるメタノールまたはアンモニアと排ガスとの間の温度差、ならびに取得した水素生成物流と必要なバーナー空気との間の温度差ができる限り低ければ、エネルギー効率にとっても有利である。
【0042】
本発明は、有利には燃料電池作動のために、メタノールまたはアンモニアから水素を取得するための方法を含み、メタノールまたはアンモニアを、第1の工程において気化し、第2の工程において改質して水素含有ガス混合物を形成し、第3の工程において、300~600℃の温度でこのガス混合物から膜プロセスで水素を分離し、第4の工程において、膜プロセスのガス状残渣物を周囲空気で燃焼させ、このとき、第2の工程は、第3の工程とは個別の、この第3の工程の上流にあるプロセス工程であり、また燃焼ガスを少なくとも2つの異なる熱交換器に通過させることにより、燃焼ガスの流れ方向において、(i)まず、メタノールまたはアンモニアを改質するための反応熱を提供し、(ii)続いて、改質器フィードを気化するための気化熱を提供し、また膜プロセスの浸透物が、熱交換器においてバーナー用の周囲空気を予熱し、また(a)流出する浸透物と流入する周囲空気との間の温度差、および(b)流出する燃焼ガスと流入するメタノールまたはアンモニアとの間の温度差は、それぞれ1~200℃であり、また第3のプロセス工程中に、0~100℃の最大温度上昇が行われることを特徴とする。
【0043】
図2は、本発明の主要な工程を示している。
図3は、プロセス技術的変形形態の模式図である。
【0044】
第1の工程:
メタノール:
メタノールおよび任意で水を蒸発器に供給する。有利には、メタノール・水混合物に対する水の割合は0~75モルパーセント、好ましくは10~70モルパーセント、特に好ましくは25~65モルパーセント、とりわけ40~60モルパーセントであり、特に極めて好ましくは、メタノールと水のモル比は1:1である。
【0045】
有利には、メタノール、またはメタノール・水混合物は、圧力が4~60barの蒸発器において、ガス状の改質器フィードのために気化され、この圧力は、圧力損失調整された状態で全プロセスにおいて同一である。有利には、蒸発器内の圧力は5~30bar、特に10~20barである。当業者には圧力のデータから気化に必要な温度が分かる。
【0046】
アンモニア:
代替として、有利には-35~50℃および1~20barで、タンクから液体アンモニアを取り出し、必要に応じてポンプを用いてさらに圧力を高める。有利には、液体アンモニアは、圧力が2~60barの蒸発器においてガス状の改質器フィードになり、この圧力は、圧力損失調整された状態で全プロセスにおいて同一である。有利には、蒸発器内の圧力は4~40bar、特に好ましくは6~30bar、とりわけ10~20barである。当業者には圧力のデータから気化に必要な温度、有利には-20℃~100℃が分かる。
【0047】
蒸気のNH3流は、メタノールの場合と同様に、有利には、改質器の改質器フィードと制御流に分割されて供給され、この制御流は、必要に応じて、例えばプロセスの開始時と制御時などに残渣物流に混合される。
【0048】
第2の工程:
メタノール:
続いて、改質器フィード、すなわちガス状のメタノールまたはメタノール・水混合物は、100~400℃の温度で触媒的に改質され、同じくガス状の改質物になる。好ましくは、メタノール改質温度は、180~350℃、特に240~300℃である。メタノール改質温度が低いと、H2収率は、WGS(水性ガスシフト反応)の平衡により、CO割合を犠牲にして上昇する。
【0049】
メタノール改質物には、H2、CO、CO2、H2O、そして未転化のMeOHまたはDMEが含まれている。ガス状のメタノール改質物の組成は、好ましくは55~75モルパーセントのH2、1~8モルパーセントのCO、10~25モルパーセントのCO2、2~10モルパーセントのH2O、0.1~20モルパーセントのMeOH、および/またはDMEからなり、特に好ましくは60~70モルパーセントのH2、1~5モルパーセントのCO、15~25モルパーセントのCO2、2~9モルパーセントのH2O、1~10モルパーセントのMeOH、および/またはDMEからなる。
【0050】
メタノール改質の転化率は、有利には70~99%、好ましくは80~95%、特に好ましくは85~90%である。
【0051】
メタノールの改質では、CO2水素化の逆転
3 H2+CO2=CH3OH+H2O DHR
0=-49kJ/mol CH3OH
が、以下の総反応式に従って生じる。
CH3OH=2 H2+CO DHR
0=+90kJ/mol CH3OH
【0052】
使用するメタノールには、本発明に基づき、ジメチルエーテル(C2H6O)が、通常は、1~5重量パーセントの割合で含まれていてもよい。ジメチルエーテルは、H2Oの存在下で同時にメタノールに改質される。
【0053】
水は、以下の総反応式に従ってCOと反応する。
H2O+CO=H2+CO2 DHR
0=-41kJ/mol CO
【0054】
この発熱反応は、水性ガスシフト(WGS)反応と呼ばれる。メタノール中の水分により、有利には、H2収率を増加させ、また改質およびWGSの全プロセスに対して追加的に使用されるエネルギーを軽減することができる。
【0055】
WGS反応、ならびに/あるいはメタノールおよび/またはCOの燃焼を介して全プロセスで発生する最大CO2は、CO2およびH2からメタノールを製造する際に使用されるCO2に一致する。このことにより、全プロセスはCO2ニュートラルである。
【0056】
有利には、第2の工程、すなわち改質の間、水素流は抜き取られない。従って、第2の工程は、有利には、第3の工程とは無関係の、上流にある別個の工程である。さらに、第2の工程は、有利には、第1の工程とも別個であり、第1の工程の下流にある。有利な連続するプロセス工程が
図4に示されている。例えば、改質物を蒸発器(改質物ヒーター)内でさらに加熱することは有利であり得る。というのも、これにより、下流の膜モジュールにおいて費用のかかるPd膜の表面積をより小さくできるからである。
【0057】
