(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07C 15/60 20060101AFI20240822BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240822BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20240822BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240822BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
C07C15/60 CSP
C09K11/06 690
C07D307/91
H10K85/60
H10K50/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508974
(86)(22)【出願日】2023-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2023007912
(87)【国際公開番号】W WO2023239193
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070957
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・クァン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンイル・パク
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ユン・イム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジュ・チェ
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC04
3K107CC21
3K107CC22
3K107CC45
3K107DD59
3K107DD68
3K107GG06
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
4H006AC22
4H006BA25
4H006BA48
4H006BB15
4H006BE13
(57)【要約】
本発明は新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1中、
Dは重水素を意味し、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素または重水素であり、
L
1~L
4は、それぞれ独立して、単結合;または置換または非置換の炭素数6~60のアリーレンであり、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSのうち1個以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~8の整数であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~5の整数である。
【請求項2】
R
1およびR
2は、全て水素であるか;または全て重水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
L
1~L
4は、それぞれ独立して、単結合;非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,2-フェニレン;非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,3-フェニレン;または、非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,4-フェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
L
1およびL
2は、全て単結合であるか;または
L
1およびL
2のうち一つは単結合であり、残りの一つは非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換されたフェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
L
3およびL
4は、全て単結合であるか;または
L
3およびL
4のうち一つは単結合であり、残りの一つは非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換されたフェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、またはフェニルカルバゾリルであり、
ここで、Ar
1およびAr
2は、非置換であるか、または1個以上の重水素で置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
a+b+c+dは0であるか、または10以上である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、下記化学式1-1~1-3のいずれかで表される、請求項1に記載の化合物:
【化2A】
【化2B】
前記化学式1-1~1-3中、
R
1、R
2、L
1~L
4、Ar
1、Ar
2およびa~dは、請求項1で定義した通りである。
【請求項9】
前記化合物の重水素置換率は、0%であるかまたは80%以上である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物は、分子量が800g/mol以上である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物は、下記化学式で表される化合物で構成される群およびこれらの重水素化された構造から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物。
【化3A】
【化3B】
【化3C】
【化3D】
【化3E】
【化3F】
【化3G】
【化3H】
【化3I】
【化3J】
【化3K】
【化3L】
【請求項12】
第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうち1層以上は、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機発光素子。
【請求項13】
前記化合物を含む有機物層は発光層である、請求項12に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年6月10日付の韓国特許出願第10-2022-0070957号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れて多くの研究が進められている。
【0003】
有機発光素子は一般に、正極と負極と、前記正極と負極との間の有機物層とを含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるためにそれぞれ異なる物質から構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(HIL)などからなる。このような有機発光素子の構造において、二つの電極の間に電圧をかけると正極では正孔が、負極では電子が有機物層に注入されるようになり、注入された正孔と電子が会った時エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時光ることになる。
【0004】
前記のような有機発光素子に使用される有機物に対して新たな材料の開発が持続的に求められている。
【0005】
一方、近年工程費用削減のために従来の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を利用した有機発光素子が開発されている。初期にはすべての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、HIL、HTL、EMLだけを溶液工程で進行し、その後の工程は従来の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程が研究中である。
【0006】
そこで、本発明では、有機発光素子に使用することができると同時に溶液工程に使用可能な新規な有機発光素子の素材を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特開番号第10-2000-0051826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記化学式1で表される化合物を提供する:
【化1】
【0010】
前記化学式1中、
