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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】有効表面積での蒸発のための蒸発器
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C23C14/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508401
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 US2022039467
(87)【国際公開番号】W WO2023018600
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,348
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ, サンブ
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラッパ, プラサンナカレーシュワル ブッダッパ
(72)【発明者】
【氏名】リム, ビセント エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヘール, スブラマニヤ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】シヴァラマクリシュナン, ヴィスウェスウォレン
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029DB12
4K029DB14
4K029DB18
(57)【要約】
熱蒸着のための方法および装置が提供される。熱蒸発器は、従来の設計に対して、堆積されるべき材料の蒸発のために増大させた表面積を提供する平底るつぼの設計を含む。蒸発のために増大させた表面積は、蒸発した材料の蒸気がより多く生成され得、これによって、蒸発器本体内の圧力が増大して、ノズルからの蒸発した材料の流出の増大がもたらされることを意味する。平底るつぼは、熱蒸発器の蒸発器本体に取り付けられ得る。平底るつぼは蒸発器本体内に統合され得る。蒸発器本体は、複数の長手方向の溝を含むことができることで、蒸発器本体の表面積が増大する。熱蒸発器は、熱蒸発器を別々の区画に分割する複数のバッフルを含むことができる。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発されるべき材料を保持するための平底るつぼであって、前記平底るつぼは、前記蒸発されるべき材料を保持するための内部領域を画定する矩形体を含み、前記矩形体は、蒸発した前記材料を逃がすことができる開口部を有し、前記矩形体は、蒸発表面積を画定する長さ寸法および幅寸法を有する、平底るつぼと、
前記矩形体と流体結合される蒸発器本体であって、ノズルの複数の線形アレイを有する上面を含み、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有し、前記開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、前記蒸発表面積は前記ノズル開口部表面積より大きい、蒸発器本体と、を備える、蒸発アセンブリ。
【請求項2】
前記蒸発表面積対前記ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である、請求項1に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項3】
前記蒸発器本体の前記上面は平面である、請求項1に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項4】
前記蒸発器本体の前記上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、請求項1に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項5】
前記蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、請求項4に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項6】
前記蒸発器本体は、複数のバッフル板を有するバッフル領域であって、各々のバッフル板は前記蒸発器本体の第1の側壁から前記蒸発器本体の第2の側壁へと延在する、バッフル領域を含み、前記第1の側壁は前記第2の側壁の反対側にある、請求項1に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項7】
前記蒸発器本体は、前記バッフル領域より下に設置されたヒータ領域をさらに含み、前記ヒータ領域は複数の管状ヒータを含み、前記蒸発器本体は、前記矩形体における前記開口部に対応する開口部を画定する底面を有する、請求項6に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項8】
前記矩形体を別々の区画に分割する複数のバッフルをさらに備える、請求項7に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項9】
各々のバッフルは、前記矩形体の底面から前記開口部を通って隣接する管状ヒータ間の前記ヒータ領域へと延在する、請求項8に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項10】
前記別々の区画の各々の区画は、前記ノズルの複数の線形アレイのうちのノズルの線形アレイに対応する、請求項8に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項11】
前記蒸発器本体と熱接触する熱源をさらに備える、請求項1に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項12】
蒸発されるべき材料を保持するための平底るつぼであって、前記平底るつぼは、
ある長さおよび幅寸法を有する矩形体を含み、前記矩形体は、
蒸発した材料を逃がすことができる開口部を有する上面であって、前記矩形体は、蒸発表面積を画定する長さ寸法および幅寸法を有する、上面、
前記上面の反対側の底面、
前記底面から上方にかつ前記底面に垂直に延在する第1の対の対向する側壁、および
前記底面から上方にかつ前記底面に垂直に延在する第2の対の対向する側壁を含み、前記底面、前記第1の対の対向する側壁、および前記第2の対の対向する側壁は、前記蒸発されるべき材料を保持するための内部領域を画定する、平底るつぼと、
前記矩形体と流体結合しかつある長さおよび幅寸法を有する蒸発器本体であって、前記蒸発器本体は、
複数の加熱ロッドが設置されているヒータ領域、および
前記ヒータ領域より上に設置されたバッフル領域を含み、前記バッフル領域は、
蒸発した前記材料を放出するためのノズルの複数の線形アレイであって、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有する、ノズルの複数の線形アレイを含み、前記開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、前記蒸発表面積は前記ノズル開口部表面積より大きい、蒸発器本体と、を備える、蒸発アセンブリ。
【請求項13】
前記蒸発表面積対前記ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である、請求項12に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項14】
前記蒸発器本体の前記上面は平面であり、
前記蒸発器本体の前記上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有し、または
これらの組合せである、請求項12に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項15】
前記矩形体の前記長さ寸法に沿って延在し、かつ前記矩形体を別々の区画に分割する複数のバッフルをさらに備える、請求項12に記載の蒸発アセンブリ。
【請求項16】
ある長さおよび幅寸法を有する蒸発器本体を備え、前記蒸発器本体は、
複数の加熱ロッドが設置されているヒータ領域、
前記ヒータ領域より上に設置されたバッフル領域であって、蒸発した材料を放出するためのノズルの複数の線形アレイであって、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有するノズルの複数の線形アレイを含む、バッフル領域、および
前記ヒータ領域より下に設置されたるつぼ領域であって、蒸発されるべき前記材料を保持するように設計される、るつぼ領域を含み、
前記長さ寸法および前記幅寸法は蒸発表面積を画定し、前記開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、前記蒸発表面積は前記ノズル開口部表面積より大きい、熱蒸発器。
【請求項17】
前記蒸発表面積対前記ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である、請求項16に記載の熱蒸発器。
【請求項18】
前記蒸発器本体の上面は平面である、請求項16に記載の熱蒸発器。
【請求項19】
前記蒸発器本体の上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、請求項16に記載の熱蒸発器。
【請求項20】
