(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】エフェクト顔料と散乱添加剤とを含有する層
(51)【国際特許分類】
H01L 31/042 20140101AFI20240822BHJP
【FI】
H01L31/04 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508359
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022072291
(87)【国際公開番号】W WO2023017007
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】202111090721.2
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】バルト ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー ローラン
(72)【発明者】
【氏名】フンガー マルク
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ゼン
(72)【発明者】
【氏名】ブリギッナ クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】コンツ ヤン-ニクラス
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
5F251AA08
5F251AA09
5F251AA10
5F251AA11
5F251EA19
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】
本発明は、1種以上のフレーク状エフェクト顔料と1種以上の光散乱中心とを含有する層、シート、又はフィルム、その作製方法、太陽電池又は太陽電池モジュールの着色を含むがこれに限定されない任意の種類の太陽電池エネルギー収集装置へのその使用、及びかかる層、シート、又はフィルムを備える着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールを含むがこれに限定されない太陽電池エネルギー収集装置、並びにこれらの作製方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明材料の1つ以上の層でコーティングされ、ポストコーティングでコーティングされてもよい透明又は半透明のフレーク状基材からなる1種以上のエフェクト顔料を含み、更に1種以上の光散乱中心を含む、層、シート、又はフィルム。
【請求項2】
前記光散乱中心は、粒子、バブル、液滴、及び密度変動から選択される、請求項1に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項3】
前記光散乱中心は、透明又は半透明の有機又は無機粒子から選択される、請求項1又は2に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項4】
前記光散乱中心は、SiO
2、好ましくはシリカ球又はシリカ粉、球状シリコーン樹脂粉末、BaSO
4、Al
2O
3、BaMgAlO
x若しくはEuドープBaMgAlO
x粒子、又はグラスバブルズから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項5】
前記層における前記光散乱中心の濃度は、0.01~5質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項6】
400~1000nmの範囲の光に対して70%以上の透過率を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項7】
400~1000nmの範囲の光に対して50%以上のヘイズを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項8】
前記エフェクト顔料は、真珠光沢顔料、干渉顔料及び多層顔料から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項9】
前記エフェクト顔料は、合成又は天然の雲母、フレーク状ガラス基材、フレーク状SiO
2基材、又はフレーク状Al
2O
3基材をベースとすることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項10】
前記フレーク状基材は、Ti、Sn、Si、Al、Zr、Fe、Cr及びZnの金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物の1つ以上の層でコーティングされていることを特徴とする、請求項10に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項11】
2種以上の異なるエフェクト顔料を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項12】
前記層におけるエフェクト顔料の量は、0.01~15質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項13】
前記エフェクト顔料と前記光散乱添加剤とを含有する前記層の厚さは、5~1000μmの範囲であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項14】
ポリマーベース、ゾルゲルベース、ポリシラザンベース、ガラスベース、又はセラミックベースの層である、請求項1~13のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項15】
ポリマーフィルムである、請求項1~14のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項16】
ポリオレフィン、非常に好ましくはポリエチレン、又はそのコポリマーから選択されるポリマーシート/フィルムである、請求項1~15のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項17】
EVA、EBA、EMA、EEA、POE、PC及びBPOフィルム、又はPVB若しくはTPUシート/フィルムから選択されるポリマーシート/フィルムである、請求項1~16のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項18】
ガラス、セラミック又はエナメル層である、請求項1~17のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項19】
ポリマー材料の溶融押出によって請求項1~18のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルムを作製する方法であって、前記1種以上のエフェクト顔料と1種以上の散乱添加剤とが押出前に前記ポリマー溶融物に添加される、方法。
【請求項20】
前記1種以上のエフェクト顔料及び1種以上の散乱添加剤を、ガラスフリット又はセラミック若しくはエナメル前駆体と混合すること、前記混合物を基材上にコーティング、印刷、又は噴霧すること、及び前記混合物をガラスフリット、セラミック又はエナメルのそれぞれのガラス温度を超える温度で焼成することによって、請求項19に記載の層、シート、又はフィルムを作製する方法。
【請求項21】
太陽電池モジュールの封止フィルム又はシートである、請求項1~20のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルム。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の層、シート又はフィルムを含む、着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項23】
以下の構成要素
-透明なフロントカバー層、
-任意の構成要素として、前記太陽電池の前側の更なる透明な層、
-1つ以上の太陽電池、又は導電性部品によって、好ましくはバスバーによって電気的に相互接続されている太陽電池のアレイ、
-リアシート、
を備える着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールであって、前記透明なフロントカバー層、又は前記太陽電池の前側の前記更なる透明な層は、請求項1~18のいずれか1項に記載の層、シート、又はフィルムである、着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項24】
前記リアシートが、黒色又は暗色であり、及び/又は前記着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールが、前記太陽電池又は太陽電池アレイと前記リアシートとの間に設けられた追加のシート又は封止フィルムを含み、前記追加のシート又は封止フィルムが、黒色又は暗色であることを特徴とする、請求項23に記載の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項25】
前記太陽電池を相互接続している前記導電性部品が、前記エフェクト顔料と前記光散乱添加剤とを有する層の適用前に黒色又は暗色で着色されていることを特徴とする、請求項21又は22に記載の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項26】
暗色のグリッドが、前記太陽電池又は太陽電池アレイに組み込まれており、前記グリッドが、前記太陽電池と前記導電性部品との間の空間を含むがこれに限定されない明るい領域を覆っていることを特徴とする、請求項23~25のいずれか1項に記載の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項27】
フロントシート及び/又はバックシートが、ガラスシートであることを特徴とする、請求項23~26のいずれか1項に記載の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項28】
フロントシート及び/又はバックシートが、ポリマーシートであることを特徴とする、請求項23~27のいずれか1項に記載の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項29】