Dは、重水素を意味し、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または重水素であり、
L1~L4は、それぞれ独立して、単結合;または置換または非置換の炭素数6~60のアリーレンであり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSのうち1個以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~8の整数であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~5の整数である。
【0011】
また、本発明は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうち1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上述の学式1で表される化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として用いることができ、また、溶液工程に使用が可能で、有機発光素子で効率および寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】基板1、正極2、発光層3、負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。
【
図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層3、電子注入および輸送層7、および負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の理解のためにより詳しく説明する。
【0015】
(用語の定義)
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうち1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換または非置換されたか、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換基で置換または非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニリル基であり得る。即ち、ビフェニリル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈することができる。例えば、「置換または非置換の」という用語は、「非置換であるか、または重水素、ハロゲン、シアノ、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシおよび炭素数6~20のアリールで構成される群より選択される1個以上の置換基で置換された」;または「非置換であるか、または重水素、ハロゲン、シアノ、メチル、エチル、フェニルおよびナフチルで構成される群より選択される1個以上の置換基で置換された」という意味と理解することができる。また、本明細書において、「1個以上の置換基で置換された」という用語は、「1個乃至置換可能な水素の最大個数で置換された」という意味と理解することができる。または、本明細書において、「1個以上の置換基で置換された」という用語は、「1個~5個の置換基で置換された」、または「1個または2個の置換基で置換された」という意味と理解することができる。
【0016】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の置換基となるが、これに限定されるものではない。
【化2】
【0017】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分岐鎖または環状アルキル基または炭素数6~25のアリール基で置換されていることができる。具体的には、下記構造式の置換基になるが、これに限定されるものではない。
【化3】
【0018】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には下記のような構造の置換基となるが、これに限定されるものではない。
【化4】
【0019】
本明細書において、置換または非置換のシリル基は、-Si(Z1)(Z2)(Z3)を意味し、ここでZ1、Z2およびZ3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数1~60のハロアルキル、置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル、置換または非置換の炭素数2~60のハロアルケニル、または置換または非置換の炭素数6~60のアリールであり得る。一実施形態によれば、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル、置換または非置換の炭素数1~10のハロアルキル、置換または非置換の炭素数1~10のハロアルキル、または置換または非置換の炭素数6~20のアリールであり得る。前記シリル基の具体的な例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これに限られない。
【0020】
本明細書において、ホウ素基は、具体的にはトリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨウ素がある。
【0022】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチルブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチルプロピル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、イソヘキシル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチル-1-ペンチル、2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチルなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロフェニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、シクロアルキル基は、特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。さらに一つの実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに一つの実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これに限られない。
【0025】
本明細書において、アリール基は、環形成原子として炭素だけを含み、芳香族性を有する単環または縮合多環化合物から由来した置換基を意味することと理解され、炭素数は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基などがあるが、これに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、フルオレニル基が置換であることができ、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成することができる。前記フルオレニル基が置換基である場合、
【化5】
などがある。ただし、これに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、ヘテロアリール基は、環形成原子であり、炭素以外にN、OおよびSの中で選択される1個以上のヘテロ原子をさらに含む単環または縮合多環化合物から由来した置換基を意味し、芳香族性を有する置換基を意味する。一実施形態によれば、前記ヘテロアリール基の炭素数は炭素数2~60である。さらに一つの実施状態によれば、前記ヘテロアリール基の炭素数は2~30である。さらに一つの実施状態によれば、前記ヘテロアリール基の炭素数は2~20である。前記ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ビピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基およびフェノチアジニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基、アリールシリル基のうちのアリール基は、前述したアリール基の例示と同様である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基のうちアルキル基は、前述したアルキル基の例示と同様である。本明細書において、ヘテロアリールアミンのうちヘテロアリールは、前述したヘテロアリールに関する説明を適用することができる。本明細書において、アラルケニル基のうちアルケニル基は、前述したアルケニル基の例示と同様である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除いては前述したアリール基に関する説明を適用することができる。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除いては前述したヘテロアリールに関する説明を適用することができる。本明細書において、炭化水素環は、1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除いては前述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明を適用することができる。本明細書において、ヘテロ環は、1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除いては前述したヘテロアリールに関する説明を適用することができる。