前記蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、請求項19に記載の熱蒸発器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全体として、反応性堆積プロセスのためにガスを提供するための蒸発システムに関する。より詳細には、本開示は全体として、比較的低い温度で均一な蒸発速度を提供する熱蒸発器の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムまたはフォイルなどのフレキシブル基板の処理は、パッケージング産業、半導体産業および他の産業では需要が高い。処理は、金属などの選択された材料を用いたフレキシブル基板のコーティングを含む可能性がある。これらのコーティングの経済的な生産は、製品にとって必要な厚さ均一性、コーティング材料の反応性、コーティング材料のコスト、およびコーティング材料の堆積速度によりしばしば制限される。最も需要の高い用途は、コーティング厚さおよび最適な光学的性質の精密な制御のための真空チャンバ内の堆積を一般に含む。真空コーティング装置の高い資本コストは、大規模商業用途にとってコーティング面積の高いスループットを必要とする。単位時間当たりのコーティング面積は、コーティングされる基板の幅およびコーティング材料の真空堆積速度に典型的には比例する。
【0003】
大きな真空チャンバを利用できるプロセスは、莫大な経済的優位性を有する。真空コーティングチャンバ、基板処理作業および取扱作業装置、ならびにポンピング能力は、コストがチャンバサイズと線形に増大するのではない。したがって、一定の堆積速度およびコーティング設計に関する最も経済的なプロセスは、利用可能な最大の基板を利用することになる。より大きな基板は一般に、コーティングプロセスが終了した後で個別の部品になるように製造可能である。連続するウェブから製造される製品の場合、ウェブは、スリット、または最終製品寸法またはその後の製造作業に適したより狭いウェブのいずれかに切断されるシートである。
【0004】
堆積に使用される1つの技術は、熱蒸着である。熱蒸着は、ソース材料が、より冷たい基板上での凝結のために十分な蒸気フラックスがソースからあるような温度に達すると、真空チャンバ内の蓋のないるつぼにおいて加熱されるときに行われる。ソース材料は、るつぼを加熱することによって間接的に、またはるつぼにより閉じ込められたソース材料へと向けられた大電流電子ビームにより直接加熱され得る。熱蒸着は典型的には、高温で行われ、これによって、基板上の高熱負荷を処理することが可能になる。これらの高熱負荷は基板を損傷させる可能性がある。熱負荷を低減するための1つの方法には、放射冷却によりるつぼを冷却することが含まれる。しかしながら、放射冷却は典型的には、非常に遅く、これによって、かなりのチャンバダウンタイムおよび所有コストの増大がもたらされ得る。
【0005】
よって、熱蒸着プロセス中の基板上の熱負荷を低減するための方法およびシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は全体として、反応性堆積プロセスのためにガスを提供するための蒸発システムに関する。より詳細には、本開示は全体として、比較的低い温度で均一な蒸発速度を提供する熱蒸発器の設計に関する。
【0007】
1つの態様では、蒸発アセンブリが提供される。蒸発アセンブリは、蒸発されるべき材料を保持するための平底るつぼを含む。平底るつぼは、蒸発されるべき材料を保持するための内部領域を画定する矩形体を含む。矩形体は、蒸発した材料を逃がすことができる開口部を有する。矩形体は、蒸発表面積を画定する長さ寸法および幅寸法を有する。蒸発アセンブリは、矩形体と流体結合される蒸発器本体をさらに含む。蒸発器本体は、ノズルの複数の線形アレイを有する上面を含み、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有し、開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、蒸発表面積はノズル開口部表面積より大きい。
【0008】
実施形態は下記のうちの1つまたは複数を含み得る。蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である。蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は約50:1より大きい。蒸発器本体の上面は平面である。蒸発器本体の上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する。蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する。蒸発器本体は、複数のバッフル板を有するバッフル領域を含み、各々のバッフル板は蒸発器本体の第1の側壁から蒸発器本体の第2の側壁へと延在し、第1の側壁は第2の側壁の反対側にある。蒸発器本体は、バッフル領域より下に設置されたヒータ領域をさらに含む。ヒータ領域は複数の管状ヒータを含む。蒸発器本体は、矩形体における開口部に対応する開口部を画定する底面を有する。蒸発アセンブリは矩形体を別々の区画に分割する複数のバッフルをさらに含む。各々のバッフルは、矩形体の底面から開口部を通って隣接する管状ヒータ間のヒータ領域へと延在する。別々の区画の各々の区画は、ノズルの複数の線形アレイのうちのノズルの線形アレイに対応する。蒸発アセンブリは、蒸発器本体と熱接触する熱源をさらに含む。
【0009】
もう1つの態様では、蒸発アセンブリが提供される。蒸発アセンブリは、蒸発されるべき材料を保持するための平底るつぼを含む。蒸発アセンブリは、ある長さおよび幅寸法を有する矩形体を含む。矩形体は、蒸発した材料を逃がすことができる開口部を有する上面を含む。矩形体は、蒸発表面積を画定する長さ寸法および幅寸法を有する。矩形体は、上面の反対側の底面と、底面から上方にかつ底面に垂直に延在する第1の対の対向する側壁と、底面から上方にかつ底面に垂直に延在する第2の対の対向する側壁とをさらに含む。底面、第1の対の対向する側壁、および第2の対の対向する側壁は、蒸発されるべき材料を保持するための内部領域を画定する。蒸発アセンブリは、矩形体と流体結合しかつある長さおよび幅寸法を有する蒸発器本体をさらに含む。蒸発器本体は、複数の加熱ロッドが設置されているヒータ領域を含む。蒸発器本体は、ヒータ領域より上に設置されたバッフル領域をさらに含む。バッフル領域は、蒸発した材料を放出するためのノズルの線形アレイを含み、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有し、開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、蒸発表面積はノズル開口部表面積より大きい。
【0010】
実施形態は下記のうちの1つまたは複数を含み得る。蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である。蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は約50:1より大きい。蒸発器本体の上面は平面である。蒸発器本体の上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する。蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する。複数のバッフルは、矩形体の長さ寸法に沿って延在し、かつ矩形体を別々の区画に分割する。各々のバッフルは、矩形体の底面から開口部を通って隣接する管状ヒータ間のヒータ領域へと延在する。別々の区画の各々の区画は、ノズルの複数の線形アレイのうちのノズルの線形アレイに対応する。蒸発アセンブリは、蒸発器本体と熱接触する熱源をさらに含む。各々のバッフル板は複数の貫通孔を有する。蒸発アセンブリは、矩形体と熱接触する熱源をさらに含む。
【0011】
さらにもう1つの態様では、熱蒸発器が提供される。熱蒸発器は、ある長さおよび幅寸法を有する蒸発器本体を含む。蒸発器本体は、複数の加熱ロッドが設置されているヒータ領域を含む。蒸発器本体は、ヒータ領域より上に設置されたバッフル領域をさらに含む。バッフル領域は、蒸発した材料を放出するためのノズルの線形アレイを含み、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有する。蒸発器本体は、ヒータ領域より下に設置されたるつぼ領域をさらに含む。るつぼ領域は、蒸発されるべき材料を保持するように設計される。長さ寸法および幅寸法は蒸発表面積を画定し、開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、蒸発表面積はノズル開口部表面積より大きい。
【0012】
実施形態は下記のうちの1つまたは複数を含み得る。蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である。蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は約50:1より大きい。蒸発器本体の上面は平面である。蒸発器本体の上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する。蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する。熱蒸発器は、蒸発器本体の長さ寸法に沿って延在し、かつ蒸発器本体を別々の区画に分割する複数のバッフルをさらに含む。各々のバッフルは、矩形体の底面から開口部を通って隣接する管状ヒータ間のヒータ領域へと延在する。別々の区画の各々の区画は、ノズルの複数の線形アレイのうちのノズルの線形アレイに対応する。熱蒸発器は、蒸発器本体と熱接触する熱源をさらに含む。各々のバッフル板は複数の貫通孔を有する。