メタノール改質のための触媒コンバータは、先行技術で説明されている(F.Gallucciら「Hydrogen Recovery from Methanol Steam Reforming in a Dense Membrane Reactor:Simulation Study」,Ind.Eng.Chem.Res.2004,43,2420-2432、およびA.Basileら「A dense Pd/g membrane reactor for methanol steam reforming:Experimental study」,Catalysis Today,2005,104,244-250などを参照)。例えば、活性触媒コンバータ成分として、CuO/ZnO/Al2O3の混合物が使用され、有利には、38重量パーセントのCuO、41重量パーセントのZnO、21重量パーセントのAl2O3の組成、または31重量パーセントのCuO、60重量パーセントのZnO、9重量パーセントのAl2O3の組成の混合物が使用される。
【0058】
任意で、このメタノール改質物は、引き続き、H2分離のために300~700℃、好ましくは350~600℃、特に400~500℃の好ましい温度まで加熱される。
【0059】
アンモニア:
NH3蒸気流は、メタノールの場合と同様に、有利には改質器に供給され、そこでH2とN2に分解される。分解に必要なエネルギーは、有利には、熱流によって賄われる。アンモニア改質は、有利には、100~700℃、好ましくは200~600℃、特に300~500℃の温度で行われる。有利には、アンモニア改質は、2~60bar、好ましくは6~30bar、特に10~20barの圧力で行われる。
【0060】
ガス状のアンモニア改質物には、有利には、H2、N2、未転化NH3が、60~75体積パーセントのH2、20~25体積パーセントのN2、0~20体積パーセントのNH3の好ましい組成において含まれている。
【0061】
アンモニア改質の転化率は、有利には70~99%、好ましくは80~95%、特に好ましくは85~90%である。
【0062】
有利には、第2の工程、すなわち改質の間、水素流は抜き取られない。従って、第2の工程は、有利には、第3の工程とは無関係の、上流にある別個の工程である。さらに、第2の工程は、有利には、第1の工程とも別個であり、第1の工程の下流にある。
【0063】
アンモニア改質のための触媒コンバータは、先行技術で説明されている(A.Di Carloら、「Ammonia decomposition over commercial Ru/Al2O3 catalyst:An experimental evaluation at different operative pressures and temperatures」,International.Journal of Hydrogen Energy,39(2014)S.808-814を参照)。例えば、活性触媒コンバータ成分としてルテニウムが使用され、ACTA Hypermec 10010 catalyst_(Ru/Al2O3)が有利である。
【0064】
加熱:
任意で、このアンモニア改質物は、引き続き、H2分離のために300~700℃、好ましくは350~600℃、特に400~500℃の好ましい温度まで加熱される。
【0065】
第3の工程:
有利には300~700℃、好ましくは350~700℃、好ましくは350~600℃、好ましくは400~600℃、特に400~500℃の温度で、改質物はH2を分離するための膜モジュールに達する(Y.-M.Linら、Mejdell A.L.,Jondahl M.,Peters T.A.,Bredesen R.,Venvik H.J.,「Effects of CO and CO2 on hydrogen permeation through a 3mm Pd/Ag 23 wt.% membrane employed in a microchannel membrane configuration」,Separation and Purification Technology」,68(2009)178-184を参照)。高温は、H2膜分離の場合、膜を通過する水素の透過性を促進し、COの阻害作用を低減する。
【0066】
膜モジュールにおいて、ガス状の改質物は、好ましくは純度が>99.99体積パーセントのH2を有する高純度の高温残渣流と、メタノール使用下では、H2、CO、CO2、H2O、未転化MeOHを含む残渣物流とに分割され、アンモニア使用下では、N2とH2の他に未転化NH3を含む残渣流とに分割される。
【0067】
メタノール使用下の残渣物は、有利には以下のガス組成、すなわち、5~40モルパーセントのH2、0.1~12モルパーセントのCO、5~66モルパーセントのCO2、1~12モルパーセントのH2O、0.1~10モルパーセントのMeOHを有する。
【0068】
残渣物には、アンモニア使用下で、好ましくは以下のガス組成、すなわち、5~35体積パーセントのH2、1~40体積パーセントのNH3、25~94体積パーセントのN2が含まれ、特に好ましくは10~25体積パーセントのH2、5~30体積パーセントのNH3、45~85体積パーセントのN2が含まれる。
【0069】
H2流束は、有利には0.1~5.0モルH2/(m2 s)、好ましくは0.5~4.0モルH2/(m2 s)、特に好ましくは1.0~3.5モルH2/(m2 s)、とりわけ1.5~3.0モルH2/(m2 s)である。
【0070】
膜、有利にはPd膜によるH2分離の温度範囲は、有利には400~700℃、特に好ましくは450~600℃、とりわけ500~600℃である。
【0071】
有利には、第3の工程(水素分離)の温度は、メタノールの場合、第2の工程(改質)の温度よりも10~400K高く、この温度差は50~300K、特に75~200Kの場合は好ましい。
【0072】
第2および第3の工程は、連続する、別個の、互いに無関係のプロセス工程として実行される。
【0073】
メタノールの場合、Pd膜によるH2分離のためのCO分圧は、有利には0~5.0体積パーセント、特に好ましくは0~2.0体積パーセント、とりわけ0~0.5体積パーセントである。低いCO分圧は、有利には、水、水性ガスシフト活性触媒コンバータ、低温(好ましくは150~400℃、特に200~250℃)の追加によって達成される。
【0074】
メタノールとアンモニアの両方のケースにおいて、Pd膜によるH2分離のためのH2分圧は、有利には50~80体積パーセント、特に好ましくは60~75体積パーセント、とりわけ65~70体積パーセントである。
【0075】