【0029】
本明細書において、「重水素化されたまたは重水素で置換された」という意味は、化合物、2価の連結基または1価の置換基内の置換可能な水素のうち少なくとも一つが重水素で置換されることを意味する。
【0030】
また、「非置換であるかまたは重水素で置換された」または「重水素で置換または非置換の」という意味は、「非置換であるかまたは置換可能な水素のうち1個~最大個数が重水素で置換された」ことを意味する。例えば、「非置換であるかまたは重水素で置換されたフェナントリル」という用語は、フェナントリル構造内の重水素で置換可能な水素の最大個数が9個であるという点考慮すると、「非置換であるかまたは1個~9個の重水素で置換されたフェナントリル」という意味と理解することができる。
【0031】
また、「重水素化された構造」という意味は、少なくとも一つの水素が重水素で置換されたすべての構造の化合物、2価の連結基または1価の置換基を包括することを意味する。例えば、フェニルの重水素化された構造は、下記のようにフェニル基内の置換可能な少なくとも一つの水素が重水素で置換されたすべての構造の1価の置換基を称するものと理解することができる。
【化6】
【0032】
また、化合物の「重水素置換率」または「重水素化度」は、化合物内に存在できる水素の総個数(化合物内の重水素で置換可能な水素の個数および置換された重水素の個数の総合計)に対する置換された重水素の個数の比率を百分率に計算したものを意味する。したがって、化合物の「重水素置換率」または「重水素化度」が「K%」とは、化合物内の重水素で置換可能な水素のうちK%が重水素で置換されたことを意味する。
【0033】
この時、前記「重水素置換率」または「重水素化度」は、MALDI-TOFMS(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometer)、核磁気共鳴分光法(1H NMR)、TLC/MS(Thin-Layer Chromatography/Mass Spectrometry)、またはGC/MS(Gas Chromatography/Mass Spectrometry)などを利用して通常周知の方法に従って測定することができる。より具体的に、MALDI-TOFMSを利用する場合、前記「重水素置換率」または「重水素化度」は、MALDI-TOFMS分析を介して化合物内に置換された重水素個数を求めた後、化合物の内存在できる水素の総個数に対する置換された重水素の個数の比率を、百分率として計算して求めることができる。
【0034】
(化合物)
本発明は、前記化学式1で表される化合物を提供する。
【0035】
従来ホスト物質として使用されてきたアントラセン系の化合物は、分子量400~600g/molを有する低い分子量の化合物であり、溶媒に対する溶解性に優れて溶液工程で発光層を形成するのに利用することはできるが、その後発光層上に電子輸送層などの別途の層を溶液工程で塗布する場合、電子輸送層形成のための溶媒に対する耐性が悪く、問題があった。
これにより、発光層の形成のための溶媒に対しては高い溶解度を示すと同時に、発光層上に備えることができる正孔阻止層、電子輸送層、または電子注入および輸送層などの形成のための溶媒に対する耐性を示すことができる有機物質に対する要求があった。
【0036】
そこで、本発明者らは、分子オービタルの観点から、(ナフチレン)-(ナフチレン)リンカーを有しながら、2個のアントラセン構造を含む化合物の場合、ナフチレン同士が2,2’位で互いに連結し、5、7および8位のうちの一つと、5’、7’および8’位のうちの一つにアントラセンが連結されると、発光層上の別個の層形成のための溶媒に対しては耐性を示すことができるほどの高い分子量を有しながらも発光層の形成のための溶媒に対しては高い溶解度を示すことができることを確認して、本発明を完成した。
【0037】
前記化学式1で表される化合物は、2個のアントラセン環がビナフチレンリンカーによって連結された構造を有する化合物であり、前記ビナフチレンリンカーは、ナフチレン基が2,2’位で互いに連結し、5、7および8位のうちの一つと5’、7’および8’位のうちの一つにアントラセンが連結されることをその特徴とする。
【0038】
前記化学式1で表される化合物は、ビナフチレンリンカーが2個のアントラセンと6位および6’位で結合された構造を有する化合物、および前記ビナフチレンリンカーが2,2’位に互いに連結されていない化合物に対して、その構造的特徴によってより優れた物質安定性を示すことができる。
【0039】
具体的に、一定水準以上の分子量を有する化合物は、増加された分子量によって溶液工程で使用される溶媒に溶解しない問題が発生する。そこで、溶媒に対する溶解性を高めるためには、分子内にtwist formが十分に誘導されるべきであるが、分子オービタルの観点から、(ナフチレン)-(ナフチレン)リンカーを有しながら、2個のアントラセン構造を含む化合物の場合、ナフチレン基が2,2’位で互いに連結し、5、7および8位のうちの一つと5’、7’および8’位のうちの一つにアントラセンが連結されると、分子内twist formが効果的に誘導できる。
【0040】
これにより、前記化学式1で表される化合物は、一定水準以上の分子量を有して発光層上の別個の層形成のための溶媒に対しては耐性を示すことができると同時に、前記化学式1とは異なるビナフチレンリンカーを有する化合物に対して溶解度がより高く、前記化合物を利用して効果的に溶液工程で発光層の形成が可能である。したがって、前記化学式1で表される化合物を発光層として含む最終的に得られる有機発光素子の効率および寿命を向上させることができる。
【0041】
具体的に、前記化学式1で表される化合物における、ビナフチレンリンカーとL
1およびL
2との結合位置を示すと下記とおりである:
【化7】
【0042】
前記化学式1中、
L1は、ビナフチレンリンカーの*5位の炭素、*7位の炭素および*8位の炭素のいずれかと結合し、
L2は、ビナフチレンリンカーの*5’位の炭素、*7’位の炭素および*8’位の炭素のいずれかと結合する。
【0043】
具体的に、ビナフチレンリンカーとL1およびL2との結合位置を(L1結合位置、L2結合位置)で示すと、ビナフチレンリンカーとL1およびL2との結合位置は(*5位、*5’位)、(*5位、*7’位)、(*5位、*8’位)、(*7位、*7’位)、(*7位、*8’位)、または(*8位、*8’位)であり得る。
【0044】
このうち、ビナフチレンリンカーとL1およびL2との結合位置が(*5位、*5’位)、(*7位、*7’位)、または(*8位、*8’位)であることが合成の容易性の側面から好ましい。
【0045】
前記化学式1中、R1およびR2は全て水素であるか;または全て重水素であり得る。
【0046】
また、L1~L4は、それぞれ独立して、単結合;または非置換であるかまたは重水素で置換された炭素数6~20のアリーレンであり得る。
【0047】
また、L1~L4は、それぞれ独立して、単結合、置換または非置換のフェニレン、置換または非置換のビフェニルジイル、または置換または非置換のナフチレンであり得る。
【0048】
また、L1~L4は、それぞれ独立して、単結合;非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,2-フェニレン;非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,3-フェニレン;または非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,4-フェニレンであり得る。
【0049】
具体的に、L1およびL2は全て単結合であるか;または
L1およびL2のうち一つは、単結合であり、残りの一つは、非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換されたフェニレンであり得る。
【0050】