【0013】
もう1つの態様では、非一過性コンピュータ可読媒体は、命令を記憶しており、上記命令は、プロセッサにより実行されるときに、上記の装置および/または方法の作業をプロセスに実行させる。
【0014】
本開示の上記の列挙した特徴が詳細に理解され得るように、特に、上に簡単に要約した実施形態の説明が、実施形態のいくつかが添付の図面に図示される実施形態を参照して行われることがある。しかしながら、添付した図面は、この開示の典型的な実施形態だけを図示し、それゆえに、開示が他の同等に有効な実施形態を認めてもよいために、この開示の範囲を限定すると考えられるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の1つまたは複数の実施形態による蒸発アセンブリを有する蒸発システムの模式的側面図である。
図2A】本開示の1つまたは複数の実施形態による平底るつぼを含む蒸発アセンブリの斜視図である。
図2B】本開示の1つまたは複数の実施形態による図2Aの蒸発アセンブリの側面図である。
図2C】本開示の1つまたは複数の実施形態による図2Aの蒸発アセンブリの断面図である。
図2D】本開示の1つまたは複数の実施形態による図2Aの蒸発アセンブリの一部分の斜視図である。
図3】本開示の1つまたは複数の実施形態による統合された平底るつぼを含む蒸発アセンブリの断面図である。
図4】本開示の1つまたは複数の実施形態による統合された平底るつぼを含む蒸発アセンブリの断面図である。
図5A】本開示の1つまたは複数の実施形態による統合された平底るつぼを含む蒸発アセンブリの斜視図である。
図5B】本開示の1つまたは複数の実施形態による図5Aの蒸発アセンブリの断面図である。
図6A】本開示の1つまたは複数の実施形態による平底るつぼを含む蒸発アセンブリの斜視図である。
図6B】本開示の1つまたは複数の実施形態による図6Aの蒸発アセンブリの側面図である。
図6C】本開示の1つまたは複数の実施形態による図6Aの蒸発アセンブリの断面図である。
図7】本開示の1つまたは複数の実施形態による別の蒸発アセンブリの模式的断面図である。
図8】本開示の1つまたは複数の実施形態による別の蒸発アセンブリの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
理解を容易にするために、同一の参照番号が、可能な場合に、複数の図に共通である同一の要素を明確に示すために使用されている。1つの実施形態の要素および特徴がさらに詳述せずに他の実施形態に有利に取り込まれてもよいことが考えられる。
【0017】
本開示の様々な実施形態がここで詳細に言及され、その1つまたは複数の例が、図に図示される。図面の下記の説明では、同じ参照番号は、同じ構成要素を参照する。一般に、個々の実施形態についての相違だけが説明される。各々の例は、本開示の説明として与えられ、本開示の限定としての意味はない。さらに、1つの実施形態の一部として図示されるまたは説明される特徴は、さらなる実施形態をさらにもたらすために他の実施形態でまたはともに使用されてもよい。説明は、このような変更形態および変形形態を含むものである。
【0018】
図に示された詳細、寸法、角度および他の特徴のうちの多くは、特定の実施形態の単に例示に過ぎない。したがって、他の実施形態は、本開示の趣旨または範囲から乖離せずに他の詳細、構成要素、角度および特徴を有することができる。加えて、開示のさらなる実施形態は、下記に説明される詳細のうちのいくつかを用いずに実行されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、基板上の、例えばフレキシブル基板上の層堆積のための蒸発プロセスおよび蒸発装置が提供される。このように、フレキシブル基板は、とりわけ、プラスチック材料、金属または他の材料のフィルム、フォイル、ウェブ、ストリップを含むように考えられてもよい。典型的に、「ウェブ」、「フォイル」、「ストリップ」、「基板」等の用語は、同義的に使用される。いくつかの実施形態によれば、本明細書において説明する実施形態による蒸発プロセス用の構成要素、蒸発プロセス用の装置および蒸発プロセスが、上に説明したフレキシブル基板用に提供されてもよい。しかしながら、これらはまた、蒸発源からの反応性堆積プロセスを受けるガラス基板、などの非フレキシブル基板とともに提供されてもよい。
【0020】
アノードプレリチウム化のための真空ウェブコーティングおよび固体金属アノード保護は、両面コーティングされカレンダ処理された合金タイプのグラファイトアノードおよび現在のコレクタ、例えば、6ミクロン以上の厚さの銅フォイル、ニッケルフォイル、または金属化したプラスチックウェブ上の厚い(3~20ミクロン)金属(例えば、リチウム)堆積を含む。堆積のための1つの技術は、熱蒸着である。熱蒸着は、ソース材料が、より冷たい基板上での凝結のために十分な蒸気フラックスがソースからあるような温度に達すると、真空チャンバ内の蓋のないるつぼにおいて加熱されるときに容易に行われる。ソース材料は、るつぼを加熱することにより間接的に、またはるつぼにより閉じ込められたソース材料へと向けられた大電流電子ビームにより直接加熱され得る。
【0021】
従来の蒸発システムでは、蒸発させるために高温(例えば、およそ200~1500℃)を必要とし、それによって、処理されるウェブまたは基板に高熱負荷がかけられることが多い。冷却ドラムを使用する従来の蒸発システムはまた、ウェブにより高い張力(例えば、200N~800N)をかけて、冷却ドラムに対する接触圧を増大させる。増大した熱負荷および接触圧にはいくつかの欠点があり得る。例えば、増大した熱負荷および接触圧は、処理されたウェブのしわ、処理中のウェブの断裂を引き起こし、コーティング後の最終製品に影響を与える可能性がある。加えて、従来の蒸発システムでは、円筒状の開口部を有する円筒状のるつぼを使用して、熱蒸発器の蒸発器本体に蒸発した材料を供給することが多い。円筒状の開口部は、多くの場合、蒸発のための限定された表面積を提供する。よって、従来の蒸発システムでは、所望の蒸気圧を実現するために、より高い温度が使用される。これらのより高い温度によって、ウェブ基板に追加の熱負荷がかけられる。よって、ウェブにかけられる熱負荷を低減する熱蒸着のためのシステムおよび方法を有することは有利であると思われる。
【0022】
本明細書に説明される熱蒸発器は、従来の設計に対して、堆積されるべき材料の蒸発のために増大させた表面積を提供する平底るつぼの設計を含む。蒸発のために増大させた表面積は、蒸発した材料の蒸気がより多く生成され得、これによって、蒸発器本体内の圧力が増大して、ノズルからの蒸発した材料の流出の増大がもたらされることを意味する。平底るつぼは、熱蒸発器の蒸発器本体に取り付けられ得る。平底るつぼは蒸発器本体内に統合され得る。蒸発器本体は、複数の長手方向の溝を含むことができることで、蒸発器本体の表面積が増大する。熱蒸発器は、熱蒸発器を別々の区画に分割する複数のバッフルを含むことができる。各々の区画は、ノズルの対応する線形アレイに蒸発した材料を供給するように構成され得ることで、ノズルの各々の線形アレイに対する均一な圧力が保証される。
【0023】
他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、蒸発アセンブリが提供される。蒸発アセンブリは、蒸発されるべき材料を保持するための平底るつぼを含む。平底るつぼは、蒸発されるべき材料を保持するための内部領域を画定する矩形体を含む。矩形体は、蒸発した材料を逃がすことができる開口部を含む。矩形体は、蒸発表面積を画定する長さ寸法および幅寸法を有する。蒸発器本体は、矩形体と流体結合される。
【0024】
蒸発器本体は、ノズルの複数の線形アレイを含む上面を有する。各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有し、ノズル開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、蒸発表面積はノズル開口部表面積より大きい。ノズル開口部表面積は、式nπrを使用して計算可能であり、ここで、「n」はノズルの総数を表し、「r」はノズル開口部の半径を表す。平底るつぼの蒸発表面積は、平底るつぼの長さ寸法「l」に平底るつぼの幅「w」を乗じることによって計算可能である。「面積比」は、「平底るつぼの表面積」/「ノズル開口部表面積」で表される。
【0025】
図1は、本開示の1つまたは複数の実施形態による1つまたは複数の蒸発アセンブリ140a~140d(集合的に140)、例えば、熱蒸発器を含む蒸発システム100の模式的側面図を図示する。蒸発システム100は、ウェブ材料上にコーティングを堆積するため、例えば、本明細書において説明する実施形態による金属コーティングフィルム積層体を堆積するために適合したロール-ツー-ロールシステムであってもよい。1つの例では、蒸発システム100は、金属または金属合金を堆積するために使用可能である。例えば、蒸発システム100および蒸発アセンブリ140は、金属または金属合金を堆積するために使用可能である。金属および金属合金の例には、限定はされないが、アルカリ金属(例えば、リチウムおよびナトリウム)、セレン、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、すず、鉛、アンチモン、ビスマス、テルル、アルカリ土類金属、銀、またはこれらの組合せが含まれる。これらの金属または金属合金は、エネルギーストレージデバイスを製造するために、とりわけ、リチウム含有アノード構造用のフィルム積層体用に使用可能である。蒸発システム100は、ウェブ材料上にコーティングを堆積するためのプロセス処理のうちのいくつかまたはすべてが実行されてもよい共通処理環境104を画定するチャンバ本体102を含む。1つの例では、共通処理環境104は、真空環境として動作可能である。もう1つの例では、共通処理環境104は、不活性ガス環境として動作可能である。いくつかの例では、共通処理環境104は、1×10-3mbar(1×10-3hPa)以下、例えば、1×10-4mbar(1×10-4hPa)以下のプロセス圧力で維持されてもよい。
