(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】全固体二次電池用負極層及びそれを含む全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20240822BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240822BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240822BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240822BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240822BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/36 D
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508529
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 KR2022011813
(87)【国際公開番号】W WO2023018162
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0105107
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジン・フン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ギュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン・チェ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】サン・イル・ハン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM12
5H029BJ12
5H029DJ08
5H029DJ16
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5H029DJ18
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
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5H029HJ13
5H050AA02
5H050AA08
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5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
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5H050CA11
5H050CB11
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5H050DA11
5H050EA10
5H050EA23
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5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA12
5H050HA13
(57)【要約】
負極集電体及び炭素系材料を含む第1負極活物質層を含む全固体二次電池用負極層であり、炭素系材料は、非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合物を含み、非晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、1.5以上であり、結晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、0.5超過1.5未満を満足する、全固体二次電池用負極層、及びそれを含む全固体二次電池が提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体及び炭素系材料を含む第1負極活物質層を含む全固体二次電池用負極層であり、
前記炭素系材料は、非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合物を含み、
前記非晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、1.5以上であり、結晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、0.5超過1.5未満を満足する、全固体二次電池用負極層。
【請求項2】
前記非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合重量比は、1:0.05ないし1:2.5である、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項3】
前記第1負極活物質層は、金属、半金属またはその組合わせをさらに含み、
前記金属、半金属またはその組合わせは、銀、白金、亜鉛、シリコン、錫、鉄、銅、アルミニウム、インジウム、ビズマスまたはその組合わせを含む、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項4】
前記金属、半金属またはその組合わせの含量は、第1負極活物質層の総重量100重量部を基準として1~40重量%であり、
前記炭素系材料の含量は、60~99重量%である、請求項3に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項5】
前記非晶質カーボンブラックの1次粒子サイズは、15nm~60nmであり、比表面積は、15~1500m
2/gであり、c軸方向の結晶子サイズLcが3.0nm以下であり、炭素層間間隔(d
002)は、0.350nm~0.370nmであり、
前記結晶質カーボンブラックの1次粒子サイズは、15nm~60nmであり、比表面積は、15~500m
2/gであり、c軸方向の結晶子サイズLcが2.0nm~10.0nmであり、炭素層間間隔(d
002)は、0.335nm~0.357nmである、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項6】
前記非晶質カーボンブラックのDピーク/Gピーク強度比は、1.6~4.0であり、結晶質カーボンブラックのDピーク/Gピーク強度比は、0.8~1.5である、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項7】
前記負極集電体と第1負極活物質層との間にリチウム金属またはリチウム合金薄膜をさらに含む、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項8】
前記負極集電体と第1負極活物質層との間に金属または半金属薄膜がさらに含まれる、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項9】
前記金属または半金属薄膜は、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、錫(Sn)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、またはその組合わせを含み、
前記金属または半金属薄膜の厚さは、1~800nmである、請求項8に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項10】
前記負極層は、第2負極活物質層をさらに含み、
前記第2負極活物質層は、リチウムと合金を形成する金属、半金属元素またはその組合物を含み、前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項11】
前記第1負極活物質層は、バインダを含み、
前記バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)、カルボキシメチルセルロースまたはその組合わせである、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項12】
正極層;負極層;前記正極層及び負極層の間に配置された固体電解質層を含む全固体二次電池であり、
前記負極層は、請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載の負極層である、全固体二次電池。
【請求項13】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記第1負極活物質層の上部、前記負極集電体と第1負極活物質層のうち1層以上に第2負極活物質層が配置され、前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む、請求項12に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記負極集電体と前記負極活物質層及びそれらの間の領域は、前記全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である、請求項12に記載の全固体二次電池。
【請求項15】
前記全固体二次電池は、充電の間、または充電後の負極集電体と負極活物質との間にリチウム析出層を含む、請求項12に記載の全固体二次電池。
【請求項16】