例えば、L1およびL2は全て単結合であるか;または
L1およびL2のうち一つは、単結合であり、残りの一つは、非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,2-フェニレン;非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,3-フェニレン;または非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,4-フェニレンであり得る。
【0051】
また、具体的には、L3およびL4は、全て単結合であるか;または
L3およびL4のうち一つは、単結合であり、残りの一つは、非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換されたフェニレンであり得る。
【0052】
例えば、L3およびL4は、全て単結合であるか;または
L3およびL4のうち一つは、単結合であり、残りの一つは、非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,2-フェニレン;非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,3-フェニレン;または非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,4-フェニレンであり得る。
【0053】
また、L1~L4は、全て単結合であるか;または
L1~L4のうち一つは、非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,2-フェニレン;非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,3-フェニレン;または非置換であるか、または1個~4個の重水素で置換された1,4-フェニレンであり、残りは、全て単結合であり得る。
【0054】
また、L1およびL2は互いに同じであってもよい。異なる形態では、L1およびL2は異なってもよい。
【0055】
また、L3およびL4は互いに同じであってもよい。異なる形態では、L3およびL4は異なってもよい。
【0056】
また、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~20のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSの中の1個または2個のヘテロ原子を含む炭素数2~20ヘテロアリールであり得る。
【0057】
また、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、非置換であるかまたは重水素およびフェニルで構成される群より選択される1個以上の置換基で置換される炭素数6~20のアリール;または非置換であるかまたは重水素およびフェニルで構成される群より選択される1個以上の置換基で置換されるN、OおよびSの中の1個または2個のヘテロ原子を含む炭素数2~20ヘテロアリールであり得る。
【0058】
具体的に、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のビフェニリル、置換または非置換のナフチル、置換または非置換のフェナントリル、置換または非置換のジベンゾフラニル、置換または非置換のジベンゾチオフェニル、置換または非置換のカルバゾリル、または置換または非置換のフェニルカルバゾリルであり得る。
【0059】
より具体的に、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、またはフェニルカルバゾリルであり、
ここで、Ar1およびAr2は、非置換であるか、または1個以上の重水素で置換されることができる。
【0060】
また、Ar1およびAr2は互いに同じであってもよい。異なる形態では、Ar1およびAr2は異なってもよい。
【0061】
また、L3-Ar1およびL4-Ar2は互いに同じであってもよい。異なる形態では、L3-Ar1およびL4-Ar2は異なってもよい。
【0062】
また、重水素の個数を意味するaおよびbは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、cおよびdは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、または5である。
【0063】
一実施形態で、a+b+c+dは0であるか、または10以上であり得る。
例えば、a+b+c+dは、0であるか、または10以上、15以上、20以上、25以上、26以上、27以上、または28以上であり、36以下であり得る。
【0064】
また、前記化合物は、下記化学式1-1~1-3のいずれかで表される:
【0065】
【0066】
【0067】
前記化学式1-1~1-3中、
R1、R2、L1~L4、Ar1、Ar2およびa~dは、前記化学式1で定義した通りである。
【0068】
また、前記化合物は、重水素を含まないか、または1個以上の重水素を含むことができる。
具体的に、前記化合物は、重水素を含まないか、または1個以上、5個以上、10個以上、20個以上、30個以上、35個以上、または40個以上、60個以下、55個以下、50個以下、49個以下、48個以下、47個以下、または46個以下の重水素を含むことができる。
【0069】
より具体的には、前記化合物の重水素置換率は、0%であるかまたは80%以上であり得る。
【0070】
例えば、前記化合物が重水素を含む場合、前記化合物の重水素置換率は1%~100%であり得る。具体的には、前記化合物の重水素置換率は、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または80%以上であり、100%以下、95%以下、または90%以下であり得る。
【0071】
また、前記化合物は、分子量が800g/mol以上である。より具体的には、前記化合物は、分子量(g/mol)が850以上、860以上、870以上、880以上、890以上、900以上、910以上、920以上、または930以上であり、2,000以下、1,500以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,080以下、1,060以下、1,040以下、1,020以下、または1,000以下であり得る。
【0072】
この時、前記化合物の重水素置換個数を表示しようとする場合、下記化学式1Dで表示することができる:
【化9】
【0073】
前記化学式1D中、
Dnは、n個の水素が重水素で代替されたことを意味し、
ここで、nは0以上の整数であり、
R’1、R’2、L’1~L’4、Ar’1およびAr’2は、それぞれ重水素で置換されていないR1、R2、L1~L4、Ar1およびAr2置換基を意味する。
【0074】
一実施形態で、前記化合物が、少なくとも一つの重水素を有する場合、前記化学式1D中、nは1以上の整数である。
【0075】
一方、前記化学式1で表される化合物の代表的な例は、下記化学式で表される化合物で構成される群およびこれらの重水素化された構造から選択されるいずれかである:
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
一方、前記化学式1で表される化合物は、例えばa、b、cおよびdが0の場合、下記反応式1のような製造方法で製造することができる。
【化11】
【0089】
前記反応式1中、各置換基に対する定義は前述の通りである。
【0090】
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、鈴木カップリング反応のための反応基であるOTf(-O3SCF3)基が導入された化合物SM1と化合物SM2との鈴木カップリング反応を通じて製造することができる。この時、鈴木カップリング反応は、それぞれパラジウム触媒および塩基の存在下で行うことが好ましい。また、前記鈴木カップリング反応のための反応基は適宜変更されてもよい。
【0091】
また、少なくとも一つの重水素を有する前記化学式1で表される化合物(即ち、化学式1D中、nが0超の整数(nが1以上の整数)の化合物)は、下記反応式2のような製造方法で製造することができる。
【化12】
【0092】
前記反応式2中、各置換基に対する定義は前述の通りである。
【0093】
具体的に、少なくとも一つの重水素を有する化学式1で表される化合物は、重水素で置換されていない化学式1で表される化合物を重水素化して製造することができる。この時、重水素置換反応は、重水素で置換されていない化学式1で表される化合物をベンゼン-D6(C6D6)溶液などの重水素化された溶媒に投入した後、TfOH(trifluoromethane sulfonic acid)と反応させて行うことができる。
【0094】