【0026】
蒸発システム100は、連続するフレキシブル基板108またはウェブを供給するための送り出しリール106、連続するフレキシブル基板108がその上方で処理されるコーティングドラム110、および処理後の連続するフレキシブル基板108を回収するための巻き取りリール112を含むロール-ツー-ロールシステムとして構成される。コーティングドラム110は、連続するフレキシブル基板108が堆積面上を進むと同時に材料が連続するフレキシブル基板108上へと堆積される堆積面111を含む。蒸発システム100はさらに、送り出しリール106と、コーティングドラム110と巻き取りリール112との間に設置された1つまたは複数の補助移送リール114、116をさらに含むことができる。1つの態様によれば、1つまたは複数の補助移送リール114、116、送り出しリール106、コーティングドラム110、および巻き取りリール112のうちの少なくとも1つは、モータにより駆動され回転されてもよい。1つの例では、モータは、ステップモータである。送り出しリール106、コーティングドラム110、および巻き取りリール112が共通処理環境104に図示されるように設置されているが、送り出しリール106および巻き取りリール112は別々のチャンバまたはモジュールに設置されてもよい、例えば、送り出しリール106のうちの少なくとも1つが送り出しモジュールに設置されてもよく、コーティングドラム110が処理モジュールに設置されてもよく、そして巻き取りリール112が送り出しモジュールに設置されてもよいことが理解されるはずである。
【0027】
送り出しリール106、コーティングドラム110、および巻き取りリール112は、個別に温度制御されてもよい。例えば、送り出しリール106、コーティングドラム110、および巻き取りリール112は、各々のリール内に設置された内部熱源または外部熱源を使用して個別に加熱されてもよい。
【0028】
他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、1つまたは複数の蒸発アセンブリ140、例えば、熱蒸発器は、(示されない)蒸発シールドと取り外し可能に結合可能である。他の実施形態と組み合わせられ得る別の実施形態では、1つまたは複数の蒸発アセンブリ140は、コーティングドラム110から間隔があけられ得る。1つまたは複数の熱蒸発アセンブリ140は、連続するフレキシブル基板108がコーティングドラム110の堆積表面111上を進む際に、連続するフレキシブル基板108上に蒸発した材料を放出するように設置される。
【0029】
堆積ボリューム120が、1つまたは複数の熱蒸発アセンブリ140と、コーティングドラム110の堆積表面111との間に画定される。いくつかの実施形態では、堆積ボリューム120は、チャンバ本体102の共通処理環境104内での隔離された処理を提供する。堆積ボリューム120は、ウェブ、例えば、円柱状の冷却ドラム上に、例えば、コーティングドラム110上に、平坦な冷却プレート上に、またはフリースパン配向で巻かれる連続するフレキシブル基板108に一致するように最小化かつ画定可能である。
【0030】
1つまたは複数の蒸発アセンブリ140が、図2A図8を参照して非常に詳細に説明される。1つまたは複数の蒸発アセンブリ140は、材料の連続するフレキシブル基板108またはウェブに1つまたは複数の処理操作を行うために設置される。1つの例では、図1に描かれるように、1つまたは複数の蒸発アセンブリ140は、コーティングドラム110の周りに放射状に配置される。加えて、放射状以外の配置が考えられる。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、1つまたは複数の熱蒸発アセンブリ140は、リチウム(Li)源を含む。さらに、1つまたは複数の熱蒸発アセンブリ140はまた、2つ以上の金属の合金のソースも含み得る。堆積されるべき材料は、例えば、熱蒸発技術により蒸発され得る。
【0031】
処理中、1つまたは複数の熱蒸発アセンブリ140は、蒸発した材料122の煙流を放ち、この煙流は、連続するフレキシブル基板108へと引き寄せられ、そこで、堆積される材料のフィルムが連続するフレキシブル基板108上に形成される。
【0032】
加えて、4つの熱蒸発アセンブリ140a~140dが図1には示されているが、任意の数の蒸発アセンブリが使用可能であることを理解されたい。加えて、蒸発システム100は、1つまたは複数の追加の堆積源をさらに含むことができる。例えば、本明細書において説明するような1つまたは複数の堆積源は、電子ビーム源ならびに、CVD源、PECVD源、および様々なPVD源の群から選択され得る追加のソースを含む。例示的なPVD源は、スパッタリング源、電子ビーム蒸発源、および熱蒸発源を含む。加えて、これらの追加の堆積源は、コーティングドラム110の堆積面111に対して放射状に設置されてもよい。
【0033】
他の実施形態と組み合わせられ得る本開示の1つの実施形態では、蒸発システム100は、連続するフレキシブル基板108の両面を処理するように構成される。例えば、1つまたは複数の熱蒸発アセンブリ140に類似の追加の蒸発アセンブリが、連続するフレキシブル基板108の反対側を処理するために設置可能である。蒸発システム100が水平に向けられた連続するフレキシブル基板108を処理するように構成されているが、蒸発システム100は、別の向きに設置された基板を処理するように構成されてもよい、例えば、連続するフレキシブル基板108は、垂直に向けられてもよい。他の実施形態と組み合わせられ得る本開示の1つの実施形態では、連続するフレキシブル基板108はフレキシブルな導電性基板である。他の実施形態と組み合わせられ得る本開示の1つの実施形態では、連続するフレキシブル基板108は、上に形成された1つまたは複数の層を有する導電性基板を含む。他の実施形態と組み合わせられ得る本開示の1つの実施形態では、導電性基板は銅基板である。
【0034】
蒸発システム100は、ガスパネル160をさらに含む。ガスパネル160は、蒸発システム100へ処理ガスを配送するために1つまたは複数のコンジット(図示せず)を使用する。ガスパネル160は、蒸発システム100へ供給される各々の個別のガスについてガス圧力および流量を制御するためにマスフローコントローラおよび遮断弁を含むことができる。ガスパネル160により配送可能であるガスの例は、圧力制御用の不活性ガス(例えば、アルゴン)、限定はされないが蒸発システム100のインシトゥ洗浄用に使用されるジケトン類を含むエッチング化学物質、および限定はされないが1,1,1,2テトラフルオロエタンもしくは他のハイドロフルオロカーボン類およびトリメチルアルミニウム、四塩化チタン、またはインシトゥ数10ナノメートル厚の反応性リチウム混合型導電体表面改質のために使用される他の有機金属前駆体を含む堆積化学物質を含むが、これらに限定されない。
【0035】
蒸発システム100は、蒸発システム100の様々な態様を制御するために動作可能なシステムコントローラ170をさらに含む。システムコントローラ170は、蒸発システム100の制御および自動化を容易にし、そして中央処理ユニット(CPU)、メモリ、およびサポート回路(またはI/O)を含むことができる。ソフトウェア命令およびデータは、コーディングされ、CPUを命令するためにメモリ内に記憶されてもよい。システムコントローラ170は、蒸発システム100の構成要素のうちの1つまたは複数と、例えば、システムバスを介して通信できる。システムコントローラ170により読取り可能なプログラム(またはコンピュータ命令)は、どのタスクが基板に実行可能であるかを決定する。いくつかの態様では、プログラムはシステムコントローラ170により読取り可能であるソフトウェアであり、このソフトウェアは、1つまたは複数の蒸発アセンブリ140の独立した温度制御を含むチャンバ状態をモニタするためのコードを含むことができる。単一のシステムコントローラ、システムコントローラ170だけが示されているが、複数のシステムコントローラが本明細書において説明する態様で使用可能であることは認識されるべきである。
【0036】
図2Aは、本開示の1つまたは複数の実施形態による、蒸発器本体230に取り付けられた平底るつぼ210を含む蒸発アセンブリ200、例えば、熱蒸発器の斜視図を図示する。図2Bは、本開示の1つまたは複数の実施形態による図2Aの蒸発アセンブリ200の側面図を図示する。図2Cは、本開示の1つまたは複数の実施形態による図2Aの蒸発アセンブリ200の断面図を図示する。図2Dは、本開示の1つまたは複数の実施形態による図2Aの蒸発アセンブリ200の一部分の斜視図を図示する。蒸発アセンブリ200は、図1に描かれている熱蒸発アセンブリ140の代わりに使用可能である。
【0037】