前記固体電解質層は、硫化物系固体電解質を含む、請求項12に記載の全固体二次電池。
【請求項17】
前記硫化物系固体電解質は、Li
2S-P
2S
5、Li
2S-P
2S
5-LiX(Xは、ハロゲン元素)、Li
2S-P
2S
5-Li
2O、Li
2S-P
2S
5-Li
2O-LiI、Li
2S-SiS
2、Li
2S-SiS
2-LiI、Li
2S-SiS
2-LiBr、Li
2S-SiS
2-LiCl、Li
2S-SiS
2-B
2S
3-LiI、Li
2S-SiS
2-P
2S
5-LiI、Li
2S-B
2S
3、Li
2S-P
2S
5-Z
mS
n(m、nは、正の数、Zは、Ge、Znまたは、Gaのうち1つ)、Li
2S-GeS
2、Li
2S-SiS
2-Li
3PO
4、Li
2S-SiS
2-Li
pMO
q(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち1つ)、Li
7-xPS
6-xCl
x、0≦x≦2、Li
7-xPS
6-xBr
x、0≦x≦2、及びLi
7-xPS
6-xI
x、0≦x≦2のうち、選択された1つ以上である、請求項16に記載の全固体二次電池。
【請求項18】
前記硫化物系固体電解質がLi
6PS
5Cl、Li
6PS
5Br及びLi
6PS
5Iのうちから選択された1つ以上を含むアルギロダイト型の固体電解質である、請求項12に記載の全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求によってエネルギー密度と安全性の高い電池の開発が活発になされている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器、通信機器分野だけではなく、自動車分野でも実用化されている。自動車分野においては、生命に係るものであって、特に安全が重要視されている。
【0003】
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性有機溶媒を含めて電解液が用いられているので、短絡が発生した場合、過熱及び火災可能性がある。これに対して、電解液の代りに、固体電解質を用いた全固体電池が提案されている。
【0004】
全固体電池は、可燃性有機溶媒を使用しないことにより、短絡が発生しても、火災や爆発が発生する可能性を大きく減らしうる。したがって、そのような全固体電池は、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べて、大きく安全性を高めることができる。
【0005】
全固体電池の負極層の製造時、ケッチェンブラックまたはデンカブラックのような炭素系材料を用いることができる。ところで、そのような炭素系材料を用いる場合、極板の不均一性によって局所的にデンドライトが成長して短絡の発生が頻繁で出力特性が低下し、それに対する改善が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題点を解決して極板の均一性に優れ、短絡の発生が減少した全固体二次電池用負極層を提供することである。
【0007】
また、本発明が解決しようとする課題は、上述した負極層を備えて高いエネルギー密度及び出力特性が改善された全固体二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面によって、負極集電体及び炭素系材料を含む第1負極活物質層を含む全固体二次電池用負極層であり、前記炭素系材料は、非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合物を含み、前記非晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、1.5以上であり、結晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、0.5超過1.5未満を満足する全固体二次電池用負極層が提供される。
【0009】
前記非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合重量比は、1:0.05ないし1:2.5である。
【0010】
他の側面によって正極層;負極層;前記正極層及び負極層の間に配置された固体電解質層を含む全固体二次電池であり、
前記負極層は、上述した負極層である全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0011】
一側面による全固体二次電池は、炭素系材料を含む負極層を採用して短絡の発生が抑制されて出力特性が改善され、高いエネルギー密度を具現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】一具現例による負極層の製造時に用いられた非晶質カーボンブラックであるカーボンA及びカーボンDのラマン分析結果を示す図面である。
【
図1B】一具現例による負極層の製造時に用いられた非晶質カーボンブラックであるカーボンA及びカーボンDのラマン分析結果を示す図面である。
【
図1C】一具現例による負極層の製造時に用いられた結晶質カーボンブラックであるカーボンK及びカーボンJのラマン分析結果を示す図面である。
【
図1D】一具現例による負極層の製造時に用いられた結晶質カーボンブラックであるカーボンK及びカーボンJのラマン分析結果を示す図面である。
【
図2】一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
【
図3】他の一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
【
図4】さらに他の一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一具現例による全固体二次電池用負極層、及びそれを含む全固体二次電池、並びにその製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0014】
全固体電池の負極層の製造時、ケッチェンブラックのような非晶質炭素を用いる。非晶質炭素は、リチウムイオンの移動を円滑にし、緩衝剤のような役割を行うが、極板の不均一性によって局所的にデンドライトが成長して短絡の確率が高くなる。そして、負極層の製造時、デンカブラックのような結晶質炭素を用いる場合、結晶性が高く、極板の均一性と物理的特性は優秀であるが、リチウムイオンの移動が困難であり、出力特性が非常に低下しうる。
【0015】
本発明者は、上述した問題点を解決して短絡の発生確率が減少しつつ、出力特性が向上した全固体二次電池を製造するために、負極層の製造時、負極活物質層の形成時に、非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合物を用いる。
【0016】
一具現例による全固体二次電池用負極層は、負極集電体及び炭素系材料を含む第1負極活物質層を含み、前記炭素系材料は、非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合物を含む。前記非晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、1.5以上であり、結晶質カーボンブラックのラマン分析によって求められるDピーク/Gピーク強度比(intensity ratio)は、0.5超過1.5未満である。前記非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合重量比は、1:0.05ないし1:2.5である。
【0017】
非晶質カーボンブラックのD/G強度比は、例えば、1.6~4.0、1.61~3.5、1.62~3.0、または1.65~2.82である。
【0018】
結晶質カーボンブラックのD/G強度比は、0.8~1.5、0.9~1.3、1.0~1.2、または1.07~1.13であり、もしD/G強度比が前記範囲を外れると、結晶性が高く、非可逆的に充/放電され、析出型負極の役割を遂行し難い。
【0019】
カーボンブラックは、ラマン分析スぺクトルにおいて波数1350cm-1、1580cm-1、2700cm-1でピークを示す。そのようなピークは、カーボンブラックの厚さ、結晶性及び電荷ドーピング状態に係わる情報を与える。波数1580cm-1で示されるピークは、Gモードというピークであって、これは、炭素-炭素結合のストレッチングに該当する振動モードに起因し、Gモードのエネルギーは、グラフェンにドーピングされた余剰電荷の密度によって決定される。そして、波数2700cm-1で示されるピークは、2Dモードというピークであって、カーボンブラックの厚さ評価時に有用である。前記1350cm-1から出るピークは、Dモードというピークであって、SP2結晶構造に欠陥があるときに示されるピークである。そして、前記D/G強度比は、カーボンブラックの結晶の無秩序度に係わる情報を与える。
【0020】
前記非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合重量比は、1:0.05ないし1:2.5である。非晶質カーボンブラックの含量が前記範囲であるとき、短絡の発生が減少しつつ出力特性が改善された全固体二次電池を製造することができる。
【0021】
前記非晶質カーボンブラックの1次粒子サイズは、15nm~60nm、例えば、30~50nmであり、比表面積は、15~1500m2/g、20~500m2/gまたは30~200m2/gであり、c軸方向の結晶子サイズであるLcが3.0nm以下または1.0~2.5nmであり、炭素層間の間隔(d-spacing)(d002)は、0.350nm~0.370nmである。本明細書において、c軸方向の結晶子サイズであるLc及び炭素層間の間隔は、Cu-Kα特性X線回折(波長:約1.54Å)分析を用いて測定することができる。