非晶質、単結晶及び多結晶シリコンの太陽電池、CIGS、CdTe、III/V又はII/VI太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、量子ドット太陽電池、有機太陽電池、及び色素増感太陽電池から選択されることを特徴とする、請求項23~28のいずれか1項に記載の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュール。
【請求項30】
請求項1~17及び23~29のいずれか1項に定義された構成要素又は層を所望の順序で積み重ね、その後前記構成要素又は層を、熱及び/又は圧力を加えることによって、又は接着剤若しくは接合剤を使用することによって、共に積層することによる、請求項23~29のいずれか1項に記載の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールを作製する方法。
【請求項31】
前記エフェクト顔料と前記光散乱添加剤とを含有する前記層、シート、又はフィルムが、第1の積層ステップにおいて前記フロントシートに積層され、前記エフェクト顔料と前記光散乱添加剤とを含有する積層された層、シート、又はフィルムを有する前記フロントシートが、第2の積層ステップにおいて残りの構成要素のスタックに積層される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記積層ステップが、熱及び/又は圧力を加えることによって、又は接着剤又は接合剤若しくは接合層を使用することによって、好ましくは真空プレスの中で、実施されることを特徴とする、請求項30又は31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種以上のフレーク状エフェクト顔料と1種以上の光散乱中心とを含有する層、シート、又はフィルム、その作製方法、太陽電池又は太陽電池モジュールの着色を含むがこれに限定されない任意の種類の太陽電池エネルギー収集装置へのその使用、及びかかる層、シート、又はフィルムを備える着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールを含むがこれらに限定されない太陽電池エネルギー収集装置、並びにこれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、過去数年にわたって大きく成功を収め、2019年には国際送電網接続設備の600GWを上回り、その大部分は実用的規模で設置されている。全ての太陽電池の基本的機能は、光を吸収して、励起電子-正孔対を生成する光活性材料に頼っている。この電子-正孔対は、太陽電池内で、電子及び正孔の異なる移動度を有する領域、いわゆるpn接合部によって分離される。様々な種類の光吸収性材料が使用され得るため、太陽光発電産業では、以下の種々の太陽電池技術が知られている。
1)結晶シリコン太陽電池(単結晶c-Si及び多結晶mc-Si)
2)テルル化カドミウム太陽電池(CdTe)
3)銅-インジウム-ガリウム-ジセレニド(CIGS/CIS)
4)非晶質シリコン太陽電池(a-Si)
5)III/V太陽電池、例えばガリウムヒ素(GaAs)太陽電池、又はIII族及びV属元素のスタックからなる多接合太陽電池、例えばゲルマニウム/インジウム-(アルミニウム)-ガリウム-ヒ素又はリン(In(Al)GaAs/P)
6)色素増感型太陽電池(DSSC)
7)有機太陽電池(OSC)
8)ペロブスカイト太陽電池(PSC)
9)量子ドット太陽電池(QSC)
10)II族及びVI族の元素からなる他のII/VI太陽電池、例えばセレン化亜鉛(ZnSe)又は硫化鉄(FeS)
11)タンデム太陽電池
しかしながら、より多くの表面、例えば建物の表面、及び他の物体(例えば車)上の表面を使用することは、太陽エネルギー生産に使用され得る全表面積を増大させる。この目的で、魅力的な色及び色調を有する太陽電池を作製するため、及び様々な入射角での効率を増大させるための新たな技術及びアプローチが、太陽エネルギー事業において大きく注目されている。
国際公開第2019/122079号(A1)は、エフェクト顔料を適用媒体、例えばガラス着色剤、又は透明ラミネーション材料若しくは封止材等に組み込み、その後太陽電池の前側に適用することによって、最新技術の単一太陽電池、又は複数の電気的に相互接続された太陽電池で作製された太陽電池モジュールを着色する方法を開示している。エフェクト顔料は、半透明であり、太陽電池効率に影響する(impart)ことなく、光入射面の色を制御する。
しかしながら、光入射面において顔料含有層によって提供される半透明な着色により、太陽電池構造及び/又はその導電性部品は、保護ガラス及び封止フィルムを通して、なおも少なくとも部分的に視認可能であることが観察された。このような望ましくないパターンの発生は、着色太陽電池の使用を、特に建物のファサード等の分野又は他の光起電を組み込んだ建物の分野において制限し得る欠点である。更に、色の強度は視野角に依存することも観察されており、これは特定の用途で色彩効果の魅力を低下させる可能性がある。
国際公開第2019/122079号(A1)は、外観の均一性を増強するために均質な暗色に着色した背景を使用すること、及び/又は望ましくないパターンの発生を抑制するために太陽電池モジュールの導電性部品を黒色化することを提案している。しかし、これは追加の加工ステップ又は構成要素を必要とし、太陽電池モジュール製造プロセスの時間とコストを増加させる。
米国特許第5,807,440号明細書は、着色剤、顔料、又は染料を含有する着色層を光入射側に備え、更に15~90%のヘイズ特性を提供するディフューザー層を備える着色光起電装置を記載している。ディフューザー層は、白色又は無色に近い顔料、半透明樹脂中に分散された多孔質樹脂又は非相溶樹脂を含み得る。しかし、当該文書の実施例は、吸収染料を有する着色層と追加のディフューザー層とを備える光起電装置は、ディフューザー層のない基準装置と比較して、32~36%の短絡電流の減衰を示すと報告している。更に、着色層に加えて別のディフューザー層を使用することは、太陽電池モジュール製造プロセスを複雑にし、プロセスの時間とコストを増加させる。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の目的は、従来技術のフィルムで観察された欠点がなく、広範囲の視野角で良好な色反射強度を示しながら、望ましくない可視パターン(例えば、ストリング/バスバーの)を避ける、太陽電池及び太陽電池モジュールのための改善された着色層を提供することである。本発明の別の目的は、このような着色層を含む改善された着色太陽電池及び着色太陽電池モジュールと、それを製造するための、時間効果及びコスト効果がより高い方法を提供することである。
【0004】
驚くべきことに、上記の目的の1つ以上は、以下に開示及び特許請求される層、シート、又はフィルムを提供することによって達成できることが見出された。当該層、シート、又はフィルムは、1種以上のエフェクト顔料を含み、更に1種以上の、例えば散乱粒子のような光散乱中心を含み、結果として透明に見えないが特定のヘイズを示し、なおも暗色の背景に対して所望の色彩効果を提供する。このような層を太陽電池モジュールの前側に追加することによって、着色太陽電池又は太陽電池モジュールにおける電池及びストリング/バスバーの望ましくない暗いパターンの発生を低減すること、及び色の強度の視野角への依存を低減することができると同時に、顔料含有層の高い透過率をなおも維持し、それにより、高い太陽電池効率に寄与することが見出された。
驚くべきことに、光散乱中心は、着色層をより不透明にし、不均等な色を隠蔽し、より均一な色をソーラーパネル全体に付与することも見出された。同時に、下記の実施例に示すように、太陽電池の効率は、光散乱中心によって大きく低下せず、増加さえもし得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による太陽電池モジュールを示す図である。
【
図2】対応する透過率の値(グラフTa等)及び対応するヘイズ値(グラフHa等)を、異なるサイズ及び種類の散乱粒子を有する本発明のフィルムa)~e)について(Ta~e、Ha~e)、及び散乱粒子を添加していない参照フィルムについて(Tref、Href)示す。
【
図3】対応する透過率の値(グラフTd等)及び対応するヘイズ値(グラフHd等)を、散乱粒子E+520を異なる濃度で有する本発明のフィルムd)、f)、及びg)について(Td、Tf、Tg、Hd、Hf、Hg)、及び散乱粒子を添加していない参照フィルムについて(Tref、Href)示す。
【
図4】散乱粒子なし(A)、及び散乱粒子BMH-40を1%(B)又は2%(C)用いて得られたフィルムの光学画像を、フロントガラスを有する積層太陽電池を背景として示す。
【
図5】本発明による層1及び2を有するガラスプレートの対応する透過率及びヘイズ(T1~2、H1~2)、及び参照層Ref1を有するガラスプレートの対応する透過率及びヘイズ(Tref1、Href1)を示す。
【
図6】コーティングされた試料の透過率の値を示す。
【
図7】
図6の透過率曲線を統合することで得られた、コーティングした試料の光損失率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
従って、本出願は、透明又は半透明材料の1つ以上の層と、任意選択でポストコーティングとでコーティングされた透明又は半透明のフレーク状基材からなる1種以上のエフェクト顔料を含み、更に1種以上の光散乱中心を含む、層、シート、又はフィルムに関する。
本出願は更に、上記及び下記の層、シート、又はフィルムを作製する方法に関する。
本出願は更に、太陽電池モジュールの着色層としての、特に着色封止層又はガラス着色剤としての、上記及び下記の層、シート、又はフィルムの使用に関する。
本出願は更に、上記及び下記の層、シート、又はフィルムを備える着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールに関する。
本出願は、更に、以下の構成要素:
-透明なフロントカバー層(以後、短く「フロントシート」とも称する)、
-任意選択で、太陽電池の前側の更なる透明な層、
-1つ以上の太陽電池、又は導電性部品によって、好ましくはバスバーによって電気的に相互接続されている太陽電池のアレイ、