平底るつぼ210は、蒸発されるべき材料、例えば、金属または金属合金を保持するように設計される。平底るつぼ210は、長さ「L1」寸法および幅「W1」寸法を有するるつぼ本体212を含む。るつぼ本体212は矩形体として示されているが、るつぼ本体212に対する他の適した形状も考えられる。図2Cを参照すると、るつぼ本体212は、蒸発した材料を逃がすことができる開口部216を有する上面214を含む。るつぼ本体212は、上面214の反対側の底面218をさらに含む。るつぼ本体212は、底面218から上方にかつ底面218に垂直に延在する第1の対の対向する側壁220a、220b(集合的に220)をさらに含む。第1の対の対向する側壁220a、220bは、るつぼ本体212の長さ寸法「L1」を画定する。るつぼ本体212は、底面218から上方にかつ底面218に垂直に延在する第2の対の対向する側壁222a、222b(集合的に222)をさらに含む。第2の対の対向する側壁222は、るつぼ本体212の幅寸法「W1」を画定する。図2Cを参照すると、底面218、第1の対の対向する側壁220、および第2の対の対向する側壁222は、蒸発されるべき材料を保持するための内部領域226を画定する。内部領域226は、溶融形態および/または液体形態で蒸発/堆積されるべき材料を保持するために動作可能である。蒸発/堆積されるべき材料は、外部ソースから平底るつぼ210の内部領域226に供給可能である。るつぼ本体212は、外部熱源と熱的に結合可能である。
【0038】
図2A図2Dに示されるように、蒸発器本体230は平底るつぼ210に取り付けられる。平底るつぼ210を蒸発器本体230に取り付けるための任意の適した取付技術が使用可能である。例えば、平底るつぼ210は蒸発器本体230に溶接可能である。平底るつぼ210は蒸発器本体230にボルト留め可能である。平底るつぼ210は、蒸発器本体230に取り外し可能に取り付け可能である。他の実施形態と組み合わせられ得る別の実施形態では、蒸発器本体230および平底るつぼ210は、単一の材料から機械加工される。
【0039】
平底るつぼ210および/または蒸発器本体230は、モリブデン、グラファイト、ステンレス鋼、または窒化ホウ素などの高い熱伝導率を有する材料から形成可能である。1つの例では、平底るつぼ210は、熱分解窒化ホウ素から構成される。熱分解窒化ホウ素は、一般に不活性であり、高温に耐えることができ、一般に清浄でありそして真空環境への望ましくない不純物の一因にならず、赤外放射光のある波長に対して一般に透明であり、そして例えば、複雑な形状へと製造され得る。
【0040】
蒸発器本体230はまた、平底るつぼ210からの蒸発した材料が蒸発器本体230内へと進むことができるように、平底るつぼ210と流体結合される。図2Aを参照すると、蒸発器本体230は、長さ寸法「L2」および幅寸法「W2」を有する。蒸発器本体230は矩形体として示されているが、蒸発器本体230に対する他の適した形状も考えられる。図2Cを参照すると、蒸発器本体230は、蒸発した材料が、平底るつぼ210の開口部216から蒸発器本体230に入ることができる開口部236を有する底面234を含む。図2Cに示されるように、平底るつぼ210の上面214における開口部216は、蒸発器本体230の底面234における開口部236と位置合わせされる。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、開口部216および開口部236は同じサイズである。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、開口部216および開口部236は異なるサイズである。
【0041】
蒸発器本体230は、底面234の反対側の上面238をさらに含む。蒸発器本体230は、底面234から上方にかつ底面234に垂直に延在する第1の対の対向する側壁240a、240b(集合的に240)をさらに含む。第1の対の対向する側壁240a、240bは、蒸発器本体230の長さ寸法「L2」を画定する。図2Aおよび図2Bに示されるように、蒸発器本体230は、底面234から上方にかつ底面234に垂直に延在する第2の対の対向する側壁242a、242b(集合的に242)をさらに含む。第2の対の対向する側壁242は、蒸発器本体230の幅寸法「W2」を画定する。図2Cを参照すると、底面234、第1の対の対向する側壁240、および第2の対の対向する側壁242は、蒸発した材料を保持するための内部領域247を画定する。
【0042】
他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、上面238は平面である。他の実施形態と組み合わせられ得る別の実施形態では、上面238は、図2A図2Cに示されるように、複数の長手方向の溝244a~244d(集合的に244)、または複数の長手方向の溝244を画定する「ジグザグ」パターンを含む。上面238の溝状設計によって蒸発器本体230の表面積が増大して、ウェブ基板が受ける放射熱量が低減する。4つの長手方向の溝244a~244dが示されているが、長手方向の溝の数は、蒸発器本体230の所望の表面積に応じて増加または減少可能である。このように増大した上面238の表面積は、より低い温度でより高い蒸気圧を実現するのに役立つ。図2A図2Cを参照すると、上面238における長手方向の溝244は、側壁240によって画定された長さに沿って側壁242aから側壁242bまで延在する。図2Cを参照すると、長手方向の溝244は複数の長手方向頂部246a~246e(集合的に246)を分離する。長手方向頂部246は、側壁240によって画定される長さ寸法「L2」に沿って側壁242aから側壁242bまで延在する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、長手方向頂部246aと長手方向の溝244aの底部との間の距離は、約80ミリメートル~約120ミリメートル、例えば、約90ミリメートル~約110ミリメートルである。
【0043】
各々の長手方向頂部246a~246eは、ウェブの表面の方へ蒸発した材料を放出するように構成されるノズルの線形アレイ248a~248e(集合的に248)を支持する。ノズルの線形アレイ248の各々のノズルは、上面238を通って延在する。ノズルの線形アレイ248の各々のノズルは、ある直径によって画定された開口部を含む。ノズルの開口部は、所望の蒸気圧で蒸発した材料を放出するのに十分な任意の直径であり得る。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、各々のノズル248は、約1.2ミリメートル~約5ミリメートル、例えば、約4ミリメートル~約4.5ミリメートルの直径によって画定された開口部を有する。
【0044】
図2Dを参照すると、蒸発器本体230の上部233は、複数のバッフル板260a~260d(集合的に260)を含むバッフル領域235を画定する。バッフル板260は、バッフル領域235を別々の区画に分割する。複数のバッフル板260a~260dの各々のバッフル板260は、蒸発器本体230の幅「W2」に沿って側壁242aから側壁242bまで延在する。各々のバッフル板260は、上面238の長手方向の溝244を反映した複数の長手方向の溝を含むため、上面238とコンフォーマルに合致する。各々のバッフル板260は、蒸発されるべき材料が進むことができる複数の貫通孔を含む。例えば、バッフル板260aは貫通孔262a~262eを含む。バッフル板260は、バッフル領域235を別々の区画に分割し、これは、ノズルを通る蒸発した材料の均一な流れを実現するのに役立つ。4つのバッフル板260が図2Dに示されているが、任意の数のバッフル板260が、ノズル248を通る蒸発されるべき材料を均一に放出するために使用可能である。任意の適した取付技術を使用して、蒸発器本体230にバッフル板260を取り付けることができる。例えば、バッフル板260は蒸発器本体230に溶接され得る。バッフル板260は蒸発器本体230にボルト留めされ得る。バッフル板260は蒸発器本体230に取り外し可能に取り付け可能である。
【0045】
蒸発器本体230は、蒸発器本体230のバッフル領域235と平底るつぼ210との間に画定されたヒータ領域270をさらに含む。ヒータ領域270はバッフル領域235に接触する。ヒータ領域270は複数のヒータ272a~272e(集合的に272)を含む。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、ヒータ272は管状ヒータ、例えば、加熱ロッドである。
【0046】
他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、熱蒸発アセンブリ200は、複数のバッフル280a~280d(集合的に280)をさらに含む。複数のバッフル280はそれぞれ、平底るつぼ210の底面218から開口部216を通ってヒータ領域270へと延在する。複数のバッフル280の各々のバッフルは、側壁間で、例えば、側壁242aから側壁242bまで縦に延在する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、複数のバッフル280の各々のバッフルは、隣接するヒータ272間の内部領域247へと延在する。複数のバッフル280の各々のバッフルは、内部領域226および内部領域247を別々の区画282a~282e(集合的に282)に分割する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、複数のバッフル280のうちの少なくとも1つは、1つまたは複数の貫通孔を含み、これによって、溶融もしくは液体金属または金属合金が隣接する区画間で流れることが可能になる。各々の区画282a~282eは、ノズルの対応する線形アレイ248a~248eに蒸発した材料を供給するように構成可能である。例えば、区画282aは蒸発した材料をノズルの線形アレイ248aに供給する。内部領域226を別々の区画に分割することは、各々のノズルの線形アレイ248に対する均一な圧力を保証する。とりわけ、蒸発アセンブリ200が傾斜する実施形態では、バッフル設計では、ノズルすべてにわたって液体金属または金属合金を保持し等しく分散させることで、厚さ均一性が改善される。バッフルなしの蒸発アセンブリの傾斜した実施形態では、溶融もしくは液体金属または金属合金は最下点へ流れることで、異なるノズルの線形アレイ248a~248e間の不均一な圧力がもたらされる。