【0022】
前記結晶質カーボンブラックの1次粒子サイズは、15nm~60nm、または35~55nmであり、比表面積は、15~500m2/g、20~500m2/gまたは30~200m2/gであり、Lcが2.0nm~10.00nmまたは1.0~5.0nmであり、炭素層間の間隔(d002)は、0.335nm~0.357nmである。
【0023】
本明細書で粒子が球状である場合、「大きさ」は、平均粒径を示し、非球状である場合、長軸長を示す。粒子サイズは、電子走査顕微鏡または粒子サイズ分析機を用いて測定可能である。粒子サイズ分析機としては、例えば、HORIBA, LA-950 laser particle size analyzerが挙げられる。
【0024】
粒子サイズ分析機を用いて粒子サイズを測定する場合、平均粒径はD50を称する。D50は、粒度分布で、累積体積が50体積%に該当する粒子の平均直径を意味し、粒子サイズが最も小さな粒子から最大粒子順に累積させた分布曲線において、全体粒子個数を100%としたとき、最も小さな粒子から50%に該当する粒径の値を意味する。
【0025】
一具現例による非晶質カーボンブラック及び結晶質カーボンブラックのD/G強度比及びBETは、下記表1の通りである。
【0026】
【0027】
一具現例による全固体二次電池において負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記負極集電体と前記負極活物質層及びそれらの間の領域は、前記全固体二次電池の初期状態または放電後状態においてリチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。一具現例による全固体二次電池は、充電の間、または充電後、負極集電体と負極活物質との間にリチウム析出層を含みうる。
【0028】
他の側面によって、上述した負極層を備えた全固体二次電池が提供される。
【0029】
図2を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10;負極層20;及び正極層10と負極層20との間に配置された固体電解質を含む固体電解質層30;を含む。
【0030】
正極層10は、正極集電体11及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12を含み、負極層20が負極集電体21及び負極集電体上に配置されて一具現例による第1負極活物質層22を含む。
【0031】
前記第1負極活物質層22は、金属、半金属またはその組合わせをさらに含みうる。前記金属、半金属またはその組合わせは、例えば、銀、白金、亜鉛、シリコン、錫、鉄、銅、アルミニウム、インジウム、ビズマスまたはその組合わせを含む。
【0032】
前記金属、半金属またはその組合わせの含量は、第1負極活物質層の総重量100重量部を基準として1~40重量部であり、炭素系材料の含量は、60~99重量部である。金属、半金属またはその組合わせの含量は、例えば、1ないし30重量部、2ないし20重量部、または3ないし15重量部である。前記第1負極活物質層で金属、半金属またはその組合わせの含量が前記範囲であるとき、サイクル特性及び出力特性が改善されて高いエネルギー密度を有する全固体二次電池を製造することができる。
【0033】
第1負極活物質層22の厚さは、1~20μm、例えば、1~10μm、例えば、2~8μm、例えば、4~6μmである。
【0034】
前記負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウム金属またはリチウム合金薄膜をさらに含む。そして、前記負極集電体21と第1負極活物質層22との間に金属または半金属薄膜がさらに含まれる。前記金属または半金属薄膜は、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、錫(Sn)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、またはその組合物を含み、前記金属または半金属薄膜の厚さは、1~800nm、2~500nm、5~100nm、または10~30nmである。
【0035】
前記第1負極活物質層22は、多孔性構造を有する。第1負極活物質層22の気孔度は、30%以下、例えば、5~25%である。第1負極活物質層22の気孔度が前記範囲であるとき、デンドライトが正極活物質層側まで成長することを効果的に抑制してデンドライトによる短絡の発生を抑制し、高電圧、高容量及び寿命特性に優れた全固体二次電池を製造することができる。
【0036】
固体電解質層30と負極集電体21との界面で金属リチウムの析出点になって金属リチウムが析出されうる。析出されたリチウムは、固体電解質層30の空隙を介して正極活物質層12側にデンドライトが成長して全固体二次電池1の短絡が発生しうる。
【0037】
しかし、第1負極活物質層の気孔度が前記範囲であるとき、デンドライトが正極活物質層側まで成長することを効果的に抑制してデンドライトによる短絡の発生を抑制し、高電圧、高容量及び寿命特性に優れた全固体二次電池を製造することができる。
【0038】
本明細書において気孔度は、水銀気孔率測定法または電子走査顕微鏡(SEM)などを通じて確認することができる。水銀気孔率測定器を通じて測定する方法は、水銀をサンプルに投入させながら、投入された水銀の量を測定して気孔サイズ及び気孔分布を計算するものである。
【0039】
一具現例による負極層は、第2負極活物質層をさらに含みうる。第2負極活物質層は、第1負極活物質層の上部、前記負極集電体と第1負極活物質層のうち1層以上に配置されうる。第2負極活物質層は、リチウムと合金を形成する金属、半金属元素またはその組合物を含みうる。
【0040】
リチウムと合金を形成する金属、半金属元素としては、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む。
【0041】
第2負極活物質層は、例えば、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層でもある。
【0042】
一具現例によれば、前記第2負極活物質層の表面は、フッ化リチウム(LiF)を含みうる。
【0043】
第2負極活物質層は、全固体二次電池の初期状態または放電後において、リチウム金属またはリチウム合金を含まないリチウムフリー領域でもある。充電する前に、負極層は、負極集電体、金属または半金属膜及び第1負極活物質層を含む構造を有する。そのような負極層を充電した後、第1負極活物質層の上部に第2負極活物質層が形成されうる。第2負極活物質層は、非多孔性でもある。
【0044】
前記第1負極活物質層と固体電解質層との間にカーボン層がさらに含まれる。カーボン層は、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、炭素ナノチューブ、グラフェン、またはその組合わせを用いて形成する。このようにカーボン層を形成すれば、第1負極活物質層と固体電解質層との間の抵抗を低めてリチウムデンドライトを抑制しうる。したがって、カーボン層がさらに形成された負極層を備えた全固体二次電池は、カーボン層が形成されていない負極層を備えた全固体二次電池と比べて、寿命特性がさらに改善しうる。
【0045】
一具現例による全固体二次電池の製造方法を説明する。
【0046】
まず、負極集電体と第1負極活物質層とを含む負極層を提供する。
【0047】
これと別途に正極層を提供する。
【0048】
前記負極層と正極層との間に固体電解質層を提供して積層体を準備した後、前記積層体を加圧(press)する段階を含む。
【0049】
固体電解質層は、固体電解質、バインダ及び溶媒を含む組成物を25℃~80℃で乾燥させて製造される。組成物の粘度は、200cP~10,000cP程度に制御する。そのような粘度を有する組成物を用いて固体電解質層を形成すれば、負極層との界面結着に優れた固体電解質層を製造することができる。
【0050】
一具現例によれば、乾燥は、25~75℃に制御された対流(convection)オーブンで実施しうる。
【0051】
他の一具現例によれば、乾燥は、多段階で実施し、例えば、2段階によって実施しうる。乾燥は、25~70℃で1次乾燥を実施した後、30~75℃で2次乾燥を実施する。1次乾燥は、2次乾燥より高い温度で実施するとき、負極層と固体電解質層との界面特性が改善される。
【0052】
前記乾燥時間は、30分~24時間、1時間ないし20時間または、時間ないし15時間である。
【0053】
前記積層体の加圧時、加圧(roll press)、平板加圧(flat press)、ホットプレス(hot press)、静水圧プレス(warm isostatic press: WIP)などによって実施され、例えば、静水圧プレスが用いられる。
【0054】
加圧は、常温(20-25℃)ないし90℃の温度で遂行される。また、加圧が100℃以上の高温で遂行される。加圧が加えられる時間は、例えば、30分以下、20分以下、15分以下、または10分以下である。加圧が加えられる時間は、1ms~30分、1ms~20分、1ms~15分、または1ms~10分である。加圧方法としては、例えば、静水圧加圧(isotactic press)、ロール加圧(roll press)、平板加圧(flat press)などであるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で使用する加圧であれば、いずれも使用可能である。そのような加圧によって、例えば、固体電解質粉末が焼結されて1つの固体電解質層を形成する。