-リアシート、
を備える着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールであって、透明なフロントカバー層、又は太陽電池の前側の更なる透明な層は、透明又は半透明材料の1つ以上の層と任意選択でポストコーティングとでコーティングされた透明又は半透明のフレーク状基材からなる1種以上のエフェクト顔料を含み、更に1種以上の光散乱中心を含む、着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールに関する。
本出願は、更に、上記及び下記の着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールを作製する方法に関する。
【0007】
上記及び下記において、「光散乱中心」という用語は、散乱粒子又はその他の添加剤、バブル、液滴、流体中の密度変動、多結晶固体中の結晶子、単結晶固体中の欠陥、表面粗大点等が挙げられるがこれらに限定されない、様々な種類の散乱中心を含むと理解される。本発明による散乱中心によって生じる散乱効果は、鏡面反射と対照的に、拡散反射としても理解でき、特記のない限り、可視、UV及びIR領域、好ましくは200~1200nmの領域、より好ましくは300~1000nmの領域における光の散乱を意味する。
上記及び下記において、太陽電池又は太陽電池モジュールの「前側」という用語は、光を受ける側又は入射光に面する側を意味し、太陽電池又は太陽電池モジュールの「後側」又は「背面側」という用語は、放射線を受ける側の反対側又は入射光と反対側に面する側を意味する。「フロントガラス/シート」又は「フロント封止フィルム」という用語は、太陽電池又は太陽電池モジュールの前側に設けられたガラス、シート又は封止フィルムを意味し、「リアガラス/シート」及び「リア封止フィルム」という用語は、太陽電池又は太陽電池モジュールの後側に設けられたガラス、シート又は封止フィルムを意味する。
上記及び下記において、特記のない限り、「太陽電池」という用語は、単一太陽電池及び太陽電池モジュールの両方、並びに前述のアレイ、ストリング又はパターンを包含すると理解される。同様に、「太陽電池モジュール」という用語は、特記のない限り、単一太陽電池も包含すると理解される。
上記及び下記において、特記のない限り、光散乱粒子及びエフェクト顔料の質量百分率は層、シート、又はフィルムの総質量を基準とする。
上記及び下記において、「中間粒径D50」(medium particle size D50)という用語は、粒子の50%がこの値よりも小さい粒径を有し、粒子の50%はこの値よりも大きい粒径を有するように粒径分布を分割するミクロン単位の粒径を意味する(メジアン直径としても知られる)。特記のない限り、中間粒径D50は、Malvern MS2000装置で得られる。
下記において、本発明による層、シート、又はフィルムは、短く「層」とも称され、これは上記又は下記の本発明による層、シート、又はフィルムを包含すると理解される。
【0008】
本発明は、最新技術の太陽電池、及び複数の電気的に相互接続された太陽電池で作製された太陽電池モジュールを、大きな柔軟性をもって着色し、低い又は無視できる程の太陽電池効率の損失及び高レベルの長期安定性で、広範な異なる色を実現する、高効率の方法を提供する。更に、本発明は、バスバー及び個々の単太陽電池の視認可能性が低く、同時に低い又は無視できる程の太陽電池効率の損失が達成される場合に、高い色均一性と良好な色強度とを全ての視野角で達成するための解決策を提供する。
こうして、驚くべきことに、太陽電池モジュールの前側のエフェクト顔料含有層に光散乱添加剤を追加することによって、着色太陽電池又は太陽電池モジュールにおける電池及びストリング/バスバーの望ましくない暗いパターンの発生を低減又は回避さえして、色の強度の視野角への依存を低減することができると同時に、顔料含有層の高い透過率をなおも維持し、それにより、高い太陽電池効率を確保することが見出された。
特に、驚くべきことに、光散乱添加剤を顔料含有層に使用する場合、光散乱添加剤は好ましくは低マイクロメートルの範囲の直径を有する透明な粒子から選択され、散乱中心として作用し、着色層のヘイズを増大させることで隠蔽力を高めると同時に、その透明性にまったく影響しないか又はごくわずかな影響しか与えず、太陽電池効率にプラスの影響を示し得る。
【0009】
更に、驚くべきことに、特にカバーガラスの前側上に使用した場合、層中のエフェクト顔料の濃度は、光学的に透明な粒子から選択される光散乱添加剤と組み合わせて使用したときに低下させることもでき、その結果、エフェクト顔料が太陽電池効率に及ぼし得る影響が更に低減し得ることが見出された。
典型的な用途では、エフェクト顔料の濃度は≧1g/m2であることが望ましく、そうしなければ、色の印象は既に強いが太陽電池構造はなおも視認可能な状態となり得る。高い隠蔽力に加えて、太陽電池モジュールの色の角度依存性が低減される。これは、散乱粒子自体による効率の向上と併せて、エフェクト顔料による光の部分的反射による電力損失を目立たなくしながら着色太陽電池モジュールを設計するという新たな可能性を開く。
本発明によるエフェクト顔料と光散乱添加剤とを含有する層は、全体的な太陽電池効率を大きく低下させることなく十分な色を提供するのに理想的であることが見出された。長期試験では、高レベルの安定性が示された。エフェクト顔料含有フィルムと太陽電池との間の直接接触部は太陽電池モジュールの構成において最も要求の厳しい場所であることから、エフェクト顔料含有フィルムは、太陽電池モジュールスタックの他のどの位置に使用しても悪影響がないと仮定して差支えない。
エフェクト顔料は、入射可視光の一部を反射するが、光起電プロセスによってエネルギーを作り出すために必要な光は通過させる。エフェクト顔料は、最高効率の角度を変更すること、及びそれにより色及び効率を操作することができるように配向できる。
エフェクト顔料と光散乱添加剤とを有する層は、最新技術の太陽電池に容易に適用でき、その使用の効率を更に向上する。エフェクト顔料と光散乱添加剤とを含有する層を太陽電池モジュールに適用する加工ステップは、封止された太陽電池モジュールを製造するための既存の最新方法に容易に組み込むことができる。
【0010】
本発明の使用によって、太陽電池の視覚的外観を、特定のニーズに適合させることができる。建物、デバイス、自動車車両等の太陽電池を含む物体の外側の視覚的外観を改善でき、また太陽電池の透明性及び反射性を制御できる。更に、暗色バックシートが使用され、バスバー及び接続点が暗色化された場合、電池及び明るい色のバスバーの視認可能性を低減又は回避さえもできる。また、本発明を使用して、特殊な効果及び設計を達成するように特別な色を有する太陽電池を提供することができ、例えば、使用されるエフェクト顔料に依存して、例えばパネル上にきらめき効果、レンガ壁の模倣、又は家屋建設に使用される材料の異なる面の色調等のテクスチャも追加することができる。
本発明の別の利点は、太陽電池の典型的な技術的外観が、人々が見慣れた中間的な意匠を変える場合、及び長期安定性が不可欠である場合に、外観を人々が多く見慣れた中間的な意匠に変更することによって、太陽電池を任意の表面、例えば、建物(ファサード及び屋根)、手持ち式、携帯型及び設置型デバイス、自動車車両又はその他の輸送物体(乗用車、トラック、オートバイ、スクーター、列車、船、トレーラー等)、値札、プラスチック、着用可能な品物、及び家庭用電化製品の表面、又は光学的外観を変化させることなく、太陽電池のシームレスな統合を必要とする任意の他の視認性の高い表面、又はその他の種類の太陽電池設備に、シームレスに統合できる可能性があることである。
太陽電池の着色は、様々な色にわたって可能であり、ガラス等の硬質基板又は単太陽電池技術に限定されない。更に、ラミネーションスタックにおける追加層のような複雑な解決策は必要ではない。
エフェクト顔料含有層は、太陽電池の前面の表面の外観を、異なる色、例えば赤色、紫色、緑色等、及びこれらの混合物にする。層の厚さ、層に使用される材料、及びエフェクト顔料の濃度又はこれらの組み合わせは、所望の色彩効果を達成するために変更されてもよい。特に、異なる濃度の赤色、緑色、及び青色のエフェクト顔料の組み合わせ/混合物を用いて、広い色空間/領域を達成できる。
有利なことに、光散乱中心は太陽電池モジュールの着色をもたらすエフェクト顔料と同じ層に組み込むことができ、これは、別々の層の数を減らし、モジュール製造プロセスの時間及びコスト効率を向上する。
更に、現在利用可能な技術が太陽電池性能に対する影響という大きな欠点を有し、実生活での条件において太陽電池効率が15%超の初期性能から10%未満に低下し得ることとは対照的に、着色太陽電池の効率はあまり影響を受けないことから、太陽電力のコストは大幅には増加しない。
【0011】
驚くべきことに、エフェクト顔料は、エフェクト顔料の濃度が適宜選択されれば、電池効率にほとんど影響を与えずに太陽電池を均一に着色することができる可能性を示す。驚くべきことに、特に真珠光沢顔料、干渉顔料及び/又は多層顔料等の従来のエフェクト顔料が所望の効果を示すことも判明した。これらのエフェクト顔料の作用原理は、特定の波長領域の選択的反射に基づくことから、色彩効果を選択的に調整でき、結果として生じる効率は光の透過部分に直接相関し得る。一般に、所望の色彩効果は、特定波長の低反射で既に得ることができる。太陽電池の性能及び効率は、以下の実施例に示すように、顔料及び散乱添加剤の適切な選択によって増加できる。
更に、驚くべきことに、光散乱中心の組み込みは、一方では本発明による顔料含有層にヘイズをもたらし、これは有利には、太陽電池アレイ構造又は電気的に相互接続するバスバー等の形状における暗いパターンの発生を減らし、他方で顔料含有層の透過率を大きく低減せず、その結果太陽電池の電力変換効率に悪影響を及ぼさないことが見出された。
【0012】
本発明による層中の光散乱中心は、好ましくは粒子、バブル、例えばグラスバブルズ、液滴、及び顔料層における密度変動から選択され、これらは全て、光を散乱することができ、より好ましくは光学的に透明又は半透明であり、有機又は無機であり得る粒子から選択され、以後「(光)散乱粒子」とも呼ばれる。
非常に好ましくは、本発明による層中の光散乱粒子は、SiO2、好ましくはシリカ球又はシリカ粉、球状シリコーン樹脂粉末、更にはBaSO4、Al2O3、BaMgAlOx若しくはEuドープBaMgAlOx粒子、又はグラスバブルズから選択される。