低いCO分圧、高いH2分圧、高温という3つの要因はすべて、H2分離にかかる労力を軽減する。
【0076】
有利には、膜装置の材料ペア、すなわちPd膜および担体材料としては、Pd、Pd-AgまたはPd-Ag-Au、およびセラミックまたはステンレス鋼が使用され(A.Unemoto,A.Kaimai,S.Kazuhisa,T.Otake,K.Yashiro,J.Mizusaki,T.Kawada,T.Tsuneki,Y.ShirasakiおよびI.Yasuda,「The effect of co-existing gases from process of steam reforming reaction on hydrogen permeability of palladium alloy membrane at high temperatures,」International Journal of Hydrogen Energy,Nr.32,pp.2881-2887,2007を参照)、例えばPdと、20~30重量パーセントのAg、特に23~24重量パーセントのAgが使用される。
【0077】
Pd層の厚さは、好ましくは1~60μm、特に好ましくは3~20μm、とりわけ5~10μmである。
【0078】
基本的に、公知の構造はすべて膜モジュールとして考慮の対象となる。平膜の中では、プレートモジュールが好ましい構造である。ホース型膜としては、中空糸型モジュールの他に、キャピラリ型モジュールも好ましい。特に好ましいのは、直径が3~50mm、とりわけ5~10mmの管型モジュールである。
【0079】
膜を介して多量のH2が浸透物として分離されるため、一方ではH2生成物の純度要件が満たされ、他方では残渣物の発熱量が十分にあるので、そこからH2分離前の気化、改質、必要に応じて改質物の温度上昇のための熱を提供することができる。
【0080】
浸透物のH2含有量は、有利には95~99.999体積パーセントのH2、特に好ましくは98~99.99体積パーセントのH2、とりわけ99.0~99.95体積パーセントのH2である。有利には、浸透物の絶対圧力は、0.1~5bar、特に好ましくは0.5~3.0bar、とりわけ1.0~2.0barである。
【0081】
浸透物側では、必要に応じて水蒸気をH2の希釈ガスとして使用する。水蒸気は、浸透物側のH2分圧を下げる。これにより、促成圧力差とH2流束が上昇する。この措置は、PEM燃料電池を作動中に連続的に過湿する必要がある場合に有利である。
【0082】
有利には、膜モジュールの他に、水素を分離するためにPSA(Pressure Swing Adsorption、圧力スイング吸着)ユニットは使用されない。
【0083】
しかし、浸透物からCO、CO2、N2、NH3の最後の残滓を分離する吸着床に通すことで、浸透物の純度を確保したり、さらに高めたりすることは極めて有意であり得る。従って、この吸着床は「ポリスフィルタ」として働く。
【0084】
浸透物中のCOまたはCO2の含有量が燃料電池の要件に相当しない場合、有利には、さらにメタン化触媒床に浸透物を通過させることもできる(国際特許公開第2004/002616号2などを参照)。
【0085】
第3のプロセス工程自体において、または工程自体中に、最大0~100℃、好ましくは最大0~50℃、さらに好ましくは最大0~20℃の温度上昇があり、特に温度上昇またはさらなるエネルギー供給がないことは有利である。有利には、膜モジュール内に、必要に応じて中間加熱されるガス状の改質物よりも高い温度を有しているユニットは存在しない。この措置により、特に膜表面への沈着物、例えばコークスの沈着を回避することができる。
【0086】
残渣物はバーナーに送られ、このバーナーが、残渣物内の燃焼成分、特にメタノールの場合には、(残留)メタノール、一酸化炭素、水素を、アンモニアの場合は、(残留)アンモニアおよび水素を、有利には加熱した空気を用いて燃焼させることにより、H2分離前の予熱、気化、改質、改質物加熱のために必要なエネルギーが賄われる。この工程のために、周囲から空気を取り込み、その空気を、バーナーから始まって排ガスとして改質器モジュールを出るまでのガストレインのすべての圧力損失の合計に相当する圧力になるまで圧縮する必要がある。すべての圧力損失の合計は、50mbar~5barの範囲にあってよい。圧縮機として、例えば空気ブロワまたはジェットノズルなどを使用することができる。
【0087】
特殊な実施形態では、残渣物を膨張させることにより、低コストのジェットノズルで周囲空気を吸引して、バーナー内の必要な圧力にまで圧縮することもできる。これにより、電気を消費する高価な空気圧縮機が不要になる。
【0088】
第4の工程:
続いて、残渣物と加熱した空気からなる混合物を、例えば大気圧バーナーまたは触媒バーナーといったバーナーで燃焼する。高温燃焼ガスは、大気圧バーナーの場合、有利には500~1200℃の温度で、触媒バーナーの場合、有利には300~700℃の温度で、さまざまな熱交換器に通され、これにより、(i)改質物が加熱され、(ii)改質のための反応熱が提供され、(iii)メタノールまたはアンモニアを気化させるための気化熱が提供され、(iiii)投入材料が予熱される。任意で、改質物の加熱(i)は省略してもよい。
【0089】
高温の燃焼ガスは、バーナーを出た後、有利には、流入するメタノールまたはアンモニアの投入材料流に対する温度差が1~200℃、好ましくは5~100℃、さらに好ましくは10~80℃、さらに好ましくは20~50℃、特に30~40℃になるように連続的に冷却される。燃焼ガスの冷却は、有利には、温度が25~100℃、好ましくは35~60℃、特に40~50℃になるまで行われる。
【0090】
好ましい実施形態では、残渣物に加えて、液体および気体の状態にあるメタノールまたはアンモニアもバーナーおよび/またはアフターバーナーに供給することにより、気化、改質、必要に応じて改質物の温度上昇のために必要なエネルギーを提供することができる。メタノールまたはアンモニアの供給により、全プロセスを有利に開始することができ、作動中は安定した作動状態で制御することができる。この混合は、有利には、空気搬送器の前、後、または空気搬送器内で直接行うことができる。
【0091】