【0055】
加圧時間は、温度及び圧力によって異なるが、例えば、30分未満、または20分未満である。
【0056】
加圧を実施した後、正極活物質層の厚さは、約100~150μmであり、負極活物質層の厚さは、10~15μmであり、固体電解質層の厚さは、100~150μmである。
【0057】
一具現例によれば、加圧は、WIPによって実施され、圧力は、200~600MPa、300~550MPa、350~520MPa、380~500MPa、または400~500MPaである。
【0058】
加圧時、温度は、60℃~90℃、65℃~88℃、70~85℃、または75~85℃で実施される。そして、加圧時間は、加圧時、温度及び圧力によって異なり、10分~6時間、15分~5時間、20分~3時間、20分~2時間、または30分~1時間である。
【0059】
上述した全固体二次電池の製造方法は、量産可能であり、容易に積層した後で加圧するとき、前記電極層と固体電解質層との間に緊密な界面を形成することができる。また、前記全固体二次電池の作製方法は、正極層と固体電解質層との界面抵抗を減少させつつ、同時に率特性及び寿命特性のような電池性能が向上しうる。
【0060】
全固体二次電池で負極層は、第1負極活物質、バインダ及び溶媒を含む組成物をコーティング及び乾燥させて製造される。
【0061】
バインダとして、水系バインダ、有機系バインダまたはその組合わせを使用することができる。バインダは、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリレーテッドスチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンまたはその組合わせを用いることができる。
【0062】
水系バインダとして、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその組合わせを使用することができる。水系バインダを使用する場合には、溶媒として水を用いる。
【0063】
有機系バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、またはその混合物を利用し、そのような有機系バインダを使用する場合には、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)などを使用する。
【0064】
一具現例による全固体二次電池において、負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記第1負極活物質層の上部、前記負極集電体と第1負極活物質層のうち1層以上に第2負極活物質層が配置され、前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含みうる。
【0065】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記負極集電体と前記第1負極活物質層及びそれらの間の領域は、前記全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。そして、前記全固体二次電池は、充電の間、または充電後、負極集電体と第1負極活物質層との間にリチウム析出層を含む。
【0066】
以下、例示的な具現例による全固体二次電池についてさらに詳細に説明する。
【0067】
[全固体二次電池]
図2を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10;負極層20;及び正極層10と前記負極層20との間に配置された固体電解質層30;を含む。正極層10が正極集電体11及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12を含み、負極層20が負極集電体21及び負極集電体上に配置されて一具現例による第1負極活物質層22を含む。
【0068】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。
【0069】
[正極層:正極活物質]
正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似しているか、異なってもいる。固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30の説明部分を参照する。
【0070】
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)することができる正極活物質である。正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(Lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)などのリチウム遷移金属酸化物、硫化ニッケル、硫化銅、硫化リチウム、酸化鉄、または酸化バナジウム(vanadium oxide)などであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で正極活物質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。正極活物質は、それぞれ単独または2種以上の混合物である。
【0071】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiaA1-bBbD2(前記式において、0.90≦a≦1,及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bBbO2-cDc(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiE2-bBbO4-cDc(前記式において、0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobBcDα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αFα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αF2(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcDα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αFα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αF2(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiIO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦ 2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のうちいずれか1つで表現される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組合わせであり、Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組合わせであり、Fは、F、S、P、またはそれらの組合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組合わせであり、Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組合わせである。そのような化合物表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、上述した化合物とコーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはそれらの混合物である。コーティング層形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレイコーティング、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当業者によく理解される内容なので、詳細な説明は省略する。
【0072】
正極活物質は、例えば、上述したリチウム遷移金属酸化物のうち、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に酸素原子層と金属原子層とが互いに規則的に配列し、これにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(face centered cubic lattice, fcc)が互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2だけずれて配置された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNixCoyAlzO2(NCA)またはLiNixCoyMnzO2(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)などの三元系リチウム遷移金属酸化物である。正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー(energy)密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0073】