硫酸バリウム粒子は、例えば堺化学工業株式会社から、BMHシリーズ又はBシリーズ、例えばBMH40又はB-1等の様々なサイズで市販されている。
球状シリコーン樹脂粉末は、例えばABC NanoTech Co.Ltd.から、例えばE+508、E+520、E+540等の様々なサイズで市販されている。
グラスバブルズは、例えば3Mから、例えばS60等の様々なサイズで入手可能である。
シリカ粉は、例えばSibelcoから、例えばM500及びM800のような様々なサイズで入手可能である。
球状シリコーン樹脂粉末等の光散乱粒子は、好ましくは球又は顆粒のような丸い形であり、すなわち血小板の形ではない。光散乱粒子は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.2~8μm、非常に好ましくは0.5~6μm、最も好ましくは1~4μmの平均粒径、好ましくは中間粒径D50を有する。別の好ましい実施形態では、粒子は、ある平均粒径を有し、好ましくは2~10μm、非常に好ましくは3~6μmの中間粒径D50を有する。
グラスバブルズの場合、中間粒径D50は、好ましくは10~50μmの範囲、より好ましくは20~50μmの範囲である。
好ましくは、本発明による層中の光散乱粒子の濃度は、0.01~10%、より好ましくは0.05~10%、更により好ましくは0.05~5%、非常に好ましくは0.05~3%、最も好ましくは0.1~1.5質量%の範囲であり、好ましくは0.1~10g/m2である。
【0013】
本発明による層中のエフェクト顔料は、好ましくは真珠光沢顔料、干渉顔料及び多層顔料から選択される。エフェクト顔料は、好ましくは合成又は天然の雲母、フレーク状ガラス基材、フレーク状SiO2基材、又はフレーク状Al2O3基材をベースとする。フレーク状基材は、好ましくはTi、Sn、Si、Al、Zr、Fe、Cr及びZnの金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物の1つ以上の層でコーティングされている。
本発明に従って層に使用されるエフェクト顔料は、好ましくは、透明又は少なくとも半透明である。本発明に有用なエフェクト顔料は、好ましくは赤色、青色、又は緑色を示す。しかしながら、灰色、白色、紫色、赤色、又は橙色等の他の色もまた好適である。特定の色及び色調を生成するために、他の色又はその混合色が使用できる。エフェクト顔料は、銀、白金、金、銅、及び様々な他の金属が挙げられるがこれらに限定されない金属効果をもたらすこともできる。また、異なる色の混合物及び層の厚さの変動を使用して、印刷画像/写真/色調を生成することも可能である。
【0014】
エフェクト顔料は、透明又は半透明材料の1つ以上の層と、任意選択でポストコーティングとでコーティングされた透明又は半透明のフレーク状基材を好ましくは含み、非常に好ましくは上記基材からなる。
好ましくは、エフェクト顔料は、金属酸化物、金属酸化物水和物、又はこれらの混合物を含む少なくとも1つのコーティングを含むフレーク状基材を含有する。好ましくは、エフェクト顔料は、透明又は半透明で無色のフレーク状基材からなり、これは、透明又は半透明で無色の材料の1つ以上の層でコーティングされている。真珠光沢顔料、干渉顔料、及び/又は多層顔料の使用が好ましい。例えば国際公開第2011/095326号(A1)及び以下に記載のように、エフェクト顔料の長期安定性は、好ましくは、エフェクト顔料の最後の層として有機コーティング及び/又は無機コーティングのポストコーティングを使用することで改善可能である。
【0015】
エフェクト顔料に好適な基材は、例えば、全ての既知のコーティングされた又はコーティングされていないフレーク状基材、好ましくは透明又は半透明で、好ましくは無色のフレークである。好適なのは、例えば、フィロシリケート、特に合成若しくは天然雲母、ガラスフレーク、SiO2フレーク、Al2O3フレーク、TiO2フレーク、液晶ポリマー(LCPs)、ホログラフィック顔料、BiOClフレーク、又は上記フレークの混合物である。活性光起電層の極めて高い隠蔽力を得るために、誘電体コーティングを有するアルミニウムフレークも、本発明に従って低濃度で使用できる。
ガラスフレークは、当業者に既知の全てのガラスの種類、例えばAガラス、Eガラス、Cガラス、ECRガラス、リサイクルガラス、窓ガラス、ホウケイ酸ガラス、Duran(登録商標)ガラス、実験器具用ガラス又は光学ガラスからなり得る。ガラスフレークの屈折率は、好ましくは1.45~1.80、特に1.50~1.70である。特に好ましいガラスフレークは、Aガラス、Cガラス、Eガラス、ECRガラス、石英ガラス及びホウケイ酸ガラスからなる。
合成又は天然雲母のコーティング又は非コーティングフレーク、SiO2フレーク、Al2O3フレーク、及びガラスフレーク、特にCガラス、ECRガラス又はホウケイ酸カルシウムアルミニウムのガラスフレークが好ましい。特に、ホウケイ酸カルシウムアルミニウムガラスをベースとするエフェクト顔料が好ましくは使用される。本発明の変形において、Al2O3フレークが好ましい。
基材は、一般に、0.01~5μm、特に0.05~4.5μm、特に好ましくは0.1~1μmの厚さを有する。長さ又は幅の寸法は、通常、1~500μm、好ましくは1~200μm、特に5~125μmである。基材は、一般に、2:1~25,000:1、好ましくは3:1~1000:1、特に6:1~250:1のアスペクト比(平均直径対平均粒子厚さの比)を有する。フレーク状基材の上記寸法は、原則的に、本発明に従って使用されるコーティングされたエフェクト顔料にも適用されるが、これは、追加のコーティングが一般にわずか数百ナノメートルの範囲内であり、従ってエフェクト顔料の厚さ又は長さ又は幅(粒子サイズ)に大きく影響しないからである。
【0016】
エフェクト顔料及びその基材の粒径及び粒径分布は、当技術分野において通常である様々な方法によって測定され得る。しかしながら、好ましくは、Malvern Mastersizer 2000、Beckman Coulter、Microtrac等を用いた標準的プロセスでのレーザー回折法が使用される。更に、SEM(走査型電子顕微鏡)画像等の他の技術が使用されてもよい。
好ましい実施形態において、基材は、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属水酸化物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物又はこれらの材料の混合物を含む、1つ以上の透明又は半透明層でコーティングされる。好ましくは、基材は、これらの層で部分的又は完全に包み込まれる。
【0017】
更に、高屈折率層と低屈折率層とを備える多層構造も存在してよく、高屈折率層と低屈折率層とは、好ましくは交互する。高屈折率層(屈折率≧2.0)と低屈折率層(屈折率<1.8)とを備える層パッケージが特に好ましく、これらの層パッケージの1つ以上が基材に適用されていてもよい。ここで、高屈折率層と低屈折率層との順序は、多層構造に基材を含めるために、基材に適合されてもよい。
好ましくはTi、Sn、Si、Al、Zr、Fe、Cr、及びZn、特にTi、Sn及びSiの金属酸化物、金属酸化物水和物又はこれらの混合物が特に好ましい。酸化物及び/又は酸化物水和物は、単層で存在しても別々の層で存在してもよい。特に、ルチル又はアナターゼ改質型、好ましくはルチル改質型の二酸化チタンが使用される。二酸化チタンのルチル改質型への変換のために、好ましくは二酸化スズ層が二酸化チタン層の下に適用される。好ましい多層コーティングは、交互する高屈折率層と低屈折率層、好ましくはTiO2-SiO2-TiO2等を含む。
金属酸化物、水酸化物及び/又は酸化物水和物の層は、好ましくは、既知の湿式化学法により適用され、基材の被覆をもたらすエフェクト顔料の作製のために開発された湿式化学コーティング法が使用され得る。湿式化学法による適用後、コーティングされた生成物は、続いて分離、洗浄、乾燥、及び好ましくは焼成される。
個々の層の厚さは、通常は10~1000nm、好ましくは15~800nm、特に20~600nm、とりわけ20~200nmである。
【0018】
光、温度、水及び天候に対する安定性を増大させるために、エフェクト顔料に、ポストコーティング又は後処理を施してもよい。ポストコーティングは、最終層としての有機コーティング及び/又は無機コーティングであってもよい。ポストコーティングは、好ましくは、元素Al、Si、Zr、Ce;Fe、Cr又はこれらの混合物若しくは混合相の1つ以上の金属酸化物層を含む。更に、有機又は有機/無機の組み合わせのポストコーティングが可能である。シラン及び/又は有機官能性シランもまた、単独で、又は金属酸化物と組み合わせて使用され得る。好適なポストコーティング又は後処理法は、例えば、西独国特許出願公開第2215191号明細書、西独国特許出願公開第3151354号明細書、西独国特許出願公開第3235017号明細書又は西独国特許出願公開第3334598号明細書、欧州特許第0090259号明細書、欧州特許第0634459号明細書、国際公開第99/57204号、国際公開第96/32446号、国際公開第99/57204号、米国特許第5,759,255号明細書、米国特許第5,571,851号明細書、国際公開第01/92425号、国際公開第2011/095326号に記載の方法、又は当業者に既知の他の方法である。
【0019】
本発明に使用可能なエフェクト顔料は、例えば、Iriodin(登録商標)、Pyrisma(登録商標)、Xirallic(登録商標)、Miraval(登録商標)、Colorstream(登録商標)、Spectraval(登録商標)、RonaStar(登録商標)、Biflair(登録商標)及びLumina Royal(登録商標)の商品名で提供される市販の干渉顔料又は真珠光沢顔料である。他の市販のエフェクト顔料が使用されてもよい。特に、Colorstream(登録商標)、Xirallic(登録商標)、Miraval(登録商標)、及びRonastar(登録商標)、Pyrisma(登録商標)顔料が使用され得る。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明による層は、異なるエフェクト顔料、より好ましくは2種以上、非常に好ましくは3種以上の異なるエフェクト顔料の混合物を含む。これは、特殊効果を得ることを可能にする。好ましい実施態様では、エフェクト顔料は任意の割合で混合することができるが、好ましくは層中の全てのエフェクト顔料の総含有量は、60質量%を超えるべきではない。