メタノールまたはアンモニアの追加は、排ガス、すなわちこのプロセスを出た冷却された燃焼ガスの検知可能なエネルギー含有量と、バーナーおよび任意のアフターバーナーからの燃焼ガスの温度とによって有利に制御される。これらすべてが相まって、H2分離前の気化、改質、必要に応じて温度上昇のために提供されるエネルギーが生じる。例えば燃焼温度または排ガス量が低下した場合、有利には、メタノールまたはアンモニアがバーナーに供給される。この場合、必要なメタノールまたはアンモニアの量は大きく変動する可能性がある。バーナーに供給されるメタノールまたはアンモニアの量は、有利には、全プロセスに供給されるメタノールまたはアンモニア量の0~30%、好ましくは0~20%、好ましくは0~10%、特に0~5%である。
【0092】
バーナーに必要な空気は、有利には、周囲から吸引される。続いて、吸引された空気は、有利には、熱交換器を介して高温の燃焼ガスを搬送するために圧縮される。有利には、この空気は、周囲圧力(1.013bar)から1.05~5.0barまで、好ましくは1.1~2.0barまで、特に1.2~1.5barまで圧縮される。圧縮機としては、当業者にとって周知のすべての装置、例えばブロワ、換気装置、圧縮機などが考慮の対象となる。圧縮機は、有利には第1バーナーの前にある。
【0093】
特殊な実施形態では、バーナー前での周囲空気の必要な圧力上昇のために、また熱交換器を介する高温の燃焼ガスの搬送のために、ブロワまたは圧縮機のような電気エネルギーを必要とする搬送器は使用されない。有利には、ジェットポンプが使用され(https://www.koerting.de/de/strahlpumpen.html?gclid=EAIaIQobChMI7M21hpmw8AIVB-d3Ch0YTgJLEAAYASAAEgKG-fD_BwEを参照)、このジェットポンプは、有利には残滓物の5~40barの高圧で周囲空気を吸引し、有利には0.05~5barの必要圧力まで圧縮する。これにより、非常に少ないエネルギーのみ必要とする原料凝縮物の搬送を別にして、改質モジュールを自律的に、すなわち外部エネルギー源なしに作動させることができる。
【0094】
バーナー内に発生する高温の燃焼ガスは、大気圧バーナーを使用する場合、有利には600~1100℃、好ましくは700~1000℃、特に好ましくは800~950℃、とりわけ850~900℃の温度を有し、触媒バーナーを使用する場合、有利には200~500℃、好ましくは220~300℃の温度を有している。
【0095】
燃焼ガスには、メタノールを使用する場合、有利にはH2O、CO2、N2、残留O2が含まれる。この燃焼ガスは、有利には以下の組成、すなわち、5~16体積パーセントのO2、24~78体積パーセントのN2、3~35体積パーセントのCO2、3~36体積パーセントのH2O、特に有利には10~15体積パーセントのO2、49~68体積パーセントのN2、8~20体積パーセントのCO2、9~21体積パーセントのH2O、とりわけ14体積パーセントのO2、68体積パーセントのN2、9体積パーセントのCO2、9体積パーセントのH2Oを有している。
【0096】
燃焼ガスには、アンモニアを使用する場合、有利にはN2、O2、H2Oが含まれる。この燃焼ガスは、例えば以下の組成、すなわち、80体積パーセントのN2、10体積パーセントのO2、10体積パーセントのH2Oを有している。
【0097】
いずれの場合も、燃焼ガスの組成は、有利には残留O2濃度によって制御される。O2値が小さいと、燃焼ガスの体積流量が少ない(圧縮量は低い)ことを意味するが、燃焼ガスの初期温度は高くなる。O2値が大きいと(最大21体積パーセント)、逆の効果がある。
【0098】
【0099】
高温の燃焼ガスは、(0)任意で改質物を加熱するため、(i)改質のため、(ii)凝縮物を気化するため、(iii)任意で、供給されるアンモニア、メタノール、またはメタノールと水を予熱するために、連続して複数の熱交換器を通過し、段階的にほぼ周囲温度まで冷却される(
図2~4を参照)。
【0100】
有利には、改質反応器と膜モジュールとの間、ならびに膜モジュールと空気搬送器との間にさらなる熱交換器を設置することもでき、これにより、必要に応じて熱統合またはPd膜を介するH2分離比率を改善することができる。
【0101】
大気圧バーナー後の燃焼ガスの冷却は、メタノール運転モードの場合、有利には、燃焼ガスの以下の投入温度範囲で行われる。
【0102】
アフターバーナーでの燃焼ガスの中間加熱なし:
改質物ヒーターなしの変形形態(
図2を参照):改質器700~900℃、蒸発器500~650℃、予熱器150~220℃。
【0103】
改質物ヒーター付きの変形形態(
図7を参照):改質物ヒーター700~900℃、改質器400~700℃、蒸発器300~500℃、予熱器熱交換器150~220℃。
【0104】
アフターバーナーによる、改質器熱交換器後の燃焼ガスの中間加熱:
改質物ヒーターなしの変形形態(
図5を参照):改質器700~900℃、蒸発器500~650℃、予熱器150~220℃。
【0105】
改質物ヒーター付きの変形形態(
図4を参照):改質物ヒーター700~900℃、改質器700~900℃、蒸発器300~700℃、予熱器150~220℃。
【0106】
大気圧バーナー後の燃焼ガスの冷却は、アンモニア運転モードの場合、有利には、燃焼ガスの以下の投入温度範囲で行われる。
【0107】
アフターバーナーでの燃焼ガスの中間加熱なし:
改質物ヒーターなしの変形形態(
図2を参照):改質器700~1200℃、蒸発器500~650℃、予熱器150~220℃。
【0108】
改質物ヒーター付きの変形形態(
図7を参照):改質物ヒーター700~1200℃、改質器400~700℃、蒸発器300~500℃、予熱器熱交換器150~220℃。
【0109】
アフターバーナーによる、改質器熱交換器後の燃焼ガスの中間加熱:
改質物ヒーターなしの変形形態(
図5を参照):改質器700~1200℃、蒸発器500~650℃、予熱器150~220℃。
【0110】
改質物ヒーター付きの変形形態(
図4を参照):改質物ヒーター700~1200℃、改質器700~900℃、蒸発器300~700℃、予熱器150~220℃。
【0111】
触媒バーナーを使用した場合、これらのバーナーは、有利には熱交換機内に組み込まれる。好ましくは、第1の触媒バーナーは、改質器熱交換器内に組み込まれるか、改質物熱交換器を使用する場合、この改質物熱交換器内に組み込まれる(