【0047】
1つの例では、るつぼの蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約40:1~約400:1、約50:1~約350:1、および約100:1~約330:1である。るつぼの蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約40:1より大きい、約50:1より大きい、約70:1より大きい、約100:1より大きい、約150:1より大きい、約170:1より大きい、約200:1より大きい、約250:1より大きい、約300:1より大きい、または約400:1より大きい。
【0048】
図3は、本開示の1つまたは複数の実施形態による蒸発アセンブリ300、例えば、熱蒸発器の断面図を図示する。蒸発アセンブリ300は、蒸発アセンブリ300のるつぼ領域310が蒸発アセンブリ300の蒸発器本体230内に統合されること以外は、蒸発アセンブリ200に類似している。るつぼ領域310は、ヒータ領域270より下に設置され、蒸発されるべき材料を保持するように設計される。図3に描かれる蒸発器本体230の底面334は、固体片である。蒸発アセンブリ300は、図1に描かれた蒸発アセンブリ140の代わりに使用可能である。
【0049】
図4は、本開示の1つまたは複数の実施形態による蒸発アセンブリ400、例えば、熱蒸発器の断面図を図示する。蒸発アセンブリ400は、図1に描かれた蒸発アセンブリ140の代わりに使用可能である。蒸発アセンブリ400は、蒸発アセンブリ400が複数のバッフル410a~410d(集合的に410)を含むこと以外は、蒸発アセンブリ300に類似している。複数のバッフル410はそれぞれ、蒸発器本体230の底面334からヒータ領域270へと延在する。複数のバッフル410の各々のバッフルは、側壁間で、例えば、側壁242aから側壁242bまで縦に延在する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、複数のバッフル410の各々のバッフルは、隣接するヒータ272間の内部領域247へと延在する。複数のバッフル410の各々のバッフルは、隣接するヒータ272間の内部領域247へと延在する。複数のバッフル410の各々のバッフルは、内部領域226および内部領域247を別々の区画420a~420e(集合的に420)に分割する。各々の区画420a~420eは、ノズルの対応する線形アレイ248a~248eに蒸発した材料を供給するように構成可能である。例えば、区画420aは蒸発した材料をノズルの線形アレイ248aに供給する。内部領域226を別々の区画に分割することは、各々のノズルの線形アレイ248に対する均一な圧力を保証する。
【0050】
図5Aは、本開示の1つまたは複数の実施形態による、統合された平底るつぼ領域を含む蒸発アセンブリ500、例えば、熱蒸発器の斜視図を図示する。図5Bは、本開示の1つまたは複数の実施形態による図5Aの蒸発アセンブリ500の断面図である。蒸発アセンブリ500は、図1に描かれた蒸発アセンブリ140の代わりに使用可能である。蒸発アセンブリ500は、蒸発アセンブリ500が側壁240a、240bおよび底面334両方において複数の長手方向の溝またはジグザグパターンを含むこと以外は、蒸発アセンブリ300に類似している。上に論じられるように、側壁240a、240bおよび底面334の両方における溝状設計は、蒸発器本体230の表面積を増大させるのに役立つ。このように増大した表面積は、より低い温度でより高い蒸気圧を実現するのに役立ち、これによって、ウェブ基板が受ける放射熱量が低減し、短い時間フレームでの温度上昇および下降も可能になる。側壁240aは長手方向の溝510a、510bを含み、側壁240bは長手方向の溝510c、510dを含む。2つの長手方向の溝510a、510bおよび510c、510dが各々の対応する側壁240a、240bに示されているが、長手方向の溝の数は蒸発器本体230の所望の表面積に応じて増加または減少させることができる。長手方向の溝510a~510dは、側壁240a、240bによって画定された長さに沿って側壁242aから側壁242bまで延在する。
【0051】
上面238と同様に、底面334はまた、複数の長手方向の溝544a~544dを含む。4つの長手方向の溝544a~544dが示されているが、長手方向の溝の数は、蒸発器本体230の所望の表面積に応じて増加または減少させることができる。このように増大した底面334の表面積は、より高い蒸気圧でより低い温度を実現する。図5A図5Bを参照すると、底面334における長手方向の溝544は、側壁240a、240bによって画定された長さに沿って側壁242aから側壁242bまで延在する。図5Bを参照すると、長手方向の溝544は複数の長手方向頂部546a~546e(集合的に546)を分離する。長手方向頂部546は、側壁240a、240bによって画定された長さに沿って側壁242aから側壁242bまで延在する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、長手方向頂部546aと長手方向の溝544aの底部との間の距離は、約80ミリメートル~約120ミリメートル、例えば、約90ミリメートル~約110ミリメートルである。
【0052】
他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、図5Bに描かれた蒸発アセンブリ500は、複数のバッフル550a~550d(集合的に550)をさらに含む。複数のバッフル550はそれぞれ、蒸発器本体230の底面334からヒータ領域270へと延在する。複数のバッフル510の各々のバッフルは、側壁間で、例えば、側壁242aから側壁242bまで縦に延在する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、複数のバッフル510の各々のバッフルは、隣接するヒータ272間の内部領域247へと延在する。複数のバッフル510の各々のバッフルは、内部領域226および内部領域247を別々の区画520a~520e(集合的に520)に分割する。各々の区画520a~520eは、ノズルの対応する線形アレイ248a~248eに蒸発した材料を供給するように構成可能である。例えば、区画520aは蒸発した材料をノズルの線形アレイ248aに供給する。内部領域226を別々の区画に分割することは、各々のノズルの線形アレイ248に対する均一な圧力を保証する。
【0053】
図6Aは、本開示の1つまたは複数の実施形態による拡大した平底るつぼ610を含む蒸発アセンブリ600の斜視図を図示する。図6Bは、本開示の1つまたは複数の実施形態による図6Aの蒸発アセンブリ600の側面図を図示する。図6Cは、本開示の1つまたは複数の実施形態による図6Aの蒸発アセンブリの断面図を図示する。蒸発アセンブリ600は、図1に描かれた蒸発アセンブリ140の代わりに使用可能である。蒸発アセンブリ600は、蒸発アセンブリ600においては、平底るつぼ210を、拡大した平底るつぼ610と置き換えること以外は、蒸発アセンブリ200に類似している。
【0054】
拡大した平底るつぼ610は、蒸発されるべき材料、例えば、金属または金属合金を保持するように設計される。拡大した平底るつぼ610は、長さ寸法「L3」および幅寸法「W3」を有するるつぼ本体612を含む。図6A図6Cに描かれるように、るつぼ本体612は、蒸発器本体230の長さ寸法「L2」および幅寸法「W2」より大きい長さ寸法「L3」および幅寸法「W3」を有する。るつぼ本体612は矩形体として示されているが、るつぼ本体612に対する他の適した形状も考えられる。図6Cを参照すると、るつぼ本体612は、蒸発した材料を逃がすことができる開口部616を有する上面614を含む。るつぼ本体612は、上面614の反対側の底面618をさらに含む。るつぼ本体612は、底面618から上方にかつ底面618に垂直に延在する第1の対の対向する側壁620a、620b(集合的に620)をさらに含む。第1の対の対向する側壁620a、620bは、るつぼ本体612の長さを画定する。るつぼ本体612は、底面618から上方にかつ底面618に垂直に延在する第2の対の対向する側壁622a、622b(集合的に622)をさらに含む。第2の対の対向する側壁622は、るつぼ本体612の幅を画定する。図6Cを参照すると、底面618、第1の対の対向する側壁620、および第2の対の対向する側壁622は、蒸発されるべき材料を保持するための内部領域626を画定する。内部領域626は、溶融形態および/または液体形態で蒸発/堆積されるべき材料を保持するために動作可能である。蒸発/堆積されるべき材料は、外部ソースから拡大した平底るつぼ610の内部領域626に供給可能である。るつぼ本体612は、外部熱源と熱的に結合可能である。
【0055】
蒸発器本体230はまた、拡大した平底るつぼ610からの蒸発した材料が蒸発器本体230内へと進むことができるように、拡大した平底るつぼ610と流体結合される。図6Cに示されるように、拡大した平底るつぼ610の上面614における開口部616は、蒸発器本体230の底面234における開口部236と位置合わせされる。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、開口部616および開口部236は同じサイズである。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、開口部616および開口部236は異なるサイズである。
【0056】