非常に好ましい実施形態では、本発明による層は、赤、緑、及び青のエフェクト顔料の混合物を含む。濃度に応じて、より大きな色空間/領域が、それによって達成され得る。
本発明による層中のエフェクト顔料の濃度は、好ましくは0.01~40質量%、好ましくは0.01~20質量%の範囲である。より好ましくは、本発明による層中のエフェクト顔料の濃度は、0.01~15質量%の範囲、特に0.1~10%の範囲、最も好ましくは0.1~8質量%である。
別の好ましい実施形態では、本発明による層のm2当たりのエフェクト顔料の量は、0.1g/m2~75g/m2の範囲、より好ましくは0.2~30g/m2の範囲、非常に好ましくは0.5~15g/m2、最も好ましくは0.5~6g/m2である。
【0021】
エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する本発明による層は、原則的に、ポリマーベース、ゾルゲルベース、ポリシラザンベース、ガラスベース又はセラミックベースの層が挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な透明材料から選択できる。
本発明の好ましい実施形態では、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層は、ポリマーフィルムである。
好ましいポリマーフィルムは、ポリオレフィンポリマー又はコポリマー、特にポリエチレン、EVA(エチレン酢酸ビニル)、EBA(エチレンブチルアクリレート)、EMA(エチレンメチルアクリレート)、EEA(エチレンエチルアクリレート)、POE(ポリオレフィンエラストマー)、BPO(ポリオレフィンコポリマー)、更にはPVB又はTPU(熱可塑性ポリウレタン)が挙げられるがこれらに限定されないポリエチレンポリマー又はコポリマー、好ましくはEVA又はポリエチレンコポリマーである。
本発明の別の好ましい実施形態では、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層は、ガラス、セラミック又はエナメル層である。この用途では、層は好ましくはガラスシート又はガラス物品上に設けられる。
エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層の厚さは、好ましくは5μm~1000μmの範囲、より好ましくは20μm~800μm、更により好ましくはポリマーフィルムの場合200μm~600μmであり、セラミック層については好ましくは10μm~300μmの範囲、より好ましくは20μm~200μm、最も好ましくはガラス、セラミック又はエナメル層の場合30μm~100μmである。
エフェクト顔料と光散乱粒子とは、当業者に既知であり、文献に記載されている方法によって、本発明の層に組み込むことができる。
本発明による層がガラス、セラミック又はエナメル層である場合、層は、例えば、エフェクト顔料及び光散乱粒子をガラスフリット若しくはフラックス、セラミック又はエナメル前駆体と混合し、当該混合物を基材上に置き、当該混合物をガラスフリット、フラックス、セラミック又はエナメルのそれぞれのガラス温度を超える温度でベーク又は焼成することによって作製できる。
【0022】
前駆体組成物を基材へ適用する典型的な方法としては、ローラーコーティング、スクリーン印刷、又はフラックス、エナメル若しくはセラミック前駆体、散乱剤及び顔料の溶媒(例えば、水又はグリコールエーテル)中混合物の噴霧が挙げられる。
特に、ガラス物品、特にガラスプレートの装飾において、1種以上の顔料、1種以上の光散乱添加剤及び1種以上のガラスフリット又はフラックスを含有する前駆体組成物が好ましくは使用される。前駆体組成物は、基材にコーティングした後にベークされ、それによって顔料と光散乱添加剤とを含有するガラス-エナメルが形成される。前駆体組成物のガラスプレートの適用において、前駆体組成物の溶融挙動を、焼戻しプロセスの典型的条件に従って調節することが望ましい。典型的なベーク条件は、約580℃~650℃のガラス温度及び数分のベーク時間である。建築及び計器のガラス領域においてガラスプレートを色彩豊かに装飾するには、無機顔料を有する組成物に含まれるガラスフリットの間に良好な適合性が必要とされる。ベークした組成物の要件、すなわちガラス-エナメルの要件としては、多くの使用分野において、出来るだけ低温における短いベーク時間のスムーズな運転、亀裂の回避、酸及びアルカリ材料に対する優れた化学的耐性、並びに良好な耐候性が挙げられる。好ましいフラックスは、Si、Zn及びBを主成分とするカドミウム及び鉛フリーのフラックス、例えば、ホウケイ酸ガラスをベースとするものである。
【0023】
本発明による層がポリマーフィルムである場合、例えば、エフェクト顔料と散乱粒子とを押出前にポリマー溶融物に添加する、ポリマー材料の溶融押出等の押出方法によって調製できる。
押出成形において、熱可塑性プラスチックは、スクリュー内で粘性塊へと溶融され、次にフラットダイを通じてプレスされて形を作る。可能な形状の種類は膨大である。フィルム、箔及びプレートは、フラットダイを通って押し出される。
通常、エフェクト顔料及び散乱粒子を用いて溶融塊を着色するためにマスターバッチ又はコンパウンドが使用される。エフェクト顔料と添加剤とを用いるプラスチック押出において満足な結果を得るには、混合エネルギーと、できるだけ損傷のない顔料及び/又は粒子との間でバランスのとれた比率を維持する必要がある。混合セクションの過剰な剪断又は不適切なスクリュー若しくはフィルターは、エフェクト顔料を破壊し、真珠光沢効果を劇的に低下させる。顔料の配向は、均一な効果にとって極めて重要である。これは、プロセスにおいて、対応する工学技術及び機械設計を通じて確保される必要がある。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、所望の量、例えば、5~30質量%のエフェクト顔料と散乱粒子とをポリマー材料中に含むマスターバッチが、ポリマーフィルムの押出プロセス中に添加される。これは、例えばEVAペレットを用いて着色マスターバッチペレットの予混合物を製造することによって、又は任意の他の既知の方法によって、実施可能である。
溶融押出プロセスの間にエフェクト顔料に作用する剪断力により、エフェクト顔料は、封止フィルムの表面に対して実質的に平行に配向する。
別の好ましい実施形態では、エフェクト顔料と散乱粒子とを含有する層は、同じ又は異なるポリマー材料の2つ以上の層の共押出フィルムであり、そのうち1つの層、好ましくはフロントシートに面する層は、1種以上のエフェクト顔料を含有する。
EVAは、PVモジュールの積層のための封止材として使用され、その配合が太陽光用途での使用に特に適応した熱硬化性ポリマーである。EVAは、高い電気絶縁性、透明性、可撓性及び柔軟性をもたらす。架橋配合物(封止材用のような)において、EVAは、更に高い寸法安定性、高速硬化及び容易な積層を示す。一般的なEVA配合物は、典型的には、ポリマー樹脂の他に、架橋剤、接着促進剤、UV吸収剤、UV安定剤、及び酸化防止剤を含む。架橋剤は、ラジカル開始剤(通常は過酸化物)であり、積層中に熱で分解し、ラジカルを開始するフリーラジカルをポリマー主鎖に形成する。形成されたラジカルは、次にポリマー鎖間の共有結合の形成をもたらす。
また、本発明による層は、色調又は色彩パターンを提供することもでき、例えば、レンガ壁の模倣は、異なる2色を所望のパターンでスクリーン印刷することで実施でき、家屋建設に使用される材料の異なる面の色調は、例えば、互いに異なる2種類の色調を噴霧することで達成できる。
【0025】
c-Si太陽電池に対する顔料及び層の影響は、反射データによって評価される。反射データは、処理された電池の最大電力吸収/最大光電流生成を推定するために使用される。反射率及び透過率の測定及び計算は、当業者に知られている一般的方法によって、実験項に更に記載されているように実施される。
エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層のヘイズは、実施例1に記載のように、透過率から決定できる。
エフェクト顔料と散乱添加剤とを含む層の透過率は、500~800nmの範囲、より好ましくは450~900nmの範囲、非常に好ましくは400~1000nmの範囲、最も好ましくは350~1150nmの範囲の光に対して、好ましくは≧60%、より好ましくは≧70%、非常に好ましくは≧75%、最も好ましくは≧80%である。
エフェクト顔料と散乱添加剤とを含む層の反射率は、450~800nmの範囲、より好ましくは400~1000nmの範囲、最も好ましくは300~1150nmの範囲の光に対して、好ましくは<40%、より好ましくは<30%、非常に好ましくは<25%、最も好ましくは<20%である。
エフェクト顔料と散乱添加剤とを含む層のヘイズは、500~800nmの範囲、より好ましくは450~900nmの範囲、最も好ましくは350~1150nmの範囲の光に対して、好ましくは≧50%、より好ましくは≧60%、非常に好ましくは≧70%、最も好ましくは≧80%である。
【0026】
本出願は、有機フォトダイオード、太陽電池又は太陽電池モジュール(これは有機、無機、又はハイブリッド型であり得る)を含むがこれらに限定されない、太陽熱又は光起電装置等の太陽エネルギーを収集及び変換する任意の種類の装置における、上記及び下記の層の着色層としての使用、特に着色封止層としての使用にも関する。
本出願は更に、有機フォトダイオード、太陽電池又は太陽電池モジュール(これは有機、無機、又はハイブリッド型であり得る)を含むがこれらに限定されない、太陽熱又は光起電装置等の太陽エネルギーを収集及び変換する装置であって、上記及び下記の本発明による層を備える装置に関する。
【0027】
本発明による好ましい太陽電池又は太陽電池モジュールは、以下の構成要素を備え、
1)透明なフロントシートであって、好ましくは、ガラス又はプラスチックフィルム、例えばポリカーボネート、Plexiglas、TPT(Tedlar(登録商標)-ポリエステル-Tedlar(登録商標)。Tedlar(登録商標)はDuPontから市販されているPVF(ポリフッ化ビニル)フィルムである)等のシート、