図2、4、5、7)。有利には、さらに2つの触媒バーナーを使用する場合、これらのバーナーは、好ましくは改質物熱交換器および改質器熱交換器内に、または改質器熱交換器および蒸発器熱交換器内に組み込まれている。有利には、さらに3つの触媒バーナーを使用する場合、これらのバーナーは、好ましくは改質物熱交換器、改質器熱交換器、蒸発器熱交換器内に組み込まれている。
【0112】
複数の触媒バーナーは、有利には、共通の空気供給または別々の空気供給を有していてよい。
【0113】
触媒バーナー内では、流路全体にわたって温度がほぼ一定である。このとき、燃焼側の温度は、改質器の温度(200~500℃)および蒸発器の温度(130~220℃)を、有利には1~300℃、好ましくは5~50℃上回り、従って燃焼側の温度は、改質器内で200~700℃、蒸発器内で130~520℃である。
【0114】
同時に、有利には、膜モジュールの浸透物、すなわち300~700℃の温度を有する分離された水素は、バーナー用に吸引された空気を予熱することにより、浸透物冷却器で冷却される。高温の浸透物流は、流入する空気流に対する温度差が1~200℃、好ましくは5~100℃、さらに好ましくは10~80℃、さらに好ましくは20~50℃、特に30~40℃になるように冷却される。この工程は、改質器モジュールのエネルギー効率にとって非常に重要である。
【0115】
プロセスを出た流れ、すなわち冷却された浸透物流とバーナー排ガスは、有利には、25~100℃、好ましくは25~80℃、特に25~50℃の温度を有する。
【0116】
所定の装置において、排ガス温度は、有利には空気体積流量および/または燃焼ガス温度によって制御することができる。燃焼ガス温度が高すぎる場合、吸引空気量が有利に増加する。生成物量が少なすぎる場合、制御流S4bおよびS9bが有利に増加する。
【0117】
高いエネルギー効率という意味では、空気体積流量は大きいよりも小さい方がよい。しかし、空気体積流量が小さいと、燃焼ガス温度が高くなる(例えば1100~1200℃)。燃焼ガス温度は、熱交換器とガス配管の使用材料の耐熱性により、1100~1200℃に制限されている。
【0118】
プロセス制御のために、好ましくは排ガス量S18、およびH2生成物量S8、ならびにガス流S13、S16、S18の温度が測定される。H2生成物量により、好ましくは流入量S1が制御される。ガス温度は、吸引される空気体積流量S10および制御流S4bおよびS9bを制御する。
【0119】
熱交換器の設計
有利には、熱交換器の設計に用いられる対数平均温度差(LMTD)は、熱交換器における各場所の熱交換する流れの間でもっとも大きくなる。有利には、その差は、1~100℃、好ましくは10~50℃である。
【0120】
蒸発器熱交換器における高い温度差は、有利には、
図4、5に示されているように、改質器熱交換器後の燃焼ガスをアフターバーナーで中間加熱することによって実現可能であり、有利には280~800℃、好ましくは350~700℃、特に550~650℃まで加熱される。
【0121】
そのために、アフターバーナーにおいて、有利には、残留酸素をまだ含んでいる、バーナーからの冷却された燃焼ガスに、残渣物流の一部が、例えば5~40体積パーセント、好ましくは20~30体積パーセント供給され、また有利には蒸発器からのメタノールまたはメタノール・水流、あるいはアンモニア流が、例えば気化したメタノールまたはアンモニアの0.1~20%、好ましくは0.5~10%、特に1~5%供給される。
【0122】
アフターバーナーとしては、当業者にとって公知のあらゆる仕様、例えば触媒バーナー、大気圧バーナー、強制空気バーナーなどが考慮の対象となる。触媒アフターバーナーを使用する場合、このバーナーは蒸発器熱交換器に組み込まれる。
【0123】
この措置により、蒸発器の熱交換器面積と第1バーナーの燃焼温度を有利に低下させることができる。このことは、一方で、蒸発器用の熱交換器が圧倒的に大きいこと、他方では、この措置がなければ必要となる、第1バーナーにおける900℃を大きく超えるガス温度は、非常に高価な材料でしか実現できないという点で、利点がある。
【0124】
以下のような流れのガイドが有利である。
【0125】
【0126】
改質の熱交換器、すなわち改質器熱交換器では、触媒コンバータおよびメタノール/水の蒸気またはアンモニア蒸気は、好ましくは外部空間に配置され、燃焼ガスは配管を通過する。反応室の圧力は、燃焼ガス室内の圧力よりも3~60bar、好ましくは10~30bar高いことが好ましい。
【0127】
膜分離ユニット前、改質ヒーターでラフィネートの温度を上げると、ラフィネートは、好ましくは配管内を流れ、燃焼ガスは外部空間内を流れる。
【0128】
空気ヒーターまたは浸透物冷却器で高温の浸透物を冷却することによって空気予熱を行う場合、好ましくは、空気は配管を通過し、H2は外部空間を通過する。
【0129】
改質前に液状の投入材料(メタノールまたはメタノール・水混合物またはアンモニア)を予熱して気化させる場合、燃焼ガスは、好ましくは配管を通過し、液体メタノールまたはメタノール・水混合物または液体アンモニアは外部空間を通過する。
【0130】
さらに、まだ変換されていないH2が含まれている可能性のある燃料電池からの残渣物を改質器に再循環させ、そこでエネルギーとして利用することによって、システム全体の全効率をさらに高めることも可能である。
【0131】
すべての熱交換器の好ましい管径は、1~6mm、特に好ましくは2~5mm。とりわけ3~4mmである(欧州特許第2526058号を参照)。
【0132】
例えば矩形ダクトのようなその他の断面形状も、これらの管形状に一致している。
【0133】
マイクロ装置は、製造技術的理由から、しばしば矩形ダクトで実施されている。原則的に、本発明に基づく方法は、ミリ装置だけでなく、マイクロ装置でも実施することができる。ミリ技術かマイクロ技術かの選択は、特に改質モジュールに要求される性能、要求されるメンテナンスしやすさ、利用可能なスペースに応じて異なる。例えば、触媒コンバータの交換は、マイクロ反応器よりもミリ反応器の方が容易である。
【0134】
本発明に基づく方法により、有利には95~99.8%、好ましくは98~99.5%のエネルギー利用率を達成することができる。