一方、前記化学式1で表される化合物は、前記反応式1および2で反応物質を適宜変更して製造することができ、これらの製造方法は後述する製造例でより具体化される。
【0095】
一方、前記化学式1で表される化合物は、溶液工程に使用される有機溶媒、例えばシクロヘキサノンのような有機溶媒に対する溶解度が高く、高い沸点の溶媒を使用するインクジェット塗布法などの大面積溶液工程への使用に適している。
【0096】
本発明に係る化合物を含む有機物層は、真空蒸着法、溶液工程などの様々な方法を利用して形成することができ、溶液工程については以下詳しく説明する。
【0097】
(コーティング組成物)
一方、本発明に係る化合物は、溶液工程で有機発光素子の有機物層、特に発光層を形成することができる。具体的に、前記化合物は、発光層のホスト材料として使用することができる。このために、本発明は、上述の本発明に係る化合物および溶媒を含むコーティング組成物を提供する。
【0098】
前記溶媒は、本発明に係る化合物を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に制限されず、例えばクロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;ブチルベンゾエ-ト、メチル-2-メトキシベンゾエート、エチルベンゾエ-トなどのベンゾエ-ト系溶媒;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジフェニルフタレートなどのフタレート系溶媒;テトラリン;3-フェノキシトルエンなどの溶媒が挙げられる。また、上述の溶媒を1種単独で使用するか2種以上の溶媒を混合して使用することができる。好ましくは、前記溶媒にシクロヘキサノンを使用することができる。
【0099】
また、前記コーティング組成物は、ドーパント材料に使用される化合物をさらに含むことができ、前記ドーパント材料に使用される化合物についての説明は後述する。
【0100】
また、前記コーティング組成物の粘度は1cP以上が好ましい。また、前記コーティング組成物のコーティング容易性を勘案して、前記コーティング組成物の粘度は10cP以下が好ましい。また、前記コーティング組成物内本発明に係る化合物の濃度は0.1wt/v%以上が好ましい。また、前記コーティング組成物が最適にコーティングされるように、前記コーティング組成物内の本発明に係る化合物の濃度は20wt/v%以下が好ましい。
【0101】
また、前記化学式1で表される化合物の常温/常圧での溶解度(wt%)は、溶媒シクロヘキサノンを基準に0.1wt%以上、より具体的には0.1wt%~5wt%であり得る。これにより、前記化学式1で表される化合物および溶媒を含むコーティング組成物は、溶液工程に使用することができる。
【0102】
また、本発明は、上述のコーティング組成物を使用して発光層を形成する方法を提供する。具体的に、この方法は、正極上に、または正極上に形成された正孔輸送層上に上述の本発明に係る発光層を溶液工程でコーティングする段階;および前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理する段階を含む。
【0103】
前記溶液工程は、上述の本発明に係るコーティング組成物を使用する工程であり、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどの工程を意味するが、これらだけに限定されるものではない。
【0104】
前記熱処理段階において熱処理温度は150~230℃が好ましい。また、前記熱処理時間は1分~3時間であり、より好ましくは10分~1時間である。また、前記熱処理は、アルゴン、窒素などの不活性気体雰囲気で行うことが好ましい。
【0105】
(有機発光素子)
一方、本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。例えば、本発明は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうち1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなることができる。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されずより少ない数の有機層を含むことができる。
【0106】
一実施形態で、前記有機物層は、発光層を含むことができ、この時、前記化合物を含む有機物層は発光層であり得る。
【0107】
他の実施形態で、前記有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子注入および輸送層を含むことができ、この時、前記化合物を含む有機物層は、発光層または電子注入および輸送層であり得る。
【0108】
さらに他の実施形態で、前記有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子抑制層、発光層および電子注入および輸送層を含むことができ、この時、前記化合物を含む有機物層は、発光層または電子注入および輸送層であり得る。
【0109】
さらに他の実施形態で、前記有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子抑制層、発光層、電子阻止層、および電子注入および輸送層を含むことができ、この時、前記化合物を含む有機物層は、発光層または電子注入および輸送層であり得る。
【0110】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなることができる。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として発光層以外に、前記第1電極と前記発光層との間の正孔注入層および正孔輸送層、および前記発光層と前記第2電極との間の電子輸送層および電子注入層をさらに含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されずより少ない数またはより多くの数の有機層を含むことができる。
【0111】
また、本発明に係る有機発光素子は、第1電極が正極であり、第2電極が負極である、基板上に正極、1層以上の有機物層および負極が順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であり得る。また、本発明に係る有機発光素子は、第1電極が負極であり、第2電極が正極である、基板上に負極、1層以上の有機物層および正極が順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であり得る。例えば、本発明の一実施例に係る有機発光素子の構造は
図1および2に示されている。
【0112】
図1は、基板1、正極2、発光層3、負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。このような構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記発光層に含まれることができる。
【0113】
図2は、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層3、電子注入および輸送層7、および負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。このような構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記発光層に含まれることができる。
【0114】
本発明に係る有機発光素子は、前記発光層が本発明に係る化合物を含み、上述の方法のように製造されることを除いては、当技術分野において周知の材料と方法で製造することができる。
【0115】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、基板上に正極、有機物層および負極を順次積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)などのPVD(physical Vapor Deposition)方法を利用して、基板上に金属または伝導性を有する金属酸化物、またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、さらにその上に負極で使用することができる物質を蒸着させて製造することができる。
【0116】
このような方法の他にも、基板上に負極物質から有機物層、正極物質を順次蒸着させて有機発光素子を製造することができる(WO2003/012890)。ただし、製造方法がこれに限定されるものではない。
【0117】
例えば、前記第1電極は正極であり、前記第2電極は負極であるか、または前記第1電極は負極であり、前記第2電極は正極である。
【0118】