2)任意選択で、太陽電池の前側の1つ以上の更なる透明な層であって、好ましくはポリマーフィルムから選択される層、又はフロントガラスシート上に設けられたセラミック層であって、封止フィルム又はフロントシートとしても機能する層、
3)太陽電池又は電気的に相互接続されている太陽電池のストリング若しくはアレイ、
4)任意選択で、太陽電池の後側の1つ以上の更なる層であって、好ましくはポリマーフィルムから選択される、層、
5)透明なリアシートであって、好ましくは、ガラス又はプラスチックフィルム、例えばポリカーボネート、Plexiglas、TPT(Tedlar(登録商標)-ポリエステル-Tedlar(登録商標)。Tedlar(登録商標)はDuPontから市販されているPVF(ポリフッ化ビニル)フィルムである)等のシート、
構成要素1)のフロントシートは、上記及び下記の1種以上のエフェクト顔料と1種以上の光散乱中心を含む、又は太陽電池又は太陽電池モジュールは、更なる前側の透明な層を構成要素2)として含み、これが上記及び下記の1種以上のエフェクト顔料と1種以上の光散乱中心を含む。
【0028】
構成要素は、以下の順序で積み重ねられる:1)フロントシート、2)前側の任意選択の更なる透明な層、3)太陽電池、4)後側の任意選択の更なる層、5)リアシート。
本発明の好ましい実施形態による太陽電池モジュールは、
図1に例示的且つ概略的に示されており、好ましくはガラスシートである透明なフロントシート(11)、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する本発明に従う透明な層(12)、バスバーを有する太陽電池のアレイ(13)、好ましくは黒色又は暗色であるリアシート(14)を含む。矢印は、入射光の方向を示す。
好ましい実施形態において、1つ以上の更なる封止フィルム(
図1に示されていない)が顔料含有層(12)と太陽電池(13)との間、及び/又は太陽電池(13)とリアシート(14)との間に提供される。更なる封止フィルムは、エフェクト顔料又は光散乱中心を含有しない。
別の好ましい実施形態(
図1に示されていない)では、太陽電池モジュールはフロントシート(11)を含有せず、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する透明な層(12)はフロントシートとして機能する。
別の好ましい実施形態(
図1に示されていない)では、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層(12)は、封止フィルムとして機能する。
別の好ましい実施形態(
図1に示されていない)では、保護箔又は外側箔が、完成した太陽電池又は太陽電池モジュールの上に貼付される。
【0029】
フロントシート(11)、層フィルム(12)、及び任意選択の更なるフロント封止フィルムのような、太陽電池モジュールの前側に位置する構成要素は、太陽電池又は太陽電池アレイ(13)を通過する入射光に対して実質的に透明である。
フロントシート(11)及びリアシート(14)は、好ましくはガラスシートから選択される。他の好ましい実施形態において、フロントシート(11)及び/又はリアシート(14)、より好ましくはリアシート(14)は、ポリマーシート、好ましくはTPT又はポリカーボネートシートである。
前側及び後側のポリマーフィルムは、好ましくは、例えば、ポリエチレン、EVA(エチレンビニルアセテート)、EBA(エチレンブチルアクリレート)、EMA(エチレンメチルアクリレート)、EEA(エチレンエチルアクリレート)、POE(ポリオレフィンエラストマー)、BPO等のポリエチレンポリマー又はコポリマーのようなポリオレフィン、更にはポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラールPVB、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリオール、ポリイソシアネート又はポリアミン、並びに上記のコポリマー、樹脂、ブレンド又は多層物、例えば、ポリカーボネート含有ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル含有ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、又はTPU(熱可塑性ポリウレタン)が挙げられるがこれらに限定されない、有機ポリマーから選択される。
前側の透明な層がポリマーフィルムの場合、好ましくはポリオレフィンポリマー又はコポリマーフィルムから、非常に好ましくはポリエチレンポリマー又はコポリマーフィルムから、特にEVA、EBA、EMA、EEA、POE、BPO、PVB又はTPUフィルムから、最も好ましくはポリエチレンコポリマー又はEVAフィルムから、選択される。
【0030】
リアシートとして、又はリアシート内に使用するための更に好ましいポリマーは、ダブルフルオロポリマー、シングルフルオロポリマー、及び非フルオロポリマー、並びに各区分内の種々の構造に分類できる。ダブルフルオロポリマーのリアシートは、典型的には、Tedlar(登録商標)ポリフッ化ビニル(PVF)フィルム又はKynar(登録商標)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムの外層と、ポリエチレンテレフタレート(PET)のコア層とから主になる。シングルフルオロポリマーのリアシートは、典型的には、空気側のTedlar又はKynar(登録商標)と、内側のPET及びプライマー又はEVA層とからなる。非フルオロポリマーのリアシートは、典型的には、2つのPET層及び1つのプライマー又はEVA層からなる。
【0031】
図1に例示的に示されるような太陽電池アレイ(13)は、単一太陽電池に置き換えられてもよい。
太陽電池(13)は、非晶質、単結晶及び多結晶シリコン太陽電池、CIGS、CdTe、III/V太陽電池、II/VI太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、有機太陽電池、量子ドット太陽電池、及び色素増感型太陽電池、並びに単電池で作製された太陽電池モジュールを含む任意の種類の太陽電池技術から選択され得る。結晶太陽電池は、Al-BSF、PERC、PERL、PERT、HIT、IBC、両面受光型、又は結晶シリコン基板をベースとする任意の他の電池の種類等の電池構造を含む。
リアシート(14)は、好ましくは黒色又は暗色であり、及び/又は例えばリア封止フィルム又は追加の封止フィルムのような黒色又は暗色のシートが太陽電池又は太陽電池モジュールの後側、すなわち、太陽電池(13)とリアシート(14)との間に提供され、暗色は、好ましくは太陽電池の色と等しい暗青色である。
【0032】
太陽電池(13)において、導電性部品は、好ましくは、下記部品が挙げられるがこれに限定されない金属系導電性部品を含む:
i)主垂直コネクタから構成されるH-グリッド、いわゆるバスバー、
ii)水平電流収集部品-いわゆるフィンガー、
iii)太陽電池間のコネクタ及びはんだ。
本発明の好ましい実施形態において、太陽電池(13)の完全に均一な外観を実現するために、上記の部品i)~iii)を含むがこれらに限定されない金属系導電性部品は、好ましくは、エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層(12)への適用の前に、黒色又は太陽電池の暗青色(dark solar blue)のような暗色に着色される。
本発明の他の好ましい実施形態において、暗色、好ましくは黒色又は暗青色のグリッドが、太陽電池の少なくとも1つ以上の層に組み込まれ、上記グリッドは、単一太陽電池と、バスバー、伝導路及びはんだ付け部を含む導電性部品との間の空間のような明るい領域を覆う。別の好ましい実施形態では、単一太陽電池間の空間を隠すために、黒色又は暗青色のバック層が太陽電池の後ろに適用される。黒色又は暗青色のバック層は、印刷すること、又は箔として適用することができる。
Hグリッドフロントパターンを有する太陽電池(13)の他の白く見える金属部品を暗色化する好適且つ好ましい手法は、金属ストライプを黒色ポリマー箔でカバーすること、又は金属部品を黒色塗料で刷毛塗りすることである。印刷された銀のHグリッドの場合、銀は、硫化銀の薄層の形成(例えばH2Sでの処理による)によって直接黒色化でき、又は銅のメッキ及び酸化によって黒色化できる。メッキ金属グリッドの場合、金属スタックの最上層は、CuO又はAg2S等の高吸収性金属酸化物若しくは硫化物、又は同様の暗色に着色された金属酸化物等で直接メッキされ得る。新規金属化スキーム(スマートワイヤ技術等)を使用する場合、黒色化ワイヤ、又は反射率を低減し、ひいては金属グリッドの暗色外観を作製する微細構造を有するワイヤもまた、本発明に従って使用され得る。モジュールの背景として黒色又は太陽電池の暗青色のリアシートが使用される場合、近接距離からでも非常に均一なモジュール全体の外観を実現できる。
フロント、リア及び更なる封止フィルムは、好ましくは、TPU又はポリオレフィンを含み、非常に好ましくはTPU又はポリオレフィンからなり、ポリオレフィンとしては、EVA、EBA、EMA、EEA、POE又はBPOが挙げられるがこれらに限定されず、最も好ましくはEVAである。
【0033】
エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層(12)は、放射受容側、すなわち、本発明による太陽電池又は太陽電池モジュールの視認可能部分内に配置される。層は、
図1に示されるように、太陽電池モジュール内のフロントシート(11)の内側、すなわち、太陽電池又は太陽電池のアレイに面する側に配置されてもよく、あるいは、フロントシート(11)の外側、すなわち、入射光に面する側に配置されてもよい。
本発明による着色セラミック層は、カバーガラスの外側(風雨にあたる)表面上に使用され、好ましくは透明な保護層が追加される。この保護層は、例えば酸化物のCVD層、又はウェットコーティングされたフィルム、例えばポリシラザンのフィルムをベースにできる。
エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層(12)は、任意の表面に局所的かつ柔軟に適用可能である。従って、当該層は、完成した太陽電池又は太陽電池モジュールの外側、太陽電池又は太陽電池モジュールをカバーする保護基材(ガラス若しくはプラスチック)上、又は光活性材料/太陽電池上に直接、適用できる。