【0135】
本発明のさらなる態様は、前述した方法に基づいて、燃料電池を作動させるためにメタノールまたはアンモニアから高純度水素を取得するための装置に関する(
図6を参照)。
【0136】
説明した方法のための装置には、1つの実施形態において、
-メタノールまたはメタノール・水混合物、あるいはアンモニアを予熱するための、通常は下流の蒸発器内に組み込まれている装置と、
-蒸発装置と、
-改質反応器と、
-膜装置と、
-少なくとも1つのバーナーと、
-少なくとも3つの熱交換器、有利には4つの熱交換器、好ましくは5つの熱交換器と、
-予熱装置、蒸発装置、改質反応器、膜装置、バーナー、熱交換器で、液体を導入および/または排出するための手段と、
が含まれている。
【0137】
利点:
外部エネルギー収支は、本発明に基づく方法において、供給および排出される流れの中に蓄積されているエネルギーによってのみ決定される。供給されるメタノール/水またはアンモニアと空気の流れは、排出されるH2生成物(低温の浸透物)と排ガスの流れと同じ温度を有しており、メタノールまたはアンモニアがすでに改質の圧力を有しているという理論的な極限の場合、この改質モジュールでは100%の効率が生じる。
【0138】
外部から追加エネルギーが供給されず、外部に対して余剰エネルギーが排出されない場合、H2生成物流は、メタノールまたはアンモニアの投入材料と同じ発熱量を有していなければならない。すなわち、本発明に基づくこの改質モジュールの場合、理論的には変換エネルギーを失うことはない。損失は、排出される流れが供給される流れよりも高温であることによって、また装置壁を介して熱が周囲に放出されることによって、ならびに液体ポンプおよび空気搬送器の機械的出力によってのみ生じる。従って、燃焼ガスの良好な熱統合と低い流量圧力損失が重要である。その他に、有利には、改質モジュールのすべての装置が、例えば、フリースで覆われた微多孔質シリカ製プレートまたはスリーブを予備プレスして、ガスおよび水蒸気を通さないフィルムに真空下で収縮包装した真空断熱材で十分に絶縁された容器内に入っている。
【0139】
図および符号:
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
第1例-メタノール:
図6は、モデル計算に基づいて改質モジュールの主要装置について検出された最適な幾何学的寸法を含む、毎時1kgのH2生成性能に対する本発明に基づく方法の例を示している。
【0146】
H2によって駆動され、タンクからホイールまでの効率が60%の燃料電池車では、1時間当たり改質モジュールから1kgのH2が提供される。毎時1kgのH2は33.3kWの出力に相当し、変換後、FC内において20kWの電力になる。この出力は、中型乗用車が100kmを走行するのに必要な出力である。
【0147】
この例は、改質モジュールの装置壁からの熱損失なしで計算されている。
【0148】
本発明に基づく方法によれば、1時間当たり10.4kgの原料凝縮物、すなわちモル比1:1のメタノール・水混合物を改質器モジュールに供給し、搬送ポンプを使用してシステム圧力20barまでポンピングする必要がある。この圧力上昇には、P1=0.02kWelの電力が必要である。
【0149】
蒸発器内の原料凝縮物と燃焼ガスの対向流ガイドにより、蒸発器内で原料凝縮物の予熱と気化の両方を行うことができる。両方の過程で合わせて5.4kWの熱出力が必要である。原料凝縮物は、20barで188℃の沸騰温度を有する。10.1kgの原料凝縮物蒸気が改質器フィードとして改質器に供給され、0.3kg/hが制御流としてアフターバーナーに供給される。
【0150】
改質器では、原料凝縮物蒸気が240℃の反応温度にされ、68.7体積パーセントのH2、2.7体積パーセントのCO、21.7体積パーセントのCO2に触媒改質される。240℃および20barにおけるMeOH平衡転化率は93%である。改質物には、さらに5.2体積パーセントの未転化H2Oと、1.7体積パーセントの未転化MeOHも含まれている。改質には、3.8kWの熱エネルギーが必要である。
【0151】
続いて、改質物は、改質物熱交換器(改質物ヒーター)で450℃に加熱される。加熱には1.5kWの熱出力が必要である。
【0152】
膜モジュールでは、1時間当たり1kgの高温の浸透物が分離され、浸透物冷却器または空気ヒーターで45℃まで冷却される。この低温の浸透物は、H2生成物として改質モジュールを出る。これには、1.6kWの熱出力が必要である。
【0153】
膜モジュールからは、1時間当たり、11.0体積パーセントのH2、7.6体積パーセントのCO、61.8体積パーセントのCO2、14.8体積パーセントのH2O、4.8体積パーセントのMeOHを含む残渣物9.1kgが出る。そのうち、5.8kg/hがバーナーに、3.3kg/hがアフターバーナーに供給される。バーナーは18.6kg/hの空気を必要とし、この空気は、浸透物冷却器または空気ヒーターにおける浸透物に対する対向流の中で330℃まで加熱され、引き続き、空気搬送器内で1.5barまで圧縮され、すべての流量損失を克服する。このとき、温度は420℃まで上昇する。H2生成物流は、45℃の低温浸透物として浸透物冷却器または空気ヒーターを出て、続いて改質モジュールを出る。
【0154】
バーナーでは、1時間当たり5.8kgの残渣物が圧縮空気で燃焼される。このとき、24.4kg/hの流量および900℃の温度で高温の燃焼ガスが生じる。この燃焼ガスは、熱出力1.5kWの改質物ヒーターで改質物を加熱し、このとき720℃まで冷える。続いて、冷却された燃焼ガス流は改質器の中に送られ、そこで3.8kWの熱出力を改質反応のために提供し、188℃から240℃にガス状の改質器フィードを加熱する。
【0155】
その後、さらに冷却された燃焼ガスは、アフターバーナーで再び650℃まで中間加熱される。そのために、依然として約14体積パーセントの酸素を含む冷却された燃焼ガスに、3.3kg/hの残渣物および蒸発器からの0.3kg/hの制御流を加えて、燃焼させる。
【0156】
蒸発器および予熱器では、中間加熱された燃焼ガスが、供給された低温の原料凝縮物に対する対向流の中で45℃まで冷却され、排ガスとして改質モジュールを出る。
【0157】