他の実施形態と組み合わせられ得る1つまたは複数の実施形態では、熱蒸発アセンブリ600は複数のバッフル680a~680d(集合的に680)をさらに含む。複数のバッフル680はそれぞれ、拡大した平底るつぼ610の底面618から開口部616を通ってヒータ領域270内へと延在する。複数のバッフル680の各々のバッフルは、側壁間で、例えば、側壁622aから側壁622bまで縦に延在する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、複数のバッフル680の各々のバッフルは、隣接するヒータ272間の内部領域247へと延在する。複数のバッフル680の各々のバッフルは、内部領域226および内部領域247を別々の区画682a~682e(集合的に682)に分割する。各々の区画682a~682eは、ノズルの対応する線形アレイ248a~248eに蒸発した材料を供給するように構成可能である。例えば、区画682aは蒸発した材料をノズルの線形アレイ248aに供給する。内部領域626を別々の区画に分割することは、各々のノズルの線形アレイ248に対する均一な圧力を保証する。
【0057】
1つの例では、蒸発器本体230は、24センチメートルの幅寸法「W2」および30センチメートルの長さ寸法「L2」を有し、これは720平方センチメートルの表面積に等しい。拡大した平底るつぼ610は、30センチメートルの幅寸法「W3」および36センチメートルの長さ寸法「L3」を有し、これは1,080平方センチメートルの表面積に等しい。拡大した平底るつぼ610対蒸発器230の表面積の面積比は、6:4または1:5である。よって、50%以上の表面積がノズルに露出されている。
【0058】
図7は、本開示の1つまたは複数の実施形態による別の蒸発アセンブリ700の模式的断面図を図示する。蒸発アセンブリ700は、図1に描かれた蒸発アセンブリ140の代わりに使用可能である。蒸発アセンブリ700は、拡大した平底るつぼ610と結合されたヒータ本体710を含む。ヒータ本体710は、拡大した平底るつぼ610において蒸発されるべき材料を気化させるためのヒータまたはヒータ要素720を含む。ヒータ要素720は、所望の温度を実現するための任意の適したヒータであり得る。1つの例では、ヒータ要素720は抵抗ヒータである。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、ヒータ本体710は平底るつぼの底面618と結合される。拡大した平底るつぼ610をヒータ本体710に取り付けるための任意の適した取付技術が使用可能である。例えば、拡大した平底るつぼ610はヒータ本体710に溶接可能である。拡大した平底るつぼ610はヒータ本体710にボルト留め可能である。拡大した平底るつぼ610は、ヒータ本体710に取り外し可能に取り付け可能である。
【0059】
図8は、本開示の1つまたは複数の実施形態による別の蒸発アセンブリ800の模式的断面図を図示する。蒸発アセンブリ800は、図1に描かれた熱蒸発アセンブリ140の代わりに使用可能である。蒸発アセンブリ800は、蒸発器本体812に設置された複数のモジュール式蒸発器810a~810e(集合的に810)を含む。蒸発器本体812は蒸発器本体230であり得る。蒸発アセンブリ800はヒータ820をさらに含む。ヒータ820は、モジュール式蒸発器810に熱を供給するために蒸発器本体812に設置される。蒸発されるべき材料を気化させるためにモジュール式蒸発器810に十分な熱を供給する任意の適したヒータが使用可能である。蒸発アセンブリ800はバッフル板830をさらに含む。バッフル板830はバッフル板260であり得る。バッフル板830は複数の貫通孔862a~862e(集合的に862)を含む。各々の貫通孔862a~862eはノズルの対応する線形アレイ848a~848eと関連付けられる。例えば、バルブ862aは、ノズルの線形アレイ848aへの蒸発した材料の流れを制御する。他の実施形態と組み合わせられ得る1つの実施形態では、バッフル板830は、各々のノズルの線形アレイ848a~848eより下に形成された複数の貫通孔862a~862eを含む。各々のモジュール式蒸発器810a~810eはノズルの対応する線形アレイ848a~848eと関連付けられる。例えば、モジュール式蒸発器810aは、ノズルの線形アレイ848に蒸発した材料を供給する。
【実施例
【0060】
下記の非限定的な例は、本明細書に説明される実施形態をさらに図示するために提供される。しかしながら、これらの例は、すべてを網羅することを意図してもいないし、本明細書に説明される実施形態の範囲を限定することも意図していない。
【0061】
比較例1
比較例では、現在の円形るつぼ設計用の面積比(AR)を計算する。
AR=((πr)/(nπr))
るつぼ面積=3.142×(21.5)∧2=1452.38mm
ノズル面積(120ノズル)=120×3.142×(1.2)∧2=456.21mm
AR(円形るつぼ)=1452.38/456.21=3.18
【0062】
比較例2
AR=((πr)/(nπr))
るつぼ面積=3.142×(21.5)∧2=1452.38mm
ノズル面積(50ノズル)=50×3.142×(2.5)∧2=981.87mm
AR(円形るつぼ)=1452.38/981.87=1.48
【0063】
実施例1
AR=((wl)/(nπr))
るつぼ面積(wl)=420mm×240mm=100,800mm
ノズル面積(50ノズル)=50×3.142×(2.5)∧2=981.87mm
AR(平底るつぼ)=100800/981.87=102.66
【0064】
実施例2
AR=((wl)/(nπr))
るつぼ面積(wl)=420mm×240mm=100,800mm
ノズル面積(120ノズル)=120×3.142×(1.2)∧2=456.21mm
AR(平底るつぼ)=100800/456.21=220.95
【0065】
実施形態には、下記の潜在的な利点のうちの1つまたは複数が含まれ得る。平底るつぼを有する熱蒸発器の設計によって、アルカリ金属および金属合金を気化するために表面積が増大することで、より低い蒸発温度で蒸気圧をかなり高くすることが可能になる。このようなより高い蒸気圧はより高い堆積速度を可能にする。本明細書に説明される熱蒸発器の設計は、比較的低い温度で非常に高い均一な蒸発速度においてアルカリ金属および金属合金を使用することが可能である。本明細書に説明される熱蒸発器の設計は、ロール-ツー-ロールプロセスを、かなり低くなった張力および高くなったウェブ速度において薄い金属基板で実行できるようにする。このような低くなった張力は、薄い金属基板の引張強度を保つのに役立つように、薄い金属基板のしわの低減に役立つ。蒸発のより低いサーマルバジェットにより、基板冷却の要件が最小化される。蒸発のより低いサーマルバジェットはまた、蒸発器の迅速な立ち上がりおよび立下りを可能にし、これによって生産ツールの歩留りが増大する。
【0066】
この明細書において説明した実施形態および機能的動作のすべては、ディジタル電子回路で、またはこの明細書で開示した構造的手段およびそれらの構造的な等価物を含めコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアで、またはこれらの組合せで実施されてもよい。本明細書において説明した実施形態は、データ処理装置、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータによる実行のためまたは上記データ処理装置の動作の制御のために、1つまたは複数の非一過性のコンピュータプログラム製品、すなわち、機械可読ストレージデバイスに実体的に具現化された1つまたは複数のコンピュータプログラムとして実施されてもよい。
【0067】
この明細書で説明したプロセスおよび論理の流れは、入力データ上で動作することおよび出力を生成することによって機能を行うために1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサにより行われてもよい。プロセスおよび論理の流れはまた、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)により行われてもよく、装置はまた、上記専用論理回路として実施されてもよい。
【0068】
「データ処理装置」という用語は、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを含め、データを処理するためのすべての装置、デバイス、および機械を包含する。装置は、ハードウェアに加えて、問題としているコンピュータプログラムのための実行環境を作り出すコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはこれらのうちの1つもしくは複数の組合せを構成するコードを含むことができる。コンピュータプログラムの実行のために適したプロセッサは、例として、汎用マイクロプロセッサおよび専用マイクロプロセッサの両方、ならびに任意の種類のディジタルコンピュータのいずれか1つまたは複数のプロセッサを含む。
【0069】
コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するために適したコンピュータ可読媒体は、例として、半導体メモリデバイス、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、例えば、内部ハードディスクまたは脱着可能ディスク;光磁気ディスク;ならびにCD ROMおよびDVD-ROMディスクを含め、すべての形態の不揮発性メモリ、メディアデバイスおよびメモリデバイスを含む。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路により補完されてもよい、または組み込まれてもよい。
【0070】
実施形態の列挙
本開示は、とりわけ、下記の実施形態を提供し、これらの各々がいずれかの代替の実施形態を任意選択で含むと考えられ得る。
【0071】
条項1.