有利には、エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層(12)は、反射防止フィルムとしても使用できる。
【0034】
本発明による太陽電池モジュール又は複数の太陽電池モジュールは、当業者に既知のプロセス及び文献に記載のプロセスによって作製できる。
エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層が、ガラス、セラミック又はエナメル層の場合、層は、上記のように好ましくはガラス基材上に作製され、エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層によってカバーされたガラス基材は、他の個別の構成要素又は所望の順序で積み重ねられた上記又は下記の太陽電池モジュールの層の上に設けられる。ガラス基材上の、エフェクト顔料と光散乱中心とを有するセラミック層又はエナメル層は、太陽電池に組み込むことができ、又は外側層を形成することができる。上記層が外側層を形成する場合、好ましくは保護層によって保護される。保護層は、着色エナメル又はセラミック層の上部に適用できる。
エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層がポリマーフィルムの場合、好ましくは上記ポリマーフィルム及び他の個別の構成要素又は上記若しくは下記の太陽電池モジュールの層は、所望の順序で積み重ねられ、その後例えば熱及び/又は圧力を加えることによって、又は接着剤若しくは接合剤を使用することによって、共に積層される(laminated)。
あるいは、太陽電池モジュール又は複数の太陽電池モジュールを作製する積層プロセスは、2つのステップで実行することもでき、その場合、第1の積層(又はプレ積層(pre-lamination))ステップで、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層をフロントシートに積層し、次いで第2の積層ステップで、上記のフロントシートにエフェクト顔料と光散乱中心とを含有する積層された層を加えたものを、残りの構成要素のスタックに積層する。
【0035】
従って、本発明による着色太陽電池又は着色太陽電池モジュールを作製するための好ましい方法は、以下のステップを含む:
a)1種以上のエフェクト顔料と1種以上の光散乱中心とを含有する層、好ましくはポリマーフィルムを、好ましくは熱及び/又は圧力を加えることによって、又は接着剤又は接合剤若しくは接合層を使用することによって、好ましくは真空プレスの中で、フロントシートに積層するステップ、
b)任意選択で、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する積層された層を有するフロントシートを、好ましくは室温まで冷却するステップ、
c)以下の層を含むスタック
C1)任意選択で、1つ以上のフロント封止フィルム、
C2)1つ以上の太陽電池、又は導電性部品によって、好ましくはバスバーによって電気的に相互接続されている太陽電池のアレイ、
C3)任意選択で、1つ以上のリア封止フィルム、
C4)リアシート、
を、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する積層された層を有するフロントシートの上に設ける、又はエフェクト顔料と光散乱中心とを含有する積層された層を有するフロントシートを層C1~C4のスタックの上に設けるステップ、
d)層C1~C4のスタックを、好ましくは熱及び/又は圧力を加えることによって、又は接着剤又は接合剤を使用することによって、好ましくは真空プレスの中で、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する積層された層を有するフロントシートに積層するステップ。
積層ステップは、上記ステップa)及びd)と同様に、標準的な方法により実施でき、例えば2つの層に熱及び圧力を、例えば、真空及び/又は任意の他の形態の物理的圧力を加えることによって、特定の時間間隔で、例えば、積層機内で加えることにより実施できる。
代替的及び/又は追加的に、1種以上の接着剤及び/又は接合剤若しくは層を使用することで、積層を実現又は支援できる。接着剤/接合剤は、反応性又は非反応性であってもよく、天然物又は合成物を含むか、天然物又は合成物からなるものであってもよい。適切かつ好ましい例としては、限定するものではないが、所望の用途に応じて、ポリウレタン(PUR)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ゴム、アクリル及びシリコーン接着剤が挙げられる。
第1のステップ又はプレ積層ステップa)の後、積層のために熱が加えられた場合、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層が積層されたフロントシートを、ステップb)において好ましくは冷却し、非常に好ましくは室温まで冷却する。これで、エフェクト顔料と光散乱中心とを含有する層は、ガラスに永久に固定され、手で剥がせない。顔料は、表面に均一に分布する。
次のステップc)において、任意選択のフロント封止材と、太陽電池と、任意選択のリア封止材と、リアシートとの残りのスタックを、フロントガラスと、エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層とのプレ積層された二重層の上に配置する、あるいは、プレ積層された二重層を、残りのスタックの上に配置する。好ましくはプレ積層された二重層を、エフェクト顔料と光散乱中心とを有する層が太陽電池に面するように配置する。
次に、スタックの最後の積層を、ステップd)において、好ましくはプレ積層の条件と同様の条件下で実施する。
【0036】
積層ステップにおいて、上記ステップa)及びd)のように、好適な適用される熱及び圧力並びに時間間隔は、使用されるシート及びフィルムの種類に依存し、当業者によって容易に選択可能である。フロントガラスシート及びEVAのポリマーフィルムが使用される場合、好ましくは、加熱温度は130℃~160℃の範囲、非常に好ましくは約135℃であり、時間間隔は好ましくは20~30分である。好ましくは、真空プレスが使用される。好ましくは、400~900mbarの圧力が加えられる。
最後の積層ステップd)の後、好ましくは室温まで、積層スタックを再び冷やす。封止フィルム及びリアシート(プラスチックリアシートが使用される場合)の余分な材料を切除することができ、ジャンクションボックスを太陽電池モジュールの電気接続のために取り付けることが可能である。最後に積層体を組み立てることができる。
積層ステップ後のフィルムの厚さは、通常、積層条件に応じて減少する。
好ましくは、結果として生じる積層体は、完全に密閉され、理想的な場合には、太陽電池を少なくとも25年間保護できる。
【0037】
好ましくは、本発明による太陽電池及び太陽電池モジュールは、>-5%、より好ましくは>-2%、非常に好ましくは>0.1%の電力変化ΔPを示し、
【数1】
式中、P
iは、上記及び下記のようにエフェクト顔料と散乱中心とを有する層を備える本発明による太陽電池又は太陽電池モジュールSC
iの電力であり、P
refは、エフェクト顔料を有する層が光散乱中心を含有しないことを除いてSC
iと同じ構成要素を有する参照太陽電池又は太陽電池モジュールSC
refの電力である。従って、参照に対して負の値のΔPは電力損失を示し、正の値のΔPは電力利得を示す。
【0038】
下記実施例は、本発明を制限することなく本発明を説明することを意図する。
実施例1-エフェクト顔料と散乱粒子とを有するポリマーフィルム
フィルム作製
本発明による種々のポリエチレンフィルムを、0.15%のエフェクト顔料Iriodin(登録商標)7235 Ultra Rutile Green Pearlを含有し、1g/m2の濃度のエフェクト顔料を得て、更に各々の場合に以下に列挙した光散乱粒子の1種を含有するように作製した。
a)1%の硫酸バリウムBMH-40粒子(中間粒径D50が5μm)
b)1%の硫酸バリウムB-1粒子(中間粒径D50が0.5μm)
c)1%の球状シリコーン樹脂粉末E+508(中間粒径D50が0.8μm)
d)1%の球状シリコーン樹脂粉末E+520(中間粒径D50が2μm)
e)1%の球状シリコーン樹脂粉末E+540(中間粒径D50が4μm)
f)0.5%の球状シリコーン樹脂粉末E+520(中間粒径D50が2μm)
g)2%の球状シリコーン樹脂粉末E+520(中間粒径D50が2μm)
h)0.5%の球状シリコーン樹脂粉末E+540(中間粒径D50が4μm)
i)2%の球状シリコーン樹脂粉末E+540(中間粒径D50が2μm)
j)1%のグラスバブルS60(中間粒径D50が30μm)
添加した粒子は全て、光散乱性であり、それ自体が光学的に透明である。
【0039】
比較の目的で、0.15%のエフェクト顔料Iriodin(登録商標)7235 Ultra Rutile Green Pearlを含有するが散乱粒子を添加していない参照フィルムを上記のとおり作製した。
封止フィルムは、通常はキャストフィルムの押出により作製されるが、実用的理由から、本実施例では、10×15cmのサイズで厚さ700mmのフィルム試料を、顔料と粒子とを含有するポリエチレン樹脂の射出成形により、以下のように作製した。
Kraus-Maffei CX-130-380型の射出成形機を使用した。金型を閉じた後、透明なプラスチック溶融物(Evatane(登録商標)28-25PV、Arkemaの製品)を射出成形金型の中に射出した。射出操作は、180~200℃の範囲の温度及び450~900bar(4.5×107N/m2~9×107N/m2)の範囲の圧力で実施した。プラスチック溶融物の着色、又は散乱粒子の添加のために、必要な濃度に応じてマスターバッチを使用した。必要な場合は、後工程でポリマーフィルムにエンボス加工した。構造体へのエンボス加工は、通常、太陽電池モジュールの積層ステップ中の空気の除去を支援する。
【0040】
透過率及びヘイズ測定
本発明によるフィルム及び参照フィルムの透過率は、積分球を備えるCary UV/Vis分光計で測定した(ASTM D1003に倣う)。本発明によるフィルム及び参照フィルムのヘイズは、透過率測定値から、次式により計算した:
ヘイズ(%)=((T4/T2)-(T3/T1))・100