前記正極物質としては、通常有機物層で正孔注入が円滑になるように仕事関数が大きい物質が好ましい。前記正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO2:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの伝導性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0119】
前記負極物質としては、通常有機物層への電子注入が容易になるように仕事関数が小さい物質であることが好ましい。前記負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫および鉛などの金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0120】
前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層であり、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、正極での正孔注入効果、発光層または発光材料に対する優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)は、正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の伝導性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0121】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層であり、正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔の輸送を受けて発光層に運ぶことができる物質であって、正孔に対する移動性が大きい物質が適する。前記正孔輸送物質として前記化学式1で表される化合物を使用するか、またはアリールアミン系の有機物、伝導性高分子、および共役の部分と非共役の部分とを共に有するブロック共重合体などを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0122】
一方、前記有機発光素子には、前記正孔輸送層と発光層との間に電子抑制層が備えられていてもよい。前記電子抑制層は、前記正孔輸送層上に形成され、好ましくは発光層に接して備えられて、正孔移動度を調節し、電子の過剰な移動を防止して正孔-電子間結合確率を高めることによって有機発光素子の効率を改善する役割を果たす層を意味する。前記電子抑制層は、電子阻止物質を含み、このような電子阻止物質の例として前記化学式1で表される化合物を使用するか、またはアリールアミン系の有機物などを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0123】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料としては、前記化学式1で表される化合物が使用される。また、前記ホスト材料として前記化学式1で表される化合物と共に縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などが使用される。具体的に、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾル誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これに限定されるものではない。
【0124】
また、ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体では、置換または非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体として、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換または非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物であって、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換または非置換されている化合物がある。具体的にスチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これに限定されるものではない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これに限定されるものではない。
【0125】
一方、前記有機発光素子には、前記発光層と電子輸送層との間に正孔阻止層が備えられてもよい。前記正孔阻止層は、発光層上に形成され、好ましくは発光層に接して備えられて、電子移動度を調節して正孔の過剰な移動を防止して正孔-電子間結合確率を高めることによって有機発光素子の効率を改善する役割を果たす層を意味する。前記正孔阻止層は、正孔阻止物質を含み、このような正孔阻止物質の例として、トリアジンを含むアジン類誘導体;トリアゾール誘導体;オキサジアゾール誘導体;ペナントロリン誘導体;ホスフィンオキシド誘導体などの電子吸引基が導入された化合物を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0126】
前記電子注入および輸送層は、電極から電子を注入し、受け取った電子を発光層まで輸送する電子輸送層および電子注入層の役割を同時に行う層であり、前記発光層または前記正孔阻止層上に形成される。このような電子注入および輸送物質としては、負極から電子の注入を良好に受けて発光層に運ぶことができる物質であって、電子に対する移動性が大きい物質が適する。具体的な電子注入および輸送物質の例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体;トリアジン誘導体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。または、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどと、これらの誘導体、金属錯体化合物、または含窒素5員環誘導体などと共に使用することもできるが、これに限定されるものではない。
【0127】
前記電子注入および輸送層は、電子注入層および電子輸送層のように別個の層で形成されてもよい。このような場合、電子輸送層は、前記発光層または前記正孔阻止層上に形成され、前記電子輸送層に含まれる電子輸送物質としては、上述の電子注入および輸送物質が使用される。また、電子注入層は、前記電子輸送層上に形成され、前記電子注入層に含まれる電子注入物質としては、LiF、NaCl、CsF、Li2O、BaO、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどと、これらの誘導体、金属錯体化合物および含窒素5員環誘導体などが使用される。
【0128】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)(o-クレゾラト)ガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)(1-ナフトラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)(2-ナフトラト)ガリウムなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0129】
上述の材料の他にも、前記発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層には、量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物を追加に含むことができる。
前記量子ドットは、例えば、コロイド量子ドット、合金量子ドット、コア型量子ドット、またはコア・シェル量子ドットである。第2族および第16族に属する元素、第13族および第15族に属する元素、第13族および第17族に属する元素、第11族および第17族に属する元素、または第14族および第15族に属する元素を含む量子ドットであり、カドミウム(Cd)、セレニウム(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルリウム(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、砒素(As)などの元素を含む量子ドットを使用することができる。
【0130】
本発明に係る有機発光素子は、背面発光(bottom emission)素子、前面発光(top emission)素子、または両面発光素子であり、特に相対的に高い発光効率が要求される背面発光素子である。
【0131】
また、本発明に係る化合物は、有機発光素子の他にも有機太陽電池または有機トランジスターに含まれてもよい。
【0132】