蒸発されるべき材料を保持するための平底るつぼであって、上記平底るつぼは、蒸発されるべき材料を保持するための内部領域を画定する矩形体を含み、上記矩形体は、蒸発した材料を逃がすことができる開口部を有し、上記矩形体は、蒸発表面積を画定する長さ寸法および幅寸法を有する、平底るつぼと、
矩形体と流体結合される蒸発器本体であって、ノズルの複数の線形アレイを有する上面を含み、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有し、開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、蒸発表面積はノズル開口部表面積より大きい、蒸発器本体と、を備える、蒸発アセンブリ。
【0072】
条項2.
蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である、条項1に記載の蒸発アセンブリ。
【0073】
条項3.
蒸発器本体の上面は平面である、条項1または条項2に記載の蒸発アセンブリ。
【0074】
条項4.
蒸発器本体の上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、条項1から3のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0075】
条項5.
蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、条項4に記載の蒸発アセンブリ。
【0076】
条項6.
蒸発器本体は、複数のバッフル板を有するバッフル領域であって、各々のバッフル板は蒸発器本体の第1の側壁から蒸発器本体の第2の側壁まで延在するバッフル領域を含み、第1の側壁は第2の側壁の反対側にある、条項1から5のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0077】
条項7.
蒸発器本体は、バッフル領域より下に設置されたヒータ領域をさらに含み、ヒータ領域は複数の管状ヒータを含み、蒸発器本体は、矩形体における開口部に対応する開口部を画定する底面を有する、条項6に記載の蒸発アセンブリ。
【0078】
条項8.
矩形体を別々の区画に分割する複数のバッフルをさらに備える、条項7に記載の蒸発アセンブリ。
【0079】
条項9.
各々のバッフルは、矩形体の底面から開口部を通って隣接する管状ヒータ間のヒータ領域へと延在する、条項8に記載の蒸発アセンブリ。
【0080】
条項10.
別々の区画の各々の区画は、ノズルの複数の線形アレイのうちのノズルの線形アレイに対応する、条項8または条項9に記載の蒸発アセンブリ。
【0081】
条項11.
蒸発器本体と熱接触する熱源をさらに備える、条項1から10のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0082】
条項12.
蒸発されるべき材料を保持するための平底るつぼであって、上記平底るつぼは、
ある長さおよび幅寸法を有する矩形体を含み、上記矩形体は、
蒸発した材料を逃がすことができる開口部を有する上面であって、上記矩形体は、蒸発表面積を画定する長さ寸法および幅寸法を有する、上面、
上面の反対側の底面、
底面から上方にかつ底面に垂直に延在する第1の対の対向する側壁、および
底面から上方にかつ底面に垂直に延在する第2の対の対向する側壁、を含み、底面、第1の対の対向する側壁、および第2の対の対向する側壁は、蒸発されるべき材料を保持するための内部領域を画定する、平底るつぼと、
矩形体と流体結合しかつある長さおよび幅寸法を有する蒸発器本体であって、上記蒸発器本体は、
複数の加熱ロッドが設置されているヒータ領域、および
ヒータ領域より上に設置されたバッフル領域を含み、上記バッフル領域は、
蒸発した材料を放出するためのノズルの複数の線形アレイであって、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有する、ノズルの複数の線形アレイを含み、開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、蒸発表面積はノズル開口部表面積より大きい、蒸発器本体と、を備える、蒸発アセンブリ。
【0083】
条項13.
蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である、条項12に記載の蒸発アセンブリ。
【0084】
条項14.
蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は約50:1より大きい、条項12または条項13に記載の蒸発アセンブリ。
【0085】
条項15.
蒸発器本体の上面は平面である、条項12から14のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0086】
条項16.
蒸発器本体の上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、条項12から15のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0087】
条項17.
蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、条項16に記載の蒸発アセンブリ。
【0088】
条項18.
矩形体の長さ寸法に沿って延在し、かつ矩形体を別々の区画に分割する複数のバッフルをさらに備える、条項12から17のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0089】
条項19.各々のバッフルは、矩形体の底面から開口部を通って隣接する管状ヒータ間のヒータ領域へと延在する、条項18に記載の蒸発アセンブリ。
【0090】
条項20.
別々の区画の各々の区画は、ノズルの複数の線形アレイのうちのノズルの線形アレイに対応する、条項18または条項19に記載の蒸発アセンブリ。
【0091】
条項21.
蒸発器本体と熱接触する熱源をさらに備える、条項12から20のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0092】
条項22.
各々のバッフル板は複数の貫通孔を有する、条項12から21のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0093】
条項23.
矩形体と熱接触する熱源をさらに備える、条項12から22のいずれか一項に記載の蒸発アセンブリ。
【0094】
条項24.
ある長さおよび幅寸法を有する蒸発器本体を備え、上記蒸発器本体は、
複数の加熱ロッドが設置されているヒータ領域、
ヒータ領域より上に設置されたバッフル領域であって、蒸発した材料を放出するためのノズルの複数の線形アレイであって、各々のノズルはある直径によって画定される開口部を有するノズルの複数の線形アレイを含む、バッフル領域、および
ヒータ領域より下に設置されたるつぼ領域であって、蒸発されるべき材料を保持するように設計される、るつぼ領域を含み、長さ寸法および幅寸法は蒸発表面積を画定し、開口部の総面積はノズル開口部表面積を画定し、蒸発表面積はノズル開口部表面積より大きい、熱蒸発器。
【0095】
条項25.
蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は、約100~約330である、条項24に記載の熱蒸発器。
【0096】
条項26.
蒸発表面積対ノズル開口部表面積の面積比は約50:1より大きい、条項24または条項25に記載の熱蒸発器。
【0097】
条項27.
蒸発器本体の上面は平面である、条項24から26のいずれか一項に記載の熱蒸発器。
【0098】
条項28.
蒸発器本体の上面は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、条項24から27のいずれか一項に記載の熱蒸発器。
【0099】
条項29.
蒸発器本体の対向する側壁は長手方向の溝を画定するジグザグパターンを有する、条項28に記載の熱蒸発器。
【0100】
条項30.
蒸発器本体の長さ寸法に沿って延在し、かつ蒸発器本体を別々の区画に分割する複数のバッフルをさらに備える、条項24から29のいずれか一項に記載の熱蒸発器。
【0101】
条項31.
各々のバッフルは、矩形体の底面から開口部を通って隣接する管状ヒータ間のヒータ領域へと延在する、条項30に記載の熱蒸発器。
【0102】
条項32.
別々の区画の各々の区画は、ノズルの複数の線形アレイのうちのノズルの線形アレイに対応する、条項30または条項31に記載の熱蒸発器。
【0103】
条項33.
蒸発器本体と熱接触する熱源をさらに備える、条項24から32のいずれか一項に記載の熱蒸発器。
【0104】
条項34.
各々のバッフル板は複数の貫通孔を有する、条項24から33のいずれか一項に記載の熱蒸発器。
【0105】
本開示または例示的な態様またはこれらの実施形態の要素を導入するときに、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」および「前記(said)」は、要素のうちの1つまたは複数があることを意味することが意図されている。
【0106】
「備える(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」という用語は、網羅的であり、列挙した要素以外に追加の要素があり得ることを意味することが意図されている。
【0107】
前述は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の他のおよびさらなる実施形態が本開示の基本的な範囲から逸脱せずに考案されてよく、本開示の範囲は、別記の特許請求の範囲により決定される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【国際調査報告】