正極活物質は、上述したように被覆層によって覆われてもいる。被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層と公知されたものであれば、いずれも使用可能である。被覆層は、例えば、Li2O-ZrO2(LZO)などである。
【0074】
正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMなどの三元系リチウム遷移金属酸化物であり、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させて充電状態で正極活物質の金属溶出の減少が可能である。結果的に、全固体二次電池1の充電状態でのサイクル(cycle)特性が向上する。
【0075】
正極活物質の形状は、例えば、真球、楕円球などの粒子形状である。正極活物質の粒径は、特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲てある。正極10の正極活物質の含量も特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極に適用可能な範囲である。
【0076】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質を含みうる。正極層10が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質と同一であるか、異なってもいる。固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照する。
【0077】
正極活物質層12が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質に比べて、D50平均粒径が小さい。例えば、正極活物質層12が含む固体電解質のD50平均粒径は、固体電解質層30が含む固体電解質のD50平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下でもある。
【0078】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12は、バインダを含みうる。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などである。
【0079】
[正極層:導電材]
正極活物質層12は、導電材を含みうる。導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素繊維、金属粉末などである。
【0080】
[正極層:その他添加剤]
正極層10は、上述した正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラー(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などの添加剤をさらに含みうる。
【0081】
正極層10が含むフィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般的に全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0082】
[固体電解質層]
固体電解質は、硫化物系固体電解質でもある。
【0083】
[固体電解質層:硫化物系固体電解質]
図2ないし
図4を参照すれば、固体電解質層30は、正極10及び負極層20の間に配置された硫化物系固体電解質を含む。
【0084】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S-P2S5,Li2S-P2S5-LiX(Xは、ハロゲン元素)、Li2S-P2S5-Li2O,Li2S-P2S5-Li2O-LiI,Li2S-SiS2,Li2S-SiS2-LiI,Li2S-SiS2-LiBr,Li2S-SiS2-LiCl,Li2S-SiS2-B2S3-LiI,Li2S-SiS2-P2S5-LiI,Li2S-B2S3,Li2S-P2S5-ZmSn(m,nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち1つ)、Li2S-GeS2,Li2S-SiS2-Li3PO4,Li2S-SiS2-LipMOq(p,qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga及びInのうち1つ)、 Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2),Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうち、選択された1つ以上である。硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S、P2S5などの出発原料を溶融急冷法や機械的ミーリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を遂行することができる。固体電解質は、非晶質、結晶質、またはそれらが混合された状態でもある。また、固体電解質は、例えば、上述した硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含んでもよい。例えば、固体電解質は、Li2S-P2S5を含む材料でもある。硫化物系固体電解質材料としてLi2S-P2S5を用いる場合、Li2SとP2S5との混合モル比は、例えば、50:50ないし90:10である。
【0085】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうち、選択された1つ以上を含むアルジロダイト型(Argyrodite-type)の化合物でもある。特に、硫化物系固体電解質は、Li6PS5Cl、Li6PS5Br及びLi6PS5Iのうち、選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の化合物でもある。
【0086】
アルジロダイト型の固体電解質の密度が1.5ないし2.0g/ccでもある。アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が減少し、Liによる固体電解質の貫通(penetration)を効果的に抑制しうる。
【0087】
前記固体電解質の弾性係数は、例えば、15~35GPaである。
【0088】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダを含みうる。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであるが、それに限定されず、当該技術分野においてバインダとして使用するものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12と第1負極活物質層22が含むバインダと同一であるか、類似している。
【0089】
[負極層]
[負極層の構造]
第1負極活物質層22の厚さは、例えば、正極活物質層の厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層の厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~10μm、または3μm~7μmである。第1負極活物質層の厚さが過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。負極活物質層の厚さが過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層による全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上しにくい。
【0090】
第1負極活物質層の厚さが減少すれば、例えば、第1負極活物質層の充電容量も減少する。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または2%以下である。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、0.1%~50%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、0.1%~10%、0.1%~5%、または、0.1%~2%である。第1負極活物質層22の充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22の厚さが非常に薄くなるので、繰り返される充放電過程で第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させて全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0091】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に正極活物質層12のうち、正極活物質の質量を乗算して得られる。正極活物質が多様に使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22の充電容量も同じ方法で計算される。すなわち、第1負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に第1負極活物質層22のうち、負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が多様に使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総和が第1負極活物質層22の容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体ハーフセル(Half-cell)を用いて推定された容量である。全固体ハーフセル(Half-cell)を用いた充電容量測定によって正極活物質層12と第1負極活物質層22の充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。また、正極活物質層12と第1負極活物質層22との充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0092】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料からなる。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で電極集電体として使用するものであれば、いずれも使用可能である。負極集電体の厚さは、1~20μm、例えば、5~15μm、例えば、7~10μmである。