前記化学式1で表される化合物およびこれを含む有機発光素子の製造は、以下実施例で具体的には説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0133】
【0134】
化合物1-a(1.0eq.)および化合物1-b(1.1eq.)を丸底フラスコに入れてTHFに溶解した。水に溶解したCs2CO3(5.0eq.)を注入した。Bath温度80℃下でPd(PPh3)4(10mol%)を滴加し3日間攪拌した。反応後、反応物を常温で冷やしEtOAcに十分に薄めた後、EtOAc/brineで水洗して有機層を分離した。MgSO4で水を除去しCelite-Florisil-Silica padに通過させた。通過された溶液を減圧下濃縮させた後、Column Chromatography精製して化合物1-c(73%収率)を製造した。
【0135】
化合物1-c(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水CH2Cl2に溶解した。その後、pyridine(2.0eq.)を常温で滴加した後、bath温度を0℃に下げて10分間攪拌した。その後、無水CH2Cl2に溶解したTf2O(1.2eq.)をdropping funnelを利用してゆっくり混合物に滴加し、bath温度を徐々に0℃から常温に上げた後、一夜攪拌した。反応後、反応物をCH2Cl2に十分に薄めた後、CH2Cl2/brineで水洗して有機層を分離した。MgSO4で水を除去しCelite-Florisil-Silica padに通過させた。通過した溶液を減圧下濃縮させた後、Column Chromatography精製して化合物1-d(99%収率)を製造した。
【0136】
化合物1-d(1.0eq.)および化合物1-e(1.1eq.)を丸底フラスコに入れてTHFに溶解した。水に溶解したNa2CO3(3.0eq.)を注入した。Bath温度80℃下でPd(PPh3)4(10mol%)を滴加し一夜攪拌した。反応後、反応物を常温で冷やしEtOAcに十分に薄めた後、EtOAc/brineで水洗して有機層を分離した。MgSO4で水を除去しCelite-Florisil-Silica padに通過させた。通過した溶液を減圧下濃縮させた後、Column Chromatography精製して化合物1-f(71%収率)を製造した。
化合物1-f(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水CH2Cl2に溶解した。その後、pyridine(2.0eq.)を常温で滴加した後、bath温度を0℃に下げて10分間攪拌した。その後、無水CH2Cl2に溶解したTf2O(1.2eq.)をdropping funnelを利用してゆっくり混合物に滴加し、bath温度を徐々に0℃から常温に上げた後、一夜攪拌した。反応後、反応物をCH2Cl2に十分に薄めた後、CH2Cl2/brineで水洗して有機層を分離した。MgSO4で水を除去しCelite-Florisil-Silica padに通過させた。通過した溶液を減圧下濃縮させた後、Column Chromatography精製して化合物1-g(99%収率)を製造した。
【0137】
化合物1-g(1.0eq.)および化合物1-h(1.1eq.)を丸底フラスコに入れてTHFに溶解した。水に溶解したNa2CO3(3.0eq.)を注入した。Bath温度80℃下でPd(PPh3)4(10mol%)を滴加し一夜攪拌した。反応後、反応物を常温で冷やしEtOAcに十分に薄めた後、EtOAc/brineで水洗して有機層を分離した。MgSO4で水を除去しCelite-Florisil-Silica padに通過させた。通過した溶液を減圧下濃縮させた後、Column Chromatography精製して化合物1(84%収率)を製造した。
m/z[M+H]+935.4
【0138】
【0139】
この合成では、化合物1-hの代わりに化合物2-aを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物2を製造した。
m/z[M+H]+935.4
【0140】
【0141】
この合成では、化合物1-hの代わりに化合物3-aを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物3を製造した。
m/z[M+H]+935.4
【0142】
【0143】
この合成では、化合物1-hの代わりに化合物4-aを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物4を製造した。
m/z[M+H]+935.4
【0144】
【0145】
この合成では、化合物1-hの代わりに化合物5-aを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物5を製造した。
m/z[M+H]+935.4
【0146】
【0147】
この合成では、化合物1-bの代わりに化合物6-a、化合物1-cの代わりに化合物6-b、化合物1-dの代わりに化合物6-c、化合物1-fの代わりに化合物6-d、化合物1-gの代わりに化合物6-e、化合物1-hの代わりに化合物6-fを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物6を製造した。
m/z[M+H]+975.4
【0148】
【0149】
この合成では、化合物1-bの代わりに化合物7-a、化合物1-cの代わりに化合物7-b、化合物1-dの代わりに化合物7-c、化合物1-fの代わりに化合物7-d、化合物1-gの代わりに化合物7-e、化合物1-hの代わりに化合物7-fを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物7を製造した。
m/z[M+H]+975.4
【0150】
【0151】
この合成では、化合物7-fの代わりに化合物8-aを使用したことを除いては前記化合物7と同様に化合物8を製造した。
m/z[M+H]+975.4
【0152】
【0153】
この合成では、化合物1-aの代わりに化合物9-a、化合物1-bの代わりに化合物7-a、化合物1-cの代わりに化合物9-b、化合物1-dの代わりに化合物9-c、化合物1-eの代わりに化合物9-d、化合物1-fの代わりに化合物9-e、化合物1-gの代わりに化合物9-f、化合物1-hの代わりに化合物8-aを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物9を製造した。
m/z[M+H]+975.4
【0154】
【0155】
この合成では、化合物1-aの代わりに化合物9-a、化合物1-cの代わりに化合物10-a、化合物1-dの代わりに化合物10-b、化合物1-eの代わりに化合物9-d、化合物1-fの代わりに化合物10-c、化合物1-gの代わりに化合物10-d、化合物1-hの代わりに化合物3-aを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物10を製造した。
m/z[M+H]+935.4
【0156】
【0157】
この合成では、化合物1-aの代わりに化合物11-a、化合物1-cの代わりに化合物11-b、化合物1-dの代わりに化合物11-c、化合物1-eの代わりに化合物11-d、化合物1-fの代わりに化合物11-e、化合物1-gの代わりに化合物11-fを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物11を製造した。
m/z[M+H]+935.4
【0158】
【0159】
この合成では、化合物1-aの代わりに化合物11-a、化合物1-bの代わりに化合物7-a、化合物1-cの代わりに化合物12-a、化合物1-dの代わりに化合物12-b、化合物1-eの代わりに化合物12-c、化合物1-fの代わりに化合物12-d、化合物1-gの代わりに化合物12-e、化合物1-hの代わりに化合物8-aを使用したことを除いては前記化合物1と同様に化合物12を製造した。
m/z[M+H]+975.4
【0160】
【0161】
窒素雰囲気下化合物1(1.0eq.)を丸底フラスコに入れてbenzene-D6(150eq.)に溶解した。トリフルオロメタンスルホン酸(Trifluoromethanesulfonic acid;TfOH、2.0eq.)を反応物にゆっくり滴加し、25℃下で2時間攪拌した。反応物にD2Oを滴加して反応を終結させ、potassium phosphate tribasic(30wt% in aqueous solution、2.4eq.)を滴加して水層のpHを9~10に合わせた。CH2Cl2/DI waterで水洗して有機層を分離した。MgSO4で水を除去しCelite-Florisil-Silica padに通過させた。通過した溶液を減圧下濃縮させた後、Column Chromatography精製して化合物13(a+b+c+d+e+f+g=40~46、87%収率、重水素置換率87.0~100%)を製造した。この時、重水素置換率は、化合物内の置換された重水素の個数をMALDI-TOF MS(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometer)分析により求めた後、化学式内に存在できる水素の総個数に対する置換された重水素の個数の百分率として計算した。