式中、T1は、試料ホルダーに試料がなく、反射標準が測定位置にあるときの入射光の参照値を示し、T2は、試料ホルダーに試料があり、反射標準が測定位置にあるときの試験試料の透過光であり(試料を直接透過した光のみを測定)、T3はホルダーに試料がなく、反射標準が測定点にないときの分光計自体からの参照散乱光の測定値であり、T4は、試料ホルダーに試料があり、反射標準が測定位置にないときの分光器からの散乱光の測定値(試料を透過した全ての光を測定)である。
図2は、対応する透過率の値(グラフTa等)及び対応するヘイズ値(グラフHa等)を、上記のように異なるサイズ及び種類の散乱粒子を有する本発明のフィルムa)~e)について(Ta~e、Ha~e)、及び散乱粒子を添加していない参照フィルムについて(Tref、Href)示す。
図2から、散乱粒子を有するフィルムは、参照フィルムと比べて、特に可視領域において良好なヘイズを示すことがわかる。ヘイズは散乱粒子径の増大に伴って増大するが、フィルムの透過率に対する散乱粒子の影響はわずかしかないこともわかる。
図3は、対応する透過率の値(グラフTd等)及び対応するヘイズ値(グラフHd等)を、上記のように散乱粒子E+520を異なる濃度で有する本発明のフィルムd)、f)、及びg)について(Td、Tf、Tg、Hd、Hf、Hg)、及び散乱粒子を添加していない参照フィルムについて(Tref、Href)示す。
図3から、散乱粒子を有するフィルムは、参照フィルムと比べて、特に可視領域において良好なヘイズを示すことがわかる。ヘイズは散乱粒子濃度の増大に伴って増大するが、フィルムの透過率に対する散乱粒子の影響はわずかしかないこともわかる。
【0041】
太陽電池封止材としてのポリマーフィルムの使用
サイズが異なる球状シリコーン樹脂粉末E+508、E-520及びE-540をそれぞれ1%有する本発明によるフィルムc)、d)及びe)と、参照フィルムとを、ソーラー式フラッシャーの太陽電池を覆う封止材としてそれぞれ提供し、太陽電池効率に対する影響を、Wavelab Sinus7ソーラーシミュレーターを用いて測定した。
太陽光PVモジュールの出力性能一貫性を測定するため、フラッシュ試験機(ソーラー式フラッシャー又は太陽シミュレーター)を使用した。フラッシュ試験の間、PVモジュールは、キセノンアークランプからの短く(1ms~30ms)、明るい(平方cmあたり100mW)光の点滅に曝露される。このランプの出力スペクトルを、できるだけ太陽のスペクトルに近くなるように選択する。出力をコンピュータとボルタメーターで集める。データを参照太陽電池モジュールと比較できる。
結果を表1に示す。
【表1】
【0042】
表2から、粒径0.8μmの小さい粒子は太陽電池効率に対する影響が小さく、粒径2又は4μmの大きい粒子d)及びe)は影響がきわめて小さいことがわかる。同時に、
図2は、これらの粒子が、ヘイズが増大し、透過率がごくわずかしか低下しないフィルムを生じることを示す。
散乱粒子濃度の影響作用を調査するため、本発明によるフィルムd)~i)及び参照フィルムを、ソーラー式フラッシャーの太陽電池を覆う封止材としてそれぞれ提供し、太陽電池効率に対する影響を、Wavelab Sinus7ソーラーシミュレーターを用いて上記のように測定した。
結果を表2に示す。
【表2】
【0043】
表2から、全ての事例において、粒子は太陽電池効率にほとんど影響しないこと、及び粒子濃度の増大に伴って影響が顕著になることがわかる。驚くべきことに、小さい粒子濃度でも、太陽電池効率は、参照と比較して増大することもわかる。これは、太陽電池による散乱光子の吸収が向上する(これは光電流が増大していることからわかる)ことに起因する可能性がある。
全体として、一方ではフィルムの透過率及びヘイズ値に関する上記結果、他方ではフィルムを封止材として含有する太陽電池の効率データは、顔料含有フィルムへの散乱粒子の添加は、透過率をごくわずかしか低下せずに所望のヘイズをもたらし、一方では太陽電池効率は大きな影響を受けないか、わずかに向上さえすることを実証する。
【0044】
実施例2-エフェクト顔料と散乱粒子とを有するポリマーフィルム
フィルム作製
散乱添加剤が太陽電池構造の光学的外観及び効率に与える影響を調べるため、0.15%(又は1g/m2)のエフェクト顔料Iriodin(登録商標)7235 Ultra Rutile Green Pearlを含有し、且つ硫酸バリウム粒子BMH-40(D50が5μm)若しくは硫酸バリウム粒子B-1(D50が0.55μm)又はグラスバブルズS60(D50が30μm)から選択される散乱添加剤を1%又は2%の濃度で含有する、厚さ700μmの押出EVAフィルムが積層された厚さ3mmの2枚のガラスパネルからなるガラス試料を作製した。
比較の目的で、0.15%の顔料Iriodin(登録商標)7235 Ultra Rutile Green Pearlを有するが散乱粒子が添加されていない参照フィルムを上記のとおり作製した。
【0045】
透過率及びヘイズ
図4は、散乱粒子なし(A)、及び散乱粒子BMH-40を1%(B)又は2%(C)用いて得られたフィルムの光学画像を、フロントガラスを有する積層太陽電池を背景として示す。散乱粒子を有するフィルムは、背景の視認性を低下する(B)、又は事実上視認不可とする(C)ヘイズを示すことがわかる。
太陽電池封止材としてのポリマーフィルムの使用
効率に対する影響を調べるため、フィルムを、市販のペロブスカイト単一太陽電池に載せたフラッシュ試験機を用いて試験した。光源として、350nm~1100nmのスペクトル領域を提供する制御されたLEDセットを使用し、電力出力をWavelab Sinus7ソーラーシミュレーター及びボルタメーターを用いて測定した。
結果を表3に示す。
【表3】
【0046】
表3から、粒子の添加は電池効率にわずかな悪影響しか与えないことがわかる。
全体として、結果は、顔料含有フィルムへの散乱粒子の添加は、所望のヘイズをもたらすが、他方で太陽電池効率は大きな影響を受けない、又はわずかに改善さえもすることを実証している。
【0047】
実施例3-エフェクト顔料と散乱粒子とを有するエナメル層
層の作製
エナメル層を、48メッシュスクリーンを有する手動スクリーン印刷機を用いてガラスプレート上に印刷し、36μmのフィルム厚を得た。使用したエナメルは、セラミック産業から得た標準的なエナメルであり、2%のIriodin(登録商標)7235 Ultra Rutile Green Pearl又はIriodin(登録商標)7225 Ultra Rutile Blue Pearlを着色顔料として含有し、その結果、乾燥フィルム中の顔料濃度は約1.4g/m
2であった。異なる粒径のシリカ粉を添加したことに加え、ヘイズ及び透過率を測定した。使用した粒子は、平均直径D50が4μm(M500)で、ペースト中に0.5%又は乾燥フィルム中に0.4g/m2の濃度の石英粉末、又は平均直径D50が1.8μm(M800)で、ペースト中に0.5%又は乾燥フィルム中に0.4g/m2の濃度の石英粉末であった。その後、フィルムを高速焼成炉内でガラス温度の620℃まで焼成してエナメルを溶融し、顔料とシリカ粉とを含有する澄んだガラス層が残った。
比較の目的で、参照エナメル層を、顔料濃度は同じであるが散乱粒子を添加せずに上記のように作製した。
個々の層の顔料及び粒子濃度を下の表4に列挙する。
【表4】
【0048】
透過率及びヘイズ測定
本発明によるエフェクト顔料とシリカ粉とを含有するエナメル層1~4を有するガラスプレート、及びエフェクト顔料のみを含有する参照エナメル層Ref1及びRef2を有するガラスプレートの透過率及びヘイズを測定し、実施例1に記載のように計算した。
図5は、本発明による層1及び2を有するガラスプレートの対応する透過率及びヘイズ(T1~2、H1~2)、及び参照層Ref1を有するガラスプレートの対応する透過率及びヘイズ(Tref1、Href1)を示す。
図5から、参照層と比較して、散乱粒子はエナメル層の透過率を変化させないが、ヘイズを増大することがわかる。
【0049】
太陽電池封止材としてのエナメル層の使用
本発明によるエナメル層1~4及び参照層1及び2を有するガラスプレートを、ソーラーフラッシャー上の太陽電池の上に被せ、エナメル層が太陽電池効率に与える影響を、実施例1に記載のように測定した。
結果を表5に示す。
【表5】
表5から、全ての事例において、散乱粒子の添加により、電力出力は悪影響を受けるのではなく、増大することがわかる。これは、散乱後の光は急角度で太陽電池に当たらないことから、粒子による光散乱が太陽電池による光子の吸収向上を生じることに起因する可能性がある。
全体として、結果は、顔料含有エナメル層への散乱粒子の添加は、所望のヘイズをもたらすが、他方で太陽電池効率は大きな影響を受けず、改善さえもされることを実証している。
【0050】
実施例4-エフェクト顔料と散乱粒子とを有するコーティング
コーティングの調製
スプレーコーティング配合物を、太陽光モジュールのカバーガラスに塗布した。配合物は、接合剤としてのポリシラザンが溶媒としての酢酸ブチル中に20%の溶液からなり、この溶液中にエフェクト顔料Xirallic(登録商標)T-60-23が6%の濃度で存在する。使用した散乱粒子は、平均粒子直径D50が5μmの硫酸バリウム粒子BMH-40であった。粒子の濃度を0~3%で変動させた異なる配合物を調製した。各配合物を標準的なスプレーコーティング装置で手動塗布し、塗布後、200℃で2時間乾燥した。
コーティングされたフィルムの厚さは、選択した全ての事例で2g/m
2の顔料濃度を与えた。
比較の目的で、参照コーティングを、顔料濃度は同じであるが散乱粒子を添加せずに上記のように作製した。
個々のフィルムの顔料及び粒子濃度を下の表6に列挙する。
【表6】
【0051】
透過率及びヘイズ測定
乾燥ステップの後、コーティングされた試料の透過率を、Cary Photo分光計と積分球で、実施例1に記載のように測定した。
図6は、コーティングされた試料の透過率の値を示す。
図6から、3%までの散乱粒子濃度で、ガラスの背後の任意構造の隠蔽力が増加を示すが、全透過率は低下しないことがわかる。
図7は、
図6の透過率曲線を統合することで得られた、コーティングした試料の光損失率を示す。
図7から、光損失率は、3%までの散乱粒子濃度で、減少を示すことがわかる。
結果は、本発明による層は、着色層による望ましくない影又はパターンの発生を防止する追加のヘイズを有し、太陽電池効率に対して大きな悪影響がない、又はプラスの影響すらある、太陽電池モジュールの効率的な着色を可能にすることを実証している。
【国際調査報告】