【0093】
負極集電体21は、上述した金属のうち1種で構成されるか、2種以上の金属の合金または被覆材料からなる。負極集電体21は、例えば、板状または箔状(foil)である。
【0094】
図3を参照すれば、全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21上にリチウムと合金を形成する元素を含む薄膜24をさらに含む。薄膜24は、負極集電体21と前記第1負極活物質層22との間に配置される。
【0095】
薄膜24は、例えば、リチウムと合金を形成する元素を含む。リチウムと合金を形成する元素は、例えば、金、銀、亜鉛、錫、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビズマスなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野でリチウムと合金を形成する元素であれば、いずれも使用可能である。薄膜24は、それら金属のうち1つで構成されるか、様々な金属の合金で構成される。薄膜24が負極集電体21上に配置されることにより、例えば、薄膜24と第1負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層(図示せず)の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0096】
薄膜24の厚さは、例えば、1nm~800nm、10nm~700nm、50nm~600nm、または100nm~500nmである。薄膜の厚さが1nm未満になる場合、薄膜24による機能が発揮され難い。薄膜の厚さが過度に厚ければ、薄膜24自体がリチウムを吸蔵して、負極層においてリチウムの析出量が減少して全固体電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下しうる。薄膜24は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによって負極集電体21上に配置されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で薄膜24を形成することができる方法であれば、いずれも使用可能である。
【0097】
[負極層:負極活物質]
負極層20は、負極集電体21及び負極集電体上に配置された第1負極活物質層22を含む。第1負極活物質層22は、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
第1負極活物質層22で負極活物質が金属、半金属またはその組合わせを含む場合、負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下である。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nm~4μm、10nm~2μm、または、10nm~900nmである。負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時にリチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易である。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)直径(D50)である。
【0098】
第1負極
[負極層:バインダ]
第1負極活物質層22の含むバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野においてバインダとして使用するものであれば、いずれも使用可能である。バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダで構成されうる。
【0099】
第1負極活物質層22がバインダを含むことにより、第1負極活物質層22が負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程で第1負極活物質層22の体積変化及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、第1負極活物質層22のクラックが抑制される。例えば、第1負極活物質層22がバインダを含まない場合、第1負極活物質層22が負極集電体21から容易に分離可能である。負極集電体21から負極活物質層22が離脱することにより、負極集電体21が露出された部分で、負極集電体21が第2固体電解質層23と接触することにより、短絡の発生可能性が増加する。第1負極活物質層22は、例えば、第1負極活物質層22を構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21上に塗布し、乾燥させて作製される。バインダを第1負極活物質層22に含めることにより、スラリー中に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法でスラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの目詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による目詰まり)を抑制しうる。
【0100】
[負極層:その他添加剤]
第1負極活物質層22は、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などをさらに含みうる。
【0101】
[負極層:第1負極活物質層]
第1負極活物質層22aの厚さは、例えば、正極活物質層12の厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層22aの厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~10μm、または3μm~7μmである。第1負極活物質層22aの厚さが前記範囲であるとき、全固体二次電池1のサイクル特性に優れ、第1負極活物質層22aの充電容量に優れる。第1負極活物質層22aの充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、50%以下、30%以下、10%以下、5%以下、または2%以下である。第1負極活物質層22aの充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、0.1%~50%、0.1%~30%、0.1%~10%、0.1%~5%、または、0.1%~2%である。第1負極活物質層22aの充電容量が前記範囲であるとき、第1負極活物質層22aの厚さが適切な範囲以内に制御されて繰り返される充放電過程で全固体二次電池1のサイクル特性及びエネルギー密度が優秀である。
【0102】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、正極活物質層12のうち、正極活物質の質量を乗算して得られる。正極活物質が多様に使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度X質量値を計算し、その値の総和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22aの充電容量も同じ方法で計算される。すなわち、第1負極活物質層22aの充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、第1負極活物質層22aのうち、負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が多様に使用される場合、負極活物質ごとに充電容量X質量値を計算し、その値の総和が第1負極活物質層22aの容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体ハーフセル(Half-cell)を用いて推定された容量である。全固体ハーフセル(Half-cell)を用いた充電容量測定によって正極活物質層12と第1負極活物質層22aの充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。また、正極活物質層12と第1負極活物質層22aの充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0103】
[負極層:析出層]
図4を参照すれば、全固体二次電池1は、充電によって、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含む。図示されていないが、全固体二次電池1は、充電によって固体電解質層30と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含むか、単独で含む構成も可能である。