【0162】
【0163】
窒素雰囲気下化合物9(1.0eq.)を丸底フラスコに入れてbenzene-D6(150eq.)に溶解した。TfOH(2.0eq.)を反応物にゆっくり滴加し、25℃下で2時間攪拌した。反応物にD2Oを滴加して反応を終結させ、potassium phosphate tribasic(30wt% in aqueous solution、2.4eq.)を滴加して水層のpHを9~10に合わせた。CH2Cl2/DI waterで水洗して有機層を分離した。MgSO4で水を除去しCelite-Florisil-Silica padに通過させた。通過した溶液を減圧下濃縮させた後、Column Chromatography精製して化合物14(a+b+c+d+e+f+g=40~46、85%収率、重水素置換率87.0~100%)を製造した。この時、重水素置換率は化合物12と同様の方法で計算した。
【0164】
【0165】
この合成では、化合物1-aの代わりに化合物A-a、化合物1-bの代わりに化合物A-b、化合物1-cの代わりに化合物A-c、化合物1-dの代わりに化合物A-d、化合物1-eの代わりに化合物A-e、化合物1-fの代わりに化合物A-f、化合物1-gの代わりに化合物A-g、化合物1-hの代わりにA-hを使用したことを除いては前記化合物1と同様に比較化合物Aを製造した。
m/z[M+H]+835.3
【0166】
【0167】
この合成では、化合物1-aの代わりに化合物B-a、化合物1-bの代わりに化合物B-b、化合物1-cの代わりに化合物B-c、化合物1-dの代わりに化合物B-d、化合物1-eの代わりに化合物B-e、化合物1-fの代わりに化合物B-f、化合物1-gの代わりに化合物B-g、化合物1-hの代わりにB-hを使用したことを除いては前記化合物1と同様に比較化合物Bを製造した。
m/z[M+H]+1087.4
【0168】
実験例1:溶解度の測定
前記製造例で製造した化合物1~14、化合物Aおよび化合物Bをそれぞれ25℃でシクロヘキサノンに1.3wt%濃度で溶解が可能であるか否かを確認し、その結果を表1に示した。この時、「〇」表示は、化合物がシクロヘキサノンに容易に溶解したことを意味し、「△」表示は、80℃のシクロヘキサノンに化合物が溶解したことを意味し、「×」表示は、化合物がシクロヘキサノンに溶解しないことを意味する。
【0169】
【0170】
前記表1で確認できるように、前記化学式1で表される化合物は、全てシクロヘキサノンに1.3wt%濃度で溶解が可能であったが、比較化合物AおよびBは常温で溶解が不可能であり、有機発光素子有機層を溶液工程で製造時、有機層をなす化合物として使用できないことがわかる。
【0171】
これは(ナフチレン)-(ナフチレン)リンカーの結合の角度が分子の溶解度差をもたらすためである。前記化学式1で表される化合物とは異なる(ナフチレン)-(ナフチレン)リンカーを有する比較化合物AおよびBは「ナフチレン」リンカーの2個のシグマ結合のオービタルが分子内twist formを効果的に誘導できず板状構造だけ誘導する反面、前記化学式1で表記される化合物の(ナフチレン)-(ナフチレン)リンカーの結合の角度は、溶解度を増加させるのに十分な程度にtwist formを誘導することができるためである。
【0172】
したがって、前記溶解度測定により、一定分子量以上の化合物の場合、溶解度を増加させるためには、同じ部分化学式を有しても分子内に板状でないtwist formを効果的に誘導可能な部分構造でなければならないことがわかる。
【0173】
実施例1
ITO(indium tin oxide)が500Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸溜水に入れて超音波で洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸溜水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルター(Filter)で2次ろ過された蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸溜水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間行った。蒸溜水洗浄が終わった後、イソプロピル、アセトンの溶剤に超音波洗浄を行い乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後、グローブボックスに基板を輸送させた。
【0174】
【0175】
前記ITO透明電極上に、前記化合物Oおよび化合物P(2:8の重量比)を20wt/v%でシクロヘキサノンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(4000rpm)し200℃で30分間熱処理(硬化)して、400Åの厚さで正孔注入層を形成した。
【0176】
【0177】
前記正孔注入層上に前記化合物Q(Mn:27,900;Mw:35,600;Agilent 1200seriesを利用してPCスタンダード(Standard)を利用したGPCで測定)を6wt/v%でトルエンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(4000rpm)し200℃で30分間熱処理して200Åの厚さの正孔輸送層を形成した。
【0178】
【0179】
前記正孔輸送層上に、発光層ホストとしての前記製造例1で製造した化合物1および発光層ドーパントで前記化合物R(98:2の重量比)を1.3wt/v%でシクロヘキサノンに溶かしたコーティング組成物を、スピンコーティング(4000rpm)し、180℃で30分間熱処理して400Åの厚さで発光層を形成した。
【0180】
【0181】
真空蒸着装置に移送した後、前記発光層上に前記化合物Sを350Åの厚さで真空蒸着して電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層上に順次10Åの厚さでLiFを蒸着し1000Åの厚さでアルミニウムを蒸着してカソードを形成した。
【0182】
前記の過程において、有機物の蒸着速度は0.4~0.7Å/secを維持し、LiFは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時真空度は2×10-7~5×10-8torrを維持した。
【0183】
実施例2~実施例14
発光層のホストとして化合物1の代わりに下記表2に記載された化合物を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。前記実施例1~14で使用した化合物をまとめると下記のとおりである。
【0184】
【0185】
【0186】
比較例1および比較例2
発光層のホストとして化合物1の代わりに下記表2に記載された化合物を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0187】
実験例2:有機発光素子の特性評価
前記実施例および比較例で製造した有機発光素子に電流を印加した時、10mA/cm2の電流密度での駆動電圧、外部量子効率(external quantum efficiency、EQE)および寿命を測定した結果を下記表3に示した。この時、外部量子効率(EQE)は「(放出した光子数)/(注入された電荷運搬体数)×100」で求め、T90は、輝度が初期輝度(500nit)から90%にまで減少するのに要する時間を意味する。
【0188】
【0189】
前記表2に示されたように、本発明の化合物を発光層にホストとして含む有機発光素子は、比較例の素子に対して同等水準の電圧を示すと共に向上した効率および寿命を示すことが確認される。
【0190】
具体的に、前記化学式1で表される化合物を発光層のホストとして使用した実施例の有機発光素子は、比較化合物AおよびBをそれぞれ発光層のホストとして使用した比較例1~2の有機発光素子に比べて、効率および寿命が顕著に向上した。これは、前記化学式1で表される化合物が有する構造的な特性によって物質安定性が向上したためであると判断される。
【0191】
したがって、有機発光素子のホスト物質として前記化学式1で表される化合物を採用する場合、有機発光素子の外部量子効率および寿命特性を同時に改善させることができることがわかる。
【符号の説明】
【0192】
1 基板
2 正極
3 発光層
4 負極
5 正孔注入層
6 正孔輸送層
7 電子注入および輸送層
【国際調査報告】