投入材料の原料凝縮物とともに、改質モジュールには、33.04kWのエンタルピーを持つ電気が供給される。これに加え、さらに0.52kWの電力も、搬送ポンプおよび空気ブロワのために供給する必要がある。全体で、33.56kWの電気が改質モジュール内に流れ、33.33kWのエンタルピーを持つH2生成物流が改質モジュールから出る。
【0158】
全プロセスのエネルギー効率ηPrは、以下に従って定義されている。
ηPr=mH2
*HUH,H2/mMeOH
*HUH,MeOH
ここでは、投入されたMeOH質量流量mMeOH(kg/h)から得られたH2量(kg/h)と、それに属する低位発熱量HUH,H2=120MJ/kgおよびHUH,MeOH=19.9MJ/kgを用いた。
【0159】
改質モジュールの装置壁を介する熱損失を考慮しないエネルギー効率は、ηPr=33.33kW/33.56=99.3%である。
【0160】
60%のFC効率を考慮すると、車両の場合、タンクからホイールまでの効率は60%*99.3%=59.6%である。
【0161】
60%のFC効率を含めた本発明に基づく方法のエネルギー利用率を、先行技術(SIQENS Fuel Cell Technology,「SIQENS Ecoport 800,Energie fur Off-Grid,Notstrom und Mobilitat,」2021[オンライン]。[2021年6月9日にアクセス])と比較すると、本発明のエネルギー面での利点および経済的利点は明らかである。
【0162】
直接燃料電池 30~40%
Emontsら 56.0%
本発明 59.6%
【0163】
図6には、熱出力P
熱に加えて、各材料または熱交換装置について、配管数N
管、配管内径D
管、有効配管長L
管、装置直径D
装置、装置長L
装置、配管を流れる気体の圧力損失Dp
Vが示されている。
【0164】
【0165】
プロセスの制御に必要な制御バルブは、ある程度の圧力損失範囲を必要とするため、シミュレーションでは、空気流の圧縮性能を500mbarと仮定した。空気流入から排ガス排出まで、ガス流の場合、正味圧力損失(制御バルブなし)は80mbarである。
【0166】
H2生成物流が1kg/hとは異なる場合、その他の好ましい配管数および形状が生じる。しかし、この場合、指定されている好ましい管径は影響を受けない。配管数N管および配管長さL管、従って装置直径D装置および装置長さL装置が変更されるだけである。
【0167】
これらの値は、当業者にとって公知であり、またVDI熱アトラス(Verein Deutscher Ingenieure,「VDI-Warmeatlas」,11 ed.,H.V.V.u.C.(GVC),ed.,2013,pp.1223-1225)に記載されている方程式によって算出された。
【0168】
第2例-アンモニア
この例は、量およびエネルギーに関して、Aspen Plusシミュレーションプログラムと同様の、BASF社内シミュレータを用いた熱力学シミュレーションの結果である。
【0169】
Pd膜によるH2/N2分離の計算には、Excel計算ツールを用い、その計算規則はSaltonstallの出版物(C.Saltonstall,「Calaculation of the Memebrane Area Required for Gas Separations,」Bd.32,pp.185-193,1987)に記載されている。
【0170】
この計算では、流れの圧力損失は考慮されない。というのも、この計算例は装置の設計に依拠していないからである。この計算例は、本発明に基づく方法の可能性を明確に示すものである。
【0171】
【0172】
液体NH3は、常温(25℃)であらかじめタンクに保管される。毎時1,000kgのH2を生成するために、6,891kg/hのNH3を搬送ポンプで予熱器が組み込まれた蒸発器へポンピングし、20barで気化させる。そのために、7kWのポンプ出力と49.3℃で1,920kWの熱エネルギーを供給する必要がある。
【0173】
400℃および20.0barにおけるNH3蒸気の平衡転化率は、86.0%である。NH3蒸気を反応温度まで加熱するため、また実際に改質するためには、6,700kWの熱流が必要となる。改質物は、以下のモル組成、69.3体積パーセントのH2、23.1体積パーセントのN2、6.9体積パーセントのNH3を有することができる。
【0174】
この改質物を、さらに改質物加熱器において450℃まで加熱する。そのためには、320kWの熱出力が必要である。
【0175】
加熱された改質物は、引き続き膜モジュールに送られる。そのPd膜は、Macchiら(G.Macchi,D.Pacheco Tanaka,「Flexible Hybrid separation system for H2 recovery from NG Grids,」in WP10-Exploitation workshop D10.16,2016)およびMelendezら(J.Melendez,E.Fernandez,F.Gallucci,M.van Sint Annaland,P.AriasおよびD.Tanaka,「Preparation and characterization of ceramic support ultra-thin Pd-Ag membranes,」Journal of Membrane Science,Bd.528,pp.12-23,2017)が開示しているように、固有の値を有している。それによれば、5マイクロメートルの層厚を持つPd-Ag膜は、450℃で、6.9*10-7mol m-2 s-1 Pa-1のH2浸透性と、>150,000の最適なH2/N2選択性を備えている。
【0176】
この膜を介して、450℃で1,000kg/hのH2が高温の浸透物として加熱された改質物から分離される。残渣物(5,890kg/h)は、以下のモル組成、10.0体積パーセントのH2、67.8体積パーセントのN2、22.2体積パーセントのNH3を有している。10.0%の残渣物中のH2モル濃度は、52kg/hのH2の質量流量に相当する。NH3分解で生成された1,052kg/hのH2量から、1,000kg/hのH2が得られる。
【0177】
浸透物側の圧力が1.0barの場合、分離には166m2の面積が必要である。浸透物は純度>99.99のH2を有し、浸透物冷却器または空気ヒーターにおいて450℃から45℃まで冷却された後、H2生成物流として全プロセスから出る。そのために、高温の浸透物流から1620kWを取り出す必要がある。