【0104】
第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。したがって、第2負極活物質層23は、リチウムを含む金属層なので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それに限定されず、当該技術分野からリチウム合金として使用するものであれば、いずれも使用可能である。第2負極活物質層23は、そのような合金中の1つまたはリチウムからなるか、多種の合金からなる。
【0105】
第2負極活物質層の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm~1000μm、1μm~500μm、1μm~200μm、1μm~150μm、1μm~100μm、または、1μm~50μmである。第2負極活物質層の厚さが過度に薄ければ、第2負極活物質層23によるリチウム貯蔵庫(reservoir)の役割を遂行しにくい。第2負極活物質層の厚さが過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増加し、サイクル特性が低下してしまう恐れがある。第2負極活物質層23は、例えば、そのような範囲の厚さを有する金属箔でもある。
【0106】
全固体二次電池1において第2負極活物質層23は、例えば、全固体二次電池1の組立て前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置されるか、全固体二次電池1の組立て後に充電によって負極集電体21と第1負極活物質層22との間に析出される。
【0107】
全固体二次電池1の組立て前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第2負極活物質層23が配置される場合、第2負極活物質層23がリチウムを含む金属層なので、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。第2負極活物質層23を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。例えば、全固体二次電池1の組立て前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウム箔が配置される。
【0108】
全固体二次電池1の組立て後に充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、全固体二次電池1の組立て時に、第2負極活物質層23を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増加する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超過して充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。すなわち、第1負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動してきたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超過して充電すれば、例えば、第1負極活物質層22の背面、すなわち、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムによって第2負極活物質層23に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層23は、主にリチウム(すなわち、金属リチウム)で構成される金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質がリチウムと合金または化合物を形成する物質で構成されることで得られる。放電の時には、第1負極活物質層22及び第2負極活物質層23、すなわち、金属層のリチウムがイオン化されて正極層10方向に移動する。したがって、全固体二次電池1でリチウムを負極活物質として使用しうる。また、第1負極活物質層22は、第2負極活物質層23を被覆するので、第2負極活物質層23、すなわち、金属層の保護層の役割を行うと共に、リチウムデンドライト(dendrite)の析出成長を抑制する役割を遂行する。したがって、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組立て後に、充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、負極集電体21と前記第1負極活物質層22及びそれらの間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0109】
一具現例による全固体二次電池は、中大型電池または電力保存装置(energy storage system: ESS)に適用可能である。
【0110】
以下実施例及び比較例を通じて本創意的思想をさらに具体的に説明する。但し、実施例は、本創意的思想を例示するためのものであって、それらだけに本創意的思想の範囲が限定されるものではない。
【0111】
製造例1
aLi2O-ZrO2コーティング膜を有する正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942に開示された方法によって製造するが、下記方法によって製造されたものを使用した。
【0112】
正極活物質LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2(NCM)、リチウムメトキシド、ジルコニウムプロポキシド、エチルアルコールと、アセト酢酸エチルの混合液において30分間撹拌及び混合して aLi2O-ZrO2(a=1)のアルコール溶液(aLi2O-ZrO2被覆用塗布液)を製造した。ここで、リチウムメトキシド及びジルコニウムプロポキシドの含量は、正極活物質の表面に被覆されるaLi2O-ZrO2(a=1)の含量は、0.5モル%になるように調節した。
【0113】
次いで、前記aLi2O-ZrO2被覆用塗布液を上述した正極活物質の微細粉末と混合し、その混合溶液を撹拌しながら、約40℃に加熱してアルコールなどの溶媒を蒸発乾燥させた。この際、混合溶液には超音波を照射した。
【0114】
前記過程を実施して正極活物質微細粉末の粒子表面にaLi2O-ZrO2の前駆体を担持することができた。
【0115】
また、正極活物質の粒子表面に担持された aLi2O-ZrO2(a=1)の前駆体を約350℃で1時間酸素雰囲気下に熱処理した。この熱処理過程で正極活物質の上部に存在するaLi2O-ZrO2(a=1)の前駆体がaLi2O-ZrO2(a=1)に変化した。Li2O-ZrO2(LZO)の含量は、NCM 100重量部を基準として約0.4重量部である。
【0116】
上述した製造過程によれば、aLi2O-ZrO2コーティング膜を有するLiNi0.9Co0.05Mn0.05O2(NCM)が得られた。aLi2O-ZrO2において、aは、1である。
【0117】
実施例1
(負極層製造)
負極集電体として厚さ10μmのSUS箔を準備した。
【0118】
また、非晶質カーボンブラック(1次粒子サイズ(平均粒径):38nm、BET比表面積:55m2/g、Lc:1.6、D/Gの強度比:2.81)、結晶質カーボンブラック(1次粒子サイズ(平均粒径):48nm、BET比表面積:39m2/g、Lc:2.9、D/Gの強度比:1.07)、負極活物質であるAgナノ粒子(平均粒径:約60nm)、水系バインダである2:1重量比の(styrene butadiene rubber)及びCMC(sodium carboxymethyl cellulose)を25:62.5:5:6:3重量比で混合して混合物を製造した。混合物において非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合重量比は、下記表1に記載されとように30:70重量比に制御した。前記SBR及びCMCは、溶媒水を用いてバインダ溶液を製造した。
【0119】
前記混合物をシンキー混合機で撹拌して適切な粘度で調節した。次いで、2mmジルコニアボールを添加し、シンキー混合機で撹拌してスラリーを製造した。撹拌したスラリーをSUSホイル(foil)上にコーティングした後、100℃で真空乾燥させして10μm厚さの負極層を製造した。
【0120】
(固体電解質層の製造)
アルジロダイト型固体電解質Li6PS5Clにバインダ溶液としてイソ酪酸イソブチル(isobutylyl isobutylate, IBIB)を投入して混合した。この際、前記混合物をシンキー混合機(Thinky mixer)で撹拌して適切な粘度に調節した。固体電解質とバインダとの混合重量比は、98.5:1.5である。混合物の粘度を2,000cPに調節した後、2mmの平均直径を有するジルコニアボールを添加し、シンキー混合機で再び撹拌してスラリーを製造した。前記スラリーを離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャスティングして常温(25℃)で乾燥させて固体電解質層を製造した。
【0121】
(正極層製造)