【0178】
残滓物を20.0barから1.2barまで膨張させ、このとき、残滓物の燃焼のために、効率25%のジェットノズルにおいて27,460kg/hの加熱した空気を1.0から1.2barまで圧縮する。
【0179】
そこから生じる混合物(33,350kg/h)を燃焼させ、900℃の燃焼ガスとしてバーナーを出ることにより、段階的に71℃まで冷却させる。第1の工程では、残渣物を400℃から450℃まで加熱するために320kWが必要であり、第2の工程では改質フィードを49.3℃から反応温度まで加熱し、実際にNH3を改質するために6,700kWが必要である。このとき、燃焼ガスは261℃まで冷却される。最後に、液体のNH3を気化させことにより、燃焼ガスを71℃まで冷却する。
【0180】
液体のNH3は、4.90MWh/kgの低位発熱量を有し、H2は33.33MWh/kgの低位発熱量を有している。従って、6,891kg/h*4.90MWh/kg=33.766MWプラス7kWのポンプ出力がプロセスに供給され、1,000kg/h*33.33MWh/kg=33,333MWがH2の形で得られる。従って、全プロセスのエネルギー利用率は98.7%である。
【0181】
PSAなしでPd膜を使用した場合、本発明に基づく方法のエネルギー利用率と先行技術とを比較すると、本発明のエネルギー面での利点と経済的利点は以下のようになる。
英国特許第1,079,660号 65%
国際公開第2018/235059号 <78%
国際公開第02/071451号2 85%
L.Linら <80%
Lambら 90%
本発明 >98%
【0182】
第3例-本発明と、米国特許第5,741,474号による膜反応技術との比較。すなわち、同じ温度での改質器とH2分離と、それぞれの最適温度での改質器とH2分離との比較。
【0183】
改質およびH2分離が膜を介して、それぞれ個々のプロセス工程に最適な温度で行われる本発明による方法と、例として、膜反応器の場合のように、システムの関係上、2つのプロセス工程を同じ温度で行う必要のあるプロセスとが比較される。
【0184】
この例は、メタノール改質とPd膜でのH2分離による1,000kg/hのH2製造について計算され、量およびエネルギーに関しては、Aspen Plusシミュレーションプログラムと同様の、BASF社内シミュレータを用いた熱力学シミュレーションの結果である。
【0185】
Pd膜によるH2/N2分離の計算には、Excel計算ツールを用い、この計算ツールは、C.Saltonstallの出版物(「Calaculation of the Memebrane Area Required for Gas Separations,」Bd.32,pp.185-193,1987)に記載されている計算規則を用いてプログラミングされた。
【0186】
この計算において、流れの圧力損失は考慮されない。というのも、この計算例は装置の設計に依拠していないからである。
【0187】
以下の2つのケースを比較した。
ケース1:改質およびH2分離は、それぞれ250℃の同じ温度で行う。
ケース2:改質およびH2分離は、それぞれ450℃の同じ温度で行う。
ケース3:改質およびH2分離は異なる温度で行い、改質は250℃で、H2分離は450℃で行う。
【0188】
すべてのケースで、改質器およびH2分離は15barで作動する。
【0189】
結果:
【0190】
【0191】
その結果、それぞれのプロセス工程に温度を適合させるのが有利であることが判明した。
【0192】
改質器内の温度が上昇するに従って、エネルギー利用率は低下する。これは、温度が高くなると、温度が低い場合よりも多くのエネルギーを改質器に供給する必要があるからである。エネルギー利用率とは、投入されているメタノール(フィード)の発熱量に対する水素(生成物)の発熱量の比である。改質温度が450℃の場合、エネルギー利用率は91.7%(ケース2)であり、改質温度が250℃になると93.5%に上昇する(ケース1および3)。
【0193】
Pd膜によるH2分離時の温度が上昇すると、必要な膜面積が低下し、それに伴って膜をコーティングするためのPd必要量も低下する。温度が450℃の場合、H2分離のための膜面積は257m2(ケース2)または224m2(ケース3)で十分であるのに対して、250℃の低温の場合、必要な膜面積は3.5倍の916m2(ケース1)に増加する。これに応じて、Pd必要量も15.4g(ケース2)または13.4g(ケース3)から54.9g(ケース1)まで上昇する。
【0194】
本発明に基づく方法(ケース3)は、改質とH2分離をプロセス技術的に分けているため、両方のプロセス工程の要件に温度を最適に適合させることが可能である。すなわち、このことが不可能である膜反応器のような方式に対して、本方法はコストに関連する2つのカテゴリーにおいても利点を有している。
【0195】
第4例-メタノール 流入する流れと流出する流れとの温度差。
図8は、流出する流れS8およびS18と、流入する流れS10およびS1との温度差が、装置A7およびA2+A3の熱交換器面積ならびにエネルギー利用率に及ぼす影響を示している。このために、例1に記載された方法の温度差が変更された。結果は、例1で述べたモデル計算に基づいている。簡略化の理由から、すべてのケースで、S8とS10との温度差ならびにS18とS1との温度差は常に同じ大きさが選択された。すなわち、S8-S10=S18-S1が常に該当する。
【0196】
温度差が小さくなるに従ってエネルギー利用率は線形に増加するのに対し、熱交換器面積は温度差が小さくなるに従って指数関数的に増加する。
図8は、温度差が100℃より大きくなると、熱交換器面積は顕著に減少しないが、エネルギー利用率は顕著に悪化することを示している。反対に、温度差が10℃より小さくなると、エネルギー利用率の顕著な改善はないが、A7およびA2+A3において、そのために必要な熱交換器面積が不釣り合いに上昇する。このことから、本発明に基づく方法では、流出する流れS8およびS18と、流入する流れS10およびS1との好ましい温度差を5~100℃、好ましくは10~80℃、特に好ましくは15~60℃、とりわけ20~40℃とするべきであるという結論が引き出される。
【国際調査報告】