正極活物質として製造例1によって得たLi2O-ZrO2(LZO)コーティングされたLiNi0.9Co0.05Mn0.05O2(NCM)を準備した。固体電解質としてアルジロダイト(Argyrodite)型結晶体であるLi6PS5Cl固体電解質(D50=1μm以下、結晶質)を使用した。そして、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロン(登録商標)バインダ)を準備し、導電材である炭素ナノ繊維(CNF)を準備した。そのような材料を正極活物質:固体電解質:導電材:バインダ=85:15:3:1.5の重量比でキシレン(xylene)と混合した正極活物質組成物をシート状に成形した後、45℃で2時間真空乾燥させて約150μm厚さを有する正極層を製造した。
【0122】
(全固体二次電池の製造)
正極層と負極層との間に固体電解質層を配置して積層体を準備した。準備された積層体を80℃で500MPaの圧力で、WIPで60分間加圧して全固体二次電池を製造した。そのような加圧処理によって固体電解質層が焼結されて電池特性が向上する。焼結された固体電解質層の厚さは、約45μmであった。加圧された正極活物質層の厚さは、約120μmであり、負極活物質層の厚さは、12μmであり、固体電解質層の厚さは、120μmであり、混合層の厚さは、2μmであった。
【0123】
実施例2-6及び比較例1-2
全固体二次電池の負極層の製造時、負極素材の組成が下記表2に示されたように変化されるように制御したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施した。
【0124】
比較例3
負極層の製造時、黒鉛(TGS(BTR社)、D/G強度比が0.18、BET比表面積:15m/g未満)を用いたことを除き、実施例1と同じ方法によって実施して全固体二次電池を製造した。
【0125】
【0126】
評価例1:ラマン分析
実施例1の負極層の第1負極活物質層の製造時に使用された非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックのラマン分析を実施した。
【0127】
ラマン分析は、Raman 2010 Spectra (NT-MDT Development Co.) (Laser system: 473, 633, 785 nm, Lowest Raman shift:~50 cm-1-1、空間解像度(Spatial resolution):約500nm)を用いて実施した。
【0128】
炭素系材料は、ラマン分析スぺクトルにおいて1350cm-1、1580cm-1、2700cm-1でピークを示すが、該ピークは、カーボンブラックの厚さ、結晶性及び電荷ドーピング状態に係わる情報を与える。1580cm-1で示されるピークは、Gモードというピークであって、これは、炭素-炭素結合のストレッチングに該当する振動モードで起因し、Gモードのエネルギーは、カーボンブラックにドーピングされた余剰電荷の密度によって決定される。そして、2700cm-1で示されるピークは、2Dモードというピークであって、カーボンブラックの厚さ評価時に有用である。前記1350cm-1で示されるピークは、Dモードというピークであって、SP2結晶構造に欠陥があるときに示されるピークである。そして、前記D/G強度比は、カーボンブラック結晶の無秩序度に係わる情報を与える。
【0129】
図1A及び
図1Bは、それぞれ非晶質カーボンブラックであるカーボンA及びカーボンDのラマン分析結果を示し、
図1C及び
図1Dは、それぞれ結晶質カーボンブラックであるカーボンK及びカーボンJのラマン分析結果を示す。
【0130】
図1A及び
図1Bを参照して、非晶質カーボンブラックであるカーボンA及びカーボンDのD/Gの強度比は、2.81及び1.65である。そして、
図1C及び
図1Dを参照して、結晶質カーボンブラックであるカーボンK及びカーボンJのD/Gの強度比は、1.10及び1.13である。
【0131】
評価例2:1C放電容量
実施例1ないし6及び比較例1ないし3で製造した全固体二次電池に対して充放電を遂行して初期放電容量を評価した。電池寿命評価時、45℃で0.1C 4.25V CC/CV(0.05C cutoff)充電後、1C 2.5V CC放電条件で初期放電容量を下記方法によって評価した。
【0132】
充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0133】
電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で約10時間、そして、4.25Vにおいて定電圧で電流が0.05Cになるまで充電した後、10分休止(rest)時間を有し、その後、電池電圧が2.5Vになるまで1Cの定電流で約1時間の放電を実施した。その過程を経た後、1C初期放電容量を評価して下記表2に示した。
【0134】
評価例3:寿命
実施例1ないし6及び比較例1ないし3で製造した全固体二次電池に対して容量保持率を評価した。容量保持率の評価時、45℃で0.33C 4.25V CC/CV(0.1C cutoff)充電、0.33C 2.5V CC放電の条件で充放電を遂行した。初期容量と100回寿命評価後、初期容量に対する残存容量の比を下記表1に示した。その評価方法を具体的に説明すれば、次の通りである。
【0135】
実施例1ないし6及び比較例1ないし3で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0136】
電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した後、電池電圧が2.5Vになるまで0.1Cの定電流で放電を10時間実施した(第1サイクル)。
【0137】
次いで、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した後、電池電圧が2.5Vになるまで0.33Cの定電流で3時間の放電を実施した(第2サイクル)。
【0138】
その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した。引き続き、電池電圧が2.5Vになるまで0.5Cの定電流で2時間の放電を実施した(第3サイクル)。
【0139】
その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した。引き続き、電池電圧が2.5Vになるまで1Cの定電流で1時間の放電を実施した(第4サイクル)。
【0140】
その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.33Cの定電流で3時間充電した。引き続き、電池電圧が2.5Vになるまで0.33Cの定電流で3時間の放電を実施した(第5サイクル)。
【0141】
前記サイクルを総110回繰り返してサイクル数による容量変化及び容量保持率をそれぞれ評価し、USABC(United States Advanced Battery Consortium)規定によって容量が25%低下するサイクル数を測定した。
【0142】
評価例4:初期非可逆測定
下記表3において、初期非可逆容量は、Half-cellとして製造された全固体電池を0.05Cで20時間放電を進め、OCV(約2.5V)で電圧降下が始まり、~0mV地点に至れば発生する変曲点までの容量により決定されたものであって、初期非可逆容量は、下記式1によって決定したものである。
【0143】
[式1]
初期非可逆容量(%)=(0mV近所変曲地点までの容量/セル全体容量)X100
【0144】
【0145】
前記表3から1C-rate容量のNGは、100mAh/g未満を意味し、○は、100mAh/g以上を意味する。そして、寿命は、>100cycleまで容量維持率が25%未満に低くなれば、○を意味し、その他には、NGと表示する。そして、初期非可逆容量%でのNGは、10%以上であるとき、○は、10%以下であるときを示し、非可逆容量が10%である場合には、エネルギー密度が減少する。表3を参照して、実施例1ないし6の全固体二次電池は、比較例1及び2の全固体二次電池と比べて、1C放電容量が改善されるだけではなく、容量保持率及び初期非可逆容量特性が向上することを知り得た。
【0146】
比較例1の全固体二次電池は、実施例1の全固体二次電池に対して1C及び0.33C放電容量は優秀であるが、容量保持率及び初期非可逆容量が低下した結果を示した。そして、比較例2の全固体二次電池は、実施例1の全固体二次電池に対して容量保持率及び初期非可逆容量は良好であるが、1C及び0.33C放電容量は低下した結果を示した。これにより、負極層の製造時、非晶質カーボンブラックまたは結晶質カーボンブラック単独を使用した場合、非晶質カーボンブラックと結晶質カーボンブラックとの混合物を使用した場合に対して、上述した特性が低下した結果を示した。
【0147】
比較例3の全固体二次電池は、負極層の製造時、黒鉛のみを使用し、実施例1の場合に対して初期非可逆容量を除いた残りの特性が不良であった。そのような結果から、負極層の製造時、実施例1ないし6の負極層材料が優れた特性を示すということが分かる。
【0148】
以上、添付図面を参照して例示的な一具現例について詳細に説明したが、本創意的思想は、そのような例に限定されない。本創意的思想が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で各種の変更例または修正例を導出することができるということは自明であり、それらも本創意的思想の技術的範囲に属するということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0149】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極層
21 負極集電体
22 第1負極活物質層
23 第2負極活物質層
24 薄膜
30 固体電解質層
【国際調査報告】